JP2017139141A - マイクロポア層用炭素材料、マイクロポア層、及び固体高分子形燃料電池 - Google Patents

マイクロポア層用炭素材料、マイクロポア層、及び固体高分子形燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】固体高分子形燃料電池からさらなる大電流を取り出すことが可能な、新規かつ改良されたマイクロポア層用炭素材料、マイクロポア層、及び固体高分子形燃料電池を提供する。【解決手段】本発明のある観点によれば、固体高分子形燃料電池のマイクロポア層に使用可能なマイクロポア層用炭素材料であって、BET法で評価されるBET比表面積SBET(m2/g)が800m2/g以上であり、tプロット解析で評価される全比表面積Stotalと外部比表面積Soutとの比Sout/Stotalが0.1以上0.3未満であり、25℃、相対湿度90%の水蒸気吸着量Yml/gが100ml/g以上300ml/g未満であることを特徴とする、マイクロポア層用炭素材料が提供される。【選択図】図2

Description

本発明は、マイクロポア層用炭素材料、マイクロポア層、及び固体高分子形燃料電池に関する。
燃料電池の一種である固体高分子形燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に配置される一対の触媒層と、各触媒層の外側に配置されるガス拡散層と、各ガス拡散層の外側に配置されるセパレータとを備える。一対の触媒層のうち、一方の触媒層は固体高分子形燃料電池のアノードとなり、他方の触媒層は固体高分子形燃料電池のカソードとなる。なお、通常の固体高分子形燃料電池では、所望の出力を得るために、上記構成要素を有する単位セルが複数個スタックされている。
アノード側のセパレータには、水素等の還元性ガスを導入される。アノード側のガス拡散層は、還元性ガスを拡散させた後、アノードに導入する。アノードは、触媒成分と、触媒成分を担持する触媒担体と、プロトン伝導性を有する電解質材料とを含む。触媒担体は、炭素材料で構成されることが多い。触媒成分上では、還元性ガスの酸化反応が起こり、プロトンと電子が生成される。例えば、還元性ガスが水素ガスとなる場合、以下の酸化反応が起こる。
→2H+2e (E=0V)
この酸化反応で生じたプロトンは、アノード内の電解質材料、及び固体高分子電解質膜を通ってカソードに導入される。また、電子は、触媒担体、ガス拡散層、及びセパレータを通って外部回路に導入される。この電子は、外部回路で仕事をした後、カソード側のセパレータに導入される。そして、この電子は、カソード側のセパレータ、カソード側のガス拡散層を通ってカソードに導入される。
固体高分子形電解質膜は、プロトン伝導性を有する電解質材料で構成されている。固体高分子電解質膜は、上記酸化反応で生成したプロトンをカソードに導入する。
カソード側のセパレータには、酸素ガスあるいは空気等の酸化性ガスが導入される。カソード側のガス拡散層は、酸化性ガスを拡散させた後、カソードに導入する。カソードは、触媒成分と、触媒成分を担持する触媒担体と、プロトン伝導性を有する電解質材料とを含む。触媒担体は、炭素材料で構成されることが多い。触媒成分上では、酸化性ガスの還元反応が起こり、水が生成される。例えば、酸化性ガスが酸素ガスあるいは空気となる場合、以下の還元反応が起こる。
+4H+4e→2HO (E=1.23V)
還元反応で生じた水は、未反応の酸化性ガスとともに燃料電池の外部に排出される。このように、固体高分子形燃料電池では、酸化反応と還元反応とのエネルギー差(電位差)を利用して発電する。言い換えれば、酸化反応で生じた電子が外部回路で仕事を行う。
ところで、ガス拡散層と触媒層との間には、マイクロポア層が設けられる場合がある。これらのマイクロポア層は、ガス拡散層内で拡散されたガスを触媒層内に導入する。さらに、アノード側のマイクロポア層は、アノード内で生じた電子をガス拡散層に伝導する。一方、カソード側のマイクロポア層は、ガス拡散層内の電子をカソードに伝導する。さらに、カソード側のマイクロポア層は、カソード内で生じた水をガス拡散層側に排出する。
従来のマイクロポア層は、マイクロポア層に上記の機能を実現させるために、粒径が非常に小さく(例えば40nm程度)、かつ、疎水性の高いカーボンブラック(以下、「疎水性微細カーボンブラック」とも称する)で構成されることが多い。マイクロポア層をこのような疎水性微細カーボンブラックで構成することで、マイクロポア層内には微細な気孔が網目状に形成される。このため、マイクロポア層は、ガス拡散層から導入されたガスをさらに拡散させつつ触媒層内に導入することができる。さらに、カソード側のマイクロポア層は、カソード内で生じた水を毛細管現象により吸引し、ガス拡散層側に排出することができる。このため、カソード内で生じた水が電解質膜側に逆拡散しにくくなる。なお、カーボンブラックを親水性とした場合、気孔が水で閉塞してしまう。このため、カーボンブラックは疎水性であることが必要である。このような理由から、マイクロポア層のバインダとして、疎水性の高いバインダ(例えばポリテトラフルオロエチレン等)が使用されることが多い。
また、マイクロポア層を疎水性微細カーボンブラックで構成することで、マイクロポア層に高い導電性を付与することができる。このため、アノード側のマイクロポア層は、アノード内で生じた電子をガス拡散層に伝導することができる。一方、カソード側のマイクロポア層は、ガス拡散層内の電子をカソードに伝導することができる。
特開2007−48495号公報
ところで、近年、固体高分子形燃料電池が適用される分野では、固体高分子形燃料電池のさらなる高性能化が強く求められていた。具体的には、固体高分子形燃料電池から取り出せる電流をさらに大きくしたいという要望が非常に強くなっていた。しかし、従来の固体高分子形燃料電池では、このような要望に十分に応えることができなかった。
なお、特許文献1には、マイクロポア層に関する技術が開示されている。特許文献1に開示された技術では、セパレータと触媒層との間に第1及び第2多孔質層を配置する。これらのうち、第1多孔質層がマイクロポア層に相当する。そして、特許文献1では、第2多孔質層の平均孔径を第1多孔質層の平均孔径よりも大きくする。また、第1多孔質層のバインダとして、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体を使用し、カーボンブラックとバインダとの質量比を所定範囲内の値とする。しかし、このような技術であっても、上記の要望に十分に応えることができなかった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、固体高分子形燃料電池からさらなる大電流を取り出すことが可能な、新規かつ改良されたマイクロポア層用炭素材料、マイクロポア層、及び固体高分子形燃料電池を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者は、まず、触媒層の炭素材料に着目した。具体的には、本発明者は、以下の要件(a)、(b)を満たす炭素材料を触媒層の炭素材料として使用することを試みた。
