JP2010144693A - 電動流体ポンプと電動流体ポンプのケーシングのインサート成形用金型 - Google Patents

電動流体ポンプと電動流体ポンプのケーシングのインサート成形用金型 Download PDF

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Abstract

【課題】軸部材とケーシングとの結合が堅固であり、高出力としても故障が少ないコンパクトな電動流体ポンプ、及び、その電動流体ポンプのケーシングのインサート成形用金型を提供する。
【解決手段】ケーシング2と、ケーシング2に支持された軸部材1と、軸部材1に軸支されたロータ3とを備え、軸部材1が、ロータ3を軸支する軸部11と、軸部11の軸方向の一方側に位置し、軸部11よりも大径で、ケーシング2に埋設される鍔部12と、軸部11と鍔部12との間に位置し、鍔部12よりも小径且つ軸部11よりも大径の段部13とを有し、段部13を構成する面のうち軸方向の他方側の端面が、ロータの軸受面13aとなるよう構成した。
【選択図】図1

Description

本発明は、ロータの回転によって流体を送り出す電動流体ポンプと、その電動流体ポンプのケーシングのインサート成形用金型に関する。
従来、樹脂製のケーシングに固定された軸部材にロータを軸支し、ロータの回転によって流体を送り出す技術が知られている。しかし、電動流体ポンプを経年使用すると、ロータの回転に基づき、ケーシングと軸部材との結合部分に作用する曲げモーメント、回転力、引抜力等によって、軸部材とケーシングとの結合が緩んだり、軸部材がケーシングから抜け出したりする虞がある。そこで、ケーシング等の樹脂部材に軸部材を確実に固定する結合構造として、特許文献1のごとく、樹脂部材に埋設・固化する軸部材の端部に軸芯周りの螺旋状溝を形成する等、軸部材の表面形状に凹凸を付け、樹脂への噛み込みを向上させる技術が知られている。
特開2002−147256号
しかしながら、特許文献1の技術は、結合力の強さを軸部材の表面形状に頼っているため、軸部材に掛かる回転力に弱い虞がある。即ち、軸部材の外径に応じて抵抗力が決まり、経年使用により軸部材が徐々に緩む虞があった。また、曲げモーメントや引抜力に関しても、軸部材のうち上述の作用力に抵抗する面の面積が小さいため、抜けや緩みが生じる虞があった。このように、軸部材と樹脂部分との結合が完全であるとは言い切れない。
また、軸部材と樹脂部分との結合部分の軸方向の長さを長くすれば、軸部材と樹脂部分との結合力を高めることは可能であるが、軸方向に過大な電動流体ポンプとなる虞がある。
さらに、ケーシングに対する軸部材の位置決め基準が無いため、ケーシングの成形時に、例えば、軸部材をインサートして射出成形する際に、軸部材を金型に確実に固定しなければならず、金型の構造が複雑になる可能性がある。ケーシングに対する位置決め基準が無ければ、軸部材の位置に誤差が生じ、ロータの動作精度が低下し、ロータのガタツキによって、軸部材に作用する曲げモーメント等を冗長する虞もある。
本発明は上記実情に鑑み、軸部材とケーシングとの結合が堅固であり、高出力としても故障が少ないコンパクトな電動流体ポンプ、及び、その電動流体ポンプのケーシングのインサート成形用金型を提供することを目的としている。
本発明に係る電動流体ポンプの第1特徴構成は、ケーシングと、前記ケーシングに支持された軸部材と、前記軸部材に軸支されたロータとを備え、前記軸部材が、前記ロータを軸支する軸部と、前記軸部の軸方向の一方側に位置し、前記軸部よりも大径で、前記ケーシングに埋設される鍔部と、前記軸部と前記鍔部との間に位置し、前記鍔部よりも小径且つ前記軸部よりも大径の段部とを有し、前記段部を構成する面のうち前記軸方向の他方側の端面が、前記ロータの軸受面となるよう構成した点にある。
