本発明の燃料電池は、プロトン伝導性電解質膜を挟んだ一対の触媒層を含む燃料電池である。
本発明の燃料電池に含まれる触媒層は、触媒成分と、炭素材料と、電解質材料を含む混合物で構成され、かつ前記炭素材料が、触媒成分を担持した触媒担体炭素材料と、触媒成分を担持していないガス拡散炭素材料とからなり、かつ前記触媒担体炭素材料が特性の異なる2種類の炭素材料、触媒担体炭素材料A及び触媒担体炭素材料Bからなる。
本発明の各成分には、それぞれに求められる機能があり、その機能を発現させるため、それぞれが最低限の物質特性を有している必要がある。触媒成分であれば触媒としての機能、電解質材料であればプロトンを伝導する機能、特に、炭素材料は3つ以上の炭素材料に機能分担させているのが本発明の特徴で、触媒担持炭素材料Aであれば触媒成分を担持する機能に加えて水を蓄える機能、触媒担持炭素材料Bであれば触媒成分を担持する機能に加えてガスを効率よく拡散させる機能、ガス拡散炭素材料であればガスを効率よく拡散させる機能、導電助剤炭素材料であれば触媒担体炭素材料の電子伝導性を補完する機能、である。
本発明の触媒層に使用される触媒成分は、求められる反応が触媒成分上で進行すれば限定するものではない。好ましい触媒成分の例としては、白金、パラジウム、ルテニウム、金、ロジウム、オスミウム、イリジウム等の貴金属、これらの貴金属を2種類以上複合化した貴金属の複合体や合金、貴金属と有機化合物や無機化合物との錯体、遷移金属、遷移金属同士あるいは遷移金属と貴金属との複合体や合金、貴金属や遷移金属と有機化合物や無機化合物との錯体、金属酸化物等を挙げることができる。また、これらの2種類以上を複合したもの等も用いることもできる。
本発明に用いられる炭素材料の内、触媒担体炭素材料は、特性の異なる少なくとも2種類の炭素材料、即ち、保水性の高い触媒担体炭素材料A及びストラクチャーの発達した触媒担体炭素材料Bを選択する。さらに本発明の触媒層では、少なくとも2層構造以上を採用し、電解質膜側に接する側の内層に保水性の高い触媒担体炭素材料Aを、この内層を挟んで電解質膜とは反対側の外層にストラクチャーの発達した触媒担体炭素材料Bを含有する触媒層とする。
本発明の触媒層では、内層がプロトン伝導性電解質膜に接する側に接しており、外層がプロトン伝導性電解質膜に接しない側の最外層であれば、3層構造以上であって良い。即ち、内層と外層の中間に1層以上の中間触媒層があって良い。内層と外層が本発明の構成となっていれば限定するものではないが、前記中間触媒層は内層と外層の中間的な性質を持った触媒層であることが好ましく、例えば、中間層に含有する触媒担体炭素材料が触媒担体炭素材料AとBの混合物であったり、中間層が複数層の場合、内層方向から外層方向に向かって、触媒担体炭素材料Aと触媒担体炭素材料Bの質量比率A/(A+B)が減少する構成が好ましい。また、中間層が1層であって中間層中で触媒担体炭素材料Aと触媒担体炭素材料Bの質量比率A/(A+B)が連続的に変化するような構成であっても構わない。
触媒担体炭素材料Aには、触媒成分を担持する機能の他に、乾燥状態でも安定した発電性能を得るために近傍の電解質材料を加湿できる程度の水を蓄えられる機能を有する炭素材料を選択する。特に、水を蓄えられる機能をより効果的に発現させるために、BET評価法による比表面積SBETが1000m2/g以上4000m2/g以下で、かつtプロット解析による直径2nm以下のミクロ孔表面積Smicroと全表面積Stotalの比Smicro/Stotalが0.5以上であることが必要である。ここで、BET評価による比表面積SBETとは、窒素ガスの液体窒素温度での等温吸着線の測定からBET法により求めた比表面積値である。比表面積SBETが1000m2/g以上4000m2/g以下であると、触媒成分が担持し易く、湿潤条件下では触媒担体炭素材料に水を蓄え易くなり、乾燥条件下では蓄えられた水を徐々に放出し、近傍に存在する電解質材料の含水率の低下を防ぐことができるので、電解質材料のプロトン電導性の低下を抑制することができる。1000m2/g未満であると、触媒担体炭素材料が保水できる量が少なくなり、低加湿条件や低負荷運転時のような乾燥条件下では、触媒層中の電解質物質の含水率が低下し、プロトン伝導性に起因する内部抵抗が上昇し易くなる。また、比表面積の上限は特に限定されないが、実質的に利用できる炭素材料の比表面積として4000m2/g以下である。
また、前記触媒担体炭素材料Aに関し、上記のように、tプロット解析による直径2nm以下のミクロ孔表面積Smicroと全表面積Stotalの比Smicro/Stotalが0.5以上であることが必要である。ここで、直径2nm以下の孔として定義されるミクロ孔の比表面積Smicro、及び全表面積Stotalは、窒素ガスの液体窒素温度における等温吸着線から算出されるものであり、t-プロット解析(日本化学会編 コロイド化学I (株)東京化学同人 1995年発行)により算出される値を用いた。ミクロ孔表面積Smicroと全表面積Stotalの比Smicro/Stotalが0.5以上であると、実質的に乾燥条件下での発電性能が更に向上する。詳細なメカニズムは不明ではあるが、直径2nm以下の孔として定義されるミクロ孔は、燃料電池の運転環境において湿潤条件下で水を蓄え易く、乾燥条件下で蓄えていた水を適度に放出する性質を有しており、特に、比表面積SBETが1000m2/g以上4000m2/g以下で、かつSmicro/Stotalが0.5以上であると、触媒成分の担持のし易さが向上すると共に、触媒担持炭素材料が保水できる量、並びに、水の吸放出特性のバランスが良くなり、湿潤条件下でも乾燥条件下でも安定した発電特性が得られると推定している。SmicroがStotalより大きくなることは有り得ないので、Smicro/Stotalの上限は1である。Smicro/Stotalが0.5未満になると、実質的に乾燥条件下での発電性能が低下し、十分な特性が得られない。
本発明に用いられる触媒担体炭素材料Aは、一般的に存在する炭素材料であれば特に限定するものではなく、上述のように比表面積SBETが1000m2/g以上4000m2/g以下で、Smicro/Stotalが0.5以上である炭素材料であれば、好ましい炭素材料として用いることができる。特に、本来求められる反応以外の化学反応を起こしたり、凝縮水との接触によって炭素材料を構成する物質が溶出するような材料は好ましくなく、化学的に安定な炭素材料が好ましい。触媒担体炭素材料Aとしては、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、活性炭等やこれらの粉砕物、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等の炭素化合物等が使用できる。2種類以上を混合して用いることもできる。最も好ましい炭素材料の例として活性炭を挙げることができる。一般に、活性炭はその製造方法に応じて酸素が活性炭の細孔表面に種々の化学的形態で導入される。例示するならば、カルボキシル基、水酸基、キノン型酸素、ラクトン環、環状エーテル等である。本発明者らが鋭意検討した結果、酸素含有量が多過ぎると、燃料電池の触媒層中で長期的に使用されたときに、触媒担体炭素材料A自身が酸化消耗し易く、発電性能の低下につながり易くなる。最適な酸素含有量の範囲は、5質量%以下である。活性炭の酸素含有量が5質量%を超えると、触媒担体炭素材料Aが燃料電池運転環境下で酸化消耗し易くなり、触媒の寿命が低下するため、本発明には適用することができない場合がある。酸素含有官能基の種類は特に限定されるものではない。
さらに、触媒担体炭素材料Aとして、25℃、相対湿度90%における水蒸気吸着量が100mL/g以上である炭素材料を選ぶと、触媒成分近傍にある電解質が適当な湿潤状態を保ち、プロトン伝導性の低下を防ぐことができるため、カソードの触媒成分上で水があまり生成しない低電流放電時にもプロトン伝導抵抗が上昇せず、燃料電池としてより好ましい状態を維持できる。したがって、本発明の触媒担持炭素材料は、水に対して濡れ易いほど良く、25℃、相対湿度90%における水蒸気吸着量の好ましい範囲の上限値を限定することはできない。仮に25℃、相対湿度90%における水蒸気吸着量の実質的な上限値を例示するならば、高比表面積の活性炭で得られると推定される2000mL/g程度を挙げることができる。触媒担持炭素材料の相対湿度90%における水蒸気吸着量が100mL/gより低いと、乾燥条件下で触媒成分近傍にある電解質が乾き易くなり、プロトン伝導性が低下し易くなるため、好ましくない場合がある。さらに好ましくは、触媒担体炭素材料Aの、25℃、相対湿度90%での水蒸気吸着量が400ml/g以上であると、きびしい乾燥状態でも触媒成分近傍にある電解質が適当な湿潤状態を保ち、プロトン伝導性の低下を防ぐことができるため、燃料電池性能の低下を最小限に抑えることが可能となる。
