JP2010169519A - プラズモン励起センサおよびそれを用いたアッセイ法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高感度かつ高精度であり、イムノアッセイに必要不可欠である特異性に優れたプラズモン励起センサおよびそれを用いたアッセイ法、アッセイ用装置ならびにアッセイ用キットを提供。
【解決手段】透明平面基板1と、該基板の表面に形成された金属薄膜11と、該金属薄膜の、該基板とは接していないもう一方の表面に形成された、誘電体からなるスペーサ層と、該スペーサ層の、該金属薄膜とは接していないもう一方の表面に固定化された、蛍光色素5により標識されたリガンドとを含むことを特徴とするプラズモン励起センサ。
【選択図】図3

Description

本発明は、プラズモン励起センサおよびそれを用いたアッセイ法、該アッセイ用装置ならびに該アッセイ用キットに関する。さらに詳しくは、本発明は、金属薄膜の上に蛍光色素とリガンドとが固定化されているプラズモン励起センサ、および表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS;Surface Plasmon−field enhanced Fluorescence Spectroscopy)の原理に基づき該センサを用いたアッセイ法、該アッセイ用装置ならびに該アッセイ用キットに関する。
表面プラズモン励起増強蛍光分析法(SPFS)とは、照射したレーザ光が金薄膜表面で全反射減衰(ATR)する条件において、金属薄膜表面に粗密波(表面プラズモン)を発生させることによって、照射したレーザ光が有するフォトン量を数十倍〜数百倍に増やし(表面プラズモンの電場増強効果)、これにより金薄膜近傍の蛍光色素を効率良く励起させることによって、極微量および/または極低濃度のアナライトを検出することができる方法である。
このようなSPFSの原理に基づいたバイオセンサまたはバイオチップに関わる例として、特許文献1には、金属基板表面にカルボキシメチルデキストランを用いたリガンド(1次抗体)固定化膜を配し、表面プラズモンにより増強された電場で抗原に関係付けられた蛍光色素を検出する方法が示されている。
しかしながら、極微量アナライト(標的抗原)の検出においては、アッセイで抗原に関係付けられるコンジュゲート中の蛍光色素量も極微量であり、このことが蛍光発生量のボトルネックとなるため、プラズモン電場増強を用いても蛍光シグナル量が上がらず、アッセイ感度の向上は難しい。
一方、表面プラズモン励起増強において蛍光強度を効果的に増強する研究が行われており、特許文献2には、電場増強効果が高い金ナノ粒子(直径:2〜30nm)を含むハイブリッド・プローブ粒子が開示されており、該ハイブリッド・プローブ粒子は、該金ナノ粒子の表面の一方において1〜100の抗体タイプのタンパク質が金−硫黄結合により結合され、そして他方において少なくとも10の蛍光有機色素が金−硫黄結合により結合している。
また、特許文献3には、100〜800nmの断面粒径と30〜50nmの厚さを有する平板状銀粒子をアイランド膜として基板上に密に配列した表面上に、単層または多層に蛍光物質を担持させている蛍光素子が記載され、銀粒子表面と蛍光物質との距離を調節するために、金属粒子表面にスペーサを備えている。
特許文献2および3に記載の発明は、蛍光色素層を金属近傍に配置することによりフォトンの利用効率を向上させて、蛍光発生の効率も改良される可能性があるが、蛍光色素の絶対量が少ない場合は対応できない。また、蛍光色素はコンジュゲートの形態に発展することは難しく、検出すべきアナライト量と関係付けられていないため、それ自体に特異性はなく、イムノアッセイに利用することもできない。
特許第3294605号 特表2007−512522号公報 特開2007−139540号公報
本発明は、高感度かつ高精度であり、イムノアッセイに必要不可欠である特異性に優れたプラズモン励起センサおよびそれを用いたアッセイ法、アッセイ用装置ならびにアッセイ用キットを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題および従来のサンドイッチイムノアッセイ法(図1)が抱える問題、すなわち、極微量のアナライトを検出する場合、通常のサンドイッチイムノアッセイ法を行っても、コンジュゲート自体も理論的に極微量なため、しばしば増強電場に見合う蛍光プローブ量が存在せず、感度的に満足するものとはならないという問題を解決すべく鋭意研究した結果、従来のサンドイッチイムノアッセイ法(図1)と、表面プラズモン励起増強蛍光分析法とを組み合わせ、さらにセンサとアナライトとの結合の有無により蛍光を消光する機構を設ける、すなわち発光と消光との機能を分担することによって、極微量のアナライト(例えば、標的抗原)であってもフォトン量に見合った蛍光発光と特異性とを両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のプラズモン励起センサは、透明平面基板と、該基板の表面に形成された金属薄膜と、該金属薄膜の、該基板とは接していないもう一方の表面に形成された、誘電体からなるスペーサ層と、該スペーサ層の、該金属薄膜とは接していないもう一方の表面に固定化された、蛍光色素により標識されたリガンドとを含むことを特徴とする。
上記金属薄膜は、金、銀、アルミニウム、銅および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属から形成されていることが好ましく、該金属は、金からなることがより好ましい。
上記誘電体は、二酸化ケイ素(SiO4)または二酸化チタン(TiO2)層を含むことが好ましい。
上記リガンドは、シランカップリング剤からなるSAM(自己組織化単分子膜)を介して上記スペーサ層に固定化されていることが好ましく、腫瘍マーカーまたはがん胎児性抗原を認識し結合する1次抗体であってもよい。
また、本発明のアッセイ法は、下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とする。
工程(a):請求項1〜6のいずれかに記載のプラズモン励起センサに、検体を接触させる工程、
工程(b):該工程(a)を経て得られたプラズモン励起センサに、さらに、該プラズモン励起センサに含まれるリガンドとは同じであっても異なっていてもよいリガンドと蛍光を消光または吸収し得る化合物とのコンジュゲートを反応させる工程、
工程(c):該工程(b)を経て得られたプラズモン励起センサに、上記透明平面基板の、上記金属薄膜を形成していないもう一方の表面から、プリズムを経由してレーザ光を照射し、励起された蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程、および
工程(d):該工程(c)で得られた測定結果から、検体中に含有されるアナライト量を算出する工程。
上記アナライトに、上記コンジュゲートが結合してもよく、または上記アナライトとは異なるアナライトであって、上記アナライトと競合するアナライトが、上記コンジュゲートと予め結合していてもよい。
上記検体は、血液、血清、血漿、尿、鼻孔液および唾液からなる群から選択される少なくとも1種の体液であることが好ましい。
上記アナライトは、腫瘍マーカーまたはがん胎児性抗原であってもよい。
本発明の装置は、上記工程(c)に用いられることを特徴とする。
本発明のキットは、上記アッセイ法に用いられることを特徴とする。
従来、極微量のアナライトを測定する超高感度な系において、表面プラズモンの電場増強(電場増強フォトン量の例)と微量な蛍光色素量(蛍光フォトン量の例)のミスマッチが起こり感度の限界が生じる。
それに対して、本発明のプラズモン励起センサは、本発明のアッセイ法に用いた場合、図2に従えば、蛍光色素層を設けることにより電場増強に見合う蛍光を発生(シグナル量=色素層で発生可能なフォトン量の例)させることができ、かつ蛍光をアナライトの量に応じて消光剤により調整(ノイズ量=消光剤で消光可能なフォトン量の例)することができるため、ノイズが少なく、シグナルが多い高S/N比のアッセイが可能となる。
すなわち、本発明は、1リットル当り10-18モル(1amol/L)〜10-12モル(1pmol/L)レベルの濃度のアナライト(例えば、標的抗原)を含む検体から、高感度かつ高精度で該アナライトを検出できるプラズモン励起センサを提供することができる。
