JP2010119383A - 滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測方法 - Google Patents

滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測方法 Download PDF

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    • C12Q2600/156Polymorphic or mutational markers

Abstract

【課題】滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型を検出することにより、滲出型加齢黄斑変性のリスクを予測する方法、及び該検出方法に用いるキットを提供する。
【解決手段】被験者由来のサンプル中の核酸分子について、特定な配列の塩基配列からなる群より選択される少なくとも1つの塩基配列又はその相補的配列において、前記塩基配列の17番目に存在する一塩基多型のアレルをin vitroで検出する工程(検出工程)、及び、前記検出されたアレルの少なくとも1つがリスクアレルであるか否かを判定する工程(判定工程)を含む、滲出型加齢黄斑変性のリスクを予測する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測方法に関する。さらに詳しくは、滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型を検出することによる、滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測方法、及び該予測方法に用いるキットに関する。
加齢黄斑変性は、加齢に伴い黄斑部の網膜組織に障害が生じ、視力障害を来たすことを特徴とする疾患であり、失明にいたることもある、高齢者の視力障害の原因の一つである。加齢黄斑変性はコーカサス人種では高齢者の失明原因の首位である。一方、日本人に代表される東洋人、すなわち、モンゴロイドでは、その頻度は欧米人に比べて低いとされている。
加齢黄斑変性は2つの主要な病型に分類できる。即ち、黄斑部の網膜色素上皮細胞の萎縮変性、及び、網膜色素上皮細胞の萎縮変性に続発する網膜視細胞の萎縮変性を本態とする萎縮型加齢黄斑変性と、黄斑部の網膜下に脈絡膜由来の新生血管が発育し、出血や細胞の滲出を来す滲出型加齢黄斑変性とに分類できる。これら二つの加齢黄斑変性は初期には非常に類似した病態、即ち、ドルーゼンの形成と色素沈着又は色素脱落を示す。
萎縮型加齢黄斑変性の治療法について様々な研究が行われているが、臨床上極めて有効と言える治療法は未だ確立されていない。一方、滲出型加齢黄斑変性については、新生血管が中心窩に達していない比較的早期の場合にはレーザー光を照射して新生血管を凝固させる光凝固術によって治療が選択されることもある。新生血管が中心窩に達している場合には、光線感受性の薬剤を投与しておき、弱いレーザー光を照射して薬剤を励起させ治療に用いる、いわゆる光力学的療法(PDT)が行われるが、PDTの効果は視力の低下を抑制するに留まり、完治が期待できるような臨床上有効な治療法は未だ見出されていない。これに対し、早期に滲出型加齢黄斑変性と診断され治療を開始した場合には、視力の低下を避けることが可能な場合もあることが知られており、滲出型加齢黄斑変性の治療を行ううえで、早期の診断は極めて重要である(以上、非特許文献1参照)。
滲出型加齢黄斑変性の原因は十分解明されていない。喫煙などが原因として指摘されているが、遺伝的な要素の関与も古くから示唆されている。
一方、一塩基多型とは、個体のゲノムの塩基配列において、一つの塩基が別の塩基に変化する置換変異が見られ、当該変異がその生物種の集団においてある程度の頻度、一般的に約1%以上の頻度で存在する。一塩基多型は遺伝子上のイントロン、エクソン、あるいはこれら以外のゲノムの領域のいずれにも存在する。
Schachat AP et al.: Retina, Second edition, Mosby-Year Book, Inc. (1994)
一般に、滲出型加齢黄斑変性(以下、wAMDということもある)の検査として、眼底検査、例えば、蛍光色素を静注しておいて眼底を検査する方法が用いられるが、散瞳薬を投与する必要があり、検査後数時間は散瞳状態が持続することなど、患者への負担は必ずしも軽くはない。また、このような検査は蛍光色素の血管からの漏出を判定する検査であることから、ある程度の症状が進行した段階でなければ診断に用いることが出来ない。滲出型加齢黄斑変性の治療において早期診断は極めて重要であり、より早い時期に滲出型加齢黄斑変性の診断を受け、又は、滲出型加齢黄斑変性を将来発症するリスクを知ることは重要な未解決ニーズである。
一方、前述のように、滲出型加齢黄斑変性の発症には遺伝的要因の関与が疑われているが、日本人集団において滲出型加齢黄斑変性の支配的な原因遺伝子は未だ同定されていない。また、単一の遺伝子の変異又は多型による疾患への関与が説明できなくとも、滲出型加齢黄斑変性への関与が比較的穏やかな遺伝子の変異又は多型が多数存在し、それぞれが組み合わせられて作用することによって滲出型加齢黄斑変性の発症への遺伝的要因の関与が説明できると考えられる。
本発明者らは、滲出型加齢黄斑変性に関連する遺伝子を見出すため、ゲノム上の多型、なかでも一塩基多型に着目した。
滲出型加齢黄斑変性に関連する多型を見出すことにより、当該多型を有するか否かで滲出型加齢黄斑変性のリスクの判断が可能となり、該多型を有する者は、発症前であっても将来的に滲出型加齢黄斑変性のリスクがあることを知り、又は、初期の滲出型加齢黄斑変性の診断の補助に用いることが可能となる。即ち、滲出型加齢黄斑変性のリスクを知ることによりサンプル提供者は滲出型加齢黄斑変性の発症予防措置を講ずることが可能となり、また、早期の確定診断により、早期の治療を開始することができるため、滲出型加齢黄斑変性に関与する多型を見出すことは、意義深い。
本発明の課題は、滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型を検出することにより、滲出型加齢黄斑変性のリスクを予測する方法、及び該検出方法に用いるキットを提供することにある。
本発明者らは、滲出型加齢黄斑変性患者(wAMD患者)と滲出型加齢黄斑変性患者でない者(非wAMD患者)のゲノム(なかでも、常染色体)上に存在する公知の多型部位を網羅的に解析し、滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型を見出し、さらに、当該一塩基多型においてリスクアレルとその対立アレルである非リスクアレルを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、
〔1〕被験者由来のサンプル中の核酸分子について、配列番号1〜124で示される塩基配列からなる群より選択される少なくとも1つの塩基配列又はその相補的配列において、前記塩基配列の17番目に存在する一塩基多型のアレルをin vitroで検出する工程(検出工程)、及び
前記検出されたアレルの少なくとも1つがリスクアレルであるか否かを判定する工程(判定工程)
を含む、滲出型加齢黄斑変性のリスクを予測する方法、ならびに
〔2〕 被験者由来のサンプル中の核酸分子について、配列番号1〜124で示される塩基配列からなる群より選択される少なくとも1つの塩基配列又はその相補的配列において、前記塩基配列の17番目に存在する一塩基多型のアレルをin vitroで検出するための核酸分子を含有してなる、滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測キット
に関する。
本発明の方法により、サンプル中に存在するゲノム由来の核酸分子に含まれる本発明の一塩基多型のアレルを分析することにより、サンプル提供者の滲出型加齢黄斑変性リスクの有無及び/又はリスクの大小を予測することができる。このリスクに基づきサンプル提供者は滲出型加齢黄斑変性の予防措置を講じ、又は定期的に診察を受けることにより早期の診断を受け、病状が進行しない早期に適切な治療を開始することができる。また、本発明の方法により、滲出型加齢黄斑変性が疑われるサンプル提供者は、滲出型加齢黄斑変性と診断されるべき蓋然性が高いと判断されることができ、早期に治療を開始することができる。
図1は、本発明の一塩基多型が属するLDブロック構造を示す図の一例である。 図2は、本発明の一塩基多型が属するLDブロック構造を示す図の一例である。 図3は、本発明の一塩基多型が属するLDブロック構造を示す図の一例である。 図4は、本発明の一塩基多型が属するLDブロック構造を示す図の一例である。 図5は、本発明の一塩基多型が属するLDブロック構造を示す図の一例である。 図6は、本発明の一塩基多型が属するLDブロック構造を示す図の一例である。
本発明は、遺伝子の一塩基多型(以下、SNPと記載することもある)に基づいて、滲出型加齢黄斑変性のリスクを予測する方法において、被験者由来のサンプル中の核酸分子について、特定の塩基配列からなる群より選択される少なくとも1つの塩基配列又はその相補的配列における、前記塩基配列の17番目に存在する一塩基多型のアレルをin vitroで検出する工程(検出工程)、及び前記検出されたアレルがリスクアレルであるか否かを判定する工程(判定工程)を含む、滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測方法である。本発明は滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型(本発明の一塩基多型ともいう)を見出し、さらに、当該一塩基多型においてリスクアレルとその対立アレルを見出し、これらを用いることに大きな特徴を有する。従って、前記リスクアレルを用い、及び/又は、前記リスクアレルとその対立アレルの存在頻度に基づき計算されたオッズ比を指標とすることにより、このような滲出型加齢黄斑変性発症の予測を行うことも可能であり、前記予測方法は、滲出型加齢黄斑変性発症因子の測定方法、又は決定方法としても使用可能である。なお、本明細書において多型とは、ある生物種におけるゲノムの特定の位置の配列に多様性が存在することを言い、多型が存在する部位(以下、多型部位ともいう)とは、一塩基多型が存在するゲノム上の部位を言う。
また、本明細書においてアレルとは、ある多型部位において取りうる、互いに異なる塩基を有するそれぞれの型を言う。本明細書において遺伝子型とは、ある多型部位において、特定のアレル(一方のアレルともいう)と、前記アレルに対立するアレル(他方のアレルともいう)との任意の組み合わせを言う。さらに、ある多型部位において、前記組み合わせである遺伝子型には3つの型があり、同じアレルの組み合わせをホモ型とよび、異なるアレルの組み合わせをヘテロ型とよぶ。
本明細書において、対立するアレル(対立アレルともいう)とは、ある一塩基多型を構成するアレルのうち、特定されたものに対応する他のアレルを言う。
本明細書において、滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型とは、滲出型加齢黄斑変性患者(wAMD患者)と滲出型加齢黄斑変性患者でない者(非wAMD患者)の間で、当該一塩基多型におけるそれぞれのアレルの頻度の比が統計学的にあるp値で有意に異なる一塩基多型をいう。
本発明において、滲出型加齢黄斑変性のリスクとは、滲出型加齢黄斑変性に関するリスクを言う。本発明における滲出型加齢黄斑変性のリスクには、将来的に滲出型加齢黄斑変性を発症する可能性が含まれる。本発明において、リスクの予測とは、将来のリスクの有無を現時点で判定し、又は、将来のリスクの大小を現時点で判定することを言う。
詳細は後述するが、本発明において、リスクアレルとは、前記滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の各アレルのうち、前記各アレルについて求めたオッズ比が1より大となるようなアレルを言う。また、非リスクアレルは、リスクアレルの対立アレルであることから、前記オッズ比が1以下となるようなアレルを言う。ここで、各アレルについて求めたオッズ比、即ち、一方のアレルについて求めたオッズ比とは、wAMD患者群における一方のアレルの頻度と他方のアレル(対立アレル)の頻度の比を、非wAMD患者群における前記一方のアレルの頻度と前記他方のアレルの頻度の比で除したものである。即ち、一方のアレルについて求めたオッズ比は他方のアレルについて求めたオッズ比の逆数である。尚、オッズ比についての詳細は後述する。また、本明細書においてアレルの頻度(アレル頻度)とは、ある集団において、特定のアレルが全体に占める割合を意味し、例えば実施例に記載した方法によって一定集団に属する各個体のアレルを決定することにより求めることができる。その他、本明細書に記載のない事項は、遺伝統計学入門(鎌谷直之;岩波書店 2007)又はバイオインフォマティクス第2版(Mount DW著、岡崎康司ら監訳;メディカル・サイエンス・インターナショナル、2005)等の成書を参考にすることができる。
