JP2010270952A - 撥水性アルミニウム部材の製造方法 - Google Patents

撥水性アルミニウム部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 冷凍機、空気調和器、ヒートポンプ等の熱交換器用の、撥水性及び着霜防止性に優れるアルミニウム部材の製造方法およびそれを用いたフィンを提供する。
【解決手段】
第1工程:アルミニウムもしくはその合金を、水酸化リチウムを含む塩基と水と有機溶媒とを混合した塩基性混合溶液で処理することにより、アルミニウムもしくはその合金の表層部の少なくとも一部に、網目状多孔質の細孔を形成することを特徴とする網目状多孔質構造体を製造する工程。
第2工程:上記網目状多孔質構造体上に、撥水性被膜を付与する工程。
【選択図】なし

Description

本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金よりなる部材(以下、総称してアルミニウム部材という)の製造方法に関し、特に撥水性及び着霜防止性に優れた撥水性アルミニウム部材の製造方法および当該部材に関する。当該アルミニウム部材は、空調機器、エアコン、冷凍機等の熱交換機フィンとして有用である。
従来、空調機器、エアコン、冷凍機の熱交換器用フィン材は、安価で加工性性及び熱伝導性に優れていることから、アルミニウム及びアルミニウム合金が用いられている。
近年このフィン材は環境問題が叫ばれるなかで、ますます小型化、高性能化が求められており、そのためフィンピッチもより狭隘化されるために冷却運転時にフィン表面で凝縮した水がフィン間に滞留して(ブリッジ現象)通風抵抗が大きくなり、冷却効率を著しく低下させる問題があった。その対策として、フィンの表面を撥水処理してフィン表面に凝縮水を滞留させない方法が提案されている。
例えば、最近、ヒートポンプ型の熱交換器は、室外機側の熱交換器のフィン表面で霜が発生しやすくなる。室外機器のフィン表面に霜が付着すると、霜の成長によりやがて氷結してフィン表面の熱伝導率が著しい低下をもたらし、さらにフィン間隙が閉塞するため、通風抵抗が増加することにより熱交換能力が低下する。このため付着した霜または氷を除去するために除霜運転により氷を溶解させている。しかしながら、除霜運転が行われると、熱交換器を加熱させる必要があり省エネの観点からも除霜運転の余分な電力を浪費する問題があった。
ここで、フィンへの着霜による能力低減を改善するために、フィン表面を撥水処理することにより、フィン表面に凝縮した凝縮水を成長させないように速やかにフィンから排除して着霜防止法が提案されている。このように、アルミニウムフィン材に対して撥水性を付与する場合、通常、撥水性塗料(純水接触角が90°以上)を塗布する方法があるが、一般的に撥水性塗料による被膜は、長期の撥水性能維持が劣り、また被膜の耐久性が劣るため、充分な着霜防止効果が得られないという問題があった。
この問題を改善すべく、先行文献としてフィンの表面にフッ素系の撥水性被膜を付与させた後、この被膜表面を粗面化することにより撥水性をより向上させる方法(特許文献1)、薬品処理によって表面に直接網目状多孔質構造を付加し、その上に撥水被膜を付与する方法(特許文献2および特許文献3)、撥水塗料中に無機微粒子を混合することにより網目状多孔質構造を形成させ撥水性を発現させる方法(特許文献4)、ベーマイト処理、クロム酸塩系化成被膜処理を施したフィン表面に撥水性膜を形成する方法(特許文献5)等が開示されている。
特開平3−45893号公報 特開平6−079820号公報 特開平10−096599号公報 特開平5−222339号公報 特開平5−223481号公報
しかし、これらの従来技術には、下記のように種々の問題がある。即ち、フィンの表面にフッ素系の撥水性被膜を設けた後、この被膜表面を粗面化する方法(特許文献1)では、フッ素系被膜が耐久性に劣り、その上機械加工による粗面化では被膜が剥離しやすく、撥水性が大幅に低下するため、後加工による撥水性の均一な撥水性塗膜を得ることが極めて困難である。
フッ素系の特殊な被膜を付与する方法(特許文献3)では、プラズマ重合等の方法があるが、真空装置を用いたバッチ処理のために、生産性が低く高価な製造設備が必要で、経済的にコストが高くなる欠点がある。
また、網目状多孔質面を形成するには塗料中に微粒子を混合させ、撥水被膜中に均一混合させて撥水性を発現させる方法(特許文献4)では、微粒子が偏析等により均一混合や塗布することが困難であり、ときには微粒子の沈降により網目状多孔質構造が均一に形成されず、微粒子の添加量を増加させると、微粒子は塗膜内での結合力に寄与しないため被膜が脆弱で耐久性に劣る欠点があり、樹脂成分を増加させて微粒子を堅牢化させると逆に撥水性が低下する問題があった。
またクロム酸塩系化成被膜処理(特許文献5)においては、リン酸やクロムを原料に用いるため、廃液処理が必要で環境問題として好ましくない。
したがって、撥水性及び着霜防止性が優れたアルミニウム部材の製造方法であって、特別な設備を必要とせず、環境問題にも配慮した生産性のよい撥水性アルミニウム部材の製造方法が求められていた。
本発明者らは、かかる問題点に鑑み鋭意研究した結果、比較的簡単な方法で、まずアルミニウム表面を塩基性溶液で処理し、均一でかつ堅牢な網目状多孔質構造が形成される。その表面の微細な凹凸構造を利用して、次に当該網目状多孔質部分に撥水性被膜を付与することにより、撥水性及び着霜防止性が優れた撥水性アルミニウム部材が製造でき、熱交換器用フィン材等の部材として有用であることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[発明1]以下の2工程を含むことを特徴とする撥水性アルミニウム部材の製造方法。
