以下本発明の実施の形態を図1〜図26に基づいて説明する。図1に第1実施形態の車輪用軸受装置を示す。この車輪用軸受装置は、ハブ輪1を含む複列の車輪用軸受2と、等速自在継手3とが一体化されてなる。なお、以下の説明において、インボード側とは、車両に取り付けた状態で、車両の車幅方向内側となる側を意味し、アウトボード側とは、車両に取り付けた状態で車両の車幅方向外側となる側を意味する。
等速自在継手3は、外側継手部材としての継手外輪5と、継手外輪5の内側に配された内側継手部材としての継手内輪6と、継手外輪5と継手内輪6との間に介在してトルクを伝達する複数のボール7と、継手外輪5と継手内輪6との間に介在してボール7を保持するケージ8とを主要な部材として構成される。継手内輪6はその孔部内径6aにシャフト10の端部10aを圧入することによりスプライン嵌合してシャフト10とトルク伝達可能に結合されている。なお、シャフト10の端部10aには、シャフト抜け止め用の止め輪9が嵌合されている。
継手外輪5はマウス部11と軸部(ステム部とも呼ばれる)12とからなり、マウス部11は一端にて開口した椀状で、その内球面13に、軸方向に延びた複数のトラック溝14が円周方向等間隔に形成されている。そのトラック溝14はマウス部11の開口端まで延びている。継手内輪6は、その外球面15に、軸方向に延びた複数のトラック溝16が円周方向等間隔に形成されている。
継手外輪5のトラック溝14と継手内輪6のトラック溝16とは対をなし、各対のトラック溝14,16で構成されるボールトラックに1個ずつ、トルク伝達要素としてのボール7が転動可能に組み込んである。ボール7は継手外輪5のトラック溝14と継手内輪6のトラック溝16との間に介在してトルクを伝達する。ケージ8は継手外輪5と継手内輪6との間に摺動可能に介在し、外球面8aにて継手外輪5の内球面13と嵌合し、内球面8bにて継手内輪6の外球面15と嵌合する。なお、この場合の等速自在継手3は、マウス部11の開口側で外輪トラック溝14を直線状とし、マウス部11の奥部側で継手内輪トラック溝16をストレートにしたアンダーカットフリー型を示しているが、ツェパー型等の他の等速自在継手であってもよい。
また、マウス部11の開口部はブーツ60にて塞がれている。ブーツ60は、大径部60aと、小径部60bと、大径部60aと小径部60bとを連結する蛇腹部60cとからなる。大径部60aがマウス部11の開口部に外嵌され、この状態でブーツバンド61にて締結される。また、小径部60bがシャフト10のブーツ装着部10bに外嵌され、この状態でブーツバンド62にて締結されている。
図2に示すように、ハブ輪1は、筒部20と、筒部20のアウトボード側の端部に設けられる車輪取り付け用のフランジ21とを有する。筒部20の孔部22は、軸方向中間部の軸部嵌合孔22aと、アウトボード側のテーパ孔22bと、インボード側の大径孔22cとを備える。テーパ孔22bは、アウトボード端部側に向かって拡径し、このテーパ孔22bの継手軸線に対するテーパ角度θを20°≦θ≦60°としている。軸部嵌合孔22aにおいて、後述する凹凸嵌合構造Mを介して継手外輪5の軸部12とハブ輪1とが結合される。また、軸部嵌合孔22aと大径孔22cとの間には、テーパ部(テーパ孔)22dが設けられている。このテーパ部22dは、継手外輪5の軸部12の軸端側に向けて縮径している。テーパ部22dのテーパ角度θ3は、例えば15°〜75°とされる。
ハブ輪1のインボード側の外周面には、小径の段差部23が形成される。この段差部23に内輪24を嵌合することで複列の内側軌道面(インナレース)28,29を有する内方部材が構成される。複列の内側軌道面のうち、アウトボード側の内側軌道面28はハブ輪1の外周面に形成され、インボード側の内側軌道面29は、内輪24の外周面に形成されている。車輪用軸受2は、この内方部材と、内方部材の外径側に配置され、内周に複列の外側軌道面(アウタレース)26,27を有する外方部材25と、外方部材25のアウトボード側の外側軌道面26とハブ輪1の内側軌道面28との間、および外方部材25のインボード側の外側軌道面27と内輪24の内側軌道面29との間に配置された転動体30としてのボールとで構成される。ハブ輪1と、ハブ輪1の外周に圧入される内輪24とで、内側軌道面28,29を有する内方部材を構成するので、車輪用軸受装置の軽量・コンパクト化を図ることができる。なお、外方部材25の両開口部にはシール部材S1、S2が装着されている。
この車輪用軸受2は、ハブ輪1のインボード側の円筒状端部を加締め、加締めによって形成された加締部31で内輪24を押圧することによって軸受内部に予圧を付与する構造である。これによって、内輪24をハブ輪1に固定することができる。ハブ輪1の端部に形成した加締め部31で軸受2に予圧を付与した場合、継手外輪5のマウス部11で予圧を付与する必要がない。従って、予圧量を考慮せずに継手外輪5の軸部12を圧入することができ、ハブ輪1と継手外輪5との連結性(組み付け性)の向上を図ることができる。
