JP2010138286A - 多孔質膜およびその製造方法 - Google Patents

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憲一 石塚
Taisei Nishimi
大成 西見
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Abstract

【課題】本発明は、数百nmの空孔を有し、該空孔内壁面上に所望の機能性高分子が存在する多孔質膜、および該多孔質膜を大面積で簡便に作成できる製造方法を提供する。
【解決手段】水不溶性ポリマーAを主成分とする連続相と、水不溶性ポリマーAと非相溶である水溶性ポリマーBを主成分とし、前記連続相中に分布する球状のミクロドメインとからなるミクロ相分離構造を有し、前記球状のミクロドメイン内に平均孔径200〜1000nmの球状構造の空孔が存在する多孔質膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、多孔質膜およびその製造方法に関するものであり、詳しくは膜中の空孔内壁面上に特定のポリマー層が存在する多孔質膜、およびその製造方法に関するものである。
近年、ナノメートルレベル程度の微細なサイズ(空孔径、幅や膜厚など)で構造制御された構造体への関心が高まっている。特に、こうした構造体の中でも、数百nm程度の空孔を有する構造体(例えば、多孔質膜)は、発光素子、分離膜などに応用可能であると考えられている。さらに、これらの構造体の空孔内壁面を親水化処理など機能化することにより、従来にない機能を有する材料の創製が可能と期待される。
均一な空孔を有する構造体の作製方法としては、例えば、界面活性剤を鋳型として合成したメソポーラスシリカ(非特許文献1)や、陽極酸化アルミナ(非特許文献2)などが挙げられる。特に、陽極酸化アルミナの場合、空孔が均一な孔径を持つという特徴を有している。しかし、いずれも得られる構造体は無機化合物であるため硬くて脆く、可撓性がなく、実用上の用途が限られる。また、構造体の製造において、無欠陥で大面積化することが本質的に困難であるとともに、数百nm程度の大きさの空孔を再現性よく製造することが困難であった。さらに、化学的手法により空孔内壁面などを特定の機能性化合物で被覆しようとしても、被膜が容易に剥がれてしまうという問題があった。
一方、ポリマー成分Aとポリマー成分Bとが結合したブロック共重合体は、自己組織化によって規則的なナノパターンを有するミクロ相分離構造を形成することが知られている。そのため、ブロック共重合体を適当な溶媒に溶かして被加工体上に塗布すると、規則配列したパターンを有する膜を簡便にかつ大面積で形成することが可能である。現在までに、ブロック共重合体を利用した構造体の作製に関して様々な試みがなされている。
例えば、非特許文献3では、ポリスチレンと4−ビニルピリジンとから構成されるブロック共重合体と、2−(4’−ヒドロキシベンゼンアゾ)安息香酸とを用いて、基板表面に対して垂直方向に配向したシリンダー状の空孔を有する構造体が形成できることが報告されている。また、特許文献1では、まず、ポリスチレンとポリメタクリル酸メチルとから構成されるブロック共重合体を含む溶液を、基板上に塗布してミクロ相分離構造を有する塗膜を形成させ、その後、エッチングによりポリメタクリル酸メチルを選択的に除去して多孔質膜を作製する方法が開示されている。さらに、特許文献1では、得られた多孔質膜を、被加工物をエッチングする際のマスクとして使用し、被加工物表面上を多孔質膜の空孔パターンに応じてエッチングする方法が開示されている。
C. T. Kresge, et. al. "Ordered mesoporous molecular sieves synthesized by a liquid crystal template mechanism" Nature 1992, 359, 710. H. Masuda, et. al. "Ordered metal nanohole arrays made by a two-step replication of honeycomb structures of anodic alumina" Science, 1995, 268, 1466. A. Sidorenko, et. al. "Ordered Reactive Nanomembranes/Nanotemplates from Thin Films of Block Copolymer Supramolecular Assembly" J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 12211. 特開2006−108635号公報
非特許文献3では、空孔を有する構造体が得られているものの、シリンダー状の空孔の孔径は数十nm程度に過ぎない。所望の数百nm程度の空孔を作製するためには、よりサイズの大きいミクロドメインを有する相分離構造を形成させる必要がある。しかしながら、通常、ブロック共重合体を使用してミクロ相分離構造を作製する際には、数十nm〜100nm程度のドメインサイズが形成される場合が多く、それ以上の大きさのミクロドメインを得ることは困難であった。
また、非特許文献3では、使用されているブロック共重合体としては、疎水性ポリマー同士からなる特定の種類のものだけが開示されている。概して、水溶性(親水性)ポリマーと水不溶性(疎水性)ポリマーからなるブロック共重合体の場合は、ポリマー中の構成成分の性質が全く異なるため配向制御されたミクロ相分離構造が得られにくく、未だ十分な知見は得られていないのが現状である。つまり、水溶性ポリマーと水不溶性ポリマーとからなるいわゆる両親媒性のブロック共重合体では、ポリマー鎖間の極性などが大きく異なるため、上述した疎水性ポリマー同士からなるブロック共重合体と比較しても、より複雑な挙動を示すため十分な解析がなされていない。
一方で、特許文献1では、空孔を形成するためにエッチング処理やオゾン分解処理を用いて多孔質膜を作製するため、大面積での処理ができず、かつ分解に時間がかかるため生産性の観点からは満足できるものではなかった。また、所望の分解させたい相のみだけでなく構造体全体がダメージを受けると共に、空孔の大きさにばらつきが生じるという問題があった。そのため、これらを被加工物のエッチング処理の際のマスクとして使用すると、被加工物上で過剰にエッチングされる部分などが生じ、均一なエッチング処理を施すことができなかった。
さらに、オゾン分解処理により得られた空孔の壁面を、親水性化やタンパク質吸着抑制能付与などのために表面修飾しようとしても、空孔のサイズが非常に小さいため表面修飾が十分には進行しないという問題があった。また、表面修飾ができたとしても、表面修飾に使用した化合物などにより、空孔が埋められてしまうという問題や、該化合物と壁面との接着が十分ではなく表面の機能層が容易に剥離してしまうという問題があった。
そこで、本発明は、水溶性ポリマーと水不溶性ポリマーとからなるブロック共重合体を用いて形成され、数百nmの空孔を有し、該空孔内壁面上に所望の機能性高分子、特に水溶性ポリマーが存在する多孔質膜、および、この多孔質膜を大面積で簡便に作製できる製造方法、さらにはこの多孔質膜を用いた表面に凹部を有する基板の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行った結果、下記の<1>〜<11>の構成により課題が解決されることを見出した。
<1> 水不溶性ポリマーAを主成分とする連続相と、
水不溶性ポリマーAと非相溶である水溶性ポリマーBを主成分とし、前記連続相中に分布する球状のミクロドメインとからなるミクロ相分離構造を有し、
前記球状のミクロドメイン内に平均孔径200〜1000nmの球状構造の空孔が存在する多孔質膜。
<2> 前記水溶性ポリマーBが、以下の式で表わされる大西パラメータが5以上を示すポリマーである<1>に記載の多孔質膜。
式:大西パラメータ=N/(Nc−No)
(Nはモノマー単位の総原子数、Ncはモノマー単位の炭素原子数、Noはモノマー単位の酸素原子数)
<3> 前記水不溶性ポリマーAが、ポリスチレン類、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリブタジエン類、またはポリイソプレン類である<1>または<2>に記載の多孔質膜。
<4> 前記空孔の空孔密度が、1〜32個/μmである<1>〜<3>のいずれかに記載の多孔質膜。
<5> 基板をエッチング処理する際に、マスクとして用いられる<1>〜<4>のいずれかに記載の多孔質膜。
<6> 膜厚が30〜1000nmである<1>〜<5>のいずれかに記載の多孔質膜。