第1工程:アルミニウムもしくはその合金を、水酸化リチウムを含む塩基と水と有機溶媒とを混合した塩基性混合溶液で処理することにより、アルミニウムもしくはその合金の表層部の少なくとも一部に、網目状多孔質の細孔を形成することを特徴とする網目状多孔質構造体を製造する工程。
第2工程:上記網目状多孔質構造体上に、撥水性被膜を付与する工程。
[発明2] 第1工程において、塩基性混合溶液の表面張力が、18〜60mN/mであることを特徴とする発明1に記載の製造方法。
[発明3]第1工程において、塩基性混合溶液中の有機溶媒が、アルコール系、ニトリル系、ケトン系、エステル系、エーテル系、スルホキシド系、アミド系、グリコール系、芳香族系もしくは、含フッ素アルコール系の溶媒の少なくとも一種である発明1または発明2に記載の製造方法。
[発明4] 第1工程において、塩基性混合溶液のpHが、9.0〜13.5の範囲であることを特徴とする発明1乃至発明3のいずれか1項に記載の製造方法。
[発明5] 第1工程において、アルミ表面から0.1〜30μmの深さの網目状多孔質構造を有することを特徴とする発明1乃至発明4のいずれか1項に記載の製造方法。
[発明6] 第2工程において、撥水性被膜が、シリコン系被膜、フッ素系被膜、またはそれらの混合物からなることを特徴とする発明1に記載の製造方法。
[発明7] 第2工程において、撥水性被膜の膜重量が0.1〜10g/mの範囲になるように塗布することを特徴とする発明1または発明6に記載の製造方法。
[発明8] 発明1乃至発明7のいずれかに記載の方法で製造した撥水性アルミニウム部材。
[発明9] 発明8に記載の撥水性アルミニウム部材を用いた熱交換器用フィン。
本発明によれば、比較的簡単な方法で、撥水性及び着霜防止性が優れたアルミニウム部材を低コストで製造することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のアルミニウム部材の製造方法は、以下の2つの工程を含む。
第1工程:アルミニウムもしくはその合金部材を、水酸化リチウムを含む塩基と水と有機溶媒とを混合した塩基性混合溶液で表面処理することにより、アルミニウムもしくはその合金部材の表層部の少なくとも一部に、網目状多孔質の細孔を形成することを特徴とする網目状多孔質構造体を製造する工程。
第2工程:第1工程で得られた網目状多孔質構造体上に、撥水剤を処理して、撥水性被膜を付与する工程(撥水処理工程ともいう)。
以下、それぞれの工程について詳細に説明する。
第1工程で製造する網目状多孔質構造体は、アルミニウム系材料を対象とし、その表面の少なくとも一部に網目状微細多孔質の細孔を生成させたものである。本発明の対象となるアルミニウム系部材は、純度99.9%以上の純アルミニウムおよび各種のアルミニウム合金である。上記アルミニウム合金としては、具体的には、A1050,A1070,A1080,A1100,A1200等のような微量のSi,Fe,Cu,Mn,Mg等を含む合金、A2014,A2017,A2024等のような特にCuを多く含む合金、A5052,A5083,A5154のような特にMgを多く含む合金、A7075,A7N01等のような特にZnを多く含む合金、ADC12等のような多量のSiを含むダイキャスト用合金等、各種の合金があげられる。上記アルミニウム等は、その形状等を問わない。アルミニウム箔、インゴット、プレート、パイプ、アルミニウム繊維、これらのアルミニウム等からなる中間製品,アルミニウム等からなる完成品の全てが本発明のアルミニウム等の範疇に含まれる。
本発明のアルミニウム系網目状多孔質構造体は、水酸化リチウムを含む塩基と水と有機溶媒とを混合した塩基性混合溶液でアルミニウム系材料を処理し、アルミニウム系材料の表面の少なくとも一部に網目状多孔質構造体を形成させることにより製造できる。
ここで、本発明でいう「溶液」とは溶質が溶媒に完全に溶解していることをいい、溶質が溶媒に分散しているものや懸濁しているものは含まない。また、当該溶媒が水と有機溶媒の混合溶媒である場合、混合溶媒は分離することなく均一であるものとする。
少なくとも水酸化リチウムと水と有機溶媒を混合した塩基性混合溶液の調製において、水酸化リチウム等の塩基は溶質に完全に溶解していることが必須である。当該塩基性混合溶液中の溶媒は、水と有機溶媒との混合溶媒であるが、当該有機溶媒としては通常は後述する親水性溶媒が用いられる。
混合溶媒の表面張力を調整することにより、後述のようにアルミニウム系材料の表面との濡れ性が改善される為、アルミニウム表面と水酸化リチウムの反応が速やかに進行する。かかる表面張力は、18〜60mN/mの範囲であり、20〜55mN/mが好ましく、20〜50mN/mがより好ましい。水の表面張力が20℃において72mN/mであるが、有機溶媒を添加することにより表面張力を小さくすることができる。18mN/mよりも小さい場合は、アルミニウム表面への濡れ性は優れるものの、低表面張力の有機溶媒の含有量が多くなり水酸化リチウムが溶解しないため好ましくない。また、表面張力が50mN/mよりも大きくなる場合は、アルミニウム表面への濡れ性が悪くなるため好ましくない。