また、燃料電池起動停止時等に、燃料極が空気等の存在によって部分的に水素が欠乏した箇所が存在すると、空気極の電位が上昇し、触媒担体である炭素材料が酸化消耗することが知られているが、本発明の燃料電池の耐久性をさらに強化するためには、触媒担体炭素材料Aの25℃、相対湿度10%における水蒸気吸着量が2ml/g以下であると、上記酸化消耗が抑制され、酸化消耗耐性により優れた触媒とすることができる。触媒担体として用いられる炭素材料の、25℃、相対湿度10%における水蒸気吸着量が2ml/g超であると、上記酸化消耗が著しくなる場合があり、触媒担体の親水性が高まり、排水能が低下する傾向になって、燃料電池性能が低下する場合がある。また、上記酸化消耗に伴って担持されていた触媒が一部脱落する場合や、一部溶出する場合があって、それにより触媒量が減少し、燃料電池性能が低下する場合がある。
相対湿度10%での水蒸気吸着量が2ml/g以下であると、酸化消耗が抑制される物理的根拠は明確ではないが、低い相対湿度での水蒸気吸着は、アグリゲート構造や細孔構造ではなく、表面に吸着している官能基に依存していると考えられ、官能基量と酸化消耗耐性に強い相関があるということは、官能基の種類によってはその存在が酸化消耗を促進し、触媒粒子の脱落や溶出を引き起こしていると推測できる。
触媒担体として用いられる炭素材料の、25℃、相対湿度10%における水蒸気吸着量は、酸化消耗耐性のみを考えるのであれば小さいほど良いが、触媒を担持する際の分散性は官能基の存在によって逆に向上することも考えられるため、触媒担体炭素材料Aの25℃、相対湿度10%における水蒸気吸着量は0.05ml/g以上とすることがより好ましい。
本発明においては、触媒の保湿能力に対応する指標である25℃、相対湿度90%での水蒸気吸着量(V90)が高い値を有すると同時に、触媒担体炭素材料の高い耐酸化消耗性に対応する指標である25℃、相対湿度10%での水蒸気吸着量(V10)が小さい値を有することが、耐久性と触媒の高活性の両立にはより好ましい。鋭意検討の結果、25℃、相対湿度10%での水蒸気吸着量(V10)と25℃、相対湿度90%での水蒸気吸着量(V90)の比であるV10/V90が0.002以下であると、高い耐久性(耐酸化消耗性)と高い保湿能力の両立に好適であることが見出された。さらに好ましくは、0.0018以下である。V10/V90が0.002を超えると、耐久性の低下、あるいは、保湿性能の低下を生じることになる。
本発明で指標となる25℃、相対湿度10%と90%における水蒸気吸着量は、25℃の環境に置かれた炭素材料1g当たりに吸着した水蒸気量を標準状態の水蒸気体積に換算して示した指標である。炭素材料の25℃、相対湿度10%と90%における水蒸気吸着量の測定は、市販の水蒸気吸着量測定装置を用いて測定することができる。本発明における水蒸気吸着量は、水蒸気の蒸気圧0の真空状態から吸着を開始し、水蒸気の相対圧を高めて徐々に炭素材料に水蒸気を吸着させたときの吸着量、いわゆる、等温吸着曲線における相対湿度10%と90%の値を用いたものである。
また、触媒担持炭素材料Aの一次粒子径は5μm以下10nm以上がより好ましい。この範囲より大きな炭素材料は粉砕して用いることができ、粉砕する方が好ましい。一次粒子径が5μm超であると、ガス拡散経路やプロトン伝導経路を分断する恐れが高くなる他、特に経済的な理由により触媒成分の使用量が限定され、例えば、厚さ10μm程度の触媒層で性能を発現することが求められた時に、触媒層の触媒担持炭素材料の分布が不均一になり易く、好ましくない場合がある。また、一次粒子径が10nm未満であると、電子伝導性が低くなり、好ましくない場合がある上、Smicro/Stotalが0.5以上の炭素材料が実質的に得られなくなる場合がある。
触媒担体炭素材料Bには、触媒成分を担持する機能の他に、ガスを効率よく拡散させる機能を有する炭素材料を選択する。特に、ガスを効率良く拡散させる機能をより効果的に発現させるために、ストラクチャーが発達した炭素材料が用いられることが好ましい。このためには、触媒担体炭素材料BのDBP吸油量XmL/100gとBET評価による比表面積SBETとの比X/SBETが、0.2以上3.0以下であることが必要である。好ましい材料の例は、カーボンブラックである。カーボンブラックは、一次粒子が複数個融着し、ストラクチャーと呼ばれる二次構造を形成している。種類によっては、このストラクチャーが発達しており、一次粒子のつながりが空間を抱え込んだ構造になっている。触媒担体炭素材料Bにこのような構造を有している炭素材料を用いると、抱え込んだ空間がガスの拡散経路となったり、水の移動経路となったりするため、好ましい。つまり、触媒担体炭素材料Aは水を蓄え易い特性を持った炭素材料を選択するが、このような特性を持った炭素材料は、ストラクチャーが発達していない場合が多く、触媒担体炭素材料A単独で触媒担体炭素材料を構成させた場合、ガス拡散経路を発達させることが難しい。ストラクチャーの発達した触媒担体炭素材料Bを複合することによって、触媒担体炭素材料Aの近傍にガス拡散経路を発達させることができ、特に高負荷運転時や高加湿条件下でガスの拡散経路が水によって閉塞されることを防ぐことができるため、好ましい。
ストラクチャーの程度は、電子顕微鏡で観察して決定する方法もあるが、DBP吸油量と比表面積の関係で判断できる。
DBP吸油量とは、単位質量のカーボンブラックにフタル酸ジブチルを接触させたときに、カーボンブラックに吸収されるフタル酸ジブチルの量のことであり、主に一次粒子の間隙に吸収されるので、ストラクチャーが発達しているとDBP吸油量は大きくなり、ストラクチャーがあまり発達していないとDBP吸油量は小さくなる傾向にある。但し、DBPは、一次粒子の間隙以外に一次粒子内部に形成された微細孔にも吸収されるので、DBP吸油量がそのままストラクチャーの程度を表すとは限らない。窒素吸着量で測定されるような比表面積が大きくなると、微細孔に吸収されるDBPが多くなり、全体のDBP吸油量も大きくなる傾向にあるためである。したがって、高ストラクチャーカーボンブラックでは、窒素吸着量の割にはDBP吸油量が大きくなり、逆に低ストラクチャーカーボンブラックでは、窒素吸着量の割にDBP吸油量が小さくなる。
触媒担体炭素材料Bに、DBP吸油量XmL/100gとBET評価による比表面積SBETm2/gの比X/SBETが0.2以上3.0以下である炭素材料を用いると、導電経路を確保しつつ、ガス拡散経路や水の移動経路を確保でき、高性能な触媒層を得ることができる。X/SBETの比が0.2未満であると、ガス拡散経路としては空間が貧弱になり、安定して触媒層の性能を引き出すことが難しい。3.0超であると、導電性が損なわれる。
本発明に用いられる触媒担体炭素材料Bは、一般的に存在する炭素材料であれば特に限定するものではなく、上述のようにDBP吸油量XmL/100gとBET評価による比表面積SBETm2/gの比X/SBETが0.2以上3.0である炭素材料であれば、好ましい炭素材料として用いることができる。特に、本来求められる反応以外の化学反応を起こしたり、凝縮水との接触によって炭素材料を構成する物質が溶出するような材料は好ましくなく、化学的に安定な炭素材料が好ましい。触媒担体炭素材料Bとしては、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、活性炭等やこれらの粉砕物、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等の炭素化合物等が使用できる。2種類以上を混合して用いることもできる。最も好ましい炭素材料の例としてカーボンブラックを挙げることができる。
また、触媒担持炭素材料Bの一次粒子径は5μm以下5nm以上がより好ましい。この範囲より大きな炭素材料は粉砕して用いることができ、粉砕する方が好ましい。一次粒子径が5μm超であると、ガス拡散経路やプロトン伝導経路を分断する恐れが高くなる他、特に経済的な理由により触媒成分の使用量が限定され、例えば、厚さ10μm程度の触媒層で性能を発現することが求められた時に、触媒層の触媒担持炭素材料の分布が不均一になり易く、好ましくない場合がある。また、一次粒子径が5nm未満であると、電子伝導性が低くなり好ましくない場合がある。
触媒層中における、触媒担体炭素材料A及びBの触媒層中の好ましい含有率は、触媒担体炭素材料A及びBの種類、ガス拡散炭素材料の種類や含有率、触媒成分の種類や担持率によって影響を受けるので、特定することはできないが、触媒担体炭素材料AとB を合わせた触媒層中の含有率が5質量%以上80質量%以下の範囲であれば、少なくとも燃料電池が機能し、本発明の効果を得ることができる。より好ましい範囲を例示するならば、10質量%以上60質量%以下である。この範囲外であると、他の成分とのバランスが悪くなり、効率の良い燃料電池にならない場合がある。例えば、5質量%未満であると、触媒担体炭素材料AやBの上に担持される触媒成分の量が少なく制限され、十分な性能を発揮しない場合がある。また、例えば、80質量%超であると、電解質材料の量が少なくなり過ぎて、プロトンの伝達経路が貧弱になるため、やはり効率の良い電池にはならない場合がある。
