以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る空気調和装置Aの冷媒回路構成を示す冷媒回路図である。図1に基づいて、空気調和装置Aの回路構成及び動作について説明する。この空気調和装置Aは、冷媒を循環させる冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)を利用して、冷房運転又は暖房運転を行なうものである。なお、図1では、実線矢印が冷房運転時における冷媒回路を、破線矢印が暖房運転時における冷媒回路を、それぞれ示している。また、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
図1に示すように、空気調和装置Aは、2台の熱源機(室外機10a及び室外機10b)と、2台の利用側ユニット(室内機50a及び室内機50b)と、が冷媒配管で接続されて構成されている。2台の利用側ユニットは、2台の熱源機に並列接続されて連絡するようになっている。つまり、空気調和装置Aは、2台の熱源機に搭載される各機器と、2台の利用側ユニットに搭載される各機器と、を冷媒配管で接続することで冷媒回路を形成し、この冷媒回路に冷媒を循環させることによって、冷房運転又は暖房運転することができるようになっているのである。
空気調和装置Aの冷媒配管は、各室外機と接続されているガス分岐管(室外機10aに接続されているガス分岐管202a及び室外機10bに接続されているガス分岐管202b)と、各室内機に接続されているガス枝管(室内機50aに接続されているガス枝管206a及び室内機50bに接続されているガス枝管206b)と、ガス分岐管とガス枝管とを接続する共通のガス配管204と、各室外機と接続されている液分岐管(室外機10aに接続されている液分岐管203a及び室外機10bに接続されている液分岐管203b)と、各室内機に接続されている液枝管(室内機50aに接続されている液枝管207a及び室内機50bに接続されている液枝管207b)と、液分岐管と液枝管とを接続する共通の液配管205と、からなる。
ガス分岐管202a及びガス分岐管202bと、ガス配管204と、の間には、これらの冷媒配管を接続するガス分配器200が設けられている。また、液分岐管203a及び液分岐管203bと、液配管205と、の間には、これらの冷媒配管を接続する液分配器201が設けられている。なお、図1では、空気調和装置Aにガス分配器200及び液分配器201を搭載した状態を例に示しているが、ガス分配器200及び液分配器201を搭載することに限定するものではない。また、ガス分岐管202a、ガス分岐管202b、及び、ガス配管204がガス管を構成し、液分岐管203a、液分岐管203b、及び、液配管205が液管を構成している。
室外機10aと室内機50aとは、ガス分岐管202a、ガス配管204、ガス枝管206a、液枝管207a、液配管205、及び、液分岐管203aを介して接続されており、室外機10aと室内機50bとは、ガス分岐管202a、ガス配管204、ガス枝管206b、液枝管207b、液配管205、及び、液分岐管203aを介して接続されている。同様に、室外機10bと室内機50aとは、ガス分岐管202b、ガス配管204、ガス枝管206a、液枝管207a、液配管205、及び、液分岐管203bを介して接続されており、室外機10bと室内機50bとは、ガス分岐管202b、ガス配管204、ガス枝管206b、液枝管207b、液配管205、及び、液分岐管203bを介して接続されている。
室外機10aには、圧縮機1aと、オイルセパレータ2aと、逆止弁3aと、四方弁4aと、室外熱交換器5aと、高低圧熱交換器6aと、室外機流入流量調整弁(以下、流量調整弁と称する)8aと、液側開閉弁9aと、ガス側開閉弁11aと、アキュムレータ12aと、返油バイパスキャピラリ13aと、返油バイパス用電磁弁14aと、高低圧熱交換器バイパス流量調整弁(以下、バイパス流量調整弁と称する)7aと、が搭載されている。圧縮機1a、オイルセパレータ2a、逆止弁3a、四方弁4a、室外熱交換器5a、高低圧熱交換器6a、流量調整弁8a、液側開閉弁9a、ガス側開閉弁11a、及び、アキュムレータ12aは、冷媒配管で直列に接続されるように設けられている。
高低圧熱交換器6aは、室外熱交換器5aと流量調整弁8aとの間における液配管26aに設けられている。この高低圧熱交換器6aには、液配管26aと、この高低圧熱交換器6aと流量調整弁8aとの間における液配管26aを分岐し、アキュムレータ12aの上流側に接続させたバイパス配管23aと、が接続されている。また、バイパス流量調整弁7aは、高低圧熱交換器6aと流量調整弁8aとの間におけるバイパス配管23aに設けられている。
さらに、返油バイパスキャピラリ13a及び返油バイパス用電磁弁14aは、オイルセパレータ2aと、アキュムレータ12a及び圧縮機1aを接続している冷媒配管と、を接続している返油バイパス回路30aに設けられている。返油バイパスキャピラリ13aは、返油バイパス用電磁弁14aの上流側及び下流側を接続し、返油バイパス用電磁弁14aを迂回するように設けられている。なお、以下の説明において、液配管26aとバイパス配管23aとが接続しているポイントを接続点25a、バイパス配管23aとアキュムレータ12aの上流側配管(四方弁4aとアキュムレータ12aとの間における冷媒配管)とが接続しているポイントを接続点24aと称する。
また、室外機10aには、室外機10aに搭載されている各アクチュエータ(たとえば、圧縮機1aや四方弁4a、図示省略の室外送風機など)の駆動を制御する制御装置27aが搭載されている。さらに、室外機10aには、第1圧力センサ15a、第2圧力センサ16a、第1温度センサ17a、第2温度センサ18a、第3温度センサ19a、第4温度センサ20a、第5温度センサ21a、第6温度センサ22a、及び、第7温度センサ28aが設けられている。
圧縮機1aは、インバータ回路を有しており、インバータ回路による電源周波数変換により圧縮機回転数が制御され、容量制御されるタイプであり、吸入した冷媒を圧縮して高温・高圧の状態にするものである。オイルセパレータ2aは、圧縮機1aの吐出側に設けられており、圧縮機1aから吐出され、冷凍機油が混在している冷媒ガスから冷凍機油成分を分離する機能を有している。逆止弁3aは、オイルセパレータ2aと四方弁4aとの間における冷媒配管に設けられており、圧縮機1aの停止時に圧縮機1a吐出部側への冷媒の逆流を防止するためのものである。