塩基性混合溶液を構成する混合溶媒において、上記の表面張力を与える範囲に入っていれば特に問題はないが、実質的に混合溶媒を調製するための目安として、有機溶媒と水との混合比は、容量比で、有機溶剤/水:90/10〜10/90が好ましく、なかでも70/30〜30/70が特に好ましい。
上記塩基性混合溶液は、(1)溶質が溶媒に溶解していること、および、(2)塩基性混合溶液を構成する混合溶媒の表面張力が上記範囲に入っている、ならば調製方法は特に限定されないが、通常、水酸化リチウムを含む溶液を調製後、有機溶媒を添加して調製する方法が用いられる。塩基性混合溶液の場合と同様、水酸化リチウムを含む塩基性溶液は、水酸化リチウム等の溶質を溶解している必要があり、溶媒は「水単独」か「水と親水性有機溶媒との混合」にするのが良い。
すなわち、塩基性混合溶液の調整方法としては、
「1」水酸化リチウム等の溶質を水に溶解させて塩基性溶液を調製後、次いで親水性有機溶媒を添加して調製する方法
「2」水酸化リチウム等の溶質に「水と親水性有機溶媒の混合」を添加して溶解させ塩基性溶液を調製後、次いで同一または他の有機溶媒を添加する方法
が挙げられるが、通常は「1」の方法が好適に用いられる。
前記親水性溶媒としては、炭素数1〜7のアルコール系、ニトリル系、ケトン系、エーテル系、スルホキシド、アミド系、エステル系、グリコール系の溶媒が好適に用いられる。かかる溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、プロピロニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、エチレングリコール、プロピレングリコール等があげられるがこれらに限定されない。上記の親水性溶媒のなかでも、入手の関係でメタノール、エタノールが特に好ましい。なお、これらの溶媒は1種又は2種以上を混合して用いることができる。
次いで、上記塩基性溶液にさらに有機溶媒を混合して塩基性混合溶液の調製を行うが、塩基性溶液と有機溶剤との混合によって、水酸化リチウム等の溶質が析出しないことが重要である。塩基性溶液の溶媒が水単独であった場合は、使用する有機溶媒は、上記親水性溶媒が好適に用いられる。
上記塩基性溶液の溶媒が、「水と親水性有機溶媒との混合」であった場合、有機溶媒として、上記の親水性有機溶媒中から更に同種あるいは別の親水性有機溶媒を添加しても良いが、アルミニウム系材料表面への更なる濡れ性の改善を目的として、芳香族系、含フッ素アルコール系の溶剤を用いることができる。かかる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、これらの溶剤は1種又は2種以上を混合して用いることができる。
適切な反応をさせるためには、塩基性混合溶液のpHは、pH9.0〜pH13.5の範囲であることが望ましい。pH9.0未満では反応が進行せず、pHが13.5を超えると被膜が激しく侵食されたり、網目状多孔質構造が破壊されて好ましくない。
上記混合溶液において、かかるpHを与える溶質の濃度は、塩基性混合液を構成する混合溶媒に対する水酸化リチウム等の塩基の溶解度の違いに依存するので一概には規定できないが、0.5〜5重量%が好ましく1.0〜3.5%とするのが特に好ましい。0.5重量%未満では、反応不足となり、反対に5重量%を超えると被膜が激しく侵食されたり、網目状多孔質構造が破壊されて生じて好ましくない。
混合溶液が有機溶剤を全く含まない水溶液(表面張力 約72mN/m)である場合は、アルミニウム系材料の表面が撥水性であるために濡れ性が悪くなり、場合によっては塩基性溶液をはじいてしまうため均一な反応が進行しにくくなり好ましくない。また、塩基性水溶液の場合は、アルミニウム系材料との反応が進みにくいという欠点があり、反応が進行するまで数十分の誘導時間を要する。これはアルミニウムの表面に存在する数nmの酸化アルミニウム被膜が不動態として働くためと考えられる。
アルミニウム系材料の表面の撥水性部分(酸化アルミニウム被膜)を除去するには、一般には脱脂洗浄や、サンドペーパー掛け、サンドブラスト掛け、アーク照射、プラズマ処理等の表面活性処理を行うが、表面活性処理時のムラにより均一に処理されない場合がある。本発明の製造方法では、有機溶媒を用いて混合溶液の表面張力を18〜60mN/mに調整することにより、アルミニウム表面との濡れ性が改善されるため、表面処理時のムラに関係なく均一に反応させることが可能である。さらに、速やかに反応が進行するため、30秒〜10分でアルミニウム材料の表面に均一な網目状多孔質構造を形成したアルミニウム系部材が製造できる。
上記のように、第一工程の処理前にアルミニウム材料の脱脂洗浄や表面活性処理を行ってもよいが、作業が煩雑となるため工業的な方法ではない。本発明の製造方法は、水酸化リチウムを含む塩基性混合溶液がある程度の脱脂力を有しているため、脱脂洗浄や表面活性処理を省略することができる優れた方法である。
