JP2010167409A - 相間移動触媒及びこれを用いたアルキルエーテル化セルロース(誘導体)の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高いアルキルエーテル化置換度を達成する相間移動触媒及びこの相間移動触媒を用いたアルキルエーテル化セルロース(誘導体)の製造方法を提供する。
【解決手段】 特定のアンモニウム塩からなる相間移動触媒であって、プログラムシステムGAUSSIANによる第一原理計算で算出されるアンモニウム塩のカチオン分子の最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)のエネルギーレベルの差が0.01〜0.60a.u..であることを特徴とする相間移動触媒。
【選択図】なし
【解決手段】 特定のアンモニウム塩からなる相間移動触媒であって、プログラムシステムGAUSSIANによる第一原理計算で算出されるアンモニウム塩のカチオン分子の最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)のエネルギーレベルの差が0.01〜0.60a.u..であることを特徴とする相間移動触媒。
【選択図】なし
Description
本発明は、相間移動触媒及びこれを用いたアルキルエーテル化セルロース(誘導体)の製造方法に関する。
従来、セルロース(誘導体)をアルキルエーテル化する方法としては、苛性ソーダ等の強アルカリの存在下でカルボキシアルキルセルロース等にアルキルハロゲン化物を反応させる方法が知られている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、特許文献1に記載の方法ではカルボキシアルキルセルロースとアルカリとの反応により生成するアルコラートとアルキル化剤との相溶性が低いため、アルキルエーテル化の反応が進みにくく、アルキルエーテル化置換度の高いものが得られにくいという問題があった。
特許1286487号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法ではカルボキシアルキルセルロースとアルカリとの反応により生成するアルコラートとアルキル化剤との相溶性が低いため、アルキルエーテル化の反応が進みにくく、アルキルエーテル化置換度の高いものが得られにくいという問題があった。
本発明は、高いアルキルエーテル化置換度を達成する相間移動触媒及びこの相間移動触媒を用いたアルキルエーテル化セルロース(誘導体)の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は鋭意研究した結果、一般式(1)で表される化合物のカチオン成分のプログラムシステムGAUSSIANによる第一原理計算で算出される最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)のエネルギーレベルの差を特定の範囲にすることにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、一般式(1)で表される化合物からなることを特徴とする相間移動触媒(D)、及びセルロース(誘導体)(A)とアルキル化剤(B)を、アルカリ(C)と前記相間移動触媒(D)の存在下で反応させることを特徴とするアルキルエーテル化セルロース(誘導体)(E)の製造方法である。
[式中、R1、R2、R3及びR4は、プログラムシステムGAUSSIANによる第一原理計算で算出される一般式(1)で表される化合物のカチオン分子の最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)のエネルギーレベルの差が0.01〜0.60a.u..となる炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐の脂肪族炭化水素基又は炭素数7〜22のアリールアルキル基若しくはアリールアルケニル基でそれぞれ同一でも異なっていてもよく、X−は酸(F)の1価のアニオンを表す。]
すなわち本発明は、一般式(1)で表される化合物からなることを特徴とする相間移動触媒(D)、及びセルロース(誘導体)(A)とアルキル化剤(B)を、アルカリ(C)と前記相間移動触媒(D)の存在下で反応させることを特徴とするアルキルエーテル化セルロース(誘導体)(E)の製造方法である。
本発明によれば、特定の化学構造を有する相間移動触媒を選択することにより、アルキルエーテル化反応が活性化されるため、アルキルエーテル化置換度の高いアルキルエーテルセルロース(誘導体)が得られる。
