JP2010143857A - カルニチンの精製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一般式(1)で示される化合物、トリメチルアンモニウム化合物、酸性物質、塩類及びベタイン類から選択される少なくとも1種の化合物を含有するカルニチン混合物に、アルコール溶媒を添加することにより、純度の高いカルニチンを製造することができる。
(式中、R1は、ヒドロキシル基またはβ位の炭素との炭素炭素二重結合を示す。R2はシアノ基、ヒドロキシル基、アミド基、1〜3級のアミノ基又はカルボキシル基を示し、一方のカルボキシル基の酸素と結合して環を形成しても良い。)
【選択図】なし
Description
従来のL−カルニチン製造法としては、D−マンニトールを原料として製造する方法(特許文献1)、γ−ハロアセト酢酸エステルを原料として酵素により不斉還元することを特徴とする方法(特許文献2)、リパーゼを用いて光学選択的に(R)−4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを合成することを特徴とする方法(特許文献3)、γ−ブチロベタイン又はクロトノベタインから微生物によってL−カルニチンを製造する方法(特許文献4)、カルニチンアミドハライドをd−樟脳酸により光学分割し、L−カルニチンに導く方法(特許文献5)などが挙げられる。
従って、本発明の主な目的は、不純物が低減された純度の高いカルニチンを提供することにある。
すなわち、本発明は、一般式(1)で示される化合物、一般式(2)で示される化合物、酸性物質、塩類及びベタイン類から選択される少なくとも1種の化合物を含有するカルニチン混合物に、アルコール溶媒を添加することを含む、カルニチンの精製方法である。
(1)カルニチン
本発明において精製の対象となるカルニチンとしては、その光学活性の種類に限定はない。例えば、光学的に純粋なカルニチン、ラセミ体のカルニチン、光学活性に偏りがあるカルニチンを使用することができる。また本発明において、カルニチンとは、カルニチンの誘導体も含まれる。例えば、カルニチンアシルエステル等を挙げることができる。
・ ジクロロプロパノールを酵素反応によりシアノ化及びアミド化した後、4級化し、加水分解等を行うことにより得られるL-カルニチン。
・ エピクロロヒドリンを順次、4級化、シアノ化、アミド化、光学分割等に供して得られるL-カルニチン。
・ ブチロラクトンを開環、4級化、微生物による反応等に供して得られるL-カルニチン。
・ クロロアセト酢酸エチルを不斉還元、4級化、加水分解等に供して得られるL-カルニチン。
なかでも上記(I)で得られるカルニチンを好適に使用することができる(WO2008/056827号公報参照)。
(2)カルニチン混合物
本発明において精製に供されるカルニチン混合物は、上記のカルニチンの他に不純物を含むものである。不純物としては、以下に示すものが挙げられる。
・不純物1:一般式(1)で示される化合物
一般式(1)で示される具体的な化合物としては、4-ヒドロキシ-2-ブテン酸、3,4-ジヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシグルタル酸、3-ヒドロキシ-4-カルボキシブタナミド、4-シアノ-3-ヒドロキシブタン酸等が挙げられる。これらの化合物は、WO2008/056827号公報記載の方法によりカルニチンを製造した場合、不純物として混入する可能性のある化合物である。特に、3-ヒドロキシグルタル酸及び4-ヒドロキシ-2-ブテン酸は、不純物として混入する可能性が高く、除去の対象となる。
・不純物2:一般式(2)で示される化合物
一般式(2)で示される具体的な化合物としては、2-ヒドロキシ-N,N,N,N,N,N-ヘキサメチル-1,3-プロパンジアミニウム、4-シアノ-2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチル-1-ブタナミニウム、2,3-ジヒドロキシ-N,N,N-トリメチル-1-プロパナムニウム、4-アミノ-2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチル-1-ブタナミニウム、3-カルバモイル-2-プロペニルトリメチルアンモニウム及びカルニチン等が挙げられる。これらの化合物も、WO2008/056827号公報記載の方法によりカルニチンを製造した場合、不純物として混入する可能性のある化合物である。特に、2-ヒドロキシ-N,N,N,N,N,N-ヘキサメチル-1,3-プロパンジアミニウムは、不純物として混入する可能性が高く、除去の対象となる。また上記の化合物は、塩を形成していてもよい。例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム及、マグネシウム等の無機イオンとの塩が挙げられる。