上記混合溶液の調製において、pHが9.0〜13.5の範囲をとる限りにおいては、溶質として水酸化リチウムの他にアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩をさらに添加することができる。用いるアルカリ金属塩としては、水酸化ナトリウム,水酸化リチウム,水酸化カリウム,水酸化ルビジウム,水酸化セシウム等の水酸化物があげられる。また、アルカリ土類金属塩としては、水酸化ベリリウム,水酸化マグネシウム,水酸化カルシウム,水酸化ストロンチウム,水酸化バリウム等の水酸化物があげられる。アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩によって、溶媒への溶解度、塩基の強さが異なるため、一概には規定できないが、混合溶液中に含まれる溶質である「水酸化リチウムと他のアルカリ金属塩」もしくは「水酸化リチウムとアルカリ土類金属塩」の濃度は、水酸化リチウムを最低限0.5質量%含み且つトータルで「0.5より大きく5重量%以下」とするのが望ましい。この範囲内において、「水酸化リチウムと他のアルカリ金属塩」、または「水酸化リチウムとアルカリ土類金属塩」の混合割合を適宜調整することにより、pHの範囲を9.0〜13.5に調製することができる。0.5重量%以下では、反応不足となり、反対に5重量%を超えると被膜が激しく侵食されまた微細孔が破壊されて好ましくない。特に、塩基性混合溶液の濃度は1.0〜3.5%にするのが好適である。
他のアルカリ金属塩もしくはアルカリ金属塩を更に添加して用いる場合の調製方法については、水酸化リチウム単独の場合に準じて行うことができる。
本発明の網目状多孔質構造体の製造方法において、アルミニウム系材料を塩基性混合溶液で処理するにあたり、アルミニウム系材料を当該塩基性混合溶液と接触させる必要がある。接触させる方法は、特に限定されないが、当該塩基性混合溶液をスプレー等で吹き付ける方法、シリンジ等で滴下する方法、塩基性混合溶液の処理浴の中に浸漬する方法が挙げられるが、処理浴に浸漬する方法が好適に用いられる。処理浴への浸漬時間は、アルミニウム系材料の種類,形状,寸法、および塩基性水溶液の濃度,組成,浴温等に応じて適当な時間を選べばよく、通常は30秒〜15分に設定される。また、浴温についても、浸漬時間との兼ね合いにより、適当な温度に設定すればよいが、通常は、塩基性溶液は、常温〜50℃程度に設定され、より好適には、20〜40℃に設定される。上記温度範囲よりも低いと、反応の進行に要する時間が非常に長くなり、反対に高いと、反応が速くなりすぎて、被膜が激しく侵食されたり、網目状多孔質構造が破壊されたり、表面が不均一になりやすく好ましくない。
アルミニウム材料を浸漬させると、アルミニウムと水酸化リチウムの反応が進行し、浸漬後30秒〜5分でアルミニウム材料表面から微細な水素発泡が観察される。目安として発泡してから30秒〜5分の時間浸漬させることにより適度な反応を行わせることができる。
上記化学的処理において、処理浴中に浸漬した後に乾燥処理することが好ましい。乾燥処理は、通常は常温でもよいし、または熱風で加熱乾燥してもよい。また乾燥後にアルミニウムの基材をある程度の温度(100〜350℃程度)まで加熱することも可能であり、特に限定されることなく各種の方法が行われる。この乾燥または加熱乾燥により、溶媒である親水性有機溶剤と水の混合溶媒は徐々に表面から蒸発し、その過程において表面にアルカリ成分が残留して徐々に濃度が上昇してアルミニウムの表面から反応が進み、金属結晶の結晶粒子が溶出して粒界壁を残した網目状構造が形成されるものと考えられる。但し、温度勾配がある場合は表面での反応に偏りが生じるため好ましくない。また、乾燥処理を経ることなく水洗いした場合でも網目状構造体は形成されるので、乾燥処理は必須ではないものの、充分な網目構造を形成させる目的で、上記のような乾燥処理を入れることが望ましい。
本発明の方法で形成した網目状多孔質体の表面を、走査型電子顕微鏡(以下、SEMという。)で観察したところ、孔径5〜500nm、深さ0.05〜10μmの細孔が規則正しく並んでいることが観測された。
第1工程の網目状多孔質被膜の製造においては、処理液中に水素が発生するため、浸漬槽内に静置してもよいし、部材により複雑な形状では、振動、エアーレション、バブリング、攪拌等により水素の脱気を確保しつつ、薬液との接触機会を増大させたり、また薬液を加温してもよい。
当該網目状多孔質構造体は、その多孔質形状が担体として有用であり、その多孔質形状表面に、撥水剤を作用させたり、網目状多孔質構造の中に撥水性微粒子を担持固定化することにより、網目状多孔質構造体の表面に撥水性被膜を付与することが可能である。
第2工程はかかる撥水性被膜を付与する工程である。
撥水性被膜を付与する方法としては、常圧含浸法、減圧含浸法、加圧含浸法、ゾルゲル法、電気泳動法、浸漬超音波含浸法などがあり、常圧含浸法、減圧含浸法、加圧含浸法、浸漬超音波含親法が好適に用いられる。中でも、減圧加圧を併用する含浸法が好ましい。具体的な含浸法としては適当な真空容器中に網目状多孔質構造を形成したアルミニウム部材を置き、内部を減圧にしてから、当該微粒子の懸濁液を導入することによって表面細孔内に当該微粒子を密に充填することが出来る。また懸濁液を導入してから容器を加圧にしてより多くの微粒子を充填することもできる。また、浸漬超音波法も好適に用いられ、懸濁液に網目状多孔質構造を形成したアルミニウム部材を浸漬して、超音波をあてながら微粒子を導入するので、網目状多孔質構造の細部にまで微粒子が充填できる。
撥水剤の粒子径は、特に限定はされないが、5nm〜50μmが好ましい。平均粒径が5nm未満であると、微粒子過ぎて長期の処理時間が必要で効率が悪くまた、微粒子の有する表面エネルギーが非常に大きくなり、単分散が困難で凝集しやすく取り扱いが非常に困難である。一方、微粒子の平均粒径が50μmを越えると、被膜上の網目状多孔質構造体の孔径よりも遥かに大きくなるために重力の影響が大きくなり孔径中に取り込まれた微粒子が保持しきれなくなり、摩擦により容易に剥がれてしまう等の問題が発生する。より好ましくは0.5〜40μm、さらに好ましくは0.05〜20μmである。