本発明の相間移動触媒(D)を構成する一般式(1)で表される化合物におけるR1、R2、R3及びR4は、プログラムシステムGAUSSIANによる第一原理計算で算出される一般式(1)で表される化合物のカチオン分子の最高被占軌道(以下、HOMOと略記)と最低空軌道(以下、LUMOと略記)のエネルギーレベルの差が0.30〜0.60a.u..となる炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐の脂肪族炭化水素基又は炭素数7〜22のアリールアルキル基若しくはアリールアルケニル基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
炭素数1〜22の直鎖の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ステアリル基、ヤシ油由来のアルコールから水酸基を除いたアルキル基(以下、ヤシ油アルキル基と略記する。)、及びオレイル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基及びテトラデセニル基等が挙げられる。また、分岐の炭化水素基としては、イソプロピル基及び2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
炭素数7〜22のアリールアルキル基としては、ベンジル基及びフェネチル基等が挙げられ、アリールアルケニル基としてはスチリル基及びシンナミル基等が挙げられる。
本発明の相間移動触媒(D)のカチオン分子の、プログラムシステムGAUSSIANによる第一原理計算で算出されるHOMOとLUMOとのエネルギーレベルの差は、0.30〜0.60a.u..であり、好ましくは0.40〜0.55.、さらに好ましくは0.45〜0.50a.u..である。
ここで、第一原理分子軌道計算によるHOMOのエネルギーレベル及びLUMOのエネルギーレベルは、計算するカチオン分子に対して力場計算により配座解析を行い、半経験的分子軌道法で構造最適化の後、HartreeFock法で計算される値である(参考文献1:「電子構造論による化学の探求(第二版)James B.Foresman、Aleen Frisch共著、田崎健三訳、ガウシアン社」)。
ここで、第一原理分子軌道計算によるHOMOのエネルギーレベル及びLUMOのエネルギーレベルは、計算するカチオン分子に対して力場計算により配座解析を行い、半経験的分子軌道法で構造最適化の後、HartreeFock法で計算される値である(参考文献1:「電子構造論による化学の探求(第二版)James B.Foresman、Aleen Frisch共著、田崎健三訳、ガウシアン社」)。
(D)のカチオン分子を構成する前記置換基の炭素数を多くする等によりカチオン分子の分子容を大きくするか又はカチオン分子の対称性を下げることにより、(D)のカチオン分子のHOMOとLUMOのエネルギーレベルの差を小さくすることができる。
(D)のカチオン分子を構成する前記置換基R1、R2、R3及びR4の内の2個又は3個が炭素数1〜20の直鎖の炭化水素基であり、残りが炭素数7〜12のアリールアルキル基又は炭素数8〜20の直鎖の炭化水素基であることが、(D)のカチオン分子のHOMOとLUMOのエネルギーレベルの差を小さくする観点から好ましい。
(D)のカチオン分子を構成する前記置換基R1、R2、R3及びR4の内の2個又は3個が炭素数1〜20の直鎖の炭化水素基であり、残りが炭素数7〜12のアリールアルキル基又は炭素数8〜20の直鎖の炭化水素基であることが、(D)のカチオン分子のHOMOとLUMOのエネルギーレベルの差を小さくする観点から好ましい。
HOMOとLUMOのエネルギーレベルの差が前記範囲であるカチオン分子の具体例としては、トリメチルベンジルアンモニウム(0.45a.u..)、ジメチルオレイルベンジルアンモニウム(0.45a.u..)、ジメチルヤシ油アルキルベンジルアンモニウム(0.46a.u..)、トリメチルステアリルアンモニウム(0.48a.u..)及びジメチルジステアリルアンモニウム(0.50a.u..)等が挙げられる。
HOMOとLUMOのエネルギーレベルの差が前記範囲であるカチオン分子を用いると、セルロース(誘導体)のアルキルエーテル化において高いアルキルエーテル化置換度を達成することができる。
HOMOとLUMOのエネルギーレベルの差が前記範囲であるカチオン分子を用いると、セルロース(誘導体)のアルキルエーテル化において高いアルキルエーテル化置換度を達成することができる。
これらの内、反応性及び(D)の耐熱性の観点から好ましいのは、ジメチルオレイルベンジルアンモニウム、ジメチルヤシ油アルキルベンジルアンモニウム、トリメチルステアリルアンモニウム及びジメチルジステアリルアンモニウムである。
一般式(1)におけるX−は無機酸の1価のアニオンを表す。