ハブ輪1の加締め部31とマウス部11の肩部(バック面)11aとは当接させている。この場合、継手外輪5の軸部12の位置決めが行われるので、車輪軸受装置の寸法精度が安定すると共に、凹凸嵌合構造Mの軸方向長さを安定化させて、トルク伝達性の向上を図ることができる。このようにハブ輪1の加締め部31とマウス部11のバック面11aとを当接させる場合、両者の接触面圧は100MPa以下とするのが望ましい。接触面圧が100MPaを超えると、大トルク負荷時に継手外輪5とハブ輪1との捩れ量に差が生じ、この差によって接触部に急激なスリップが生じて異音を発生するおそれがあるからである。従って、接触面圧を100MPa以下とすることで、異音の発生を防止して静粛な車輪用軸受装置を提供することができる。
ハブ輪1のフランジ21にはボルト装着孔32が設けられて、ホイールおよびブレーキロータをこのフランジ21に固定するためのハブボルト33がこのボルト装着孔32に装着される。ハブ輪1には、従来の車輪軸受装置のハブ輪に設けられていたパイロット部165が設けられていない(図24参照)。
凹凸嵌合構造Mは、図3(a)および図3(b)に示すように、例えば、軸部12のアウトボード側の端部に設けられた軸方向に延びる凸部35と、ハブ輪1の孔部22の内径面(本実施形態では、軸部嵌合孔22aの内径面37)に形成される凹部36とで構成される。凸部35とその凸部35に嵌合するハブ輪1の凹部36との嵌合部位38全域が密着している。軸部12のアウトボード側の端部の外周面に、軸方向に延びる複数の凸部35が周方向に沿って所定ピッチで配設され、ハブ輪1の孔部22の軸部嵌合孔22aの内径面37に、凸部35が嵌合する軸方向の複数の凹部36が周方向に沿って形成されている。凸部35と凹部36とは、周方向全周にわたってタイトフィットしている。
この場合、各凸部35は、図4(a)に示すように、その断面が凸アール状の頂部を有する三角形状(山形状)であり、各凸部35の凹部との嵌合領域は、図3(b)に示す範囲Aである。断面における凸部35の円周方向両側の中腹部から頂部に至る範囲で各凸部35と凹部36が嵌合している。周方向の隣り合う凸部35間において、ハブ輪1の内径面37よりも内径側に隙間40が形成されており、そのため各凸部35の側面35bには、凹部36と嵌合しない領域Bが形成されている。
凸部35は、その圧入開始側の端面35aの縁に丸みのない角部39を有する。ここで、「角部39」とは、端面35aと凸部35の周面35bとが直線的に交わることによって構成された山形の稜(多面体の隣り合った二つの面が交わってなす辺)を意味する。よって、角部にC面取りを施したものは除外されることとなるが、肉眼でC面取りがないと認められても、微視的に観察すればC面取り状のものが形成されていると認められる場合がある。また、角部は「丸みのない」ものとするが、同様に肉眼では確認できなくても、微視的にはR面取り状のものが形成されていると認められる場合がある。以上の事情から、本発明において、0.1mm以下のR面取りあるいは0.1mm以下のC面取りが形成された角部は、「丸みのない角部」に含まれるものとする。例えばモジュール0.48で歯数58枚の雄スプライン41を構成した場合に、R面取りの場合ではR0.02〜0.05mm程度のもの、C面取りの場合ではC0.02〜0.05mm程度のものは「丸みのない角部」に含める。ここで、モジュールとは、ピッチ円直径を歯数で割ったものである。
凸部35としては、図4(b)に示すようにその頂部が平坦面44で形成されたものも使用することができる。
図1に示すように、継手外輪5の軸部12の端部とハブ輪1の内径面37との間に軸部の抜けを規制するための抜け止め構造M1が設けられている。この抜け止め構造M1は、継手外輪5の軸部12の端部からアウトボード側に延びてテーパ孔22bと軸方向で係合するテーパ状係止片65で構成される。テーパ状係止片65は、インボード側からアウトボード側に向かって拡径するリング状体からなり、その外周面65aの少なくとも一部がテーパ孔22bに圧接もしくは接触している。
例えば車両発進時、車輪用軸受2の内輪24と等速自在継手3の継手外輪5のバック面11aとの面圧が高くなると、車輪用軸受2の内輪24と等速自在継手3の継手外輪5のバック面11aとの間で、カッキン音と通称されるスティックスリップ音が発生するおそれがある。しかしながら、本発明ではテーパ孔22bの継手軸線に対するテーパ角度θを20°≦θ≦60°としているので、凹凸嵌合構造の耐抜け荷重を維持しつつ車輪用軸受2のインボード側端部とマウス部11のバック面11aとの面圧が高くなるのを防止することができる。これにより、カッキン音の発生を防止でき、しかも効果的に抜け止め効果を発揮できる。θが20°未満では、車輪用軸受2の内輪24のインボード側端部と等速自在継手3の継手外輪5のバック面11aとの面圧を低減できるが、抜け止め効果が得られなくなる。また、60°を超えると、耐抜け荷重は高くなるが、抜け止め部が等速自在継手3を軸方向に押し付ける力が大きくなって、車輪用軸受2の内輪24のインボード側端部と等速自在継手3の継手外輪5のバック面11aとの面圧が高くなるため、カッキン音が大きくなる。しかも、円筒面をテーパ形状に拡径するため、先端部(抜け止め部の大径側)の肉厚が薄くなり、期待通りの耐抜け荷重を得ることができなくなる。