また、微量のアナライトを検出する際、従来のサンドイッチイムノアッセイ法では蛍光信号(蛍光シグナル)量が少なくS/N比が劣化するが、本発明は、プラズモン励起センサ、およびリガンド(例えば、2次抗体)と消光剤とのコンジュゲートを用いて本発明のアッセイ法に適用した場合、標的抗原量と比例するのが消光剤であるためS/N比が劣化しないプラズモン励起センサを提供することができる。
また、本発明は、消光剤の能力次第で蛍光信号量を調整できるため、本発明のアッセイ法が最適なS/N比で実施可能なプラズモン励起センサを提供することができる。
さらに、本発明は、本発明のアッセイ法において、アナライト(標的抗原)と、該アナライトと競合する抗原を予め結合させた2次抗体(リガンド)と消光剤とのコンジュゲートとを競合させることにより、蛍光信号(蛍光シグナル)量と標的抗原量とを比例させることができるプラズモン励起センサを提供することができる。
図1は、従来のサンドイッチイムノアッセイ法において、基板1に固定化された1次抗体2に、検体中に含有される標的抗原3が結合した後、蛍光色素5により標識された2次抗体4を反応させている状態を模式的に示す。 図2は、透明平面基板と、該基板の一方の表面に形成された金属薄膜と、該金属薄膜の、該基板とは接していないもう一方の表面に形成された誘電体からなるスペーサ層と、該スペーサ層の、該金属薄膜とは接していないもう一方の表面に固定化された1次抗体とを有するSenser Chipにレーザ光を照射して、蛍光量をCCDにより検出している状態を模式的に示したSPFS装置の光学配置図;および、Laser Diode(半導体レーザ)を光源とする「入射光子数」、該光源により励起された表面プラズモンの電場増強効果による「励起光子数」、2次抗体に標識された蛍光色素が励起される「吸収光子数」ならびにCCDに検出された「蛍光光子数」をそれぞれ算出したフローチャートを示し、 フローチャート中の具体的な数値は、下記(1)〜(3)の仮定に基づき算出されたものである:(1)Laser Diodeを用いてレーザ光を照射する際、P偏光した後、ND filterで光量を調整し、0.1mWをSenser Chipに入射する、(2)Senser Chipが固定された流路中の含まれる2次抗体に標識された蛍光色素は0.4nmol/Lであり(計測抗原量を0.2nmol/L、2次抗体の蛍光剤標識率2%に相当する。)、有効プラズモン領域が100nmの厚さで存在する、(3)蛍光色素のモル吸光係数を250,000、蛍光量子収率を0.47とする; すなわち、0.1mWのレーザ光が入射し、金基板で17倍の電場増強があるとすると、光子数は約15乗個にのぼるが、実際にnmol/Lレベルの抗原測定においては、蛍光色素を介して発生する光子数は6乗個にまで減少し、増強電場された光子の多くは利用されず、検出されるシグナルも光子量が極めて少ないことから、アッセイの精度が向上するとは言えない。 図3は、本発明のアッセイ法のタイプ1(例えば、実施例8〜14)、およびタイプ2(例えば、実施例1〜7)であって、本発明のプラズモン励起センサと検体とを反応させた後、消光色素6を固定化された2次抗体4をさらに反応させ、表面プラズモンにより励起された蛍光色素が発した蛍光13を表している状態を模式的に示す。
以下、本発明について具体的に説明する。
<プラズモン励起センサ>
本発明のプラズモン励起センサは、透明平面基板と、該基板の表面に形成された金属薄膜と、該金属薄膜の、該基板とは接していないもう一方の表面に形成された、誘電体からなるスペーサ層と、該スペーサ層の、該金属薄膜とは接していないもう一方の表面に固定化された、蛍光色素により標識されたリガンドとを含むことを特徴とするものである。
本発明のプラズモン励起センサは、例えば、GEヘルスケア バイオサイエンス(株)製のBiacoreシステムに用いられるセンサーチップなどのように金薄膜を有するものも、本発明のプラズモン励起センサに利用することができる。
(透明平面基板)
本発明で用いられる透明平面基板としては、ガラス製であっても、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)などのプラスチック製であってもよく、屈折率〔nd〕が好ましくは1.40〜2.20であり、厚さが好ましくは0.01〜10mm、より好ましくは0.5〜5mmであれば、大きさ(縦×横)は特に限定されない。
なお、ガラス製の透明平面基板は、市販品として、SCHOTT AG社製のBK7(屈折率〔nd〕1.52)およびLaSFN9(屈折率〔nd〕1.85)、(株)住田光学ガラス製のK−PSFn3(屈折率〔nd〕1.84)、K−LaSFn17(屈折率〔nd〕1.88)およびK−LaSFn22(屈折率〔nd〕1.90)、(株)オハラ製のS−LAL10(屈折率〔nd〕1.72)などが光学的特性と洗浄性との観点から好ましい。
透明平面基板は、その表面に金属薄膜を形成する前に、その表面を酸および/またはプラズマにより洗浄することが好ましい。
酸による洗浄処理としては、0.001〜1Nの塩酸中に、1〜3時間浸漬することが好ましい。
プラズマによる洗浄処理としては、例えば、プラズマドライクリーナー(ヤマト科学(株)製のPDC200)中に、0.1〜30分間浸漬させる方法が挙げられる。
(金属薄膜)
上記「透明平面基板」の一方の表面に形成された金属薄膜としては、好ましくは、金、銀、アルミニウム、銅、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属からなり、より好ましくは金からなることが望ましく、これら金属の合金であってもよい。このような金属種は、酸化に対して安定であり、かつ表面プラズモンによる電場増強が大きくなることから好適である。
なお、上記「透明平面基板」としてガラス製平面基板を用いる場合に限り、ガラスと上記金属薄膜とをより強固に接着することができることから、あらかじめクロム、ニッケルクロム合金またはチタンの薄膜を形成することが好ましい。
透明平面基板上に金属薄膜を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法(抵抗加熱蒸着法、電子線蒸着法等)、電解メッキ、無電解メッキ法などが挙げられる。薄膜形成条件の調整が容易なことから、スパッタリング法または蒸着法によりクロムの薄膜および/または金属薄膜を形成することが好ましい。
金属薄膜の厚さとしては、金:5〜500nm、銀:5〜500nm、アルミニウム:5〜500nm、銅:5〜500nm、白金:5〜500nm、およびそれらの合金:5〜500nmが好ましく、クロムの薄膜の厚さとしては、1〜20nmが好ましい。
電場増強効果の観点から、金:20〜70nm、銀:20〜70nm、アルミニウム:10〜50nm、銅:20〜70nm、白金:20〜70nm、およびそれらの合金:10〜70nmがより好ましく、クロムの薄膜の厚さとしては、1〜3nmがより好ましい。
金属薄膜の厚さが上記範囲内であると、表面プラズモンが発生し易いので好適である。また、このような厚さを有する金属薄膜であれば、大きさ(縦×横)は特に限定されない。
(誘電体からなるスペーサ層)
「誘電体からなるスペーサ層」は、上記「金属薄膜」による蛍光色素の金属消光を防止することを目的として、該金属薄膜の、上記「透明平面基板」と接していないもう一方の表面に形成したものであって、該誘電体としては、光学的に透明な各種無機物、天然または合成ポリマーを用いることもできるが、化学的安定性、製造安定性および光学的透明性に優れていることから二酸化ケイ素(SiO2)または二酸化チタン(TiO2)を含むことが好ましい。
該スペーサ層の厚さは、通常10nm〜1mmであり、共鳴角安定性の観点からは、30nm以下が好ましく、10〜20nmがより好ましい。また、電場増強の観点からは、200nm〜1mmが好ましく、電場増強効果の安定性の観点からは、400〜1,600nmが好ましい。本発明のプラズモン励起センサが、今後、大量生産される際、該センサが有するスペーサ層の厚さが変動することが想定され、特に400nm以上の厚さを有すると共鳴角の変動が一層大きくなる可能性があるため、測定の安定性を確保する目的から、該スペーサ層の厚さとして、特に10〜20nmが好ましい。
