JP5723537B2 - アルキルエーテル化セルロースおよびその誘導体の製造方法 - Google Patents

アルキルエーテル化セルロースおよびその誘導体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、アルキルエーテル化セルロースまたはその誘導体(以下、単に「セルロース(誘導体)」と略称する。)の製造方法に関する。
従来、セルロース(誘導体)をアルキルエーテル化する方法としては、苛性ソーダ等の強アルカリ及び第4級塩等の相間移動触媒の存在下でカルボキシアルキルセルロース等にアルキルハロゲン化物を反応させる方法が知られている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、アルキルエーテル化の際に着色が起こりやすいという問題があった。
特開58−147402号公報
本発明の課題は、着色の少ないアルキルエーテル化セルロース(誘導体)の製造方法を提供することである。
本発明者は上記目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明は、セルロースまたはその誘導体(A)とアルキル化剤(B)を、アルカリ(C)、および全アミン価が2.0mgKOH/g以下である第4級アンモニウム塩系相間移動触媒(D)の存在下で反応させることを特徴とするアルキルエーテル化セルロースまたはその誘導体(E)の製造方法であって、(A)がカルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びアルキルセルロースからなる群から選ばれる1種以上の(A)であり、(B)が炭素数1〜8のアルキルクロライドであり、(C)がアルカリ金属水酸化物であり、相間移動触媒(D)が下記一般式(1)で表されるアルキルエーテル化セルロースまたはその誘導体(E)の製造方法。
Figure 0005723537
[式中、R 1 とR 2 はそれぞれ独立に炭素数が1〜6の脂肪族炭化水素基;R 3 は炭素数が
1〜22の直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基;R 4 は炭素数が8〜22の直鎖もしくは分
岐の脂肪族炭化水素基又は炭素数が7〜22のアリールアルキルもしくはアリールアルケ
ニル基;X−はプロトン酸から1個のプロトンを除いた1価のアニオンを表す。]
本発明の製造方法によれば、着色の少ないアルキルエーテルセルロース(誘導体)が得られる。また、特定の相間移動触媒を選択することにより、着色が少なく、かつアルキルエーテル化置換度の高いアルキルエーテルセルロース(誘導体)が得られる。
本発明における相間移動触媒(D)は、全アミン価が2.0mgKOH/g以下である第4級アンモニウム塩であれば構造は特に限定されるものではないが、アルキルエーテル化置換度の高いアルキルエーテルセルロース(誘導体)が得られるという観点から、下記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩が好ましい。
Figure 0005723537
[式中、R1とR2はそれぞれ独立に炭素数が1〜6の脂肪族炭化水素基;R3は炭素数が1〜22の直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基;R4は炭素数が8〜22の直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素基又は炭素数が7〜22のアリールアルキルもしくはアリールアルケニル基;Xはプロトン酸から1個のプロトンを除いた1価のアニオンを表す。]
一般式(1)におけるR1とR2はそれぞれ独立に炭素数が1〜6の脂肪族炭化水素基である。好ましくは炭素数が1〜4のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数が1〜3のアルキル基であり特に好ましいのはメチル基またはエチル基である。
3は炭素数が1〜22の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素数が1〜18の脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数が1〜16の脂肪族炭化水素基である。
このような直鎖の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オレイル基、及びヤシ油由来のアルコールから水酸基を除いたアルキル基(以下、ヤシ油アルキル基と略記する。)等が挙げられ、る。
分岐の脂肪族炭化水素基としては、イソプロピル基及び2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
4は、炭素数が8〜22の直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素基または炭素数が7〜22のアリールアルキルもしくはアリールアルケニル基を表す。
