JP2010132615A - 4−ケトアニリン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、医農薬および各種化学品の製造中間体として有用な4‐ケトアニリン誘導体の製造方法に関するものである。
式(7)に示すような、4‐アセチル‐2‐メチルアニリン誘導体の合成法はいくつか報告されているが、それらを工業的な製造に適用するには課題がある。特許文献1では、触媒量のルイス酸を用いた2‐メチルアセトアニリドのフリーデル・クラフツアシル化反応による合成を達成しているが、その収率は61%と中程度である。非特許文献1及び非特許文献2では、2‐メチルアセトアニリドのフリース転位反応により高収率で合成しているが、160〜180℃という高温封管条件あるいはマイクロウエーブでの加熱が必要なため設備面で課題がある。また、発明者らは特許文献2のように4‐ブロモ‐2‐メチルアセトアニリドとビニルエーテル類とのヘック反応による合成法を見出したが、高価なパラジウム触媒を使用することから、経済的な面から満足できるものではない。
一方、式(8)に示すようなアリールスルホン酸アニリド類へのフリーデル・クラフツアシル化反応としては、非特許文献3及び非特許文献4のように、アシル化試薬としてトリクロロメチルベンゼンや環状酸無水物を用いた例はあるが、酸クロリドや非環状酸無水物を用いた反応は報告されていない。
国際特許出願公開第2002/055483号パンフレット
特開2008−44858号公報
Indian Journal of Chemistry, Section B: Organic Chemistry Including Medicinal Chemistry, (1991年),第30B巻,第4号,443ページ
Indian Journal of Chemistry, Section B: Organic Chemistry Including Medicinal Chemistry, (2005年),第44B巻,第3号,635ページ
Synthesis,(1991年),第4号,322ページ
Chemical & Pharmaceutical Bulletin,(1989年),第37巻,第5号1260ページ
医農薬および各種化学品の製造中間体として有用な4-ケトアニリン誘導体の工業的に適した新規製造方法を提供する。
本発明者らは、このような状況に鑑み、鋭意検討した結果、アリールスルホン酸アニリド類と酸ハロゲン化物又は酸無水物をルイス酸の存在下で反応させることにより、4‐ケトアニリン誘導体を高収率で製造できることを見いだし、発明に至った。
すなわち、本発明は、式(1):
すなわち、本発明は、式(1):
[式(1)中、Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルカルボニル、C1〜C6ハロアルキルカルボニル、C1〜C6アルコキシカルボニル、C1〜C6アルキルチオカルボニル、C1〜C6アルコキシチオカルボニル、C1〜C6アルキルジチオカルボニル、フェニル又は置換フェニルを表し、
nが2以上を表すとき、各々のYは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
nは、0から4の整数を表し、
Zは、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、フッ素原子、塩素原子又はニトロを表し、mが2以上を表すとき、各々のZは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
mは、0から5の整数を表す。]
で表される化合物とアセチル化剤とをルイス酸の存在下で反応させることによる式(2):
nが2以上を表すとき、各々のYは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
nは、0から4の整数を表し、
Zは、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、フッ素原子、塩素原子又はニトロを表し、mが2以上を表すとき、各々のZは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
mは、0から5の整数を表す。]
で表される化合物とアセチル化剤とをルイス酸の存在下で反応させることによる式(2):
[式(2)中、Y及びnは前記と同じ意味を表す。]
で表される4-アセチルアセトアニリド誘導体の製造方法、及び式(1):
で表される4-アセチルアセトアニリド誘導体の製造方法、及び式(1):
[式(1)中、Y、Z、n及びmは、前記と同じ意味を表す。]
で表される化合物と式(3):
で表される化合物と式(3):
[式(3)中、R1はC1〜C6アルキル、C3〜C8シクロアルキル、C1〜C6ハロアルキル又は式(4):
[式(4)中、Wは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ、シアノ、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルカルボニル、C1〜C6ハロアルキルカルボニル、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、C1〜C6アルコキシカルボニル、C1〜C6アルキルチオカルボニル、C1〜C6アルコキシチオカルボニル又はC1〜C6アルキルジチオカルボニルを表し、lが2以上を表すとき、各々のWは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、lは0から5の整数を表す。]を表し、
Xは、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子を表す。]で表される酸ハロゲン化物又は
式(5):
Xは、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子を表す。]で表される酸ハロゲン化物又は
式(5):
[式(5)中、R1は、前記と同じ意味を表す。]
