JP2010115138A - ナチュラルチーズ、およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】焦げの程度や風味のみならず、加熱時の加熱溶融性、焦げ色、および風味が優れ、さらに糸曳き性、適度な食感を有するナチュラルチーズを得ること。
【解決手段】ナチュラルチーズの乳糖含量を0.8%以上、熟度指標STN/TN値を15%以上として良好な加熱調理適性を得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、ナチュラルチーズおよびその製造方法に関連する。また、このチーズの使用用途はチーズの加熱調理適性(色沢、食感、風味)、および加熱時の物性(糸曳き性)に関連する。
近年、ナチュラルチーズの市場が拡大し、その認知度も年々高まっている。ナチュラルチーズは、製造条件、製造方法により品質が多種多様に変化するため、市場においても品種は数千種類以上あると言われている。
また、日本での食生活にチーズが浸透するのにともないチーズの消費・使用用途も多様化し、そのまま食するシーンに加えて、サラダ等の他の食材と合わせて食されてきている。加えて、加熱調理に使われるシーンも増加しつつあり、ピザ・パンとともに加熱調理等にも使用される機会が増えている。ナチュラルチーズの加熱調理適性に関しては、シュレッドチーズ、またはスライスチーズの加熱時の焦げ、食感、風味、糸曳き性等、加熱調理時の物性が良好なナチュラルチーズが求められている。
この中のチーズの焦げに関しては、主としてチーズの焦げは加熱時のチーズ中に残存する糖類、アミノ酸、塩類等が関与するアミノカルボニル反応により生じる。糖、アミノ酸、塩類の種類、および濃度により色沢、風味が変化するため反応のメカニズムは複雑になっている。このような観点から、チーズの加熱調理適性、特に、加熱時のチーズの焦げを改良する方法としては、チーズ表面に糖、酸、塩を付着させることにより短時間加熱で褐変し、良好な焦げ色、芳香風味を付与させる方法(特開2003-225052号公報)、還元糖を添加したプロセスチーズとアミノ酸を添加したプロセスチーズを混合することにより電子レンジ加熱においても好ましい焦げ色を生じさせる方法(特開平10−262556号公報)等が報告されている。
一方、風味に影響を与えるチーズ中の糖としては、乳糖を挙げることができる。乳糖は製造工程および熟成中の乳酸菌の働きにより経時的に減少するため、熟成2ヶ月以上の熟成系チーズ中では一般的にほとんど残存しない。つまり、ナチュラルチーズの製造工程および熟成中の乳酸菌の働きにより乳糖分解され、単糖を経て乳酸、または酢酸まで分解される。カッテージ、クワルク等のフレッシュチーズでは製造直後の時点で乳糖は1%程度残存している。フレッシュチーズではこの残存する乳糖は褐変の原因となり、更に乳糖が製品の保存中で乳酸、酢酸に分解されると風味劣化を引き起こすため、レトルト処理、抗菌剤の添加、原料乳の乳糖含量の低減により、保存性を長期間維持させる方法が報告されている(特開平11-103772号公報)。
特開2003-225052号公報 特開平10−262556号公報 特開平11-103772号公報
チーズの焦げは主としてチーズ中に残存する糖類とアミノ酸が加熱によるアミノカルボニル反応としてのメイラード反応を起こした結果として生じるといわれている。この反応のメカニズムは複雑(基質、濃度、加熱条件等に依存)であり、これにより色沢、風味が多様化する。ナチュラルチーズは製造直後では比較的、乳糖量が多いが乳酸菌の働きにより単糖、乳酸、酢酸へと変化し、ある程度熟成が進行すると残存量はほとんど消失する。一方、製造直後では乳タンパク質はカゼインの形態をとっており、これが酵素の働きにより徐々に分解され、多様なペプチドやアミノ酸へと変化していく。
このため、熟成させないタイプのナチュラルチーズは乳糖含量が高く、アミノ酸含量が低くなる。トースター等の加熱時には赤色の強い焦げ色となり、淡白な風味となり、一般的に加熱溶融性が悪く、トースターおよび電子レンジ加熱をした場合にはチーズ表面に皮膜形成し食感が悪くなる。一方、熟成させるタイプのナチュラルチーズは乳糖含量が低く、アミノ酸含量が高い。トースター等の加熱時には黒色が強い焦げ色となり、焦げた風味が強くなる。また、トースターおよび電子レンジ加熱をした場合には加熱溶融性は良好であるものの、糸を引く物性や適度なチーズの食感は消失してしまう。