本発明の触媒層中に含有する前記触媒担体炭素材料Aと前記触媒担体炭素材料Bの質量比A/(A+B)は、0.2以上0.95以下の範囲であることが好ましい。前記触媒担体炭素材料Aと前記触媒担体炭素材料Bの質量比A/(A+B)が0.2未満であると、触媒担体炭素材料Aの複合効果が得られ難くなり、低負荷運転時や低加湿条件下で触媒層中の電解質物質の含水率が低下し易くなり、プロトン伝導性に起因する内部抵抗が上昇し易くなり、好ましくない。前記触媒担体炭素材料Aと前記触媒担体炭素材料Bの質量比A/(A+B)が0.95超であると、高負荷運転時や高加湿条件下でガス拡散経路が水によって閉塞され易くなるので好ましくない。
また、保水性の高い触媒担体炭素材料Aを含有する内層には、導電助剤炭素材料を含む。本発明の触媒層で導電助剤炭素材料の種類は、一般的に存在する電子伝導性を有する炭素材料であれば特に限定するものではないが、本来求められる反応以外の化学反応を起したり、凝縮水との接触によって炭素材料を構成する物質が溶出するような材料は好ましくなく、化学的に安定な炭素材料が好ましい。また、前記炭素材料の一次粒子径は1μm以下5nm以上がより好ましい。この範囲より大きな炭素材料は粉砕して用いることができる。一次粒子径が1μm超であると、触媒層中の導電助剤炭素材料の分布が不均一になり易く、好ましくない場合がある。また、一次粒子径が5nm未満であると、電子伝導性が低くなり、好ましくない場合がある。好ましい導電助剤炭素材料としては、カーボンブラックが最も一般的であるが、その他にも、電子伝導性を有するものであれば、黒鉛、炭素繊維、活性炭等やこれらの粉砕物、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等の炭素化合物等が使用できる。また、これらの2種類以上を混合して使用することもできる。中でも、導電助剤炭素材料の電子導電率が、触媒担持炭素材料Aの電子導電率以上であるのがより好ましい(導電助剤炭素材料≧触媒担持炭素材料A)。
本発明の導電助剤炭素材料は、ある程度ストラクチャーが発達した炭素材料が用いられることが好ましい。好ましい材料の例は、カーボンブラックである。カーボンブラックは、一次粒子が複数個融着し、ストラクチャーと呼ばれる二次構造を形成している。種類によっては、このストラクチャーが発達しており、一次粒子のつながりが空間を抱え込んだ構造になっている。導電助剤炭素材料にこのような構造を有している炭素材料を用いると、抱え込んだ空間がガスの拡散経路となったり、水の移動経路となったりするため、好ましい。
導電助剤炭素材料に、DBP吸油量XmL/100gとBET評価による比表面積SBETm2/gの比X/SBETが0.2以上3.0以下である炭素材料を用いると、導電経路を確保しつつ、ガス拡散経路や水の移動経路を確保できるので、より高性能な触媒層を得ることができるので、好ましい。X/SBETの比が0.2未満であると、ガス拡散経路としては空間が貧弱になり、安定して触媒層の性能を引き出すことが難しい場合がある。3.0超であると、導電性が損なわれることがあり、好ましくない場合がある。
本発明の導電助剤炭素材料の触媒層内層中における含有率は、3質量%以上30質量%以下の範囲内にあると、好ましい。この範囲内であれば、触媒担体炭素材料A自身の電子伝導性が劣る場合においても、導電助剤炭素材料が触媒成分から効果的に集電することができる。3質量%未満であると、添加効果が小さく、集電効果が低くなることがある。30質量%以上であると、触媒層内層中の触媒成分密度が下がり過ぎてしまい、特に、カソードガスに空気を用いた場合等に濃度分極が大きくなることがあり、好ましくない場合がある。特に、触媒担体炭素材料Aの質量を1としたときに、導電助剤炭素材料の質量が、0.05以上0.4以下の範囲内にあると、より好ましい。この範囲にあると、湿潤条件下の発電特性と乾燥条件下の発電特性との差が小さくなり、条件に左右され難い安定した特性を発揮することができる。0.05未満であると、内層の電子伝導性が低下するため、内部抵抗が上昇し性能低下する場合がある。0.4超であると、触媒層内層中の触媒成分密度が下がり過ぎてしまい、特にカソードガスに空気を用いた場合等に濃度分極が大きくなることがあり、好ましくない場合がある。
本発明の導電助剤炭素材料の最適な酸素含有量の範囲は、5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。導電助剤炭素材料の酸素含有量が5質量%を超えると、導電助剤炭素材料の集電効果が低下するため、導電助剤炭素材料を使用する効果が得られなくなることがある。酸素含有量の下限値は特になく、殆ど含有する酸素が無くても良好な特性を示す。
本発明のガス拡散炭素材料に用いられる炭素材料の種類は、ガス拡散経路が形成できるものであり、本来求められる反応以外の化学反応を起したり、凝縮水との接触によって炭素材料を構成する物質が溶出するような材料は好ましくなく、化学的に安定な炭素材料である。また、ガス拡散炭素材料の一次粒子径は1μm以下5nm以上が好ましい。この範囲より大きな炭素材料は粉砕して用いることができる。一次粒子径が1μm超であると、ガス拡散経路を確保する機能が期待できなくなる他、触媒層中のガス拡散炭素材料の分布が不均一になり易く、好ましくない場合がある。また、一次粒子径が5nm未満であると、好ましいガス拡散経路が得られない場合がある。好ましいガス拡散炭素材料としては、カーボンブラックが最も一般的であるが、その他にも、ガス拡散経路が形成できれば、黒鉛、炭素繊維、活性炭等やこれらの粉砕物、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等の炭素化合物等が使用できる。また、これらの2種類以上を混合して使用することもできる。更に、本発明では、前記ガス拡散炭素材料同士を凝集させた凝集相として触媒層に存在させると、電解質材料にガス拡散経路を閉塞され辛くなり、触媒層中にガスが拡散し易くなるため好ましい。前記の凝集相によって形成させるガス拡散経路は、セルを強く締結したときにでも壊れ難く、触媒層形成時に制御した最適な孔径を長期間にわたって保持し易い。
本発明のガス拡散炭素材料は、より高ストラクチャーなカーボンブラックを用いるのが好ましい。前記カーボンブラックは、一次粒子が複数個融着し、ストラクチャーと呼ばれる二次構造を形成している。種類によっては、このストラクチャーが発達しており、一次粒子のつながりが空間を抱え込んだ構造になっている。本発明に含まれる触媒層では、ガス拡散炭素材料がこのような空間をつなぎ合わせることによって一次粒子のネットワークに囲まれた空間をガスの拡散経路として連続的に触媒層中に形成させることも狙いの一つとしている。したがって、前記カーボンブラックを使用したガス拡散炭素材料の場合は、ガス拡散炭素材料同士を凝集させるような構造を触媒層に形成し易くなる。前記のガス拡散炭素材料が凝集して形成させたガス拡散経路は、セルを強く締結したときにでも更に壊れ難くなり、触媒層形成時に制御した最適な孔径をより長期間にわたって保持し易い。
本発明のガス拡散炭素材料に、DBP吸油量XmL/100gとBET評価による比表面積SBETm2/gの比X/SBETが1以上である炭素材料を用いると、より好ましいガス拡散経路を具備した触媒層が形成できる。X/SBETの比が1以上であると、高ストラクチャーでカーボンブラックの一次粒子の間隙に形成される空間が大きく、電池反応に好ましいガス拡散経路の形成が期待できるためである。X/SBETの比が1未満であると、ストラクチャーによるガス拡散経路は貧弱になり、カーボンブラックの二次粒子間の間隙が主にガス拡散経路を形成することになるので、十分な孔径を確保できなかったり、セル締結時に孔が壊れ易いため、制御し辛く、安定して触媒層の性能を引き出すことが難しい場合がある。より好ましくは、X/SBETの比が1.5以上である。1.5以上であると、ストラクチャーによって形成されるガス拡散経路の孔径が十分に大きく、高電流を取り出したときもフラッディングし難くなる。このようなストラクチャーであれば、ガスが拡散し易く、水によるガス拡散経路の閉塞が更に起こり辛くなるので、触媒層中の触媒を有効に利用でき、少ない触媒量でも高出力な燃料電池を得ることができる。
また、本発明のガス拡散炭素材料は、水和力の小さい炭素材料の中から選ばれるとより好ましい。触媒成分が担持されていなくて水和力の小さい炭素材料、即ち、ガス拡散炭素材料を触媒層中に含ませることによって、触媒層中にガスが拡散できる経路を発達させることができ、アノードであれば水素あるいは水素を主体とした混合ガス、カソードであれば酸素あるいは空気等が、触媒層中に拡散し易くなり、多くの触媒表面と接触できる。そのため、効率的に触媒層での反応を進行させ、高い電池性能が得られるものである。ガス拡散炭素材料が水和力の小さい炭素材料を選ぶと、運転条件の変動により触媒層が高加湿条件に曝された時や、高電流密度域での運転により触媒層内に大量の水が発生した時に、水によるガス拡散経路の閉塞を防ぎ、電池性能の低下を防ぐことができる。
