第1の発明は、室内機筐体の内部に収容された送風ファンと熱交換器とを有し、筐体に吸込口が形成されるとともに筐体の上部に上部吹出口が形成された床置き型空気調和機であって、筐体前面における上部吹出口の下方に下部吹出口を設けるとともに、該下部吹出口を開閉する下部上下風向変更羽根と、該下部上下風向変更羽根を駆動する駆動機構を設け、該駆動機構により下部上下風向変更羽根を駆動して下部吹出口から吹き出される空気を上下に風向制御するようにしている。
この構成は、空気調和機の停止時に、下部上下風向変更羽根で下部吹出口を閉止することができるので、筐体内に塵埃や異物が流入することがない。また、下部上下風向変更羽根で室内機から吹き出される空気を上下に風向制御できるので、汎用性が高い。
第2の発明は、空気調和機の停止時には、下部吹出口を下部上下風向変更羽根により閉止する一方、空気調和機の運転開始時には、駆動機構により下部上下風向変更羽根を筐体の内部に移動させることにより、人が無意識に下部上下風向変更羽根に接触することがなく、安全性に優れている。
第3の発明は、下部上下風向変更羽根の筐体内部への移動に際し、下部上下風向変更羽根の全てが下部吹出口の閉止時の前面より前方に突出することがないように寸法設定することにより、同様の効果を奏することができる。
第4の発明は、空気調和機の運転時、駆動機構により下部上下風向変更羽根を常に前方かつ下方に向かって傾斜させるようにしたので、人の足元を狙った空調制御が可能になる。
第5の発明は、駆動機構を、下部上下風向変更羽根に取り付けられた上部及び下部連結軸と、該上部及び下部連結軸の一方を駆動する駆動軸と、筐体に形成され上部及び下部連結軸の各々の両端をそれぞれガイドする二つのガイド溝とで構成したので、下部上下風向変更羽根の作動に多くの部品を必要としない。
第6の発明は、下部上下風向変更羽根の後方に、下部吹出口から吹き出される空気を左右に風向制御する下部左右風向変更羽根を設けたので、きめ細かい空調制御を行うことができる。
第7の発明は、上部吹出口から空気を吹き出す場合に、下部上下風向変更羽根及び下部左右風向変更羽根とで下部吹出口を閉止したので、下部吹出口の密封性が向上する。
<空気調和機の全体構成>
図1乃至図3は本発明に係る床置き型空気調和機を示しており、この床置き型空気調和機は、冷媒配管により互いに接続された室外機と室内機とで構成されており、図1乃至図3は特に室内機を示している。
図1乃至図3に示されるように、本発明に係る床置き型空気調和機は、略直方体状の筐体2を備え、筐体2の左右側壁2aの下部には、室内空気を吸引するための縦長の吸込口4が形成されている。また、筐体2の前面上部及び中間部には、吸込口4から吸引された空気を室内に吹き出すための横長の上部吹出口6及び下部吹出口8がそれぞれ形成されている。さらに、筐体2の前面における上部吹出口6と下部吹出口8との間には、操作パネル10が取り付けられ、操作パネル10の下方には、居住空間にいる人の在否を検知する人体検知装置12が設けられている。なお、図1に示されるように、人体検知装置12はカバーで覆われており、図2はカバーを取り外した状態を示している。
筐体2の背面の両側部には、それぞれコーナーカット部2cが形成されており、コーナーカット部2cを設けることで、室内機を室内の角部に設置する場合、二つのコーナーカット部2cが直交する二つの壁面に近接するように配置することで、設置面積を極力小さくすることができる。
筐体2の内部下方には送風ファン14が配置され、送風ファン14の上方には熱交換器16が配置されており、室内空気は、吸込口4を介して送風ファン14により吸引されて熱交換器16により熱交換され、上部吹出口6及び下部吹出口8の少なくとも一つを介して室内に吹き出される。したがって、熱交換器16は、筐体2の内部を通過する空気流から見ると送風ファン14の下流側に位置している。
また、上部吹出口6には、その前側に吹出空気を上下に風向制御するための横方向に延びる複数枚(例えば、上羽根、中羽根、下羽根の3枚)の上下風向変更羽根18が配置されており、上部吹出口6の後側には、吹出空気を左右に風向制御するための縦方向に延びる複数枚(例えば、9枚)の左右風向変更羽根20が配置されている。上下風向変更羽根18の各々(上羽根、中羽根、下羽根)は、駆動モータ(図示せず)にそれぞれ連結されており、駆動モータに駆動されて上下風向変更羽根18の各々は独立して上下に揺動自在に制御される。一方、左右風向変更羽根20は、左側3枚、中央3枚、右側3枚をそれぞれ一つのブロックとする三つのブロックに分割されている。各ブロックを構成する3枚の左右風向変更羽根20は連結桟で互いに連結されており、その一枚が駆動モータに連結されることで、ブロック毎に独立して左右風向変更羽根20の角度を変更することができる。
なお、図1に示されるように、空気調和機の停止時には、上部吹出口6は上部可動パネル(以下、単に「上部パネル」という)22により閉止されており、上下風向変更羽根18も左右風向変更羽根20も外部から見えないように構成されている。
一方、下部吹出口8の後方には、吹出空気を上下に風向制御するための横方向に延びる1枚の上下風向変更羽根24が配置されており、上下風向変更羽根24の後方には、吹出空気を左右に風向制御するための縦方向に延びる複数枚(例えば、12枚)の左右風向変更羽根26が配置されている。空気調和機の停止時には、下部吹出口8は上下風向変更羽根24により閉止されており、上下風向変更羽根24が下部吹出口8のカバーとして機能することで、左右風向変更羽根26は外部から見えないように構成されている。また、上下風向変更羽根24は駆動モータ(図示せず)に連結されており、駆動モータに駆動されて上下に揺動自在に制御される。一方、左右風向変更羽根26は、複数枚の羽根が連結桟で互いに連結されており、その一枚が駆動モータに連結されることで、複数枚の羽根は一体的に角度変更される。
また、図3に示されるように、室内機筐体2の前面下部は垂直面となっているのに対し、前面上部は、上方に向かって徐々に後退するように円弧状に形成されており、空気調和機の運転時、上部吹出口6を開口した状態でも、上部パネル22及び上部上下風向変更羽根18の前縁は、下部前面を真上に延長した面の前方に突出することがないように寸法設定されており、室内機の前方を移動する人や荷物の妨げになることはない。
さらに、下部上下風向変更羽根24も室内機筐体2の前面から前方に突出することがないように寸法設定されており、その詳細については後述する。
なお、図1及び図2には、上部吹出口6を筐体2の前面上部に1個所配設した床置き型空気調和機を図示したが、上部吹出口6を筐体2の前面上部の左右に2個所配設したり、天面に1個所配設することも可能で、上部吹出口6の位置については、特に限定するものではない。
<上部パネル及びその駆動機構>
図4は上部パネル22の駆動機構を示しており、上部パネル22は、その上部の両端がアーム28の一端に接続されている。各アーム28は、その中間部が折曲した形状を呈しており、図5に示されるように、各アーム28の他端には下部ガイドピン30が取り付けられ、各アーム28の折曲部の上方に位置する部位には上部ガイドピン32が取り付けられている。また、これらのガイドピン30,32は、各アーム28の左右両面より外側及び内側に突出している。
アーム28は、左右一対のケーシングハーフ34a,34bで構成された二つ割りのケーシングに揺動自在に収容されており、ケーシングハーフ34aとアーム28との間には、第1ギヤ36、第2ギヤ38、第3ギヤ40、第4ギヤ42が回動自在に取り付けられている。一方、ケーシングハーフ34bには、下部ガイド溝44及び上部ガイド溝46が形成されており(図8参照)、これらのガイド溝44,46にガイドピン30,32の一端がそれぞれ遊挿されている。