該スペーサ層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、電子線蒸着法、熱蒸着法、ポリシラザン等の材料を用いた化学反応による形成方法、またはスピンコータによる塗布などが挙げられる。
(蛍光色素)
本発明に係る蛍光色素は、下記「リガンド」に標識するために用いられるものであり、本発明において、所定の励起光を照射する、または電界効果を利用して励起することによって蛍光を発光する物質の総称であり、該「蛍光」は、燐光など各種の発光も含む。
本発明で用いられる蛍光色素は、特に限定されず、公知の蛍光色素のいずれであってもよい。一般に、単色比色計(monochromometer)よりむしろフィルタを備えた蛍光計の使用をも可能にし、かつ検出の効率を高める大きなストークス・シフトを有する蛍光色素が好ましい。
このような「蛍光色素」としては、例えば、フルオレセイン・ファミリーの蛍光色素(Integrated DNA Technologies社製)、ポリハロフルオレセイン・ファミリーの蛍光色素(アプライドバイオシステムズジャパン(株)製)、ヘキサクロロフルオレセイン・ファミリーの蛍光色素(アプライドバイオシステムズジャパン(株)製)、クマリン・ファミリーの蛍光色素(インビトロジェン(株)製)、ローダミン・ファミリーの蛍光色素(GEヘルスケア バイオサイエンス(株)製)、シアニン・ファミリーの蛍光色素、インドカルボシアニン・ファミリーの蛍光色素、オキサジン・ファミリーの蛍光色素、チアジン・ファミリーの蛍光色素、スクアライン・ファミリーの蛍光色素、キレート化ランタニド・ファミリーの蛍光色素、BODIPY(登録商標)・ファミリーの蛍光色素(インビトロジェン(株)製)、ナフタレンスルホン酸・ファミリーの蛍光色素、ピレン・ファミリーの蛍光色素、トリフェニルメタン・ファミリーの蛍光色素、Alexa Fluor(登録商標)色素シリーズ(インビトロジェン(株)製)などが挙げられ、さらに米国特許番号第6,406,297号、同第6,221,604号、同第5,994,063号、同第5,808,044号、同第5,880,287号、同第5,556,959号および同第5,135,717号に記載の蛍光色素も本発明で用いることができる。
これらファミリーに含まれる代表的な蛍光色素の吸収波長(nm)および発光波長(nm)を表1に示す。
(蛍光色素により標識されたリガンド)
「リガンド」とは、検体中に含有されるアナライトを特異的に認識し(または、認識され)結合し得る分子または分子断片であって、このような「分子」または「分子断片」としては、例えば、核酸(一本鎖であっても二本鎖であってもよいDNA、RNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、PNA(ペプチド核酸)等、またはヌクレオシド、ヌクレオチドおよびそれらの修飾分子)、タンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチド等)、アミノ酸(修飾アミノ酸も含む。)、糖質(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等)、脂質、またはこれらの修飾分子、複合体などであれば、特に限定されない。
「タンパク質」としては、例えば、抗体などが挙げられ、具体的には、抗αフェトプロテイン(AFP)モノクローナル抗体((株)日本医学臨床検査研究所などから入手可能)、抗ガン胎児性抗原(CEA)モノクローナル抗体、抗CA19−9モノクローナル抗体、抗PSAモノクローナル抗体などが挙げられる。
なお、本発明において、「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、遺伝子組換えにより得られる抗体、および抗体断片を包含する。
「蛍光色素により標識されたリガンド」とは、上記「蛍光色素」を、このような「リガンド」に標識したものである。
標識する方法としては、例えば、蛍光色素の活性エステル体を作製し、さらにリガンドとアミンカップリングする方法が一般的であり、蛍光色素の反応基として、アミノ基、イソチオシアネート基、スルホニルクロリド基、メルカプト基、ヨードアセトアミド基などの様々な官能基を導入することができるので、該反応基とリガンドが有する官能基とを反応可能な条件で化学結合を形成させること方法なども挙げられる。
「蛍光色素により標識されたリガンド」の固定化方法としては、シランカップリング剤からなるSAM(自己組織化単分子膜)を介して上記「誘電体からなるスペーサ層」に固定化する方法が好適である。
また、該スペーサ層に固定化したリガンドに蛍光色素を標識する方法も利用可能であり、リガンドと反応可能な官能基を有するシランカップリング剤でリガンドを固定化した後、さらに上記反応性基を有する蛍光色素を流路中で反応させ、蛍光色素により標識された固定化リガンドを作製することもできる。
「シランカップリング剤」としては、加水分解でシラノール基(Si-OH)を与えるエトキシ基(またはメトキシ基)を有し、他端にアミノ基やグリシジル基、カルボキシル基などの反応基を有するシランカップリング剤であればよく、具体例として、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、8−アミノ−オクチルトリエトキシシラン、6−アミノ−ヘキシルトリエトキシシラン、7−カルボキシ−ヘプチルトリエトキシシラン、5−カルボキシ−ペンチルトリエトキシシランなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されず、従来公知のシランカップリング剤も用いることができる。
シランカップリング剤以外に、リガンドの固定化能に優れることから、例えば、カルボキシメチルデキストラン、ポリエチレングリコール、イミノジ酢酸誘導体((N−5−amino−1−carboxypentyl)iminodiacetic acid等)、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、プロテインA、プロテインGなども用いることができる。
このような「蛍光色素により標識されたリガンド」の固定化方法の具体例として、まず金薄薄膜および誘電体からなるスペーサ層が、その一方の表面に順に形成された透明平面基板を、シランカップリング剤を通常0.1〜10%、好ましくは0.5%の濃度で含む水溶液に、30分〜2時間浸漬後、室温の場合、通常1〜24時間、好ましくは10時間、100℃の場合、通常10分〜1時間、好ましくは30分の乾燥を行い、この後、通常、上記基板を水で洗浄する。この時点で、シランカップリング剤の一方の末端が加水分解して得られたシラノール基(Si−OH)を該スペーサ層側にして並べたSAM(Self−Assembled Monolayer;自己組織化単分子膜)が形成されている。シランカップリング剤からなるSAMの外側には、シランカップリング剤が有するアミノ基やカルボキシル基が露出している状態となっている。
次に、リガンドが有するカルボキシル基を、水溶性カルボジイミド(WSC)(例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)など)とN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)とにより活性エステル化し、このように活性エステル化したカルボキシル基と、上記シランカップリング剤が有するアミノ基とを水溶性カルボジイミドを用いて脱水反応させ固定化させる。
<アッセイ法>
本発明のアッセイ法は、下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とするものである。
工程(a):本発明のプラズモン励起センサに、検体を接触させる工程、
工程(b):該工程(a)を経て得られたプラズモン励起センサに、さらに、該プラズモン励起センサに含まれるリガンドとは同じであっても異なっていてもよいリガンドと蛍光を消光または吸収し得る化合物とのコンジュゲートを反応させる工程、
工程(c):該工程(b)を経て得られたプラズモン励起センサに、上記透明平面基板の、上記金属薄膜を形成していないもう一方の表面から、プリズムを経由してレーザ光を照射し、励起された蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程、および
