JP2010150536A - ポリマー、ポリマーを含む高分子電解質及びそれを用いてなる燃料電池 - Google Patents

ポリマー、ポリマーを含む高分子電解質及びそれを用いてなる燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】ラジカル耐久性に優れ、且つ、プロトン伝導性に優れる高分子電解質膜を与えるポリマーを提供すること。
【解決手段】主鎖が、実質的に複数の芳香環が直接結合で連結してなるポリアリーレン構造であり、
該芳香環の一部又は全部に−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基が直接結合し、
さらに該芳香環は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基からなる群より選ばれる1種以上の基で置換されていてもよく、
ポリスチレン換算の数平均分子量が10000を越えることを特徴とするポリマー。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリマー、ポリマーを含む高分子電解質及びそれを用いてなる燃料電池に関するものである。
高分子電解質は固体高分子型燃料電池に用いられている。固体高分子型燃料電池(以下、「燃料電池」と略記することがある。)は、水素と酸素との化学的反応により発電する発電装置であり、次世代エネルギーの一つとして電気機器産業や自動車産業等の分野において大きく期待されている。燃料電池の高分子電解質膜として、従来のフッ素系高分子電解質に代わって、安価で、耐熱性に優れた炭化水素系高分子電解質が近年注目されてきている。フッ素系高分子電解質と同様に、強酸基であるスルホン酸基を有する炭化水素系高分子電解質は、実用的に高いプロトン伝導性を示すことが知られている。
その一方で、スルホン酸基を有する炭化水素系高分子電解質からなる膜は、フッ素系高分子電解質からなる膜と比較して、燃料電池の長期の運転安定性(以下、「長期安定性」と呼ぶ)が十分ではないことが指摘されている。この長期安定性を妨げる要因としては、様々の原因が推定されているが、その1つとして、電池稼動時に発生する過酸化物(例えば、過酸化水素等)または該過酸化物から発生するラジカルによる膜の劣化が知られている。それゆえ、高分子電解質膜の過酸化物やラジカルに対する耐久性(以下、「ラジカル耐性」と呼ぶ)を向上させることが、固体高分子型燃料電池の長期安定性に繋がる1つの対策とされている。
これまでに、ラジカル耐性に優れた炭化水素系高分子電解質を提供することを目的として、例えば、ポリエーテル系芳香族高分子に、ホスホン酸基が導入された芳香族系高分子ホスホン酸類が開示されている(例えば、特許文献1など)。
特開2000−11756号公報
しかしながら、上記芳香族系高分子ホスホン酸類は、ラジカル耐久性においては優れるものの、プロトン伝導性においては、十分に満足できるものではなかった。該芳香族系高分子ホスホン酸類を固体高分子型燃料電池の高分子電解質として適用する際には、例えば、該芳香族系高分子ホスホン酸類と、上記スルホン酸基を有する炭化水素系高分子電解質とを混合する必要があった。また、該高分子電解質において、プロトン伝導性を高めるために、スルホン酸基を有する炭化水素系高分子電解質の含有量を増やすと、相対的に芳香族系高分子ホスホン酸類の含有量が減るため、ラジカル耐久性に、十分な性能が得られないことがあった。従って、ラジカル耐久性に優れ、且つ、プロトン伝導性に優れる高分子電解質膜を与えるポリマーの開発が望まれていた。
このような状況下、本発明の目的は、ラジカル耐久性に優れ、且つ、プロトン伝導性に優れる高分子電解質膜を与えるポリマー、該ポリマーを含む高分子電解質及びそれを用いてなる燃料電池を提供することにある。
本発明者らは上記の事情に鑑み、ラジカル耐久性に優れ、且つ、プロトン伝導性に優れる高分子電解質膜を与えるポリマーについて、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は[1]を提供するものである。
[1]主鎖が、実質的に複数の芳香環が直接結合で連結してなるポリアリーレン構造であり、
該芳香環の一部又は全部に−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基(R1は、水素原子、無機カチオン、有機カチオン、アルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R2は、水素原子、無機カチオン、有機カチオン、アルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)が直接結合し、
さらに該芳香環は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基からなる群より選ばれる1種以上の基で置換されていてもよく、
ポリスチレン換算の数平均分子量が10000を越えることを特徴とするポリマー。
本発明は、前記[1]に係る好適な実施態様として、下記の[2]〜[13]を提供するものである。
[2]前記直接結合で連結した芳香環のうち、−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基(R1、R2は前記と同じである。)が直接結合している芳香環の割合が20モル%以上であることを特徴とする[1]に記載のポリマー。
[3]下記式(1)で表される構造単位を有することを特徴とする[1]又は[2]に記載のポリマー。
Figure 2010150536
(式中、Ar1は、アリーレン基を表し、Ar1の主鎖を構成する芳香環には、少なくとも一つの−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基(R1、R2は前記と同じである。)が結合する。該アリーレン基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基からなる群より選ばれる1種以上の基で置換されていてもよい。)
[4]前記式(1)で表される構造単位が、下記式(2)で表される構造単位であることを特徴とする[3]記載のポリマー。
Figure 2010150536
(式中、R1、R2は前記と同じである。R3は、水素原子、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基から選ばれる基を表す。pは1以上3以下の整数であり、qは0以上3以下の整数であり、p+qは4である。なお、pが2以上である場合、複数あるR1、R2は同一でも異なっていてもよく、qが2以上である場合、複数あるR3は同一でも異なっていてもよい。
[5]前記式(1)で表される構造単位が、下記式(3)で表される構造単位であることを特徴とする[3]記載のポリマー。
Figure 2010150536
(式中、R1、R2、R3、p、qは前記と同じである。)
[6]前記R1およびR2が、水素原子であることを特徴とする[4]又は[5]に記載のポリマー。
[7]前記ポリアリーレン構造が、芳香環同士の結合の総数を100%としたとき、直接結合の割合が80%以上の構造であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のポリマー。
[8][1]〜[7]のいずれかに記載のポリマーを含むことを特徴とする高分子電解質。
[9][8]に記載の高分子電解質を含むことを特徴とする高分子電解質膜。
[10][8]に記載の高分子電解質と触媒成分とを含むことを特徴とする触媒組成物。
[11][9]に記載の高分子電解質膜を有することを特徴とする膜−電極接合体。
[12][10]記載の触媒組成物を含む触媒層を有することを特徴とする膜−電極接合体。
[13][11]又は[12]に記載の膜−電極接合体を有することを特徴とする高分子電解質型燃料電池。
本発明のポリマーは、ラジカル耐久性に優れ、且つ、プロトン伝導性に優れる高分子電解質膜を与えるため、スルホン酸基を有する炭化水素系高分子電解質等と混合することなく、単独で固体高分子型燃料電池の高分子電解質膜の原料として用いることができ、工業的に有利である。また、これに限定されず、本発明のポリマーは、スルホン酸基を有する炭化水素系高分子電解質等と混合し、これを用いることによっても、ラジカル耐久性に優れ、且つ、プロトン伝導性に優れる高分子電解質膜を与える高分子電解質膜を得ることができる。
なお、本発明に係るポリマーは、特に燃料電池に用いて好適であるが、燃料電池用に限定されるものではなく、ラジカル耐久性やプロトン伝導性などの特性を必要する様々な用途に用いることができる。本発明のポリマーは、長期安定性に優れた燃料電池を与えるので、本発明は工業的に極めて有利である。
本発明のポリマーは、主鎖が実質的に複数の芳香環が直接結合で連結してなるポリアリーレン構造であり、ポリマー主鎖を構成している芳香環の一部又は全部に直接結合している−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基を有し、且つポリスチレン換算の数平均分子量が10000を越えることを特徴とする。
ここで、上記ポリアリーレン構造について説明する。本発明のポリマーは、主鎖を構成している芳香環同士が実質的に直接結合で結合されている形態であり、ポリマー主鎖を構成している芳香環同士の結合の総数に対する直接結合の割合が多いほど、よりプロトン伝導性の向上が図れる傾向があるため好ましく、具体的にいうと、前記ポリアリーレン構造が、該芳香環同士の結合の総数を100%としたとき、直接結合の割合が80%以上の構造であると好ましく、90%以上の構造であるとより好ましく、95%以上の構造であるとさらに好ましい。なお、直接結合以外の結合とは、芳香環同士が2価の原子又は2価の原子団で結合している形態である。2価の原子としては、例えば、−O−、−S−で示される基などがあげられ、2価の原子団としては、例えば、−C(CH32−、−C(CF32−、−CH=CH−、−SO2−、−CO−で示される基などがあげられる。
また、本発明者はポリマーにある−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基は該ポリマーの主鎖を構成する芳香環に直接結合している方が、高度のプロトン伝導性と優れた耐ラジカル性とを両立させる点で有利であることを見出した。したがって、該ポリマーにおける−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基を有する芳香環のうち、−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基が直接結合しているポリマーの主鎖を構成している芳香環の割合が多いほうが、プロトン伝導性に優れたプロトン伝導膜が得られる傾向がある。前記直接結合で連結した芳香環の合計を100モル%としたとき、−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基が直接結合している芳香環の割合が20モル%以上であると好ましく、30モル%以上であるとさらに好ましく、50モル%以上であるとより好ましい。なお、燃料電池用部材として使用する際には、実質的に−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基の全てが遊離酸の形態であることが好ましい。ここで、「ポリマーの主鎖」または「主鎖」とは、本発明においては、ポリマーを形成する最も長い鎖のことをいう。この鎖は共有結合により相互に結合した炭素原子から構成されていて、その際、この鎖は、窒素原子、酸素原子等により中断されていてもよい。また、「ポリマーの主鎖を構成する芳香環」または「ポリマーの主鎖を構成している芳香環」とは、芳香族環の有する結合手のうち、2本がポリマーの主鎖の一部を構成している芳香環のことをいう。
