以下、本発明の実施の形態を実施例に基づき次の順序で説明する。
A.実施形態の概要:
B.装置構成:
C.マイクロ波照射量決定処理:
D.印刷定着処理:
A.実施形態の概要:
図1は本発明の実施形態としての印刷システム10の概略構成図である。図示するように、本実施例の印刷システム10は、印刷制御装置としてのコンピュータ40と、コンピュータ40の制御の下で実際に画像を印刷するプリンタ100などから構成されている。印刷システム10は、全体が一体となって広義の印刷装置として機能する。
本実施例のプリンタ100には、カラーインクとして、シアンインク(C)とマゼンタインク(M)とイエロインク(Y)とブラックインク(K)が備えられている。なお、本実施例において「カラーインク」という場合には、ブラックインクも含む意味であることとする。
コンピュータ40は、図示しないCPU、ROM、RAM、ハードディスク、インターフェース等を備え、所定のオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム41、ビデオドライバプログラム42、プリンタドライバプログラム43を動作可能とする。これらのうち、アプリケーションプログラム41からは、プリンタドライバプログラム43を介して、プリンタ100に転送するための印刷データPDが出力される。
また、ビデオドライバプログラム42は、アプリケーションプログラム41、プリンタドライバプログラム43等からの指令により、ディスプレイ44に所定の画像を表示する。ディスプレイ44に表示する画像としては、ユーザインターフェース画像の他、プリンタ100での印刷対象となる画像、例えば図示しないデジタルカメラからの入力画像などがある。
プリンタドライバプログラム43は、その起動を受けて、後述のプリンタを用いた印刷に必要な種々の処理、例えば印刷データの作成や出力に関する処理を実行する。つまり、プリンタドライバプログラム43は、アプリケーションプログラム41からの印刷命令に基づいて、画像データを当該アプリケーションプログラム41から受け取り、これをプリンタ100に供給する印刷データPDに変換する。このプリンタドライバプログラム43の内部には、解像度変換モジュール43aと、色変換モジュール43bと、ハーフトーンモジュール43cと、ラスタライザ43dと、色変換ルックアップテーブルLUTと、が備えられている。
解像度変換モジュール43aは、アプリケーションプログラム41で形成されたカラー画像データの解像度を、プリンタ100で印刷する際の解像度に変換する処理(例えば、プリンタ100が720dpi×720dpiの場合、画像データを720dpi×720dpiの解像度に変換する処理)を行う。この解像度変換後の画像データは、まだRGBの3つの色成分からなる画像情報である。色変換モジュール43bは、色変換ルックアップテーブルLUTを参照しつつ、各画素ごとに、RGB画像データを、プリンタ100が利用可能な複数のインク色の多階調データに変換する。例えば、プリンタ100が既述したようにCMYKの4色のカラーインクを用いたカラープリンタである場合、色変換モジュール43bは、RGB画像データをCMYKの例えば256階調で表される多階調のCMYKデータに変換する。
ハーフトーンモジュール43cは、上述の多階調データ(CMYKデータ)を、プリンタが形成する階調数のデータに変換する処理を行う。例えば、プリンタ100が有する後述の記録ヘッド111がインク滴のオン/オフの2階調のみで表現可能な場合、個々の画素(ドット)につき1ビットのデータに変換する処理を行う。記録ヘッド111がインク滴のオン/オフに加えて、オンを更にインク滴の大・中・小で打ち分けることが可能な場合、個々の画素につき1ビットのデータに変換する処理を行う。なお、ハーフトーン処理においては、ディザ法、γ補正、誤差拡散法等の手法により、個々の画素(ドット)を分散させて画像データを形成する。
ラスタライザ43dは、ハーフトーン処理後の画像データを、プリンタ100に転送すべきデータ順に並べ替える処理を行う。そして、このラスタライズ処理後の画像データは、最終的な印刷データPDとして、プリンタ100に出力される。なお、この印刷データPDには、副走査送り量を示すデータも含まれている。
B.装置構成:
図2はプリンタ100の概略構成を示すプロック図である。以下の説明において方向を区別する必要がある際には、図2における矢印X1の方向を下流側、矢印X2の方向を上流側、また矢印Y1の方向を上方或いは上側、矢印Y2の方向を下方或いは下側と称し、図2の紙面に交差する方向であって下流側に向かって右手側(紙面奥側)を右方或いは右側、左手側(紙面手前側)を左方或いは左側とし称して説明する。
プリンタ100は、水を溶媒とする既述した4色のカラーインクを記録媒体としての記録紙Pに吐出して印刷するインクジェット式のラインプリンタであり、記録紙Pに記録を行う記録部110と、記録部110から排紙された記録紙Pを加熱する加熱部120と、記録部110および加熱部120を制御するシステム制御部130とを有する。本実施例のプリンタ100が有する加熱部120とシステム制御部130は、本願における記録媒体乾燥装置が有する構成要素を構成する。
記録部110は、記録ヘッド111を備え、当該ヘッドから後述するようにインクを吐出して記録紙Pに記録を行う。本実施例では、コンピュータ40から受け取った印刷データPDに基づいた印刷を行うことから、記録ヘッド111からのインク吐出を経た記録紙Pへの印刷が、記録紙への記録となる。そして、記録部110から排紙される記録紙Pはインクの溶媒である水で濡れた状態となっている。この濡れた状態の記録紙Pを後述の加熱部120に搬送し、この加熱部120において記録紙Pにマイクロ波を照射する。このマイクロ波の照射により、塗布されたインクの水分が加熱されるため蒸発が促され、短時間で記録紙Pが乾燥させられる。加熱部120は、後述するように記録紙Pの濡れ度合いや乾燥度合に応じてマイクロ波の照射量(または照射強度)を制御する構成となっている。つまり、加熱部120は、この加熱部120で加熱される記録紙Pが過加熱状態となり焦げたり、高熱で劣化してしまったり、あるいは逆に乾燥が不十分になってしまうことを防止することができる構成となっている。
記録紙Pへの記録を行う記録部110は、記録紙Pに対しインクを吐出する記録ヘッド111の他、給紙部112と紙搬送部113とを有する。給紙部112は、給紙モータ121と、この給紙モータ121により回転駆動される給紙ローラ122と、この給紙ローラ122と対を成す従動ローラ123とを有する。給紙ローラ122および従動ローラ123は、記録紙Pの左右幅よりやや長いローラ長を備える。従動ローラ123は、記録紙Pを給紙ローラ122と従動ローラ123の間に挿入した状態で、記録紙Pを給紙ローラ122の側に押圧する。従って、給紙部112は、記録紙Pを給紙ローラ122の回転に伴って下流側の紙搬送部113に搬送する。この場合、従動ローラ123は、記録紙Pの移動(搬送)に従って回転する。
紙搬送部113は、紙搬送モータ131と紙搬送ローラ132と従動ローラ133と紙搬送ベルト134とを備え、紙搬送ベルト134を紙搬送ローラ132と従動ローラ133とに掛け渡している。紙搬送ローラ132は、記録ヘッド111の前方に配設され、紙搬送モータ131により回転駆動する。従動ローラ133は、記録ヘッド111を挟んで紙搬送ローラ132の後方に配設される。
この他、紙搬送部113は、紙搬送ローラ132と従動ローラ133の間の下方にテンションローラ135を備え、当該ローラにより、紙搬送ベルト134にテンションを付与する。紙搬送ベルト134は、記録紙Pの左右幅より幅広のベルト幅を備える。従動ローラ133の上方には紙押えローラ136が配設されている。
給紙部112は、紙押えローラ136と紙搬送ベルト134との間に記録紙Pが入り込むよう、記録紙Pを紙搬送部113に給紙する。紙押えローラ136は、記録紙Pに対して紙搬送ベルト134に向かって押圧力を作用させる。紙搬送ローラ132は、図1において左周り(図1中矢示J方向)に回転し、紙搬送ベルト134を、紙搬送ローラ132と従動ローラ133の上側に掛け渡される部分(記録紙Pを載置する部分)が下流側に移動するよう、駆動する。これにより、給紙部112から搬送された記録紙Pは、紙搬送ベルト134の上に載せられた状態で下流側に搬送される。
紙搬送部113は、紙搬送ベルト134をPET等の帯電性に富む素材から形成し、従動ローラ133の後方側で紙搬送ベルト134に帯電ローラ137を接触させている。よって、紙搬送ベルト134は、帯電ローラ137により帯電状態となることから、記録紙Pを静電吸着して搬送する。この場合、記録紙Pは、上述のように紙押えローラ136により紙搬送ベルト134に押圧されるため、紙搬送ベルト134に確実に静電吸着される。
紙搬送部113は、従動ローラ133の下流側に、紙搬送ベルト134における記録紙Pの有無を検出する紙検出センサ138と、紙搬送ベルト134の回転を検出する回転量検出センサ139とを備える。
