JP2010144227A - ボンド磁石用組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】良好な磁気特性を保持し、かつ、射出成形性に優れるボンド磁石用組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも磁石粉末とポリアミド樹脂とからなるボンド磁石用組成物であって、前記磁石粉末は、希土類元素を含有し、前記ポリアミド樹脂は、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量が1000〜10000の範囲であり、該ボンド磁石用組成物は、2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有し、かつ、分子量が200以上300以下であるブチルフェノール化合物を0.04〜0.60質量%さらに含有する。
【選択図】なし
【解決手段】少なくとも磁石粉末とポリアミド樹脂とからなるボンド磁石用組成物であって、前記磁石粉末は、希土類元素を含有し、前記ポリアミド樹脂は、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量が1000〜10000の範囲であり、該ボンド磁石用組成物は、2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有し、かつ、分子量が200以上300以下であるブチルフェノール化合物を0.04〜0.60質量%さらに含有する。
【選択図】なし
Description
本発明は、ボンド磁石用組成物、特に、射出成形によって製造されるボンド磁石用の組成物に関する。
フェライト磁石、アルニコ磁石、希土類磁石などが、一般家電製品、通信・音響機器、医療機器、一般産業機器をはじめとする種々の製品にモーターなどとして組込まれ、使用されている。
これらの磁石は、主に焼結法で製造されるが、焼結法で作製した磁石は、脆く、薄肉化しにくいため、複雑形状への成形は困難であり、また、焼結時に15〜20%も収縮するため、寸法精度を高められず、研磨などの後加工が必要で、用途面において大きな制約を受けている。
これに対し、ボンド磁石(樹脂結合型磁石)は、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂をバインダとし、磁石粉末を充填して容易に製造できるため、新しい用途開拓が繰り広げられている。
特に、熱可塑性樹脂をバインダとして、射出成形によって製造される射出成形磁石は、圧縮成形磁石や押出成形磁石などのような他のボンド磁石に比べて、形状自由度に優れるという特徴がある。
射出成形磁石は、射出成形機のシリンダ内部で溶融させたボンド磁石用組成物を金型に射出して製造される。金型には、所定の製品形状を持つキャビティと、スプルあるいはランナと呼ばれる、溶融したボンド磁石用組成物の湯道とが設けられている。金型は、ボンド磁石用組成物に用いられている熱可塑性樹脂の融点以下となるように温度設定されているため、射出された溶融物は、金型内で急速に冷却され固化し、射出成形磁石として取り出される。
ここで、例えば、ポリアミド樹脂をバインダとしたボンド磁石用組成物の場合、金型温度は、80〜110℃程度に設定されることが多い。しかしながら、成形サイクルを短くし、生産性を向上させるために、金型温度をさらに低く設定し、冷却時間を短縮することがある。また、金型に希土類焼結磁石を埋め込むことによって、キャビティに配向磁界を発生させている場合には、希土類焼結磁石の温度係数α(Br)に従って配向磁界が低下するのを防ぐために、金型温度をなるべく低く設定することもある。例えば、希土類焼結磁石としてNd−Fe−B焼結磁石を用いた場合、かかる磁石のα(Br)は−0.11%/Kであり、設定される金型温度が80℃変化すると、配向磁界が9%変わることになる。このような場合、金型温度が80℃未満、さらには10〜50℃に設定されることもある。
設定される金型温度が低いほど、溶融したボンド磁石用組成物がスプルとランナを通過する過程で急速に冷却されるため、ボンド磁石用組成物がキャビティに到達する前や、あるいはキャビティ内に十分充填される前に、固化するショートショットと呼ばれる成形不良が起こりやすくなる。
一つの対応策として、加熱可能なホットスプルシステムやホットランナシステムを金型に組み込み、スプルまたはランナでの固化を回避する方法があるが、金型が高価となって製品単価が上がり、さらに、かかるシステムを複雑な構造を持つ金型に組み込むことは困難である。
また、射出成形機のシリンダ温度を高めて、射出されるボンド磁石用組成物の温度を十分に高めておく方法も考えられるが、磁石粉末が希土類磁石粉末である場合には、高温中に置かれることで酸化による磁石粉末が特性劣化し、所期の磁石性能が得られなくなるおそれがある。
その他、ボンド磁石用組成物の溶融粘度を下げ、流動抵抗を低減することで、速やかにスプルとランナを通過させ、充填させようという方法も提案されている。これを実現させるために、MI(メルトフローインデックス)値の高いバインダを選定したり、滑剤などを添加したり、あるいは、磁石粉末の粉体性状を調整することが行われている。
例えば、(a)単独重合ポリアミド樹脂と、(b)共重合ポリアミド、ポリアミド系エラストマ、およびポリエステル系エラストマのうちいずれかとの混合物で、質量比(b)/(a+b)が特定範囲にあるものを、樹脂バインダとして使用することによって、ボンド磁石用組成物の溶融粘度を低くし、いったん溶融したボンド磁石用組成物の固化速度を、特定範囲に設定することを特徴とするボンド磁石用組成物が提案されている(特許文献1)。かかるボンド磁石用組成物により、配向性がよく、優れた磁気特性を発揮するボンド磁石が得られるとされている。
しかしながら、単純にボンド磁石用組成物の溶融粘度を下げても、射出成形機のシリンダ内部でバックフローが起きるため、高価な超高速射出成形機でないと、その効果が現れにくいという問題がある。また、金型の設定温度が通常の80〜110℃であっても、溶融したボンド磁石用組成物が、金型のスプルブッシュから製品キャビティまで到達する時間が長い場合には、射出充填の途中で、ボンド磁石用組成物の溶融粘度が上昇して、成形不良を起こすことがある。
一方、成形体の高磁力化のために磁石粉末の含有割合を多くしても、良好な溶融流動性を維持することができ、溶融時の流動性低下に基づく成形性の低下を抑制しうるボンド磁石成形物を得るために、樹脂バインダとして、熱可塑性樹脂の主材樹脂に、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体を含有させたボンド磁石用組成物が提案されている(例えば、特許文献2)。また、熱可塑性樹脂からなる主材樹脂に、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体を含有させた樹脂バインダを用いたボンド磁石用組成物が提案されている(例えば、特許文献3)。
