JP2010161037A - リチウム一次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温環境下および高温保存後において良好な大電流放電特性を示すリチウム一次電池を提供する。
【解決手段】本発明のリチウム一次電池は、金属リチウムまたはリチウム合金を負極活物質として含む負極と、正極活物質を含む正極と、非水電解質とを備える。前記負極の表面の少なくとも一部には、有機リチウム皮膜が形成されている。非水電解質は、非水溶媒およびそれに溶解した溶質を含む。さらに、非水電解質には、負極の表面に有機リチウム皮膜を形成可能なカルボン酸が添加されている。前記カルボン酸の添加量は、非水溶媒および溶質の合計100重量部あたり、0.1重量部以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、リチウム一次電池に関する。さらに詳しくは、本発明は、主に、金属リチウムまたはリチウム合金を含む負極の改良に関する。
従来から、リチウム一次電池は、起電力が高く、高エネルギー密度を有することから、携帯機器、車載用電子機器などの電子機器の主電源やメモリーバックアップ用電源として広く用いられている。リチウム一次電池は、二酸化マンガンなどの金属酸化物、フッ化黒鉛などの正極活物質からなる正極、セパレータ、リチウムまたはリチウム合金からなる負極および非水電解液を含む。リチウム一次電池の中でも、フッ化黒鉛を用いたリチウム一次電池は、二酸化マンガンなどの金属酸化物を用いたリチウム一次電池に比べて、長期貯蔵性および高温環境下での安定性に優れ、使用可能な温度範囲が広い。
最近では、電子機器の小型化、軽量化および高性能化が進み、それに伴って、リチウム一次電池に対しても、電池性能のさらなる向上が求められている。また従来、リチウム一次電池は、人の生活域に基づき、−20℃〜60℃程度の温度範囲で主に使用されていた。しかし、特に車載用電子機器の主電源またはメモリーバックアップ用電源としてリチウム一次電池を用いる場合、リチウム一次電池には、約−40℃の低温から約125℃の高温までの幅広い温度範囲で、十分な放電特性を発揮することが要求される。
リチウム一次電池は、放電初期に電圧が降下した後、緩やかに電圧が上昇するという放電特性を示す。放電初期の電圧降下の度合が大きいほど、電池性能が低い。この放電特性は、低温時および大電流放電時に顕著になる。このような放電特性の改良のため、負極の表面の抵抗を低減する取組がなされている。
しかしながら、負極表面の抵抗が低減されると、即ち負極表面が活性化されると、リチウム一次電池の放電特性は改良されるが、高温保存後には、リチウム一次電池の電池特性は著しく劣化する。負極表面が活性化されることにより、高温保存時に、負極と非水電解質との反応が促進され、反応生成物が負極表面に堆積し、抵抗成分となるためである。つまり、負極の表面の改良による放電特性の向上は、保存特性の低下を招く可能性が高い。よって、負極表面の抵抗を低減させたとしても、放電特性の向上と保存特性の向上とを両立させることは非常に困難である。
一方、リチウム二次電池は、負極活物質として炭素材料などを用いている。このため、リチウム二次電池の負極の抵抗は、リチウム一次電池と比べて小さく、よって放電特性が良好である。リチウム二次電池の負極において、充電状態では、非水溶媒はほとんど還元されないが、充電状態でかつ高温で保存した場合には、非水溶媒の分解が生じる。つまり、リチウム二次電池は、充電状態において、高温保存時の特性劣化が大きい。そのため、リチウム二次電池には、充電状態での高温保存特性の向上が求められている。
例えば、特許文献1には、非水溶媒と、溶質と、フッ化水素と、カルボキシル基または無水カルボン酸基を有する化合物とを含む非水電解液、ならびに前記非水電解液を含む非水電解液二次電池が開示されている。特許文献1において、フッ化水素の量は、非水溶媒と溶質の合計量に対して0.0005〜0.7重量%であり、カルボキシル基または無水カルボン酸基を有する化合物の量は、非水溶媒と電解質の合計量に対して0.01〜4.0重量%であることが開示されている。
上記のように、充電状態のリチウム二次電池の負極上では、非水電解質に含まれる非水溶媒の種類によっては、微小ながらも非水電解質が還元分解する。この還元分解は特に高温で顕著に現れる。還元分解が起こると、反応生成物が電極上を覆い、リチウムイオンの移動を阻害し、電池の放電特性が低下する。このため、非水電解質に使用される高誘電率の非水溶媒として、常温で固体ではあるものの、還元分解反応が継続的に起こりにくいエチレンカーボネートを使用する試みや、特許文献1のように、様々な添加剤を加えることによって、還元分解反応を抑制しようという試みがされている。
以上のように、リチウム二次電池では、非水電解質の分解を抑制し、電池の放電特性の低下を抑制するための検討が多くなされている。
リチウム一次電池では、負極活物質として、金属リチウムまたはリチウム合金を使用するため、負極の反応性が高い。炭素材料などを負極活物質として含むリチウム二次電池のように、充電されることにより非水溶媒が還元されるのとは異なり、リチウム一次電池では、電池組立時から非水電解質が還元され、還元生成物が負極表面を覆い、よって負極の抵抗を増加させる。さらに、リチウム一次電池においては、放電時に、負極表面で、前記還元生成物からなる皮膜の一部が破壊されて、負極の表面がさらに活性化し、非水電解質の還元が促進される。このため、放電特性が低下する。反面、還元分解による皮膜の生成は、保存特性を向上させる場合がある。