<7> 下記式(1)を満足する、互いに非相溶な水不溶性ポリマーAと水溶性ポリマーBとからなるブロック共重合体と、水溶性ホモポリマーBとを含む溶液を基板表面に塗布して膜を形成する膜形成工程と、
該膜中の水溶性ホモポリマーBを水を用いて除去する除去工程と、
を備える、請求項1〜6のいずれかに記載の多孔質膜を製造する多孔質膜の製造方法。
0.40≦(b1+b2)/(a1+b1+b2)<1.0 式(1)
(式(1)中、a1は膜中におけるブロック共重合体の水不溶性ポリマーAの体積を表す。b1は、膜中におけるブロック共重合体の水溶性ポリマーBの体積を表す。b2は、膜中における水溶性ホモポリマーBの体積を表す。)
<8> 前記溶液を構成する溶媒のSP値が17.0〜18.5である、<7>に記載の多孔質膜の製造方法。
<9> 前記膜形成工程の前に、前記ブロック共重合体と前記水溶性ホモポリマーBとを含む溶液を剪断混合する混合工程を備える、<7>または<8>に記載の多孔質膜の製造方法。
<10> 基板上に<1>〜<6>のいずれかに記載の多孔質膜を形成する多孔質膜形成工程と、
前記多孔質膜形成工程後、前記多孔質膜をマスクとして用い、前記基板をエッチングして、前記基板表面上に凹部を形成するエッチング工程と、
前記エッチング工程後、残存する前記多孔質膜を除去する除去工程とを備える、表面上に凹部を有する基板の製造方法。
<11> 前記基板が、石英基板または半導体基板である、<10>に記載の表面上に凹部を有する基板の製造方法。
本発明によれば、水溶性ポリマーと水不溶性ポリマーとからなるブロック共重合体を用いて形成され、数百nmの空孔を有し、該空孔内壁面上に所望の機能性高分子、特に水溶性ポリマーが存在する多孔質膜、および、この多孔質膜を大面積で簡便に作製できる製造方法、さらにはこの多孔質膜を用いた表面に凹部を有する基板の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の具体的態様について説明する。
本発明にかかる多孔質膜は、水不溶性ポリマーAを主成分とする連続相と、水不溶性ポリマーAと非相溶である水溶性ポリマーBを主成分とし、連続相中に分布する球状のミクロドメインとからなるミクロ相分離構造を有する。さらに、多孔質膜は、分散相である球状のミクロドメイン内に平均孔径200〜1000nmの球状構造の空孔を有する。
まず、本発明の多孔質膜を製造するために使用される材料(ブロック共重合体、水溶性ホモポリマー)について説明し、その後、製造方法および多孔質膜について説明する。
<ブロック共重合体>
本発明にかかるブロック共重合体は、水不溶性ポリマーAと、この水不溶性ポリマーAと非相溶である水溶性ポリマーBとが化学結合して形成されたポリマーをいう。ブロック共重合体は、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体またはマルチブロック共重合体のいずれの態様であってもよい。具体的には、水不溶性ポリマーAからなる部分および水溶性ポリマーBからなる部分を、それぞれAブロックおよびBブロックとすると、−A−B−という構造を有する一つのAブロックと一つのBブロックとが結合したA−B型ブロック共重合体や、−A−B−A−という構造を有するBブロックの両端にAブロックが結合したA−B−A型ブロック共重合体や、−B−A−B−という構造を有するAブロックの両端にBブロックが結合したB−A−B型ブロック共重合体などが挙げられる。さらに、−(A−B)n−という構造を有する複数のAブロックとBブロックからなるブロック共重合体を用いてもよい。なかでも、入手のしやすさ、合成のしやすさの観点から、A−B型ブロック共重合体(ジブロック共重合体)が好ましい。なお、ポリマー同士を接続する化学結合は、共有結合が好ましく、特に炭素−炭素結合がより好ましい。
ブロック共重合体は、ランダムコポリマーと異なり、Aポリマー鎖が凝集したA相とBポリマー鎖が凝集したB相とが空間的に分離した構造(ミクロ相分離構造)を形成することが知られている。一般のポリマーブレンドで得られる相分離(マクロ相分離)では、2種のポリマー鎖が完全に分離するため最終的に完全に2相に分かれ、その単位セルの大きさは1μm以上である。これに対して、ブロック共重合体で得られるミクロ相分離構造における単位セルの大きさは、数nm〜数百nmのオーダーである。なお、ミクロ相分離構造は、構成成分の組成によって、球状ミセル構造、シリンダー構造、ラメラ構造などの構造を示すことが知られている。
本発明における水不溶性ポリマーAとは、25℃において100gの蒸留水に対するポリマーの溶解度が1g以下であるポリマーとして定義される。具体的には、特開平11−15091号公報の段落番号[0061]〜[0069]やPOLYMER HANDBOOK FOURTH EDITION Volume 1&2 (J.Brandrup, E.H.Immergut, E.A.Grulkeら著 INTERSCIENCE発行)VII章499〜532頁に記載のポリマーから、25℃において100gの蒸留水に対するポリマーの溶解度が1g以下であるポリマーを選択し、使用できるが、これらに限定されるわけではない。
なかでも、分子量の揃ったポリマーの合成が容易であるという観点から、ポリアルキレン類、ポリビニルエステル類、ポリビニルハロゲン化物類、ポリスチレン類、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリシロキサン類、ポリエステル類、ポリブタジエン類、ポリイソプレン類が好ましい。なかでも、室温より高いガラス転移温度を有するという観点から、ポリスチレン類(例えば、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリジメチルスチレン、ポリトリメチルスチレン、ポリエチルスチレン、ポリイソプロピルスチレン、ポリクロルメチルスチレン、ポリメトキシスチレン、ポリアセトキシスチレン、ポリクロルスチレン、ポリジクロルスチレン、ポリブロムスチレン、ポリトリフルオロメチルスチレン等)、ポリ(メタ)アクリレート類(例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリヘキシル(メタ)アクリレート、ポリ−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリフェニル(メタ)アクリレート、ポリメトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリグリシジル(メタ)アクリレート等)、ポリブタジエン類(例えば、ポリ−1,2−ブタジエン、ポリ−1,4−ブタジエン等)、ポリイソプレン類(例えば、cis−1,4−ポリイソプレン、trans−1,4−ポリイソプレン等)がさらに好ましく、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルが特に好ましい。
ブロック共重合体中の水不溶性ポリマーAの重量平均分子量(Mw)は、得られる多孔質膜の空孔の大きさや、後述する水溶性ホモポリマーBの分子量との関係で適宜選択される。なかでも、1.0×10〜1.0×10が好ましく、5.0×10〜1.0×10がより好ましい。上記範囲内であれば、多孔質膜製造の際に溶媒に溶解しやすく、かつ得られる空孔の配列がより規則正しくなる。
なお、上記重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて測定し、標準ポリスチレンに換算したときの重量平均分子量である。
本発明における水溶性ポリマーBとは、25℃において100gの蒸留水に対するポリマーの溶解度が1gを超えるポリマーとして定義される。例えば、特開2005−10752号公報の段落番号[0038]〜[0053]や、POLYMER HANDBOOK FOURTH EDITION Volume 1&2 (J.Brandrup, E.H.Immergut, E.A.Grulkeら著 INTERSCIENCE発行) VII章499〜532に記載のポリマーが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
