JP2010154797A - 非加熱食肉製品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】凍結状態の原料肉を、完全に解凍することなくマイナス温度帯で塩漬工程を実施し、その後整形工程及び熟成乾燥工程を含む工程により生ハム類を製造することにより、食味の優れた生ハム等の非加熱食肉製品を小規模で短期間に、低コストで製造する方法を提供すること。
【解決手段】塩漬工程、整形工程及び熟成乾燥工程を備えた非加熱食肉製品の製造方法において、凍結状態の原料肉に塩漬調味料を直接接触させ、塩漬調味料中の塩による氷点降下作用を利用して、−6.0℃〜−3.0℃のマイナス温度帯で原料肉を解凍しながら塩漬調味料を原料肉中に浸透させる塩漬工程を採用する。塩漬工程として、凍結状態の原料肉に固体状の塩漬調味料を塗布することにより直接接触させる乾塩漬工程や、凍結状態の原料肉を液体状の塩漬調味料に浸漬することにより直接接触させる湿塩漬工程を採用することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、原料肉を塩漬工程、整形工程及び熟成乾燥工程を含む非加熱食肉製品の製造方法に関し、詳しくは、凍結した原料肉を解凍の過程で塩漬することにより、低コストで、塩漬調味料が均一に浸透した、食味の優れた生ハム類等の非加熱食肉製品の製造方法に関する。
従来の生ハム類等の非加熱食肉製品は、保存性を高めるため、原料肉を塩漬する工程を採用している。生ハム類製造のための塩漬法として、我が国食品衛生法上認められている方法には、乾塩漬法と湿塩漬法と1本針注入法がある。一般的に、乾塩漬法では、原料食肉を整形後、食塩等を直接擦り込み、冷蔵庫中に2〜3週間静置した後、必要に応じて脱塩し、以後3〜7日間燻煙・乾燥していた。湿塩漬法では、原料食肉を整形後、食塩等を水に溶かした塩漬け液に約2週間漬け込み、必要に応じて脱塩し、以後3〜7日間燻煙・乾燥していた。塩漬け液の1本針注入法では、原料食肉を整形後、食塩等を水に溶かした塩漬液を1本針で注入し、7〜10日間冷蔵庫中で静置した後、3〜7日間燻煙・乾燥していた。
上記塩漬法のうち、乾塩漬法では、上記のように塩漬期間が2〜3週間と長く、冷蔵庫スペースを多くとるばかりでなく、製品の塩分も高くなりがちで、かつ塩分の個体毎のバラツキも大きい。湿塩漬法では、塩漬期間は乾塩漬法よりも多少短縮されるものの約2週間と長く、塩分の個体毎のバラツキも乾塩漬法と同様に大きい。1本針注入法によると、生ハム類の製造期間が約2週間であり、その製造期間が3〜4週間である乾塩漬法や湿塩漬法に比べて、製造期間の点では優れているものの、手作業で肉塊にまんべんなく塩漬け液を所定量1本針で注入しなければならないことから生産性が悪い上に、その作業には熟練を要し、到底効率的な生産法といいうるものではなかった。
塩漬工程に改良を加え、或いは塩漬工程後特定の処理をして、短期間で効率的にハム等を生産するその他の方法として、原料肉にスターターカルチャー(乳酸菌等)を添加し、15℃以上50℃以下の温度で塩漬、熟成する方法(例えば、特許文献1参照)や、塩漬調味料で原料肉を塩漬処理し、次いで塩漬された肉を加圧しながら、熟成/乾燥を行う工程を含む生ハム類の製造方法(例えば、特許文献2参照)や、原料肉を塩漬調味料で塩漬処理した後、真空脱気包装機により真空パックして、その状態を維持することにより塩漬・熟成を施す生ハム類の製造方法(例えば、特許文献3参照)が知られている。
また、予め0℃以下の未凍結温度領域中に保持した食品素材を適宜の温度帯で1次加工処理した後、更に、0℃以下の未凍結温度領域の環境下にて2次加工処理を施す氷温加工食品の製造方法(例えば、特許文献4参照)が知られている。