これらは、熱可塑性樹脂を主材樹脂として用い、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体あるいは重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体を少量添加し、混合したものを、樹脂バインダとしているが、これらの樹脂バインダでは、ボンド磁石用組成物の射出成形性の向上に係る課題を、十分には解決することはできていない。
これに対して、本発明者らは、ポリアミド樹脂を用いたボンド磁石用組成物において、溶融粘度の温度依存性に着目し、その固化開始温度と固化終了温度の差を特定値以上にすることで、ボンド磁石用組成物の射出成形性の改善に成功した(特許文献4)。
しかしながら、ボンド磁石の小型化と薄肉化が進み、射出成形材料であるボンド磁石用組成物には、さらに良好な射出成形性が要求されている。
特開2001−85209号公報
特開2001−123067号公報
特開2001−240740号公報
特開2005−72564号公報
本発明の目的は、前述のような従来の問題点に鑑み、良好な磁気特性を保持しつつ、射出成形性にも優れるボンド磁石用組成物を提供することにある。
本発明者らは、かかる目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、少なくとも磁石粉末とポリアミド樹脂とからなるボンド磁石用組成物において、2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有し、かつ、分子量が300以下であるブチルフェノール化合物を含有させることにより、ボンド磁石用組成物の良好な磁気特性を保持しながら、その射出成形性をさらに改善しうるという知見を得て、本発明を完成するに至った。
本発明に係るボンド磁石用組成物は、少なくとも磁石粉末とポリアミド樹脂とからなるボンド磁石用組成物であって、前記磁石粉末は、希土類元素を含有し、前記ポリアミド樹脂は、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量が1000〜10000の範囲であり、該ボンド磁石用組成物は、2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有し、かつ、分子量が300以下であるブチルフェノール化合物を0.04〜0.60質量%さらに含有することを特徴とする。
また、前記磁石粉末が、SmFeN系磁石粉末であることが好ましい。
かかるボンド磁石用組成物は、安定化剤をさらに含有することができる。
本発明のボンド磁石用組成物は、特定の添加剤を含有させることにより、金型に射出充填され急冷された後の固化を遅らせることができるため、良好な磁気特性と共に優れた射出成形性を備える。また、かかるボンド磁石用組成物を用いて得られるボンド磁石は機械的強度においても優れている。よって、本発明により、優れた磁気特性を備えつつ、さらなる小型化および薄肉化の要請に応えうるボンド磁石を提供することが可能となる。
本発明は、主として磁石粉末とポリアミド樹脂とにより構成されるボンド磁石用組成物に係る。本発明では、添加剤として、2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有し、かつ、分子量が300以下であるブチルフェノール化合物を含有させることで、良好な磁気特性を保持しつつ、ボンド磁石用組成物の射出成形性を飛躍的に改善している点に特徴がある。
以下、本発明のボンド磁石用組成物について、詳細に説明する。
1.ボンド磁石用組成物
本発明のボンド磁石用組成物は、少なくとも(A)磁石粉末、および、(B)ポリアミド樹脂(B)からなり、(C)2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有するブチルフェノール化合物をさらに含有する。
本発明のボンド磁石用組成物は、少なくとも(A)磁石粉末、および、(B)ポリアミド樹脂(B)からなり、(C)2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有するブチルフェノール化合物をさらに含有する。
(A)磁石粉末
磁石粉末としては、フェライト磁石粉末、アルニコ系磁石粉末、希土類−遷移金属系磁石粉末など、ボンド磁石の原料となる各種の磁石粉末を原材料として使用でき、特に制限されない。ただし、高温で酸化による磁気特性の低下が起こりやすい希土類元素を含有する磁石粉末に対して、本発明は特に効果的に適用されうる。これらは、混合物(ハイブリッド)でもよく、異方性磁石粉末だけでなく、等方性磁石粉末も対象となる。
磁石粉末としては、フェライト磁石粉末、アルニコ系磁石粉末、希土類−遷移金属系磁石粉末など、ボンド磁石の原料となる各種の磁石粉末を原材料として使用でき、特に制限されない。ただし、高温で酸化による磁気特性の低下が起こりやすい希土類元素を含有する磁石粉末に対して、本発明は特に効果的に適用されうる。これらは、混合物(ハイブリッド)でもよく、異方性磁石粉末だけでなく、等方性磁石粉末も対象となる。
磁石粉末に用いられる希土類元素としては、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、およびYが挙げられ、これらから1種または2種以上が選択され、単独もしくは混合物として使用できる。希土類元素としては、Sm、Nd、Pr、Y、La、Ce、Gdが好ましく、特に、NdおよびSmのいずれかが好ましい。
磁石粉末に用いられる遷移金属元素としては、Fe、Co、Ni、およびMnが挙げられ、これらから1種または2種以上が選択される。その他の遷移金属元素として、Cr、V、およびCuのいずれかを含有してもよい。特に好ましい遷移金属元素は、FeおよびCoのいずれかである。
なお、磁石粉末には、主成分に加えて、C、Al、Si、P、Ca、Ti、Mn、Ni、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、およびAuからなる群から選択される1種以上を、7質量%以下、添加すると、磁石粉末の耐熱性を高めることができる。
希土類−遷移金属系磁石粉末としては、例えば、希土類−コバルト系磁石粉末、希土類−鉄−ほう素系磁石粉末、希土類−鉄−窒素系磁石粉末などから選ばれる1種または2種以上の混合物を使用でき、このうち希土類−鉄−窒素系磁石粉末が好適であり、特にSmFeN系磁石粉末が好ましい。
かかるSmFeN系磁石粉末として、20〜25質量%のSm、2.1〜4.0質量%のN、残部が実質的にFeを必須元素とする遷移金属であるTh2Zn17型の結晶構造を持つ金属間化合物からなる磁石粉末が挙げられる。
かかる磁石粉末において、Smが20質量%未満では、得られるボンド磁石の保磁力HcJが低下し、25質量%を超えると、得られるボンド磁石の残留磁束密度Brが低下する。また、Nが2.1質量%未満であるか、4.0質量%を超えると、得られるボンド磁石の保磁力HcJが低下する。残部のFeのうち、その30質量%以下をCoで置換すると、磁石粉末の飽和磁化とキュリー温度が上がり、得られるボンド磁石の温度係数α(Br)を低く抑えることが可能となる。
また、異なるSmFeN系磁石粉末として、20〜25質量%のSm、3.5〜5.5質量%のN、1.0〜10質量%のMn、残部が実質的にFeを必須元素とする遷移金属であるTh2Zn17型の結晶構造を持つ金属間化合物からなる磁石粉末が挙げられる。
