JP2010168618A - ロール・ツー・ロール真空成膜装置による成膜方法及びそのロール清掃方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ロール・ツー・ロール真空成膜装置内のロールに付着している異物を除去する簡単且つ有効な清掃方法、並びに、これにより金属層の微小な凹凸欠陥の発生を削減することが可能な成膜方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも長尺樹脂フィルムFの幅と同じ幅を有し且つ貼り剥がし可能な長尺粘着シートを、真空成膜室1の内部に設けたキャンロール6などの各ロールに沿って搬送させ、各ロールに付着している異物を除去する。その後、長尺樹脂フィルムFを清掃済の各ロールに沿って搬送させ、長尺樹脂フィルムFの表面に金属薄膜を成膜する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ロール・ツー・ロール真空成膜装置を用いた長尺樹脂フィルムへの成膜方法、並びにロール・ツー・ロール真空成膜装置のロールの清掃方法に関する。
フレキシブル性を有する樹脂フィルムは加工が容易であるため、その表面に金属膜や酸化物膜を形成することによって、電子部品や光学部品、包装材料などとして広く使用されている。例えば、液晶ディスプレイのドライバ回路には、フレキシブル性と微細配線に対応する特性を持つフレキシブルプリント配線基板によるCOF(Chip on Film)が採用されている。また、携帯電話などの小型電子機器にも、フレキシブル配線基板が使用されている。
COF用の基板やフレキシブル配線基板は、金属化ポリイミドフィルムを用いてサブトラクティブ法等により製造される。上記金属化ポリイミドフィルムとしては、従来から銅箔とポリイミドフィルムを接着剤を用いて張り合わせたものが主流であった。この銅箔とポリイミドフィルムの間に接着剤を用いた三層金属化ポリイミドフィルムは、フレキシブルプリント配線板として使用されている。
近年では、電子部品の軽薄短小化に伴い、配線の狭ピッチ化に対する要求が高まっている。この要求に対し、三層金属化ポリイミドフィルムについても微細配線が描ける基材が要求される中で、接着剤層の無い二層構造の金属化ポリイミドフィルムが要求され、実用化されている。二層構造の金属化ポリイミドフィルムは、接着剤層の特性に影響を受けることなく、ポリイミド本来の安定性を利用した微細配線が得られるためである。
本明細書では、以後、上記二層構造の金属化ポリイミドフィルムを金属化ポリイミドフィルムと称する。この金属化ポリイミドフィルムの製造方法としては、ロール・ツー・ロール真空成膜装置などを使用して、ポリイミドフィルムの表面に蒸着法若しくはスパッタリング法により金属薄膜を積層させた後、その金属薄膜の上に電気めっき法あるいは無電解めっき法を用いて金属層を厚付けする方法が知られている。
ところで、金属化ポリイミドフィルムには、金属層に大きさ数μm〜数百μmの微小な凹凸が欠陥として存在しやすいという問題がある。このような微小な凹凸の発生原因としては、成膜工程において微小な異物がフィルム表面に付着することが挙げられる。具体的には、フィルム表面に付着したに異物が金属薄膜の積層を阻害することで凹状の欠陥となり、あるいは異物の上に金属薄膜が積層されることで凸の欠陥が発生する。
このため、金属化ポリイミドフィルムを製造する過程の環境をクリーン化することが要求されており、ロール・ツー・ロール真空成膜装置についても成膜開始前に清掃を実施することで異物の付着を軽減させる取り組みがなされている。例えば、スパッタリング法などにより成膜が終了すると、真空状態の装置内を大気圧に戻して金属化ポリイミドフィルムを取り出し、作業者が装置内部を清掃した後、次の成膜が行なわれている。