本構成のように、軸部よりも大径である鍔部をケーシングに埋設することで、ロータが回転した際に、軸部材とケーシングとの結合部に曲げモーメントや引抜力が作用しても、鍔部を構成する面のうち軸方向に向く双方の面がケーシングを構成する樹脂と噛合って強い抵抗力が発揮される。従来のように、軸部材の表面の凹凸等により樹脂との結合力を高めて軸部材の抜け止め等を図る場合と比べて、本構成の電動流体ポンプではケーシングと軸部材との結合力が強く、軸部材の抜けがより抑制される。したがって、ロータを高速回転させる等、電動流体ポンプの運転負荷を高めても故障が少なく、高出力が可能な電動流体ポンプとすることができる。
また、鍔部の径を大きくすれば、軸方向に軸部材を延長する場合と比べて、軸部材のケーシングに埋設された部分と樹脂との接触面積が効率良く広がり、回転力に対する軸部材と樹脂との結合を効率良く強固とすることができる。曲げモーメントや引抜力についても同様である。この結果、軸部材のインサートする部分を軸方向に長くすることなく、軸部材はケーシングに堅固に固定され、コンパクトな電動流体ポンプとすることができる。
さらに、段部を構成する面のうち軸方向の他方側の端面がロータの軸受面となるため、ロータの回転によってケーシングが磨耗することはない。したがって、ロータが軸方向にガタついて、ロータの回転が不規則となることがない。仮に、ロータが磨耗し交換する必要が生じても、ケーシングを交換するよりも手間が掛からず、メンテナンス性が向上する。
本発明に係る電動流体ポンプの第2特徴構成は、前記軸受面と前記ケーシングの内面とが同一面となるよう構成した点にある。
本構成によると、軸受面とケーシングの内面とが同一面となるよう構成してあるため、軸受面をケーシングに対する軸部材の位置決め基準とすることができ、ケーシングを成形する際の管理が容易となる。また、ケーシングと軸部材との位置関係の精度が高まって、ロータの動作精度が向上する。即ち、ロータに回転による振動が抑制され、軸部材とケーシングとの結合が緩む虞もさらに少なくなる。
本発明に係る電動流体ポンプの第3特徴構成は、前記ケーシングが内部にコイルを備えると共に、前記ロータが内部に永久磁石を備え、前記ロータが電磁力によって回転するよう構成した点にある。
本構成のように、ロータが電磁力によって回転する場合であっても、軸部材とケーシングとの結合が堅固であるため、電磁力によってロータを高速回転させても故障が少なく、高性能な電動流体ポンプとすることができる。
本発明に係る電動流体ポンプの第4特徴構成は、吸入口と吐出口とを有するハウジングと、前記ハウジングの内部に配置されると共に、前記ロータに取付けられ、前記ロータと一体回転して前記吸入口から前記吐出口へ冷却水を送り込むインペラとを備えた点にある。
本構成のように、吸入口と吐出口とを有するハウジングと、ロータと一体回転して吸入口から吐出口へ冷却水を送り込むインペラとを備えた電動ウォーターポンプであっても、軸部材とケーシングとの結合が強く、インペラを介してロータに大きな負荷が掛かっても、軸部材がケーシングから緩み出す虞が少ない。したがって、大量の冷却水の送り出しが可能で、耐久性の高い電動ウォーターポンプとすることができる。
本発明に係る電動流体ポンプの第5特徴構成は、前記鍔部が、前記軸方向の一方側の端面である外側端面と、前記軸方向の他方側の端面である内側端面とを有し、前記ケーシングの外面の一部であって、前記外側端面と対向する後背部において、前記外側端面のうち、前記外側端面と前記外面とを前記内側端面と前記軸受面との距離より大きく離間させてある部分の面積が、前記内側端面の面積以上となり、且つ、前記鍔部の外周部分における前記外側端面と前記外面との距離が、前記外周部分における前記内側端面と前記軸受面との距離より大きくなるように構成した点にある。