で表される酸無水物とをルイス酸の存在下で反応させることによる式(6):
で表される酸無水物とをルイス酸の存在下で反応させることによる式(6):
[式(6)中、Y、Z、R1、m及びnは前記と同じ意味を表す。]
で表される4-ケトアニリン誘導体の製造方法である。
で表される4-ケトアニリン誘導体の製造方法である。
本発明により、医農薬及び各種化学品の中間体として有用な4-ケトアニリン誘導体の工業的生産に有益な方法を提供できる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本明細書における「ハロ」の表記は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を表す。
本明細書において、n-はノルマル、i-はイソ、s-はセカンダリー及びt-はターシャリーを各々意味する。
本明細書におけるCa〜Cbアルキルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表し、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
本明細書におけるCa〜Cbシクロアルキルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる環状の炭化水素基を表し、3員環から6員環までの単環又は複合環構造を形成することが出来る。また、各々の環は指定の炭素原子数の範囲でアルキル基によって任意に置換されていてもよい。例えばシクロプロピル基、1-メチルシクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、2,2-ジメチルシクロプロピル基、2,2,3,3-テトラメチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、2-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2-メチルシクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキルの表記は、炭素原子に結合した水素原子が、ハロゲン原子によって任意に置換された、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表し、このとき、2個以上のハロゲン原子によって置換されている場合、それらのハロゲン原子は互いに同一でも、または互いに相異なっていてもよい。例えばフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、ジフルオロメチル基、クロロフルオロメチル基、ジクロロメチル基、ブロモフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、ジクロロフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、ブロモクロロフルオロメチル基、ジブロモフルオロメチル基、2-フルオロエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2-クロロ-2-フルオロエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2-ブロモ-2-フルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエチル基、2-ブロモ-2-クロロ-2-フルオロエチル基、2-ブロモ-2,2-ジクロロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエチル基、2-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、1,2-ジクロロ-1,2,2-トリフルオロエチル基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、2-フルオロプロピル基、2-クロロプロピル基、2-ブロモプロピル基、2-クロロ-2-フルオロプロピル基、2,3-ジクロロプロピル基、2-ブロモ-3-フルオロプロピル基、3-ブロモ-2-クロロプロピル基、2,3-ジブロモプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-ブロモ-3,3-ジフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、ヘプタフルオロプロピル基、2,3-ジクロロ-1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2-フルオロ-1-メチルエチル基、2-クロロ-1-メチルエチル基、2-ブロモ-1-メチルエチル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、2-フルオロブチル基、2-クロロブチル基、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブチル基、ノナフルオロブチル基、4-クロロ-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブチル基、2-フルオロ-2-メチルプロピル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(トリフルオロメチル)プロピル基、2-クロロ-1,1-ジメチルエチル基、2-ブロモ-1,1-ジメチルエチル基、5-クロロ-2,2,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
本明細書におけるCa〜Cbアルコキシの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-O-基を表し、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、i-プロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、i-ブチルオキシ基、s-ブチルオキシ基、t-ブチルオキシ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