上記R1、R2はそれぞれ独立に水素原子、無機カチオン、有機カチオン、アルキル基またはアリール基を表す(なおR1、R2が複数存在する場合、複数存在するR1、R2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)。
無機カチオンの代表例としては、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン等のアルカリ金属カチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン等のアルカリ土類金属カチオン、アンモニウムイオン等があげられるがこれらに限定されるものではない。これらの中でも、アルカリ金属カチオンであることが好ましい。
有機カチオンの代表例としては、第1級アンモニウムカチオン、第2級アンモニウムカチオン、第3級アンモニウムカチオン、第4級アンモニウムカチオンなどがあげられるがこれらに限定されるものではない。第1級アンモニウムカチオンとしては、メチルアミン、エチルアミン、1−プロピルアミン、2−プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−ブチルアミン、1−ペンチルアミン、2−ペンチルアミン、3−ペンチルアミン、ネオペンチルアミン、シクロペンチルアミン、1−ヘキシルアミン、2−ヘキシルアミン、3−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミンがプロトン化されたカチオンなどがあげられる。第2級アンモニウムカチオンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−1−プロピルアミン、ジ−2−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−2−ブチルアミン、ジ−1−ペンチルアミン、ジ−2−ペンチルアミン、ジ−3−ペンチルアミン、ジネオペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジ−1−ヘキシルアミン、ジ−2−ヘキシルアミン、ジ−3−ヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンがプロトン化されたカチオンなどがあげられる。第3級アンモニウムカチオンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−1−プロピルアミン、トリ−2−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−2−ブチルアミン、トリ−1−ペンチルアミン、トリ−2−ペンチルアミン、トリ−3−ペンチルアミン、トリネオペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリ−1−ヘキシルアミン、トリ−2−ヘキシルアミン、トリ−3−ヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミンがプロトン化されたカチオンなどがあげられる。第4級アンモニウムカチオンとしては、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラ(1−プロピル)アンモニウムカチオン、テトラ(2−プロピル)アンモニウムカチオン、テトラ(1−ブチル)アンモニウムカチオン、テトラ(2−ブチル)アンモニウムカチオン、テトラ(1−ペンチル)アンモニウムカチオン、テトラ(2−ペンチルアミン)アンモニウムカチオン、テトラ(3−ペンチル)アンモニウムカチオン、テトラ(ネオペンチル)アンモニウムカチオン、テトラ(1−シクロペンチル)アンモニウムカチオン、テトラ(1−ヘキシル)アンモニウムカチオン、テトラ(2−ヘキシル)アンモニウムカチオン、テトラ(3−ヘキシルアミン)アンモニウムカチオン、テトラ(シクロヘキシル)アンモニウムカチオンなどがあげられる。これらの中でも、好ましくは第1級アンモニウムカチオンであり、第1級アンモニウムカチオンの中でも、メチルアミン、エチルアミンが好ましい。
アルキル基またはアリール基は一部、他の基で置換されていてもよく、アルキル基の代表例としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-ペンチル基、イソオクチル基、t-オクチル基、2-エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、1-メチルシクロペンチル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-メチル-4-イソプロピルシクロヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等があげられるがこれらに限定されるものではない。また代表的な前記のアリール基としては、例えばフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−メトキシフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ジフェニルプルピル基、フルオレニル基、などの炭化水素系の基、カルバゾール基、チオフェン基、ジベンゾチオフェン基、フリル基、ジベンゾフリル基、ジフェニルアミノ基、4−フェノキシフェニル基のようなヘテロ原子を含む基などがあげられるがこれらに限定されるものではない。これらの中でも、アルキル基であることが好ましく、アルキル基の中でも、エチル基が好ましい。
これらの中でも、上記R1及びR2は、水素原子であることが好ましい。
上記−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基としては、−(P(=O)(OH)(OH))、−(P(=O)(ONa)(OH))、−(P(=O)(ONa)(ONa))、−(P(=O)(OMe)(OH))、−(P(=O)(OMe)(OK))、−(P(=O)(OEt)(OH))、−(P(=O)(OEt)(OLi))、−(P(=O)(OPh)(OH))、−(P(=O)(O−n−Bu)(OH)、−(P(=O)(OMe)(OMe))、−(P(=O)(OEt)(OEt))、−(P(=O)(OPh)(OPh))、−(P(=O)(O−n−Bu)(O−n−Bu))などがあげられ、これらの中でも、化学的耐久性向上効果を確保し、プロトン伝導度を確保する観点から、ホスホン酸基:−(P(=O)(OH)(OH))であることが好ましい。但し、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示し、n−Buはn−ブチル基を示し、Phはフェニル基を示す。
本発明のポリマーは、主鎖を構成している芳香環の一部又は全部に、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基からなる群より選ばれる1種以上の基(以下場合により、「芳香環置換基」という。)を有してもよく、有さなくてもよい。本発明のポリマーは、プロトン伝導性を高める観点から、芳香環置換基を有さないことが好ましい。本明細書において、「置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基」は、置換基を有する炭素数1〜20のアルキル基及び置換基を有さない炭素数1〜20のアルキル基を意味する。アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基についても、「置換基を有してもよい」はアルキル基と同じ意味である。
置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の炭素数1〜20のアルキル基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換され、その総炭素数が20以下であるアルキル基があげられる。
置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、イコシルオキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換され、その総炭素数が20以下であるアルコキシ基があげられる。
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、アントラセニル基等のアリール基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換され、その総炭素数が20以下であるアリール基があげられる。
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基、ナフチルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、アントラセニルオキシ基等のアリールオキシ基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換され、その総炭素数が20以下であるアリールオキシ基があげられる。
置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基としては、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基等の炭素数2〜20のアシル基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換され、その総炭素数が20以下であるアシル基があげられる。
本発明のポリマーとしては、下記式(1)で示される構造単位を含むものが好ましい。
Figure 2010150536
ここで、Ar1はアリーレン基を表し、Ar1の主鎖を構成する芳香環に、少なくとも一つの−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基が直接結合しているアリーレン基である。(R1は、水素原子、無機カチオン、有機カチオン、アルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R2は、水素原子、無機カチオン、有機カチオン、アルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)このアリーレン基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基からなる群より選ばれる1種以上の基で置換されていてもよい。
式(1)に有していてもよい任意の基、すなわち、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基及びアシル基の例示は、上記芳香環置換基として例示したものと同じである。
上記式(1)におけるAr1としては、例えば、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基等の2価の単環性芳香族基、1,3−ナフタレンジイル基、1,4−ナフタレンジイル基、1,5−ナフタレンジイル基、1,6−ナフタレンジイル基、1,7−ナフタレンジイル基、2,6−ナフタレンジイル基、2,7−ナフタレンジイル基等の2価の縮合環芳香族基、ピリジンジイル基、キノキサリンジイル基、チオフェンジイル基等の2価の芳香族複素環基に−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基が直接芳香環に結合したものがあげられる。これらの中でもAr1としては、2価の単環性芳香族基に−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基が直接結合したものが好ましい。
式(1)としては、例えば下記式(aa)〜(aq)のような構造単位があげられる。(式中、−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基以外の置換基は省略した。)

