JP2010118330A - リチウム二次電池用負極材料、リチウム二次電池用負極、それを用いたリチウム二次電池、リチウム二次電池用負極材料の製造方法、およびリチウム二次電池用負極の製造方法。 - Google Patents

リチウム二次電池用負極材料、リチウム二次電池用負極、それを用いたリチウム二次電池、リチウム二次電池用負極材料の製造方法、およびリチウム二次電池用負極の製造方法。 Download PDF

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Abstract

【課題】リチウム二次電池用負極材料の導電剤として用いられるカーボンナノファイバは、その形状の制約から、充電・放電サイクルにおける負極活物質の膨張・収縮の歪を緩和する効果が不十分であった。容量が大きく、かつ充電・放電サイクル特性に優れたリチウム二次電池用負極材料およびこれを用いたリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】負極活物質として放電容量の大きいケイ素系材料を用い、かつ、導電剤としてカーボンナノホーンをハイブリッド化することによって負極活物質の容積占有率を十分とることができ、容量が大きくかつ優れた充電・放電サイクル特性を有するリチウム二次電池用負極材料、およびこれを用いたリチウム二次電池を提供することが可能となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、リチウム二次電池用のカーボンハイブリッド負極材料に関するものであり、特にリチウムの吸蔵・放出時に生じる歪みを十分に緩和することができるカーボンハイブリッド負極材料、それを用いたリチウム二次電池、リチウム二次電池用負極材料の製造方法、およびリチウム二次電池用負極の製造方法に関するものである。
近年、携帯電話やノート型パソコン等の小型軽量化および高性能化に伴って、これらの機器に用いられる二次電池として、軽量、かつ充電容量の大きいリチウム電池が広く使用されている。
リチウム電池の負極材料として、カーボン系材料(グラファイトカーボン、ハードカーボン等)が使用されているが、単位重量あたりの容量(以下、重量容量密度という)が370mAh/g程度であり、更なる大容量化が求められている。
現在、炭素系材料に代わる負極活物質としては、リチウムと合金化する多くの材料、特にケイ素(Si)、スズ(Sn)およびその酸化物や合金が広く検討されている。しかし、これらの材料を負極活物質に用いた場合、充電・放電サイクルを繰り返した際の負極の体積変化により、歪みが発生しクラックが発生したり剥離が生じたりして、結果として導電性が低下してしまうため、十分な充電・放電サイクル特性が得られない。
特許文献1には、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な含ケイ素粒子の表面に、カーボンナノファイバ(CNF)を固着させ、さらに膨張収縮緩衝材を含む合剤層を形成することによって、充電・放電サイクルにおける負極活物質の膨張・収縮を緩和し、導電性低下を抑制する発明が記載されている。
特開2007−165079号公報
しかしながら、上記のような方法では、高性能化(大容量化)のためにサブミクロン以下に小径粒子化した負極活物質とファイバストラクチャであるカーボンナノファイバを複合させるため、負極活物質粒子の容積占有率を十分に取れないという問題があった。さらに、カーボンナノファイバはその形状の制約から、充電・放電サイクルにおける負極活物質の膨張・収縮の歪みを緩和する効果が不十分であった。
本発明は、容量が大きく、かつ充電・放電サイクル特性に優れたリチウム二次電池用負極材料およびこれを用いたリチウム二次電池を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、ケイ素、ケイ素を含む合金、またはケイ素酸化物(SiO(1≦x<2))からなる、リチウムイオンの吸蔵放出が可能な負極活物質と、カーボンナノホーンとを備え、平均粒径が2nm〜10μmであることを特徴とするリチウム二次電池用負極材料である。
また、請求項2に係る発明は、前記負極活物質は、鉄、マンガン、チタン、銅およびニッケルのうち少なくとも1種の金属とケイ素との合金、または前記合金の酸化物であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極材料である。
また、請求項3に係る発明は、前記負極活物質と前記カーボンナノホーンとが複合化された凝集体を含み、前記凝集体の表面の任意の3μm四方の領域に、ケイ素と炭素の両方が存在することを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極材料である。
また、請求項4に係る発明は、前記負極活物質と前記カーボンナノホーンの合計に占めるカーボンナノホーンの重量比率が、1〜50wt%であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極材料である。
また、請求項5に係る発明は、前記負極活物質の1次粒子の平均粒径が、2〜300nmであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極材料である。
また、請求項6に係る発明は、前記負極活物質と、前記カーボンナノホーンとが、結着材とともに複合化された造粒体を有することを特徴とする請求項5に記載のリチウム二次電池用負極材料である。
また、請求項7に係る発明は、炭素、銅、スズ、亜鉛、ニッケルおよび銀のうちから選ばれる少なくとも1種からなる導電助剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極材料である。
また、請求項8に係る発明は、前記負極活物質が、ケイ素酸化物(SiO(1≦x<2))であり、直径が0.3〜5.0nmの孔を多数有する多孔質膜であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極材料である。
また、請求項9に係る発明は、前記負極活物質は、前記多孔質膜の中にケイ素、またはケイ素を含む合金からなる分散体を有することを特徴とする請求項8に記載のリチウム二次電池用負極材料である。
また、請求項10に係る発明は、前記カーボンナノホーンは、前記分散体の表面に複合化されていることを特徴とする請求項9に記載のリチウム二次電池用負極材料である。
また、請求項11に係る発明は、請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極材料を用いたリチウム二次電池用負極である。