四方弁4aは、流路切替装置として機能し、冷房運転時と暖房運転時とで冷媒の流れを切り替えるものである。室外熱交換器5aは、冷房運転時には凝縮器(または放熱器)、暖房運転時には蒸発器として機能し、図示省略の室外送風機から供給される空気と冷媒との間で熱交換を行なうものである。高低圧熱交換器6aは、液配管26aを流れる冷媒と、バイパス配管23aを流れる冷媒との間で熱交換を行なうものである。流量調整弁8aは、冷房回路における接続点25aの下流側に設置されており、減圧弁や膨張弁として機能し、冷媒を減圧して膨張させるものである。この流量調整弁8aは、開度が可変に制御可能なもの、たとえば電子式膨張弁等で構成するとよい。
液側開閉弁9aは、制御装置27a又は手動で開閉されることで冷媒を導通したりしなかったりするものである。ガス側開閉弁11aも、制御装置27a又は手動で開閉されることで冷媒を導通したりしなかったりするものである。液側開閉弁9a及びガス側開閉弁11bは、開閉されることによって、冷凍サイクル内の圧力変動を調整するために設置されている。アキュムレータ12aは、圧縮機1aの吸入側に設けられており、冷媒回路を循環する過剰な冷媒を貯留するものである。
バイパス流量調整弁7aは、接続点25aと高低圧熱交換器6aとの間におけるバイパス配管23aに設置されており、減圧弁や膨張弁として機能し、冷媒を減圧して膨張させるものである。このバイパス流量調整弁7aは、開度が可変に制御可能なもの、たとえば電子式膨張弁等で構成するとよい。返油バイパス回路30aは、オイルセパレータ2aで分離した冷凍機油を圧縮機1aの吸入側に戻すようになっている。返油バイパスキャピラリ13aは、返油バイパス回路30aを通る冷凍機油の流量を調整するものである。返油バイパス用電磁弁14aは、開閉制御されることで、返油バイパスキャピラリ13aとともに冷凍機油の流量を調整するものである。
第1圧力センサ15aは、オイルセパレータ2aと四方弁4aとの間に設けられ、圧縮機1aから吐出された冷媒の圧力(高圧)を検知するものである。第2圧力センサ16aは、アキュムレータ12aの上流側に設けられ、圧縮機1aに吸入される冷媒の圧力(低圧)を検知するものである。第1温度センサ17aは、圧縮機1aとオイルセパレータ2aとの間に設けられ、圧縮機1aから吐出された冷媒の温度を検知するものである。第2温度センサ18aは、室外機10aの周囲の温度を検知するものである。第3温度センサ19aは、室外熱交換器5aと高低圧熱交換器6aとの間に設けられ、室外熱交換器5aと高低圧熱交換器6aとの間を通る冷媒の温度を検知するものである。
第4温度センサ20aは、高低圧熱交換器6a通過後のバイパス配管23aに設けられ、高低圧熱交換器6a通過後のバイパス配管23aを通る冷媒の温度を検知するものである。第5温度センサ21aは、接続点25aと流量調整弁8aとの間に設けられ、接続点25aと流量調整弁8aとの間における液配管26aを通る冷媒の温度を検知するものである。第6温度センサ22aは、接続点24aとアキュムレータ12aとの間に設けられ、接続点24aとアキュムレータ12aとの間を通る冷媒の温度を検知するものである。第7温度センサ28aは、アキュムレータ12aと圧縮機1aとの間に設けられ、圧縮機1aに吸入する冷媒の温度を検知するものである。
そして、各圧力センサで検知された圧力情報、及び、各温度センサで検知された温度情報は、信号として制御装置27aに送られるようになっている。制御装置27aは、後に詳述するが、各圧力センサ及び各温度センサから送信される信号に基づいて、各アクチュエータを制御するようになっている。この制御装置27aは、特に種類を限定するものではないが、たとえば室外機10aに搭載される各アクチュエータを制御できるようなマイクロコンピュータ等で構成するとよい。
ところで、室外機10bは、室外機10aと同様の構成となっている。つまり、室外機10aの構成部品の「a」を「b」に変更すれば室外機10bの構成部品となる。なお、図1では、室外機10a及び室外機10bの双方に制御装置が搭載されている状態を例に示しているが、1つの制御装置で室外機10a及び室外機10bの双方を制御するようにしてもよい。また、室外機10a及び室外機10bの双方に制御装置が搭載されている状態では、互いの制御装置が有線または無線で通信可能になっている。
室内機50aには、室内熱交換器100a及び膨張弁101aがガス枝管206a及び液枝管207aで直列に接続されて搭載されている。また、室内機50aには、室内機50aに搭載されている各アクチュエータ(たとえば、膨張弁101aや図示省略の室内送風機など)の駆動を制御する制御装置102aが搭載されている。さらに、室内機50aには、第8温度センサ103a及び第9温度センサ104aが設けられている。
室内熱交換器100aは、冷房運転時には蒸発器、暖房運転時には凝縮器(又は放熱器)として機能し、冷媒と空気との間で熱交換を行なうものである。膨張弁101aは、減圧弁や膨張弁として機能し、冷媒を減圧して膨張させるものである。この膨張弁101aは、開度が可変に制御可能なもの、たとえば電子式膨張弁等で構成するとよい。第8温度センサ103aは、室内熱交換器100aに接続しているガス枝管206aに設けられ、室内熱交換器100aのガス側出口における冷媒の温度を検知するものである。第9温度センサ104aは、室内熱交換器100aに接続している液枝管207aに設けられ、室内熱交換器100aの液側出口における冷媒の温度を検知するものである。
そして、各温度センサで検知された温度情報は、信号として制御装置102aに送られるようになっている。制御装置102aは、後に詳述するが、各温度センサから送信される信号に基づいて、各アクチュエータを制御するようになっている。この制御装置102aは、特に種類を限定するものではないが、たとえば室内機50aに搭載される各アクチュエータを制御できるようなマイクロコンピュータ等で構成するとよい。
ところで、室内機50bは、室内機50aと同様の構成となっている。つまり、室内機50aの構成部品の「a」を「b」に変更すれば室内機50bの構成部品となる。なお、図1では、室内機50a及び室内機50bの双方に制御装置が搭載されている状態を例に示しているが、1つの制御装置で室内機50a及び室内機50bの双方を制御するようにしてもよい。また、室内機50a及び室内機50bの双方に制御装置が搭載されている状態では、互いの制御装置が有線または無線で通信可能になっている。さらに、室内機に搭載されている制御装置は、室外機に搭載されている制御装置と有線又は無線で通信可能になっている。