本明細書におけるCa〜Cbハロアルコキシの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-O-基を表し、例えばジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、クロロジフルオロメトキシ基、ブロモジフルオロメトキシ基、2-フルオロエトキシ基、2-クロロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、1,1,2,2,-テトラフルオロエトキシ基、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ基、2-ブロモ-1,1,2-トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、2,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,2-トリクロロ-1,1-ジフルオロエトキシ基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルオキシ基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルオキシ基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エトキシ基、ヘプタフルオロプロピルオキシ基、2-ブロモ-1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルオキシ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
本明細書におけるCa〜Cbアルキルチオの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-S-基を表し、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、i-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、i-ブチルチオ基、s-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキルチオの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-S-基を表し、例えばジフルオロメチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基、クロロジフルオロメチルチオ基、ブロモジフルオロメチルチオ基、2,2,2-トリフルオロエチルチオ基、1,1,2,2-テトラフルオロエチルチオ基、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルチオ基、ペンタフルオロエチルチオ基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエチルチオ基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルチオ基、ヘプタフルオロプロピルチオ基、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルチオ基、ノナフルオロブチルチオ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
本明細書におけるCa〜Cbアルキルカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-C(O)-基を表し、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、2-メチルブタノイル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキルカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-C(O)-基を表し、例えばフルオロアセチル基、クロロアセチル基、ジフルオロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、クロロジフルオロアセチル基、ブロモジフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ペンタフルオロプロピオニル基、ヘプタフルオロブタノイル基、3-クロロ-2,2-ジメチルプロパノイル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
本明細書におけるCa〜Cbアルキルスルホニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-SO2-基を表し、例えばメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n-プロピルスルホニル基、i-プロピルスルホニル基、n-ブチルスルホニル基、i-ブチルスルホニル基、s-ブチルスルホニル基、t-ブチルスルホニル基、n-ペンチルスルホニル基、n-ヘキシルスルホニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキルスルホニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-SO2-基を表し、例えばジフルオロメチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基、クロロジフルオロメチルスルホニル基、ブロモジフルオロメチルスルホニル基、2,2,2-トリフルオロエチルスルホニル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチルスルホニル基、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルスルホニル基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエチルスルホニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
