JP2010162571A - 耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手及び溶接構造体 - Google Patents

耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手及び溶接構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】溶接継手に脆性き裂が発生した場合であっても、脆性き裂が溶接継手や母材を伝播するのが抑制でき、溶接構造体の破断を防止することが可能な、耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手及び溶接構造体を提供する。
【解決手段】母材の少なくとも一部の脆性き裂伝播停止特性Kcaが4000N/mm1.5以上である鋼板同士を突合せ溶接することで形成されてなり、当該鋼板溶接継手1の少なくとも一部に、該鋼板溶接継手1の溶接線L上から延在するとともに、鋼板溶接継手1の長手方向に対して10°以上60°以下の範囲の角度で傾斜する傾斜ビード31を具備する耐脆性き裂伝播方向制御部3が設けられている。
【選択図】図1

Description

本発明は、溶接継手に脆性き裂が発生した場合に、脆性き裂の伝搬を制御、抑制する耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手及び溶接構造体に関する。具体的には、大型コンテナ船やバルクキャリア等の船舶用溶接構造体の他、建築構造物や土木鋼構造物等、厚板を用いて溶接を適用した溶接構造物の溶接継手において発生する可能性がある、脆性き裂の伝播を制御、抑制して安全性を向上させるための耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手及び溶接構造体に関する。
近年、大型コンテナ船やバルクキャリア等の船舶用溶接構造体、建築構造物や土木鋼構造物等に代表される溶接構造物においては、脆性き裂等の破壊に対する高い安全性が求められるようになっている。特に、コンテナ船等は大型化が顕著であり、例えば、6000TEU以上の大型コンテナ船が製造されるようになり、船殻外板の鋼板が厚肉化並びに高強度化し、板厚70mm以上で降伏強度390N/mm級以上の鋼板が用いられるようになっている。ここで、TEU(Twenty feet Equivalent Unit)とは、長さ20フィートのコンテナに換算した個数を表し、コンテナ船の積載能力の指標を示している。このようなコンテナ船は、積載能力や荷役効率の向上のため、仕切り壁を無くして上部開口部を大きく確保した構造とされており、特に、船殻外板や内板の強度を確保する必要があるため、上記高強度鋼板が好適に用いられる。
上述のような溶接構造物を建造する際、建造コストの低減や建造効率向上を目的として、大入熱溶接(例えば、エレクトロガスアーク溶接等)が広く適用されている。特に、鋼板の板厚が増すほど溶接工数が著しく増加するため、極限まで大入熱で溶接を行なうことが要求される。しかしながら、鋼板の溶接に大入熱溶接を適用した場合、溶接熱影響部(HAZ:Heat Affected Zone)の靭性が低下し、HAZの幅も増大するため、脆性破壊に対する破壊靭性値が低下する傾向にある。
このため、溶接継手において脆性き裂が発生するのを抑制するとともに、脆性き裂の伝播停止(アレスト)を達成することを目的として、耐脆性破壊特性に優れたTMCP鋼板(Thermo Mechanical Control Process:熱加工制御)が提案されている。上記TMCP鋼板を用いることにより、脆性破壊発生に対する抵抗値である破壊靭性値が向上するため、通常の使用環境では脆性破壊する可能性は極めて低くなる。しかしながら、地震や構造物同士の衝突の事故や災害等の際に、万が一、脆性破壊が生じると、脆性き裂がHAZを伝播して大きな破壊が生じる虞がある。
例えば、コンテナ船等に代表される溶接構造体では、板厚50mm程度のTMCP鋼板等が使用され、万が一、溶接継手で脆性き裂が発生しても、溶接残留応力によって脆性き裂が溶接部から母材側に逸れるので、母材のアレスト性能を確保すれば、脆性き裂を母材で停止できると考えられていた。また、6000TEUを超える大型コンテナ船等、さらに大型の溶接構造体においては、より大きな板厚の鋼板が必要となり、さらに、構造を簡素化するうえで鋼板の厚肉化が有効であることから、設計応力が高い高張力鋼の厚鋼板を用いることが求められていた。しかしながら、このような厚鋼板を用いた場合、HAZの破壊靭性の程度によっては、脆性き裂が母材に逸れること無くHAZに沿って伝播する虞がある。
上記問題を解決するため、突合せ溶接継手の一部に補修溶接を施し、HAZに沿って伝播する脆性き裂を母材側に逸らせる構成とされた溶接構造体が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、特許文献1の溶接構造体では、母材の破壊靭性が非常に優れている場合には有効であるが、母材の破壊靭性が不充分な場合には、母材側に逸れた脆性き裂が長く伝播し、構造物としての強度が著しく低下する虞がある。また、補修溶接部のボリュームが大きめとなり、工程時間が長くなるとともに、製造コストも増大するという問題がある。
また、溶接継手に発生する脆性き裂の伝播を停止させたい領域に、板状のアレスタ材が溶接線と交差するように貫通して溶接され、アレスタ材として、表面や裏面の板厚比2%以上の厚みの表層域における集合組織が適正化されたものを用いる溶接構造体が提案されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、特許文献2に記載の溶接構造体を大型建造物に適用した場合、例えば、溶接継手を伝播した脆性き裂が、アレスタ材を鋼板に溶接する溶接継手を伝播してアレスタ材に突入し、そのままアレスタ材の内部を伝播した後、再び溶接継手を伝播する虞がある。一方、溶接継手を伝播した脆性き裂が、アレスタ材及び該アレスタ材を鋼板に溶接する溶接継手の位置で母材側に逸れた場合には、上記同様、母材の破壊靭性が不充分だと脆性き裂が長く伝播し、溶接構造物としての強度が著しく低下するという問題も懸念される。
特開2005−131708号公報 特開2007−098441号公報
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、例え、溶接継手に脆性き裂が発生した場合であっても、脆性き裂が溶接継手や母材を伝播するのが抑制でき、溶接構造体の破断を防止することが可能な、耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手及び溶接構造体を提供することを目的とする。
