前記特許文献1のモータの構成ではポンプが径方向に大きくなるため、これを改善するべく、燃料ポンプの駆動源として、ロータのロータコアと該ロータコアの周囲に配設されたステータとを備えたインナーロータ型のブラシレスモータを用い、ロータコアとステータとの間の空間を燃料の液体流通空間として利用することが考えられる。
しかし、ロータコアとステータとの間は極めて狭く、また、ロータコアの端面は、通常、ロータ軸方向に垂直な平面であるため、ポンプ内に流入された燃料の大部分はロータコアの端面に衝突して液体流通空間には流入されず、この結果、流体損が大きくなって、ポンプ効率が低下してしまう。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、インナーロータ型のブラシレスモータにおけるロータのロータコアとステータとの間の空間を液体流通空間とする場合に、液体を液体流通空間にスムーズに流入させるようにして、流体損を出来る限り低減しようとすることにある。
前述の目的を達成するために、この発明では、ロータコアにおける液体が流入する側の端面に、該液体を液体流通空間へ導く案内面が形成された案内部材を設けるようにした。
具体的には、請求項1の発明では、ブラシレスモータを対象として、永久磁石を保持するロータコアを有するロータと、該ロータコアの周囲に配設されたステータとを備え、該ロータコアと該ステータとの間の空間が、液体が該空間のロータ軸方向の一側から流入して他側へ流出する液体流通空間とされ、前記ロータコアにおけるロータ軸方向の前記一側の端面に、前記液体を前記液体流通空間へ導く案内面が形成された案内部材が設けられているものとする。
前述の構成により、ロータコアにおけるロータ軸方向の一側(液体流入側)の端面近傍まで流れてきた液体が、案内部材の案内面によって液体流通空間へとスムーズに導かれ、流体損を低減することができる。
また、ロータコアにロータ軸方向に貫通する磁石挿入用穴(スロット)を形成して該磁石挿入用穴内に永久磁石を挿入してなる、Interior Permanent Magnet(IPM)型のロータでは、ロータコアの両端面に、磁石挿入用穴を覆って永久磁石が磁石挿入用穴から抜け出るのを防止する抜止部材がそれぞれ設けられる場合があるが、これら両抜止部材の1つを案内部材で構成することができる。
さらに、ロータコアの両端面に、ロータの回転時のバランスを調整するためのバランスウエイトをそれぞれ設ける場合に、その一方のバランスウエイトを案内部材によって容易に保持することができるようになり、バランスウエイトをロータコアに固定するためのねじや接着剤などが不要になる。
したがって、流体損を低減することができて、ポンプ用モータとして用いる場合にポンプ効率を向上させることができるとともに、ロータのコストの低減化を図ることができる。
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記ロータコアにおけるロータ軸方向の前記他側の端面に、前記液体流通空間から流出した前記液体を整流する整流面が形成された整流部材が設けられているものとする。
すなわち、ロータコアにおけるロータ軸方向の他側(液体流出側)の端面に、整流部材が設けられていない場合に、液体流通空間から液体が流出すると、流路断面積の急激な変化によって、その流出した液体の流れが乱れて、この乱れによる流体損が生じる可能性が高くなる。しかし、整流部材を設けることで、そのような乱れによる流体損の発生を防止することができる。よって、流体損をより一層低減することができる。
また、IPM型のロータにおいて、整流部材を、案内部材と共に、永久磁石が磁石挿入用穴から抜け出るのを防止する抜止部材として機能させることができる。この場合、案内部材及び整流部材によって、磁石挿入用穴への液体の進入を防止するようにすることも可能であり、これにより、永久磁石が、たとえ防錆処理などがなされたものでなくても、液体によって錆びたり腐食したりするのを防止することができる。
さらに、ロータコアの両端面にバランスウエイトをそれぞれ設ける場合に、これら両バランスウエイトを案内部材及び整流部材によってそれぞれ保持することができる。
よって、流体損をより一層低減することができるとともに、ロータのコストをより一層低減することができる。
請求項3の発明では、請求項2の発明において、前記ロータコアには、ロータ軸方向に貫通するフラックスバリアが形成され、前記案内部材及び整流部材は、同じ樹脂からなり、前記フラックスバリア内には、前記案内部材及び整流部材を互いに連結するように該案内部材及び整流部材の樹脂が充填されているものとする。