本明細書におけるCa〜Cbアルコキシカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-O-C(O)-基を表し、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、 n-プロピルオキシカルボニル基、i-プロピルオキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、i-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
本明細書におけるCa〜Cbアルキルチオカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-S-C(O)-基を表し、例えばメチルチオ-C(O)-基、エチルチオ-C(O)-基、n-プロピルチオ-C(O)-基、i-プロピルチオ-C(O)-基、n-ブチルチオ-C(O)-基、i-ブチルチオ-C(O)-基、t-ブチルチオ-C(O)-基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
本明細書におけるCa〜Cbアルコキシチオカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-O-C(S)-基を表し、例えばメトキシ-C(S)-基、エトキシ-C(S)-基、n-プロピルオキシ-C(S)-基、i-プロピルオキシ-C(S)-基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
本明細書におけるCa〜Cbアルキルジチオカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-S-C(S)-基を表し、例えばメチルチオ-C(S)-基、エチルチオ-C(S)-基、n-プロピルチオ-C(S)-基、i-プロピルチオ-C(S)-基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
本発明の反応に使用するアセチル化剤としては、例えば塩化アセチル、臭化アセチル、フッ化アセチル及び無水酢酸等が挙げられる。
本発明の反応に使用できる溶媒としては、反応に不活性であれば特に制限はないが、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等の芳香族類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の炭化水素類、ニトロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒が挙げられ、これらの混合溶媒も使用できる。これらのうち、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、ニトロベンゼン、クロロベンゼンが特に好ましいが、溶媒を用いずに反応を行うこともできる。
本発明の反応に使用する溶媒の量は、原料である一般式(1)で表される化合物1重量部に対して0〜100重量部の範囲で使用し、好ましくは1〜20重量部の範囲で使用する。
本発明の反応に使用できるルイス酸としては、塩化アルミニウム、トリメチルアルミニウム、塩化第三鉄、三フッ化ホウ素、亜鉛トリフレート、スカンジウムトリフレート、イッテルビウムトリフレート、セリウムトリフレート、ハフニウムトリフレート、塩化スズ、四塩化チタン、塩化亜鉛等があげられる。これらのうち、塩化アルミニウムが特に好ましい。
本発明の反応に使用するルイス酸の量は、原料である一般式(1)で表される化合物1モルに対して0.1〜100モルの範囲で使用し、好ましくは1〜10モルの範囲で使用する。
本発明の反応に使用する塩化アセチル、臭化アセチル、フッ化アセチル、無水酢酸、一般式(3)で表される化合物又は一般式(5)で表される化合物の使用量は、原料である一般式(1)で表される化合物1モルに対して1〜100モルの範囲で使用し、好ましくは1〜10モルの範囲で使用する。
本発明の反応は、−20℃以上100℃以下で行うことが好ましい。
本発明の反応は、窒素、アルゴン、キセノン等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
一般式(1)で表される化合物から一般式(2)で表される4-アセチルアセトアニリド誘導体を収率良く得るには、アセチル化剤の当量を一般式(1)で表される化合物に対して1当量よりも過剰に、例えば1.3当量以上にすればよく、特に2当量以上にするとよい。なお、経済的理由から、アセチル化剤の当量は3当量以下とすることが好ましい。
一般式(1)で表される化合物とアセチル化剤を反応させて一般式(6)で表される化合物を収率良く得るには、一般式(1)で表される化合物、塩化アルミニウムおよびアセチル化剤のうち、一般式(1)で表される化合物に対して小過剰、例えば1.2当量以下のアセチル化剤を、反応系に最後に添加するとよい。
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に述べるが、本発明はこれによって限定されるものではない。
〔実施例1〕
