JP2010163479A - ゴム組成物及びゴム成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】シールリップを回転初期の摺動時に十分に摩耗させることができて回転トルクの低減を十分に図り得ると共に十分なシール性を確保できるゴム組成物を提供する。
【解決手段】ゴム成分100質量部に対して、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び硫酸バリウムからなる群より選ばれる1種または2種以上の第1配合成分を50〜200質量部、カーボンブラック及びシリカからなる群より選ばれる1種または2種の第2配合成分を0質量部を超えて50質量部以下含有した組成物からなる構成とする。
【選択図】なし

Description

この発明は、例えば軸受用シール等の材料として用いられるゴム組成物に関する。
例えば自動車のトランスミッションの軸受としては密封型転がり軸受が用いられている。この密封型転がり軸受としては、例えば、内輪軌道と外輪軌道の間に複数の転動体が配置され、内輪軌道の両側に周方向に沿ってシール溝が形成され、該シール溝に対向する外輪軌道の内周面の両側に周方向に沿って係止溝が形成されてなり、この係止溝に環状のゴムシールが装着され、該ゴムシールの先端のシールリップが、前記シール溝の側壁に摺接して配置された構成等が公知である(特許文献1、2参照)。このようなシールリップの摺接配置により、軸受内部の潤滑油が外部に漏れるのを防止できると共に外部からの異物の侵入も防止できる。
しかして、近年の環境負荷低減、低燃費化の要求の高まりを受けて、このような自動車のトランスミッションの軸受の回転トルクは従来よりも低トルクであることが求められており、これに伴い軸受に装着されるゴムシールとしても低トルク化を図り得るものが求められている。
このような低トルク化の要求に応えるべく、シールリップの形状を工夫して剛性を低減させることによって回転トルクを低減させる手法や、ゴムシールの締代(しめしろ)を少なくして回転トルクを低減させる手法の採用も考えられるところであるが、これら手法では、シールリップの形状が限定されたり、シールの寸法のバラツキ等もあって、その組み立て性も考慮すると、維持管理が難しいという問題があった。
そこで、シールリップを回転初期の摺動時に初期摩耗させることによって締代(しめしろ)を小さくして回転トルクを低減させるゴムシールを用いることが提案されている(特許文献3参照)。
特開2005−180575号公報(図1、図2等) 特開2008−163989号公報 特開2003−287040号公報
しかしながら、従来からゴムシールに使用されている一般的なゴム材料を用いてこのシールを試作して試験したところ、回転トルクを少し低減できる効果は認められるものの、回転トルクを十分なレベルまで低減させることは困難であることがわかった。
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、シールリップを回転初期の摺動時に十分に摩耗させることができて回転トルクの低減を十分に図り得ると共に、十分なシール性を確保できるゴム組成物を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]ゴム成分100質量部に対して、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び硫酸バリウムからなる群より選ばれる1種または2種以上の第1配合成分を50〜200質量部含有した組成物からなり、
前記組成物は、カーボンブラック及びシリカのいずれも含有しないものであることを特徴とするゴム組成物。
[2]ゴム成分100質量部に対して、
炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び硫酸バリウムからなる群より選ばれる1種または2種以上の第1配合成分を50〜200質量部、
カーボンブラック及びシリカからなる群より選ばれる1種または2種の第2配合成分を0質量部を超えて50質量部以下含有した組成物からなることを特徴とするゴム組成物。
[3]前記第1配合成分として硫酸バリウムが用いられている前項1または2に記載のゴム組成物。
[4]前項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物を架橋してなるゴム成形体。
[5]前項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物を架橋してなる軸受用シール。