本発明者らは、溶接構造体の溶接継手に脆性き裂が発生した場合に、脆性き裂が溶接継手や母材を伝播するのを防止するため、鋼板間の溶接継手上に設ける耐脆性き裂伝播方向制御部について鋭意研究した。この結果、耐脆性き裂伝播方向制御部の形状並びに金属特性を適正化することにより、溶接継手及び母材における脆性き裂の伝播を抑制し、複数の鋼板が溶接継手によって接続されてなる溶接構造体に大規模な破壊が発生するのを未然防止できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、特許請求の範囲に記載した以下の内容に関する。
[1] 母材の少なくとも一部の脆性き裂伝播停止特性Kcaが4000N/mm1.5以上である鋼板同士を突合せ溶接することで形成される耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手であって、当該鋼板溶接継手の少なくとも一部に、該鋼板溶接継手の溶接線上から延在するとともに、前記鋼板溶接継手の長手方向に対して10°以上60°以下の範囲の角度で傾斜する傾斜ビードを具備する耐脆性き裂伝播方向制御部が設けられていること、を特徴とする耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手。
[2] 前記耐脆性き裂伝播方向制御部に備えられる前記傾斜ビードは、前記鋼板溶接継手の長手方向に沿った高さH、前記鋼板溶接継手の長手方向と交差する方向における横幅W、及び板厚tの各々の寸法が、下記(1)、(2)式で表される関係を満足すること、を特徴とする上記[1]に記載の耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手。
2T ≦ H ・・・・・ (1)
3d+50 ≦ W ・・・・・ (2)
{但し、上記(1)、(2)式中において、Tは前記鋼板の板厚を表し、dは前記鋼板溶接継手における溶接金属部の幅を表す}
[3] 前記鋼板の板厚が25mm以上150mm以下であること、を特徴とする上記[1]又は[2]に記載の耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手。
[4] 前記鋼板をなす母材の少なくとも一部の脆性き裂伝播停止特性Kcaが6000N/mm1.5以上であること、を特徴とする上記[1]〜[3]の何れか1項に耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手。
[5] 前記鋼板をなす母材は、前記鋼板溶接継手の長手方向において、該鋼板溶接継手の溶接線上から延在する前記耐脆性き裂伝播方向制御部の、前記傾斜ビードの後端側よりも外側の部位の脆性き裂伝播停止特性Kcaが4000N/mm1.5以上であること、を特徴とする上記[1]〜[4]の何れか1項に記載の耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手。
[6] 前記鋼板をなす母材は、前記鋼板溶接継手の長手方向において、該鋼板溶接継手の溶接線上から延在する前記耐脆性き裂伝播方向制御部の、前記傾斜ビードの後端側よりも外側の部位の脆性き裂伝播停止特性Kcaが6000N/mm1.5以上であること、を特徴とする上記[4]に記載の耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手。
[7] 前記鋼板は、前記鋼板溶接継手の長手方向で配列される少なくとも2以上の小鋼板からなるとともに、前記小鋼板同士を突合せ溶接することで小鋼板溶接継手が形成されており、前記小鋼板溶接継手は、前記鋼板溶接継手の溶接線上から延在する前記耐脆性き裂伝播方向制御部の、前記傾斜ビードの後端側に形成される水平ビードを含むこと、を特徴とする上記[1]〜[6]の何れか1項に記載の耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手。
[8] 母材の少なくとも一部の脆性き裂伝播停止特性Kcaが4000N/mm1.5以上である鋼板同士を突合せ溶接することで鋼板溶接継手が形成されてなる耐脆性き裂伝播性に優れた溶接構造体であって、該鋼板溶接継手の少なくとも一部に、上記[1]〜[7]の何れか1項に記載の耐脆性き裂伝播方向制御部が設けられていること、を特徴とする耐脆性き裂伝播性に優れた溶接構造体。
なお、本発明で規定する脆性き裂伝播停止特性Kcaは、当該溶接構造体が使用される温度、あるいは設計温度における数値である。
本発明の耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手によれば、母材の少なくとも一部の脆性き裂伝播停止特性Kcaが4000N/mm1.5以上である鋼板同士を突合せ溶接することで形成され、当該鋼板溶接継手の少なくとも一部に、該鋼板溶接継手の溶接線上から延在するとともに、前記鋼板溶接継手の長手方向に対して10°以上60°以下の範囲の角度で傾斜する傾斜ビードを具備する耐脆性き裂伝播方向制御部が設けられてなる構成なので、例え、鋼板溶接継手に脆性き裂が発生した場合であっても、脆性き裂が溶接継手や母材を伝播するのが抑制できる。従って、本発明の鋼板溶接継手を溶接構造体に適用することにより、大規模な破壊が発生するのを未然防止することが可能な溶接構造体を、高い生産効率及び低コストで得ることができる。このような本発明に係る溶接構造体が、大型船舶をはじめ、建築構造物や土木鋼構造物等の各種溶接構造物に使用されることで、溶接構造物の大型化、破壊に対する高い安全性、建造における溶接の高能率化、鋼材の経済性等々が同時に満たされことから、その産業上の効果は計り知れない。
本発明に係る耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手及び溶接構造体の一例を説明する模式図であり、鋼板同士が溶接されて形成された鋼板溶接継手の一部に耐脆性き裂伝播方向制御部が設けられた状態を示す平面図である。 本発明に係る耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手及び溶接構造体の一例を説明する模式図であり、図1に示す鋼板溶接継手及び溶接構造体のき裂伝播特性を説明する要部拡大図である。 本発明に係る耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手及び溶接構造体の一例を説明する模式図であり、本発明に係る溶接構造体を船舶用溶接構造体に適用した場合について説明する概略図である。 本発明に係る耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手及び溶接構造体の他の例を説明する模式図である。 本発明に係る耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手及び溶接構造体の他の例を説明する模式図である。 本発明に係る耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手及び溶接構造体の他の例を説明する模式図である。 本発明に係る耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手及び溶接構造体の実施例について説明する模式概略図である。 本発明に係る耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手及び溶接構造体の実施例について説明する模式概略図である。