しかし、ロール・ツー・ロール真空成膜装置では、フィルム搬送用に多くのロールが配置されているため、作業者による清掃作業は容易ではない。また、真空成膜装置内を成膜時の真空状態から大気圧に戻す際に、あるいは作業者が無塵布などで異物を拭き取る際に、装置内の床などに堆積していた異物が発塵してロールに付着しやすいため、このロールに付着した異物が更にフィルムに転写して微小な凹凸欠陥を発生させてしまう。
一方、異物が原因となる微小な凹凸欠陥を削減する方法として、特開2008−050638号公報(特許文献1)には、ロール・ツー・ロール真空成膜装置内に微粘着ロールを配置して、成膜後の金属薄膜形成面の反対面(裏面)に付着した異物を微粘着ロールで除去してから、金属薄膜付の樹脂フィルムを巻き取る方法が開示されている。
しかしながら、この方法では、成膜後の樹脂フィルムを巻き取る際にフィルム裏面から金属薄膜形成面上に異物が転写されることは防止できるのの、最初の金属薄膜の成膜時に各種ロールからフィルム表面に異物が付着することを防ぐことはできない。そのため、最初の金属薄膜上に次の金属薄膜を形成する際に異物を巻き込むことが避けられず、金属層の微小な凹凸欠陥の発生を根本からなくすことは不可能であった。
また、真空成膜装置のロールに付着した異物を清掃除去する手法として、各ロールに対してそれぞれエラストマー製の清掃用粘着性ロール等を接触させて、ロールに付着している異物を除去する方法も考えられる。しかし、各ロールに清掃用粘着性ロールを接触するには、ロールの本数分の清掃用粘着性ロールを設置する必要があると共に、各ロールに清掃用粘着性ロールを密着させる機械的又は電気的な制御機構を導入する必要がある。
しかも、清掃用粘着性ロールの設置は、ロール・ツー・ロール真空成膜装置の構造を複雑にするので、メンテナンス性を害し、更にはロール・ツー・ロール真空成膜装置の故障の原因となりやすい。このような事情から、異物が原因となる微小な凹凸欠陥をなくすために、成膜装置のロールから異物を清掃除去するための簡単で且つ有効な方法は提案されていない現状である。
特開2008−050638号公報
本発明は、上記した従来の事情に鑑み、ロール・ツー・ロール真空成膜装置内のロールを清掃し、ロールに付着している異物を除去することができる簡単で且つ有効な清掃方法を提供すること、並びに、これにより樹脂フィルムへの異物の付着を抑制し、金属層の微小な凹凸欠陥の発生を削減することが可能な成膜方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者は、ロール・ツー・ロール真空成膜装置により金属薄膜を成膜する場合、異物が原因となる微小な凹凸欠陥を削減する方法について鋭意研究した結果、微粘着性を有するゴム状の長尺シートを各ロールに沿って搬送させることが簡便且つ有効であることを見出し、本発明に至ったものである。
即ち、本発明が提供する長尺樹脂フィルムへの成膜方法は、ロール・ツー・ロール真空成膜装置により長尺樹脂フィルムの表面に金属薄膜を成膜する際に、少なくとも長尺樹脂フィルムの幅と同じ幅を有し且つ貼り剥がし可能な長尺粘着シートをロール・ツー・ロール真空成膜装置内の各ロールに沿って搬送させた後、長尺樹脂フィルムを各ロールに沿って搬送させて該長尺樹脂フィルムの表面に成膜を行うことを特徴とする。
上記本発明による長尺樹脂フィルムへの成膜方法においては、前記長尺樹脂フィルムの搬送方向先端部に長尺粘着シートの後端部を接続し、該長尺粘着シートを大気圧下又は所定の真空下にて搬送し、引き続き該長尺樹脂フィルムを所定の真空下にて搬送させながら、該長尺樹脂フィルムの表面に成膜を行うことができる。
また、本発明が提供するロール・ツー・ロール真空成膜装置のロール清掃方法は、成膜終了後のロール・ツー・ロール真空成膜装置内を大気圧に戻した後、少なくとも長尺樹脂フィルムの幅と同じ幅を有し且つ貼り剥がし可能な長尺粘着シートを、該ロール・ツー・ロール真空成膜装置内の各ロールに沿って搬送することを特徴とするものである。