無機酸の具体例としては、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、重亜硫酸、燐酸、亜燐酸、次燐酸、メタ燐酸、次亜燐酸、アミド燐酸、炭酸、重炭酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、オルトホウ酸、メタホウ酸及びスルファミン酸等が挙げられる。
これらの内、反応性及び(D)の耐熱性の観点から好ましいのは、塩酸、硫酸、臭化水素酸、硝酸、燐酸及び亜燐酸である。
無機酸の具体例としては、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、重亜硫酸、燐酸、亜燐酸、次燐酸、メタ燐酸、次亜燐酸、アミド燐酸、炭酸、重炭酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、オルトホウ酸、メタホウ酸及びスルファミン酸等が挙げられる。
これらの内、反応性及び(D)の耐熱性の観点から好ましいのは、塩酸、硫酸、臭化水素酸、硝酸、燐酸及び亜燐酸である。
本発明の製造方法は、セルロース(誘導体)(A)とアルキル化剤(B)を、アルカリ(C)と本発明の相間移動触媒(D)の存在下で反応させることを特徴とするアルキルエーテル化セルロース(誘導体)(E)の製造方法である。
本発明において、セルロース(誘導体)とは、セルロース又はセルロース誘導体を意味する。出発物質としてのセルロース(誘導体)(A)としては、綿リンター、木材パルプ又は溶解パルプ等から得られる植物系セルロース;アセトバクター属等に属する微生物が産出するバクテリアセルロース;カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース及びカルボキシプロピルセルロース等のカルボキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;メチルセルロース、エチルセルロース及びイソプロピルセルロース等のアルキルセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
これらの内、反応性の観点から好ましいのは、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びアルキルセルロースであり、特に好ましいのは、アルキルセルロース及びカルボキシアルキルセルロースである。
これらの内、反応性の観点から好ましいのは、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びアルキルセルロースであり、特に好ましいのは、アルキルセルロース及びカルボキシアルキルセルロースである。
セルロース(誘導体)(A)のアルキルエーテル化のために使用するアルキル化剤(B)としては、炭素数1〜8のアルキルクロライド(メチルクロライド、エチルクロライド、プロピルクロライド、ブチルクロライド及びイソプロピルクロライド等)、炭素数1〜8のアルキルブロマイド(メチルブロマイド、エチルブロマイド、プロピルブロマイド、イソプロピルブロマイド及びブチルブロマイド等)並びに炭素数1〜8のジアルキル硫酸(ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジプロピル硫酸、ジイソプロピル硫酸及びジブチル硫酸等)等が挙げられる。
これらの内、反応性の観点から好ましいのは、炭素数1〜8のアルキルクロライドであり、特に好ましいのは、エチルクロライド及びメチルクロライドである。
これらの内、反応性の観点から好ましいのは、炭素数1〜8のアルキルクロライドであり、特に好ましいのは、エチルクロライド及びメチルクロライドである。
セルロース(誘導体)(A)とアルキル化剤(B)の仕込み比率は、(A)の水酸基/アルキル化剤(B)の当量比として、通常1/0.8〜1/10であり、1/1〜1/8が好ましい。
アルカリ(C)としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムの固形アルカリ金属水酸化物が挙げられ、好ましいのは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムであり、更に好ましいのは水酸化ナトリウムである。これらの固形アルカリ金属水酸化物は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらの固形アルカリ金属水酸化物の形状は、粒状、フレーク状又は粉状の何れでもよいが、作業従事者の取り扱い上、粒状であることが好ましい。また、固形アルカリ金属水酸化物の大きさは、特に限定されないが、粒状物は直径1〜5mm、フレーク状物は0.5〜3cm角、粉状物は粒径30〜100μmであることが好ましい。
