JP2008248217A - 熱可塑性多糖ゲルおよびその製造方法ならびに多糖成形材料の製造方法 - Google Patents

熱可塑性多糖ゲルおよびその製造方法ならびに多糖成形材料の製造方法 Download PDF

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淳一 門川
Masaaki Murakami
正晃 村上
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敏彦 松田
Atsushi Mizusawa
厚志 水沢
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Abstract

【課題】セルロース、キチン等の天然多糖の、新しい材料としての利用法を見出し、容易に成形加工することができる熱可塑性多糖ゲルを製造する方法を提供する。
【解決手段】天然多糖を、下記の化学式(式中、R:炭素数が1〜4であるアルキル基、R:炭素数が1〜4であるアルキル基またはアリル基、X:アニオン)で表されるイ
Figure 2008248217

オン液体に混合し加熱して、天然多糖をイオン液体に溶解させる工程と、この工程で得られた多糖溶液を室温で放置してゲル化させる工程と、この工程で得られたゲル生成物を洗浄し乾燥させる工程とを含む。
【選択図】なし

Description

この発明は、セルロース、キチン等の天然多糖から得られる熱可塑性を有する多糖ゲル、および、天然多糖を原料として熱可塑性を有する多糖ゲルを製造する方法、ならびに、天然多糖を原料として熱可塑性を有する多糖成形材料を製造する方法に関する。
セルロース、キチン等の多糖類は、自然界に最も豊富に存在する有機資源であり、その有効な利用が望まれている。ところが、多糖類は、強い水素結合により強固な結晶構造をとるため、溶解性や加工性が悪く、新しい材料としての利用法を開拓することが容易ではない。このような事情の下で、多糖類の材料化を目的とした研究が様々に行われている。
そして近年、陽イオンと陰イオンのみからなる塩でありながら室温で液体であり、蒸気圧がほとんどない(不揮発性)などといった特徴を有するイオン液体が、多糖類を良好に溶解させることが見出された。例えば、化2に示す化学式で表されるイオン液体(塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム)がセルロースを良好に溶解させることが報告されている(例えば、特許文献1および非特許文献2参照。)。
Figure 2008248217
特表2005−506401号公報(第28−30頁) ピー.リチャード他(P. Richard et al.)著,「米国化学会誌 (Journal of the American Chemical Society)」,2002,124(18),p.4974
特許文献1等には、イオン液体がセルロースを良好に溶解させることが記載されているが、セルロースをイオン液体に溶解させたセルロース溶液から単にセルロースを再生することが記載されているだけである。
この発明は、セルロース、キチン等の天然多糖の、新しい材料としての利用法を見出すためになされたものであって、容易に成形加工することができる熱可塑性多糖ゲルを提供すること、その熱可塑性多糖ゲルを製造する方法を提供すること、ならびに、熱可塑性多糖ゲルを使用して多糖成形材料を製造する方法を提供することを目的とする。
請求項1に係る発明は、天然多糖がイオン液体に溶解した多糖溶液のゲル生成物からなることを特徴とする熱可塑性多糖ゲルに係るものである。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の熱可塑性多糖ゲルにおいて、イオン液体が、化1に示す化学式(式中、R:炭素数が1〜4であるアルキル基、R:炭素数が1〜4であるアルキル基またはアリル基、X:アニオン)で表されることを特徴とする。
Figure 2008248217