(a)BET法で評価されるBET比表面積SBET(m/g)が800m/g以上である。
(b)tプロット解析で評価される全比表面積Stotalと外部比表面積Soutとの比Sout/Stotalが0.1以上0.3未満である。
要件(a)、(b)を満たす炭素材料としては、例えばMCND(新日鉄住金化学株式会社製エスカーボン)等が挙げられる。以下、要件(a)、(b)を満たす炭素材料を「MCND系炭素材料」とも称する。MCND系炭素材料内には、ミクロ孔、メソ孔のみならずマクロ孔も多く形成されている。ミクロ孔は、例えばMCND系炭素材料を構成する炭素粒子の表面に形成される。メソ孔は、炭素粒子の表面あるいは炭素粒子間に形成される。マクロ孔は、炭素粒子間に形成される。これらの細孔のうち、ミクロ孔及びメソ孔は、水を保持しやすい。さらに、MCND系炭素材料は、複数の結晶子が多数配列された構造を有する。各結晶子は、複数の縮合多環芳香族骨格(以下、「グラフェン」とも称する)が積層された構造を有している。そして、親水基を有するエッジ炭素原子がMCND系炭素材料を構成する炭素粒子の表面に多く露出している。ここで、エッジ炭素原子は、グラフェンのエッジ部分を構成する炭素原子を意味する。したがって、MCND系炭素材料は、高い親水性を有する。なお、マイクロポア層は従来のマイクロポア層、すなわち疎水性微細カーボンブラックで構成されたものを使用した。
この結果、固体高分子形燃料電池から取り出せる電流を若干大きくすることができた。しかし、依然として十分な電流を取り出すことができなかった。本発明者は、この理由を以下のように考えた。すなわち、触媒層の炭素材料をMCND系炭素材料とすることで、固体高分子形燃料電池から取り出せる電流を大きくすることができる。しかし、固体高分子形燃料電池から発生する電流が大きくなるに従って、カソード内で生成する水の量が多くなる。そして、固体高分子形燃料電池から発生する電流がある大きさ以上になると、カソード内で発生した水の量がマイクロポア層による排水量を上回る。この場合、カソード内に水が残留してしまうので、それ以上電流を大きくすることができない。すなわち、電流値が頭打ちになってしまう。
そこで、本発明者は、さらにマイクロポア層に着目した。具体的には、本発明者は、固体高分子形燃料電池の触媒層及びマイクロポア層をいずれもMCND系炭素材料で構成することを試みた。しかし、依然として固体高分子形燃料電池から大電流を取り出すことができなかった。本発明者は、この理由を以下のように考えた。すなわち、上述したように、MCND系炭素材料は、高い親水性を有する。このため、カソード内で発生した水がマイクロポア層内で詰まってしまう。この結果、カソード内に水が残留してしまう。この結果、固体高分子形燃料電池から取り出せる電流値が頭打ちになってしまう。
そこで、本発明者は、マイクロポア層内の目詰りを抑制するために、MCND系炭素材料を過剰に黒鉛化処理した。ここで、黒鉛化処理は、炭素材料を1400℃以上の高温環境に曝す処理である。MCND系炭素材料を黒鉛化処理することで、メソ孔及びミクロ孔が潰れる。さらに、親水基の数が減少する。したがって、MCND系炭素材料を黒鉛化処理することで、MCND系炭素材料の疎水性が高まる。MCND系炭素材料の黒鉛化の程度(言い換えれば、疎水性の程度)は、黒鉛化処理の処理温度及び処理時間によって調整可能である。そして、本発明者は、過剰な黒鉛化処理により疎水性を過剰に高めたMCND系炭素材料でマイクロポア層を構成した。これにより、固体高分子形燃料電池からさらなる大電流が取り出せることが期待されたが、MCND系炭素原子を黒鉛化処理する前と結果はほとんど変わらなかった。
本発明者は、これらの結果により、以下の知見を得た。すなわち、従来のマイクロポア層は、毛細管現象によってカソード内の水を吸引する。このために、従来のマイクロポア層内には、微細な気孔(具体的には、ミクロ孔及びメソ孔)が網目状に形成される。しかし、MCND系炭素材料には、メソ孔及びミクロ孔の他、マクロ孔も多く形成される。したがって、疎水性を高めたMCND系炭素材料には、多くのマクロ孔が残っている。すなわち、疎水性を高めたMCND系炭素材料には、比較的大きな気孔が多数形成されている。したがって、疎水性を高めたMCND系炭素材料を用いてマイクロポア層を構成した場合、毛細管現象が十分に働かない。なお、黒鉛化処理する前のMCND系炭素材料を用いてマイクロポア層を構成した場合であっても、毛細管現象は十分に働かない。しかし、マイクロポア層の内部には多数のミクロ孔、メソ孔、及び親水基が存在する。このため、これらのミクロ孔、メソ孔、及び親水基によってカソード内の水を吸引できる。すなわち、MCND系炭素材料を用いてマイクロポア層を構成した場合、マイクロポア層は、毛細管現象とは別の原理(すなわち、ミクロ孔、メソ孔、及び親水基による水の吸引)によってカソード内の水を吸引する。ただし、黒鉛化処理する前のMCND系炭素材料は、親水性が高すぎるため、水による目詰りを起こしやすい。
本発明者は、上記の知見に基づき、MCND系炭素材料の親水性をある範囲内の値とすることに想到した。具体的には、本発明者は、黒鉛化処理の処理温度及び処理時間を調整することで、MCND系炭素材料の親水性をある範囲内の値とした。そして、本発明者は、親水性が調整されたMCND系炭素材料でマイクロポア層を構成したところ、固体高分子形燃料電池から非常に大きな電流を取り出すことに成功した。本発明者は、この理由を以下のように考えている。すなわち、マイクロポア層は、その内部に形成されたミクロ孔、メソ孔、及び親水基によって、カソード内の水を吸引することができる。さらに、マイクロポア層内には、マクロ孔が多く形成されているので、より多くの水を吸引することができる。これらの結果、固体高分子形燃料電池から非常に大きな電流を取り出すことに成功したと推定される。
さらに、本発明者は、親水性が調整されたMCND系炭素材料を用いてマイクロポア層を構成し、かつ、触媒層の炭素材料をMCND系炭素材料以外の公知の炭素材料で構成した。本発明者は、この場合であっても、固体高分子形燃料電池から大電流を取り出すことに成功した。マイクロポア層の排水性が向上しているので、触媒層の炭素材料の限界性能をさらに高めることができたためであると推定される。ただし、触媒層の炭素材料をMCND系炭素材料で構成した場合のほうがより大きな電流を取り出すことができた。本発明者は、これらの知見に基づいて、本発明に想到した。
本発明のある観点によれば、固体高分子形燃料電池のマイクロポア層に使用可能なマイクロポア層用炭素材料であって、BET法で評価されるBET比表面積SBET(m/g)が800m/g以上であり(要件(a))、tプロット解析で評価される全比表面積Stotalと外部比表面積Soutとの比Sout/Stotalが0.1以上0.3未満であり(要件(b))、25℃、相対湿度90%の水蒸気吸着量Yml/gが100ml/g以上300ml/g未満であることを特徴とする、マイクロポア層用炭素材料が提供される。
