JP2010137422A - フィルム、フィルムの製造方法、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムおよび液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する組成物を、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程を含むフィルムの製造方法であって、該熱可塑性樹脂のTgが100℃以上であり、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過する直前の前記組成物の温度を(Tg+20℃)〜(Tg+120℃)に制御するフィルムの製造方法(但し、Tgは前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度を表す)。
【選択図】なし
Description
しかしながら、これらの文献に記載された方法で製造されたフィルムは、遅相軸と傾斜方位が同じ方向であった。そのため、これらの方法で得られたフィルムと偏光子とを直接ロールtoロールで貼り合せた偏光板を組み込んだ液晶表示装置は、視野角が狭く、改良が望まれるものであった。このように、特許文献2および3に記載された溶融物に対してせん断力を付与して製膜する方法を用いた場合、遅相軸と傾斜方位が直交しているフィルムを得るためには、溶融物に対してせん断力を付与して製膜した後に高価な横延伸装置を用いる横延伸工程を行わなければならないのが実情であった。
また、従来、このようなフィルムは高価な横延伸装置(例えばテンター)を用いて横延伸する工程を経なければ製造できなかったため、負の複屈折性樹脂を用いてせん断力を付与して製膜したフィルムの光学特性が良好であれば、傾斜位相差構造を有するフィルムの製造コストを大きく下げることができることが予想された。
[2] 前記熱可塑性樹脂のゼロせん断粘度が3000Pa・sを示す温度Tsと、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgとの差が、160℃以下であることを特徴とする[1]に記載のフィルムの製造方法。
[3] 前記熱可塑性樹脂が、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂およびマレイミド系樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする[1]または[2]に記載のフィルムの製造方法。
[4] 前記挟圧工程において、負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する組成物を溶融押出しする工程を含み、溶融押出しされた組成物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[5] 前記挟圧装置の第一挟圧面の移動速度を第二挟圧面の移動速度よりも速くし、下記式(I)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度比を0.600〜0.999に制御することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
移動速度比=第二挟圧面の移動速度/第一挟圧面の移動速度 式(I)
[6] 前記狭圧装置が2つのロールであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
[7] 前記狭圧工程において、前記組成物を0.5〜500MPaの圧力で挟圧することを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[8] 負の固有複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有し、下記条件(I)〜(III)を満たすことを特徴とするフィルム。
(I)フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[+40°]と、該法線に対して傾斜方位とは反対側へ40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[−40°]が異なる。
(II)ガラス転移温度が100℃以上である。
(III)フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[0°]のバラツキが20nm以下である。
[9] 前記Re[40°]と前記Re[−40°]が、10nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦300nmを満たすことを特徴とする[8]に記載のフィルム。
[10] フィルム面内の遅相軸とフィルム傾斜方位とが直交することを特徴とする[8]または[9]に記載のフィルム。
[11] 前記Re[0°]が、0nm≦|Re[0°]|≦300nmを満たすことを特徴とする[8]〜[10]のいずれか1項に記載のフィルム。
[12] ゼロせん断粘度が3000Pa・sを示す温度Tsと、ガラス転移温度Tgとの差が160℃以下であることを特徴とする[8]〜[11]いずれか1項に記載のフィルム。
[13] [1]〜[7]のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法で製造されたことを特徴とするフィルム。
[14] 偏光子と、[8]〜[13]のいずれか1項に記載のフィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
[15] [8]〜[13]のいずれか1項に記載のフィルムを用いたことを特徴とする光学補償フィルム。
[16] [8]〜[13]のいずれか1項に記載のフィルムを用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
[17] [8]〜[13]のいずれか1項に記載のフィルムを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
本発明のフィルムは、負の固有複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有し、下記条件(I)〜(III)を満たすことを特徴とする。
(I)フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[+40°]と、該法線に対して傾斜方位とは反対側へ40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[−40°]が異なる。
(II)ガラス転移温度が100℃以上である。
(III)フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[0°]のバラツキが20nm以下である。
以下、本発明のフィルムを詳細に説明する。
本発明のフィルムは、Re[+40°]と、Re[−40°]が異なる。すなわち、傾斜方位で|Re[+40°]−Re[−40°]|を測定した場合、0nm以上の位相差を発現することが本発明のフィルムの特徴である。このような傾斜構造を有することにより、液晶表示装置に用いた際の視野角補償能が向上する。
10nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦300nm
を満たすことが好ましく、
60nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦250nm
を満たすことがより好ましい。
0nm≦|Re[0°]|≦300nm
を満たすことが好ましく、
30nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦250nm
を満たすことがより好ましく、
60nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦200nm