塩化アルミニウム15.6g(117ミリモル)のジクロロメタン37g溶液を10℃以下に冷却し、塩化アセチル9.17g(117ミリモル)を加えた。同温度にて、N-(2-メチルフェニル)-p-トルエンスルホンアミド12.2g(46.7ミリモル)のジクロロメタン60g溶液を滴下し、室温にて7時間攪拌した後、反応溶液を85gの冷水中にゆっくり加え反応を停止させた。分離した水層にジクロロメタンを加えて再抽出し、合わせたジクロロメタン溶液にピリジン0.37g(4.67ミリモル)、炭酸ナトリウム4.95g(46.7ミリモル)及び水61gを加え室温にて3時間攪拌した。水層を分離し、炭酸ナトリウム4.95gの水61g溶液を加え室温にて1時間攪拌した。さらに水層を分離し、水61gを加え室温にて1時間攪拌した後、水層を分離して得られたジクロロメタン溶液を高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析法で分析したところ、4-アセチルアセトアニリドの含有量は7.70g(収率86%)であった。
塩化アルミニウム15.6g(117ミリモル)のジクロロメタン37g溶液を10℃以下に冷却し、塩化アセチル9.17g(117ミリモル)を加えた。同温度にて、N-(2-メチルフェニル)-p-トルエンスルホンアミド12.2g(46.7ミリモル)のジクロロメタン60g溶液を滴下し、室温にて7時間攪拌した後、反応溶液を85gの冷水中にゆっくり加え反応を停止させた。分離した水層にジクロロメタンを加えて再抽出し、合わせたジクロロメタン溶液にピリジン0.37g(4.67ミリモル)、炭酸ナトリウム4.95g(46.7ミリモル)及び水61gを加え室温にて3時間攪拌した。水層を分離し、炭酸ナトリウム4.95gの水61g溶液を加え室温にて1時間攪拌した。さらに水層を分離し、水61gを加え室温にて1時間攪拌した後、水層を分離して得られたジクロロメタン溶液を高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析法で分析したところ、4-アセチルアセトアニリドの含有量は7.70g(収率86%)であった。
〔実施例2〕
塩化アルミニウム2.55g(19.1ミリモル)の1,2-ジクロロエタン10g溶液を10℃以下に冷却し、N-(2-メチルフェニル)-p-トルエンスルホンアミド2.00g(7.65ミリモル)を加えた。同温度にて、塩化アセチル1.50g(19.1ミリモル)を滴下し、室温にて7時間攪拌した後、反応溶液を冷水中に滴下した。分離した水層に1,2-ジクロロエタンを加え再抽出し、合わせた1,2-ジクロロエタン溶液を高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析法で分析したところ、4-アセチルアセトアニリドの含有量は1.35g(収率92%)であった。
塩化アルミニウム2.55g(19.1ミリモル)の1,2-ジクロロエタン10g溶液を10℃以下に冷却し、N-(2-メチルフェニル)-p-トルエンスルホンアミド2.00g(7.65ミリモル)を加えた。同温度にて、塩化アセチル1.50g(19.1ミリモル)を滴下し、室温にて7時間攪拌した後、反応溶液を冷水中に滴下した。分離した水層に1,2-ジクロロエタンを加え再抽出し、合わせた1,2-ジクロロエタン溶液を高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析法で分析したところ、4-アセチルアセトアニリドの含有量は1.35g(収率92%)であった。
〔実施例3〕
N-(2-メチルフェニル)-p-トルエンスルホンアミド10.0g(38.2ミリモル)のニトロベンゼン50g溶液を10℃以下に冷却し、塩化アルミニウム12.7g(95.5ミリモル)を加えた。同温度にて、塩化アセチル7.50g(95.5ミリモル)を滴下し、室温にて10時間攪拌した後、反応溶液を冷水中に滴下した。分離した水層にニトロベンゼンを加え再抽出し、合わせたニトロベンゼン溶液を高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析法で分析したところ、4-アセチルアセトアニリドの含有量は6.54g(収率90%)であった。
N-(2-メチルフェニル)-p-トルエンスルホンアミド10.0g(38.2ミリモル)のニトロベンゼン50g溶液を10℃以下に冷却し、塩化アルミニウム12.7g(95.5ミリモル)を加えた。同温度にて、塩化アセチル7.50g(95.5ミリモル)を滴下し、室温にて10時間攪拌した後、反応溶液を冷水中に滴下した。分離した水層にニトロベンゼンを加え再抽出し、合わせたニトロベンゼン溶液を高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析法で分析したところ、4-アセチルアセトアニリドの含有量は6.54g(収率90%)であった。
〔実施例4〕
塩化アルミニウム10.2g(76.6ミリモル)の1,2-ジクロロエタン50g溶液を10℃以下に冷却し、N-(2-メチルフェニル)-p-トルエンスルホンアミド10.0g(38.2ミリモル)を加えた。同温度にて、塩化アセチル3.30g(42.1ミリモル)を滴下した後、室温にて1時間攪拌した。スラリー状になった反応混合物を濾過して得られた結晶を水、ジイソプロピルエーテルで洗浄した後、減圧下乾燥し、N-(2-メチル-4-アセチルフェニル)-p-トルエンスルホンアミド8.38gを白色結晶として得た。(収率72%)融点177〜178℃、1H - NMR (CDCl3) :δ(ppm) [7.68-7.75 (m, 4H), 7.50 (d, 1H, 8.7Hz), 7.25 (d, 2H, 8.7Hz), 6.65 (s, 1H), 2.54 (s, 3H), 2.39 (s, 3H), 2.11 (s, 3H)]
〔原料合成例1〕
炭酸水素ナトリウム37.8g(450ミリモル)の水160g溶液にジクロロメタン96g及びp-トルエンスルホニルクロリド57.2g(300ミリモル)を加え、0℃に冷却した。0〜3℃を保ちながら、o-トルイジン32.1g(300ミリモル)及びピリジン2.37g(30ミリモル)のジクロロメタン溶液64gを滴下した後、室温にて3時間攪拌した。反応終了後、水225g、ジクロロメタン96gを加え、水層を分離した。1N塩酸128gを加え攪拌した後、水層を分離して得られたジクロロメタン溶液を高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析法で分析したところ、N-(2-メチルフェニル)-p-トルエンスルホンアミドの含有量は76.6g(収率98%)であった。
