(第1実施形態)
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。尚、図中の同一具号は同一又は相当部分を示す。
(ハイブリッド車両の動力出力装置の基本構成)
先ず、図1を参照して、本発明の内燃機関のトルク推定装置に係る実施形態が適用されるハイブリッド車両の動力出力装置の基本構成について説明する。ここに、図1は、本発明の内燃機関のトルク推定装置に係る実施形態が適用されるハイブリッド車両の動力出力装置の基本構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、本実施形態に係る動力出力装置100は、動力伝達ギヤ111と、駆動軸112と、ディファレンシャルギヤ114と、第1電動発電機MG1と、第2電動発電機MG2と、プラネタリギヤ120と、動力取出ギヤ128と、チェーンベルト129と、エンジン(内燃機関)150と、レゾルバ139及び149と、ダンパ157と、クランク角センサ159と、信号処理装置159aと、回転数センサ169と、制御装置群180とを備える。この制御装置群180は、第1電動発電機MG1を統括制御するモータECU11(以下、適宜「MG1−ECU」と称す)、第2電動発電機MG2を統括制御するモータECU12(以下、適宜「MG2−ECU」と称す)、エンジン150を統括制御するエンジンECU13(以下、適宜「ENG−ECU」と称す)、並びに、モータECU11とモータECU12とエンジンECU13との通信処理を含む各種の制御を行うハイブリッドECU14(以下、適宜「HV−ECU」と称す)を備えて構成されている。特に、これらのMG1−ECU、MG2−ECU、ENG−ECU、並びに、HV−ECUは、夫々、CPU(Central Processing Unit)を備えて構成され、各CPUは、後述されるメイン処理や割込み処理のプログラムをROM(Read Only Memory)から読み出し、各処理を実行してエンジントルクの推定値を算出する。従って、ROMは、エンジントルクの推定値を算出する制御をコンピュータ(即ち、CPU)に実行させるためのプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体に相当する。尚、これらの制御装置の詳細については後述される。
信号処理装置159aは、クランク角センサ159からクランク角信号NEを受けると共に後述される30°CA信号NE2を出力する。
エンジン150のクランクシャフト156は、ダンパ157を介してプラネタリギヤ120、並びに、第1及び第2電動発電機MG1、MG2に接続される。ダンパ157は、エンジン150のクランクシャフト156の捻れ振動の振幅を抑制し、クランクシャフト156をプラネタリギヤ120に接続する。
動力出力ギヤ128は、チェーンベルト129を介して動力伝達ギヤ111に接続される。そして、動力取出ギヤ128は、プラネタリギヤ120のリングギヤ(図示せず)から動力を受け、その受けた動力をチェーンベルト129を介して動力伝達ギヤ111に伝達する。動力伝達ギヤ111は、駆動軸112及びディフェレンシャルギヤ114を介して駆動輪に動力を伝達する。
図2は、本実施形態に係る、図1に示すプラネタリギヤ120及びそれに結合されるエンジン150及び第1及び第2電動発電機MG1、MG2の拡大図である。
図2を参照して、プラネタリギヤ120は、サンギヤ121と、リングギヤ122と、複数のプラネタリピニオンギヤ123と、プラネタリキャリア124とから構成されている。サンギヤ121は、インプットシャフト(キャリア軸)127に軸中心を貫通された中空のサンギヤ軸125に結合されている。リングギヤ122は、インプットシャフト127と同軸のリングギヤ軸126に結合されている。複数のプラネタリピニオンギヤ123は、サンギヤ121とリングギヤ122との間に配置され、サンギヤ121の外周を自転しながら公転する。プラネタリキャリア124は、インプットシャフト127の端部に結合され、各プラネタリピニオンギヤ123の回転軸を軸支する。
このプラネタリギヤ120では、サンギヤ121、リングギヤ122及びプラネタリキャリア124に夫々結合されたサンギヤ軸125、リングギヤ軸126及びインプットシャフト127の3軸が動力の入出力軸とされ、3軸のいずれか2軸へ入出力される動力が決定されると、残りの1軸に入出力される動力は、決定された2軸へ入出力される動力に基づいて定まる。インプットシャフト127は、エンジン150からの動力を受け、本発明に係る「入力軸」の一例を構成する。
尚、サンギヤ軸125及びリングギヤ軸126には、夫々の回転角度θs、θrを検出するレゾルバ139、149が設けられている。
リングギヤ122には、動力の取出し用の動力取出しギヤ128が結合されている。この動力取出ギヤ128は、チェーンベルト129により動力伝達ギヤ111に接続されており、動力取出ギヤ128と動力伝達ギヤ111との間で動力の伝達がなされる。
第1電動発電機MG1は、同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石135を有するロータ132と、回転磁界を形成する3相コイル134が巻き回されたステータ133とを備える。この3相コイル134は、u相、v相及びw相に対応する構成となっている(図1中の「u」、「v」及び「w」を参照)。
ロータ132は、プラネタリギヤ120のサンギヤ121に結合されたサンギヤ軸125に結合されている。ステータ133は、無方向性電磁鋼板の薄板を積層して形成されており、ケース119に固定されている。この第1電動発電機MG1は、永久磁石135による磁界と、3相コイル134によって形成される磁界との相互作用によりロータ132の回転との相互作用によりロータ132を回転駆動する電動機として動作し、永久磁石135による磁界とロータ132の回転との相互作用により3相コイル134の両端に起電力を生じさせる発電機として動作する。
第2電動発電機MG2は、外周面に複数個の永久磁石145を有するロータ142と、回転磁界を形成する3相コイル144が巻き回されたステータ143とを備える。ロータ142は、プラネタリギヤ120のリングギヤ122に結合されたリングギヤ軸126に結合されており、ステータ143はケース119に固定されている。この第2電動発電機MG2も、第1電動発電機MG1と同様に、電動機又は発電機として動作する。
エンジン150は、燃料(例えばガソリン燃料)がシリンダ内に直接噴射される直噴式ガソリンエンジンである。尚、エンジン150は、これに限らず、ポート噴射式のガソリンエンジンであってもよい。クランクシャフト156には、エンジン回転速度を検出するためのクランク角センサ159が設けらている。クランク角センサ159には、内燃機関のみを駆動源とする車両で通常用いられるのを概ね同じ磁気ピックアップセンサが使用されている。
更に、インプットシャフト127には、インプットシャフト127の回転角度を検出するための回転数センサ169が設けらている。回転数センサ169は、クランク角センサ159と概ね同じ磁気ピックアップセンサからなり、かつ、クランク角センサ159と同等レベルの角度分解能を有するものが適用される。
図3は、本実施形態に係るクランク角センサ159及び回転数センサ169の構成を概略的に示した構成図である。尚、両センサは構成が同じであるため、クランク角センサ159を代表的に説明する。
図3に示されるように、クランクシャフト156には、矢印方向に回転されるクランクロータ200が取り付けられている。クランクロータ200の外周には、クランク角検出用として、例えば10°CA(Crank Angle:クランク角)毎の等しい角度間隔にて形成された36歯数のうち2歯連続で欠歯させた欠歯部204が形成されるとともに、34(=36−2)歯数からなる歯部202が形成されている。
クランク角センサ159は、各歯部に対向し、それらの歯部によりクランクシャフト156の回転角度を検出する。クランク角センサ159から出力されるクランク角信号NEは、クランクシャフト156の回転位置が予め設定された特定位置でないときには、所定のクランク角(例えば10°CA)回転する期間を1周期としたパルス信号となり、クランクシャフト156が特定位置に来たときには、クランクシャフト156が30°回転する期間を1周期とした欠歯信号となる。そして、この欠歯信号は、クランクシャフト156が1回転する毎(360°CA毎)に発生する。
前述した図1における信号処理装置159aは、クランク角センサ159からクランク角信号NEを受けると、クランク角信号NE中における欠歯信号の検出動作を開始する。そして、クランク角信号NEが欠歯信号になったことを最初に検出すると、以降、クランク角信号NEを分周して、クランクシャフト156が30°回転する期間を1周期とした(即ち、クランクシャフト156が30°回転する毎(30°CA毎)に立ち上がる)パルス信号としての30°CA信号NE2を生成し出力する。
また、信号処理装置159aは、欠歯信号を検出してから30°CA信号NE2の所定周期期間分の期間に、エンジン150のカム軸の回転に応じてカム角センサ(図示せず)から出力される気筒判別用信号の立上りが判定されると、該判定期間の終了タイミングに基準位置信号TDCsigを生成し出力する。よって、この基準位置信号TDCsigは、クランクシャフト156の回転位置が欠歯信号の発生する特定位置から所定周期分進んだ基準位置に来たときに立ち上がる。信号処理装置159aは、これらの30°CA信号NE2、気筒判別用信号及び基準位置信号TDCsigを含む各種信号に基づき気筒判別を行ったエンジン150を制御している。
回転数センサ169は、クランクシャフト角センサ159と概ね同等レベルの角度分解能を有し、インプットシャフト127の回転速度を検出する。即ち、回転数センサ169からは、インプットシャフト127の回転位置が予め設定された特定位置でないときには、所定の角度(例えば10°CA)回転する期間を1周期としたパルス信号となり、インプットシャフト127が特定位置に来たときには、インプットシャフト127が30°回転する期間を1周期とした欠歯信号となる回転パルス信号NIが出力される。