したがって、本発明の燃料電池に含まれるガス拡散炭素材料の25℃、相対湿度90%における水蒸気吸着量が50mL/g以下の小さい水和力であれば、大電流放電時に生成する水によるガス拡散経路の閉塞を効果的に抑制でき、安定した電圧で電流を取り出すことができる。50mL/g超であると、電流放電時に触媒層中に凝縮水が滞り、ガス拡散経路が遮断され易くなり、電圧挙動が不安定になる場合がある。
さらに高い効果を得るためには、水和力がさらに適切な範囲にある炭素材料をガス拡散炭素材料として用いる。具体的には、25℃、相対湿度90%における水蒸気吸着量が1mL/g以上20mL/g以下である炭素材料を、ガス拡散炭素材料として選択することである。この範囲内であると、触媒層中の電解質材料の過度の乾燥を抑制し、かつ、大電流放電時にも、触媒層内部で生成する水を効率良く触媒層外へ排出し、ガスの拡散経路を確保できるため、低負荷から高負荷まで負荷条件によらず、全域にわたって効率の良い電池を得ることができる。25℃、相対湿度90%における水蒸気吸着量が1mL/g未満であると、水和力が小さ過ぎて(撥水性が強くなり過ぎて)、過度の乾燥を招く場合がある。25℃、相対湿度90%における水蒸気吸着量が20mL/g超になると、大電流を継続的に取り出した時等に触媒層内部で生成する水の排出が追いつかず、ガス拡散経路を遮断してしまう場合がある。この場合には、ガス拡散炭素材料を添加する効果が低くなる。
触媒層中における、本発明に係るガス拡散炭素材料の触媒層中の含有率は、内層及び外層のそれぞれにおいて3質量%以上30質量%以下の範囲内にあると、より好ましい。3質量%未満では、ガス拡散経路を十分に発達させることができず、ガス拡散炭素材料を含ませる効果が期待できないことがある。30質量%超では、プロトン伝導経路がガス拡散炭素材料によって分断され貧弱になり、IRドロップが大きくなるため、電池性能が低下することがある。3質量%以上30質量%以下の範囲内にあれば、ガス拡散炭素材料の間隙が触媒層中にネットワークを形成し、これがガス拡散経路となるため、触媒層中の触媒成分を有効に利用することができる。使用する炭素材料の種類や形態にもよるが、内層及び外層のそれぞれにおいて5質量%以上25質量%以下が最も好ましい。この範囲にあると、プロトン伝導経路と電子伝導経路を損なうことなく、最適なガス拡散経路を発達させることができるため、極めて効率的な発電特性を持った燃料電池の電極を得ることができる。
本発明に含まれる各種炭素材料の水和力の制御は、一般に存在する炭素材料中から水蒸気吸着量を指標に選択することによって達成できる。あるいは、好適な範囲より少ない水蒸気吸着量を持つ炭素材料である場合においても、炭素材料を酸や塩基等で炭素材料表面を処理したり、酸化雰囲気環境に曝したりすることによって、水蒸気吸着量を好適な範囲にまで増加させることができる。限定するものでは無いが、例えば、加温した濃硝酸中で処理したり、過酸化水素水溶液中に浸漬したり、アンモニア気流中で熱処理したり、加温した水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬したり、KOHやNaOHの中で加熱したり、希薄酸素や希薄NO、あるいはNO2中で加熱処理したりすることによって、水蒸気吸着量を増加させることができる。逆に、水蒸気吸着量が多過ぎる場合、不活性雰囲気下で焼成することによって、水蒸気吸着量を好適な範囲にまで低下させることもできる。限定するものではないが、例えば、アルゴン、窒素、ヘリウム、真空等の雰囲気下で加熱処理することによって、水蒸気吸着量を低下させることができる。
本発明の燃料電池は、使用される電解質材料の種類によらず効果を発揮するものであって、使用される電解質材料はプロトンを伝導する機能を有していれば、特に限定されるものではない。本発明の燃料電池に使用される電解質膜や触媒層中に使用される電解質材料は、リン酸基、スルホン酸基等を導入した高分子、例えば、パーフルオロスルホン酸ポリマーやベンゼンスルホン酸が導入されたポリマー等を挙げることができるが、高分子に限定するものではなく、無機系、無機-有機ハイブリッド系等の電解質膜を使用した燃料電池に使用しても差し支えない。特に好適な作動温度範囲を例示するならば、常温〜150℃の範囲内で作動する燃料電池が好ましい。また、触媒層中に含まれる触媒担体炭素材料と電解質材料との質量比は、1/10〜5/1が好ましい。1/10より触媒担体炭素材料が少ないと、触媒表面が電解質材料で過度に覆われてしまい、反応ガスが触媒成分と接触できる面積が小さくなる場合がある。5/1より過剰に触媒担体炭素材料が含有すると、電解質材料のネットワークが貧弱になり、プロトン伝導性が低くなる場合がある。
本発明の触媒層では、内層は、触媒成分と前記触媒担体炭素材料Aと導電助剤炭素材料と電解質材料とを凝集させて形成した触媒凝集相と、ガス拡散炭素材料を主成分として凝集形成したガス拡散炭素材料凝集相と、の2つの凝集相構造とし、前記触媒凝集相が連続体であり、前記ガス拡散炭素材料凝集相が前記触媒凝集相中に分散した構造にすると好ましい。また、外層は、触媒成分と前記触媒担体炭素材料Bと電解質材料とを主成分として、必要に応じて導電助剤炭素材料とこれらを凝集させて形成した触媒凝集相と、ガス拡散炭素材料を主成分として凝集形成したガス拡散炭素材料凝集相と、の2つの凝集相構造とし、前記触媒凝集相が連続体であり、前記ガス拡散炭素材料凝集相が前記触媒凝集相中に分散した構造にすると、単に各成分を平均的に混合した触媒層に比べて飛躍的に特性を向上させることができる。図1及び図2に、本発明に係る前記触媒層の内層(図1)、及び、外層(図2)の構造に関し、模式図を示す。図1及び図2では、各材料や凝集相を模式的に明確に表現しているために、各階層構造の相対サイズは、実際とは異なる。
本発明の触媒層の内層及び外層それぞれが2つの凝集相を持った構造にすることで、第一に、ガス拡散炭素材料を効果的に機能させることができる。即ち、ガス拡散炭素材料の表面にできるだけ触媒成分や電解質材料を接触させないことによって、ガス拡散炭素材料の表面特性やストラクチャーに代表される構造特性を最大限活かすと共に、ガス拡散炭素材料同士を凝集させることによって、ガス拡散炭素材料の間隙にできる気孔をガス拡散経路として連続的に発達させることができる。
第二に、本発明の触媒層の内層及び外層において、触媒成分を担持した触媒担体炭素材料A又はBと導電助剤炭素材料と電解質材料を一つの凝集体(触媒凝集相)に含有させることで、触媒成分上で生成した水が効果的に近傍にある前記電解質材料を湿潤させ、前記電解質材料のプロトン伝導抵抗の上昇を防ぐことができる。また、内層においては、導電助剤炭素材料も共存させているので、高負荷運転時や高加湿条件下で、触媒担体炭素材料Aが水で覆われるような環境下でも、ガスの拡散経路を確保させることができ、触媒担体炭素材料Aに担持された触媒成分上で効果的に反応を進行させることができる。
第三に、本発明の触媒層において、電解質材料を媒体として強固に融着した触媒凝集相を連続相とすることで、触媒層自体の機械的強度を増強し、電解質材料のネットワークを連続化することによって、触媒層における内部抵抗増大の最大の原因となるプロトン伝導抵抗を低減できる。
本発明の触媒層の2つの凝集相構造は、その断面を観察することによっても確認することができる。触媒層の任意の場所に任意の角度で切断面を作製し、その断面を観察することによって、触媒成分が担持されていない炭素材料が凝集体(凝集相)を形成していることを確認する方法である。前記凝集体が、本発明のガス拡散炭素材料凝集相に対応するものである。
触媒層の断面における10μm×10μmの面積の視野中に、円相当直径が300nm以上の大きさの触媒成分を有さない炭素材料凝集相(ガス拡散炭素材料凝集相)が少なくとも1個分散していると好ましい。1個未満では、触媒層形成時に各種炭素材料を平均的に混合してしまったか、触媒成分を担持していない炭素材料であるガス拡散炭素材料の含有率が低過ぎるため、少なくともガス拡散炭素材料が凝集相を形成して分散していないので、その触媒層はガスの伝達経路が未発達でガスの拡散性が悪く、特に高加湿条件下や高負荷運転時で安定した性能を発現することはできない。より好ましくは、同視野中に円相当直径が500nm以上の大きさの触媒成分を有さない炭素材料凝集相(ガス拡散炭素材料凝集相)が少なくとも1個存在することである。前記構造であれば、少なくとも湿潤条件下で発電性能が不安定になることが抑制されて、安定した発電性能が得られる。
触媒層の切断面の形成方法は、特に限定しないが、例えば、触媒層をカッターナイフや鋏で切断したり、電解質物質のガラス転移温度以下に冷却した触媒層を破断し、その断面を観察する方法等を挙げることができる。特に好ましい方法は、クライオミクロトーム等を用いて、液体窒素で冷やされた環境下で触媒層の切断面を形成する方法である。クライオミクロトームを用いて超薄切片を作製し観察する方法も考えられるが、より簡易的にはクライオミクロトームに試料として触媒層をセットし、ダイヤモンドやガラスでできたトリミングナイフを用いて触媒層表面を切削し、生成した切削面を観察する方法である。