紙検出センサ138は、図示しない投光部と受光部を備えており、例えば黒色に設けられている紙搬送ベルト134上に、例えば白色の記録紙Pが有るときと無いときの反射光量の違いで、紙搬送ベルト134上の記録紙Pの有無を検出する。回転量検出センサ139は、紙搬送ベルト134の左端縁に紙搬送ベルト134の全周に亘って備えられる図示しないリニアスケールと共に光学エンコーダを構成する。これら紙検出センサ138および回転量検出センサ139での検出に基づいて、紙搬送部113による記録紙Pの搬送状態が検出可能となる。この場合、記録紙Pの有無検出と記録紙Pの搬送状態の検出は、上記両センサ出力を受ける後述のシステム制御部130にて行われる。
紙搬送部113の上方に位置する記録ヘッド111は、記録紙Pの左右方向の幅に亘って一度にインク(液体に対応)を吐出できる記録幅を有する、例えば長尺のライン型記録ヘッドであり、ブラック、シアン、マゼンダ、イエロのインク色に対応する記録ヘッド111B,111C,111M,111Yを前後方向に配列させて備える。記録ヘッド111は、後述のシステム制御部130のヘッドドライバ36からの駆動信号受けて、紙搬送ベルト134により下流側に搬送される記録紙Pに対し各インク色のインクを所定の箇所に吐出し、これにより、記録紙Pに所定の画像、文字等を記録(印刷)する。なお、記録ヘッド111は、長尺のライン型ヘッド以外にも、短尺のヘッドを互い違いに配置する等によって構成されていても良い。
記録部110の下流側に位置する加熱部120は、記録紙Pを上流側から下流側に搬送する紙搬送部21と、記録紙Pに対しマイクロ波を照射するマイクロ波照射ユニット22と、排紙部23とを有する。まず、紙搬送部21と排紙部23について説明する。
紙搬送部21は、紙搬送部113と同様の構成を備え、紙搬送モータ211と紙搬送ローラ212と従動ローラ213と紙搬送ベルト214とテンションローラ215とを用いて、紙搬送ベルト214にて記録紙Pを下流側に搬送する。この紙搬送部21は後述のマイクロ波照射ユニット22の下方に位置し、紙搬送ローラ212は、マイクロ波照射ユニット22が有するマイクロ波照射部222とマイクロ波受信部224の下流側に配設され、従動ローラ213は、マイクロ波照射部222とマイクロ波受信部224の上流側に配設されている。
紙搬送部21は、紙搬送ベルト214の内周側、すなわち、紙搬送ローラ212と従動ローラ213の上側に掛け渡される部分の下側(裏側)に、サクション部216を備える。サクション部216は、図示しない吸気孔を紙搬送ベルト214の裏面側に対向させて備え、吸気孔からの吸引を行う。一方、紙搬送ベルト214には、縦横に所定の間隔で小孔(例えば直径1mm)が複数形成されている。このため、サクション部216は、その吸引動作により、紙搬送ベルト214の縦横の小孔を介して紙搬送ベルト214の外周面側に吸引力を作用させるので、搬送中の記録紙Pを紙搬送ベルト214に吸引する。
サクション部216の吸気孔は、紙搬送ローラ212から従動ローラ213の間のほぼ全域に亘るように備えられている。このため、記録紙Pは紙搬送ベルト214にて下流側に搬送される際、搬送時の風圧で浮き上がったり、記録紙P自身が波打ったり湾曲(カール)することなく、紙搬送ベルト214の平面度に応じて平面状態が維持されて下流側に搬送される。こうして搬送される記録紙Pは、上流側のマイクロ波照射ユニット22から順に、当該ユニットの下方を通過することになる。記録紙Pは、紙搬送部21を有する加熱部120の上流側の記録ヘッド111にて既にインク吐出を受けていることから、紙搬送部21は、印刷済みの記録紙Pを下流側に搬送することになる。
また、紙搬送部21は、従動ローラ213の下流側に、紙搬送部113と同様に、紙検出センサ217と回転量検出センサ218とを備え、これらセンサ出力により、紙搬送ベルト214における記録紙Pの有無と記録紙Pの搬送状態を検出可能とする。この場合、記録紙Pの有無検出と記録紙Pの搬送状態の検出は、上記両センサ出力を受ける後述のシステム制御部130にて行われる。
上記した紙搬送部21の下流側の排紙部23は、排紙モータ231と、この排紙モータ231により回転駆動される排紙ローラ232と、この排紙ローラ232と対を成す従動ローラ233とを有する。よって、排紙部23は、紙搬送部21から搬送された記録紙Pを、排紙ローラ232および従動ローラ233により、図示しないスタッカに排出する。
次に、マイクロ波照射ユニット22について説明する。加熱部120は、印刷済みの記録紙Pを搬送する紙搬送部21の上方に、複数のマイクロ波照射ユニット22を備える。それぞれのマイクロ波照射ユニット22は、マイクロ波発振回路221にマイクロ波照射部222を導波管223にて繋いで備える。マイクロ波照射部222は、マイクロ波発振回路221の発振させたマイクロ波を、紙搬送部21にて搬送される記録紙Pに照射して記録紙Pに付着済みのインクを誘電加熱する。また、マイクロ波照射ユニット22は、マイクロ波照射部222に対応させてマイクロ波受信部224を備え、当該受信部をマイクロ波受信回路225に導波管226にて繋いでいる。マイクロ波受信部224は、マイクロ波照射部222から照射され記録紙Pにて反射したマイクロ波を受信し、その受信したマイクロ波をマイクロ波受信回路225に送る。
本実施の加熱部120は、マイクロ波照射部222とマイクロ波受信部224とを対として備える複数のマイクロ波照射ユニット22を、記録紙Pの搬送方向に沿って上流側から下流側に掛けて区分された複数の区分領域ごとに有する。本実施例では、マイクロ波照射ユニット22を21セット備え、7セットのマイクロ波照射ユニット22を三つの区分領域ごとに配分している。図3は三つの区分領域におけるマイクロ波照射ユニット22ごとのマイクロ波照射部222とマイクロ波受信部224の配置の様子を模式的に示す説明図である。
図示するように、加熱部120は、図3の矢印X1に沿って上流側から下流側に掛けて三つに区分した区分領域に対応付けて、上流側から、第1ブロック220Aと第2ブロック220Bと第3ブロック220Cを並べて備える。これらブロックは、図1に示すように紙搬送部21の紙搬送ベルト214、詳しくはサクション部216の上方に位置する。そして、第1〜第3のブロック220A〜220Cは、紙搬送ベルト214の搬送面に沿った平面視では、図3に示すように、記録紙Pの搬送方向に沿って上流側から下流側に掛けて3列に配列された上で、左右方向、即ち搬送方向に交差する記録紙Pの幅方向においては7分割されている。マイクロ波照射ユニット22は、各ブロックごとに幅方向に7分割された一つの幅方向分割領域ごとにマイクロ波照射部222とマイクロ波受信部224を対にして備える。この幅方向分割領域がマイクロ波照射による加熱単位領域となるので、以下、幅方向分割領域をマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7と称する。そして、記録紙幅方向に並んだマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7が一つのブロックを形成し、対となるマイクロ波照射部222とマイクロ波受信部224は、マイクロ波照射単位領域SP1〜SP7のそれぞれにおいて記録紙Pの搬送方向に沿って配設されている。
図4は一の区分領域に相当する第1ブロック220Aにおけるマイクロ波照射ユニット22のマイクロ波照射部222とマイクロ波受信部224の配置の様子を模式的に示す説明図である。図示すように、第1ブロック220Aのマイクロ波照射部222とマイクロ波受信部224は、マイクロ波吸収板227で覆われている。マイクロ波吸収板227は、半円筒形のドーム状をなして記録紙Pの幅方向に配設されており、半円状の仕切板228によりドーム内を等間隔に仕切ってマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7を形成する。つまり、各照射単位領域は、仕切板228で仕切られたドーム開口領域となる。そして、マイクロ波吸収板227には、マイクロ波照射単位領域SP1〜SP7においてマイクロ波照射部222とマイクロ波受信部224とが、マイクロ波の照射とその反射マイクロ波の受信ができるよう取り付けられている。第2ブロック220Bと第3ブロック220Cも同様の構成である。
マイクロ波吸収板227および仕切板228は、例えば黒色の塗装が為された金属板等のマイクロ波を遮蔽または吸収する材質から構成されている。これにより、一つのマイクロ波照射単位領域、例えばマイクロ波照射単位領域SP3のマイクロ波照射部222で照射されたマイクロ波は、隣のマイクロ波照射単位領域SP2やマイクロ波照射単位領域SP4におけるマイクロ波受信部224で受信されないよう、シールドされる。この場合、マイクロ波吸収板227および仕切板228は、マイクロ波を反射または遮蔽するものであれば、その他の材質から構成されていても良い。なお、金属板に対する黒色の塗装は、仕切板228のみに施すようにしても良い。