本構成のように、後背部において、外側端面のうち、外側端面と外面とを内側端面と軸受面との距離より大きく離間させてある部分の面積が、内側端面の面積以上となるように構成すれば、ケーシングをインサート成形する際、後背部における樹脂流路が内側端面と軸部材をセットする金型との間の樹脂流路より広く設定される。また、後背部における樹脂流路の入り口が、内側端面と軸部材をセットする金型との間の樹脂流路の入り口より広く設定される。よって、樹脂は後背部付近を主流として流れ、外側端面に掛かる樹脂圧は、内側端面に掛かる樹脂圧よりも大きくなる。このため、軸受面が金型に押付けられ、射出成形中において軸部材はキャビティ内で静止した状態を保つ。このように、軸受面を位置決め基準として有効に活用し、軸部材をケーシングの適正な位置に埋設固定することができる。
本発明に係る電動流体ポンプのケーシングのインサート成形用金型の第1特徴構成は、ケーシングの内面のうち少なくとも一部に対応する第一金型面を有する第一金型と、前記第一金型と協働して樹脂注入用のキャビティを形成する第二金型とを備え、ロータを軸支する軸部と、前記軸部の軸方向の一方側に位置し、前記軸部よりも大径で、前記ケーシングに埋設される鍔部と、前記軸部と前記鍔部との間に位置し、前記鍔部よりも小径且つ前記軸部よりも大径の段部とを有する軸部材の前記軸部が挿入され、前記段部を構成する面のうち前記軸方向の他方側の端面である軸受面が前記第一金型面に当接した状態で、前記第一金型が前記軸部材を保持可能であるよう構成した点にある。
本構成のように、軸受面が第一金型面に当接した状態で第一金型に軸部材が保持されるため、軸部材のキャビティに対する位置決めが容易であり、軸部材のセッティングに手間取ることがない。よって、電動流体ポンプのケーシングのインサート成形の製作工程を短縮化することができる。
本発明に係る電動流体ポンプのケーシングのインサート成形用金型の第2特徴構成は、前記鍔部が、前記軸方向の一方側の端面である外側端面と、前記軸方向の他方側の端面である内側端面とを有し、前記第二金型が、前記第一金型面と対向する第二金型面を有し、前記第二金型面の一部であって、前記外側端面と対向する対向部において、前記外側端面のうち、前記外側端面と前記第二金型面との距離を前記内側端面と前記軸受面との距離より大きく設定してある部分の面積が、前記内側端面の面積以上となり、且つ、前記鍔部の外周部分における前記外側端面と前記外面との距離が、前記外周部分における前記内側端面と前記軸受面との距離より大きくなるように構成した点にある。
本構成によると、対向部において、外側端面のうち、外側端面と第二金型面との距離を内側端面と軸受面との距離より大きく設定してある部分の面積が、内側端面の面積以上となるように構成してある。即ち、軸受面は第一金型面に当接するため、対向部において、
外側端面のうち、外側端面と第二金型面との距離を内側端面と第一金型面との距離より大きく設定してある部分の面積が、内側端面の面積以上存在する。また、対向部における樹脂流路の入り口は、内側端面と軸部材をセットする金型との間の樹脂流路の入り口より広く設定される。このため、射出された樹脂は、外側端面と第二金型面との間を主流として流れ、外側端面と第二金型面との間の樹脂圧は内側端面と第一金型面との間の樹脂圧よりも大きくなる。よって、軸受面が第一金型面に押付けられ、射出成形中において軸部材はキャビティの内部で静止した状態を保つ。よって、軸受面を位置決め基準として有効に活用し、軸部材をケーシングの適正な位置に埋設固定することができ、寸法誤差の少ないケーシングを成形することができる。
また、軸受面がケーシングの内部に露出するため、ロータはこの面を軸受面として回転することができ、ケーシングの磨耗を抑制することができる。
さらに、軸受面とケーシングの内面とが同一面として形成されるため、軸受面が軸部材の中途にある場合と比べて、軸方向にコンパクトな電動流体ポンプとすることができる。
以下、本発明に係る電動流体ポンプを車両の電動ウォーターポンプに適用した例を図面に基づいて説明する。
(電動流体ポンプの全体構成)