また、請求項12に係る発明は、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極と、請求項11に記載の負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとを有し、リチウムイオン伝導性を有する電解液または電解質中に、前記正極と前記負極と前記セパレータとを設けたことを特徴とするリチウム二次電池である。
また、請求項13に係る発明は、シリコンを含む金属アルコキシド、アルコール、カーボンナノホーン、および酸またはアルカリからなる触媒を含む酸化物前躯体溶液を混合する混合工程と、前記酸化物前躯体溶液を攪拌しながら所定時間、所定温度に保つ反応工程とを有することを特徴とするリチウム二次電池用負極材料の製造方法である。
また、請求項14に係る発明は、前記混合工程の後に前記酸化物前躯体溶液にケイ素あるいはケイ素合金からなる分散体を混合する工程をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載のリチウム二次電池用負極材料の製造方法である。
また、請求項15に係る発明は、前記分散体は、前記カーボンナノホーンと複合化されていることを特徴とする請求項14に記載のリチウム二次電池用負極材料の製造方法である。
また、請求項16に係る発明は、前記金属アルコキシドは常温で液体であることを特徴とする請求項13ないし請求項15のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極材料の製造方法である。
また、請求項17に係る発明は、前記金属アルコキシドは、テトラエトキシシランSi(OC、テトラメトキシシランSi(OCH、テトライソブトキシシランSi(i−OC、のうちから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項16に記載のリチウム二次電池用負極材料の製造方法である。
また、請求項18に係る発明は、請求項13ないし請求項17のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された前記リチウム二次電池用負極材料を集電体に塗布し乾燥する工程を有することを特徴とするリチウム二次電池用負極の製造方法である。
本発明によれば、カーボン系材料よりも重量容量密度の大きいケイ素、ケイ素を含む合金、またはケイ素酸化物(SiO(1≦x<2))を負極活物質とし、導電助剤および負極活物質の膨張収縮緩衝材として、嵩密度の高いカーボンナノホーンを用いているため、容量が大きく、かつ充電・放電サイクル特性に優れたリチウム二次電池用負極材料およびこれを用いたリチウム二次電池を得ることが可能となる。
(a)実施例12に係る複合化前の負極活物質のSEM像、(b)は図1(a)の高倍率での像、(c)複合化後の負極活物質のSEM像、(d)図1(c)の高倍率での像。 (a)〜(d)実施例12に係る負極活物質のSEM−EDX分析結果。 実施例13に係る負極活物質のSEM−EDX分析結果、(a)SEM像、(b)EDXによる元素分析結果、(c)炭素のマッピング、(d)シリコンのマッピング 実施例15に係る負極活物質のSEM−EDX分析結果。(a)SEM像、(b)EDXによる元素分析結果、(c)炭素のマッピング、(d)鉄のマッピング、(e)シリコンのマッピング
本発明のリチウム二次電池用負極材料は、ケイ素(Si)、Siを含む合金またはSi酸化物と、カーボンナノホーン(CNH)とを備えたことを特徴とするリチウム二次電池用負極材料である。
以下、本発明のリチウム二次電池用負極材料について詳細に説明する。
〔1〕負極材料
(1−1)負極活物質
本発明のリチウム二次電池用負極材料は、負極活物質として、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能なケイ素、ケイ素を含む合金またはケイ素酸化物を使用することができる。Si系の負極活物質は、炭素系の負極活物質と比較して単位体積あたりの理論放電容量が7倍以上であり、リチウム二次電池の大容量化が可能となる。
負極活物質としては、ゾル−ゲル法によって生成されたSiO多孔質膜を使用することがより好ましい。ゾル−ゲル法によって生成されたSiO(1≦x<2)多孔質膜は、0.3nm〜5.0nm程度の径の孔を有しており、SiO(1≦x<2)が負極活物質として作用するとともに、充電・放電サイクルにおける負極活物質の膨張・収縮の歪みを緩和する効果がある。
また、負極活物質としては、ケイ素あるいは、鉄、マンガン、チタン、銅およびニッケルのうちから選ばれる少なくとも1種の金属とケイ素との合金、およびこれらの合金の酸化物であってもよく、これらの材料でもカーボン系材料に比べて高容量化が可能となる。
また、負極活物質であるケイ素あるいは、鉄、マンガン、チタン、銅およびニッケルのうち少なくとも1種選ばれる金属とケイ素との合金は、カーボンナノホーンと複合化して多孔質膜中に分散して存在するため、導電性ネットワークが安定して保持され高容量を維持する効果があるとともに、充電・放電サイクルにおける負極活物質の膨張・収縮が多孔質膜に吸収・緩和されて、充電・放電サイクル特性が優れる効果がある。
また、負極活物質とカーボンナノホーンとを、メカノケミカル法により複合化した凝集体を作製し、この凝集体を負極材料に用いても良い。メカノケミカル法により複合化した凝集体は、ナノレベルで均一に負極活物質とカーボンナノホーンが混合しており、凝集体表面をSEM−EDXでマッピングすると、任意の3μm四方の領域で、炭素とシリコンの両方が検出される。
また、負極活物質は、粒径1〜10μmの破砕されたシリコン粉末であってもよい。このようなシリコン粉末は、コストが低廉である。さらに、シリコン粉末の表面にカーボンナノホーンをメカノケミカル法により複合化しても、銅やニッケルなどの金属で無電解めっきを行ってもよい。カーボンナノホーンをメカノケミカル法により複合化したり、無電解めっきを行ったりしたシリコン粉末は、表面の導電助剤により導電性とサイクル特性に優れ、活物質がシリコンであるため重量容量密度が高い負極活物質となる。
また、負極活物質は、平均粒径2〜300nmのシリコンナノ粒子であってもよい。シリコンナノ粒子は無電解めっきが難しいが、粉末状態でのメカノケミカル法により、表面に導電性を付与することができる。特にカーボンナノホーンをメカノケミカル法により複合化することが高容量化に好適である。このようなシリコンナノ粒子は、粒径が小さいため微粉化しにくくサイクル特性に優れ、シリコンであるため重量容量密度の高い負極活物質となる。