以下、本発明の耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手及び溶接構造体の実施の形態について図面を適宜参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り、本発明を限定するものではない。
図1〜図6は、本発明に係る耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手及び溶接構造体(以下、単に鋼板溶接継手又は溶接構造体と略称することがある)を説明する模式図である。図1は本発明の第1の実施形態である鋼板溶接継手1並びにそれが用いられてなる溶接構造体Aを示す平面図であり、図2は図1に示す鋼板溶接継手1及び溶接構造体Aのき裂伝播特性を説明する要部拡大図である。また、図3は本発明に係る溶接構造体を船舶用溶接構造体に適用した場合について説明する概略図である。また、図4は本発明の第2の実施形態である鋼板溶接継手10及び溶接構造体B、図5は本発明の第3の実施形態である鋼板溶接継手10A及び溶接構造体C、図6は鋼板溶接継手10B及び溶接構造体Dについて説明する平面図である。なお、以下の説明において参照する図面は、本発明に係る鋼板溶接継手及び溶接構造体を説明する図面であって、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の鋼板溶接継手や溶接構造体等の寸法関係とは異なる場合がある。
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態である溶接構造体Aについて詳述する。
本実施形態の鋼板溶接継手1(溶接構造体A)は、図1(図2も参照)に示すように、母材の少なくとも一部の脆性き裂伝播停止特性Kcaが4000N/mm1.5以上である鋼板2同士を突合せ溶接することで鋼板溶接継手1が形成されてなり、当該鋼板溶接継手1の少なくとも一部に、該鋼板溶接継手1の溶接線L上から延在するとともに、鋼板溶接継手1の長手方向に対して10°以上60°以下の範囲の角度で傾斜する傾斜ビード31を具備する耐脆性き裂伝播方向制御部3が設けられ、概略構成される。また、図1に示す例の鋼板溶接継手1(溶接構造体A)は、2箇所の鋼板継手11、12の間に耐脆性き裂伝播方向制御部3が設けられている。また、図示例の鋼板溶接継手1(溶接構造体A)は、耐脆性き裂伝播方向制御部3が、鋼板継手11における溶接線L上から延在する傾斜ビード31の後端31bに水平ビード32の一端32aが接続され、水平ビード32の他端32bが鋼板継手12に接続されている。
『鋼板』
鋼板2は、母材の少なくとも一部の脆性き裂伝播停止特性Kcaが4000N/mm1.5以上とされる鋼材からなる。本実施形態の溶接構造体Aでは、図1に示すように、鋼片に対して各種圧延処理等を行なう際の加熱条件等を制御することにより、鋼材1をなす母材が、鋼板溶接継手1の長手方向において、該鋼板溶接継手1の溶接線L上から延在する耐脆性き裂伝播方向制御部3の、傾斜ビード31の後端31b側よりも外側の部位、つまり、水平ビード32よりも外側の部位である領域20a(図1において縦長方向下側)の脆性き裂伝播停止特性Kcaが4000N/mm1.5以上とされている。
鋼板2としては、船舶用溶接構造体、建築構造物及び土木鋼構造物等の分野において従来公知の鋼板特性を備えるものを、何ら制限無く用いることができ、その化学成分組成や金属組織等については限定されない。
また、鋼板2としては、以下に説明する化学成分組成とされたものを用いることが、詳細を後述する良好な耐脆性き裂伝播性が得られる点からより好ましい。なお、以下の説明における各元素の「%」は、特に説明が無い限り、「質量%」を表すものとある。
「C:炭素」(0.01〜0.18%)
Cは、鋼板の強度向上のために重要かつ最も基本的な元素であり、この効果を得るためには0.01%以上を添加することが好ましい。しかしながら、0.18%を超えてCを添加すると、鋼材の溶接性や靱性の低下を招くので、その上限を0.18%とした。
「Si:ケイ素」(0.01〜0.5 %)
Siは、鋼板の脱酸作用を促進する元素であり、通常0.01%以上を添加するが、強力な脱酸元素であるAlが充分に添加されている場合には不要である。また、0.5%を超えてSiを添加すると、溶接による鋼材の熱影響部の靱性を低下させるので0.5%を上限とする。
「Mn:マンガン」(0.6〜2.5%)
Mnは、経済的に強度を確保するために0.6 %以上を添加することが好ましい。しかしながら、2.5%を超えてMnを添加すると、溶接による鋼材の熱影響部の靱性を著しく阻害するため、その範囲を0.6〜2.5 %とした。
「P:リン」(0.01%以下)
Pは、不純物元素であるので、良好な脆性き裂伝播停止特性や大入熱溶接熱影響部の靭性を安定的に確保するためには、その含有量を0.01%以下に制限することが好ましい。
「S:硫黄」(0.001〜0.02%)
Sは、0.02%を超えて過剰に添加されると粗大な硫化物の生成の原因となり靱性を阻害するため、その含有される上限を0.02%とした。しかしながら、大入熱溶接熱影響部でのピン止め効果を得るため、Sを0.001 %以上で添加することが好ましい。
なお、鋼板には、上記元素に加え、さらに、以下に説明するような元素を選択的に添加することにより、鋼板特性をより向上させることが可能となる。また、以下に説明する選択的添加元素においては、その含有量の上限及び下限について特に限定するものではないが、下記範囲で添加することにより、より効果を発揮しやすい。
「B:ボロン(ホウ素)」(0.0001〜0.005%)
Bは、Moとの複合効果によって焼入性を高め、強度を効果的に高める元素であり、このような効果を得るためには0.0001%以上の添加が好ましい。しかしながら、Bの過剰の添加は靱性の低下を招くため、その上限を0.005%とした。
「Mo:モリブデン」(0.01〜1.0%)
Moは、上述したように、Bとの複合効果によって焼入性を高め、強度を効果的に高める元素であり、このような効果を得るためには0.01%以上の添加が好ましい。しかしながら、1.0%を超えた多量のMoの添加は、必要以上の鋼板の強化とともに、靱性の著しい劣化をもたらすため、その範囲を0.01〜1.0%とした。
「Al:アルミニウム」(0.005〜0.1%)
Alは、脱酸を担い、O(酸素)を低減して鋼の清浄度を高めるために必要な元素である。また、Al以外のSi、Ti、Ca、Mg等の元素も脱酸作用があるが、例え、これらの元素が添加される場合でも、安定的にOを低減するためには、0.005%以上でAlが添加されていることが好ましい。但し、Alの含有量が0.1%を超えると、アルミナ系粗大酸化物がクラスター化する傾向を強め、製鋼設備のノズル詰まりが生じたり、破壊起点としての有害性が顕在化したりする虞があるため、これを上限とすることが好ましい。