また、リチウム二次電池では、通常−20℃程度の低温で放電可能であることと、60℃程度の高温での保存特性が求められる。リチウム一次電池を特に車載用電子機器の主電源またはメモリーバックアップ用電源として用いる場合、リチウム一次電池には、−40℃程度の低温で放電可能であることと、125℃以上の高温での保存特性が良好であることが求められる。従来、低温での放電を可能とするために負極を活性な状態に維持しながら、高温保存時の非水電解質の還元分解反応を抑制して、高温保存後の低温での放電特性を向上させることは、これまであまり検討されていない。
さらに、リチウム一次電池などの一次電池は、電池容量の一部を放電する部分放電が繰り返され、完全放電される場合がある。
例えば、特許文献2には、低温放電特性を維持しつつ、部分放電後の1年以上にわたる室温での長期保存時における内部抵抗の上昇を抑制するために、非水電解液電池の非水電解液に、添加剤として、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酪酸メチルなどを添加することが開示されている。なお、特許文献2に開示される非水電解液電池は、リチウムまたはリチウム合金あるいは電気化学的にリチウムを吸蔵放出可能な炭素材料からなる負極と、金属酸化物を活物質とする正極と、前記非水電解液とを備える。
非水電解液に含まれる非水溶媒として低粘度溶媒を使用すると、優れた低温放電特性を得ることができる。しかし、このような電池を、放電容量を半分以上放電させた状態で、つまり負極表面が活性化された状態で、室温で長期間放置すると、負極上に非水溶媒に由来する皮膜が形成され、次第に電池の内部抵抗が上昇することがある。この場合、放電特性が低下する。
特許文献2では、低沸点溶媒を使用することで、良好な放電特性を得、特許文献2に示す添加剤を組み合わせることで、マンガンなどの触媒作用による低沸点溶媒の分解を防ぎ、電池の放電特性を1年以上にわたって維持することができる。
しかし、車載用電子機器の主電源またはメモリーバックアップ用電源として用いる場合、リチウム一次電池には、約−40℃の低温から約125℃の高温までの幅広い温度範囲での使用が求められている。低沸点溶媒を使用すると、高温保存時に電解液が分解してしまい、電池の膨れなどによる放電特性の低下が発生するため、車載用電子機器での使用は困難である。
特開2001−307770号公報 特開2000−268860号公報(特許第3717698号公報)
本発明は、低温環境下および高温保存後において良好な大電流放電特性を示すリチウム一次電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明のリチウム一次電池は、金属リチウムまたはリチウム合金を負極活物質として含む負極と、正極活物質を含む正極と、非水電解質とを備える。前記負極の表面の少なくとも一部には、有機リチウム皮膜が形成されており、前記非水電解質は、非水溶媒、および前記非水溶媒に溶解した溶質を含み、かつ前記非水電解質には、前記負極の表面に有機リチウム皮膜を形成可能なカルボン酸が添加されている。前記カルボン酸の添加量は、非水溶媒と溶質との合計100重量部あたり0.1重量部以下である。
前記カルボン酸の添加量は、非水溶媒と溶質との合計100重量部あたり0.02重量部以上であることが好ましい。前記カルボン酸は、C37COOHおよびC49COOHよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
前記正極活物質は、フッ化黒鉛を含むことが好ましい。
前記非水溶媒は、γ−ブチロラクトンを含むことが好ましい。非水溶媒がγ−ブチロラクトンを含む場合、溶質は、LiBF4を含むことが好ましい。
また、本発明は、
(i)正極活物質を含む正極を作製する工程、
(ii)金属リチウムまたはリチウム合金を負極活物質として含む負極を作製する工程、
(iii)非水溶媒と、溶質とを混合して、非水電解質を調製する工程、
(iv)前記非水電解質に、前記負極の表面の少なくとも一部に有機リチウム皮膜を形成可能なカルボン酸を添加する工程、および
(v)前記正極および前記負極に、前記カルボン酸を含む非水電解質を接触させる工程
を含む、リチウム一次電池の製造方法に関する。前記カルボン酸の量は、前記非水溶媒および前記溶質の合計100重量部あたり、0.1重量部以下である。
前記カルボン酸の添加量は、前記非水溶媒および前記溶質の合計100重量部あたり、0.02重量部以上であることが好ましい。前記カルボン酸は、C37COOHおよびC49COOHよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
前記製造方法において、前記正極活物質は、フッ化黒鉛を含むことが好ましい。
前記非水溶媒は、γ−ブチロラクトンを含むことが好ましい。このとき、前記溶質は、LiBF4を含むことが好ましい。