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の熱可塑性多糖ゲルにおいて、天然多糖がセルロースであり、イオン液体が塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムであることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項2に記載の熱可塑性多糖ゲルにおいて、天然多糖がセルロースおよびキチンであり、セルロースを溶解させるイオン液体が塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムであり、キチンを溶解させるイオン液体が臭化1−アリル−3−メチルイミダゾリウムであり、セルロースがイオン液体に溶解した多糖溶液とキチンがイオン液体に溶解した多糖溶液とを混合させた混合溶液の複合多糖ゲル生成物からなることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、熱可塑性多糖ゲルを製造する方法において、天然多糖をイオン液体に混合し加熱して、天然多糖をイオン液体に溶解させる溶解工程と、この溶解工程で得られた多糖溶液を室温で放置してゲル化させるゲル生成工程と、このゲル生成工程で得られたゲル生成物を洗浄し乾燥させる洗浄工程とを含むことを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の製造方法において、イオン液体が、化1に示す化学式(式中、R:炭素数が1〜4であるアルキル基、R:炭素数が1〜4であるアルキル基またはアリル基、X:アニオン)で表されることを特徴とする。
Figure 2008248217
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の製造方法において、天然多糖がセルロースであり、イオン液体が塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムであることを特徴とする。
請求項8に係る発明は、請求項6に記載の製造方法において、天然多糖がセルロースおよびキチンであり、セルロースを溶解させるイオン液体が塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムであり、キチンを溶解させるイオン液体が臭化1−アリル−3−メチルイミダゾリウムであり、セルロースがイオン液体に溶解した多糖溶液とキチンがイオン液体に溶解した多糖溶液とを混合させる混合工程を含み、ゲル生成工程において、前記混合工程で得られた複合多糖溶液を室温で放置してゲル化させ、洗浄工程において、前記ゲル生成工程で得られた複合多糖ゲル生成物を洗浄し乾燥させることを特徴とする。
請求項9に係る発明は、多糖成形材料を製造する方法において、請求項5ないし請求項8のいずれかに記載の製造方法によって得られた熱可塑性多糖ゲルを加熱して流動状態とする加熱工程と、この加熱工程で流動化した多糖ゲルを任意の形状に成形加工する成形工程と、この成形工程で得られた成形物を揮発性溶媒または水でソックスレー抽出し減圧乾燥させる抽出工程とを含むことを特徴とする。
請求項1および請求項2に係る発明によると、天然多糖を原料とし加熱されると可塑化して容易に成形加工することができる熱可塑性多糖ゲルを提供することができる。
請求項3に係る発明によると、セルロースを原料とし加熱されると可塑化して容易に成形加工することができる熱可塑性多糖ゲルを提供することができる。
請求項4に係る発明によると、セルロースおよびキチンを原料とし加熱されると可塑化して容易に成形加工することができる熱可塑性複合多糖ゲルを提供することができる。
請求項5および請求項6に係る発明の製造方法によると、天然多糖を原料として、加熱されると可塑化して容易に成形加工することができる熱可塑性多糖ゲルを製造することができる。
請求項7に係る各発明の製造方法によると、セルロースを原料として、加熱されると可塑化して容易に成形加工することができる熱可塑性多糖ゲルを製造することができる。
請求項8に係る発明の製造方法によると、セルロースおよびキチンを原料として、加熱されると可塑化して容易に成形加工することができる熱可塑性複合多糖ゲルを製造することができる。
請求項9に係る発明の製造方法によると、セルロース等の天然多糖を原料として、任意の形状に成形加工された多糖成形材料を製造することができる。
以下、この発明の最良の実施形態について説明する。