前述した図1における制御装置群180は、回転数センサ169から回転パルス信号NIを受けると、回転パルス信号NI中における欠歯信号の検出動作を開始する。そして、回転パルス信号NIが欠歯信号になったことを最初に検出すると、以降、回転パルス信号NIを分周して、インプットシャフト127が30°回転する期間を1周期とした(即ち、インプットシャフト127が30°回転する毎(30°CA毎)に立ち上がる)パルス信号としての30°CA信号NI2を生成する。
そして、制御装置群180は、上述したクランクシャフト156についての30°CA信号NE2と、インプットシャフト127についての30°CA信号NI2とに基づいて、クランクシャフト156とインプットシャフト127との相対角度差であるダンパ157の捻れ(ねじれ)角度を算出する。
(制御信号の流れ)
ここで、図4に加えて、上述した図1を適宜参照して、図1に示されるように、本実施形態に係る制御装置群を構成するMG1−ECU、MG2−ECU、ENG−ECU及びHV−ECUにおける各種の制御信号の流れについて説明する。ここに、図4は、本実施形態に係る制御装置群を構成するMG1−ECU、MG2−ECU、ENG−ECU及びHV−ECUにおける各種の制御信号の流れを概念的に示した信号流れ図である。
図4に加えて図1に示されるように、MG1−ECUは、レゾルバ139からのサンギヤ軸125の回転角度θsに関する制御信号、信号処理装置159aからの30°CA信号NE2及び基準位置信号TDCsig、第1電動発電機MG1に取り付けられた電流センサ(図示せず)からのモータ電流MCRT1に関する制御信号を受ける。そして、MG1−ECUは、これら各種の制御信号に基づいて、第1電動発電機MG1の3相コイル134に流す電流を制御して第1電動発電機MG1を駆動する。尚、MG1−ECUは、各種の情報データを記憶する記憶部11m、後述されるメイン処理を実行するメイン処理部11a及び後述される割込み処理を実行する割込み処理部11bを備えて構成される。
MG2−ECUは、レゾルバ149からのリングギヤ軸126の回転角度θrに関する制御信号、信号処理装置159aからの30°CA信号NE2及び基準位置信号TDCsig、第2電動発電機MG2に取り付けられた電流センサ(図示せず)からのモータ電流MCRT2に関する制御信号を受ける。そして、MG2−ECUは、これら各種の制御信号に基づいて、第2電動発電機MG2の3相コイル144に流す電流を制御して第2電動発電機MG2を駆動する。尚、MG2−ECUは、各種の情報データを記憶する記憶部12m、後述されるメイン処理を実行するメイン処理部12a及び後述される割込み処理を実行する割込み処理部12bを備えて構成される。
HV−ECUは、MG1−ECUとENG−ECUとの間での通信制御を行うと共に、MG2−ECUとENG−ECUとの間での通信制御を行う。
ENG−ECUは、信号処理装置159aからの30°CA信号NE2及び基準位置信号TDCsigを受ける。そして、ENG−ECUは、エンジントルクの実際の値として推定される推定値と、エンジントルクの目標値との変化量をゼロに近付けるフィードバック制御を実行してよい。尚、ENG−ECUは、各種の情報データを記憶する記憶部13m、上述したフィードバック制御の処理を含むメイン処理を実行するメイン処理部13aを備えて構成される。
尚、これらのMG1−ECU、MG2−ECU、ENG−ECU及びHV−ECUには、回転数センサ169からのインプットシャフト127の回転パルス信号NI、アクセルペダルポジションセンサ164aからのアクセルペダルポジションAP、ブレーキポジションセンサ185からのシフトポジションSPが入力されてもよい。
また、MG1−ECU又はMG2−ECUは、エンジン150の出力トルクを推定する本発明に係る「推定手段」の一例を構成する。MG1−ECU又はMG2−ECUは、クランクシャフト156の回転角度、サンギヤ軸125の回転角度θs、及びリングギヤ軸126の回転角度θr等に基づいて、後述する方法によってエンジントルクを推定演算する。
(ダンパ157の構成)
エンジン150のクランクシャフト156は、ダンパ157を介してプラネタリギヤ120のインプットシャフト127に連結される。図5は、本実施形態に係る、図2に示すダンパ157の一部切り欠き平面図である。ダンパ157は、以下に述べるように、クランクシャフト156からの捻れ振動を抑制するトルク変動吸収機構を構成する。
図2及び図5を参照して、ダンパ157は、エンジン150のクランクシャフト156に連結してクランクシャフト156と共に回転駆動する駆動側ホイール160と、駆動側ホイール160と同軸上に相対回転可能に配設され、かつインプットシャフト127に連結される従動側ホイール164と、駆動側ホイール160と従動側ホイール164とのそれぞれに対して所定の角度範囲内で相対回転可能に配設される中間部材162とを含む。
更に、ダンパ157は、従動側ホイール164及び中間部材162の窓内に配設されて円周方向に弾縮することで駆動側ホイール160と従動側ホイール164との間の変動トルクを抑制する弾性部材であるトーション部材161と、駆動側ホイール160と従動側ホイール164との間の変動トルクが所定値に達すると駆動側ホイール160から従動側ホイール164への動力の伝達を遮断するトルクリミッタ158とを含む。
このように構成されるダンパ157の作用について説明する。エンジン150のみが駆動した場合には、駆動側ホイール160がエンジン150の駆動に伴って回転する。このとき、エンジン150の慣性による変動トルクが所定値よりも小さい場合には、トルクリミッタ158を介して中間部材162に回転トルクが伝達され、中間部材162が回転する。中間部材162の回転トルクはトーション部材161を介して従動側ホイール164が回転する。このようにして、ダンパ157を介してインプットシャフト127にエンジン150の駆動が伝達される。
そして、上記の状態からエンジン150の駆動トルクが大きくなり、駆動側ホイール160と従動側ホイール164との間の変動トルクが所定値に達すると、トルクリミッタ158における摩擦材が滑り出し、中間部材162と従動側ホイール164との間では所定値以上の変動トルクを伝達しなくなる。
このように、ダンパ157は、トーション部材161及びトルクリミッタ158が駆動側ホイール160と従動側ホイール164との相対回転を抑制することによって、複数の動力源(エンジン150、並びに、第1及び第2電動発電機MG1、MG2)によって生じる変動トルクを抑制しながら伝達する。
その一方で、このダンパ157を介してクランクシャフト156とインプットシャフト127とが連結されていることによって、動力出力装置100では、エンジンのみを動力源とした動力出力装置に適用される従来のエンジンのトルク推定装置を用いた場合に、エンジン150のトルクを正確に推定することができないという問題がある。
即ち、従来のエンジンのトルク推定装置では、上述したように、クランクシャフトの回転角速度に基づいてエンジンのトルクを推定するように構成されている。エンジンのみを動力源とした動力出力装置では、実際のエンジンのトルクを、クランクシャフトに配されたクランク角センサの検出値から算出したクランクシャフトの回転角加速度とエンジンのイナーシャ(所謂、慣性モーメント)とを乗算することによって、容易に推定演算することができるためである。
しかしながら、図1に示されるようなハイブリッド車両の動力出力装置100では、クランクシャフト156の回転状態には、ダンパ157を介して、第1及び第2電動発電機MG1、MG2の回転状態が大きく影響する。即ち、クランクシャフト156には、第1及び第2電動発電機MG1、MG2の回転状態がダンパ157の弾性力となって回転方向に作用することになる。そのため、クランクシャフト156の回転角加速度とエンジンのイナーシャとを乗算して得られるエンジンの出力トルクの推定値とエンジンの出力トルクの実測値との間には、ずれが生じてしまう。
そこで、本実施の形態による動力出力装置100は、エンジントルクの推定原理として、クランクシャフト156の回転角加速度を用いてエンジントルクを推定演算すると共に、その推定演算したエンジントルクを、ダンパ157の捻れ角度を基に算出したダンパ157の弾性力からなる補正項によって補正する構成とする。
このような構成とすることにより、第1及び第2電動発電機MG1、MG2の回転状態が変動したことを受けてクランクシャフト156の回転状態に変動が生じた場合であっても、第1及び第2電動発電機MG1、MG2からの影響をダンパ157に発生した弾性力として定量化することにより、クランクシャフト156の回転状態からこれを排除することが可能となる。その結果、真の燃焼状態に起因して発生するエンジン150の回転状態の変動のみを検出することができるため、エンジン150の異常を正確に検出することも可能となる。
(エンジントルクの推定原理)
以下に、本実施形態に係る内燃機関のトルク推定装置が用いている、エンジントルクの推定原理の一例について説明する。本実施形態に係る内燃機関のトルク推定装置が用いている、エンジントルクの推定は、ダンパ157の捻れ角度を算出すること、及び、ダンパ捻れ角度に基づいて算出した補正項を用いてエンジントルクを推定演算することにより行われる。
一般的に、エンジントルクTeは、通常、クランクシャフト156の回転角加速度dωe/dtとエンジンのイナーシャIeとを乗算することにより推定することができる。
Te=Ie・dωe/dt ・・・(6)
尚、以下では、この式(6)で示されたエンジントルクTeを「エンジンの慣性モーメント項」と称す。ここで、上述したように、本実施の形態による動力出力装置100では、クランクシャフト156は、ダンパ157を介してインプットシャフト127に結合されていることから、第1及び第2電動発電機MG1、MG2の回転状態の影響を受ける。そのため、式(6)により得られた推定トルクと実際のトルクとの間には、ずれが生じている。特に、エンジン150のトルク変動が大きく、トルクリミッタ158が働いた場合には、このずれは大きくなる。
そこで、本実施形態では、次式に示すように、式(6)で算出した推定エンジントルクTeに対して、ダンパ157で発生する弾性力を補正項として加算することによって、エンジントルクを補正する。
TE=Ie・dωe/dt+Tf+Kdamp・(θe − θis)