本発明においては、非水電解質に、非水溶媒と溶質の合計100重量部あたり0.1重量部以下の量で、負極の表面に有機リチウム皮膜を形成可能なカルボン酸が添加されている。これにより、抵抗が小さい有機リチウム皮膜(カルボン酸リチウム皮膜)が負極上に形成される。前記皮膜により、低温環境下においても、負極の抵抗を小さく維持できる。また、前記皮膜により、負極での非水電解質(非水溶媒)の還元反応を抑制でき、非水溶媒に由来する還元生成物が負極上に堆積されることも抑制できる。さらには、前記皮膜により、高温保存時にも、非水溶媒の還元反応が抑制され、還元生成物が負極上に堆積されることを抑制できる。よって高温保存時にも、前記負極の抵抗の増大を抑制することができる。
従って、本発明により、低温環境下および高温保存後において、良好な大電流放電特性を示すリチウム一次電池を得ることができる。
図1に、本発明の一実施形態に係るリチウム一次電池を概略的に示す縦断面図を示す。図1のコイン型リチウム一次電池10は、正極11、負極12、正極11と負極12との間に配置されたセパレータ13、および非水電解質(図示せず)を含む。正極11は、正極ケース14に接しており、負極12は負極ケース15に接している。電池10は、正極ケース14の開口端部を、ガスケット16を介して負極ケース15の周縁部にかしめることにより密閉されている。非水電解質は、非水溶媒と、それに溶解した溶質とを含む。
負極12は、負極活物質として、金属リチウムまたはリチウム合金を含有する。リチウム合金は、金属リチウムに比べると、物性および表面状態の改良が期待される。
リチウム合金としては、リチウム一次電池の分野で常用される材料を使用できる。このような材料は、マトリックス成分であるリチウムと、リチウムと合金化が可能な金属とを含む。リチウムと合金化が可能な金属としては、たとえば、アルミニウム、錫、マグネシウム、インジウム、カルシウム、マンガンなどが挙げられる。リチウム合金は、これらの金属うちの1種を含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
リチウムと合金化が可能な金属の含有量は特に制限はないが、リチウム合金の5重量%以下であることが好ましい。前記金属の量が5重量%を超えると、リチウム合金の融点の上昇、硬度の増加、加工性の低下などが起こり易くなるおそれがある。
金属リチウムまたはリチウム合金は、従来のリチウム一次電池用負極と同様に、最終的に得られるリチウム一次電池の形状および寸法、規格性能などに応じて、任意の形状および厚さに成形される。例えば、リチウム一次電池がコイン型電池である場合は、金属リチウムまたはリチウム合金は、径5〜25mm程度、厚さ0.2〜2.0mm程度の円盤状に成形される。
負極12に含まれる金属リチウムおよびリチウム合金は、非水電解質との反応性が高い。そこで、本発明においては、非水電解質に、負極12の表面に有機リチウム皮膜を形成可能なカルボン酸が添加されている。前記カルボン酸の添加量は、非水溶媒と溶質との合計100重量部あたり0.1重量部以下である。
非水電解質と負極12とが接触すると、非水電解質に含まれるカルボン酸と、負極12に含まれるリチウムとが反応し、負極12の表面に、抵抗の小さい有機リチウム皮膜が適切に形成される。前記有機リチウム皮膜は、放電により破損されにくい。このため、負極12の抵抗を、低温環境下で放電する場合においても小さく維持できる。
さらに、高温保存時において、前記有機リチウム皮膜により、負極12での非水電解質の還元反応が抑制される。非水電解質の還元反応が抑制されるため、還元生成物が負極12上に堆積されることが抑制される。よって、高温保存時に、負極12の抵抗の増大を抑制することができ、その結果、高温保存後の放電においても、負極の抵抗を小さく維持できる。
従って、本発明により、低温環境下および高温保存後における大電流放電特性に優れたリチウム一次電池を得ることができる。
前記カルボン酸の添加量が、非水溶媒と溶質との合計100重量部あたり0.1重量部を超えると、必要以上に厚い有機リチウム皮膜が形成される。このため、負極12の抵抗が増加してしまう。さらには、余分なカルボン酸が、高温保存時に、正極11で酸化分解されて、ガスが発生する可能性がある。この場合、電池の放電特性が低下する。
前記カルボン酸の添加量は、負極12の表面に抵抗の小さい有機リチウム皮膜が十分に形成されるため、非水溶媒と溶質との合計100重量部あたり0.02重量部以上であることが好ましい。前記カルボン酸の量が0.02重量部未満である場合、負極12の表面に形成される有機リチウム皮膜が不十分となることがある。さらには、負極12の表面に、前記カルボン酸に由来する有機リチウム皮膜のほかに、異なる成分の皮膜が形成されることもある。これらの場合、負極12の抵抗が増加することがある。
前記カルボン酸の添加量は、非水溶媒と溶質との合計100重量部あたり0.02〜0.05重量部であることがさらに好ましい。