以下に、滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の同定方法を説明する。
滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型は、滲出型加齢黄斑変性と診断されたwAMD患者、及び、滲出型加齢黄斑変性ではないと診断された非wAMD患者それぞれの血液から総DNAを抽出し、ヒトゲノム上の公知の一塩基多型約50万個を指標として、個々の一塩基多型のアレルがwAMD患者又は非wAMD患者に特異的に、より具体的には、統計学的に有意に存在するか否かを解析することにより見出した。ここで、対照となる非wAMD患者は滲出型加齢黄斑変性でない者であれば良い。例えば、滲出型加齢黄斑変性でないと診断され、かつ、他の疾患、例えば緑内障及び/又は白内障であると診断された患者を対照として用いても良い。この場合、滲出型加齢黄斑変性に特異的に関連する一塩基多型を見出すために、対照として用いられる他の疾患の患者(群)と滲出型加齢黄斑変性の患者(群)との比較を複数の疾患について行い、共通して、あるp値で有意な差があると判定されるような一塩基多型を用いることが好ましい。かかる一塩基多型のアレルを用いることにより、滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測が可能となる。詳細は実施例の項にて説明するが、以下のような方法により、本発明で開示された滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型を同定することができる。
(滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の同定)
まず、滲出型加齢黄斑変性と診断されたwAMD患者、及び、滲出型加齢黄斑変性ではないと診断された非wAMD患者それぞれの血液から総DNAを抽出する。血液中の総DNAは公知の任意の方法によって抽出することができるが、例えばフェノール抽出法(Methods in Enzymology、152巻、181ページ、1987年)などの公知の方法によって抽出することができる。
抽出したDNAサンプル中の一塩基多型における塩基の種類、すなわち各多型部位におけるアレルの同定は、例えば後述の固層化プローブ(マイクロアレイ)を用いる方法、TaqMan(登録商標)法などのPCRを応用する方法など、任意の方法で行うことができる。その際、検出に用いるプローブは、目的とする一塩基多型及びその周辺の配列情報を元に設計することができる。設計に当たっては、例えば米国の国立バイオテクノロジー情報センター (NCBI)が提供するdbSNPもしくはHapMapプロジェクトが提供するSNP情報のデータベースのような公知の一塩基多型のデータベース、又はNCBIが提供するGenbankのような公知の配列情報のデータベースを用い、これらのデータベースから得られる配列等の情報を参考にすることもできる。一塩基多型の検出に用いるプローブは、ゲノムのセンス鎖に相補的なプローブであっても、アンチセンス鎖に相補的なプローブであっても、いずれによっても検出できる。ヒトのゲノム上に存在する一塩基多型を検出できるプローブを大量に固層化し、同一操作で多数の一塩基多型のアレルを検出可能なキットも市販されており、このようなキットを用いて効率よくサンプル中のアレルを検出することも可能である。また、このようなキットの多くは、一つのサンプルに含まれる対立する各々のアレルを同一操作で検出する構成になっており、遺伝子型を決定することができる。このようなキットの市販品の好適例としては、マイクロアレイ型の一塩基多型分析キット〔アフィメトリックス社、ジーンチップ ヒューマンマッピング 250K Nsp/Sty アレイ(GeneChip(登録商標) Human Mapping 250K Nsp/ Sty Array)〕が挙げられる。
滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型は、前述のような方法でwAMD患者及び非wAMD患者由来のDNAに存在するアレルを同定しておき、各アレルの頻度をwAMD患者と非wAMD患者で統計学的に比較し、アレル頻度が後述のp値で有意な差が生じるか否かをもって判定することができる。
統計学的な解析には、例えばFisherの正確確率検定又はカイ二乗検定を用いることができる。また、比較を繰り返し行うことに起因する第一種の過誤の発生リスクの増大を補正する必要がある場合は公知の方法、例えばボンフェローニ、ホルム、又はベンジャミニとホフバーグ(False Discovery Rate; FDR)などの方法によって補正することができる。
ボンフェローニの補正に基づく場合を例示すると、所望の有意水準、例えば5×10-2の有意水準を繰り返し回数、即ち、解析に用いる多型部位の個数で割って滲出型加齢黄斑変性に関連するSNPの選択に用いる有意水準とすることにより、第一種の過誤を最大に考慮しても高々5×10-2の危険率で滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型を判定することができる。このようにして設定した有意水準を下回る一塩基多型をより好ましい一塩基多型として選択することができる。但し、本発明のような全ゲノムに亘る一塩基多型の解析において、ボンフェローニの補正は過剰補正であり、著しくp値が低下することから疾患に関連する一塩基多型を見落とす可能性が高まるとの報告もなされている(Schymick J C et al., Lancet Neurology. 2007:6: 322-8, Van Steen K et al., Nature Genetics. 2005: 37: 683-691)。学術的に望ましい多重性の補正方法は未だ確立されていないが、これらの方法で多重性の補正を行うと過剰補正になる場合には、当該補正方法によって調整される有意水準を下回らない範囲の任意の適切な水準に有意水準を設定することができる。任意の適切な水準を設定する場合、例えば50万個の一塩基多型を繰り返し解析する場合の有意水準は、1×10-2が好ましく、1×10-3がより好ましく、1×10-4がさらに好ましく、1×10-5がさらに好ましく、3×10-6がさらに好ましく、1×10-6がさらに好ましく、3×10-7がさらに好ましく、1×10-7がさらに好ましい。また、一般に、第一種の過誤と統計学的な検出力は反比例することが知られている。第一種の過誤を低下させつつ検出力を保つ方法としては、一塩基多型の解析を二段階に分割して実施することが挙げられる(Skol A.D. et al., Nature Genetics. 2006: 38: 209-213)。例えば、まず、一次解析として、全ゲノムに亘る多数の一塩基多型解析を行い、次いで、二次解析として、一次解析である程度絞り込んだ一塩基多型を用いて解析を行う。この場合、いずれの解析においても比較的低いp値となるような一塩基多型を選択すればよく、好ましくは、最初の解析において候補となる一塩基多型を所望のp値、例えば0.001〜0.05を下回るものを選択し、当該選択された一塩基多型について、多重性を考慮してさらに解析すればよい。
また、ゲノム上の一定の領域に、比較的低いp値で疾患との関連を持つSNPが連続して存在する領域が見出される場合がある。このような領域に属するSNPは疾患との関連が高い。一方、このように疾患との関連を持つ一塩基多型が連続して存在する領域は、当該領域においてゲノムDNAの組み換え率が0であるか又は著しく低い、いわゆる連鎖不平衡の状態にある可能性が高い。連鎖不平衡状態にあるゲノム上の領域をLDブロックという。当該領域が連鎖不平衡状態にあるか否かは当該領域の解析結果に基づき公知の方法によって、又は、連鎖不平衡のデータベース、例えばHapMapプロジェクトによって提供される公知のLDブロック構造のデータベースを参照することにより確認することができる。連鎖不平衡状態にある一塩基多型は同じ挙動を示す蓋然性が極めて高いため、連鎖不平衡状態にある複数の一塩基多型について、任意の一つの一塩基多型、好適にはpairwise tagging法による絞込み等を行い決定した一塩基多型、いわゆるタグSNPを用いて前記連鎖不平衡状態にある複数の一塩基多型を代表することができる。さらに、本発明の滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の周辺を再解析、例えば、TaqMan(登録商標) SNP Genotyping Assays (Applied Biosystems) を用いて再解析することにより、当該一塩基多型と連鎖不平衡状態にある新たな疾患関連一塩基多型が見出される場合がある。
本発明においては、常染色体上の滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の解析において、一次解析として、個々の一塩基多型における遺伝子型の組合せ、即ち、一方のアレルのホモ型、ヘテロ型、他方のアレルのホモ型である遺伝子型について、一方のアレルのホモ型+ヘテロ型対他方のアレルのホモ型、一方のアレルのホモ型対ヘテロ型+他方のアレルのホモ型、及び、一方のアレルのホモ型対ヘテロ型対他方のアレルのホモ型の3通りの統計モデルについて、wAMD患者群対緑内障患者群(以下、比較Aと呼ぶ)、及び、wAMD患者群対白内障患者群(以下、比較Bと呼ぶ)のそれぞれにFisherの正確確率検定を適用して、3通りの統計モデルを適用した場合のp値を求めた。次に、滲出型加齢黄斑変性以外の疾患に特異的に関連する一塩基多型を排除し滲出型加齢黄斑変性に特異的に関連する一塩基多型を選択するため、比較A及び比較Bの両者において、前述のように求めた3通りの統計モデルのp値のうち最小となるp値が比較A及び比較Bで共通して0.01を下回る一塩基多型508個を滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の候補として選択した。さらに、二次解析として、白内障患者と緑内障患者を纏めて対照群とし、前述の滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の候補について、再度同様にwAMD患者群と対照群についてp値を求め、3通りの統計モデルを適用して求めたp値のうち最小のものを当該一塩基多型を代表するp値とした。滲出型加齢黄斑変性に関連するアレル又は遺伝子型の検出に用いられる一塩基多型は、ボンフェローニ補正によって多重性の調整を行う場合には、前述の滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の候補とされた一塩基多型の個数についてボンフェローニ補正を行い、好適な一塩基多型を選択するための有意水準を設定することができる。具体的には、所望の有意水準5×10-2を繰り返し回数508回で除算し、9.84×10-4以下のp値の一塩基多型を、滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型のうち、より好ましい一塩基多型とした。しかしながら、前述のように、ボンフェローニ補正は過剰補正であることが知られているため、上記有意水準より概ね1〜2桁高い水準、例えば、p値が1×10-3を下回る一塩基多型は滲出型加齢黄斑変性に関連すると考えることができる。
解析にあたり、信頼性の高い結果を得るためには、解析に用いる一塩基多型に対し、予め、検出結果の品質の確認を行い、妥当な品質で検出されている一塩基多型を解析に供することが望ましい。このような品質の確認に用いられる要素としては、コールレート、ハーディー・ワインバーグ平衡及びマイナーアレル頻度がある。
全サンプルに対する各一塩基多型の判定率、すなわちコールレートが低い多型部位はタイピングエラーが発生している率が高く、信頼性が高くない。このため、コールレートが十分に高い一塩基多型部位を用いて解析することが望ましい。一塩基多型の採否の基準とするコールレートとしては、例えば70%、好ましくは75%、より好ましくは80%、さらに好ましくは85%、さらに好ましくは90%以上のコールレートを示す一塩基多型を採用することが望ましい。
ハーディー・ワインバーグ平衡とは、変異や淘汰圧がなく、任意交配により形成された十分な個体数を持つ遺伝的に均一な集団においては、ある遺伝子座における各対立遺伝子の分布頻度は世代を重ねても一定であることを言う。ハーディー・ワインバーグ平衡が成立しているか否かは、いくつかの公知の方法、例えばカイ二乗検定やフィッシャーの正確確率検定によって統計学的に検定することができる。十分な数のヒト集団では、通常ハーディー・ワインバーグ平衡は成立していることから、一般的には、母集団におけるハーディー・ワインバーグ平衡の成立を前提に、標本の遺伝子型判定のエラーを検出する目的でハーディー・ワインバーグ平衡の検討が用いられる。ハーディー・ワインバーグ平衡の成立を統計学的に検定する場合、有意水準としては例えば0.0001が用いられる。