さらに詳述すると、ケーシングハーフ34a,34bの下端近傍の前部には、セクタギヤで構成された第2ギヤ38が配設され、第2ギヤ38の一端部(空気調和機停止時における上端部)近傍には、ガイドピン駆動板47が取り付けられ、このガイドピン駆動板47に形成された下部ガイドピン挿入孔47aに下部ガイドピン30は遊挿されている(図14(c)参照)。また、第2ギヤ38は、その後方に配設された第1ギヤ36と噛み合っており、第1ギヤ36は駆動モータ(図示せず)に連結されて駆動モータにより駆動される。さらに、第1ギヤ36の上方には、第1ギヤ36と噛み合う第3ギヤ40が配設され、第3ギヤ40の上方には、第4ギヤ42が配設されている。第1ギヤ36及び第3ギヤ40は、その全周に多数の噛合歯が形成されているのに対し、第4ギヤ42は、その周囲の一部(空気調和機停止時には、第4ギヤ42の上部に位置している)にのみ形成された多数の噛合歯を有し、その回転軸48にはレバー50の一端が接合され、レバー50の他端側には、レバー50の長手方向の中心線に沿って延びる長孔50aが形成されており、この長孔50aに上部ガイドピン32が遊挿されている。
また、ケーシングハーフ34bに形成された下部ガイド溝44は、第2ギヤ38の回転中心を中心とする円弧状に形成されているのに対し、上部ガイド溝46は、第4ギヤ42の前方より斜め上方に延びて変曲点を持ち、変曲点からさらに上方に凸状の曲線を描いて第4ギヤ42の後方で終端している。なお、上部及び下部ガイドピン32,30の離間距離は一定であることから、上部ガイド溝46の上方に凸状の曲線は、上部及び下部ガイドピン32,30の離間距離、下部ガイド溝44の円弧形状及びレバー50の長孔50aの中心線の位置に基づいて決定される。
上記構成の上部パネル22の駆動機構において、空気調和機の停止時には、下部ガイドピン30は下部ガイド溝44の最下端部に位置しており、上部ガイドピン32は上部ガイド溝46の前部の最下端部に位置しており、上部吹出口6は上部パネル22により閉止されている。
この状態では、上部パネル22の前面は、室内機筐体2の前面と面一(ひと繋がりの面)となっており、上部パネル22を含めた筐体2の前面には一切の段差が存在しない。また、上部パネル22の前面は、平面あるいは曲率半径が極めて大きい凸面を呈しており、凹凸のある面に比べて塵埃が付着しにくく清掃が容易な形状となっている。
なお、上部パネル22及びその駆動機構の様々な変形例を後述するが、空気調和機の停止時に、上部パネル22の前面が室内機筐体2の前面と面一となり、上部パネル22を含めた筐体2の前面に段差が存在しない形状は、変形例においても同じである。
リモコン(遠隔操作装置)等を操作して空気調和機の運転を開始すると、駆動モータにより第1ギヤ36が駆動され、矢印A方向に回転する。第1ギヤ36の矢印A方向の回転に伴って、第2ギヤ38が矢印B方向に回転し、下部ガイドピン30は第2ギヤ38により駆動されて下部ガイド溝44に沿って前方斜め上方に向かって徐々に上昇する。したがって、上部ガイドピン32は上方に押し上げられ、上部ガイド溝46の変曲点に向かって前方斜め上方に移動する。
また、第1ギヤ36に噛み合う第3ギヤ40は矢印C方向に回転し、上部ガイドピン32の上昇に伴ってレバー50が上昇することから第4ギヤ42も矢印D方向に回転するが、上部ガイドピン32が上部ガイド溝46の変曲点に至るまでは、第4ギヤ42は第3ギヤ40と噛み合うことはなく、第3ギヤ40は遊転している。
図6は、上部ガイドピン32が上部ガイド溝46の変曲点に到達した状態を示しており、空気調和機の運転開始からこのときに至るまで、上部パネル22は前方に移動しながら上昇する。
図6の状態から、第1ギヤ36がさらに矢印A方向に回転すると、第2ギヤ38もさらに矢印B方向に回転し、下部ガイドピン30は下部ガイド溝44に沿って前方斜め上方に向かって徐々に上昇する。また、この時点で第3ギヤ40は第4ギヤ42と噛み合うことになり、第4ギヤ42が第3ギヤ40により回転駆動されることで、レバー50も同様に後方に回転することになり、上部ガイドピン32は、第4ギヤ42に駆動されて上部ガイド溝46に沿って徐々に後方に移動する。
図7及び図8は、下部ガイドピン30が下部ガイド溝44に沿って前方斜め上方に向かって徐々に上昇し、上部ガイドピン32が上部ガイド溝46に沿って徐々に後方に移動している状態を示しており、図9は、下部ガイドピン30が下部ガイド溝44の前端部に到達し、上部ガイドピン32が上部ガイド溝46の後端部に到達した状態を示している。
なお、上部ガイドピン32が上部ガイド溝46の変曲点を通過した後は、上部パネル22は後方に向かって回転し、図9の状態では、上部パネル22は室内機筐体2の天板の真上に位置しており略水平に延在している。上述したように、筐体2背面の両側部には、それぞれコーナーカット部2cが形成されているが、上部パネル22が筐体2の天板の真上で略水平に延在している場合でも、上部パネル22はコーナーカット部2cから突出しないように寸法設定されている。
ただし、図9は冷房運転時の状態を示しており、後述するように、暖房運転時には、上部パネル22は前方に向かって下方に傾斜した状態で保持される。
以上説明したように、上部パネル22の駆動機構は、アーム28、下部ガイドピン30、上部ガイドピン32、第1乃至第4ギヤ36,38,40,42、下部ガイド溝44、上部ガイド溝46、回転軸48、レバー50等により構成されており、空気調和機の運転を開始すると、上部パネル22を駆動して上部吹出口6を開口させ、室内機筐体2の外側に移動させる。
この構成は、上部パネル22の駆動が、アーム28を駆動することで行われるので、上部パネル22の開閉構造が簡素である。また、下部ガイドピン30及び上部ガイドピン32を下部ガイド溝44及び上部ガイド溝46にそれぞれ遊挿し、各ガイドピン30,32を第1乃至第4ギヤ36,38,40,42のいずれか一つで駆動するようにしたので、上部パネル22の複雑な動きを簡素な構成で達成することができる。さらに、レバー50に形成された長孔50aに上部ガイドピン32を遊挿し、下部ガイド溝44を円弧状に形成する一方、上部ガイド溝46を、二つのガイドピン30,32の離間距離、下部ガイド溝44の円弧形状及びレバー50の長孔の中心線の位置に基づいて決定したので、上部パネル22のスムーズな回転を実現することができる。また、第4ギヤ42は、その一部にのみ噛合歯が形成されているので、上部ガイドピン32とレバー50の長孔50aと上部ガイド溝46の間で干渉が生じることなくパネルのスムーズな回転を実現することができる。
また、上部パネル22を開制御するに際し、上部パネル22を前方に移動させながら上昇させ、さらに後方に向かって回転させることで、移動中の上部パネル22が筐体2の前面と天面(天板)とが成すコーナー部と干渉する範囲を少なくすることができ(図18(c)参照)、意匠面の自由度を増大できるとともに、筐体2内部の容量を増大することができる。
ここで、第4ギヤ42の必要性について、第4ギヤ42の全周に噛合歯が形成された仮想の図10乃至図12を参照しながら説明する。
図4から図6の状態に上部パネル22が移動する時は、下部ガイドピン30が第2ギヤ38により押し上げられ、上部ガイドピン32は上部ガイド溝46に沿って上昇するが、変曲点を越えると、上部ガイドピン32は上部ガイド溝46の側縁に押し付けられ抵抗が発生する。また、上部パネル22の重量によるモーメントにより回転したい方向の逆方向に力が働くため、アーム28を駆動するのに非常に大きな力を要する。また、図7の位置を僅かに過ぎた図10の位置では、上部パネル22が閉じようとするモーメントと開こうとするモーメントが釣合い、上部パネル22が動かなくなるポイントが生じるばかりでなく、釣合う位置を越えた途端に上部パネル22が開方向に一気に回転する現象が生じるおそれがある。
このような問題を解消するため、第4ギヤ42を設け、第1ギヤ36の回転角度に比例した回転角度を上部22パネルに与えるとともに、上部パネル22の回転モーメントと上部ガイドピン32と上部ガイド溝46に生じる抵抗を打ち消す回転モーメントを与え、上部パネル22のスムーズな回転をサポートしている。
次に、第4ギヤ42は、その周囲の一部にのみ噛合歯を有し、他の部分に噛合歯を形成していない理由について説明する。
上部パネル22を開状態から閉制御する場合、上部ガイドピン32が上部ガイド溝46の変曲点の後方に位置する状態から、第3ギヤ40と第4ギヤ42との最終噛合位置である図11の位置までアーム28が移動するまでは、上部ガイドピン32とレバー50の長孔50aと上部ガイド溝46は必ず重なるように寸法設定されている。