一方、従来、原料肉は凍結状態で流通されており、製造前に0〜10℃で空気解凍するか又は0〜10℃の水をかけることによって解凍が行われているが、凍結された原料肉を解凍することなく、凍結状態の原料肉に塩漬調味料を接触させ、塩漬調味料中の塩による氷点降下作用を利用して、マイナス温度帯で原料肉を解凍しながら塩漬調味料を原料肉中に浸透させる生ハム等の非加熱食肉製品の製造技術は知られていなかった。
特開昭62−91163号公報 特開平11−266782号公報 特開2003−210140号公報 特開平11−182577号公報
本発明の課題は、凍結状態の原料肉を、完全に解凍することなくマイナス温度帯で塩漬工程を実施し、その後整形工程及び熟成乾燥工程を含む工程により生ハム類を製造することにより、食味の優れた生ハム等の非加熱食肉製品を小規模で短期間に、低コストで製造する方法を提供することにある。
水は0℃で凍結するが、塩類の濃度が高くなるにつれて氷点は徐々に降下していく氷点降下作用はよく知られており、塩(NaCl)の場合は飽和濃度との関係で約−21℃まで氷点が降下する。本発明者は、凍結食肉原料を用いて、塩漬工程等を含む生ハム等の非加熱食肉製品の製造方法において、従来のように凍結食肉原料を水により又は空気中で完全に解凍することはせず、凍結状態の原料肉に塩漬調味料を直接接触させ、塩漬調味料中の塩による氷点降下作用を利用して、マイナス温度帯で原料肉を解凍していくと、肉中の氷結晶に塩が直接接触し、マイナス温度でも氷を溶かしながら、塩分が肉中に浸透し、氷結晶により肉中にできた氷の導管を通り、肉組織中に復水しながら塩漬剤が浸透し塩漬が促進するという知見を偶然に見いだし、その結果、所望の生ハム類を短期間に製造することができることを確認し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、(1)塩漬工程、整形工程及び熟成乾燥工程を備えた非加熱食肉製品の製造方法において、凍結状態の原料肉に塩漬調味料を直接接触させ、塩漬調味料中の塩による氷点降下作用を利用して、マイナス温度帯で原料肉を解凍しながら塩漬調味料を原料肉中に浸透させる塩漬工程を採用することを特徴とする非加熱食肉製品の製造方法や、(2)原料肉のマイナス温度帯が−20.0℃〜−1.0℃であることを特徴とする上記(1)記載の非加熱食肉製品の製造方法や、(3)原料肉のマイナス温度帯が−6.0℃〜−3.0℃であることを特徴とする上記(2)記載の非加熱食肉製品の製造方法に関する。
また本発明は、(4)塩漬工程が、凍結状態の原料肉に固体状の塩漬調味料を塗布することにより直接接触させる乾塩漬工程であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の非加熱食肉製品の製造方法や、(5)塩漬工程が、凍結状態の原料肉を液体状の塩漬調味料に浸漬することにより直接接触させる湿塩漬工程であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の非加熱食肉製品の製造方法や、(6)熟成乾燥工程が、乾燥開始時に湿度を高めに保持し、過乾燥を防止すると共に、乾燥により奪われる気化熱を抑え、安定した原料肉温で熟成を促進することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか記載の非加熱食肉製品の製造方法に関する。
さらに本発明は、(7)湿度が60〜90%であることを特徴とする上記(6)記載の非加熱食肉製品の製造方法や、(8)非加熱食肉製品が生ハム類であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか記載の非加熱食肉製品の製造方法や、(9)上記(1)〜(8)のいずれか記載の製造方法により製造された非加熱食肉製品に関する。