「Ti:チタン」(0.003〜0.05%)
Tiは、微量の添加で結晶粒の微細化に有効であり、0.003%以上添加する。しかしながら、Tiを0.05%超で添加すると、溶接による鋼板の熱影響部靭性を劣化させるため、上限を0.05%とした。
「Ca:カルシウム」(0.0001〜0.003%)
Caは、鋼中で酸化物を形成しオーステナイト粒の成長を抑制する作用があることから添加するが、0.003%を超えて添加すると、粗大な酸化物が生成し易くなり、母材、及び、溶接による鋼板の熱影響部靱性の低下をもたらす。しかしながら、0.0001%未満のCaの添加では、ピニング粒子として必要な酸化物の生成が充分に期待できなくなるため、その添加範囲を0.0001〜0.003%に限定した。
「Mg:マグネシウム」(0.0001〜0.005%)
Mgは、鋼中で複合酸化物を形成し、旧オーステナイト粒の成長を抑制することから添加するが、0.0001%未満の添加ではピニング粒子として必要な酸化物の生成が十分に期待できなくなるため、下限を0.0001%とした。また、0.005%を超えてMgを添加すると、粗大な酸化物が生成し易くなり、母材、及び、溶接による鋼板の熱影響部靱性の低下をもたらす。よって、その添加範囲を0.0001〜0.004%に限定した。
「V:バナジウム」(0.001〜0.18%)
Vは、母材を強化しつつ、大入熱溶接熱影響部の靭性を高める有効な元素である。また、Vは、炭化物、窒化物を形成して強度の向上効果がある元素であるが、0.001%未満の添加ではその効果がなく、0.18%を超える添加では、逆に靱性の低下を招くため、その範囲を0.001〜0.18%とした。
「Ni:ニッケル」(0.01〜5.5%)
Niは、靭性の劣化を抑えて強度を確保するために有効であり、このような効果を得るためには0.01%以上で添加することが好ましい。しかしながら、Niはコストが非常に高いという問題があるので、5.5%未満に抑制することが好ましく、また、上記範囲内において、極力低い含有量とすることがより好ましい。
「Nb:ニオブ」(0.005〜0.05%)
Nbは、仕上圧延における未再結晶域圧延を促すために有効であり、このような作用を得るためには0.005%以上添加することが好ましい。また、0.05%を超えてNbを添加すると靱性の低下を招くため、その範囲を0.005〜0.05%とする。
「Cu:銅」(0.01〜3.0%)
Cuは、強度を確保するために有効であり、0.01%以上の添加量で効果を発揮する。一方、Cuは、大入熱溶接熱影響部の靭性を劣化させる作用も持ち合わせ、1.0%を超えると鋼材製造時の加熱時に割れが生じる可能性があることから、その含有量は、3.0%を上限とすることが好ましい。
「Cr:クロム」(0.01〜1.0%)
Crは、強度を確保するために有効であり、0.01%以上の添加量で効果を発揮する。一方、Crは、大入熱溶接熱影響部の靭性を劣化させる作用も持ち合わせることから、その含有量は、1.0%を上限とすることが好ましい。
「REM:希土類元素」(0.0005〜0.05%)
REMは、硫化物を生成することによって伸長MnSの生成を抑制し、鋼材の板厚方向の特性、特に。耐ラメラティア性を改善する効果がある。このような効果は、0.0005%未満のREMの添加では得られないので、これを下限値にする。また、0.05%を超えてREMを添加すると、粗大な酸化物個数が増加し、超微細なMg含有酸化物の個数が低下するため、その上限を0.05%とした。
図1に示すように、本実施形態の鋼板溶接継手1は、上記構成とされた鋼板2同士が突合せ溶接されることによって形成され、図示例では、鋼板2上に形成された2箇所の鋼板継手11、12と、耐脆性き裂伝播方向制御部3とから構成される。また、鋼板2の各々は、これら鋼板溶接継手11、12によって接合されるとともに、溶接継手からなる耐脆性き裂伝播方向制御部3を構成する傾斜ビード31及び水平ビード32によって接合されている。
鋼板2の板厚は、25mm以上150mm以下の範囲とすることが好ましい。鋼板2の板厚がこの範囲であれば、溶接構造体としての鋼板強度を確保することができるとともに、詳細を後述するように、優れた脆性き裂伝播性を得ることが可能となる。
また、本実施形態では、鋼板2をなす母材の少なくとも一部、図1に示す例では、領域20aの脆性き裂伝播停止特性Kcaが4000N/mm1.5以上とされているが、6000N/mm1.5以上であることが、耐脆性き裂伝播性がより向上する点から好ましい。
『耐脆性き裂伝播方向制御部』
耐脆性き裂伝播方向制御部3は、鋼板溶接継手1の少なくとも一部に設けられる溶接継手からなるものであり、図1及び図2に示す例では、鋼板溶接継手1をなす2箇所の鋼板継手11、12の間に耐脆性き裂伝播方向制御部3が設けられている。また、耐脆性き裂伝播方向制御部3は、鋼板溶接継手1(図示例では鋼板継手11)の溶接線L上から延在するとともに、鋼板溶接継手1の長手方向、つまり溶接線Lに対して10°以上60°以下の範囲の角度で傾斜する傾斜ビード31を具備してなる。また、図示例の耐脆性き裂伝播方向制御部3は、鋼板継手11の溶接線L上から延在する傾斜ビード31の後端31bに水平ビード32の一端32aが接続され、水平ビード32の他端32bが鋼板継手12に接続されている。
本発明に係る鋼板溶接継手並びにそれが用いられてなる溶接構造体は、上述したような耐脆性き裂伝播方向制御部3を備えることにより、仮に、鋼板溶接継手1に脆性き裂が生じた場合でも、この脆性き裂の伝播方向を制御し、鋼板溶接継手1を貫くようにき裂が伝播して互いに溶接された鋼板2同士が分断するのを防止するものである。
耐脆性き裂伝播方向制御部3は、上述のように、鋼板溶接継手11の溶接線L上に配された頂部31aから延在する傾斜ビード31が、鋼板溶接継手1(11、12)の長手方向に対して10°以上60°以下の範囲の角度で傾斜していることが好ましい。傾斜ビード31の、鋼板溶接継手1の長手方向に対する角度を上記範囲とすることにより、仮に、鋼板溶接継手11を伝播する脆性き裂が生じた場合でも、このき裂を鋼板2の母材側に安定的に逸らして制御することが可能となる。これにより、詳細を後述するように、脆性き裂を効果的に停止させ、鋼板溶接継手1、ひいては溶接構造体Aに大規模な破壊が生じるのを防止することができる。
鋼板溶接継手の長手方向に対する耐脆性き裂伝播方向制御部の傾斜ビードの角度が10°未満だと、鋼板溶接継手を伝播した脆性き裂が鋼板の母材側に逸れず、そのまま、耐脆性き裂伝播方向制御部に突入する可能性がある。この場合、耐脆性き裂伝播方向制御部に対して直接的に脆性き裂が突入するため、き裂の伝播が停止せずに耐脆性き裂伝播方向制御部を通過し、再び鋼板溶接継手に突入して伝播する虞がある。
また、脆性き裂伝播方向制御部の高さHを、以下に説明するような範囲で確保しつつ、鋼板溶接継手の長手方向に対する耐脆性き裂伝播方向制御部の傾斜ビードの角度が60°を超えると、脆性き裂伝播方向制御部の幅Wが大きくなりすぎて現実的でないため、この角度を60°以下に限定した。