電動流体ポンプとしての電動ウォーターポンプPは、図1に示すごとく、樹脂製のケーシング2と、ケーシング2に一方側の端部14を固定された金属製の軸部材1と、軸部材1の他方側の端部15を枢支しつつケーシング2を密閉するハウジング4と、軸部材1に軸支されたロータ3と、ロータ3に取り付けられたインペラ5とを備えている。ケーシング2の内部には軸部材1の軸芯Lの回りに沿ってコイル21が配置され、一方、ロータ3の内部には同様に永久磁石31が配置されている。図外のエンジンコントロールユニットによってコイル21への電流が制御され、ロータ3は発生した電磁力によって回転する。電流量の調整によってロータ3の回転速度を加減速することができる。
軸部材1を枢支する支持部43の周りに形成され、軸芯Lの方向から電動ウォーターポンプPの内部へ冷却水を引き込む吸入口41と、冷却水を電動ウォーターポンプPの外部へ吐き出す吐出口42とがハウジング4に設けてある。また、ケーシング2とハウジング4との間には、吸入口41と吐出口42を連通する流路44が軸芯Lの回りに螺旋状に形成されている。
吐出口42の付近の流路44には、軸芯Lに対して放射状に配置されたインペラ5が複数備えられており、インペラ5はロータ3の回転に従って回転し、冷却水を流路44に掻き込む。冷却水は流路44の螺旋形状に沿って径外方向へ押し出され、最終的に吐出口42から外部へ送り出される。流路44は径外側に近付くに従って、流路径が大きくなるように形成されているため、冷却水の流速は徐々に減速し、インペラ5の回転時における冷却水の逆流が抑制される。
このように、電動ウォーターポンプPの駆動によって冷却水は送り出される。コイル21の大きさ、永久磁石31の大きさ、インペラ5の枚数等は、適宜決定すれば良い。
(軸部材及びケーシング)
軸部材1は、図2に示すごとく、ロータ3を軸支する軸部11と、鍔部12とを備えている。また、軸部材1は、軸部11と鍔部12との間に鍔部12と隣接する段部13を備えている。鍔部12は、軸部11よりも大径の環状形状であり、軸部11の一方側の端部14において軸部11に外嵌されている。段部13は、鍔部12よりも小径且つ軸部11よりも大径の環状形状であり、鍔部12よりも軸部11の他方側において軸部11に外嵌されている。
軸部材1は、円筒形状であって、軸芯Lの方向の一方側の端面である外側端面12aと、外周部分である外周面12cと、軸芯Lの方向の他方側の端面である内側端面12bとを備えている。また、段部13も円筒形状であって、他方側の端面である軸受面13aと、外周部分である外周面13bとを備えている。
図3に示すごとく、鍔部12及び段部13は一体形成された上で、軸部11が圧入されている。このように、軸部11と鍔部12及び段部13とが別部材であるため、軸部11を鋳造し、鍔部12及び段部13とを切削加工するなど、部材の形状に応じた製作工法を採用することができる。よって、製造コストを削減することが可能となる。
軸部材1は、鍔部12がケーシング2に埋設されることによって、ケーシング2に固定されている。ロータ3が回転した際に、軸部材1とケーシング2との結合部に曲げモーメントや引抜力が作用しても、外側端面12a及び内側端面12bと樹脂とが噛合って強い抵抗力が発揮される。従来のように、軸部材1の表面の凹凸等により樹脂との結合力を高めて軸部材1の抜け止め等を図る場合と比べて、ケーシング2と軸部材1との結合力が強く、軸部材1の抜けがより抑制される。また、ロータ3が回転する際の軸受となる軸受面13aがケーシング2の内面22と同一面となるよう構成されており、軸受面13aをケーシング2に対する軸部材の位置決め基準とすることができる。