を満たすことがより好ましい。
本願では、フィルムの幅方向に5サンプル、フィルム中央部、長手方向に5サンプルのようにサンプリングした計10サンプルを用いてバラツキを測定した。
本発明において、フィルムのRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]は、KOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)を用い、フィルムの傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、傾斜角度0°での位相差、傾斜角度40度での位相差および傾斜角度−40度での位相差を測定したものである。
ここで、傾斜方位は、以下の方法で決定した。
(1)フィルム面内の遅相軸方位を0°、フィルム面内の進相軸方位を90°とし、0°〜90°の間で0.1°刻みで仮傾斜方位を設定する。
(2)各仮傾斜方位とフィルム法線を含む面内においてRe[+40°]とRe[−40°]を測定し、|Re[+40°]−Re[−40°]|を求める。
(3)|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位を傾斜方位と決定する。
なお、測定波長は550nmとする。なお、一般的な熱可塑性樹脂を溶融製膜法で作成したフィルムは、どの方位で測定しても、|Re[+40°]−Re[−40°]|≒0nmとなる。
本発明のフィルムは、鱗状ムラが顕著に少ないことを特徴とする。前記鱗状ムラとは、フィルムの表面が3mm×3mm程度の鱗の形もしくは亀の甲羅状のムラのことを言い、このような鱗状ムラが発生したフィルムは表面に凹凸が生じ、光を乱反射する。そのため、光学用途用フィルムとして液晶表示装置に組み込む際に顕著に問題となる。このような鱗状ムラは負の複屈折性熱可塑性樹脂にせん断力を付与して製膜する方法に用いる際に生じたものであり、従来鱗状ムラが発生することは公知ではなかった。
本発明のフィルムは、ガラス転移温度が100℃以上であることを特徴とする。本発明のフィルムのガラス転移温度は、100〜200℃であることが好ましく、110〜175℃であることがより好ましく、110〜150℃であることが特に好ましい。このように、本発明のフィルムのガラス転移温度が100℃以上であると、鱗状ムラが発生し難くなる。
なお、本発明のフィルムのガラス転移温度は、走査型示差熱量計(DSC)を用いて、測定パンに本発明のフィルムをいれ、これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から300℃まで昇温した後(1st-run)、30℃まで−10℃/分で冷却し、再度10℃/分で30℃から300℃まで昇温した(2nd-run)。2nd-runでベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)として、求めることができる。
本発明のフィルムは、ゼロせん断粘度が3000Pa・sを示す温度Tsと、ガラス転移温度Tgとの差が160℃以下であることが、鱗状ムラ低減の観点から好ましい。
ゼロせん断粘度が3000Pa・sを示す温度Tsは、以下の方法で求めることができる。
レオメーター(Anton Paar社 MCR301)を用いて、樹脂をサンプルセットできる温度(通常はTg+100℃〜150℃)で融解させ、サンプルを測定機にセットする。サンプルセットさせた温度から、5℃/minでサンプルを冷却しながら、せん断速度0.001sec-1での粘度を測定し、3000Pa・sになる温度を読み取り、Tsとする。
本発明のフィルムの製造方法は、負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する組成物を、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程を含むフィルムの製造方法であって、該熱可塑性樹脂のTgが100℃以上であり、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過する直前の前記組成物の温度を(Tg+20℃)〜Tg+120℃に制御することを特徴とする。このような特定の負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する組成物を特定の温度条件下で挟圧することが、従来の方法と異なる本発明の特徴である。なお、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過する際の負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する組成物の温度とは、具体的には、樹脂が第一挟圧面と第二挟圧面で挟圧される点から直上に5cmの箇所における該組成物温度を表す。
本発明の製造方法で用いられる熱可塑性樹脂は負の複屈折性を示す。前記負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂とは、分子が一軸性の配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より小さくなる樹脂のことをいう。このような負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂を用いることが本発明の特徴の1つであり、横延伸をすることなくフィルムの遅相軸がTD方向を向き、傾斜方位がMD方向を向いたフィルムを得ることができる。
本発明で用いられる負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂は、上記光学特性を有し、且つ、ガラス転移温度が100℃以上であることを特徴とする。負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、100〜200℃であることが好ましく、110〜175℃であることがより好ましく、110〜150℃であることが特に好ましい。
なお、負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、本発明のフィルムのガラス転移温度を求める方法と同様にして求める。
なお、負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂のゼロせん断粘度が3000Pa・sを示す温度Tsは、本発明のフィルムのゼロせん断粘度が3000Pa・sを示す温度Tsを求める方法と同様にして求める。
これに対し、正の固有複屈折性を示す、セルロースアシレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などを用いて2つのロールでせん断変形を付加してせん断力を付与して製膜する方法を行った場合、遅相軸が傾斜方位を向き、例えば、2つのロールをダイ出口と平行に配置した場合、傾斜方位はフィルム長手方向と同じである。
芳香環構造を有する環状オレフィン系樹脂としては、例えば、下記一般式(1)で表される単位構造を含む樹脂を挙げることができる。
前記環状オレフィン系樹脂は、開環重合および付加重合のいずれの重合方法によって得られる樹脂であってもよいが、開環重合によって得られる樹脂であることが好ましい。
また、前記環状オレフィン系樹脂は、ノルボルネン系重合体であることが好ましく、開環系ノルボルネン系重合体であることも好ましい。
前記環状オレフィン系樹脂が側鎖に少なくとも1つの芳香環構造を有する環状オレフィン樹脂である場合、該芳香環構造は単数または複数の置換基を有していてもよく、置換基を複数有する場合は置換基どうしが互いに結合してさらに環構造を形成していてもよい。また、側鎖の立体構造についても特に制限はなく、前記芳香環構造がエキソ型で結合していても、エンド型で結合していてもよい。
また,前記スピロ型環状オレフィン樹脂としては,例えば、下記一般式(2)で表される単位構造を含む樹脂を挙げることができる。