なお、ここでいう粒子の粒径は所謂1次粒子の大きさを示し、微粒子同士が凝集した2次粒子の大きさを示しているのではない。撥水性被膜においては、2次粒子の大きさは成膜に困難がなければ、特に限定されるものではない。
前記の微粒子を網目状多孔質構造体に導入するにあたり、まず、微粒子の懸濁液を調製する。溶媒は微粒子の懸濁液を調製できるものであれば特に限定されないが、選択した微粒子の濡れ性等を勘案して適宜選択すればよい。具体的には、水、メタノール、エタノール、i−プロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール等のアルコール類、エチレングリコール、酢酸エステル、カルボン酸、低級炭化水素、脂肪族、芳香族等の一般溶剤、又はこれらの混合物よりなる混合物をよりなる溶媒を用いて微粒子が懸濁化された懸濁液を調製する。また、分散性を改良するために分散剤等を添加してもよい。
網目状多孔質構造体に当該微粒子を担持固定化する方法としては、微粒子を導入できるものであれば特に限定されず、上記懸濁液をコーティングする方法、または該懸濁液を含浸させる方法が挙げられる。
懸濁液をコーティングする方法としては、湿式ではディップコート、フローコート、スプレーコート、メッキ、無電界メッキ、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の手段で行うことができ、ディップコート、スプレーコート、メッキ、無電界メッキが簡便な方法として好適に用いられる。
懸濁液のコーティングは乾式で行うこともでき、静電塗装法により帯電させた粉体を反対に帯電させた試料に衝突させて効率よく付着させる手法や、ブラスト法により親水性微粒子を高速で吹き付けて微細孔に緻密に塗布する手法が好適に用いられる。
懸濁液を含浸させる方法としては、常圧含浸法、減圧含浸法、加圧含浸法、ゾルゲル法、電気泳動法、浸漬超音波含浸法などがあり、常圧含浸法、減圧含浸法、加圧含浸法、浸漬超音波含親法が好適に用いられる。中でも、減圧加圧を併用する含浸法が好ましい。具体的な含浸法としては適当な真空容器中に網目状多孔質構造を形成したアルミニウム部材を置き、内部を減圧にしてから、当該微粒子の懸濁液を導入することによって表面細孔内に当該微粒子を密に充填することが出来る。また懸濁液を導入してから容器を加圧にしてより多くの微粒子を充填することもできる。また、浸漬超音波法も好適に用いられ、懸濁液に網目状多孔質構造を形成したアルミニウム部材を浸漬して、超音波をあてながら微粒子を導入するので、網目状多孔質構造の細部にまで微粒子が充填できる。
コーティングあるいは含浸により微粒子を導入後、乾燥・加熱することにより、造膜することができ、微粒子を担持固定することができる。乾燥・加熱処理方法は、特に限定されないが、常温で乾燥してもよいし、または熱風で加熱乾燥してもよい。また乾燥後にアルミニウムの基材を100〜350℃まで加熱して更に乾燥する手法も用いられ、例えば、室温で30分乾燥後、150℃のオーブンで1時間程度加熱する方法が用いられる。このようにして、アルミニウム系撥水部材が製造できる。
上記のように第2工程を施すことにより、網目状多孔質構造の表面に撥水性成分を担持固定させることによって、ミクロの撥水性被膜が付与される。表面に撥水性を付与すれば見かけ純水接触角はますます撥水性が強くなり、初期の微細な水滴が付着かつ成長しづらく、超撥水性を発現する網目状多孔質状の撥水被膜が得られる。本発明で用いる撥水性被膜成分としては、シリコン系被膜、フッ素系被膜、またはこれらの混合物からなる被膜が挙げられる。
本発明で用いる撥水剤としては、フッ素系撥水剤およびシリコン系撥水剤またはそれらの混合物を用いることができる。フッ素系撥水剤としては、代表的なものとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)等があげられる。なかでもポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)のディスパージョンが特に好ましい。
これらのフッ素系撥水剤は、ディスパージョンのまま適宜濃度を調製して、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法、印刷法、フローコート法、刷毛塗り等で塗布してもよいし、微粉体の場合は適宜フッ素系界面活性剤等で塗料化して塗布液にして塗布したり、または静電塗装等で粉体のまま塗装することもできる。その他、流動浸漬塗装、吹きつけ法、回転ライニング法等で塗装できる。塗装後はフッ素樹脂の融点に応じて所定の温度で焼き付けて堅牢な撥水性被膜を形成する。上記網目状多孔質構造のアルミニウム部材の表面に末端がCF基を有した塗料を塗布した場合は、マクロの網目状多孔質構造の撥水性と、ミクロのCFのフラクタル構造による相乗効果で極めて高い撥水性を発現する。