直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素基のうち好ましくは炭素数が10〜18であり、さらに好ましくは炭素数が10〜16である。特に好ましいのは炭素数が10〜14である。
このような直鎖の脂肪族炭化水素基としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ヤシ油アルキル基及びオレイル基等が挙げられる。
分岐の脂肪族炭化水素基としては、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
これらの中で好ましくはデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ヤシ油アルキル基であり、さらに好ましくはデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ヤシ油アルキル基であり、特に好ましいのはデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヤシ油アルキル基である。
アリールアルキル基としては、ベンジル基及びフェネチル基等が挙げられ、アリールアルケニル基としてはスチリル基及びシンナミル基等が挙げられる。
これらの中で好ましくはベンジル基である。
一般式(1)においてR4が脂肪族炭化水素基の場合のカチオンの具体例としては、1つの長鎖アルキル基(炭素数8〜22)を有するもの(トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルステアリルアンモニウム、トリメチルヤシ油アルキルアンモニウム、トリメチル−2−エチルヘキシルアンモニウム、ジメチルエチルドデシルアンモニウム、ジメチルエチルテトラデシルアンモニウム、ジメチルエチルヘキサデシルアンモニウム、ジメチルエチルオクタデシルアンモニウム、ジメチルエチルヤシ油アルキルアンモニウム、ジメチルエチル−2−エチルヘキシルアンモニウム、ジメチルジステアリルアンモニウム、メチルジエチルドデシルアンモニウム、メチルジエチルテトラデシルアンモニウム、メチルジエチルヘキサデシルアンモニウム、メチルジエチルオクタデシルアンモニウム、メチルジエチルヤシ油アルキルアンモニウム、メチルジエチル−2−エチルヘキシルアンモニウム等)、2つの長鎖アルキル基(炭素数8〜22)を有するもの(ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム及びジメチルジドデシルアンモニウム等)、1つの長鎖アルケニル基(炭素数8〜22)を有するもの(トリメチルオレイルアンモニウム、ジメチルエチルオレイルアンモニウム及びメチルジエチルオレイルアンモニウム等)が挙げられる。
これらの内、エーテル化の反応性の観点から好ましいのは、ジメチルジデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、メチルジエチルドデシルアンモニウム、及びメチルジエチルヤシ油アルキルアンモニウムである。
また、一般式(1)においてR4がアリールアルキル基の場合のカチオンの具体例とし
ては、例えば、ジメチルデシルベンジルアンモニウム、ジメチルドデシルベンジルアンモニウム、ジメチルテトラデシルベンジルアンモニウム、ジメチルヘキサデシルベンジルアンモニウム、ジメチルヤシ油アルキルベンジルアンモニウム、ジメチルオレイルベンジルアンモニウム及びジメチル−2−エチルヘキシルベンジルアンモニウム等が挙げられる。
これらの内、エーテル化の反応性の観点から好ましいのは、ジメチルドデシルベンジルアンモニウム、ジメチルヤシ油アルキルベンジルアンモニウム、ジメチルオレイルベンジルアンモニウム及びジメチル−2−エチルヘキシルベンジルアンモニウムである。
上記で例示した一般式(1)のカチオンの内、エーテル化の反応性の観点から更に好ましいのは、ジメチルジデシルアンモニウム、ジメチルドデシルベンジルアンモニウム、ト
リメチルヘキサデシルアンモニウム、ジメチルヤシ油アルキルベンジルアンモニウム、ジメチルオレイルベンジルアンモニウム、トリメチルステアリルアンモニウム及びジメチルジステアリルアンモニウムである。
一般式(1)におけるXは、プロトン酸から1個のプロトンを除いた1価のアニオン
を表す。Xを生成するプロトン酸としては、無機酸及び炭素数1〜22の有機酸が挙げ
られ、エーテル化の反応性の観点から、1価の無機酸又は有機酸が好ましい。
1価の無機のプロトン酸からプロトンを除いた無機アニオンとしては、Cl、F、PF6−、BF4−、AsF6−、SbF6−、HSO4−、ClO4−、AlF4−、AlCl4−、TaF6−、NbF6−及びCN等が挙げられる。
1価の有機のプロトン酸からプロトンを除いた有機アニオンとしてはCHSO4−、R
fCOO、RfSO3−(Rfは炭素数1〜12のフルオロアルキル基)及び1価のカル
ボン酸からプロトンを除いたアニオン等が挙げられる。
これらの内、エーテル化の反応性の観点から好ましいのは1価の無機のプロトン酸からプロトンを除いた無機アニオンであり、特に好ましいのはClである。