かかる磁石粉末において、Smが20質量%未満では、得られるボンド磁石の保磁力HcJが低下し、25質量%を超えると、得られるボンド磁石の残留磁束密度Brが低下する。また、Nが3.5質量%未満であるか、5.5質量%を超えると、得られるボンド磁石の保磁力HcJが低下する。さらに、Mnが1.0質量未満であると保磁力HcJが低下し、10質量%を超えると、残留磁束密度Brが低下する。残部のFeのうち、その30質量%以下をCoで置換すると、磁石粉末の飽和磁化とキュリー温度が上がり、得られるボンド磁石の温度係数α(Br)を低く抑えることができる。
SmFeN系磁石粉末を含む希土類−遷移金属系磁石粉末の物性は、特に限定されるものではないが、得られるボンド磁石用組成物の溶融流動性、磁石粉末の配向性、充填率などの観点から、希土類−遷移金属系磁石粉末の平均粒径は、1〜100μmとすることが好ましい。さらには、1〜50μmが好ましく、1〜10μmであることがさらに好ましい。
なお、希土類元素を含有する磁石粉末においては、Znなどの金属化合物被膜もしくは平均厚さが3〜100nmの燐酸塩被膜で、表面が均一に被覆されたものを用いるのが望ましい。燐酸塩被膜は、少なくとも燐酸鉄と希土類元素燐酸塩を含む複合燐酸塩であり、磁石粉末の表面を保護する被膜である。燐酸塩被膜の平均厚さが3nm未満であると、十分な耐候性が得られず、また、100nmを超えると、磁気特性が低下すると共に、混練性や射出成形性が低下する。
また、本発明においては、要求される磁気特性に合わせて、SrフェライトまたはBaフェライトなどのフェライト磁石粉末、アルニコや鉄クロムコバルトなどの金属磁性材料粉末からなる磁石粉末の1種以上を、希土類−遷移金属系磁石粉末に混合して用いることができる。
この場合、希土類−遷移金属系磁石粉末に対するフェライト磁石粉末の混合比率は、任意に設定できるが、目標とする磁気特性に対して希土類磁石粉末を多めに設定すると、希土類磁石粉末とフェライト磁石粉末との合計量を低減できるため、溶融粘度の低いボンド磁石用組成物が得られ、逆に、フェライトを多めに設定すると、ボンド磁石用組成物のコストパフォーマンスを高めることができる。
(B)ポリアミド樹脂
本発明において、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量が1000〜10000であるポリアミド樹脂を使用する。具体的には、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12などの単独重合ポリアミドや、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612などの共重合ポリアミド、重合脂肪酸型ポリアミドなどが挙げられる。これらの中でも、特に単独重合ポリアミドが好ましい。
本発明において、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量が1000〜10000であるポリアミド樹脂を使用する。具体的には、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12などの単独重合ポリアミドや、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612などの共重合ポリアミド、重合脂肪酸型ポリアミドなどが挙げられる。これらの中でも、特に単独重合ポリアミドが好ましい。
ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量は、1000〜10000の範囲にあることが必要であり、1500〜6000の範囲が好ましい。数平均分子量が1000未満では、得られるボンド磁石の機械的強度が低下する。一方、数平均分子量が10000を超えると、ボンド磁石用組成物の流動性が著しく低下して、射出成形も困難となる場合がある。また、流動性を上げるために高温で射出成形しようとすると、磁石粉末の酸化劣化のため、磁気特性に優れた磁石が得られない。
ポリアミド樹脂の形状は、ペレット状、ビーズ状、パウダー状、およびペースト状のいずれでもよく、均一な混合物を得る点で、パウダー状が望ましい。
ポリアミド樹脂には、必要に応じて他の熱可塑性樹脂を配合することもでき、本明細書において、これらポリアミド樹脂に他の熱可塑性樹脂が配合されているものも、ポリアミド樹脂に含まれるものとする。このような熱可塑性樹脂としては、直鎖状ポリフェニレンサルファイド、架橋型ポリフェニレンサルファイド、セミ架橋型ポリフェニレンサルファイド、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、アイオノマー樹脂、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、メタクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリ三フッ化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルエーテル−アリルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、芳香族ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、各種エラストマーやゴム類などが挙げられる。
また、これらの単独重合体や他種モノマーとのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、他の物質での末端基変性品なども使用できる。さらに、熱可塑性樹脂の2種類以上をブレンドした系も含まれる。
これら他の熱可塑性樹脂の配合量は、樹脂全体の50質量%以下が望ましい。
(C)ブチルフェノール化合物
本発明において、ジ−t−ブチルフェノール構造、例えば、下記式(化1)からなる構造を有し、かつ、分子量が300以下である化合物を添加することによって、ボンド磁石用組成物の射出成形性が著しく改善される。
本発明において、ジ−t−ブチルフェノール構造、例えば、下記式(化1)からなる構造を有し、かつ、分子量が300以下である化合物を添加することによって、ボンド磁石用組成物の射出成形性が著しく改善される。