Figure 2010150536
これらの中でも、(aa)、(ab)が好ましい。
好適な単環性芳香族基を有する式(1)で示される構造単位として、下記式(2)で表される構造単位が好ましい。このような構造単位は、後述する本発明のポリマーの製造において、市場から容易に入手できる原料を用いることができたり、本発明のポリマーの製造に使用する原料の製造自体が容易という利点がある。
Figure 2010150536
(R1は、水素原子、無機カチオン、有機カチオン、アルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R2は、水素原子、無機カチオン、有機カチオン、アルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
式中、R3は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基から選ばれる置換基を表す。pは1以上3以下の整数であり、qは0以上3以下の整数であり、p+qは4以下の整数である。なお、qが2以上である場合、複数あるR3は同一でも異なっていてもよい。
なお、−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基の結合数を表すpは1又は2であると、より好ましい。
なお、式(2)におけるR3で表される基、すなわち、アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びアシル基の例示は上記芳香環置換基として例示したものと同じであり、このようなR3は、後述のポリマーの製造(重合反応)において、その重合反応を阻害しないようなものを選択すると好ましい。
前記式(2)で表される構造単位としては、下記式(3)で表される構造単位が好ましい。
Figure 2010150536
(式中、R1、R2、R3、p、qは前記と同じである。)
本発明のポリマーは、主鎖に、前記式(1)示される構造単位以外の構造単位を有していてもよく、該構造単位としては、例えば、下記式(4)があげられる。

Figure 2010150536

ここで、Ar2はアリーレン基を表し、このアリーレン基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基からなる群より選ばれる1種以上の基で置換されていてもよい。
式(4)に有していてもよい任意の基、すなわち、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基及びアシル基の例示は、上記芳香環置換基として例示したものと同じである。
上記式(4)におけるAr2としては、例えば、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基等の2価の単環性芳香族基、1,3−ナフタレンジイル基、1,4−ナフタレンジイル基、1,5−ナフタレンジイル基、1,6−ナフタレンジイル基、1,7−ナフタレンジイル基、2,6−ナフタレンジイル基、2,7−ナフタレンジイル基等の2価の縮合環芳香族基、ピリジンジイル基、キノキサリンジイル基、チオフェンジイル基等の2価の芳香族複素環基があげられる。これらの中でもAr2としては、単環性芳香族基が好ましい。
式(4)としては、例えば下記式(ba)〜(be)のような構造単位があげられる。(式中、置換基は省略した。)
Figure 2010150536
これらの中でも、(ba)が好ましい。
また、本発明のポリマーは、主鎖に、下記式(7)で示される構造を有することが好ましい。