微粒子は通常は凝集して存在しているので、負極活物質の平均粒径は、ここでは一次粒子の平均粒径を指す。粒子の計測は、電子顕微鏡(SEM)の画像情報と動的光散乱光度計(DLS)の体積基準メディアン径を併用する。平均粒径は、SEM画像によりあらかじめ粒子形状を確認し、画像解析ソフトウェア(例えば、旭化成エンジニアリング製「A像くん」(登録商標))で粒径を求めたり、粒子を溶媒に分散してDLS(例えば、大塚電子製DLS−8000)により測定したりすることが可能である。微粒子が十分に分散しており、凝集していなければ、SEMとDLSでほぼ同じ測定結果が得られる。また、負極活物質の形状が、アセチレンブラックのような高度に発達したストラクチャー形状である場合にも、ここでは一次粒径で平均粒径を定義し、SEM写真の画像解析で平均粒径を求めることができる。
なお、上記の負極活物質とカーボンナノホーンとを、結着材とともに複合化した造粒体を負極活物質として用いてもよい。また、造粒体には炭素、銅、スズ、亜鉛、ニッケルおよび銀のうちから選ばれる少なくとも1種からなる導電助剤を含めてもよい。造粒体の直径は0.2μmから10μmであることが好ましい。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などのフッ素樹脂やゴム系材料などが用いられる。ナノサイズの粒子を造粒体として取り扱うことで、電解液からの見かけの表面積を減らすことができ、電解液との不可逆反応を低減することができる。
造粒体の作製は、乾式と湿式の一般的な造粒方法を用いることができるが、例えば、乾式では圧縮とせん断力をかけるメカニカルアロイング法や、気流中で粉体同士を高速で衝突させるハイブリダイゼーション法がある。さらに、湿式ではスプレードライヤー法や無電解めっき法を単独あるいは組み合わせて用いることができる。例えば、負極活物質とカーボンナノホーンとをメカノケミカル法により複合化した凝集体を、PVdF等の結着剤を含むノルマルメチルピロリドン(NMP)等の溶媒に分散させて、サスペンションとして所定のサイズとなるようにスプレードライ法により造粒する方法がある。また、銅の無電解めっき法により上記の造粒体に導電性を付与することによって不可逆容量を低減することができる。
(1−2)カーボンナノホーン(以下、CNHという)
本発明のリチウム二次電池用負極材料は、充電・放電サイクルにおける負極活物質の膨張・収縮の歪を十分に緩和するとともに、導電性ネットワークを安定して維持させるために、導電助剤としてCNHを分散させている。ここで、CNHとは、グラフェンシートを円錐形に丸めた構造をしており、実際の形態は多数のCNHが頂点を外側に向けて、放射状のウニのような形態の集合体として存在する。CNHのウニ様集合体の外径は50nm〜250nm程度である。特に、平均粒径80nm程度のCNHが好ましい。
また、負極活物質とカーボンナノホーンの合計に占めるカーボンナノホーンの重量比率が、1〜50wt%であることが好ましく、より好ましくは、3〜30wt%である。
CNHは、グラファイトやカーボンナノチューブとは異なり、3次元構造を有しているため、弾力性を備え、かつ、ファイバ系のカーボン材料よりも嵩密度が高く、負極活物質の容積占有率を高くとることができる。このため、負極活物質にCNHを分散させることによって、充電・放電サイクルにおける負極活物質の膨張・収縮の歪を十分に緩和することができるとともに導電性ネットワークが安定して維持されるために、優れたサイクル特性を得ることができる。
(1−3)導電助剤
リチウム二次電池用負極材料は、さらに導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤は、炭素、銅、スズ、亜鉛、ニッケル、銀からなる群より選ばれた少なくとも1種の導電性物質からなる粉末である。炭素、銅、スズ、亜鉛、ニッケル、銀の単体の粉末でもよいし、それぞれの合金の粉末でもよい。例えば、炭素系の導電助剤としては、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの一般的なカーボンブラックを使用できる。また、導電助剤はこれらの導電性物質のナノワイヤーでもよく、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、銅ナノワイヤー、ニッケルナノワイヤーなどを用いることができる。
〔2〕リチウム二次電池
以下、リチウム二次電池について説明する。リチウム二次電池の主構成物は、上述したリチウム二次電池用負極材料からなる負極、正極、電解液、およびセパレータからなる。構成としては、一般にシート状の正極、セパレータ、シート状の負極をこの順に積層して、正極と負極が電気的に分離されるようにして、円筒形、四角形等の種々の容器の中に収納される。
(2−1)負極
本発明のリチウム二次電池用負極材料を用いた負極は、負極集電体上に形成され、正極におけるリチウムの吸蔵・放出量のバランスを考慮して厚み、面積が適宜設定される。
リチウム二次電池用負極材料をゾル−ゲル法を用いて製造する方法は以下のとおりである。
(酸化物前駆体混合工程)
第一の工程は、金属アルコキシドとアルコールと触媒を含む酸化物前躯体溶液を混合する工程である。金属アルコキシドとは一般式M(OR)nで表されるもので、MはSi、Ti、B、Geなどの金属であり、Rはアルキル基、nは金属元素の酸化数である。最も一般的に使用される金属アルコキシドは常温で液体のSi(OCである。常温で液体の金属アルコキシドとして、Si(OCH、Si(i−OC、Ti(OC、B(OCH、Ge(OCなどがある。金属アルコキシドは常温で液体のものと固体のもの存在するが、常温で液体であれば、酸化物前躯体溶液の調整に好適である。また、アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが主に使われる。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸等の酸のほか、処理後に揮発除去できるアルカリのアンモニアを使用することができる。酸を触媒として使用するときには、金属アルコキシドの加水分解反応は求電子反応となり、アルカリを触媒として使用する場合は水酸化イオンが金属アルコキシドの金属に対して求核反応となる。
酸触媒を使用した場合の、最も一般的な反応は下記のようになる。
nSi(OC2H5)4 + 4nH2O → nSi(OH)4 + 4nC2H5OH (式1)
生成したSi(OH)は反応性に富み、次式によって固体のSiOとなる。
nSi(OH)4 → nSiO2 + 2nH2O (式2)
したがって、全体としては下記の反応式となる。
nSi(OC2H5)4 + 2nH2O → nSiO2 + 4nC2H5OH (式3)