すなわち、本発明に係るマイクロポア層用炭素材料は、上記要件(a)、(b)を満たすのみならず、25℃、相対湿度90%の水蒸気吸着量が所定範囲内の値となっている。すなわち、マイクロポア層用炭素材料は、親水性が調整されたMCND系炭素材料となっている。したがって、このマイクロポア層用炭素材料を用いてマイクロポア層を構成することで、固体高分子形燃料電池から大電流を取り出すことができる。具体的には、マイクロポア層は、その内部に形成されたミクロ孔、メソ孔、及び親水基によって、カソード内の水を吸引することができる。さらに、マイクロポア層内には、マクロ孔が多く形成されているので、より多くの水を吸引することができる。この結果、固体高分子形燃料電池から大電流を取り出した場合であっても、カソード内に水が残留しにくくなる。したがって、固体高分子形燃料電池から大電流を取り出すことができる。
ここで、ラマン分光法により測定されるGバンドの半値幅が60cm−1以上67cm−1未満であってもよい。
また、tプロット解析は、2600℃以上で熱処理された炭素材料を標準物質として使用して行われてもよい。
本発明の他の観点によれば、固体高分子形燃料電池のマイクロポア層であって、上記のマイクロポア層用炭素材料を含むことを特徴とする、マイクロポア層が提供される。
本発明の他の観点によれば、上記のマイクロポア層を含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池が提供される。
ここで、触媒層に含まれる炭素材料は、BET法で評価されるBET比表面積SBET(m/g)が800m/g以上であり、tプロット解析で評価される全比表面積Stotalと外部比表面積Soutとの比Sout/Stotalが0.1以上0.3未満であってもよい。
この観点によれば、触媒層の炭素材料もMCND系炭素材料で構成されることになる。したがって、固体高分子形燃料電池からより大きな電流を取り出すことができる。
ここで、触媒層はカソードであってもよい。
以上説明したように本発明によれば、固体高分子形燃料電池から大電流を取り出すことができる。
本実施形態のtプロット解析で得られるグラフの一例である。 本実施形態に係る燃料電池の概略構成を示す模式図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.マイクロポア層用炭素材料の構成>
まず、本実施形態に係るマイクロポア層用炭素材料の構成について説明する。本実施形態に係るマイクロポア層用炭素材料は、少なくともカソード側のマイクロポア層に使用されることが好ましい。
(1−1.用語の定義)
本実施形態における細孔は、マクロ孔、メソ孔、及びミクロ孔のいずれかである。これらの細孔の分類は、IUPACの分類に従うものとする。また、炭素材料は、複数の炭素粒子の集合体を意味するものとする。
(1−2.マイクロポア層用炭素材料が満たす要件)
マイクロポア層用炭素材料は、少なくとも以下の要件(a)〜(c)を満たす。マイクロポア層用炭素材料は、さらに要件(d)を満たすことが好ましい。
(a)BET法で評価されるBET比表面積SBET(m/g)が800m/g以上である。
(b)tプロット解析で評価される全比表面積Stotalと外部比表面積Soutとの比Sout/Stotalが0.1以上0.3未満である。
(c)25℃、相対湿度90%の水蒸気吸着量Yml/gが100ml/g以上300ml/g未満である。
(d)ラマン分光法により測定されるGバンドの半値幅が60cm−1以上67cm−1未満である。
したがって、マイクロポア層用炭素材料は、上述したMCND系炭素材料となっている。したがって、マイクロポア層用炭素材料内には、多くのミクロ孔、メソ孔、及びマクロ孔が形成されている。また、マイクロポア層用炭素材料は、多くの親水基を有する。ただし、マイクロポア層炭素材料は、要件(c)、(d)を満たすので、親水性が調整されている。具体的には、黒鉛化処理により、ミクロ孔、メソ孔、及び親水基の数が調整されている。以下、各要件について詳細に説明する。
(1−3.BET比表面積)
BET法で評価されるBET比表面積SBET(m/g)が800m/g以上となる(要件(a))。BET比表面積SBETがこの範囲内の値となる場合、マイクロポア層用炭素材料を構成する炭素粒子の表面に多数の細孔(特にミクロ孔)が形成されるので、マイクロポア層用炭素材料の親水性がより向上する。BET比表面積SBETが800m/g未満となる場合、マイクロポア層用炭素材料の親水性が十分大きくならない。なお、BET比表面積SBET(m/g)の上限値は特に制限されないが、1200m/g以上であると炭素材料表面のミクロ孔が多くなりすぎる可能性がある。この場合、親水性が高くなりすぎてマイクロポア層内の排水性が低下し、ガス拡散性が悪くなる可能性がある。したがって、燃料電池性能が低くなる可能性がある。このため、BET比表面積SBET(m/g)は1200m/g未満であることが好ましい。
(1−4.外部比表面積の割合)
tプロット解析で評価される全比表面積Stotal(m/g)と外部比表面積Sout(m/g)との比Sout/Stotalが、0.1以上0.3未満である(要件(b))。好ましくは、Sout/Stotalが0.20以上0.25未満である。ここで、外部比表面積は、マイクロポア層用炭素材料を構成する炭素粒子の外部表面、すなわち炭素粒子の外部に面する部分の比表面積を意味する。Sout/Stotalがこの範囲内の値となる場合に、マイクロポア層の目詰りを抑制しつつ、より多くの水をカソードから吸引することができる。Sout/Stotalが0.1未満となる場合、ミクロ孔、すなわち水分を保持しやすい細孔の数が非常に多くなる。このため、マイクロポア層の目詰りが起こりやすくなる。この結果、マイクロポア層による排水性が低下する。一方、Sout/Stotalが0.3以上となる場合、ミクロ孔の数が少なくなるので、マイクロポア層の親水性が低くなる。この結果、マイクロポア層による排水性が低下する。Sout/Stotalは、上述した黒鉛化処理によって調整可能である。黒鉛化処理の好ましい温度は、1800℃以上2200℃未満である。黒鉛化処理をこの範囲内の温度で行うことで、Sout/Stotalを上述した範囲内の値に調整することができる。
ここでtプロット解析は、窒素ガスの液体窒素温度での窒素吸着測定によって得られる窒素吸着等温線の解析評価法の一種である。すなわち、tプロット解析は、測定試料と同種の材料であって、ミクロ孔が存在しない標準物質の窒素吸着等温線を基準にして、測定試料の窒素吸着等温線の直線性からのずれを解析する比較プロットの一種である(日本化学会編 コロイド化学I(株)東京化学同人1995年発行)。