上記本発明による長尺樹脂フィルムへの成膜方法、及びロール・ツー・ロール真空成膜装置のロール清掃方法において、前記長尺粘着シートは全体又はロールに接する両表面が硬度5°〜30°のエラストマーからなることが好ましく、特に前記長尺粘着シート全体が硬度5°〜30°のシリコンゴムシートからなることが更に好ましい。
本発明によれば、成膜終了後に金属薄膜付の長尺樹脂フィルムを取り出すため真空成膜装置内を成膜時の真空状態から大気圧に戻す際に、装置内の床などに堆積していた異物が発塵してロールに付着するが、このロールに付着した異物を長尺粘着シートに貼り付けて移し取ることで除去できるため、ロールに付着している異物による金属薄膜の微小な凹凸欠陥の発生をなくすことができる。
従って、本発明によれば、上記のごとく長尺粘着シートによりロールに付着した異物を除去した後、引き続き金属薄膜の成膜を行うことによって、清掃した異物のないロールを備えたロール・ツー・ロール真空成膜装置を用いて成膜することができるので、微小な凹凸欠陥のない金属化ポリイミドフィルムを得ることが可能となる。
本発明によるロールの清掃と成膜の実施状態を示すロール・ツー・ロール真空成膜装置の概略の断面図である。
金属化ポリイミドフィルムは、長尺樹脂フィルム(ポリイミドフィルム)の表面に、乾式めっき法にて下地となる金属薄膜と該下地金属薄膜の上に銅の金属薄膜を成膜した後、この第一次金属薄膜層の上に電気めっき法又は無電解めっき法若しくは両者を組み合わせた方法を用いて、第二次金属層である銅層を厚付けして製造する。尚、第一次金属層における下地の金属薄膜はニッケル、クロム又はこれらのいずれか片方又は両方を含む合金からなり、この下地金属薄膜の上に銅の金属薄膜を形成して第一次金属層とする。第一次金属層の厚みは100〜5000Åの範囲であり、めっき法で形成する第二次金属層である銅層の厚みは1〜20μmとする。
本発明における長尺樹脂フィルムへの成膜方法は、上記金属化ポリイミドフィルムを製造する際に、ロール・ツー・ロール真空成膜装置を用いて、長尺樹脂フィルム(ポリイミドフィルム)の表面に蒸着法やスパッタリング法等の乾式めっき法により第一次金属層を成膜する方法に係わるものである。
即ち、本発明の長尺樹脂フィルムへの成膜方法は、少なくとも長尺樹脂フィルムの幅と同じ幅を有し且つ貼り剥がし可能な長尺粘着シートを用い、この長尺粘着シートをロール・ツー・ロール真空成膜装置内の各ロールに沿って搬送させた後、長尺樹脂フィルムを各ロールに沿って搬送させることにより、長尺樹脂フィルムの表面に金属薄膜を成膜するものである。
また、本発明によるロール・ツー・ロール真空成膜装置のロール清掃方法は、成膜終了後のロール・ツー・ロール真空成膜装置内を大気圧に戻した後、少なくとも長尺樹脂フィルムの幅と同じ幅を有し且つ貼り剥がし可能な長尺粘着シートを、ロール・ツー・ロール真空成膜装置内の各ロールに沿って搬送することにより、各ロールに付着している異物を長尺粘着シートに貼着させて除去するものである。
上記長尺粘着シートは、貼り剥がし可能なもの、即ちロール等の対象物に貼り付けることができるタック性と、貼り付けたロール等から引き剥がすことが可能なピール性とを有している。タック性を有しなければロール上の異物を長尺粘着シートに移し取ることができず、ピール性を有しなければ長尺粘着シートを各ロールから引き剥がすことができない。
このような貼り剥がし可能な長尺粘着シートは、人が手作業で張り剥がしできる程度の粘着性を有するものから適宜選択することができる。また、長尺粘着シートは、シート全体がタック性とピール性を有するものでも良いし、両表面にタック性とピール性を有する粘着層を備えたものでもよい。ただし、タック性を実現するために、糊等の粘着剤を用いることは望ましくない。糊等の粘着剤を用いると、ロール表面に糊成分が残留し、この残留した糊成分が異物となって、成膜時に微小な凹凸欠陥の発生につながるからである。