工程(d):該工程(c)で得られた測定結果から、検体中に含有されるアナライト量を算出する工程。
(工程(a))
工程(a)とは、本発明のプラズモン励起センサに、検体を接触させる工程である。
「検体」としては、例えば、血液(血清・血漿)、尿、鼻孔液、唾液、便、体腔液(髄液、腹水、胸水等)などが挙げられ、所望の溶媒、緩衝液等に適宜希釈して用いてもよい。これら検体のうち、血液、血清、血漿、尿、鼻孔液および唾液が好ましい。
「接触」は、流路中に循環する送液に検体が含まれ、プラズモン励起センサの蛍光色素およびリガンドが固定化されている片面のみが該送液中に浸漬されている状態において、プラズモン励起センサと検体とを接触させる態様が好ましい。
「流路」とは、微量な薬液の送達を効率的に行うことができ、反応促進を行うために送液速度を変化させたり、循環させたりすることができる直方体または管状のものであって、プラズモン励起センサを設置する個所近傍は直方体構造を有することが好ましく、薬液を送達する個所近傍は管状を有することが好ましい。
その材料としては、プラズモン励起センサ部ではメチルメタクリレート、スチレン等を原料として含有するホモポリマーまたは共重合体、ポリエチレン、ポリオレフィン等からなり、薬液送達部ではシリコンゴム、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリマーを用いる。
プラズモン励起センサ部においては、検体との接触効率を高め、拡散距離を短くする観点から、プラズモン励起センサ部の流路の断面として、縦×横がそれぞれ独立に100nm〜1mm程度が好ましい。
流路にプラズモン励起センサを固定する方法としては、小規模ロット(実験室レベル)では、まず、該プラズモン励起センサの金属薄膜が形成されている表面に、流路高さ0.5mmを有するポリジメチルシロキサン(PDMS)製シートを該プラズモン励起センサの金属薄膜が形成されている部位を囲むようにして圧着し、次に、該ポリジメチルシロキサン(PDMS)製シートと該プラズモン励起センサとをビス等の閉め具により固定する方法が好ましい。
工業的に製造される大ロット(工場レベル)では、流路にプラズモン励起センサを固定する方法としては、プラスチックの一体成形品に金基板を形成、または別途作製した金基板を固定し、金表面に誘電体層、蛍光色素層およびリガンド固定化を行った後、流路の天板に相当するプラスチックの一体成形品により蓋をすることで製造できる。必要に応じてプリズムを流路に一体化することもできる。
「送液」としては、検体を希釈した溶媒または緩衝液と同じものが好ましく、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、トリス緩衝生理食塩水(TBS)などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
送液を循環させる温度および時間としては、検体の種類などにより異なり、特に限定されるものではないが、通常20〜40℃×1〜60分間、好ましくは37℃×5〜15分間である。
送液中の検体中に含有されるアナライトの初期濃度は、100μg/mL〜0.001pg/mLであってもよい。
送液の総量、すなわち流路の容積としては、通常0.001〜20mL、好ましくは0.1〜1mLである。
送液の流速は、通常1〜2,000μL/min、好ましくは5〜500μL/minである。
(洗浄工程)
洗浄工程とは、下記工程(b)の前および/または後に含まれることが好ましく、上記工程(a)で得られたプラズモン励起センサの表面、および/または下記工程(b)で得られたプラズモン励起センサの表面を洗浄する工程である。
該工程に使用される洗浄液としては、Tween20、TritonX100などの界面活性剤を、工程(a)および(b)の反応で用いたものと同じ溶媒または緩衝液に溶解させ、好ましくは0.00001〜1重量%含有するものが望ましい。
洗浄液を循環させる温度および流速は、上記工程(a)の「送液を循環させる温度および流速」に等しいことが好ましい。
洗浄液を循環させる時間は、通常0.5〜180分間、好ましくは5〜60分間である。
(工程(b))
工程(b)とは、上記工程(a)、好ましくは上記洗浄工程を経て得られたプラズモン励起センサに、さらに、該プラズモン励起センサに含まれるリガンドとは同じであっても異なっていてもよいリガンドと蛍光を消光または吸収し得る化合物とのコンジュゲートを反応させる工程である。
「蛍光を消光または吸収し得る化合物」、すなわち「消光剤(消光色素)」または「クエンチャー」とは、上記「蛍光色素」の励起されたエネルギーを吸収できる適切なエネルギー準位を有する化合物であって、ある蛍光色素に対して適切な消光剤を添加すると、蛍光が消失する。
「消光剤」としては、フルオレセイン・ファミリーの消光色素、ポリハロフルオレセイン・ファミリーの消光色素、ヘキサクロロフルオレセイン・ファミリーの消光色素、クマリン・ファミリーの消光色素、ローダミン・ファミリーの消光色素、シアニン・ファミリーの消光色素、オキサジン・ファミリーの消光色素、チアジン・ファミリーの消光色素、スクアライン・ファミリーの消光色素、キレート化ランタニド・ファミリーの消光色素、BODIPY(登録商標)・ファミリーの消光色素などが挙げられ、より具体的には、例えば、BHQ(登録商標)・ファミリーの色素(国際公開第01/86001号パンフレットに記載されているクエンチャー:BHQ−1、BHQ−2およびBHQ−3を含む。)(バイオサーチテクノロジーズ ジャパンBTJ(株)製)、Iowa Black(登録商標)(Integrated DNA Technologies社製)、DABCYL(4−(4’−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸)(Integrated DNA Technologies社製)、TAMRA(N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン)(インビトロジェン(株)製)、Cy3(登録商標)(GEヘルスケア バイオサイエンス(株)製)、Cy5(登録商標)(GEヘルスケア バイオサイエンス(株)製)、1−ベンジル−1,4−ジヒドロニコチンアミド(BNAH)、9−アントラセンカルボニトリル、2−ナフトール、2−メトキシナフタレン、1,4−ナフトキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノン、3,5−ジ−tert−ブチル−1,2−ベンゾキノン、1−ナフトエ酸(1−NA)、2−ナフトエ酸(2−NA)、1−ピレン酪酸(PyBA)、4−ニトロ安息香酸(PNBA)、アントラキノン−2−カルボン酸(AQCA)、ピレンなどが挙げられる。また、本発明は、米国特許番号第6,399,392号、同第6,348,596号、同第6,080,068号および同第5,707,813号に記載の消光剤を用いることもできる。
これらの消光剤のうち、バイオサーチテクノロジーズ ジャパンBTJ(株)製のBHQ−1(最大波長534nm)、BHQ−2(最大波長579nm)、BHQ−3(最大波長672nm)等のシリーズが広い波長領域をカバーするダーククエンチャー(自らは発光しない消光剤)として好ましい。
上記以外の「消光剤」の系統としては、通常、テトラシアノキノジメタン類、アミニウム類、ジインモニウム類、ヒドラジン類、ヒドラジド類、ヒドロキシルアミン類、ハイドロキノン類、四置換ホウ素陰イオン類、またはニッケル類、アゾ色素の重金属錯体類、フォルマザン重金属錯体、ジピロメテン金属錯体類、ポルフィリン重金属錯体類、重金属フタロシアニン類、重金属ナフタロシアニン類、メタロセン類等の金属錯体などが挙げられる。
表面プラズモンによって励起された蛍光色素によって放射されるフォトンは、電子励起状態で消光剤にエネルギー移動されてクエンチされると考えられる。すなわち、電子励起状態のエネルギーを吸収した消光剤は、異なった波長のフォトンまたは熱としてエネルギーを放出すると考えられる。したがって、消光剤は蛍光色素でもあってもよい。