この車輪用軸受装置では、凹凸嵌合構造Mへの異物侵入防止手段Wを、凹凸嵌合構造Mよりもアウトボード側に設けている。
また、図25に示すように、ハブ輪1の加締部31とマウス部11のバック面11aとの間の隙間98を設けてもよい。この場合、インボード側では、図26(a)及び図26(b)に示すように、ハブ輪1の加締部31とマウス部11のバック面11aとの間の隙間98にシール部材99が嵌着され、このシール部材99でインボード側の異物侵入防止手段W1が構成されている。隙間98は、ハブ輪1の加締部31とマウス部11のバック面11aとの間から、ハブ輪1の大径孔22cと軸部12との間に至るまで形成される。このように、隙間98のコーナ部、すなわちハブ輪1の加締部31と大径部12cとの境界部分にシール部材99を配置し、ハブ輪1の端部とマウス部11の底部との間の隙間98を塞ぐことで、この隙間98からの凹凸嵌合構造Mへの雨水や異物の侵入を防止することができる。シール部材99としては、例えば、図26(a)に示すような市販のOリング等を使用することができる。シール部材99は、ハブ輪1の端部とマウス部11の底部との間に介在可能である限り任意のものが使用可能であり、Oリング以外にも、例えば図26(b)に示すようなガスケット等のようなものも使用可能である。
アウトボード側の異物侵入防止手段W2は、係合部であるテーパ状係止片65と、テーパ孔22bの内径面との間に介在されるシール材(図示省略)とで構成することができる。この場合、テーパ状係止片65にシール材が塗布されることになる。すなわち、塗布後に硬化してテーパ状係止片65と、テーパ孔22bの内径面の間において密封性を発揮できる種々の樹脂からなるシール材をテーパ状係止片65に塗布すればよい。なお、このシール材としては、この車輪用軸受装置が使用される雰囲気中において劣化しないものが選択される。
凸部35と凹部36との間にシール材を介在させ、これによって、異物侵入防止手段W(W3)を構成してもよい。この場合、凸部35の表面に、塗布後に硬化して、嵌合接触部位38間において密封性を発揮できる種々の樹脂からなるシール材を塗布すればよい。
上記凹凸嵌合構造Mは、以下の手順で得ることができる。
先ず、継手外輪5の軸部12に、公知の加工方法(転造加工、切削加工、プレス加工、引き抜き加工等)を用いて、軸方向に延びた多数の歯を有する雄スプライン41を形成する。雄スプライン41のうち、歯底41bを通る円、歯先41a、および歯先41aにつながる両側面で囲まれた領域が凸部35となる。
雄スプライン41は、モジュールを0.5以下とし、通常使用されるスプラインのモジュールよりも小さい歯とするのが望ましい。これにより、スプライン41の成形性の向上を図ることができるとともに、雄スプライン41をハブ輪1の軸部嵌合孔22aに圧入する際の圧入荷重を小さくすることができる。軸部12の凸部35を雄スプライン41で形成することにより、この種のシャフトにスプラインを形成するための加工設備を活用することができ、低コストに凸部35を形成することが可能である。
次いで、図5(b)にクロスハッチングで示すように、軸部12の外径面に熱硬化処理を施して硬化層Hを形成する。硬化層Hは、凸部35の全体および歯底41bも含めて円周方向に連続して形成される。なお、硬化層Hの軸方向の形成範囲は、少なくとも雄スプライン41のアウトボード側の端縁から、継手外輪5のマウス部11の底壁の内径部に至るまでの連続領域を含んだ範囲とする。熱硬化処理としては、高周波焼入れや浸炭焼入れ等の種々の熱処理を採用することができる。ここで、高周波焼入れとは、高周波電流の流れているコイル中に焼入れに必要な部分を入れ、電磁誘導作用により、ジュール熱を発生させて、伝導性物体を加熱する原理を応用した焼入れ方法である。また、浸炭焼入れとは、低炭素材料の表面から炭素を浸入/拡散させ、その後に焼入れを行う方法である。
その一方、ハブ輪1の内径側は未焼き状態に維持される。すなわち、ハブ輪1の孔部22の内径面37は熱硬化処理を行わない未硬化部(未焼き状態)とする。継手外輪5の軸部12の硬化層Hとハブ輪1の未硬化部との硬度差は、HRCで20ポイント以上とする。例えば、硬化層Hの硬度を50HRCから65HRC程度とし、未硬化部の硬度を10HRCから30HRC程度とする。ハブ輪1の内径面37のうち、少なくとも軸部嵌合孔22aの内径面37が未硬化部であれば足り、その他の内径面には熱硬化処理を施しても構わない。また、上記硬度差が確保されるのであれば、「未硬化部」とすべき上記領域に熱硬化処理を施してもよい。