[1]の発明では、ゴム成分100質量部に対して、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び硫酸バリウムからなる群より選ばれる1種または2種以上の第1配合成分(補強効果の弱い成分)を50〜200質量部含有した(即ち多量に含有した)組成物からなる上に、補強効果の大きい補強剤であるカーボンブラック及びシリカのいずれも含有しない構成であるから、例えばこのゴム組成物で作成されたシールリップを回転初期の摺動時に十分に摩耗させることができ、これにより締代(しめしろ)を小さくすることができて又はシールリップとシール溝の側壁との間に僅かな隙間(例えば50μm以下)を形成できて回転トルクの低減を十分に図り得ると共に、十分なシール性、十分な強度を備えたものとなる。
[2]の発明では、ゴム成分100質量部に対して、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び硫酸バリウムからなる群より選ばれる1種または2種以上の第1配合成分(補強効果の弱い成分)を50〜200質量部含有(即ち多量に含有)し、カーボンブラック及びシリカからなる群より選ばれる1種または2種の第2配合成分(補強効果の大きい補強剤)を0質量部を超えて50質量部以下含有した(即ち少ない配合割合で含有した)組成であるから、例えばこのゴム組成物で作成されたシールリップを回転初期の摺動時に十分に摩耗させることができ、これにより締代(しめしろ)を小さくすることができて又はシールリップとシール溝の側壁との間に僅かな隙間(例えば50μm以下)を形成できて回転トルクの低減を十分に図り得ると共に、十分なシール性、十分な強度を備えたものとなる。
[3]の発明では、第1配合成分として硫酸バリウムが用いられているから、回転初期の摺動時により十分に摩耗させることができて、回転トルクをより低減できる。
[4]の発明に係るゴム成形体では、例えばシールリップを回転初期の摺動時に十分に摩耗させることができ、これにより回転トルクを十分に低減できる。
[5]の発明に係る軸受用シールでは、シールリップを回転初期の摺動時に十分に摩耗させることができるので回転トルクを十分に低減できると共に、十分なシール性と十分な強度を確保できる。
第1発明は、ゴム成分100質量部に対して、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び硫酸バリウムからなる群より選ばれる1種または2種以上の第1配合成分を50〜200質量部含有した組成物からなり、前記組成物は、カーボンブラック及びシリカのいずれも含有しないものであることを特徴とする。
上記第1発明では、ゴム成分100質量部に対して、補強効果の弱い上記第1配合成分を50〜200質量部含有し(即ち多量に含有し)、かつ補強効果の大きい補強剤であるカーボンブラック及びシリカのいずれも含有しない構成であるから、例えばこのゴム組成物で作成されたシールリップを回転初期の摺動時に十分に摩耗させることができ、これにより締代(しめしろ)を小さくすることができて又はシールリップとシール溝の側壁との間に僅かな隙間(例えば50μm以下)を形成できて回転トルクの低減を十分に図り得る。しかして、一般的な非接触型軸受用シールのトルクと同等レベルまで回転トルクを低減できると共に、十分なシール性を確保できる。また、シール材等として十分な強度も確保できる。
また、第2発明は、ゴム成分100質量部に対して、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び硫酸バリウムからなる群より選ばれる1種または2種以上の第1配合成分を50〜200質量部、カーボンブラック及びシリカからなる群より選ばれる1種または2種の第2配合成分を0質量部を超えて50質量部以下含有した組成物からなることを特徴とするものである。
前記第2発明では、ゴム成分100質量部に対して、補強効果の弱い上記第1配合成分を50〜200質量部含有し(即ち多量に含有し)、かつ補強効果の大きい補強剤である上記第2配合成分を0質量部を超えて50質量部以下含有した(即ち少ない配合割合で含有した)組成であるから、例えばこのゴム組成物で作成されたシールリップを回転初期の摺動時に十分に摩耗させることができ、これにより締代を小さくすることができて又はシールリップとシール溝の側壁との間に僅かな隙間(例えば50μm以下)を形成できて回転トルクの低減を十分に図り得る。しかして、一般的な非接触型軸受用シールのトルクと同等レベルまで回転トルクを低減できると共に、十分なシール性を確保できる。また、シール材等として十分な強度も確保できる。
前記第1及び第2発明において、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び硫酸バリウムからなる群より選ばれる1種または2種以上の第1配合成分の配合割合は、ゴム成分100質量部に対して、50〜200質量部に設定される。50質量部未満では、加工性が低下するし、摺動時にシールリップを十分に摩耗させることができないという問題を生じる。また200質量部を超えると、加工性が低下するし、摺動時にシールリップを十分に摩耗させることができないという問題を生じる。中でも、ゴム成分100質量部に対して、前記第1配合成分を100〜200質量部含有せしめるのが好ましい。