酸化物前躯体溶液は上記の反応例で表現されるが、実際の最終的な生成物はSiO(1≦x<2)となり、全てのSiが(式3)で表示されるSiOとなるわけではない。SiO自身が負極の活物質になるとともに、Liと反応しない過剰酸素(O)のサイトはLiの吸蔵、放出反応のバッファーとなる。
(反応工程)
第二の工程は、前記酸化物前躯体溶液を攪拌しながら所定の時間、所定の温度に保つ工程である。前記酸化物前躯体溶液を室温から80℃の条件で、還流下で攪拌すると、金属アルコキシドの加水分解(式1)と縮重合(式2)が進行して、金属酸化物の粒子が生成して溶液はゾルとなる。加水分解と縮重合は温度が高いほど早く進行し、また、生成物であるアルコールを除去することでも反応を速めることができる。第一の工程で得た酸化物前躯体溶液を室温から80℃の温度に保つことで、好適なゲル状のスラリーを得ることができる。また、ゲル状のスラリーは、温度が高いほど短時間で生成する傾向があるため、反応時間は1時間から10日程度まで、目的に応じて調節することができる。スラリーの粘性は、水分量や反応温度、反応時間等により、適宜調整することが可能である。
(負極形成工程)
第三の工程は、第二の工程でスラリー状となった酸化物前躯体溶液を集電体に塗布し乾燥する工程である。この工程では、銅箔やステンレス板などの集電体を酸化物前躯体溶液に浸漬して乾燥を繰り返す方法や、自動塗工装置のドクターブレード等を用いて所定の厚み(例えば0.01〜1mm)となるように、前記酸化物前躯体溶液を均一に塗布し、乾燥することによって水分が除去され、全体が多孔質状に固まったゲルとなる。以上の工程により、リチウム二次電池用負極を製造することができる。
なお、本願発明のリチウム二次電池用負極は、ゾル−ゲル法による製造方法に限定されず、様々な方法、例えば下記のようなスラリー法でも製造することができる。
リチウムイオンの吸蔵放出が可能な、ケイ素、ケイ素を含む合金、または一酸化ケイ素(SiO)を含むケイ素酸化物(SiO(1≦x<2))の少なくとも1種の負極活物質と、カーボンナノホーンや公知のアセチレンブラック等の導電助剤と、粒子と集電体、あるいは粒子同士を結着させるポリフッ化ビニリデン(PVDF)やスチレンブタジエンラバー(SBR)エマルジョン等の結着剤と、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)等の溶液の粘性を調整する増粘剤を所定の割合で配合し、水あるいは溶剤を混合してスラリーを作製する。さらに、得られたスラリーを、自動塗工装置のドクターブレード等を用いて集電体用銅箔上に所定の厚みで塗布し、乾燥させた後にロールで圧延して厚みを調整してリチウム二次電池用負極を製造する。
なお、リチウムイオンの吸蔵放出が可能な、ケイ素、ケイ素を含む合金、または一酸化ケイ素(SiO)を含むケイ素酸化物(SiO(1≦x<2))の少なくとも1種の負極活物質と、カーボンナノホーンを、メカノケミカル法により複合化した凝集体を、上述のスラリー法に適用して、リチウム二次電池用負極を製造してもよい。メカノケミカル法は、負極活物質とカーボンナノホーンに、圧縮力、せん断力などの機械的エネルギーを加えることで、負極活物質とカーボンナノホーンにメカノケミカル固相反応を促進する方法である。メカノケミカル法により、負極活物質とカーボンナノホーンは、得られた凝集体がナノレベルの均一さで混合された、平均粒径が数μmの凝集体となる。
(2−2)正極
正極活物質材料としては、公知のリチウム含有遷移金属酸化物を使用することができる。具体的にはTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、およびMoから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素とリチウムとを主として含有する酸化物等であって、さらに具体的にはLiMn、LiCoO、LiNiO、LiFeO、V、TiS、MoS等を挙げることができる。正極は、一般には正極活物質材料、炭素繊維、およびバインダー材料を混合後、アルミニウム箔等の集電体に塗布し、乾燥、プレスすることによって所定の厚み、面積、密度に形成される。
(2−3)電解液
リチウムイオン電池、Liポリマー電池などにおける電解液および電解質には、有機電解液(非水系電解液)、無機固体電解質、高分子固体電解質等が使用できる。
有機電解液の溶媒の具体例として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ―ブチロラクトン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の非プロトン性溶媒、あるいはこれらの溶媒のうちの2種以上を混合した混合溶媒が挙げられる。
有機電解液の電解質には、LiPF、LiClO、LiBF、LiAlO、LiAlCl、LiSbF、LiSCN、LiCl、LiCFSO、LiCFCO、LiCSO、LiN(CFSO等のリチウム塩からなる電解質の1種または2種以上を混合させたものを用いることができる。また、上記の有機電解液に代えて高分子固体電解質を用いる場合には、リチウムイオンに対するイオン導電性の高い高分子である、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン等を用いることができる。
(2−4)セパレータ
セパレータとしては、薄さと高強度の観点から、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系多孔質フィルムを用いることができる。多孔度は、イオン伝導の観点から30〜80%が好ましい。また、セパレータの厚みは、イオン伝導性、電池容量の観点から5〜50μmが好ましい。
電池の構造としては特に限定されることはなく、正極、負極、セパレータを単層または複層としたペーパー型電池、積層型電池、または正極、負極、セパレータをロール状に巻いた円筒状電池等であってもよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本実施例で使用したリチウム二次電池用負極材料を以下に記載する
(実施例1)
(i)塗布溶液の調製
テトラエトキシシラン(TEOS:Si(OC、分子量208.33)52g、エタノール56gを氷浴中ビーカーにて混合する。次いで、この溶液に、カーボンナノホーン(CNH)1gをあらかじめアセトンで湿潤させた後に、分散のための純水100gを加えた溶液を混合する。さらに、酸触媒として濃硝酸2gを追加し、30分以上攪拌する。溶液をフラスコに移し、80℃のオイルバス中で3時間攪拌した後、攪拌しながら室温まで冷却して塗布溶液を得る。