しかしながら、アーム28が図11の位置から図12の位置に移動する場合、第4ギヤ42の全周に噛合歯を形成すると(図11及び図12の細線参照)、第4ギヤ42は第1ギヤ36の回転角度に比例して回転し(図12では第4ギヤ42を10山回転させている)、レバー50の長孔50aは図12に示される位置まで到達するのに対し、上部ガイドピン32は上部ガイド溝46にガイドされることから、上部ガイドピン32とレバー50の長孔50aと上部ガイド溝46が重ならないことになる。つまり、変曲点を越えた時点で上部ガイドピン32と長孔50aと上部ガイド溝46との間で干渉が生じ、上部パネル22が回転しなくなる。
そこで、上部パネル22を閉じる方向に上部ガイドピン32が変曲点を過ぎると、ギヤ接続(第3ギヤ40と第4ギヤ42との噛み合い)が起こらないように第3ギヤ40と対向する第4ギヤ42の部分には噛合歯は形成されていない。
また、上部パネル22が上昇あるいは下降する範囲は、上部ガイドピン32が上部ガイド溝46を上下し、上部ガイド溝46の抵抗や上部パネル22の重量によるモーメントも小さいので、レバー50によるサポートの必要性もない。
なお、第1ギヤ36を駆動する駆動モータに加え、レバー50を駆動する別の駆動モータを設け、これら二つの駆動モータが同期するように制御するとともに、レバー50の駆動モータの回転速度を変曲点で変えるようにしてもよい。
また、上記構成において、第1ギヤ36を駆動モータに連結し、第1ギヤ36を介して第2ギヤ38、第3ギヤ40等を駆動するようにしたが、第2ギヤ38あるいは第3ギヤ40を駆動モータに連結し、第2ギヤ38あるいは第3ギヤ40を介して他のギヤを駆動するようにしてもよい。
さらに、図3に示されるように、空気調和機の運転時、上部パネル22の前縁22eは、室内機筐体2の天板前縁2dより前方に飛び出しており、上部パネル22を室内機筐体2とともに上部吹出口6から吹き出される空気をガイドするための風路として作用させることで、機能性を向上させている。また、上部パネル22は任意の位置に保持することができることから、上部吹出口6から吹き出される空気を上下に風向制御する上下風向変更羽根としても作用し、機能性がさらに向上している。
なお、上部パネル22は、空気調和機の運転時、室内機筐体2の外側に移動するが、外側に移動する構成は、以下に説明する変形例についても同様である。
<上部パネル及びその駆動機構の第1の変形例>
図13は上部パネル22の駆動機構の変形例を示しており、図14に示されるように、第4ギヤ42(図14(a))、下部ガイド溝44及び上部ガイド溝46(図14(b))、ガイドピン駆動板47(図14(c))の形状が上述した駆動機構とは相違している。
詳述すると、上述した駆動機構においては、第4ギヤ42は、空気調和機が停止した状態では、その上部から後部(レバー50の略反対側の部位)に渡って多数の歯が形成されているが、本変形例においては、第4ギヤ42の後部には歯が形成されていない。
また、下部ガイド溝44は、略垂直に延びる直線部44aと、円弧部44bとを有し、直線部44aと円弧部44bとの間に変曲点を持つ形状を呈しているのに対し、上部ガイド溝46は、変曲点の下方に略垂直に延びる直線部46aが形成されている。
さらに、ガイドピン駆動板47には、その長手方向の中心線に沿って延びる長孔47bが形成されており、この長孔47bに下部ガイドピン30が遊挿されている。
上記構成の駆動機構は、空気調和機の運転を開始すると、駆動モータにより第1ギヤ36が矢印A方向に回転すると、第2ギヤ38が矢印B方向に回転し、下部ガイドピン30は下部ガイド溝44の直線部44aに沿って略真上に上昇し、変曲点を通過後は、下部ガイド溝44の円弧部44bに沿って前方斜め上方に上昇し、下部ガイド溝44の前端部に到達する。なお、下部ガイドピン30が下部ガイド溝44の直線部44aに沿って略真上に上昇するに際し、下部ガイドピン30と第2ギヤ38の回転中心までの距離が変わることから、ガイドピン駆動板47の下部ガイドピン挿入孔47bは長孔となっている。
一方、上部ガイドピン32は、第2ギヤ38の矢印B方向への回転に伴って、上部ガイド溝46の直線部46aに沿って略真上に上昇し、変曲点を通過後は、上部ガイド溝46に沿って徐々に後方に移動し、上部ガイド溝46の後端部に到達する。
上部パネル22の駆動機構が上述した構成を有することで、空気調和機の運転開始(図13及び図16(a)参照)から下部ガイドピン30が下部ガイド溝44の変曲点に到達し、上部ガイドピン32が上部ガイド溝46の変曲点に到達するまでは(図15及び図16(b)参照)、上部パネル22は略真上に上昇し、その後は、上部パネル22は後方に向かって回転して(図16(c)参照)、室内機筐体2の天板の真上に到達して略水平に延在することになる(図16(d)参照)。
この構成においては、上部パネル22を開制御するに際し、上部パネル22を上昇させ、さらに後方に向かって回転させることで、移動中の上部パネル22と筐体2のコーナー部との干渉範囲を少なくすることができ、意匠面の自由度を増大できるとともに、筐体2内部の容量を増大することができる。
また、この構成においても、上部パネル22は、風路を構成するとともに上下風向変更羽根としても作用する。
<上部パネル及びその駆動機構の第2の変形例>
図17は上部パネル及びその駆動機構の別の変形例を示しており、この変形例の場合、室内機筐体2の上部形状及び上部パネルの形状も図1乃至図3に図示されたものとは相違している。
さらに詳述すると、この変形例においては、筐体2の上部は円弧形状を呈しており、上部パネル22Aは、直線状に形成されたアーム28Aの一端に接続され、アーム28Aの他端は室内機筐体2に回動自在に取り付けられるとともに駆動機構を構成する駆動モータ(図示せず)に連結されている。上部パネル22Aにおけるアーム28Aとの接続部近傍は円弧形状を呈しており、この円弧部22aの下方に直線部22bが形成されている。
同様に、筐体2の天板及び左右側壁2aの前方上部も、上部吹出口6の閉止時において上部パネル22Aの円弧部22aと対向する部位とアーム28Aの回動範囲内において、上部パネル22Aの円弧部22aの曲率半径と略同じ曲率半径を持つ円弧形状に形成されている。
上記構成において、空気調和機の停止時は、図17(a)に示されるようにアーム28Aは最前方位置にあり、空気調和機の運転を開始すると、駆動モータにより回転駆動されて、図17(b)及び(c)に示される状態まで所定の角度(例えば、90度)回転する。一方、上部パネル22Aは、アーム28Aの回転に伴って、前方に移動しながら回転し、室内機筐体2の天板の真上に到達してその直線部22bが略水平に延在することになる。
図18(a)は、上部パネル22が上昇した後、回転して後方移動する場合の軌跡を示し、図18(b)は、上部パネル22Aが上昇することなく回転して後方移動する場合の軌跡を示しており、図18(c)及び(d)から分かるように、前者の場合は、室内機筐体2の前方上部が前方に向かって徐々に下降するなだらかな曲線を呈しているのに対し、後者の場合は、室内機筐体2の前方上部を円弧状に形成する必要がある。
この構成においては、上部パネル22を開制御するに際し、上部パネル22を前方に移動させ、さらに後方に向かって回転させることで、移動中の上部パネル22と筐体2のコーナー部との干渉範囲を少なくすることができ、意匠面の自由度を増大できるとともに、筐体2内部の容量を増大することができる。
また、この構成においても、上部パネル22は、風路を構成するとともに上下風向変更羽根としても作用する。
<上部パネル及びその駆動機構の第3の変形例>
図19は上部パネル及びその駆動機構のさらに別の変形例を示している。この変形例においては、筐体2の上部は円弧形状を呈しており、上部パネル22Bは、上部吹出口6を開閉するための円弧部22cと、円弧部22cと直交する方向に延びる左右の側板22dとで構成され、左右の側板22dは扇形を呈している。側板22dの曲率中心は回転中心となっており、駆動機構を構成する駆動モータ(図示せず)に連結されている。
同様に、筐体2の天板及び左右側壁2aの上部も、上部吹出口6の閉止時あるいは開放時に上部パネル22Bで覆われる範囲内において、上部パネル22Bの円弧部22cの曲率半径と略同じ曲率半径を持つ円弧形状を呈しており、この円弧形状の前部に上部吹出口6は形成されている。