この発明に係る熱可塑性多糖ゲルは、天然多糖をイオン液体に溶解させて得られた多糖溶液をゲル化させたゲル生成物であり、加熱すると可塑性(流動性)を示す。天然多糖としては、セルロース、キチン、キトサン、これらの混合物などが使用されるが、イオン液体に溶解する多糖であればどのようなものでもよい。これら多糖のうち、例えばセルロースを使用する場合において、セルロースの形態としては、繊維セルロース、木材パルプ、ろ紙、木綿玉、紙などが例示される。また、キチンは、エビ、カニの甲羅などから分離され、キトサンは、キチンをアルカリで処理(脱アセチル化)して得られる。
イオン液体としては、多糖を溶解させることができるものであればよく、その種類は特に限定されないが、多糖に対する溶解力の点からみて、例えば化1に示す化学式(式中、R:炭素数が1〜4であるアルキル基、R:炭素数が1〜4であるアルキル基またはアリル基、X:アニオン)で表されるイミダゾリウム塩型イオン液体を使用するのが好ましい。
Figure 2008248217
イミダゾリウム塩を構成する炭素数が1〜4であるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられ、好ましくはプロピル基およびブチル基が挙げられる。また、イミダゾリウム塩を構成するアニオンとしては、例えばCl、Br、BF 、PF 、NO 、[(CFSON]、HCOOなどが挙げられ、好ましくはClおよびBrが挙げられる。イミダゾリウム塩の具体的な例を示すと、化2に示す化学式で表される塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、および、化3に示す化学式で表される臭化1−アリル−3−メチルイミダゾリウムである。イミダゾリウム塩としては、そのほか、化4に示す化学式で表される塩化1−アリル−3−メチルイミダゾリウム、化5に示す化学式で表される臭化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、化6に示す化学式で表される臭化1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムなどが挙げられる。
Figure 2008248217
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Figure 2008248217
Figure 2008248217
熱可塑性多糖ゲルは、例えば、天然多糖の粉末をイオン液体に混合し加熱して、天然多糖をイオン液体に溶解させる工程と、この工程で得られた多糖溶液を室温で適当な時間放置してゲル化させる工程と、この工程で得られたゲル生成物を洗浄し乾燥させる工程とを経ることにより製造される。また、得られた熱可塑性多糖ゲルを加熱して流動状態(可塑状態)とし、その流動化(可塑化)した多糖ゲルを任意の形状に成形加工し、その成形物を揮発性溶媒または水でソックスレー抽出し、その後に乾燥させることにより、多糖成形材料を得ることができる。
上記した熱可塑性多糖ゲルの製造方法において、原料となる天然多糖、例えばセルロースとイオン液体との重量比(セルロース:イオン液体)は、通常0.01〜0.2:1、好ましくは0.05〜0.15:1である。製造方法の1例を示すと、まず、イオン液体にセルロースを加え、通常100℃〜110℃の温度で1時間〜24時間、混合物を加熱して、セルロースをイオン液体に完全に溶解させる。次いで、セルロース溶液を室温まで冷却した後、室温で7日間以上溶液を放置してゲル化させる。そして、得られたゲル生成物をエタノールで洗浄し乾燥させて、生成物を単離する。これにより、熱可塑性を有するセルロースゲルが得られる。得られたセルロースゲルは、120℃の温度でそれを加熱すると流動性(可塑性)を示すようになり、150℃の温度では流体となる。この流動物もしくは流体を室温に冷却し放置することにより、ゲル状態に戻すことができる。この再生ゲルは、最初に得られたゲルに比べて、より透明で強度に優れている。
上記した方法により得られたセルロースゲルを120℃の温度で加熱し、可塑状態のセルロースゲルを任意の形状に成形加工した後、エタノールを用いて成形物をソックスレー抽出し、その後に減圧乾燥させて、成形物からイオン液体を除去することにより、セルロース成形材料が得られる。このとき、エタノールで洗浄されて成形物から分離されたイオン液体は、再利用することができる。
