JP2010127412A - 高負荷伝動ベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】センターベルトに積層したカバー帆布の摩耗を大幅に緩和することができるとともに発熱も少なく、ベルトの切断を防止できるとともに、熱によるブロックやセンターベルトの劣化を抑制した高負荷伝動ベルトを提供する。
【解決手段】上下ビーム11、12とセンターピラー13とで囲まれた前記センターベルト3を嵌合装着する嵌合溝8、9を有する複数のブロック2をセンターベルト3の長手方向に沿って所定ピッチで設けてなり、センターベルト3の上下面にカバー帆布10が被覆されている高負荷伝動ベルトにおいて、ブロック2の嵌合溝内でセンターベルト3の下面が当接する部位にはスラスト試験において摩擦係数が0.01〜0.45のすべりの良い摺動樹脂R1を配置してなる。
【選択図】図4
【解決手段】上下ビーム11、12とセンターピラー13とで囲まれた前記センターベルト3を嵌合装着する嵌合溝8、9を有する複数のブロック2をセンターベルト3の長手方向に沿って所定ピッチで設けてなり、センターベルト3の上下面にカバー帆布10が被覆されている高負荷伝動ベルトにおいて、ブロック2の嵌合溝内でセンターベルト3の下面が当接する部位にはスラスト試験において摩擦係数が0.01〜0.45のすべりの良い摺動樹脂R1を配置してなる。
【選択図】図4
Description
本発明は、センターベルトの長手方向に沿って多数のブロックを固定した高負荷伝動ベルトに係り、詳しくはセンターベルトとブロックとの摩擦によって発生する摩耗を低減し、ブロックとセンターベルトとの嵌合が緩みガタツキが発生する問題や、センターベルトの切断といったベルトの故障を防止した長寿命な高負荷伝動ベルトに関する。
ベルト式無段変速装置に使用するベルトは、プーリのV溝幅を変えることによってプーリに巻きかかる有効径を変化させ変速比を調節する様な変速プーリに巻き掛けて使用するものであり、プーリからの側圧が大きくなるのでベルトは大きな側圧に耐えるものでなくてはならない。また、無段変速の用途以外にも通常のゴムベルトでは寿命が短くなりすぎるような高負荷伝動の用途には特別に高負荷に耐えうるようなベルトを用いる必要がある。
そのようなベルトとして使用されるものの中に、センターベルトにブロックを固定してベルト幅方向の強度を高めた高負荷伝動ベルトがあり、具体的な構成としては、心体をゴムなどのエラストマー中に埋設したセンターベルトにボルトやリベットなどの止着材を用いてセンターベルトに使用しているエラストマーよりも比較的硬質のエラストマーからなるブロックを止着固定したものや、特許文献1に示すようにブロックの両側面に溝を有しており、一対のセンターベルトを前記側面に設けた溝に嵌合したようなベルトがある。
このような引張伝動式の高負荷伝動ベルトはベルトの走行中にブロックとセンターベルトとの間で常に摩擦を生じ、応力の集中や発熱によりセンターベルトやブロックが劣化するという問題がある。また、このようなベルトの場合、上記のように無段変速の用途として使われるために、ベルトを巻きかけるプーリの有効径を変化させることによって変速するような仕組みとなっており、ベルトは小プーリ径で用いられることになる。
特に小プーリ径にベルトが巻きかかる際に、センターベルトの内周面側がブロックに挟まれた状態になって応力が集中するとともに大きな摩擦力が発生し、センターベルトを構成するゴムが劣化してクラックが生じたり、ベルト切断の原因となったりしていた。
そこでそのようなセンターベルトにかかる応力の集中を緩和するために特許文献2には、センターベルトの内周面に設けた凸部上端がブロックの凸部下端位置よりも上に位置するように設定して、ベルトがプーリに巻きかかって屈曲した際にセンターベルトの凸部がブロックによって挟まれることがないようにしたベルトが提案されている。
また、特許文献3にはブロックとセンターベルトの嵌合する部分においてセンターベルト内周面に形成する凹部の曲率半径よりブロックの形成する凸部の曲率半径を小さく設定することによって両者の間に隙間を設けるようにしたベルトが開示されている。