空気調和装置Aの冷房回路(実線矢印)では、圧縮機1(圧縮機1a及び圧縮機1b)、オイルセパレータ2(オイルセパレータ2a及びオイルセパレータ2b)、逆止弁3(逆止弁3a及び逆止弁3b)、四方弁4(四方弁4a及び四方弁4b)、室外熱交換器5(室外熱交換器5a及び室外熱交換器5b)、高低圧熱交換器6(高低圧熱交換器6a及び高低圧熱交換器6b)、流量調整弁8(流量調整弁8a及び流量調整弁8b)、液側開閉弁9(液側開閉弁9a及び液側開閉弁9b)、膨張弁101(膨張弁101a及び膨張弁101b)、室内熱交換器100(室内熱交換器100a及び室内熱交換器100b)、ガス側開閉弁11(ガス側開閉弁11a及びガス側開閉弁11b)、四方弁4、及び、アキュムレータ12(アキュムレータ12a及びアキュムレータ12b)の順で冷媒が流れるように接続されている。
空気調和装置Aの暖房回路(破線矢印)では、圧縮機1、オイルセパレータ2、逆止弁3、四方弁4、ガス側開閉弁11、室内熱交換器100、膨張弁101、液側開閉弁9、流量調整弁8、高低圧熱交換器6、室外熱交換器5、四方弁4、及び、アキュムレータ12の順で冷媒が流れるように接続されている。なお、バイパス配管23(バイパス配管23a及びバイパス配管23b)及び返油バイパス回路30(返油バイパス回路30a及び返油バイパス回路30b)については、空気調和装置Aの動作の説明で併せて説明するものとする。
ここで、空気調和装置Aの動作について説明する。
まず、空気調和装置Aの冷房運転時の動作について説明する。この場合、圧縮機1からの吐出冷媒を室外熱交換器5に流入させるように四方弁4が切り替えられる。つまり、四方弁4a及び四方弁4bでは、図1で示す実線方向に配管が接続される。また、流量調整弁8が全閉または全開に近い状態、バイパス流量調整弁7(バイパス流量調整弁7a及びバイパス流量調整弁7b)が適度な開度、膨張弁101が適度な開度に設定されて運転が開始される。この場合の冷媒の流れは、以下のようになる。
圧縮機1から吐出された高温・高圧のガスの冷媒は、まずオイルセパレータ2を通過する。この時に冷媒に混在する冷凍機油のおよそ大部分は、冷媒と分離され、内側底部に溜められて、返油バイパス回路13を通り(返油バイパス用電磁弁14が開口されている場合はそこも通過)、圧縮機1の吸入配管に戻される。これにより、室外機10(室外機10a及び室外機10b)の外部へ流出する冷凍機油を低減でき、圧縮機1の信頼性を改善することができる。
冷凍機油が占める割合が低下した高温高圧の冷媒は、四方弁4を通り、室外熱交換器5で凝縮、液化され、高低圧熱交換器6を通過する。高低圧熱交換器6から流出した冷媒は、バイパス配管23に流れる冷媒と、液配管26とに流れる冷媒と、に分岐される。バイパス配管23を流れる冷媒は、バイパス流量調整弁7で適度に流量調整されて低圧・低温の冷媒となり、室外熱交換器5を出た冷媒と高低圧熱交換器6内で熱交換する。そのため、室外熱交換器5の出口側の冷媒状態よりも、高低圧熱交換器6の出口側での冷媒状態の方がエンタルピーが低くなる。
バイパス流量調整弁7を通り、高低圧熱交換器6から流出した低圧の冷媒は、バイパス配管23を流れて、バイパス配管23aとアキュムレータ12aの上流側配管とが接続している接続点24aに至る。これにより、エンタルピー差が増大するため、同一能力にする場合の必要冷媒流量を低減でき、圧損低減による性能改善の効果がある。なお、ここでいう高圧、低圧は、冷媒回路内における圧力の相対的な関係を表すものとする(温度についても同様である)。
一方、高低圧熱交換器6から流出し高圧側の冷媒は、流量調整弁8を通るが、流量調整弁8が全開のため、さして減圧することなく高圧の液冷媒として液配管205に供給される。その後、室内機50(室内機50a及び室内機50b)に入り、膨張弁101で減圧されて低圧二相冷媒となり、室内熱交換器100で蒸発、ガス化する。このとき、室内等の空調対象空間に冷房空気が供給され、空調対象空間の冷房運転が実現される。室内熱交換器100から流出した冷媒は、ガス配管204、四方弁4、及び、アキュムレータ12を通り、圧縮機1に再度吸入される。
ここで、アキュムレータ12には、図1に示すようなU字管が設けられているので、アキュムレータ12内に気液二相状態の冷媒が流入すると、液冷媒が容器下部に溜まり、U字管の上方開口部より流入されたガスリッチな冷媒が、アキュムレータ12から流出することになる。このようなアキュムレータ12を設けることによって、ガスリッチな冷媒が圧縮機1へ吸入される。したがって、過渡的な液や気液二相冷媒をアキュムレータ12に溜めきり、オーバーフローするまで、圧縮機1の液バックを一時的に防止することができ、圧縮機1の信頼性維持の効果が得られる。
次に、空気調和装置Aの暖房運転時の動作について説明する。この場合、圧縮機1からの吐出冷媒を室内機50に流入させるように四方弁4が切り替えられる。つまり、四方弁4a及び四方弁4bでは、図1で示す破線方向に配管が接続される。また、流量調整弁8は、適度に流量を調整して室外機10内の冷媒分布状態が各室外機10で同様になり、かつ、流量調整弁8の前後で適度な差圧が生じるように開度が設定される。さらに、バイパス流量調整弁7が全開、膨張弁101が適度な開度に設定されて運転が開始される。この場合の冷媒の流れは、以下のようになる。
圧縮機1から吐出された高温・高圧のガスの冷媒は、オイルセパレータ2及び四方弁4を通過してガス配管204に流入する。オイルセパレータ2は、冷房運転時と同様に作用する。ガス配管204を通り室内機50に供給されたガス冷媒は、室内熱交換器100で凝縮、液化された後、膨張弁101で減圧され、中間圧で液飽和状態に近い二相冷媒となる。この中間圧の冷媒は、液配管205を通った後、室外機10aと室外機10bに分配されてそれぞれに流入する。室外機10に流入した中間圧の冷媒は、流量調整弁8で適度に室外機10への冷媒流量を調節しているため、低圧二相状態となる。
低圧二相状態となった冷媒は、高低圧熱交換器6を通り、室外熱交換器5で蒸発し、ガス化した後、アキュムレータ12を通って、圧縮機1に再度吸入される。アキュムレータ12は、冷房運転時と同様に作用する。また、バイパス流量調整弁7は、全閉に制御されており、冷媒が流通しないため、高低圧熱交換器6での冷媒間の熱交換は実行されない。なお、逆にバイパス流量調整弁7が開けられ、冷媒の流入があるとすると、高低圧熱交換器6で冷媒間の熱交換が実行されることになり、熱交換するほど性能が低下することになってしまう。