上記構成において、空気調和機の停止時は、上部吹出口6は上部パネル22Bにより閉止されており、空気調和機の運転を開始すると、上部パネル22Bは駆動モータにより回転駆動されて、図19(b)に示される状態まで所定の角度(例えば、60度)回転し、室内機筐体2の天板の真上に到達してその位置に保持される。
<上部パネル及びその駆動機構の第4の変形例>
上述した実施の形態及びその変形例は、いずれも上部パネルが、空気調和機の運転開始時に上方に移動して天板の上方に保持される構成であったが、上部パネルを略水平に横に移動させるようにすることもできる。
上部パネルを横に移動させる駆動機構は、図4乃至図9に示される駆動機構と極めて類似しているので、これらの図を参照しながら、上部パネルを横に移動させる駆動機構について以下説明する。
図4乃至図9に示される構成は、左右一対のケーシングハーフ34a,34bで構成されたケーシング及びケーシングの内部に回動自在に収容された第1ギヤ36乃至第4ギヤ42をすべて縦方向(上下方向)に配置して、上部パネル22を上下に駆動しているが、上部パネルを横に移動させる駆動機構の場合、第1ギヤ36乃至第4ギヤ42を収容したケーシングハーフ34a,34bを横方向(水平方向)に配置すればよく、上部パネルは、その両側部の一方の両端がアームに接続される。
次に、上記構成の上部パネル22及び駆動機構の動作を図4を参照しながら説明するが、図4における「上」を「右」に、「左」を「前」にそれぞれ設定するものとし、「下部ガイドピン」を「左ガイドピン」、「下部ガイド溝」を「左ガイド溝」、「上部ガイドピン」を「右ガイドピン」と、それぞれ称するものとする。
上部パネル22は、空気調和機の停止時には上部吹出口6を閉止しており、空気調和機の運転を開始し、駆動モータにより第1ギヤ36が矢印A方向に回転駆動されると、第2ギヤ38が矢印B方向に回転し、左ガイドピン30は左ガイド溝44に沿って前方斜め右方向に徐々に移動する。したがって、右ガイドピン32は右方向に押し出され、右ガイド溝46の変曲点に向かって前方斜め右方向に移動する。
また、第1ギヤ36に噛み合う第3ギヤ40は矢印C方向に回転し、右ガイドピン32の右方向への移動に伴ってレバー50が右方向に移動することから第4ギヤ42も矢印D方向に回転するが、右ガイドピン32が右ガイド溝46の変曲点に至るまでは、第4ギヤ42は第3ギヤ40と噛み合うことはなく、第3ギヤ40は遊転している。
空気調和機の運転開始から右ガイドピン32が右ガイド溝46の変曲点に到達するまでは、上部パネル22は前方に移動しながら右方向に移動する。
第1ギヤ36がさらに矢印A方向に回転すると、第2ギヤ38もさらに矢印B方向に回転し、左ガイドピン30は左ガイド溝44に沿って前方斜め右方向に徐々に移動する。また、この時点で第3ギヤ40は第4ギヤ42と噛み合うことになり、第4ギヤ42が第3ギヤ40により回転駆動されることで、レバー50も同様に後方に回転することになり、右ガイドピン32は、右ガイド溝46に沿って徐々に後方に移動する。
なお、右ガイドピン32が右ガイド溝46の変曲点を通過した後は、上部パネル22は後方に向かって回転し、上部パネル22は室内機筐体2の側方で側壁2aに近接した状態で保持されることになる。
上記構成の横開き式上部パネルの変形例として、両開き(観音開き)式上部パネルを採用することも可能で、この場合、左右の上部パネルがそれぞれ取り付けられるケーシングハーフ34a,34bを左右に一組ずつ配置し、アーム28に接続される上部パネルの横方向の長さを、横開き式上部パネル22の略1/2に設定すればよい。
また、図13乃至図15に示される駆動機構を横方向(水平方向)に配置することで、横開き式上部パネルあるいは両開き(観音開き)式上部パネルを実現することも勿論可能である。
さらに、この構成においても、空気調和機の運転時、上部パネル22の前縁は、室内機筐体2の側壁2a前縁より前方に飛び出すことになり、横開き式上部パネルは上部吹出口6から吹き出される空気を片側でガイドする風路を構成し、両開き式上部パネルは、両側でガイドする風路を構成する。
<下部上下風向変更羽根及びその駆動機構>
図20及び図21は下部上下風向変更羽根24及びその駆動機構を示しており、下部上下風向変更羽根24は、その左右両端の各々に上部連結軸取付部52と下部連結軸取付部54を有し、左右の上部連結軸取付部52に上部連結軸56の両端が取り付けられるとともに、左右の下部連結軸取付部54に下部連結軸58の両端が取り付けられている。
また、下部上下風向変更羽根24の高さにおける室内機筐体2の左右の側壁2aには、上部ガイド溝60及び下部ガイド溝62が形成されており、左右の上部ガイド溝60に上部連結軸56の両端がそれぞれ遊挿されるとともに、左右の下部ガイド溝62に下部連結軸58の両端がそれぞれ遊挿されている。上部ガイド溝60は直線状に形成され、側壁2aの前部から後方に向かって徐々に上昇するように延在しているのに対し、下部ガイド溝62は円弧形状に形成され、側壁2aの前部から後方に向かって急激に上昇するように延在している。
さらに、下部上下風向変更羽根24の後方には、駆動軸64が回動自在に取り付けられており、駆動軸64は駆動モータ(図示せず)に連結されている。駆動軸64の一端には、アーム66の一端が固定され、アーム66の他端には長孔66aが形成されており、この長孔66aに上部連結軸56は遊挿されている。また、左右の側壁2aの一方(左側壁)の内面には、アーム66を揺動自在に収容するための凹部2bが形成されており、アーム66が凹部2b内において揺動することから、凹部2bは扇形を呈している。
上記構成の下部上下風向変更羽根24は、空気調和機の停止時には、図20に示されるように下部吹出口8を閉止しており、この状態では、下部吹出口8を介して筐体内に塵埃や異物が流入することがない。空気調和機の運転を開始し、駆動モータにより駆動軸64を駆動すると、アーム66が後方に向かって揺動し、上部連結軸56の両端は上部ガイド溝60にガイドされて上部ガイド溝60に沿って後方に向かって徐々に上昇する。このとき、下部連結軸58の両端は、下部ガイド溝62にガイドされて下部ガイド溝62に沿って後方に向かって急激に上昇し、上部連結軸56の両端が上部ガイド溝60の後端(上端)に到達すると、下部連結軸58の両端は下部ガイド溝62の後端(上端)に到達し、下部上下風向変更羽根24は、図21に示されるように、前方かつ下方に向かって傾斜するように所定の角度(例えば、俯角50度)で保持される。したがって、人の足元を狙った空調制御が可能となる。
なお、駆動モータは駆動軸64を任意の角度だけ回転できるように設定されているので、駆動軸64で上部連結軸56を駆動して上部連結軸56を上部ガイド溝60の任意の位置に停止させることができ、下部連結軸58の位置は、上部連結軸56の位置に依存している。したがって、下部上下風向変更羽根24は、図22に示されるように、図20の状態と図21の状態との間で任意の傾斜角に設定することができ、下部吹出口8から吹き出される空気を上下に風向制御することができるので、汎用性の点で優れている。
上述したように、下部上下風向変更羽根24の駆動機構は、上部連結軸56、下部連結軸58、上部ガイド溝60、下部ガイド溝62、駆動軸64、アーム66により構成されており、上部及び下部ガイド溝60,62に上部連結軸56の両端及び下部連結軸58の両端をそれぞれ遊挿した構成を採用することで、下部上下風向変更羽根24の作動に多くの部品を必要としない。
また、図22には、下部吹出口8の閉止時から全開時までの下部上下風向変更羽根24の軌跡が示されているが、下部ガイド溝62の上端を下端より後方に配置したことで、下部吹出口8の閉止時から全開時までの下部上下風向変更羽根24の前縁(下縁)は、上方に向かって徐々に後退するように直線的に上昇し、下部上下風向変更羽根24の前縁のみならず下部上下風向変更羽根24の全てが下部吹出口8の閉止時(空気調和機の停止時)の前面より前方に突出することがない。すなわち、下部吹出口8は、子供の身体の一部(頭、肩等)と略同じ高さに位置していることから、下部上下風向変更羽根24を筐体内部で移動させることで、いかなる状態においても、下部上下風向変更羽根24の一部が室内機筐体2の前面より突出しないように寸法設定することにより、人が下部上下風向変更羽根24の一部に接触することがない安全設計となっている。