観察する方法は、同一視野を二次電子像と反射電子像の両方で観察でき、少なくとも1万倍以上の倍率で観察できる走査型電子顕微鏡が好ましい。二次電子像は、触媒層断面の凹凸情報が反映され、炭素材料や電解質材料、気孔の存在が確認できる。高精度の電子顕微鏡を用いれば触媒成分の存在が確認できるが、同視野の反射電子像を観察すると成分の分布情報が反映され、例えば、触媒成分に金属が使用されている場合、触媒成分は明るく、触媒成分が無いところは暗いコントラストになって、像が得られる。本発明の触媒層の二次電子像と反射電子像を比較すると、同視野中で二次電子像中では炭素材料が存在するにも係わらず、反射電子像中では暗いコントラストになった部分、つまり触媒成分が存在しない炭素材料が認められる。前記部分、即ち、触媒成分を有さない炭素材料部分の外周の円相当直径が300nm以上であると、本発明の好ましい形態となる。
円相当直径が300nm以上の大きさの触媒成分を有さない炭素材料凝集相(ガス拡散炭素材料凝集相)の存在を、より定量的に識別できる例を述べる。反射電子像を1万倍の倍率で272DPI×272DPI以上の解像度で、かつ256段階の階層で明るさを取り込む。取り込んだ画像の明るさを、画像解析ソフトを用いて、暗い方から110階層目の範囲を黒色で表示し、111階層目から明るい方へ256階層目までの範囲を白色になるように二値化する。このままでは、黒色点が島状に孤立した点が多数発生することから、目的とする範囲を明確化するために、各黒色点の膨張処理を1度行い、隣り合った点同士を認識させる。更に、穴埋め処理を実行して、範囲内の空白部分を穴埋めして同一範囲であるように認識させる。最後に、膨張した分を元に戻す縮退処理を行い、目的とする範囲を明確化させる。その上で、各黒色部分の円相当直径を各黒色部分の面積より算出し、300nm未満の部分を全てカットする。残った黒色部分の内、二次電子像で炭素材料が存在する場合、本発明の好ましい形態となる。この様な定量的な解析を行う場合、触媒層のより平均的な断面を解析することが好ましい。例えば、無作為に選択した断面の無作為に選択した視野を5視野程度解析し、その平均値で判断する方法がより好ましい。
本発明では、前記全ての分析手法で触媒成分を有さない炭素材料凝集相(ガス拡散炭素材料凝集相)を観察して本発明の規定範囲を満足する必要はなく、1つの分析手法で得られる値が本発明の規定範囲を満足すれば、その効果が得られるものである。
本発明の燃料電池に含まれる触媒層の作製方法は、触媒担体炭素材料Aを含む内層と触媒担体炭素材料Bを含む外層の二層構造を有していれば、特に限定はしない。特に、内層及び外層のそれぞれの層において、触媒凝集相の連続相にガス拡散炭素材料凝集相が分散し、かつ、ガス拡散炭素材料表面にできるだけ電解質材料が吸着しないように作製できれば、好ましい。例えば、内層及び外層それぞれに含有する材料を含む液をそれぞれ別に作成し、必要に応じて水や有機溶媒を加えて、2種類のインクを作製する。これら2種のインクを用いそれぞれを膜状に乾燥し、積層して2層構造の触媒層を形成する方法、1種目のインクを膜状に乾燥した後、2種目のインクを用いて1種目の触媒層の上に膜状に乾燥し2層構造の触媒層を形成する方法等を選択することができる。
内層又は外層の特に好ましいインクの作製方法を以下に述べる。
(i) 触媒成分を担持した触媒担体炭素材料A、又は触媒成分を担持した触媒担体炭素材料Bと、(内層の場合は導電助剤炭素材料と、)電解質材料とを、電解質材料に対する良溶媒中で粉砕混合した後に、電解質材料に対する貧溶媒を加え、電解質材料と、触媒成分を担持した触媒担体炭素材料と、(内層の場合は導電助剤炭素材料)を、凝集させて得られるA液と、触媒成分を担持していないガス拡散炭素材料を、電解質材料に対する貧溶媒中で粉砕して得られるB液を作成し、A液とB液を混合して得られるC液をインクとする。
この方法では、触媒成分を担持した触媒担体炭素材料A、又は触媒成分を担持した触媒担体炭素材料Bと、(内層の場合は導電助剤炭素材料と、)電解質材料を、共に電解質材料に対する良溶媒中で粉砕混合すると、触媒担体炭素材料A又はBと、(内層の場合は導電助剤炭素材料と)が、微細な凝集体に混合粉砕され、その表面近傍に電解質材料が溶解して存在している状態になる。これに電解質材料に対する貧溶媒を加え電解質材料を析出させると、触媒を担持した触媒担体炭素材料A又はBと、(内層の場合は導電助剤炭素材料と、)電解質材料粒子が凝集を起こし、電解質材料が触媒を担持した触媒担体炭素材料A又はBに、(内層の場合は導電助剤炭素材料にも)固定される。さらに、この溶液に微細なガス拡散炭素材料が添加されると、電解質材料は触媒担体炭素材料に固定されているため、ガス拡散炭素材料表面が電解質材料によって覆われ難く、ガス拡散炭素材料の表面が本来持ち合わせている表面性状を活かすことができる。即ち、本発明の触媒凝集相とガス拡散炭素材料凝集相との2つの凝集相の構造となり、前記触媒凝集相が連続体で、前記ガス拡散炭素材料凝集相が前記触媒凝集相中に分散した構造となる。特に、表面の水和性を制御したガス拡散炭素材料を使用する場合、この方法は有効である。また、A液とB液を混合する方法を変化させることで、ガス拡散炭素材料凝集相の分散状態(形状やサイズ)を制御することができる。
(ii) 触媒成分を担持した触媒担体炭素材料A又はBと微量の電解質材料を、電解質材料に対する良溶媒中で粉砕混合した後に乾燥によって固化し、前記固化物に、(内層の場合は導電助剤炭素材料を加え、)電解質材料に対する貧溶媒と共に粉砕した後、さらに電解質材料が溶解した液を滴下して得られるA液と、触媒成分を担持していないガス拡散炭素材料を、電解質材料に対する貧溶媒中で粉砕して得られるB液を作成し、A液とB液を混合して得られるC液をインクとして、膜状に乾燥して触媒層とする。
この方法では、触媒成分を担持した触媒担体炭素材料A又はBを微量の電解質材料と共に電解質材料の良溶媒中で粉砕混合した後に乾燥すると、微量の電解質材料が触媒成分を担持した触媒担体炭素材料表面に膜状に固定される。前記乾燥によって得られる固形物(微量の電解質材料が固定された触媒担体炭素材料A又はB)を、(内層の場合は導電助剤炭素材料と共に)電解質材料に対する貧溶媒中で粉砕すると、電解質材料は、触媒成分を担持した触媒担体炭素材料に固定されたまま微粒化する。さらに、前記懸濁液に、必要十分な電解質溶液を滴下して、電解質材料を析出させ、電解質材料が僅かに固定された触媒担体炭素材料A又はBと(内層の場合は導電助剤炭素材料と)析出した電解質材料とが凝集した分散液が生成する。前記分散液に、ガス拡散炭素材料が添加されると、(i)の方法と同様に、電解質材料は触媒を担持した触媒担体炭素材料(内層の場合は導電助剤炭素材料と)の表面に固定又は凝集しているため、ガス拡散炭素材料表面が電解質材料によって覆われ難く、ガス拡散炭素材料の表面が本来持ち合わせている表面性状を活かすことができる。即ち、本発明の触媒凝集相とガス拡散炭素材料凝集相との2つの凝集相の構造となり、前記触媒凝集相が連続体で、前記ガス拡散炭素材料凝集相が前記触媒凝集相中に分散した構造となる。この方法も、特に表面の水和性を制御したガス拡散炭素材料を使用する場合に有効である。また、A液とB液を混合する方法を変化させることで、ガス拡散炭素材料凝集相の分散状態(形状やサイズ)を制御することができる。
これらの触媒層作製方法で使用する、電解質材料に対する良溶媒とは、実質的に使用する電解質材料を溶解する溶媒のことであり、電解質材料の種類や分子量によるため限定はできないが、具体例を例示すれば、市販されているアルドリッチ製5%ナフィオン(登録商標)溶液に含まれるパーフルオロスルホン酸ポリマーに対する良溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を挙げることができる。
また、これらの好ましい触媒層作製方法で使用する、電解質材料に対する貧溶媒とは、実質的に使用する電解質材料を溶解しない溶媒のことであり、電解質材料の種類や分子量により、溶媒が異なるため、特定することはできない。例えば、市販されているアルドリッチ製5%ナフィオン溶液に含まれるパーフルオロスルホン酸ポリマーに対する貧溶媒を例示するならば、ヘキサン、トルエン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル等を挙げることができる。
上述した(i)あるいは(ii)の好ましい触媒層作製方法の中で、粉砕あるいは粉砕混合する方法としては、大きな凝集体となっている触媒担体炭素材料やガス拡散炭素材料を粉砕し、少なくとも1μm以下の凝集体に粉砕する目的を果たすことができれば、手段は限定しない。一般的な手法としては、例を挙げるならば、超音波を利用する方法、ボールミルやガラスビーズ等を用いて機械的に粉砕する方法等を挙げることができる。
本発明の燃料電池にガス拡散層を使用する場合は、セパレーターに形成されたガス流路から触媒層までガスを均一に拡散させる機能と、触媒層とセパレーター間に電子を伝導する機能が求められ、最低限、これらの機能を有していれば特に限定するものではない。一般的な例では、カーボンクロスやカーボンペーパー等の炭素材料が主な構成材料として用いられる。ガスの拡散性、電子伝導性の他、耐食性も付与できるのであれば、金属メッシュや金属ウール等の金属材料を用いることもできる。