ここで、CNHは、NEC(株)製の単層CNH(含有割合80体積%以上)である。
(ii)負極の作製
幅50mm、長さ100mm、厚さ10μmの集電体用銅箔上に、上記の塗布溶液を塗布し、大気中で150℃1時間かけて乾燥させた。この乾燥により溶媒が除去され、CNH分散多孔質シリカ膜が得られる。
上記の塗布・乾燥を5回繰り返し、集電体用銅箔上に厚さ10μmのCNH分散多孔質シリカ膜を形成し、さらにこの膜上にスパッタリングによって厚さ1μmのカーボン膜を形成して導電層とし、実施例1のリチウム二次電池用負極を得た。
(iii)特性評価
上記の負極と、LiPON固体電解質と、金属Li箔対照電極を用いてリチウム二次電池を構成し、充放電特性を調べた。特性の評価は、初回の放電容量および50サイクルの充電・放電後の放電容量を測定し、放電容量の維持率を算出することによって行った。放電容量は、有効な活物質Siを基準として、設計値を1200mAh/gとした。まず、25℃環境下において、電流値を0.2C、電圧値を0.02Vまで定電流定電圧条件で充電を行い、電流値が0.05Cに低下した時点で充電を停止した。次いで、電流値0.2Cの条件で、金属Liに対する電圧が1.5Vとなるまで放電を行い、0.2C初期放電容量を測定した。なお、1Cとは、1時間で満充電できる電流値である。また、充電と放電はともに25℃環境下において行った。次いで、0.2Cでの充放電速度で上記充放電を50サイクル繰り返した。0.2C初期放電容量に対する、充放電を50サイクル繰り返したときの放電容量の割合を百分率で求め、容量維持率とした。
(実施例2)
(i)塗布溶液の調製
テトラエトキシシラン(TEOS:Si(OC、分子量208.33)26g、エタノール56gを氷浴中ビーカーにて混合する。次いで、この溶液に、Si粒子(Hefei Kai’er NanoTech製、平均粒径60nm)5gとカーボンナノホーン(NEC(株)製、単層CNH(含有割合80体積%以上))5gとをあらかじめアセトンで湿潤させ、十分混練させた後に、分散のための純水100gを加えた溶液を混合する。さらに、アルカリ触媒として28wt%のアンモニア水36gを混合した溶液を追加し、30分以上攪拌する。溶液をフラスコに移し、80℃のオイルバス中で3時間攪拌混合した後、攪拌しながら室温まで冷却して塗布溶液を得る。
(ii)負極の作製
幅210mm、長さ295mm、厚さ10μmの集電体用銅箔上に、自動塗工装置(テスター産業(株)製、PI−1210型)を用いドクターブレードタイプアプリケーターでギャップ50μmの条件でスラリー状の上記の塗布溶液を塗工し、大気中で150℃1時間かけて乾燥させた。乾燥後、ロールプレスで調厚し、膜厚15μmとした。この乾燥により溶媒が除去され、CNH分散多孔質シリカ膜が得られる。さらにこの膜上にスパッタリングによって厚さ1μmのカーボン膜を形成して導電層とし、実施例2のリチウム二次電池用負極を得た。
(iii)特性評価は実施例1と同じである。
(実施例3〜7)
本発明の他の実施例3〜7として、リチウム二次電池用負極材料の活物質としてSiOを用い、さらに容量を増加させるために分散体としてケイ素を含む合金(SiM(ただし0<y≦0.5、MはFe、Mn、Ti、Cu、Ni))の粒子を用いた場合について説明する。
本実施例に係る負極の製造方法は、下記のとおりである。
(i)塗布溶液の調製
SiとMがモル比で3:1となるように秤量した後、アーク溶解法によりSi合金粉末からなるボタン試料を作製した。その後、ボタン試料をステンレス乳鉢で粗粉砕した後、Arガス雰囲気下クロスビーターミルで微粉砕し、ASTMメッシュ200番(目開き75μm)等でふるいにかけた後、さらに平均粒径が5μmの粉末に分級して分散体を作製した。
その後、テトラエトキシシラン(TEOS:Si(OC、分子量208.33)26g、エタノール56gを氷浴中ビーカーにて攪拌混合する。次いで、この溶液に、ケイ素を含む合金(SiM(0<y≦0.5)、MはFe、Mn、Ti、Cu、Ni)よりなる平均粒径5μmのSi合金粉末5gとカーボンナノホーン(NEC(株)製、単層CNH(含有割合80体積%以上))5gとをあらかじめボールミルで十分に攪拌(ハイブリッド化)した複合材を混合し、分散のための純水100gを加えた溶液を混合する。さらに、アルカリ触媒として28wt%のアンモニア水36gを混合した溶液を追加し、30分以上攪拌する。溶液をフラスコに移し、80℃のオイルバス中で3時間攪拌混合した後、攪拌しながら室温まで冷却して塗布溶液を得る。
(ii)負極の作製
幅210mm、長さ295mm、厚さ10μmの集電体用銅箔上に、自動塗工装置(PI−1210型、テスター産業(株)製)を用いドクターブレードタイプアプリケーターでギャップ80μmの条件でスラリー状の上記の塗布溶液を塗工し、大気中で150℃1時間かけて乾燥させた。この乾燥により溶媒が除去され、CNH分散多孔質シリカ膜が得られる。さらにこの膜上にスパッタリングによって厚さ1μmのカーボン膜を形成して導電層とし、実施例3〜7のリチウム二次電池用負極を得た。
(iii)特性評価
正極は、活物質としてLiCoO、導電剤としてケッチェンブラック、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)ディスパージョン、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を純水に混合したスラリーを集電体用アルミ箔上に塗布し、乾燥させたのちロールで圧延して厚みを調整して、作製した。非水電解液は、1mol/lのLiPFを含むエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶液を用いた。
上記の負極、正極、電解液等を用いてLi二次電池を構成し、実施例1と同様の方法で充放電特性を評価した。
(比較例1)
実施例1のCNHに変えて、カーボンナノチューブ(CNT、繊維径150nm、繊維長8μm、昭和電工株式会社製、VGCF)を分散させた多孔質シリカ膜からなるリチウム二次電池用負極を、上記実施例1と同様の方法によって作製した。
実施例1〜7および比較例1の特性評価結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1〜7では、50サイクルの充電・放電後でも放電容量の維持率は80%以上となり、優れたサイクル特性であった。一方、比較例1では、50サイクルの充電・放電後の放電容量の維持率は、61%となり、充電・放電サイクルによる歪に起因した容量の劣化が顕著であった。
(実施例8、9)
次に本発明の別の実施例について説明する。