図23及び図24は、下部上下風向変更羽根24が下部吹出口8を閉止した図20と同様の状態を示しており、下部左右風向変更羽根26は室内機筐体2の前面に平行な位置まで駆動されて下部吹出口8を閉止している。一方、図25及び図26は、下部上下風向変更羽根24が下部吹出口8を開放した図21と同様の状態を示しており、下部左右風向変更羽根26は室内機筐体2の前面に直交する位置まで駆動されて下部吹出口8を開放している。
なお、下部吹出口8に下部左右風向変更羽根26を設けたことで、下部吹出口8から吹き出される空気を左右に風向制御できるので、きめ細かい空調制御を行うことができ、上部吹出口6と組み合わせることで、よりきめ細かい空調制御を行うことができる。
そして、上部吹出口6だけから空気を吹き出す場合には、下部上下風向変更羽根24及び下部左右風向変更羽根26とで下部吹出口8を閉止するようにしたので、下部吹出口8の密封性がより向上する。特に、冷房運転時には、下部吹出口8からの冷気の漏れを極力低減でき、下部吹出口8近傍での結露の発生を防止することができる。
<人体検知装置の構成>
操作パネル10の下方に設けられた人体検知装置12は、複数(例えば、三つ)の固定式センサユニット70,72,74で構成されており(図2(a)参照)、これらのセンサユニット70,72,74は、センサホルダ(図示せず)に保持されている。
各センサユニット70,72,74は、回路基板と、回路基板に取り付けられたレンズと、レンズの内部に実装された人体検知センサとで構成されている。また、人体検知センサは、例えば人体から放射される赤外線を検知することにより人の在否を検知する焦電型赤外線センサにより構成されており、赤外線センサが検知する赤外線量の変化に応じて出力されるパルス信号に基づいて回路基板により人の在否が判定される。すなわち、回路基板は人の在否判定を行う在否判定手段として作用する。
<人体検知装置による人位置推定>
図27は、センサユニット70,72,74で検知される人位置判別領域を示しており、センサユニット70,72,74は、それぞれ次の領域に人がいるかどうかを検知することができる。
センサユニット70:領域A+D+F
センサユニット72:領域B+D+E+F
センサユニット74:領域C+E+F
すなわち、本発明に係る空気調和機においては、各センサユニット70,72,74で検知できる領域が一部重なっており、領域A〜Fの数よりも少ない数のセンサユニットを使用して各領域A〜Fにおける人の在否を検知するようにしている。表1は、各センサユニット70,72,74の出力と、在判定領域(人がいると判定された領域)との関係を示している。なお、表1及び以下の説明ではセンサユニット70,72,74を第1のセンサ70、第2のセンサ72、第3のセンサ74という。
また、第1乃至第3のセンサ70,72,74による水平面検知域は、例えば床上110cmに設定され、検知距離は約8m、水平検知角度は約140度に設定され、領域Fは室内機から約1m以内の領域となっている。
図28は、第1乃至第3のセンサ70,72,74を使用して、領域A〜Fの各々に後述する領域特性を設定するためのフローチャートで、図29は、第1乃至第3のセンサ70,72,74を使用して、領域A〜Fのどの領域に人がいるか否かを判定するフローチャートであり、これらのフローチャートを参照しながら人の位置判定方法について以下説明する。
ステップS1において、所定の周期T1(例えば、5秒)で各領域における人の在否がまず判定されるが、この判定方法につき、領域A,B,Dにおける人の在否を判定する場合を例にとり、図30を参照しながら説明する。
図30に示されるように、時間t1の直前の周期T1において第1乃至第3のセンサ70,72,74がいずれもOFF(パルス無し)の場合、時間t1において領域A,B,Dに人はいないと判定する(A=0,B=0,D=0)。次に、時間t1から周期T1後の時間t2までの間に第1のセンサ70のみON信号を出力し(パルス有り)、第2及び第3のセンサ72,74がOFFの場合、時間t2において領域Aに人がいて、領域B,Dには人がいないと判定する(A=1,B=0,D=0)。さらに、時間t2から周期T1後の時間t3までの間に第1及び第2のセンサ70,72がON信号を出力し、第3のセンサ74がOFFの場合、時間t3において領域Dに人がいて、領域A、Bには人がいないと判定する(A=0,B=0,D=1)。以下、同様に周期T1毎に各領域A,B,Dにおける人の在否が判定される。
この判定結果に基づいて各領域A〜Fを、人が良くいる第1の領域(良くいる場所)、人のいる時間が短い第2の領域(人が単に通過する領域、滞在時間の短い領域等の通過領域)、人のいる時間が非常に短い第3の領域(壁、窓等人が殆ど行かない非生活領域)とに判別する。以下、第1の領域、第2の領域、第3の領域をそれぞれ、生活区分I、生活区分II、生活区分IIIといい、生活区分I、生活区分II、生活区分IIIはそれぞれ、領域特性Iの領域、領域特性IIの領域、領域特性IIIの領域ということもできる。また、生活区分I(領域特性I)、生活区分II(領域特性II)を併せて生活領域(人が生活する領域)とし、これに対し、生活区分III(領域特性III)を非生活領域(人が生活しない領域)とし、人の在否の頻度により生活の領域を大きく分類してもよい。
この判別は、図28のフローチャートにおけるステップS3以降で行われ、この判別方法について図31及び図32を参照しながら説明する。
図31は、一つの和室とLD(居間兼食事室)と台所とからなる1LDKのLDに本発明に係る空気調和機の室内機を設置した場合を示しており、図31における楕円で示される領域は被験者が申告した良くいる場所を示している。
上述したように、周期T1毎に各領域A〜Fにおける人の在否が判定されるが、周期T1の反応結果(判定)として1(反応有り)あるいは0(反応無し)を出力し、これを複数回繰り返した後、ステップS2において、全てのセンサ出力をクリアする。
ステップS3において、空気調和機の所定の累積運転時間が経過したかどうかを判定する。ステップS3において所定時間が経過していないと判定されると、ステップS1に戻る一方、所定時間が経過したと判定されると、各領域A〜Fにおける当該所定時間に累積した反応結果を二つの閾値と比較することにより各領域A〜Fをそれぞれ生活区分I〜IIIのいずれかに判別する。
長期累積結果を示す図32を参照してさらに詳述すると、第1の閾値及び第1の閾値より小さい第2の閾値を設定して、ステップS4において、各領域A〜Fの長期累積結果が第1の閾値より多いかどうかを判定し、多いと判定された領域はステップS5において生活区分Iと判別する。また、ステップS4において、各領域A〜Fの長期累積結果が第1の閾値より少ないと判定されると、ステップS6において、各領域A〜Fの長期累積結果が第2の閾値より多いかどうかを判定し、多いと判定された領域は、ステップS7において生活区分IIと判別する一方、少ないと判定された領域は、ステップS8において生活区分IIIと判別する。
図32の例では、領域C,Eが生活区分Iとして判別され、領域Bが生活区分IIとして判別され、領域A,D,Fが生活区分IIIとして判別される。
また、図33は別の1LDKのLDに本発明に係る空気調和機の室内機を設置した場合を示しており、図34はこの場合の長期累積結果を元に各領域A〜Fを判別した結果を示している。図33の例では、領域A,B,Eが生活区分Iとして判別され、生活区分IIに該当する領域はないと判別され、領域C,D,Fが生活区分IIIとして判別される。
なお、上述した領域特性(生活区分)の判別は所定時間毎に繰り返されるが、判別すべき室内に配置されたソファー、食卓等を移動することがない限り、判別結果が変わることは殆どない。
次に、図29のフローチャートを参照しながら、各領域A〜Fにおける人の在否の最終判定について説明する。