・・・(7)
但し、Tfはフリクショントルク、Kdampはダンパ157のトーション部材161のばね定数である。但し、θisは、入力軸の回転角度を示し、電動発電機MG1のサンギヤ軸125の回転角度θsと、電動発電機MG2のリングギヤ軸126の回転角度θrから所定の関数や所定のテーブルに基づいて決定することができる。
即ち、式(7)は、次のようにも表現することができる。
TE=
Ie・dωe/dt+Tf+Kdamp・{θe−f(θs、θr)}
・・・(7a)
但し、θi = f(θs、θr) 。
ここに、本実施形態に係る「f(a、b)」は、入力軸の回転角度を、ダンパ157の捻れ角度を考慮しつつ定量的に定義可能な所定の関数を意味する。特に、ダンパ157の捻れ角度は、典型的には、捻れ角度の絶対角度(以下、絶対捻れ角度とも称す)及び捻れ角度の相対角度(以下、相対捻れ角度とも称す)を夫々演算し、これらの演算結果を加算することにより算出されてよい。ここで、捻れ角度の絶対角度(即ち、絶対捻れ角度)は、エンジン150が、エンジントルクが略零とみなせる運転である無負荷運転を行っているときの捻れ角度を原点として、これを基準点とした角度である。従って、絶対捻れ角度は、エンジントルクに応じて変動する変動量である。これに対して、捻れ角度の相対角度(即ち、相対捻れ角度)は、この絶対捻れ角度を中心としてエンジン150の燃焼状態に応じて変動する変動量である。そして、絶対捻れ角度に相対捻れ角度を加算することにより、エンジントルク及び燃焼状態が共に考慮された正確な捻れ角度を求めることができる。
尚、式(7)及び式(7a)の右辺第2項のフリクショントルクTfは、ピストンとシリンダ内壁の摩擦など各係合部の機械的な摩擦によるトルクである。具体的には、エンジン150の回転数、冷却水温及び吸気圧との関係を規定した二次元マップを実験等によって予め作成しておき、当該マップを参照することにより、そのときのエンジン150の運転状態に対応するフリクショントルクTfが求められる。
以上に述べたように、本実施の形態によるエンジントルクの推定演算手段によれば、エンジン150の回転状態から第1及び第2電動発電機MG1、MG2の影響を排除することができるため、燃焼状態に応じて発生するエンジン150の出力トルクを高精度に推定することができる。この結果、エンジン150の異常を正確に検出することが可能となる。
尚、エンジン150の回転状態は、第1及び第2電動発電機MG1、MG2の回転状態だけでなく、車両の走行路の状態(路面の凹凸状態等)からも影響を受けるが、本実施の形態によれば、駆動軸112の回転変動をダンパ157に発生した弾性力として、クランクシャフト156の回転状態からこれを排除することが可能となる。従って、この場合においても、真の燃焼状態に基づくエンジン150の回転状態の変動のみを検出することができるため、エンジン150の異常を正確に検出することが可能となる。
更に、本実施の形態によるエンジントルクの推定演算手段によれば、推定されたエンジン150の出力トルクに基づいてエンジン150の回転状態の変動を正確に検出することが可能となるため、検出されたエンジン150の回転状態の変動を燃料噴射制御及び点火時期制御にフィードバックさせることで、燃焼状態の安定化を図ることができる。
尚、気筒毎にエンジントルクを推定する構成とすれば、気筒間のエンジントルクの偏差を抽出することができるため、複数の気筒に対して、個別に燃料噴射制御及び点火時期制御を行うことも可能となる。
(動作原理)
次に、図6及び図7を参照して、本実施形態に係る内燃機関のトルク推定装置の動作原理について説明する。ここに、図6は、本実施形態に係る内燃機関のトルク推定装置を構成するENG−ECU、MG1−ECU及びMG2−ECUにおいて、割込み処理が発生しない場合と割込み処理が発生した場合とにおける、制御処理の流れを概略的に示したフローチャート(図6(a)及び図6(b))である。尚、この制御処理は、例えば数μ秒乃至数十μ秒等の所定周期で繰り返し行われる。また、図6及び後述される図7中において、概ね同一の処理には、同一のステップ番号を付し、それらの説明は適宜省略する。
最初に、図6(a)を参照して、ENG−ECU、MG1−ECU及びMG2−ECUにおいて、割込み処理が発生しない場合について説明する。
(割込み処理が発生しない場合)
先ず、図6(a)に示されるように、クランク角センサ159によって、エンジン150のクランクシャフト156の回転角度θeが検出されると共に、この検出された回転角度θeに基づいて、上述したクランク角信号NE及び欠歯信号が信号処理装置159aへ向かって出力される(ステップS1)。
次に、信号処理装置159aは、クランク角センサ159から出力されたクランク角信号NE及び欠歯信号を受けて、上述した30°CA信号NE2及び基準位置信号TDCsigを生成すると共に、ENG−ECU、MG1−ECU及びMG2−ECUへ向けて夫々出力する(ステップS2)。尚、基準位置信号TDCsigは、クランクシャフト156が360°回転する期間を1周期としたパルス信号でよいし、クランクシャフト156が720°回転する期間を1周期としたパルス信号でよい。
次に、ENG−ECUにおいて、ENG−ECUの制御処理として、上述の出力された30°CA信号NE2及び基準位置信号TDCsigを時間軸上の基準として、エンジントルクの制御処理を含むメイン処理が実行される(ステップS5)。典型的には、このENG−ECUにおけるメイン処理は、エンジントルクの実際の値として推定される推定値と、エンジントルクの目標値との変化量をゼロに近付けるフィードバック制御を含んでよい。
このステップS5と同時に又は相前後して、MG1−ECUにおいて、MG1−ECUの制御処理として、上述の出力された30°CA信号NE2及び基準位置信号TDCsigを時間軸上の基準として、MG1の制御処理を含むメイン処理が実行される(ステップS12)。尚、MG1−ECUにおけるメイン処理の詳細については後述される。
これらのステップS5及びステップS12と同時に又は相前後して、MG2−ECUにおいて、MG2−ECUの制御処理として、上述の出力された30°CA信号NE2及び基準位置信号TDCsigを時間軸上の基準として、MG2の制御処理を含むメイン処理が実行される(ステップS22)。尚、MG2−ECUにおけるメイン処理の詳細については後述される。
次に、ENG−ECUのメイン処理、MG1−ECUのメイン処理、及びMG2−ECUのメイン処理が夫々終了すると、図6(a)で示された制御処理は、リターンされ処理開始を停止して待機状態になる、即ち、所定周期によって一義的に決まる、次の処理開始時期に到達するまで、ステップS1の処理の実行を停止して待機状態になる。
(割込み処理が発生した場合)
次に、図6(b)を参照して、ENG−ECU、MG1−ECU及びMG2−ECUにおいて、割込み処理が発生した場合について説明する。
上述したステップS1及びステップS2を経ると共に、上述したステップS5と同時に又は相前後して、MG1−ECUにおいて、MG1−ECUの制御処理として、上述の出力された30°CA信号NE2及び基準位置信号TDCsigを時間軸上の基準として、割込み処理が実行される(ステップS10)。尚、MG1−ECUにおける割込み処理の詳細については後述される。続いて、上述したMG1の制御処理を含むメイン処理が実行される(ステップS12)。
また、ステップS5及びステップS10と同時に又は相前後して、MG2−ECUにおいて、MG2−ECUの制御処理として、上述の出力された30°CA信号NE2及び基準位置信号TDCsigを時間軸上の基準として、割込み処理が実行される(ステップS20)。尚、MG2−ECUにおける割込み処理の詳細については後述される。続いて、上述したMG2の制御処理を含むメイン処理が実行される(ステップS22)。
(MG1−ECU及びMG2−ECUにおける割込み処理及びメイン処理)
次に、図7を参照して、MG1−ECU及びMG2−ECUにおける割込み処理の詳細な流れについて、説明する。ここに、図7は、本実施形態に係る内燃機関のトルク推定装置を構成するENG−ECU、MG1−ECU及びMG2−ECUにおいて、割込み処理が発生した場合における、制御処理の流れの詳細を示したフローチャートである。尚、この制御処理は、例えば数μ秒乃至数十μ秒等の所定周期で繰り返し行われる。また、上述の図6及び図7中において、概ね同一の処理には、同一のステップ番号を付し、それらの説明は適宜省略する。
(MG1−ECUでの割込み処理:S10)
図7に示されるように、上述したステップS1及びステップS2を経ると共に、上述したステップS5と同時に又は相前後して、MG1−ECUの制御処理として、MG1−ECUにおいて、上述の出力された30°CA信号NE2が入力されたか否かが判定される(ステップS101)。ここで、30°CA信号NE2が入力されたと判定される場合(ステップS101:Yes)、この30°CA信号NE2の入力を契機として、MG1−ECUによって、レゾルバ139からサンギヤ軸125の回転角度θsがサンプリングされるなどして取得される(ステップS102)。尚、この回転角度θsによって、本発明に係る第1レゾルバ角度の一例が構成されている。
次に、MG1−ECUによって、レゾルバ139からサンギヤ軸125の回転角度θsの補正角度がサンプリングされるなどして取得される(ステップS103)。典型的には、この補正角度は、上述した絶対捻れ角度及び相対捻れ角度を算出するための所定マップや関数に基づいて、レゾルバ139において一義的に決定されてよい。
次に、MG1−ECUによって、30°CA信号NE2の入力回数を示すカウンタが1だけインクリメント、即ち増加される(ステップS104)。
次に、MG1−ECUによって、基準位置信号TDCsigが入力されたか否かが判定される(ステップS105)。ここで、この基準位置信号TDCsigが入力されたと判定される場合(ステップS105:Yes)、MG1−ECUにおいて、上述したカウンタにゼロが入力される(ステップS106)。他方、ステップS105の判定の結果、基準位置信号TDCsigが入力されたと判定されない場合(ステップS105:No)、上述のステップS106は省略される。
