JP2010174269A - アルミニウム部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 冷凍機、空気調和器、ヒートポンプ等の熱交換器用の、撥水性及び着霜防止性に優れるアルミニウム部材の製造方法およびそれを用いたフィンを提供する。
【解決手段】
撥水性及び着霜防止性に優れたアルミニウム部材を製造するに際し、アルミニウムよりイオン化傾向の小なる金属を、直接アルミニウム部材に接触させながら酸に浸漬して凹凸構造を形成し、次いで撥水性被膜を塗布することを特徴とする撥水性及び着霜防止性の優れたアルミニウム部材の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】
撥水性及び着霜防止性に優れたアルミニウム部材を製造するに際し、アルミニウムよりイオン化傾向の小なる金属を、直接アルミニウム部材に接触させながら酸に浸漬して凹凸構造を形成し、次いで撥水性被膜を塗布することを特徴とする撥水性及び着霜防止性の優れたアルミニウム部材の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金よりなる部材(以下、総称してアルミニウム部材という)の製造方法に関し、特に撥水性及び着霜防止性の優れたアルミニウム部材の製造方法に関する。当該アルミニウム部材は、冷暖房兼用タイプのルームエアコン等に組み込まれる熱交換器用フィンとして有用である。
従来、ルームエアコンの熱交換器用フィン材は、安価で成形性及び熱伝導性に優れていることから、アルミニウム及びアルミニウム合金製のフィンが採用されている。一般にこのフィン材には防食処理がされており冷房運転時にフィン表面で結露した水がフィン間に溜まって(ブリッジ現象)通風抵抗が大きくなり、冷房効率を低下させる、そのため、対策として、フィンの表面を親水性被膜で処理をし、フィン表面の濡れ性を良好にして、冷房効率を向上させている。
例えば、最近、冷暖房兼用型のルームエアコンが増加しており、この種のルームエアコンに使用されているヒートポンプ型の熱交換器は、夏期には、室内器が蒸発器となり、室外器が凝縮器となる。一方、冬期には、室内器が凝縮器となり、室外器が蒸発器となる。このような冷暖房兼用のルームエアコンにおいて、冬季に暖房運転を行う場合に、外気温度が低いと蒸発温度が低下し、室外側熱交換器のフィン表面で霜が発生しやすくなる。外気温が低い場合には特に、親水性被膜が付与されたフィン材の場合は、フィン表面の濡れ性が良好であるため、フィン全面に霜が発生しやすい。冬季に暖房運転中に室外器のフィン表面に霜が付着すると、霜の成長によりフィン間が閉塞するため、通風抵抗が増加する。また、着霜すると、室外側熱交換器の蒸発能力が低下し暖房能力が低下する。このため付着した霜又は霜が氷結した氷を除去するための除霜運転が必要になる。しかしながら、除霜運転が行われると、暖房運転が休止されたり暖房能力が低下したりするため、省エネの観点からも除霜運転の余分な電力を浪費する問題があった。
ここで、フィンへの着霜による能力低減を改善するために、フィン表面を撥水処理することにより、フィン表面に凝縮した結露水を成長させないように速やかにフィンから排除して良好な着霜防止性を向上させる方法が提案されている。このように、アルミニウムフィン材に対して撥水性を付与する場合、通常、撥水性塗料(純水接触角が90°以上)を塗布する方法があるが、一般的に撥水性塗料による被膜は、長期の撥水性能維持が劣り、また被膜の耐久性が劣るため、充分な着霜防止効果が得られないという問題があった。
この問題を改善すべく、先行文献としてフィンの表面にフッ素系の撥水性被膜を付与させた後、この被膜表面を粗面化することにより撥水性をより向上させる方法(特許文献1)、薬品処理によって表面に直接凹凸構造を付加し、その上に撥水被膜を付与する方法(特許文献2および特許文献3)、撥水塗料中に無機微粒子を混合することにより凹凸構造を形成させ撥水性を発現させる方法(特許文献4)、ベーマイト処理、クロム酸塩系化成被膜処理を施したフィン表面に撥水性膜を形成する方法(特許文献5)等が開示されている。