このようなブチルフェノール化合物としては、2,6−ジ−t−ブチルフェノール(分子量:206)、4,4’−メチレン−bis−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)(分子量:425)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(分子量:220)などが挙げられる。2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有すると、少なくとも分子量は206となる。また、分子量が300を超える化合物では、射出成形性の改善効果が十分に得られない。なおジ−t−ブチルフェノール構造を有する化合物は酸化防止剤として知られているものが少なくない。例えば、前記特許文献1には、数多くの化合物が列挙され,その中にはジ−t−ブチルフェノール構造を有するものとして,ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(分子量1178),オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(分子量531),N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン(分子量643),2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(分子量220),テトラキス[メチレン−3−(3,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(分子量1178),2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール(分子量234)が挙げられている。この中で分子量が300以下である化合物は2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールと2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールであるが,単なる例示に過ぎず実施例などで具体的に検討された結果は示されていない。
添加の方法としては、特に限定されず、例えば、これらを磁石粉末とポリアミド樹脂との混合時に添加してもよいし、磁石粉末とかかるブチルフェノール化合物とを予備混合してから、ポリアミド樹脂と混合する方法でも構わない。
添加量は、全体の0.04〜0.60質量%である。添加量が0.04質量%未満では、射出成形性を改善する効果が小さく、0.60質量%を超えると、得られるボンド磁石の機械的強度が低下してしまう。
なお、ボンド磁石用組成物の射出成形性を表す指標として、従来、JIS K7210「熱可塑性プラスチックの流れ試験方法」に準拠した流動性Q値を用いてきた。しかしながら、かかるブチルフェノール化合物を添加した本発明のボンド磁石用組成物においては、流動性Q値に対する影響がほとんど見られないにもかかわらず、実際に成形すると、このようなブチルフェノール化合物を添加していないものに比べて、低い温度で成形できるなど、射出成形性がより良好となるという特徴がある。
(D)安定化剤
本発明のボンド磁石用組成物には、さらに、必要に応じて、以下に示す各種の添加剤を、本発明の目的を阻害しない範囲で使用することができる。
本発明のボンド磁石用組成物には、さらに、必要に応じて、以下に示す各種の添加剤を、本発明の目的を阻害しない範囲で使用することができる。
例えば、ポリアミド樹脂および磁石粉末の耐熱性を向上させる目的で、熱老化防止剤、酸化防止剤、重金属不活性化剤などの安定化剤を添加することが好ましい。
例えば、このような安定化剤として、ヒンダードアミンなどのアミン系一次酸化防止剤、ヒンダードフェノールなどのフェノール系一次酸化防止剤、イオウ系またはリン系である二次酸化防止剤、シュウ酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒドラジン誘導体などの重金属不活性化剤が挙げられる。特に、ヒドラジン誘導体である2’,3−ビス{{3−{3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル}プロピオニル}}プロピオノヒドラジド、デカメチレンカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドを用いることが好ましい。
なお、かかる安定化剤は、混合工程、混練工程、成形工程のいずれの段階でも添加することができ、ポリアミド樹脂に予め添加してもよい。
また、安定化剤の添加量は、全体の0.01〜1質量%である。添加量が0.01質量%未満では、耐熱性を改善する効果が小さく、1質量%を超えると、得られるボンド磁石の機械強度が低下してしまう。
2.ボンド磁石用組成物の製造
本発明において、ボンド磁石用組成物を製造するには、磁石粉末と、ポリアミド樹脂と、特定の2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有するブチルフェノール化合物とを配合し、混練する。この際に、安定化剤を添加してもよい。
本発明において、ボンド磁石用組成物を製造するには、磁石粉末と、ポリアミド樹脂と、特定の2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有するブチルフェノール化合物とを配合し、混練する。この際に、安定化剤を添加してもよい。
配合量は、全体を100質量%としたとき、通常の磁石粉末を約70〜97質量%とし、ポリアミド樹脂を約3〜30質量%とし、2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有するブチルフェノール化合物を0.04〜0.60質量%とすることが必要である。さらに、好ましい磁石粉末の配合量は85〜95質量%である。
ポリアミド樹脂の配合量が3質量%未満であると、組成物の混練抵抗(トルク)が大きくなり、流動性が低下して、ボンド磁石の成形が困難となる。一方、30質量%を超えると、成形品のひけなどが多くなりがちである。
こうして得られた混合物を、ブラベンダ等のバッチ式ニーダ、バンバリーミキサ、ヘンシェルミキサ、ヘリカルロータ、ロール、一軸押出機、二軸押出機などを用いて、加熱溶融しながら混練する。
混練温度は、ポリアミド樹脂の融点以上であればよく、好ましくは180〜300℃の範囲であり、磁石粉末の高温酸化を防ぐためには、180〜260℃の範囲が特に好ましい。
本発明のボンド磁石用組成物は、以上で得られた混練物をストランド状またはシート状に押し出した後、カッティングしたり、あるいは、混練物をホットカットまたはコールドカットしてブロック状とした後、冷却固化し、さらに粉砕してペレット状などとして、得ることができる。このようにして得られるボンド磁石用組成物は、低温流動性および射出成形性に優れる。
3.ボンド磁石
本発明のボンド磁石用組成物から、ポリアミド樹脂の融点以上、好ましくは200〜260℃の範囲の温度で加熱溶融した後、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法などを用いて、溶融物を磁場中で成形することにより、成形体のボンド磁石を得ることができる。
本発明のボンド磁石用組成物から、ポリアミド樹脂の融点以上、好ましくは200〜260℃の範囲の温度で加熱溶融した後、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法などを用いて、溶融物を磁場中で成形することにより、成形体のボンド磁石を得ることができる。
特に、射出成形法は、成形体の形状の自由度が大きく、しかも得られるボンド磁石の表面性状および磁気特性が優れ、そのまま電子部品の一部として組み込める点で好ましい。射出成形法で得られた成形体は、使用前に着磁することが望ましい。着磁には、静磁場を発生する電磁石、パルス磁場を発生するコンデンサ着磁機などが用いられる。着磁磁場、すなわち磁場強度は、1200kA/m(15kOe)以上が好ましく、さらには2400kA/m(30kOe)以上が好ましい。