前記特許文献2や特許文献3のような構成を採ることによって、ベルトの屈曲によってブロックとセンターベルトとの間で摩擦が発生するとともにの内周面に応力が集中して、センターベルトに亀裂を生じることや、発熱を来たしてゴムなどの材料が劣化するといった問題が発生することは緩和することができる。
しかし、基本的にブロックによって拘束されたセンターベルトが屈曲する、特に小プーリ径にて屈曲することによってより強くブロックとセンターベルトとの間の摩擦が発生して、帆布の摩耗が進行することによるセンターベルトの破損につながるといった問題が解消されない。
そこで本発明ではベルト走行時においてブロックとセンターベルトとの間で摩擦が発生したとしてもセンターベルトの摩耗を少なく抑えることができるとともに、ブロックとセンターベルトとの嵌合の緩みによるガタツキの発生やセンターベルトの切断によるベルトの寿命を防止できる高負荷伝動ベルトの提供を課題とする。
上記のような課題を解決するために本発明の請求項1は、センターベルトと、該センターベルトの長手方向に沿って複数のブロックを設けた高負荷伝動ベルトにおいて、ブロックのセンターベルトと接触する部位の一部に摩擦係数が0.01〜0.45の摺動樹脂を配置してなることを特徴とする。
請求項2では、センターベルトと、上ビームと下ビームとそれらの中央部同士を連結するセンターピラーからなっており、上下ビームとセンターピラーとで囲まれた前記センターベルトを嵌合装着する嵌合溝を有する複数のブロックをセンターベルトの長手方向に沿って所定ピッチで設けてなり、センターベルトの上下面にカバー帆布が被覆されている高負荷伝動ベルトにおいて、ブロックの嵌合溝内でセンターベルトの内周面が当接する部位には摩擦係数が0.01〜0.45の摺動樹脂を配置してなることを特徴とする。
請求項3では、ブロックのセンターベルト内周側と接触する部位に配置する摺動樹脂の摩擦係数が0.01〜0.30の範囲である請求項1〜2のいずれかに記載の高負荷伝動ベルトとしている。
請求項4では、ブロックのセンターベルト外周側と接触する部分にも摺動樹脂を配置してなる請求項1〜3のいずれかに記載の高負荷伝動ベルトとしている。
請求項5では、摺動樹脂がポリアミド6Tもしくはポリアミド9T、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミドイミドとポリフェニレンサルファイドとのポリマーアロイからなる請求項1〜4のいずれかに記載の高負荷伝動ベルトとしている。
請求項6では、摺動樹脂が請求項5記載の樹脂100質量部に対し、超高分子量ポリエチレンもしくはポリエチレンテレフタレート(PTFE)、グラファイト、炭酸カルシウム、二硫化モリブデン、シリコン、アラミド繊維、アラミドパウダーからなる摺動添加剤を3〜67質量部添加したものからなる請求項1〜5のいずれかに記載の高負荷伝動ベルトとしている。
請求項7では、請求項5もしくは6に記載の摺動樹脂表面に1〜100μmのコーティング層を付与したものからなり、コーティングの種類はダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティング、グラファイトコーティング、二硫化モリブデンコーティング、シリコンコーティング、フッ素コーティングから選ばれてなる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれかに記載の高負荷伝動ベルトとしている。
請求項1では、ブロックのセンターベルトと接触する部位に、摩擦係数が0.01〜0.45の摺動樹脂を配置することによって、ベルトが走行するときにブロックとセンターベルトとの間で互いに擦れ合ったとしても発熱も少なく摩耗も少ないので、ブロックがセンターベルトに対して回転方向の動きや前後方向の動きをしたとしても嵌合が緩むこともなくガタツキの発生を抑えることができ、センターベルトの切断といった故障も防止し、より寿命の長いベルトとすることができる。