しかし、これらの従来技術には、下記のように種々の問題がある。即ち、フィンの表面にフッ素系の撥水性被膜を設けた後、この被膜表面を粗面化する方法(特許文献1)では、フッ素系被膜が耐久性に劣り、その上機械加工による粗面化では被膜が剥離しやすく、撥水性が大幅に低下するため、後加工による撥水性の均一な撥水性塗膜を得ることが極めて困難である。
フッ素系の特殊な被膜を付与する方法(特許文献3)では、プラズマ重合等の方法があるが、真空装置を用いたバッチ処理のために、生産性が低く高価な製造設備が必要で、経済的にコストが高くなる欠点がある。
また、凹凸面を形成するには塗料中に微粒子を混合させ、撥水被膜中に均一混合させて撥水性を発現させる方法(特許文献4)では、微粒子が偏析等により均一混合や塗布することが困難であり、ときには微粒子の沈降により凹凸構造が均一に形成されず、微粒子の添加量を増加させると、微粒子は塗膜内での結合力に寄与しないため被膜が脆弱で耐久性に劣る欠点があり、樹脂成分を増加させて微粒子を堅牢化させると逆に撥水性が低下する問題があった。
またクロム酸塩系化成被膜処理(特許文献5)においては、リン酸やクロムを原料に用いるため、廃液処理が必要で環境問題として好ましくない。
したがって、撥水性及び着霜防止性が優れたアルミニウム部材の製造方法であって、特別な設備を必要とせず、環境問題にも配慮した生産性のよいアルミニウム部材の製造方法が求められていた。
本発明者らは、かかる問題点に鑑み鋭意研究した結果、比較的簡単な方法で、アルミニウム表面に均一でかつ堅牢な凹凸構造が形成でき、当該凹凸部分に撥水性を付与することにより、撥水性及び着霜防止性が優れたアルミニウム部材が製造でき、熱交換器用フィン材等の部材として有用であることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
「発明1」
アルミニウムよりイオン化傾向の小なる金属を、直接アルミニウム材料に接触させながら、酸に浸漬して凹凸構造を有する膜を形成する工程(第一工程)と、この凹凸膜上に、撥水剤を塗布して、撥水性被膜を付与する工程(第二工程)を含むことを特徴とするアルミニウム部材の製造方法。
「発明2」
発明1に記載の酸が、塩酸、硫酸、硝酸、蓚酸または酢酸よりなる群の少なくとも一つであることを特徴とする上記の記載のアルミニウム部材の製造方法。
「発明3」
アルミニウムよりイオン化傾向の小なる金属が、亜鉛、錫、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、インジウム、タンタル、タングステン、レリウム、イリジウム、銅、銀、金、ルテニウム、白金、パラジウム、鉛、ビスマスよりなる群の少なくとも一つ、またはこれらの少なくとも1種類以上からなる合金であることを特徴とする上記のアルミニウム部材の製造方法。
「発明4」
発明1に記載の撥水性被膜が、シリコン系被膜、フッ素系被膜、またはそれらの混合物からなることを特徴とする上記の優れたアルミニウム部材の製造方法。
「発明5」
発明1に記載の第一工程において、凹凸構造をアルミ表面から0.1〜30μmの深さで形成することを特徴とするアルミニウム部材の製造方法。
「発明6」
発明1に記載の第二工程において、撥水性被膜の膜重量が0.1〜5g/m2の範囲になるように塗布することを特徴とするアルミニウム部材の製造方法。
「発明7」
発明1に記載のアルミニウム材料が、表面を粗面化処理して酸化アルミニウム被膜を除去したアルミニウム材料であることを特徴とする、上記のアルミニウム部材の製造方法。
「発明8」
発明1乃至発明6のいずれかに記載の方法で製造したアルミニウム部材を用いた熱交換器用フィン。
「発明1」
アルミニウムよりイオン化傾向の小なる金属を、直接アルミニウム材料に接触させながら、酸に浸漬して凹凸構造を有する膜を形成する工程(第一工程)と、この凹凸膜上に、撥水剤を塗布して、撥水性被膜を付与する工程(第二工程)を含むことを特徴とするアルミニウム部材の製造方法。
「発明2」
発明1に記載の酸が、塩酸、硫酸、硝酸、蓚酸または酢酸よりなる群の少なくとも一つであることを特徴とする上記の記載のアルミニウム部材の製造方法。
「発明3」
アルミニウムよりイオン化傾向の小なる金属が、亜鉛、錫、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、インジウム、タンタル、タングステン、レリウム、イリジウム、銅、銀、金、ルテニウム、白金、パラジウム、鉛、ビスマスよりなる群の少なくとも一つ、またはこれらの少なくとも1種類以上からなる合金であることを特徴とする上記のアルミニウム部材の製造方法。