ミクロ孔比表面積は、tプロット解析では、測定試料の全比表面積と外部比表面積の差として得られる。ミクロ孔を有する測定試料のtプロット解析では、以下の傾向が見られる。すなわち、ごく低圧では、窒素ガスは、ミクロ孔の表面を含んだ測定試料の全表面(すなわち、ミクロ孔の表面、及びミクロ孔以外の外部表面)に吸着する。このため、t(すなわち、吸着厚み)の小さい領域では吸着量がミクロ孔を持たない標準物質に対して上方にずれる。すなわち、tプロットの傾きが標準物質に対して大きくなる。この傾きから、測定試料の全比表面積が算出される。
そして、ミクロ孔のポアフィリングが終了すると、窒素ガスの吸着はミクロ孔以外の外部表面に対してのみ進行する。したがって、吸着厚みの大きな領域ではtプロットの傾きが小さくなる。この傾きから、測定試料の外部比表面積(測定試料のミクロ孔を除いた外部表面の表面積)が算出される。そのため、ミクロ孔を有する測定試料のtプロットは、上に凸の形状となる。一方、測定試料にミクロ孔が無い場合は、tプロットは、原点を通る一本の直線となる。図1に一例を示す。図1の横軸は窒素ガスの吸着厚み(nm)を示し、縦軸は窒素ガスの吸着量(molg−1やcm(STP)g−1など)を示す。tプロットLは上に凸の形状となっており、傾きの大きなtプロットL1と、傾きの小さいtプロットL2とに区分される。tプロットL1は、ミクロ孔への吸着を反映したグラフとなっている。一方、tプロットL2は、窒素ガスのミクロ孔以外の外部表面への吸着を反映したグラフとなっている。したがって、tプロットL2の傾きから、測定試料の外部比表面積が求まり、窒素吸着等温線L1の傾きから、測定試料の全比表面積が求まる。そして、これらの差からミクロ孔の比表面積が求まる。なお、tプロットL2の切片(Y)から、ミクロ孔の容積も求まる。
ところで、本発明者らが本発明の検討を進める過程で、上述した黒鉛化処理を行った測定試料を準備した。そして、本発明者は、一般的に公開されている標準物質の窒素吸着等温線を用いて測定試料のtプロット解析を試みた。この結果、測定試料の窒素吸着等温線が下に凸の形状になる場合があるという問題が生じた。この場合、測定試料が本実施形態のマイクロポア層用炭素材料の条件を満たすかどうかを判定できない。
本発明者は、この原因は、一般に公開されている炭素材料の標準物質には、本実施形態で使用されるマイクロポア層用炭素材料よりも多くの微細なミクロ孔が存在することであると推定した。そして、本発明者は、測定試料(あるいは測定試料と同種の試料)を不活性雰囲気下、2600℃以上の温度で熱処理することによってミクロ孔を極力少なくした炭素材料を作製し、これを標準物質とした。ここで、同種の試料とは、測定試料と同様の物性を示す材料を意味する。同様の試料は、例えば炭素材料であれば、炭素材料であり、より好ましくは、炭素材料の種類を同一にすることである。すなわち、カーボンブラックであればカーボンブラック、活性炭であれば活性炭である。さらに好ましくは、銘柄、ロットまで同一にすることである。これにより、本発明者は、上記の問題を解決した。すなわち、この標準物質を用いて上述した測定試料のtプロット解析を行ったところ、上に凸の窒素吸着等温線を得ることに成功した。従って、マイクロポア層用炭素材料として使用可能な炭素材料を判別するためのtプロット解析では、まず、測定試料を不活性雰囲気下、2600℃以上の温度で熱処理することで標準物質を作製する。そして、この標準物質を用いて、tプロット解析を行えば良い。このような標準物質では、ミクロ孔は、無視できる程度に少なくなる。このため、tプロット解析を正しく行うことができる。なお、熱処理の時間は特に制限されない。熱処理の時間が長いほどミクロ孔の数が少なくなるので、所望の窒素吸着等温線が得られるようになるまで、熱処理を行えば良い。
(1−5.親水性)
25℃、相対湿度90%の水蒸気吸着量Yml/gが100ml/g以上300ml/g未満である(要件(c))。好ましくは、水蒸気吸着量Yml/gが180ml/g以上220ml/g未満である。さらに好ましくは、水蒸気吸着量Yml/gが185ml/g以上210ml/g以下である。25℃、相対湿度90%の水蒸気吸着量Yml/gがこの範囲内の値となる場合に、マイクロポア層用炭素材料は、その内部に形成されたミクロ孔、メソ孔、及び親水基によって、カソード内の水を吸引することができる。さらに、マイクロポア層用炭素材料内には、マクロ孔が多く形成されているので、より多くの水をカソードから吸引することができる。これらの結果、固体高分子形燃料電池から非常に大きな電流を取り出すことができる。水蒸気吸着量Yml/gが100ml/g未満となる場合、マイクロポア層用炭素材料の疎水性が高すぎて、カソード内から十分な水を吸引することができない。この結果、カソード内に水が残留しやすくなってしまう。水蒸気吸着量Yml/gが300ml/g以上となる場合、マイクロポア層用炭素材料の親水性が高すぎて、マイクロポア層用炭素材料が水で目詰りを起こしやすくなってしまう。
ここで、マイクロポア層用炭素材料の水蒸気吸着量Yml/gを調整する方法としては、上述した黒鉛化処理が挙げられる。すなわち、後述するように、マイクロポア層用炭素材料は、例えばMCND系炭素材料を出発物質として作製される。しかし、MCND系炭素材料の水蒸気吸着量Yml/gは非常に大きい(例えば、500ml/g以上となる)ことが多い。したがって、MCND系炭素材料をマイクロポア層用炭素材料として使用する場合、水蒸気吸着量Yml/gを調整する必要がある。具体的には、マイクロポア層用炭素材料を1400℃以上の高温環境に曝す。マイクロポア層用炭素材料を黒鉛化処理することで、メソ孔及びミクロ孔が潰れる。さらに、親水基の数が減少する。したがって、マイクロポア層用炭素材料を黒鉛化処理することで、マイクロポア層用炭素材料の疎水性が高まる。すなわち、水蒸気吸着量Yml/gが減少する。マイクロポア層用炭素材料の黒鉛化の程度(言い換えれば、疎水性の程度)は、黒鉛化処理の処理温度及び処理時間によって調整可能である。黒鉛化処理の加熱処理は、好ましくは、1800℃以上2200℃未満である。加熱温度が1800℃未満となる場合、黒鉛化が十分に進まない可能性がある。この結果、エッジ炭素原子(すなわち、親水基を有する炭素材料)が多く残るので、水蒸気吸着量Yml/gを300ml/g未満とすることが難しくなる可能性がある。一方、加熱温度が2200℃以上となる場合、黒鉛化の進行速度が極めて速くなるため、水蒸気吸着量Yml/gを100ml/g以上とすることが難しくなる可能性がある。
25℃、相対湿度90%の水蒸気吸着量Yml/gは、25℃の環境に置かれた炭素材料1g当りに吸着した水蒸気量を標準状態の水蒸気体積に換算することで得られる。25℃、相対湿度90%の水蒸気吸着量Yml/gは、市販の水蒸気吸着量測定装置を用いて測定することができる。
(1−6.ラマン)
ラマン分光法によりマイクロポア層用炭素材料のGバンドを測定した場合、Gバンドの半値幅(△G)は60cm−1以上67m−1未満となり、好ましくは60cm−1以上66m−1未満となる。ここで、Gバンドは、ラマン分光スペクトルの1550〜1650cm−1の範囲で検出されるバンドである。