また、熱可塑性複合多糖ゲル、例えばセルロースおよびキチンを原材料として得られる複合多糖ゲルを製造する場合には、まず、イオン液体、例えば塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム中でセルロース粉末を、例えば5wt%〜15wt%溶解させた溶液と、イオン液体、例えば臭化1−アリル−3−メチルイミダゾリウム中でキチン粉末を、例えば3wt%〜8wt%、好ましくは3wt%〜6wt%溶解させた溶液とを用意する。セルロースとキチンとの混合比(モル比)は、少なくともセルロースをキチンと同等もしくはキチンより多くする。次に、セルロース溶液とキチン溶液とを混合させて、例えば100℃の温度で加熱する。これにより、セルロースおよびキチンのいずれも析出することのない均一な溶液が得られる。この複合多糖溶液を室温まで冷却した後、室温で4日間以上溶液を放置してゲル化させる。得られたゲル生成物をエタノールで洗浄し乾燥させて、生成物を単離する。これにより、熱可塑性を有するセルロース−キチン複合多糖ゲルが得られる。
上記した製造方法で得られたセルロース−キチン複合多糖ゲルは、100℃以上の温度での加熱により溶融状態となるので、得られた複合多糖ゲルを120℃の温度で1時間加熱した後、室温で2日間静置することにより、再生ゲルを創製した。この再生ゲルは、前記複合多糖ゲルに比べてより透明であり、このことから、再生ゲル中ではセルロースとキチンとがより均一に分散していると考えられる。
上記方法で得られた再生ゲルを揮発性溶媒または水、例えばエタノールを用いてソックスレー抽出して、ゲル中のイオン液体を除去し、その後に乾燥させることにより、わずかに柔軟性を有するセルロース−キチン複合多糖成形材料を得ることができる。得られた複合多糖成形材料は、セルロースの持つ柔軟性とキチンの持つ強靱さを併せ持つ。なお、エタノールで洗浄されてゲルから分離されたイオン液体は、再利用することができる。
以下、実施例を示してこの発明をより具体的に説明する。
試験管に塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(イオン液体)2.1488g(12.3mmol)を秤取し、セルロース粉末0.3225g(イオン液体に対する重量割合:15wt%)を試験管に加え、100℃の温度で12時間、混合物を加熱して、セルロースをイオン液体に完全に溶解させた。得られたセルロース溶液を室温まで冷却した後、その溶液2.1009gをガラスプレート上に注下し、ガラスプレート上の溶液に別のガラスプレートを被せて、2枚のガラスプレート間に溶液を平板状にして挟み込んだ。この状態において室温で7日間溶液を放置することにより、溶液はゲル化した。得られたゲル生成物をエタノールで洗浄し、エタノール不溶部を一晩、減圧乾燥させた。これにより、1.2372gの生成物が単離された。
得られた生成物の元素分析値は、C:H:N=42.5%:8.85%:9.51%であった。この元素分析値から、生成物におけるセルロースとイオン液体と水分との存在比を求めると、セルロース:イオン液体:水=1:2.48:8.69であった。
単離された生成物(セルロースゲル)は、優れた柔軟性を示した。また、セルロースがイオン液体に溶解したセルロース溶液およびセルロースゲルのX線回折(XRD)測定をそれぞれ行ったところ、いずれの場合にも、セルロースの結晶構造に由来する回折ピークがほとんど観察されないことを確認した。この結果から、セルロース溶液およびセルロースゲルのいずれにおいても、セルロースの結晶構造が保たれていないことが分かった。このことは、熱重量分析(TGA)において、セルロース溶液中およびセルロースゲル中のそれぞれにおけるセルロースの分解温度が元のセルロースに比べて100℃近く低下したことからも確認することができた。また、XRD測定において、セルロースゲルではセルロース溶液と比べて、セルロースの非晶構造に由来する回折ピークが多く観察された。さらに、上記した元素分析の結果より、セルロースゲルはセルロースおよびイオン液体以外に水分を含んでいることが分かった。このことから、セルロース溶液は室温での放置中に水分を吸収し、これにより、一部分のセルロースが析出して架橋部分を形成することによって溶液がゲル化するものと考えられる。
得られたセルロースゲルは、120℃の温度で加熱すると流動性(可塑性)を示すようになり、150℃の温度では流体となった。また、流動物もしくは流体を室温に冷却し放置することにより、ゲル状態に戻すことができた。