得られるボンド磁石は、磁気特性に優れ、かつ、剛性などの機械的強度に優れる。例えば、電子機器用モーター部品など、小型で偏平な複雑形状品に用いられ、大量生産が可能であり、後加工が不要であり、インサート成形が可能であるなどの特徴を有しており、特に、金属材料との一体成形部品に好適である。
以下、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例によって限定されるものではない。
後述する実施例および比較例においては、ボンド磁石用組成物の射出成形性、およびボンド磁石の機械的強度について、以下のようにして評価を行った。
[射出成形性]
かかる実施例および比較例では、本発明が主として適用され、磁界中で成形される異方性ボンド磁石を作製し、かかる磁石の配向度Br/Jmで、射出成形性を評価した。Brは、ボンド磁石の残留磁束密度であり、Jmは、最大磁化である。
かかる実施例および比較例では、本発明が主として適用され、磁界中で成形される異方性ボンド磁石を作製し、かかる磁石の配向度Br/Jmで、射出成形性を評価した。Brは、ボンド磁石の残留磁束密度であり、Jmは、最大磁化である。
具体的には、560kA/m(7kOe)の配向磁界下で射出成形により得られた直径10mm×厚さ7mmの円柱形磁石を、パルス着磁機で5600kA/m(70kOe)の外部磁場をかけて着磁した後、最大磁界1600kA/m(20kOe)のチオフィ型自記磁束計を用いて、磁石の最大磁化Jm(T、×104G)と残留磁束密度Br(T、×104G)を測定し、これらの値から配向度Br/Jmを算出した。配向度Br/Jmの値が大きいほど、配向度が高く、射出成形性が良好である。
一方、従来からの評価法である流動性Q値(cc/s)を、JIS K 7210に準拠して測定した。測定においては、φ1×1mmのダイを用いて、温度250℃、予熱時間120sとし、荷重600N(60kgf)とした。
[機械的強度]
射出成形法により得られ、寸法が、幅(W)8mm×長さ(L)40mm×厚さ(H)2mmであり、長さ方向の端部に1.5×1.0mmの大きさでゲートが設けられた板状試験片を、支点間距離(Lv)30mmで支え、中心に加重を与えて、破断した時の加重(Pb)から、式(数1)で計算される曲げ強さ(Sb)を、機械的強度とした。曲げ強さ(Sb)の値が大きいほど、機械的強度は高い。
射出成形法により得られ、寸法が、幅(W)8mm×長さ(L)40mm×厚さ(H)2mmであり、長さ方向の端部に1.5×1.0mmの大きさでゲートが設けられた板状試験片を、支点間距離(Lv)30mmで支え、中心に加重を与えて、破断した時の加重(Pb)から、式(数1)で計算される曲げ強さ(Sb)を、機械的強度とした。曲げ強さ(Sb)の値が大きいほど、機械的強度は高い。
(実施例1)
SmFeN磁石粉末(住友金属鉱山株式会社製、SFN−C、平均粒径2.3μm)を90.50質量%、ヒドラジン誘導体である重金属不活性化剤2’,3−ビス[{3−{3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル}プロピオニル}]プロピオノヒドラジドを0.20質量%、2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有するブチルフェノール化合物として、分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.05質量%、および、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量2000のポリアミド12樹脂を9.25質量%、全質量が2kgとなるように、秤量して混合した。
SmFeN磁石粉末(住友金属鉱山株式会社製、SFN−C、平均粒径2.3μm)を90.50質量%、ヒドラジン誘導体である重金属不活性化剤2’,3−ビス[{3−{3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル}プロピオニル}]プロピオノヒドラジドを0.20質量%、2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有するブチルフェノール化合物として、分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.05質量%、および、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量2000のポリアミド12樹脂を9.25質量%、全質量が2kgとなるように、秤量して混合した。
得られた混合物を、バッチ式ニーダにて、230℃で、30分間、混練した。混練ブレードの回転数は、50rpmとした。回収した混練物を粉砕して、本実施例のボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。
得られたボンド磁石用組成物を、射出温度250℃、金型温度110℃の条件で磁界中射出成形し、ボンド磁石を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石の機械的強度を評価した。これらの結果を表1に示した。
(実施例2)
分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールの添加量を0.50質量%としたこと、および、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量2000のポリアミド12樹脂を8.80質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、ボンド磁石用組成物、およびボンド磁石を得て、評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールの添加量を0.50質量%としたこと、および、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量2000のポリアミド12樹脂を8.80質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、ボンド磁石用組成物、およびボンド磁石を得て、評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
(実施例3)
ブチルフェノール化合物として、分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールに代えて、分子量206の2,6−ジ−t−ブチルフェノールを0.10質量%添加したこと、および、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量2000のポリアミド12樹脂を9.20質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、ボンド磁石用組成物、およびボンド磁石を得て、評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