マイナーアレル頻度とは、2つのアレルに含まれる一塩基多型の場合では、2つのアレルの頻度の内、頻度が低い方のアレルの頻度のことを言う。閾値は任意に設定することが可能である。前述のように一塩基多型の概念は、マイナーアレル頻度が約1%を上回るものであるから、マイナーアレル頻度が1%を下回る一塩基多型は棄却することが望ましい。また、本発明のような多因子疾患の原因となる多型の探索においては、疾患への相対的な関与が比較的低い多型が複数個関与していると考えられるため、マイナーアレル頻度が一定頻度、例えば5%を下回る一塩基多型を棄却することが望ましい。
このようにして得た滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型は、NCBIが提供するGenbankのような公知配列のデータベース、あるいは、NCBIが提供するdbSNP又はHapMapプロジェクトのデータベースのような公知一塩基多型のデータベースを参照することにより、データベース上のSNP ID(特に、dbSNP ID)、その一塩基多型が存在するゲノム上の物理的位置、一塩基多型の周辺の配列情報、一塩基多型が存在する遺伝子又は一塩基多型の近傍に存在する遺伝子、遺伝子上に存在する場合には一塩基多型の存在する位置がイントロン又はエクソンのいずれであるかの区別、遺伝子の機能、相同遺伝子などの情報を得ることができ、これらの情報を元に本発明において用いる核酸分子を取得し、本発明に用いるプローブなどを設計することができる。これらの情報をデータベースで検索する際の一塩基多型を特定するための情報としては、これらデータベースに収録された情報の1つ又は複数を使用することができる。
このようにして決定された滲出型加齢黄斑変性と関連する一塩基多型において、一方のアレルと滲出型加齢黄斑変性発症の有無との間にどの程度強い関連が存在するかの指標として、オッズ比を求めることができる。オッズとは、ある群においてある事象が起こる確率を当該事象が起こらない確率で割った値であり、オッズ比とは、2つの異なる群におけるオッズの比である。アレルについてオッズ比を求める場合、あるアレルを持つ場合に疾患であるオッズ比、即ち、wAMD患者群における、一方のアレルの頻度と、前記一方のアレルに対立する、他方のアレルの頻度との比を、非wAMD患者群における一方のアレルの頻度と他方の頻度との比で除したものである。このとき、求められたオッズ比を本発明では前記「一方のアレル」について求めたオッズ比と呼ぶ。
アレルのオッズ比を求める際に、ある頻度が0になり、よってオッズ比が無限大となるような場合には、当該0の代わりに適当な数を用いてオッズ比を近似計算することができる。0の代わりに用いる適当な数としては、例えば、0.5や0.1などの0を超える実数を用いることができる。
さらに、本発明においては、前記アレルについて求めたオッズ比を用いてリスクアレルが決定される。前述の定義から明らかなように、一方のアレルについて求めたオッズ比は他方のアレルについて求めたオッズ比の逆数となっている。アレルについて求めたオッズ比が1より大となるようなアレルを本発明ではリスクアレルと呼び、リスクアレルに対立するアレルを非リスクアレルと呼ぶ。なお、本発明において「アレルのオッズ比」と称する場合、リスクアレルについて求めたオッズ比、即ち、リスクアレルを持つ場合に滲出型加齢黄斑変性であることのオッズ比を意味する。
本発明においては、これらの指標により、滲出型加齢黄斑変性のリスクを予測することができる。ある一塩基多型のリスクアレルはwAMD患者群において非wAMD患者群よりも高頻度に認められるアレルであり、即ち、滲出型加齢黄斑変性のリスクに関与するアレルである。アレルを用いて滲出型加齢黄斑変性リスクを予測する場合、当該一塩基多型のリスクアレルを少なくとも1つ持つことにより滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると予測される。この場合、オッズ比が大きいほどリスクアレルを有するサンプル提供者の滲出型加齢黄斑変性のリスクは高い。一方、オッズ比の定義から明らかなように、本発明においてはアレルのオッズ比の逆数を使用することにより、非リスクアレルを持つものの疾患リスクを予測することができる。即ち、アレルのオッズ比の逆数が1より小さいほど、非リスクアレルを持つものの疾患リスクが低いことの予測に用いることができる。
本発明においては、アレルに加え、又は、アレルの代わりに遺伝子型、即ち、一方のアレルとその対立アレルとの組合せである遺伝子型を用いて滲出型加齢黄斑変性のリスクを予測することができる。この場合にも、アレルの場合と同様にリスクアレルを基準とすればよく、滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型は、オッズ比を考慮して決定することができる。
遺伝子型のオッズ比を求めて滲出型加齢黄斑変性のリスクを判定する場合、まず、リスクアレルを基準にdominant型オッズ比とrecessive型オッズ比の2通りのオッズ比を求める。
本発明において、dominant型オッズ比は、リスクアレルを少なくとも1つ持つ場合(即ち、リスクアレルホモ型又はヘテロ型である場合)に滲出型加齢黄斑変性であることのオッズ比、即ち、wAMD患者群におけるリスクアレルホモ型頻度とヘテロ型頻度の和と、非リスクアレルホモ型の頻度との比を、非wAMD患者群におけるリスクアレルホモ型頻度とヘテロ型頻度の和と、非リスクアレルホモ型の頻度との比で除したものであり、recessive型オッズ比はリスクアレルをホモに持つ場合に滲出型加齢黄斑変性であるオッズ比、即ち、wAMD患者群におけるリスクアレルホモ型の頻度と、非リスクアレルホモ型頻度とヘテロ型頻度の和との比を、非wAMD患者群におけるリスクアレルホモ型の頻度と、非リスクアレルホモ型頻度とヘテロ型頻度の和との比で除したものである。
次に、滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型を決定する場合、上記のようにして求められたdominant型オッズ比及びrecessive型オッズ比を考慮して以下のように決定することができる。
滲出型加齢黄斑変性に関連する各一塩基多型において、dominant型オッズ比がrecessive型オッズ比より大である場合、当該一塩基多型のリスクアレルはdominant型オッズ比に関連する。一方、同様にrecessive型オッズ比がdominant型オッズ比より大である場合、当該一塩基多型のリスクアレルはrecessive型オッズ比に関連する。リスクアレルがdominant型オッズ比に関連する場合、当該一塩基多型における滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型は、リスクアレルのホモ型及びヘテロ型であり、リスクアレルがrecessive型オッズ比に関連する場合、当該一塩基多型における滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型は、リスクアレルのホモ型である。
尚、遺伝子型のオッズ比を求める際に、いずれかの遺伝子型の頻度が0となり、オッズ比が無限大となり、よって、算出不能となってしまうことがある。このような場合、アレルのオッズ比の場合と同様に、当該0の代わりに適当な数を用いてオッズ比を近似計算することができる。0の代わりに用いる適当な数としては、例えば、0.5や0.1などの0を超える実数を用いることができる。
このようにして決定された滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型がサンプル中に検出された場合、当該サンプル提供者は滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると予測されることができる。いずれの場合もオッズ比が大である程滲出型加齢黄斑変性のリスクは高いと予測される。
さらに、本発明の一塩基多型の組み合わせによって滲出型加齢黄斑変性のリスクを予測する場合にも、オッズ比の大小を用いてその予測精度を向上することができる。即ち、リスクアレルもしくは滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型を多数持ち、及び/又は、非リスクアレルもしくは滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型でない遺伝子型を少数しか持たないサンプル提供者の滲出型加齢黄斑変性のリスクは、そうでないサンプル提供者のリスクより高く、この場合において、オッズ比がより大きいアレル又は遺伝子型をより多く持つ場合に、滲出型加齢黄斑変性のリスクはより高いと予測される。
好ましくは、アレル又は遺伝子型と疾患の程度の関連性を表す指標となるオッズ比又は滲出型加齢黄斑変性のリスク予測に用いるオッズ比は、統計学的に有意であると判定された一塩基多型について算出されたオッズ比である、
後述のように、本発明の一塩基多型はゲノム上のイントロンやエクソンなどの遺伝子領域に存在する場合、又は、ゲノム上の遺伝子でない領域のいずれにも存在する場合がある。イントロンやエクソンに存在する場合は当該遺伝子は滲出型加齢黄斑変性の原因遺伝子の一つである可能性がある。また、本発明の一塩基多型がゲノム上の遺伝子でない領域に存在する場合は、当該一塩基多型の近傍にある遺伝子と当該一塩基多型が連鎖しており、当該近傍に存在する遺伝子が滲出型加齢黄斑変性の原因遺伝子の一つである可能性があり、あるいは、当該一塩基多型を含む領域又はその近傍がmRNAなどに転写され、RNA干渉などの現象を介して他の遺伝子の発現に関与している可能性がある。即ち、ゲノム上で本発明の一塩基多型が属する遺伝子、又は、ゲノム上で本発明の一塩基多型の近傍に存在する遺伝子は本発明の範囲に含まれる。
本発明において、イントロン型一塩基多型(iSNP)とはイントロンに一塩基多型が存在することをいう。翻訳領域型一塩基多型(cSNP)とは、タンパクに翻訳される領域に一塩基多型が存在するもののうち、当該一塩基多型を含むコドンが他のアミノ酸をコードするコドンや終止コドンに変異するなど、アミノ酸配列に変化を伴うものをいう。サイレント型一塩基多型(sSNP)とは、翻訳領域に一塩基多型が存在するもののうち、アミノ酸配列の変化を伴わないものをいう。ゲノム型一塩基多型(gSNP)とは、ゲノム上の遺伝子をコードしない領域に一塩基多型が存在することをいう。転写調節型多型(rSNP)とは、エクソン上の転写調節に関与すると考えられる部位に存在する一塩基多型をいう。
このように、一塩基多型はゲノム上のどのような位置にも存在することがあり、いずれの場合も疾患との関連を有し得る。イントロンあるいは非翻訳領域に一塩基多型が存在する場合は、遺伝子発現制御に影響する場合や、遺伝子の転写後に起こるスプライシングやmRNAの安定性に影響することがある。翻訳領域に一塩基多型が存在する場合は、その塩基の置換によってあるアミノ酸に対応するコドンが別のアミノ酸に対応するコドンに変化する、あるいは、終止コドンに変化するなどの変化が生じ、これによってコードされるタンパク質の構造に変化が生じることがある。これらの変化によって遺伝子の発現量や機能、ひいては当該遺伝子がコードするタンパクの発現量又は機能に変化が生じ、種々の疾患の原因になり得る。ゲノム型一塩基多型が疾患と関連する場合は、当該多型部位を含む領域が実際には翻訳され、他の遺伝子の発現に何らかの影響を及ぼしている可能性がある。サイレント型一塩基多型が疾患と関連している場合、その一塩基多型の周辺に疾患と関連する別の多型が存在し、当該多型とサイレント型一塩基多型が連鎖不平衡状態にある場合に疾患との関連が認められることが考えられる。同様に、サイレント型一塩基多型以外の一塩基多型であっても、当該一塩基多型自体は直接的な滲出型加齢黄斑変性の原因ではなく、周辺に存在する滲出型加齢黄斑変性の真の原因である多型と連鎖不平衡状態にある場合にも、これらの一塩基多型と滲出型加齢黄斑変性の関連が認められることがある。
(滲出型加齢黄斑変性に関連するアレルを含む核酸分子)
本発明の別の態様では、滲出型加齢黄斑変性と関連する一塩基多型を含む核酸分子、及び、滲出型加齢黄斑変性と関連する一塩基多型を含む核酸分子に相補的な配列を有する核酸分子が提供される。
後述の表1〜11に記載された一塩基多型を含む核酸配列を含む核酸分子及び/又は当該配列の相補的配列を含む核酸分子は、本発明でアレル検出に使用される核酸分子である。本発明でアレル検出に使用される核酸分子は、好ましくは表1〜10に記載された一塩基多型を含む核酸分子又はその断片であって、少なくともいずれか1つの前記核酸分子もしくは当該核酸分子に相補的な核酸分子又はこれらの断片であり、より好ましくは表1、又は表2〜4に記載された一塩基多型を含む核酸分子又はその断片であって、少なくともいずれか1つの前記核酸分子もしくは当該核酸分子に相補的な核酸分子又はこれらの断片であり、さらに好ましくは表1に記載された一塩基多型を含む核酸分子又はその断片であって、少なくともいずれか1つの前記核酸分子もしくは当該核酸分子に相補的な核酸分子又はこれらの断片である。また、これらの表1〜11に記載された一塩基多型を含む核酸分子又は当該核酸分子に相補的な核酸分子のうち、リスクアレルを含む核酸分子又は当該核酸分子に相補的な核酸分子であることが望ましい。