実施例1で得られたセルロースゲルを120℃の温度で加熱し、可塑状態のセルロースゲルを任意の形状に成形加工した後、エタノールを用いて成形物をソックスレー抽出し、その後に減圧乾燥させて、成形物からイオン液体を除去することにより、ほぼセルロースのみからなるセルロース成形材料を創製した。すなわち、セルロースゲル成形物0.1621gをエタノールでソックスレー抽出し減圧下で乾燥させることにより、成形材料0.0696gを単離した。
得られたセルロース成形材料は、比較的硬く、わずかに柔軟性も示した。このセルロース成形材料のXRD測定を行ったところ、セルロースの非晶構造に加えて結晶構造に由来する回折ピークが観察された。このように、非晶部分と結晶部分とが混在することにより、硬いがわずかに柔軟性を有する成形材料が得られたと考えられる。また、TG分析の結果から、セルロース成形材料のセルロースの分解温度は元のセルロースとほぼ同じであった。
得られたセルロース成形材料の元素分析値は、C:H:N=42.1%:6.74%:0.0071%であった。この元素分析値から、成形材料におけるセルロースとイオン液体と水分との存在比を求めたところ、セルロース:イオン液体:水=1:0.0062:0.38であり、得られた成形材料は、ほとんどセルロースから構成される材料であることが分かった。
[セルロース溶液の調製]
試験管に塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(イオン液体A)2.580g(14.78mmol)を秤取し、100℃の温度で加熱して融解させた後、室温に戻し、セルロース粉末0.258g(1.59mmol;イオン液体Aに対する重量割合:10wt%)を試験管に加え、スパチュラで攪拌した後、100℃の温度で1時間、混合物を加熱して、セルロースをイオン液体Aに完全に溶解させた。
[キチン溶液の調製]
サンプル管に臭化1−アリル−3−メチルイミダゾリウム(イオン液体B)2.000g(9.85mmol)を秤取し、キチン粉末0.100g(0.493mmol;イオン液体Bに対する重量割合:5wt%)をサンプル管に加え、100℃の温度で8時間、混合物を加熱し攪拌して、キチンをイオン液体Bに完全に溶解させた。キチンとセルロースとのモル比は、1:3.2であった。
[セルロース−キチン複合多糖ゲルの調製]
得られたセルロース溶液を試験管からスパチュラで掻き出して、サンプル管内のキチン溶液に加えた。混合溶液を100℃の温度で1時間、攪拌した。これにより、均一な溶液が得られた。得られた混合溶液を室温まで冷却した後、その混合溶液4.8119gをガラスプレート上に注下し、ガラスプレート上の混合溶液に別のガラスプレートを被せて、2枚のガラスプレート間に混合溶液を平板状にして挟み込んだ。この状態において室温で4日間混合溶液を放置することにより、混合溶液はゲル化して、5.9651gのゲル生成物が得られた。得られたゲル生成物をエタノールで洗浄し、エタノール不溶部を一日、減圧乾燥させた。これにより、2.9074gの生成物が単離された。
単離された生成物(セルロース−キチン複合多糖ゲル)のXRD測定を行ったところ、セルロースおよびキチンのそれぞれの結晶構造に由来する回折ピークがほとんど観察されないことを確認した。この結果から、ゲル中ではセルロースおよびキチンの結晶構造が或る程度失われていると考えられる。また、複合多糖ゲルのTG分析を行った結果、元のセルロースやキチンと比較して分解温度が低くなることからも、ゲル中でセルロースおよびキチンの結晶構造が保たれていないと考えられる。
実施例3に記載された方法・条件において、塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(イオン液体A)の量を0.4852g(2.78mmol)に、セルロース粉末の量を0.0485g(0.300mmol;イオン液体Aに対する重量割合:10wt%)に、臭化1−アリル−3−メチルイミダゾリウム(イオン液体B)の量を0.6070g(2.99mmol)に、キチン粉末の量を0.0304g(0.150mmol;イオン液体Bに対する重量割合:5wt%)に変え、キチンとセルロースとのモル比を1:2として、ゲルの生成を試みた。この結果、実施例3と同様の複合多糖ゲル生成物が得られた。
実施例3で得られたセルロース−キチン複合多糖ゲルを120℃の温度で加熱し、可塑状態の複合多糖ゲルを任意の形状に成形した後、室温で放置して再びゲル化させた。この再生ゲルを、エタノールを用いてソックスレー抽出することにより、再生ゲルからイオン液体を除去し、その後に減圧下で乾燥させることにより、セルロース−キチン複合多糖を単離した。