また、シリコン系撥水剤としては、アルキルアルコキシシラン化合物を用いることができ、炭化水素系アルキル基を有するものおよびフッ素置換アルキル基を有するものがある。炭化水素系アルキル基としては、炭素数1〜10の亜炭化水素系アルキル基を用いることができるが、メチル基が疎水性に優れるため好適に用いられる。かかる化合物として、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、モノメチルトリプロポキシシシラン、モノメチルトリブトキシシラン、モノメチル2エチル−ヘキシルシラン、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、モノメチルトリプロポキシシシラン、モノメチルトリブトキシシラン、モノメチル2エチル−ヘキシルシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシキシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジメチルジ2エチル−ヘキシルシラン、トリメチルモノメトキシシラン、トリメチルモノエトキシラン、トリメチルモノプロポキシシラン、トリメチルモノブトキシシラン、トリメチルモノ2エチル−ヘキシルシラン、モノエチルトリメトキシシラン、モノエチルトリエトキシシラン、モノエチルトリプロポキシシシラン、モノエチルトリブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシキシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、トリエチルモノメトキシシラン、トリエチルモノエトキシラン、トリエチルモノプロポキシシラン、トリエチルモノブトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシランが容易に入手でき、特に好適に用いられる。
一方、フッ素置換アルキル基を有する(フッ素置換アルキル)アルコキシシランを用いることができ、フッ素置換アルキル基として、炭素数1〜10の炭化水素系アルキル基の一部または全部がフッ素で置換されたものを用いることができる。一部がフッ素置換されたものとしては、末端がフッ素化されたものが好ましく、例えばCF3(CF2)n(CH2)2−基(ここでn=2〜7)を用いることもできる。かかる化合物としてCF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OC25)3のフルオロアルキルシランが好ましく、なかでもCF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3のフルオロアルキルシランが好適である。また、全部がフッ素置換されたパーフルオロアルキル基としてトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ノナフルオロブチル基、ウンデカフルオロペンチル基等を用いることができ、トリフルオロメチル基を含有するものが好適に用いられる。かかる化合物としては、モノ(トリフルオロメチル)トリメトキシシラン、モノ(トリフルオロメチル)トリエトキシシラン、モノ(トリフルオロメチル)トリプロポキシシシラン、モノ(トリフルオロメチル)トリブトキシシラン、モノ(トリフルオロメチル)2エチル−ヘキシルシラン、モノ(トリフルオロメチル)トリメトキシシラン、モノ(トリフルオロメチル)トリエトキシシラン、モノ(トリフルオロメチル)トリプロポキシシシラン、モノ(トリフルオロメチル)トリブトキシシラン、モノ(トリフルオロメチル)2エチル−ヘキシルシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジメトキシシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジエトキシキシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジプロポキシシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジブトキシシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジ2エチル−ヘキシルシラン、トリ(トリフルオロメチル)モノメトキシシラン、トリ(トリフルオロメチル)モノエトキシラン、トリ(トリフルオロメチル)モノプロポキシシラン、トリ(トリフルオロメチル)モノブトキシシラン、トリ(トリフルオロメチル)モノ2エチル−ヘキシルシラン、モノエチルトリメトキシシラン、モノエチルトリエトキシシラン、モノエチルトリプロポキシシシラン、モノエチルトリブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシキシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、トリエチルモノメトキシシラン、トリエチルモノエトキシラン、トリエチルモノプロポキシシラン、トリエチルモノブトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、(トリフルオロメチル)トリメトキシシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジメトキシシラン、トリ(トリフルオロメチル)メトキシシランが特に好ましい。
これらのシリコン系撥水剤を適宜濃度調整して水溶液中で酸触媒を添加して加水分解をさせたものを処理液として施工し、80〜400℃で10〜120分程アルミニウム部材を焼き付けて撥水被膜を得ことができる。