長尺粘着シートは、その全体又はロールに接する両表面が硬度5°〜30°のエラストマーからなることが好ましく、特に全体が硬度5°〜30°のシリコーンゴムのシートからなることが好ましい。硬度が5°〜30°のエラストマーであれば、上記したタック性とピール性を兼ね備え、ロール・ツー・ロール真空成膜装置の各ロールに密着して貼る付け且つ各ロールから容易に引き剥がすことができるからである。
次に、本発明による成膜方法及び清掃方法について、図1に示すロール・ツー・ロール真空成膜装置の一具体例を参照して具体的に説明する。図1のロール・ツー・ロール真空成膜装置はスパッタリング法による成膜装置であり、構成部品のほとんどが収納された真空成膜室1を備えている。真空成膜室1は形状を問わず、通常は直方体状や円筒体状などであるが、10−4Pa〜1Paの範囲に減圧された状態を保持できれば良い。尚、スパッタリング法の代わりに、蒸着法などの公知の真空成膜方法を用いることもできる。
真空成膜室1の内部には、長尺樹脂フィルムFの巻出ロール2と巻取ロール3、長尺樹脂フィルムFを搬送するのためのガイドロール4a、4b、テンションロール5a、5b、及びキャンロール6を備えている。また、キャンロール6の周囲には、スパッタリングカソード7a、7bが配置してある。尚、スパッタリングカソード7a、7bの幅方向の寸法は、長尺樹脂フィルムFの幅より大きければよく、例えば幅500mmの樹脂フィルムFの場合には600mm程度であればよい。キャンロール6は直径400mm以上であれば、2つのスパッタリングカソード7a、7bを対向させることができる。
ロール・ツー・ロール真空成膜装置では、樹脂フィルムFは巻出ロール2から巻き出され、ガイドロール4a、テンションロール5a、キャンロール6、テンションロール5b、ガイドロール4bの順に搬送され、巻取ロール3に巻き取られる。このように上記各ロールに沿って搬送される長尺樹脂フィルムFは、キャンロール6に沿い且つその表面に接触している間に、スパッタリングカソード7a、7bにより金属薄膜が成膜される。
スパッタリング法で成膜する場合、ロール・ツー・ロール真空成膜装置の真空成膜室1内の圧力をまず10−4Pa〜10−3Paの範囲内の圧力まで減圧するが、この減圧時の圧力を到達圧力という。到達圧力まで減圧した後、真空成膜室1内にArガスなどのスパッタリングガスを導入し、10−1Pa〜約1Paの範囲内の圧力に保持してスパッタリングを行う。例えば、スパッタリングカソード7aによりNi−Cr合金などの下地金属薄膜を成膜し、その上にスパッタリングカソード7bによりCuの金属薄膜が成膜される。
上記ロール・ツー・ロール真空成膜装置での成膜が終了すると、表面に第一次金属膜が形成された長尺樹脂フィルムFを真空成膜室1から取り出し、新たな長尺樹脂フィルムFと交換する。その際、成膜時における10−1Pa〜約1Paの減圧状態を大気圧状態に戻すように、真空成膜室1内に大気を導入する。尚、真空成膜室1に導入される大気は、公知のフィルター等で異物が除去されている。
しかし、減圧状態の真空成膜室1内に大気圧になるまで大気を導入すると、乱流が発生するため真空成膜室1の内部に堆積した異物が発塵して舞い上がり、ガイドロール4a、4b、テンションロール5a、5b、キャンロール6の各ロールの表面に付着する。そして、各ロールに異物が付着したままの状態で次の成膜を行うと、得られる金属薄膜ないし第一次金属膜層に異物に起因する微小な凹凸欠陥が多数発生してしまう。
即ち、各ロールを清掃せずに成膜を行うと、ロールに付着していた異物が長尺樹脂フィルム側に移って付着するため、微小な凹凸欠陥が発生し易い。また、成膜開始前に各ロールを拭き取り等の作業方法により清掃する場合でも、各ロールに付着していた異物は清掃によって一時的に除去されるものの、清掃作業中に発塵して舞い上がった異物が各ロールに再び付着するため、やはり長尺樹脂フィルムFに異物が付着して微小な凹凸欠陥の発生を抑制できない。
