JP7209492B2 - アルミニウムクラッド材及びその製造方法 - Google Patents
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例えば、高純度アルミニウムは極低温環境下で高い熱伝導性を有するため、極低温環境下での利用が提案されている(例えば、特許文献1、2)。医療用MRI、分析用NMR等に用いられる超電導マグネットには、液体ヘリウムにより4.2Kに冷却された低温超電導コイル、または冷凍機で20K程度に冷却された高温超電導コイルが使われている。これら超電導コイルを効率的かつ均一に冷却するために、液体窒素の沸点(77K)より低い極低温環境下でも高い熱伝導性を有する熱伝達材が求められている。そこで、極低温環境下でも熱伝導性の高い高純度アルミニウム(主に、純度99.9999%(6N)以上)を熱伝達材として用いることが提案されている。
アルミニウム合金から成る第1金属層と、
純度99.999質量%以上の高純度アルミニウムから成り、前記第1金属層の少なくとも片面に接合された第2金属層と、を含むアルミニウムクラッド材である。
アルミニウム合金から成る第1金属層と、純度99.999質量%以上の高純度アルミニウムから成り、前記第1金属層の少なくとも片面に接合された第2金属層と、を含むアルミニウムクラッド材の製造方法であって、
前記アルミニウム合金から成る第1金属材料と、前記高純度アルミニウムから成る第2金属材料とを積層して圧延接合するクラッド工程を含む、アルミニウムクラッド材の製造方法である。
図1は、本発明の実施の形態に係るアルミニウムクラッド材10の概略断面図である。
アルミニウムクラッド材10は、第1金属層11と、第1金属層11の少なくとも片面に接合された第2金属層12とを含む。第1金属層11はアルミニウム合金から成り、第2金属層12は、純度99.999質量%(5N)以上の高純度アルミニウムから成る。なお、第1金属層11を形成するアルミニウム合金の組成は特に限定されないが、例えば3000系アルミニウム合金(Al-Mn系合金)、5000系アルミニウム合金(Al-Mg系合金)および6000系アルミニウム合金(Al-Mg-Si系合金)などが適用できる。
本発明の実施の形態に係るアルミニウムクラッド材10の製造方法は、クラッド工程を含む。さらに、クラッド工程より後に熱処理工程を含んでもよく、クラッド工程より前に表面研磨工程を含んでもよい。
クラッド工程は、アルミニウム合金から成る第1金属材料110と、高純度アルミニウムから成る第2金属材料120を積層して圧延接合する工程である。第1金属材料110は、圧延接合後に、アルミニウムクラッド材10の第1金属層11となり、第2金属材料120は、第2金属層12となる。第2金属材料120は、純度99.999質量%(5N)以上の高純度アルミニウムから形成し、好ましくは純度99.9998質量%(5N8)以上、より好ましくは純度99.9999質量%(6N)以上の高純度アルミニウムから形成する。
まず、従来公知の方法により、第1金属材料110、第2金属材料120を準備する。例えば、所定の組成を有するアルミニウム合金を鋳造、圧延して第1金属材料110を準備し、所定の純度の高純度アルミニウムを鋳造、圧延して第2金属材料120を準備することができる。必要に応じて、鋳造と圧延との間に均質化処理を実施してもよい。
その後、第1金属材料110と第2金属材料120を積層した積層体を圧延することにより、第1金属材料110と第2金属材料120をと圧延接合する。これにより、図2(b)に示すようなアルミニウムクラッド材10が得られる。
熱間圧延した後のアルミニウムクラッド材10に、さらに仕上げ圧延(冷間圧延)を行ってもよい。
クラッド工程より前に、第1金属材料110の貼合せ面110bと、第2金属材料120の貼合せ面120bとをそれぞれ研磨する研磨工程を含んでもよい。研磨により、貼合せ面110b、120bの酸化皮膜が除去されると、クラッド工程で第1金属材料110と第2金属材料120が接合しやすくなる効果がある。
貼合せ面110b、120bの研磨は、例えば、研磨剤を用いたバフ研磨で行うことができる。
クラッド工程により得られたアルミニウムクラッド材10(図2(b))を、熱処理してもよい。熱処理工程は、クラッド工程時の圧延により第1金属層11および第2金属層12に導入された加工ひずみを除去する効果がある。特に、第2金属層12の加工ひずみは第2金属層12の伝導性を低下させる原因となり得るため、熱処理工程により、第2金属層12の伝導性の改善、ひいてはアルミニウムクラッド材10の伝導性の改善の効果が期待できる。