この際、凸部35の高さ方向の中間部を、凹部形成前のハブ輪1の軸部嵌合孔22の内径面37の位置に対応させる。すなわち、図8に示すように、軸部嵌合孔22aの内径面37の内径寸法Dを、雄スプライン41の凸部35の最大外径寸法(雄スプライン41の歯先41aをとおる外接円の直径寸法)D1よりも小さく、雄スプライン41の歯底を結ぶ円の直径寸法D2よりも大きくなるように設定する(D2<D<D1)。これにより、少なくとも丸みのない角部39は凸部の端面35aの縁のうち、凹部36を形成する部位に配置される。
図5(b)に示すように、軸部12の端面12aには、その外周縁部から前記テーパ状係止片65を構成するための短円筒部66が軸方向に沿って突出して形成される。短円筒部66の外径D4は孔部22の嵌合孔22aの内径寸法Dよりも小さく設定されている。この短円筒部66は、後述するように、軸部12のハブ輪1の孔部22への圧入時の調芯部材となる。
次いで、図5(b)に示すように、継手外輪5の軸部12の付け根部(マウス部側)にOリング等のシール部材99を外嵌し、ハブ輪1の軸心と等速自在継手3の継手外輪5の軸心とを合わせた状態で、ハブ輪1の孔22に継手外輪5の軸部12を圧入する。この際、軸部12のうち、雄スプライン部41および短円筒部66を含むアウトボード側領域の外径面に予めシール材を塗布しておく。上記のように、ハブ輪1の孔部22に圧入方向に沿って縮径するテーパ部22dを形成しているので、このテーパ部22dが圧入開始時のハブ輪孔部22と軸部12との芯出しを行なう。また、軸部嵌合孔22aの内径寸法D、凸部35の最大外径寸法D1、および雄スプライン41の歯底の最小外径寸法D2とが前記のような関係であるので、軸部12をハブ輪1の軸部嵌合孔22aに圧入することにより、この凸部35がハブ輪1のインボード側端面の内径部に食い込み、ハブ輪1の肉を切り込む。軸部12を押し進めることで、ハブ輪1の軸部嵌合孔22aの内径面37が凸部35で切り出され、又は押出されて、内径面37に軸部12の凸部35に対応した形状の凹部36が形成される。この際、凸部35の端面35aの縁に丸みのない角部39が形成されているので、凸部35によるハブ輪1の切り込みがスムーズに行われ、圧入荷重の増大を防止することができる。また、軸部12の凸部35の硬度をハブ輪1の軸部嵌合孔22aの内径面37よりも20ポイント以上高くしているので、ハブ輪1の内径面37への凹部形成が容易となる。また、軸部側の硬度を高くすることで、軸部12の捩り強度を向上させることができる。
この圧入工程を経ることによって、図3(a)および図3(b)に示すように、軸部12の凸部35で、これに嵌合する凹部36が形成される。凸部35が、ハブ輪1の内径面37に食い込んでいくことによって、孔部22が僅かに拡径した状態となり、凸部35の軸方向の移動を許容する。その一方で、軸方向の移動が停止すれば、内径面37が元の径に戻ろうとして縮径することになる。言い換えれば、凸部35の圧入時にハブ輪1が外径方向に弾性変形し、この弾性変形分の予圧が凸部35のうち、凹部36と嵌合する部分の表面に付与される。このため、凹部36は、その軸方向全体にわたって凸部35の表面と密着する。これによって凹凸嵌合構造Mが構成される。凸部35と凹部36の嵌合部38には、シール材が介在しているので、この嵌合部38への異物の侵入防止を図ることができる。
また、軸部12の圧入に伴い、凹部36の表面には加工硬化が生じる。このため、凹部36側のハブ輪1の内径面37が硬化して、回転トルク伝達性の向上を図ることができる。
テーパ部22dは、軸部12の圧入を開始する際のガイドとして機能させることができる。そのため、ハブ輪1の孔部22に対して継手外輪5の軸部12を、芯ずれを生じさせることなく圧入させることができる。また、短円筒部66の外径D4を、孔部22の嵌合孔22aの内径寸法Dよりも小さく設定しているので、短円筒部66を調芯部材として機能させることができ、芯ずれを防止しつつ軸部12をハブ輪1に圧入することができ、より安定した圧入が可能となる。
凹凸嵌合構造Mは、極力、軸受2の軌道面26、27、28、29の内径側を避けて配置することが求められる。特にインナレース28、29上における接触角が通る線との交点の内径側を避け、これらの交点の間の軸方向一部領域に凹凸嵌合構造Mを形成することが望まれる。これにより、軸受軌道面におけるフープ応力の発生を抑えることができる。従って、転がり疲労寿命の低下、クラック発生、及び応力腐食割れ等の軸受の不具合発生を防止することができ、高品質な軸受を提供することができる。