なかでも、分子量の揃ったポリマーの合成が容易であるという観点から、カルボキシル基を有するポリマーおよびその塩、スルホン酸基を有するポリマーおよびその塩、リン酸基を有するポリマーおよびその塩、ホスホリルコリン基を有するポリマー、水酸基を有するポリマー、アミノ基を有するポリマー、アミド基を有するポリマー、エーテル基を有するポリマーなどが挙げられる。なかでも、エーテル基を有するポリマー(ポリメチルビニルエーテル、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート等)、ホスホリルコリン基を有するポリマー(例えば、ポリ−2−メタクリルオキシエチルホスホリルコリン、ポリ−4−(メタ)アクリルオキシブチルホスホリルコリン、ポリ−6−(メタ)アクリルオキシヘキシルホスホリルコリン等)がより好ましい。タンパク質吸着抑制能に優れ、タンパク質の分離膜として好適に利用できる点からは、生体適合性高分子、例えば、ポリエチレングリコール、またはホスホリルコリン基を有するポリマー(MPCポリマーとも称する)が好ましく挙げられる。特に、原料の入手性の観点から、ポリエチレングリコールが特に好ましい。
水溶性ポリマーBの好ましい実施態様の一つとして、以下の式で表わされる大西パラメータが5以上のポリマーが挙げられる。なかでも、5.5以上がより好ましく、6以上がさらに好ましい。上記範囲内のポリマーを選択すると、本発明の多孔質膜をエッチング処理のマスクと使用した場合、スループットがより向上するとともに、得られる被加工物のパターン像のバラつきがより抑制される。
式:大西パラメータ=N/(Nc−No)
(Nはモノマー単位の総原子数、Ncはモノマー単位の炭素原子数、Noはモノマー単位の酸素原子数)
以下、N/(Nc−No)というパラメータについて、より詳細に説明する。Nはポリマーのセグメント(モノマー単位に相当)当たりの原子の総数、Ncは炭素原子数、Noは酸素原子数である。このパラメータは、ポリマーのドライエッチング耐性を示す指標であり、この値が大きいほどドライエッチングによるエッチング速度が大きくなる(ドライエッチング耐性が低下する)。つまり、エッチング速度Vetchと上記パラメータとの間には、Vetch∝N/(Nc−No)という関係がある。この傾向は、Ar、O2、CF4、H2などの各種エッチングガスの種類にほとんど依存しない(J. Electrochem. Soc., 130, 143(1983))。エッチングガスとしては、上記の文献に記載されているAr、O2、CF4、H2のほかにも、C26、CHF3、CH22、CF3Br、N2、NF3、Cl2、CCl4、HBr、SF6などを用いることができる。
ポリスチレン(PS)のモノマー単位はC88であるから16/(8−0)=2である。ポリイソプレン(PI)のモノマー単位はC58であるから13/(5−0)=2.6である。ポリメタクリル酸メチル(PMMA)のモノマー単位はC528であるから15/(5−2)=5である。したがって、PS−PMMAのブロックコポリマーでは、PSのエッチング耐性が高く、PMMAのみがエッチングされやすいことが予想できる。例えば、CF4を30sccmの流量で流し、圧力を0.01torrに設定し、進行波150W、反射波30W、の条件でリアクティブイオンエッチング(RIE)を行うと、PMMAはPSに対して4±0.3倍程度のエッチング速度を示すことが確認されている。
なお、特開2001−151834号公報の段落番号[0065]〜[0071]においても上記パラメータについて詳述されている。
なお、上記大西パラメータが5以上のポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸(大西パラメータ:9)、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸(大西パラメータ:9)などが挙げられる。
ブロック共重合体中の水溶性ポリマーBの重量平均分子量(Mw)は、得られる多孔質膜の空孔の大きさや、後述する水溶性ホモポリマーBの分子量との関係で適宜選択される。なかでも、1.0×10〜1.0×10が好ましく、5.0×10〜1.0×10がより好ましい。上記範囲内であれば、多孔質膜製造の際に溶媒に溶解しやすく、かつ得られる空孔の配列がより規則正しくなる。
なお、上記重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて測定し、標準ポリスチレンに換算したときの重量平均分子量である。
本発明にかかるブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、得られる多孔質膜の空孔の大きさや、後述する水溶性ホモポリマーBの分子量との関係で適宜選択される。なかでも、1.1×10〜1.1×10が好ましく、5.5×10〜1.1×10がより好ましい。上記範囲内であれば、多孔質膜製造の際に溶媒に溶解しやすく、かつ得られる空孔の配列がより規則正しくなる。
なお、上記重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて測定し、標準ポリスチレンに換算したときの重量平均分子量である。
本発明にかかるブロック共重合体は、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的には、重量平均分子量(Mw)と数重量平均分子量(Mn)とで表される分子量分布(Mw/Mn)が、1.00〜1.30であることが好ましく、1.00〜1.15であることが更に好ましい。Mw/Mnの値が上記範囲内であれば、より均一なサイズを有するミクロ相分離構造を形成することができる。
本発明にかかるブロック共重合体の共重合比率は、球状ミクロドメインを有するミクロ相分離構造が得られるように適宜選択される。なかでも、水不溶性ポリマーA/水溶性ポリマーB=0.95/0.05〜0.65/0.35(体積比)であり、より好ましくは0.85/0.15〜0.7/0.3(体積比)である。上記範囲内であれば、より配列の整った球状のミクロ相分離構造が得られる。
本発明にかかるブロック共重合体は、公知の方法で合成することができる。例えば、アニオンリビング重合、カチオンリビング重合、リビングラジカル重合、グループトランスファー重合、開環メタセシス重合等の手法を利用することが可能である(Nikos Hadjichristidisら著, "Block Copolymers : Synthetic Strategies, Physical Properties, and Applications", Wiley-Interscience (2002))。また、Polymer Source社(Canada)等が製造している市販品を使用することも可能である。
<水溶性ホモポリマーB>
本発明にかかる水溶性ホモポリマーBは、上述のブロック共重合体中の水溶性ポリマーBと構成成分(モノマー)が同じポリマーをさす。水溶性ホモポリマーBの定義は、上述のブロック共重合体中の水溶性ポリマーBと同一である。
本発明にかかる水溶性ホモポリマーBの重量平均分子量(Mw)は、得られる多孔質膜の空孔の大きさや、上述のブロック共重合体の分子量との関係で適宜選択される。なかでも、50〜1.0×10が好ましく、50〜5.0×10がより好ましい。
なお、上記重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて測定し、標準ポリスチレンに換算したときの重量平均分子量である。
本発明にかかる水溶性ホモポリマーBは、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的には、重量平均分子量(Mw)と数重量平均分子量(Mn)とで表される分子量分布(Mw/Mn)が、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜1.5であることが更に好ましい。Mw/Mnの値が上記範囲内であれば、より均一なサイズを有するミクロ相分離構造を形成することができる。
<式(1)>
次に、本発明に用いられる、水不溶性ポリマーAと水溶性ポリマーBとからなるブロック共重合体と水溶性ホモポリマーBとの混合比について説明する。本発明においてブロック共重合体と水溶性ホモポリマーBとは、塗膜中におけるブロック共重合体中の水不溶性ポリマーAが占める体積をa1、ブロック共重合体中の水溶性ポリマーBが占める体積をb1、水溶性ホモポリマーBが占める体積をb2とした場合、下記式(1)の関係を満たす。
0.4≦(b1+b2)/(a1+b1+b2)(以後、f(a)とも称する)<1.0 式(1)
(式(1)中、a1は膜中におけるブロック共重合体の水不溶性ポリマーAの体積を表す。b1は、膜中におけるブロック共重合体の水溶性ポリマーBの体積を表す。b2は、膜中における水溶性ホモポリマーBの体積を表す。)
上記f(a)の値が0.40より小さい場合、ミクロ相分離構造における、球直径が200nmより小さい構造となり目的とする球状構造を得ることができない。