請求項2は、センターベルトと、上ビームと下ビームとそれらの中央部同士を連結するセンターピラーからなっており、上下ビームとセンターピラーとで囲まれた前記センターベルトを嵌合装着する嵌合溝を有する複数のブロックをセンターベルトの長手方向に沿って所定ピッチで設けてなり、センターベルトの上下面にカバー帆布が被覆されている高負荷伝動ベルトにおいて、ブロックの嵌合溝内でセンターベルトの内周面が当接する部位には摩擦係数が0.01〜0.45の摺動樹脂を配置した高負荷伝動ベルトであり、ベルト走行時において特に大きい負荷のかかるベルト内周面側においてブロックとセンターベルトとの間のすべりをよくしており、請求項1と同様に両者が互いに擦れあうことによる、ブロックやセンターベルトの摩耗を低減することができ、ブロックとセンターベルトの間のガタツキの発生やそれによりブロックが破損したりセンターベルトが切断したりするのを防止することができる。
請求項3では、ブロックのセンターベルト内周側と接触する部位に配置する摺動樹脂の摩擦係数が0.01〜0.30の範囲であるとしており、ブロックの摩耗やセンターベルトの摩耗を極力抑えるとともに、逆に滑りのためにブロックとセンターベルトとの位置ズレが生じるといったことにもなることのないベルトとすることができる。
請求項4では、ブロックのセンターベルト外周側と接触する部分にも摺動樹脂を配置してなる高負荷伝動ベルトとしており、より大きい負荷のかかるベルト内周側のみならずベルト外周側においてもブロックとセンターベルトとの摩擦により摩耗が発生するのを低減しているので、ブロックのガタツキやベルトの切断といった問題をより低減することができる。
請求項5では、ブロックに配置する摺動樹脂としてポリエーテルエーテルケトン等の樹脂を用いるとしており、摩擦係数が低く、更に耐熱性や耐摩耗性に関しても優れており、本発明の効果を更に高めることができる。
請求項6では、請求項5記載の摺動樹脂に摺動添加剤を添加するとしており、更に摺動性を高め、摩擦係数がより低く、耐熱性や耐摩耗性に関しても優れており、本発明の効果を更に高めることができる。
請求項7では、請求項5もしくは6記載の摺動樹脂表面にコーティングをするとしており、更に摺動性を高め、摩擦係数がより低く、耐熱性や耐摩耗性に関しても優れており、効果の持続性も期待でき、本発明の効果を更に高めることができる。
図1は、本発明に係る高負荷伝動ベルト1の一例を示す斜視概略図であり、図2はその側断面図である。本発明の高負荷伝動ベルト1は、エラストマー4内にロープ状の心体5をスパイラル状に埋設してなる同じ幅の二本のセンターベルト3と、このセンターベルト3に所定ピッチで取り付けられた複数のブロック2とから構成されている。ブロックの側面6、7に嵌合溝8、9を有しており、該嵌合溝にセンターベルト3が装着されている。このブロック2の両側面6、7は、プーリのV溝と接触する傾斜面となっており、駆動されたプーリから動力を受け取って、係止固定されているセンターベルト3を引張り、駆動側プーリの動力を従動側プーリに伝達する。また、センターベルト3の表面にはカバー帆布10がセンターベルトと一体的に積層配置されている。
ブロック2は、図1に示すように、上ビーム部11および下ビーム部12と、上下ビーム部11、12の中央部同士を連結したセンターピラー13からなっており、ブロック2の両側面には前述のようにセンターベルト3の嵌合溝8、9が形成されており、嵌合溝8、9内の溝上面および溝下面にはセンターベルト3の上面に設けた凹条部15と下面に設けた凹条部16に係合する凸条部17、18が設けられている。
図3は、別のベルトの例であり、ビーム部21の両端から上方に向かって一対のサイドピラー22、23が延びており、このサイドピラー22、23の上端からそれぞれブロック2の中心に向かって延びるロック部24、25が対向するように設けられている。そして、これらビーム部21、サイドピラー22、23及びロック部24、25によってセンターベルト3が嵌合する嵌合溝20が形成されている。この嵌合溝20に、センターベルト3が、ロック部24、25間の開口部より挿入され装着される。また、ロック部24、25の嵌合溝20側には、凸部27がそれぞれ設けられており、この凸部27が、センターベルト3に所定ピッチで設けられている凹条部26に嵌合する。これによって、センターベルト3は、装着後はブロック2から抜けにくい状態となる。そして、センターベルト3の表面にはカバー帆布10がセンターベルトと一体的に積層配置されている。