本発明で用いることのできるカルボン酸としては、HCOOH(ギ酸)、CH3COOH(酢酸)、C25COOH(プロピオン酸)、C37COOH(酪酸)、C49COOH(吉草酸)、C511COOH(カプロン酸)、C713COOH(エナント酸)などが挙げられる。これらのカルボン酸は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記カルボン酸の中でも、C37COOH(酪酸)およびC49COOH(吉草酸)が好ましい。酪酸および吉草酸は、分子量が比較的小さく、非水電解質を過度に希釈することがないからである。これらのうちでも、酪酸が特に好ましい。酪酸は、価格も比較的安価であり、かつ入手しやすいからである。
なお、分子量の大きなカルボン酸を用いると、非水電解質が過度に希釈されることがある。分子量の小さなカルボン酸は水分と混ざりやすい。このため、分子量の小さなカルボン酸は、リチウム一次電池に用いる場合、その取り扱いが難しい。
上記のように、非水電解質には、溶質、非水溶媒およびカルボン酸が含まれる。
溶質は、非水溶媒に溶解する支持塩である。溶質としては、リチウム一次電池の分野で常用される材料を使用できる。溶質としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロ硼酸リチウム(LiBF4)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiN(CF3SO22)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiN(C25SO22)、リチウム(トリフルオロメチルスルホニル)(ノナフルオロブチルスルホニル)イミド(LiN(CF3SO2)(C49SO2))、リチウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド(LiC(CF3SO23)、過塩素酸リチウム(LiClO4)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶質濃度は特に制限されないが、0.7〜1.5モル/Lであることが好ましい。溶質濃度が0.7モル/L未満では、室温における放電特性、長期保存特性などが低下するおそれがある。溶質濃度が1.5モル/Lを超えると、−40℃程度の低温環境下での非水電解質の粘度上昇、イオン伝導度の低下などが顕著になるおそれがある。
非水溶媒としては、リチウム一次電池の分野で常用される溶媒を、特に限定することなく使用できる。非水溶媒としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,3−ジオキソラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、トリメトキシメタン、ジオキソラン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体などが挙げられる。これらは、単独でも用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、幅広い温度範囲で安定であり、溶質を溶解し易いため、γ−ブチロラクトンが好ましい。
非水溶媒がγ−ブチロラクトンを含む場合、溶質はLiBF4を含むことが好ましい。γ−ブチロラクトンとLiBF4との併用により、リチウム一次電池の高温保存特性をさらに向上させることができる。
非水電解質への前記カルボン酸の添加量を、非水溶媒および溶質の合計100重量部あたり0.02〜0.1重量部とした場合、有機リチウム皮膜が形成された後に非水電解質に含まれる前記カルボン酸の量は、前記カルボン酸の添加量よりも減少する。
一方で、非水溶媒が、γ−ブチロラクトンのようにLiと反応してカルボン酸およびカルボン酸リチウムを生成する溶媒を含む場合、負極の表面に有機リチウム皮膜が形成された後に非水電解質に含まれるカルボン酸の量は、添加したカルボン酸の量から増加することがある。
以上を鑑みると、有機リチウム皮膜が形成されたのちに非水電解質に含まれるカルボン酸の量は、非水溶媒の種類にもよるが、非水溶媒および溶質の合計100重量部あたり、0.2重量部以下であることが好ましいと考えられる。
なお、本発明においては、前記カルボン酸を非水電解質に予め添加することにより、上記で説明した効果を安定に、かつ顕著に向上させている。
正極11は、正極活物質層を含むことができる。正極活物質層は、例えば、正極活物質、導電材および結着剤を含む。
正極活物質としては、リチウム一次電池の分野で常用される材料を使用できる。正極活物質としては、フッ化黒鉛、金属酸化物などが好ましい。
フッ化黒鉛は、長期信頼性、安全性、高温安定性などの点で優れている。特に、化学式(CFxn(0.9≦x≦1.1)で表されるフッ化黒鉛が好ましい。
フッ化黒鉛は、例えば、石油コークス、人造黒鉛などをフッ素化することにより得ることができる。この方法では、通常、石油コークス、人造黒鉛などの炭素系材料(C)とフッ素(F)とを1:x(モル比)の割合で反応させる。これにより、CとFとが前記1:xの割合で結合した物質が多数(n)集合した集合体が得られる。前記集合体がフッ化黒鉛と呼ばれている。
金属酸化物としては、二酸化マンガン、酸化銅などが挙げられる。
正極活物質である上記材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、本発明においては、正極活物質として、フッ化黒鉛を用いることが好ましい。