実施例8、9は、導電助剤として、CNHに加えて、ケッチェンブラック(CB)(ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製、ケッチェンブラックEC)またはアセチレンブラック(AB)(平均粒径35nm、電気化学工業株式会社製、粉状品)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によって作製した。
(比較例2〜4)
実施例1の導電剤として、CNHに変えて、CB、AB又はNi粉末(平均粒径200nm、JFEミネラル株式会社製、NFP201S)をそれぞれ用いたものを比較例2、3、4として作製した。
実施例8、9および比較例2、3、4の特性評価結果を表2に示す。表2に示すように、実施例8、9では、50サイクルの充電・放電後でも放電容量の維持率は85%以上となり、優れたサイクル特性であった。一方、比較例2、3および4では、初期容量はそれぞれ1055mAh/g、1100mAh/g、および1040mAh/gであったが、50サイクルの充電・放電サイクル後の放電容量は、それぞれ422mAh/g、420mAh/g、および400mAh/gであり、実施例と比較して大幅に低下した。
放電容量評価後の比較例2〜4の負極をSEM観察したところ、電極表面に多数のクラックが観察され、シリカ粒子同士の導電性ネットワークが破壊され、充電・放電反応に利用されない粒子が多数存在することがわかった。
(実施例10)
(i)負極スラリーの調製
次に、本発明の別の実施例として、スラリー法によって作製した負極について説明する。リチウムイオンの吸蔵放出が可能な、平均粒径5μmのケイ素(Si)粉末((株)高純度化学研究所製、SIE23PB)45gに、カーボンナノホーン(NEC(株)製)5gをハイブリダイザー((株)奈良機械製作所製、NHS−0型)で複合化させた後、結着剤としてスチレンブタジエンラバー(SBR)40wt%のエマルジョン(日本ゼオン製、BM400B)2g、スラリーの粘度を調整する増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム(ダイセル化学工業(株)製、#2200)1wt%溶液5gの割合で混合してスラリーを作製した。
(ii)負極の作製
調製したスラリーを自動塗工装置のドクターブレードを用いて、厚さ10μmの集電体用電解銅箔(古河電気工業(株)製、NC−WS)上に80μmの厚みで塗布し、70℃で乾燥させてリチウム二次電池用負極を製造した。
(iii)特性評価は実施例3と同じ条件で行った。
(実施例11)
実施例10のケイ素粉末の代わりに、一酸化ケイ素(SiO)粉末((株)高純度化学研究所製、SIO02PB)を平均粒度20μmに分級して使用した以外は、負極スラリーの調製、負極の作製および特性評価は実施例10と同じ条件で行った。
(比較例5)
実施例10のカーボンナノホーンの代わりに、カーボンナノファイバ(昭和電工(株)、気相法炭素繊維VGCFφ150nm)を使用した以外は、負極スラリーの調製、負極の作製および特性評価は実施例10と同じ条件で行った。
実施例10、11、および比較例5の特性評価結果を表3に示す。実施例10、11では、50サイクルの充電・放電後でも放電容量の維持率は85%以上となり、優れたサイクル特性であった。一方、比較例5では、初期容量は1191mAh/gであったが、50サイクルの充電・放電サイクル後の放電容量は、初期容量の65%になり、大幅に低下した。
(実施例12)
(i)負極スラリーの調整
次に、本発明の別の実施例として、メカノケミカル法により作製された負極活物質の凝集体を用いて、スラリー法によって作製した負極について説明する。リチウムイオンの吸蔵放出が可能な、平均粒径5μmのシリコン(Si)粉末((株)高純度化学研究所製、SIE23PB)29gに、平均粒径80nmのカーボンナノホーン(NEC(株)製)1gをナノレベルで精密混合できるメカノケミカル法で複合化させた後、導電助剤として平均粒径35nmのアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、粉状品)70g、結着剤としてスチレンブタジエンラバー(SBR)40wt%のエマルジョン(日本ゼオン製、BM400B)2.5g(固形分1gに相当する量)、スラリーの粘度を調整する増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム(ダイセル化学工業(株)製、#2200)1wt%溶液500g(固形分5gに相当する量)を混合してスラリーを作製した。
(ii)負極の作製
調製したスラリーを自動塗工装置のドクターブレードを用いて、厚さ10μmの集電体用電解銅箔(古河電気工業(株)製、NC−WS)上に乾燥後膜厚が15μmとなる厚みで塗布し、70℃で乾燥させてリチウム二次電池用負極を製造した。
(iii)特性評価
上記の負極と、1mol/lのLiPFを含むエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶液からなる電解質と、金属Li箔対照電極を用いてリチウム二次電池を構成し、充放電特性を調べた。特性の評価は、初回の放電容量の測定のみを行った。放電容量は、有効な活物質Siの重量を基準として算出した。まず、25℃環境下において、電流値を0.1C、電圧値を0.02Vまで定電流定電圧条件で充電を行い、電流値が0.05Cに低下した時点で充電を停止した。次いで、電流値0.1Cの条件で、金属Liに対する電圧が1.5Vとなるまで放電を行い、0.1C初期放電容量を測定した。なお、1Cとは、1時間で満充電できる電流値である。また、充電と放電はともに25℃環境下において行った。
(実施例13)
平均粒径60nmのシリコンナノ粒子(Hefei Kai’er NanoTech製)27gに、実施例12に記載のカーボンナノホーン11gをメカノケミカル法で複合化した後、導電助剤として実施例12に記載のアセチレンブラック62g、実施例12と同様の結着剤と増粘剤とを混合してスラリーを作製した。負極の作製および特性評価は実施例12と同じ条件で行った。
(実施例14)
実施例13に記載のシリコンナノ粒子49gに、実施例12に記載のカーボンナノホーン21gをメカノケミカル法で複合化した後、導電助剤として実施例12に記載のアセチレンブラック30g、実施例12と同様の結着剤と増粘剤とを混合してスラリーを作製した。負極の作製および特性評価は実施例12と同じ条件で行った。
(実施例15)