本実施形態の鋼板溶接継手1(溶接構造体A)に用いられる耐脆性き裂伝播方向制御部3に設けられる傾斜ビード31は、前記鋼板溶接継手の長手方向に沿った高さH、前記鋼板溶接継手の長手方向と交差する方向における横幅W、及び板厚tの各々の寸法が、下記(1)、(2)式で表される関係を満足することがより好ましい。
2T ≦ H ・・・・・ (1)
3d+50 ≦ W ・・・・・ (2)
但し、上記(1)、(2)式中において、Tは前記鋼板の板厚を表し、dは前記鋼板溶接継手における溶接金属部の幅を表す。
耐脆性き裂伝播方向制御部3に設けられる傾斜ビード31の各寸法値を上記関係とすることにより、仮に、鋼板溶接継手1にき裂が生じた場合であっても、き裂の伝播方向を鋼板2の母材側へ効果的に逸らすことが可能となる。耐脆性き裂伝播方向制御部の各寸法値の関係が、上記(1)、(2)式で表される関係を満たさない場合、鋼板溶接継手に生じたき裂の状態によっては、このき裂が耐脆性き裂伝播方向制御部に進入し、鋼板の母材側に逸れずに鋼板溶接継手を伝播してしまう可能性がある。
『脆性き裂の伝播方向の制御』
上記構成とされた本実施形態の鋼板溶接継手1並びに溶接構造体Aにおいて、仮に、鋼板溶接継手1に脆性き裂が発生した場合の、き裂伝播方向の制御作用について、以下に説明する。
従来、鋼板溶接継手において発生した脆性き裂は、主として、鋼板溶接継手の長手方向を伝播する。このため、鋼板溶接継手に生じた脆性き裂が起点となり、溶接構造体全体に大きな破壊が生じる虞があるという問題があった。
本発明者等は、上述のような脆性き裂の伝播方向を効果的に制御し、溶接構造体においてき裂が伝播するのを抑制するためには、鋼板間の溶接継手上に設ける耐脆性き裂伝播方向制御部の形状並びに鋼材特性を適正化することが重要であることを知見した。そして、まず、鋼板2同士を突合せ溶接することで形成された鋼板溶接継手1の少なくとも一部に、この鋼板溶接継手1の直線性を逸脱させるように耐脆性き裂伝播方向制御部3を設けることで、き裂の伝播を抑制できることを見出した。これに加え、さらに、耐脆性き裂伝播方向制御部3の傾斜ビード31を、鋼板溶接継手1の長手方向に対して10°以上60°以下の範囲の角度で傾斜するように構成することで、鋼板溶接継手1を伝播するき裂を鋼板2の母材側に効果的に逸らし、き裂の伝播を効果的に停止可能なことを見出した。
図2に示すように、鋼板溶接継手1の長手方向の一方側(図2における縦長方向の上側)で発生した脆性き裂は、鋼板溶接継手1における長手方向の他方側(図2における縦長方向の下側)に向かって伝播を開始する(図2中の二点鎖線矢印を参照)。この際、本実施形態の鋼板溶接継手1(溶接構造体A)では、鋼板溶接継手1、図示例では鋼板継手11を長手方向で伝播した脆性き裂が傾斜ビード31に沿って伝播し、その後、図2中の符号Fのように、き裂の伝播方向が、傾斜ビード31の後端31b付近で鋼板2の母材側に逸れる。そして、鋼板2の母材側に逸れて伝搬するき裂は、脆性き裂伝播停止特性Kcaが4000N/mm1.5以上とされた領域20aの位置で停止される。
上記作用により、本実施形態の鋼板溶接継手1及び溶接構造体Aは、例え、鋼板溶接継手1において脆性き裂が発生した場合であっても、脆性き裂が溶接継手や母材を広範囲で伝播するのを抑制できるので、大規模な破壊が発生するのを未然防止することが可能となる。このような、本実施形態の鋼板溶接継手1が用いられた溶接構造体Aを、例えば、大型船舶や建築構造物、土木鋼構造物等の各種溶接構造物に適用することで、溶接構造物の大型化、破壊に対する高い安全性、建造における溶接の高能率化、鋼材の経済性等々を同時に満たすことが可能となる。
『製造方法』
以下に、上述したような本実施形態の耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手1並びにそれが用いられてなる溶接構造体Aを製造する方法の一例について説明する。
本実施形態の鋼板溶接継手1(溶接構造体A)を製造する方法としては、母材の少なくとも一部の脆性き裂伝播停止特性Kcaが4000N/mm1.5以上である鋼板2同士を突合せ溶接することで鋼板溶接継手1を形成するにあたり、鋼板溶接継手1の少なくとも一部に、該鋼板溶接継手1の溶接線L上から延在するとともに、鋼板溶接継手1の長手方向に対して10°以上60°以下の範囲の角度で傾斜する傾斜ビード31を具備する耐脆性き裂伝播方向制御部3を形成する工程を備える方法とすることができる。
本実施形態の鋼板溶接継手1並びに溶接構造体Aの製造方法では、まず、規定の化学成分組成とされた鋼材からなる鋳塊を製造した後、この鋳塊に各種圧延や熱処理等を施すことにより、所定の厚さ、例えば、25mm以上150mm以下の範囲の鋼板2を製造する。この際、各種熱処理等の条件を制御することにより、母材の少なくとも一部の脆性き裂伝播停止特性Kcaが4000N/mm1.5以上となるように、鋼板2を製造する。
次に、図1及び図2の模式図に示すように、上述した耐脆性き裂伝播方向制御部3を形成する工程において、鋼板2同士を溶接し、鋼板溶接継手1を形成して鋼板2間を接合する。
具体的には、鋼板2の溶接端2a、2bを、図示例のような、互いに嵌め合わせ可能な所定形状に形成する。次いで、この溶接端2a、2b間を溶接することにより、鋼板継手11、鋼板継手12並びに耐脆性き裂伝播方向制御部3を形成する。これにより、鋼板2同士が、鋼板溶接継手1によって接合された状態となる。この工程における溶接順序については、特に限定さないが、一般的な溶接手順としては、鋼板継手11及び鋼板継手12を溶接形成した後に、耐脆性き裂伝播方向制御部3を形成する。
上記工程において用いる溶接方法としては、溶接効率の観点から、鋼板継手11、12には、二電極VEGA溶接等の立て向き大入熱溶接を適用し、耐脆性き裂伝播方向制御部3には、半自動炭酸ガス溶接や手溶接を適用することが好ましい。また、溶接施工治具を適宜適性化することにより、耐脆性き裂伝播方向制御部3を形成する際に、二電極VEGA溶接等の溶接方法をそのまま用いても、本発明の効果を発揮することが可能である。
本実施形態においては、上述のように、鋼板2同士を突合せ溶接して鋼板溶接継手1を形成する際の溶接方法及び溶接材料については、特に限定されない。
また、脆性き裂伝播を可能な限り抑制し、さらに、鋼板溶接継手1をなす鋼板継手11、12及び耐脆性き裂伝播方向制御部3において新たな疲労き裂や脆性き裂の起点が生じるのを防止するため、各溶接継手を、溶接欠陥の無いように、溶接金属で完全に充填することが好ましい。
上記手順により、図1に示すような、本実施形態の耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手1並びに溶接構造体Aを製造することができる。
『溶接構造体を適用した船舶構造体の一例』
上述した本実施形態の鋼板溶接継手1が用いられている溶接構造体Aを適用した船舶構造体の一例を図3の概略図に示す。