(D)の全アミン価は、通常2.0mgKOH/g以下、好ましくは1.0mgKOH/g以下、特に好ましくは0.5mgKOH/g以下、最も好ましくは0.2mgKOH/g以下である。全アミン価が2.0mgKOH/gを超えると、エーテル化反応による生成物であるアルキルエーテル化セルロース誘導体(E)が着色し易くなる。
全アミン価とは、試料1g中に含まれるアミンを中和するのに要する塩酸と当量の水酸化カリウムのmg数で定義される。なお、第4級アンモニウム塩系相間移動触媒(D)が水などの溶液である場合は、試料の測定値を(D)の有効濃度で換算する。
全アミン価の測定は、酸を用いる電位差滴定法により測定することができる。具体的には、試料約7gをビーカーに精秤し、これにメチルアルコール50mlを加えて試料を溶解させる。0.01モル/Lの塩酸滴定用溶液を用いて、電位差滴定装置で滴定し、次式によって全アミン価を算出する。
全アミン価=(A−B)×f×0.5611/S
ここで、A:本試験に要した0.01モル/L塩酸滴定用溶液のml数
B:空試験に要した0.01モル/L塩酸滴定用溶液のml数
f:0.01モル/L塩酸滴定用溶液の力価
S:試料採取量(g)
(D)の全アミン価は、通常、第4級アンモニウム塩である(D)の製造時の副生成物又は不純物である遊離の第1〜第3級アミン化合物に由来するものであり、遊離の第1〜第3級アミン化合物は、通常、(D)の原料となる炭化水素基、アリールアルキル基及び/又はアリールアルケニル基等を有するアミン化合物である。
遊離の第1〜第3級アミン化合物としては、以下の化合物が例示される。
遊離の第1級アミン化合物としては、例えば炭素数1〜22の脂肪族モノアミン(メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン及びオクタデシルアミン等)及びアリールアルキルアミン(ベンジルアミン等)が挙げられる。
遊離の第2級アミン化合物としては、例えば炭素数1〜22のアルキル基を有するジアルキルアミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジオクタデシルアミン、メチルエチルアミン、メチルデシルアミン、メチルドデシルアミン及びメチルオクタデシルアミン等)及び炭素数1
〜22のアルキル基と炭素数7〜22のアリールアルキル基を有するアミン(メチルベンジルアミン及びエチルベンジルアミン等)が挙げられる。
遊離の第3級アミン化合物としては、例えば炭素数1〜22のアルキル基を有するトリアルキルアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジデシルアミン、メチルジドデシルアミン、メチルジオクタデシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルドデシルアミン及びジメチルオクタデシルアミン等)及び炭素数1〜22のアルキル基と炭素数7〜22のアリールアルキル基を有するアミン(ジメチルベンジルアミン及びジエチルベンジルアミン等)が挙げられる。
全アミン価が2.0mgKOH/g以下である相間移動触媒(D)の製造方法としては、例えば下記の[I]〜[III]の方法が挙げられ、種々の不純物が少ないという観点から好ましいのは[I]又は[II]の方法である。
[I](D)の原料である第3級アミンと同当量以上(好ましくは1.1〜5.0当量)の炭酸ジアルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜5)を溶媒(例えば、メタノール:使用量は第3級アミンの重量に基づいて10〜1,000重量%)の存在下又は非存在下に、反応温度80〜200℃、好ましくは100〜150℃で反応させて第4級アンモニウム塩を形成させ、更に前記プロトン酸を添加(第4級アンモニウムの当量に基づいて1.0〜1.2当量)し、10〜50℃で1時間撹拌して塩交換する。溶媒を80〜120℃で常圧もしくは減圧でストリッピング(ストリッピング工程−1)して粗生成物を得る。その後、粗生成物の重量に基づいて50〜400%の水を添加して、常圧もしくは減圧で、105〜120℃×3〜6時間かけて、ストリッピング(ストリッピング工程−2)して目的の(D)を得る。
尚、以下において減圧の単位MPaはゲージ圧を表す。
[II](D)の原料である第3級アミンと1.0〜1.5当量のハロゲン化アルキル(アルキル基の炭素数1〜5)もしくはベンジルクロライドを溶媒(例えば、水、メタノール、エタノール、トルエン:使用量は第3級アミンの重量に基づいて10〜1,000重量%)の存在下又は非存在下に、反応温度30〜100℃、好ましくは40〜90℃で反応させて第4級アンモニウム塩を形成させて粗生成物を得た後、粗生成物の重量に基づいて50〜400%の水を添加して、常圧もしくは減圧で、90〜120℃×3〜8時間かけて、ストリッピング(ストリッピング工程−2)して目的の(D)を得る。