ブチルフェノール化合物として、分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールに代えて、分子量206の2,6−ジ−t−ブチルフェノールを0.10質量%添加したこと、および、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量2000のポリアミド12樹脂を9.20質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、ボンド磁石用組成物、およびボンド磁石を得て、評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
(実施例4)
2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有する化合物として分子量234の2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールを0.10質量%とした以外は,実施例3と同様にボンド磁石組成物を製造し評価した。結果を表1に示す。
2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有する化合物として分子量234の2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールを0.10質量%とした以外は,実施例3と同様にボンド磁石組成物を製造し評価した。結果を表1に示す。
(実施例5)
SmFeN磁石粉末(住友金属鉱山株式会社製、SFN−C、平均粒径2.3μm)を45.50質量%、Srフェライト磁石粉末(同和エレクトロニクス株式会社製、JY16、平均粒径1.8μm)43.50質量%、2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有する化合物として分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.07質量%、および、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量2000のポリアミド12樹脂を10.93質量%、全質量が2kgとなるように、秤量して混合した。
SmFeN磁石粉末(住友金属鉱山株式会社製、SFN−C、平均粒径2.3μm)を45.50質量%、Srフェライト磁石粉末(同和エレクトロニクス株式会社製、JY16、平均粒径1.8μm)43.50質量%、2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有する化合物として分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.07質量%、および、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量2000のポリアミド12樹脂を10.93質量%、全質量が2kgとなるように、秤量して混合した。
得られた混合物を、バッチ式ニーダにて、230℃で、30分間、混練した。混練ブレードの回転数は、50rpmとした。回収した混練物を粉砕して、本実施例のボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。
得られたボンド磁石用組成物を使用して、実施例1と同様に、ボンド磁石を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石の機械的強度を評価した。これらの結果を表1に示した。
(比較例1)
2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有するブチルフェノール化合物を添加しなかったこと、および、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量2000のポリアミド12樹脂を9.30質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、ボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有するブチルフェノール化合物を添加しなかったこと、および、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量2000のポリアミド12樹脂を9.30質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、ボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
得られたボンド磁石用組成物を、実施例1と同様に、射出温度250℃、金型温度110℃の条件で磁界中射出成形したところ、直径10mm×厚さ7mmの円柱形磁石は得られたが、端部まで充填できずにショートショットとなって規定の板状試験片が得られず、機械的強度は評価できなかった。
(比較例2)
分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.01質量%添加したこと、および、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量2000のポリアミド12樹脂を9.29質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、ボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.01質量%添加したこと、および、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量2000のポリアミド12樹脂を9.29質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、ボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
得られたボンド磁石用組成物を、実施例1と同様に、射出温度250℃、金型温度110℃の条件で磁界中射出成形したところ、直径10mm×厚さ7mmの円柱形磁石は得られたが、端部まで充填できずにショートショットとなって規定の板状試験片は得られず、機械的強度は評価できなかった。
(比較例3)
分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.80質量%添加したこと、および、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量2000のポリアミド12樹脂を8.50質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、ボンド磁石用組成物、およびボンド磁石を得て、評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.80質量%添加したこと、および、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量2000のポリアミド12樹脂を8.50質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、ボンド磁石用組成物、およびボンド磁石を得て、評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