Figure 2010150536

ここで、Ar11〜Ar15は、それぞれ独立にアリーレン基を表し、該アリーレン基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基からなる群より選ばれる1種以上の基で置換されていてもよい。Ar11〜Ar15のうち少なくとも1つは、主鎖を構成する芳香環に、少なくとも一つの−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基(R1、R2は前記と同じである。)が結合する。)
式(7)に有していてもよい任意の基、すなわち、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基及びアシル基の例示は、上記芳香環置換基として例示したものと同じである。
上記式(7)における、Ar11〜Ar15の具体例としては、主鎖を構成する芳香環に−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基を有する場合、Ar1の具体例と同様のものがあげられ、それ以外の場合、Ar2の具体例と同様のものがあげられる。
本発明のポリマーは、イオン交換容量は6.0meq/g以上であると好ましく、10.0meq/g以上であるとさらに好ましい。一方、イオン交換容量の上限は、本発明のポリマーを構成する構造単位の種類によって決定されるものであるが、20.0meq/g以下であることが好ましく、18.0meq/g以下であると、さらに好ましい。イオン交換容量の上限がこの範囲であると、ポリマーの製造自体も容易であり、高分子電解質膜の耐水性の向上を図ることができる。
本発明のポリマーは、その分子量が、ポリスチレン換算の数平均分子量で表して、ポリスチレン換算の数平均分子量が10000を越える。数平均分子量が10000以下であると、十分なプロトン伝導性が得られないことがある。プロトン伝導性を向上させる観点から、好ましくは、15000以上であり、より好ましくは20000以上である。また、溶媒溶解性を確保し、膜加工時の操作性を容易にする観点から、好ましくは、150000以下であり、より好ましくは100000以下である。
本発明において、本発明のポリマーが特に高いプロトン伝導性を有する理由については、以下のように推測される。ただしこれによって本発明は何ら限定を受けるものではない。
本発明のポリマーの主鎖はポリアリーレン構造である。ポリアリーレン構造は、疎水的であるため、主鎖同士に会合が生じると推測される。会合が生じると、−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基の間の距離が相対的に短くなり、水素結合を形成しやすい状況に置かれると推測される。これにより、プロトン移動に必要な活性化エネルギーが低下し、プロトン伝導性が高まると推測される。
また、−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基は電子吸引基である。主鎖がポリアリーレン構造であると、−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基は他の−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基の電子吸引効果を受け、−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基の酸強度が増すため、プロトン伝導性が高まると推測される。
さらにポリマーの主鎖がポリフェニレンである場合、−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基は、他の−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基の電子吸引性をより受けやすくなるため、よりプロトン伝導性が高まると推測される。
さらに高分子主鎖がポリパラフェニレンである場合、上記に加えて、高分子主鎖が規則正しい繰り返し構造を有しており、結晶性、会合性が向上するため、他の主鎖が有する−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基と水素結合を形成しやすくなり、プロトン移動に必要な活性化エネルギーが低下すると推測される。このためプロトン伝導性は、さらに高まると推測される。
次に、本発明のポリマーを得る上で、好適な製造方法について説明する。
ここで、−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基の導入方法は、予め−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基を有するモノマーを重合する方法であっても、−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基を導入可能な部位を有するモノマーからプレポリマーを製造した後に、該プレポリマーにある、該導入可能な部位に−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基を導入する方法であってもよい。中でも、前者の方法であると、−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基の導入量や、置換位置を的確に制御することができるので、より好ましい。
上記−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基を有するモノマーとしては、式(5)で表されるモノマーを用いることができる。

Figure 2010150536

ここでAr3は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基から選ばれる基を有していてもよいアリーレン基であり、X1及びX2に直接結合している芳香環に−(P(=O)(OR3)(OR4))で示される基(R3は、水素原子、無機カチオン、有機カチオン、アルキル基またはアリール基を表し、R3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R4は、水素原子、無機カチオン、有機カチオン、アルキル基またはアリール基を表し、R4は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)が結合している。X1、X2はそれぞれ独立に、縮合反応時に脱離する基を表し、X1、X2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記R3、R4としては、上記R1、R2の具体例と同様のものがあげられる。また、上記−(P(=O)(OR3)(OR4))で示される基としては、上記−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基の具体例と同様のものがあげられる。
上記Ar3としては、ヘテロ元素を含んでいてもよく、縮合反応の反応性を高める観点から、炭素数が6以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。また、得られるポリマーのホスホン酸類基密度を高める観点から、炭素数が18以下であることが好ましく、14以下であることがより好ましい。上記Ar3として、好ましくは、上記Ar1の具体例と同様のものがあげられる。
上記式(5)としては例えば下記式(ca)〜(cu)のような芳香族化合物があげられる。(式中、X1、X2、−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基以外の置換基は省略した。)
Figure 2010150536
これらの中でも、(ca)〜(ch)が好ましい。
式(5)におけるX1、X2は、縮合反応時に脱離する基を表すが、その具体例としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、炭素数6〜10のアリールスルホニルオキシ基、炭素数1〜6のアルカンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、下記に示すようなホウ素原子を含む基などがあげられる。炭素数6〜10のアリールスルホニルオキシ基としては、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、p−ニトロベンゼンスルホニルオキシ基、1−ナフタレンスルホニルオキシ基、2−ナフタレンスルホニルオキシ基が好ましい。炭素数1〜6のアルカンスルホニルオキシ基としては、メタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基、1−プロパンスルホニルオキシ基、2−プロパンスルホニルオキシ基が好ましい。
Figure 2010150536
(RaおよびRbは、互いに独立に水素原子又は有機基を表し、RaとRbとが結合して環を形成していてもよい。)
該有機基としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、などの炭素数1〜6までのアルキル基、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−シアノフェニル基、3−メトキシフェニル基などの炭素数6〜12までのアリール基等があげられる。
本発明における式(5)で表されるモノマーの製造方法としては、X1およびX2が、クロロ基、ブロモ基、ヨード基である場合、以下の製造方法などがあげられる。例えばモノブロモジクロロベンゼンを用いて、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどの0価パラジウム触媒とトリエチルアミン塩基存在下、亜リン酸ジアルキルを作用させると、ブロモ基を選択的にホスホン酸ジアルキル基に変換できる。具体的な方法としては例えば、Bull.Chem.Soc.Jpn.1982,55,909−913に記載されている方法など公知の方法を用いることができる。
このようにして、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などから選ばれる反応活性基並びに上記脱離基X1およびX2が同一の官能基である場合、3つ以上の該官能基を芳香族化合物に導入した後に、該官能基の一部をホスホン酸類基に置換することにより、式(5)で表されるモノマーが得られる。
本発明における式(5)で表されるモノマーの製造方法としては、X1及び/又はX2が、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、炭素数1〜6のアルカンスルホニルオキシ基、または炭素数6〜10のアリールスルホニルオキシ基である場合、以下の製造方法などがあげられる。即ちヒドロキシル基を有する芳香族化合物にハロゲン化リン酸ジエステルを作用させてホスフェート化合物とし、その後、強塩基を用いた転位反応によりホスホン酸ジエステル基を有する化合物に変換してもよい。具体的な方法としては例えば、J.Org.Chem.1984,49,4018に記載されている方法など公知の方法を用いることができる。得られた芳香族化合物のヒドロキシル基は、公知の方法でトリフルオロメタンスルホニルオキシ基、炭素数1〜6のアルカンスルホニルオキシ基、または炭素数6〜10のアリールスルホニルオキシ基に変換できる。
また、上記式(5)で表されるモノマーに加え、それ以外のモノマーも用いることができ、例えば上記式(5)で表されるモノマーと、下記式(6)で表されるモノマーとを共重合させれば、前記式(1)で示される構造単位と、前記式(4)示される構造単位とを、有する共重合体を得ることもできる。

Figure 2010150536

式中、Ar4は、アリーレン基を表し、ここでアリーレン基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基から選ばれる基を有する。ここで、これらのアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基及びアシル基の例示も前述の芳香環置換基として例示したものと同じである。X3、X4はそれぞれ独立に、縮合反応時に脱離する基を表し、X3、X4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記Ar4としては、上記Ar2の具体例と同様のものがあげられる。
上記式(6)としては、例えば下記式(da)〜(de)のような芳香族化合物があげられる。(式中、X3若しくはX4以外の置換基は省略した。)