図3に示すように、船舶構造体70は、骨材(補強材)71、デッキプレート(水平部材)72、船殻内板(垂直部材)73、船殻外板74を備えて概略構成される。また、図示例の船舶構造体70は、船殻内板73をなす複数の鋼板2同士を突合せ溶接することで形成される鋼板溶接継手(図3中では図示略)の長手方向の一部に耐き裂制御部4が設けられることで、本実施形態の溶接構造体Aを具備する構造とされている。
上記構成の船舶構造体70によれば、本実施形態の溶接構造体Aの構成を適用することにより、例え、鋼板溶接継手を伝播する脆性き裂が発生した場合であっても、耐脆性き裂伝播方向制御部3により、き裂の伝播方向を効果的に制御できる。これにより、鋼板溶接継手に生じた脆性き裂を安定的に停止させることができ、船殻内板73、ひいては船舶構造体70に大規模な破壊が生じるのを防止することが可能となる。
以上説明したように、本実施形態の耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手1によれば、母材の少なくとも一部の脆性き裂伝播停止特性Kcaが4000N/mm1.5以上である鋼板2同士を突合せ溶接することで形成され、当該鋼板溶接継手1の少なくとも一部に、該鋼板溶接継手1の溶接線L上から延在するとともに、鋼板溶接継手1の長手方向に対して10°以上60°以下の範囲の角度で傾斜する傾斜ビード31を具備する耐脆性き裂伝播方向制御部3が設けられてなる構成なので、例え、鋼板溶接継手1に脆性き裂が発生した場合であっても、脆性き裂が溶接継手や母材を伝播するのが抑制できる。従って、本発明の鋼板溶接継手1を溶接構造体Aに適用することにより、大規模な破壊が発生するのを未然防止することが可能な溶接構造体Aを、高い生産効率及び低コストで得ることができる。このような本発明に係る溶接構造体が、大型船舶をはじめ、建築構造物や土木鋼構造物等の各種溶接構造物に使用されることで、溶接構造物の大型化、破壊に対する高い安全性、建造における溶接の高能率化、鋼材の経済性等々が同時に満たされことから、その産業上の効果は計り知れない。
[第2の実施形態]
以下、本発明の第2の実施形態である鋼板溶接継手10及びそれが用いられてなる溶接構造体Bについて、主に図4を参照しながら詳述する。なお、以下の説明において、上述の第1の実施形態の鋼板溶接継手1及び溶接構造体Aと共通する構成については、同じ符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する。
本実施形態の鋼板溶接継手10及び溶接構造体Bは、図4においては詳細な図示を省略するが、鋼板20の母材全体が、脆性き裂伝播停止特性Kcaが4000N/mm1.5以上とされている点で、第1の実施形態の鋼板溶接継手1及び溶接構造体Aとは異なる。
本実施形態の鋼板溶接継手10及び溶接構造体Bによれば、仮に、鋼板溶接継手10に脆性き裂が発生した場合であっても、鋼板溶接継手10を伝播したき裂を、耐脆性き裂伝播方向制御部3に備えられる傾斜ビード31の頂点31a又は後端31bの位置で鋼板20の母材側に逸らすことができる(図4中の二点鎖線矢印を参照)。そして、第1の実施形態の鋼板溶接継手1及び溶接構造体Aと同様、鋼板20の母材側に逸れたき裂は、鋼板20において直ちに停止するので、鋼板溶接継手10が破断せず、また、溶接構造体Bに大規模な破壊が生じるのを防止することが可能となる。
また、本実施形態の鋼板溶接継手10及び溶接構造体Bは、鋼板20をなす母材全体が、脆性き裂伝播停止特性Kcaが6000N/mm1.5以上とされていることがより好ましい。
[第3の実施形態]
以下、本発明の第3の実施形態である鋼板溶接継手10A及び溶接構造体Cについて、主に図5を参照しながら詳述する。なお、以下の説明において、上述の第1及び第2の実施形態の鋼板溶接継手1、10、並びに溶接構造体A、Bと共通する構成については、同じ符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する。
本実施形態の鋼板溶接継手10A及び溶接構造体Cは、図5に示すように、鋼板20Aが、鋼板溶接継手10Aの長手方向で配列される少なくとも2以上の小鋼板(図5中の符号21〜24を参照)からなるとともに、この小鋼板同士を突合せ溶接することで小鋼板溶接継手15、26が形成されており、この小鋼板溶接継手15、26が、鋼板溶接継手10Aの溶接線L上から延在する耐脆性き裂伝播方向制御部30の、傾斜ビード31の後端31b側に形成される水平ビードを含む構成とされている点で、上述の第1及び第2の実施形態の鋼板溶接継手1、10、並びに溶接構造体A、Bとは異なる。また、図5に示す例においては、図示の都合上、小鋼板として4枚の小鋼板21〜24を示し、小鋼板21と小鋼板22とが小鋼板溶接継手15で接合され、小鋼板23と小鋼板24とが小鋼板溶接継手16で接合されている。また、図示例の溶接構造体Cは、小鋼板溶接継手15、26が連なって直線状に形成されている。
また、本実施形態の鋼板溶接継手10A及び溶接構造体Cは、小鋼板22及び小鋼板24をなす母材の脆性き裂伝播停止特性Kcaが4000N/mm1.5以上とされている一方、小鋼板21及び小鋼板23の脆性き裂伝播停止特性Kcaは特に規定しない構成とされている。
本実施形態の鋼板溶接継手10A及び溶接構造体Cによれば、上述の溶接構造体A、Bと同様、鋼板溶接継手10Aに脆性き裂が発生した場合でも、この脆性き裂を傾斜ビード31に沿うように伝播させ、傾斜ビード31の後端31bの位置で鋼板20Aの母材側に逸らすことができる(図5中の二点鎖線矢印を参照)。図5に示す例では、鋼板溶接継手10Aに発生した脆性き裂が、鋼板20Aを構成する小鋼板21側に逸れている。
そして、鋼板20Aの母材側に逸れたき裂は、脆性き裂伝播停止特性Kcaの高い小鋼板22において直ちに停止するので、鋼板溶接継手10Aが破断せず、また、溶接構造体Cに大規模な破壊が生じるのを防止することが可能となる。
また、本実施形態の鋼板溶接継手10A及び溶接構造体Cは、鋼板20Aをなす小鋼板22、24の母材が、脆性き裂伝播停止特性Kca=6000N/mm1.5以上であることがより好ましい。
[第4の実施形態]
以下、本発明の第4の実施形態である鋼板溶接継手10B並びに溶接構造体Dについて、主に図6を参照しながら詳述する。
本実施形態の鋼板溶接継手10B並びに溶接構造体Dは、図6に示すように、鋼板20Bが、鋼板溶接継手10Bの長手方向で配列される少なくとも2以上の小鋼板(図6中の符号31〜34を参照)からなるとともに、この小鋼板同士を突合せ溶接することで小鋼板溶接継手35、36が形成されている点で、第3の実施形態の鋼板溶接継手10A及び溶接構造体Cと構成が一部共通している。
また、本実施形態の鋼板溶接継手10B並びに溶接構造体Dは、鋼板20Bをなす全ての小鋼板31〜34の母材の脆性き裂伝播停止特性Kcaが4000N/mm1.5以上とされている。