継手外輪5の軸部12をハブ輪1の孔部22に圧入する際には、継手外輪5のマウス部11の外径面に設けられた周方向溝16の側壁18に、図18に示すような仮想線で示す圧入用治具Kを係合させて、この圧入用治具Kから側壁18に圧入荷重(軸方向荷重)を付与すればよい。さらに、マウス部11の開口端面を図示省略の押圧用治具にて押圧力を付与すればよい。なお、周方向溝16としては周方向全周に設けても、周方向に沿って所定ピッチで設けてもよい。使用する圧入用治具も、これらの周方向溝16の形状に対応して軸方向荷重を付与できるものであればよい。
凹凸嵌合構造Mを介して継手外輪5の軸部12とハブ輪1とが一体化された状態では、図6に示すように、短円筒部66が嵌合孔22aからアウトボード側に突出する。
この短円筒部66は、治具67を使用して拡径方向に塑性変形される。治具67は、円柱状の本体部68と、この本体部68の先端部に連設される円錐台部69とを備える。治具67の円錐台部69は、その傾斜面69aの傾斜角度がテーパ孔22bの傾斜角度と略同一とされ、かつ、その先端の外径が短円筒部66の内径と同一乃至僅かに短円筒部66の内径よりも小さい寸法に設定されている。治具67の円錐台部69を、テーパ孔22bを介してアウトボード側から嵌入することによって矢印α方向の荷重を付加し、これによって、図7に示すように、短円筒部66に矢印β方向の拡径力を付与する。この際、治具67の円錐台部69によって、短円筒部66が外径側に塑性変形し、テーパ孔22bの内径面に押し付けされる。これに伴い、予め短円筒部66の外径面に塗布されたシール材がテーパ孔22bの内径面に密着し、異物侵入防止手段W2を構成する。また、塑性変形した短円筒部66がテーパ孔22bの内径面と係合するテーパ状係止片65となり、軸部12の抜け止め構造M1を構成する。なお、治具67により矢印α方向の荷重を付加する際には、ハブ輪1や等速自在継手3等の一部を図示しない固定部材で支持して荷重を受ければよい。短円筒部66の内径面は軸端側に拡径するテーパ形状でも良い。このような形状にしておけば、鍛造で軸部12の内径面を成形することが可能となり、コスト低減に繋がる。
また、治具67の矢印α方向の荷重を低減させるため、短円筒部66に切り欠きを入れても良いし、治具67の円錐台部69の円錐面を周方向で部分的に配置するものでも良い。短円筒部66に切り欠きを入れた場合、短円筒部66を拡径し易くなる。また、治具67の円錐台部69の円錐面を周方向で部分的に配置するものである場合、短円筒部66を拡径させる部位が円周上の一部になるため、治具67の押し込み荷重を低減させることができる。
この凹凸嵌合構造Mでは、ハブ輪1に対する凸部35の圧入代をΔdとし、凸部の高さをhとして、圧入代Δdは、図8に示すように、軸部12の最大外径寸法D1(凸部35の歯先41aを通る外接円直径)と、ハブ輪1の軸部嵌合孔22aの内径寸法Dとの径差(D1−D)で表される。これにより、凸部35の高さ方向中間部付近がハブ輪1の内径面に食い込むことになるので、凸部35の圧入代を十分に確保することができ、凹部36を確実に形成することが可能となる。
以上に述べた凹凸嵌合構造Mでは、凸部35と凹部36との嵌合部位38の全体が密着しているので、径方向及び円周方向においてガタが生じる隙間が形成されない。このため、嵌合部位の全てが回転トルク伝達に寄与し、安定したトルク伝達が可能であり、しかも、異音の発生もない。
また、凹部36が形成される部材(この場合、ハブ輪1)には、雌スプライン等を予め形成しておく必要がない。従って、生産性に優れ、かつスプライン同士の位相合わせを必要としないことから組立性の向上を図ることができる。さらに、圧入時の歯面の損傷を回避することができ、安定した嵌合状態を維持できる。
特に、凸部35に設けた丸みのない角部39によって、ハブ輪1の孔部22の内径面37を切り出す、又は押出すことができるので、圧入荷重の増大を防止できる。また、ハブ輪1の内径側は比較的軟らかいため、ハブ輪1の凹部は、軸部12の凸部35と高い密着性をもって嵌合する。そのため、径方向及び円周方向におけるガタの防止により一層有効となる。
以上に述べた車輪用軸受装置では、継手外輪5の軸部12の端部からアウトボード側に延びるテーパ状係止片65をテーパ孔22bの内径面に圧接もしくは接触させることで、継手外輪5の軸部12の端部とハブ輪1の内径面37との間に軸部12の抜け止め構造M1を設けている。この抜け止め構造M1によって、ハブ輪1からの継手外輪5の軸部12のインボード側への抜けを防止し、安定した連結状態を維持することができる。また、抜け止め構造M1がテーパ状係止片65であるので、従来のようなねじ締結を省略できる。このため、軸部12にハブ輪1の孔部22から突出するねじ部を形成する必要がなく、軽量化を図ることができるとともに、ねじ締結作業を省略でき、組立作業性の向上を図ることができる。しかも、テーパ状係止片65では、継手外輪5の軸部12の一部を拡径させればよく、抜け止め構造M1の形成を容易に行うことができる。なお、継手外輪5の軸部12のアウトボード側への移動は、軸部12をさらに圧入する方向への押圧力が必要であり、継手外輪5のマウス部11の底部がハブ輪1の加締部31に当接しているので、ハブ輪1から継手外輪5の軸部12が抜けることがない。