それぞれの体積は、それぞれのポリマーの密度を用いて導かれる。式(1)の計算方法は特に制限されず、例えば、まず、塗布膜中におけるブロック共重合体の水不溶性ポリマーAと、ブロック共重合体の水溶性ポリマーBと、水溶性ホモポリマーBとの質量比を計算する。ここで、ブロック共重合体の水不溶性ポリマーA:ブロック共重合体の水溶性ポリマーB:水溶性ホモポリマーBの質量比を、F(a1):F(b1):F(b2)とする。次に、水不溶性ポリマーAの密度、水溶性ポリマーBの密度を、それぞれd(PA)、d(PB)とすると、以下のように、式(1)が計算される。
{(F(b1)/d(PB))+(F(b2)/d(PB))}/{(F(a1)/d(PA))+(F(b1)/d(PB))+(F(b2)/d(PB))}
なお、それぞれのポリマーの密度は、Polymer Handbook Fourth Edition Volume2(A John Wiley & Sons, Inc., Publication)、J.BRANDRUP, E.H.IMMERGUT, and E.A.GRULKE(1999)などに記載される数値を用いることができる。
f(a)の値が上記範囲内の場合、ブロック共重合体と水溶性ホモポリマーBとにより球状構造のミクロ相分離が形成される。より詳細には、ブロック共重合体中の水溶性ポリマーBと水溶性ホモポリマーBとにより、ミクロ相分離中の分散相である球状ミクロドメインが構成され、ブロック共重合体中の水不溶性ポリマーAにより連続相が構成される。後述する水洗処理を経ることにより、水溶性ホモポリマーBが選択的に除去され、目的とする球状ミクロドメイン内に空孔を有する多孔質膜が得られる。なお、得られるミクロ相分離構造の規則性がより向上する点で、上記f(a)の好適範囲としては、0.4≦f(a)≦0.95が好ましく、0.4≦f(a)≦0.9がより好ましい。
<式(2)>
次に、本発明で用いられるブロック共重合体と水溶性ホモポリマーBとの分子量の関係について説明する。本発明においてブロック共重合体と水溶性ホモポリマーBとは、上述したブロック共重合体中の水溶性ポリマーBの重量平均分子量をM(b1)、水溶性ホモポリマーBの重量平均分子量をM(b2)とした場合、下記式(2)の関係を満たすことが好ましい。
5<M(b1)/M(b2)<250 式(2)
(式(1)中、M(b1)はブロック共重合体の水溶性ポリマーBの重量平均分子量を表す。M(b2)は、水溶性ホモポリマーBの重量平均分子量を表す。)
上記M(b1)/M(b2)の値が5以下の場合は、ブロック共重合体と水溶性ホモポリマーBとがマイクロメートルレベルで相分離し、目的とする規則性のあるミクロ相分離構造が得られない場合がある。また、この値が250以上の場合は、水溶性ホモポリマーBの分子量が小さすぎて、得られる多孔質膜の空孔サイズの制御が困難になる場合がある。
なお、得られるミクロ相分離構造の規則性がより向上する点で、上記M(b1)/M(b2)の好適な範囲としては、7.5<M(b1)/M(b2)<225がより好ましく、10<M(b1)/M(b2)<200が特に好ましい。
<基板>
次に、ブロック共重合体と水溶性ホモポリマーBとの塗膜を形成する基板について説明する。本発明で使用される基板としては、ブロック共重合体と水溶性ホモポリマーBとの塗膜を支持するものであれば、特に限定されない。なかでも、得られる相分離構造の規則性がより高く、得られる多孔質膜との密着性に優れるという点で、基板表面の水に対する接触角が40°〜110°を示す基板であることが好ましく、50°〜105°を示す基板がより好ましい。例えば、表面修飾されたシリコンウエハ、ポリマー基板、ガラス基板、セラミック基板などが挙げられる。
なお、接触角は、静的な接触角をいい、液滴法による接触角測定装置を使用して23℃において測定する。ここで「静的な接触角」とは、流動等による時間に伴う状態変化が生じない条件における接触角をいう。
なお、所定の水に対する接触角を有する基板を得るために、シランカップリング剤や、末端に官能基を持つポリマーなどを使用して基板表面を修飾してもよい。使用される末端に官能基を持つポリマーは、特に限定されない。なかでも、基板上に形成される塗膜の相分離構造の規則性がより良い点で、ヒドロキシル基を末端に有するポリスチレン、ヒドロキシル基を末端に有するポリエチレン、ヒドロキシル基を末端に有するスチレンとメタクリル酸メチルのランダムコポリマーなどが好ましく挙げられる。
基板の修飾方法は特に限定されず、上記化合物を溶解させた溶液を基板上に塗布する方法や、基板をその溶液に浸漬させる方法などが挙げられる。
<多孔質膜の製造方法>
本発明の多孔質膜の好適な製造方法としては、特に限定されないが、主に以下の2つの工程を備える製造方法が挙げられる。
<1> 上記の式(1)を満足する、互い非相溶な水不溶性ポリマーAと水溶性ポリマーBとからなるブロック共重合体と水溶性ホモポリマーBとを含む溶液を基板表面に塗布して膜を形成する膜形成工程
<2> 膜形成工程後、該膜中の水溶性ホモポリマーBを水を用いて除去する除去工程
以下、各工程および必要に応じて実施される工程について詳細に説明する。
<混合工程>
後述する膜形成工程の前に、ブロック共重合体と水溶性ホモポリマーBとを含む溶液を剪断混合する混合工程を設けてもよい。この混合工程を実施することにより、得られるミクロ相分離構造がより均一となり、欠陥が少なくなる。
剪断混合を行う装置としては、剪断力を加えながら混合可能な装置であれば、適宜に使用可能であり、その種類は特に限定されるものではない。例えば、ホモジナイザー混合機、超高圧乳化機、超音波装置などが挙げられる。溶液を攪拌して剪断力を付与する場合の条件としては、5000〜50000rpmの回転速度で攪拌することが好ましく、5000〜40000rpmがより好ましい。また、攪拌時間としては、0.5〜30分間が好ましく、0.5〜15分間がより好ましい。
<膜形成工程>
膜形成工程は、上述のブロック共重合体と水溶性ホモポリマーBとを含む溶液を基板表面に塗布して、膜を形成する工程である。得られる塗膜では、球状ミクロドメインを分散相とするミクロ相分離構造が形成される。
ブロック共重合体と水溶性ホモポリマーBとを含む溶液を作製する際に使用される溶媒は、ブロック共重合体が溶解すればよく、水溶性有機溶媒でも水不溶性有機溶媒でもよく、両者のポリマーの種類により適宜選択される。
より具体的には、アルコール類、多価アルコール類、多価アルコールエーテル類、アミン類、アミド類、複素環類、スルホキシド類、二トリル類、ケトン類、エステル類、エーテル類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類などが挙げられる。
上記有機溶媒のなかでも、得られるミクロ相分離構造の規則性がより高い点で、SP値(溶解度パラメーター)が17.0〜18.5である有機溶媒が好ましい。より好ましくは、17.2〜18.5である。ここで、SP値は、Polymer Handbook Fourth EditionVolume2(A John Wiley & Sons, Inc., Publication)J. BRANDRUP, E. H. IMMERGUT, and E. A. GRULKE (1999) P.675〜714に記載の方法を用いて得られる値である。
上記有機溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレンなど)、ケトン類(例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル類(ブチルアセテートなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ビシクロヘキシル)、エーテル類(例えば、エチレングリコールジメチルエーテル)などが挙げられる。なかでも、トルエン、キシレン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、ブチルアセテート、メチルイソブチルケトンがより好ましい。
溶液中のブロック共重合体と水溶性ホモポリマーBとの合計濃度は、溶液全量に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.25〜15質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、後述する塗布の際に取り扱いやすく、均一な膜が得られやすい。
上記溶媒と水不溶性ポリマーAおよび水溶性ポリマーBとの好ましい組み合わせとしては、水不溶性ポリマーAがポリスチレンで、水溶性ポリマーBがポリエチレングリコールである場合、トルエン、キシレンなどが特に好ましい。