これらの滲出型加齢黄斑変性と関連する一塩基多型を含む核酸分子又は当該核酸分子に相補的な配列を有する核酸分子は滲出型加齢黄斑変性リスクの高低を判定するマーカーとして用いることができる。さらにこれらの核酸分子は、当該一塩基多型における、リスクアレルもしくはその対立アレルを検出し、又は、遺伝子型を決定するためのプローブとして用いることができる。また、当該一塩基多型がエクソン上に存在する場合には、これらの核酸分子は遺伝子の転写物の検出に用いることができる。
本発明において、より好ましい核酸分子は、滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の同定の項で説明したのと同様の方法で選択することができる。
真核生物のゲノムを構成する核酸分子はセンス鎖と、センス鎖に相補的なアンチセンス鎖の二重鎖で構成されている。即ち、一塩基多型もセンス鎖とアンチセンス鎖から構成されており、いずれの鎖の一塩基多型を検出することも同じ意味を持つから、本発明の核酸分子はこれらのいずれをも含む。
本発明における核酸分子は、デオキシリボ核酸であるかリボ核酸であるかを問わず、これらの両方を同一の核酸分子中に持つ核酸分子もまた本発明に含まれる。尚、リボ核酸を含む核酸分子を用いる場合には、本発明の配列においてチミジン(T)で定義されたヌクレオシドはウリジン’(U)と読み替えることができる。相補鎖のヌクレオシドがチミジンとなる場合についても同様である。また、これらの核酸分子に本発明に用いるための機能を損なわない範囲で、必要に応じ化学修飾を施すことができる。この場合の機能とは、核酸分子を使用する目的を達成する機能を言う。
本発明における核酸分子は、本明細書に開示された配列情報、又は、本明細書に開示されたデータベースID等の情報をdbSNP、HapMap又はGenbank等のデータベースで検索して得られる配列情報に基づき、公知の方法、例えばホスホロアミダイト法を用いて合成することができる。市販のDNA合成機を用いて合成することも可能である。また、本発明における核酸分子はヒト由来のDNAを含むサンプルから、PCR法などの公知の方法により、又は、一部の核酸分子についてはヒト由来のRNAを含むサンプルから、RT-PCR法などの公知の方法により取得することができる。取得に必要なプライマーは当業者であれば本明細書に開示された配列情報、又は、本明細書に開示されたデータベースのID等の情報から検索可能な配列情報に基づき設計することができる。例えばPCR法を用いる場合には、目的とする核酸分子の一部の配列と相同な配列を有するような約10〜30塩基のプライマーが使用可能であり、RT-PCR法を用いる場合には、オリゴdTプライマー、又はランダムヘキサマーなどを用い、逆転写反応を行って相補DNA(cDNA)を作成し、当該cDNA中の目的の配列を前述のPCR法で増幅することによって得ることができる。
核酸分子は、好ましくは16〜50塩基、より好ましくは23〜27塩基、さらに好ましくは25塩基の長さを有し、かつ、前述の多型部位とその周辺の配列、又はこれに相補的な配列を含む核酸分子であることが望ましい。なお、核酸分子には、その機能を損なわない範囲で、任意の化学修飾を施すことができる。この場合の機能とは、核酸分子を使用する目的を達成する機能を言う。
本発明の滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の検出方法及び滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測方法において、アレル検出に用いられる核酸分子は、配列番号1〜124で示される塩基配列からなる群(それぞれ、奇数番目と偶数番目の塩基配列の組で1つの一塩基多型に対応する)より選択される少なくとも1つの塩基配列もしくはその相補的配列、又はこれらの部分配列において、前記配列番号1〜124で示される塩基配列の17番目に相当するアレルを有する配列を含有する核酸分子であり、
より好ましくは、配列番号1〜14で示される塩基配列からなる群より選択される少なくとも1つの塩基配列もしくはその相補的配列、又はこれらの部分配列において、前記配列番号1〜14で示される塩基配列の17番目に相当するアレルを有する配列を含有する核酸分子であり、
さらに好ましくは、以下の、a〜gの一塩基多型を含む塩基配列の組からなる群より選択される少なくとも1つの塩基配列もしくはその相補的配列、又はこれらの部分配列において、前記a〜gの組に含まれる塩基配列の17番目に相当するアレルを有する配列を含有する核酸分子である。(ここで、前述のように、a〜gで示される配列番号の組において、それぞれの塩基配列の組は1つの一塩基多型の互いに対立するアレルを17番目の塩基に含む塩基配列である)
a: 配列番号1及び/又は配列番号2、
b: 配列番号3及び/又は配列番号4、
c: 配列番号5及び/又は配列番号6、
d: 配列番号7及び/又は配列番号8、
e: 配列番号9及び/又は配列番号10、
f: 配列番号11及び/又は配列番号12、ならびに、
g: 配列番号13及び/又は配列番号14
なお、本明細書において、部分配列とは、核酸配列の断片のことを意味し、前記配列の17番目に相当するアレルを有するものであれば配列長には限定はないが、例えば、好ましくは16〜50塩基、より好ましくは23〜27塩基、さらに好ましくは25塩基の長さを有する断片である。本発明の一塩基多型をdbSNP等の公知一塩基多型のデータベース又は公知配列情報のデータベースで検索して得られる、本発明の一塩基多型を含む核酸配列の断片も本発明の部分配列に含まれる。
上記のいずれかの一塩基多型を含む核酸分子を用いる場合、中でも、それぞれの一塩基多型を含む配列の組のうち、奇数番目の配列番号で示される配列もしくはその相補的配列、又はこれらの部分配列からなる塩基配列において、前記選択される塩基配列の17番目に存在する一塩基多型のアレルを含む核酸分子を用いることが好ましい。また、上記核酸分子は、上記アレルを含む配列からなるものが好ましい。なお、これらはそれぞれの多型部位において、リスクアレルを含む塩基配列である。
(滲出型加齢黄斑変性に関連するアレルを検出可能なプローブ)
本発明の別の態様では、滲出型加齢黄斑変性に関連するアレルを検出可能なプローブが提供される。本発明におけるプローブは、前述の本発明の核酸分子と同様の方法で作ることができる。
プローブは、後述の表1〜11に記載された一塩基多型の各アレルを含む核酸配列又はその相補的配列と、ストリンジェントな条件(高ストリンジェンシーな条件ともいう)でハイブリダイズし得るものであればいかなるものでも用いられる。好ましくは、本発明のプローブは、表1〜10に記載された少なくともいずれか1つの一塩基多型に含まれるリスクアレル及び/又は非リスクアレルを検出可能なプローブであり、より好ましくは表1〜4に記載された少なくともいずれか1つの一塩基多型に含まれるリスクアレル及び/又は非リスクアレルを検出可能なプローブであり、さらに好ましくは表1に記載された少なくともいずれか1つの一塩基多型に含まれるリスクアレル及び/又は非リスクアレルを検出可能なプローブである。また、これらの表1〜11に記載されたいずれか1つの一塩基多型に含まれるリスクアレル及び/又は非リスクアレルを検出可能なプローブにおいて、好ましい態様の1つとしてリスクアレルを検出可能なプローブが挙げられる。一方、1つの一塩基多型においてリスクアレルを検出可能なプローブと非リスクアレルを検出可能なプローブの両方を用いることにより、当該一塩基多型の遺伝子型を決定することができる。
本明細書において、ハイブリダイズとは、ある配列を有する核酸分子と、その核酸分子の少なくとも一部分に対し相補的な核酸分子が互いに相補的な塩基配列に基づき水素結合を介して会合することを意味する。元の核酸分子と会合する相補的な核酸分子の種類は同じでも異なっても良く、これらの核酸分子を構成する核酸分子の種類はデオキシリボ核酸であってもリボ核酸であっても、又は同一核酸分子内にその両方を持つものであっても良い。
本明細書においてストリンジェントな条件又は高ストリンジェンシーな条件とは、ある配列を有する核酸分子に、前記核酸分子の部分配列と相補的な配列を有する核酸分子が特異的にハイブリダイズする条件を意味する(Fred M. Ausuble et al., Current Protocols in Molecular Biology p.2.10.1-2.10.16; John Wiley and Sons, Inc.)。25塩基長のDNA分子からなる固層化プローブを用いる場合の具体例としては、例えば、0.056M 2-(N-Morpholino)ethanesulfonic acid、5% DMSO、2.5×デンハルド液、5.77mM EDTA、0.0115% Tween-20、2.69M Tetrametyl Ammonium Chlorideの存在下、95℃で10分変性後49℃でハイブリダイズするような条件が例示される。このような条件はプローブとして用いる核酸分子の配列長や化学修飾の程度によって異なる場合があることが知られており、特異的にハイブリダイズが可能となるようなハイブリダイズ及び/又は洗浄条件の最適化は当業者の通常の創作能力で可能である。
本発明においてアレル特異的(又は、アレルに特異的)とは、当該多型部位を含む核酸分子において当該アレルを含むこと、又は、ある核酸分子が当該多型部位において、当該アレルを含む配列を有する核酸分子にストリンジェントな条件下で特異的に、即ち、当該アレルと対立するアレルを識別可能なようにハイブリダイズすることを言う。
多型部位のアレルの決定は、ゲノムのセンス鎖、アンチセンス鎖のいずれの多型部位を検出することによっても行うことができるため、本発明におけるプローブはセンス鎖のアレルに特異的な配列の相補的配列、すなわちアンチセンス鎖のアレルに特異的な配列、ならびにアンチセンス鎖のアレルに特異的な配列に相補的な配列、すなわちセンス鎖のアレルに特異的な配列を持つ核酸分子のいずれも含まれる。本発明のプローブは本発明の一塩基多型を含むcDNA又はmRNAの検出に用いることもできる。cDNA又はmRNAの検出に用いる場合、当該一塩基多型はエクソン又はその近傍に存在するものが好適に用いられる。
本発明におけるプローブは、後述の表1〜11に記載された、アレル特異的な配列もしくはその相補鎖又はこれらの部分配列を含む核酸分子からなる。
本発明におけるプローブには、アレル特異的な配列又はその相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズし得る範囲において、末端にスペーサー又は安定化等に供する目的で当該配列に由来しない任意の数塩基の配列を付加することができる。好ましくは、本発明におけるプローブにおいてアレルに特異的なハイブリダイズに寄与する配列はアレル特異的な配列又はその相補鎖のみからなる。
プローブには検出に用いるための任意の標識を施すことができる。プローブに施す標識は通常用いられるいかなるものでも用いうるが、一般的には例えばFITCやCy3などの蛍光標識、ビオチン、又は、アルカリホスフォターゼや西洋ワサビペルオキシダーゼなどの酵素標識などが用いられる。ビオチン標識を用いる場合には、ビオチンに特異的に結合するストレプトアビジン又はアビジンにさらに検出可能な標識を施しておき、当該標識ストレプトアビジン等を二次標識として使用する。標識ストレプトアビジン等の代わりに標識抗ビオチン抗体を使用することもできる。ビオチンに結合したストレプトアビジンに対し、さらに標識抗ストレプトアビジン抗体を三次標識として使用することにより、検出感度を向上することも可能である。プローブに標識を施す方法は公知の如何なる方法でも用いられ、その方法は当業者にとって周知である。プローブに前述のスペーサーとなる任意の配列を付加し、スペーサーに標識を施すこともできる。プローブの標識化用の試薬、標識ストレプトアビジン、標識抗ビオチン抗体などは試薬として市販されており、購入して使用することもできる。
本発明におけるプローブは、目的とするアレルを有する核酸分子に特異的にハイブリダイズし得るかぎり、デオキシリボ核酸であるかリボ核酸であるかを問わず、これらの両方を同一の核酸分子中に持つ核酸分子からなるプローブもまた本発明に含まれる。また、リボ核酸を含む核酸分子をプローブとして用いる場合には、本発明の配列においてチミジン(T)で定義されたヌクレオシドはウリジン’(U)と読み替えることができる。前記本発明の配列の相補鎖のヌクレオシドがチミジンとなる場合、又は、mRNAの検出のために本発明のプローブを用いる場合についても同様である。また、本発明におけるプローブには、目的とするアレルを有する核酸分子にストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズし得る限り、必要に応じ化学修飾を施すこともできる。化学標識を施す方法は公知のいかなる方法も用いられる。