これらの固形アルカリ金属水酸化物の形状は、粒状、フレーク状又は粉状の何れでもよいが、作業従事者の取り扱い上、粒状であることが好ましい。また、固形アルカリ金属水酸化物の大きさは、特に限定されないが、粒状物は直径1〜5mm、フレーク状物は0.5〜3cm角、粉状物は粒径30〜100μmであることが好ましい。
セルロース(誘導体)(A)とアルカリ(C)の仕込み比率は、(A)の水酸基/アルカリ(C)の当量比として、通常1/0.8〜1/10であり、1/1〜1/8が好ましい。
相間移動触媒(D)の添加量は、セルロース(誘導体)(A)に対して、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%である。
本発明において、アルキルエーテル化反応時にセルロース(誘導体)(A)を溶解、膨潤又は分散させる目的で、溶媒を用いることが好ましい。
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びテトラリン等の芳香族炭化水素系溶剤;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット及びシクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶剤;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、四塩化炭素、トリクロロエチレン及びパークロロエチレン等のハロゲン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート及びエチルセロソルブアセテート等のエステル系又はエステルエーテル系溶剤;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶剤;t−ブタノール等のアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;N−メチルピロリドン等の複素環式化合物系溶剤;並びにこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
アルキルエーテル化反応開始時の溶媒とセルロース(誘導体)(A)の重量比[溶媒/(A)]は通常0/1〜10/1、好ましくは0.1/1〜4/1である。
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びテトラリン等の芳香族炭化水素系溶剤;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット及びシクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶剤;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、四塩化炭素、トリクロロエチレン及びパークロロエチレン等のハロゲン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート及びエチルセロソルブアセテート等のエステル系又はエステルエーテル系溶剤;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶剤;t−ブタノール等のアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;N−メチルピロリドン等の複素環式化合物系溶剤;並びにこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
アルキルエーテル化反応開始時の溶媒とセルロース(誘導体)(A)の重量比[溶媒/(A)]は通常0/1〜10/1、好ましくは0.1/1〜4/1である。
また、セルロース(誘導体)(A)を膨潤させて反応を促進する目的で、水を用いることができる。
アルキルエーテル化反応開始時の水と(A)の重量比[水/(A)]は通常0/1〜0.3/1、好ましくは0.01/1〜0.15/1である。この範囲より多くの水の量になると、不均一性が増してスラリー状反応系を保持できなくなり、凝集を生じるだけではなく、アルキル化剤の主反応への効率が低下する。
アルキルエーテル化反応開始時の水と(A)の重量比[水/(A)]は通常0/1〜0.3/1、好ましくは0.01/1〜0.15/1である。この範囲より多くの水の量になると、不均一性が増してスラリー状反応系を保持できなくなり、凝集を生じるだけではなく、アルキル化剤の主反応への効率が低下する。
アルキルエーテル化反応の反応温度は通常40〜180℃であり、好ましくは60〜160℃、更に好ましくは80〜140℃である。40℃未満であると反応の進行が非常に遅く効率的でなく、180℃を超えると、容器の材質が耐久性の良いSUS316Lであっても腐食を起こす可能性がある。また、反応時間は通常4〜30時間、好ましくは6〜15時間である。