このことにより、案内部材及び整流部材をフラックスバリアを介して互いに一体成形することができ、ロータの製造が容易に行える。また、案内部材及び整流部材の連結により、案内部材又は整流部材が、磁石挿入用穴から飛び出そうとする永久磁石から衝撃力を受けたとしても、案内部材及び整流部材がロータコアから外れ難くなる。さらに、樹脂は、通常、非磁性であるため、ロータコアの端面やフラックスバリア内に存在しても、モータの性能に悪影響を及ぼすようなことはない。また、樹脂による成形(射出成形)では、案内部材の案内面や整流部材における液体と接触して整流する整流面の形状自由度が高くて、しかも、滑らかな面にすることができ、よって、低コストで流体損を可及的に低減することができる。
請求項4の発明では、請求項2又は3の発明において、前記整流部材の整流面は、略半球状又は略円錐状に形成されているものとする。
このことで、液体を液体流通空間へスムーズに導くことができ、流体損を低減することができる。
請求項5の発明では、請求項1〜4のいずれか1項の発明において、前記案内部材の案内面は、略半球状又は略円錐状に形成されているものとする。
このことで、液体流通空間から流出した液体の流れが乱れるのを防止して、その乱れによる流体損の発生を防止することができる。
以上説明したように、本発明のブラシレスモータによると、ロータコア及びステータ間の空間が、液体が該空間のロータ軸方向の一側から流入して他側へ流出する液体流通空間となっており、前記ロータコアにおけるロータ軸方向の前記一側の端面に、前記液体を前記液体流通空間へ導く案内面が形成された案内部材を設けるようにしたことにより、流体損を低減して、ポンプ用モータとして用いる場合にポンプ効率を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係るブラシレスモータ(以下、モータという)2を備えた燃料ポンプ1を示す。この燃料ポンプ1は、自動車などの車両においてガソリンやディーゼル燃料などの燃料が貯留された燃料タンク内に、該燃料に浸漬された状態で配置されるものであって、モータ2によってインペラ3を回転させて、ケーシング4内に燃料を吸い込んで吐出することにより、該燃料を燃料配管を介してエンジンへ搬送するように構成されている。
具体的には、前記燃料ポンプ1は、外側面及び内側面が、燃料に対して耐性を有する材料でメッキ処理された略円筒状の金属製のケーシング4内に、モータ2と該モータ2の回転軸22に接続されたインペラ3とが回転軸22の軸方向に並ぶように配置されたものである。前記ケーシング4のインペラ3とは反対が側の開口端部は、樹脂製の蓋部材5によって閉塞されている一方、インペラ3側の開口端部は、該インペラ3を収納するためのポンプ室Sを形成する樹脂製のポンプケーシング11及びポンプカバー12によって閉塞されている。蓋部材5、ポンプケーシング11及びポンプカバー12は、樹脂製のものに限らず、例えばアルミダイキャスト部材で構成してもよい。また、これら3つのうちの一部(例えば、蓋部材5及びポンプケーシング11)を樹脂で構成し、残り(例えば、ポンプカバー12)をアルミダイキャスト部材で構成してもよい。
前記蓋部材5は、略円盤状の樹脂部材からなり、厚み方向に貫通するように吐出口5aが形成されているとともに、ケーシング4内方側の平面視で略中央部分には、前記モータ2の回転軸22の蓋部材5側(図1における上側)の端部を回転可能に支持するための軸受6が収納される凹部5bが形成されている。また、前記蓋部材5には、後述するように、モータ2における後述のステータ31からポンプ1外方へ延びる外部バスバー36が挿通可能なように、バスバー用開口5cが設けられている。
前記ポンプ室Sを形成する前記ポンプケーシング11及びポンプカバー12は、それぞれ略円盤状の樹脂部材からなり、該ポンプケーシング11がケーシング4の内方側に、該ポンプカバー12がケーシング4の外方側に、それぞれ位置するように配置されている。前記ポンプカバー12には、厚み方向に貫通し且つ前記ポンプ室Sに連通するように吸入口12aが形成されている一方、前記ポンプケーシング11には厚み方向に貫通し且つ前記ポンプ室Sに連通するように吸入通路11aが形成されている。これにより、前記ケーシング4の内部は、前記吸入口12a、ポンプ室S及び吸入通路11aを介して外部と連通している。
前記ポンプケーシング11には、ポンプカバー12側(図1における下側)の面に、前記ポンプ室Sを構成し且つ前記インペラ3を収納可能な凹部11bが形成されているとともに、平面視で略中央部分に前記モータ2の回転軸22が挿通するための貫通穴11cが形成されている。また、この貫通穴11cのケーシング4内方側(図1における上側)には、前記回転軸22のポンプケーシング11側(図1における下側)の端部を回転可能に支持するための軸受7が収納される拡大穴部11dが形成されている。