ステップS21〜S22は、上述した図28のフローチャートにおけるステップS1〜S2と同じなので、その説明は省略する。ステップS23において、所定数M(例えば、15回)の周期T1の反応結果が得られたかどうかが判定され、周期T1は所定数Mに達していないと判定されると、ステップS21に戻る一方、周期T1が所定数Mに達したと判定されると、ステップS24において、周期T1×Mにおける反応結果の合計を累積反応期間回数として、1回分の累積反応期間回数を算出する。この累積反応期間回数の算出を複数回繰り返し、ステップS25において、所定回数分(例えば、N=4)の累積反応期間回数の算出結果が得られたかどうかが判定され、所定回数に達していないと判定されると、ステップS21に戻る一方、所定回数に達したと判定されると、ステップS26において、既に判別した領域特性と所定回数分の累積反応期間回数を元に各領域A〜Fにおける人の在否を推定する。
なお、ステップS27において累積反応期間回数の算出回数(N)から1を減算してステップS21に戻ることで、所定回数分の累積反応期間回数の算出が繰り返し行われることになる。
表2は最新の1回分(時間T1×M)の反応結果の履歴を示しており、表2中、例えばΣA0は領域Aにおける1回分の累積反応期間回数を意味している。
ここで、ΣA0の直前の1回分の累積反応期間回数をΣA1、さらにその前の1回分の累積反応期間回数をΣA2・・・とし、N=4の場合、過去4回分の履歴(ΣA4、ΣA3、ΣA2、ΣA1)のうち、生活区分Iについては、1回以上の累積反応期間回数が1回でもあれば、人がいると判定する。また、生活区分IIについては、過去4回の履歴のうち、1回以上の累積反応期間回数が2回以上あれば、人がいると判定するとともに、生活区分IIIについては、過去4回の履歴のうち、2回以上の累積反応期間回数が3回以上あれば、人がいると判定する。
次に、上述した人の在否判定から時間T1×M後には、同様に過去の4回分の履歴と生活区分と累積反応期間回数から人の在否の推定が行われる。
すなわち、本発明に係る空気調和機においては、判別領域A〜Fの数よりも少ない数のセンサを使用して人の在否を推定することから、所定周期毎の推定では人の位置を誤る可能性があるので、重なり領域かどうかに関わらず単独の所定周期では人の位置推定を行うことを避け、所定周期毎の領域判定結果を長期累積した領域特性と、所定周期毎の領域判定結果をN回分累積し、求めた各領域の累積反応期間回数の過去の履歴から人の所在地を推定することで、確率の高い人の位置推定結果を得るようにしている。
表3は、このようにして人の在否を判定し、T1=5秒、M=12回に設定した場合の在推定に要する時間、不在推定に要する時間を示している。
このようにして、本発明に係る空気調和機の室内機により空調すべき領域を第1乃至第3のセンサ70,72,74により複数の領域A〜Fに区分した後、各領域A〜Fの領域特性(生活区分I〜III)を決定し、さらに各領域A〜Fの領域特性に応じて在推定に要する時間、不在推定に要する時間を変更するようにしている。
すなわち、空調設定を変更した後、風が届くまでには1分程度要することから、短時間(例えば、数秒)で空調設定を変更しても快適性を損なうのみならず、人がすぐいなくなるような場所に対しては、省エネの観点からあまり空調を行わないほうが好ましい。そこで、各領域A〜Fにおける人の在否をまず検知し、特に人がいる領域の空調設定を最適化している。
詳述すると、生活区分IIと判別された領域の在否推定に要する時間を標準として、生活区分Iと判別された領域では、生活区分IIと判別された領域より短い時間間隔で人の存在が推定されるのに対し、その領域から人がいなくなった場合には、生活区分IIと判別された領域より長い時間間隔で人の不存在を推定することにより、在推定に要する時間を短く、不在推定に要する時間は長く設定されることになる。逆に、生活区分IIIと判別された領域では、生活区分IIと判別された領域より長い時間間隔で人の存在が推定されるのに対し、その領域から人がいなくなった場合には、生活区分IIと判別された領域より短い時間間隔で人の不存在を推定することにより、在推定に要する時間を長く、不在推定に要する時間は短く設定されることになる。さらに、上述したように長期累積結果によりそれぞれの領域の生活区分は変わり、それに応じて、在推定に要する時間や不在推定に要する時間も可変設定されることになる。
なお、人体検知装置12を三つのセンサ70,72,74で構成し、空調すべき領域を遠距離に五つ(領域A〜E)、近距離に一つ(領域F)に分割したが、さらに一つの近距離センサを追加して、人体検知装置を四つのセンサで構成すると、図35に示されるように、空調すべき領域を遠距離に五つ(領域A〜E)、中距離に五つ(領域F〜J)、近距離に一つ(領域K)、合計11の領域に分割することができる。
表4は、四つのセンサの出力と、在判定領域(人がいると判定された領域)との関係を示している。
また、四つのセンサによる水平面検知域は、例えば床上110cmに設定され、検知距離は約8m、水平検知角度は約140度に設定され、近距離領域(領域K)は室内機から約1m以内に、中距離領域(領域F〜J)は室内機から約1m〜約3mにそれぞれ設定される。
<人体検知装置による活動量の決定>
人体検知装置12は活動量検知装置としても作用し、ここで「活動量」についてまず説明する。暖房時、活動量が小さい人は活動量が大きい人よりも「寒く」感じるのに対し、冷房時は、活動量が大きい人は活動量が小さい人よりも「暑く」感じることから、空調すべき領域における人の活動量を決定し、決定された活動量に応じて各領域に対する風向制御(後述)は行われる。
人の活動量とは人の動きの度合いを示す概念で、複数の活動量に分類され、例えば「安静」、「活動量大」、「活動量中」、「活動量小」に分類される。
「安静」とは、ソファで寛いでいる、テレビを視聴している、パソコンを操作している等、同じ場所に人が継続している状態が持続している場合のことで、安静状態が持続した場合、代謝量が低下して寒く感じる。活動量「大」とは、室内の清掃等広域で活動している場合のことで、代謝量増加により暑く感じる。活動量「中」とは、炊事等狭域で活動している場合のことで、代謝量増加によりやや暑く感じる。活動量「小」とは、食事等同じ場所で多少活動している場合のことで、代謝量に大きな変化は見られない。
本実施の形態では、人の活動量レベルを複数の領域を含むブロック毎に判定しているので、このブロックについてまず説明する。各領域A〜Fは次のように三つのブロックに区分される。
第1ブロック:領域A
第2ブロック:領域B,D,E,F
第3ブロック:領域C
これら三つのブロックは、室内機から見て左側、中央、右側にそれぞれ位置しており、四つ以上のセンサを使用して空調すべき領域をさらに多くの領域に区分し、これらの領域を三つ以上のブロックに分割する場合についても、室内機から見て略同一方向に位置する複数の領域を同一のブロックに割り当てる。
次に、人の活動量の分類方法について図36のフローチャートを参照しながら詳述する。
まずステップS31において、所定時間T1毎に各センサ70,72,74の反応頻度(出力パルス有り)を計測し、ステップS32において、計測回数が所定回数に達したかどうかを判定する。なお、所定時間T1は、上述した人の在否判定における所定の周期T1と同じであるが、ここでは、例えば2秒に設定され、計測回数の所定回数は、例えば15回に設定されるものと仮定し、15回の計測を総称して1ユニット計測(30秒間の計測)という。また、ここでいう「計測回数」とは、領域A〜Fのいずれかの領域における計測回数のことで、全ての領域A〜Fに対し同様の計測が行われる。
ステップS32において、計測回数が所定回数に達していないと判定されるとステップS31に戻り、計測回数が所定回数に達し1ユニット計測が終了したと判定されると、ステップS33において、4ユニット計測(2分間の計測)が終了したかどうかを判定する。ステップS33において、4ユニット計測が終了していない場合にはステップS31に戻り、4ユニット計測が終了している場合にはステップS34に移行する。
ステップS34においては、4ユニット計測(現在の1ユニット計測を含め過去4回のユニット計測)のセンサ70,72,74の合計反応頻度が所定数(例えば、5回)に達したかどうかを判定し、所定数に達していれば、ステップS35において、「活動量小」と判定された後の合計ユニット計測数(p、詳しくは後述)がクリアされた後、ステップS36に移行する。