前記環構造は単数または複数の置換基を有していてもよく、置換基を複数有する場合は置換基どうしが互いに結合してさらに環構造を形成していてもよく、特に置換基どうしが互いに結合して芳香環構造を形成していてもよい。前記官能基としては、酸素原子を含む官能基(例えばカルボニル基、エステル基、オキシ基など)を有することも好ましい。また、側鎖の立体構造についても特に制限はない。
共重合体樹脂としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−無水マレイン酸系樹脂、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン-アクリル系樹脂やスチレン−無水マレイン酸系樹脂が耐熱性・フィルム強度の観点から好ましい。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂は、スチレンと無水マレイン酸との質量組成比が、スチレン:無水マレイン酸=95:5〜50:50であることが好ましく、スチレン:無水マレイン酸=90:10〜70:30であることがより好ましい。また、固有複屈折を調整するため、スチレン系樹脂の水素添加を行うことも好ましく利用できる。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂としては、例えば、ノバケミカル社製の「Daylark D332」などが挙げられる。
また、スチレン-アクリル系樹脂としては、後述する、旭化成ケミカル社製の「デルペット980N」などを用いることができる。
アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂としては、例えば、下記一般式(3)で表される構造のものを重合して得られる樹脂を挙げることができる。
前記アクリル系共重合体樹脂の中でも、樹脂を構成する全モノマー中、MMA単位(モノマー)を30モル%以上含むものが好ましく、MMA以外に、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことがより好ましく、例えば下記のものを使用できる。
特開2007−297615号、特開2007−63541号、特開2007−70607号、特開2007−100044号、特開2007−254726号、特開2007−254727号、特開2007−261265号、特開2007−293272号、特開2007−297619号、特開2007−316366号、特開2008−9378号、特開2008−76764号の各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−9378に記載の樹脂である。
(2)無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂
特開2007−113109号、特開2003−292714号、特開平6−279546号、特開2007−51233号(ここに記載の酸変性ビニル)、特開2001−270905号、特開2002−167694号、特開2000−302988号、特開2007−113110号、特開2007−11565号各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが、特開2007−113109に記載のものである。また市販のマレイン酸変性MAS樹脂(例えば旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980N)も好ましく使用できる。
(3)グルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂
特開2006−241263号、特開2004−70290号、特開2004−70296号、特開2004−126546号、特開2004−163924号、特開2004−291302号、特開2004−292812号、特開2005−314534号、特開2005−326613号、特開2005−331728号、特開2006−131898号、特開2006−134872号、特開2006−206881号、特開2006−241197号、特開2006−283013号、特開2007−118266号、特開2007−176982号、特開2007−178504号、特開2007−197703号、特開2008−74918号、国際公開WO2005/105918等各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−74918号公報に記載のものである。
これらの樹脂のガラス転移温度(Tg)は106℃〜170℃が好ましく、より好ましくは110℃〜160℃、さらに好ましくは115℃〜150℃である。
マレイミドおよびその誘導体を重合して得られる樹脂としては、例えば、下記一般式(4)で表される単位構造を含む樹脂を挙げることができる。
sおよびtはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0であることがより好ましい。
前記マレイミド系樹脂の中でも、樹脂を構成する全モノマー中、マレイミドおよびその誘導体単位を30モル%以上含むものが好ましく、マレイミドおよびその誘導体単位の単独重合体であることがより好ましい。
本発明の製造方法で用いられる負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する組成物は、上記負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂以外の材料を含有していてもよいが、上記負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂の1種または2種以上を主成分(組成物中の全材料中、最も含有割合の高い材料を意味し、当該樹脂を2種以上含有する態様では、それらの合計の含有割合が、他の材料それぞれの含有割合より高いことを意味する)として含有しているのが好ましい。上記負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂以外の材料としては、種々の添加剤が挙げられ、その例には、安定化剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、可塑剤、微粒子、および光学調整剤が含まれる。
本発明の製造方法で用いられる負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する組成物は、安定化剤の少なくとも一種を含有していてもよい。安定化剤は、前記熱可塑性樹脂を加熱溶融する前にまたは加熱溶融時に添加することが好ましい。安定化剤は、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等の作用がある。安定化剤は、解明されていない分解反応などを含む種々の分解反応によって、着色や分子量低下等の変質および揮発成分の生成等が引き起こされるのを抑制するのに有用である。樹脂を製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。安定化剤の代表的な例には、フェノール系安定化剤、亜リン酸系安定化剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定化剤、アミン系安定化剤、エポキシ系安定化剤、ラクトン系安定化剤、アミン系安定化剤、金属不活性化剤(スズ系安定化剤)などが含まれる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定化剤の少なくとも一方以上を用いることが好ましい。フェノール系安定化剤の中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定化剤を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定化剤としては、ヒンダードフェノール系安定化剤が挙げられる。