Gバンドの半値幅がこの範囲内の値となる場合、マイクロポア層用炭素材料の黒鉛化度が高くなる。このため、マイクロポア層用炭素材料は、固体高分子形二次電池の起動停止を繰り返しても、酸化消耗しにくくなる。すなわち、マイクロポア層用炭素材料の耐久性が向上する。
一方、Gバンドの半値幅が60cm−1未満となる場合、ミクロ孔、すなわち水を保持しやすい細孔の数が少なくなるので、親水性が低下する可能性がある。また、Gバンドの半値幅が67m−1以上となる場合、固体高分子形燃料電池の耐久性が低下する可能性がある。
なお、マイクロポア層用炭素材料のGバンドの半値幅を上記範囲内に調整する方法としては、例えば、マイクロポア層用炭素材料の原料となる炭素材料を黒鉛化処理する処理が挙げられる。すなわち、マイクロポア層用炭素材料の水蒸気吸着量Yml/gを調整するために黒鉛化処理を行うが、これにともなってマイクロポア層用炭素材料を構成する結晶子が大きく成長する。この結果、Gバンドの半値幅も概ね上記範囲内の値となる。マイクロポア層用炭素材料の水蒸気吸着量Yml/gを調整した後にGバンドの半値幅が67m−1以上となる場合、黒鉛化処理を追加で行っても良い。また、マイクロポア層用炭素材料の水蒸気吸着量Yml/gを調整した後にGバンドの半値幅が60cm−1未満となる場合、賦活処理を追加で行っても良い。これにより、Gバンドの半値幅を上述した範囲内の値に調整することができる。ここで、賦活処理の種類は特に制限されず、炭素材料の分子構造に欠陥を与える処理であればどのような処理であってもよい。賦活処理の例としては、炭素材料を酸素、空気、水蒸気、二酸化炭素などのガス、もしくはこれらのガスを含んだ不活性ガスを流通させた環境下で加熱する処理等が挙げられる。
黒鉛化処理の加熱処理の好ましい温度は、水蒸気吸着量を調整する場合と同様に、1800℃以上2200℃未満である。加熱温度が1800℃未満となる場合、結晶子の成長が少なく、エッジ炭素原子が多くなる場合がある。この結果、Gバンドの半値幅が67cm−1以上となりやすい。一方、Gバンドの半値幅が2200℃以上となる場合、結晶子が過剰に成長し、Gバンドの半値幅が60cm−1未満となりやすい。
<2.マイクロポア層用炭素材料の製造方法>
次に、マイクロポア層用炭素材料の製造方法について説明する。まず、出発物質となる炭素材料を準備する。ここで、炭素材料は、例えば上記要件(a)、(b)を満たす炭素材料、すなわちMCND系炭素材料である。
ついで、MCND系炭素材料に黒鉛化処理を行う。具体的には、MCND系炭素材料を1400℃以上の高温環境に曝す。MCND系炭素材料を黒鉛化処理することで、MCND系炭素材料内のミクロ孔、メソ孔、及び親水基の数が減少する。すなわち、MCND系炭素材料の水蒸気吸着量Yml/gが上述した範囲内の値となりうる。さらに、MCND系炭素材料を構成する結晶子が大きく成長する。この結果、MCND系炭素材料のGバンドの半値幅が上述した範囲内の値となりうる。黒鉛化処理の加熱処理は、好ましくは、1800℃以上2200℃未満である。黒鉛化処理は、少なくとも25℃、相対湿度90%の水蒸気吸着量Yml/gが100ml/g以上300ml/g未満となるまで行う。以上の工程により、本実施形態に係るマイクロポア層用炭素材料を作製する。
<3.固体高分子形燃料電池の構成>
本実施形態に係るマイクロポア層用炭素材料は、例えば図2に示す固体高分子形燃料電池1に適用可能である。固体高分子形燃料電池1は、セパレータ10、20、ガス拡散層31、41、マイクロポア層32、42、触媒層50、60、及び電解質膜70を備える。
セパレータ10は、アノード側のセパレータであり、水素等の還元性ガスをガス拡散層31に導入する。セパレータ20は、カソード側のセパレータであり、酸素ガス、空気等の酸化性ガスをガス拡散凝集相に導入する。セパレータ10、20の種類は特に問われず、従来の燃料電池、例えば固体高分子形燃料電池で使用されるセパレータであればよい。
ガス拡散層31は、アノード側のガス拡散層であり、セパレータ10から供給された還元性ガスを拡散させた後、マイクロポア層32に供給する。ガス拡散層41は、カソード側のガス拡散層であり、セパレータ20から供給された酸化性ガスを拡散させた後、マイクロポア層42に供給する。ガス拡散層31、41の種類は特に問われず、従来の燃料電池、例えば固体高分子形燃料電池に使用されるガス拡散層であればよい。ガス拡散層31、41を構成する材料の例としては、繊維状炭素材料及び金属材料等が挙げられる。繊維状炭素材料の例としては、カーボンクロス及びカーボンペーパー等が挙げられる。繊維状金属材料の例としては、金属メッシュや金属ウール等が挙げられる。
マイクロポア層32は、アノード側のマイクロポア層であり、ガス拡散層31から供給された還元性ガスをさらに拡散させつつ、触媒層50に供給する。マイクロポア層32は、公知のマイクロポア層であってもよいが、本実施形態に係るマイクロポア層用炭素材料で構成されていても良い。例えば、マイクロポア層32は、本実施形態に係るマイクロポア層用炭素材料及びバインダを含んでいても良い。バインダの種類は特に制限されず、従来のマイクロポア層で使用されているバインダを適用可能である。マイクロポア層用炭素材料とバインダとの質量比は特に制限されず、従来のマイクロポア層に適用される質量比であってもよい。
マイクロポア層42は、カソード側のマイクロポア層であり、ガス拡散層41から供給された酸化性ガスをさらに拡散させつつ、触媒層60に供給する。さらに、マイクロポア層42は、カソード内で生成された水を吸引し、ガス拡散層41側に排水する。マイクロポア層42は、本実施形態に係るマイクロポア層用炭素材料及びバインダを含む。これにより、マイクロポア層42は、より多くの水をカソードから吸引し、ガス拡散層41側に排水することができる。したがって、固体高分子形燃料電池1からより大きな電流を取り出すことができる。なお、バインダの種類は特に制限されず、従来のマイクロポア層で使用されているバインダを適用可能である。マイクロポア層用炭素材料とバインダとの質量比は特に制限されず、従来のマイクロポア層に適用される質量比であってもよい。
触媒層50は、いわゆるアノードである。触媒層50内では、還元性ガスの酸化反応が起こり、プロトンと電子が生成される。例えば、還元性ガスが水素ガスとなる場合、以下の酸化反応が起こる。
→2H+2e (E=0V)
酸化反応によって生じたプロトンは、触媒層50、及び電解質膜70を通って触媒層60に到達する。酸化反応によって生じた電子は、触媒層50、マイクロポア層32、ガス拡散層31、及びセパレータ10を通って外部回路に到達する。電子は、外部回路内で仕事をした後、セパレータ20に導入される。その後、電子は、セパレータ20、ガス拡散層41、マイクロポア層42を通って触媒層60に到達する。
アノードとなる触媒層50の構成は特に制限されない。すなわち、触媒層50の構成は、従来のアノードと同様の構成であってもよいし、触媒層60と同様の構成であってもよいし、触媒層60よりもさらに親水性が高い構成であってもよい。