次に、MG1−ECUによって、割込み処理が実行された時刻に関するデータが記憶される(ステップS107)。
(MG1−ECUでのメイン処理:S12)
次に、MG1−ECUによって、例えば2.5(ミリ秒)等の所定周期で実行されるメイン処理として、上述した割込み処理の回数が計測される(ステップS121)。
次に、MG1−ECUによって、連続して入力される2つの30°CA信号NE2の時間間隔において、上述の回転角度θsがどれだけ変化したかを示す回転角度θsの変位角が算出される(ステップS122)。尚、この際には、上述の補正角度の変位角が算出されてもよい。
次に、MG1−ECUによって、クランクシャフト156が30°だけ回転する場合に掛かる時間間隔、言い換えると、クランク角度が30°だけ変化する場合に掛かる時間間隔、所謂、T30CAが算出される(ステップS123)。
次に、MG1−ECUによって、上述した割込み処理におけるカウンタと、上述したステップS121乃至S123までにおいて実行されたメイン処理の識別情報との関連付けが行われる(ステップS124)。
次に、MG1−ECUによって、MG1−ECUにおいて実行された割込み処理及びメイン処理の結果、得られた各種のデータ群が、MG2−ECUに向けて通信経路を介して送信される(ステップS125)。特に、MG1−ECUがこれらのデータ群の送信する際に、情報が欠落することを防止するために、2つの連続するカウンタに夫々対応する2つの回転角度θsに関するデータのセットを1組のセットとして送信することが好ましい。そして、後述されるように、MG2−ECUが、これらの送信されたデータのセットを受信する際に、情報が欠落しているか否かの判別処理を行うことが好ましい。
(MG2−ECUでの割込み処理:S20)
上述したMG1−ECUでの割込み処理と同時に又は相前後して、MG2−ECUの制御処理として、MG2−ECUにおいて、上述の出力された30°CA信号NE2が入力されたか否かが判定される(ステップS201)。ここで、30°CA信号NE2が入力されたと判定される場合(ステップS201:Yes)、この30°CA信号NE2の入力を契機として、MG2−ECUによって、レゾルバ149からのリングギヤ軸126の回転角度θrがサンプリングされるなどして取得される(ステップS202)。尚、この回転角度θrによって、本発明に係る第2レゾルバ角度の一例が構成されている。
次に、MG2−ECUによって、レゾルバ149からのリングギヤ軸126の回転角度θrの補正角度がサンプリングされるなどして取得される(ステップS203)。典型的には、この補正角度は、上述した絶対捻れ角度及び相対捻れ角度を算出するための所定マップや関数に基づいて、レゾルバ149において一義的に決定されてよい。
次に、MG2−ECUによって、30°CA信号NE2の入力回数を示すカウンタが1だけインクリメント、即ち増加される(ステップS204)。
次に、MG2−ECUによって、基準位置信号TDCsigが入力されたか否かが判定される(ステップS205)。ここで、この基準位置信号TDCsigが入力されたと判定される場合(ステップS205:Yes)、MG2−ECUにおいて、上述したカウンタにゼロが入力される(ステップS206)。他方、ステップS205の判定の結果、基準位置信号TDCsigが入力されたと判定されない場合(ステップS205:No)、上述のステップS206は省略される。
次に、MG2−ECUによって、割込み処理が実行された時刻に関するデータが記憶される(ステップS207)。
(MG2−ECUでのメイン処理:S22)
次に、MG2−ECUによって、例えば2.5(ミリ秒)等の所定周期で実行されるメイン処理として、上述した割込み処理の回数が計測される(ステップS221)。
次に、MG2−ECUによって、連続して入力される2つの30°CA信号NE2の時間間隔において、上述の回転角度θsがどれだけ変化したかを示す回転角度θsの変位角が算出される(ステップS222)。尚、この際には、上述の補正角度の変位角が算出されてもよい。
次に、MG2−ECUによって、クランクシャフト156が30°だけ回転する場合に掛かる時間間隔、言い換えると、クランク角度が30°だけ変化する場合に掛かる時間間隔、所謂、T30CAが算出される(ステップS223)。
次に、MG2−ECUによって、上述した割込み処理におけるカウンタと、上述したステップS221乃至S223までにおいて実行されたメイン処理の識別情報との関連付けが行われる(ステップS224)。
次に、MG2−ECUは、MG1−ECUで実行された割込み処理及びメイン処理の結果、得られた各種のデータ群を、通信経路を介して受信する(ステップS225)。特に、上述したように、MG2−ECUが、MG1−ECUによって送信されたデータのセットを受信する際に、情報が欠落しているか否かの判別処理を行うことが好ましい。
次に、MG2−ECUは、MG1−ECUで実行された割込み処理及びメイン処理の結果、得られた各種のデータ群と、当該MG2−ECUで実行された割込み処理及びメイン処理の結果、得られた各種のデータ群とを、例えばカウンタを共通の指標、所謂、インデックスキーとして1対1に対応付けると共に、MG2−ECUの記憶装置に格納する(ステップS226)。
次に、MG2−ECUは、上述のカウンタをインデックスキーとして1対1に対応付けられた、MG1−ECUで得られた各種のデータ群、及びMG2−ECUで得られた各種のデータ群に基づいて、上述した式(7a)におけるエンジンの慣性モーメント項を構成する回転角加速度dωe/dtと、補正項「Kdamp・{θe−f(θs、θr)}」とを夫々算出し、この式(7a)からエンジントルクの推定値を算出する(ステップS250)。典型的には、MG2−ECUは、エンジン回転速度が上昇中においては、MG1−ECUによって算出されたT30CA、及びMG2−ECUによって算出されたT30CAのうちいずれか小さい方に基づいて、エンジンの慣性モーメント項を構成する回転角加速度dωe/dtを算出してよい。また、MG2−ECUは、エンジン回転速度が下降中においては、MG1−ECUによって算出されたT30CA、及びMG2−ECUによって算出されたT30CAのうちいずれか大きい方に基づいて、エンジンの慣性モーメント項を構成する回転角加速度dωe/dtを算出してよい。
次に、MG2−ECUは、HV−ECUを介して、ENG−ECUへ向けて、算出されたエンジントルクの推定値に関するデータを送信する(ステップS227)。
(ENG−ECUでのメイン処理)
次に、ENG−ECUは、HV−ECUを介して、算出されたエンジントルクの推定値に関するデータを受信する(ステップS6)。
次に、ENG−ECUは、受信したエンジントルクの推定値と、エンジントルクの目標値との変化量をゼロに近付けるフィードバック制御を実行する(ステップS7)。
(本実施形態に係る作用と効果との検討)
次に、図8を参照して、本実施形態に係る作用と効果とについて検討する。ここに、図8は、本実施形態に係る内燃機関のトルク推定装置によって、クランク角センサ159によって検出されるエンジン150のクランクシャフト156の回転角度θeと、レゾルバ139によって取得される電動発電機MG1のサンギヤ軸125の回転角度θsと、レゾルバ149によって取得される電動発電機MG2のリングギヤ軸126の回転角度θrとが同期する様子を図式的に示した概念図である。尚、図8においては、基準位置信号がクランクシャフト156の回転角度θeの720°毎に生成され出力される場合について説明している。
本実施形態によれば、上述したように、クランクシャフト156が30°回転する毎に立ち上がる、言い換えると30°CA毎に立ち上がるパルス信号としての30°CA信号NE2が、ENG−ECU、MG1−ECU及びMG2−ECUに同一のタイミングで、信号線を介して、夫々入力される。これにより、MG1−ECUは、レゾルバ139を介して、30°CA信号NE2を時間軸上の基準として電動発電機MG1のサンギヤ軸125の回転角度θsを取得可能であると共に、MG2−ECUは、レゾルバ149を介して、この30°CA信号NE2を時間軸上の基準として電動発電機MG2のリングギヤ軸126の回転角度θrを取得可能である。
このように、MG1−ECU及びMG2−ECUにおいて、30°CA信号NE2を時間軸上の基準とするので、エンジン150のクランクシャフト156における実際の回転角度θeが検出される時点での時刻と、MG1−ECUによって、レゾルバ139を介して、電動発電機MG1のサンギヤ軸125の回転角度θsが取得される時点での時刻と、MG2−ECUによって、レゾルバ149を介して、電動発電機MG2のリングギヤ軸126の回転角度θrが取得される時点での時刻とが時間軸上ずれてしまうことを効果的に防止することが可能である。(MG1−ECU及びMG2−ECUにおける割込み処理による遅延の影響を効果的に防止することが可能である)。
言い換えると、エンジン150のクランクシャフト156における実際の回転角度θeに関するデータと、電動発電機MG1のサンギヤ軸125における実際の回転角度θsに関するデータと、電動発電機MG2のリングギヤ軸126における実際の回転角度θrに関するデータとが時間軸上で殆ど又は完全に同期した状態で、ENG−ECU、MG1−ECU及びMG2−ECUに夫々取得されることが可能である。ここに、本実施形態に係る「時間軸上で殆ど又は完全に同期した状態」とは、複数のデータ群が、同一の時刻に、例えば取得や計算等の所定の処理が行われる状態を意味する。この同一の時刻とは、完全に同一の時刻であることを意味することに加えて、完全に同一の時刻を含む所定の許容範囲内において、複数のデータ群が取得されたり、計算されたりする状態を意味してよい。
これにより、上述したエンジントルクを推定するための式(7a)において、エンジンの慣性モーメント項を構成する回転角加速度dωe/dtと、補正項「Kdamp・{θe−f(θs、θr)}」を構成する回転角度θsと、この補正項を構成する回転角度θrと、を30°CA信号NE2を時間軸上の基準として時間軸上で殆ど又は完全に同期した状態で算出することが可能である。