第1〜第3のブロック220A〜220Cは、紙搬送部21を含めてその全体が例えば黒色の塗装が施された金属板等から構成されるマイクロ波シールド筐体229により覆われている。よって、マイクロ波照射部222から照射されたマイクロ波は、マイクロ波シールド筐体229外に漏れない構成となっている。
マイクロ波照射部222と導波管223を介して接続されたマイクロ波発振回路221は、マグネトロン(図示省略)を備え、このマグネトロンに電圧を供給することでマイクロ波を発振する。マグネトロンで発せられたマイクロ波は、導波管223を伝播後、マイクロ波照射部222から記録紙Pの異なる部分に照射させられる。具体的には、第1〜第3のブロック220A〜220C毎のそれぞれのマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7において、記録紙Pに照射される。
それぞれのマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7において、マイクロ波受信部224は、対となるマイクロ波照射部222から記録紙Pに照射され記録紙Pで反射されたマイクロ波が入射するように配設されている。マイクロ波受信部224に入射したマイクロ波は、導波管226を伝播してマイクロ波受信回路225のマイクロ波受信部に受信される。マイクロ波受信回路225は、受信したマイクロ波をその受信量に応じた電圧値に変換し、その電圧値を後述のシステム制御部130が有するマイクロ波制御回路39に出力する。こうしたマイクロ波照射と反射の関係は、図4に示すように照射されたマイクロ波の一部が、記録紙Pのインクや記録紙繊維等の誘電物質に透過波として透過して誘電加熱に供せられ、透過波とならずに反射したマイクロ波(反射波)がマイクロ波受信部224で受信される。マイクロ波の照射量に対して、反射波が多ければ透過波は少なくなり誘電加熱に用いられるエネルギは少なくなる。この逆に、反射波が少なければ透過波は増えて誘電加熱に用いられるエネルギは多くなる。この関係を記録紙Pにおけるインク打ち込み量と関連付けて説明する。図5はマイクロ波の照射と受信の様子をインク量に対応して説明する説明図である。
図5に示すように、記録紙Pにおけるインク打ち込み量が多いと、誘電物質としての水も多いことから、誘電物質を誘電加熱すべく透過波は増え、反射波は少なくなる。その逆に、インク打ち込み量が少ないと、透過波が減って反射波は増えることになる。インク打ち込み量に拘わらず記録紙繊維としての誘電物質は同じであることから、反射波量(マイクロ波反射量)は、インクの打ち込み量に依存して定まる。つまり、インクを乾燥させるに足りるマイクロ波の照射量は、インク打ち込み量によって定めることができる他、誘電特性が相違するインク色種別によっても定めることができる。後述のマイクロ波照射量決定に際しては、この性質を用いている。また、上記した現象はインクの乾燥と関連付けても説明できる。つまり、同じインクの打ち込み量であっても、インクの乾燥が進めば含有されている水分量も少なくなることから、インクの乾燥が進むほど、反射波の量は増えることになる。
次に、プリンタ100の電気的な構成について説明する。図6はプリンタ100の電気的な構成を概略的に示す回路ブロック図である。プリンタ100のシステム制御部130は、インターフェース部(I/Fc)31aと、主制御部32と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)33と、給紙モータ121を駆動制御する給紙モータドライバ34と、紙搬送モータ131を駆動制御する紙搬送モータドライバ35と、記録ヘッド111を駆動制御するヘッドドライバ36と、紙搬送モータ211を駆動制御する紙搬送モータドライバ37と、排紙モータ231を駆動制御する排紙モータドライバ38と、既述したそれぞれのブロックにおけるマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7毎のマイクロ波照射ユニット22に対応したマイクロ波制御回路39を有している。
主制御部32は、本願の照射制御量決定部に対応すると共に、マイクロ波制御回路39と協働してマイクロ波照射制御手段を構成する。この主制御部32は、CPU(Central Processing Unit)321と、ROM(Read−Only Memory)322と、作業用のメモリであるRAM(Random Access Memory)323と、コンピュータ40からインターフェース部(I/Fc)31aを介して入力される画像形成データ等を格納するEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)324を備える。CPU321を有する主制御部32は、プリンタ100の様々な動作制御を司り、印刷すべき印刷画像についてコンピュータ40から送られてくる印刷データPDに基づいた記録ヘッド111からのインク吐出制御や、記録部110における給紙モータ121や紙搬送モータ131の駆動制御および帯電ローラ137の帯電制御を行う。
例えば、主制御部32は、印刷データPDと、ASIC33からの出力信号に基づいて、給紙モータ121および紙搬送モータ131の回転速度を制御しつつ、記録紙Pの所定位置に所定色のインクが吐出されるように記録ヘッド111を駆動する。こうすることで、記録紙Pには、印刷データPDにより画像等の記録がなされる。そして、主制御部32は、引き続き紙搬送モータ131を駆動制御することで、記録済みの記録紙Pを紙搬送部113によってその下流側の加熱部120、詳しくは紙搬送部21に搬送する。
ROM322には、プリンタ100の各種動作に係る処理プログラムが記憶されている。加えて、このROM322には、照射量MEを決定するための画像解析プログラム322a、および参照テーブル322bが記憶されている。画像解析プログラム322aは、RAM323の画像バッファ323aに所定量の印刷データPDを蓄え、その蓄えられた印刷データPDが所定量となったときに、いくつかの領域に区分して、それぞれの領域ごとに、マイクロ波を印加する際の照射量(照射エネルギー)MEを決定する。なお、RAM323には、画像バッファ323a以外にも、印刷を実行する際に用いられる印刷バッファ323bが存在するのが好ましい。
C.マイクロ波照射量決定処理:
画像解析プログラム322aによるマイクロ波照射量の決定の様子について説明する。まず、マイクロ波の照射を受ける記録紙Pの印刷画像とマイクロ波照射を行う第1〜第3のブロック220A〜220Cとの関係について説明する。図7は記録紙Pに印刷された印刷画像Gとマイクロ波を照射する最小単位であるブロックごとのマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7との関係を模式的に示す説明図である。
プリンタ100の主制御部32は、後述のマイクロ波照射量決定に関して、画像解析プログラム322aを起動させ、図7に示すように印刷画像Gを取り扱う。つまり、印刷画像Gを、図3で示した第1〜第3のブロック220A〜220Cのブロックごとの幅で、紙送り方向の印刷区分領域P1〜Piに区分し、紙送り方向と交差する幅方向ではマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7と同じ幅で区分する。図7では、印刷画像Gは、印刷区分領域P1〜P4に区分され紙送り方向の幅は、第1〜第3のブロック220A〜220Cのブロックサイズに合致した状態を示しており、以下、この図7の状態で印刷画像Gの取り扱いおよびマイクロ波照射量の決定について説明する。なお、印刷画像Gの紙送り方向の最終の印刷区分領域Pi(図7では印刷区分領域P4)が各ブロックの幅より短い場合や、印刷画像Gの幅がマイクロ波照射単位領域SP1からマイクロ波照射単位領域SP7までの幅よりも狭く、マイクロ波照射単位領域SP1とマイクロ波照射単位領域SP7とでは印刷画像Gが各単位領域の一部しか占めない場合については、後述する。
記録紙Pへのマイクロ波照射は次のようになる。記録紙Pは、印刷画像Gの先端における印刷区分領域P1から第1ブロック220A(図1参照)に入り込んで、まず、この印刷区分領域P1について、記録紙Pの搬送方向最上流の第1ブロック220Aにおけるマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7のそれぞれでマイクロ波の照射を受ける。こうして第1ブロック220Aでのマイクロ波照射を受けた印刷区分領域P1の印刷領域は、第1ブロック220Aより下流側の第2ブロック220B、第3ブロック220Cにてマイクロ波照射を順次受ける。これら各ブロックにおけるマイクロ波照射量については後述する。印刷区分領域P1の隣の印刷区分領域P2の画像領域は、印刷区分領域P1が第1ブロック220Aでのマイクロ波照射を受けた後に、この第1ブロック220Aでマイクロ波照射を受け、その後は、既述したように第2ブロック220B、第3ブロック220Cにてマイクロ波照射を順次受ける。これが繰り返されて、印刷画像Gの後端における印刷区分領域P4の画像領域が第1ブロック220Aからその下流側の第2ブロック220B、第3ブロック220Cにてマイクロ波照射を順次受けると、マイクロ波照射による誘電加熱を経たインクの乾燥と定着が印刷画像Gの全域において完了することになる。