触媒層60は、いわゆるカソードである。触媒層60内では、酸化性ガスの還元反応が起こり、水が生成される。例えば、酸化性ガスが酸素ガスあるいは空気となる場合、以下の還元反応が起こる。酸化反応で発生した水は、未反応の酸化性ガスとともに固体高分子形燃料電池1の外部に排出される。酸化反応で発生した水は、具体的には、マイクロポア層42により吸引された後、ガス拡散層41側に排水される。
+4H+4e→2HO (E=1.23V)
このように、固体高分子形燃料電池1では、酸化反応と還元反応とのエネルギー差(電位差)を利用して発電する。言い換えれば、酸化反応で生じた電子が外部回路で仕事を行う。なお、カソードには大量の水が発生するので、カソードにはフラッディングという問題がある。ここで、フラッディングは、触媒担体間の気孔が水分によって閉塞し、気孔ネットワークが分断される現象を意味する。しかし、本実施形態では、カソード側のマイクロポア層42を本実施形態に係るマイクロポア層用炭素材料で構成しているので、マイクロポア層42は、より多くの水をカソードから吸引し、ガス拡散層41側に排水することができる。
なお、カソードを構成する炭素材料、すなわち触媒担体用炭素材料は、上記要件(a)、(b)を満たす炭素材料、すなわちMCND系炭素材料であることが好ましい。したがって、カソードは、MCND系炭素材料と、電解質材料と、触媒成分とを含むことが好ましい。この場合、MCND系炭素材料は、より多くの触媒を担持しつつ、触媒層60のフラッディングを抑制することができる。したがって、固体高分子形燃料電池1からより大きな電流を取り出すことができる。
なお、触媒層60における触媒担持率は特に制限されず、従来のカソードに適用される範囲内の値であれば良い。ここで、触媒担持率は、触媒担持粒子(触媒担体用炭素材料に触媒成分を担持させた粒子)の総質量に対する触媒成分の質量%である。
触媒層60における電解質材料の質量I(g)とマイクロポア層用炭素材料の質量C(g)との質量比I/Cも特に制限されず、従来のカソードに適用される範囲内の値であれば良い。また、触媒層60の厚さも特に制限されず、従来のカソードに適用される範囲内の値であれば良い。
電解質膜70は、プロトン伝導性を有する電解質材料で構成されている。電解質膜70は、上記酸化反応で生成したプロトンをカソードである触媒層60に導入する。ここで、電解質材料の種類は特に問われず、従来の燃料電池、例えば固体高分子形燃料電池で使用される電解質材料であればよい。好適な例は固体高分子形燃料電池で使用される電解質材料、すなわち、電解質樹脂である。電解質樹脂としては、例えば、リン酸基、スルホン酸基等を導入した高分子、例えば、パーフルオロスルホン酸ポリマーやベンゼンスルホン酸が導入されたポリマー等が挙げられる。もちろん、本実施形態に係る電解質材料は他の種類の電解質材料であってもよい。このような電解質材料としては、例えば、無機系、無機−有機ハイブリッド系等の電解質材料等が挙げられる。なお、固体高分子形燃料電池1は、常温〜150℃の範囲内で作動する燃料電池であってもよい。
<4.固体高分子形燃料電池の製造方法>
固体高分子形燃料電池1の製造方法は特に制限されず、従来と同様の製造方法であればよい。ただし、マイクロポア層42には本実施形態に係るマイクロポア層用炭素材料を用いることが好ましい。また、カソードには要件(a)、(b)を満たす炭素材料、すなわちMCND系炭素材料を用いることが好ましい。
<1.炭素材料の準備>
出発物質となる炭素材料として、ABP(電気化学工業株式会社製デンカブラック)、XC72R(キャボット社製バルカンXC72R)、EC600JD、EC300J(いずれもライオンスペシャリティーケミカル社製)、MCND(新日鉄住金化学株式会社製エスカーボン)を準備した。
<2.パラメータの測定方法>
(2−1.ラマン)
ラマンスペクトルの測定は、NRS−7100型(日本分光(株)製)を用いた。測定条件は、励起レーザー波長:532nm、レーザーパワー:100mW(試料照射パワー:0.1mW)、顕微配置:Backscattering、スリット寸法:100μm×100μm、対物レンズ:×100、スポット径:1μm、露光時間:30sec、観測波数:3200〜750cm−1、積算回数:2回とした。そして、Gバンドと呼ばれる1550〜1650cm−1の範囲のピーク強度の半値幅(△G)を算出した。
(2−2.BET比表面積)
BET比表面積は、マイクロトラック・ベル社製のBELSORPminiを用いて行った。具体的には、自動比表面積測定装置に120℃で真空乾燥した測定試料を設置し、窒素ガスを用いて吸着等温線を作成した。そして、付属のソフトBELMasterを用いてBET比表面積(SBET)を算出した。
(2−3.tプロット解析)
標準物質として、アルゴン気流中2600℃で2時間熱処理したABPを用意した。そして、この標準物質の窒素吸着等温線をマイクロトラック・ベル社製のBELSORPminiを用いて測定した。この窒素吸着等温線をBELSORPminiに付属のソフトBELMasterの基準データとして登録した。測定物質の窒素吸着等温線をBELSORPminiを用いて測定し、BELMasterを用いて標準試料を基準データとしてtプロット解析を行った。tプロット解析では、tプロット法により全比表面積Stotal(m/g)、外部比表面積Sout(m/g)を算出した。
(2−4.水蒸気吸着量)
水蒸気吸着量は、定容量式水蒸気吸着装置(日本ベル製、BELSORP18)を用いて測定した。具体的には、120℃、1Pa以下で2時間脱気前処理を行った測定試料を25℃の恒温中に保持した。ついで、真空状態から、25℃における水蒸気の飽和蒸気圧までの間、徐々に水蒸気を測定試料に供給することで段階的に相対湿度を変化させた。そして、当該処理後の水蒸気吸着量を測定した。次に、飽和水蒸気圧から段階的に相対湿度を減少させ、水蒸気脱離過程における水蒸気吸着量を測定した。得られた測定結果から吸着等温線を描き、図から水蒸気脱離過程での相対湿度90%のときの水蒸気吸着量を読み取った。ついで、読み取った水蒸気量を試料1g当たりに吸着した標準状態の水蒸気体積に換算した。これにより得られた値を25℃、相対湿度90%の水蒸気吸着量Yml/gとした。
<3.実施例1>
(3−1.炭素材料)
出発物質となる炭素材料として、MCNDを準備した。
(3−2.黒鉛化処理)
MCNDをアルゴン気流中及び1800℃の環境下で2時間保持することで、黒鉛化処理を行った。以下、黒鉛化処理を行う前のMCNDを「黒鉛化処理前MCND」とも称する。また、黒鉛化処理を行った後のMCNDを「黒鉛化MCND」とも称する。実施例1では、黒鉛化MCNDをマイクロポア層用炭素材料として使用した。
(3−3.白金担持処理)
塩化白金酸水溶液中に、黒鉛化処理前MCNDを分散した。ついで、分散液を50℃に保温し、分散液を撹拌しながら過酸化水素水を加えた。次いで、分散液にNa水溶液を添加することで、触媒前駆体を得た。この触媒前駆体を濾過、水洗、乾燥した後に100%H気流中、300℃で3時間、還元処理を行った。以上の工程により、白金が触媒担持粒子の総質量に対して50質量%担持された触媒担持粒子を作製した。