Figure 2010150536
これらの中でも、(da)が好ましい。
式(6)における、X3、X4は、式(5)におけるX1、X2と同様のものがあげられる。
本発明における式(6)で表されるモノマーとしては、例えば市販のものが用いられる。
このように、式(5)で表されるモノマーと式(6)で表されるモノマーとを共重合すれば、得られるポリマーは、式(5a)で表される構造単位と式(6a)で表される構造単位とを有し、Ar3とAr4とが直接結合で連結されたポリアリーレン構造を有するポリマーが得られる。
Figure 2010150536
(式中、Ar3は前記と同義である。)
Figure 2010150536
(式中、Ar4は前記と同義である。)
式(5)で表されるモノマーと式(6)で表されるモノマーとを共重合する場合、プロトン伝導性を確保する目的からモル比にして、100:0〜50:50で用いることが好csましく、100:0〜70:30で用いることがより好ましく、100:0〜90:10で用いることがさらに好ましい。
式(5)で表されるモノマーと式(6)で表されるモノマーとを、例えば、縮合反応により重合させる場合、遷移金属錯体の共存下に実施される。
上記遷移金属錯体は遷移金属にハロゲンや後述の配位子が配位したものであり、後述の配位子を少なくとも一つ有するものが好ましい。遷移金属錯体は市販品でも別途合成したもの何れを用いてもよい。
遷移金属錯体の合成方法は、例えば遷移金属塩や遷移金属酸化物と配位子とを反応させる方法等の公知の方法があげられる。合成した遷移金属錯体は、取り出して使用してもよいし、取り出すことなく、in situで使用してもよい。
配位子としては、例えばアセテート、アセチルアセトナート、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、メチレンビスオキサゾリン、N,N,N’N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェノキシホスフィン、1,2−ビスジフェニルホスフィノエタン、1,3−ビスジフェニルホスフィノプロパンなどがあげられる。
遷移金属錯体としては、例えばニッケル錯体、パラジウム錯体、白金錯体、銅錯体等があげられる。これら遷移金属錯体の中でもゼロ価ニッケル錯体、ゼロ価パラジウム錯体のようなゼロ価遷移金属錯体が好ましく用いられ、ゼロ価ニッケル錯体がより好ましく用いられる。
ゼロ価ニッケル錯体としては、例えばビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルなどがあげられ、中でも、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)が、安価という観点から好ましく使用される。
ゼロ価パラジウム錯体としては、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)があげられる。
これらゼロ価遷移金属錯体は、上記のように合成して用いてもよいし、市販品として入手できるものを用いてもよい。
ゼロ価遷移金属錯体の合成方法は例えば、遷移金属化合物を亜鉛やマグネシウムなどの還元剤でゼロ価とする方法等の公知の方法があげられる。合成したゼロ価遷移金属錯体は、取り出して使用してもよいし、取り出すことなくin situで使用してもよい。
還元剤により、遷移金属化合物からゼロ価遷移金属錯体を発生させる場合、使用される遷移金属化合物としては、通常、2価の遷移金属化合物が用いられるが0価のものを用いることもできる。なかでも2価ニッケル化合物、2価パラジウム化合物が好ましい。2価ニッケル化合物としては、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、ニッケルアセテート、ニッケルアセチルアセトナート、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、臭化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)などがあげられ、2価パラジウム化合物としては塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、パラジウムアセテートなどがあげられる。
還元剤としては、亜鉛、マグネシウム、水素化ナトリウム、ヒドラジンおよびその誘導体、リチウムアルミニウムヒドリドなどがあげられる。必要に応じて、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化トリメチルアンモニウム、ヨウ化トリエチルアンモニウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等を併用することもできる。
上記遷移金属錯体を用いた縮合反応の際、重合体の収率向上の観点から、用いた遷移金属錯体の配位子となりうる化合物を添加することが好ましい。添加する化合物は使用した遷移金属錯体の配位子と同じであっても異なっていてもよい。
該配位子となりうる化合物の例としては、前述の、配位子として例示した化合物等があげられ、汎用性、安価、縮合剤の反応性、重合体の収率、重合体の高分子量化の点でトリフェニルホスフィン、2,2’−ビピリジルが好ましい。特に、2,2’−ビピリジルは、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)と組合せると重合体の収率向上や、重合体の高分子量化が図れるので、この組合せが好ましく使用される。配位子の添加量は、ゼロ価遷移金属錯体に対して、通常、遷移金属原子基準で、0.2〜10モル倍程度、好ましくは1〜5モル倍程度使用される。
ゼロ価遷移金属錯体の使用量は、上記式(5)で示される化合物と上記式(6)で示される化合物の総モル量に対して、0.1モル倍以上である。使用量が過少であると分子量が小さくなる傾向があるので、好ましくは1.5モル倍以上、より好ましくは1.8モル倍以上、より一層好ましくは2.1モル倍以上である。使用量の上限は特に制限はないが、使用量が多すぎると後処理が煩雑になる傾向があるために、5.0モル倍以下であることが好ましい。
なお、還元剤を用いて遷移金属化合物からゼロ価遷移金属錯体を合成する場合、生成するゼロ価遷移金属錯体が上記範囲となるように設定すればよく、例えば、遷移金属化合物の量を、上記式(5)で示される化合物と上記式(6)で示される化合物の総モル量に対して、0.01モル倍以上、好ましくは0.03モル倍以上とすればよい。使用量の上限は限定的ではないが、使用量が多すぎると後処理が煩雑になる傾向があるために、5.0モル倍以下であることが好ましい。また、還元剤の使用量は、上記式(5)で示される化合物と上記式(6)で示される化合物の総モル量に対して、例えば、0.5モル倍以上、好ましくは1.0モル倍以上とすればよい。使用量の上限は限定的ではないが、使用量が多すぎると後処理が煩雑になる傾向があるために、10モル倍以下であることが好ましい。
また反応温度は、通常0〜250℃の範囲であるが、生成する高分子の分子量をより高くするためには、ゼロ価遷移金属錯体と上記式(5)で示される化合物と上記式(6)で示される化合物とを45℃以上の温度で混合させることが好ましい。好ましい混合温度は通常45℃〜200℃であり、とりわけ好ましくは50℃〜100℃程度である。ゼロ価遷移金属錯体、上記式(5)で示される化合物と上記式(6)で示される化合物とを混合させた後、通常45℃〜200℃程度、好ましくは50℃〜100℃程度で反応させる。反応時間は、通常0.5〜24時間程度である。
またゼロ価遷移金属錯体と、上記式(5)で示される化合物と上記式(6)で示される化合物とを混合する方法は、一方をもう一方に加える方法であっても、両者を反応容器に同時に加える方法であっても良い。加えるに当っては、一挙に加えても好ましいし、発熱を考慮して少量ずつ加えても好ましいし、溶媒の共存下に加えることも好ましい。
これらの縮合反応は、通常、溶媒存在下に実施される。かかる溶媒としては、例えばN、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒。トルエン、キシレン、メシチレン、ベンゼン、n−ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒。テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメルカプトエタン、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶媒。酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチルなどのエステル系溶媒。などが例示される。なお、括弧内の表記は溶媒の略号を示すものであり、後述する表記において、この略号を用いることもある。
生成する高分子の分子量をより高くするためには、高分子が十分に溶解していることが望ましいので、高分子に対する良溶媒であるテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、DMF、DMAc、NMP、DMSO、トルエン等が好ましい。これらは2種以上を混合して用いることもできる。なかでもDMF、DMAc、NMP、DMSO、及びこれら2種以上の混合物が好ましく用いられる。
溶媒量は、特に限定されないが、あまりにも低濃度では、生成した高分子化合物を回収しにくくなることもあり、また、あまりにも高濃度では、攪拌が困難になることがあることから、溶媒、上記式(5)で示される化合物と上記式(6)で示される化合物との総量を100重量%としたとき、溶媒量が好ましくは99.95〜50重量%、より好ましくは99.9〜75重量%となるような溶媒量が好ましく使用される。
かくして本発明のポリマーが得られるが、生成したポリマーの反応混合物からの取り出しは、常法が適用できる。例えば、貧溶媒を加える等してポリマーを析出させ、濾別等により目的物を取り出すことができる。また必要に応じて、更に水洗や、良溶媒と貧溶媒を用いての再沈殿等の、通常の精製方法により精製することもできる。
前記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマーは単独重合体であっても、ランダム共重合体であっても、交互共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。これらは、それぞれ対応するモノマーおよびそれらの比率、重合方法を選び、公知の方法に準じて得ることができる。
本発明のポリマーとしては、例えば、以下の構造を有する。
単独重合体としては、例えば下記式(ea)〜(eh)のいずれかを有する。