図4はブロック2の正面図であり、ブロック2は、熱可塑性樹脂に対して短繊維やウィスカ等の補強材が適宜配合された樹脂組成物を用いるが、本発明の特徴部分として、下ビームの上面であって、センターベルト3を装着したときに嵌合溝8、9内でセンターベルトの下面と接触する部位、つまり、センターベルト3の下面に設けた凹条部16に係合する凸条部18は、摩擦係数がスラスト試験の0.01〜0.45の摺動樹脂R1からなっている。また、それ以外の部分は強度や耐熱性等ブロック2に必要とされる物性を持たせるために、繊維状補強材等を配合した樹脂組成物からなる樹脂R2が用いられる。
凸条部18を摩擦係数の低い摺動樹脂R1で構成することによって、ベルトの走行時にブロック2の凸条部18とセンターベルト3の凹条部16とが互いに擦れ合うことによって摩耗するのを大幅に低減することができ、生じる発熱もごく小さなものとすることができる。従来、センターベルト3に対してブロック2が回転方向やベルト前後方向に動いたりして、特にセンターベルト3側のカバー帆布やゴムが摩耗して、ブロック2とセンターベルト3との間でガタツキが生じて騒音の原因となったり、ブロック2の破損やセンターベルト3が切断してしまいベルト1の故障につながったりする問題があったが、本発明のように凸条部18に摺動樹脂R1を配置し、センターベルト3の凹条部16との間の滑りをよくすることで前記のような摩耗や発熱といった問題を低減解消することができる。
摺動樹脂R1の摩擦係数が0.45を超えると摩擦抵抗が大きくなってセンターベルト3の表面のカバー帆布10や、ブロックを構成する樹脂材が摩耗してしまう。
摺動樹脂R1で構成される以外の部分を構成する樹脂R2は、ブロック2全体の形状を保持しプーリからの側圧にも耐えうる強度をはじめとし、耐摩耗性等の物性を必要とするものであり、例えばポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂に対して繊維状補強材を配合した樹脂組成物で構成されたものが用いられる。
樹脂R2として使用できる樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド4.6、ポリアミド6.6、ポリアミド6、ポリアミド9.T、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリブチレンテレフタレートなどを上げることができる。なかでもポリアミド4.6を使用することが好ましい。ポリアミド4.6は結晶樹脂であり、前記熱可塑性樹脂の中でも高温での曲げ剛性及びたい摩耗性に優れ炭素繊維などの繊維状補強材を添加することで、これらの特性が一層向上するものである。また、熱可塑性樹脂を用いることで射出成形が可能であり、ブロックの製造を容易に行うことができる。
熱硬化性樹脂としては、硬度90°JIS A以上の硬質ゴム、硬質ポリウレタン樹脂、液晶樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。
樹脂R2に配合する繊維状補強材としては、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿繊維等を挙げることができ、その中でもブロック2を構成する樹脂として好ましい例であるポリアミド4.6と炭素繊維を組み合わせて用いることによって炭素繊維がポリアミド4.6の吸水性の欠点を改善し、剛性を大幅に向上させることができて、かつポリアミド4.6の有する耐摩耗性や、耐衝撃性、耐疲労性を生かすことができる。炭素繊維の中でも、PAN系炭素繊維を用いることが好ましい。また、炭素繊維と組み合わせてアラミド繊維を配合することによってブロックの靭性を向上し、耐摩耗性や、耐衝撃性を一層向上させることができる。