また、前記第2発明において、カーボンブラック及びシリカからなる群より選ばれる1種または2種の第2配合成分の配合割合は、ゴム成分100質量部に対して、0質量部を超えて50質量部以下に設定される。50質量部を超えると補強効果が大き過ぎる結果、シールリップを回転初期の摺動時に十分に摩耗させることができず、回転トルクを十分に低減させることができない。中でも、ゴム成分100質量部に対して、前記第2配合成分を10〜40質量部含有せしめるのが好ましい。
また、前記第2発明において、第2配合成分としてカーボンブラックを用いる場合には、ゴム成分100質量部に対して、前記第1配合成分を50〜200質量部含有し、カーボンブラックを5〜30質量部含有した組成であるのが好ましい。
また、前記第2発明において、第2配合成分としてシリカを用いる場合には、ゴム成分100質量部に対して、前記第1配合成分を50〜200質量部含有し、シリカを5〜50質量部含有した組成であるのが好ましい。
前記ゴム成分としては、特に限定されるものではないが、例えばアクリル系ゴム、NBR、EPDM、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
前記第1配合成分としては、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び硫酸バリウムからなる群より選ばれる1種または2種以上の成分が用いられる。これらの中でも、硫酸バリウムを用いるのが好ましく、この場合には回転初期の摺動時により十分に摩耗させることができる。
この発明のゴム組成物には、例えばシランカップリング剤、可塑剤、滑剤等の各種添加剤を含有せしめても良い。
前記シランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えばビニル系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤等が挙げられる。
前記可塑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば鉱油、エーテル系オイル、シリコーン系オイル、フッ素オイル、ポリオレフィンオイル等が挙げられる。
前記滑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば石油系ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等)、エステル系ワックス、ステアロイドアミノ系ワックス、ポリエチレン、カルナバ等が挙げられる。
この発明において、前記ゴム成分としてアクリル系ゴムを用いる場合において、架橋剤としては、特に限定されるものではないが、エポキシ系架橋剤、石鹸・硫黄系架橋剤を用いるのが好ましい。エポキシ系架橋剤又は/及び石鹸・硫黄系架橋剤を用いた場合には、架橋効率が低いことから、ゴム成形体中の架橋密度が、例えばトリアジン系架橋剤、カルボキシル系架橋剤、過酸化物系架橋剤を用いた場合と比較して、低いものとなり、その結果、回転初期の摺動時にゴム成形体はより一層摩耗するいう効果を奏する。
なお、二次加硫は行わないものとするのが好ましい。
また、この発明のゴム組成物を調製するに際し、各成分の配合順序は特に限定されるものではない。また、混合は、例えばミキシングロール、密閉式混練機等の公知の混練装置を用いて行うのが良く、しかる後、シート成形等の成形を行うことによって、ゴム成形体を得ることができる。
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
<主要な原材料>
[アクリル系ゴム]…日本ゼオン社製「AR71」(アクリル酸エステル共重合体)
[シリカ]…シオノギ製薬社製「カープレックス#1120」(SiO2
[カーボンブラック]…東海カーボン社製「MAF シースト116」
[硫酸バリウム]…堺化学工業社製「沈降性硫酸バリウム300」(商品名)(BaSO4
[酸化マグネシウム]…協和化学工業社製「キョウワマグ#150」(MgO)
[炭酸カルシウム]…白石工業社製「白艶華CC」(商品名)(CaCO3
[酸化アルミニウム]…昭和電工社製「アルミナA−12−40M」(Al23)。
<実施例1>
アクリル系ゴム100.0質量部、シリカ30.0質量部、硫酸バリウム120.0質量部、ルナックスS−30(ステアリン酸、花王社製)1.0質量部、グレックG−8205(エステル系ワックス、大日本インキ化学工業社製)2.0質量部、CD(置換ジフェニルアミン、大内新興化学工業社製)1.0質量部、サルファックスPMC(表面処理硫黄、鶴見化学工業社製)0.3質量部、NSソープ(ステアリン酸ナトリウム、花王社製)3.0質量部、ノンサールSK−1(ステアリン酸カリウム、日本油脂社製)0.5質量部、RS−700(ポリエーテル・エステル系化合物、旭電化工業社製)5.0質量部を混合してなる組成物をミキシングロールで混練した後、1次加硫(170℃、12分)してシート状に成形することによって、厚さ2mmのゴムシート(ゴム成形体)を得た。