図2は、空気調和装置Aの電気的な構成を示すブロック図である。図3及び図4は、制御装置27(制御装置27a及び制御装置27b)の構成を示すブロック図である。図2〜図4に基づいて、空気調和装置Aの電気的な構成及び制御装置27が実行する制御動作について説明する。図3では、空気調和装置Aの冷房運転時における制御装置27の制御動作を、図4では、空気調和装置Aの暖房運転時における制御装置27の制御動作を、それぞれ表している。図3及び図4に示すように、制御装置27は、圧縮機制御手段271、室外熱交換量制御手段272、室内過熱度制御手段273、高低圧熱交換器過熱度制御手段274、及び、室外流量調整手段275としての機能を有している。
図2では、制御装置27が実行する制御動作を機能ブロック図として示している。たとえば、冷房運転では、リモコンのスイッチがONされた後、制御モードの信号が制御装置27(図2では、室外機運転制御部27a及び室外機運転制御部27bとして図示)に送信されると、制御装置27が冷房モードが選択されたものと判断する。そして、制御装置27は、圧縮機制御手段271としての圧縮機容量可変部、室外熱交換量制御手段272としての室外FAN容量可変部、および、制御装置102(図2では、室内機制御部102a及び室内機制御部102bとして図示)に信号を伝播する。
そこで、冷房モードの場合では、圧力検知部(第1圧力センサ15及び第2圧力センサ16)での圧力値が制御装置27に送信され、その値に応じて、圧縮機容量可変部では、蒸発温度をたとえば0℃を目標として圧縮機1の駆動周波数を決定し、室外FAN可変容量部では、凝縮温度をたとえば50℃を目標として室外送風機の回転数を決定する。一方で、制御装置102では、室内機50の室内機出口過熱度(室内機ガス側温度−室内機液側温度)の演算結果より、電子膨張弁電源スイッチから適正な電子膨張弁101の開度を開口することを可能とする。
圧縮機制御手段271は、圧縮機1の回転数を制御して圧縮機容量を調整する機能を担っている。室外熱交換量制御手段272は、室外送風機の回転数や伝熱面積を制御して、室外熱交換器5での熱交換量を調整する機能を担っている。室内過熱度制御手段273は、膨張弁101の開度を制御して室内熱交換器100の出口側過熱度を調整する機能を担っている。高低圧熱交換器過熱度制御手段274は、バイパス流量調整弁7aの開度を制御して高低圧熱交換器6の出口側過熱度を調整する機能を担っている。室外流量調整手段275は、流量調整弁8の開度を制御して室外機10での冷媒の流量を調整する機能を担っている。以下、冷房運転時と暖房運転時とに分けて各手段の機能を具体的に説明する。
制御装置27は、冷房運転では、室内熱交換器100が蒸発器となるので、ここで所定の熱交換能力が発揮されるように蒸発温度(蒸発器の二相冷媒温度)が設定され、この蒸発温度を実現する圧力の値を低圧目標値として設定する。そして、圧縮機制御手段271がインバータ回路による圧縮機1の回転数制御を行なう。圧縮機1の運転容量は、第2圧力センサ16(第2圧力センサ16a及び第2圧力センサ16b)で計測される圧力が定められた目標値、たとえば飽和温度10℃に相当する圧力になるよう制御される。
また、圧縮機1の回転数制御により、凝縮温度(凝縮器の二相冷媒温度)も変化するが、性能、信頼性確保のため、凝縮温度として一定の範囲が設定され、この凝縮温度を実現する圧力の値を、高圧目標値として設定する。圧縮機制御手段271と室外熱交換量制御手段272とにより、第1圧力センサ15(第1圧力センサ15a及び第1圧力センサ15b)で計測される圧力が目標範囲内になるよう制御される。
さらに、室内過熱度制御手段273により、膨張弁101が(第8温度センサ103(温度センサ103a及び温度センサ103b)の温度)−(第9温度センサ104(第9温度センサ104a及び第9温度センサ104b)の温度)で演算される室内熱交換器100の出口の過熱度が目標(温度)値となるように開度制御される。この目標値としては、予め定められた目標値、たとえば5℃を用いる。目標となる出口過熱度に制御することで、室内熱交換器100内の二相状態の冷媒が占める割合を好ましい状態に保つことができる。
またさらに、流量調整弁8は、室外流量調整手段275によって予め定められた初期開度、たとえば全開または全開に近い開度に制御される。バイパス流量調整弁7は、高低圧熱交換器過熱度制御手段274によって(第4温度センサ20(第4温度センサ20a及び第4温度センサ20b)の温度)−(第2圧力センサ16で計測される圧力から換算される飽和温度)で演算される高低圧熱交換器6の低圧の冷媒が通過する低圧側出口の過熱度があらかじめ定めた目標値となるように開度制御される。目標値は、任意に定めることができるが、ここではたとえば2℃が用いられるとする。これにより、高低圧熱交換器6の仕様に見合った熱交換が実現できる。なお、室内過熱度制御手段273を制御装置102に設けるようにしてもよい。
制御装置27は、暖房運転では、室内熱交換器100が凝縮器となるので、ここで所定の熱交換能力が発揮されるように凝縮温度が設定され、この凝縮温度を実現する高圧の圧力の値を高圧目標値として設定する。そして、圧縮機制御手段271がインバータ回路による圧縮機1の回転数制御を行なう。圧縮機1の運転容量は、第1圧力センサ15で計測される高圧の圧力値が定められた目標値、たとえば飽和温度50℃に相当する圧力になるよう制御される。また、圧縮機1の回転数制御により、室外熱交換器5の蒸発温度が変化するが、性能、信頼性確保のため、一定の範囲が設定され、この蒸発温度を実現する圧力の値を、低圧目標値として設定する。圧縮機制御手段271と室外熱交換量制御手段272とにより、第2圧力センサ16で計測される圧力が目標範囲内になるよう制御される。
さらに、室内過熱度制御手段273により、膨張弁101が(第1圧力センサ15で計測される圧力から換算される飽和温度)−(第9温度センサ104の温度)で演算される室内熱交換器100の出口側の過冷却度(以下、室内熱交換器出口過冷却度という)が目標(温度)値となるように開度制御される。この目標値としては、予め定められた目標値、たとえば10℃を用いる。目標となる出口過熱度に制御することで、室内熱交換器100内の二相状態の冷媒が占める割合を好ましい状態に保つことができる。
またさらに、バイパス流量調整弁7は、高低圧熱交換器過熱度制御手段274によって予め定められた初期開度、たとえば全閉に近い開度に固定して制御される。室外流量調整手段275は、圧縮機吐出過熱度[(第1温度センサ17(第1温度センサ17a及び第1温度センサ17bの温度)−(第1圧力センサ15で計測される圧力から換算される飽和温度)]及び蒸発器出口過熱度[(第6温度センサ22(第6温度センサ22a及び第6温度センサ22b)の温度)−(第2圧力センサ16で計測される圧力から換算される飽和温度)]を演算して流量調整弁8の開度が制御される。