検出用のプローブは、溶液状態でサンプルと反応させ公知の方法で検出することも、あらかじめ担体上に固層化しておくことも可能である。数個乃至数十万個の異なる一塩基多型のそれぞれのアレルに対応するプローブを、一つの一塩基多型あたり一個乃至十数個ずつあらかじめ固体の担体上の定められた位置に固層化しておき、サンプルをこれに反応させ、ハイブリダイズしたプローブから生じるシグナルをスキャンしコンピューターを用いて解析する固層化プローブ、いわゆるマイクロアレイの形態を取ることも可能である。固層化プローブの形態を取る場合には、固層化するプローブの最大数はプローブの固層化密度と固層化部位の面積によって制限される。
このような固層化プローブの形態を取る場合、サンプル中の核酸分子を公知の方法で標識化しておき、固層化された本発明の非標識プローブと結合させることにより、又は、検出すべきアレルを持つ核酸分子を固層化された本発明の非標識プローブと結合させた後に公知の方法で標識化することにより、標識された、前記検出すべきアレルを持つ核酸分子由来の固層上のシグナルを検出することができる。
固層化は公知のいかなる方法によっても行うことができるが、例えば合成オリゴプリント、スポッティングフォトリソグラフなどの方法を用いることができる。また、担体の材質には制限がなく、一般的に用いられる材質、例えばポリカーボネートやポリスチレンなどの高分子、ガラス、シリコン結晶等が用いられる。また、核酸の接着力を高めるために、固層化の前に担体にあらかじめ陽イオン化などのコーティングを施しても良い。また、非特異的な核酸の担体への吸着を防ぐため、固層化を行った後に公知のブロッキング剤によりブロッキングを行うこともできる。このようなブロッキング剤には、非特異的な核酸の担体への吸着を抑制できるものであれば何でも用いられるが、例えばサケ精子DNA、デンハルト溶液、胎盤から抽出したCot-I DNA、ドデシル硫酸ナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどの非イオン性界面活性剤などを用いることができる。
また、プローブを固層化する場合には、同一担体上に対立する各々のアレルに特異的なプローブを固層化することにより、一つのサンプル中に含まれる対立する各々のアレルを同一操作で検出する構成とすることもできる。このような構成では、同一の操作によってサンプルのアレルのみならず遺伝子型を決定することも可能である。
検出用のプローブの好適な配列長は検出方法によって異なるが、本発明の滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型のアレル又は遺伝子型を特異的に検出可能なものであればよい。例えば、アレルの検出に固層化プローブを用いる場合のプローブは、好ましくは16〜50塩基、より好ましくは23〜27塩基、さらに好ましくは25塩基の長さを有し、かつ、前述の多型部位とその周辺の配列、又はこれに相補的な配列を含む核酸分子からなるプローブであり、アレルの検出を溶液状態で行う場合のプローブは、好ましくは16〜50塩基、より好ましくは23〜27塩基、さらに好ましくは25塩基の長さの長さを有し、かつ、前述の多型部位とその周辺の配列、又はこれに相補的な配列を含む核酸分子からなるプローブである。
本発明の滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の検出方法及び滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測方法において、アレル検出に用いられるプローブは、配列番号1〜124で示される塩基配列からなる群(それぞれ、奇数番目と偶数番目の塩基配列の組で1つの一塩基多型に対応する)より選択される少なくとも1つの塩基配列もしくはその相補的配列、又はこれらの部分配列からなる塩基配列において、前記配列番号1〜124で示される塩基配列の17番目に相当するアレルを有する塩基配列を含有するプローブであり、
好ましくは、配列番号1〜14で示される塩基配列からなる群より選択される少なくとも1つの塩基配列もしくはその相補的配列、又はこれらの部分配列からなる塩基配列において、前記配列番号1〜14で示される塩基配列の17番目に相当するアレルを有する塩基配列を含有するプローブであり、
より好ましくは、以下の、a〜gの一塩基多型を含む塩基配列の組からなる群より選択される少なくとも1つの塩基配列もしくはその相補的配列、又はこれらの部分配列からなる塩基配列において、前記a〜gの組に含まれる塩基配列の17番目に相当するアレルを有する塩基配列を含有するプローブである。(ここで、前述のように、a〜gで示される配列番号の組において、それぞれの塩基配列の組は1つの一塩基多型の互いに対立するアレルを17番目の塩基に含む塩基配列である)
a: 配列番号1及び/又は配列番号2、
b: 配列番号3及び/又は配列番号4、
c: 配列番号5及び/又は配列番号6、
d: 配列番号7及び/又は配列番号8、
e: 配列番号9及び/又は配列番号10、
f: 配列番号11及び/又は配列番号12、ならびに、
g: 配列番号13及び/又は配列番号14
上記のいずれかの一塩基多型を含むプローブを用いる場合、中でも、それぞれの一塩基多型を含む配列の組のうち、奇数番目の配列番号で示される配列もしくはその相補的配列、又はこれらの部分配列からなる塩基配列において、前記選択される塩基配列の17番目に存在する一塩基多型のアレルを含むプローブを用いることが好ましい。なお、これらはそれぞれの多型部位において、リスクアレルを含む塩基配列である。
(サンプル中の滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の検出方法及び滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測方法)
本発明のある態様では、核酸分子を含むサンプル中に、wAMD患者において頻度が高いアレル又は遺伝子型を有するか否かの検出方法が提供される。サンプルとしては、核酸分子を含むもの、即ち、ゲノム由来の核酸分子(DNA及び/又はRNA)を抽出可能なもの、又は、本発明の一塩基多型の近傍に存在する遺伝子を含むmRNA又はcDNAを抽出可能なものであれば何でも良いが、例えば、血液、白血球、毛根、毛髪、唾液、口腔粘膜細胞、鼻腔粘膜細胞、皮膚、又は、生検によって得た筋肉もしくは臓器などの組織が用いられる。
前述のように、真核生物のゲノムを構成する核酸分子は互いに相補的なセンス鎖とアンチセンス鎖で構成されており、サンプルに含まれる核酸分子における本発明の一塩基多型のアレルの検出は、当該多型部位のセンス鎖、アンチセンス鎖のいずれの塩基を検出することによっても行うことができる。
本発明で開示された、滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型を含む33塩基長の核酸配列は、その中央(即ち、17番目)の塩基のみが異なる2つの塩基配列からなる塩基配列の組(即ち、配列番号が奇数と偶数の組)からなり、当該17番目の塩基が多型部位である。多型部位におけるリスクアレルを含む塩基配列は、前記の塩基配列の組のうち先の(即ち、奇数番目の)配列である。また、リスクアレルは後述の表1〜11に記載されている。これらの一塩基多型の少なくとも1つについて、サンプルに含まれる核酸分子中のリスクアレルを検出することにより、サンプル提供者の滲出型加齢黄斑変性リスクを予測することができる。即ち、サンプル中の核酸分子に当該一塩基多型におけるリスクアレルが少なくとも一つ存在する場合に、滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると予測すればよい。
また、上記で同定した滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型について、一つのサンプルに含まれる特定のアレルに対立する各々のアレルを検出し、遺伝子型を決定することができる。即ち、あるアレルのみが検出された場合は当該アレルをホモに有するホモ型であり、2つのアレルが検出された場合には当該2つのアレルをヘテロに有するヘテロ型である。これらの一塩基多型の少なくとも1つについて、サンプル中の核酸分子に含まれる当該一塩基多型の遺伝子型を決定し、後述の表1〜11に記載されたwAMD患者群及び対照群の遺伝子型頻度データを基に、前述の方法によって滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型を決定し、これらを比較することにより、同様にリスク予測を行えばよい。尚、サンプル中の核酸分子に含まれる一塩基多型の遺伝子型の決定には、リスクアレルの特定は必ずしも必要でないことから、遺伝子型の決定は、サンプル中の核酸分子に当該一塩基多型のリスクアレルが少なくとも1つ存在するか否かを判定する前後のいずれにも行うことができ、該決定された遺伝子型と、リスクアレルに基づいて決定された滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型との比較を行って、滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測を行うことができる。
核酸分子を含むサンプル中にこれらのアレルの存在を検出するには、如何なる方法でも用いうるが、前述のそれぞれのアレルに特異的なプローブを用いてハイブリダイズし、そのシグナルを検出することによりそれぞれのアレルを検出することができる。検出されたアレルと本発明で開示された当該一塩基多型におけるリスクアレルを比較することにより、サンプル中の核酸分子に当該一塩基多型におけるリスクアレルが存在するか否かを決定できる。例えば、前述の本発明の核酸分子及び/又は前述の本発明のプローブは、本発明の滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の検出方法及び滲出型加齢黄斑変性のリスク予測方法におけるリスクアレル又は滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型の決定に好適に用いることができる。
また、対立する各々のアレル、即ち、ある一塩基多型に含まれるリスクアレル及び非リスクアレル、に対応するプローブにそれぞれ異なる標識を施し、又は、対立する各々のアレルを固層化したマイクロアレイなどの固層化プローブを用いることにより、同一サンプルに含まれる対立する各々のアレルを検出することができる。このような構成では、サンプルのアレルのみならず遺伝子型を決定することも可能である。また、対立する各々のアレルを同一担体上に固層化したマイクロアレイなどの固層化プローブを用いる場合には、同一操作でハイブリダイズを行い、同一操作で検出する構成とすることもできる。
本発明の一塩基多型を検出する方法としては、上述の方法以外に公知のいかなる方法も用いられるが、例えば、次のようなものが利用可能である。プローブを用いてハイブリダイズする方法の例としてはTaqMan(登録商標)法、インベーダー(Invader (登録商標))法などがあり、これらのいずれも用い得る。同一のアレルを検出するためのプローブであっても、検出に用いる方法によってより好ましいプローブが異なる場合がある。本発明の一塩基多型のアレル又は遺伝子型の判定は検出方法に依存しないが、検出方法に応じて適するプローブを使用することが望ましい。また、プローブによるハイブリダイズを行わない方法としては、直接塩基配列を決定するダイレクトシークエンス法などが挙げられる。
なお、前述のように、本明細書において「アレル特異的」又は「アレルに特異的」とは、当該多型部位を含む核酸分子又は塩基配列において当該アレルを含むこと、又は、ある核酸分子が当該多型部位において、当該アレルを含む配列を有する核酸分子にストリンジェントな条件下で特異的に、即ち、当該アレルと対立するアレルを識別可能なようにハイブリダイズすることが可能であることを言う。
このようにしてサンプルの分析を行い、サンプル中にリスクアレル又は滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型が存在する場合、当該サンプルを提供した者は滲出型加齢黄斑変性のリスクが高いと予測され、当該サンプルを提供した滲出型加齢黄斑変性が疑われる者は滲出型加齢黄斑変性と診断されるべき蓋然性が高い。滲出型加齢黄斑変性のリスクの大小はオッズ比の大小を用いて予測することができる。
さらに、一つのサンプルを用いて、本発明の滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の、リスクアレル又は遺伝子型の二つ以上を検出することにより、将来的な滲出型加齢黄斑変性のリスクの判定の精度を向上することもできる。この場合、サンプル中に検出されるリスクアレルもしくは滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型の数又はこれらのオッズ比の大小を指標にリスクの大小を予測することができる。当該リスクアレルもしくは滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型の数又はこれらのオッズ比が大であるほど、あるいは、これらの数値がある閾値を超えた場合にリスクがより高いと判定することができる。