好ましいガス拡散層の構造の例としては、ガス拡散層のセパレーター側の層が繊維状炭素材料を主成分とするガス拡散繊維層、触媒層側の層にはカーボンブラックを主成分とするマイクロポア層で構成される2層構造を挙げることができる。
前記インクを膜状に乾燥する方法としては、一般に提案されている方法が適用でき、特に限定しない。
例えば、ガス拡散層上にインクを塗布するならば、刷毛塗り、スプレー、ロールコーター、インクジェット、スクリーンプリント等の方法が挙げることができる。あるいは、インクをバーコーター、刷毛塗り、スプレー、ロールコーター、インクジェット、スクリーンプリント等の方法で塗布、乾燥して、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートやPTFE板等、高分子材料の表面に一旦別の材料上に触媒層を形成した後、ガス拡散層へホットプレス等の方法で接合し、ガス拡散電極を形成する方法を選択することもできる。
このように作製したガス拡散電極は、パーフルオロスルホン酸ポリマーのような電解質膜にホットプレス等で圧着し、電解質膜と電極の複合体(Membrane Electrode Assembly, MEA)を形成することができる。
又は、インクをPTFEシートやPTFE板等の高分子材料に刷毛塗り、スプレー、ロールコーター、インクジェット、スクリーンプリント等の方法で塗布、乾燥して、一旦別の材料上に触媒層を形成した後、パーフルオロスルホン酸ポリマーのような電解質膜へホットプレス等の方法で接合する方法や、パーフルオロスルホン酸ポリマーのような電解質膜にインクを直接塗布、乾燥する方法等で、触媒層と電解質膜の接合体を作製した後、ガス拡散層をホットプレス等の方法で触媒層に圧着する方法等でも、MEAを形成することができる。
以上のように作製したMEAは、一般的には、その外側にセパレーターを配置して単位セルを構成し、これを必要な出力に合わせてスタックし、燃料電池として用いることができる。
<炭素材料の物性測定>
本発明のガス拡散電極、並びに燃料電池の実施例を示すに当たり、使用する炭素材料として11種の炭素材料a〜kを準備した。表1(炭素材料の種類とその物性)に、各種炭素材料の各種物性を示した。
なお、窒素吸着比表面積は、120℃で真空乾燥したサンプルを自動比表面積測定装置(日本ベル製、BELSORP36)を用いて窒素ガスにて測定し、BET法に基づく1点法にて比表面積SBETを決定した。また、tプロット解析は装置に付属の解析プログラムを使用してStotal及びSmicroの物性値を算出した。酸素含有量は、元素分析値である。水蒸気吸着量は、定容量式水蒸気吸着装置(日本ベル製、BELSORP18)を用いて測定し、120℃、1Pa以下で2時間脱気前処理を行った試料を25℃の恒温中に保持し、真空状態から、25℃における水蒸気の飽和蒸気圧までの間、徐々に水蒸気を供給して段階的に相対湿度を変化させ、水蒸気吸着量を測定した。得られた測定結果から吸着等温線を描き、図から相対湿度90%のときの水蒸気吸着量を読み取った。表1では、読み取った水蒸気量を試料1g当たりに吸着した標準状態の水蒸気体積に換算して示した。DBP吸油量は、アブソープトメーター(Brabender社製)を用いて、最大トルクの70%の時のDBP添加量を試料100g当たりのDBP吸油量に換算して決定した。
<白金触媒の調製>
塩化白金酸水溶液中に、触媒担体炭素材料として表1の炭素材料の中から選択した1種を分散し、50℃に保温し、撹拌しながら過酸化水素水を加え、次いでNa2S2O4水溶液を添加して、触媒前駆体を得た。この触媒前駆体を濾過、水洗、乾燥した後に100%H2気流中、300℃で3時間、還元処理を行い、触媒担体炭素材料に白金金属が50質量%担持された白金触媒を調製した。
<標準の塗布インク作製方法>
触媒担体炭素材料AまたはBとして1種の炭素材料を選択し、<白金金属を担持した触媒担体炭素材料の調製>の手順で白金金属を担持した調製した白金触媒を容器に取り、内層触媒層の塗布インクの場合はさらに導電助剤炭素材料を表1から1種選択し容器に加えた。これに5%ナフィオン溶液(デュポン製DE521)を加え、軽く撹拌後、超音波で触媒を粉砕した。さらに、撹拌しながら酢酸ブチルを加え、白金金属と触媒担体炭素材料A又はB、内層の場合は導電助剤炭素材料、ナフィオンを合わせた固形分濃度が2質量%となるようにし、2種の白金触媒とナフィオン(電解質)とが凝集した触媒凝集インクを調製した。特に記述がない限り、内層の場合は触媒担体炭素材料A及び導電助剤炭素材料の合計を1質量部、外層の場合は触媒担体炭素材料Bを1質量部として、ナフィオンを1.5質量部の割合で混合した。
また、別の容器にガス拡散炭素材料として表1の炭素材料の中から選択した1種を取り、炭素材料の濃度が2質量%になるように酢酸ブチルを加え、超音波で炭素材料を粉砕し、ガス拡散炭素材料が凝集したガス拡散炭素材料凝集インクを調製した。
次に、触媒凝集インクとガス拡散炭素材料凝集インクを混合し、固形分濃度が2質量%の塗布インクを作成した。
<触媒層作製方法>
まず最初に、外層用塗布インクをテフロン(登録商標)シートにスプレーした後、アルゴン中80℃で10分間乾燥し、室温まで冷却して外層触媒層を形成した。次に、内層用塗布インクを外層触媒層上にスプレーし、アルゴン中80℃で10分間乾燥し、続いてアルゴン中120℃で60分間乾燥し、内層と外層の2層構造を持った触媒層を作製した。
触媒層の白金目付け量及び内層と外層の比率は、外層触媒層作製後、及び内層触媒層作製後それぞれで、作製したテフロン(登録商標)シート上の触媒層を3cm角の正方形に切り取って質量を測定し、その後、触媒層をスクレーパーで剥ぎ取った後のテフロン(登録商標)シート質量を測定し、先の質量との差分から剥ぎ取った触媒層質量を算出し、触媒インク中の固形分中の白金が占める割合から白金目付け量を計算により求め、白金目付け量が0.10mg/cm2で、かつ狙いの内層と外層の比率になるようにスプレー量を調整した。
<MEAの作製>
作製した触媒層を用いてMEA(膜電極複合体)を作製した。
ナフィオン膜(デュポン社製N112)は6cm角の正方形に切り取り、テフロン(登録商標)シート上に塗布された触媒層は、カッターナイフで2.5cm角の正方形に切り取った。これらの触媒層をアノード及びカソードとして、ナフィオン膜の中心部にずれが無いように挟み、120℃、100kg/cm2で10分間プレスした。室温まで冷却後、アノード、カソード共にテフロン(登録商標)シートのみを注意深く剥がし、アノード及びカソードの触媒層をナフィオン膜に定着させた。次に、ガス拡散層として市販のカーボンクロス(E-TEK社製LT1200W)を2.5cm角の正方形に切り取り、アノードとカソードにずれが無いように挟み、120℃、50kg/cm2で10分間プレスし、MEAを作成した。なお、プレス前の触媒層付テフロン(登録商標)シートの質量とプレス後に剥がしたテフロン(登録商標)シートの質量との差から定着した触媒層の質量を求め、触媒層の組成の質量比より白金目付け量を算出し、0.1mg/cm2であることを確認した。
<燃料電池性能評価条件>
作製したMEAは、それぞれセルに組み込み燃料電池測定装置にて、燃料電池性能評価を次の手順で行った。
最初に、以下の条件を「高加湿高負荷」の代表的な条件として、性能評価を行った。ガスは、カソードに空気、アノードに純水素を、利用率がそれぞれ35%と70%となるように供給し、それぞれのガス圧は、セル下流に設けられた背圧弁で圧力調整し、0.1MPaに設定した。セル温度は80℃に設定し、供給する空気と純水素は、それぞれ80℃に保温された蒸留水中でバブリングを行い、加湿した。このような条件でセルにガスを供給した後、1000mA/cm2まで負荷を徐々に増加して、1000mA/cm2で負荷を固定し、60分経過後のセル端子間電圧を「高加湿高負荷」性能として記録した。
次に、以下の条件を「低加湿低負荷」の代表的な条件として、性能評価を行った。ガスは、カソードに空気、アノードに純水素を、利用率がそれぞれ35%と70%となるように供給し、それぞれのガス圧は、セル下流に設けられた背圧弁で圧力調整し、0.1MPaに設定した。セル温度は80℃に設定し、供給する空気と純水素は、それぞれ40℃に保温された蒸留水中でバブリングを行い、加湿した。このような条件でセルにガスを供給した後、1000mA/cm2まで負荷を徐々に増加して、1000mA/cm2で負荷を固定し、30分経過後に100mA/cm2に負荷を下げ、10分経過後のセル端子間電圧を「低加湿低負荷」性能として記録した。
<性能比較1>
まず、表2に示したとおり、触媒担体炭素材料Aに表1のj、導電助剤炭素材料Yに表1のe、ガス拡散炭素材料に表1のa、を内層の触媒層にそれぞれ選択し、触媒担体炭素材料Bに表1のh、ガス拡散炭素材料に表1のa、を外層の触媒層にそれぞれ選択した2層構造触媒層を用い、比較を行った。