上記した印刷画像Gの取り扱いと記録紙Pへのブロック毎でのマイクロ波照射を踏まえて、マイクロ波照射量の決定の様子を説明する。図8は本実施例におけるマイクロ波照射量決定処理のフローチャートである。
図8のマイクロ波照射量決定処理では、主制御部32は、コンピュータ40から出力された印刷データPDを、画像解析プログラム322aにより画像バッファ323aに記憶して蓄積し(ステップS30)、その記憶した印刷データのデータ量が所定量に達したか否かを判定する(ステップS40)。インクの乾燥および定着のためのマイクロ波照射は、既述したマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7を単位に第1〜第3のブロック220A〜220Cにて行うことから、ステップS40では、図7に示した一列の印刷区分領域Piを占める印刷画像Gの印刷データPDが蓄積できたかが判定される。この判定は、一列の印刷区分領域Piの面積と画像解像度等を考慮した上でデータ蓄積量をカウントすることでなされる。なお、本ルーチンの最初の処理のステップS40では、最初の列である印刷区分領域P1を占める印刷データPDが蓄積できたかが判定される。
ステップS40でデータ蓄積が不足していると否定判定すれば、ステップS30に戻ってデータ蓄積を継続する。一方、データ蓄積が完了したと肯定判定すれば、一列の印刷区分領域Pi(例えば印刷区分領域P1)を図7の記録紙Pの幅方向に沿って区分したマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7の各単位領域ごとに蓄積データを区分する(ステップS50)。これにより、図7に示す印刷区分領域P1におけるマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7のそれぞれについて、各単位領域に含まれる印刷データが求まることになる。各単位領域に含まれる印刷データは、プリンタ100が用いる上記したカラーインクそれぞれの吐出ドットを、ドット位置を含めて定める。よって、ステップS50により、図7に示す印刷区分領域P1におけるマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7のそれぞれについて、シアンインク(C)とマゼンタインク(M)とイエロインク(Y)とブラックインク(K)の各色インクごとに吐出ドットの状況が判明する。
続くステップ60では、主制御部32は、画像解析プログラム322aに従って参照テーブル322bを参照しながら、図7に示す印刷区分領域Pi(添え字iは1〜4)におけるマイクロ波照射単位領域SPi(添え字iは1〜7)のそれぞれの照射単位領域に対して、マイクロ波の総照射量MEi(添え字iは1〜7)を決定し、決定したマイクロ波の総照射量MEspiを、印刷区分領域Piおよびマイクロ波照射単位領域SPiの各単位領域と関連付けて記憶する(ステップS60)。本実施例では、次のようにしてマイクロ波照射単位領域SPiでのマイクロ波の総照射量MEspiを決定することとした。
例えば、ある画素に対応するドットがシアンである場合、当該シアンのドット1つ分を乾かすのに必要な照射量ΔMEcを、実験等により予め求めた上で、参照テーブル322bに保持しておく。そして、ステップS60において、主制御部32は、画像解析プログラム322aにより、まず、マイクロ波照射単位領域SP1の照射単位領域内に存在するシアンのドット数Nを、ステップS50にて区分け済みの蓄積データ(印刷データ)から算出する。この場合、本ルーチンの処理が最初のものであれば、ステップS50でのデータ区分けは、図7に示した最初の印刷区分領域P1であることから、この印刷区分領域P1のマイクロ波照射単位領域SP1についてシアンのドット数Nが算出される。
次に、このマイクロ波照射単位領域SP1に算出ドット数Nで存在するシアンのドット全てを乾かすのに必要な照射量MEcを、参照テーブル322bに保存済みのシアン1ドット当たりの照射量ΔMEcを参照しつつ、以下の式1によって求める。
MEc=ΔMEc×N …(式1)
マゼンタとイエロとブラックについても同様であり、マイクロ波照射単位領域SP1に存在する他のインクであるマゼンタのドット全てを乾かすのに必要な照射量MEm、イエローのドット全てを乾かすのに必要な照射量MEy、ブラックのドット全てを乾かすのに必要な照射量MEkについてもそれぞれ求める。そして、マイクロ波照射単位領域SP1に存在する上記の4色のカラーインクを乾かすのに必要なマイクロ波の総照射量MEsp1を、以下の式2によって求める。
MEsp1=MEc+MEm+MEy+MEk …(式2)
同様にして、マイクロ波照射単位領域SP2〜SP7のそれぞれについてのマイクロ波の総照射量MEsp2〜MEsp7を求める。そして、求めたマイクロ波の総照射量MEspiを、図7に示した最初の印刷区分領域P1と当該領域に含まれるマイクロ波照射単位領域SPiと対応付けた上でRAM323の所定領域に記憶する。
通常、記録紙Pの種類により、インクの浸透具合やマイクロ波の反射率は異なる。また、ドットの大・中・小を打ち分け可能な場合には、それぞれの大きさのドット1つ分を乾かすのに必要なマイクロ波照射量は異なる。このため、算出済みのマイクロ波の総照射量MEspiを記録紙種類やドットの大小に応じて補正することは、照射量算出精度を高める上で有効である。
続くステップ70では、上記一連の処理がコンピュータ40から出力された全ての印刷データPDについてなされたか否かを判定し、否定判定すれば、ステップS30にて画像バッファ323aに既に記憶済みのデータを消去し(ステップS80)、既述したステップS30に移行する。これにより、印刷区分領域P1から順に、印刷区分領域P1〜7の各印刷区分領域ごとに、当該領域に含まれるマイクロ波照射単位領域SPiと対応つけたマイクロ波の総照射量MEspiの決定・記憶がなされる。図7の例では、印刷区分領域P4に含まれるマイクロ波照射単位領域SPiと対応つけたマイクロ波の総照射量MEspiの決定・記憶がなされると、ステップS70にて肯定判定され、本ルーチンは終了する。
ここで、図7に示した印刷画像Gを印刷区分領域に合致して区分けできない場合について説明する。図9は図7相当図であり異なるサイズの印刷画像Gとブロックごとのマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7との関係を模式的に示す説明図である。この図9では、印刷画像Gの幅は第1〜第3のブロック220A〜220Cよりも狭いため、印刷区分領域P1〜P4のそれぞれにおいて、マイクロ波照射単位領域SP1とマイクロ波照射単位領域SP7とでは印刷画像Gが各単位領域の一部しか占めない。また、印刷画像Gの紙送り方向の最終の印刷区分領域Pi(図9では印刷区分領域P4)では、マイクロ波照射単位領域SP1〜SP7のそれぞれで印刷画像Gが各単位領域の一部しか占めない。ところで、ステップS60では、マイクロ波照射単位領域SPi(添え字iは1〜7)のそれぞれに対してマイクロ波の総照射量MEi(添え字iは1〜7)を決定するに当たり、マイクロ波照射単位領域SPiのそれぞれについて実際に蓄積した印刷データを用いている。よって、印刷画像Gが単位領域の一部しか占めない図9の印刷区分領域P1〜P4のそれぞれのマイクロ波照射単位領域SP1とマイクロ波照射単位領域SP7、および、最終の印刷区分領域P4におけるマイクロ波照射単位領域SP2〜SP6については、これら単位領域に含まれる印刷データに対応した照射量でマイクロ波の総照射量MEiが定まる。よって、図9のように印刷画像Gが単位領域の一部しか占めない場合であっても、過多なマイクロ波の総照射量MEiが定まることはなく、単位領域に含まれる印刷データに対応した適切な照射量のマイクロ波の総照射量MEiが定まる。
なお、既述したようにマイクロ波の総照射量MEiを定める画像解析プログラム322aおよび参照テーブル322bの機能を、コンピュータ40が有するプリンタドライバプログラム43に持たせるようにしても良い。こうすれば、ハーフトーンモジュール43cやハーフトーンモジュール43cでのハーフトーン処理終了後またはラスタライズ処理終了後の画像データを解析することで、それぞれの印刷区分領域Piにおけるマイクロ波照射単位領域SPiのそれぞれのマイクロ波の総照射量MEiをコンピュータ40にて決定できる。よって、プリンタ100は、コンピュータ40が求めたマイクロ波の総照射量MEiを受け取ればよく、画像バッファ323aへの印刷データ蓄積や照射量演算が不要となり、負荷の軽減やバッファの省略が可能となる。