平均粒径100nmのシリコン鉄合金ナノ粒子(モル比 Si:Fe=3:1)27gに、実施例12に記載のカーボンナノホーン11gをメカノケミカル法で複合化した後、導電助剤として実施例12に記載のアセチレンブラック62g、実施例12と同様の結着剤と増粘剤とを混合してスラリーを作製した。負極の作製および特性評価は実施例12と同じ条件で行った。なお、シリコン鉄合金ナノ粒子は、シリコン粉末と鉄粉末とをモル比でSi:Fe=3:1になるように混合および乾燥した混合粉末を、Arガスのプラズマ中にキャリアガスで連続的に供給することにより作製した。
(実施例16)
実施例15に記載のシリコン鉄合金ナノ粒子49gに、実施例12に記載のカーボンナノホーン21gをメカノケミカル法で複合化した後、導電助剤として実施例12に記載のアセチレンブラック30g、実施例12と同様の結着剤と増粘剤とを混合してスラリーを作製した。負極の作製および特性評価は実施例12と同じ条件で行った。
(実施例17)
実施例15に記載のシリコン鉄合金ナノ粒子70gに、実施例12に記載のカーボンナノホーン30gをメカノケミカル法で複合化した後、導電助剤を添加せずに、実施例12と同様の結着剤と増粘剤とを混合してスラリーを作製した。負極の作製および特性評価は実施例12と同じ条件で行った。
(実施例18)
実施例13に記載のシリコンナノ粒子70gに、実施例12に記載のカーボンナノホーン30gをメカノケミカル法で複合化した後、導電助剤を添加せずに、実施例12と同様の結着剤と増粘剤とを混合してスラリーを作製した。負極の作製および特性評価は実施例12と同じ条件で行った。
(比較例6)
実施例12に記載のシリコン粉末90gに、カーボンナノホーンを添加せずに、導電助剤として実施例12に記載のアセチレンブラック10gを添加し、実施例12と同様の結着剤と増粘剤とを混合してスラリーを作製した。負極の作製および特性評価は実施例12と同じ条件で行った。
(比較例7)
実施例13に記載のシリコンナノ粒子50gに、カーボンナノホーンを添加せずに、導電助剤として実施例12に記載のアセチレンブラック50gを添加し、実施例12と同様の結着剤と増粘剤とを混合してスラリーを作製した。負極の作製および特性評価は実施例12と同じ条件で行った。
(比較例8)
実施例15に記載のシリコン鉄合金ナノ粒子100gに、カーボンナノホーンと導電助剤を添加せずに、実施例12と同様の結着剤と増粘剤とを混合してスラリーを作製した。負極の作製および特性評価は実施例12と同じ条件で行った。
(比較例9)
実施例13に記載のシリコンナノ粒子70gに、カーボンナノホーンを添加せずに、実施例12に記載のアセチレンブラック30gをメカノケミカル法で複合化した後、実施例12と同様の結着剤と増粘剤とを混合してスラリーを作製した。負極の作製および特性評価は実施例12と同じ条件で行った。
実施例12に係る複合化前後の負極活物質の観察を、走査型電子顕微鏡(日立製、S−900)を用いて行った。図1(a)は、複合化前の負極活物質である平均粒径5μmのシリコン(Si)粉末のSEM像であり、図1(b)は図1(a)の高倍率像である。直径5μm程度の大きい粒子の表面に微小なシリコンの粉末が付着していることが分かる。図1(c)は、複合化後の負極活物質のSEM像であり、図1(d)は図1(c)の高倍率像である。複合化前後で、直径5μm程度の粒子が砕かれずに、粒子の表面に微細なカーボンナノホーンの粒子が大量に付着していることが分かる。なお、重量比でシリコン:CNH=29:1は、粒径5μmのシリコン粉末の表面に、粒径80nmのCNHが一層覆う比率であったが、図1(d)では、CNHでシリコン粉末の全表面を覆うことはできなかった。これは、シリコン粉末に含まれていた、粒径が5μmよりも小さいシリコンの破砕片が微粒子として無視できない程度に存在し、これらの微粒子の比表面積が大きいために、CNHを吸着し、ミクロンサイズのシリコン粒子の表面を均一に覆うには、CNHが不足したためと考えられる。このことより、2倍の量のCNHを加えた、シリコン:CNHの重量比が29:2程度であることがより好ましい。
実施例12、実施例13、実施例15に係るメカノケミカル法により作製された負極活物質の凝集体の観察と元素分析を、走査型電子顕微鏡(日立製、S−900)を用いて行った。図2(a)〜(d)に、実施例12に係る負極活物質のSEM−EDX(Scanning Electron Microscope−Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)分析結果を示す。図2(a)のSEM像より、破砕により作製されたシリコン粉末の表面に微細な粉末が全体に付着していることがわかる。図2(b)の元素分析結果より、視野内にシリコンと炭素とわずかな酸素が検出されていることがわかる。酸素は、メカノケミカル法での複合化工程において、空気中の酸素が取り込まれたものと考えられる。図2(c)と図2(d)の元素マッピングより、視野内のシリコン粉末の表面には、シリコンと炭素の両方がナノサイズで均一に分散して存在することがわかる。シリコン粉末の表面の任意の3μm四方の領域を観察しても、シリコンと炭素の両方が検出される。
図3(a)〜(d)に、実施例13に係る負極活物質のSEM−EDX分析結果を示す。図3(a)のSEM像より、200nmより小さい粒子が凝集している様子が観察される。図3(b)の元素分析結果より、視野内にシリコン、酸素、炭素が検出されていることがわかる。図3(c)と図3(d)の元素マッピングより、視野内の凝集体の表面には、シリコンと炭素の両方がナノサイズで均一に分散して存在することがわかる。凝集体の表面の任意の3μm四方の領域を観察しても、シリコンと炭素の両方が検出される。
図4(a)〜(e)に、実施例15に係る負極活物質のSEM−EDX分析結果を示す。図4(a)のSEM像より、200nmより小さい粒子が凝集している様子が観察される。なお、原子番号の大きい鉄が含まれているため、凝集体が白く明るく観察される。図4(b)の元素分析結果より、視野内に鉄、シリコン、炭素とわずかな酸素が検出されていることがわかる。図4(c)と図4(d)と図4(e)の元素マッピングより、視野内の凝集体の表面には、鉄とシリコンと炭素の全てがナノサイズで均一に分散して存在することがわかる。凝集体の表面の任意の3μm四方の領域を観察しても、鉄とシリコンと炭素の全てが検出される。
実施例12〜18と比較例6〜9の結果を、表4と表5にまとめた。実施例15〜17は、合金中のリチウム吸蔵可能なシリコンの重量あたりの初期容量を示した。実施例12と比較例6とを比較すると、カーボンナノホーンのわずかな添加により、飛躍的に初期容量が増加したことがわかる。また、実施例13と比較例7および実施例15と比較例8を比べると、カーボンナノホーンを添加することで、初期容量が飛躍的に増加したことがわかる。
また、実施例18と比較例9とを比べると、カーボンナノホーンの代わりにアセチレンブラックをメカノケミカル法で複合化したとしても、初期容量に大きな差があることがわかる。