(比較例4)
ブチルフェノール化合物として、分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールに代えて、分子量531の3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシルエステルを0.10質量%としたこと、および、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量2000のポリアミド12樹脂を9.20質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、ボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
ブチルフェノール化合物として、分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールに代えて、分子量531の3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシルエステルを0.10質量%としたこと、および、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量2000のポリアミド12樹脂を9.20質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、ボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
得られたボンド磁石用組成物を、実施例1と同様に、射出温度250℃、金型温度110℃の条件で磁界中射出成形したところ、直径10mm×厚さ7mmの円柱形磁石は得られたが、端部まで充填できずにショートショットとなって規定の板状試験片は得られず、機械的強度は評価できなかった。
そこで、射出温度を上げたところ、260℃で板状試験片を充填することができ、前記評価方法に従って、ボンド磁石の機械的強度を評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示した。
(比較例5)
ブチルフェノール化合物として、分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールに代えて、分子量1178のテトラキス−[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]メタンを0.10質量%添加したこと以外は、比較例4と同様にして、ボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
ブチルフェノール化合物として、分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールに代えて、分子量1178のテトラキス−[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]メタンを0.10質量%添加したこと以外は、比較例4と同様にして、ボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
得られたボンド磁石用組成物を、実施例1と同様に、射出温度250℃、金型温度110℃の条件で磁界中射出成形したところ、直径10mm×厚さ7mmの円柱形磁石は得られたが、端部まで充填できずにショートショットとなって規定の板状試験片は得られず、機械的強度は評価できなかった。
そこで、射出温度を上げたところ、260℃で板状試験片を充填することができ、前記評価方法に従って、ボンド磁石の機械的強度を評価した。これらの結果を表1に示した。
(比較例6)
ブチルフェノール化合物として、分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールに代えて、分子量425の4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)を0.10質量%添加したこと以外は、比較例4と同様にして、ボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
ブチルフェノール化合物として、分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールに代えて、分子量425の4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)を0.10質量%添加したこと以外は、比較例4と同様にして、ボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
得られたボンド磁石用組成物を、実施例1と同様に、射出温度250℃、金型温度110℃の条件で磁界中射出成形したところ、直径10mm×厚さ7mmの円柱形磁石は得られたが、端部まで充填できずにショートショットとなって規定の板状試験片は得られず、機械的強度は評価できなかった。
そこで、射出温度を上げたところ、260℃で板状試験片を充填することができ、前記評価方法に従って、ボンド磁石の機械的強度を評価した。これらの結果を表1に示した。
(比較例7)
ブチルフェノール化合物として、分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールに代えて、分子量1178のペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを0.10質量%添加したこと以外は、比較例4と同様にして、ボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
ブチルフェノール化合物として、分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールに代えて、分子量1178のペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを0.10質量%添加したこと以外は、比較例4と同様にして、ボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
得られたボンド磁石用組成物を、実施例1と同様に、射出温度250℃、金型温度110℃の条件で磁界中射出成形したところ、直径10mm×厚さ7mmの円柱形磁石は得られたが、端部まで充填できずにショートショットとなって規定の板状試験片は得られず、機械的強度は評価できなかった。
そこで、射出温度を上げたところ、260℃で板状試験片を充填することができ、前記評価方法に従って、ボンド磁石の機械的強度を評価した。これらの結果を表1に示した。
(比較例8)