D.印刷定着処理:
図10は本実施例における印刷定着処理の前半部分を示すフローチャート、図11は印刷定着処理の後半部分を示すフローチャートである。この印刷定着処理は、記録紙Pに吐出されたカラーインクを乾燥させてその定着を図るものであることから、記録ヘッド111による印刷完了、或いは紙搬送部21に設けた紙検出センサ217による記録紙検出を契機に開始される。こうして処理が開始されると、図10に示すように、紙搬送部21の駆動を開始して記録紙Pを搬送方向下流側に搬送する(ステップS100)。具体的には、プリンタ100のシステム制御部130は、紙搬送ローラ212を回転させる紙搬送モータ211の回転制御や、サクション部216による吸引、排紙ローラ232を回転させる排紙モータ231の回転制御等を行い、記録紙Pを紙搬送ベルト214に吸引した状態で搬送する。よって、記録紙Pに印刷済みの印刷画像Gの先端の印刷区分領域P1に相当する印刷画像部分がまず第1ブロック220Aに到達し、この第1ブロック220Aには、印刷区分領域P1に続いて印刷区分領域P2、印刷区分領域P3、印刷区分領域P4の順に各印刷区分領域が到達する。第2ブロック220Bと第3ブロック220Cでも同様である。
記録紙搬送に続くステップ110では、紙検出センサ217による記録紙検出後からの回転量検出センサ218のセンサ信号の出力状況により記録紙Pの位置を検出する。この記録紙位置検出は処理が終わるまで継続され、その検出結果はRAM323の所定領域に時系列的に記憶されて後述の処理にて随時使用され、処理終了後に破棄される。
システム制御部130は、上記のように検出・記憶された記録紙位置に基づいて、第1ブロック220Aにおけるマイクロ波の第1照射の実行タイミングか否かを判定し(ステップS120)、この実行タイミングとなると、ステップS130での第1ブロック220Aにおけるマイクロ波第1照射S1と、ステップS140でのマイクロ波の反射率検出T1とを行う。第1ブロック220Aにおけるマイクロ波第1照射S1の実行タイミングは、記録紙Pに印刷済みの印刷画像Gを図7に示すように記録紙搬送方向に沿って区分けした印刷区分領域P1〜P4の先端が第1ブロック220Aの所定箇所に達したタイミングである。つまり、印刷区分領域P1〜P4の先端が第1ブロック220Aに達する度にマイクロ波第1照射S1の実行タイミングが到来し、その都度に、以下に説明するマイクロ波第1照射S1とマイクロ波の反射率検出T1とがなされる。まず、印刷区分領域P1の先端が第1ブロック220Aに達した場合から説明する。
印刷区分領域P1の先端が第1ブロック220Aに達してマイクロ波第1照射S1の実行タイミングとなると、システム制御部130は、印刷区分領域P1におけるそれぞれのマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7についてステップS60で決定済みのマイクロ波の総照射量MEsp1〜MEsp7を読み込む。既述したようにこのマイクロ波の総照射量MEsp1〜MEsp7は、印刷区分領域P1のマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7に存在する上記の4色のカラーインクを乾かすのに必要な総照射量であり、この印刷区分領域P1は、既述したように第1ブロック220Aに続いて第2ブロック220B、第3ブロック220Cの順に3回のマイクロ波照射を受ける。よって、システム制御部130は、上記の実行タイミングにて印刷区分領域P1のマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7に照射すべきマイクロ波実照射量SM1〜SM7を、読み込んだ総照射量MEsp1〜MEsp7のそれぞれ1/3の照射量もしくは1/3よりも少ない照射量に設定し、この設定したマイクロ波実照射量SM1〜SM7(総照射量MEsp1〜MEsp7の1/3以下の照射量)で第1ブロック220Aにおけるマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7のマイクロ波照射部222からマイクロ波を照射する。ここまでの処理が、印刷区分領域P1についての第1ブロック220Aによるマイクロ波第1照射S1となり、このマイクロ波第1照射S1を受けた印刷区分領域P1では、誘電加熱によるインクの乾燥が起きる。
マイクロ波照射に伴う誘電加熱を起こすエネルギは、平行平板コンデンサにおける単位体積当たりの発熱に拘わる電力で表すことができ、当該電力は、周波数および電界強度の2乗に比例する。よって、上記したステップS130でのマイクロ波第1照射S1に際しては、上記したマイクロ波実照射量SM1〜SM7でのマイクロ波照射を達成すべく、マイクロ波発振回路221(図2参照)においてマイクロ波周波数と電界強度のいずれか、もしくはその両方が設定される。
このマイクロ波第1照射S1に対応する反射率検出T1では、第1ブロック220Aにおけるマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7のマイクロ波受信部224が受信した反射マイクロ波をマイクロ波受信回路225にて電圧変換する。そして、受信反射マイクロ波量に対応するこの変換電圧と、上記のマイクロ波実照射量SM1〜SM7を変換した電圧とを第1ブロック220Aにおけるマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7ごとに対比して、各単位領域ごとに反射率TMijを求める。この場合の添え字iは、印刷区分領域P1〜P4に対応した1〜4であり、添え字jは、マイクロ波照射単位領域SP1〜SP7に対応した1〜7である。
こうして行ったマイクロ波第1照射S1と対応する反射率検出T1に続き、求めた反射率TMijを記録紙位置に対応させて記憶する(ステップS150)。印刷区分領域P1の先端が第1ブロック220Aに達した実行タイミングでのマイクロ波第1照射S1に対しては、印刷区分領域P1におけるマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7ごとの反射率TM11〜TM17が求まる。その一方、マイクロ波第1照射S1は、下流側に向けて搬送されて記録紙位置を変えつつある記録紙Pに対して行われているので、印刷区分領域P1におけるマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7ごとの反射率TM11〜TM17は、記録紙位置に応じて検出される。この記録紙位置はステップS110で検出されていることから、反射率TM11〜TM17は、印刷区分領域P1におけるマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7ごとに記録紙位置に対応してステップS150で記憶される。
ここまでが、印刷画像Gの先端の印刷区分領域P1が第1ブロック220Aに到達してなされた第1ブロック220Aでのマイクロ波照射に関する処理である。記録紙Pは引き続き搬送されているので、システム制御部130は、第1ブロック220Aに印刷区分領域P2が到達する実行タイミングで、印刷区分領域P2に対する第1ブロック220Aでの上記したマイクロ波第1照射S1と反射率検出T1、並びに反射率TM21〜TM27の算出と記録紙位置に対応した記憶とを行う。第1ブロック220Aに印刷区分領域P3が到達する実行タイミング、印刷区分領域P4が到達した実行タイミングでも同様である。これにより、第1ブロック220Aにて、印刷画像Gの印刷区分領域P1〜P4に対するマイクロ波照射に伴う処理が記録紙搬送に伴って行われ、マイクロ波第1照射S1を受けた印刷区分領域P1〜P4ごとのマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7に対応する反射率TMij(i=1〜4,j=1〜7)が記録紙位置に対応して記憶されることになる。そして、印刷画像Gは印刷区分領域P1〜P4の順にマイクロ波第1照射S1を受けることから、マイクロ波照射に伴う誘電加熱により、印刷画像Gの画像全域では、マイクロ波第1照射S1の実照射量に応じたインクの乾燥が起きる。