前記インペラ3は、例えばプロペラ形状に形成されていて、平面視で略中央部分にモータ2の回転軸22の他端側が接続されている。また、このインペラ3は、モータ2によって回転すると、前記吸入口12aから燃料をケーシング4内に吸い込むような形状に形成されている。したがって、前記インペラ3の回転によって、燃料が前記吸入口12aを介してポンプ室Sに吸い込まれて、吸入通路11aを介して燃料ポンプ1のケーシング4内に流れ込むようになっている。このようにケーシング4内に吸い込まれた燃料は、モータ2の内部(ロータ21のロータコア24とステータ31との間の空間(後述の燃料流通空間51))を流れて、前記蓋部材5に形成された吐出口5aから外部(エンジン)へ吐き出される。なお、燃料を吸い込む吸込部の構成としては、前記のようなインペラ3に限らず、回転により燃料を吸入口12aからケーシング4内に吸い込むことが可能であれば、どのような構成であってもよい。
前記モータ2は、前記インペラ3が接続され且つ前記軸受6,7によって両端部を回転可能に支持された前記回転軸22と、この回転軸22に結合されたロータコア24を含むロータ部23とを有するロータ21と、このロータ21のロータコア24の周囲に配設され、ロータコア24(ロータ部23)を囲むように略円筒状に形成されたステータ31とを備えている。前記ロータ21は、前記回転軸22及びロータ部23が回転軸22の軸心(つまりロータ軸)回りに一体回転するように構成されている。このモータ2は、前記ロータ21のロータコア24内に永久磁石25が、前記ステータ31内に巻線33が、それぞれ設けられたものであり、該ステータ31の巻線33に所定のタイミングで通電することにより、前記ロータ21の回転が制御される。
前記ロータ部23は、鋼板を積層してなる略円筒状の前記ロータコア24と、このロータコア24内においてロータ軸方向に延びるように設けられた複数の永久磁石25,25,…とを備えている。詳しくは、図2に示すように、前記ロータコア24には、回転軸22を囲むように断面矩形状の4つのスロット24aが、ロータコア24を貫通して形成されていて、各スロット24a内に前記永久磁石25が挿入されて保持されている。なお、スロット24aの数(永久磁石25の数)は4つ(4極)に限られるものではなく、例えば6つ(6極)であってもよい。
前記ロータコア24において相隣接するスロット24a,24a間の部分(4箇所)には、当該スロット24a,24aに挿入保持されている永久磁石25,25間で磁束が短絡するのを防止するフラックスバリア24bがそれぞれ設けられている。各フラックスバリア24bは、ロータコア24をロータ軸方向に貫通するように設けられている。
前記ロータコア24とステータ31との間の空間は、液体としての燃料が該空間のロータ軸方向の一側(ポンプケーシング11側)から流入して他側(蓋部材5側)へ流出する燃料流通空間51(液体流通空間)とされている。すなわち、モータ2の回転軸22の回転によるインペラ3の回転によって吸入口12a、ポンプ室S及び吸入通路11aを介してケーシング4内に流れ込む燃料は、先ず、ケーシング4内におけるモータ2のポンプカバー12側に形成され且つ吸入通路11aと連通する吸入側空間52へと流れ込み、この吸入側空間52から燃料流通空間51へ流入する。そして、前記燃料は、燃料流通空間51を蓋部材5側(後述の吐出側空間53)へと流れて、燃料流通空間51から、ケーシング4内におけるモータ2の蓋部材5側に形成された吐出側空間53へと流出し、この吐出側空間53から吐出口5aを介して外部(エンジン)へ吐出される。
図1に示すように、前記ロータコア24におけるロータ軸方向の前記一側(図1における下側)の端面(以下、吸入側端面という)には、吸入側空間52へと流れ込んできた燃料を燃料流通空間51へ導く案内面26aが形成された案内部材26が設けられている。この案内部材26の案内面26aは、ロータコア24における前記吸入側端面の中心(回転軸22の軸心)に向かって該吸入側端面から離れる(つまり吸入側空間52に突出する)ような形状、例えば略半球状や略円錐状に形成されていることが好ましい(図3では、略半球状に形成された案内面26aの例を示す)。ここで、略半球状には、半球の部分的な形状も含まれる。要するに、案内面26aの、回転軸22の軸心を含む平面で切断した断面形状が、回転軸22の軸心位置で前記吸入側端面から最も離れるような略円弧形状であればよい。これにより、吸入側空間52へと流れ込んできた燃料が案内部材26の案内面26aによって燃料流通空間51へとスムーズに導かれるようになる。