・不純物3:酸性物質、塩類
酸性物質とは、有機酸及び/または無機酸であれば特に限定されないが、有機酸としては、酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、酪酸、クエン酸、樟脳酸、樟脳スルホン酸、フマル酸、マレイン酸、ニコチン酸、シュウ酸、プロピオン酸、ピクリン酸、コハク酸、酒石酸、マロン酸、リンゴ酸、グルタミン酸、無機酸としては、硫酸、塩酸、リン酸、ホウ酸及び硝酸であれば効率よく精製でき好ましい。
より好ましくは、酢酸、酪酸、クエン酸、樟脳酸、樟脳スルホン酸、フマル酸、ニコチン酸、酒石酸、マロン酸、リンゴ酸、グルタミン酸、硫酸、塩酸、リン酸又は硝酸である。
・不純物4:ベタイン類
ベタイン類とは、好ましくはγ‐ブチロベタイン、クロトノベタインである。当該ベタイン類は中性のものだけでなく、正電荷又は負電荷を帯びているものも含む。これらの化合物は、
カルニチン混合物に含まれる上記不純物の含有量は、例えば、カルニチンに対して0.001〜5%程度である。0.001〜1%程度であれば、効果的にカルニチン混合物から取り除くことができるので好ましい。
またγ‐ブチロベタイン、クロトノベタインは、WO2008/056827号公報記載の方法によりカルニチンを製造した場合、不純物として混入する可能性のある化合物である。
(3)カルニチン混合物からのカルニチンの精製
本発明では、上記不純物を除去するためにカルニチン混合物にアルコール溶媒を添加する。ここで、アルコール溶媒とは、少なくとも一種のアルコール系溶媒又は少なくとも一種のアルコール系溶媒とアルコール系溶媒以外の有機溶媒とを含む混合溶媒をいう。
(4)カルニチンを含有するアルコール溶液の採取
次に上記のごとく調製したカルニチンを含有するアルコール溶液は、公知の方法で採取又は分離する。例えば、遠心分離、濾過等の方法を採用することができる。当該操作により、アルコール溶液に溶解しなかった不純物を分離することができる。
なかでも、硫酸ナトリウム、クロトノベタイン、3-ヒドロキシグルタル酸及び4-ヒドロキシ-2-ブテン酸などは、溶解しなかった不純物中に濃縮されることにより、ろ過工程を経ることで、後の晶析工程と併せて効果的にカルニチンから取り除くことができる。
好ましくはろ過工程を経た後、晶析等の精製を行うことで、溶解しなかった不純物を効率的に取り除く。ろ過工程だけでもカルニチンに含まれる不純物は減らすことができる。
ろ過を行う場合、分離に用いる濾紙、濾布又はカートリッジフィルターは特に限定されない。捕集される粒子の最小径が約0.1μm〜100μmのものが好ましく用いられる。さらに好ましくは、捕集される粒子の最小径が約0.2μm〜50μmであれば、目抜けを抑えながら効率的に濾過を行うことができる。
(5)晶析
次に上記で採取したアルコール溶液から、晶析操作を行うことによりカルニチン結晶を析出させ単離する。
以下、晶析操作の内、溶媒置換に関して詳細に説明する。
(4)精製カルニチン
得られた晶析完了液からのカルニチンの結晶を分離する方法は特に限定されない。通常の結晶を液体から分離する方法、例えば、遠心分離、濾過等の方法を用いることができる。カルニチンの結晶は高い吸湿性を有するため、乾燥空気、乾燥窒素など雰囲気下で実施することが好ましい。
また、必要に応じて、乾燥することもできる。乾燥方法も純度の高いカルニチンが得られれば特に限定されない。例えば80℃以下で加熱しながら、常圧又は減圧下で、残留する溶媒を除去することができる。
このようにして得られたカルニチンは、一般式1で示される化合物、一般式2で示される化合物及び酸性物質かななる群から選ばれる少なくとも一種とベタイン類とを含む不純物の含量が低く、カルニチンの分析方法についても特に限定されるものではなく、適宜選択することができる。
表2の不純物を含むカルニチン混合物(pH6.8)20.0gを調製した。なおカルニチンは公知の方法で調製した。
次に前記カルニチン溶液を、温度を維持したまま加圧濾過器に供し、0.2MPaの乾燥窒素で加圧濾過を行い濾液を回収した。
濾過後、4.0gのメタノール、1-ブタノールの混合溶液(混合比率1:3)でリンスを行った。濾紙はadvantec 4A を用いた。
得られた濾液を60℃で加熱し、アスピレーターで減圧し6.7kPaで濃縮を行った。
カルニチンスラリー溶液の重量が98.3gとなったところで濃縮を終了し、液温を56℃から1℃/minの冷却速度で20℃まで冷却した後、0.2MPaの乾燥窒素で加圧濾過を行った。
カルニチンスラリー溶液全量を濾過した後、4.1g、2.0gの1-ブタノールを用いてケークをリンスした。結晶を回収したところ、乾燥重量で16.3gの精製されたL-カルニチンが得られた。