また、以上に述べた車輪用軸受装置では、凹凸嵌合構造Mのインボード側およびアウトボード側にそれぞれ異物侵入防止手段W2を設けているので、凹凸嵌合構造Mへの軸方向両端側からの雨水や異物の侵入が防止され、凸部35と凹部36との密着性を長期間安定して維持することが可能となる。
軸部12に形成される凸部35として、図9(a)〜図9(c)に示すように、凸部35の圧入開始側の端面35aの頂部に切欠部53を設けたものも使用することができる。図9(a)はC面取りで形成した切欠部53(図10(a)参照)、図9(b)はR面取りで形成した切欠部53(図10(b)参照)を例示している。この他、図9(c)及び図10(c)に示すように、外径側の一つのコーナ部にC面取り状の切欠部53を形成してもよい。なお、丸みのない角部39は、図9(a)、9(b)の場合には切欠部53を除く端面35aの両斜辺で構成することができ、図9(c)の場合には切欠部53を除く端面35aの両斜辺および頂辺で構成することができる。
このように切欠部53を設けることによって、圧入時等における凸部35の圧入開始側の端面35aにおいて、頂部の欠けや変形等の損傷を防止することができる。このため、雄スプライン41の取扱いが容易となり、凸部35の圧入開始端において保護対策を別途施す必要がなく、管理工数を削減できて低コスト化を図ることができる。しかも、凸部35に硬度をあげるための焼入れ処理を行う場合、焼き割れの発生を防止することもできる。
切欠部53を設けた場合、図10(a)〜図10(c)に示すように、凸部35の頂部54から切欠部53の反頂部側の端縁53aまでの径方向長さaは、ハブ輪1に対する凸部35の圧入代をΔd(軸部12の最大外径寸法D1と、ハブ輪1の軸部嵌合孔22aの内径寸法Dとの径差(D1−D)で表される:図8参照)として、0<a<Δd/2の範囲に設定される。これは、図9(a)〜図9(c)に示すTUVWの平面上に凸部35を投影したとき、図10(a)〜図10(c)に示すように、ハブ輪1の内径面37よりも外径側に、切欠部53の反頂部側の端縁53aが存在することを意味する。この場合、丸みのない角部39が内径面37よりも外径側に形成されるので、内径面37を確実に切り込むことができる。具体的には、凸部35の頂部から切欠部53の反頂部側の端縁までの径方向長さaは0.3mm以下とするのが好ましい。図9(a)および図9(c)に示すC面取りの傾斜角度や、図9(b)に示すR面取りの曲率半径は、0<a<Δd/2の関係式を満たす範囲で任意に設定できる。
図10(a)〜図10(c)では、軸方向の断面において凸部35の圧入開始側端面35aと軸線とがなす交差角を90°としているが、図11と図12(a)に示すように、交差角θ1を90°よりも小さくし、あるいは図12(b)に示すように、θ1を90°よりも大きく設定することも可能である。
この交差角θ1は、50°≦θ1≦110°の範囲に設定するのが望ましい。交差角θ1が50°未満では、圧入荷重が増大すると共に、凹凸嵌合構造Mの成形性が悪化し、交差角θ1が110°を越えれば、端面35aが圧入方向側へ傾斜しすぎて凸部35に欠けが生じるおそれがあるからである。より好ましくは、交差角θ1を70°≦θ1≦110°の範囲に設定する。
凹凸嵌合構造Mでは、図13(a)に示すように、凸部35のピッチ円上において、径方向線(半径線)と凸部の側面35bとが成す角度をθ2としたときに、0°<θ2<45°とする。ここで、凸部ピッチ円とは、凸部35の側面35bのうち、凹部36に嵌合する領域と凹部36に嵌合しない領域との境界部を通る円C1から、凸部35の頂部41aに至るまでの距離の中間点を通る円C2である。なお、図13(a)では、θ2を30°程度としている。
凸部35の断面形状として、前記図13(a)では、頂部をアール状にした断面三角形状を例示しているが、図13(b),図13(c)に示すような他の形状の凸部35を採用することもできる。図13(b)は、凸部35の断面形状を矩形状としたもの、図13(c)は歯先が約90°をなす三角形状としたものである。図13(b)の例ではθ2は約0°であり、図13(c)の例ではθ2は約45°である。
図14に、抜け止め構造M1の他の構成例を示す。この車輪用軸受装置では、軸部12に図5に示す短円筒部66を形成せず、軸部12の中実状の一端部に外径方向へ突出するテーパ状係止片70を設けて軸部12の抜け止め構造M1を構成している。