熱処理の条件は、例えば熱処理温度を150℃以上400℃以下、熱処理時間を2時間以上10時間以下とすることができる。
図3は、本発明の実施の形態の変形例に係るアルミニウムクラッド材20の概略断面図である。変形例に係るアルミニウムクラッド材20は、第1金属層11の両面に、第2金属層12a、12bを含む。2つの第2金属層12a、12bは、同じ純度の高純度アルミニウムから成ってもよく、別の純度の高純度アルミニウムから成ってもよい。例えば、第1金属層11の上面を覆う第2金属層12aが純度99.999質量%(5N)の高純度アルミニウムから成り、下面を覆う第2金属層12bが純度99.9999質量%(6N)の高純度アルミニウムから成ってもよい。また、一方の第2金属層12aの厚さt2aと、他方の第2金属層12bの厚さt2bは、同じであっても、異なっていてもよい。
第1金属層11の両面に第2金属層12a、12bが形成されると、片面にのみ形成される場合に比べて、伝導性の向上効果を高め得る。
これにより、低温環境下において強度と伝導性が共に良好なアルミニウムクラッド材20を得ることができる。
1.測定用試料の作製
アルミニウムを鋳造圧延して、表1に記載の純度を有するアルミニウム板(第2金属材料120)を準備した。表1の2N-Al、4N-Al、5N-Al、5N8-Alおよび6N-Alは、それぞれ、純度99質量%、99.99質量%、99.999質量%、99.9998質量%および99.9999質量%のアルミニウムを指す。
また、アルミニウム合金(A5052)を鋳造圧延して、表2に示す組成を有するアルミニウム合金板(第1金属材料110)を準備した。
なお、表1および表2は、得られた第1金属材料110、第2金属材料120について、固体発光分光分析により組成分析を行った分析結果である。表1で線(-)を記載したものは、その化学成分が検出されなかったことを意味する。
・第1金属材料110の寸法:2.0~3.0mm×125mm×190mm
・第2金属材料120の寸法:0.3~1.0mm×125mm×190mm
・表面処理工程:市販の金属磨き剤にて第1金属材料110の貼合せ面110b全体および第2金属材料120の貼合せ面120b全体を、それぞれ、長手方向に10往復させて研磨した。
・クラッド工程(熱間圧延):圧延前の第1金属材料110、第2金属材料120のそれぞれを300~350℃に加熱し、その温度(熱間圧延温度)で、1パス当たりの圧下率15~20%として5パスの熱間圧延を行った。最終的な総圧下率は50~75%であった。
・仕上げ圧延(冷間圧延):仕上げ圧延として、1パス当たりの圧下率10~20%として、1~10パスの冷間圧延を行って、所定厚さ(表3の「アルミニウムクラッド材の厚さ」)まで圧延した。
表3において、試料No.6、7および13の第2金属層の材質に下線を付しているのは、それらが本発明の規定を満たしていないことを示している。
極低温環境下における伝導性を検討するために、残留抵抗比(RRR)を測定した。
測定用試料を用いて、室温での電気比抵抗値ρrt(Ω・m)と、液体He温度(4.2K)での電気比抵抗値ρ4.2K(Ω・m)を四端子法により測定した。得られた電気比抵抗値を用いて、以下の式(1)から残留抵抗比(RRR)を求めた。
RRR=ρrt÷ρ4.2K (1)
各試料のRRRの測定値を表4に示す。また、RRRが2000以上を優良(◎)、1000以上2000未満を良好(○)、100以上1000未満を可(△)、100未満を不良(×)と分類して、表4の「評価」の欄に示した。
極低温環境下(4.2K)における熱伝導性を検討するために、熱伝導率を算出した。
残留抵抗比(RRR)と熱伝導率との間には下記の式(2)が成り立つことが知られている(星河浩介、田中一郎、恵智裕、“高純度アルミニウムの精製技術と低温物性”、住友化学誌、住友化学株式会社、2013年、P.10-19)。
そこで、上記の測定で求めたRRRを用いて、各試料の熱伝導率(κ)を算出した。
κ=1÷(1.8×10-7×T2+1.1÷RRR÷T) (2)
ここで、T(K)は4.2Kとする。
各試料で算出した熱伝導率を表4に示す。また、熱伝導率が5000以上を優良(◎)、500超5000未満を良好(○)、500以下を不良(×)と分類して、表4の「評価」の欄に示した。
引張試験により、測定用試料の引張強度を調べた。