なお、比較例1は、触媒担体炭素材料Aとして表1のj、触媒担体炭素材料Bとして表1のh、導電助剤炭素材料Yとして表1のe、ガス拡散炭素材料として表1のa、電解質材料として5%ナフィオン溶液(デュポン製DE521)を混合し、エタノールで希釈して固形分濃度が2質量%の塗布インクを作成し、超音波で炭素材料を粉砕した後、各成分が均一混合された塗布インクを作成し、これを用いて内層、外層が無い一層で、かつ凝集相構造を持たない触媒層を作製し、評価に用いた。
また、比較例2は、触媒担体炭素材料Aとして表1のj、導電助剤炭素材料Yとして表1のe、ガス拡散炭素材料として表1のa、電解質材料として5%ナフィオン溶液(デュポン製DE521)を混合し、固形分濃度が2質量%になるようにエタノールで希釈し、超音波で炭素材料を粉砕した後、各成分が均一混合された内層用塗布インクを作成し、触媒担体炭素材料Bとして表1のh、ガス拡散炭素材料として表1のa、電解質材料として5%ナフィオン溶液(デュポン製DE521)を混合し、固形分濃度が2質量%になるようにエタノールで希釈し、超音波で炭素材料を粉砕した後、各成分が均一混合された外層用塗布インクを作製した。触媒層は、これら2種類の塗布インクを用いて、<触媒層作製方法>に記述した方法で凝集相構造を持たない2層構造触媒層を作製し、評価に用いた。
さらに、実施例1及び比較例3〜8には、上記の<標準の塗布インク作製方法>に倣って、内層用塗布インクと外層用塗布インクを作製し、触媒層は、これら2種類の塗布インクを用いて、<触媒層作製方法>に記述した方法で作製し、触媒成分を担持した触媒担体炭素材料Aと導電助剤炭素材料と電解質材料とからなる触媒凝集相と、ガス拡散炭素材料凝集相とからなって、前記触媒凝集相中に前記ガス拡散炭素材料凝集相が分散させた構造となった内層触媒層と、触媒成分を担持した触媒担体炭素材料Bと電解質材料とからなる触媒凝集相と、ガス拡散炭素材料凝集相とからなって、前記触媒凝集相中に前記ガス拡散炭素材料凝集相が分散させた構造となった外層触媒層の2層構造触媒層を作製し、評価に用いた。なお、比較例3〜8は、炭素材料のいずれか、又は複数種が欠落した触媒層を作製した。
これらの触媒層をカソードしたときの発電性能を比較した。なお、アノードには全て実施例1の触媒層を用いた。
まず、上記性能比較で作製した触媒層の内、2層構造を有しかつ2相凝集構造を有する実施例1、前記のような2層構造及び2相凝集構造のいずれも有さない比較例1、及び、2層構造は有するが2相凝集構造を有さない比較例2の触媒層の断面構造観察を行った。
観察試料には、性能比較で用いたMEAを性能評価を実施した後にセルから取り出し、ピンセットを用いてガス拡散層を注意深く剥がした。次に、ガス拡散層を剥がしたMEAをカッターナイフで5mm角程度の大きさで切り出し、カソードの触媒層が切削できるように、クライオミクロトームのホルダーにカーボンテープで固定した。作製したホルダーをクライオミクロトームにセットし、ナイフにはダイアモンドトリミングナイフをセットした。このとき、ダイアモンドトリミングナイフをナイフの進行方向に対して10度程度角度をつけ、触媒層が斜めに切削されるようにした。切削温度を−90℃、触媒層の深さ方向に1回当たり50nmの厚みで、少なくとも100回切削し、触媒層の切断面を作製した。これら切断面を作製した触媒層は、ホルダーごと電子顕微鏡ホルダーにセットし、1万倍の倍率で2次電子像と反射電子像を観察した。
まず、2次電子像から、実施例1及び比較例2の触媒層は、構成する炭素材料の形状の違いにより、明確に2層構造を形成していることが判別できた。これに対し、比較例1は、複数の炭素材料形状で構成されていることは確認できるものの均一に分散しており、1層構造であることが確認できた。
また、比較例1及び比較例2の触媒層は、2次電子像から電解質材料が固まりを作っていると推定される場所以外は、反射電子像が一様に明るいコントラストとなって観察され、触媒成分が担持されていない炭素材料の凝集相(ガス拡散炭素材料凝集相)は見られなかった。それに対して、実施例1の触媒層では、内層及び外層共に、2次電子像で明らかに炭素材料が存在すると判別できる箇所の内、反射電子像では暗いコントラストとなっている箇所、つまり触媒成分が担持されていない炭素材料の凝集相(ガス拡散炭素材料凝集相)が、島状に分布している様子が観察できた。より定量的に識別するために、内層の1部分を1万倍の倍率で272DPI×272DPI以上の解像度で、かつ256色の階層で明るさで反射電子像を電子情報として取り込み、取り込んだ画像の明るさを画像解析ソフトを用いて、暗い方から110階層目の範囲を黒色で表示し、111階層目から明るい方へ256階層目までの範囲を白色になるように二値化した。次に、各黒色点の膨張処理を1度行い、隣り合った点同士を認識させた。更に穴埋め処理を実行して、範囲内の空白部分を穴埋めして同一範囲であるように認識させた。最後に、膨張した分を元に戻す縮退処理を行い、目的とする範囲を明確化させた。その上で、各黒色部分の円相当直径を各黒色部分の面積より算出し、300nm未満の部分を全てカットした。残った黒部分の内、同視野の二次電子像で炭素材料が存在する黒部分の個数を計測すると8個であった。さらに黒部分の円相当直径が500nm以下のものを削除しても、残った黒部分の内、同視野の二次電子像で炭素材料が存在する黒部分の個数を計測すると3個であった。外層も同様に解析したところ、円相当直径が300nm以上のものが3個であった。
表1に示したとおり比較例1, 2及び実施例1を比較すると、内層及び外層共に凝集相構造を持つ2層構造触媒層を用いた実施例1が最も優れた特性を示し、内層、外層が無く、かつ凝集相構造を持たない触媒層を用いた比較例1、及び、内層、外層はあるが、それぞれが凝集相構造を持たない触媒層を用いた比較例2は、実施例1と比較して高加湿高負荷条件、低加湿低負荷条件共に特性が低かった。
また、内層及び外層共に凝集相構造を持つ2層構造触媒層を用いた実施例1、及び比較例3〜8を比較すると、内層に触媒担体炭素材料A、導電助剤炭素材料、及びガス拡散炭素材料を含有し、外層に触媒担体炭素材料B、及びガス拡散炭素材料を含有する実施例1が最も優れた特性を示し、実施例1と比較して内層又は外層の炭素材料のうち少なくとも1種類が欠落した比較例3〜8は、実施例1よりも低い特性となった。
<性能比較2>
表3に示したとおり、触媒担体炭素材料Aに表1のa〜k、導電助剤炭素材料Yに表1のe、ガス拡散炭素材料に表1のaを内層の触媒層にそれぞれ選択し、触媒担体炭素材料Bに表1のh、ガス拡散炭素材料に表1のaを外層の触媒層にそれぞれ選択した2層構造触媒層を用いて、内層の触媒担体炭素材料Aの種類が異なったときの比較を行った。
触媒層は、上記の<標準の塗布インク作製方法>に倣って、内層用塗布インクと外層用塗布インクを作製し、これら2種類の塗布インクを用いて<触媒層作製方法>に記述した方法で作製した。作製した触媒層は、内層及び外層がそれぞれ凝集相構造を持っており、これらの触媒層をカソードしたときの発電性能を比較した。なお、アノードには全て実施例1の触媒層を用いた。
表3に示したとおり、BET評価による比表面積SBETが1000m2/g以上4000m2/g以下で、かつtプロット解析による直径2nm以下のミクロ孔表面積Smicroと全表面積Stotalの比Smicro/Stotalが0.5以上である本発明の触媒担体炭素材料Aを使用した実施例1〜5は、高加湿高負荷条件、低加湿低負荷条件共に優れた性能を示した。中でも、25℃、相対湿度90%における水蒸気吸着量が100mL/g以上である炭素材料h、i、j、kを触媒担体炭素材料Aとして使用した実施例1及び3〜5は、低加湿低負荷条件においても極めて優れた特性を示した。
それに対し、BET評価による比表面積SBETが1000m2/g未満であるか、ミクロ孔表面積Smicroと全表面積Stotalの比Smicro/Stotalが0.5未満ある炭素材料を触媒担体炭素材料Aとした比較例9〜14は、特に低加湿低負荷の特性が悪い結果となった。
<性能比較3>
表4に示したとおり、触媒担体炭素材料Aに表1のj、導電助剤炭素材料Yに表1のe、ガス拡散炭素材料に表1のa、を内層の触媒層にそれぞれ選択し、触媒担体炭素材料Bに表1のa〜j、ガス拡散炭素材料に表1のa、を外層の触媒層にそれぞれ選択した2層構造触媒層を用いて、外層の触媒担体炭素材料Bの種類が異なったときの比較を行った。
触媒層は、上記の<標準の塗布インク作製方法>に倣って、内層用塗布インクと外層用塗布インクを作製し、これら2種類の塗布インクを用いて、<触媒層作製方法>に記述した方法で作製した。作製した触媒層は、内層及び外層がそれぞれ凝集相構造を持っており、これらの触媒層をカソードしたときの発電性能を比較した。なお、アノードには全て実施例1の触媒層を用いた。
表4に示したとおり、DBP吸油量XmL/100gとBET評価による比表面積SBETとの比X/SBETが、0.2以上3.0以下である本発明の触媒担体炭素材料Bを使用した実施例1及び6〜9は、高加湿高負荷条件、低加湿低負荷条件共に優れた性能を示した。