一方、実施例13と14と18を比べると、導電助剤であるアセチレンブラックの添加量が増えるほど、初期容量が高くなる傾向がある。この傾向は、実施例15,16,17においても確認される。
なお、実施例13と15、実施例14と16、実施例18と17をそれぞれ比べると、シリコン鉄合金ナノ粒子を用いると、初期容量が大きくなる。これは、実施例15〜17においては、シリコン鉄合金ナノ粒子にリチウムを吸蔵し難い鉄あるいは鉄シリサイドが含まれていても、リチウム吸蔵可能なシリコンの重量あたりの初期容量を示しているからである。
以上説明したように、本願発明に係るリチウム二次電池用負極材料は、負極活物質として放電容量の大きいケイ素系材料を用い、かつ、導電剤としてカーボンナノホーンを複合化している。このため、負極活物質の容積占有率を十分とることができ、かつ優れたサイクル特性を有するリチウム二次電池用負極材料、およびこれを用いたリチウム二次電池を提供することが可能となる。
また、負極活物質に導電剤であるCNHを混合(ハイブリッド化)する方法としては、上記のようなメカノケミカル法だけでなく、様々な方法を採用することができる。
例えば、CNHおよびCNHをハイブリッドさせるためのバインダーとして流動パラフィンをそれぞれ準備し、MgNi合金粉末、CNHおよび流動パラフィンを重量比が99:1:10となるように、不活性雰囲気下において混合した。均一に混合させた混合体を金型に入れ、およそ500kgf/cmの圧力で押し固め、圧粉成形体を得る。得られた圧粉成形体に不活性雰囲気下で600℃、1時間の熱処理を行い、バインダーである流動パラフィンを熱分解させて昇華除去することによって空隙部が形成され、かつCNHが分散したリチウム二次電池用負極材料を得ることができる。

Claims (18)

  1. ケイ素、ケイ素を含む合金、またはケイ素酸化物(SiO(1≦x<2))からなる、リチウムイオンの吸蔵放出が可能な負極活物質と、カーボンナノホーンとを備え、平均粒径が2nm〜10μmであることを特徴とするリチウム二次電池用負極材料。
  2. 前記負極活物質は、鉄、マンガン、チタン、銅およびニッケルのうちから選ばれる少なくとも1種の金属とケイ素との合金、または前記合金の酸化物であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極材料。
  3. 前記負極活物質と前記カーボンナノホーンとが複合化された凝集体を含み、
    前記凝集体の表面の任意の3μm四方の領域に、ケイ素と炭素の両方が存在することを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極材料。
  4. 前記負極活物質と前記カーボンナノホーンの合計に占めるカーボンナノホーンの重量比率が、1〜50wt%であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極材料。
  5. 前記負極活物質の1次粒子の平均粒径が、2〜300nmであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極材料。
  6. 前記負極活物質と、前記カーボンナノホーンとが、結着材とともに複合化された造粒体を有することを特徴とする請求項5に記載のリチウム二次電池用負極材料。
  7. 炭素、銅、スズ、亜鉛、ニッケルおよび銀のうちから選ばれる少なくとも1種からなる導電助剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極材料。
  8. 前記負極活物質が、ケイ素酸化物(SiO(1≦x<2))であり、直径が0.3〜5.0nmの孔を多数有する多孔質膜であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極材料。
  9. 前記負極活物質は、前記多孔質膜の中にケイ素、またはケイ素を含む合金からなる分散体を有することを特徴とする請求項8に記載のリチウム二次電池用負極材料。
  10. 前記カーボンナノホーンは、前記分散体の表面に複合化されていることを特徴とする請求項9に記載のリチウム二次電池用負極材料。
  11. 請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極材料を用いたリチウム二次電池用負極。
  12. リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極と、
    請求項11に記載の負極と、
    前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとを有し、
    リチウムイオン伝導性を有する電解液または電解質中に、前記正極と前記負極と前記セパレータとを設けたことを特徴とするリチウム二次電池。
  13. シリコンを含む金属アルコキシド、アルコール、カーボンナノホーン、および酸またはアルカリからなる触媒を含む酸化物前躯体溶液を混合する混合工程と、
    前記酸化物前躯体溶液を攪拌しながら所定時間、所定温度に保つ反応工程と
    を有することを特徴とするリチウム二次電池用負極材料の製造方法。
  14. 前記混合工程の後に、前記酸化物前躯体溶液にケイ素あるいはケイ素合金からなる分散体を混合する工程
    をさらに備えることを特徴とする請求項13に記載のリチウム二次電池用負極材料の製造方法。
  15. 前記分散体は、前記カーボンナノホーンと複合化されていることを特徴とする請求項14に記載のリチウム二次電池用負極材料の製造方法。
  16. 前記金属アルコキシドは常温で液体であることを特徴とする請求項13ないし請求項15のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極材料の製造方法。
  17. 前記金属アルコキシドは、テトラエトキシシランSi(OC、テトラメトキシシランSi(OCH、テトライソブトキシシランSi(i−OC、のうちから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項16に記載のリチウム二次電池用負極材料の製造方法。
  18. 請求項13ないし請求項17のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された前記リチウム二次電池用負極材料を集電体に塗布し乾燥する工程を有することを特徴とするリチウム二次電池用負極の製造方法。
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