本発明の製造方法で用いられる負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する組成物は、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、透明性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロース混合エステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。
紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
本発明の製造方法で用いられる負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する組成物は、1種または2種以上の光安定化剤を含有していてもよい。光安定化剤としては、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)化合物が挙げられ、より具体的には、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄および米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
本発明の製造方法で用いられる負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する組成物は、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤の添加は、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点において好ましい。また、本発明のフィルムを溶融製膜法で製造する場合は、用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させることを目的として、または無添加の熱可塑性樹脂よりも同じ加熱温度において粘度を低下させることを目的として、添加されるであろう。本発明のフィルムには、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体から選択される可塑剤が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
本発明の製造方法で用いられる負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する組成物は、微粒子を含有していてもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明における熱可塑性樹脂に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることがさらに好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、熱可塑性樹脂を透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、熱可塑性樹脂に対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
本発明の製造方法で用いられる負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する組成物は、光学調整剤を含有していてもよい。光学調整剤としてはレターデーション調整剤を挙げることができ、例えば、特開2001−166144号、特開2003−344655号、特開2003−248117号、特開2003−66230号各公報記載のものを使用することができる。光学調整剤を添加することによって、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を制御することができる。好ましい添加量は0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%、さらに好ましくは0〜6質量%である。
本発明の製造方法では、負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する組成物(「熱可塑性樹脂組成物」という場合がある)を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程を含むが、前記挟圧工程において、負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する組成物を溶融押出しする工程を含んでも、含まなくてもよい。
溶融押出ししない場合、例えば熱可塑性樹脂組成物と溶媒とを支持体上に流延し、溶液製膜によって前記熱可塑性樹脂組成物をフィルム化し、それを前記挟圧工程に供して、せん断力を付与して製膜する方法をおこなってもよい。
本発明の製造方法は、前記挟圧工程において、負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する組成物を溶融押出しする工程を含み、溶融押出しされた組成物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形することが、より得られるフィルムのRe[0°]のバラツキを抑える観点から好ましい。また、負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する組成物を供給する供給手段としては特に制限はないが、例えば、ダイから溶融押出しされることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂組成物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製できる。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出しながらカットするアンダーウオーターカット法等によりペレット化することもできる。ペレット化に利用される押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。
ペレットの大きさについては特に制限はないが、一般的には10mm3〜1000mm3程度であり、より好ましくは30mm3〜500mm3程度である。
本発明の製造方法において、熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置間に供給する際に供給手段としてダイを用いる場合、ダイリップの先端の曲率半径は特に制限はなく、公知のダイを用いることができる。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってからダイから出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
次に、熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形し、好ましくは冷却固化して、フィルムを得る。この際、第一挟圧面と第二挟圧面のうち、いずれか一方の面と溶融物が先に剥離し、その後もう一方の面と溶融物が剥離することが生産性の安定化の観点から好ましい。
本発明の製造方法では、熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置に供給する場合における熱可塑性樹脂組成物の温度(以下、挟圧温度とも言う)は、(Tg+20℃)〜Tg+120℃である。前記挟圧温度がTg+20℃以上であると熱可塑性樹脂組成物の粘度が十分低くなるため、成形性が良好となり得られるフィルムの光学特性のバラツキ、特にRe[0°]のバラツキを抑制することができる。一方、前記挟圧温度がTg+120℃以下であると、挟圧装置の挟圧面との温度差が十分小さくでき、Re[0°]のバラツキおよび得られるフィルムの鱗状ムラを顕著に改善することができる。前記挟圧温度は、Tg+20〜Tg+120℃であることが好ましく、Tg+30〜Tg+100℃であることがより好ましく、Tg+50〜Tg+100℃であることが特に好ましい。