ステップS36においては、全領域A〜Fにおけるセンサ70,72,74の合計反応頻度が所定数(例えば、40回)に達したかどうかを判定し、所定数に達している場合には、ステップS37において、「安静」と判定されたブロックを除き在判定された全てのブロックが「活動量大」と判定される一方、所定数に達していない場合には、ステップS38において、4ユニット計測のセンサ70,72,74の合計反応頻度が所定数に達した領域の属するブロックが「活動量中」と判定される。ステップS37あるいはステップS38における活動量判定後、ステップS39において、ユニット計測数(q)から1を減算してステップS31に戻る。すなわち、連続する4ユニット計測で各センサの合計反応頻度が所定数を超え「活動量大」あるいは「活動量中」と判定された領域の属するブロックは、さらに次回の1ユニット計測後、その時点における4ユニット計測の合計反応頻度が所定数を超えた場合には、引き続き「活動量大」あるいは「活動量中」と判定される。
また、ステップS34において、4ユニット計測でセンサ70,72,74の合計反応頻度が所定数未満と判定されると、ステップS40において、その領域の属するブロックが「安静」かどうかが判定され、「安静」でなければ、ステップS41において「活動量小」と判定される。次のステップS42において、「活動量小」と判定された後の合計ユニット計測数(p)がカウントされ、ステップS43において、「活動量小」と判定された後60ユニット計測(30分間の計測)が終了したかどうかを判定する。
ステップS43において、60ユニット計測が終了していないと判定されると、ステップS39に移行する一方、60ユニット計測が終了したと判定されると、その領域だけが当該領域の属するブロックにある場合に限り、ステップS44において「安静」と判定された後、ステップS39に移行する。すなわち、ステップS39に移行することで、次の1ユニット計測を含む過去4回のユニット計測で各センサの合計反応頻度に応じて、各ブロックは「活動量大」、「活動量中」、「活動量小」あるいは「安静」と新たに判定されることになる。
空気調和機の電源をONした後の活動量計測当初は、どの領域の活動量も不明であるが、このフローチャートによれば、計測開始から4ユニット計測が終了して初めて、各領域A〜Fの属するブロックにおいて「活動量大」、「活動量中」あるいは「活動量小」の判定が行われ、60ユニット計測が終了して初めて、「安静」の判定が行われることになる。したがって、計測開始後しばらくは「安静」のブロックは存在しないので、ステップS40においてNOと判定され、ステップS41において「活動量小」と判定される。その後、「活動量小」と継続して判定されたブロックは、60ユニット計測終了後、ステップS44において「安静」と判定され、その後4ユニット計測のセンサ70,72,74の合計反応頻度が所定数未満であれば、引き続き「安静」と判定される。
なお、ステップS35において、「活動量小」と判定された後の合計ユニット計測数(p)をクリアするのは、「安静」との判定は、「活動量小」の判定が起点となるからである。
要約すると、各センサ70,72,74は、人体検知手段としての機能に加え、活動量検知手段としても機能し、図36のフローチャートにより、各領域A〜Fの属するブロックは、例えば次のように判定される。
(1)安静
センサ反応頻度が5回未満/2分が30分以上継続した領域のみあるブロック
(2)活動量大
全領域A〜Fのセンサ反応頻度の総和が40回以上/2分で、少なくとも一つの領域でセンサ反応頻度が2分間で5回以上継続した場合において、「安静」と判定されたブロックを除く全てのブロック
(3)活動量中
全領域A〜Fのセンサ反応頻度の総和が40回未満/2分の場合に、センサ反応頻度が2分間で5回以上継続した領域の属するブロック
(4)活動量小
安静、活動量大、活動量中と判定されなかった領域の属するブロック
<活動量に基づく上部及び下部上下風向変更羽根の制御>
この制御は、人体検知装置12を活動量検知装置としても使用し、活動量検知装置により検知された人の活動量に応じて、上部吹出口6及び下部吹出口8の開閉制御を行うことにより、空調効率を向上させ常に快適な空調環境を実現するためのものである。
A.冷房運転時の制御
図37は、冷房運転時の風向制御を示しており、冷房運転が開始すると、上部パネル22,22A,22Bは全開位置まで移動するように制御され、下部上下風向変更羽根24は開制御される。
(i)立ち上がり時
立ち上がり時には、室温が設定温度近傍に到達するまでは、活動量に関係なく、下部左右風向変更羽根26は開制御され上部吹出口6及び下部吹出口8を共に開口して上下から冷風を吹き出し、できるだけ部屋全体を急速に冷やすように設定している。部屋全体を均一に冷やすため、上部上下風向変更羽根18は上向き設定し、下部上下風向変更羽根24は下向き設定する。設定角度の一例は次のとおりであり、設定角度の+は俯角を、−は仰角を示している。
・上部上下風向変更羽根18
上羽根:−30°
中羽根:−10°
下羽根:−10°
・下部上下風向変更羽根24:+50°
(ii)安定時、活動量:安静、風除け無し
風向制御は、人がいると判定された領域に風を向けるか否かを選択できる風除け選択手段を空気調和機の本体あるいはリモコン等に設けることで、居住者が風に直接当たりたいか否かの選択に応じて、人がいると判定された領域に風を向ける風向設定(風除け無し)と、人がいないと判定された領域に風を向ける風向設定(風除け有り)とを変更可能になっている。なお、リモコンからの出力信号は、室内機の制御装置に入力され、この制御装置により風向変更羽根の風向制御は行われる。
リモコンにより「風除け無し」が設定され、活動量が「安静」の場合、下部左右風向変更羽根26を閉制御して下部吹出口8を閉止し、上部吹出口6のみ開口して上からのみ冷風を吹き出して居住者に冷風が直接当たらず、かつ足元が冷えないように設定することで、安静時の代謝低下による冷えを抑制し、快適な冷房感を維持している。設定角度の一例は次のとおりである。
・上部上下風向変更羽根18
上羽根:−30°
中羽根:−10°
下羽根:−10°
・下部上下風向変更羽根24:+50°
なお、下部吹出口8を閉止する場合、下部左右風向変更羽根26を閉制御するばかりでなく、下部上下風向変更羽根24も閉制御すると、下部吹出口8の密封性がさらに向上し、冷房運転時における下部吹出口8からの冷気の漏れを極力低減でき、下部吹出口8近傍での結露の発生を防止することができる。
(iii)安定時、活動量:小、風除け無し
活動量が「小」の場合、下部左右風向変更羽根26を閉制御して下部吹出口8を閉止し、上部吹出口6のみ開口して上からのみ冷風を吹き出して居住者に冷風が直接当たらず、かつ足元が冷えないように設定することで、安静時の代謝低下による冷えを抑制し、快適な冷房感を維持している。設定角度の一例は次のとおりである。
・上部上下風向変更羽根18
上羽根:−30°〜0°
中羽根:−10°〜+20°
下羽根:−10°〜+20°
・下部上下風向変更羽根24:+50°
ここで、上羽根の設定角度−30°〜0°は、−30°から0°の範囲で上羽根が上下にスイングすることを意味し、中羽根及び下羽根についても同様である。このように、上部上下風向変更羽根18をスイング動作させることで、冷風感を増大している。
(iv)安定時、活動量:中、風除け無し
活動量が「中」の場合、下部左右風向変更羽根26を閉制御して下部吹出口8を閉止し、上部吹出口6のみ開口して上からのみ冷風を吹き出し、居住者の身体全体を効率的に冷やすことで、活動時の代謝増加による暑さ感を抑制している。また、上部上下風向変更羽根18をスイング動作させることで、冷風感を増大している。設定角度の一例は次のとおりである。
・上部上下風向変更羽根18
上羽根:−10°〜+20°
中羽根:−10°〜+20°
下羽根:−10°〜+20°
・下部上下風向変更羽根24:+50°
(v)安定時、活動量:大、風除け無し
活動量が「大」の場合、立ち上がり時と同様に、下部左右風向変更羽根26を開制御して上部吹出口6及び下部吹出口8を共に開口して上下から冷風を吹き出し、居住者の身体全体を効率的に冷やすことで、活動時の代謝増加による暑さ感をさらに抑制している。また、上部上下風向変更羽根18及び下部上下風向変更羽根24を共にスイング動作させることで、冷風感をさらに増大している。設定角度の一例は次のとおりである。