この結果、上述したエンジントルクを推定する際の式(7a)中のエンジンの慣性モーメント項及び補正項において、時間軸上で殆ど又は完全に同期して算出された回転角加速度dωe/dt、回転角度θs及び回転角度θrを代入することで、エンジンの回転角加速度及びダンパ157の捻れ角度をより高い精度で夫々算出することができる。以上の結果、エンジントルクを推定する際の精度を顕著に向上することが可能である。
仮に、30°CA信号NE2が、ENG−ECU、MG1−ECU及びMG2−ECUに、例えば信号線を介して、夫々入力されない場合、上述した式(7a)に基づいてエンジントルクを推定する(トーショナルダンパの捻れ角と、ばね定数とに基づきエンジントルクの補正計算を行う)際に、エンジンの慣性モーメント項及び補正項に代入される値が同期していない状態で、言い換えると、大きく異なる時刻に夫々取得された可能性のある回転角度θe、回転角度θs、及び回転角度θrに関するデータ群に基づいて、エンジントルクが推定されてしまう。このため、エンジントルクを推定する際の精度が低下してしまう可能性が生じる。このことは、次のようなことにも起因している。即ち、ENG−ECUでは、エンジンの慣性モーメント項を算出するためのクランクシャフト156の回転角加速度dωe/dtは、エンジンの制御上、重要度が高いので、この回転角加速度dωe/dtを算出する算出処理の優先度は高い。これに対して、MG1−ECU及びMG2−ECUでは、モータ制御を優先的に制御しており、この回転角加速度dωe/dtを算出するための信号処理の優先度は低く、処理待ちの状態になる可能性が高いため、回転角度θe、回転角度θs、及び回転角度θrの夫々が取得されたタイミングが大きくずれてしまうのである。
また、上述したように、ハイブリッド式車両の制御処理においては、エンジンの制御、MG1の制御、MG2の制御、及び、エンジンとMG1及びMG2との通信制御は、ENG−ECU、MG1−ECU、MG2−ECU及びHV−ECUなどの複数のECUによって、各ECUユニット単位で夫々行われている。ここで、仮に、ハイブリッド式車両の統括的な制御処理において、現在実現されている演算装置よりも高性能且つ高速演算が可能なCPU等の演算装置が使用される場合、上述の分散した各ECUユニットの制御を一括制御(や統括制御)することにより、エンジンの制御、MG1の制御、MG2の制御、及び、エンジンとMG1及びMG2との通信制御を、時間軸上で殆ど又は完全に同期した状態で行うことも想定される。しかしながら、CPU等の演算装置の演算処理能力には限界があるため、高コスト化してしまう、或いは、分散処理による演算処理の負荷の分散の利点が失われてしまう可能性が生じてしまう。
また、仮に、ENG−ECU、MG1−ECU、MG2−ECUの夫々に対して、トリガ信号として概ね同じタイミングに、各ECUの計算処理と無関係な電圧信号を入力した場合、各ECUでの計算負荷が異なるため、やはり上述したように、エンジンの慣性モーメント項及び補正項に代入される値が同期していない状態で、言い換えると、異なる時刻に夫々取得された可能性のある回転角度θe、回転角度θs、及び回転角度θrに関するデータ群に基づいて、エンジントルクが推定されてしまう。このため、エンジントルクを推定する際の精度が低下してしまう可能性が生じる。
具体的には、図8の上側部に示されるように、MG1−ECUにおいては、MG1−ECUに入力された30°CA信号NE2を基準として一義的に定まるクランク角に1対1に対応したカウンタをインデックスとして、レゾルバ139を介して、電動発電機MG1のサンギヤ軸125の回転角度θsが取得される。より具体的には、カウンタ、回転角度θs及びMG1−ECUにおけるCPUクロックである時刻Time1の要素を、「(カウンタ、回転角度θs、時刻Time1)」と示す場合、エンジン150のクランク角が30°の時は、MG1−ECUは、「(カウンタ、回転角度θs、時刻Time1)=(0、a1、Ta1)」というレゾルバ139の回転状態に関する回転情報を取得することができる。概ね同様にして、エンジン150のクランク角が60°の時は、MG1−ECUは、「(カウンタ、回転角度θs、時刻Time1)=(1、a2、Ta2)」というレゾルバ139の回転状態に関する回転情報を取得することができる。以下、概ね同様にして、・・・エンジン150のクランク角が720°の時は、MG1−ECUは、「(カウンタ、回転角度θs、時刻Time1)=(23、a24、Ta24)」というレゾルバ139の回転状態に関する回転情報を取得することができる。
他方、図8の下側部に示されるように、MG2−ECUにおいても概ね同様にして、MG2−ECUに入力された30°CA信号NE2を基準として一義的に定まるクランク角に1対1に対応したカウンタをインデックスとして、レゾルバ149を介して、電動発電機MG2のリングギヤ軸126の回転角度θrが取得される。より具体的には、カウンタ、回転角度θr及びMG2−ECUにおけるCPUクロックである時刻Time2の要素を、「(カウンタ、回転角度θr、時刻Time2)」と示す場合、エンジン150のクランク角が30°の時は、MG2−ECUは、「(カウンタ、回転角度θr、時刻Time2)=(0、b1、Tb1)」というレゾルバ149の回転状態に関する回転情報を取得することができる。概ね同様にして、エンジン150のクランク角が60°の時は、MG2−ECUは、「(カウンタ、回転角度θr、時刻Time2)=(1、b2、Tb2)」というレゾルバ149の回転状態に関する回転情報を取得することができる。以下、概ね同様にして、・・・エンジン150のクランク角が720°の時は、MG2−ECUは、「(カウンタ、回転角度θr、時刻Time2)=(23、b24、Tb24)」というレゾルバ139の回転状態に関する回転情報を取得することができる。
(第2実施形態)
(エンジントルクの推定値の算出)
次に、図9乃至図11を参照して、第2実施形態に係る内燃機関のトルク推定装置を構成するMG2−ECUにおけるエンジントルクの推定値を算出する処理の流れについて説明する。ここに、図9は、第2実施形態に係るMG2−ECUにおけるエンジントルクの推定値を算出する算出処理の流れを示したフローチャートである。図10は、第2実施形態に係るMG2−ECUの制御下で、MG1−ECUが算出したT30CA、及び、MG2−ECUが算出したT30CAのうちいずれか一方のT30CAが選択される様子を示したグラフである。図11は、第2実施形態に係るMG2−ECUの制御下で、MG1−ECUが算出したT30CA、及び、MG2−ECUが算出したT30CAのうちいずれか一方のT30CAが選択される様子を示したタイミングチャートである。
尚、図9における算出処理は、上述した図7中のステップS250において実行されるエンジントルクの推定値の算出処理の他の具体例である。また、図9及び後述される図12及び図13中において、概ね同一の処理には、同一のステップ番号を付し、それらの説明は適宜省略する。また、図10において、大きな点線は、第1所要時間を示し、より細かい点線は、第2所要時間を示し、直線は、選択された所要時間を示す。また、図10の横軸は時間経過(秒:second)を示し、縦軸は、T30CAの大きさ(ミリ秒:millisecond)を示す。また、図10では、第1所要時間の一部及び第2所要時間の一部がプロットされている。また、図11においては、一具体例として、160μ秒から410μ秒付近までの時間軸上において、ENG−ECUが取得したT30CA、選択されたT30CA、MG1−ECUが取得したT30CA、MG2−ECUが取得したT30CA、クランク角度、MG1−ECU及びMG2−ECUのうちいずれのECUを選択したのか、720°のクランク角度の分だけ過去に遡った時点に選択した過去T30CAとMG1−ECUが算出したT30CAとの差、並びに、720°のクランク角度の分だけ過去に遡った時点に選択した過去T30CAとMG2−ECUが算出したT30CAとの差が夫々示されている。加えて、これらの値がクランク角度と殆ど又は完全に同期していることが示されている。
先ず、MG2−ECUの制御下で、エンジントルクの推定値を算出する際の対象となる上述したカウンタが取得される(ステップS251)。
次に、MG2−ECUの制御下で、取得したカウンタに一義的に対応する、MG1−ECUが算出したクランクシャフト156が30°だけ回転する場合に掛かる時間間隔であるT30CAと、この取得したカウンタに一義的に対応する、MG2−ECUが算出したT30CAとが取得される。加えて、MG2−ECUの制御下で、720°のクランク角度の分だけ過去に遡った時点に選択した過去T30CAが取得される(ステップS252)。特に、「720°のクランク角度の分だけ過去に遡った時点に選択した過去T30CA」の初期値として、典型的には、MG1−ECUが算出したT30CA及びMG2−ECUが算出したT30CAのうちいずれか小さい方の値を採用してよい。或いは、MG1−ECUが算出したT30CA及びMG2−ECUが算出したT30CAのうちいずれか、所定の固定値に近い方の値を採用してよい。或いは、典型的には、エンジン回転速度が上昇中においては、MG1−ECUが算出したT30CA及びMG2−ECUが算出したT30CAのうちいずれか小さい方の値を採用し、エンジン回転速度が下降中においては、MG1−ECUが算出したT30CA及びMG2−ECUが算出したT30CAのうちいずれか大きい方の値等の他のパラメータによって決定される値を採用してよい。
尚、MG1−ECUが算出したT30CAによって、本発明に係る「第1所要時間」の一例が構成されている。また、MG2−ECUが算出したT30CAによって、本発明に係る「第2所要時間」の一例が構成されている。また、720°のクランク角度の分だけ過去に遡った時点に選択した過去T30CAによって、本発明に係る「過去所要時間」の一例が構成されている。
次に、MG2−ECUの制御下で、MG1−ECUが算出したT30CAと、上述の過去T30CAとの第1差分が、MG2−ECUが算出したT30CAと、上述の過去T30CAとの第2差分より大きいか否かが判定される(ステップS253)。ここで、第1差分が第2差分より大きいと判定される場合(ステップS253:Yes)、MG2−ECUの制御下で、MG2−ECUが算出したT30CA(即ち、第2所要時間の一例)が、割込み処理による遅延の影響がより少ないT30CAであるとして、選択される(ステップS254)。具体的には、図10の右側部に示されるように、第1差分が第2差分より大きいので、MG2−ECUが算出したT30CAが選択されている。言い換えると、MG2−ECUが算出したT30CAと比較して、MG1−ECUが算出したT30CAが、過去T30CAから、より大きく離れたので、MG2−ECUが算出したT30CAが選択されている。