得られたセルロース−キチン複合多糖成形材料は、わずかに柔軟性を示した。この複合多糖成形材料のXRD測定を行ったところ、セルロースおよびキチンのそれぞれの結晶構造に由来するピークが観測された。このことから、複合多糖成形材料中ではセルロースおよびキチンがそれぞれ或る程度の結晶構造を形成していることが考えられる。また、得られた複合多糖成形材料のTG分析を行ったところ、複合多糖ゲルと比較して分解温度が高くなっており、元のセルロースやキチンと類似の挙動を示すことからも、複合多糖成形材料中で結晶構造を構築していると考えられる。
この発明に係る熱可塑性多糖ゲルは、従来の天然多糖には無い熱可塑性といった性質を有し、この熱可塑性多糖ゲルを用いて任意の形状に成形加工された多糖成形材料を得ることができ、これは、例えば耐熱性プラスチック、繊維(ナノファイバ)などとして用いられる。このように、この発明は、化学工業、特にプラスチック工業や繊維工業などの分野において利用することが可能である。

Claims (9)

  1. 天然多糖がイオン液体に溶解した多糖溶液のゲル生成物からなることを特徴とする熱可塑性多糖ゲル。
  2. イオン液体が、化1に示す化学式(式中、R:炭素数が1〜4であるアルキル基、R:炭素数が1〜4であるアルキル基またはアリル基、X:アニオン)で表される請求項1に記載の熱可塑性多糖ゲル。
    Figure 2008248217
  3. 天然多糖がセルロースであり、イオン液体が塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムである請求項2に記載の熱可塑性多糖ゲル。
  4. 天然多糖がセルロースおよびキチンであり、セルロースを溶解させるイオン液体が塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムであり、キチンを溶解させるイオン液体が臭化1−アリル−3−メチルイミダゾリウムであり、セルロースがイオン液体に溶解した多糖溶液とキチンがイオン液体に溶解した多糖溶液とを混合させた混合溶液の複合多糖ゲル生成物からなる請求項2に記載の熱可塑性多糖ゲル。
  5. 天然多糖をイオン液体に混合し加熱して、天然多糖をイオン液体に溶解させる溶解工程と、
    この溶解工程で得られた多糖溶液を室温で放置してゲル化させるゲル生成工程と、
    このゲル生成工程で得られたゲル生成物を洗浄し乾燥させる洗浄工程と、
    を含むことを特徴とする熱可塑性多糖ゲルの製造方法。
  6. イオン液体が、化1に示す化学式(式中、R:炭素数が1〜4であるアルキル基、R:炭素数が1〜4であるアルキル基またはアリル基、X:アニオン)で表される請求項5に記載の熱可塑性多糖ゲルの製造方法。
    Figure 2008248217
  7. 天然多糖がセルロースであり、イオン液体が塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムである請求項6に記載の熱可塑性多糖ゲルの製造方法。
  8. 天然多糖がセルロースおよびキチンであり、セルロースを溶解させるイオン液体が塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムであり、キチンを溶解させるイオン液体が臭化1−アリル−3−メチルイミダゾリウムであり、セルロースがイオン液体に溶解した多糖溶液とキチンがイオン液体に溶解した多糖溶液とを混合させる混合工程を含み、前記ゲル生成工程において、前記混合工程で得られた複合多糖溶液を室温で放置してゲル化させ、前記洗浄工程において、前記ゲル生成工程で得られた複合多糖ゲル生成物を洗浄し乾燥させる請求項6に記載の熱可塑性多糖ゲルの製造方法。
  9. 請求項5ないし請求項8のいずれかに記載の製造方法によって得られた熱可塑性多糖ゲルを加熱して流動状態とする加熱工程と、
    この加熱工程で流動化した多糖ゲルを任意の形状に成形加工する成形工程と、
    この成形工程で得られた成形物を揮発性溶媒または水でソックスレー抽出し減圧乾燥させる抽出工程と、
    を含むことを特徴とする多糖成形材料の製造方法。
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