一般に、蛍光色素と消光剤とのエネルギー転移は、蛍光色素と消光剤との間の距離、すなわち臨界転移距離に依存する。「臨界転移距離」とは、蛍光色素の電子励起準位(通常1重項)と消光剤の最低空軌道とが相互作用できる距離であり、消光剤が有機物の場合、通常10nm前後の距離、金属含有物の場合では通常30nm程度の距離である。特定の蛍光色素と消光剤との臨界転移距離については、当該技術分野において周知であり、例えば、WuおよびBrand、1994年、Anal. Biochem. 218:1〜3ページの論文に記載の臨界転移距離を参照することができる。
特定の蛍光色素と消光剤との組み合わせの基準としては、例えば、蛍光色素による蛍光発光の量子収率;蛍光色素によって放たれる蛍光波長;消光剤の減衰係数;消光剤によって放たれる蛍光波長;消光剤による蛍光発光の量子収率などが挙げられる。また、消光剤が蛍光色素でもある場合、消光剤と蛍光色素とが、一方によって放射された蛍光がもう片方によって放射された蛍光と容易に区別できるように組み合わせることが好ましい。特定の蛍光色素と消光剤との組み合わせの選択については、KlostermeierおよびMillar、2002年、Biopolymers 61:159〜179ページの総論を参照することができる。
本発明で用いられる蛍光色素と消光剤との例示的な組み合わせは、蛍光色素として6−カルボキシフルオレセイン(FAM)と消光剤としてCy5(登録商標);Alexa Fluor(登録商標)647(蛍光色素)とBHQ−3(消光剤);FAM、TET、JOE、HEXおよびOregon Green(蛍光色素)とBHQ−1(消光剤);FAM、TAMRA、ROX、Cy3、Cy3.5、CAL RedおよびRed 640(蛍光色素)とBHQ−2(消光剤);Cy5およびCy5.5(蛍光色素)とBHQ−3(消光剤)、米国特許番号第6,245,514号に記載されている組み合わせ、表2に記載の組み合わせなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
蛍光色素および消光剤の両方として使用可能である分子は、例えば、フルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン、ローダミン、6−カルボキシローダミン、6−カルボキシ−X−ローダミン、5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸(EDANS)などが挙げられる。
「プラズモン励起センサに含まれるリガンドとは同じであっても異なっていてもよいリガンドと蛍光を消光または吸収し得る化合物とのコンジュゲート」は、リガンドとして2次抗体を用いる場合、以下の態様(I)または(II)が好ましい。
態様(I):2次抗体は、検体中に含有されるアナライト(標的抗原)を認識し結合し得る抗体である。ただし、本発明のプラズモン励起センサに固定化されているリガンドとして用いる1次抗体抗がポリクローナル抗体である場合、2次抗体は、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよいが、該1次抗体がモノクローナル抗体である場合、2次抗体は、該1次抗体が認識しないエピトープを認識するモノクローナル抗体であるか、またはポリクローナル抗体であることが望ましい。
本発明のプラズモン励起センサに固定化されているリガンドとして用いる1次抗体抗が、例えば、AFPモノクローナル抗体である場合、態様(I)の2次抗体としては、検体中に含有されるAFPに競合する抗原を認識し結合することができるモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を必要とする。
態様(I)は、消光剤の能力次第で蛍光信号量を調整できるため、本発明のアッセイ法が最適なS/N比で実施可能であるから好適である。
態様(II):2次抗体は、検体中に含有されるアナライト(標的抗原)と競合するアナライト(競合抗原;ただし、標的抗原とは異なるものである。)を予め結合した抗体である。検体中に含有される競合抗原は0種または1種以上であるから、2次抗体自体を必要としないか、または1種以上の2次抗体を必要とする。
態様(II)は、蛍光信号(蛍光シグナル)量と標的抗原量とを比例させることができるため好適である。
上記1次抗体が抗AFPモノクローナル抗体である場合、態様(II)の2次抗体としては、抗AFPポリクローナル抗体、または該抗AFPモノクローナル抗体が認識しないエピトープを認識し結合することができる抗AFPモノクローナル抗体を必要とする。
「プラズモン励起センサに含まれるリガンドとは同じであっても異なっていてもよいリガンドと蛍光を消光または吸収し得る化合物とのコンジュゲート」の作製方法としては、リガンドとして上記「2次抗体」を用いる場合、例えば、まず消光剤にカルボキシル基を付与し、該カルボキシル基を、水溶性カルボジイミド(WSC)(例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)など)とN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)とにより活性エステル化し、次いで活性エステル化したカルボキシル基と2次抗体が有するアミノ基とを水溶性カルボジイミドを用いて脱水反応させ固定化させる方法;イソチオシアネートおよびアミノ基をそれぞれ有する2次抗体および消光剤を反応させ固定化する方法;スルホニルハライドおよびアミノ基をそれぞれ有する2次抗体および消光剤を反応させ固定化する方法;ヨードアセトアミドおよびチオール基をそれぞれ有する2次抗体および消光剤を反応させ固定化する方法;ビオチン化された消光剤とストレプトアビジン化された2次抗体とを反応させ固定化する方法などが挙げられる。
このように作製された「プラズモン励起センサに含まれるリガンドとは同じであっても異なっていてもよいリガンドと蛍光を消光または吸収し得る化合物とのコンジュゲート」の送液中の濃度は、0.001〜10,000μg/mLが好ましく、1〜1,000)μg/mLがより好ましい。
送液を循環させる温度、時間および流速は、それぞれ上記工程(a)の場合と同様である。
また、工程(b)と下記工程(c)との間に、上記洗浄工程を含むことが好ましい。
(工程(c))
工程(c)とは、上記工程(b)、好ましくは上記洗浄工程を経て得られたプラズモン励起センサに、上記金属薄膜を形成していない上記透明平面基板の片面から、プリズムを経由してレーザ光を照射し、励起された蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程である。
レーザ光は、光学フィルタを通して、プリズムに入射する直前のエネルギーおよびフォトン量を調節することが望ましい。
レーザ光の照射により、全反射減衰条件(ATR)において、金属薄膜の表面に表面プラズモンが発生する。表面プラズモンの電場増強効果により、照射したフォトン量の数十〜数百倍に増えたフォトンにより蛍光色素を励起する。なお、該電場増強効果によるフォトン増加量は、基板となるガラスの屈折率、金属薄膜の金属種および膜厚に依存するが、通常、金では約10〜20倍の増加量となる。
蛍光色素は光吸収により分子内の電子が励起され、短時間のうちに第一電子励起状態に移動し、この状態(準位)から基底状態に戻る際、そのエネルギー差に相当する波長の蛍光を発する。
しかしながら、蛍光色素の基底状態から第一電子励起状態に移行する際に必要なエネルギーに相当するエネルギーを吸収することができる消光剤が近傍にあると、蛍光色素から消光剤へエネルギーが移動し、蛍光色素は蛍光を発生することなく第一電子励起状態から基底状態に戻ってしまう。この現象を消光という。
消光剤により消光されなかった蛍光は、カットフィルタを通して、集光レンズによりSPFS検出部に入射し、入射光のカウント値を測定する。
「レーザ光」の光源としては、例えば、波長400〜840nm、入射光量として1mW程度のレーザ光を照射できるLED、波長230〜800nm(金属薄膜に用いる金属種によって共鳴波長が決まる。)、0.01〜100mWのレーザ光を照射できる半導体レーザ(LD)などが挙げられる。これら光源のうち、SPRではLED、LDともに用いることができるが、SPFSでは蛍光色素を励起するために高エネルギーが必要であり、高感度の観点から、LDが好ましい。