「発明4」
発明1に記載の撥水性被膜が、シリコン系被膜、フッ素系被膜、またはそれらの混合物からなることを特徴とする上記の優れたアルミニウム部材の製造方法。
「発明5」
発明1に記載の第一工程において、凹凸構造をアルミ表面から0.1〜30μmの深さで形成することを特徴とするアルミニウム部材の製造方法。
「発明6」
発明1に記載の第二工程において、撥水性被膜の膜重量が0.1〜5g/m2の範囲になるように塗布することを特徴とするアルミニウム部材の製造方法。
「発明7」
発明1に記載のアルミニウム材料が、表面を粗面化処理して酸化アルミニウム被膜を除去したアルミニウム材料であることを特徴とする、上記のアルミニウム部材の製造方法。
「発明8」
発明1乃至発明6のいずれかに記載の方法で製造したアルミニウム部材を用いた熱交換器用フィン。
本発明によれば、比較的簡単な方法で、撥水性及び着霜防止性が優れたアルミニウム部材を低コストで製造することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で用いるアルミニウム材料は、99%以上の純アルミニウム(1000系)の他に、2000系、3000系,4000系,5000系,6000系,7000系及び8000系のアルミニウム合金も含み(以下、総称してアルミニウム材料という)、また形状も板状、線状、曲面状、パイプの内外面、ブロック体や熱交換器等の立体加工部品等にも任意の形状にも適用が可能である。
本発明に用いるアルミニウム材料は、表面に酸化アルミニウムの被膜が形成されていないものを用いる必要がある。一般に未処理のアルミニウム金属表面は、速やかに大気中の酸素分子と反応するため、表面に数nmの酸化物のバリアー層を形成している。このバリア層は、酸に対しても耐久性があり薬液処理に長時間を要するため、酸化被膜を除去する必要がある。表面を粗面化する前処理は、アルミニウム部材の表面の酸化アルミニウム被膜を除去するために必要であり、第一工程の反応を速やかに進行させるために有効である。
粗面化には、サンドブラスト、ワイヤー掛け、サンドペーパ等による機械的な粗面化処理等があるが、簡便にはサンドぺーパ研磨による機械加工等で表面を粗面化することができる。粗面度はサンドペーパの番手は特に制限はないが番手に係わらず、酸化アルミニウム被膜が除去されればよく、表面から数十nmを研磨すれば本目的は達成できる。例えば、サンドペーパの番手は#100〜3000まで使用できるが、特に#400〜800が好適である。#200より以下の粗目では表面の研磨傷が目立ち、商品価値を損ねる、また#1000以上は微細すぎて研磨に時間を要するため#400〜800が好適である。
本発明の前処理としての粗面化において、凹凸部の平均粗さ(Ra)は特に制約はないが、適度の深さの凹凸構造にした表面の粗面化は、平均粗さ約5μm前後に抑える程度が望ましい。Raが30μm以上の深い機械的粗面化では次工程での薬品処理時に最深部の浸食が激しく凹凸が均質化せず、部材の強度に影響する懸念がありまたアルミニウム部材の反射光で加工傷が肉眼で目立ち商品価値が劣る。また0.1μm未満では平滑すぎて次工程の薬品処理での反応が円滑に進みにくく、長時間の処理時間を要するばかりか、撥水処理工程での撥水剤の塗工量が少なく撥水性能が十分発現しない。従って上記の平均粗さ0.1〜30μmの範囲が好ましく、最適には、0.1〜10μmの範囲が好ましい。
機械的な粗面化は、アルミニウム部材の予備洗浄や脱脂及び精密洗浄も不要となり、簡便な切削屑の洗浄で充分である。これは製造工程の簡便化やコスト低減を図ることができる。
以上、機械的粗面化を説明してきたが、場合によっては、表面の活性化のためにスパッタエッチング、プラズマ照射の乾式処理でも可能であり、また、それらと機械的方法を組み合わせても良い。
本発明のアルミニウム部材の製造方法は、以下の2つの工程を含む。
第一工程:アルミニウムよりイオン化傾向の小なる金属を、アルミニウム材料と直接接触させながら、酸に浸漬して凹凸構造を有する膜を形成する工程(薬品処理工程ともいう)。