それに対し、DBP吸油量XmL/100gとBET評価による比表面積SBETとの比X/SBETが、0.2以上3.0以下の範囲外にある炭素材料を触媒担体炭素材料Bとした比較例15〜19は、特に高加湿高負荷の特性が悪い結果となった。
<性能比較4>
表5に示したとおり、触媒担体炭素材料Aに表1のj、導電助剤炭素材料Yに表1のa〜j、ガス拡散炭素材料に表1のa、を内層の触媒層にそれぞれ選択し、触媒担体炭素材料Bに表1のh、ガス拡散炭素材料に表1のa、を外層の触媒層にそれぞれ選択した2層構造触媒層を用いて、内層の導電助剤炭素材料Yの種類が異なったときの比較を行った。また、導電助剤炭素材料Yが表1のeのときに、導電助剤炭素材料Yの触媒担体炭素材料Aに対する質量比Y/(A+Y)を変化させたときの比較も行った。
触媒層は、上記の<標準の塗布インク作製方法>に倣って、内層用塗布インクと外層用塗布インクを作製し、これら2種類の塗布インクを用いて、<触媒層作製方法>に記述した方法で作製した。作製した触媒層は、内層及び外層がそれぞれ凝集相構造を持っており、これらの触媒層をカソードしたときの発電性能を比較した。なお、アノードには、全て実施例1の触媒層を用いた。
導電助剤炭素材料Yの触媒担体炭素材料Aに対する質量比Y/(A+Y)を0.2に固定して、導電助剤炭素材料Yの種類を変化させた実施例10〜13, 1, 20〜24を比較すると、DBP吸油量XmL/100gとBET評価による比表面積SBETとの比X/SBETが、0.2以上3.0以下である炭素材料a、b、c、e、hを導電助剤炭素材料Yとして使用した実施例1, 10〜12, 22は、高加湿高負荷条件、低加湿低負荷条件共に優れた性能を示した。
それに対し、DBP吸油量XmL/100gとBET評価による比表面積SBETとの比X/SBETが、0.2以上3.0以下の範囲外にある炭素材料d、f、g、i、jを導電助剤炭素材料Yとした実施例13、20、21、23、24は、高加湿高負荷条件、低加湿低負荷条件共に、X/SBETが0.2以上3.0以下の範囲内にあるものより特性が低い結果となった。
また、導電助剤炭素材料Yの種類を表1のeとして、導電助剤炭素材料Yの触媒担体炭素材料Aに対する質量比Y/(A+Y)を変化させた実施例1, 14〜19を比較すると、質量比Y/(A+Y)が0.05以上0.4以下である実施例1, 15〜18は、質量比Y/(A+Y)が0.05未満、または0.4超である実施例14および19よりも優れた特性を示した。
<性能比較5>
表6に示したとおり、触媒担体炭素材料Aに表1のj、導電助剤炭素材料Yに表1のe、ガス拡散炭素材料に表1のa、を内層の触媒層にそれぞれ選択し、触媒担体炭素材料Bに表1のh、ガス拡散炭素材料に表1のa、を外層の触媒層にそれぞれ選択した2層構造触媒層を用いて、内層と外層それぞれに含まれる触媒担体炭素材料Aと触媒担体炭素材料Bの質量比A/(A+B)を変化させたときの比較を行った。また、質量費A/(A+B)が0.7のときに内層及び外層に含まれるガス拡散炭素材料のそれぞれの層中での含有質量率を変化させたときの比較も行った。
触媒層は、上記の<標準の塗布インク作製方法>に倣って、内層用塗布インクと外層用塗布インクを作製し、これら2種類の塗布インクを用いて、<触媒層作製方法>に記述した方法で作製した。作製した触媒層は内層及び外層がそれぞれ凝集相構造を持っており、これらの触媒層をカソードしたときの発電性能を比較した。なお、アノードには全て実施例1の触媒層を用いた。
内層及び外層のガス拡散炭素材料の含有率が10質量%のときの実施例25〜28, 1, 39〜41を比較すると、触媒担体炭素材料Aと触媒担体炭素材料Bの質量比A/(A+B)が0.2以上0.95以下である実施例26〜28, 1, 39, 40は、質量比A/(A+B)が0.2未満の実施例25、又は質量比A/(A+B)が0.95超の実施例41と比較して、全て高加湿高負荷条件、低加湿低負荷条件共に優れた性能を示した。また、触媒担体炭素材料Aと触媒担体炭素材料Bの質量比A/(A+B)が0.70で、内層のガス拡散炭素材料の含有率を変化させた実施例1、29〜33を比較すると、ガス拡散炭素材料の内層触媒層中の含有率が3質量%以上30質量%以下の範囲内にある実施例1, 30〜32は、高加湿高負荷条件、低加湿低負荷条件共に優れた性能を示した。特に、ガス拡散炭素材料の内層触媒層中の含有率が5質量%以上25質量%以下の範囲内にある実施例1, 30, 31は、高加湿高負荷条件、低加湿低負荷条件において、バランスの取れた特性を示した。また、触媒担体炭素材料Aと触媒担体炭素材料Bの質量比A/(A+B)が0.70で、外層のガス拡散炭素材料の含有率を変化させた実施例1, 34〜38を比較すると、ガス拡散炭素材料の外層触媒層中の含有率が3質量%以上30質量%以下の範囲内にある実施例1, 35〜37は、高加湿高負荷条件、低加湿低負荷条件共に優れた性能を示した。特に、ガス拡散炭素材料の内層触媒層中の含有率が5質量%以上25質量%以下の範囲内にある実施例1, 35, 36は、高加湿高負荷条件、低加湿低負荷条件において、バランスの取れた特性を示した。
<耐久性能試験>
<性能比較2>で優れた特性を示した実施例で、触媒担体炭素材料Aに使用した炭素材料h、i、j、kについて水蒸気吸着量V10、V90、V10/V90の値を表7に示した。また、これらの炭素材料h、i、j、kを用いて白金を担持した触媒H、I、J、Kを以下の方法で作製した。蒸留水中に塩化白金酸水溶液とポリビニルピロリドンを入れ、90℃で攪拌しながら、水素化ホウ素ナトリウムを蒸留水に溶かした上で、これを該水溶液に注ぎ、塩化白金酸を還元する。その水溶液に炭素材料h、i、j、kをそれぞれ添加し、60分間撹拌した後に、濾過、洗浄を行った。得られた固形物を90℃で真空乾燥した後、粉砕して、水素雰囲気中250℃で1時間熱処理することによって、触媒H、I、J、Kを作製した。尚、触媒の白金担持量は50質量%になるように調製した。
炭素材料の水蒸気吸着量は、定容量式水蒸気吸着装置(日本ベル製、BELSORP18)を用いて測定し、120℃、1Pa以下で2時間脱気前処理を行った試料を25℃の恒温中に保持し、真空状態から、25℃における水蒸気の飽和蒸気圧までの間、徐々に水蒸気を供給して段階的に相対湿度を変化させ、水蒸気吸着量を測定した。得られた測定結果から吸着等温線を描き、図から相対湿度10%と90%のときの水蒸気吸着量をそれぞれV10およびV90として読み取った。表10では、読み取った水蒸気量を試料1g当たりに吸着した標準状態の水蒸気体積に換算して示した。
白金粒子の粒子径は、X線回折装置(理学電機製)を用いて得られた触媒の粉末X線回折スペクトルの白金(111)ピークの半値幅からScherrerの式によって見積った。
表7の触媒H、I、J、Kを触媒担体炭素材料Aとして用いて、導電助剤炭素材料Yに表1のe、ガス拡散炭素材料に表1のaを内層の触媒層にそれぞれ選択し、触媒担体炭素材料Bに表1のh、ガス拡散炭素材料に表1のaを外層の触媒層にそれぞれ選択した2層構造触媒層を用いて、耐久性能試験を行った。触媒層は、上記の<標準の塗布インク作製方法>に倣って、内層用塗布インクと外層用塗布インクを作製し、これら2種類の塗布インクを用いて<触媒層作製方法>に記述した方法で作製した。作製した触媒層は、内層及び外層がそれぞれ凝集相構造を持っており、これらの触媒層をカソードしたときのMEAの耐久性能試験を行った。なお、アノードには、実施例1の触媒層を用いた。
耐久性能試験は、最初にセル端子間電圧を開放電圧(通常0.9〜1.0V程度)から0.2Vまで段階的に変化させ、セル端子間電圧が0.8Vのときに流れる電流密度を測定し初期電池性能とした。次に、開放電圧に15秒間保持、セル端子間電圧を0.5Vに15秒間保持のサイクルを4000回実施し、その後、サイクル前と同様に電池性能を測定し、耐久試験後電池性能とした。ガスは、カソードに空気、アノードに純水素を、利用率がそれぞれ50%と80%となるように供給し、それぞれのガス圧は、セル下流に設けられた背圧弁で0.1MPaに圧力調整した。セル温度は70℃に設定し、供給する空気と純水素は、それぞれ50℃に保温された蒸留水中でバブリングを行い、加湿した。
表8に、各MEAの電池性能結果と耐久試験後電池性能を示した。25℃、相対湿度10%における水蒸気吸着量(V10)が2ml/g以下であり、25℃、相対湿度90%における水蒸気吸着量(V90)が400ml/g以上である炭素材料jおよびkを触媒担体炭素材料Aとして用いた実施例44、45は、V90が400ml/g未満の炭素材料hを触媒担体炭素材料Aとして用いた実施例42よりも初期電池性能が更に高く、V10が2ml/g超である炭素材料iを触媒担体炭素材料Aとして用いた実施例43よりも耐久性が劣化率が更に低いことが分かる。また、優れた特性を示した実施例44と45を比較するとV10/V90の値が0.02以下である炭素材料jを触媒担体炭素材料Aとして用いた実施例44は、V10/V90の値が0.02超である炭素材料kを触媒担体炭素材料Aとして用いた実施例45よりも劣化率が更に低くなり、特に優れた耐久性能を示すことが分かる。