ここで、暖房運転と冷房運転の違いをみると、冷房運転では液配管205、液枝管207a、及び、液枝管207bに高圧の液冷媒が存在する一方、暖房運転では液配管205、液枝管207a、及び、液枝管207bに中間圧の液相または飽和液に近い二相冷媒が存在する。したがって、暖房運転では冷房運転に比べて液配管205、液枝管207a、及び、液枝管207b内を流れる冷媒の量は少なく、その分発生した余剰冷媒がアキュムレータ12に液冷媒として溜まることになる。大容量化した空気調和装置では、共通の液配管205や液分岐管203a、液分岐管203b、液枝管207a、液枝管207bの管径、配管長が増加するが、それに比例して冷媒量も増加するため、余剰冷媒の量もさらに増大することになる。
図1に示すような室外機を2台で構成する空気調和装置Aでは、個々の室外機10a、室外機10bにて十分な均液制御が実施される場合、各室外機の能力に見合ったアキュムレータ12の容積としている。そのため、室外機10aのアキュムレータ12a、及び、室外機10bのアキュムレータ12b内に発生する余剰冷媒は、アキュムレータ12aとアキュムレータ12bとの間を接続する均圧・均液管を有さない回路では、圧縮機起動後、運転中に均液制御を実施しない冷房運転において、一方の室外機内に余剰冷媒が偏って分布すると、運転中にそれを均等に分布させるのが困難となる。
アキュムレータ12a及びアキュムレータ12bの液面状態については、圧縮機吸入過熱度[(第7温度センサ28(第7温度センサ28a及び第7温度センサ28b)の温度)−(第2圧力センサ16で計測される圧力から換算される飽和温度)](以下、TsSH(TsSHa及びTsSHb)と称する)、あるいは、圧縮機吐出過熱度[(第6温度センサ22の温度)−(第1圧力センサ15で計測される圧力から換算される飽和温度)](以下、TdSH(TdSHa及びTdSHb)と称する)を演算して、たとえば液面の安定しない圧縮機起動後の10分以降にそのTsSHあるいはTdSHが予め定められた目標値、たとえば10℃を下回った場合は、アキュムレータ12a、及びアキュムレータ12bの有効容積に対して余剰冷媒過多と判定して、運転を停止させる(以下、オーバーフロー異常と称する)。
そのため均液手段を持たない回路あるいは均液手段のための制御手段を有さないシステムでは、一度アキュムレータの許容量を超えた場合に、繰り返しオーバーフロー異常にて停止に陥る可能性がある。そこで、一度オーバーフロー異常で停止した室外機側のアキュムレータ12a又はアキュムレータ12b、及び、液冷媒が分布する箇所(室外熱交換機5〜液側開閉弁9(液側開閉弁9a及び液側開閉弁9b))から、一方の余剰冷媒が少ない室外機側へ冷媒を移動させる必要がある。この冷媒移動により、一度オーバーフロー異常が発生した室外機から再度オーバーフロー異常に至ることを回避して、正常な(理想とする)冷媒分布として運転を継続させることができる。
図5は、実施の形態1における制御処理の流れを示すフローチャートである。図5に基づいて、実施の形態1の特徴事項である制御装置27が実行する制御処理の流れについて詳細に説明する。まず、ユーザにより室内機リモコンスイッチがONされると、圧縮機1が駆動を開始する。圧縮機1が駆動されることで、空気調和装置Aによる運転が開始される(ステップS0)。なお、ここでは、室外機10a及び室外機10b、室内機50a及び室内機50bの電源投入後に制御装置27を構成する各制御手段は、各センサの初期状態検知に応じた初期設定による固定値を設定して、立ち上げ処理を完了しているものとする。
制御装置27は、一定時間経過後に、圧縮機1aあるいは圧縮機1bのいずれか一方が冷房運転中であるかどうか判断する(ステップS1)。制御装置27は、圧縮機1aあるいは圧縮機1bのいずれかが冷房運転中であると判断すると(ステップS1;YES)、冷房運転中の室外機10のTsSH(TsSHa及びTsSHb)あるいはTdSH(TdSHa及びTdshb)からアキュムレータ12内に存在する余剰冷媒の液面状態を判断する(ステップS2)。たとえば、制御装置27は、冷房運転中の室外機10aのTdSHaが予め定められた基準値(たとえば10℃以下に)到達した時点から連続して所定時間(たとえば5分間)、その基準値を検知し続けたかどうかで余剰冷媒の液面状態を判断する。
制御装置27は、アキュムレータ12内に存在する冷媒液面が有効容積を超えたと判断した場合(ステップS2;YES)、オーバーフロー異常として圧縮機1aを停止させる(ステップS3)。なお、ここでは、圧縮機1aを中心に説明しているが、圧縮機1a及び圧縮機1bの双方が共に起動していた場合においても、制御装置27が一方のTdSHが基準値を検知し続けた場合には圧縮機1a及び圧縮機1bの双方を共に停止するものとする。また、制御装置27は、オーバーフロー異常猶予のために発報はしないようになっている。
制御装置27は、圧縮機起動可能な条件を満足した場合、圧縮機1a及び圧縮機1bの再起動許可信号が送信され、オーバーフロー異常を検知して停止した圧縮機1aとは異なる一方の圧縮機1bを再起動させる(ステップS4)。これは、オーバーフロー異常が発生した室外機10aには、余剰冷媒が多く存在しているため、同一室外機10aの圧縮機1aを再起動させると、再びオーバーフロー異常に至ることが考えられるからである。そのため、起動順序を入れ替えることで正常に起動させながら、停止室外機(室外機10a)の余剰冷媒を移動させる手段が必要となる。そこで、以下の制御処理では、オーバーフロー異常にて停止した室外機10a側の余剰冷媒をもう一方の室外機10b側へ移動させる際の処理フローについて説明する。
制御装置27は、室外機10bが冷房運転中であるかどうかを判断する(ステップS5)。制御装置27は、室外機10bが冷房運転中であると判断すると(ステップS5;YES)、第1圧力センサ15aで停止した室外機10aの液冷媒が分布する箇所(室外熱交換機5a〜液側開閉弁9a)の残圧力を取得する(ステップS6)。圧縮機1a停止後では第1圧力センサ15aの検知値は、外気温度による飽和圧力(=Po)となる。したがって、圧縮機1a停止時に第2温度センサ18aで検知する周囲温度が高いほど、飽和圧力Poは高い値を示す。
また、ステップS4からステップS5に移行する時点を起点として、制御装置27は、バイパス流量調整弁7aをある開度に設定して、同時にバイパス流量調整弁7aを開口する開口タイマaのカウントを開始する(ステップS7)。これは、オーバーフロー異常に至る室外機10aの異常前運転中の冷媒分布が、アキュムレータ12aに余剰冷媒が十分にあるということは、室外熱交換機5a〜液側開閉弁9aの液冷媒が分布する箇所においても十分に液冷媒が存在しており、この液冷媒が分布する箇所にて許容できなくなった余剰冷媒がアキュムレータ12aに存在しているため、液冷媒が分布する箇所からの冷媒移動が可能であると判断できるからである。