第二工程:第一工程で得られた凹凸膜上に、撥水剤を塗布して、撥水性被膜を付与する工程(撥水処理工程ともいう)。
以下、それぞれの工程について詳細に説明する。
第一工程は、アルミニウム材料にアルミニウム以外のイオン化傾向が小なる異種金属を直接接触させながら、酸等の薬品中に浸漬させる工程である。
接触させる異種金属としては、アルミニウムよりイオン化傾向の小なる金属が用いられる。具体的には、亜鉛、錫、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、インジウム、タンタル、タングステン、レリウム、イリジウム、銅、銀、金、ルテニウム、白金、パラジウム、鉛、ビスマス、またはこれらの少なくとも1種類以上からなる合金が適用可能である。なかでもアルミニウムに対しては特にニッケル、クロム、鉄、及びこれらを含むステンレス鋼が好適である。
この異種金属と接触させながら、酸に浸漬させる工程において、接触面では局部電池を形成してイオン化傾向の卑なるアルミニウムだけが選択的に浸食され特異的に数μmの凹凸を形成する。
この異種金属と接触させながら、酸に浸漬させる工程において、接触面では局部電池を形成してイオン化傾向の卑なるアルミニウムだけが選択的に浸食され特異的に数μmの凹凸を形成する。
通常、電解腐食と云われており、自然界でも多く散見されるが、この電解腐食を積極的に利用して、規則的なフラクタル凹凸構造を形成させる手段を用いて、アルミニウム部材と異種金属を接触させることにより接触面だけを選択的に凹凸形状を形成させ、その凹凸形状の表面に撥水被膜を付与させることにより、撥水性に優れ、着霜防止性能に優れるたアルミニウム部材が得られる。
通常のブラスト処理やサンドペーパー掛けのような機械研磨のみではV字型の擦過筋やバリ(毛羽立ち)のある表面積の少ない単調な凹凸構造になりやすい。しかし、この異種金属との接合における電解腐食による凹凸構造は、アルミニウム表面から数十μmの深さにわたり金属の結晶粒界が脱離した立方体のレプリカ構造(抜け殻)を形成し、凹凸が連続に結合し、機械的強度も保持した、表面積が処理前の10〜200倍の大きな堅牢な幾何学的フラクタルな凹凸構造が得られる。また、この構造の断面の最深部の深さが処理前の表面から1〜30μmであることを特徴としている。
また、異種金属との接着は、異種の金属を接合して(結束等)おればよく、ボルトによる固定や接着剤等による固定操作は何ら必要なく、異種金属と数mm以内の距離程度でも充分に電解腐食としての本目的は達成できる。
この方法は複雑な装置や形状でも適用でき、たとえば曲面や、パイプ内面でも、異種金属の板、粉末、短超繊維、ワイヤー等をアルミニウム部材に充填して接触させながら薬品処理するだけで充分に電解腐食は可能である。
薬品処理用として使用される、酸は、一般の工業製品が適用でき、酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、蓚酸、酢酸よりなる群の少なくとも1種が好適に用いられる。他の無機酸や有機酸でも可能であるが、中でも無機酸が有効で特に塩酸が好ましい。
また、用いる酸を溶液として使用する時の溶媒としては、アルコール、エーテル等の有機溶媒、水、またはそれらの混合溶媒の使用が可能であるが、特に水溶媒が好ましい。
用いる薬品の濃度は、例えば塩酸では、10〜30℃の温度範囲で、0.1〜2mol/lの濃度範囲で用いられるが、特に0.1〜0.5mol/lの範囲が好ましい。濃度が0.1mol/l未満だと希薄すぎて反応に時間を要し、また2mol/lを超える高濃度では局部腐食が生じやすく、均一な凹凸が形成しずらい。その他の酸においても、溶媒や薬品の種類により適宜濃度を調整して電解腐食を進行させることができる。
アルミニウム材料と異種金属を薬品に浸漬する時間は、薬品の濃度や温度にも依存するが、30分から60分が望ましい。時間が短すぎると反応が進行せず、アルミニウム材料表面に充分な凹凸構造を有する膜を形成できない。また、浸漬時間が長い場合は、反応が進行しすぎてアルミニウム表面の腐食しまい好ましくない。