カルボン酸を添加剤として含まず、非水溶媒と溶質のみから構成される従来の非水電解質を用い、正極活物質としてフッ化黒鉛を用いた場合、フッ化黒鉛から遊離するフッ素が負極のリチウムと反応して、絶縁体であるフッ化リチウム(LiF)皮膜が、負極の表面に形成されやすい。LiF皮膜が形成されると、負極の抵抗が増加する。また、前記LiF皮膜の形成は、高温保存時に促進される。
一方で、本発明のリチウム一次電池においては、非水電解質に、カルボン酸を添加剤として添加している。非水電解質と負極とが接触すると、負極表面に、前記カルボン酸に由来する有機リチウム皮膜が形成される。正極にフッ化黒鉛が含まれている場合、この有機リチウム皮膜は、詳しくは不明であるが、フッ化黒鉛から遊離したフッ素が負極のリチウムと反応するのを抑制し、負極の表面にLiF皮膜が形成されるのを抑制すると考えられる。
導電材としては、使用される正極活物質の放電時の電位範囲において化学変化を起こさない電子伝導体を使用できる。前記電子伝導体としては、例えば、グラファイト類、カーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維、有機導電性材料が挙げられる。これらの材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。導電材の添加量は特に限定されないが、例えば、正極活物質100重量部あたり5〜30重量部とすることができる。
用いられる結着剤は、使用される正極活物質の放電時の電位範囲において化学変化を起こさなければ、特に限定されない。前記結着剤としては、例えば、フッ素系樹脂、スチレン−ブタジエン系ゴム、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸、ポリフッ化ビニリデンなどが挙げられる。これらの材料は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。結着剤の添加量は特に限定されないが、例えば、正極活物質100重量部あたり3〜15重量部とすることができる。
セパレータ13としては、リチウム一次電池内部の環境に耐性を有する材料からなる多孔質膜を使用できる。セパレータ13としては、例えば、合成樹脂製の不織布、合成樹脂製の多孔質フィルムなどが挙げられる。多孔質フィルムは微多孔フィルムとも呼ばれる。不織布に用いられる合成樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。これらの中でも、耐高温性、耐溶剤性、保液性に優れるため、ポリフェニレンサルフィドおよびポリブチレンテレフタレートが好ましい。多孔質フィルムに用いられる合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
正極ケース14は、正極集電体および正極端子を兼ねる。負極ケース15は、負極集電体および負極端子を兼ねる。正極ケース14および負極ケース15の構成材料には、リチウム一次電池の分野で常用される材料を使用できる。このような材料としては、例えば、ステンレス鋼が挙げられる。
ガスケット16は、主に、正極ケース14と負極ケース15とを絶縁する。ガスケット16の構成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンなどの合成樹脂を使用できる。中でも、耐高温性および耐溶剤性に優れ、さらに成形性も良好であるため、ポリフェニレンサルファイドが好ましい。
なお、上記非水電解質に含まれるカルボン酸の量は、非水電解質の調製時に非水電解質に含まれるカルボン酸の量である。
本発明のリチウム一次電池は、
(i)正極活物質を含む正極を作製する工程、
(ii)金属リチウムまたはリチウム合金を負極活物質として含む負極を作製する工程、
(iii)非水溶媒と、溶質とを混合して、非水電解質を調製する工程、
(iv)前記非水電解質に、前記負極の表面の少なくとも一部に有機リチウム皮膜を形成可能なカルボン酸を添加する工程、および
(v)前記正極および前記負極に、前記カルボン酸を含む非水電解質を接触させる工程
を含む方法により作製することができる。前記工程(iv)において、非水電解質に添加される前記カルボン酸の量は、非水溶媒および溶質の合計100重量部あたり、0.1重量部以下である。上記と同様に、前記カルボン酸の添加量は、非水溶媒および溶質の合計100重量部あたり、0.02重量部以上であることが好ましい。
前記カルボン酸は、C37COOHおよびC49COOHよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
工程(v)は、例えば、コイン型電池の場合、正極ケースの内底面に、正極を配置し、正極上にセパレータを配置して、正極およびセパレータに非水電解質を含浸させ、次いで、負極が圧着された負極ケースを、負極と正極とがセパレータを介して対向するように正極ケースに装着することにより行うことができる。または、工程(v)は、負極が圧着された負極ケースにセパレータを配置して、負極およびセパレータに非水電解質を含浸させ、次いで、負極と正極とがセパレータを介して対向するように正極を配置し、正極ケースを負極ケースに装着することによっても行うことができる。