本発明によると、凍結状態の原料肉に塩漬調味料を直接接触させ、塩漬調味料中の塩による氷点降下作用を利用して、マイナス温度帯で原料肉を解凍しながら塩漬調味料を原料肉中に浸透させることで、塩漬調味料中の塩分が迅速に均一に浸透させることができ、食味や品質の優れた生ハム等の非加熱食肉製品を、特別な装置を必要とすることなく低コストで、かつ短期間に得ることができる。
本発明の非加熱食肉製品の製造方法としては、凍結状態の原料肉に塩漬調味料を直接接触させ、塩漬調味料中の塩による氷点降下作用を利用して、マイナス温度帯で原料肉を解凍しながら塩漬調味料を原料肉中に浸透させる塩漬工程と、整形工程と、熟成乾燥工程とを備えた方法であれば特に制限されず、上記非加熱食肉製品としては、生ハム、生ベーコン、生サラミ等の、原料肉を塩漬して乾燥、熟成させた食肉製品を例示することができるが、特に生ハムを好適に例示することができる。また、上記原料肉としては、豚肉、牛肉、馬肉、めん羊肉、やぎ肉等の畜肉、家禽肉等の部分肉を使用することができる。特に、生ハムとして、豚肉の部分肉、例えば、結合組織からなる硬い膜状の層が存在する外モモや肩ロース等の食肉塊や、赤身と脂肪が交互に層状となっており、結合組織からなる硬い膜状の層が存在するバラ肉等の食肉塊を原料肉として好適に例示することができる。
上記マイナス温度帯とは、原料肉における肉塊全体が平均してマイナス温度を示し、凍結する温度帯であり、かつ、塩漬調味料中の塩による氷点降下作用を利用して凍結原料肉を解凍しうる温度帯であり、雰囲気圧力にもよるが、具体的には−21.0℃〜0℃、好ましくは−20.0℃〜−1.0℃、より好ましくは−10.0℃〜−3.0℃、特に好ましくは−6.0℃〜−3.0℃、中でも−5℃〜−4℃を好適に例示することができる。例えば、−25.0℃前後の凍結原料肉は、事前に冷蔵庫内で自然解凍にて−5℃〜−4℃のマイナス温度帯に温度コントロールしておくことが好ましい。
本発明の製造方法における塩漬工程として、乾塩漬法や湿塩漬法を適用することができ、いずれの塩漬法においても、凍結状態の原料肉に塩漬調味料を直接接触させ、塩漬調味料中の塩による氷点降下作用を利用して、マイナス温度帯で原料肉を解凍しながら塩漬調味料を原料肉中に浸透させると、原料肉中の氷結晶に塩漬調味料中の塩が直接接触し、凍結原料肉中の氷を溶かしながら、塩分が肉中に浸透していき、氷結晶により肉中にできた氷の導管を通り、肉組織中に復水しながら塩漬剤が浸透し塩漬が促進される。これに対して、解凍肉や未凍結肉では導管がふさがれているので、むしろ塩漬調味料が浸透しにくい。このように、凍結状態の原料肉に塩漬調味料を直接接触させる本発明の乾塩漬法を採用すると、従前の乾塩漬法に比べて塩漬期間を半分以下に短縮することができる。
塩漬工程に乾塩漬法を適用した乾塩漬工程は、凍結状態の原料肉に固体状の塩漬調味料を塗布することにより直接接触させることによって、塩による氷点降下作用を利用し、マイナス温度帯でも肉を解凍しながら塩漬調味料を原料肉中に迅速に浸透させる工程である。例えば、生ハムの製造に乾塩漬法を適用すると、ハム原木1本毎の塩漬となるため、塩漬調味料(塩漬剤)をハム原木1本単位で計量して塩漬剤を塗布し、ハム原木1本単位でシートに包んで塩漬することができ、生ハム製品中の塩分のバラツキが軽減される。加えて、肉繊維を考慮した塩漬(例えば、ロースモモ側は肉線維が縦方向に配置しているため塩がロース肩側に比べて浸透しやすい)も可能となり、生ハム製品中の塩分のバラツキを抑制することができる。その結果、約1週間で脂肪に近い赤肉部分まで塩漬剤を浸透させることができ、脂肪部分も塩漬剤とドリップからできたピックル液で塩漬される上に、従前の乾塩漬法では解凍時に流出する肉中成分が肉中に保持される結果、新鮮な肉色が維持され、肉の旨みや甘みが引き出され、塩馴れ効果も促進される。