システム制御部130は、既述した第1ブロック220Aでのマイクロ波照射に続く第2ブロック220Bでのマイクロ波の第2照射の実行タイミングか否かを判定し(ステップS160)、この実行タイミングとなると、ステップS170での第2ブロック220Bにおけるマイクロ波第2照射S2と、ステップS180でのマイクロ波の反射率検出T2とを行う。第2ブロック220Bにおける第2照射の実行タイミングは、第1ブロック220Aにて上記したマイクロ波第1照射S1を受けた記録紙Pの印刷画像Gにおける印刷区分領域P1〜P4の先端が第2ブロック220Bに達したタイミングである。つまり、この第2ブロック220Bでのマイクロ波第2照射S2にあっても、第1ブロック220Aにおけるマイクロ波第1照射S1と同様の実行タイミングの都度に、既述したマイクロ波第1照射S1とマイクロ波の反射率検出T1と同様にマイクロ波第2照射S2とこれに対応するマイクロ波の反射率検出T2の算出が行われ、マイクロ波第2照射S2を受けた印刷区分領域P1〜P4ごとのマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7に対応する反射率TMij(i=1〜4,j=1〜7)についても記録紙位置に対応して記憶される(ステップS170〜190)。なお、ステップS170でのマイクロ波第2照射S2におけるマイクロ波実照射量SM1〜SM7は、マイクロ波第1照射S1と同様に総照射量MEsp1〜MEsp7の1/3の照射量とできるほか、当該照射量より少ない照射量とすることができる。
ところで、第1ブロック220Aと第2ブロック220Bは、図2や図3で説明したように並んで配置され、マイクロ波照射は搬送されつつある記録紙Pに対して行われる。よって、印刷区分領域P1の先端側領域が第1ブロック220Aの下流側の第2ブロック220Bにてマイクロ波第2照射S2を受けている場合、印刷区分領域P1に続く印刷区分領域P2は第1ブロック220Aにてマイクロ波第1照射S1を受けていることになる。しかしながら、同じ印刷領域については、システム制御部130は、第1ブロック220Aでのマイクロ波照射に関するステップS120〜150の処理と、第2ブロック220Bでのマイクロ波照射に関するステップS160〜190の処理とをシーケンシャルに実行する。このため、ステップS190までの処理により、印刷画像Gの印刷区分領域P1〜P4の各印刷区分領域は、最上流の第1ブロック220Aでのマイクロ波第1照射S1とその下流側の第2ブロック220Bでのマイクロ波第2照射S2とを、記録紙搬送に伴って各印刷区分領域の順に順次受ける。後述する第3ブロック220Cでのマイクロ波第3照射S3と第2ブロック220Bでのマイクロ波第2照射S2も同様である。こうしたことを踏まえ、シーケンシャルな処理として説明する場合には、印刷画像Gの先端に当たる印刷区分領域P1を例に挙げて説明する。
ステップS190までの処理により、印刷区分領域P1について、最上流の第1ブロック220Aでのマイクロ波第1照射S1に伴う反射率TM1j(S1TM1j)と、その下流側の第2ブロック220Bでのマイクロ波第2照射S2に伴う反射率TM1j(S2TM1j)とが、記録紙位置に応じて得られることになる。システム制御部130は、続くステップ200にて、印刷区分領域P1について既述したようにマイクロ波第1照射S1とマイクロ波第2照射S2とを行った場合のマイクロ波照射エネルギに対する乾燥推移量Ki(添え字iはマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7に対応する1〜7である)を算出して記憶する。この印刷区分領域P1についての乾燥推移量Kiは、ステップS150とステップS180にて記録紙位置に対応して得た両反射率TM1j(S1TM1jとS2TM1j)およびマイクロ波第1照射S1での実照射量SM1〜SM7(S1SM1〜S1SM7)とマイクロ波第2照射S2での実照射量SM1〜SM7(S2SM1〜S2SM7)とを用いて求められ、印刷区分領域P1のマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7の各照射単位領域におけるマイクロ波の照射エネルギに対するインクの乾燥推移の程度を現す。図12は印刷区分領域P1のマイクロ波照射単位領域SP1におけるマイクロ波の照射エネルギに対するインクの乾燥推移量K1の算出の様子を説明する説明図である。
この図12は、次のことを意味する。印刷区分領域P1のマイクロ波照射単位領域SP1への第1ブロック220Aでのマイクロ波第1照射S1の実行により、マイクロ波の実照射量S1SM1に相当する照射エネルギを与えたところ、マイクロ波は反射率S1TM11で反射された。続いてこの印刷区分領域P1のマイクロ波照射単位領域SP1に、下流側の第2ブロック220Bにてマイクロ波第1照射S1を実行してマイクロ波の実照射量S2SM1に相当する照射エネルギを与えたところ、マイクロ波は反射率S2TM11で反射された。
記録紙Pに照射されたマイクロ波は、印刷区分領域P1のマイクロ波照射単位領域SP1に存在するインクを誘電加熱する。この場合、インクの水分量が多いほど(即ち、インクの乾燥が進んでいないほど)、水分の誘電加熱に供される割合が高まることから、反射するマイクロ波は少なくなる。このため、マイクロ波の反射率は、照射を受けたインクの乾燥が進むほど高くなるので、マイクロ波第1照射S1とマイクロ波第2照射S2とを続けて受けたことになる第2ブロック220Bでのマイクロ波の反射率S2TM11は、マイクロ波第1照射S1しか受けていない第1ブロック220Aでのマイクロ波の反射率S1TM11より大きくなっている。そして、この反射率の差分(S2TM11−S1TM11)を、印刷区分領域P1のマイクロ波照射単位領域SP1に与えた合計の照射エネルギ(S1SM1+S2SM1)で除算して、その値をインクの乾燥推移量K1とする。このインクの乾燥推移量K1は、記録紙位置に対応させて記憶される。システム制御部130は、印刷区分領域P1の他のマイクロ波照射単位領域SP2〜SP7についてもインクの乾燥推移量Kiを算出して記録紙位置に対応付けて記憶する。印刷区分領域P1に続く印刷区分領域P2〜P4についても同様である。こうして算出したインクの乾燥推移量Kiは、以下に説明するように、下流側の第3ブロック220Cでのマイクロ波第3照射S3のマイクロ波照射量の算出に用いられる。つまり、下流側の第3ブロック220Cでのマイクロ波照射に際しては、この第3ブロック220Cより上流側でのマイクロ波照射によるインクの乾燥状況を示す上記の乾燥推移量Kiに応じたマイクロ波照射制御が行われる。
システム制御部130は、図11に示すように、続くステップ210にて、最下流の第3ブロック220Cでのマイクロ波の第3照射の実行タイミングか否かを判定する。この実行タイミングにあっても、第1、第2のブロック220A〜220Bにて上記したマイクロ波の第1と第2の照射を受けた記録紙Pの印刷画像Gにおける印刷区分領域P1〜P4の先端が第3ブロック220Cに達したタイミングである。つまり、この第3ブロック220Cにあっても、第1、第2のブロック220A〜220Bと同様の実行タイミングの都度に、以下の処理が実行される。
システム制御部130は、上記したマイクロ波の第3照射の実行タイミングとなると、第3ブロック220Cにてマイクロ波照射を行う場合の目標反射率TFijを読み出す(ステップS220)。この場合の添え字iは、印刷区分領域P1〜P4に対応した1〜4であり、添え字jは、マイクロ波照射単位領域SP1〜SP7に対応した1〜7である。つまり、目標反射率TFijは、それぞれの印刷区分領域P1〜P4に含まれるマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7において個別にマイクロ波照射を行う場合の目標反射率である。マイクロ波照射によりインクの水分を蒸発させる場合、インクにおける水分の含有量が大きければ、水の誘電加熱に用いられるマイクロ波は増え、反射率は小さい。そして、水分蒸発が進んで水分の含有量が小さくなれば、水の誘電加熱に用いられるマイクロ波は減るので、反射率は大きくなり、インク定着に十分な水分蒸発が起きた場合のマイクロ波の反射率は、実験等により予め定まり、インク種別ごとに得られる。よって、図8のステップS50以降において印刷データPDに応じてマイクロ波照射量を決定したように、システム制御部130は、各インクの1ドット当たりの反射率データを参照テーブル322bに記憶しておき、それぞれの印刷区分領域P1〜P4に含まれるマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7についての目標反射率TFijを、各照射単位領域を占める印刷データPDに基づいて算出する。ステップS220では、この算出した目標反射率TFijを読み出すのである。
その後、読み出したTFijを用いて第3ブロック220Cにおけるマイクロ波第3照射S3を行う際のマイクロ波照射量SMEijを算出する(ステップS230)。この場合の添え字iは、印刷区分領域P1〜P4に対応した1〜4であり、添え字jは、マイクロ波照射単位領域SP1〜SP7に対応した1〜7である。つまり、ステップS230では、それぞれの印刷区分領域P1〜P4に含まれるマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7ごとにマイクロ波照射量SMEを定める。この様子を図を用いて説明する。図13は第3ブロック220Cにおけるマイクロ波照射量SMEijを算出する様子を示す説明図である。