そこで、制御装置27は、バイパス流量調整弁7aをある開度で開口し、室外熱交換機5a〜液側開閉弁9aからバイパス配管23aを介して、四方弁4a、ガス側開閉弁11a、ガス分岐管202a、ガス分配器200、ガス分岐管202bを通り、運転中の室外機10bの低圧ラインに冷媒を移動させる(ステップS8)。ここで規定したバイパス流量調整弁7aの開口開度は、飽和圧力Poが高いほど第2圧力センサ16bにて算出される低圧ラインの圧力との差圧が大きくなり、液冷媒のバイパス量が大きくなるため、飽和圧力Poに応じた開度を設定することで、周囲温度に影響されることなく一定の液冷媒移動量を保証できるものとする。つまり、飽和温度(周囲温度に影響される)に応じた開度に設定することで、周囲温度にて移動量が変化せずに、一定量を流すことが可能になる。
次に、バイパス流量調整弁7aを開口させることで可能とする液冷媒移動制御の終了条件について説明する(ステップS9〜ステップS11)。制御装置27は、たとえば運転中の室外機10bのTdSHbが予め定められた基準値(たとえば10℃以下)に到達した時点から連続して所定時間(たとえば5分間)、その基準値を検知し続けたかどうかを判断する(ステップS9)。制御装置27は、TdSHbが予め定められた基準値に到達した時点から連続して所定時間、その基準値を検知し続けたと判断すると(ステップS9;YES)、冷媒を移動させているバイパス流量調整弁7aを封止させるように制御する(ステップS12)。これは、液冷媒移動の過程で運転ユニット側への液バック量過多を防止する目的での終了条件とする。
または、制御装置27は、第1圧力センサ15aで検知する圧力(=飽和圧力Po)が第2圧力センサ16bで検知する圧力以下となった時点から連続して所定時間(たとえば2分間)、その基準値を検知し続けたかどうかを判断する(ステップS10)。制御装置27は、第1圧力センサ15aで検知する圧力が第2圧力センサ16bで検知する圧力以下となった時点から連続して所定時間、その基準値を検知し続けたと判断すると(ステップS10;YES)、バイパス流量調整弁7aを封止させるように制御する(ステップS12)。これは、室外機10aの室外熱交換機5a〜液側開閉弁9aの液冷媒が分布する箇所の圧力と運転中の低圧ラインの圧力との差がなくなった時点で冷媒の移動はなくなり、また圧力差が逆転することで液冷媒の逆流を防止することを目的とする。
または、制御装置27は、バイパス流量調整弁7aの開口のカウントタイマtaが、たとえばta=t1(=目標時間:5分)に到達したかどうかを判断する(ステップS11)。制御装置27は、バイパス流量調整弁7aの開口のカウントタイマtaがt1に到達したと判断すると(ステップS11;YES)、その時点でバイパス流量調整弁7aを封止させるように制御する(ステップS12)。これは、飽和圧力Poにより算出されたバイパス流量調整弁7aの開口開度から液冷媒が適正量(目標移動量)に到達したと判断したため、バイパス流量調整弁7aを閉止することを目的とする。
空気調和装置Aでは、ステップS11での終了を本来の制御目標値としている。しかしながら、空気調和装置Aでは、仮にステップS11のみで適正に冷媒移動が実施されない場合を考慮して、ステップS9及びS10を終了条件として導入し、これら(ステップS9〜ステップS11)のいずれかを満足することで、目標移動量に対する精度を向上させているものとする。
制御装置27は、バイパス流量調整弁7aを閉止すると(ステップS12)、タイマaでカウントしていた時間を0(リセット)に戻す(ステップS13)。その後、制御装置27は、ステップS6〜S13で実施した液冷媒移動制御終了からの経過時間をタイマa’にてカウントアップ開始する(ステップS14)。それから、制御装置27は、カウントタイマta’が、たとえば15分経過した後にステップS6〜S13で実施した制御フローが適正であるか判断する(ステップS15)。つまり、制御装置27には、ステップS6〜S13で実施した制御フローが適正であるかどうかを判断するための診断機能及び冷媒量再調整機能を設けている。以下、診断機能及び冷媒量再調整機能について説明する(ステップS16〜ステップS21)。
制御装置27は、圧縮機1bのみ(液冷媒移動先のユニットのみ)が運転しているかどうか判断する(ステップS16)。制御装置27は、圧縮機1bのみが運転していると判断すると(ステップS16;YES)、冷媒移動量が適正であったかどうかを判断する(ステップS17)。つまり、制御装置27は、TdSHbが予め定められた基準値(たとえば、5℃以下)に到達した時点から連続して所定時間(たとえば5分間)、その基準値を検知し続けたかどうかで冷媒移動量が適正であったかどうかを判断する。ただし、制御装置27が圧縮機1a及び圧縮機1bの双方が共に起動あるいは停止していると判断すると(ステップS16;NO)、本制御を終了し、ステップS1に戻る。
制御装置27は、TdSHbが予め定められた基準値に到達した時点から連続して所定時間、その基準値を検知し続けたと判断すると(ステップS17;YES)、ステップS6〜S13で実施した液冷媒移動量が目標値と比較して過剰に移動したと判断し、タイマa’でカウントしていた経過時間を0(リセット)に戻し、ステップS21へ移行するまで圧縮機1aの起動許可を禁止する(ステップS18)。そして、制御装置27は、再度停止側室外機10aへ冷媒を戻す手段を実施する(ステップS19)。
具体的には、制御装置27は、停止側の流量調整弁8aの入口側(液側開閉弁9aを設置している方向)は高圧側であるのに対して、流量調整弁8aの出口側(高低圧熱交換器6aを設置している方向)は第2温度センサ18aで検知する周囲温度の飽和圧力相当であり、流量調整弁8aの入口側に対して負圧となるため、流量調整弁8aをある開度に開口することにより、室外機10a側へ冷媒が移動することができる。
さらに、制御装置27は、TdSHbが予め定められた基準値(たとえば20℃以上)に到達した時点から連続して所定時間(たとえば5分間)、その基準値を検知し続けたかどうかを判断する(ステップS20)。制御装置27は、TdSHbが予め定められた基準値に到達した時点から連続して所定時間、その基準値を検知し続けたと判断すると(ステップS20;YES)、液リッチとなっていた室外機10bから適正冷媒量が室外機10aへ移動したと判断して、流量調整弁8aを封止し、室外機10a及び室外機10b間の冷媒移動を終了する(ステップS21)。