[III] [I]及び[II]以外の方法で、全アミン価が2.0mgKOH/gよりも高い(D)の粗生成物を得た後、粗生成物の重量に基づいて50〜400%の水を添加して、105〜120℃で3〜6時間かけて、常圧もしくは減圧でストリッピング(ストリッピング工程−2)して目的の(D)を得る。
本発明において、セルロース(誘導体)とは、セルロース又はセルロース誘導体を意味する。出発物質としてのセルロース(誘導体)(A)としては、綿リンター、木材パルプ又は溶解パルプ等から得られる植物系セルロース;アセトバクター属等に属する微生物が産出するバクテリアセルロース;カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース及びカルボキシプロピルセルロース等のカルボキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;メチルセルロース、エチルセルロース及びイソプロピルセルロース等のアルキルセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
これらの内、反応性の観点から好ましいのは、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びアルキルセルロースであり、特に好ましいのは、アルキルセルロース及びカルボキシアルキルセルロースである。
セルロース(誘導体)は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
セルロース(誘導体)(A)のアルキルエーテル化のために使用するアルキル化剤(B)としては、炭素数1〜8のアルキルクロライド(メチルクロライド、エチルクロライド、プロピルクロライド、ブチルクロライド及びイソプロピルクロライド等)、炭素数1〜8のアルキルブロマイド(メチルブロマイド、エチルブロマイド、プロピルブロマイド、イソプロピルブロマイド及びブチルブロマイド等)並びに炭素数1〜8のジアルキル硫酸(ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジプロピル硫酸、ジイソプロピル硫酸及びジブチル硫酸等)等が挙げられる。
これらの内、反応性の観点から好ましいのは、炭素数1〜8のアルキルクロライドであり、特に好ましいのは、エチルクロライド、及びメチルクロライドである。
反応系に存在させるアルカリ(C)としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムのアルカリ金属水酸化物が挙げられ、好ましいのは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムであり、更に好ましいのは水酸化ナトリウムである。これらのアルカリ金属水酸化物は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらのアルカリ金属水酸化物の形状は、粒状、フレーク状又は粉状の何れでもよいが、作業従事者の取り扱い上、粒状であることが好ましい。また、アルカリ金属水酸化物の大きさは、特に限定されないが、粒状物は直径1〜5mm、フレーク状物は0.5〜3cm角、粉状物は粒径30〜100μmであることが好ましい。
本発明において、アルキルエーテル化反応時にセルロース(誘導体)(A)を溶解、膨潤又は分散させる目的で、溶媒を用いることが好ましい。
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びテトラリン等の芳香族炭化水素系溶剤;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット及びシクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶剤;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、四塩化炭素、トリクロロエチレン及びパークロロエチレン等のハロゲン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート及びエチルセロソルブアセテート等のエステル系又はエステルエーテル系溶剤;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶剤;t−ブタノール等のアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;N−メチルピロリドン等の複素環式化合物系溶剤;並びにこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
また、セルロース(誘導体)(A)を膨潤させて反応を促進する目的で、水を用いることができる。
前記相間移動触媒(D)、アルカリ(C)並びに必要により前記溶媒及び水の存在下に、セルロース(誘導体)(A)とアルキル化剤(B)を、反応させることにより、着色が少ないアルキルエーテル化セルロース誘導体(E)を得ることができる。