そこで、本発明では、次の成膜を開始する前に、大気圧に戻した真空成膜室内で、長尺樹脂フィルムの幅とほぼ等しい幅で且つ貼り剥がし可能なタック性とピール性を有する長尺粘着シートを各ロールに沿って搬送させる。即ち、大気圧下の真空成膜室内で長尺粘着シートを搬送させることにより、各ロールに付着している異物を長尺粘着シートに移し取り、全てのロールを清掃することができる。
その後、真空成膜室内を到達圧力まで減圧し、更にスパッタリングガスを導入して所定の真空下にて新たな成膜を開始することにより、微小な凹凸欠陥のない金属薄膜を成膜することができる。尚、到達圧力まで減圧する際には真空成膜室内に大量の気体が導入されることがないので、堆積している異物が発塵して舞い上がる懸念はない。また、到達圧力雰囲気下の真空成膜室内にスパッタリングガスを導入する際には、ガスの導入量からも乱流が生じることはなく、従って発塵の懸念もない。
好ましい形態として、長尺樹脂フィルムの搬送方向先端部に長尺粘着シートの後端部を接続し、長尺粘着シートと長尺樹脂フィルムをこの順に搬送させることによって、各ロールの清掃と長尺樹脂フィルムへの成膜とを連続的に行うことができる。この方法の場合、大気圧下で長尺粘着シートによる清掃を行い、長尺粘着シートを巻取ロールから取り出した後、真空成膜室内を減圧して、所定の真空下にて長尺樹脂フィルムを搬送させながら成膜し、巻取ロールに巻き取ることができる。
また、各ロールに沿って搬送させた長尺粘着シートを取り出すことなく、接続した状態の長尺粘着フィルムと長尺樹脂フィルムを連続的に搬送させて巻取ロールに巻き取りながら、長尺樹脂フィルムに成膜を行うことも可能である。この場合には、上記のごとく大気圧下で長尺粘着シートによる清掃を行った後減圧しても良いが、真空成膜室内を所定の真空状態まで減圧してから、長尺粘着シートと長尺樹脂フィルムを連続的に搬送して、長尺粘着シートによる清掃と長尺樹脂フィルムへの成膜とを連続して行うことも可能である。
このように、長尺粘着シートと長尺樹脂フィルムを長手方向の端部で張り合わせ、連続して各ロールに沿って搬送する方法によれば、巻出ロールへのフィルムの装着時に発塵して異物が舞い上がることがあっても、各ロールに付着した異物を長尺粘着シートによる清掃で除去することができ、且つ清掃後の真空成膜室内に長尺樹脂フィルムを装着する必要がない。従って、各ロールを長尺粘着シートで清掃した後に発塵する恐れがなくなり、全てのロールから異物を完全に取り除いた状態での金属薄膜の成膜が可能となる。
尚、長尺樹脂フィルムとしては、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、液晶ポリマーフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム等を用いることができる。これらのうち、ポリイミドフィルムが電気絶縁性、耐熱性、フレキシブル性などに優れているため特に好ましい。
[実施例1]
図1のロール・ツー・ロール真空成膜装置を使用し、長尺樹脂フィルムFとして長さ1500m及び幅50cmの市販のポリイミドフィルム(宇部興産製、商品名ユーピレックス35SGA)を用い、このポリイミドフィルムを3m/分で搬送させながらスパッタリング法により成膜を行った。スパッタリングカソード7aにはNi−Cr合金ターゲットを、スパッタリングカソード7bにはCuターゲットを用いた。
上記ポリイミドフィルムの搬送方向(巻出方向)先端部に、長さ6m、幅50cm、厚さ200μmで、且つ貼り剥がし可能なタック性とピール性を有するシコーンゴムシートからなる長尺粘着シートの後端部を張り合わせて接続した。この長尺粘着シートを接続したポリイミドフィルムを、前回の成膜が終了して大気圧に戻した後の真空成膜室1の巻出ロール2に装着した。