また、ケーシング2の外面23の一部であって外側端面12aと対向する後背部24において、外面23と外側端面12aとの距離d1が、軸芯Lの方向の段部13の厚み、即ち内側端面12bと軸受面13aとの距離d2よりも大きくなるよう設定してある。当然に、外周面12cの軸芯Lの方向の延長面上において、外面23と外側端面12aとの距離d1は、内側端面12bと軸受面13aとの距離d2よりも大きい。また、図4(a)及び(b)から明らかなように、外側端面12aの面積s1は内側端面12bの面積s2よりも広い。ここで、図4(a)は軸芯Lの方向の一方側から観た軸部材1の側面図であり、図4(b)は軸芯Lの方向の他方側から観た軸部材1の側面図である。図4(a)における斜線は外側端面12aの面積s1を示し、図4(b)における斜線は内側端面12bの面積s2を示す。即ち、後背部24において、外側端面12aのうち、外側端面12aと外面23との距離d1を内側端面12bと軸受面13aとの距離より大きく設定してある部分の面積s1が、内側端面12bの面積s2以上存在し、後背部24における樹脂流路の入り口は、内側端面12bと軸受面13aとの間の樹脂流路の入り口より広い。この結果、ケーシング2をインサート成形する際に射出された樹脂は、後背部24を主流として流れ、外側端面12aに掛かる樹脂圧は内側端面12bに掛かる樹脂圧よりも大きくなる。したがって、軸受面13aが射出成形用の金型に押付けられ、射出成形中において軸部材1は図外のキャビティ9の内部で静止した状態を保つことができる。
軸部材1において、図2に示すごとく、段部13の外周面13bに沿って突起部16を複数形成してある。このため、ロータ3が回転に基づいて軸部材1に回転力が掛かっても、突起部16がケーシング2の樹脂と噛合って、軸部材1とケーシング2との結合が緩むことを防止することができる。また、軸部材1の回転抑止策として、鍔部12の外周部12cや段部13の外周部13bにローレット加工等の溝加工を行うことも効果的である。
本実施形態において、ケーシング2の形状を、後背部24とその周辺部分とが平面的に繋がり、対応する内面22の側を軸芯Lの方向に絞る形状とした。このため、後背部24の側の樹脂流路が段部13の外周面13bの回り樹脂流路よりも確実に広くなり、外側端面12bに掛かる樹脂圧が内側端面に掛かる樹脂圧よりも確実に大きくなる。また、ケーシング2が不要に厚くならない。しかしながら、この構成に限定されるものではない。例えば、図6(a)及び(b)に示すごとく、外面23を軸芯Lの内側方向に絞っても厚みを抑えても、外面23と内面22との両方を絞って厚みを抑えても良い。後背部24において、外側端面12aのうち、外側端面12aと外面23との距離d1を内側端面12bと軸受面13aとの距離より大きく設定してある部分の面積s1が、内側端面12bの面積s2以上存在し、後背部24における樹脂流路の入り口が、内側端面12bと軸受面13aとの間の樹脂流路の入り口より広くなるよう設定すれば、上述の効果を適正に得ることができる。
また、本実施形態において、軸部11と鍔部12及び段部13とは別体としたが、図7(a)に示すごとく、全てを一体に形成しても良い。図7(b)に示すごとく、軸部11と段部13とを一体成形した上で、鍔部12を圧入しても良い。図7(a)の例の場合、外側端面12aの面積s1は内側端面12bの面積s2よりも明らかに大きい。図7(b)の場合、外側端面12aの面積s1と内側端面12bの面積s2は等しい。したがって、両例共に、後背部24において、内側端面12bと軸受面13aとの距離d2より、外側端面12aと外面23との距離d1を大きく設定すれば、上述の効果を適正に得ることができる。
鍔部12と段部13は隣接せずとも、図8に示すごとく、離間していても良い。また、図8に示すごとく、鍔部12と段部13との間に、鍔部12よりも小径で段部13より大径の部分があっても良い。さらに、外周面12c及び外周面13bの断面形状は円状に限られず、製作寸法等のケーシング2の条件によっては、多角形形状や不規則な曲線形状であっても問題はない。
(ケーシングのインサート成形用金型)
上述のごとく軸部材1をインサートしたケーシング2のインサート成形用金型6(以下、「インサート成形用金型6」と称する)の例を図面に基づいて説明する。