溶接構造体Dによれば、上述の鋼板溶接継手1、10、10A並びに溶接構造体A〜Cと同様、鋼板溶接継手10Bに脆性き裂が発生した場合でも、この脆性き裂を傾斜ビード31の頂点31Aの位置で鋼板20Bの母材側に逸らすことができる(図6中の二点鎖線矢印を参照)。また、万が一、傾斜ビード31に沿って脆性き裂の伝播方向が変わらない場合でも、小鋼板31の母材に突入したき裂が、小鋼板31のアレスト性能によって停止できるので、鋼板溶接継手10B並びに溶接構造体Dに大規模な破壊が生じるのを防止することが可能となる。
また、本実施形態の鋼板溶接継手10B並びに溶接構造体Dは、鋼板20Bをなす全ての小鋼板31〜34の母材が、脆性き裂伝播停止特性Kca=6000N/mm1.5以上であることがより好ましい。
以下、本発明に係る耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手並びに溶接構造体の実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例に限定されるものではなく、前、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
[溶接構造体の製造]
まず、製鋼工程において溶鋼の脱酸・脱硫と化学成分を制御し、連続鋳造によって下記表1に示す化学成分の鋳塊を作製した。そして、日本海事協会(NK)規格船体用圧延鋼材KA32、KA36、KA40の規格に準じた製造条件で、前記鋳塊を再加熱して厚板圧延することで、板厚が約52mmとされた鋼板を製造した。さらに、この鋼板に対して各種熱処理を施すとともに、この際の条件を制御することにより、母材の脆性き裂伝播停止特性Kca(N/mm1.5)を、下記表1に示す形態で適宜調整した。なお、製造した鋼板から、試験片のサイズが500mm×500mm×板厚のESSO試験(脆性き裂伝播停止試験)片を適宜採取し、−10℃におけるKca特性を評価・確認した。
次に、図7に示すように、鋼板2の溶接端2a、2bを、下記表2に示すような互いに嵌め合わせ可能な所定形状に加工し、さらに、適用すべき溶接方法に応じた開先加工を施した。
次に、下記表2に示す溶接方法及び条件を適用して、まず、鋼板2の溶接端2a、2b間の一部を溶接することにより、鋼板継手11を形成した。そして、下記表2に示す溶接方法及び条件を適用して鋼板2の溶接端2a、2b間を溶接することで、耐脆性き裂伝播方向制御部3並びに鋼板継手12を形成することにより、鋼板溶接継手1を形成し、鋼板2同士を接合した。この際、図7に示すように、耐脆性き裂伝播方向制御部3の後端31bの位置が、鋼板2の下端から1500mmとなるように調整した。
なお、鋼板継手11、12、耐脆性き裂伝播方向制御部3の形成箇所においては、新たなき裂の起点が生じるのを防止するため、各溶接継手を溶接金属で完全に充填するように溶接処理を行なった。その後、各継手を冷却することにより、図1に示すような鋼板溶接継手及び溶接構造体(本発明例、実験例)を製造した。
また、上記同様に、下記表1及び表2に示す条件で各鋼板を接合することにより、図4〜図6に示すような鋼板溶接継手及び溶接構造体(本発明例、実験例)を製造した。
[評価試験]
上記手順によって製造した鋼板溶接継手及び溶接構造体について、以下のような評価試験を行った。
まず、図8に示すような試験装置90を準備するとともに、上記手順で作製した溶接構造体のサンプルの各々を適宜調整し、試験装置90に取り付けた。ここで、図8中に示す鋼板溶接継手1に設けたき裂発生部である窓枠81は、楔をあてがって所定の応力を印加することで強制的に脆性き裂を発生させるためのものであり、切欠き状の先端部は0.2mm幅のスリット加工を施したものである。
次いで、鋼板溶接継手1の溶接線Lと垂直方向に262N/mmの引張応力を付与することにより、鋼板溶接継手1に脆性き裂を発生させた。そして、この脆性き裂を、鋼板溶接継手1(鋼板継手11)の溶接線L上で伝播させることにより、溶接構造体の耐脆性き裂伝播性を評価した。この際、脆性き裂発生部は−60℃以下に冷却したが、脆性き裂伝播部である鋼板溶接継手1の温度は、船舶の一般的な設計温度である−10℃とした。
そして、鋼板溶接継手1を伝播した脆性き裂が耐脆性き裂伝播方向制御部3に到達した後、その脆性き裂が伝播する方向及び停止位置を確認し、以下に示す5段階(◎〜××)で評価し、下記表2に示した。
(1)「◎」…脆性き裂が耐脆性き裂伝播方向制御部に到達した後、当該制御部に沿ってき裂が伝播し、その後、当該後端において鋼板の母材側へ突入し、鋼板において直ちに停止した。
(2)「○」…脆性き裂が耐脆性き裂伝播方向制御部に到達した後、当該制御部に沿うことなく鋼板の母材へ進入し、鋼板において直ちに停止した。
(3)「△」…脆性き裂が耐脆性き裂伝播方向制御部に到達した後、当該制御部に沿うことなく鋼板の母材へ進入、伝播し、そのまま鋼板溶接継手に戻り、再び鋼板溶接継手を伝播した。
(4)「×」…脆性き裂が耐脆性き裂伝播方向制御部に到達した後、当該制御部に沿ってき裂が伝播し、そのまま鋼板溶接継手に沿って戻り、再び鋼板溶接継手を伝播した。
(5)「××」…脆性き裂が耐脆性き裂伝播方向制御部内又は当該制御部に沿って伝播した後、当該後端において鋼板の母材側へ突入し、鋼板を伝播した。
本実施例で用いた鋼板の化学成分組成、鋼板製造条件及び母材の脆性き裂伝播停止特性Kca(N/mm1.5)の一覧を表1に示すとともに、鋼板溶接継手1を形成する際の溶接条件、脆性き裂伝播方向制御部3の形状、脆性き裂伝播方向制御部3に隣接する小鋼板溶接継手を形成する際の溶接条件、及び、脆性き裂の伝播の評価結果の一覧を表2に示す。
Figure 2010162571
Figure 2010162571
[評価結果]
表2に示す本発明例1〜8は上述した本発明の第2の実施形態の鋼板溶接継手10及び溶接構造体Bに関する例であり、本発明例9〜11は本発明の第3の実施形態の鋼板溶接継手10A及び溶接構造体C、本発明例12、13は第4の実施形態の鋼板溶接継手10B及び溶接構造体D、本発明例14は第1の実施形態の鋼板溶接継手1及び溶接構造体Aに関する例である。
また、表2に示す実験例1〜4は、図4に示す鋼板溶接継手10及び溶接構造体Bと同様の構造を有する例であり、実験例5〜7は、図5に示す鋼板溶接継手10A及び溶接構造体Cと同様の構造を有する例である。
表1及び表2に示すように、本発明に係る鋼板溶接継手及び溶接構造体(本発明例1〜14)は、脆性き裂の伝播の評価結果が、全て「◎」又は「○」の評価となった。これにより、本発明の溶接構造体が、溶接継手に脆性き裂が発生した場合であっても、き裂が溶接継手や母材を伝播するのを抑制でき、溶接構造体の破断を防止することが可能であり、耐脆性き裂伝播性に優れていることが確認できた。
ここで、本発明例3、8は、耐脆性き裂伝播方向制御部3の傾斜ビード31の角度が、鋼板溶接継手1の長手方向に対して60°近かったため、き裂が、耐脆性き裂伝播方向制御部3から鋼板2の母材に突入し、鋼板2にて停止した例である。