薬品処理による凹凸被膜の作製方法は、特に限定するものではないが、処理液中に水素が発生するため、浸漬槽内に静置してもよいし、部材により複雑な形状では、振動、エアーレション、バブリング、攪拌等により水素の脱気を確保しつつ、薬液との接触機会を増大させたり、また薬液を加温してもよく、特に限定されない。また、処理後の廃液は単に中和すれば廃液処理も簡便であり大幅なコスト削減が期待される。
次に、第二工程について説明する。
第二工程は、第一工程で形成した凹凸構造の表面に撥水剤を塗布する工程である。該被膜をコーティングすることにより凹凸構造の表面にミクロの撥水性被膜が付与される。表面に撥水性を付与すれば見かけ純水接触角はますます撥水性が強くなり、初期の微細な水滴が付着かつ成長しづらく、超撥水性を発現する凹凸状の撥水被膜が得られる。
本発明で用いる撥水性被膜としては、シリコン系被膜、フッ素系被膜、またはこれらの混合物からなる被膜が挙げられる。
本発明で用いる撥水性被膜としては、シリコン系被膜、フッ素系被膜、またはこれらの混合物からなる被膜が挙げられる。
本発明で用いるフッ素系塗料としては、代表的なものとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)等があげられる。なかでもポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)のディスパージョンが特に好ましい。
これらのフッ素系塗料は、ディスパージョンのまま適宜濃度を調製して、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法、印刷法、フローコート法、刷毛塗り等で塗布してもよいし、微粉体の場合は適宜フッ素系界面活性剤等で塗料化して塗布液にして塗布したり、または静電塗装等で粉体のまま塗装することもできる。その他、流動浸漬塗装、吹きつけ法、回転ライニング法等で塗装できる。塗装後はフッ素樹脂の融点に応じて所定の温度で焼き付けて堅牢な撥水性被膜を形成する。上記凹凸構造のアルミニウム部材の表面に末端がCF3基を有した塗料を塗布した場合は、マクロの凹凸構造の撥水性と、ミクロのCF3のフラクタル構造による相乗効果で極めて高い撥水性を発現する。
また、シリコン系塗料としては、疎水基であるメチル基(−CH3)を持つもの、またはパーフロロアルキル基{(−CF2)n−CF3}を有するもの、または構造式:CF3(CF2)n(CH2)2Si(OR)3(ここで:n=2〜10、R=CH3,C2H5、C3H7,C4H9)で示すフルオロアルキルシラン系塗料があげられるが、特に含フッ素の化合物が撥水性に優れている。
例えば構造式が、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OC2H5)3のフルオロアルキルシランが好ましく、なかでもCF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3のフルオロアルキルシランが好適である。
これらを適宜濃度調整をして水溶液中で酸触媒を添加して加水分解をさせたものを塗布液として施工し、150℃で10〜60分となるようにアルミニウム部材を焼き付けて撥水被膜を得ことができる。
いずれの撥水塗料も上記の塗装により、末端がCF3化された被覆層が、凹凸形状のアルミニウム材料表面に形成されてなるもので、マクロの凹凸と末端がCF3化されたミクロの凹凸の相乗効果による被覆層の形成によって、材料表面は撥水性に優れ、純水接触角は140〜150度を示す。通常のポリテトラフルオロエチレン(PTFE:純水接触角118度)単体の表面よりもはるかに優れた超撥水性の表面が得られる。
このような優れた特性が得られる理由は被覆層の表面がCF3基の多い高度にフッ素化された表面エネルギーの小さな表面状態を有すると共に、これらの被覆層が粗面化された基材表面に基材の凹凸が失われないように薄く均一に形成されているため、凹凸によって水が接触し難くなる効果とが重なりあって、より一層水滴等が付着し難い超撥水性の表面状態となるためである。そして、このような超撥水性の表面状態であるため、表面が多少傷つけられ基材の金属表面が露出した場合でも着雪防止機能を長期に渡って維持することができる。