インサート成形用金型6は、図5に示すごとく、第一金型7と第二金型8とを備えており、第一金型7と第二金型8とは協働して、樹脂注入用のキャビティ9を形成している。第一金型7は、ケーシング2の内面22の少なくとも一部を形成するための第一金型面71を有している。第一金型面71は、内径が軸部材1の軸部11の外径よりも若干大きく、軸部11を容易に挿入可能な軸部支持孔72を備えている。よって、第一金型7は、軸受面13aが第一金型面71に当接した状態で、軸部材1を保持することができる。第二金型8は、ケーシング2の外面23の少なくとも一部を形成するための第二金型面81を備えている。第二金型面81は軸部材1の外側端面12aと対向する対向部82を有している。対向部82に対応して成形された箇所は、上述した後背部24と一致する。
第二金型8は、少なくとも対向部82において、外側端面12aと第二金型面81との距離d1を、段部13の内側端面12bと軸受面13aとの距離d2よりも大きくなるよう設定してある。当然に、外周面12cの軸芯Lの方向の延長面上において、外面23と外側端面12aとの距離d1は、内側端面12bと軸受面13aとの距離d2よりも大きい。また、外側端面12aの面積s1は内側端面12bの面積s2よりも大きい(図4参照)。したがって、キャビティ9に樹脂を射出すると、射出された樹脂は外側端面12aと第二金型面81の間を主流として流れ、外側端面12aと第二金型面81の間の樹脂圧は内側端面12bと第一金型面71との間の樹脂圧よりも大きくなる。よって、墨付き矢印で示すごとく、軸受面13aが第一金型面71に押付けられ、射出成形中において軸部材1はキャビティ9の内部で静止した状態を保つことができる。
また、軸部材を軸受面13aは、比較的広い面積を持って第一金型面71と当接するため、軸部材1はケーシング2の内部に対して精度良く垂直に立設する。
このように、射出成形時において軸部材1を適正な位置及び姿勢に保持する機構を備えなくとも良く、ケーシング2の成形時の管理が容易となる。さらには、不良品の発生率も軽減される。
このインサート成形用金型6によると、軸受面13aは、ケーシング2に対する軸部材1の位置決め基準となりつつ、ケーシングの内面22と同一面に仕上がる。このため、軸受面13aをロータ3の回転時の軸受として使用することができる。軸部材1は金属製であるため、ロータ3の回転によってケーシング2が磨耗することも、ロータ3が焼け付くこともない。したがって、ロータ3が軸方向にガタついて、ロータ3の回転が不規則となることがない。
上述したように、軸受面13aとその周囲のケーシング2の内面22とが同一面に仕上がるため、軸受面13aを基準としてケーシングの内面22の形状を決定することができる。一方、ロータ3が軸受面13aを軸受として回転するため、ロータ3の回転軌跡も自ずと決定される。このため、ケーシング2とロータ3とをある程度小さなクリアランスのみで位置決定することができる。したがって、コンパクトな電動ウォーターポンプPとすることができる。
上述したように、例えば、軸部材1が図7に示すごとき構成であっても、外側端面12aの面積s1が内側端面12bの面積s2以上であるため支障はない。図8又は図9に示すごとき軸部材1であっても同様である。また、図示はしないが、鍔部12及び段部13の軸芯Lの方向の厚みの変更に対応できるよう、第一金型7と第二金型8との離間距離を調整可能に構成しても良い。さらに、軸部材1の太さの変更に対応できるよう、軸部支持孔72の径に余裕を持たせても良い。この場合は、軸部11を軸部支持孔72に挿入したとき、外周面13bと軸部支持孔72との間に隙間が生じないよう注意しなければならない。
本発明に係る電動流体ポンプの全体構成を示す断面図 本発明に係る軸部材を示す斜視図 ケーシングと軸部材との結合部付近の断面図 軸部材の側面図であって、(a)は軸芯の方向の一方側から観た図、(b)は軸芯の方向の他方側から観た図 本発明に係るインサート成形用金型の一部の構成を示す断面図 ケーシングと他の実施形態に係る軸部材との結合部付近の断面図 他の実施形態に係る軸部材を示す断面図 他の実施形態に係る軸部材を示す断面図 他の実施形態に係る軸部材を示す断面図