上記の処理法により、網目状多孔質形状のアルミニウム材料表面に撥水性被膜が形成されるが、特に末端にトリフルオロメチル基を有する撥水性被膜の場合は、網目状多孔質を覆うマクロの撥水性被膜の内側に末端がトリフルオロメチル基であるミクロ撥水性被膜が形成されるため、相乗効果による被覆層の形成によって、材料表面は撥水性に優れ、純水接触角は140〜150度を示す。通常のポリテトラフルオロエチレン(PTFE:純水接触角118度)単体の表面よりもはるかに優れた超撥水性の表面が得られる。
このような優れた特性が得られる理由は被覆層の表面がCF基の多い高度にフッ素化された表面エネルギーの小さな表面状態を有すると共に、これらの被覆層が粗面化された基材表面に基材の網目状多孔質が失われないように薄く均一に形成されているため、網目状多孔質によって水が接触し難くなる効果とが重なりあって、より一層水滴等が付着し難い超撥水性の表面状態となるためである。そして、このような超撥水性の表面状態であるため、表面が多少傷つけられ基材の金属表面が露出した場合でも着雪防止機能を長期に渡って維持することができる。
第二工程の網目状多孔質構造の上に撥水剤を処理する工程において、造膜する撥水性被膜の単位面積当たりの重量は0.1〜10g/mの範囲にあることが必要である。この撥水性被膜の単位面積当たりの重量が0.1g/m未満の場合には充分な被覆がなされず、撥水性不良の箇所が生じるために、アルミニウム部材表面において撥水性の均一性がなくなる。一方、上記撥水性被膜重量が10g/mを超える場合には、撥水性被膜が厚く付着するため網目状多孔質構造を埋め尽くして表面が平坦になり撥水性が劣り、後加工においても柔軟性に欠け、被膜が剥離しやすく、また経済的にも高価となり、結果として十分な撥水性及び着霜防止性が得られなくなり好ましくない。
以下本発明を実施する際の具体的内容について、アルミニウム材料としてJIS 1100H26のアルミニウム板を用いた例で説明する。
まず、第一工程の処理を行う。この第一工程により、外観は全面光沢のない暗灰色を呈したアルミニウム板が得られる。このアルミニウム板の表面をSEMで観察すると深さ15ミクロンの網目状多孔質構造が形成されていることが確認できる。
さらに第二工程の撥水処理を行う。撥水剤として末端がCF化された四フッ化エチレン樹脂の微粉末を界面活性剤等を用いて約2%濃度の水溶液に調製して、ビーズミルで2時間程度分散させることにより、撥水処理液が得られる。
この分散液をスプレー法により、上記の網目状多孔質形状のアルミニウム部材に均一に塗布して、120℃−10分乾燥後、300℃〜350℃程度で10〜60分焼き付けすることにより被膜が得られる。ここで用いられる四フッ化エチレン樹脂としては、粗面化された基材表面の網目状多孔質をそのまま保つことが出来るよう薄く被覆できる微細な粉末のものが好ましく、例えばセントラル硝子製の商品名セフラルルーブI(粒径2μm、分子量8400、末端までCF化)、商品名ネオフロン2E2(ダイキン製PFA塗料)などがあげられる。
得られたアルミニウム部材の撥水性能は、純水の接触角で評価することができる。純水接触角とは、アルミニウム部材表面に滴下した水滴(気−液−固)の接線とアルミニウム水平面とのなす角のことである。すなわち、撥水性はアルミニウム部材の表面と水滴との接触面における水滴の接線となす角として評価できる。撥水性が大きいほど接触角が大きくなる。一般には着霜防止性能を発現させるには接触角が140°以上あれば良い。
後述する実施例に示すように、本発明の製造方法により製造したアルミニウム部材は、140°〜162°の水接触角を示す。したがって、被膜の撥水性の向上に伴い、水切れ性が向上し、同時に凝縮水滴の成長を抑制するために着霜防止機能を向上が向上することはデータ的にも裏づけられる。このような特性を有する部材は、熱交換器用フィンとして有用であるのはいうまでもない。
本発明は、主として熱交換器用のフィン材において、被膜の撥水性を向上させ、着霜防止機能を向上させることを目的としているが、水切れ性及び撥水性を必要とする熱交換器以外の他の用途にも適用可能である。
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、係る実施例に限定されるものではない。なお、本実施例ではアルミニウム材料としてJIS1100H26のアルミニウム板(板厚0.15mm、10cm×10cm)を用いた。
また、測定においては、以下の測定器を使用した。
「走査型電子顕微鏡」 (Scanning Electron Microscope、SEM): FE−SEM 日立製 S−4500型
「実施例1」 アルミニウム板 (水酸化リチウム/水/EtOH系)
第1工程: 水酸化リチウム一水和塩(LiOH・HO:和光特級試薬)を300mlビーカーに6.0g(0.14mol)秤り取り、次いでイオン交換水100mlを加えて常温で攪拌し溶解させた。さらに特級エタノール100mlを攪拌しながら徐々に添加して、1.9%濃度の水酸化リチウム処理溶液を調製した。当該処理溶液のpHは、11.1であった。
アルミニウム系材料として、純度99.5%のアルミニウム基材:A1050の平板(100mm×100mm×0.1mmt)を、調製例1で調製した水酸化リチウム混合溶液に25℃で浸漬させた。浸漬後30秒でアルミニウム基材表面から微細な水素の発泡が観察された。約1分間浸漬した後、4mm/secで引き上げて、次いで室温で30分間乾燥させた。乾燥後、蒸留水で充分にすすぎ、室温にて再度乾燥させた。表面の微細構造をSEMで観察したところ、表面に均一の網目微細構造体が形成していた。