図12で説明したように、印刷区分領域P1のマイクロ波照射単位領域SP1が第1ブロック220Aでのマイクロ波第1照射S1と第2ブロック220Bでのマイクロ波第2照射S2を受けた場合のインクの乾燥の進み具合(乾燥状態)は、乾燥推移量Ki(K1)として得られている(ステップS200)。よって、この乾燥推移量K1に従って図12に示す目標反射率とできるマイクロ波照射量を定め、この照射量を印刷区分領域P1のマイクロ波照射単位領域SP1についてのマイクロ波照射量SMEij(SMI11)とする。つまり、マイクロ波第2照射S2の実行後の反射率S2TM11を目標反射率TF11とするためのマイクロ波照射量SME11を乾燥推移量K1を用いて演算する。印刷区分領域P1のマイクロ波照射単位領域SP2〜SP7について、および印刷区分領域P2〜P4のマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7についても同様である。図13は、こうした演算により、第3ブロック220Cのマイクロ波第3照射S3でのマイクロ波照射量SMEijは、第1ブロック220Aでのマイクロ波第1照射S1および第2ブロック220Bでのマイクロ波第2照射S2でのマイクロ波照射量より小さな値とされたことを示している。
システム制御部130は、こうして求めたマイクロ波照射量SMEijで第3ブロック220Cにおけるマイクロ波第3照射S3を実行し(ステップS240)、既述したようにそのマイクロ波照射に伴う反射率検出T3を実行する(ステップS250)。次いで、この反射率検出T3で得られた反射率TMijと目標反射率TFijとの対比を経て乾燥は正常に行われたか否かを判定し(ステップS260)、乾燥が正常であれば本ルーチンを終了する。その一方、乾燥が非正常、例えば、目標反射率TFijに対して反射率検出T3での反射率TMijが過不足があれば、その時点以降でのマイクロ波照射等を一旦停止し(ステップS270)、乾燥異常の旨を表示する(ステップS280)。例えば、プリンタ100のシステム制御部130からコンピュータ40に乾燥異常の信号を出力し、コンピュータ40のディスプレイ44に異常表示を行う。プリンタ100にもディスプレイを設けて、そのディスプレイに異常表示を行うようにすることもできる。
以上説明した本実施例のプリンタ100が行う印刷定着処理により、次の利点がある。プリンタ100では、マイクロ波照射によりインク水分の誘電加熱を行うに当たり、記録紙Pの搬送方向に沿って上流側から下流側に掛けて区分けした三つの第1〜第3のブロック220A〜220Cを並べて設け、記録紙Pを上流側の第1ブロック220Aからその下流側の第2ブロック220B、第3ブロック220Cの順に各ブロックの下方を搬送する。これら各ブロックは、記録紙Pの幅方向に亘る所定の領域、即ちマイクロ波吸収板227で覆われる記録紙幅の記録紙Pにマイクロ波をマイクロ波照射部222から照射する。よって、搬送されている印刷済み記録紙Pは、搬送方向上流側からの上記の各ブロックごとにマイクロ波の照射を繰り返し受ける。記録紙Pに付着済みのインクの乾燥は、搬送方向最下流の第3ブロック220Cにおけるマイクロ波照射部222から記録紙Pがマイクロ波照射を受けることにより完了すればよい。このため、搬送方向に沿って三つに区分けした第1〜第3のブロック220A〜220Cの各ブロックでは、記録紙Pの全域の付着済みインクを乾燥させるに足りる照射量でマイクロ波を照射する必要はないので、それぞれのブロックに属するマイクロ波照射部222からのマイクロ波照射量を少なくできる。つまり、それぞれのブロックの下方を紙搬送部21により搬送される間に記録紙Pが受けるマイクロ波照射量は少なくなるので、この照射量低減の分だけ誘電加熱の程度も抑制され、その分、各ブロックでのマイクロ波照射に伴う加熱ムラを抑制できる。
具体的には、第1ブロック220Aにて記録紙Pの印刷区分領域P1に対してマイクロ波照射を行うに当たり、予め印刷データPDに基づいてマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7ごとにマイクロ波の総照射量MEsp1〜MEsp7を定める(ステップS60)。そして、印刷区分領域P1のマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7に照射すべきマイクロ波実照射量SM1〜SM7を、総照射量MEsp1〜MEsp7のそれぞれ1/3の照射量もしくは1/3よりも少ない照射量に設定し、この設定したマイクロ波実照射量SM1〜SM7(総照射量MEsp1〜MEsp7の1/3以下の照射量)で第1ブロック220Aにおけるマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7のマイクロ波照射部222からマイクロ波を照射することとした(ステップS130)。この場合、本実施例では、第1ブロック220Aを記録紙幅方向に区分けしたそれぞれのマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7にマイクロ波照射部222を設け、ブロックにおける照射単位領域と記録紙Pにおける照射単位領域を同じにして、この照射単位領域ごとに実照射量を求めた。しかしながら、第1ブロック220Aが記録紙幅方向に記録紙Pの照射単位領域と異なる単位領域、例えば、5分割に照射単位領域を設定していれば、ステップS60で求めたマイクロ波の総照射量MEsp1〜MEsp7の総和を、ブロック数の3で除算し、更に照射単位領域の数の5で除算した照射量を実照射量とすればよい。
加えて、本実施例のプリンタ100では、記録紙Pの搬送方向に沿って並んだ第1〜第3のブロック220A〜220Cのそれぞれで搬送中の記録紙Pにマイクロ波を照射して誘電加熱を行うに当たり、最下流の第3ブロック220Cで記録紙Pに照射するマイクロ波第3照射S3でのマイクロ波実照射量を、これより上流側の第1ブロック220Aと第2ブロック220Bでのマイクロ波照射によって観察された記録紙Pの乾燥推移量Kiに応じて制御している(ステップS220〜230)。このため、最下流の第3ブロック220Cでの記録紙Pに対するマイクロ波照射が過不足となることを抑制できるので、上記した第1ブロック220Aと第2ブロック220Bのマイクロ波照射量低減と相まって、記録紙Pの加熱ムラを抑制しつつ記録紙Pのインクを誘電加熱により好適に乾燥させることができる。
また、本実施例のプリンタ100では、第1ブロック220Aと第2ブロック220Bのマイクロ波実照射量を定めるに当たり、記録紙Pを搬送方向に沿って区分した印刷区分領域P1〜P4について照射するマイクロ波照射量を、記録紙Pへのインク付着状況を定める印刷データPDに基づいて決定し、その決定したマイクロ波照射量を、第3ブロック220Cでのマイクロ波第3照射S3の際には乾燥推移量Kiに応じて補正した。このため、第1ブロック220Aと第2ブロック220Bでのマイクロ波第1照射S1およびマイクロ波第2照射S2では、記録紙Pの全領域に亘ってマイクロ波を一度に照射する場合よりもその照射量が少なくなることに加え、各ブロックを占めるインクの付着状況(インクドットの打ち込み量や色の混在状況)が反映した照射量でマイクロ波を照射できる。よって、照射量低減に応じた誘電加熱程度の抑制と、インクの付着状況が反映した適正な照射量でのマイクロ波照射による誘電加熱の適正化とにより、加熱ムラの抑制効果を高めることができる。しかも、最下流の第3ブロック220Cでのマイクロ波の照射量を、既述したように上流側の各ブロックでのマイクロ波照射によるインクの乾燥状況に応じて補正するので、記録紙Pの加熱ムラを高い実効性で抑制しつつインクを誘電加熱により適正に乾燥させることができる。
また、本実施例のプリンタ100では、既述したように第1〜第3のブロック220A〜220Cのそれぞれでマイクロ波を照射するに当たり、各ブロックを記録紙Pにおける搬送方向に沿った印刷区分領域P1〜P4を記録紙幅方向に区分けしたマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7に対応させて、各ブロックのマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7でマイクロ波を照射する。その上、このマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7を占める印刷データPDに基づいて各照射単位領域ごとにマイクロ波照射量を定めている。つまり、プリンタ100は、マイクロ波照射による誘電加熱の範囲を、記録媒体の搬送方向に沿った印刷区分領域P1〜P4を更に記録紙幅方向に沿って区分したマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7に細分化し、この細分化した照射単位領域ごとに、インクの付着状況が反映した照射量でのマイクロ波照射を行うことができる。よって、上記のように細分化した照射単位領域のそれぞれにおいて、記録紙Pの加熱ムラ抑制の実効性のみならず、インクの誘電加熱による乾燥の実効性をもより高めることができるので、上記細分化した書写単位領域の乾燥度合いを均一化できる。