ここで使用されるPAN系炭素繊維は、熱可塑性樹脂と相性がよく、用いる炭素繊維の長さは1〜5mmのものが好ましい。1mm未満であると、ブロックの補強が十分になされず、また、5mmを超えると樹脂との混練が困難になるので好ましくない。
また、繊維状補強材として前記の有機繊維のほかにも酸化亜鉛ウィスカ、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウムウィスカなどの無機繊維を配合してもよい。これらの中では酸化亜鉛ウィスカを用いることが好ましい。酸化亜鉛ウィスカは、テトラポット状に四方に手が伸びた立体形状をしている。この酸化亜鉛ウィスカは、これ単独でも耐熱性、耐摩耗性に優れたものであるが、前述のようにテトラポット状の立体形状をしているため、炭素繊維とともに配合すると、炭素繊維の配向が抑制され、成形時のそりや成形収縮の異方性が改良される。更に、このように炭素繊維の配向を低減できるため、ブロック2の靭性、曲げ剛性などの強度についての異方性も低減することができ、かつ摩擦係数が安定するため、耐摩耗性が向上する。
また、酸化亜鉛ウィスカは、高比重、高剛性であるため、プーリとの接触時の振動を低減でき、ノイズの発生を小さくすることができる。尚、この酸化亜鉛ウィスカの配合量が少ない場合は、添加した効果が発現せず、多すぎると、混練ができなくなり成形自体が困難となる。
このような材料構成とすることによって、プーリと接する際に受ける側圧にも十分に耐えうる剛性、靭性などの強度を有するとともに、耐摩耗性に優れ更には、摩擦時に発生する熱に対しても強いブロックとすることが可能となり、プーリから受ける動力を効率よくセンターベルト3に引張力として伝えることができ、引張伝動式の高負荷伝動ベルトを構成することができる。
具体的には、繊維状補強材の配合量は30〜50質量%の範囲としているが、より具体的にはアラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿繊維などのような有機繊維からなる短繊維は1〜60質量%、酸化亜鉛ウィスカ、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウムウィスカなどの無機繊維からなるウィスカ状の補強材は1〜30質量%の割合で配合することが好ましい。このような材料構成とすることによって、プーリと接する際に受ける側圧にも十分に耐えうる剛性、靭性等の強度を有するとともに、耐摩耗性に優れ、更には、摩擦時に発生する熱に対しても強いブロックとすることが可能となり、プーリから受ける動力を効率よくセンターベルト3に引張力として伝えることができ、引張伝動式の高負荷伝動ベルトを構成することができる。
但し、繊維状補強材で補強した樹脂は高い強度を有している分、繊維状補強材の種類によっては、摩擦した相手材を摩耗させることになる。本発明においては、前述もしたように下ビームの上面においては、スラスト試験で得られる摩擦係数が0.01〜0.45の摺動樹脂R1を配置しており、その面と接触し、ベルト走行時に摩擦を繰り返すセンターベルト表面のカバー帆布10の摩耗量を低減するようにしている。摺動樹脂R1のスラスト試験における摩擦係数は、更に好ましくは0.01〜0.30の範囲内であることが、よりカバー帆布10の摩耗を少なくすることができる。
また、以上の説明では、下ビームの上面に摩擦係数の低い摺動樹脂を配置した例を挙げたが、図5に示すように下ビームだけでなく上ビームの下面であって、センターベルトと接触する部位、つまり、センターベルト3の上面に設けた凹条部15に係合する凸条部17にも、摩擦係数がスラスト試験の0.01〜0.45の摺動樹脂R1を積層配置してよい。そうすることでセンターベルトの下面だけでなく、上面における摩耗の防止にもなる。