このテーパ状係止片70は、図15に示す治具71を使用して形成することができる。治具71は、円柱状の本体部72と、この本体部72の先端部に連設される円筒部73とを備え、円筒部73の外周面の先端に切欠部74を設けることで、円筒部73の先端にくさび部75が形成されている。くさび部75を軸部12のアウトボード側の端部に打ち込めば(矢印α方向の荷重を付加すれば)、切欠部74によって、図16に示すように、軸部12の軸端の外径側領域が外径側に塑性変形する。これによって、テーパ状係止片70が形成され、テーパ状係止片70の少なくとも一部がテーパ孔22bの内径面に圧接もしくは接触することになる。このため、図1等に示すテーパ状係止片65と同様に、ハブ輪1からの軸部12の抜けを確実に防止することができる。図示例では、円筒部73の外径面に切欠部74を設けてくさび部75を形成しているが、内径面に切欠部を設けてくさび部75を形成してもよい。テーパ状係止片70の外径面とテーパ孔部22bの内径面との間にシール材を介在させて異物侵入防止手段W2を構成することもできる。
このテーパ状係止片70は、図1等に示すテーパ状係止片65と同様に、ハブ輪1からの軸部12の抜けを確実に防止することができる。テーパ状係止片70と段付面22eとの間にシール材を介在させて、異物侵入防止手段W2を構成してもよい。
テーパ状係止片70は、図17(a)に示すように、環状に連続して形成する他、図17(b)に示すように、複数のテーパ状係止片70を周方向に沿って所定ピッチで間欠配置してもよい。図17(b)に示すテーパ状係止片70は、押圧部が周方向に沿って所定ピッチ(例えば、90°ピッチ)で配設された治具を使用することによって形成することができる。
ハブ輪1に対して継手外輪5の軸部12を圧入する際には、図18および図19に示すように、凸部35の切り出しまたは押し出し作用で凹部36から材料がはみ出し、はみ出し部45が形成される。はみ出し部45は、凸部35のうち、凹部36と嵌合する部分の容積に相当する量が生じる。
このはみ出し部45を放置すれば、これが脱落して車両の内部に入り込むおそれがある。これに対し、図18および図19に示すように、軸部12の外径面に、はみ出し部45を収納するポケット部50を形成すれば、はみ出し部45は、カールしつつポケット部50内に収納され、保持されるため、はみ出し部45の脱落を防止して、上記不具合を解消することができる。
ポケット部50は、例えば軸部12の雄スプライン41よりもアウトボード側の外径面に周方向溝51を設けることによって形成することができる。この場合、硬化層Hは、図20のクロスハッチングで示すように、ポケット部50には設けず、雄スプライン41のアウトボード側の端縁から継手外輪5のマウス部11の底壁の一部までの連続領域に形成する。図20では、硬化層Hをポケット部50まで到達させていないが、ポケット部にまで硬化層Hを到達させてもよい。
図3に示す雄スプライン41では、一例として、凸部35のピッチと凹部36のピッチとが同一値に設定されている。このため、図3(b)に示すように、凸部35の高さ方向の中間部において、凸部35の周方向厚さLと、隣接する凸部間の溝幅L0とがほぼ同一となっている。
これに対して、図21(a)に示すように、凸部35の高さ方向の中間部において、凸部35の周方向厚さL2を、隣接する凸部間の溝幅L1よりも小さくしてもよい。換言すれば、凸部35の高さ方向の中間部において、軸部12側の凸部35の周方向厚さ(歯厚)L2を、ハブ輪1側の凸部43の周方向厚さ(歯厚)L1よりも小さくする。
各凸部35において上記関係を満たすことにより、軸部12側の凸部35の周方向厚さL2の総和Σ(B1+B2+B3+・・・)を、ハブ輪1側の凸部43の周方向厚さの総和Σ(A1+A2+A3+・・・)よりも小さく設定することが可能となる。これによって、ハブ輪1側の凸部43のせん断面積を大きくすることができ、ねじり強度を確保することができる。しかも、凸部35の歯厚が小であるので、圧入荷重を小さくでき、圧入性の向上を図ることができる。
この場合、全ての凸部35,43について、L2<L1の関係を満足させる必要はなく、周方向厚さの総和がハブ輪1側の凸部43における周方向厚さの総和よりも小さくなる限り、一部の凸部35、43については、L2=L1とし、あるいはL2>L1に設定することができる。
図21(a)では、凸部35を断面台形に形成しているが、図21(b)に示すように、インボリュート形状の断面に形成することもできる。