ブロック共重合体と水溶性ホモポリマーBとを含む溶液には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の成分(例えば、UV吸収剤や酸化防止剤など)を加えることもできる。
上述の溶液の塗布方法としては、厚みが均一でかつ表面が平滑になるものであれば特に限定されず、例えば、スピンコート法、スプレー法、ロールコート法、インクジェット法などの方法を採用することができる。中でも、生産性の観点から、スピンコート法が好ましい。スピンコート法の条件は、使用するブロック共重合体などにより適宜選択される。 塗布後に、必要に応じて、乾燥工程を設けてもよい。溶媒を除去するための乾燥条件としては、適用される基板、および使用するブロック共重合体などに応じて適宜選択される。なかでも、生産性などの点で、20〜200℃の温度で、0.5〜336時間の処理を行うことが好ましい。特に好ましい温度としては、20〜180℃である。乾燥処理は数回に分けて行ってもよい。この乾燥処理は、窒素雰囲気下、低濃度酸素下または大気圧10トール以下で行うことが特に好ましい。
膜形成工程後、必要に応じて、膜形成工程で得られた塗膜を加熱する処理(加熱工程)を施してもよい。加熱工程により、得られるミクロ相分離構造の規則性がより向上する。加熱温度および時間は、使用するブロック共重合体や膜厚などにより適宜選択されるが、上述の水不溶性ポリマーAと水溶性ポリマーBのガラス転移温度以上であることが好ましい。例えば、60〜300℃が好ましく、80〜270℃がより好ましい。温度が低すぎると、本工程の効果が小さく、温度が高すぎるとポリマーの分解などが誘発され好ましくない。加熱時間は、10秒以上が適当であり、0.5〜1440分が好ましく、1〜60分がさらに好ましい。時間が短すぎると、本工程の効果が小さく、時間が長すぎると、本工程の効果が飽和しているため、不経済である。
また、この工程は、真空中、不活性ガス雰囲気下、または、有機溶媒の蒸気雰囲気下の、いずれの条件下で行ってもよい。有機溶媒としては、使用するブロック共重合体などにより適宜選択される。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、クロロホルム、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ヘキサン、オクタン、メタノール、エタノール、酢酸、酢酸エチル、ジエチルエーテル、二硫化炭素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
膜形成工程により得られる塗膜の斜視断面図を、図1に示す。図1に示すように、得られる積層体10中の塗膜12は、連続相14と、球状ミクロドメイン16とからなるミクロ層分離構造を有し、基板18の表面に配置されている。上述のように、本発明において、連続相14はブロック共重合体の水不溶性ポリマーAを主成分として構成され、球状ミクロドメイン16はブロック共重合体の水溶性ポリマーBと水溶性ホモポリマーBとを主成分として構成されている。球状ミクロドメインの配列パターンは、特に限定されず、例えば、六方格子状や正方配列、または不規則配列であってもよい。
球状ミクロドメインの平均直径は、使用するブロック共重合体や水溶性ホモポリマーBなどの分子量などにより適宜制御することができ、210〜1000nmが好ましく、250〜600nmがより好ましい。楕円などの場合は、長径が上記範囲内であればよい。
隣り合う球状ミクロドメイン間の距離(中心間の距離)は、使用するブロック共重合体や水溶性ホモポリマーBなどの分子量などにより適宜制御することができ、150〜2000nmが好ましく、200〜1500nmがより好ましい。
球状ミクロドメインの大きさや球状ミクロドメイン間の距離は、例えば、原子間力顕微鏡観察などによって測定することができる。なお、ミクロドメインという用語はマルチブロックコポリマー中のドメインを表すのに一般に使用されており、ドメインのサイズを規定するものではない。
塗膜12において、連続相14はブロック共重合体の水不溶性ポリマーAを主成分として構成されている。ここで主成分とは、具体的には、連続相14中における水不溶性ポリマーAの占める比率が、連続相の全質量に対して、80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。上限としては、100質量%である。
一方、連続相中に分布している球状ミクロドメイン16はブロック共重合体の水溶性ポリマーBと水溶性ホモポリマーBとを主成分として構成されている。ここで主成分とは、具体的には、球状ミクロドメイン16中におけるブロック共重合体の水溶性ポリマーBと水溶性ホモポリマーBの占める比率が、球状ミクロドメインの全質量に対して、80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。上限としては、100質量%である。
<除去工程>
除去工程は、膜形成工程で得られた塗膜中の水溶性ホモポリマーBを、水を用いて除去する工程である。この工程により、膜形成工程で得られた塗膜から水溶性ホモポリマーBのみが除去されることにより、球状ミクロドメイン中に所定の大きさの空孔を有する多孔質膜が得られる。
水溶性ホモポリマーBを取り除くための水による洗浄方法としては、水溶性ホモポリマーBが除去できれば特に限定されず、例えば、膜形成工程で得られた塗膜の上からシャワーにより水をふりかける方法や、水中に膜形成工程で得られた塗膜を浸漬させる方法などが挙げられる。この洗浄処理は、複数回行ってもよい。洗浄時間に関しては、使用する材料などにより適宜最適な条件が選択される。なお、除去工程後に、得られた多孔質膜を適宜基板から取り外してもよい。
<多孔質膜>
上述の製造工程を経て、水不溶性ポリマーAを主成分とする連続相と、水溶性ポリマーBを主成分にし、連続相中に分布する球状ミクロドメイン(分散相)とからなるミクロ相分離構造を有し、球状ミクロドメイン内に平均孔径200〜1000nmの球状構造の空孔が存在する多孔質膜が得られる。
図2に、本発明で得られる多孔質膜の斜視断面図を示す。図2に示す積層体20は、基板18と多孔質膜22より構成される。多孔質膜22は、水不溶性ポリマーAを主成分とする連続相14と、球状ミクロドメイン16とのミクロ相分離構造を有し、球状ミクロドメイン16内に空孔24がある。図2より分かるように、空孔24の壁面には球状ミクロドメイン16を形成する水溶性ポリマーBが存在する。
多孔質膜は、水不溶性ポリマーAと水溶性ポリマーBとから構成されているが、空孔内壁面には主成分として水溶性ポリマーBが存在する。つまり、多孔質膜の連続相を構成する水不溶性ポリマーAとは機能の異なる水溶性ポリマーBにより空孔内壁面が被覆されている。つまり、空孔内壁面が水溶性ポリマーBで機能化されている。
従来使用されていたイオンエッチングなどにより一方のミクロドメイン部を分解して多孔質膜を得る方法では、ミクロドメインを構成する成分がすべて分解・除去されてしまい、連続相を構成する成分のみが残ることになる。つまり、空孔内壁面上には連続相を構成する成分が存在することになる。そのため、連続相を構成する成分が有する性質と異なる性質・機能を壁面内に持たせる場合には、新たに空孔内壁面を化学修飾する手間を伴う。また、空孔径が非常に小さいため、壁面全体を完全に化学修飾することは非常に困難である。
一方、本発明の方法によれば、機械的強度に優れる水不溶性ポリマーAを多孔質膜の連続相(支持部)として使用し、かつ、水溶性ポリマーBに所望の機能性分子を担持させることにより、空孔内壁面を容易に、かつ任意に機能化することが可能となる。
<空孔の大きさ>
本発明にかかる多孔質膜中の空孔の平均孔径(平均直径)は、ブロック共重合体と水溶性ポリマーBとの割合などにより適宜制御することができるが、通常200〜1000nmである。なかでも、200〜750nmがより好ましく、200〜600nmがさらに好ましい。上記範囲内であれば、後述するエッチング処理の際のマスクや、分離膜として好適に使用でき、特に、エッチング処理される基板(特に、半導体基板)からの光取り出し効率がより向上する点からも上記範囲が好ましい。
平均孔径が200nm未満であると、後述するエッチング処理される基板の光取り出し効率において十分な効率アップができない可能性があり、かつ、十分な深さのエッチングが困難となる。また、ブロック共重合体により得られる相分離構造の安定性の観点から、平均孔径が1000nmより大きい多孔質膜を再現性よく製造することは困難である。楕円などの場合は、長径が上記範囲内であればよい。膜厚が平均孔径より小さい場合は、空孔は多孔質膜を貫通する貫通孔となる。