また、前記精製結晶中に含まれる不純物は、表3に示した。
実施例1と同様のカルニチン混合物20.0gに、1-ブタノールを480.0g添加し、40℃で加熱しながらカルニチンを完全に溶解させた。
次に、実施例1と同様に濾過を行い、4.0gの1-ブタノールでリンスを行った後、濾液を回収した。得られた濾液を60℃で加熱しながらアスピレーターで減圧し3.3kPaで濃縮を行った。カルニチンスラリー溶液の重量が135.9gとなったところで濃縮を終了し、液温を56℃から1℃/minの冷却速度で20℃まで冷却した後、0.2MPaの乾燥窒素で加圧濾過を行った。カルニチンスラリー溶液全量を濾過した後、4.1g、2.0gの1-ブタノールを用いてケークをリンスした。結晶を回収したところ、乾燥重量で16.0gの精製されたL-カルニチンが得られた。
前記精製結晶中に含まれる不純物は、表4に示した。
実施例1と同様のカルニチン粗結晶20.0gに、メタノールを20.0g添加し、40℃で加熱しながらカルニチンを完全に溶解させた。
次に、実施例1と同様に濾過を行い、4.0gのメタノールでリンスを行った後、濾液を回収した。得られた濾液に1-ブタノールを60.0g添加した後、60℃で加熱しながらアスピレーターで減圧し3.3kPaで濃縮を行った。カルニチンスラリー溶液の重量が73.6gとなったところで濃縮を終了し、液温を56℃から1℃/minの冷却速度で20℃まで冷却した後、0.2MPaの乾燥窒素で加圧濾過を行った。カルニチンスラリー溶液全量を濾過した後、4.1g、2.0gの1-ブタノールを用いてケークをリンスした。結晶を回収したところ、乾燥重量で16.0gの精製されたL-カルニチンが得られた。
前記精製結晶中に含まれる不純物は、表5に示した。
実施例1と同様のカルニチン粗結晶20.0gに、メタノールと1-ブタノールを1:2で混合したアルコール溶液を53.4g添加し、30℃で加熱しながらカルニチンを完全に溶解させた。
次に、実施例1と同様に濾過を行い、4.0gのメタノール、1-ブタノールの混合溶液(混合比率1:2)でリンスを行った後、濾液を回収した。
得られた濾液に、17.8gの1-ブタノールを追加し、60℃で加熱しながらアスピレーターで減圧し6.7kPaで濃縮を行った。カルニチンスラリー溶液の重量が71.7gとなったところで濃縮を終了し、液温を56℃から1℃/minの冷却速度で20℃まで冷却した後、0.2MPaの乾燥窒素で加圧濾過を行った。カルニチンスラリー溶液全量を濾過した後、4.1g、2.0gの1-ブタノールを用いてケークをリンスした。結晶を回収したところ、乾燥重量で16.9gの精製されたL-カルニチンが得られた。
前記精製結晶中に含まれる不純物は、表6に示した。
実施例1と同様のカルニチン粗結晶20.0gに、メタノールと1-ブタノールを1:4で混合したアルコール溶液を170.0g添加し、30℃で加熱しながらカルニチンを完全に溶解させた。
次に、実施例1と同様に濾過を行い、4.0gのメタノール、1-ブタノールの混合溶液(混合比率1:4)でリンスを行った後、濾液を回収した。
得られた濾液を60℃で加熱しながらアスピレーターで減圧し6.7kPaで濃縮を行った。カルニチンスラリー溶液の重量が147.8gとなったところで濃縮を終了し、液温を56℃から1℃/minの冷却速度で20℃まで冷却した後、0.2MPaの乾燥窒素で加圧濾過を行った。カルニチンスラリー溶液全量を濾過した後、4.1g、2.0gの1-ブタノールを用いてケークをリンスした。結晶を回収したところ、乾燥重量で15.8gの精製されたL-カルニチンが得られた。
前記精製結晶中に含まれる不純物は、表7に示した。
Claims (8)
- アルコール溶媒を添加し、次いでろ過することを含む請求項1記載の精製方法。
- アルコール溶媒が、メタノール、1−ブタノール又はメタノール及び1−ブタノールの混合溶媒である請求項1又は2記載の精製方法。
- アルコール溶媒がメタノール及び1−ブタノールの混合溶媒であって、メタノール:1−ブタノール=1:2〜1:4である請求項1又は2記載の精製方法。
- 一般式(1)で示される化合物が、3-ヒドロキシグルタル酸及び/又は4-ヒドロキシ-2-ブテン酸である請求項1〜4のいずれかに記載の精製方法。
- 一般式(2)で示される化合物が、2-ヒドロキシ-N,N,N,N,N,N-ヘキサメチル-1,3-プロパンジアミニウムである請求項1〜5のいずれかに記載の精製方法。
- 塩類が、硫酸ナトリウム及び/又は塩化ナトリウムである請求項1〜6のいずれかに記載の精製方法。
- ベタイン類が、γ‐ブチロベタイン及び/又はクロトノベタインである請求項1〜7のいずれかに記載の精製方法。
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