Figure 2010150536
ランダム共重合体としては、例えば下記式(fa)〜(ff)を有する。(式中「random」の表記は、複数の構造単位の共重合様式がランダム共重合体であることを意味するものであり、各構造単位の共重合比は省略して表記する。)

Figure 2010150536
ブロック共重合体としては、例えば下記式(ga)〜(gi)を有する。(式中「block」の表記は、複数の構造単位の共重合様式がブロック共重合体であることを意味するものであり、各構造単位の共重合比は省略して表記する。)

Figure 2010150536
上記にあげたポリマーの中でも、(ea)、(ee)を有することが好ましい。
次に、本発明により得られるポリマーを燃料電池等の電気化学デバイスの隔膜(高分子電解質膜)として使用する場合について説明する。
この場合は、本発明により得られるポリマーは、通常、膜の形態で使用される。膜へ転化する方法に特に制限はないが、例えば溶液状態より製膜する方法(溶液キャスト法)が好ましく使用される。
具体的には、本発明により得られるポリマーを適当な溶媒に溶解し、その溶液をガラス板上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜される。
本発明におけるポリマーについて、前記−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基のうちR1が無機カチオン又は有機カチオンであり、かつ、R2が無機カチオン又は有機カチオンである場合、溶媒として水を用いることができる。本発明のポリマーを、水に溶解し、水溶液としてガラス板上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜することができる。溶媒には、水に加え、本発明の効果を失わない範囲で、補溶媒を添加してもよい。補溶媒としては、水と十分混和し、本発明のポリマーを溶解可能であり、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類があげられる。これらの補溶媒の中でも、ジメチルスルホキシドや、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N―メチルピロリドンは、ポリマーの溶解性が高いため、好ましい。また、これらの補溶媒は、単独でも用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。しかしながら、有機溶媒の除去工程や廃液処理の工程負荷低減の観点から、補溶媒を用いないことが好ましい。製膜後、過剰量の酸に浸漬するなどの処理を行い、遊離酸の形態にすることが好ましい。
前記−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基のうちR1及びR2が水素原子である場合、または、R1及びR2のいずれか一方が水素原子であり、他方が無機カチオンまたは有機カチオンである場合、該ポリマーを、無機カチオンを有するアルカリ性の水溶液及び/又は有機カチオンを有するアルカリ性の水溶液に浸漬または溶解することが好ましい。これにより、R1を無機カチオン又は有機カチオンに、R2を無機カチオン又は有機カチオンに変換することができる。無機カチオンを有するアルカリ性の水溶液としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等があげられ、有機カチオンを有するアルカリ性の水溶液としては、例えば、テトラ(n-ブチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等があげられる。これらは、1種で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。浸漬または溶解後は、公知の方法でポリマーを回収することができる。得られたポリマーは上記の方法により、水を溶媒として、製膜できる。
−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基のうち、R1及びR2の少なくとも一方がアルキル基又はアリール基である場合、溶媒としては、本発明のポリマーを溶解可能であり、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類があげられる。これらの補溶媒の中でも、ジメチルスルホキシドや、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N―メチルピロリドンは、ポリマーの溶解性が高いため、好ましい。
膜の厚みは、特に制限はないが10〜300μmが好ましく、20〜100μmが特に好ましい。10μmより薄いフィルムでは実用的な強度が十分でない場合があり、300μmより厚いフィルムでは膜抵抗が大きくなり電気化学デバイスの特性が低下する傾向にある。膜の厚みは溶液の濃度および基板上への塗布厚により制御できる。
また高分子電解質膜の各種物性改良を目的として、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤などを本発明により得られるポリマーに添加することができる。また、同一溶剤に混合共キャストするなどの方法により、他のポリマーを本発明のポリマーと複合アロイ化することも可能である。
燃料電池用途では水管理を容易にするために、無機あるいは有機の微粒子を保水剤として添加することも知られている。これらの公知の方法はいずれも本発明の目的に反しない限り使用できる。また、本発明により得られるポリマーを含む高分子電解質からなる高分子電解質膜の機械的強度の向上などを目的として、電子線・放射線などを照射して、該高分子電解質膜を構成する高分子電解質を架橋することもできる。
また、高分子電解質膜の強度や柔軟性、耐久性のさらなる向上のために、本発明により得られるポリマーを多孔質基材に含浸させ複合化することにより、高分子電解質複合膜とすることも可能である。複合化方法は公知の方法を使用し得る。多孔質基材としては上述の使用目的を満たすものであれば特に制限は無く、例えば多孔質膜、織布、不織布、フィブリルなどがあげられ、その形状や材質によらず用いることができる。
本発明により得られるポリマーを用いた高分子電解質複合膜を燃料電池の隔膜として使用する場合、多孔質基材は、膜厚が1〜100μm、好ましくは3〜30μm、さらに好ましくは5〜20μmであり、孔径が0.01〜100μm、好ましくは0.02〜10μmであり、空隙率が20〜98%、好ましくは40〜95%である。
多孔質基材の膜厚が薄すぎると複合化後の強度補強の効果あるいは、柔軟性や耐久性を付与するといった補強効果が不十分となり、ガス漏れ(クロスリーク)が発生しやすくなる。また膜厚が厚すぎると電気抵抗が高くなり、得られた複合膜が固体高分子型燃料電池の隔膜として不十分なものとなる。孔径が小さすぎると本発明の共重合体の充填が困難となり、大きすぎると高分子固体電解質への補強効果が弱くなる。空隙率が小さすぎると複合膜の抵抗が大きくなり、大きすぎると一般に多孔質基材自体の強度が弱くなり補強効果が低減する。
耐熱性の観点や、物理的強度の補強効果を鑑みれば、前記多孔質基材は、脂肪族系高分子、芳香族系高分子、または含フッ素高分子からなる基材が好ましい。
次に本発明により得られるポリマーを用いた燃料電池について説明する。高分子電解質膜を用いる燃料電池としては、例えば水素ガスを燃料とした固体高分子型燃料電池や、メタノールを燃料として直接供給するダイレクトメタノール型固体高分子型燃料電池があるが、本発明により得られるポリマーはそのどちらにも好適に用いることができる。