特開2003-225052号公報のように、チーズに糖、酸、塩類を添加し加熱時の風味を向上させる技術が開示されているが、糖、酸、塩を均一に添加することが困難である場合があり、そのような場合には加熱時に加熱ムラができてしまう。また、添加物の風味の影響を受けてチーズ本来の風味が低下してしまう場合もある。
上記特開平10−262556号公報のようにナチュラルチーズに溶融塩(乳化剤)を添加し加熱乳化してなるプロセスチーズ製造時に還元糖、およびアミノ酸を添加する技術が開示されているが、プロセスチーズの種類等によっては、プロセスチーズ製造時の加熱乳化により、溶融性が悪くなり、加熱時にチーズ表面に皮膜形成がはやまるようになり本発明で目的としている加熱溶融性は低下してしまう場合がある。
一方、上記特開平11-103772号公報のようにナチュラルチーズ製造において、乳糖は褐変の原因となるため、残存量を低下させる技術が開示されているが、熟成がほとんどなされていないチーズに関するものであるとともに保存性を高めるための方法であり、乳糖含量に関連したチーズの加熱調理適性に言及した報告はされていない。
このような現状を鑑み、本発明では、焦げの程度や風味のみならず、加熱時の加熱溶融性、焦げ色、および風味が優れ、さらに糸曳き性、適度な食感を有するナチュラルチーズを得ることを目的として鋭意研究を行った結果、乳糖含量が0.8%以上であり、熟度指標STN/TN値が15%以上であるナチュラルチーズが目的とする加熱調理適性を有することを見出した。さらに、伝統的なナチュラルチーズ製造方法には見られない製造方法をとりいれることにより乳糖含量が0.8%以上であり、熟度指標STN/TN値が15%以上であるナチュラルチーズを調製できることを見出した。
本発明のナチュラルチーズの第一の態様は、乳糖含量が0.8%以上であり、熟度指標STN/TN値が15%以上である加熱調理適性を有することを特徴とするナチュラルチーズである。
また、本発明の乳糖含量が0.8%以上であり、熟度指標STN/TN値が15%以上である加熱調理適性を有するナチュラルチーズの製造方法の第一の態様は、
原料乳にスタータ乳酸菌を添加し、酸性化剤を用いて酸性化してからレンネットを添加して凝固乳を得る工程と、
前記凝固乳からホエーを排除しカードを得る工程と、
前記カードを成型して熟度指標STN/TN値が15%以上に熟成させる工程と、
を有することを特徴とする乳糖含量が0.8%以上であり、熟度指標STN/TN値が15%以上である加熱調理適性を有するナチュラルチーズの製造方法である。
更に、本発明の乳糖含量が0.8%以上であり、熟度指標STN/TN値が15%以上である加熱調理適性を有するナチュラルチーズの製造方法の第二の態様は、
原料乳にスタータ乳酸菌を添加し、レンネットを添加して凝固乳を得る工程と、
前記凝固乳からホエーを排除しカードを得る工程と、
前記カードを成型して熟成させる工程と、
を有し、
前記レンネット添加前の原料乳または前記凝固乳を加熱して乳酸菌を失活させ、前記熟成を熟度指標STN/TN値が15%以上となるまで行う
ことを特徴とする乳糖含量が0.8%以上であり、熟度指標STN/TN値が15%以上である加熱調理適性を有するナチュラルチーズの製造方法である。
本発明により、乳糖含量が0.8%以上であり、熟度指標値STN/TN値が15%以上であるナチュラルチーズを調製することが可能となった。本発明により得られたナチュラルチーズはオーブン等の加熱調理時の加熱溶融性が良好であり、こげ茶色に焦げ、好ましい食感および香ばしい焼成風味を有する。また、適度な糸曳き性とチーズの食感を有し、加熱調理適性、および風味の優れたチーズとなる。
本発明におけるナチュラルチーズは、熟成期間を長くとることにより熟度指標STN/TN値が15%以上であり、例えば、ゴーダチーズ、チェダーチーズ、グラナチーズ、モザレラチーズ等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
本発明によれば、ナチュラルチーズの製造条件を変更することにより、乳糖含量が0.8%以上であり、熟度指標STN/TN値が15%以上であるナチュラルチーズを得ることができる。
本発明にかかるナチュラルチーズでは、完成品中に乳糖が0.8%以上含有され、かつ熟度指標STN/TN値が15%以上であることにより、オーブン等の加熱調理時の加熱溶融性が良好であり、こげ茶色に焦げ、好ましい食感および香ばしい焼成風味を有する。また、適度な糸曳き性とチーズの食感を有し、加熱調理適性、および風味の優れたチーズとなる。なお、通常乳中には乳糖が4.5〜6.5%程度含まれているため、乳糖含量の上限はこの値を超えない。