「プリズム」は、各種フィルタを介したレーザ光が、プラズモン励起センサに効率よく入射することを目的としており、屈折率が上記「透明平面基板」と同じであることが好ましい。本発明は、全反射条件を設定できる各種プリズムを適宜選択することができることから、角度、形状に特に制限はなく、例えば、60度分散プリズムなどであってもよい。このようなプリズムの市販品としては、上述した「ガラス製の透明平面基板」の市販品と同様のものが挙げられる。
「光学フィルタ」としては、例えば、減光(ND)フィルタ、ダイアフラムレンズなどが挙げられる。
「減光(ND)フィルタ」(または、中性濃度フィルタ)は、入射レーザ光量を調節することを目的とするものである。特に、ダイナミックレンジの狭い検出器を使用するときには精度の高い測定を実施する上で用いることが好ましい。
「偏光フィルタ」は、レーザ光を、表面プラズモンを効率よく発生させるP偏光とするために用いられるものである。
「カットフィルタ」は、外光(装置外の照明光)、励起光(励起光の透過成分)、迷光(各所での励起光の散乱成分)、プラズモンの散乱光(励起光を起源とし、プラズモン励起センサ表面上の構造体または付着物などの影響で発生する散乱光)、酵素蛍光基質の自家蛍光、などの各種ノイズ光を除去するフィルタであって、例えば、干渉フィルタ、色フィルタなどが挙げられる。
「集光レンズ」は、検出器に蛍光シグナルを効率よく集光することを目的とするものであり、任意の集光系でよい。簡易な集光系として、顕微鏡などで使用されている、市販の対物レンズ(例えば、(株)ニコン製またはオリンパス(株)製等)を転用してもよい。対物レンズの倍率としては、10〜100倍が好ましい。
「SPFS検出部」としては、超高感度の観点からは光電子増倍管(浜松ホトニクス(株)製のフォトマルチプライヤー)が好ましい。また、これらに比べると感度は下がるが、画像として見ることができ、かつノイズ光の除去が容易なことから、多点計測が可能なCCDイメージセンサも好適である。
(工程(d))
工程(d)とは、上記工程(c)で得られた測定結果から、検体中に含有されるアナライト量を算出する工程である。
より具体的には、既知濃度のアナライトでの測定を実施することで検量線を作成し、作成された検量線に基づいて被測定検体中のアナライト(標的抗原)を測定シグナルから算出する工程である。
「アナライト(標的抗原)」としては、上記「誘電体からスペーサ層」に固定化された「蛍光色素により標識されたリガンド」を特異的に認識され(または、認識し)結合し得る分子または分子断片であって、このような「分子」または「分子断片」としては、例えば、核酸(一本鎖であっても二本鎖であってもよいDNA、RNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、PNA(ペプチド核酸)等、またはヌクレオシド、ヌクレオチドおよびそれらの修飾分子)、タンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチド等)、アミノ酸(修飾アミノ酸も含む。)、糖質(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等)、脂質、またはこれらの修飾分子、複合体などが挙げられ、具体的には、AFP(αフェトプロテイン)等のがん胎児性抗原や腫瘍マーカー、シグナル伝達物質、ホルモンなどであってもよく、特に限定されない。
さらに、工程(d)は、上記工程(c)の前に測定したブランク蛍光シグナル、上記工程(c)で得られたアッセイ蛍光シグナル、および何も修飾していない金基板を流路に固定し、超純水を流しながらSPFSを測定して得られたシグナルを初期ノイズとしたとき、下記式で表されるアッセイS/N比を算出することができる。
アッセイS/N比=|(アッセイ蛍光シグナル)−(ブランク蛍光シグナル)|/(初期ノイズ)
<装置>
本発明の装置は、上記工程(c)に用いられることを特徴とするものである。
すなわち、本発明の装置は、本発明のプラズモン励起センサを用いて、本発明のアッセイ法を実施するためのものである。
「装置」としては、少なくとも光源、光学フィルタ、プリズム、流路とプラズモン励起センサと送液ポンプと、カットフィルタ、集光レンズおよびSPFS検出部を含むものとする。また、表面プラズモン共鳴(SPR)検出部、すなわちSPR専用の受光センサとしてのフォトダイオード、SPRおよびSPFSの最適角度を調製するための角度可変部(サーボモータで全反射減衰(ATR)条件を求めるためにフォトダイオードと光源とを同期して、45〜85°の角度変更する。分解能は0.01°以上が好ましい。)、SPFS検出部に入力された情報を処理するためのコンピュータなども含んでもよい。
光源、光学フィルタ、カットフィルタ、集光レンズおよびSPFS検出部の好ましい態様は上述したものと同様である。
「送液ポンプ」としては、例えば、送液が微量な場合に好適なマイクロポンプ、送り精度が高く脈動が少なく好ましいが循環することができないシリンジポンプ、簡易で取り扱い性に優れるが微量送液が困難な場合があるチューブポンプなどが挙げられる。
<キット>
本発明のキットは、本発明のアッセイ法に用いられることを特徴とするものであって、本発明のアッセイ法を実施するにあたり、検体、1次抗体および2次抗体以外に必要とされるすべてのものを含むことが好ましい。
例えば、本発明のキットと、検体として血液と、特定の腫瘍マーカーに対する抗体とを用いることによって、特定の腫瘍マーカーの含有量を、高感度かつ高精度で検出することができる。この結果から、触診などによって検出することができない前臨床期の非浸潤癌(上皮内癌)の存在も高精度で予測することができる。
このような「キット」としては、具体的に、透明平面基板上に金属薄膜、誘電体からなるスペーサ層をこの順に形成させたもの;蛍光色素;蛍光色素をリガンドに標識するための試薬類(例えば、水溶性カルボジイミド(EDC)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)など);シランカップリング剤;検体を溶解または希釈するための溶解液または希釈液;プラズモン励起センサと検体とを反応させるための各種反応試薬および洗浄試薬;蛍光を消光または吸収し得る化合物(例えば、BHQ−3など);2次抗体に、蛍光を消光または吸収し得る化合物を固定化するための各種試薬(例えば、水溶性カルボジイミド(EDC)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)など)が挙げられ、本発明のアッセイ法を実施するために必要とされる各種器材または資材や上記「装置」を含めることもできる。
さらに、キット要素として、検量線作成用の標準物質、説明書、多数検体の同時処理ができるマイクロタイタープレートなどの必要な器材一式などを含んでもよい。
次に、本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例1〜7および比較例1,2は、サンドイッチイムノアッセイ法を、実施例8〜14および比較例3,4は、競合イムノアッセイ法を実施した。
[作製例1](消光剤を固定化した2次抗体の作製)
BHQ−2ならびにBHQ−3(バイオサーチテクノロジーズ ジャパンBTJ(株)製/(株)日本バイオサービス製)およびDABCYL(Integrated DNA Technologies社製)を、それぞれ抗αフェトプロテイン(AFP)モノクローナル抗体(1D5、2.5mg/mL、(株)日本医学臨床検査研究所製)に固定化した。
具体的には、消光剤のカルボキシル基と抗体のアミノ基とをアミノカップリング法により反応させた。
[作製例2](消光剤を固定化し、競合抗原と複合化した2次抗体の作製)
BHQ−2、BHQ−3(バイオサーチテクノロジーズ ジャパンBTJ(株)製/(株)日本バイオサービス製)およびDABCYL(Integrated DNA Technologies社製)を、2次抗体として抗αフェトプロテイン(AFP)モノクローナル抗体(1D5、2.5mg/mL、(株)日本医学臨床検査研究所製)にそれぞれアミノカップリング法により固定化した。さらに過剰量のAFPを混合し、消光剤を固定化した2次抗体に複合化した後、遠心分離およびクロマトグラフィーを用いて精製した。
[作製例3](蛍光色素を標識したリガンドの作製)