前述のように、本発明の滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の検出方法及び滲出型加齢黄斑変性のリスク予測方法には、サンプル中の核酸分子に後述の表1〜11に記載されたいずれかの一塩基多型のアレル及び/又は遺伝子型の決定を行うこと、当該サンプル中の一塩基多型のアレル及び/又は遺伝子型と本発明で開示された当該一塩基多型のリスクアレル及び/又は本発明で開示された滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型の比較を行うこと、の少なくとも1つを含むものであれば全て含まれる。
好ましくは本発明の滲出型加齢黄斑変性のリスク予測方法は表1〜10に記載された少なくともいずれか1つの一塩基多型のアレル及び/又は遺伝子型を決定すること、当該サンプル中の一塩基多型のアレル及び/又は遺伝子型と本発明で開示された当該一塩基多型のリスクアレル及び/又は本発明で開示された滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型の比較を行うこと、の少なくとも1つを含むものであり、
より好ましくは本発明の滲出型加齢黄斑変性のリスク予測方法は表1〜4に記載された少なくともいずれか1つの一塩基多型のアレル及び/又は遺伝子型を決定すること、当該サンプル中の一塩基多型のアレル及び/又は遺伝子型と本発明で開示された当該一塩基多型のリスクアレル及び/又は本発明で開示された滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型の比較を行うこと、の少なくとも1つを含むものであり、
さらに好ましくは表1に記載された少なくともいずれか1つの一塩基多型のアレル及び/又は遺伝子型を決定すること、当該サンプル中の一塩基多型のアレル及び/又は遺伝子型と本発明で開示された当該一塩基多型のリスクアレル及び/又は本発明で開示された滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型の比較を行うこと、の少なくとも1つを含むものである。
本発明の滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の検出方法及び滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測方法において、検出に用いられる一塩基多型は、配列番号1〜124で示される塩基配列からなる群(それぞれ、奇数番目と偶数番目の塩基配列の組で1つの一塩基多型に対応する)より選択される、少なくとも1つの塩基配列又はその相補的配列において、各塩基配列の17番目に存在する一塩基多型であり、
より好ましくは、配列番号1〜14で示される塩基配列からなる群より選択される、少なくとも1つの塩基配列又はその相補的配列において、各塩基配列の17番目に存在する一塩基多型であり、
さらに好ましくは、以下の、a〜gの一塩基多型を含む塩基配列の組からなる群より選択される、少なくとも1つの塩基配列又はその相補的配列において、各塩基配列の17番目に存在する一塩基多型である。(ここで、前述のように、a〜gで示される配列番号の組において、それぞれの塩基配列の組は1つの一塩基多型の互いに対立するアレルを17番目の塩基に含む塩基配列である)
a: 配列番号1及び/又は配列番号2、
b: 配列番号3及び/又は配列番号4、
c: 配列番号5及び/又は配列番号6、
d: 配列番号7及び/又は配列番号8、
e: 配列番号9及び/又は配列番号10、
f: 配列番号11及び/又は配列番号12、ならびに、
g: 配列番号13及び/又は配列番号14
上記のいずれかの一塩基多型を用いる場合、中でも、それぞれの一塩基多型を含む配列の組のうち、奇数番目の配列番号で示される配列又はその相補的配列において、各塩基配列の17番目に存在する一塩基多型のアレルを用いることが好ましい。なお、これらはそれぞれの多型部位において、リスクアレルを含む塩基配列である。
サンプル中のこれらの一塩基多型の検出を行うに当たり、上記いずれか1つの一塩基多型に加えて、該一塩基多型以外に、さらに表1〜11に記載された少なくともいずれか1つの一塩基多型のアレル又は遺伝子型を決定することを組み合わせることにより疾患判定の精度を向上させることができる。組み合わせに用いる一塩基多型は、好ましくは表1〜10に記載された一塩基多型であり、より好ましくは表1〜4に記載された一塩基多型であり、さらに好ましくは表1に記載された一塩基多型である。
(滲出型加齢黄斑変性に関連するアレルを検出するためのキット)
本発明の別の態様では、滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型を検出するためのキットが提供される。
本発明のキットには、サンプル中の核酸分子に後述の表1〜11に記載されたいずれかの一塩基多型のリスクアレルを検出することができるものであれば全て含まれる。好ましくは、本発明のキットは、表1〜10に記載された少なくともいずれか1つの一塩基多型のリスクアレル及び/又は非リスクアレルの検出が可能なキットであり、より好ましくは表1〜4に記載された少なくともいずれか1つの一塩基多型のリスクアレル及び/又は非リスクアレルの検出が可能なキットであり、さらに好ましくは表1に記載された少なくともいずれか1つの一塩基多型のリスクアレル及び/又は非リスクアレルの検出が可能なキットである。1つの一塩基多型に含まれるリスクアレル及び非リスクアレルの両方を検出可能なキットを用いることにより当該一塩基多型の遺伝子型を決定することができる。
本発明のキットにおいて、上記いずれか1つの一塩基多型に加えて、該一塩基多型以外に、さらに表1〜11に記載された少なくともいずれか1つの一塩基多型のリスクアレル及び/又は非リスクアレルの検出あるいは遺伝子型の決定が可能なキットも本発明の態様の一つである。複数の一塩基多型のアレル又は遺伝子型の決定を行うキットの場合、上記いずれか1つの一塩基多型に加えて、好ましくはさらに表1〜10に記載された一塩基多型のリスクアレル及び/又は非リスクアレルの検出あるいは遺伝子型の決定が可能なキットであり、より好ましくはさらに表1〜4に記載された一塩基多型のリスクアレル及び/又は非リスクアレルの検出あるいは遺伝子型の決定が可能なキットであり、さらに好ましくはさらに表1に記載された一塩基多型のリスクアレル及び/又は非リスクアレルの検出あるいは遺伝子型の決定が可能なキットである。
これらの表1〜11の少なくとも1つの一塩基多型のリスクアレル及び/又は非リスクアレルの検出あるいは遺伝子型の決定が可能なキットのうち、好ましい態様の一つに、前記一塩基多型のリスクアレルの検出が可能なキットが挙げられる。
プローブの項で説明したように、本発明のキットは一塩基多型のセンス鎖、アンチセンス鎖のいずれの塩基を検出するものであっても良く、これらの両者を検出するものであっても良い。一塩基多型の検出方法にも制限はなく、例えばプローブの項で例示した検出方法が用いられる。
前述の本発明の核酸分子及び/又は前述の本発明のプローブを用いて滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型を検出するためのキットは、本発明に含まれる。即ち、本発明のキットは、滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型のアレル又は遺伝子型の決定が可能なように、本発明の核酸分子及び/又は本発明のプローブを含有するものである。
前述のリスクアレルと、非リスクアレルの両方を検出するキットも本発明の好ましい実施態様の一つである。このようなキットを用い、既に説明したように各アレルの遺伝子型を決定することも可能である。
本発明のキットを用いて、サンプル中にリスクアレル又は滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型が存在することを検出することにより、非wAMD患者の将来的な滲出型加齢黄斑変性のリスクを予測し又は滲出型加齢黄斑変性の疑いがある者の滲出型加齢黄斑変性の診断又は診断の補助を行うことができる。
また、前述のように、対立するアレルにそれぞれ特異的なプローブを用い、かつ、プローブの標識を異なるものとすることにより、又は、前述の固層化プローブ(マイクロアレイ)の形態とすることにより、対立するアレルを同一操作で測定するキットとすることもできる。
一つのサンプルを用いてこれらのアレル又は遺伝子座の複数を検出する構成のキットとすることにより、将来的な滲出型加齢黄斑変性のリスク予測や診断の精度を向上させることもできる。このような構成においても、異なる標識を施したプローブや前述のマイクロアレイの形態とすることにより、検出を同一操作で行う構成とすることもできる。
本発明の滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の検出方法及び滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測方法において、検出又はリスク予測に用いられるキットは、配列番号1〜124で示される塩基配列からなる群(それぞれ、奇数番目と偶数番目の塩基配列の組で1つの一塩基多型に対応する)より選択される少なくとも1つの塩基配列もしくはその相補的配列、又はこれらの部分配列からなる塩基配列において、前記配列番号1〜124で示される各塩基配列の17番目に相当する一塩基多型のアレル又は遺伝子型の決定が可能なキットであり、
好ましくは、配列番号1〜14で示される塩基配列からなる群より選択される少なくとも1つの塩基配列もしくはその相補的配列、又はこれらの部分配列からなる塩基配列において、前記配列番号1〜124で示される各塩基配列の17番目に相当する一塩基多型のアレル又は遺伝子型の決定が可能なキットであり、
より好ましくは、以下の、a〜gの一塩基多型を含む塩基配列の組からなる群より選択される少なくとも1つの塩基配列もしくはその相補的配列、又はこれらの部分配列からなる塩基配列において、前記配列番号1〜124で示される各塩基配列の17番目に相当する一塩基多型のアレル又は遺伝子型の決定が可能なキットである。(ここで、前述のように、a〜gで示される配列番号の組において、それぞれの塩基配列の組は1つの一塩基多型の互いに対立するアレルを17番目の塩基に含む塩基配列である)
a: 配列番号1及び/又は配列番号2、
b: 配列番号3及び/又は配列番号4、
c: 配列番号5及び/又は配列番号6、
d: 配列番号7及び/又は配列番号8、
e: 配列番号9及び/又は配列番号10、
f: 配列番号11及び/又は配列番号12、ならびに、
g: 配列番号13及び/又は配列番号14
上記のいずれかの一塩基多型のアレル又は遺伝子型の決定が可能なキットにおいて、中でも、それぞれの一塩基多型を含む配列の組のうち、奇数番目の配列番号で示される配列もしくはその相補的配列、又はこれらの部分配列からなる塩基配列において、前記a〜gの組で示される各塩基配列の17番目に相当する一塩基多型のアレルの決定が可能なキットであることが好ましい。なお、これらはそれぞれの多型部位において、リスクアレルを含む塩基配列である。
(好ましい人種)
本発明で用いられる滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型は、当該多型を有する限りいかなる人種においても用いられるが、好ましい人種はモンゴロイドであり、より好ましくは東アジア人であり、さらに好ましくは日本人又は日本人を祖先にもつ人である。
本発明により、本発明で開示されたリスクアレル又は滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型をゲノム上に持つ者は、将来的に滲出型加齢黄斑変性を発症する危険性が高く、リスクアレル又は滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型を持たない者は、将来的に滲出型加齢黄斑変性を発症する危険性が低いと判定することが出来る。
また、本発明で開示されたリスクアレル又は滲出型加齢黄斑変性のリスクあると考えられる遺伝子型をゲノム上に持つ、初期の滲出型加齢黄斑変性の疑いがある者は、検出が困難な初期の滲出型加齢黄斑変性を発症している恐れがあるため、本発明の一塩基多型の検出を行うことにより、滲出型加齢黄斑変性の診断又は診断の補助に用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、実施例は本発明をより良く理解するために例示するものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されることを意図するものではない。なお、以下の実施例では、特に詳細な説明がない一般的な分子生物学的手法については、モレキュラークローニング (Joseph Sambrook et al., Molexular Cloning - A Laboratory Manual, 3rdEdition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)などの成書に記載された方法及び条件が用いられ、試薬としては分子生物学グレードのものが用いられる。