捲回型電極群または積層型電極群を含む電池の場合、電池ケースに電極群を収容し、前記電池ケースに非水電解質を注液することにより、前記工程(v)を行うことができる。
正極を作製する工程(i)、負極を作製する工程(ii)、および非水電解質を調製する工程(iii)は、当該分野で公知の方法を用いて行うことができる。
上記と同様に、正極活物質は、フッ化黒鉛を含むことが好ましい。非水溶媒は、γ−ブチロラクトンを含むことが好ましい。非水溶媒がγ−ブチロラクトンを含む場合、溶質は、LiBF4を含むことが好ましい。
なお、前記工程(iii)と工程(iv)とは、同時に行ってもよい。つまり、上記作製方法は、(iiia)非水溶媒と、溶質と、負極の表面に有機リチウム被膜を形成可能なカルボン酸とを混合して、カルボン酸を含む非水電解質を調製する工程を含んでいてもよい。
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明する。
《実施例1》
以下の手順で、図1に示すコイン型のリチウム一次電池を作製した。
(1)非水電解質の調製
非水溶媒であるγ−ブチロラクトンに、溶質であるテトラフルオロ硼酸リチウム(LiBF4)を1モル/Lの濃度で溶解させて、非水電解質を得た。続いて、得られた非水電解質に、酪酸を添加した。酪酸の添加量は、非水溶媒と溶質の合計100重量部あたり、0.02重量部とした。
(2)正極の作製
石油コークスをフッ素化して、正極活物質であるフッ化黒鉛((CF1.0n)を得た。このフッ化黒鉛と、アセチレンブラック(導電材)と、スチレン−ブタジエンゴム(結着剤)とを、100:15:6の重量比で混合した。この混合物に、水とイソプロピルアルコールを加えて十分に混練して、正極合剤を作製した。この正極合剤を、70℃で乾燥した後、所定の金型と油圧プレス機を用いて加圧成形して、直径16mm、厚み3mmのペレットを作製した。このペレットを100℃で12時間乾燥して、正極を得た。
(3)負極の作製
厚み1.3mmのリチウム金属をφ18.0mmの円形に打ち抜いて、負極を得た。得られた負極は、ステンレス鋼製の負極ケースの内底面に圧着しておいた。なお、負極の作製および負極の負極ケースへの圧着は、露点−50℃以下のドライエア中で行った。
(4)電池の組立
ステンレス鋼製の正極ケースの内底面に、正極を配置し、正極上にセパレータを配置した。その後、所定量の非水電解質を注入して、正極およびセパレータに非水電解質を含浸させた。セパレータには、ポリブチレンテレフタレート製不織布を用いた。非水電解質には、手順(1)で調製した非水電解質を用いた。
次に、負極が圧着された負極ケースを、負極と正極とがセパレータを介して対向するように正極ケースに装着した。正極ケースの開口端部を、ガスケットを介して負極ケースの周縁部にかしめつけて、正極ケースの開口部を封口した。このようにしてコイン型電池(外径24.5mm、厚み5.0mm)を作製した。電池作製は、露点−50℃以下のドライエア中で行った。
このようにして得られたコイン型電池を、電池1とした。
《実施例2》
酪酸の添加量を、非水溶媒と溶質の合計100重量部あたり、0.05重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、電池2を得た。
《実施例3》
酪酸の添加量を、非水溶媒と溶質の合計100重量部あたり、0.1重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、電池3を得た。
《実施例4》
酪酸の代わりに吉草酸を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、電池4を作製した。
《比較例1》
酪酸の添加量を、非水溶媒と溶質の合計100重量部あたり、0.2重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、比較電池1を得た。
《比較例2》
非水電解質に酪酸を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較電池2を作製した。
《実施例5》
本実施例では、正極活物質として二酸化マンガン(MnO2)を用い、導電材としてケッチェンブラックを用い、結着剤としてフッ素樹脂(ポリフルオロエチレン(FEP)(ネオフロン;ダイキン工業(株)製))を用いた。正極活物質と、導電材と、結着剤とを、100:3:6の重量比で混合した。この混合物を用いたこと以外、実施例1と同様にして、正極を作製した。
非水電解質は、以下のようにして調製した。非水溶媒であるプロピレンカーボネート(PC)とジメトキシエタン(DME)との体積比1:1の混合溶媒(PC−DME溶媒)に、溶質である過塩素酸リチウム(LiClO4)を0.5モル/Lの濃度で溶解させた。得られた溶液に、酪酸を添加した。酪酸の添加量は、PC−DME溶媒と溶質との合計100重量部あたり0.05重量部とした。さらに、前記溶液に、1,3−プロパンスルトンを添加した。1,3−プロパンスルトンの添加量は、PC−DME溶媒と溶質との合計100重量部あたり、2重量部とした。なお、1,3−プロパンスルトンは、二酸化マンガンの反応性が非常に高いので、高温保存時に正極の反応性を低下させるために添加した。