より具体的には、図11の時間軸上の時刻である285(μs)に示されるように、MG2−ECUの制御下で、720°のクランク角度の分だけ過去に遡った時点に選択した過去T30CAとMG1−ECUが算出したT30CAとの差が算出される(図11中のステップS253−1及び図11中のV253−1aに示された値を参照)。と共に、720°のクランク角度の分だけ過去に遡った時点に選択した過去T30CAとMG2−ECUが算出したT30CAとの差が算出される(図11中のステップS253−2及び図11中のV253−2aに示された値を参照)。そして、過去T30CAとMG1−ECUが算出したT30CAとの差が、過去T30CAとMG2−ECUが算出したT30CAとの差より大きいので、MG2−ECUの制御下で、MG2−ECUが算出したT30CAが、割込み処理による遅延の影響がより少ないT30CAであるとして、選択されている(図11中のステップS253−3に示された矢印及び図11中のV253−2bに示されたMG2−ECUが選択された様子を参照)。
他方、ステップS253の判定の結果、第1差分が第2差分より大きくない、即ち、第1差分が第2差分より小さい又は第1差分と第2差分とが等しいと判定される場合(ステップS253:No)、MG2−ECUの制御下で、MG1−ECUが算出したT30CA(即ち、第1所要時間の一例)が、割込み処理による遅延の影響がより少ないT30CAであるとして、選択される(ステップS255)。具体的には、図10の左側部に示されるように、第2差分が第1差分より大きいので、言い換えると、第1差分が第2差分より小さいので、MG1−ECUが算出したT30CAが選択されている。言い換えると、MG1−ECUが算出したT30CAと比較して、MG2−ECUが算出したT30CAが、過去T30CAから、より大きく離れたので、MG1−ECUが算出したT30CAが選択されている。
次に、MG2−ECUの制御下で、上述のカウンタをインデックスキーとして1対1に対応付けられた、MG1−ECUで得られた回転角度θs(即ち、第1レゾルバ角度の一例)に関するデータ、MG2−ECUで得られた回転角度θr(即ち、第2レゾルバ角度の一例)に関するデータ、及び選択されたT30CAに基づいて、上述した式(7a)におけるエンジンの慣性モーメント項を構成する回転角加速度dωe/dtと、補正項「Kdamp・{θe−f(θs、θr)}」とを夫々算出し、この式(7a)からエンジントルクの推定値を算出する(ステップS256)。
特に、エンジントルクの推定値の算出において、割込み処理による遅延の影響がより少ないT30CAに基づいて、回転角加速度dωe/dtを算出することは、エンジントルクの推定値の精度をより向上することができるので大変好ましい。
(第3実施形態)
(エンジントルクの推定値の算出)
次に、図12を参照して、第3実施形態に係る内燃機関のトルク推定装置を構成するMG2−ECUにおけるエンジントルクの推定値を算出する処理の流れについて説明する。ここに、図12は、第3実施形態に係るMG2−ECUにおけるエンジントルクの推定値を算出する算出処理の流れを示したフローチャートである。尚、この算出処理は、上述した図7中のステップS250において実行されるエンジントルクの推定値の算出処理の他の具体例である。また、前述した図9、図12及び後述される図13中において、概ね同一の処理には、同一のステップ番号を付し、それらの説明は適宜省略する。
上述したステップS252を経て、MG2−ECUの制御下で、MG1−ECUにおける演算負荷が、MG2−ECUにおける演算負荷より大きいか否かが判定される(ステップS301)。尚、MG1−ECUによって、本発明に係る第1算出手段の一例が構成されている。加えて、MG2−ECUによって、本発明に係る第2算出手段の一例が構成されている。
ここで、MG1−ECUにおける演算負荷が、MG2−ECUにおける演算負荷より大きいと判定される場合(ステップS301:Yes)、MG2−ECUの制御下で、MG2−ECUが算出したT30CA(即ち、第2所要時間)が、割込み処理による遅延の影響がより少ないT30CAであるとして、選択される(ステップS254)。他方、ステップS301の判定の結果、MG1−ECUにおける演算負荷が、MG2−ECUにおける演算負荷より大きくない、即ち、MG1−ECUにおける演算負荷が、MG2−ECUにおける演算負荷より小さい、或いは、MG1−ECUにおける演算負荷とMG2−ECUにおける演算負荷とが等しいと判定される場合(ステップS301:No)、MG2−ECUの制御下で、MG1−ECUが算出したT30CA(即ち、第1所要時間)が、割込み処理による遅延の影響がより少ないT30CAであるとして、選択される(ステップS255)。
(第4実施形態)
(エンジントルクの推定値の算出)
次に、図13を参照して、第4実施形態に係る内燃機関のトルク推定装置を構成するMG2−ECUにおけるエンジントルクの推定値を算出する処理の流れについて説明する。ここに、図13は、第4実施形態に係るMG2−ECUにおけるエンジントルクの推定値を算出する算出処理の流れを示したフローチャートである。尚、この算出処理は、上述した図7中のステップS250において実行されるエンジントルクの推定値の算出処理の他の具体例である。また、前述した図9、前述した図12及び図13中において、概ね同一の処理には、同一のステップ番号を付し、それらの説明は適宜省略する。
上述したステップS252を経て、MG2−ECUの制御下で、MG1における回転速度が、MG2における回転速度より大きいか否かが判定される(ステップS302)。ここで、MG1における回転速度が、MG2における回転速度より大きいと判定される場合(ステップS302:Yes)、MG2−ECUの制御下で、MG2−ECUが算出したT30CA(即ち、第2所要時間)が、割込み処理による遅延の影響がより少ないT30CAであるとして、選択される(ステップS254)。他方、ステップS302の判定の結果、MG1における回転速度が、MG2における回転速度より大きくない、即ち、MG1における回転速度が、MG2における回転速度より小さい、或いは、MG1における回転速度とMG2における回転速度とが等しいと判定される場合(ステップS302:No)、MG2−ECUの制御下で、MG1−ECUが算出したT30CA(即ち、第1所要時間)が、割込み処理による遅延の影響がより少ないT30CAであるとして、選択される(ステップS255)。
(第3及び第4実施形態に係る作用と効果との検討)
次に、図14を参照して、第3及び第4実施形態に係る作用と効果とについて検討する。ここに、図14は、第3及び第4実施形態に係るMG1−ECU及びMG2−ECUにおいて、メイン処理を実行するのに掛かる時間を時間軸上、図式的に示した模式図(図14(a))並びに第3及び第4実施形態に係るMG1−ECU及びMG2−ECUにおいて、メイン処理及び割込み処理を実行するのに掛かる時間を時間軸上、図式的に示した模式図(図14(b))である。尚、図14中、メイン処理は、クランクシャフト156が30°だけ回転する場合に掛かる時間間隔、言い換えると、クランク角度が30°だけ変化する場合に掛かる時間間隔、所謂、T30CAを算出する算出処理を含むと共に、このメイン処理は、一例として2.5(msec:ミリ秒)単位で実行されるものとする。
図14(a)に示されるように、MG1の回転速度がMG2の回転速度よりも速い場合、MG1−ECUにおいて一のメイン処理の実行が開始され、この一のメイン処理の実行が完了するまでに掛かる処理時間は、MG2−ECUにおいて一のメイン処理の実行が開始され、この一のメイン処理の実行が完了するまでに掛かる処理時間よりも長くなってしまう。具体的には、図14(a)に示されるように、MG1の回転速度がMG2の回転速度よりも速い場合、MG1−ECUにおいてメイン処理1a、メイン処理2a及びメイン処理3aの実行が夫々開始され、これらのメイン処理1a、メイン処理2a及びメイン処理3aの実行が夫々完了するまでに掛かる処理時間は、MG2−ECUにおいてメイン処理1b、メイン処理2b及びメイン処理3bの夫々実行が開始され、これらのメイン処理1b、メイン処理2b及びメイン処理3bの実行が夫々完了するまでに掛かる処理時間よりも夫々長くなってしまう。加えて、図14(a)では、MG1−ECUにおいて、後述の30°CA信号NE2を契機としない他の割り込み処理T1a、T2aが夫々実行されると共に、MG2−ECUにおいて、後述の30°CA信号NE2を契機としない他の割り込み処理T1b、T2bが夫々実行される様子が示されている。
ここで、エンジントルクを推定するために、MG1−ECUにおいて、30°CA信号NE2を時間軸上の基準として電動発電機MG1のサンギヤ軸125の回転角度θsを取得する割込み処理の要求が開始されると共に、MG2−ECUにおいて、この30°CA信号NE2を時間軸上の基準として電動発電機MG2のリングギヤ軸126の回転角度θrを取得する割込み処理の要求が開始される場合、次のような現象が生じる。即ち、図14(b)に示されるように、MG1の回転速度がMG2の回転速度よりも速い場合、MG1−ECUにおいて割込み処理W1a、W2aの実行が開始され、この割込み処理の実行が完了するまでに掛かる処理時間は、MG2−ECUにおいて割込み処理W1b、W2bの実行が開始され、この割込み処理の実行が完了するまでに掛かる処理時間よりも長くなってしまう。
より具体的には、図14(b)に示されるように、回転速度がMG2より速いMG1に対応されるMG1−ECUにおける演算負荷は、MG2−ECUより高くなるので、MG1−ECUにおいて、30°CA信号NE2が入力され、この30°CA信号NE2を時間軸上の基準として、割込み処理W1a、W2aの実行が要求された際に、メイン処理2a、3aに対して、割込み処理W1a、W2aと比較して優先度の高い他の割り込み処理T1a、T2aが実行されている度合いがMG2−ECUと比較して大きい。このため、これらの他の割り込み処理T1a、T2aの実行の終了を待って、割込み処理W1a、W2aが実際に実行されるため、MG1−ECUにおいて割込み処理W1a、W2aの実行が完了するまでの時間は、MG2−ECUと比較して遅延してしまう。