ダイから熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置に供給する場合、前記挟圧温度はいわゆる吐出温度(供給手段出口の樹脂温度、例えばダイ出口の樹脂温度)と異なり、前記挟圧温度は前記吐出温度よりも約20〜100℃低い。本発明の吐出温度は樹脂の粘度が3000Pa・sを示す温度Ts以上であることが好ましく、より好ましくはTs〜Ts+80℃、さらに好ましくは、Ts〜Ts+50℃である。例えば溶融物に対してせん断力を付与して製膜する方法を行う場合は供給手段出口からの吐出温度を上記範囲に制御し、後述するエアーギャップにおける保温とエアーギャップの距離を制御することで前記挟圧温度を達成できる。
本発明の製造方法では、例えばダイなどの供給手段から熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置に供給する場合、エアーギャップ(供給手段の出口から挟圧装置の熱可塑性樹脂組成物着地点までの距離)は、エアーギャップ間における熱可塑性樹脂組成物の保温の観点から、可能な限り近接することが好ましく、具体的には10〜300mmであることが好ましく、より好ましくは、20〜250mm、特に好ましくは、30〜200mmである。
本発明の製造方法では、エアーギャップでの熱可塑性樹脂組成物の保温の観点から、ライン速度(製膜速度)が2m/分以上であることが好ましく、5m/分以上であることがより好ましく、10m/分以上であることが特に好ましい。ライン速度が速くなると、エアーギャップ中での熱可塑性樹脂組成物の冷却を抑制でき、熱可塑性樹脂組成物の温度を好ましい範囲に制御した状態で、挟圧装置によって、より均一なせん断変形を付与できる。なお、前記ライン速度とは、挟圧装置間を溶融物が通過する速度、および搬送装置におけるフィルム搬送速度を表す。
なお、挟圧装置間の圧力は、圧力測定フィルム(富士フィルム社製 プレスケール等)を挟圧装置間に通すことで測定することが出来る。
移動速度比=第二挟圧面の移動速度/第一挟圧面の移動速度 (I)
前記熱可塑性樹脂組成物が先に剥離する側の面は、第一挟圧面であっても第二挟圧面であってもよいが、剥離ダンを抑制する観点から、先に剥離する側の面は、第一挟圧面(移動速度が速い挟圧面)であることが好ましい。
前記第一挟圧面と第二挟圧面とで速度の異なる挟圧装置としては、例えば互いに周速が異なる2つのロールの組合せや、特開2000−219752号公報に記載の互いに速度の異なるロールとタッチベルトの組合せ(片面ベルト方式)や、ベルトとベルトの組合せ(両面ベルト方式)等が挙げられる。この中でも、挟圧工程にて圧力を均一にかけ、得られるフィルムのRe[0°]のバラツキを本発明の範囲に抑えやすいことから、互いに周速が異なる2つのロールであることが好ましい。
なお、本明細書では、前記熱可塑性樹脂組成物を搬送するキャスティングロールを複数有している場合、最上流のダイに最も近いキャスティングロールのことをチルロールともいう。以下、2つのロールを用いた本発明の製造方法の好ましい態様を説明する。
前記供給手段から供給された熱可塑性樹脂組成物の着地点とは、ダイから押し出されたメルトが初めてタッチロールあるいはチルロールに接触(着地)する地点を指す。また前記タッチロールとキャストロールの隙間の中点とは、タッチロールとキャストロールの隙間が最も狭くなった所のタッチロール表面とキャストロール表面の中点を指す。
ショア硬さは、JIS Z 2246の方法を用いて、ロール幅方向に5点および周方向に5点測定した値の平均値から求めることができる。
その際、2つのロールの温度は、樹脂のガラス転移温度Tgを用いて、好ましくはTg−70℃〜Tg+20℃、より好ましくはTg−50℃〜Tg+10℃、さらに好ましくはTg−40℃〜Tg+5℃に設定する。このような温度制御は、タッチロール内部に温調した液体、気体を通すことで達成することができる。
なお、熱可塑性樹脂組成物の温度分布は、接触式温度計や非接触式温度計によって測定することができる。
遮蔽部材と熱可塑性樹脂組成物の幅方向端部との隙間は、ロールの表面に沿って流れ込む上昇気流を効率よく遮蔽する上で狭く形成されることが好ましく、熱可塑性樹脂組成物の幅方向端部から50mm程度であることがより好ましい。なお、熱可塑性樹脂組成物供給手段の側面と遮蔽部材との隙間は、必ずしも設ける必要はないが、遮蔽部材に囲まれた空間内の気流を排出できる程度、例えば10mm以下に形成されることが好ましい。
また、断熱機能および/または熱反射機能を持つ材料として、遮風性や保温性に優れたものが好ましく、例えば、ステンレス等の金属板が好ましく使用できる。
さらに、上記方法により製膜した後、延伸および/または緩和処理を行ってもよい。例えば、以下の(a)〜(g)の組合せで各工程を実施することができる。
(a) 横延伸
(b) 横延伸→緩和処理
(c) 縦延伸
(d) 縦延伸→緩和処理
(e) 縦(横)延伸→横(縦)延伸
(f) 縦(横)延伸→横(縦)延伸→緩和処理
(g) 横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
これらの中で特に好ましいのは、(a)〜(d)の工程である。
このような延伸の前に予熱、延伸の後に熱固定を行うことで延伸後のRe、Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であってもよいが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より1℃〜50℃程度高い温度で行うことができ、好ましく2℃〜40℃以下、さらに好ましくは3℃〜30℃高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
熱固定は延伸温度より1℃〜50℃低い温度で行うことができ、より好ましく2℃〜40℃、さらに好ましくは3℃〜30℃低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすく好ましくない。
延伸温度は、Tg−10℃〜Tg+60℃が好ましく、Tg−5℃〜Tg+45℃がより好ましく、Tg−10℃〜Tg+20℃以下がさらに好ましい。また、好ましい縦延伸倍率は1.2〜3.0倍、より好ましく1.2〜2.5倍、さらに好ましくは1.2〜2.0倍である。
熱緩和は(Tg−30)℃〜(Tg+30)℃、より好ましく(Tg−30)℃〜(Tg+20)℃、さらに好ましくは(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃で、1秒〜10分、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分、0.1kg/m〜20kg/m、より好ましく1kg/m〜16kg/m、さらに好ましくは2kg/m〜12kg/mの張力で搬送しながら実施するのが好ましい。
本発明のフィルムに、少なくとも偏光子(以下、偏光膜ともいう)を積層することで、本発明の偏光板を得ることができる。以下において、本発明の偏光板を説明する。本発明の偏光板の例は、偏光膜の一面に、保護フィルムと視野角補償の2つの機能を目的として作成されたものや、TACなどの保護フィルムの上に積層された複合型偏光板が挙げられる。
本発明の偏光板の光学フィルムには、本発明のフィルムが用いられる。また、前記フィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、コロナ放電、グロー放電、UV照射、火炎処理等の方法が挙げられる。
本発明の偏光板のセルロースアシレートフィルムには、公知の偏光板用のセルロースアシレートフィルムが用いられる。例えば、公知のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(例えば、富士フィルム(株)製フジタックT−60)などを好ましく用いることができる。また、前記ルロースアシレートフィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、けん化処理などが挙げられる。