測定用試料から、JIS13B号引張試験片を作製し、JIS規格に準拠した引張試験機でJIS Z 2241:2011に基づいて求めた。各試料の引張強度の測定値を表4に示した。また、引張強度が100MPa以上を良好(○)、100MPa未満を不良(×)と分類して、表4の「評価」の欄に示した。
試料No.7は、第2金属層12を形成するアルミニウムの純度が99質量%(2N-Al)と極めて低いため、RRRおよび熱伝導率が極めて低かった。
試料No.9は、アルミニウム合金から成る第1金属層11が存在しないため、引張強度が低かった。
第1金属材料110および第2金属材料120の貼合せ面110b、120bを研磨して、異なる温度で熱間圧延して圧延接合(クラッディング)を行った。
実施例1の試料No.1と同様に準備した第1金属材料110(サイズ:2.0mm×125mm×190mm)と第2金属材料120(サイズ:1.0mm×120mm×190mm)について、貼合せ面110b、120bの全面のそれぞれを、市販のステンレス製ワイヤーブラシで長手方向に10往復こすって粗面化した試料と、市販の金属磨き剤を用いて長手方向に10往復して研磨した試料とを準備した。
各試料の貼合せ面110b、120bについて、レーザー顕微鏡を用いて、1.0×1.4mm角の範囲で算術平均粗さRa(JIS B 0601:2013)を測定した。測定は、各試料の中央付近で行った。測定したRaの値を表5に示す。
得られた試料(アルミニウムクラッド材)について、剥離試験を行った。剥離試験では、10mm×20mmのサイズに切り出した試料を、長手方向の中央付近(端部から10mmの位置)で90度に折り曲げ、その後に180度に戻す操作(これを「90度曲げ」と称する)を行う。同じ位置で90度曲げを10回繰り返した後に、第1金属層11と第2金属層12との間に剥離が生じたかどうかを目視で確認した。剥離が生じなかった場合を「完全接合(○)」とし、一部が剥離した場合を「一部剥離(△)」とし、完全に剥離した場合を「完全剥離(×)」と評価した。評価結果を表5に示す。
11 第1金属層
12、12a、12b 第2金属層
12x 第2金属層の表面
15、150 接合面
110 第1金属材料
110b 第1金属材料の貼合せ面
120 第2金属材料
120b 第2金属材料の貼合せ面
Claims (8)
- アルミニウム合金から成る第1金属層と、
純度99.999質量%以上の高純度アルミニウムから成り、前記第1金属層の少なくとも片面に接合された第2金属層と、を含み、
前記第1金属層の厚さt1は0.4mm~5.0mm、前記第2金属層の厚さt2は0.06mm~5.0mmであり、
引張強度が100MPa以上であるアルミニウムクラッド材。 - 前記第2金属層が、純度99.9998質量%以上の高純度アルミニウムから成る、請求項1に記載のアルミニウムクラッド材。
- 50K以下の温度環境下で使用される極低温環境用アルミニウムクラッド材である、請求項1または2に記載のアルミニウムクラッド材。
- 前記第2金属層の厚さt2に対する前記第1金属層の厚さt1の比が、t1:t2=2:1~10:1の範囲にある、請求項1~3のいずれか1項に記載のアルミニウムクラッド材。
- アルミニウム合金から成る第1金属層と、純度99.999質量%以上の高純度アルミニウムから成り、前記第1金属層の少なくとも片面に接合された第2金属層と、を含み、
引張強度が100MPa以上であるアルミニウムクラッド材の製造方法であって、
前記第1金属層の厚さt1は0.4mm~5.0mm、前記第2金属層の厚さt2は0.06mm~5.0mmであり、
前記アルミニウム合金から成る第1金属材料および前記高純度アルミニウムから成る第2金属材料の貼合せ面をそれぞれ研磨する研磨工程と、
前記研磨工程の後に、前記第1金属材料と、前記第2金属材料とを積層して圧延接合するクラッド工程と、
を含む、アルミニウムクラッド材の製造方法。 - 前記第2金属材料が、純度99.9998質量%以上の高純度アルミニウムから成る、請求項5に記載のアルミニウムクラッド材の製造方法。
- 前記研磨工程は、前記第1金属材料および前記第2金属材料の貼合せ面がそれぞれ表面粗さRa0.5μm以上3μm以下となるように研磨することを含む、請求項5または6に記載のアルミニウムクラッド材の製造方法。
- 前記第2金属層の厚さt2に対する前記第1金属層の厚さt1の比が、t1:t2=2:1~10:1の範囲にある、請求項5~7のいずれか1項に記載のアルミニウムクラッド材の製造方法。
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