しかも、第3ブロック220Cでのマイクロ波第3照射S3のマイクロ波実照射量を補正するための上流側のブロックでのマイクロ波照射を経た乾燥推移量Kiを、第1ブロック220Aと第2ブロック220Bにおいてそれぞれのマイクロ波受信部224で得たマイクロ波受信量を用いて算出するようにした(ステップS200)。よって、高い精度で付インクの乾燥状況を決定できるので、下流側の第3ブロック220Cでのマイクロ波照射の補正精度が高まり、記録紙Pの加熱ムラをより一層高い実効性で抑制できるほか、インクの誘電加熱による乾燥の実効性もより高まる。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記した実施の形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。例えば、上述の実施形態では、印刷システム10を構成するコンピュータ40とプリンタ100とによって、印刷データPDに基づいたマイクロ波の実照射量の算出、乾燥推移量Kiに応じた下流側でのマイクロ波照射の際の照射量補正を分担して行っている。これに対して、プリンタ100自体が画像データをデジタルカメラや各種メモリカードから入力して、その印刷データPDに基づいたマイクロ波の実照射量の算出、乾燥推移量Kiに応じた下流側でのマイクロ波照射の際の照射量補正を、プリンタ100がシステム制御部130のCPU321を用いて行うようにすることもできる。
また、上記した実施例では、第1ブロック220Aでのマイクロ波第1照射S1と第2ブロック220Bでのマイクロ波第2照射S2とを行ってから乾燥推移量Kiを求めたが、第1ブロック220Aでのマイクロ波第1照射S1の実行後に乾燥推移量Kiを算出するようにすることもできる。つまり、印刷データPDによって、各色のインクのドット打ち込み量やその分布状況は把握され、マイクロ波照射前のインクの水分含有量(当初水分含有量)もマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7ごとに推考できる。その一方、マイクロ波受信部224で受信したマイクロ波受信量は、既述したようにマイクロ波の照射を受ける記録紙Pでのインクにおける水分蒸発量に依存する。よって、第1ブロック220Aでのマイクロ波第1照射S1の実行後のマイクロ波受信量に合致する水分蒸発量と上記した当初水分含有量とから、マイクロ波第1照射S1を経た際の乾燥推移量Kiも算出できる。このため、第2ブロック220Bでのマイクロ波第2照射S2のマイクロ波実照射量を、第1ブロック220Aでのマイクロ波第1照射S1による乾燥状況に応じて制御できる。第3ブロック220Cについても同様である。こうしても、記録紙Pの加熱ムラを抑制しつつ、インクの乾燥と定着を図ることができる。
また、上記した実施例では、記録紙Pにおける印刷画像Gの印刷区分領域P1〜P4に対して第1ブロック220AでのS1を実行するに当たり、当該印刷区分領域を記録紙幅方向に区分けしたマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7のそれぞれについてマイクロ波の総照射量MEsp1〜MEsp7を求めるようにし、その際には、印刷データPDを各照射単位領域ごとに区分した(ステップS50〜60)。このようにするほか、印刷区分領域P1を占める印刷データPDに基づいて印刷区分領域P1のインクの乾燥を図るためのマイクロ波照射量を印刷区分領域を単位に求めて、当該照射量をマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7に等分するようにすることもできる。同様に、印刷画像Gの全体のインクの乾燥を図るためのマイクロ波照射量を画像全体の印刷データPDに基づいて定め、当該照射量を印刷区分領域P1〜P4の四つに等分した上で、更にその等分した照射量をマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7に等分するようにすることもできる。こうすれば、マイクロ波照射量の演算負荷を軽減できる。
さらに、上述の実施の形態では、記録ヘッド111から噴射されるインクを、ブラック、シアン、マゼンダ、イエロの4色としているが、記録ヘッド111から噴射されるインクは4色には限られず、5色以上としても良い。
また、紙搬送部21と加熱部120を含むプリンタ100として構成した場合を例に挙げて説明したが、プリンタ100とは別に構成され紙搬送部21と加熱部120を含む乾燥装置として構成することもできる。
既述したように第1ブロック220A〜第3ブロック220Cは、図2や図3で説明したように並んで配置され、マイクロ波照射は搬送されつつある記録紙Pに対して行われる。よって、下流側のブロックにてある印刷区分領域、例えば印刷区分領域P1がマイクロ波照射を受けている場合、その上流側のブロックでは印刷区分領域P1に続く印刷区分領域P2はマイクロ波照射を受けていることになる。つまり、第1〜第3のブロック220A〜220Cを並んで配置したので、印刷画像Gのいずれの印刷区分領域P1〜P4においても、第1ブロック220Aで受けたマイクロ波第1照射S1による誘電加熱の熱が放出され切ってしまわないうちに、下流側の第2ブロック220Bでのマイクロ波第2照射S2による誘電加熱を起こすことが可能となる。第2ブロック220Bと第3ブロック220Cとの間でも同様である。従って、マイクロ波第2照射S2に関してステップS170で定めるマイクロ波実照射量を、マイクロ波第1照射S1の場合の実照射量(総照射量MEsp1〜MEsp7の1/3以下)より少ない照射量にしても、上流側の第1ブロック220Aでのマイクロ波第1照射S1に続く下流側の第2ブロック220Bでのマイクロ波第2照射S2に伴う誘電加熱により、印刷画像Gの画像全域ではインクの乾燥が進むことになる。第3ブロック220Cでも同様である。
上記したことから、加熱部120もしくはこれを有するプリンタ100を次のように捉えることができる。記録紙Pを搬送する紙搬送部21を備えた上で、搬送される記録紙Pにマイクロ波を照射してインクを誘電加熱するための第1〜第3のブロック220A〜220Cを、搬送方向に沿って搬送方向上流側から下流側に並べて設置する。これら各ブロックは、搬送方向と交差する記録紙幅方向に亘ってマイクロ波照射領域を形成するものとして、記録紙Pの搬送方向に沿って上流側から下流側に掛けて区分された区分領域ごとにマイクロ波を照射可能とされている。このマイクロ波照射は、各ブロックが有するマイクロ波照射部222にて行う。
そして、上流側から下流側に並んだ第1〜第3のブロック220A〜220Cのマイクロ波照射部222からのマイクロ波照射を制御してマイクロ波による誘電加熱を行うに当たり、最上流の第1ブロック220Aのマイクロ波照射部222からは、記録紙Pにおける印刷画像Gの全体のインクを乾燥させることができるマイクロ波の総照射量の1/n(nはブロックの数であり、この場合はn=3)程度の照射量でマイクロ波を照射する。最上流の第1ブロック220Aより下流側のブロックのマイクロ波照射部222からのマイクロ波照射を、上流側のブロックのマイクロ波照射部222からのマイクロ波照射に伴う誘電加熱の熱が放出され切ってしまわないうちに実行する。こうすれば、下流側のブロックに属するマイクロ波照射部222でのマイクロ波実照射量を、上流側のブロックに属するマイクロ波照射部222でのマイクロ波実照射量より少ない照射量にしても、熱が放出され切ってしまわないうちでの上流側に続く下流側のブロックでのマイクロ波照射に伴う誘電加熱により、記録紙Pにおける印刷画像Gの画像全域のインクの乾燥を図ることができる。上記した最上流の第1ブロック220Aでのマイクロ波照射量(マイクロ波総照射量の1/3の照射量)は、既述したように印刷データPDに基づいて印刷区分領域P1におけるマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7ごとに求めた照射量の和により算出できるほか、印刷画像Gを印刷区分領域P1〜P4およびマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7に区分けすることなく、印刷データPDに基づいて求めたマイクロ波の総照射量により算出できる。
この場合、第1〜第3のブロック220A〜220Cのマイクロ波照射部222を、各ブロックにおいて、記録紙幅方向に区分されたマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7にそれぞれ設けられるようにできる。こうすれば、マイクロ波照射による誘電加熱の範囲を、第1〜第3のブロック220A〜220Cごとのマイクロ波照射単位領域SP1〜SP7に細分化して、この細分化した照射単位領域ごとにインクの乾燥を第1〜第3のブロックにより順次進めることができる。