前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。
本発明の偏光板は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していても良い(このような偏光板を粘着型偏光板と称することがある)。特に好ましい形態として、前記光学フィルムの偏光子が接着されていない側に、他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。
本発明の偏光板の製造方法を説明する。
本発明の偏光板は、接着剤を用いて前記偏光子の少なくとも片面に本発明のフィルムの片面(表面処理をしてある場合は表面処理面)を貼り合わせることで製造できる。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムの順に貼り合わせる場合は、本発明の偏光板は偏光子の両面に接着剤を用いて偏光子とその他のフィルムを張り合わせることで製造できる。本発明の偏光板の製造方法においては、本発明のフィルムが偏光子と直接貼合されていることが好ましい。
本発明のフィルムおよび偏光板は、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。好ましくは、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensatory Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードの液晶表示装置、中でも、より好ましくは、TN、ECBモード液晶表示に用いることができる。
本発明のフィルムは、光学用途用フィルムとして好ましく用いることができ、光学補償フィルムとして特に好ましく用いることができる。
本発明のフィルムにさらに公知の光学異方性層を付与することで積層フィルムとすることもでき、積層フィルムとして、光学補償フィルム用途に用いることもできる。
本発明のフィルムの上に反射防止層を付与することで、本発明の反射防止フィルムが得られる。反射防止膜は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層と、および低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(本明細書中における、高屈折率層、および中屈折率層)とを(透明)支持体上に設けて成る。
一方、生産性が高い反射防止膜として、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗布してなる反射防止膜が各種提案されている。
上述したような塗布による反射防止フィルムに最上層表面が微細な凹凸の形状を有する防眩性を付与した反射防止層から成る反射防止フィルムも挙げられる。
本発明のフィルムは前記いずれの方式にも適用できるが、特に好ましいのが塗布による方式(塗布型)である。
(透明)支持体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、透明支持体と中屈折率層との間に、ハードコート層を設けてもよい。さらには、中屈折率ハードコート層、高屈折率層および低屈折率層からなってもよい。
例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等が挙げられる。
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒子サイズ100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子およびマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成る。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908号公報、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(特開2001−166104等)、特定の分散剤併用(例、特開平11−153703号公報、特許番号US6210858B1、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
さらに、ラジカル重合性および/またはカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物およびその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報明細書段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報明細書段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報明細書段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン、チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されてもよい。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。
前記硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また、加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合の、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。前記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。
例えば、前方散乱係数を特定化した特開平11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等が挙げられる。
前記の層以外に、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。
アクリル系樹脂として、スチレン-アクリル系共重合体である旭化成ケミカルズ社製の「デルペット980N」のペレットを用いた。なお、「デルペット980N」は、負の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移温度Tgおよびゼロせん断粘度が3000Pa・sとなる温度Tsを下記表1に示す。
アクリル系樹脂として、スチレン-アクリル系共重合体である旭化成ケミカルズ社製の「デルペット80N」のペレットを用いた。なお、「デルペット80N」は、負の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移温度Tgおよびゼロせん断粘度が3000Pa・sとなる温度Tsを下記表1に示す。
スチレン−無水マレイン酸系樹脂として、ノバケミカル社製の「Daylark D332」のペレットを用いた。なお、「Daylark D332」は、負の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移温度Tgおよびゼロせん断粘度が3000Pa・sとなる温度Tsを下記表1に示す。
環状オレフィン系樹脂として、特開2008−52119号公報の実施例5に記載のHpEを、該文献合成例3に従って合成し、用いた。なお、得られた環状オレフィン系樹脂は、負の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移温度Tgおよびゼロせん断粘度が3000Pa・sとなる温度Tsを下記表1に示す。
メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂として、新日鉄化学(株)社製のエスチレンMS600(商品名、メタクリル酸メチル/スチレン=6/4共重合樹脂)のペレットを用いた。なお、「エスチレンMS600」は、負の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移温度Tgおよびゼロせん断粘度が3000Pa・sとなる温度Tsを下記表1に示す。