相間移動触媒(D)の添加量は、エーテル化の反応性の観点から、セルロース(誘導体)(A)に対して、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%である。
セルロース(誘導体)(A)とアルカリ(C)の仕込み比率は、エーテル化の反応性の観点から、(A)の水酸基/アルカリ(C)の当量比として、通常1/0.8〜1/10であり、1/1〜1/8が好ましい。
アルキルエーテル化反応開始時の前記溶媒とセルロース(誘導体)(A)の重量比[溶媒/(A)]は反応系の粘度低減効果の観点から、通常0.1/1〜10/1、好ましくは0.5/1〜4/1である。
アルキルエーテル化反応開始時の水と(A)の重量比[水/(A)]は通常0/1〜0.3/1、好ましくは0.01/1〜0.15/1である。この範囲より多くの水の量になると、不均一性が増してスラリー状反応系を保持できなくなり、凝集を生じるだけではなく、アルキル化剤の主反応への効率が低下する。
セルロース(誘導体)(A)とアルキル化剤(B)の仕込み比率は、エーテル化の反応性の観点から、(A)の水酸基/アルキル化剤(B)の当量比として、通常1/0.8〜1/10であり、1/1〜1/8が好ましい。
アルキルエーテル化反応の反応温度は通常40℃〜180℃であり、好ましくは60〜160℃、更に好ましくは80〜140℃である。40℃未満であると反応の進行が非常に遅く効率的でなく、180℃を超えると、容器の材質が耐久性の良いSUS316Lであっても腐食を起こす可能性がある。また、反応時間は通常4〜30時間、好ましくは6〜15時間である。
セルロース(誘導体)(A)、アルキル化剤(B)、アルカリ(C)及び相間移動触媒(D)の投入の順序は、急激な反応が生じなければ特に限定されないが、(A)、(D)及び必要により水と溶媒を混合した後、攪拌下に(C)を分散させ、室温で減圧と窒素等による不活性ガスでの置換を繰り返した後、減圧にして(B)を滴下する方法が好ましい。
本発明において、アルキルエーテル化反応後、反応物に、水と硫酸、塩酸及び燐酸等の酸を加え、析出物をろ過水洗し、乾燥することによって、アルキルエーテル化セルロース(誘導体)(E)を分離し、精製することができる。
本発明の製造方法を用いて製造されたアルキルエーテル化セルロース(誘導体)(E)は、アルキルエーテル化置換度が70〜100%と高く、好適な製造条件を設定することにより、アルキルエーテル化置換度が85%〜100%の物を得ることもできる。
本発明において、アルキルエーテル化置換度とは、セルロース(誘導体)(A)のグルコース環単位(繰り返し構成単位)当りの水酸基の内、置換されていない水酸基とアルキルエーテル化された水酸基の数の和に対するアルキルエーテル化された水酸基の数の割合の平均値を百分率で表わした値を言う。
例えば、グルコース環単位当り0.5個がカルボキシメチル基で置換されたセルロース(誘導体)(A)を原料とし、残りの2.5個の内2.1個が更にアルキルエーテル化された場合のアルキルエーテル化置換度は、84%である。
尚、本発明におけるアルキルエーテル化置換度は、後述の実施例に記載の方法で算出される。
本発明によって得られるアルキルエーテル化セルロース(誘導体)の用途は特に限定されないが、例えば本品のpH変化による水への溶解性が変化する性質やフィルム形成能が好適に用いられる用途(医薬品等の薬剤の添加剤、特に腸溶性のコーティング剤、苦みマスキング剤及び頭髪用セット剤等)に使用できる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、特に規定しない限り、「部」は「重量部」を意味する。
尚、実施例における白色度の測定法は以下の通りである。
<白色度>
循風乾燥機を用いて105℃で1時間乾燥した試料を測定用試料容器に密充填して、JIS Z8722「色の測定方法」に規定された分光測光器(日本電子工業株式会社製 ND−1001DP型)を用いてハンター白色度を測定した。白色度の数値が大きいほど白色度が大きく、着色が無いことを示す。
<製造例1>相間移動触媒(D−1)の製造
耐圧反応容器に、メタノール46部、メチルジデシルアミン127部及び炭酸ジメチルエステル73部を仕込み、120℃で20時間反応させた後、メタノールの一部と炭酸ジメチルエステルを留去してジメチルジデシルアンモニウムメチルカーボネートの86%メタノール溶液190部を得た。更に、60℃に昇温した後、60℃に保ちながら25%塩酸水溶液64部を2時間で徐々に加え、メタノールと水を減圧下、80〜100℃で留去して粗生成物の(D’−1)を得た。この全アミン価は2.5mgKOH/gであった。
更に水を100部を加え、常圧で、105℃×3時間ストリッピングし、本発明の相間移動触媒(D−1)であるジメチルジデシルアンモニウムクロライドの50%水溶液250部を得た。(D−1)の全アミン価は0.1mgKOH/gであった。
<製造例2>相間移動触媒(D−2)の製造
耐圧反応容器に、水42部、ヤシ油アルキルジメチルアミン53部を仕込み、窒素置換後、60〜70℃でベンジルクロライド30部を徐々に加え、6時間反応して粗生成物の(D’−2)を得た。この全アミン価は3.2mgKOH/gであった。