第二工程の凹凸構造の上に撥水剤を塗布する工程において、造膜する撥水性被膜の単位面積当たりの重量は0.1〜5g/m2の範囲にあることが必要である。この撥水性被膜の単位面積当たりの重量が0.1g/m2未満の場合には充分な被覆がなされず、撥水性不良の箇所が生じるために、アルミニウム部材表面において撥水性の均一性がなくなる。一方、上記撥水性被膜重量が5g/m2を超える場合には、凹凸被膜中に微粉末の塊として凝縮したり、クラックが入って非撥水性のアルミニウムが露出するようになり、結果として十分な撥水性及び着霜防止性が得られなくなり好ましくない。
以下本発明を実施する際の具体的内容について、アルミニウム材料としてJIS 1100H26のアルミニウム板を、異種金属としてニッケル板、撥水剤として四フッ化エチレン樹脂を使用した場合を例に説明する。
本発明において、アルミニウム板(サイズ10cm×10cm−0.2mm)の前処理として、表面を耐水サンドペーパにより、数十回均一に研磨処理した。純水で洗浄後、機械的方法により、表面の酸化アルミニウムの不動体被膜を除去するとアルミニウム部材の表面が粗面化されかつ酸化被膜が除去されるため一時的に親水性になることより次の工程の薬品処理に対して濡れ性がより向上する。
次いで、第一工程の薬品処理を行う。まず、0.5mol/lの塩酸水溶液を500ml調製して、1Lの水槽に移液する。ニッケル板とアルミニウム材料を接触させバンドで固定し、上記塩酸溶液(液温10〜30℃)に浸漬させる。浸漬後数分でアルミニウムと酸の反応が進行し、アルミニウム表面より水素の小さい泡が発生し、同時にアルミニウムが塩酸溶液に溶解する。約60分間浸漬した後、水槽から引き上げ、イオン交換水で洗浄して、次いで60℃に乾燥させる。この第一工程により、外観は全面光沢のない暗灰色を呈したアルミニウム板が得られる。このアルミニウム板の表面をSEMで観察すると深さ15ミクロンの凹凸構造にエッチングされていることが確認できる。また、当該アルミニウム板の接触角を測定すると、水滴は瞬時に広がって0度であり、優れた親水性を示す。
さらに第二工程の撥水処理を行う。撥水剤として末端がCF3 化された四フッ化エチレン樹脂の微粉末を界面活性剤等を用いて約2%濃度の水溶液に調製して、ボールミルで2時間程度分散させることにより、撥水塗布液が得られる。
この分散液をスプレー法により、上記の凹凸形状のアルミニウム部材に均一に塗布して、120℃−10分乾燥後、300℃〜350℃程度で10分焼き付けすることにより被膜が得られる。ここで用いられる四フッ化エチレン樹脂としては、粗面化された基材表面の凹凸をそのまま保つことが出来るよう薄く被覆できる微細な粉末のものが好ましく、例えばセントラル硝子製の商品名セフラルルーブI(粒径2μm、分子量8400、末端までCF3 化)、商品名ネオフロン2E2(ダイキン製PFA塗料)などがあげられる。
得られたアルミニウム部材の撥水性能は、純水の接触角で評価することができる。純水接触角とは、アルミニウム部材表面に滴下した水滴(気−液−固)の接線とアルミニウム水平面とのなす角のことである。すなわち、撥水性はアルミニウム部材の表面と水滴との接触面における水滴の接線となす角として評価できる。撥水性が大きいほど接触角が大きくなる。一般には着霜防止性能を発現させるには接触角が140°以上あれば良い。
後述する実施例に示すように、本発明の製造方法により製造したアルミニウム部材は、140°〜162°の水接触角を示す。したがって、被膜の撥水性の向上に伴い、水切れ性が向上し、同時に凝縮水滴の成長を抑制するために着霜防止機能を向上が向上することはデータ的にも裏づけられる。このような特性を有する部材は、熱交換器用フィンとして有用であるのはいうまでもない。
本発明は、主として熱交換器用のフィン材において、被膜の撥水性を向上させ、着霜防止機能を向上させることを目的としているが、水切れ性及び撥水性を必要とする熱交換器以外の他の用途にも適用可能である。
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、係る実施例に限定されるものではない。なお、本実施例ではアルミニウム材料としてJIS1100H26のアルミニウム板(板厚0.15mm、10cm×10cm)を用いた。
「実施例1」
アルミニウム板を前処理として#400サンドペーパで表裏とも粗面化して表面の酸化被膜を除去したところ表面粗さ8±0.6μmとなった。酸化被膜の除去に伴い、表面は親水性となった。