以上の各実施形態では、軸部12に雄スプライン41を形成することで、軸部側に凸部35を形成した場合を例示しているが、これとは逆に、図22(a)及び25(b)に示すように、ハブ輪1の孔部22の内径面に雌スプライン61を形成することで、ハブ輪1側に凸部35を形成してもよい。この場合、軸部12に雄スプライン41を形成した場合と同様に、例えば、ハブ輪1に雌スプライン61に熱硬化処理を施し、軸部12の外径面は未焼き状態とする等の手段で、ハブ輪1の凸部35の硬度を軸部の外径面よりもHRCで20ポイント以上硬くする。雌スプライン61は、公知の転造、切削加工、プレス加工、引き抜き加工等の種々の加工方法によって、形成することができる。熱硬化処理としても、高周波焼入れ、浸炭焼入れ等の種々の熱処理を採用することができる。凸部35のうち、圧入開始側の端面の縁には、丸みのない角部39を形成する。
その後、軸部12をハブ輪1の孔部22に圧入すれば、ハブ輪1側の凸部35で、軸部12の外周面に凸部35と嵌合する凹部36が形成され、これによって、凸部35と凹部36の嵌合部位全体を密着させた凹凸嵌合構造Mが構成される。凸部35と凹部36の嵌合部位38は、図22(b)に示す範囲Aである。凸部35のうち、その他の領域は凹部36と嵌合しない領域Bとなる。軸部12の外周面よりも外径側で、かつ周方向に隣合う凸部35間には隙間62が形成される。
凸部35の高さ方向の中間部が、凹部形成前の軸部12の外径面の位置に対応する。すなわち、軸部12の外径寸法D10は、雌スプライン61の凸部35の最小内径寸法D8(雌スプライン61の歯先61aをとおる外接円の直径寸法)よりも大きく、雌スプライン61の最大内径寸法D9(雌スプライン61の歯底6aを結ぶ円の直径寸法)よりも小さく設定される(D8<D10<D9)。圧入代Δdは、図22(b)および図23に示すように、軸部12の外径寸法D10と、ハブ輪の最小内径寸法D8(凸部35の歯先61aを通る円の直径)との径差(D10−D8)で表される。これにより、凸部35の高さ方向中間部付近が軸部12の外径面に食い込むことになるので、凸部35の圧入代を十分に確保することができ、凹部36を確実に形成することが可能となる。
この場合であっても、圧入によってはみ出し部45が形成されるので、このはみ出し部45を収納するポケット部97を設けるのが好ましい。はみ出し部45は軸部12のインボード側に形成されるので、ポケット部は、凹凸嵌合構造Mよりもインボード側で、かつハブ輪1側に設ける。
このように、ハブ輪1の孔部22の内径面に凹凸嵌合構造Mの凸部35を設ける場合、軸部12側の熱硬化処理を行う必要がないので、等速自在継手3の継手外輪5の生産性に優れる、という利点が得られる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、凹凸嵌合構造Mの凸部35の断面形状として、図3、図21に示す形状以外にも、半円形状、半楕円形状、矩形形状等の種々の断面形状を有する凸部35を採用することができ、凸部35の面積、数、周方向配設ピッチ等も任意に変更できる。凸部35は、軸部12やハブ輪11とは別体のキーのようなもので形成することもできる。
また、ハブ輪1の孔部22としては円孔以外の多角形孔等の異形孔であってよく、この孔部22に嵌挿する軸部12の端部の断面形状も円形断面以外の多角形等の異形断面であってもよい。さらに、ハブ輪1に軸部12を圧入する際には、凸部35の少なくとも圧入開始側の端面を含む端部領域の硬度が、圧入される側の硬度よりも高ければよく、必ずしも凸部35の全体の硬度を高くする必要がない。図3(b)および図21(b)では、スプラインの歯底と凹部36が形成された部材との間に隙間40,62が形成されているが、凸部35間の溝の全体を相手側の部材で充足させてもよい。
凹部が形成される部材の凹部形成面には、予め、周方向に沿って所定ピッチで配設される小凹部を設けてもよい。小凹部としては、凹部36の容積よりも小さくする必要がある。このように小凹部を設けることによって、凸部35の圧入時に形成されるはみ出し部45の容量を減少させることができるので、圧入抵抗の低減を図ることができる。また、はみ出し部45を少なくできるので、ポケット部50の容積を小さくでき、ポケット部50の加工性及び軸部12の強度の向上を図ることができる。なお、小凹部の形状は、三角形状、半楕円状、矩形等の種々のものを採用でき、数も任意に設定できる。
前記実施形態では、本発明を第3世代の車輪用軸受装置に適用しているが、第1世代や第2世代、さらには第4世代の車輪軸受装置にも同様に適用することができる。なお、凸部35を圧入する場合、凹部36が形成される側を固定して、凸部35を形成している側を移動させても、逆に、凸部35を形成している側を固定して、凹部36が形成される側を移動させてもよい。あるいは、両者を移動させてもよい。等速自在継手3において、内輪6とシャフト10とを前記各実施形態に記載した凹凸嵌合構造Mを介して一体化してもよい。
また、ポケット部50の形状は、生じるはみ出し部45を収納(収容)できるものであれば足り、その形状は問わない。また、ポケット部50の容量は、少なくとも予想されるはみ出し部45の発生量よりも、大きくする。