上記乾塩漬工程における具体的な操作について説明する。先ず、−25℃前後の凍結原料肉塊(例えば豚肩ロース)を冷蔵庫内で調温し、前記肉塊の温度を−10.0℃〜−3.0℃(例えば、−5.0℃±1.0℃)に温度コントロールする。次に、前記豚肩ロース原木1本毎に例えば手により、予め肉塊の重量に応じて計量しておいた塩漬調味料の摺り込みを開始する。豚肩ロースに塩漬調味料が均一に浸透するように盛り塩量を部分的に変えながら、例えば、両端は約5cm塗布せず、厚み一定でモモ側から肩側にかけて幅を少しずつ狭くしながら盛り塩する。盛り塩した後、シートで包み一部開放しておき、低温で4〜7日間静置する。この間、マイナス温度帯にある肉中においては、氷結晶に塩が触れ、マイナス温度でも氷を溶かしながら、塩分が肉中に浸透していく。氷結晶により肉中にできた氷の導管を通り、肉組織中に復水しながら塩漬剤が浸透し塩漬が進む。シートの一部開放した部分から肉より浸出したドリップを落下させ、塩漬を完了する。
次に、肉塊の形状安定のため、モールド充填(整形工程)し、湿度の高い乾燥室に保管し、さらにスモークハウスで冷燻スモークする。スモーク後さらに乾燥室で、1〜3日間熟成促進を行う。
塩漬工程に湿塩漬法を適用した湿塩漬工程は、凍結状態の原料肉を液体状の塩漬調味料に浸漬することにより直接接触させることによって、塩による氷点降下作用を利用し、マイナス温度帯でも肉を解凍しながら塩漬調味料を原料肉中に迅速に浸透させる工程である。例えば、生ハムの製造に湿塩漬法を適用する場合、凍結状態から徐々に塩漬調味料(ピックル液)を肉中に浸透させることによって、生ハム製品中の塩分のバラツキが軽減される。その結果、約1週間で脂肪に近い赤肉部分まで塩漬剤を浸透させることができ、脂肪部分も塩漬剤とドリップからできたピックル液で塩漬される上に、従前の湿塩漬法では解凍時に流出する肉中成分が肉中に保持される結果、新鮮な肉色が維持され、肉の旨みや甘みが引き出され、塩馴れ効果も促進される。
上記湿塩漬工程における具体的な操作について説明する。先ず、−25℃前後の凍結原料肉塊(例えば豚肩ロース)を冷蔵庫内で調温する。前記肉塊の肉中心部の温度を−10.0℃〜−3.0℃(例えば、−4.0℃±0.5℃)に温度コントロールする。次に、豚ロース原木が50本前後収容できる程度の容器に、氷結晶による結合防止のため1本毎に仕切られた2段の仕切り枠に、肩側を上にして縦に吊るして入れ、塩漬溶液を豚ロースの肩口に掛けながらロース肩側がピックル液に浸る水位まで塩漬溶液を入れる。この状態で静置し、この間マイナス温度帯で塩漬熟成させる。該熟成により肉の旨味、甘味を引き出し、塩馴れ効果を促進させる。10日前後の後に、塩漬溶液を抜き、約24時間静置し、上記乾塩漬工程と同様にモールド充填、冷燻、乾燥する。
塩漬工程において、塩漬処理のための塩漬調味剤は、通常の食塩の他に、発色剤(亜硝酸ナトリウム等)、調味料(例えばアミノ酸)、香辛料(例えばブラックペッパー、ガーリック)、糖類(例えばビートグラニュ糖)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、その塩)等を含んでいることが好ましい。また、塩漬調味料の必須成分である食塩は、天然天日塩、海洋深層水塩、精製塩等を使用することができるが、ミネラル成分を含み見かけ比重の小さい湿った海洋深層水塩等を一部利用するか又はその全てを用いることが好ましい。