ポリスチレン樹脂のペレット(GPPS)を用いた。なお、当該樹脂は、負の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移温度Tgおよびゼロせん断粘度が3000Pa・sとなる温度Tsを下記表1に示す。
(フィルムの作製)
負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂として下記表1に記載の樹脂のペレットを用いて、Tg−20℃において2時間以上乾燥し、Ts+10℃で溶融し、1軸混練押出し機を用い混練し押出した。このとき押し出し機とダイの間にスクリーンフィルター、ギアポンプ、リーフディスクフィルターをこの順に配置し、これらをメルト配管で連結した。これを押出し温度(吐出温度)Ts+5℃で幅1900mm、リップギャップ1mmのダイから押出した。
この後、チルロールとタッチロールの間にメルト(溶融樹脂)を押出した。この時、最上流側の幅2000mm、直径400mmのHCrメッキされた金属製キャストロール(チルロール)に下記表1に記載のタッチ圧力となるようにシリンダーを設定し、幅1700mm、直径350mmのHCrメッキされた金属製タッチロールを接触させた。なお、タッチ圧力は、中圧用プレスケール(富士フィルム社製)を、メルトのない状態で等周速(5m/分)の二つのロールに挟みこむことで測定し、その値を製膜時の圧力とした。タッチロールおよびチルロールはショア硬度60HSのものを用いた。また、メルトはキャストロールとタッチロールで挟まれる中央部分に落とした。これらのロールを用い、タッチロール周速度、チルロール周速度および周速度比を下記表1に記載の条件に設定し、ダイとメルト着地点の距離を下記表1に記載の距離に設定し、下記表1に記載の搬送速度(チルロール速度)で製膜した。また、挟圧直前、すなわち着地点上部におけるメルトの温度を測定し、挟圧温度として下記表1に記載した。なお、前記吐出温度と挟圧温度は、ほぼ一致した。なお、タッチロール、チルロールの温度はともにTg−5℃とした。また、製膜の雰囲気は25℃、60%であった。
この後、巻き取り直前に両端(全幅の各5cm)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ20μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。また製膜幅は1540mmとし、450m巻き取った。製膜後のフィルムの厚みは下記表1に記載の厚みとし、実施例1のフィルムを作製した。
得られた実施例1のフィルムの特性として、上記の方法で測定した遅相軸方向、傾斜方位、Re[0°]、|Re[40°]−Re[−40°]|、Ts、Tg、ΔRe[0°]を下記表1にあわせて記載した。
実施例1のフィルムの鱗状ムラを以下の方法で測定した。また、得られた結果を以下の基準に基づき評価し、結果を下記表1に記載した。
クロスニコルに配置した偏光板の間に、20×20cmにサンプリングしたフィルムを、フィルムの遅相軸が偏光板の吸収軸と45°の角度になるように挟み、鱗状ムラを目視にて評価した。
◎:サンプルフィルム全面に、鱗状ムラの発生が認められず、実用上問題がない場合。
○:サンプルフィルムの一部に、鱗状ムラの発生が認められるが、その強度が弱く、実用上問題がない場合。
△:サンプルフィルムの全面に、鱗状ムラの発生が認められるが、その強度が弱く、実用上許容できる場合。
×:サンプルフィルムの全面に、鱗状ムラの発生が認められ、その強度が強く、実用上問題がある場合。
用いた樹脂と製膜条件を下記表1に記載したように変更した以外は実施例1と同様にして、各実施例および比較例のフィルムを得た。各実施例および比較例のフィルムの特性を下記表1に示す。なお、傾斜方位が観測されなかった比較例2では、フィルム法線とフィルム長手方向を含む面内において、該法線方向から長手方向へθ°だけ傾けた方向でRe[+40°]とRe[−40°]をそれぞれ測定した。
以上より、本発明の製造方法によれば、傾斜位相差構造が形成され、光学特性のバラツキが小さく、鱗状の面状故障を改善されたフィルムを製造できることがわかった。
また、実施例1〜11より、本発明のフィルムは光学用途に適したフィルムであり、特に光学補償フィルムとして好適に用いることができることがわかった。
(TNモード用偏光板の作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%、KI濃度3質量%のヨウ素水溶液(30℃)中に60秒浸漬して染色し、次にホウ酸濃度4質量%、KI濃度3.5質量%の水溶液(55℃)中に60秒浸漬している間に元の長さの5.5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光子を得た。
これとは別に、セルロースアシレートフィルム(富士フイルム(株)製、フジタックT60)を濃度2.0モル/Lで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬ケン化処理した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流し、105℃で乾燥した。
実施例1の未延伸フィルム表面にコロナ放電処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用い、そのままロールtoロールで偏光子の片側に貼り付けた。また、上記ケン化処理したフジタックT60を、ポリビニルアルコール系接着剤を用い、偏光子の反対側に貼り付け、偏光板を得た。
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(AQUOS LC−20C1−S、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに各実施例のフィルムを用いて作製した偏光板を、各実施例のフィルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。その結果、本発明実施例のフィルムを用いると、TN液晶表示装置に組み込んだ場合、表示視認性が良好であることがわかった。
<半透過型ECB液晶パネルへの装着と評価>
作成した実施例1のフィルムおよび比較例1のフィルムを用いて偏光板を作製した。具体的には、まず、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光フィルムを作製した。この偏光フィルムを用いて、図1に示すような配置で、80μmのTACフィルム(富士フィルム社製)、一軸延伸したノルボルネン系高分子フィルムからなる、Re=270nmのλ/2板、本発明1または比較例1のフィルムを貼合わせた。この様にして、実施例1のフィルムを用いた偏光板PL1および比較例1のフィルムを用いたPL2をそれぞれ2枚ずつ作製した。
次に、上記偏光板を用いてECB型の半透過型液晶表示装置を作製した。使用した液晶セルは、液晶材料としてZLI−1695(Merck社製)を用い、液晶層厚は反射電極領域(反射表示部)で2.4μm、透過電極領域(透過表示部)で4.9μmとした。液晶層の基板両界面のプレチルト角は2度であり、液晶セルのΔndは、反射表示部で略150nm、透過表示部で略320nmであった。
この液晶セルの上下に、上記作製した2種の偏光板を、図1に示すように配置した。偏光板P1およびP2中の矢印はそれぞれの吸収軸を、位相差フィルム中の矢印はそれぞれの遅相軸を、ECBセルの矢印はそれぞれの対向面に施されたラビング処理のラビング方向を示す。ここで、12時方向が0°、時計回りが+である。
このように、本発明のフィルムを用いると、半透過型ECBモード液晶表示装置に組み込んだ場合、大きな視野角補償を行うことができる。