他方、MG2−ECUにおいて、30°CA信号NE2が入力され、この30°CA信号NE2を時間軸上の基準として、割込み処理W1b、W2bの実行が要求された際に、メイン処理2b、3bに対して、割込み処理W1b、W2bと比較して優先度の高い他の割り込み処理T1b、T2bの実行が終了している度合いがMG1−ECUと比較して大きい。このため、割込み処理W1a、W2aが、30°CA信号NE2の入力、即ち、割込み処理W1a、W2aの要求と同時に実際に実行される度合いは高いので、MG2−ECUにおいて割込み処理W1b、W2bの実行が完了するまでの時間は、MG1−ECUと比較して短縮されている。
このように、回転速度がより速いMG1に対応されるMG1−ECUにおける演算負荷はより高くなるので、MG1−ECUにおける割込み処理の実行が開始され、完了するまでに掛かる処理時間は、MG2−ECUにおいて割込み処理の実行が開始され、完了するまでに掛かる処理時間よりも長くなってしまう。と共に、MG1の回転速度がMG2の回転速度より速い場合、MG1−ECUにおけるメイン処理が実行される周回処理時間は、MG2−ECUにおける周回処理時間よりも長くなってしまう。
これにより、MG1−ECUにおけるメイン処理によってT30CAが算出された時点での時刻と、MG1−ECUにおける割込み処理によって回転角度θsが取得される時点での時刻との時間軸上の遅延時間は、MG2−ECUにおけるメイン処理によってT30CAが算出された時点での時刻と、MG2−ECUにおける割込み処理によって回転角度θrが取得される時点での時刻との時間軸上の遅延時間よりも顕著に長くなってしまう。これにより、MG2−ECUにおけるメイン処理によって、30°CA信号NE2を時間軸上の基準として算出されたT30CAは、MG1−ECUにおけるメイン処理によって、30°CA信号NE2を時間軸上の基準として算出されたT30CAと比較して、割込み処理における遅延時間の影響、所謂、割込み処理中でのサンプル誤差の影響が顕著に少なく、エンジン150のクランクシャフト156における実際の回転角度θeをより的確に反映していることが分かる。
そこで、上述したように、第2実施形態においては、MG1−ECUにおける演算負荷と、MG2−ECUにおける演算負荷とを比較して、MG1−ECU及びMG2−ECUのうち演算負荷のより小さいいずれか一方のECUが算出したT30CAを選択する。典型的には、MG1−ECUにおけるメイン処理の周回処理時間と、MG2−ECUにおけるメイン処理の周回処理時間とを比較して、より短い周回処理時間に対応されるいずれか一方のECUが算出したT30CAを選択する。或いは、典型的には、第3実施形態においては、MG1における回転速度と、MG2における回転速度とを比較して、回転速度のより小さいMGに対応される、MG1−ECU及びMG2−ECUのうちいずれか一方のECUが算出したT30CAを選択する。何故ならば、MGの回転速度がより小さい場合、ECUにおける演算負荷もより小さく、割込み処理における遅延時間の影響もより少ないことが判明しているからである。
そして、この選択されたT30CAに基づいて、上述したエンジントルクを推定するための式(7a)におけるエンジンの慣性モーメント項を構成する回転角加速度dωe/dtが算出される。
これにより、上述したエンジントルクを推定するための式(7a)において、エンジンの慣性モーメント項を構成する回転角加速度dωe/dtと、補正項を構成する回転角度θsと、この補正項を構成する回転角度θrとを、割込み処理における遅延時間の影響が顕著に少ないと共に、実際の値により近い状態で取得することが可能である。
この結果、上述したエンジントルクを推定する際の式(7a)中のエンジンの慣性モーメント項及び補正項において、割込み処理における遅延時間の影響が顕著に少ないと共に、実際の回転角加速度dωe/dt、実際の回転角度θs及び実際の回転角度θrにより近い値群を夫々代入することで、エンジンの回転角加速度及びダンパ157の捻れ角度をより高い精度で夫々算出することができる。以上の結果、エンジントルクを推定する際の精度を顕著に向上することが可能である。
(第5実施形態)
(エンジントルクの推定値の算出)
次に、図15を参照して、第5実施形態に係る内燃機関のトルク推定装置を構成するMG2−ECUにおけるエンジントルクの推定値を算出する処理の流れについて説明する。ここに、図15は、第5実施形態に係るMG2−ECUにおけるエンジントルクの推定値を算出する算出処理の流れを示したフローチャートである。尚、この算出処理は、上述した図7中のステップS250において実行されるエンジントルクの推定値の算出処理の他の具体例である。また、前述の図9、前述の図12、前述の図13及び図15中において、概ね同一の処理には、同一のステップ番号を付し、それらの説明は適宜省略する。
上述したステップS254又はステップS255を経て、MG2−ECUの制御下で、720°のクランク角度の分だけ過去に遡った時点に選択したT30CA(以下、適宜、「720CA前のT30CA」と称す)に対する、選択されたT30CAの変化の割合である第1変化率が、99%(=100%−1%)以上であり且つ101%(=100%+1%)以下であるか否かが判定される(ステップS401)。ここで、第1変化率が、99%以上であり且つ101%以下であると判定される場合(ステップS401:Yes)、上述したように、MG2−ECUの制御下で、上述のカウンタをインデックスキーとして1対1に対応付けられた、MG1−ECUで得られた回転角度θs(即ち、第1レゾルバ角度の一例)に関するデータ、MG2−ECUで得られた回転角度θr(即ち、第2レゾルバ角度の一例)に関するデータ、及び選択されたT30CAに基づいて、上述した式(7a)におけるエンジンの慣性モーメント項を構成する回転角加速度dωe/dtと、補正項「Kdamp・{θe−f(θs、θr)}」とを夫々算出し、この式(7a)からエンジントルクの推定値を算出する(ステップS256)。
他方、ステップS401の結果、720CA前のT30CAに対する、選択されたT30CAの変化の割合である第1変化率が、−1%以上であり且つ+1%以下でないと判定される場合、言い換えると、第1変化率が、−1%より小さい、又は、+1%より大きいと判定される場合(ステップS401:No)、更に、MG2−ECUの制御下で、この第1変化率と、750CA前のT30CAに対する、30°のクランク角度の分だけ過去に遡った時点に選択したT30CA(以下、適宜、「30CA前のT30CA」と称す)の変化の割合である第2変化率との差が−1%以上であり且つ+1%以下であるか否かが判定される(ステップS402)。尚、この750°のクランク角度の分だけ過去に遡った時点に選択したT30CAである、750CA前のT30CAによって、本発明に係る「他の過去所要時間」の一例が構成されている。
このステップS402の判定の結果、上述の第1変化率と、上述の第2変化率との差が−1%以上であり且つ+1%以下であると判定される場合(ステップS402:Yes)、上述したように、MG2−ECUの制御下で、式(7a)からエンジントルクの推定値が算出される(ステップS256)。
他方、ステップS402の判定の結果、上述の第1変化率と上述の第2変化率との差が−1%以上であり且つ+1%以下でないと判定される場合、言い換えると、上述の第1変化率と上述の第2変化率との差が、−1%より小さい、又は、+1%より大きいと判定される場合(ステップS402:No)、MG2−ECUの制御下で、選択されたT30CAの値が、選択されたT30CAに第2変化率を乗算した値に更新される(ステップS403)。
このように第5実施形態によれば、仮に、MG1−ECUとMG2−ECUとの両方における演算負荷が顕著に大きくなり、MG1−ECUが算出したT30CA及びMG2−ECUが算出したT30CAの両方が割込み処理による遅延の影響を受けている場合であっても、720CA前のT30CAに対する、選択されたT30CAの変化の割合である第1変化率、又は、750CA前のT30CAに対する、30CA前のT30CAの変化の割合である第2変化率に基づいて、T30CAの値が決定される。これにより、MG1−ECUとMG2−ECUとの両方において、割込み処理による遅延が発生した場合でも、この遅延の影響を、より効果的に低減することが可能である。特に、第5実施形態によれば、エンジン回転数が連続的に上昇する傾向にある場合、若しくは、エンジン回転数が連続的に下降する傾向にある場合においても、これらのエンジン回転数の実際の変化の度合いを、T30CAの過去の変化率である第2変化率を考慮した値によって選択されたT30CAを更新することによって、上述したエンジントルクを推定するための式(7a)において、エンジンの慣性モーメント項を構成する回転角加速度dωe/dtと、補正項を構成する回転角度θsと、この補正項を構成する回転角度θrとを、実際の値に顕著に近い状態で取得することが可能である。
(第6実施形態)
(回転角度θs及び回転角度θrの補正処理)
次に、図16及び図17を参照して、第6実施形態に係る内燃機関のトルク推定装置を構成するMG2−ECUの制御下での回転角度θs及び回転角度θrの補正処理について説明する。ここに、図16は、第6実施形態に係る、内燃機関のトルク推定装置を構成するENG−ECU、MG1−ECU及びMG2−ECUにおいて、割込み処理が発生した場合における、回転角度θs及び回転角度θrの補正処理を含む制御処理の流れの詳細を示したフローチャートである。図17は、第6実施形態に係る、内燃機関のトルク推定装置を構成するMG2−ECUの制御下での、回転角度θs及び回転角度θrの補正処理の詳細な流れを示したフローチャートである。
尚、図16に示された制御処理は、例えば数μ秒乃至数十μ秒等の所定周期で繰り返し行われる。また、上述の図6、図7及び図16中において、概ね同一の処理には、同一のステップ番号を付し、それらの説明は適宜省略する。