なお、通常、空孔の平均孔径は、上述した球状ミクロドメインの大きさより小さく、空孔内壁面上には水溶性ポリマーBが存在する。両者の差は、5〜100nmであるのが好ましい。平均孔径とは、SEM(走査型電子顕微鏡)写真(約1000nm×1000nmの範囲)で観察される多孔質膜表面上の少なくとも2個以上、好ましくは10個以上の任意の空孔の直径を測定して、数平均して求めた値である。コンピューターによる画像処理して、導入される値でも構わない。
また、空孔の孔径に関するC.V.値(%)(変動係数)としては、0.5〜100%が好ましく、0.5〜80%がより好ましい。上記範囲内であれば、本発明の多孔質膜を後述するエッチング用マスクとして使用した際に、エッチング処理を受けた基板の光取り出し効率が飛躍的に向上する。
なお、C.V値(%)は、(孔径の標準偏差)/(平均孔径)で表わされる値である。孔径の標準偏差および平均孔径は、上述のようにSEM観察により得られる。
<空孔密度>
本発明にかかる多孔質膜の空孔密度は、使用するブロック共重合体、水溶性ポリマーBなどの量を変えることにより適宜制御することができる。なかでも、1〜32個/μmが好ましく、2〜30個/μmがより好ましい。上記範囲内であれば、得られる空孔の規則性がより向上する。
ここで、本発明で規定する多孔質膜における空孔密度とは、多孔質膜の表面を空孔が明瞭に確認できる倍率で走査型電子顕微鏡等を用いて写真を撮り、その写真の中の空孔を数えて、1μm当たりの空孔数に換算したものを空孔密度と定義する。複数の領域など、出来るだけ広域について数えて平均することが好ましい。なお、ミクロドメイン内にある空孔の数は特に限定されないが、各ミクロドメイン内にひとつの空孔が存在するのが好ましい。
<膜厚>
本発明にかかる多孔質膜の平均膜厚は、使用するブロック共重合体、水溶性ポリマーBなどの量を変えることにより適宜制御することができる。なかでも、30〜1000nmが好ましく、50〜500nmがより好ましい。上記範囲内であれば、多孔質膜をエッチング用マスクとして使用した際に、エッチング後に除去が容易で、基板のエッチング量を制御しやすいの点で好ましい。膜厚の測定方法としては、プロファイラ装置(KLA−Tecnor社製)により、膜表面上の任意の点を3ヵ所以上測定して数平均して求めた値である。
<配置>
本発明にかかる多孔質膜の空孔の配置は、使用するブロック共重合体や水溶性ホモポリマーBの種類や分子量などにより適宜制御することが可能である。
隣り合う空孔間の平均間隔(空孔中心間の距離)は、使用するブロック共重合体や水溶性ホモポリマーBの種類や分子量などにより適宜制御することが可能であるが、150〜2000nmが好ましく、200〜1500nmがより好ましい。平均間隔は、SEM(走査型電子顕微鏡)写真(約1000nm×1000nmの範囲)で観察される多孔質膜表面上の少なくとも2個以上、好ましくは10個以上の任意の空孔から隣り合う空孔までの間隔を測定して、数平均して求めた値である。
<用途>
本発明にかかる多孔質膜は、多様な用途に応用することが可能である。例えば、電子情報記録媒体、吸着剤、ナノ反応場膜、分離膜、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどの偏光板保護フィルムなどが挙げられる。
なかでも、本発明により得られた多孔質膜は、表面が水溶性(親水性)ポリマーで被覆されるという特徴を持つため、水溶媒中の物質を分離するための機能性分離膜として好適に使用することが出来る。特に、タンパク質等に対する吸着抑制能を有するポリマーを水溶性ポリマー成分として用いた場合、タンパク質等の生体高分子や細胞等に対する吸着抑制能を有する分離膜として、好ましく用いることが可能となる。タンパク質等に対する吸着抑制能を有するポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(2−メタクリルオキシエチルホスホリルコリン)などのリン脂質類似構造を有するリン酸基含有ポリメタクリレートが好適に挙げられる。
タンパク質の分離法としては、従来からゲル電気泳動法が知られている(「タンパク質ハンドブック」G.Walsh著、平山ら訳(丸善)p167)。しかしこの手法では、タンパク質が変性してしまう場合が多く、また、ゲルからタンパク質を取り出すことも容易ではない。その他の方法としては中空糸膜を用いて、タンパク質を分離する手法も報告されている(特開2006−89468号公報)。この手法を用いることにより、マーカータンパク質として有用な分子量60kDa以下のタンパク質を選択的に濃縮可能であることが報告されている。しかしこの手法では大掛かりな装置を必要とするため、コスト・工業性の点から好ましくなく、また、タンパク質を簡便に分離することが出来ない。さらに、使用されている中空糸膜表面は、タンパク質の吸着抑制能に関しては特に考慮されておらず、使用とともにタンパク質が吸着してしまう。
上述の本発明にかかる多孔質膜の製造方法を用いることにより、ナノメートルサイズの空孔内壁面はタンパク質等の吸着抑制能を有する化合物(例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(2−メタクリルオキシエチルホスホリルコリン)などのリン脂質類似構造を有するリン酸基含有ポリメタクリレート)で被覆された多孔質膜を容易に得ることができる。多孔質膜の連続相(支持部)には、医療用材料としての好適な機械的特性を付与するために機械的強度に優れたポリマー(例えば、ポリスチレン)などを使用することができる。従来の手法においては、多孔質膜を作製後、特定の機能を有した化合物で空孔を被覆するという工程が必要であった。また、空孔の開口部の大きさが小さいため、化学修飾を完全に進行させるのは困難であった。さらに、一旦被覆されたとして分離膜として使用中に空孔内の被膜が剥がれてくる場合もあった。本発明においては、上述のように空孔内を所望の機能性化合物で被覆することができ、該化合物は多孔質膜の連続相と共有結合されているため使用に際しても剥離などが起こることはほとんどない。
また、本発明の多孔質膜の他の好適な用途として、基板に所定のパターンを形成するためのエッチング加工の際のマスクとしての使用(エッチング用マスク)が挙げられる。本発明の多孔質膜をエッチング用マスクとして使用することにより、基板表面上にナノレベルで制御された所定のパターン状の凹凸構造を形成することができる。
本発明の多孔質膜を用いた凹部を表面上に有する基板の製造方法としては、特に制限されないが、なかでも以下の3つの工程を含む方法が好ましい。
<工程1> 基板上に上記の多孔質膜を形成する多孔質膜形成工程
<工程2> 多孔質膜形成工程後、多孔質膜をマスクとして用い、基板をエッチングして、基板表面上に凹部を形成するエッチング工程
<工程3> エッチング工程後、残存する多孔質膜を除去する除去工程
上記の各工程について、図3に従って、以下に説明する。
(多孔質膜形成工程)
多孔質膜形成工程は、基板上に上述したナノサイズの空孔を有する多孔質膜を形成する工程である。この工程により、図3(a)に示すように、基板18上に空孔24を有する多孔質膜22が形成される。なお、空孔24の大きさ(平均孔径)は、上述のように200〜1000nm程度である。多孔質膜22の厚みは特に制限されないが、除去が容易で、基板のエッチング量を制御しやすい点から、30〜1000nmが好ましく、50〜500nmがより好ましい。
基板上に多孔質膜を形成する方法は特に限定されず、上記の多孔質膜の製造方法で説明したように、ブロック共重合体と水溶性ホモポリマーBとを含む溶液を基板上へ塗布し、その後水溶性ホモポリマーBを水で取り除くことにより形成することができる。また、他の形成方法としては、別途作製した多孔質膜を基板上へ直接堆積させてもよい。
エッチング処理される基板は特に限定されず、使用目的に応じて適宜最適な基板が選択される。具体的には、ポリマー基板、ガラス基板、石英基板、半導体基板(例えば、GaAs、GaP、GaN、AlN、InN、InP、InAs、AlAs、GaSb、GaInNAsなどのIII-V族化合物半導体基板、シリコン、ドープシリコンなど)などが挙げられる。なかでも、石英基板、半導体基板が好ましい。
なお、ブロック共重合体と水溶性ホモポリマーBとを含む溶液を基板上に塗布して多孔質膜を作製する場合は、基板表面の水に対する接触角は40°〜110°が好ましい。
基板の形状は特に限定されないが、寸度的に安定な板状物であることが好ましい。板状物である場合の厚みは、特に制限されない。
(エッチング工程)