蛍光色素(Cy3(登録商標)、Cy5(登録商標)、Alexa Fluor(登録商標)633,647またはTRITC)により、リガンドとして1次抗体である抗αフェトプロテイン(AFP)モノクローナル抗体(6D2、2.5mg/mL、(株)日本医学臨床検査研究所製)をアミノカップリング法により標識した。標識されなかった1次抗体を除去するため、さらに遠心分離およびクロマトグラフィーを用いて精製した。
[実施例1]
AFP(抗原)が微量な領域(pmol/L〜fmol/L)でSPFSを用いてアッセイを行う。
(プラズモン励起センサの作製)
屈折率〔nd〕1.52、厚さ1mmで外形が20mm×20mmのガラス製の透明平面基板(SCHOTT AG社製のBK7)をプラズマ洗浄し、該基板の片面にクロム薄膜をスパッタリング法により形成した後、その表面にさら金薄膜をスパッタリング法により形成した。クロム薄膜の厚さは2nm、金薄膜の厚さは48nmであった。
金薄膜の、クロム薄膜とは接していない片面に対して、誘電体として二酸化ケイ素(SiO2)からなるスペーサ層をスパッタリング法により形成した。該スペーサ層の厚さは、10nmであった。
このようにして得られた基板を、7−カルボキシ−ヘプチルトリエトキシシランを5重量%含む50%エタノール水溶液に浸漬し、30℃で30分間反応させた後、100℃で30分間乾燥を行った。これにより、該スペーサ層の上に、シランカップリング剤からなるSAMが形成された。
上記スペーサ層にシランカップリング剤処理を行った表面に、2mm×10mmの流路を有する、外形が20mm×20mm、厚さ0.5mmのポリジメチルシロキサン(PDMS)製スペーサを設け、蛍光色素層表面が流路の内側となるように基板を配置する、次に液体を出し入れする貫通穴を2個有する厚さ4mmで同外形のポリメチルメタクリレート板を流路の外側から基板を覆うように乗せ圧着し、ビスで流路と該ポリメチルメタクリレート板とを固定した。
送液として超純水を10分間、その後PBSを30分間、ペリスタポンプにより、30℃、流速500μL/minで循環させた。送液の総量は15mLである。
ここで、光源としてLDレーザを用いて、波長633nmのレーザ光を照射し、光学フィルタとして減光フィルタ(中性濃度フィルタ)を用いてフォトン量を調節し、シグマ光機(株)製の60度プリズムを通して、流路に固定されているリガンド固定化前のプラズモン励起センサに照射し、表面プラズモンの測定を開始した。
さらに、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)を50mMと、水溶性カルボジイミド(WSC)を100mMとを含むPBSを5mL添加し(終濃度はそれぞれNHS:50mM、WSC:100mM)、20分間循環させた後に、作製例3で得られたリガンド(蛍光色素としてCy5(登録商標)により標識された1次抗体)40μL、を2時間循環させて、プラズモン励起センサを作製した。表面プラズモンで共鳴角のシフトを測定しリガンドの固定化を確認した。固定化量は400ng/cm2であった。さらに、重量1%牛血清アルブミン(BSA)を含むPBS緩衝生理食塩水にて30分間循環送液することで、非特異吸着防止処理を行った。
(アッセイ法の実施)
工程(a):送液をPBSに代え、AFPを20ng/mL含むPBSを5mL添加し、30分間循環させた。
洗浄工程:Tween20を0.05重量%含むPBSを送液として10分間循環させることによって洗浄した。ここで表面プラズモンを測定し最適角に固定した後、LDレーザを用いて流路に固定されているプラズモン励起センサに照射し、カットフィルタとして(日本真空光学社製)、集光レンズとして20倍の対物レンズ((株)ニコン製)を用いてCCDイメージセンサ(テキサスインスツールメント社製)を通してSPFSによる蛍光を検出し、ブランクの蛍光とした。
工程(b):作製例1で得られた二次抗体を1,000ng/mL含むPBSを5mL添加し、30分間循環させた。
洗浄工程:Tween20を0.05重量%含むPBSを送液として20分間循環させることによって洗浄した。
工程(c):洗浄開始から20分後のCCDから観察したときのSPFSシグナル値を計測しアッセイシグナルとした。なお、別途金基板に何も修飾していないもう一方の流路をSPFSに設置し超純水を流しながら共鳴角を、表面プラズモン測定を元に再設定し、SPFSを測定して得られたシグナルを「初期ノイズ」とした。
工程(d):(アッセイS/N比の評価)。
また、本発明のプラズモン励起センサにおけるアッセイ測定開始前のブランクの蛍光シグナルおよび比較サンプルのアッセイ開始前のブランクの蛍光シグナルを「ブランク蛍光シグナル」とし、「アッセイ蛍光シグナル」と「ブランク蛍光シグナル」との関係から、以下の式でS/N比を評価した。すなわち、抗原量に比例する2次抗体量により変化するアッセイ蛍光シグナルの数値の絶対値が大きく、また初期ノイズに対して数値的に充分大きいことがアッセイシグナルの信頼性が高いことになる。
アッセイS/N比=|(アッセイ蛍光シグナル)−(ブランク蛍光シグナル)|/(初期ノイズ)
得られた結果を表3に示す。
[実施例2]
実施例1において、蛍光色素をAlexa Fluor(登録商標)647に変更した以外は実施例1と同様にして本発明のプラズモン励起センサを作製し、アッセイ法を実施した。得られた結果を表3に示す。
[実施例3]
実施例1において、蛍光色素をAlexa Fluor(登録商標)633に変更した以外は実施例1と同様にして本発明のプラズモン励起センサを作製し、アッセイ法を実施した。得られた結果を表3に示す。
[実施例4]
実施例1において、金属種を銀に、金属薄膜の厚さを45nmとし、蛍光色素をTRITCに、レーザ光の波長を532nmとした以外は実施例1と同様にして本発明のプラズモン励起センサを作製し、アッセイ法を実施した。得られた結果を表3に示す。
[実施例5]
実施例4において、金属種をアルミニウムに、金属薄膜の厚さを15nmとした以外は実施例4と同様にして本発明のプラズモン励起センサを作製し、アッセイ法を実施した。得られた結果を表3に示す。
[実施例6]
実施例5において、金属薄膜の厚さを20nmとした以外は実施例5と同様にして本発明のプラズモン励起センサを作製し、アッセイ法を実施した。得られた結果を表3に示す。
[実施例7]
実施例6において、蛍光色素をCy3(登録商標)に変更した以外は実施例6と同様にして本発明のプラズモン励起センサを作製し、アッセイ法を実施した。得られた結果を表3に示す。
[比較例1]
(プラズモン励起センサの作製)
屈折率〔nd〕1.52、厚さ1mmで外形が20mm×20mmのガラス製の透明平面基板(SCHOTT AG社製のBK7)をプラズマ洗浄し、該基板の片面にクロム薄膜をスパッタリング法により形成した後、その表面にさら金薄膜をスパッタリング法により形成した。クロム薄膜の厚さは2nm、金薄膜の厚さは48nmであった。
このような基板を、10−カルボキシ−1−デカンチオールを1mM含むエタノール溶液に24時間以上浸漬し、金薄膜の片面にSAMを形成した。基板を該溶液から取り出し、エタノールおよびイソプロパノールで洗浄した後、エアガンで乾燥させた。
SAMの表面に、流路高さ0.5mmを有するポリジメチルシロキサン(PDMS)製シートを設け、さらにポリメチルメタクリレー製天板を配置して同様なプラズモン励起センサを作成した。送液として超純水を10分間、その後PBSを20分間、ペリスタポンプにより、室温、流速500μL/minで循環させ、その表面を平衡化した。
続いて、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)を50mMと、水溶性カルボジイミド(WSC)を100mMとを含むPBSを5mL送液し、20分間循環送液させた後に、作製例3で得られたリガンド(Alexa Fluor(登録商標)647を標識した1次抗体)溶液2.5mLを30分間循環送液することで、SAM上に該リガンドを固相化した。重量1%牛血清アルブミン(BSA)を含むPBS緩衝生理食塩水にて30分間循環送液することで、非特異吸着防止処理を行った。
(アッセイ法の実施)
送液をPBSに代え、AFPを10ng/mL含むPBS溶液を5mL添加し、30分間循環させた。
Tween20を0.05重量%含むTBSを送液として10分間循環させることによって洗浄した。
消光剤を標識しない2次抗体(1,000ng/mLとなるように調製したPBS溶液)を2.5mL添加し、30分間循環させた。