また、本発明例3、8以外の本発明例においては、耐脆性き裂伝播方向制御部3に到達した脆性き裂が、当該制御部に沿って伝播した後、鋼板の母材に突入して直ちに停止した例である。
このように、上記本発明例1〜14の鋼板溶接継手及び溶接構造体は、何れも、所定の耐脆性き裂伝播性を有していることが確認できた。
これに対し、実験例1〜7の溶接構造体は、鋼板の母材特性、耐脆性き裂伝播方向制御部の形状の何れかが本発明の規定を満たしていないため、耐脆性き裂伝播性の評価が何れも「△」〜「××」となった例である。
実験例1の溶接構造体は、耐脆性き裂伝播方向制御部の高さHが不充分であったため、耐脆性き裂伝播方向制御部近傍で鋼板母材側に突入した脆性き裂が母材部で停止できず、再び溶接継手に突入して伝播した例であり、耐脆性き裂伝播性の評価が若干低い「△」となった。
また、実験例2は、耐脆性き裂伝播方向制御部の横幅Wが不適であるとともに、鋼板溶接継手の長手方向に対する耐脆性き裂伝播方向制御部の傾斜ビードの角度が本発明の規定範囲外であったため、耐脆性き裂伝播方向制御部に沿って伝播方向を変えた脆性き裂が再び鋼板溶接継手を伝播した例であり、耐脆性き裂伝播性の評価が「×」となった。
また、実験例3〜5は、鋼板の母材のアレスト性能が不充分であったため、耐脆性き裂伝播方向制御部にて脆性き裂の伝播方向を制御できたのにも関わらず、鋼板の母材に突入した脆性き裂がそのまま伝播した例であり、耐脆性き裂伝播性の評価が「×××」となった。
また、実験例6は、耐脆性き裂伝播方向制御部の横幅Wが不適であるとともに、鋼板溶接継手の長手方向に対する耐脆性き裂伝播方向制御部の傾斜ビードの角度が本発明の規定範囲外であったため、耐脆性き裂伝播方向制御部に沿って伝播方向を変えた脆性き裂が再び鋼板溶接継手を伝播した例であり、耐脆性き裂伝播性の評価が「×」となった。
また、実験例7は、耐脆性き裂伝播方向制御部の高さHが不適であったため、耐脆性き裂伝播方向制御部近傍で鋼板の母材側に突入した脆性き裂が母材部で停止できず、再び鋼板溶接継手に突入して伝播した例であり、耐脆性き裂伝播性の評価が「×」となった。
以上の結果により、本発明の鋼板溶接継手及び溶接構造体が、溶接継手に脆性き裂が発生した場合であっても、き裂が溶接継手や母材を伝播するのを抑制でき、溶接構造体の破断を防止することが可能であり、耐脆性き裂伝播性に優れていることが明らかである。
1、10、10A、10B…鋼板溶接継手、A、B、C、D…溶接構造体、2、20、20A、20B…鋼板、20a…領域(鋼板溶接継手の長手方向において、該鋼板溶接継手の溶接線上から延在する耐脆性き裂伝播方向制御部の傾斜ビードの後端側よりも外側の部位)、3、30…耐脆性き裂伝播方向制御部、31…傾斜ビード、32…水平ビード、31b…後端(傾斜ビード)、25、26、35、36…小鋼板溶接継手11、22、23、24、31、32、33、34…小鋼板、70…船舶構造体、L…溶接線

Claims (8)

  1. 母材の少なくとも一部の脆性き裂伝播停止特性Kcaが4000N/mm1.5以上である鋼板同士を突合せ溶接することで形成される耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手であって、
    当該鋼板溶接継手の少なくとも一部に、該鋼板溶接継手の溶接線上から延在するとともに、前記鋼板溶接継手の長手方向に対して10°以上60°以下の範囲の角度で傾斜する傾斜ビードを具備する耐脆性き裂伝播方向制御部が設けられていること、を特徴とする耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手。
  2. 前記耐脆性き裂伝播方向制御部に備えられる前記傾斜ビードは、前記鋼板溶接継手の長手方向に沿った高さH、前記鋼板溶接継手の長手方向と交差する方向における横幅W、及び板厚tの各々の寸法が、下記(1)、(2)式で表される関係を満足すること、を特徴とする請求項1に記載の耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手。
    2T ≦ H ・・・・・ (1)
    3d+50 ≦ W ・・・・・ (2)
    {但し、上記(1)、(2)式中において、Tは前記鋼板の板厚を表し、dは前記鋼板溶接継手における溶接金属部の幅を表す}
  3. 前記鋼板の板厚が25mm以上150mm以下であること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手。
  4. 前記鋼板をなす母材の少なくとも一部の脆性き裂伝播停止特性Kcaが6000N/mm1.5以上であること、を特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手。
  5. 前記鋼板をなす母材は、前記鋼板溶接継手の長手方向において、該鋼板溶接継手の溶接線上から延在する前記耐脆性き裂伝播方向制御部の、前記傾斜ビードの後端側よりも外側の部位の脆性き裂伝播停止特性Kcaが4000N/mm1.5以上であること、を特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手。
  6. 前記鋼板をなす母材は、前記鋼板溶接継手の長手方向において、該鋼板溶接継手の溶接線上から延在する前記耐脆性き裂伝播方向制御部の、前記傾斜ビードの後端側よりも外側の部位の脆性き裂伝播停止特性Kcaが6000N/mm1.5以上であること、を特徴とする請求項4に記載の耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手。
  7. 前記鋼板は、前記鋼板溶接継手の長手方向で配列される少なくとも2以上の小鋼板からなるとともに、前記小鋼板同士を突合せ溶接することで小鋼板溶接継手が形成されており、
    前記小鋼板溶接継手は、前記鋼板溶接継手の溶接線上から延在する前記耐脆性き裂伝播方向制御部の、前記傾斜ビードの後端側に形成される水平ビードを含むこと、を特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の耐脆性き裂伝播性に優れた鋼板溶接継手。
  8. 母材の少なくとも一部の脆性き裂伝播停止特性Kcaが4000N/mm1.5以上である鋼板同士を突合せ溶接することで鋼板溶接継手が形成されてなる耐脆性き裂伝播性に優れた溶接構造体であって、
    該鋼板溶接継手の少なくとも一部に、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の耐脆性き裂伝播方向制御部が設けられていること、を特徴とする耐脆性き裂伝播性に優れた溶接構造体。
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JP2016007638A (ja) * 2014-06-26 2016-01-18 株式会社神戸製鋼所 板材及びこれを備えた筒状構造物並びに筒状構造物の製造方法

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