摺動樹脂R1として用いることができる樹脂素材としては、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、POM、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミドイミドとポリフェニレンサルファイドとのポリマーアロイを挙げることができる。フッ素系樹脂としては、ポリ4フッ化エチレン、ポリフッ化エチレンプロピレンエーテル、4フッ化エチレン6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化アルコキシエチレンなどが挙げられる。これらの中でもポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレンが、摩擦係数が十分に低く耐熱性にも優れることから好ましい樹脂であるといえる。
また、摺動樹脂R1は、上記樹脂素材に摺動添加剤を添加した摺動樹脂も用いることができ、更に摩擦係数が低減できるために好ましい。摺動添加剤としては、超高分子量PEもしくはPTFE、グラファイト、炭酸カルシウム、二硫化モリブデン、シリコン、アラミド繊維、アラミドパウダーを挙げることができる。摺動添加剤の添加量は摺動樹脂100質量部に対し3〜67質量部、好ましくは5〜43質量部である。摺動添加剤の添加量が3質量部未満であると摺動付与効果の発現が少なく、67質量部を超えると混練が困難になることと、物性が著しく低下してしまうためである。
更に、持続性や摩擦係数の低減をより図るために、摺動樹脂表面にコーティングを施すことができる。コーティングの種類はDLCコーティング、グラファイトコーティング、二硫化モリブデンコーティング、シリコンコーティング、フッ素コーティングが挙げられる。また、コーティング層は1〜100μmが好ましく、1μm未満の場合、持続性の効果が薄く、100μmを超える場合、コスト高になってしまう。
以上のような構成を採ることによってブロック全体としてはプーリからの側圧に耐えて、高トルクを伝達することができる強度を有しており、且つ、センターベルトと摩擦を繰り返してもカバー帆布を摩耗させることなく早期の切断といった故障を防止することができ、より寿命の長いベルトとすることができる。
また、ブロック2としては、樹脂材中にインサート材を埋設したものでもよく、インサート材は、ブロック2の耐側圧性や曲げ剛性を持たせる部分となるインサート材であり、素材としてはアルミ合金、セラミックス、セラミックスとアルミニウムとの複合材料、炭素繊維強化樹脂や鉄などの素材が挙げられる。
耐側圧性や曲げ剛性を持たせるという面では金属材料が好ましく、金属材料の中ではアルミ合金の弾性率が7000kgf/mm2で比重が2.8であるのに対し、鉄は弾性率が22000kgf/mm2で比重が7.8であり、強度的には鉄を用いるほうが高いといえるが、高速で回転するベルトにとって、ベルト重量は寿命に大きく影響を与えるため軽量化の面で有利なアルミ合金を用いることが好ましい。ただし、耐側圧性や曲げ剛性を持たせるという面では金属材料が優れており、インサート材22の所定箇所に樹脂材21を被覆したブロック2を用いることが好ましい。
樹脂材を所定の箇所に配置する場合、ブロック2の大きさよりもひと回り小さい金属材料からなるインサート材を用いてそのほぼ全面を樹脂材で被覆したものを用いると、部分的に樹脂材を被覆配置したものに比べて、樹脂材の剥離などの問題が発生しにくいので好ましい形態ということができる。ただし、全面といっても製造工程の上で樹脂材を被覆する際にインサート材を固定する部材が接触しているところは、インサート材が露出する箇所が発生することになるが、その程度のインサート材の露出は、実質的に全面を樹脂材で被覆している形態に含まれるといってよいものである。
なお、本発明にかかる高負荷伝動ベルトに用いられるブロックには、本実施形態に示した形態に限定されるものではない。
センターベルト3のエラストマー4として使用されるものは、クロロプレンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンなどの単一材またはこれらを適宜ブレンドしたゴムあるいはポリウレタンゴム等が挙げられる。そして、心体5としてはポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、スチールワイヤ等から選ばれたロープが用いられる。また、心体5はロープをスパイラル状に埋設したもの以外にも、上記の繊維の織布、編布や金属薄板等を使用することもできる。