<実施例2〜19、比較例1〜14>
表1〜6に示す原材料をこれら表に示す割合で混合して組成物を得た以外は、実施例1と同様にしてゴムシート(ゴム成形体)を得た。
なお、表2における「サテントンNo.5」は土屋カオリン社製のSiO2・Al23(クレー)であり、表2における「TSL8331」は東芝シリコーン社製のシランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)である。
Figure 2010163479
Figure 2010163479
Figure 2010163479
Figure 2010163479
Figure 2010163479
Figure 2010163479
上記のようにして得られた各ゴムシートについて下記評価法に従い評価を行った。その結果を表1〜6に示す。
<引張強さ測定法>
JIS K6251に準拠してゴムシートの3号ダンベル試験片の引張強さ(MPa)を測定した。
<引張伸び測定法>
JIS K6251に準拠してゴムシートの3号ダンベル試験片の伸び(%)を測定した。
<デュロメータ硬さ(ショアA硬度)測定法>
JIS K6253に準拠してゴムシートのデュロメータ硬さ(ショアA硬度)を測定した。
<摩耗性評価法>
リングオンディスク試験機を用いて、各ゴムシートについて、荷重:4N、回転数:5000rpm、時間:30分間の試験条件で摩耗試験を行って、ゴムシートの平均摩耗量(平均摩耗厚さ)(mm)を調べて下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「○」…平均摩耗量が0.2mm以上0.5mm未満
「△」…平均摩耗量が0.1mm以上0.2mm未満
「×」…平均摩耗量が0.05mm以上0.1mm未満
「××」…平均摩耗量が0.05mm未満。
<加工性評価法>
組成物をミキシングロールで混練する際の混練性および混練組成物をシート状に成形する際の成形性を調べて下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「○」…混練性が良好で、成形性も良好である
「△」…少し時間がかかるものの混練性及び成形性ともにほぼ良好である(まれにバリが発生することがあるが実生産上問題のないレベルである)
「×」…混練性が悪く、成形性も悪い(粘着、巻き付き、発熱によるスコーチ、割れ、離型不良のいずれかの問題があって実生産上問題がある)。
表から明らかなように、この発明の実施例1〜19のゴムシートは、摺動により十分に摩耗させることができる。
また、実施例1、比較例14の各ゴムシートを用いて軸受用シールを作成し、該軸受用シールを転がり軸受に適用し、ラジアル荷重500N、回転速度4000rpmで1時間運転した後、一旦停止させ、改めて回転速度4000rpmで回転させて軸受温度が30℃に達した時のシールトルクを測定したところ、比較例14では0.37N・mであるのに対し、実施例1では0.08N・mであり、大幅にトルクの低減を実現できることがわかる。同様にして一般的な非接触型軸受用シールのトルクを測定したところ、0.09N・mであり、実施例1でのトルク0.08N・mは、一般的な非接触型軸受用シールのトルクとほぼ同等である。
この発明に係るゴム組成物は、例えば自動車のトランスミッションの軸受用シール等の各種軸受用シールの材料として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。

Claims (5)

  1. ゴム成分100質量部に対して、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び硫酸バリウムからなる群より選ばれる1種または2種以上の第1配合成分を50〜200質量部含有した組成物からなり、
    前記組成物は、カーボンブラック及びシリカのいずれも含有しないものであることを特徴とするゴム組成物。
  2. ゴム成分100質量部に対して、
    炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び硫酸バリウムからなる群より選ばれる1種または2種以上の第1配合成分を50〜200質量部、
    カーボンブラック及びシリカからなる群より選ばれる1種または2種の第2配合成分を0質量部を超えて50質量部以下含有した組成物からなることを特徴とするゴム組成物。
  3. 前記第1配合成分として硫酸バリウムが用いられている請求項1または2に記載のゴム組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物を架橋してなるゴム成形体。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物を架橋してなる軸受用シール。
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