本発明では、滲出型加齢黄斑変性と診断された患者、緑内障であると診断された患者、及び、白内障と診断された患者それぞれの血液から総DNAを抽出し、ヒトゲノム上の公知の一塩基多型約50万個を指標として疾患に関連する遺伝子座を解析し、滲出型加齢黄斑変性に特異的に関連すると考えられる一塩基多型の検討を行った。
実施例1 検体からのDNAの抽出
検体からのDNAの抽出は、フェノール抽出法(Methods in Enzymology、152巻、181ページ、1987年)に準じて実施した。クエン酸を加えた血液サンプルにアンモニウム塩及びEDTAを含む低張な溶血バッファーを十分量加えて白血球を精製した。数回の洗浄の後、Proteinase KとSDSを含む溶解バッファーで細胞を溶解させた。懸濁されていた細胞が溶解して透明になったのを確認した後、フェノールを加え、室温で1〜3時間振盪した。フェノール層を廃棄し、水層のみを遠心分離してさらに不純物を分離した。水層をTE緩衝液(10mM Tris pH8.0、0.1mM EDTA, Teknova)で透析した後にエタノール沈殿法にてDNAを回収し、TE緩衝液に溶解した。このようにして得たゲノムDNA溶液20μLに7.5M NH4OAc 10μL、20mg/mL Glycogen 0.5μLと100% 氷冷エタノール50μLを加え-20℃で1時間静置した。12,000×gで20分遠心後、上清を除いた。80%氷冷エタノール 500μLを加え12,000×gで5分遠心後、上清を除き沈殿を乾燥させた。沈殿をTE緩衝液に溶かし、濃度が50ng/μLになるよう調整した。尚、DNA濃度は分光光度計 (Biophotometer, Eppendorf)を用い、260nmの吸光度により測定した。また、一部のサンプルについては、自動核酸抽出装置 (Magtration System 8Lx、プレシジョン・システム・サイエンス株式会社) を用い、装置の説明書に従ってDNAを抽出した。
実施例2 一塩基多型の分析
一塩基多型の分析は、ヒトゲノム上の公知の一塩基多型約50万個の分析が可能な市販のマイクロアレイ型の一塩基多型分析キット(アフィメトリックス社、ジーンチップ ヒューマンマッピング 250K Nsp/Sty アレイ(GeneChip(登録商標) Human Mapping 250K Nsp/ Sty Array))(以下、マイクロアレイと記載)を使用した。
実施例1にて抽出した総DNA (ゲノムDNA) をキット及び機器の説明書に従って処理し、マイクロアレイ上に適用して検体から抽出したDNAに存在する一塩基多型を解析する。具体的には、以下の操作を行う。
(制限酵素処理)
250ngずつのゲノムDNAを以下の手順によりそれぞれSty I(New England Biolabs)又はNsp I(New England Biolabs)制限酵素で切断する。即ち、ゲノムDNA溶液5μLに、市販の分子生物学グレードの超純水 (AccuGENE(登録商標) molecular biology-grade water, Cambrex)11.5μL、それぞれの制限酵素に添付された緩衝液 2μL、10mg/mL BSA 0.2μL、10U/mL 制限酵素 1μLを加え制限酵素処理を行った。反応は37℃で2時間反応させた後、65℃で20分インキュベートして制限酵素を失活させた。
(アダプター配列の付加)
制限酵素処理が終了したサンプルに、以下の手順でアダプター配列を付加する。制限酵素処理サンプルに、切断した制限酵素に対応する50μM のAdaptor Nsp I又はAdaptor Sty I (New England Biolabs) 0.75μL、T4 DNA ligase緩衝液 (New England Biolabs) 2.5μLとT4 DNA ligase (New England Biolabs) 2μLを加え、16℃で3時間反応させてアダプター配列を付加させた後に、70℃で20分反応させてT4 DNA ligaseを失活させた。アダプター付加終了したサンプルには、冷却したAccuGENE water 75μLを加え希釈した。
(遺伝子断片の増幅と精製)
以下の手順により、アダプター配列を付加した遺伝子をTITANIUMTM(登録商標) DNA Amplification kit (Clontech )を用いてPCR法で増幅する。即ち、希釈したサンプル5μLにAccuGENE water 39.5μL、TITANIUMTM(登録商標) taq PCR buffer 10μL、5M GC-Melt (Clonetech) 20μL、2.5mM dNTP(タカラバイオ) 4.5μL、100μM PCR primer002 (Affymetrix, GeneChip(登録商標) Mapping 250K Nsp/ Sty Assay Kitに含まれる) 4.5μL及びTITANIUMTM(登録商標) taq DNA polymerase 2μLを加えて反応させた。反応温度と時間は次の通りである。まず、94℃で3分放置後、94℃30秒→60℃30秒→68℃15秒を1サイクルとして30サイクル反応させ、68℃で7分放置した。これを1連の反応操作として、1つのサンプルにつき同じPCR反応操作を3回行った。PCR産物は2%アガロースゲル電気泳動を行い、200bpから1000bpの遺伝子断片が増幅されていることを確認した。3回分のPCR産物をひとつにまとめ、DNA amplification Clean-Up kit (Clontech)を用い精製した。精製したPCR産物は45μL RB buffer(Clontech)に溶かし回収した。尚、PCR反応のプライマーとして用いたPCR primer002の配列は以下の通りである;5’-attatgagcacgacagacgcctgatct-3’(配列番号125)。
(増幅遺伝子の断片化)
GeneChip(登録商標) Mapping 250K Nsp / Sty Assay Kit (Affymetrix)試薬を用いて以下の手順により増幅遺伝子を断片化する。即ち、精製したPCR産物の260nmにおける吸光度を分光光度計 (Biophotometer、Eppendorf)を用いて測定し、90μgのPCR産物を総容量45μLになるようにRB buffer(Clontech)で希釈した。希釈したサンプルにキットに含まれるfragmentation buffer 5μL及び0.05U/μL Fragmentation Reagent 5μLを加え、37℃で35分反応させた後に95℃で15分放置してFragmentation reagentを失活させた。尚、Fragmentation Reagentは10×fragmentation bufferとAccuGENE waterによって、最終濃度が0.05U/μL Fragmentation Reagent、1×fragmentation bufferとなるよう希釈して用いた。断片化産物は4%アガロースゲル電気泳動を行い、遺伝子が断片化されていることを確認した。
(断片化遺伝子へのビオチンラベルの付加)
断片化した遺伝子にGeneChip(登録商標) Mapping 250K Assay Kit (Affymetrix)を用いて以下の手順によりビオチンラベルを付加する。断片化サンプル50.5μLにキットに含まれるTerminal Deoxynucleotidyl Transferase buffer 14μL、30mM GeneChip DNA Labeling Reagent 2μL及び30U/μL Terminal Deoxynucleotidyl Transferase enzyme 3.5μLを加え、37℃で4時間反応させた後に、95℃で15分放置して酵素を失活させ、ハイブリダイゼーション用のサンプルとした。
(ハイブリダイゼーション)
ビオチンラベルを付加したサンプル70μLにhybridization cocktail master mix (組成は以下の通り;0.056M 2-(N-Morpholino)ethanesulfonic acid、5% DMSO、2.5×Denhard'ts solution (Sigma)、5.77mM EDTA pH8.0、0.115mg/mL Herring Sperm DNA(Promega)、1×Oligo Control Reagent 0100 (Affymetrix)、11.5μg/mL Human Cot-1 DNA (Invitrogen)、0.0115% Tween-20、2.69M Tetrametyl Ammonium Chloride(Sigma)) 190μLを加え、95℃で10分変性後、49℃で保持した。GeneChip(登録商標) Human Mapping 250K Nsp/ Sty Array (以下、マイクロアレイともいう) に200μLのサンプルを適用し、温度49℃、回転数60r/minに設定されたハイブリオーブン (GeneChip Hybridization Oven 640, Affymetrix) で16時間から18時間ハイブリダイズさせた。サンプルをマイクロアレイから取り出し、Array Holding Buffer(1mM MES、1M NaCl、0.01% Tween-20)をマイクロアレイ内部に充填させた。
(染色及び検出)
ハイブリダイゼーションが終了したマイクロアレイの染色をAffymetrix社のGeneChip(登録商標) Operating Software 1.4(以下GCOS)、protocol: MAP500Kv1_450により、同社のGeneChip Fluidics Station 450を用いて行った。一次及び三次染色はそれぞれStain Bufferで調製した10μg/mL Streptavidin-Phycoerythrin (Invitrogen)、二次染色は5μg/mL biotinylated Anti-Streptavidin Antibody (Vector Lab.)で行った。検出はGCOSを用いてGeneChip(登録商標) Scanner 3000 7Gで行った。尚、具体的な染色・洗浄工程のプロトコールと洗浄液等の組成は以下の通りである。
〔染色・洗浄工程プロトコール(FS-450 Fluidics Protocol - Mapping 500Kv1_450)〕
- Post Hyb Wash #1: 6 cycles of 5 mixes/cycle with Wash Buffer A at 25℃
- Post Hyb Wash #2: 24 cycles of 5 mixes/cycle with Wash Buffer B at 45℃
- Stain: Stain the probe array for 10 minutes in SAPE solution at 25℃
- Post Stain: Wash 6 cycles of 5 mixes/cycle with Wash Buffer A at 25℃
- 2nd Stain: Stain the probe array for 10 minutes in Antibody Stain Solution at 25℃
- 3rd Stain: Stain the probe array for 10 minutes in SAPE solution at 25℃
- Final Wash: 10 cycles of 6 mixes/cycle with Wash Buffer A at 30℃
The final holding temperature is 25℃
〔溶液の組成〕
・Wash A: Non-Stringent Wash Buffer (6X SSPE, 0.01% Tween 20)
For 1000 mL:
300 mL of 20X SSPE, 1.0 mL of 10% Tween-20, 699 mL of water
Filter through a 0.2 μm filter. Store at room temperature.
・Wash B: Stringent Wash Buffer (0.6X SSPE, 0.01% Tween 20)
For 1000 mL:
30 mL of 20X SSPE, 1.0 mL of 10% Tween-20, 969 mL of water
Filter through a 0.2 μm filter. Store at room temperature.
The pH should be 8.