符号の説明
1 軸部材
2 ケーシング
3 ロータ
4 ハウジング
5 インペラ
6 インサート成形用金型
7 第一金型
8 第二金型
9 キャビティ
11 軸部
12 鍔部
12a 外側端面
12b 内側端面
13 段部
13a 軸受面
21 コイル
22 内面
23 外面
24 後背部
31 永久磁石
41 吸入口
42 吐出口
71 第一金型面
81 第二金型面
82 対向部
P 電動ウォーターポンプ(電動流体ポンプ)
s1 面積
s2 面積

Claims (7)

  1. ケーシングと、
    前記ケーシングに支持された軸部材と、
    前記軸部材に軸支されたロータとを備え、
    前記軸部材が、前記ロータを軸支する軸部と、前記軸部の軸方向の一方側に位置し、前記軸部よりも大径で、前記ケーシングに埋設される鍔部と、前記軸部と前記鍔部との間に位置し、前記鍔部よりも小径且つ前記軸部よりも大径の段部とを有し、
    前記段部を構成する面のうち前記軸方向の他方側の端面が、前記ロータの軸受面となるよう構成した電動流体ポンプ。
  2. 前記軸受面と前記ケーシングの内面とが同一面となるよう構成した請求項1に記載の電動流体ポンプ。
  3. 前記ケーシングが内部にコイルを備えると共に、前記ロータが内部に永久磁石を備え、
    前記ロータが電磁力によって回転するよう構成した請求項1または2に記載の電動流体ポンプ。
  4. 吸入口と吐出口とを有するハウジングと、
    前記ハウジングの内部に配置されると共に、前記ロータに取付けられ、前記ロータと一体回転して前記吸入口から前記吐出口へ冷却水を送り込むインペラとを備えた請求項3に記載の電動流体ポンプ。
  5. 前記鍔部が、前記軸方向の一方側の端面である外側端面と、前記軸方向の他方側の端面である内側端面とを有し、
    前記ケーシングの外面の一部であって、前記外側端面と対向する後背部において、
    前記外側端面のうち、前記外側端面と前記外面とを前記内側端面と前記軸受面との距離より大きく離間させてある部分の面積が、前記内側端面の面積以上となり、且つ、前記鍔部の外周部分における前記外側端面と前記外面との距離が、前記外周部分における前記内側端面と前記軸受面との距離より大きくなるように構成した請求項2から4の何れか一項に記載の電動流体ポンプ。
  6. ケーシングの内面のうち少なくとも一部に対応する第一金型面を有する第一金型と、
    前記第一金型と協働して樹脂注入用のキャビティを形成する第二金型とを備え、
    ロータを軸支する軸部と、前記軸部の軸方向の一方側に位置し、前記軸部よりも大径で、前記ケーシングに埋設される鍔部と、前記軸部と前記鍔部との間に位置し、前記鍔部よりも小径且つ前記軸部よりも大径の段部とを有する軸部材の前記軸部が挿入され、前記段部を構成する面のうち前記軸方向の他方側の端面である軸受面が前記第一金型面に当接した状態で、前記第一金型が前記軸部材を保持可能であるよう構成した電動流体ポンプのケーシングのインサート成形用金型。
  7. 前記鍔部が、前記軸方向の一方側の端面である外側端面と、前記軸方向の他方側の端面である内側端面とを有し、
    前記第二金型が、前記第一金型面と対向する第二金型面を有し、
    前記第二金型面の一部であって、前記外側端面と対向する対向部において、
    前記外側端面のうち、前記外側端面と前記第二金型面との距離を前記内側端面と前記軸受面との距離より大きく設定してある部分の面積が、前記内側端面の面積以上となり、且つ、前記鍔部の外周部分における前記外側端面と前記外面との距離が、前記外周部分における前記内側端面と前記軸受面との距離より大きくなるように構成した請求項6に記載の電動流体ポンプのケーシングのインサート成形用金型。
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