前記のようにして作製した正極および非水電解質を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池5を得た。
《比較例3》
非水電解質に酪酸を添加しなかったこと以外は、実施例5と同様にして、比較電池3を得た。
[評価1]
電池1〜5および比較電池1〜3を、以下の評価試験に供した。
(A)初期静特性の評価
作製直後の各電池を、それぞれ10セルずつ、4mAの定電流での30分間の予備放電に供した。予備放電後の各電池を、さらに、60℃で1日間エージングし、開回路電圧(OCV)を安定させた。この後、各電池のOCVと1kHzでの内部抵抗を室温で測定した。結果を表1〜2に示す。表1〜2において、測定されたOCVおよび内部抵抗は、それぞれ、初期電池電圧および初期内部抵抗としている。表1〜2の各電池の初期電池電圧値および初期内部抵抗値は、10セルの平均値である。
その結果、いずれの電池にも異常が認められなかった。
(B)低温での大電流放電特性の評価
各電池を、それぞれ3セルずつ、60℃で1日間エージングした。エージング後の各電池を、−40℃の環境下でパルス放電させて、低温での大電流放電特性を評価した。具体的には、−40℃の環境下で、10mAで20m秒間定電流放電し、次いで60秒間休止するサイクルを720時間(30日間)繰り返した。各サイクルにおけるパルス放電時の電圧の経時変化を測定した。720時間後における最小のパルス電圧(最小パルス電圧)を求めた。結果を表1〜2に示す。表1〜2の各電池の最小パルス電圧は、3セルの平均値である。
(i)カルボン酸の量および種類を変化させた実施例1〜4および比較例1〜2の結果を
、表1に示す。
Figure 2010161037
(ii)正極活物質に二酸化マンガン(MnO2)を用いた実施例5および比較例3の結果
を、表2に示す。
Figure 2010161037
[評価2]
各電池の高温保存特性を調べた。具体的には、電池2および比較電池2を、それぞれ6セルずつ、60℃で1日間エージングした。エージング後の各電池を、3セルずつ、125℃の高温環境下で、3日保存した。同様に、エージング後の各電池を、3セルずつ、125℃の高温環境下で、10日保存した。保存後の各電池を、以下の評価試験に供した。
(C)125℃で保存した後の静特性の評価
3日間保存した各電池を、室温で3時間放置し、この後、各電池のOCVおよび1kHzでの内部抵抗を測定した。同様に、12日間保存した各電池を、室温で3時間放置し、この後、各電池のOCVおよび1kHzでの内部抵抗を測定した。結果を表3に示す。表3において、測定されたOCVは、電池電圧としている。表3の各電池の電池電圧値および内部抵抗値は、3セルの平均値である。
(D)125℃で保存した後の低温での大電流放電特性の評価
電池2および比較電池2を、それぞれ3セルずつ、125℃の環境下で3日保存した。この後、各電池を、パルス放電させて、125℃で保存した後の低温での大電流放電特性を評価した。具体的には、10mAで20m秒間定電流放電し、次いで60秒間休止するサイクルを720時間(30日間)繰り返した。各サイクルにおけるパルス放電時の電圧の経時変化を測定した。720時間後における最小のパルス電圧(最小パルス電圧)を求めた。
125℃の環境下で12日保存した後の電池2および比較電池2について、上記と同様にして、最小パルス電圧を求めた。
結果を表3に示す。表3の各電池の最小パルス電圧は、3セルの平均値である。
Figure 2010161037
なお、以下の表4に、電池1〜3および電池5、ならびに比較電池1〜2を、60℃で1日間エージングした後に、それらの電池の非水電解質に含まれる酪酸の量を示す。さらに、電池2〜3および比較電池1〜2については、エージングののち125℃で3日間保存した後に、非水電解質に含まれる酪酸の量も示す。表4において、酪酸の量は、非水溶媒および溶質の合計100重量部あたりの重量部で示している。電池1〜3および電池5、ならびに比較電池1〜2は、非水電解質に酪酸を添加したか、または非水電解質において酪酸が生成していると考えられる電池である。非水電解質に含まれる酪酸の量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。
Figure 2010161037
表1に示すように、電池1〜4は、いずれも、20℃において、初期電池電圧が3V以上であった。さらに、各電池の初期内部抵抗(1kHz)は1〜30Ω(平均前)であった。つまり、電池1〜4の初期特性は良好であった。
また、表1から、電池1〜4は、比較電池1〜2と比べて、低温での大電流放電特性(最小パルス電圧)が高いこともわかる。
表2に示すように、電池5も、20℃において、初期電池電圧が3V以上であった。さらに、電池5の初期内部抵抗(1kHz)は1〜30Ω(平均前)であった。つまり、電池5の初期特性も良好であった。
また、表2から、電池5は、比較電池3と比べて、低温での大電流放電特性(最小パルス電圧)が高いこともわかる。
非水電解質が、非水溶媒と溶質との合計100重量部あたり0.1重量部以下の量でカルボン酸を含むことにより、負極の表面に、抵抗の小さい有機リチウム皮膜が生成され、前記皮膜により、高温保存時において非水電解質の還元分解が抑制される。このため、本発明の電池において、良好な結果が得られたと考えられる。