塩化アルミニウム10.2g(76.6ミリモル)の1,2-ジクロロエタン50g溶液を10℃以下に冷却し、N-(2-メチルフェニル)-p-トルエンスルホンアミド10.0g(38.2ミリモル)を加えた。同温度にて、塩化アセチル3.30g(42.1ミリモル)を滴下した後、室温にて1時間攪拌した。スラリー状になった反応混合物を濾過して得られた結晶を水、ジイソプロピルエーテルで洗浄した後、減圧下乾燥し、N-(2-メチル-4-アセチルフェニル)-p-トルエンスルホンアミド8.38gを白色結晶として得た。(収率72%)融点177〜178℃、1H - NMR (CDCl3) :δ(ppm) [7.68-7.75 (m, 4H), 7.50 (d, 1H, 8.7Hz), 7.25 (d, 2H, 8.7Hz), 6.65 (s, 1H), 2.54 (s, 3H), 2.39 (s, 3H), 2.11 (s, 3H)]
〔原料合成例1〕
炭酸水素ナトリウム37.8g(450ミリモル)の水160g溶液にジクロロメタン96g及びp-トルエンスルホニルクロリド57.2g(300ミリモル)を加え、0℃に冷却した。0〜3℃を保ちながら、o-トルイジン32.1g(300ミリモル)及びピリジン2.37g(30ミリモル)のジクロロメタン溶液64gを滴下した後、室温にて3時間攪拌した。反応終了後、水225g、ジクロロメタン96gを加え、水層を分離した。1N塩酸128gを加え攪拌した後、水層を分離して得られたジクロロメタン溶液を高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析法で分析したところ、N-(2-メチルフェニル)-p-トルエンスルホンアミドの含有量は76.6g(収率98%)であった。
〔原料合成例2〕
o-トルイジン20.0g(187ミリモル)のピリジン60g溶液を10℃以下に冷却し、p-トルエンスルホニルクロリド57.2g(300ミリモル)を加えた後、室温にて10時間攪拌した。反応終了後、0℃に冷却し、水200g、濃塩酸60gを加え、室温で1時間攪拌した。スラリー状になった反応混合物を濾過して得られた結晶を1N塩酸、水で洗浄した後、減圧下乾燥し、N-(2-メチルフェニル)-p-トルエンスルホンアミド48.6gを白色結晶として得た。(収率99%)
o-トルイジン20.0g(187ミリモル)のピリジン60g溶液を10℃以下に冷却し、p-トルエンスルホニルクロリド57.2g(300ミリモル)を加えた後、室温にて10時間攪拌した。反応終了後、0℃に冷却し、水200g、濃塩酸60gを加え、室温で1時間攪拌した。スラリー状になった反応混合物を濾過して得られた結晶を1N塩酸、水で洗浄した後、減圧下乾燥し、N-(2-メチルフェニル)-p-トルエンスルホンアミド48.6gを白色結晶として得た。(収率99%)
本発明の製造方法は、医農薬及び各種化学品の中間体として有用なケトアニリン誘導体の工業的製造方法として有用である。
Claims (4)
- 式(1):
[式(1)中、Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルカルボニル、C1〜C6ハロアルキルカルボニル、C1〜C6アルコキシカルボニル、C1〜C6アルキルチオカルボニル、C1〜C6アルコキシチオカルボニル、C1〜C6アルキルジチオカルボニル、フェニル又は置換フェニルを表し、
nが2以上を表すとき、各々のYは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
nは、0から4の整数を表し、
Zは、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、フッ素原子、塩素原子又はニトロを表し、mが2以上を表すとき、各々のZは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
mは、0から5の整数を表す。]
で表される化合物とアセチル化剤とをルイス酸の存在下で反応させることによる式(2):
[式(2)中、Y及びnは前記と同じ意味を表す。]
で表される4-アセチルアセトアニリド誘導体の製造方法。 - 式(1):
[式(1)中、Y、Z、n及びmは、前記と同じ意味を表す。]
で表される化合物と、式(3):
[式(3)中、R1はC1〜C6アルキル、C3〜C8シクロアルキル、C1〜C6ハロアルキル又は式(4):
[式(4)中、Wは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ、シアノ、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルカルボニル、C1〜C6ハロアルキルカルボニル、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、C1〜C6アルコキシカルボニル、C1〜C6アルキルチオカルボニル、C1〜C6アルコキシチオカルボニル又はC1〜C6アルキルジチオカルボニルを表し、lが2以上を表すとき、各々のWは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、lは0から5の整数を表す。]を表し、
Xは、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子を表す。]で表される酸ハロゲン化物又は
式(5):
[式(5)中、R1は、前記と同じ意味を表す。]
で表される酸無水物とをルイス酸の存在下で反応させることによる式(6):
[式(6)中、Y、Z、R1、m及びnは前記と同じ意味を表す。]
で表される4-ケトアニリン誘導体の製造方法。 - n及びmは、前記と同じ意味を表し、Yは、塩素原子又はC1〜C6アルキルを表し、Zは、メチル又はニトロを表し、R1は、メチルを表し、Xは、塩素原子を表す、請求項1及び2記載の4-ケトアニリン誘導体の製造方法。
- 用いるルイス酸が塩化アルミニウムである、請求項1〜3記載の4-ケトアニリン誘導体の製造方法。
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