アルキルエーテル化反応は、窒素等の不活性ガス雰囲気下(酸素濃度が好ましくは100ppm以下)で行うことが好ましい。
セルロース(誘導体)(A)、アルキル化剤(B)、アルカリ(C)及び相間移動触媒(D)の投入の順序は、急激な反応が生じなければ特に限定されないが、(A)、(D)及び必要により水と溶媒を混合した後、攪拌下に(C)を分散させ、室温で減圧と窒素等による不活性ガスでの置換を繰り返した後、減圧にして(B)を滴下する方法が好ましい。
(A)、(B)及び(D)を混合し、最後に(C)を投入する方法では、(C)の溶解熱や急激な反応により生成物が着色し易くなり、好ましくない。
(A)、(B)及び(D)を混合し、最後に(C)を投入する方法では、(C)の溶解熱や急激な反応により生成物が着色し易くなり、好ましくない。
本発明において、アルキルエーテル化反応後、反応物に、水と硫酸、塩酸及び燐酸等の酸を加え、析出物をろ過水洗し、乾燥することによって、アルキルエーテル化セルロース(誘導体)(E)を分離し、精製することができる。
HOMOとLUMOのエネルギーレベルの差が前記範囲であるカチオン分子である本発明の相間移動触媒(D)を用いて製造されたアルキルエーテル化セルロース(誘導体)(E)は、アルキルエーテル化置換度が70〜100%と高く、好適な製造条件を設定することにより、アルキルエーテル化置換度が85〜100%の物を得ることもできる。
本発明において、アルキルエーテル化置換度とは、セルロース(誘導体)(A)のグルコース環単位(繰り返し構成単位)当りの水酸基の内、置換されていない水酸基とアルキルエーテル化された水酸基の数の和に対するアルキルエーテル化された水酸基の数の割合の平均値を百分率で表わした値を言う。
例えば、グルコース環単位当り0.5個がカルボキシメチル基で置換されたセルロース(誘導体)(A)を原料とし、残りの2.5個の内2.1個が更にアルキルエーテル化された場合のアルキルエーテル化置換度は、84%である。
尚、本発明におけるアルキルエーテル化置換度は、後述の実施例に記載の方法で算出される。
例えば、グルコース環単位当り0.5個がカルボキシメチル基で置換されたセルロース(誘導体)(A)を原料とし、残りの2.5個の内2.1個が更にアルキルエーテル化された場合のアルキルエーテル化置換度は、84%である。
尚、本発明におけるアルキルエーテル化置換度は、後述の実施例に記載の方法で算出される。
本発明によって得られるアルキルエーテル化セルロース(誘導体)の用途は特に限定されないが、例えば本品のpH変化による水への溶解性が変化する性質やフィルム形成能が好適に用いられる用途(医薬品等の薬剤の添加剤、特に腸溶性のコーティング剤、苦みマスキング剤及び頭髪用セット剤等)に使用できる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において特に規定しない限り、部は重量部、%は重量%を意味する。
アルキルエーテル化置換度の測定法及び層間移動触媒のカチオン分子のHOMOとLUMOのエネルギーレベルの差の算出方法は以下の通りである。
<アルキルエーテル化置換度>
(1)試料約15mgを精秤し、ヨウ化水素酸6mLを分解フラスコに入れた後、窒素を通じて、150℃で1時間加熱する。生成するヨウ化アルキルを気相に追い出し、この後1重量%の赤リン懸濁液で洗浄し、吸収管に送る。吸収管には、酢酸カリウム15gを酢酸/無水酢酸混液(重量比:9/1)150mLに溶解し、その溶液145mLを量り、臭素5mLを加えておく。
(2)酢酸ナトリウム三水和物溶液が入った共栓三角フラスコに、吸収管の内容物を加える。吸着管の内壁に付着した内容物は、水を加えることで流し出す。次に、振り混ぜながら臭素の赤色が消えるまで、ギ酸を加える。
(3)共栓三角フラスコにヨウ化カリウム3gと希硫酸15mLを加え、栓をして軽く振り混ぜ、5分間放置する。遊離したヨウ素を0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム液で滴定する。
(4)下式からまずアルコキシ基含量(CE)を算出する。
アルコキシ基含量(CE)(%)=(滴定量)(mL)×アルコキシ基分子量/60/試料量(mg)×100
尚、原料セルロース(誘導体)にアルキル化剤と異なるアルキルを有するアルコキシ基が存在する場合、原料セルロース(誘導体)についても上記と同様の操作を行い、その滴定量を上記式の滴定量から引くことでアルコキシ基含量を算出後、その値と原料セルロース(誘導体)のアルコキシ基含量を足してCEを算出する。
(5)上記アルコキシ基含量(CE)を用いて、下式によりアルキルエーテル化置換度(CR)を算出する。
アルキルエーテル化置換度(CR)(%)=[原料セルロース(誘導体)の繰り返し構成単位の分子量×100/(100−CE)]×CE/アルコキシ基平均分子量/[3 −原料セルロース(誘導体)の繰り返し構成単位におけるアルキルエーテル以外の置換基数]