アルミニウム板を前処理として#400サンドペーパで表裏とも粗面化して表面の酸化被膜を除去したところ表面粗さ8±0.6μmとなった。酸化被膜の除去に伴い、表面は親水性となった。
このアルミニウム板をニッケル板(板厚0.1mm、10cm×10cm)で両面からはさみ、液温25℃で濃度0.5mol/l−HCl水溶液中に60分間浸漬した。表面からアルミニウムの溶出量は1.2g/m2であった。SEM写真と吸水率より空隙率は43%であった。
浸漬後水洗した後、撥水剤としてセフラルルーブI(セントラル硝子製PTFEオリゴマー塗料:表中、A;4フッ化エチレン系撥水性塗料)を2%水溶液を調製してディップ法で塗布し、340℃で20分間焼き付けした。
撥水性の評価は純水の接触角を測定した。接触角測定は協和界面科学株式会社製接触角計(CA−A型)を使用し、2.5μリットルの水滴を滴下させて接触角を測定した。その結果、接触角は154°を示し、水滴は5°以内の傾斜で転落した。
「実施例2〜6」
異種金属、粗面化、薬剤、濃度、浸漬時間、撥水剤等の条件を変更して、実施例1と同様な実験を行った。各実施例の条件および評価結果を下記表1に示す。
異種金属、粗面化、薬剤、濃度、浸漬時間、撥水剤等の条件を変更して、実施例1と同様な実験を行った。各実施例の条件および評価結果を下記表1に示す。
「比較例1〜6」
異種金属、粗面化、薬剤、濃度、浸漬時間、撥水剤等の条件を変更して、実施例1と同様な実験を行った。各実施例の条件および評価結果を下記表1に示す。
異種金属、粗面化、薬剤、濃度、浸漬時間、撥水剤等の条件を変更して、実施例1と同様な実験を行った。各実施例の条件および評価結果を下記表1に示す。
比較例1:異種金属を用いない例
#800のサンドペーパーでアルミニウム板の粗面化後、異種金属を用いないで、塩酸溶液に浸漬処理した。60分処理してもほとんど電解腐食は起こらず、凹凸構造が形成されないため、撥水処理後の接触角が84°で充分な撥水性能は得られなかった。
#800のサンドペーパーでアルミニウム板の粗面化後、異種金属を用いないで、塩酸溶液に浸漬処理した。60分処理してもほとんど電解腐食は起こらず、凹凸構造が形成されないため、撥水処理後の接触角が84°で充分な撥水性能は得られなかった。
比較例2:アルミニウム板の粗面化処理を行わず、酸化被膜がついたアルミニウム板を使用した例
前処理のアルミニウム板の粗面化処理をせず、異種金属のニッケルをはさんで、塩酸溶液に浸漬した。表面はほとんど酸化アルミの被膜のままで、凹凸構造が形成されていなかった。撥水処理後の接触角は、92°で、充分な撥水性能は得られなかった。
前処理のアルミニウム板の粗面化処理をせず、異種金属のニッケルをはさんで、塩酸溶液に浸漬した。表面はほとんど酸化アルミの被膜のままで、凹凸構造が形成されていなかった。撥水処理後の接触角は、92°で、充分な撥水性能は得られなかった。
比較例3:薬品処理で酸の濃度を希薄(0.05mol/l)にした例
#100のサンドペーパーでアルミニウム板の粗面化処理をしたのち、異種金属として鉄を用い、薬品処理で硝酸溶液(濃度0.05mol/l)に浸漬した。電解腐食の反応が十分に進まず、60分浸漬でも凹凸構造を形成しなかった。撥水処理後の接触角は、102°で、充分な撥水性能は得られなかった。
#100のサンドペーパーでアルミニウム板の粗面化処理をしたのち、異種金属として鉄を用い、薬品処理で硝酸溶液(濃度0.05mol/l)に浸漬した。電解腐食の反応が十分に進まず、60分浸漬でも凹凸構造を形成しなかった。撥水処理後の接触角は、102°で、充分な撥水性能は得られなかった。
比較例4:薬品処理の浸漬時間を短時間(10分)にした例
#1500のサンドペーパーでアルミニウム板の粗面化処理をしたのち、異種金属としてステンレス鋼を用い、硫酸溶液(0.2mol/l)に10分浸漬した。電解腐食の反応が十分に進まず、凹凸構造をほとんど形成しなかった。撥水処理後の接触角は、85°で、充分な撥水性能は得られなかった。
#1500のサンドペーパーでアルミニウム板の粗面化処理をしたのち、異種金属としてステンレス鋼を用い、硫酸溶液(0.2mol/l)に10分浸漬した。電解腐食の反応が十分に進まず、凹凸構造をほとんど形成しなかった。撥水処理後の接触角は、85°で、充分な撥水性能は得られなかった。