これにより、室外機10a及び室外機10b間で均圧・均液管を有さない回路においても停止中の室外機から冷媒を移動することが可能となる。ただし、制御装置27は、その後にTdSHbが、予め定められた基準値(たとえば10℃以下)に到達した時点から連続して所定時間(たとえば5分間)、その基準値を検知し続けたと判断すると(ステップS22;YES)、アキュムレータ12b内の液面が、アキュムレータ12bの有効容積を超え、冷媒量移行の調整不可と判断して、オーバーフロー異常を発報して(ステップS23)、圧縮機1a及び圧縮機1bを停止させる。なお、圧縮機1a及び圧縮機1bの自動復帰不可とする。
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2に係る空気調和装置Bの冷媒回路構成を示す冷媒回路図である。図6に基づいて、空気調和装置Bの回路構成及び動作について説明する。この空気調和装置Bは、空気調和装置Aと同様に冷媒を循環させる冷凍サイクルを利用して、冷房運転又は暖房運転を行なうものである。なお、実施の形態2では実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略するものとする。また、図6では、実線矢印が冷房運転時における冷媒回路を、破線矢印が暖房運転時における冷媒回路を、それぞれ示している。
実施の形態1では室外機が2台、室内機が2台、接続されているシステムを例に示したが、実施の形態2では室外機が3台、室内機が2台接続されているシステムを例に示している。つまり、空気調和装置Bは、3台の熱源機(室外機10a、室外機10b、及び、室外機10c)と、2台の利用側ユニット(室内機50a及び室内機50b)と、が冷媒配管(実施の形態1と同様な各配管及び分岐管)で接続されて構成されている。なお、室外機10cは、室外機10aと同様の構成となっている。つまり、室外機10aの構成部品の「a」を「c」に変更すれば室外機10cの構成部品となる。また、空気調和装置Bの基本的な動作も空気調和装置Aと同様である。
図7は、実施の形態2における制御処理の流れを示すフローチャートである。図7に基づいて、実施の形態2の特徴事項である制御装置27が実行する制御処理(オーバーフロー異常発生後の余剰冷媒処理)の流れについて詳細に説明する。空気調和装置Bは、3台以上の複数台の室外機が接続されて構成されているため、実施の形態1に係る空気調和装置Aのように余剰冷媒がある室外機(たとえば、室外機10a)に偏液し、その室外機がオーバーフローした場合は、他の室外機との液冷媒移動の処理がより複雑化することが容易に理解できる。そこで、空気調和装置Bでは、以下のような処理手順にて3台以上の室外機についても同様の余剰冷媒処理を実施することで、最適な冷媒分布状態に戻すことを可能としている。
ステップSS0〜ステップSS5までは、図5で示したステップS0〜ステップS5と同様の処理手順であるために説明を省略する。ステップSS5以降のステップSS6では、室外機3台の内、2台の室外機の圧縮機が起動している場合のオーバーフロー異常が発生した室外機からの余剰冷媒処理を実施する制御手順が示してある。ステップSS7からステップSS13までは、ステップSS3にて圧縮機1aを停止後、圧縮機1bのみしか起動してない場合であり、これは図5のフローチャートで示した室外機2台構成での余剰冷媒処理方法と同一である。
一方、ステップSS14からステップSS20までは、ステップSS3にて圧縮機1aの停止後、圧縮機1b及び圧縮機1cが起動している場合であり、室外機10b及び室外機10c側に室外機10aに分布する冷媒を移動させることで、室外機が3台以上の構成でも室外機2台と同様に冷媒を適正に分布し直すことができる。まずステップSS14からステップSS16においてオーバーフロー異常が発生した室外機10aのバイパス流量調整弁7aをある開度で開口し、室外熱交換機5a〜液側開閉弁9aからバイパス配管23aを介して、四方弁4a、ガス側開閉弁11a、ガス分岐管202a、ガス分配器200a、ガス分配器200d、ガス分岐管202b、ガス分岐管202cを通り、運転中の室外機10b及び室外機10cの低圧ラインに冷媒を移動させる。
ステップSS17からステップSS19において、バイパス流量調整弁7aを開口させることで可能とする液冷媒移動制御の終了条件について説明する。図5でのステップS9〜ステップS11での終了条件と同様の判定条件で終了させるが、ステップSS18では、室外機10b及び室外機10cの2台が起動しているため、そのいずれか一方のTdSHbあるいはTdSHcが予め定められた基準値(たとえば10℃以下)に到達した時点から連続して所定時間(たとえば5分間)、その基準値を検知し続けると、冷媒を移動させているバイパス流量調整弁7aを封止させるようにする。これにより、いずれか一方の室外機でも液冷媒移動の過程で運転ユニット側への液バック量過多となることを防止する。
また、ステップSS19では、運転室外機が2台となるため、運転室外機が1台の場合よりも液冷媒の移動先の冷媒許容量が増加するため、1台の室外機のみが運転している場合よりも開口時間を増加させることができる。たとえば、[2台の室外機が運転している場合の電子膨張弁開口時間]=[1台の室外機のみが運転している場合の電子膨張弁開口時間]×α(2台運転での開口時間延長係数)とすることができる。ただし、ここで規定するαはα≧1とし、室外機の運転台数によらずオーバーフロー異常にて停止した室外機からの目標とする液移動量が一定の場合はα=1とする。
次に、ステップSS21に移行した後、ステップSS22以降でステップSS7〜SS13あるいはSS14〜SS20にて実施した制御フローの最適性を判断し、更に冷媒移動量の調整が必要な場合は、ステップSS24〜ステップSS29及びステップSS30〜ステップSS35において冷媒量再調整を実施する。3台構成の室外機の内、1台のみが起動しているパターン(ここでは室外機10bとする)では、停止している2台の室外機10a及び室外機10cに冷媒を返すことで、ステップSS27またはステップSS33で過剰に移動したと判断した室外機に分布する冷媒量を減少させることが可能である。また、2台の室外機が起動しているパターン(ここでは室外機10b及び室外機10cとする)でも同様に、停止している1台の室外機10aのみに冷媒を移動させることで、冷媒量の再調整が可能となり、より適正な冷媒分布に至らせることができる。
実施の形態3.