本発明の非加熱食肉製品の製造方法における整形工程としては、塩漬肉をモールド充填する従来公知の方法を挙げることができる。
本発明の非加熱食肉製品の製造方法における熟成乾燥工程としては、乾燥開始時に湿度を高めに保持し、過乾燥を防止すると共に、乾燥により奪われる気化熱を抑え、安定した原料肉温で熟成を促進する工程であれば特に制限されず、高めの湿度としては、50%以上、好ましくは60〜90%を例示することができる。また、この熟成乾燥工程においては、熟成乾燥庫内の乾燥しやすい位置や部位がないように均一に乾燥することが好ましい。熟成乾燥庫内の温度は室温でよく、熟成乾燥期間は通常3〜5日である。また、熟成乾燥工程において、冷燻スモークすることもできる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[乾塩漬法]
(塩漬工程)
−25℃前後に凍結した豚ロースを冷蔵庫内に静置し、調温し、豚ロース肉の肉温を−5.0℃±1.0℃に温度コントロールした。ロース原木1本毎に重量測定し、3つに重量別に区分する。一定の塩漬調味剤が豚ロースに盛り塩できるように塩漬調味剤の重量もそれぞれ測定しておく。塩漬調味剤は、塩(海洋深層水塩) 8重量%、香辛料 0.2重量%、糖類 3重量%、L−アスコルビン酸ナトリウム 0.1重量%、亜硝酸Na 0.24重量%からなり、ロース原木1本あたり約100g/kgの割合で用いる。肉がマイナス温度帯にある豚ロースに、必要量の塩漬調味料を手で赤身部分全体に塗布、摺り込んだ。モモ側と肩側では、これらの端2〜3cmを除いて端から塗布、摺り込み、肩側よりモモ側に多く盛り塩した。このようにして、肉の体積に応じて塩漬調味料の量を加減し、均一に塩漬がなされるようにした。塩漬調味料を塗布、盛り塩した後シートでロール包みをし両サイドは開放しておき、また、網台車最下段にシートを敷き落下ドリップを受けるようにした。赤身を上にして網台車に積載し1℃〜5℃の室温に5日間静置し、塩漬を完了した。
(整形工程)
塩漬肉からシートをとり、肉表面の残塩を洗い落とし、異物を除去した。次いで、塩漬肉をモールド充填し、網台車に懸垂し、室温18±2℃、湿度70%±10%の乾燥室に入れ、その後24時間静置した。
(熟成乾燥工程)
モールドを外し、塩漬肉同士が接触しないように、網台車に懸垂しスモークハウスに入れ、20℃以下で冷燻スモークした。スモークされた網台車のまま室温18℃±2℃、湿度70%±10%の乾燥室に入れ、シートで覆って、約48時間熟成促進させた。次いで、シートを取り約48時間上記乾燥条件で乾燥した。以上の工程のように、塩漬工程では、マイナス温度帯で肉を解凍しながら、塩漬調味剤を肉全体に盛り塩することにより、凍結前の肉成分が保持され新鮮な肉色を維持し、しっとりした美味を引き出している。塩漬には、機械設備を使用しないのでコストが安く済み、環境にも優しい。また、塩漬後低温で、湿度を高めた状態で熟成したことから、アミノ酸生成を増加させ旨味を引き出し、従来の生ハムに比べてより美味しく感ぜられた。
[湿塩漬法]
(塩漬工程)
−25℃前後に凍結した豚ロースを冷蔵庫内(+1.5℃±1℃)で6日間静置し、調温し、湿塩漬時の肉温を、−4℃±0.5℃に温度コントロールする。浸漬方法は、400リットルの大型容器(以下、「ジャンボックス」という)を用いて、複数本の豚ロース原木が氷温による結合防止のため個別に嵌入しうるように2段の仕切り枠をジャンボックスに取りはずし可能に設置しておく。ジャンボックスに棒状の豚ロース原木55本を収容し、豚ロースの量に応じて塩漬液(以下、「ピックル液」という)を必要量ジャンボックスに注いだ。このときの肉温は、−3.9±0.5℃を示した。