・Stain Buffer: (6X SSPE, 0.01% Tween 20, 1X Denhardt’s solution)
For 1188 μL:
360 μL of 20X SSPE, 3.6 μL of 3% Tween-20, 24 μL 50X Denhardt’s solution, 800.04 μL of water
(Genotyping解析)
Affymetrix社のAffymerix Power Tools ver.1.10.0を用いてSNP Genotyping解析を行った。解析には同梱されているBRLMM genotype calling algorithmを用いた。
実施例3 常染色体上のwAMD患者と非wAMD患者の一塩基多型の対比
疾患関連一塩基多型の比較は、クラインらの方法(Science 308巻、385ページ、2005年)に準じて以下のように行った。
(試験群の設定)
(一塩基多型の分析)
参加者の自由意志で得た同意の下に提供された血液を検体とし、実施例1に記載の方法で総DNAを抽出し、実施例2に記載の方法で一塩基多型の分析を行った。統計解析言語 R ver.2.7.0を用いて、以下に述べる解析を行った。即ち、コールレートが90%未満の一塩基多型、マイナーアレル頻度が5%未満の一塩基多型、及び、有意水準0.0001でハーディー・ワインバーグ平衡が成立していないと判定される一塩基多型をいずれも棄却し、さらに、目視によって正しくコールされていることを確認することにより、実験的な信頼性が高いと考えられる一塩基多型を選択した。なお、ハーディー・ワインバーグ平衡の成立の検定はカイ二乗検定を用いて行った。
(滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の一次解析)
このようにして選択された一塩基多型について、滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の候補を抽出するため、(1)wAMD患者群対緑内障患者群、(2)wAMD患者群対白内障患者群の2通りの比較解析を行った。滲出型加齢黄斑変性に特異的に関連する一塩基多型の候補を抽出するために、(1)及び(2)で共通して、3種の遺伝子型(一方のアレルのホモ、ヘテロ、他方のアレルのホモ)ごとに比較した際のp値の最小値が0.01を下回る一塩基多型508個を抽出し、これらを滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の候補とした。尚、遺伝子型のp値の算出にはFisherの正確確率検定を用いた。
(滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の二次解析)
このように選択された滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の候補について、さらに詳細に解析を行った。即ち、緑内障患者群に採用された患者及び白内障患者群に採用された患者をまとめて対照群とし、以下の通りwAMD患者群と対照群の比較解析を行った。
(アレルのオッズ比)
リスクアレルの有無と滲出型加齢黄斑変性の有無の間にどの程度強い関連が存在するかの指標として、アレルのオッズ比を以下の式によって求めた。
ここで、リスクアレルは、当該一塩基多型を構成する2つのアレルの検出数を上記数式に代入してアレルのオッズ比を求める際に、当該オッズ比が1より大になるように設定した。尚、一方のアレルと他方のアレルを入れ替えて計算するとオッズ比は互いに逆数の関係となる、即ち、一方のオッズ比が1より小であれば他方のオッズ比は1より大であることは前記定義式より明らかである。
(遺伝子型p値の算出)
各SNPの遺伝子型p値の算出は、wAMD患者群対対照群についてFisherの正確確率法によって行った。その際、Genotypeモデル(リスクアレルホモ型対ヘテロ型対非リスクアレルホモ型)、Dominantモデル(リスクアレルホモ型+ヘテロ型対非リスクアレルホモ型)、Recessiveモデル(リスクアレルホモ型対非リスクアレルホモ型+ヘテロ型)の3種類の統計モデルについてp値の算出を行い、最も低いp値となるものを当該一塩基多型を代表するp値とした。
以上のように解析を行い、ボンフェローニ補正、即ち、全体の有意水準を0.05とし、繰り返し回数508回で有意水準0.05を除して得た補正有意水準 (9.84×10-5)以下のp値(前記一塩基多型を代表するp値)で遺伝子型が滲出型加齢黄斑変性との関連を示す一塩基多型を抽出した。
(遺伝子型のオッズ比)
さらに、これらの一塩基多型について、前述のように決定されたリスクアレルに基づき、以下の式によりDominant型オッズ比及びRecessive型オッズ比を求めた。ここで、ある一塩基多型について、いずれかの遺伝子型頻度が0であり、よっていずれかのオッズ比が無限大になってしまう場合には、当該遺伝子型頻度を0.5とおいて近似計算を行った。前述のように、本発明において、dominant型オッズ比は、リスクアレルを少なくとも1つ持つ場合(即ち、リスクアレルホモ型又はヘテロ型である場合)に滲出型加齢黄斑変性であることのオッズ比であり、recessive型オッズ比はリスクアレルをホモに持つ場合に滲出型加齢黄斑変性であることのオッズ比である。
(結果)
このようにして得た滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型のうち、表1にはp<1.0×10-6の一塩基多型について、表2〜4には1.0×10-6≦p<9.84×10-5の一塩基多型について、それぞれSNP ID、一塩基多型が存在する染色体番号及び物理的位置、当該一塩基多型が所属する遺伝子又は当該一塩基多型の近傍に存在する遺伝子名、相対位置(当該一塩基多型が前記遺伝子名で表示された遺伝子のイントロン上に存在する場合はその旨を示し、一塩基多型が前記遺伝子のイントロン上に存在しない場合は当該遺伝子と当該一塩基多型の間の距離を示す)、リスクアレルの塩基、非リスクアレルの塩基、遺伝子型のp値を算出するのに用いた統計モデル、遺伝子型のp値、アレルのオッズ比、ならびに、リスクアレルとその前後各16塩基ずつからなる33塩基長の配列に対応する配列番号(リスクアレルを含む配列1)及び、非リスクアレルとその前後各16塩基ずつからなる33塩基長の配列に対応する配列番号(非リスクアレルを含む配列2)を記載する。尚、SNP IDにはdbSNPデータベースのIDを記載した。これらの情報のうち染色体番号及び物理的位置、遺伝子名と相対位置、各アレルを含む配列情報はアフィメトリックス社が提供する技術資料ならびにNCBI SNP及びNCBI Nucleotideなどの公共データベースからdbSNP ID等をキーとして抽出した。また、p値欄において、それぞれのp値は10を底とする指数形式で表示される。ここで、符号Eの前後に記載された数値はそれぞれp値を指数形式で表示した際の仮数部と指数部を示す(以下、実施例中の表について同じ)。
同様に、9.84×10-5≦p<1.0×10-4である一塩基多型を表5〜10に示す。また、表11には、ボンフェローニ補正下で有意であり、かつ、緑内障と関連することが知られている一塩基多型と同一の遺伝子上に存在する一塩基多型を示す。
さらに、これらの一塩基多型について、wAMD患者群及び対照群それぞれについて、表12〜18にリスクアレル頻度、非リスクアレル頻度、リスクアレルホモ型頻度、ヘテロ型頻度、非リスクアレルホモ型頻度を記載する。また、表19〜27に、それぞれの一塩基多型の遺伝子型オッズ比、関連する遺伝子型オッズ比、及び、リスクとなる遺伝子型を記載する。ここで、遺伝子型オッズ比は、当該一塩基多型について求めたDominant型オッズ比及びRecessive型オッズ比のうち、その値が大であるもの(すなわち、当該一塩基多型に関連する遺伝子型のオッズ比)の値を記載し、関連するオッズ比は、前記一塩基多型に関連する遺伝子型のオッズ比がDominant型オッズ比であるか、Recessive型オッズ比であるかを示す。
実施例4 一塩基多型の周辺領域の解析
本発明の一塩基多型が属するLDブロック構造を推定した。実施例3にて決定した滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型を含む周辺の一塩基多型のうちマイナーアレル頻度が 0.05未満の一塩基多型について、Gabrielらの方法(Science 21 June 2002:Vol. 296. no. 5576, pp. 2225 - 2229)を参酌して、LD測定としてのD’値の信頼区間を用いてLDブロック構造を推定した。図1〜6には、当該LDブロックに含まれる一塩基多型を太字で記載し、さらに、本発明の一塩基多型と連鎖不平衡状態にあると考えられる領域を枠つきで示す。また、LDブロック上又はその近傍に存在する遺伝子も併せて表示する。
実施例5 LDブロック上の一塩基多型の再解析
実施例4で推定したLDブロックに所属する任意の一塩基多型について、以下のように再解析を行うことができる。本実施例ではTaqMan(登録商標) SNP Genotyping Assays (Applied Biosystems) を用いる再解析法を例示する。
患者群及び対照群は、実施例3の患者群及び患者群と同じであっても全く異なるものであっても良い。これらの参加者より提供された血液を検体とし、例えば実施例1に記載の方法で総DNAを抽出し、Applied Biosystems社のプロトコールに従って上記LDブロックに含まれる一塩基多型について、患者群と対照群の比較解析を行う。リアルタイムPCR反応の試薬、サーマルサイクラー及び検出器はそれぞれApplied Biosystems社によって指定されたものを用いることができる。サーマルサイクラー及び検出器にStepOnePlus リアルタイムPCRシステムを用いる場合、PCR産物中の一塩基多型のアレルの検出には、StepOne Software V2.0.1を使用することができる。
得られた一塩基多型の検出結果を用い、実施例3と同様にアレルのオッズ比を計算してリスクアレルを決定し、遺伝子型p値の算出を行う。
このようにして当該LDブロック内の任意の一塩基多型について疾患との関連を確認し、リスクアレル及び疾患のリスクとなる遺伝子型を決定することができる。
実施例6 ゲノムDNAを含むサンプルを用いる滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の分析
本発明で開示された滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型において、表1〜11に記載したアレルの頻度は、wAMD患者群と対照群の間で統計学的に差がある。ゲノムDNAを含むサンプルに含まれるこれらの一塩基多型の少なくともいずれか一つについて、そのアレルを決定することにより、リスクアレルが存在するか否かを判定できる。サンプル中のゲノムDNAに本発明の一塩基多型の少なくとも1つについてリスクアレルが検出される場合、当該サンプル中に滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型のリスクアレルが含まれると判定される。アレルの代わりに、前述の滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型の決定を行うことも可能である。さらに、一つのサンプルを用いて、本発明の滲出型加齢黄斑変性に関連する一塩基多型の、疾患で高頻度に認められるアレル又は遺伝子型の二つ以上を検出することも可能である。
実施例7 非滲出型加齢黄斑変性患者の滲出型加齢黄斑変性のリスクの判定及び滲出型加齢黄斑変性が疑われる者の診断補助
実施例3と同様にして、非wAMD患者によって提供されたゲノムDNAを含むサンプルを用い、サンプル提供者の滲出型加齢黄斑変性のリスクを精度よく判定することができる。本発明で開示された疾患に関連する一塩基多型について、サンプル中にリスクアレル又は滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型の少なくとも1つが検出された場合、滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると判定される。疾患に関連する一塩基多型を検出するプローブを複数組み合わせて本発明の一塩基多型の2つ以上を組み合わせて検出することにより、滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測精度を向上することができる。この場合、サンプル中に検出されたリスクアレルもしくは滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型の数の和、又は、これらのオッズ比を指標にリスクを予測する。これらの数値の大小により、滲出型加齢黄斑変性のリスクの大小が予測され、又は、ある閾値を超える場合は、滲出型加齢黄斑変性のリスクが高いと判定される。
さらに、同様に、滲出型加齢黄斑変性が疑われる者の診断補助を行うことができる。滲出型加齢黄斑変性が疑われる者によって提供されたサンプルを用い、サンプル中にリスクアレル又は滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型の少なくとも1つが検出された場合、滲出型加齢黄斑変性と判断されるべき蓋然性が高い。また、疾患に関連する一塩基多型を検出するプローブを複数組み合わせて本発明の一塩基多型の2つ以上を組み合わせて検出することにより、サンプル中に検出されるリスクアレルもしくは滲出型加齢黄斑変性のリスクがあると考えられる遺伝子型の数の和、又は、これらのオッズ比を指標に滲出型加齢黄斑変性と判断されるべき蓋然性がどの程度増加するかを評価する。ある閾値を超える場合は、滲出型加齢黄斑変性であると診断することができる。
本発明の方法により、サンプル中の本発明の一塩基多型のアレル又は遺伝子型を分析することにより、サンプル提供者が将来的に滲出型加齢黄斑変性のリスクの有無及び/又は高低を判定することができる。このリスクに基づきサンプル提供者は滲出型加齢黄斑変性の予防措置を講じ、及び/又は定期的に滲出型加齢黄斑変性の検査を受けることによって早期に滲出型加齢黄斑変性の診断を受け、治療を開始することができる。また、本発明の一塩基多型のリスクアレル又は滲出型加齢黄斑変性のリスクあると考えられる遺伝子型をゲノムに持つ、滲出型加齢黄斑変性が疑われるサンプル提供者は、滲出型加齢黄斑変性と診断されるべき蓋然性が高く、早期に治療を開始することができるため、有用である。

Claims (12)

  1. 被験者由来のサンプル中の核酸分子について、配列番号1〜124で示される塩基配列からなる群より選択される少なくとも1つの塩基配列又はその相補的配列において、前記塩基配列の17番目に存在する一塩基多型のアレルをin vitroで検出する工程(検出工程)、及び
    前記検出されたアレルの少なくとも1つがリスクアレルであるか否かを判定する工程(判定工程)
    を含む、滲出型加齢黄斑変性のリスクを予測する方法。
  2. さらに、検出工程において検出されたアレルに基づき遺伝子型を決定する工程を含む、請求項1記載の滲出型加齢黄斑変性のリスクを予測する方法。
  3. 配列番号1〜124で示される塩基配列からなる群より選択される少なくとも1つの塩基配列もしくはその相補的配列、又はこれらの部分配列において、前記配列番号1〜124で示される塩基配列の17番目に相当するアレルを有する配列を含有する核酸分子を用いて検出工程を行う、請求項1又は2記載の滲出型加齢黄斑変性のリスクを予測する方法。
  4. 核酸分子をプローブとして用いる、請求項3記載の滲出型加齢黄斑変性のリスクを予測する方法。
  5. プローブが23〜27塩基の長さである、請求項4記載の滲出型加齢黄斑変性のリスクを予測する方法。
  6. プローブが固層化されてなる、請求項4又は5記載の滲出型加齢黄斑変性のリスクを予測する方法。
  7. 被験者由来のサンプル中の核酸分子について、配列番号1〜124で示される塩基配列からなる群より選択される少なくとも1つの塩基配列又はその相補的配列において、前記塩基配列の17番目に存在する一塩基多型のアレルをin vitroで検出するための核酸分子を含有してなる、滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測キット。
  8. 核酸分子が、配列番号1〜124で示される塩基配列からなる群より選択される少なくとも1つの塩基配列もしくはその相補的配列、又はこれらの部分配列において、前記配列番号1〜124で示される塩基配列の17番目に相当するアレルを有する配列を含有する核酸分子である、請求項7記載の滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測キット。
  9. 核酸分子が、配列番号1〜124で示される塩基配列からなる群より選択される少なくとも1つの塩基配列もしくはその相補的配列、又はこれらの部分配列である、請求項8記載の滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測キット。
  10. 核酸分子をプローブとして用いる、請求項7〜9いずれか記載の滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測キット。
  11. プローブが23〜27塩基の長さである、請求項10記載の滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測キット。
  12. プローブが固層化されてなる、請求項10又は11記載の滲出型加齢黄斑変性のリスクの予測キット。
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WO2012147757A1 (ja) * 2011-04-25 2012-11-01 学校法人埼玉医科大学 加齢黄斑変性易罹患性の判定方法及び判定キット

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