(3−4.塗布インクの調整)
触媒担持粒子を容器に取り、これに5質量%ナフィオン溶液(デュポン製DE521)を黒鉛化処理前MCND1質量部に対して、ナフィオンが1.5質量部の比率になるように加えた。ついで、分散液を軽く撹拌した。その後、超音波で触媒担持粒子を粉砕した。その後、さらに分散液を撹拌することで、塗布インクを得た。
(3−5.触媒層の作製)
得られた塗布インクをテフロン(登録商標)シートにスプレーした後、アルゴン中80℃で10分間、続いてアルゴン中120℃で60分間乾燥することで、触媒層を作製した。触媒層の白金目付け量は、0.10mg/cmとした。ここで、白金目付け量は以下の工程で測定した。まず、作製したテフロンシート及び触媒層を3cm角の正方形に切り取り、テフロンシート及び触媒層の総質量を測定した。ついで、触媒層をスクレーパーで剥ぎ取った後のテフロンシート質量を測定した。ついで、先の質量と後の質量の差分から触媒層質量を算出した。ついで、触媒インク中の固形分中の白金が占める割合から白金の目付け量を計算により求めた。
(3−6.マイクロポア層の作製)
市販のカーボンペーパー(東レ製TGP−H−060)をエタノールで5質量%に希釈したテフロン分散液(デュポン社製テフロン(登録商標)PTFEディスパーション)中に浸漬した。ついで、上記5質量%テフロン分散液に浸漬させたカーボンペーパーを乾燥し、さらにアルゴン気流中で340℃に昇温した。以上の工程により、ガス拡散層を作製した。ついで、黒鉛化MCND1gにエタノール99gを加えることでMCND分散液を作製した。ついで、MCND分散液をボールミルに投入し、黒鉛化MCNDをボールミルで粉砕した。以上の工程により、一次分散液を作製した。ついで、一次分散液を攪拌しながらエタノールで30質量%に希釈したテフロン分散液(デュポン社製テフロン(登録商標)PTFEディスパーション)0.833gを少しずつ滴下することで、マイクロポア層用スラリーを作成した。このスラリーを先に作成したガス拡散層の片面にスプレーを用いて塗布し、アルゴン気流中80℃で乾燥した後に340℃に昇温した。以上の工程により、ガス拡散層上にマイクロポア層を積層した。
(3−7.MEAの作製)
次に、作製した触媒層を用いてMEA(膜電極複合体)を作製した。具体的には、ナフィオン膜(デュポン社製N112)をカッターナイフで6cm角の正方形に切り取り、テフロンシート上に塗布された触媒層を、カッターナイフで2.5cm角の正方形に切り取った。これらの触媒層をアノードおよびカソードとしてナフィオン膜の中心部にずれが無いようにはさむことで積層体を作製した。ついで、積層体を120℃、100kg/cmで10分間プレスした。プレス後の積層体を室温まで冷却した後、アノード、カソード共にテフロンシートのみを注意深くはがした。これにより、アノードおよびカソードの触媒層をナフィオン膜に定着させた。なお、プレス前の触媒層付テフロンシートの重量とプレス後にはがしたテフロンシートの重量との差から定着した触媒層の重量を求め、触媒層の組成の質量比より白金目付け量を算出し、0.10mg/cmであることを確認した。
次にマイクロポア層が形成されたガス拡散層をカッターナイフで2.5cm角の正方形に切り取った。ついで、切り取ったガス拡散層をアノードとカソードにずれが無いように積層することで、積層体を作製した。ついで、積層体を120℃、50kg/cmで10分間プレスすることで、MEAを作成した。
(3−8.燃料電池発電性能試験)
作製したMEAをそれぞれセルに組み込み、燃料電池測定装置を用いて燃料電池の性能を評価した。具体的には、以下の評価を行った。
まず、「高加湿」条件下での性能評価を行った。カソードに空気、アノードに純水素を、ガス利用率がそれぞれ30%と60%となるように供給した。それぞれのガス圧は、セル下流に設けられた背圧弁で圧力調整し、0.1MPaに設定した。セル温度は80℃に設定した。また、燃料電池に供給する空気と純水素をそれぞれ80℃に保温された蒸留水に通す(すなわち、バブリングを行う)ことで、加湿した。そして、加湿したガスをセルに供給した。このような条件でセルにガスを供給した後、セル電圧が0.6Vになるまで電流密度を徐々に増加してセル電圧を0.6Vで60分間固定した。その後、セル電圧を0.85Vに固定し、60分経過後の電流密度を発電性能として記録した。
発電性能結果は、比較例1の発電性能試験で得られた電流密度を基準とし、基準より低い電流密度の場合は×、基準より電流密度が0%超20%以下の範囲で高い場合は○、基準より電流密度が20%超の範囲で高い場合は◎とした。
次に、「低加湿」条件下での性能評価を行った。カソードに空気、アノードに純水素を、ガス利用率がそれぞれ30%と60%となるように供給した。それぞれのガス圧は、セル下流に設けられた背圧弁で圧力調整し、0.1MPaに設定した。セル温度は80℃に設定した。また、燃料電池に供給する空気と純水素をそれぞれ50℃に保温された蒸留水に通す(すなわち、バブリングを行う)ことで、加湿した。そして、加湿したガスをセルに供給した。このような条件でセルにガスを供給した後、セル電圧が0.6Vになるまで電流密度を徐々に増加してセル電圧を0.6Vで60分間固定した。その後、セル電圧を0.85Vに固定し、30分経過後の電流密度を発電性能として記録した。
発電性能結果は、比較例1の発電性能試験で得られた電流密度を基準とし、基準より低い電流密度の場合は×、基準より電流密度が0%超20%以下の範囲で高い場合は○、基準より電流密度が20%超の範囲で高い場合は◎とした。
(3−9.燃料電池耐久性能試験)
発電性能のいずれかが○または、◎の評価であったセルについては、発電性能試験の後に耐久性能試験を行った。耐久性能試験は、以下の工程で行った。すなわち、発電性能試験の後、カソードガスをArに変更し、十分にガス置換を行った。ここで、アルゴンガスは、80℃に保温された蒸留水に通す(すなわち、バブリングを行う)ことで、加湿した。ついで、ポテンショスタットを用いて、水素ガスが流通するアノードを基準としてカソードを0.6Vに4秒保持する処理、1.3Vに4秒保持する処理を200回繰り返した。その後、カソードガスを空気に置換し、燃料電池性能評価試験の条件で、発電性能試験を行った。ここで、空気は、50℃に保温された蒸留水に通す(すなわち、バブリングを行う)ことで、加湿した。電位変動前の電流密度を基準として、電位変動後の電流密度が70%超の場合評価を◎とし、70%以下50%超の場合、評価を○とし、50%以下40%超の場合を△、40%以下の場合、評価を×とした。
実施例1のマイクロポア層用炭素材料は、本実施形態の全ての要件を満たしてした。そして、高加湿発電性能試験の結果は◎、低加湿発電性能試験の結果は○、燃料電池耐久性能試験の結果は○であった。結果を表1にまとめて示す。
<4.実施例2〜4、比較例1〜6>