さらに水を100部加え、常圧で、100℃×6時間ストリッピングし、本発明の相間移動触媒(D−2)であるヤシ油アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドの50%水溶液160部を得た。(D−2)の全アミン価は0.85mgKOH/gであった。
<製造例3>相間移動触媒(D−3)の製造
耐圧反応容器に水700部、ジメチルヘキサデシルアミン210部を仕込み、ジメチル硫酸90部を40℃、1時間で滴下し、更に同温度で1時間反応させて粗生成物の(D’−3)を得た。この全アミン価は3.5mgKOH/gであった。
さらに水を200部加え、常圧で100℃×6時間ストリッピングし、本発明の相間移動触媒(D−3)であるトリメチルヘキサデシルアンモニウムメチル硫酸塩の30%水溶液900部を得た。(D−3)の全アミン価は1.8mgKOH/gであった。
<実施例1>
耐圧反応容器にカルボキシメチルセルロース(カルボキシメチル化置換度15%、グルコース環単位当りのカルボキシアルキル基の置換基数0.5)88部、水酸化ナトリウム40部、前記相間移動触媒(D−1)4部、トルエン170部及び水12部を仕込み、窒素置換後、130℃で圧力を0.3〜1.0MPaに制御しながらエチルクロライド188部を徐々に加え、12時間反応させた。反応終了後、反応物をガラス容器に移し、水640部と硫酸22部を加え、析出した粒子を遠心分離機で脱水し、更に水を加えて遠心分離する水洗操作を4回繰り返した後、80℃で減圧乾燥して、カルボキシメチルエチルセルロースを得た。
<実施例2>
相間移動触媒(D−1)の代わりに相間移動触媒(D−2)を用いた以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチルエチルセルロースを得た。
<実施例3>
相間移動触媒(D−1)の代わりに相間移動触媒(D−3)を用いた以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチルエチルセルロースを得た。
<比較例1>
相間移動触媒(D−1)の代わりに、比較用の粗成生物(D’−1)を用いた以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチルエチルセルロースを得た。
<比較例2>
相間移動触媒(D−2)の代わりに、比較用の粗成生物(D’−2)を用いた以外は実施例2と同様にして、カルボキシメチルエチルセルロースを得た。
<比較例3>
相間移動触媒(D−3)の代わりに、比較用の粗成生物(D’−3)を用いた以外は実施例3と同様にして、カルボキシメチルエチルセルロースを得た。
原料の仕込量、相間移動触媒の全アミン価並びに得られたカルボキシメチルエチルセルロースの白色度の値を表1に示す。
Figure 0005723537
表1から明らかな通り、本発明の製造方法により、着色が少なく、白色度の高いアルキルエーテル化セルロース(誘導体)が得られる。
本発明の製造方法によって得られる着色が少ないアルキルエーテル化セルロース(誘導体)は、pHの変動と共に水への溶解性が変動する性質やフィルム形成能を有しており、医薬品等の薬剤の添加剤、特に腸溶性のコーティング剤、苦みマスキング剤及び頭髪用セット剤として使用することができる。

Claims (2)

  1. セルロースまたはその誘導体(A)とアルキル化剤(B)を、アルカリ(C)、および
    全アミン価が2.0mgKOH/g以下である第4級アンモニウム塩系相間移動触媒(D
    )の存在下で反応させることを特徴とするアルキルエーテル化セルロースまたはその誘導
    体(E)の製造方法であって、(A)がカルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びアルキルセルロースからなる群から選ばれる1種以上の(A)であり、(B)が炭素数1〜8のアルキルクロライドであり、(C)がアルカリ金属水酸化物であり、相間移動触媒(D)が下記一般式(1)で表されるアルキルエーテル化セルロースまたはその誘導体(E)の製造方法。
    Figure 0005723537
    [式中、R 1 とR 2 はそれぞれ独立に炭素数が1〜6の脂肪族炭化水素基;R 3 は炭素数が
    1〜22の直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基;R 4 は炭素数が8〜22の直鎖もしくは分
    岐の脂肪族炭化水素基又は炭素数が7〜22のアリールアルキルもしくはアリールアルケ
    ニル基;X−はプロトン酸から1個のプロトンを除いた1価のアニオンを表す。]
  2. 前記セルロース(誘導体)(A)の重量に基づく前記相間移動触媒(D)の重量が、0
    .1〜20重量%である請求項1記載の製造方法。
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