スパッタリング成膜に先立って、上記シコーンゴムシートからなる長尺粘着シートを巻出ロール2から巻き出し、大気圧下にて搬送速度1m/分及び張力30Nの条件で搬送させて、巻取ロール3に巻き取った。この長尺粘着シートの搬送により、ガイドロール4a、テンションロール5a、キャンロール6、テンションロール5b、ガイドロール4bの各ロールを清掃した。
各ロールの清掃後、真空成膜室1の内部を到達圧力10−4Paまで減圧し、スパッタリングガスのArガスを導入して10−1Paに調整した後、スパッタリン成膜を行って、厚み250ÅのNi−Cr合金の下地金属薄膜及び厚み1000ÅのCu薄膜層を形成して、第一次金属薄膜層付の長尺樹脂フィルムを得た。この第一次金属薄膜層付の長尺樹脂フィルムを真空成膜室1から取り出し、硫酸銅浴での電気めっき法により厚み8μmのCu層を厚付けして金属化ポリイミドフィルムを製造した。
得られた金属化ポリイミドフィルムについて、金属層表面に存在する微小な凹凸欠陥の個数を測定した。即ち、光を金属層表面に入射させて反射した光を信号として画像処理する凹凸欠陥検査装置を使用し、金属化ポリイミドフィルムの全長にわたり金属層表面の凹凸欠陥を検出した。その結果、凹凸欠陥の個数は、金属化ポリイミドフィルムの縦横50mm当たり平均で0.96個と実用上問題のないレベルであった。
[比較例1]
上記実施例1と同様の方法で金属化ポリイミドを製造したが、長尺粘着シートによる各ロールの清掃を行わず、スパッタリング成膜に先立って真空成膜室1内の各ロールを無塵布にて拭き取ることにより清掃した。
得られた金属化ポリイミドフィルムについて、金属層表面に存在する微小な凹凸欠陥の個数を上記と同様の方法にて測定したところ、金属化ポリイミドフィルムの縦横50mm当たり平均で1.26個であり、上記実施例1に比較して欠陥の数が多い結果となった。
1 真空成膜室
2 巻出ロール
3 巻取ロール
4a、4b ガイドロール
5a、5b テンションロール
6 キャンロール
7a、7b スパッタリングカソード

Claims (5)

  1. ロール・ツー・ロール真空成膜装置により長尺樹脂フィルムの表面に金属薄膜を成膜する方法であって、少なくとも長尺樹脂フィルムの幅と同じ幅を有し且つ貼り剥がし可能な長尺粘着シートをロール・ツー・ロール真空成膜装置内の各ロールに沿って搬送させた後、長尺樹脂フィルムを各ロールに沿って搬送させて該長尺樹脂フィルムの表面に成膜を行うことを特徴とする長尺樹脂フィルムへの成膜方法。
  2. 前記長尺樹脂フィルムの搬送方向先端部に長尺粘着シートの後端部を接続し、該長尺粘着シートを大気圧下又は所定の真空下にて搬送し、引き続き該長尺樹脂フィルムを所定の真空下にて搬送させながら、該長尺樹脂フィルムの表面に成膜を行うことを特徴とする、請求項1に記載の長尺樹脂フィルムへの成膜方法。
  3. 前記長尺粘着シートは、全体又はロールに接する両表面が硬度5°〜30°のエラストマーからなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の長尺樹脂フィルムへの成膜方法。
  4. 長尺樹脂フィルムの表面に金属薄膜を成膜するロール・ツー・ロール真空成膜装置のロールの清掃方法であって、成膜終了後のロール・ツー・ロール真空成膜装置内を大気圧に戻した後、少なくとも長尺樹脂フィルムの幅と同じ幅を有し且つ貼り剥がし可能な長尺粘着シートを、該ロール・ツー・ロール真空成膜装置内の各ロールに沿って搬送することを特徴とするロール・ツー・ロール真空成膜装置のロール清掃方法。
  5. 前記長尺粘着シートは、全体又はロールに接する両表面が硬度5°〜30°のエラストマーからなることを特徴とする、請求項4に記載のロール・ツー・ロール真空成膜装置のロール清掃方法。
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