・上部上下風向変更羽根18
上羽根:−10°〜+20°
中羽根:−10°〜+20°
下羽根:−10°〜+20°
・下部上下風向変更羽根24:+50°〜+60°
(vi)安定時、活動量:安静〜大、風除け有り
リモコンにより「風除け有り」が設定された場合、下部左右風向変更羽根26を閉制御して下部吹出口8を閉止し、上部上下風向変更羽根18を上向き設定して確実に冷風が居住者に直接当たらないようにしている。設定角度の一例は次のとおりである。
・上部上下風向変更羽根18
上羽根:−30°
中羽根:−10°
下羽根:−10°
・下部上下風向変更羽根24:+50°
なお、この「風除け有り」の設定は、図27の領域分割において、人がいると判定された領域が近距離(領域F)の場合にも適用され、領域Fに人がいる場合には、活動量に関係なく、下部左右風向変更羽根26を閉制御して下部吹出口8を閉止し、上部上下風向変更羽根18を活動量が「安静」のときと同じく上向き設定することで、確実に冷風が居住者に直接当たらないようにしている。
また、「風除け有り」の設定は、図35の領域分割の場合、人がいると判定された領域が遠距離(領域A〜E)の場合にも適用され、領域A〜Eのいずれかの領域に人がいる場合には、活動量に関係なく、下部左右風向変更羽根26を閉制御して下部吹出口8を閉止し、上部吹出口6からのみ空調風を吹き出すことで、上部吹出口6からの吹き出し風の風速を増大することができ、冷風をより遠くに到達させることができる。
B.暖房運転時の制御
図38は、暖房運転時の風向制御を示しており、暖房運転が開始すると、上部パネル22,22A,22Bは開制御されて下向き設定され、下部上下風向変更羽根24も開制御される。この場合、上部パネル22,22A,22Bは、上部吹出口6から吹き出される空気を上下に風向制御する上下風向変更羽根として作用する。
(i)立ち上がり時
立ち上がり時には、室温が設定温度近傍に到達するまでは、活動量に関係なく、下部左右風向変更羽根26は開制御され上部吹出口6及び下部吹出口8を共に開口して上下から温風を吹き出し、できるだけ部屋全体を急速に暖めるように設定している。足元(下方)から暖めるため、上部上下風向変更羽根18及び下部上下風向変更羽根24は共に下向き設定する。設定角度の一例は次のとおりである。
・上部上下風向変更羽根18
上羽根:+30°
中羽根:+30°
下羽根:+30°
・下部上下風向変更羽根24:+50°
(ii)安定時、活動量:安静、風除け無し
活動量が「安静」の場合、上部上下風向変更羽根18を閉制御して上部吹出口6を閉止し、下部左右風向変更羽根26を開制御して下部吹出口8のみ開口する。下部上下風向変更羽根24は下向き設定され下からのみ温風を吹き出して足元のみ温風を集中させ足元以外に温風が直接当たらないようにすることで、安静時の快適な暖房感を維持している。設定角度の一例は次のとおりである。
・上部上下風向変更羽根18
上羽根:+60°
中羽根:+60°
下羽根:+60°
・下部上下風向変更羽根24:+60°
また、この設定は、図35の領域分割の場合、人がいると判定された領域が遠距離(領域A〜E)の場合にも適用され、領域A〜Eのいずれかの領域に人がいる場合には、立ち上がり時や安定時の活動量が「小」あるいは「中」のときにも、上部上下風向変更羽根18を閉制御して上部吹出口6を閉止し、下部吹出口8から温風を集中して吹き出すことで、温風をより遠くに到達させることができる。
(iii)安定時、活動量:小、風除け無し
活動量が「小」の場合、上部上下風向変更羽根18及び下部左右風向変更羽根26を開制御して上部吹出口6及び下部吹出口8を共に開口する。上部上下風向変更羽根18及び下部上下風向変更羽根24は共に下向き設定され、居住者に直接当たる温風を極力低減している。設定角度の一例は次のとおりである。
・上部上下風向変更羽根18
上羽根:+45°
中羽根:+45°
下羽根:+45°
・下部上下風向変更羽根24:+60°
(iv)安定時、活動量:中、風除け無し
活動量が「中」の場合、上部上下風向変更羽根18及び下部左右風向変更羽根26を開制御して上部吹出口6及び下部吹出口8を共に開口する。上部上下風向変更羽根18は水平となるように設定され、下部上下風向変更羽根24は下向き設定され、居住者に直接当たる温風を低減するとともに、活動時の代謝増加による暑さ感を抑制している。
・上部上下風向変更羽根18
上羽根:±0°
中羽根:±0°
下羽根:±0°
・下部上下風向変更羽根24:+60°
(v)安定時、活動量:大、風除け無し
活動量が「大」の場合、上部上下風向変更羽根18を開制御し、下部左右風向変更羽根26を閉制御して上部吹出口6のみ開口させる。上部上下風向変更羽根18は水平となるように設定され、居住者に温風が直接当たらないようにすることで、活動時の代謝増加による暑さ感を防止している。
・上部上下風向変更羽根18
上羽根:±0°
中羽根:±0°
下羽根:±0°
・下部上下風向変更羽根24:+60°
(vi)安定時、活動量:安静〜大、風除け有り
リモコンにより「風除け有り」が設定された場合、下部左右風向変更羽根26を閉制御して下部吹出口8を閉止し、上部上下風向変更羽根18を上向き設定して確実に温風が居住者に直接当たらないようにしている。設定角度の一例は次のとおりである。
・上部上下風向変更羽根18
上羽根:−10°
中羽根:−10°
下羽根:−10°
・下部上下風向変更羽根24:+50°
なお、この「風除け有り」の設定は、図27の領域分割において、人がいると判定された領域が近距離(領域F)の場合にも適用され、領域Fに人がいる場合には、活動量に関係なく、下部左右風向変更羽根26を閉制御して下部吹出口8を閉止し、上部上下風向変更羽根18を活動量が「大」のときよりも上向き設定することで、確実に温風が居住者に直接当たらないようにすることができる。
また、人の活動量を「安静」、「活動量大」、「活動量中」、「活動量小」の四つの活動量に分類したが、「安静」、「活動量中」、「活動量小」を一つに分類して「活動量小」とし、「活動量大」と「活動量小」の二つの活動量に分類することもできる。あるいは、「活動量中」、「活動量小」を一つに分類して「活動量中」とし、「安静」を「活動量小」として、三つの活動量に分類することもできる。
なお、上述した上部及び下部上下風向変更羽根の制御において、人がいると判定された領域の室内機からの距離を判定する手段として人体検知装置12を用いているが、室内機の本体あるいはリモコンに遠距離ボタン、近距離ボタン等の距離選択手段を設け、居住者が距離選択手段により選択した距離に応じて上部及び下部上下風向変更羽根18,24を制御することもできる。
<上部及び下部左右風向変更羽根の制御>
人がいると判定された領域が一つの場合、上部左右風向変更羽根20は、各ブロックの3枚の羽根が当該一つの領域に向くように制御され、下部左右風向変更羽根26も同様に人がいると判定された領域に向くように制御される。
また、人がいると判定された領域が二つの場合、上部左右風向変更羽根20の左右のブロックを構成する3枚の羽根は当該二つの領域に向くように制御され、中央のブロックを構成する3枚の羽根及び下部左右風向変更羽根26は、人がいると判定された二つの領域の中心線を両端として左右に揺動するスイング動作をさせる。
<送風ファンの制御>
この制御は、人がいると判定された領域の室内機からの距離に応じて送風ファン14の回転数を制御して室内機から吹き出される風量を調節するためのものである。
この制御においては、送風ファン14の標準回転数を設定し、通常の空調制御の場合、送風ファン14の回転数は標準回転数に設定され、人がいると判定された最も遠い領域が近距離の場合は、風量(送風ファン14の回転数)を標準より低めに設定する一方、遠距離の場合は風量の設定を標準より高めに設定するようにしている。
以上、人体検知装置による空調制御について説明したが、本発明に係る空気調和機は、人体検知装置を設けなくても、上部吹出口6及び下部吹出口8との組み合わせにより気流の遠方への到達性の向上や、足元暖房の向上を図ることができ、快適な空調環境を実現することができるものである。