通常、ナチュラルチーズは乳酸菌の働きにより乳糖が乳酸または酢酸に変化し、熟成が進行すると残存する乳糖量はほとんどなくなる。このため、本発明においては、熟成が進行しても残存乳糖量が0.8%以上となるようにナチュラルチーズの製造条件の変更を行う。
すなわち、ナチュラルチーズ製造において、
(1)乳酸菌による乳糖の代謝をほとんど行わない手法、または
(2)乳酸発酵を特定条件で停止させる手法
を取り入れる。
具体的には、(1)の手法では、通常は原料乳に対して約1〜2質量%使用される乳酸菌添加率(バルク量として)を、1/10以下(0.1質量%以下)にし、乳酸菌によるpH調整(pH低下)の代替として、酢酸、乳酸、クエン酸、リン酸、酒石酸、リンゴ酸等の有機酸等を酸性化剤として使用し殺菌乳のpH調製を実施する。pHを調整する酸性化剤としては、上記有機酸の他、ナチュラルチーズ製造に認められている有機酸は使用可能であり、また、pH調整可能なものであれば特に限定されるものではない。乳酸菌添加率を低下させ、有機酸を使用する他は、ホエー排除、カードメーキング、加塩、熟成条件は通常のナチュラルチーズ製造条件と同様に実施する。(2)の手法では、乳酸菌を通常どおりに添加し、所定のpHとなった時点で乳、または凝固カードを加熱し乳酸菌を失活させる。前記(1)の手法と同様にその他、ホエー排除、カードメーキング、加塩、熟成条件は通常のナチュラルチーズ製造条件と同様に実施する。上記、2つの手法をナチュラルチーズ製造条件に組み入れることにより、乳酸菌の作用を一定条件で停止させ、熟成が進行しても残存乳糖量が0.8%以上となるナチュラルチーズを得ることが可能となる。
本発明において用いられる原料乳は、目的とするナチュラルチーズの種類に応じて選択され、ナチュラルチーズ用の原料乳であれば特に制限はない。
また、(1)の手法におけるpH調整時のpHは、5.0〜6.5とすることが好ましい。
(2)の手法における乳酸菌を失活させるための加熱処理は、乳酸菌添加後にチーズの形成に必要な発酵の進行が得られた段階で行い、pHが5.0〜6.5の範囲となった時点で加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理の段階で、乳は凝固していても、凝固していなくてもよい。加熱の温度および時間は、用いた乳酸菌の種類に応じて選択すればよいが、通常は、50〜80℃の範囲で行うことが好ましい。
また、乳酸菌を失活させる方法としては、紫外線照射、ソルビン酸カリウム等の保存料、殺菌剤、抗菌剤を添加する方法も用いることができる。
熟成は、熟度指標STN/TN値が少なくとも15%となる段階まで行い、チーズの種類によって、熟成期間や熟成温度を調整して実施することができる。なお、上限は特に限定されるものではないが、30%を超えるとアミノ酸量が多すぎて焦げが強くなる場合がある。
なお、熟度指標STN/TN値とは、標準試験法(日本工業学会誌、36(12)、981(1989)参照)に従い、ケルダール法で可溶性窒素(STN)および全窒素(TN)を測定し、STN/TN値=(可溶性窒素/全窒素)×100、を算出した。また、乳糖含量は、F−キット・乳糖/ガラクトース(r−ビオファーム社製)等により測定することができる。
以下実施例および比較例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、「%」は特に表記しない限りは質量基準である。
(実施例1)
[ゴーダチーズ]
脂肪率2.8%に調整した原料乳100kgを75℃、15秒殺菌後、30℃に冷却しチーズバットに搬送した。チーズバット内で乳酸菌LDスタータ(CHR.HANSEN社製)バルクを乳に対して0.01%添加し、さらにクエン酸を添加し乳pHを6.2に調整した。pH調整後、微生物レンネットTL(ロビン社製)を1.0g添加し乳を凝固させた。乳の凝固後、カードナイフを使用し10mm角のサイズに切断後、38℃まで加熱攪拌しながらホエー排除を実施した。ホエー排除後カードを10kgのチーズモールドに充填し、圧搾成型した。成型後、10℃の飽和食塩水中で48時間浸漬した後、ガスバリア性の高いフィルムに入れて真空包装した。このチーズを10℃にて6ヶ月間熟成させた(本発明品1)。対照品としては乳酸菌LDスタータ(CHR.HANSEN社製)バルクを乳に対して1%添加し、クエン酸を添加しない条件で、その他は同条件でチーズを作り、10℃にて6ヶ月熟成させた(対照品)。