さらに表3に示されるように、電池2は、比較電池2と比べて、125℃の高温で保存した後でも、電池の内部抵抗の上昇が抑制されている。さらには、高温で保存した後の低温での大電流放電特性(最小パルス電圧)の低下も抑制されている。
なお、表3に示されるように、電池2は、125℃で10日間保存した後でも、比較電池1よりも良好な低温での大電流放電特性を示している。
非水電解質が、非水溶媒と溶質の合計100重量部あたり0.1重量部以下の量でカルボン酸を含むことにより、上記のように、負極の表面に抵抗の小さい有機リチウム皮膜が形成される。前記皮膜は、高温環境下でも維持され、負極における非水電解質の還元分解の促進を抑制する。つまり、非水溶媒に由来する還元分解生成物の負極への堆積が抑制される。このため、125℃で保存した後にも、良好な放電特性が維持されたと考えられる。
また、表4の例えば電池1〜3に示されるように、非水電解質に含まれる非水溶媒の種類によっては、電池内で非水溶媒とLiイオンが反応して酪酸が生成される場合があるが、いずれにしても、酪酸を、非水溶媒および溶質の合計100重量部あたり、0.1重量部以下の量で非水電解質に予め添加した電池1〜3および5は、低温環境下および高温保存後において、良好な大電流放電特性を有する。これは、カルボン酸を所定の値以下の量で非水電解質に予め添加することにより、負極表面に有機リチウム皮膜を適切に生成させることができたためであると考えられる。
なお、上記実施例では、負極活物質としてリチウム金属を用いたが、負極活物質としてリチウム合金を使用しても、同様の効果を得ることができる。
本発明のリチウム一次電池は、−40℃という低温においても大電流放電特性が良好であり、さらには、125℃という高温で保存した後においても、良好な大電流放電特性を維持することが可能である。従って、本発明のリチウム一次電池は、携帯機器、情報機器などの電子機器の電源、特に車載用電子機器の主電源またはメモリーバックアップ用電源として好適に用いることができる。
本発明の一実施形態に係るリチウム一次電池を概略的に示す縦断面図である。
10 電池
11 正極
12 負極
13 セパレータ
14 正極ケース
15 負極ケース
16 ガスケット

Claims (12)

  1. 金属リチウムまたはリチウム合金を負極活物質として含む負極と、正極活物質を含む正極と、非水電解質とを備え、
    前記負極の表面の少なくとも一部には、有機リチウム皮膜が形成されており、
    前記非水電解質は、非水溶媒および前記非水溶媒に溶解した溶質を含み、かつ前記非水電解質には、前記負極の表面の少なくとも一部に有機リチウム皮膜を形成可能なカルボン酸が添加されており、
    前記カルボン酸の添加量は、前記非水溶媒および前記溶質の合計100重量部あたり、0.1重量部以下である、リチウム一次電池。
  2. 前記カルボン酸の添加量が、前記非水溶媒および前記溶質の合計100重量部あたり、0.02重量部以上である、請求項1記載のリチウム一次電池。
  3. 前記カルボン酸が、C37COOHおよびC49COOHよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2記載のリチウム一次電池。
  4. 前記正極活物質が、フッ化黒鉛を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のリチウム一次電池。
  5. 前記非水溶媒が、γ−ブチロラクトンを含む、請求項1〜4のいずれかに記載のリチウム一次電池。
  6. 前記溶質が、LiBF4を含む、請求項5記載のリチウム一次電池。
  7. (i)正極活物質を含む正極を作製する工程、
    (ii)金属リチウムまたはリチウム合金を負極活物質として含む負極を作製する工程、
    (iii)非水溶媒と、溶質とを混合して、非水電解質を調製する工程、
    (iv)前記非水電解質に、前記負極の表面の少なくとも一部に有機リチウム皮膜を形成可能なカルボン酸を添加する工程、および
    (v)前記正極および前記負極に、前記カルボン酸を含む非水電解質を接触させる工程
    を含み、
    前記カルボン酸の添加量が、前記非水溶媒および前記溶質の合計100重量部あたり、0.1重量部以下である、リチウム一次電池の製造方法。
  8. 前記カルボン酸の添加量が、前記非水溶媒および前記溶質の合計100重量部あたり、0.02重量部以上である、請求項7記載のリチウム一次電池の製造方法。
  9. 前記正極活物質が、フッ化黒鉛を含む、請求項7または8記載のリチウム一次電池の製造方法。
  10. 前記カルボン酸が、C37COOHおよびC49COOHよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項7〜9のいずれかに記載のリチウム一次電池の製造方法。
  11. 前記非水溶媒が、γ−ブチロラクトンを含む、請求項7〜10のいずれかに記載のリチウム一次電池の製造方法。
  12. 前記溶質が、LiBF4を含む、請求項11記載のリチウム一次電池の製造方法。
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