その後、Tween20を0.05重量%含むTBSを送液として20分間循環させることによって洗浄した。
共鳴角を最適にしてCCDから観察したときのシグナル値を計測しアッセイシグナルとした。なお、AFPを0ng/mL時のSPFS測定シグナルをブランクシグナルとした。アッセイ評価としては実施例1と同様のアッセイS/N比を算出することで評価した。得られた結果を表3に示す。
[比較例2]
比較例1において、金属種をアルミニウムに、金属薄膜の厚さを20nmとして、蛍光色素をCy3(登録商標)に変更した以外は比較例1と同様にしてアッセイ法を実施した。得られた結果を表3に示す。
表3から、アッセイS/N比では元の蛍光量に対して変化した測定蛍光量を求めており、測定における数値の信頼可能なダイナミックレンジを示す、さらにベースとなる基板のノイズレベルで除することによりノイズレベルを加えた信頼限界を求めることができる。すなわち、アッセイS/N比が高いほど、測定抗原量に対してより精度ある数値を提供していることになる。
本発明に係る、蛍光色素で標識した1次抗体を固定化し、かつ消光色素を2次抗体に結合した実施例においてはいずれも、比較例1および2に比べて高い蛍光シグナル値を有しており、単位抗原当たり、より多くの蛍光色素で信号を担っており数値の信頼性が高いことがわかった。またアッセイS/N比が比較例よりも桁違いに高いため測定感度もより高く設定できることがわかった。
[実施例8]
実施例1で作製したプラズモン励起センサを用いて、作製例2で得られた消光剤が標識された2次抗体をAFPと複合体させたコンジュゲートを用いた以外は実施例1と同様の操作で競合イムノアッセイ法を実施した。得られた結果を表4に示す。
[実施例9]
実施例2で作製したプラズモン励起センサを用いて、作製例2で得られた消光剤が標識された2次抗体をAFPと複合体させたコンジュゲートを用いた以外は実施例2と同様の操作で競合イムノアッセイ法を実施した。得られた結果を表4に示す。
[実施例10]
実施例3で作製したプラズモン励起センサを用いて、作製例2で得られた消光剤が標識された2次抗体をAFPと複合体させたコンジュゲートを用いた以外は実施例3と同様の操作で競合イムノアッセイ法を実施した。得られた結果を表4に示す。
[実施例11]
実施例4で作製したプラズモン励起センサを用いて、作製例2で得られた消光剤が標識された2次抗体をAFPと複合体させたコンジュゲートを用いた以外は実施例4と同様の操作で競合イムノアッセイ法を実施した。得られた結果を表4に示す。
[実施例12]
実施例5で作製したプラズモン励起センサを用いて、作製例2で得られた消光剤が標識された2次抗体をAFPと複合体させたコンジュゲートを用いた以外は実施例5と同様の操作で競合イムノアッセイ法を実施した。得られた結果を表4に示す。
[実施例13]
実施例6で作製したプラズモン励起センサを用いて、作製例2で得られた消光剤が標識された2次抗体と複合体させたコンジュゲートを用いた以外は実施例6と同様の操作で競合イムノアッセイ法を実施した。得られた結果を表4に示す。
[実施例14]
実施例7で作製したプラズモン励起センサを用いて、作製例2で得られた消光剤が標識された2次抗体をAFPと複合体させたコンジュゲートを用いた以外は実施例7と同様の操作で競合イムノアッセイ法を実施した。得られた結果を表4に示す。
[比較例3]
比較例1で作製したプラズモン励起センサを用いて、消光剤を標識しない2次抗体をAFPと複合体化させたコンジュゲートを用いた以外は比較例1と同様の操作で競合イムノアッセイ法を実施した。得られた結果を表4に示す。
[比較例4]
比較例2で作製したププラズモン励起センサを用いて、消光剤を標識しない2次抗体をAFPと複合体化させたコンジュゲートを用いた以外は比較例2と同様の操作で競合イムノアッセイ法を実施した。得られた結果を表4に示す。
表4から、本発明の蛍光シグナル数値は充分高い値を示し、抗原の存在量を充分な精度で測定可能なことを示している。また、上述したように、アッセイS/N比も高い値を示し信頼性が高いことが確認できた。一方、比較例の競合アッセイにおいて、競合系なので蛍光シグナル値は高い数値を示し抗原存在量に対して充分な蛍光量があるものの、アッセイS/N比は実施例に比べて数値が低く測定値の信頼精度が低いことが示唆された。この結果から推測すると、蛍光色素単独のアッセイ測定系に比較して実施例の消光剤標識2次抗体測定系の方が蛍光量変化に及ぼすダイナミックレンジが広いことを示している。
本発明のプラズモン励起センサは、高感度および高精度であるから、例えば、がん胎児性抗原や腫瘍マーカーなどの生体分子の分子認識反応を利用した選択的バイオセンサやバイオプローブに直接応用できる。
1・・・基板
2・・・1次抗体
3・・・検体中に含有される標的抗原
4・・・2次抗体
5・・・蛍光色素
6・・・2次抗体に固定化されている消光色素
7・・・検体中に含有される標的抗原3とは異なる抗原であって、該標的抗原3と競合する抗原
11・・・透明平面基板の一方の表面に形成された金属薄膜
13・・・表面プラズモンにより励起された蛍光色素が発した蛍光

Claims (13)

  1. 透明平面基板と、
    該基板の表面に形成された金属薄膜と、
    該金属薄膜の、該基板とは接していないもう一方の表面に形成された、誘電体からなるスペーサ層と、
    該スペーサ層の、該金属薄膜とは接していないもう一方の表面に固定化された、蛍光色素により標識されたリガンドと
    を含むことを特徴とするプラズモン励起センサ。
  2. 上記金属薄膜が、金、銀、アルミニウム、銅および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属から形成されている請求項1に記載のプラズモン励起センサ。
  3. 上記金属が、金からなる請求項2に記載のプラズモン励起センサ。
  4. 上記誘電体が、二酸化ケイ素(SiO4)または二酸化チタン(TiO2)層を含む請求項1〜3のいずれかに記載のプラズモン励起センサ。
  5. 上記リガンドが、シランカップリング剤からなるSAM(自己組織化単分子膜)を介して上記スペーサ層に固定化されている請求項1〜4のいずれかに記載のプラズモン励起センサ。
  6. 上記リガンドが、腫瘍マーカーまたはがん胎児性抗原を認識し結合する1次抗体である請求項1〜5のいずれかに記載のプラズモン励起センサ。
  7. 下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とするアッセイ法。
    工程(a):請求項1〜6のいずれかに記載のプラズモン励起センサに、検体を接触させる工程、
    工程(b):該工程(a)を経て得られたプラズモン励起センサに、さらに、該プラズモン励起センサに含まれるリガンドとは同じであっても異なっていてもよいリガンドと蛍光を消光または吸収し得る化合物とのコンジュゲートを反応させる工程、
    工程(c):該工程(b)を経て得られたプラズモン励起センサに、上記透明平面基板の、上記金属薄膜を形成していないもう一方の表面から、プリズムを経由してレーザ光を照射し、励起された蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程、および
    工程(d):該工程(c)で得られた測定結果から、検体中に含有されるアナライト量を算出する工程。
  8. 上記アナライトに、上記コンジュゲートが結合する請求項7に記載のアッセイ法。
  9. 上記アナライトとは異なるアナライトであって、上記アナライトと競合するアナライトが、上記コンジュゲートと予め結合している請求項7に記載のアッセイ法。
  10. 上記検体が、血液、血清、血漿、尿、鼻孔液および唾液からなる群から選択される少なくとも1種の体液である請求項7〜9のいずれかに記載のアッセイ法。
  11. 上記アナライトが、腫瘍マーカーまたはがん胎児性抗原である請求項7〜10のいずれかに記載のアッセイ法。
  12. 請求項7に記載の工程(c)に用いられることを特徴とする装置。
  13. 請求項7〜11のいずれかに記載のアッセイ法に用いられることを特徴とするキット。
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