熟成終了後、乳糖含量、STN/TN値の測定、および加熱しない状態でのチーズの官能評価、シュレッドしてトースター加熱した場合の官能評価を実施した(表1)。10点満点とし、点数が高いほど良好な結果とした。その結果、本発明品1は乳糖含量が1.5%であったのに対して、対照品は乳糖含量が0であった。また、加熱しないで食した場合は本発明品1の方が対照品よりもミルク風味が強く感じられた。トースター加熱した場合、本発明品1はこげ茶色に焦げ、香ばしい風味であったのに対し、対照品は焦げたチーズが黒ずんでおり(ダル)焼成風味も乏しかった。また、加熱溶融性は本発明品1、対照品ともに良好であったが、本発明品1が適度な糸曳き性、食感を有していたのに対し、対照品は糸曳き性がなく、チーズの食感は弱くほとんど感じられなかった。
Figure 2010115138
(実施例2)
[チェダーチーズ]
脂肪率3.6%に調整した原料乳200kgを75℃、15秒殺菌後、冷却しチーズバットに搬送した。チーズバット内で乳酸菌サーモフィラススタータ(CHR.HANSEN社製)バルクを乳に対して0.01%添加し、さらに乳酸を添加し乳pHを5.4に調整した。pH調整後、微生物レンネットTL(ロビン社製)を1.0g添加し乳を凝固させた。乳の凝固後、カードナイフを使用し10mm角のサイズに切断後、38℃まで加熱攪拌した後、ホエーを排除し、カードの堆積によるホエー排除を実施した(マッティング)。カード水分が所定の水分値まで低下した後、カードブロックを約1cm×1cm×3cmのサイズに細断し、カードに対し2.5質量%の食塩を添加し混合した。食塩添加後、チーズモールドにカードを充填し、圧搾成型した。成型後、モールドからチーズを取り出しチーズ表面をコーティング処理した後、10℃にて6ヶ月間熟成させた(本発明品2)。対照品としては乳酸菌サーモフィラススタータ(CHR.HANSEN社製)バルクを乳に対して2%添加し、乳酸を添加しない条件、さらにカードの堆積はpH5.4となった時点を終了として、その他は同条件でチーズを作り、10℃にて6ヶ月熟成させた(対照品)。
熟成終了後、乳糖含量、STN/TN値の測定、および加熱しない状態でのチーズの官能評価、シュレッドしてトースター加熱した場合の官能評価を実施した(表2)。10点満点とし、点数が高いほど良好な結果とした。その結果、本発明品2は乳糖含量が1.5%であったのに対して、対照品は乳糖含量が0であった。また、加熱しないで食した場合は本発明品2の方が対照品よりもミルク風味が強く感じられた。トースター加熱した場合、本発明品2はこげ茶色に焦げ、香ばしい風味であったのに対し、対照品は焦げたチーズが黒ずんでおり(ダル)焼成風味も乏しかった。また、加熱溶融性は本発明品2、対照品ともに良好であったが、本発明品2は糸曳き性、適度な食感を有していたのに対し、対照品は糸曳き性がなく、チーズの食感は弱くほとんど感じられなかった。
Figure 2010115138
(実施例3)
[グラナチーズ]
脂肪率2.0%に調整した原料乳300kgを75℃、15秒殺菌後、40℃に冷却しチーズバットに搬送した。チーズバット内で乳酸菌サーモフィラス+ヘルベチカススタータ(CHR.HANSEN社製)バルクを乳に対して1.0%添加した後、乳酸菌による予備発酵を実施し、pHを6.5まで低下させた。予備発酵終了後、乳を60℃にて30分加熱し、乳酸菌を失活させた後、乳を再び40℃に冷却した後、微生物レンネットTL(ロビン社製)を1.5g添加し乳を凝固させた。乳の凝固後、カードナイフを使用し5mm角のサイズに切断後、50℃まで加熱攪拌した後、ホエー中でカードを成型した後、チーズフープに入れて冷却・成型した。冷却・成型後、フープからちチーズを取り出し、飽和食塩水中で約4週間を浸漬させた後、チーズを10℃で1年間熟成させた(本発明品3)。対照品としては、予備発酵後、60℃−30分の加熱による乳酸菌の失活を行わずに(省略)、レンネット凝固工程に進み、以後の工程は同条件でチーズを作り、10℃にて1年間熟成させた(対照品)。