本発明により得られるポリマーを用いた燃料電池は、本発明のポリマーを高分子電解質膜及び/又は高分子電解質複合膜として使用したものや、本発明により得られるポリマーを触媒成分と混合し、触媒組成物として使用したものなどをあげることができる。
本発明により得られるポリマーを高分子電解質膜または高分子電解質複合膜として使用した燃料電池は、前記高分子電解質膜または前記高分子電解質複合膜の両面に、触媒とガス拡散層を接合した膜−電極接合体を製造し、これを用いることで製造することができる。ガス拡散層としては公知の材料を用いることができるが、多孔質性のカーボン織布、カーボン不織布またはカーボンペーパーが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
ここで触媒成分としては、水素または酸素との酸化還元反応を活性化できるものであれば特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、白金の微粒子を用いることが好ましい。白金の微粒子はしばしば活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンに担持されたものが好ましく用いられる。また、カーボンに担持された白金を、高分子電解質としてのパーフルオロアルキルスルホン酸樹脂のアルコール溶液と共に混合してペースト化したものを、ガス拡散層、高分子電解質膜または高分子電解質複合膜に塗布・乾燥することにより触媒層が得られる。具体的な方法としては例えば、J.Electrochem.Soc.:Electrochemical Science and Technology,1988,135(9),2209に記載されている方法などの公知の方法を用いることができる。
本発明により得られるポリマーを触媒成分と混合し、触媒組成物として使用した燃料電池としては、前述の触媒層を構成するパーフルオロアルキルスルホン酸樹脂の代わりに本発明により得られるポリマーを用いたものをあげることができる。本発明の共重合体を用いた触媒層を使用する場合、高分子電解質膜は本発明により得られる共重合体を用いた膜に限定されずに公知の高分子電解質膜を用いることができる。
以下に実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
本発明の実施例に移る前に、試料の諸物性の測定方法、各合成例を以下に説明する。
[LC面百純度(%)]
液体クロマトグラフィー (LC) により下記条件で測定し求めた。
・LC測定装置 島津製作所製 LC−10A
・カラム L−Column ODS (5μm, 4.6mmφ×15cm)
・カラム温度 40℃
・移動相溶媒 A液:0.1重量%テトラブチルアンモニウムブロミド/水
B液:0.1重量%テトラブチルアンモニウムブロミド/(水/アセトニ トリル=1/9(重量比))
・移動相勾配 0→20min (A液: 70重量%→10重量%、B液: 30重量%→9 0重量%), 20→35min (A液: 10重量%、B液: 90重量%)
・溶媒流量 1.0mL/min
・検出法 UV (254nm)
[分子量]
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の分析条件でポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を測定した。
GPC装置 TOSOH製 HLC8220型
カラム TOSOH製 TSK−gel GMHHR−M
カラム温度 40℃
移動相溶媒 ジメチルアセトアミド
(臭化リチウムを10mmol/dm3になるように添加)
移動相流量 0.5mL/min
[プロトン伝導度測定(膜面方向)]
温度80℃、相対湿度90%、70%、又は50%の条件下で交流法で測定した。
[プロトン伝導度測定(膜厚方向)]
交流法で測定した。1cm2の開口部を有するシリコンゴム(厚さ200μm)の片面にカーボン電極を貼った測定用セルを2つ準備し、これらをカーボン電極同士が対向するように配置し、前記2つのセルに直接インピーダンス測定装置の端子を接続した。
次いで、この2つの測定用セルの間に、上記方法で得られたイオン交換基をプロトン型に変換した高分子電解質膜をセットして、測定温度23℃で、2つの測定用セル間の抵抗値を測定した。
その後、高分子電解質膜を除いて再度抵抗値を測定した。そして、高分子電解質膜を有する状態と有しない状態とで得られた2つの抵抗値の差に基づいて、高分子電解質膜の膜厚方向の膜抵抗を算出した。得られた膜抵抗の値と膜厚から、高分子電解質膜の膜厚方向のプロトン伝導度を算出した。なお、高分子電解質膜の両側に接触させる溶液としては、1mol/Lの硫酸を用いた。
合成例1[2,5−ジクロロベンゼンホスホン酸ジエチルの合成]
アルゴン置換したフラスコに2,5−ジクロロ−1−ブロモベンゼン17.58g(77.8mmol)、亜リン酸ジエチル11.77g(85.3mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム4.58g(3.96mmol)、トリエチルアミン16.01g(158.2mmol)を入れ90℃に昇温した。90℃で12時間撹拌後、25℃まで放冷した。ジエチルエーテル250mlで希釈し、100mlの水を用い分液ロートにて洗浄した。得られたジエチルエーテル溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムを濾別した。ジエチルエーテルを減圧留去し、粗生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて、粗生成物の精製を行い、2,5−ジクロロベンゼンホスホン酸ジエチルを 10.44g(収率:47.4%、LC面百純度:96.4%)得た。
1H−NMR(DMSO,270MHz):δ1.25(t,6H), 4.07(dq,4H), 7.66(d,2H), 7.94(d,1H).
実施例1[ホスホン酸ポリアリーレンの合成]
アルゴン置換したフラスコに無水塩化ニッケル(8.10g、 62.5mmol)、ジメチルスルホキシド 73.6gを入れ、70℃まで昇温した。溶解確認後、50℃まで冷却し2,2’−ビピリジル(10.74g、68.8mmol)を入れ、30分間保温した。これをニッケル錯体溶液とする。また別にアルゴン置換したフラスコに2,5−ジクロロベンゼンホスホン酸ジエチル(7.07g、25.0mmol),ジメチルスルホキシド110.4gを入れ50℃まで昇温した。溶解確認後、メタンスルホン酸0.4430gをジメチルスルホキシド25mlに溶かした溶液1ml、亜鉛(6.13g、 93.8mmol)を加え30分間保温した。これを重合マス溶液とする。その後ニッケル錯体溶液を重合マス溶液に移送し70℃まで昇温し3時間保温した。溶液を室温まで放冷した後、イオン交換水407gに注ぐことでポリマーを析出させた。さらにポリマーをイオン交換水にて洗浄した。フラスコに得られたポリマー、イオン交換水230g、35重量%亜硝酸ナトリウム水溶液3.16gを加え、その中に70重量%硝酸54.7gを30分間かけて滴下した。1時間攪拌後、固体を濾別回収し、濾液が中性になるまで水洗を繰り返し得られたポリマーを80℃で乾燥し、下記構造式のポリマー4.20gを得た。

Figure 2010150536

1H−NMR(DMSO,270MHz):δ1.17(m,6H), 3.95(m,4H), 7.00〜8.40(m,3H).