ピックル液の組成は、水1リットル中に塩(海洋深層水塩) 17重量%、香辛料 1重量%、糖類 20重量%、L−アスコルビン酸ナトリウム 0.1重量%、亜硝酸Na 0.2重量%含有する溶液を用いた。浸漬3日目で、肉温中心−4.1℃±0.3℃を示し、5日目で肉温モモ側−3.5℃、中心−3.8℃、肩側−3.9℃、ピックル液−3.5℃を示し、6日目で、肉、ピックル液ともに−3.0℃〜−3.5℃のため、5℃の室内に9時間静置した。次いで7日目は、室温0℃にて静置し、8日目では、肉、ピックル液とも−2.5℃〜−3.2℃とマイナス温度を示したが肉全体氷結晶の硬さは見られなかった。10日目でピックル液をジャンボックスから抜き、枠を底部に敷きその上に豚ロースを並べ重ね、シートを被せて静置し、11日目も、同様に静置した。
(整形工程)
塩漬肉からシートをとり、異物、脂肪、肉質のチェックを行い、次いで、塩漬肉をモールド充填し、網台車に懸垂し、室温18±2℃、湿度70%±10%の乾燥室に入れ、その後24時間静置した。
(熟成乾燥工程)
モールドを外し、塩漬肉同士が接触しないように、網台車に懸垂しスモークハウスに入れ、20℃以下で冷燻スモークした。スモークされた網台車のまま室温18℃±2℃、湿度70%±10%の乾燥室に入れ、シートで覆って、約48時間熟成促進させた。次いで、シートを取り約48時間上記乾燥条件で乾燥した。以上の工程により、得られた生ハムは、マイナス温度帯で塩漬熟成させることで塩分が肉全体に均一に浸透し、また、塩漬後低温で、湿度を高めた状態で熟成したことも相まって、旨味が増し、しっとりとした従来の生ハムに比べて美味しい生ハムを得ることができた。

Claims (9)

  1. 塩漬工程、整形工程及び熟成乾燥工程を備えた非加熱食肉製品の製造方法において、凍結状態の原料肉に塩漬調味料を直接接触させ、塩漬調味料中の塩による氷点降下作用を利用して、マイナス温度帯で原料肉を解凍しながら塩漬調味料を原料肉中に浸透させる塩漬工程を採用することを特徴とする非加熱食肉製品の製造方法。
  2. 原料肉のマイナス温度帯が−20.0℃〜−1.0℃であることを特徴とする請求項1記載の非加熱食肉製品の製造方法。
  3. 原料肉のマイナス温度帯が−6.0℃〜−3.0℃であることを特徴とする請求項2記載の非加熱食肉製品の製造方法。
  4. 塩漬工程が、凍結状態の原料肉に固体状の塩漬調味料を塗布することにより直接接触させる乾塩漬工程であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の非加熱食肉製品の製造方法。
  5. 塩漬工程が、凍結状態の原料肉を液体状の塩漬調味料に浸漬することにより直接接触させる湿塩漬工程であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の非加熱食肉製品の製造方法。
  6. 熟成乾燥工程が、乾燥開始時に湿度を高めに保持し、過乾燥を防止すると共に、乾燥により奪われる気化熱を抑え、安定した原料肉温で熟成を促進することを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の非加熱食肉製品の製造方法。
  7. 湿度が60〜90%であることを特徴とする請求項6記載の非加熱食肉製品の製造方法。
  8. 非加熱食肉製品が生ハム類であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の非加熱食肉製品の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか記載の製造方法により製造された非加熱食肉製品。
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