第2工程:撥水剤としてセフラルルーブI(セントラル硝子製PTFEオリゴマー塗料:4フッ化エチレン系撥水性塗料)を0.5%水溶液を調製してディップ法で塗布し、300℃で120分間焼き付けした。撥水性の評価は純水の接触角を測定した。接触角測定は協和界面科学株式会社製接触角計(CA−A型)を使用し、10μリットルの水滴を滴下させて接触角を測定した。その結果、接触角は134°を示し、水滴は5°以内の傾斜で転落した。
「実施例2」 アルミニウム板 (水酸化リチウム/水/イソプロパノール系)
第1工程: 水酸化リチウム一水和塩(LiOH・HO:和光特級試薬)を300mlビーカーに5.0g(0.12mol)秤り取り、次いでイオン交換水140mlを加えて常温で攪拌し溶解させた。さらに特級イソプロパノール60mlを攪拌しながら徐々に添加して、1.5%濃度の水酸化リチウム処理溶液を調製した。この溶液を50℃に加温して処理液とした。処理液のpHは11.0であった。
アルミニウム系材料として、純度99.5%のアルミニウム基材:A1050の平板(100mm×100mm×0.1mmt)を、上記調製した50℃の水酸化リチウム混合溶液に浸漬させた。浸漬後20秒でアルミニウム基材表面から微細な水素の発泡が観察された。約1分間浸漬した後、5mm/secで引き上げて、次いで室温で20分間乾燥させた。乾燥後、蒸留水で充分にすすぎ、室温にて再度乾燥させた。表面の微細構造をSEMで観察したところ、表面に均一の網目微細構造体が形成していた。
第2工程:撥水剤として四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルブチルエーテル共重合体撥水塗料を2%水溶液を調製してディップ法で塗布し、330℃で60分間焼き付けした。撥水性の評価は純水の接触角を測定した。接触角測定は協和界面科学株式会社製接触角計(CA−A型)を使用し、10μリットルの水滴を滴下させて接触角を測定した。その結果、接触角は140°を示し、水滴は5°以内の傾斜で転落した。
「実施例3」アルミニウム金属不織布 (水酸化リチウム/水/EtOH系)
第1工程:アルミニウム系材料として、繊維の平均径が150μm、目付け量1.5kg/m、厚みが1mmのアルミニウム金属不織布(商品名「メタシリー」、サーマル社製)を用いて、実施例1で調製した水酸化リチウム処理溶液に上記アルミニウム金属不織布を25℃で浸漬させた。浸漬後30秒でアルミニウム基材表面から微細な水素発泡が見られ、約1分間保持した後、4mm/secで引き上げて、室温で30分間乾燥させた。乾燥後充分に蒸留水ですすぎ表面の微細構造をSEMで観察したところ、表面が均一の網目微細構造が形成されていた。
第2工程:撥水剤として四フッ化エチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体撥水塗料を2%水溶液を調製してディップ法で塗布し、300℃で90分間焼き付けした。撥水性の評価は純水の接触角を測定した。接触角測定は協和界面科学株式会社製接触角計(CA−A型)を使用し、10μリットルの水滴を滴下させて接触角を測定した。その結果、接触角は144°を示し、水滴は5°以内の傾斜で転落した。
本発明の撥水性アルミニウム部材は、撥水性及び着霜防止性に優れており空調機器、冷凍機等に組み込まれる熱交換器用フィンとして有用である。

Claims (9)

  1. 以下の2工程を含むことを特徴とする撥水性アルミニウム部材の製造方法。
    第1工程:アルミニウムもしくはその合金を、水酸化リチウムを含む塩基と水と有機溶媒とを混合した塩基性混合溶液で処理することにより、アルミニウムもしくはその合金の表層部の少なくとも一部に、網目状多孔質の細孔を形成することを特徴とする網目状多孔質構造体を製造する工程。
    第2工程:上記網目状多孔質構造体上に、撥水性被膜を付与する工程。
  2. 第1工程において、塩基性混合溶液の表面張力が、18〜60mN/mであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 第1工程において、塩基性混合溶液中の有機溶媒が、アルコール系、ニトリル系、ケトン系、エステル系、エーテル系、スルホキシド系、アミド系、グリコール系、芳香族系もしくは、含フッ素アルコール系の溶媒の少なくとも一種である請求項1または請求項2に記載の製造方法。
  4. 第1工程において、塩基性混合溶液のpHが、9.0〜13.5の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 第1工程において、アルミ表面から0.1〜30μmの深さの網目状多孔質構造を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 第2工程において、撥水性被膜が、シリコン系被膜またはフッ素系被膜、もしくはそれらの混合物からなることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  7. 第2工程において、撥水性被膜の膜重量が0.1〜10g/mの範囲になるように塗布することを特徴とする請求項1または請求項6に記載の製造方法。
  8. 請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の方法で製造した撥水性アルミニウム部材。
  9. 請求項8に記載の撥水性アルミニウム部材を用いた熱交換器用フィン。
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