多孔質膜形成工程後に実施されるエッチング工程では、多孔質膜をマスクとして用い、基板を選択的にエッチングして、基板表面上に凹部を形成する。この工程により、図3(b)に示すように、空孔部に位置する基板がエッチングされ、凹部30を複数有する基板18aが得られる。
凹部30の開口部の形状は、特に限定されないが、空孔の開口部の形状と同じく円形状であることが好ましい。図3(b)において、凹部30の形状は半円状に記載されているが、これに限定されず、円柱状、円錐状であってもよい。
凹部30の開口部の平均直径は、エッチング処理条件を制御することにより適宜調整されるが、得られる基板の光取り出し膜などへの応用の点からは、200〜1000nmが好ましく、200〜600nmがより好ましい。凹部30においては、凹部30の側壁(内壁)は、基板18の厚さ方向に対して略平行に形成されることが好ましい。凹部30の深さ(高さ)hは、エッチング処理条件を制御することにより適宜調整されるが、各種用途などの応用の点からは、10〜1000nmが好ましく、30〜750nmがより好ましい。
凹部30の数は、特に限定されないが、通常、多孔質膜22の空孔24の数に対応しており、1〜32個/μmが好ましく、2〜30個/μmがより好ましい。
エッチング条件としては、基板をエッチングできれば特に限定されず、基板の種類に応じて最適な処理が実施される。例えば、硫酸、硝酸、リン酸、フッ酸などの薬液で腐食を行うウェットエッチング、または、代表的には反応性イオンエッチングや反応性ガスエッチングなどのドライエッチングなどが挙げられる。なかでも、エッチング量の制御が容易という点から、ドライエッチングが好ましい。なお、エッチングガスは、基板に応じて適宜選択すればよく、CF4、NF3、SF6などのフッ素系、Cl2、BCl3などの塩素系のエッチングガスを用いて行うことができる。エッチングの処理時間は、基板の用途などに応じて適宜調整することができるが、エッチング量の制御がよりし易い点で、5〜300秒が好ましく、10〜200秒がより好ましい。
なお、エッチングの際には、基板と多孔質膜とのドライエッチング速度の差、エネルギー線に対する分解性の差、または、熱分解性の差を利用する。また、エッチングの際に多孔質膜の一部がエッチングされてもよい。
(除去工程)
エッチング工程後に実施される除去工程では、マスクとして使用され、残存する多孔質膜が除去され、凹部を有する基板が得られる。図3(c)に示すように、多孔質膜が除去され、凹部30を複数有する基板18aが得られる。
多孔質膜の除去の方法は、特に限定されないが、多孔質膜が溶解する溶媒で処理する方法やエッチングにより除去する方法などが挙げられる。
上述の方法により得られた凹部を有する基板は、種々の用途に応用することができる。例えば、基板として半導体基板を用いた場合は、凹部が設けられた基板側(光取り出し面)からの光取り出し効率が向上し、LEDなどの光取り出し効率向上フイルムなどへ応用することができる。
以下に本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されてない。
後述する原子間力顕微鏡(AFMとも称する)観察は、セイコーインスツルメンツ社製SPA−400装置のタッピングモードを用いて実施した。走査型電子顕微鏡(SEMとも称する)観察は、日立ハイテク社製S5200装置を用いて実施した。得られる多孔質膜の膜厚は、プロファイラ装置(KLA−Tecnor社製)により測定した。
<サンプル1の作製>
ブロック共重合体として、Polymer Source社より購入したポリスチレン(水不溶性ポリマーA)とポリエチレングリコール(水溶性ポリマーB、大西パラメータ:7)からなるブロック共重合体(A−B型)、P3799−SEOを用いて検討した。P3799−SEOでは、ポリスチレン部分の重量平均分子量(Mw)が225,000、ポリエチレングリコール部分の重量平均分子量(Mw)が26,000、Mw/Mn=1.12であった。水溶性ホモポリマーBとして、ポリエチレングリコールのホモポリマー(重量平均分子量(Mw):600)(以下、PEG600と記載)を、東京化成社より購入した。
基板としてシリコンウエハ基板を用意し、UVオゾン洗浄を5分間行い、有機物を除去した。得られたシリコンウエハの水に対する接触角は、8±5°であった。
溶液中におけるP3799−SEOの含有量が2.5質量%、PEG600の含有量が1.5質量%であるトルエン溶液を調製し、ミクロナイザーを用いて15000rpmにて1分間攪拌した。得られた混合溶液(200μL)を、上記基板上に滴下し、slope:5秒、3000rpm:90秒の条件でスピンコートすることにより塗膜を得た。なお、「slope 5秒」とは、回転数が3000rpmになるまでの時間を意味する。AFM測定などを実施したところ、球状ミクロドメインを有するミクロ相分離構造が得られていることが確認された。
その後、得られた塗膜を2mLの脱イオン水で5回洗浄することにより、塗膜中のPEG600を除去し、サンプル1を得た。式1および式2の定義により、(b1+b2)/(a1+b1+b2)(以後、f(a)と称する)値は0.41であり、M(b1)/M(b2)(以後、rと称する)値は43であった。
表面構造を確認するために、サンプル1のAFM観察を行った(図4(a))。さらに、3次元構造を確認するために、液体窒素中でサンプル1を割断し、SEM観察を行った(図4(b))。サンプル1では、平均孔径218nmの空孔が観察された。サンプル1の空孔密度は22個/μmであり、隣接する空孔間の平均間隔は268nmであった。また、サンプル1の平均膜厚は、360nmであった。空孔の孔径に関するC.V.値は、22.5%であった。
<サンプル2の作製>
溶液中におけるP3799−SEOの含有量を0.5質量%、PEG600の含有量を1.3質量%に変更した以外は、サンプル1の作製方法と同様の操作を行い、サンプル2を得た。なお、式1および式2の定義より、f(a)値は0.75であり、r値は43であった。
AFM観察(図5)およびSEM観察より、サンプル2では平均孔径215nmの空孔が確認された。サンプル2の空孔密度は20個/μmであり、隣接する空孔間の平均間隔は252nmであった。また、サンプル2の平均膜厚は、42nmであった。空孔の孔径に関するC.V.値は、65.5%であった。
<サンプル3の作製>
溶液中におけるP3799−SEOの含有量を1.0質量%、PEG600の含有量を2.6質量%に変更した以外は、サンプル1の作製方法と同様の操作を行い、サンプル3を得た。なお、式1および式2の定義より、f(a)値は0.75であり、r値は43であった。
AFM観察(図6)およびSEM観察より、サンプル3では平均孔径356nmの空孔が確認された。サンプル3の空孔密度は5個/μmであり、隣接する空孔間の平均間隔は421nmであった。また、サンプル3の平均膜厚は、73nmであった。空孔の孔径に関するC.V.値は、91.6%であった。
<サンプル4の作製>
溶液中におけるP3799−SEOの含有量を1.5質量%、PEG600の含有量を3.9質量%に変更した以外は、サンプル1の作製方法と同様の操作を行い、サンプル4を得た。なお、式1および式2の定義より、f(a)値は0.75であり、r値は43であった。
AFM観察(図7)およびSEM観察より、サンプル4では平均孔径610nmの空孔が確認された。サンプル4の空孔密度は2個/μmであり、隣接する空孔間の平均間隔は622nmであった。また、サンプル4の平均膜厚は、117nmであった。空孔の孔径に関するC.V.値は、30.6%であった。
<サンプル5の作製>
ポリスチレンとポリメタクリル酸メチルとランダムコポリマー0.1g(Polymer Source社製、P3437−SMMAranOHT)をトルエンに加え、溶解させた。得られた溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、ランダムコポリマーで表面が修飾された基板を得た。得られた基板の水に対する接触角は82±8°であった。
溶液中におけるP3799−SEOの含有量が1.5質量%、PEG600の含有量が1.2質量%であるトルエン溶液を調製し、ミクロナイザーを用いて15000rpmにて1分間攪拌した。得られた混合溶液(200μL)を、上記基板上に滴下し、slope:5秒、3000rpm:90秒の条件でスピンコートすることにより塗膜を得た。得られた塗膜のAFM測定などを実施したところ、球状ミクロドメインを有するミクロ相分離構造が得られていることが確認された。
その後、塗膜を2mLの脱イオン水で5回洗浄することにより、塗膜中のPEG600を除去し、サンプル7を得た。式1および式2の定義により、f(a)値は0.50であり、r値は43であった。