比較例5:異種金属としてマグネシウム(アルミニウムよりイオン化傾向が大)を接合させた例
#600のサンドペーパーでアルミニウム板の粗面化処理をしたのち、異種金属としてマグネシウム(アルミニウムよりイオン化傾向が大)を接合させた。反応が進行せず、凹凸構造の形成は認められなかった。撥水処理後の接触角は、82°で、充分な撥水性能は得られなかった。
#600のサンドペーパーでアルミニウム板の粗面化処理をしたのち、異種金属としてマグネシウム(アルミニウムよりイオン化傾向が大)を接合させた。反応が進行せず、凹凸構造の形成は認められなかった。撥水処理後の接触角は、82°で、充分な撥水性能は得られなかった。
比較例6:未処理のアルミニウム板に撥水処理のみを行った例
粗面化処理および薬品処理をしていないアルミニウム板に、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体撥水性塗料(表中、C;)で撥水処理を行った。初期の接触角は86°であったが、数回の摩擦試験で簡単に塗膜が剥離してしまい、撥水性は79°に低下した。
粗面化処理および薬品処理をしていないアルミニウム板に、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体撥水性塗料(表中、C;)で撥水処理を行った。初期の接触角は86°であったが、数回の摩擦試験で簡単に塗膜が剥離してしまい、撥水性は79°に低下した。
これらの知見より、アルミニウム板の酸化被膜の除去のために前処理として機械加工の粗面化が有効であり、酸化被膜が除去されたアルミニウム板とイオン化傾向の小なる異なる金属を接触させながら薬品処理をした場合(第一工程)において、十分な凹凸構造を有する膜が形成され、その後の撥水処理(第二工程)によって、充分な撥水性能を有する撥水被膜を有するアルミニウム部材が得られることがわかった。
本発明のアルミニウム部材は、撥水性及び着霜防止性に優れており、冷暖房兼用タイプのルームエアコン等に組み込まれる熱交換器用フィンとして有用である。
Claims (8)
- アルミニウムよりイオン化傾向の小なる金属を、直接アルミニウム材料に接触させながら、酸に浸漬して凹凸構造を有する膜を形成する工程(第一工程)と、この凹凸膜上に、撥水剤を塗布して、撥水性被膜を付与する工程(第二工程)を含むことを特徴とするアルミニウム部材の製造方法。
- 請求項1に記載の酸が、塩酸、硫酸、硝酸、蓚酸または酢酸よりなる群の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム部材の製造方法。
- アルミニウムよりイオン化傾向の小なる金属が、亜鉛、錫、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、インジウム、タンタル、タングステン、レリウム、イリジウム、銅、銀、金、ルテニウム、白金、パラジウム、鉛、ビスマスよりなる群の少なくとも一つ、またはこれらの少なくとも1種類以上からなる合金であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム部材の製造方法。
- 請求項1に記載の撥水性被膜が、シリコン系被膜、フッ素系被膜、またはそれらの混合物からなることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム部材の製造方法。
- 請求項1に記載の第一工程において、凹凸構造をアルミ表面から0.1〜30μmの深さで形成することを特徴とするアルミニウム部材の製造方法。
- 請求項1に記載の第二工程において、撥水性被膜の膜重量が0.1〜5g/m2の範囲になるように塗布することを特徴とするアルミニウム部材の製造方法。
- 請求項1に記載のアルミニウム材料が、表面を粗面化処理して酸化アルミニウム被膜を除去したアルミニウム板であることを特徴とする、請求項1記載のアルミニウム部材の製造方法。
- 請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の方法で製造したアルミニウム部材を用いた熱交換器用フィン。
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