(IPSモード用偏光板の作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%、KI濃度3質量%のヨウ素水溶液(30℃)中に60秒浸漬して染色し、次にホウ酸濃度4質量%、KI濃度3.5質量%の水溶液(55℃)中に60秒浸漬している間に元の長さの5.5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光子を得た。
これとは別に、セルロースアシレートフィルム(富士フイルム(株)製、フジタックT60)を濃度2.0モル/Lで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬ケン化処理した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流し、105℃で乾燥した。
実施例7の未延伸フィルム表面にコロナ放電処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用い、そのままロールtoロールで偏光子の片側に貼り付けた。また、上記ケン化処理したフジタックT60を、ポリビニルアルコール系接着剤を用い、偏光子の反対側に貼り付け、偏光板を得た。
一枚のガラス基板上に、隣接する電極間の距離が20μmとなるように電極を配設し、その上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行なった。別に用意した一枚のガラス基板の一方の表面にポリイミド膜を設け、ラビング処理を行なって配向膜とした。二枚のガラス基板を、配向膜同士を対向させて、ラビング方向が平行となるようにして重ねて貼り合わせ、次いで屈折率異方性(Δn)が0.0888および誘電率異方性(Δε)が正の4.5であるネマティック液晶組成物を封入し、セルギャップdを3.5μmとし、Δn×dが311nmである液晶セルを形成した。
上記で作製した偏光板1を2枚準備し、液晶層の上下に1枚ずつ設置した。この時、上下の偏光板の吸収軸が互いに直交するように配置した。また、実施例7の未延伸フィルムが液晶セル側になるように貼合した。これをIPS型液晶表示装置(26型IPS液晶テレビモニター(26C3500)、東芝(株)製)の液晶層、偏光板を剥がして組み込み、IPS方式の液晶表示装置を得た。
その結果、本発明実施例のフィルムを用いると、IPS液晶表示装置に組み込んだ場合、光漏れの方位角4方向の対称性が改善し、表示視認性が良好であることがわかった。
実施例1の光学フィルムを発明協会公開技報(公技番号2001−1745)の実施例47に従い低反射フィルムを作製し、液晶表示装置に組み込んだところ、良好な光学性能が得られた。
特開平9−127885号公報に従って、実施例1の光学フィルムと直線偏光板を、遅相軸と吸収軸の角度が45度になるように張り合わせ、反射防止フィルムを作成した。その反射防止フィルムを、有機EL表示装置に組み込み、反射防止機能を確認した。さらに、本発明のフィルムの特徴から、非対称な視野角性能を有することを確認した。
Claims (17)
- 負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する組成物を、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程を含むフィルムの製造方法であって、
該熱可塑性樹脂のTgが100℃以上であり、
挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過する直前の前記組成物の温度を(Tg+20℃)〜Tg+120℃に制御するフィルムの製造方法(但し、Tgは前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度を表す)。 - 前記熱可塑性樹脂のゼロせん断粘度が3000Pa・sを示す温度Tsと、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgとの差が、160℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のフィルムの製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂が、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂およびマレイミド系樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムの製造方法。
- 前記挟圧工程において、負の複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する組成物を溶融押出しする工程を含み、溶融押出しされた組成物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
- 前記挟圧装置の第一挟圧面の移動速度を第二挟圧面の移動速度よりも速くし、下記式(I)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度比を0.600〜0.999に制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
移動速度比=第二挟圧面の移動速度/第一挟圧面の移動速度 式(I) - 前記狭圧装置が2つのロールであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
- 前記狭圧工程において、前記組成物を0.5〜500MPaの圧力で挟圧することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
- 負の固有複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有し、下記条件(I)〜(III)を満たすことを特徴とするフィルム。
(I)フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[+40°]と、該法線に対して傾斜方位とは反対側へ40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[−40°]が異なる。
(II)ガラス転移温度が100℃以上である。
(III)フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[0°]のバラツキが20nm以下である。 - 前記Re[40°]と前記Re[−40°]が、10nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦300nmを満たすことを特徴とする請求項8に記載のフィルム。
- フィルム面内の遅相軸とフィルム傾斜方位とが直交することを特徴とする請求項8または9に記載のフィルム。
- 前記Re[0°]が、0nm≦|Re[0°]|≦300nmを満たすことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のフィルム。
- ゼロせん断粘度が3000Pa・sを示す温度Tsと、ガラス転移温度Tgとの差が160℃以下であることを特徴とする請求項8〜11いずれか1項に記載のフィルム。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法で製造されたことを特徴とするフィルム。
- 偏光子と、請求項8〜13のいずれか1項に記載のフィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
- 請求項8〜13のいずれか1項に記載のフィルムを用いたことを特徴とする光学補償フィルム。
- 請求項8〜13のいずれか1項に記載のフィルムを用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
- 請求項8〜13のいずれか1項に記載のフィルムを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
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