先ず、図16に示されるように、上述したステップS250を経て、MG2−ECUの制御下で、回転角度θs及び回転角度θrを補正する補正処理が実行される(ステップS500)。尚、この補正処理は、例えば、T30CAの変化率が所定の許容範囲を超えた場合において実行するようにしてよい。
この回転角度θs及び回転角度θrの補正処理は、図17に示されるように、先ず、MG2−ECUの制御下で、エンジントルクの推定値を算出する際の対象となる上述したカウンタが取得される(ステップS501)。
次に、MG2−ECUの制御下で、取得したカウンタに一義的に夫々対応する、MG1−ECUが算出したT30CA(即ち、第1所要時間の一例)と、MG1−ECUが取得した回転角度θs(即ち、第1レゾルバ角度の一例)の変位量とが取得されると共に、この取得したカウンタに一義的に夫々対応する、MG2−ECUが算出したT30CA(即ち、第2所要時間の一例)と、MG2−ECUが取得した回転角度θr(即ち、第2レゾルバ角度の一例)の変位量とが取得される。加えて、MG2−ECUの制御下で、上述のステップS254又はステップS255によって選択されたT30CA、即ち、選択された所要時間が取得される(ステップS502)。特に、MG1−ECUが取得した回転角度θsの変位量は、MG1−ECUが算出したT30CAの時間における変位量を意味してよい、言い換えると、MG1−ECUにおいて、連続する2つの30°CA信号NE2が入力される間の回転角度θsの変位量を意味してよい。概ね同様にして、MG2−ECUが取得した回転角度θrの変位量は、MG2−ECUが算出したT30CAの時間における変位量を意味してよい、言い換えると、MG2−ECUにおいて、連続する2つの30°CA信号NE2が入力される間の回転角度θrの変位量を意味してよい。
次に、MG2−ECUの制御下で、MG1−ECUが取得した回転角度θsの変位量が、当該MG1−ECUが取得した回転角度θsの変位量に、第1の比の値が乗算された値によって更新される(ステップS503)。この第1の比の値とは、MG1−ECUが算出したT30CAに対する上述のステップS254又はステップS255によって選択されたT30CAの比の値を意味する。詳細には、次の式(1)及び式(1a)を用いてMG1−ECUが取得した回転角度θsの変位量が更新される。
(回転角度θsの変位量)=(回転角度θsの変位量)×(第1の比の値)
・・・・・・ (1)
但し、
(第1の比の値)=
(選択されたT30CA) / (MG1−ECUの算出したT30CA)
・・・・・ (1a) 。
特に、この更新処理においては、MG1−ECUが取得した回転角度θsの変位量が、当該MG1−ECUが取得した回転角度θsの変位量と直前偏差との和に、第1の比の値が乗算された値によって更新されてもよい。ここに、直前偏差とは、本ルーチンが実行される直前のルーチンにおいて算出された、MG1−ECUが取得した回転角度θsの変位量と、更新された回転角度θsの変位量との偏差を意味してよい。詳細には、次の式(1c)及び式(1d)を用いてMG1−ECUが取得した回転角度θsの変位量が更新されてよい。
(回転角度θsの変位量)=
(回転角度θsの変位量+直前偏差)×(第1の比の値)
・・・・・・ (1c)
但し、
(直前偏差)=
(MG1−ECUが直前に取得した回転角度θsの変位量)−
(直前に更新された回転角度θsの変位量)
・・・・・・ (1d) 。
上述したステップS503と同時に又は相前後して、MG2−ECUの制御下で、MG2−ECUが取得した回転角度θrの変位量が、当該MG2−ECUが取得した回転角度θrの変位量に、第2の比の値が乗算された値によって更新される(ステップS504)。この第2の比の値とは、MG2−ECUが算出したT30CAに対する上述のステップS254又はステップS255によって選択されたT30CAの比の値を意味する。詳細には、次の式(2)又は式(2a)を用いてMG2−ECUが取得した回転角度θrの変位量が更新される。
(回転角度θrの変位量)=(回転角度θrの変位量)×(第2の比の値)
・・・・・・ (2)
但し、
(第2の比の値)=
(選択されたT30CA) / (MG2−ECUの算出したT30CA)
・・・・・ (2a) 。
特に、この更新処理においては、MG2−ECUが取得した回転角度θrの変位量が、当該MG2−ECUが取得した回転角度θrの変位量と他の直前偏差との和に、第2の比の値が乗算された値によって更新されてもよい。ここに、他の直前偏差とは、本ルーチンが実行される直前のルーチンにおいて算出された、MG2−ECUが取得した回転角度θrの変位量と、更新された回転角度θrの変位量との偏差を意味してよい。詳細には、次の式(2c)及び式(2d)を用いてMG2−ECUが取得した回転角度θrの変位量が更新されてよい。
(回転角度θrの変位量)=
(回転角度θrの変位量+他の直前偏差)×(第2の比の値)
・・・・・・ (2c)
但し、
(他の直前偏差)=
(MG2−ECUが直前に取得した回転角度θrの変位量)−
(直前に更新された回転角度θrの変位量)
・・・・・・ (2d) 。
(第6実施形態に係る作用と効果との検討)
次に、図18を参照して、第6実施形態に係る作用と効果とについて検討する。ここに、図18は、第6実施形態に係るMG1−ECU及びMG2−ECUにおいて、30°CA信号NE2の入力を契機として、回転角度θr及びθsを取得する際に、誤差が発生する様子を時間軸上、図式的に示したタイミングチャートである。尚、図18の下側部は、図18の上側部を拡大した拡大図である。また、図18中の白抜きの丸印は、時刻t1及び時刻t2における、真の回転角度θeの値、真の回転角度θsの値及び真の回転角度θrの値を夫々示し、図18中の黒塗りの四角印は、MG1−ECU及びMG2−ECUにおいて割込み処理の遅延の影響を夫々受けつつ、取得された回転角度θsの値及び回転角度θrの値を示している。
図18の下側部の四角印に示されるように、MG1−ECUにおいて取得された回転角度θsの値は、割込み処理の遅延の影響を顕著に受ける場合、白抜きの丸印に示される真の回転角度θsの値からずれてしまう。概ね同様にして、MG2−ECUにおいて取得された回転角度θrの値は、割込み処理の遅延の影響を顕著に受ける場合、白抜きの丸印に示される真の回転角度θrの値からずれてしまう。
これに対して、第6実施形態によれば、上述した式(1)及びステップS503に説明されるように、MG1−ECUが取得した回転角度θsの変位量が、当該MG1−ECUが取得した回転角度θsの変位量に、第1の比の値が乗算された値によって更新される。但し、この第1の比の値とは、上述したステップS403によって更新されたT30CAに対するMG1−ECUが算出したT30CAの比の値を意味する。
このように第6実施形態によれば、MG1−ECUにおける演算負荷が顕著に大きくなり、MG1−ECUが算出したT30CAが、割込み処理による遅延の影響を受けている場合であっても、その遅延の影響の度合いに基づいて、MG1−ECUが取得した回転角度θsの変位量が補正される。尚、第6実施形態では、典型例として、MG1−ECUにおける割込み処理による遅延の影響の度合いが、過去に真であると推定されたT30CAを基準にして決定されるT30CAの値(即ち、上述のステップS403で更新されたT30CAの値)と、今回、MG1−ECUが算出したT30CAとの比によって、定量的に示されている。
概ね同様にして、MG2−ECUにおける演算負荷が顕著に大きくなり、MG2−ECUが算出したT30CAが、割込み処理による遅延の影響を受けている場合であっても、その遅延の影響の度合いに基づいて、MG2−ECUが取得した回転角度θrの変位量が補正される。尚、第6実施形態では、典型例として、MG2−ECUにおける割込み処理による遅延の影響の度合いが、過去に真であると推定されたT30CAを基準にして決定されるT30CAの値(即ち、上述のステップS403で更新されたT30CAの値)と、今回、MG2−ECUが算出したT30CAとの比によって、定量的に示されている。
これにより、MG1−ECU及びMG2−ECUにおいて、演算負荷を上昇させる割込み処理による遅延が発生した場合でも、割込み処理による遅延の影響の度合いに基づいて、回転角度θs及び回転角度θrを補正することができる。これにより、割込み処理による遅延の影響の度合いを考慮しつつ、内燃機関の出力トルクを推定することができるので、内燃機関の出力トルクの推定値の精度を顕著に向上させることが可能である。
加えて、上述したエンジントルクを推定するための式(7a)において、補正項「Kdamp・{θe−f(θs、θr)}」を構成する回転角度θs及び回転角度θrを高精度に補正される。この結果、上述したエンジントルクを推定する際の式(7a)中の補正項において、高精度に補正された回転角度θs及び回転角度θrを代入することで、エンジンの回転角加速度及びダンパ157の捻れ角度をより高い精度で夫々算出することができる。以上の結果、エンジントルクを推定する際の精度をより顕著に向上することが可能である。
尚、上述した実施形態では、MG1−ECUからMG2−ECUへエンジントルクの推定値を算出するための各種のデータが送信されて、MG2−ECUにおいて、エンジントルクの推定値を算出したが、本発明はこの限りではない。即ち、MG2−ECUからMG1−ECUへエンジントルクの推定値を算出するための各種のデータが送信されて、MG1−ECUにおいて、エンジントルクの推定値を算出してよい。
本発明では、第1、第2、第3、第4、第5及び第6実施形態のうちいずれか複数の実施形態を組み合わせてよい。例えば、第2実施形態と第6実施形態を合わせて、上述した第1の比の値とは、MG1−ECUが算出したT30CAに対する、上述のステップS403で更新された所要時間の比の値を意味してよい。或いは、上述した第2の比の値とは、MG2−ECUが算出したT30CAに対する、上述のステップS403で更新された所要時間の比の値を意味してよい。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う内燃機関のトルク推定装置及び方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。