熟成終了後、乳糖含量、STN/TN値の測定、および加熱しない状態でのチーズの官能評価、シュレッドしてトースター加熱した場合の官能評価を実施した(表3)。10点満点とし、点数が高いほど良好な結果とした。その結果、本発明品3は乳糖含量が1.0%であったのに対して、対照品は乳糖含量が0であった。また、加熱しないで食した場合は本発明品3、対照品ともにコクのあるチーズ風味を有していた。トースター加熱した場合、本発明品3はこげ茶色に焦げ、香ばしい風味であったのに対し、対照品は焦げたチーズが黒ずんでおり(ダル)焼成風味はチーズの旨味と加熱臭のバランスが悪かった。また、加熱溶融性は本発明品3、対照品ともに良好であったが、本発明品3は糸曳き性、適度な食感を有していたのに対し、対照品は糸曳き性がなく、チーズの食感は弱くほとんど感じられなかった。
Figure 2010115138
(実施例4)
[低水分モザレラチーズ]
脂肪率3.0%に調整した原料乳100kgを75℃、15秒殺菌後、冷却しチーズバットに搬送した。チーズバット内で乳酸菌サーモフィラススタータ(CHR.HANSEN社製)バルクを乳に対して0.1%添加し、さらにリン酸を添加し乳pHを5.6に調整した。pH調整後、微生物レンネットTL(ロビン社製)を0.5g添加し乳を凝固させた。乳の凝固後、カードナイフを使用し10mm角のサイズに切断後、38℃まで加熱攪拌した後、ホエーを排除し、カードの堆積によるホエー排除を実施した(マッティング)。カード水分が所定の水分値まで低下した後、カードブロックを約1cm×1cm×1cmのサイズに細断した。細断したカードを80℃湯中にて混練成型した後、飽和食塩水中に浸漬させた。浸漬後、チーズをガスバリア性の高いフィルムに入れて真空包装した。このチーズを10℃にて2ヶ月間熟成させた(本発明品4)。対照品としては乳酸菌サーモフィラススタータ(CHR.HANSEN社製)バルクを乳に対して2%添加し、乳酸を添加しない条件、さらにカードの堆積はpH5.4となった時点を終了として、その他は同条件でチーズを作り、10℃にて2ヶ月熟成させた(対照品)。
熟成終了後、乳糖含量、STN/TN値の測定、および加熱しない状態でのチーズの官能評価、シュレッドしてトースター加熱した場合の官能評価を実施した(表4)。10点満点とし、点数が高いほど良好な結果とした。その結果、本発明品4は乳糖含量が0.8%であったのに対して、対照品は乳糖含量が0であった。また、加熱しないで食した場合は本発明品4の方が対照品よりもミルク風味が強く感じられた。トースター加熱した場合、本発明品4はこげ茶色に焦げ、香ばしい風味であったのに対し、対照品は焦げたチーズが黒ずんでおり(ダル)焼成風味も乏しかった。また、加熱溶融性は本発明品4、対照品ともに良好であったが、本発明品4は強い糸曳き性、適度な食感を有していたのに対し、対照品は糸曳き性がほとんどなく、チーズの食感は弱かった。
Figure 2010115138

Claims (3)

  1. 乳糖含量が0.8%以上であり、熟度指標STN/TN値が15%以上である加熱調理適性を有することを特徴とするナチュラルチーズ。
  2. 乳糖含量が0.8%以上であり、熟度指標STN/TN値が15%以上である加熱調理適性を有するナチュラルチーズの製造方法であって、
    原料乳にスタータ乳酸菌を添加し、酸性化剤を用いて酸性化してからレンネットを添加して凝固乳を得る工程と、
    前記凝固乳からホエーを排除しカードを得る工程と、
    前記カードを成型して熟度指標STN/TN値が15%以上に熟成させる工程と、
    を有することを特徴とする乳糖含量が0.8%以上であり、熟度指標STN/TN値が15%以上である加熱調理適性を有するナチュラルチーズの製造方法。
  3. 乳糖含量が0.8%以上であり、熟度指標STN/TN値が15%以上である加熱調理適性を有するナチュラルチーズの製造方法であって、
    原料乳にスタータ乳酸菌を添加し、レンネットを添加して凝固乳を得る工程と、
    前記凝固乳からホエーを排除しカードを得る工程と、
    前記カードを成型して熟成させる工程と、
    を有し、
    前記レンネット添加前の原料乳または前記凝固乳を加熱して乳酸菌を失活させ、前記熟成を熟度指標STN/TN値が15%以上となるまで行う
    ことを特徴とする乳糖含量が0.8%以上であり、熟度指標STN/TN値が15%以上である加熱調理適性を有するナチュラルチーズの製造方法。
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