ブチルフェノール化合物として、分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールに代えて、分子量531のオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを0.10質量%添加したこと以外は、比較例4と同様にして、ボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
ブチルフェノール化合物として、分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールに代えて、分子量531のオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを0.10質量%添加したこと以外は、比較例4と同様にして、ボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
得られたボンド磁石用組成物を、実施例1と同様に、射出温度250℃、金型温度110℃の条件で磁界中射出成形したところ、直径10mm×厚さ7mmの円柱形磁石は得られたが、端部まで充填できずにショートショットとなって規定の板状試験片は得られず、機械的強度は評価できなかった。
そこで、射出温度を上げたところ、260℃で板状試験片を充填することができ、前記評価方法に従って、ボンド磁石の機械的強度を評価した。これらの結果を表1に示した。
(比較例9)
ブチルフェノール化合物として、分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールに代えて、分子量643のN,N'−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンを0.10質量%添加したこと以外は、比較例4と同様にして、ボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
ブチルフェノール化合物として、分子量220の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールに代えて、分子量643のN,N'−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンを0.10質量%添加したこと以外は、比較例4と同様にして、ボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示す。
得られたボンド磁石用組成物を、実施例1と同様に、射出温度250℃、金型温度110℃の条件で磁界中射出成形したところ、直径10mm×厚さ7mmの円柱形磁石は得られたが、端部まで充填できずにショートショットとなって規定の板状試験片は得られず、機械的強度は評価できなかった。
そこで、射出温度を上げたところ、260℃で板状試験片を充填することができ、前記評価方法に従って、ボンド磁石の機械的強度を評価した。これらの結果を表1に示した。
(比較例10)
SmFeN磁石粉末(住友金属鉱山株式会社製、SFN−C、平均粒径2.3μm)を45.50質量%、Srフェライト磁石粉末(同和エレクトロニクス株式会社製、JY16、平均粒径1.8μm)43.50質量%、および、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量2000のポリアミド12樹脂を11.00質量%、全質量が2kgとなるように、秤量して混合した。得られた混合物を、バッチ式ニーダにて、230℃で、30分間、混練した。混練ブレードの回転数は、50rpmとした。回収した混練物を粉砕して、本実施例のボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示した。
SmFeN磁石粉末(住友金属鉱山株式会社製、SFN−C、平均粒径2.3μm)を45.50質量%、Srフェライト磁石粉末(同和エレクトロニクス株式会社製、JY16、平均粒径1.8μm)43.50質量%、および、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量2000のポリアミド12樹脂を11.00質量%、全質量が2kgとなるように、秤量して混合した。得られた混合物を、バッチ式ニーダにて、230℃で、30分間、混練した。混練ブレードの回転数は、50rpmとした。回収した混練物を粉砕して、本実施例のボンド磁石用組成物を得て、前記評価方法に従って、ボンド磁石用組成物の射出成形性を評価した。また、流動性Q値も測定した。これらの結果を表1に示した。
得られたボンド磁石用組成物を、実施例1と同様に、射出温度250℃、金型温度110℃の条件で磁界中射出成形したところ、直径10mm×厚さ7mmの円柱形磁石は得られたが、端部まで充填できずにショートショットとなって、規定の板状試験片は得られず、機械的強度は評価できなかった。
「評価」
本発明の実施例1〜5のボンド磁石用組成物は、曲げ強さを損なわずに、射出成形性に優れている。射出成形性は、配向度Br/Jmや、強度試験の板状試験片を得られる成形温度に現れ、流動性Q値には、傾向が見えていない。
本発明の実施例1〜5のボンド磁石用組成物は、曲げ強さを損なわずに、射出成形性に優れている。射出成形性は、配向度Br/Jmや、強度試験の板状試験片を得られる成形温度に現れ、流動性Q値には、傾向が見えていない。
本発明の実施例1〜5に対して、2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有するブチルフェノール化合物を含まない比較例1、10や、含有量が0.05質量%未満である比較例2では、配向度Br/Jmが低く、また、強度試験の板状試験片が、実施例1〜5と同じ射出温度250℃ではショートショットとなって、成形できていない。一方、分子量が300以下である2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有するブチルフェノール化合物を、0.60質量%を超えて添加した比較例3では、配向度Br/Jmが高く、かつ、強度試験の板状試験片も250℃で成形することができるが、曲げ強さが80MPaと著しく低下している。また、2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有するブチルフェノール化合物を添加していても、分子量が300を超える化合物を添加した比較例4〜9では、配向度Br/Jmの向上度が小さく、射出温度250℃では、強度試験の板状試験片が得られないことからも分かるように成形性が上がらなかった。
Claims (3)
- 少なくとも磁石粉末とポリアミド樹脂とからなるボンド磁石用組成物であって、前記磁石粉末は、希土類元素を含有し、前記ポリアミド樹脂は、ポリメチルメタクリレート換算分子量分布から求めた数平均分子量が1000〜10000の範囲であり、該ボンド磁石用組成物は、2,6−ジ−t−ブチルフェノール構造を有し、かつ、分子量が300以下であるブチルフェノール化合物を0.04〜0.60質量%さらに含有する、ボンド磁石用組成物。
- 前記磁石粉末は、SmFeN系磁石粉末である、請求項1に記載のボンド磁石用組成物。
- 安定化剤をさらに含有する、請求項1または2に記載のボンド磁石用組成物。
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