自動車や自動二輪車、農業機械の無段変速装置など、プーリの有効径が変化し大きなトルクを伝達するようなベルトの製造に適用することができる。
1 高負荷伝動ベルト
2 ブロック
3 センターベルト
4 エラストマー
5 心線
6 側面
7 側面
8 嵌合溝
9 嵌合溝
10 カバー帆布
11 上ビーム部
12 下ビーム部
13 センターピラー
15 凹条部
16 凹条部
17 凸条部
18 凸条部
R1 第1樹脂
R2 第2樹脂
2 ブロック
3 センターベルト
4 エラストマー
5 心線
6 側面
7 側面
8 嵌合溝
9 嵌合溝
10 カバー帆布
11 上ビーム部
12 下ビーム部
13 センターピラー
15 凹条部
16 凹条部
17 凸条部
18 凸条部
R1 第1樹脂
R2 第2樹脂
Claims (7)
- センターベルトと、該センターベルトの長手方向に沿って複数のブロックを設けた高負荷伝動ベルトにおいて、ブロックのセンターベルトと接触する部位の一部に摩擦係数が0.01〜0.45の摺動樹脂を配置してなることを特徴とする高負荷伝動ベルト。
- センターベルトと、上ビームと下ビームとそれらの中央部同士を連結するセンターピラーからなっており、上下ビームとセンターピラーとで囲まれた前記センターベルトを嵌合装着する嵌合溝を有する複数のブロックをセンターベルトの長手方向に沿って所定ピッチで設けてなり、センターベルトの上下面にカバー帆布が被覆されている高負荷伝動ベルトにおいて、ブロックの嵌合溝内でセンターベルトの内周面が当接する部位には摩擦係数が0.01〜0.45の摺動樹脂を配置してなることを特徴とする高負荷伝動ベルト。
- ブロックのセンターベルト内周側と接触する部位に配置する摺動樹脂の摩擦係数が0.01〜0.30の範囲である請求項1〜2のいずれかに記載の高負荷伝動ベルト。
- ブロックのセンターベルト外周側と接触する部分にも摺動樹脂を配置してなる請求項1〜3のいずれかに記載の高負荷伝動ベルト。
- 摺動樹脂がポリアミド6Tもしくはポリアミド9T、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミドイミドとポリフェニレンサルファイドとのポリマーアロイからなる請求項1〜4のいずれかに記載の高負荷伝動ベルト。
- 摺動樹脂が請求項5記載の樹脂100質量部に対し、超高分子量ポリエチレンもしくはポリエチレンテレフタレート(PTFE)、グラファイト、炭酸カルシウム、二硫化モリブデン、シリコン、アラミド繊維、アラミドパウダーからなる摺動添加剤を3〜67質量部添加したものからなる請求項1〜5のいずれかに記載の高負荷伝動ベルト。
- 請求項5もしくは6に記載の摺動樹脂表面に1〜100μmのコーティング層を付与したものからなり、コーティングの種類はダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティング、グラファイトコーティング、二硫化モリブデンコーティング、シリコンコーティング、フッ素コーティングから選ばれてなる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれかに記載の高負荷伝動ベルト。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2017110323A1 (ja) * | 2015-12-22 | 2017-06-29 | 宇部興産株式会社 | ポリアミド樹脂組成物、及びそれからなる成形品 |
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2008
- 2008-11-28 JP JP2008303638A patent/JP2010127412A/ja active Pending
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