GPCにて算出された分子量
Mn=2.2×104
Mw=6.6×104
アルゴン置換したフラスコに、得られたポリマー4.00g(5.0mmol)、濃塩酸150gを加え、110℃で24時間加熱撹拌した。室温まで冷却し、固体を濾別回収し、濾液が中性になるまで水洗を行い、減圧乾燥することで、下記構造式のポリマー3.16g得た。

Figure 2010150536
実施例2[ホスホン酸ポリアリーレン膜の製造]
実施例1で得られたポリマー 0.8g(5.1mmol)を5重量%水酸化ナトリウム水溶液 7.2gに溶解した後、大過剰のメタノールに滴下し、ポリマーを析出させた。ポリマーをろ別してメタノールで洗浄して、余剰の水酸化ナトリウムを除去し、真空乾燥することで−(P(=O)(OH)(OH))基を−(P(=O)(ONa)(ONa))基へとに変換した。
得られた−(P(=O)(ONa)(ONa))基を有するポリマーをイオン交換水に溶解して10重量%の水溶液を調製し、ガラス基板上に延伸した。80℃で乾燥して水分を除去した後、大過剰の2N塩酸に浸漬して酸型に変換し、水洗後、風乾し、均質な膜を得た。
実施例2で得られた膜のプロトン伝導度を測定したところ、以下の通りであり、実用的に十分なプロトン伝導性を示すことが判明した。また、ホスホン酸基を有するポリマーは、耐久性に優れることが知られているため、本発明のポリマーは、ラジカル耐久性に優れる。

膜面方向プロトン伝導度[80℃]
相対湿度90% 5.2×10-2 S/cm
相対湿度70% 1.4×10-2 S/cm
相対湿度50% 4.8×10-3 S/cm

膜厚方向プロトン伝導度[23℃]
1.2×10-1 S/cm
実施例3[ホスホン酸ポリアリーレンの合成]
アルゴン置換したフラスコに2,5−ジクロロベンゼンホスホン酸ジエチル 4.25
g(15.0mmol)、2,5−ジクロロベンゾフェノン 3.77g(15.0mmol)、2,2’−ビピリジル 12.3g(78.8mmol)、テトラヒドロフラン126gを入れ、50℃まで昇温した。溶解確認後、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル 20.6g(75.0mmol)を入れ60℃まで昇温し、2時間保温した。室温まで放冷した後、メタノール1.0Lに注ぐことでポリマーを析出させた。濾別して回収したポリマーをさらにメタノール1.0Lにて洗浄した。
イオン交換水250mlと35重量%塩酸250mlからなる混合液に、上記ポリマーを投入し静置した。イオン交換水で繰り返し洗浄し、洗浄排水のpHが5以上になったことを確認した後、得られたポリマーを80℃で乾燥し、ホスホン酸エステル基を有する共重合ポリマー 5.5gを得た。
アルゴン置換したフラスコに、得られたポリマー 2.0g、イオン交換水 12.0gと35重量%塩酸 26.0gを加え、110℃で12時間加熱撹拌した。室温まで冷却し、固体を濾別回収し、濾液が中性になるまで水洗を行い、減圧乾燥することで、ホスホン酸基を有する共重合ポリマー 3.2gを得た。
ホスホン酸基を有するポリマーは、耐久性に優れることが知られているため、得られたポリマーは、ラジカル耐久性に優れ、且つ、プロトン伝導性に優れる。
本発明のポリマーは、高分子電解質膜、特に燃料電池用プロトン伝導膜として用いた場合、ラジカル耐久性に優れ、且つ、プロトン伝導性に優れているため、特に燃料電池の用途において、好適に用いることができる。

Claims (13)

  1. 主鎖が、実質的に複数の芳香環が直接結合で連結してなるポリアリーレン構造であり、
    該芳香環の一部又は全部に−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基(R1は、水素原子、無機カチオン、有機カチオン、アルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R2は、水素原子、無機カチオン、有機カチオン、アルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)が直接結合し、
    さらに該芳香環は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基からなる群より選ばれる1種以上の基で置換されていてもよく、
    ポリスチレン換算の数平均分子量が10000を越えることを特徴とするポリマー。
  2. 前記直接結合で連結した芳香環のうち、−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基(R1、R2は前記と同じである。)が直接結合している芳香環の割合が20モル%以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリマー。
  3. 下記式(1)で表される構造単位を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマー。
    Figure 2010150536
    (式中、Ar1は、アリーレン基を表し、Ar1の主鎖を構成する芳香環には、少なくとも一つの−(P(=O)(OR1)(OR2))で示される基(R1、R2は前記と同じである。)が結合する。該アリーレン基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基からなる群より選ばれる1種以上の基で置換されていてもよい。)
  4. 前記式(1)で表される構造単位が、下記式(2)で表される構造単位であることを特徴とする請求項3記載のポリマー。
    Figure 2010150536
    (式中、R1、R2は前記と同じである。R3は、水素原子、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基から選ばれる基を表す。pは1以上3以下の整数であり、qは0以上3以下の整数であり、p+qは4である。なお、pが2以上である場合、複数あるR1、R2は同一でも異なっていてもよく、qが2以上である場合、複数あるR3は同一でも異なっていてもよい。
  5. 前記式(1)で表される構造単位が、下記式(3)で表される構造単位であることを特徴とする請求項3記載のポリマー。
    Figure 2010150536
    (式中、R1、R2、R3、p、qは前記と同じである。)
  6. 前記R1およびR2が、水素原子であることを特徴とする請求項4又は5に記載のポリマー。
  7. 前記ポリアリーレン構造が、芳香環同士の結合の総数を100%としたとき、直接結合の割合が80%以上の構造であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリマー。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のポリマーを含むことを特徴とする高分子電解質。
  9. 請求項8に記載の高分子電解質を含むことを特徴とする高分子電解質膜。
  10. 請求項8に記載の高分子電解質と触媒成分とを含むことを特徴とする触媒組成物。
  11. 請求項9に記載の高分子電解質膜を有することを特徴とする膜−電極接合体。
  12. 請求項10記載の触媒組成物を用いてなる触媒層を含むことを特徴とする膜−電極接合体。
  13. 請求項11又は12に記載の膜−電極接合体を有することを特徴とする高分子電解質型燃料電池。
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