但し、上記式におけるアルコキシ基平均分子量は、異なるアルコキシ基が存在する場合のそれらのモル平均の分子量である。
(1)試料約15mgを精秤し、ヨウ化水素酸6mLを分解フラスコに入れた後、窒素を通じて、150℃で1時間加熱する。生成するヨウ化アルキルを気相に追い出し、この後1重量%の赤リン懸濁液で洗浄し、吸収管に送る。吸収管には、酢酸カリウム15gを酢酸/無水酢酸混液(重量比:9/1)150mLに溶解し、その溶液145mLを量り、臭素5mLを加えておく。
(2)酢酸ナトリウム三水和物溶液が入った共栓三角フラスコに、吸収管の内容物を加える。吸着管の内壁に付着した内容物は、水を加えることで流し出す。次に、振り混ぜながら臭素の赤色が消えるまで、ギ酸を加える。
(3)共栓三角フラスコにヨウ化カリウム3gと希硫酸15mLを加え、栓をして軽く振り混ぜ、5分間放置する。遊離したヨウ素を0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム液で滴定する。
(4)下式からまずアルコキシ基含量(CE)を算出する。
アルコキシ基含量(CE)(%)=(滴定量)(mL)×アルコキシ基分子量/60/試料量(mg)×100
尚、原料セルロース(誘導体)にアルキル化剤と異なるアルキルを有するアルコキシ基が存在する場合、原料セルロース(誘導体)についても上記と同様の操作を行い、その滴定量を上記式の滴定量から引くことでアルコキシ基含量を算出後、その値と原料セルロース(誘導体)のアルコキシ基含量を足してCEを算出する。
(5)上記アルコキシ基含量(CE)を用いて、下式によりアルキルエーテル化置換度(CR)を算出する。
アルキルエーテル化置換度(CR)(%)=[原料セルロース(誘導体)の繰り返し構成単位の分子量×100/(100−CE)]×CE/アルコキシ基平均分子量/[3 −原料セルロース(誘導体)の繰り返し構成単位におけるアルキルエーテル以外の置換基数]
但し、上記式におけるアルコキシ基平均分子量は、異なるアルコキシ基が存在する場合のそれらのモル平均の分子量である。
<HOMOとLUMOのエネルギーレベルの差>
HOMOとLUMOのエネルギーレベルの差は、相関移動触媒のカチオン分子に対し、分子軌道計算ソフト(GAUSSIAN03)を用いてHF法で下記条件によりHOMO及びLUMOのエネルギーレベルを計算し、LUMOのエネルギーレベルの値からHOMOのエネルギーレベルの値を減じることにより算出した。
分子軌道計算ソフト:GAUSSIAN03
構造最適化に用いた半経験的分子軌道法:AM1
基底関数:6−31G
HOMOとLUMOのエネルギーレベルの差は、相関移動触媒のカチオン分子に対し、分子軌道計算ソフト(GAUSSIAN03)を用いてHF法で下記条件によりHOMO及びLUMOのエネルギーレベルを計算し、LUMOのエネルギーレベルの値からHOMOのエネルギーレベルの値を減じることにより算出した。
分子軌道計算ソフト:GAUSSIAN03
構造最適化に用いた半経験的分子軌道法:AM1
基底関数:6−31G
<実施例1>
耐圧反応容器にカルボキシメチルセルロース(カルボキシメチル化置換度16.6%、グルコース環単位当りのカルボキシアルキル基の置換基数0.5)(A−1)27.6部、水酸化ナトリウム(C−1)12.6部、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド(D−1)1.1部、トルエン55.5部及び水3.0部を仕込み、窒素置換後、130℃で圧力を0.3〜1.0MPaに制御しながらエチルクロライド(B−1)20.2部を徐々に加え、12時間反応させた。反応終了後、反応物をグラス容器に移し、水87部と硫酸6部を加え、析出した粒子を遠心分離機で脱水し、更に水を加えて遠心分離する水洗操作を4回繰り返した後、80℃で減圧乾燥して、カルボキシメチルエチルセルロースを得た。
耐圧反応容器にカルボキシメチルセルロース(カルボキシメチル化置換度16.6%、グルコース環単位当りのカルボキシアルキル基の置換基数0.5)(A−1)27.6部、水酸化ナトリウム(C−1)12.6部、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド(D−1)1.1部、トルエン55.5部及び水3.0部を仕込み、窒素置換後、130℃で圧力を0.3〜1.0MPaに制御しながらエチルクロライド(B−1)20.2部を徐々に加え、12時間反応させた。反応終了後、反応物をグラス容器に移し、水87部と硫酸6部を加え、析出した粒子を遠心分離機で脱水し、更に水を加えて遠心分離する水洗操作を4回繰り返した後、80℃で減圧乾燥して、カルボキシメチルエチルセルロースを得た。
<実施例2>
ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド(D−1)1.1部の代わりにトリメチルステアリルアンモニウムクロライド(D−2)1.1部を用いた以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチルエチルセルロースを得た。
ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド(D−1)1.1部の代わりにトリメチルステアリルアンモニウムクロライド(D−2)1.1部を用いた以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチルエチルセルロースを得た。
<比較例1>
ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド(D−1)1.1部の代わりにテトラメチルアンモニウムクロライド(D’−1)1.1部を用いた以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチルエチルセルロースを得た。
ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド(D−1)1.1部の代わりにテトラメチルアンモニウムクロライド(D’−1)1.1部を用いた以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチルエチルセルロースを得た。
<比較例2>
相間移動触媒を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチルエチルセルロースを得た。
相間移動触媒を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチルエチルセルロースを得た。
得られたカルボキシメチルエチルセルロースのアルキルエーテル化置換度と使用した相間移動触媒のカチオン分子のHOMOとLUMOのエネルギーレベルの差の値を表1に示す。
以上の結果から明らかな通り、カチオン分子のHOMOとLUMOのエネルギーレベルの差が小さい相間移動触媒を用いることにより、アルキルエーテル化置換度が高いアルキルエーテル化セルロース(誘導体)が得られる。
本発明によって得られるアルキルエーテル化置換度が高いアルキルエーテル化セルロース(誘導体)は、pHの変動と共に水への溶解性が変動する性質やフィルム形成能を有しており、医薬品等の薬剤の添加剤、特に腸溶性のコーティング剤、苦みマスキング剤及び頭髪用セット剤として使用することができる。
Claims (5)
- 前記酸(F)が、無機酸である請求項1記載の相間移動触媒。
- セルロース(誘導体)(A)とアルキル化剤(B)を、アルカリ(C)と請求項1記載の相間移動触媒(D)の存在下で反応させることを特徴とするアルキルエーテル化セルロース(誘導体)(E)の製造方法。
- 前記セルロース(誘導体)(A)の重量に基づく前記相間移動触媒(D)の含有量が0.1〜20重量%である請求項3記載の製造方法。
- 前記セルロース(誘導体)(A)が、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びアルキルセルロースからなる群から選ばれる1種以上である請求項3又は4記載の製造方法。
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JP2009283688A JP2010167409A (ja) | 2008-12-26 | 2009-12-15 | 相間移動触媒及びこれを用いたアルキルエーテル化セルロース(誘導体)の製造方法 |
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JPS6313983B2 (ja) * | 1979-09-12 | 1988-03-29 | Matsumoto Seiyaku Kogyo Kk | |
JPS6345376B2 (ja) * | 1980-07-29 | 1988-09-09 | Sanyo Chemical Ind Ltd | |
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JPH069701A (ja) * | 1991-07-12 | 1994-01-18 | Sanyo Chem Ind Ltd | セルロース誘導体の低分子化方法および低分子量セルロース誘導体のエーテル化方法 |
-
2009
- 2009-12-15 JP JP2009283688A patent/JP2010167409A/ja active Pending
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