図8は、実施の形態3に係る空気調和装置の制御処理の流れを示すフローチャートである。図8に基づいて、実施の形態3の特徴事項である制御装置27が実行する制御処理の流れについて詳細に説明する。なお、実施の形態3では実施の形態1及び実施の形態2との相違点を中心に説明するものとする。また、空気調和装置の回路構成については、実施の形態1に係る空気調和装置Aと同様であるため、実施の形態1に係る空気調和装置Aと同一部分には、同一符号を付して説明するものとする。
実施の形態1で説明した図5の制御フローチャートの中で、冷媒の移動量を判定する目標パラメータとしてTdSHa及びTdSHbを用いた場合を例にしたが、実施の形態3では冷媒分布量を判断する指標として、室外熱交換器5の出口の過冷却度(以下、SCO(SCOa及びSCOb)と称する)及び高低圧熱交換器6の出口の過冷却度(以下、SCC(SCCa及びSCCb)と称する)を用いて冷媒の移動量を判定する場合について説明する。
SCO[(第1圧力センサ15で計測される圧力から換算される飽和温度)−(第3温度センサ19の温度)]、及び、SCC[(第1圧力センサ15で計測される圧力から換算される飽和温度)−(第5温度センサ21(第5温度センサ21a及び第5温度センサ21b)の温度)]は、液冷媒の分布量を示しているため、ステップSSS9では冷媒分布量が定められた目標値、たとえばSCObあるいはSCCbが15℃以上に到達した時点から連続して所定時間(たとえば5分間)、その基準値を検知し続けると、移動先の液移動量が十分であると判断して、冷媒を移動させているバイパス流量調整弁7aを封止させるようにする。
また、ステップSSS17では、SCObあるいはSCCbが、予め定められた基準値(たとえば15℃以下)に到達した時点から連続して所定時間(たとえば5分間)、その基準値を検知し続けると、ステップSSS6〜SSS13で実施した液冷媒移動量が目標値と比較して過剰に移動したと判断し、実施の形態1と同様に冷媒分布量の再調整をステップSSS18以降で実施する。
ステップSSS20では、SCObあるいはSCCbが予め定められた基準値(たとえば15℃以下)に到達した時点から連続して所定時間(たとえば5分間)、その基準値を検知し続けると、運転中の室外機10bから冷媒が適正量移動したと判断し、流量調整弁を封止し、室外機10a及び室外機10b間の冷媒移動を終了する。これにより、実施の形態1と同様に室外機10a及び室外機10b間で均圧・均液管を有さない回路においても停止中の室外機から冷媒を移動することが可能となる。
また、第5温度センサ21で検知するSCCは、高低圧熱交換器6の出口の過冷却度であるため、第3温度センサ19よりも温度が低下し、SCOと比較するとSCO<SCCの関係が成り立つ。冷媒分布量の判定条件では、どの箇所で液冷媒が分布しているかによって、たとえば高低圧熱交換器6での出口部分でのみ過冷却度が高い場合は、高低圧熱交換器6内での熱交換量が過大となったのみ、つまりバイパス配管23を通過する高低圧バイパス量過多による影響の可能性もあることがわかる。
そのため、SCO及びSCCの両方の値を総合的に判断し、たとえばステップSSS9においてSCO≧10かつSCC≧20にて十分に液冷媒が移動したと判断することで、より適正な移動量の判定が可能となる。また、実施の形態3で示した制御処理は、実施の形態2で説明したような3台以上の室外機が接続されて構成される空気調和装置についても適用可能である。
実施の形態4.
図9は、実施の形態4に係る空気調和装置の制御処理の流れを示すフローチャートである。図9に基づいて、実施の形態4の特徴事項である制御装置27が実行する制御処理の流れについて詳細に説明する。なお、実施の形態4では実施の形態1〜実施の形態3との相違点を中心に説明するものとする。また、空気調和装置の回路構成については、実施の形態1に係る空気調和装置Aと同様であるため、実施の形態1に係る空気調和装置Aと同一部分には、同一符号を付して説明するものとする。
実施の形態4では、複数の室外機が接続されて構成されるシステムにおいて、実施の形態1及び実施の形態2を実現可能とする回路で特に停止中に運転する室外機の低圧ラインよりも高い圧力を有する部分に液冷媒が分布し、運転する室外機の低圧ラインへバイパスさせる回路(バイパス配管23)とその回路を開閉できるバイパス流量調整弁7を有する冷媒回路をもつ室外機10において、室外機10a又は室外機10bの内、どちらか一方の圧縮機1aあるいは圧縮機1bなどが破損した場合に運転を継続させながら、圧縮機の交換時間を短縮することができる手段を講じたものである。ただし、一方の圧縮機が破損した場合に応急的に一方の室外機のみ運転が可能である室外機にて構成されるシステムとする。
従来の空気調和装置では、運転状態を確認しながら、手動操作によって、室外機を延長配管と切り離す接続部のガス側開閉弁及び液側開閉弁を操作することでポンプダウン運転(延長配管内に存在する冷媒を空調機内に全て移動させた上で空調機からの冷媒の流入・流出を封止する)を実行していた。これに対し、実施の形態4に係る空気調和装置では、ユニットに付属する圧力センサーからの検知値を利用することで、より正確かつ迅速にポンプダウン運転を実行することを可能にしている。したがって、空気調和装置のメンテナンス性が大幅に向上することになる。
それは、手動操作によるポンプダウン運転では、周囲負荷に応じた運転により、冷媒回収速度(ポンプダウン運転継続時間)が制限されていたからである。また、圧力センサーからの検知値を外部出力で確認した場合、出力値確認後に封止操作を実施するために、封止前に運転範囲を逸脱するなどして、異常停止が発生してしまう可能性があったからである。そこで、この実施の形態4に係る空気調和装置では、以下の制御処理を実行することにより、従来の空気調和装置が有している課題を解決することを可能にしている。
この場合、ステップST1にて圧縮機1aが破損し、停止している室外機10aの液側開閉弁9a及びガス側開閉弁11aを封止し、系外への冷媒の流入・流出を防止する。その後ステップST2において圧縮機1bが運転を継続している場合、ステップST3においてバイパス流量調整弁7aを最大開度まで開口させる。この時、室外熱交換機5a〜液側開閉弁9aに分布する冷媒の圧力は周囲温度による飽和圧力となるから、運転中の第2圧力センサ16bにて検知した圧力よりも高いため、その冷媒はバイパス配管23aを介して、四方弁4a、ガス側開閉弁11a、ガス分岐管202a、ガス分配器200、ガス分岐管202bを通り、運転中の室外機10bの低圧ラインに移動する。
そこで、運転中のユニットが運転許容範囲を逸脱して停止しないように、まずステップST5では前記同様にTdSHbが目標値に達するまでバイパス流量調整弁7aを開口する。また、ステップST6においても前記同様にバイパス配管23aから逆流しない圧力までバイパス流量調整弁7aを開口した後に、更に停止室外機内の冷媒量をできる限り移動させるため、ステップST7及びステップST8において第1圧力センサ15bでの検知圧力63HS及び第2圧力センサ16bにおいて予め定められた基準値63LS、たとえば63HS=35kg/cm2 G以下あるいは63LS=4kg/cm2 G以上の範囲内を検知すると、圧縮機1aの周波数をたとえばΔF=10Hzを増速させた時点から連続して、たとえば10分間その基準値を検知し続けると、ステップST10においてバイパス流量調整弁7aを封止させ、そのバイパス回路を遮断する。
これは、圧縮機周波数を増加させることにより、バイパス配管23aからの冷媒流出先である運転中の室外機10bの低圧ラインの圧力を低下させ、停止中の液冷媒が存在する箇所との圧力差を更に設けることで移動を可能とする。これにより、ステップST11において回収すべき残留冷媒は軽減され、ステップST11での室外機10aに存在する冷媒の回収時間を短縮することができる。またステップST12、ST13完了後に再度封入する冷媒量の低減により封入時間の短縮と、封入冷媒量低減によるコストメリットも可能とする。
なお、各実施の形態に係る空気調和装置は、冷凍装置やルームエアコン、パッケージエアコン、冷蔵庫や、加湿器、調湿装置、ヒートポンプ給湯機等に適用することが可能である。したがって、空気調和装置の適用される目的・用途に応じて使用する冷媒や、室外機10の台数、室内機50の台数を決定するとよい。また、制御装置27及び制御装置102は、空気調和装置の全体を制御できるようなマイクロコンピュータ等で構成するとよい。