AFM観察(図8)およびSEM観察より、サンプル5では平均孔径201nmの空孔が確認された。サンプル5の空孔密度は27個/μmであり、隣接する空孔間の平均間隔は222nmであった。また、サンプル5の平均膜厚は、115nmであった。空孔の孔径に関するC.V.値は、75.1%であった。
サンプル5(f(a)値:0.50)に示すように、P3799−SEOおよびPEG600の溶液中の濃度を変更しても所望の多孔質膜が得られることが確認された。
<サンプル6の作製>
溶液中におけるP3799−SEOの含有量を0.5質量%、PEG600の含有量を1.3質量%に変更した以外は、サンプル5の作製方法と同様の操作を行い、サンプル6を得た。なお、式1および式2の定義より、f(a)値は0.75であり、r値は43であった。
AFM観察(図9)およびSEM観察より、サンプル6では平均孔径256nmの空孔が確認された。サンプル6の空孔密度は10個/μmであり、隣接する空孔間の平均間隔は290nmであった。また、サンプル6の平均膜厚は、80nmであった。空孔の孔径に関するC.V.値は、85.8%であった。
<サンプル7の作製>
溶液中におけるP3799−SEOの含有量を1.0質量%、PEG600の含有量を2.6質量%に変更した以外は、サンプル5の作製方法と同様の操作を行い、サンプル7を得た。なお、式1および式2の定義より、f(a)値は0.75であり、r値は43であった。
AFM観察(図10)およびSEM観察より、サンプル7では平均孔径523nmの空孔が確認された。サンプル7の空孔密度は5個/μmであり、隣接する空孔間の平均間隔は601nmであった。また、サンプル7の平均膜厚は、89nmであった。空孔の孔径に関するC.V.値は、32.5%であった。
<サンプル8の作製>
溶液中におけるP3799−SEOの含有量を1.5質量%、PEG600の含有量を3.9質量%に変更した以外は、サンプル5の作製方法と同様の操作を行い、サンプル8を得た。なお、式1および式2の定義より、f(a)値は0.75であり、r値は43であった。
AFM観察(図11)およびSEM観察より、サンプル8では平均孔径790nmの空孔が確認された。サンプル8の空孔密度は2個/μmであり、隣接する空孔間の平均間隔は1014nmであった。また、サンプル8の平均膜厚は、122nmであった。空孔の孔径に関するC.V.値は、10.5%であった。
サンプル6〜8(f(a)値:0.75)に示すように、P3799−SEOおよびPEG600の溶液中の濃度を変更しても所望の多孔質膜が得られることが確認された。
<サンプル9の作製>
基板としてシリコンウエハ基板を用意し、UVオゾン洗浄を5分間行い、有機物を除去した。得られたシリコンウエハの水に対する接触角は、10±6°であった。
溶液中におけるP3799−SEOの含有量が2.5質量%、PEG600の含有量が0.5質量%であるトルエン溶液を調製し、ミクロナイザーを用いて15000rpmにて2分間攪拌した。得られた混合溶液(200μL)を、上記基板上に滴下し、slope:5秒、3000rpm:90秒の条件でスピンコートすることにより塗膜を得た。
その後、得られた塗膜を2mLの脱イオン水で5回洗浄することにより、塗膜中のPEG600を除去し、サンプル9を得た。式1および式2の定義により、f(a)値は0.23であり、r値は43であった。
表面構造を確認するために、サンプル9のAFM観察を行った(図12)。平均孔径43nmの空孔が観察され、所望の空孔を有する多孔質膜は得られなかった。空孔の孔径に関するC.V.値は、24.7%であった。
<サンプル10の作製>
溶液中におけるP3799−SEOの含有量を1.5質量%、PEG600の含有量を0.3質量%に変更した以外は、サンプル5の作製方法と同様の操作を行い、サンプル10を得た。なお、式1および式2の定義より、f(a)値は0.25であり、r値は43であった。
AFM観察(図13)およびSEM観察より、サンプル10では平均孔径37nmの空孔が確認され、所望の空孔を有する多孔質膜は得られなかった。
図1は、本発明の実施形態にかかる塗膜を示す斜視断面図である。 図2は、本発明にかかる多孔質膜を示す斜視断面図である。 図3(a)〜(c)は、表面上に凹部を有する基板の製造方法を工程順に示す基板および多孔質膜の模式的断面図である。 図4(a)は、得られたサンプル1の上面からの原子間力顕微鏡(AFM)写真である。(b)は、サンプル1の割断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 図5は、サンプル2の上面からの原子間力顕微鏡(AFM)写真である。 図6は、サンプル3の上面からの原子間力顕微鏡(AFM)写真である。 図7は、サンプル4の上面からの原子間力顕微鏡(AFM)写真である。 図8は、サンプル5の上面からの原子間力顕微鏡(AFM)写真である。 図9は、サンプル6の上面からの原子間力顕微鏡(AFM)写真である。 図10は、サンプル7の上面からの原子間力顕微鏡(AFM)写真である。 図11は、サンプル8の上面からの原子間力顕微鏡(AFM)写真である。 図12は、サンプル9の上面からの原子間力顕微鏡(AFM)写真である。 図13は、サンプル10の上面からの原子間力顕微鏡(AFM)写真である。
符号の説明
10、20 積層体
12 塗膜
14 連続相
16 球状ミクロドメイン
18 基板
18a 表面に凹部を有する基板
22、22a 多孔質膜
24 空孔
30 凹部

Claims (11)

  1. 水不溶性ポリマーAを主成分とする連続相と、
    水不溶性ポリマーAと非相溶である水溶性ポリマーBを主成分とし、前記連続相中に分布する球状のミクロドメインとからなるミクロ相分離構造を有し、
    前記球状のミクロドメイン内に平均孔径200〜1000nmの球状構造の空孔が存在する多孔質膜。
  2. 前記水溶性ポリマーBが、以下の式で表わされる大西パラメータが5以上を示すポリマーである請求項1に記載の多孔質膜。
    式:大西パラメータ=N/(Nc−No)
    (Nはモノマー単位の総原子数、Ncはモノマー単位の炭素原子数、Noはモノマー単位の酸素原子数)
  3. 前記水不溶性ポリマーAが、ポリスチレン類、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリブタジエン類、またはポリイソプレン類である請求項1または2に記載の多孔質膜。
  4. 前記空孔の空孔密度が、1〜32個/μmである請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質膜。
  5. 基板をエッチング処理する際に、マスクとして用いられる請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質膜。
  6. 膜厚が30〜1000nmである請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質膜。
  7. 下記式(1)を満足する、互いに非相溶な水不溶性ポリマーAと水溶性ポリマーBとからなるブロック共重合体と、水溶性ホモポリマーBとを含む溶液を基板表面に塗布して膜を形成する膜形成工程と、
    該膜中の水溶性ホモポリマーBを水を用いて除去する除去工程と、
    を備える、請求項1〜6のいずれかに記載の多孔質膜を製造する多孔質膜の製造方法。
    0.40≦(b1+b2)/(a1+b1+b2)<1.0 式(1)
    (式(1)中、a1は、膜中におけるブロック共重合体の水不溶性ポリマーAの体積を表す。b1は、膜中におけるブロック共重合体の水溶性ポリマーBの体積を表す。b2は、膜中における水溶性ホモポリマーBの体積を表す。)
  8. 前記溶液を構成する溶媒のSP値が17.0〜18.5である、請求項7に記載の多孔質膜の製造方法。
  9. 前記膜形成工程の前に、前記ブロック共重合体と前記水溶性ホモポリマーBとを含む溶液を剪断混合する混合工程を備える、請求項7または8に記載の多孔質膜の製造方法。
  10. 基板上に請求項1〜6のいずれかに記載の多孔質膜を形成する多孔質膜形成工程と、
    前記多孔質膜形成工程後、前記多孔質膜をマスクとして用い、前記基板をエッチングして、前記基板表面上に凹部を形成するエッチング工程と、
    前記エッチング工程後、残存する前記多孔質膜を除去する除去工程とを備える、表面上に凹部を有する基板の製造方法。
  11. 前記基板が、石英基板または半導体基板である、請求項10に記載の表面上に凹部を有する基板の製造方法。
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