黒鉛化処理の温度を表1に示す温度とした他は実施例1と同様の処理を行った。すなわち、実施例1〜4、比較例1〜6では、黒鉛化処理前MCNDを用いて触媒層を作製し、黒鉛化MCNDを用いてマイクロポア層を作製した。さらに、黒鉛化MCNDを作製する際の温度条件を変更した。結果を表1にまとめて示す。
<5.実施例5、6>
実施例5、6では、表2に示す炭素材料を用いて触媒層を作製した。また、実施例2と同様の黒鉛化MCNDを用いてマイクロポア層を作製した。その他は実施例1と同様の処理を行った。結果を表2にまとめて示す。
<6.比較例7、8>
比較例7、8では、表3に示す炭素材料を用いて触媒層及びマイクロポア層を作製した他は、実施例1と同様の処理を行った。なお、マイクロポア層を構成する炭素材料に黒鉛化処理は行わなかった。結果を表3にまとめて示す。
<7.比較例9、10>
比較例9、10では、表4に示す炭素材料を用いて触媒層及びマイクロポア層を作製した他は、実施例1と同様の処理を行った。なお、マイクロポア層を構成する炭素材料に黒鉛化処理は行わなかった。結果を表4にまとめて示す。
Figure 2017139141
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Figure 2017139141
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<8.結果に関する考察>
実施例1〜4では、良好な評価結果が得られた。したがって、本実施形態によるマイクロポア層用炭素材料によって固体高分子形燃料電池からさらなる大電流を取り出せることが明らかとなった。さらに、実施例2〜4では、2つ以上の評価項目の結果が「◎」となった。実施例2〜4の結果によれば、Sout/Stotalの範囲が0.20以上0.25未満、水蒸気吸着量Yml/gが180ml/g以上220ml/g未満、Gバンドの半値幅が60cm−1以上66m−1未満となる場合に、特に良好な評価結果が得られている。このため、Sout/Stotalの好ましい範囲は0.20以上0.25未満、水蒸気吸着量Yml/gの好ましい範囲は180ml/g以上220ml/g未満、Gバンドの半値幅の好ましい範囲は60cm−1以上66m−1未満であることが明らかとなった。実施例3では、これらのパラメータがすべて好ましい範囲内の値となっているので、全評価項目で「◎」の評価となった。
一方、比較例1〜5では、高加湿条件下での評価が「×」となった。比較例1〜5の物性値に着目すると、水蒸気吸着量Yml/gが本実施形態の範囲よりも大きくなっていた。したがって、比較例1〜5では、黒鉛化MCNDの親水性が過剰に高くなったため、高加湿条件下での駆動時にマイクロポア層が目詰まりを起こしたと推定される。比較例6では、低加湿条件下での評価が「×」となった。比較的6の物性値に着目すると、水蒸気吸着量Yml/gが本実施形態の範囲よりも小さくなっていた。さらに、Gバンドの半値幅及びSout/Stotalが本実施形態の範囲よりも大きくなっていた。したがって、比較例5では、黒鉛化処理の温度が高すぎて、黒鉛化MCNDの疎水性が過剰に高くなったと推定される。このため、低加湿条件下での駆動時にマイクロポア層が水分を十分に吸引できなかったと推定される。
次に、実施例5、6を見ると、高加湿及び低加湿条件下での評価が「○」となった。一方、比較例7、8を見ると、すべての評価項目が「×」となった。実施例5、6、比較例7、8の構成に着目すると、いずれの例でも、触媒層の炭素材料として公知の炭素材料を使用した。ただし、実施例5、6では、マイクロポア層の炭素材料として本実施形態に係るマイクロポア層用炭素材料、すなわち黒鉛化炭素材料を使用した。このため、実施例6、7では、マイクロポア層が高い排水性を発揮し、高加湿及び低加湿条件下での評価が「○」となったと推定される。ただし、実施例5、6、比較例7、8のすべてにおいて、耐久性は「×」となった。したがって、燃料電池の耐久性の観点からは、黒鉛化処理前MCNDを用いて触媒層を作製し、黒鉛化MCNDを用いてマイクロポア層を作製することが好ましいことがわかった。いずれにしても、本実施形態によるマイクロポア層用炭素材料を用いてマイクロポア層を構成することで、固体高分子形燃料電池からさらなる大電流を取り出せる(すなわち、高加湿及び低加湿のいずれの条件下でも、大電流が取り出せる)ことが明らかとなった。
次に、比較例9、10を見ると、低加湿条件下での評価が「○」となったが、他の評価項目は「×」となった。比較例9、10では、親水性に優れる黒鉛化処理前MCNDを用いて触媒層の炭素材料を作製したので、低加湿条件下での特性が良好になったと推定される。一方、高加湿条件下では、マイクロポア層による排水性が不足し、フラッディング等が生じたと推定される。また、比較例7、8では、マイクロポア層を構成する炭素材料が公知の炭素材料なので、耐久性が低下したと推定される。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 固体高分子形燃料電池
10、20 セパレータ
31、41 ガス拡散層
32、42 マイクロポア層
50、60 触媒層
70 電解質膜

Claims (7)

  1. 固体高分子形燃料電池のマイクロポア層に使用可能なマイクロポア層用炭素材料であって、
    BET法で評価されるBET比表面積SBET(m/g)が800m/g以上であり、
    tプロット解析で評価される全比表面積Stotalと外部比表面積Soutとの比Sout/Stotalが0.1以上0.3未満であり、
    25℃、相対湿度90%の水蒸気吸着量Yml/gが100ml/g以上300ml/g未満であることを特徴とする、マイクロポア層用炭素材料。
  2. ラマン分光法により測定されるGバンドの半値幅が60cm−1以上67cm−1未満であることを特徴とする、請求項1記載のマイクロポア層用炭素材料。
  3. 前記tプロット解析は、2600℃以上で熱処理された炭素材料を標準物質として使用して行われることを特徴とする、請求項1または2に記載のマイクロポア層用炭素材料。
  4. 固体高分子形燃料電池のマイクロポア層であって、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロポア層用炭素材料を含むことを特徴とする、マイクロポア層。
  5. 請求項4記載のマイクロポア層を含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池。
  6. 触媒層に含まれる炭素材料は、
    BET法で評価されるBET比表面積SBET(m/g)が800m/g以上であり、
    tプロット解析で評価される全比表面積Stotalと外部比表面積Soutとの比Sout/Stotalが0.1以上0.3未満であることを特徴とする、請求項5記載の固体高分子形燃料電池。
  7. 前記触媒層はカソードであることを特徴とする、請求項6記載の固体高分子形燃料電池。
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