前記案内部材26は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)やPPA(ポリフタルアミド)、POM(ポリアセタール)などのような、燃料に対して耐性を有する非磁性の樹脂からなっている。これにより、案内部材26が燃料に晒されても問題はなく、モータ2の性能に悪影響を及ぼすこともない。そして、この案内部材26は前記吸入側端面に密着していてスロット24aの開口を覆っており、これにより、案内部材26と前記吸入側端面との間から燃料がスロット24a内に入り込まないようになされている。また、案内部材26により、スロット24a内の永久磁石25が吸入側空間52へ抜け出るようなこともない。
一方、前記ロータコア24におけるロータ軸方向の前記他側(図1における上側)の端面(以下、吐出側端面という)には、燃料流通空間51から吐出側空間53へ流出した燃料を整流する整流面27aを有する整流部材27が設けられている。すなわち、整流部材27が設けられていないと、燃料の流路断面積が燃料流通空間51と吐出側空間53との間で急激に変化するため、吐出側空間53へ流出した燃料の流れが乱れて、この乱れによる流体損が生じる可能性が高くなる。しかし、本実施形態のように整流部材27を設けることで、そのような乱れによる流体損の発生を防止することができる。前記整流部材27の整流面27aは、ロータコア24における前記吐出側端面の中心に向かって該吐出側端面から離れる(つまり吐出側空間53に突出する)ような形状、例えば略半球状や略円錐状に形成されていることが好ましい(図4では、略円錐状に形成された整流面27aの例を示す)。ここで、略半球状には、半球の部分的な形状も含まれる。要するに、整流面27aの、回転軸22の軸心を含む平面で切断した断面形状が、回転軸22の軸心位置で前記吐出側端面から最も離れるような略円弧形状であればよい。整流部材27の整流面27aの形状は、案内部材26の案内面26aの形状と同じであってもよく、異なっていてもよい。
前記整流部材27は、前記案内部材26と同じ樹脂からなっている。そして、整流部材27は、案内部材26と同様に、前記吐出側端面に密着していてスロット24aの開口を覆っており、これにより、整流部材27と前記吐出側端面との間から燃料がスロット24a内に入り込まないようになされている。また、整流部材27により、スロット24a内の永久磁石25が吐出側空間53へ抜け出るようなこともない。
前述の如く、案内部材26及び整流部材27によりスロット24a内には燃料が入り込まないので、永久磁石25が、たとえ防錆処理などがなされたものでなくても、燃料によって錆びたり腐食したりするのを防止することができる。特にバイオエタノールを燃料として使用する場合には、エタノールの親水性により燃料に水分が含まれ、このため、防錆処理をした永久磁石25であっても錆びる可能性が高くなるが、本実施形態のようにスロット24a内に燃料が入り込まないようにしておけば、永久磁石25が錆びるようなことはない。
案内部材26及び整流部材27は、射出成形によって、前記フラックスバリア24bを介して互いに一体成形したものである。すなわち、案内部材26及び整流部材27の成形は同時に行われ、その際にフラックスバリア24b内に案内部材26及び整流部材27の樹脂を流して、案内部材26及び整流部材27をロータコア24の両端面にそれぞれ密着するように成形する。これにより、フラックスバリア24b内には、案内部材26及び整流部材27を互いに連結するように案内部材26及び整流部材27の樹脂が充填されることになる。このように案内部材26及び整流部材27が連結一体化されていると、燃料ポンプ1に何等かの衝撃力が作用したときに、永久磁石25がスロット24aから飛び出そうとして案内部材26又は整流部材27に衝撃力が作用したとしても、案内部材26及び整流部材27がロータコア24から外れ難くなる。また、フラックスバリア24b内に樹脂が充填されても、その樹脂が非磁性であるので、フラックスバリア24bの機能に影響はない。
本実施形態では、スロット24aと永久磁石25との間の隙間にも前記樹脂が充填されており、これにより、永久磁石25の保持性が向上する。この結果、永久磁石25のスロット24aとの接着強度(剥がれ強度)が増すため、フラックスバリア24bの断面積が小さくても、案内部材26及び整流部材27がロータコア24から外れるのを防止することができる。
なお、案内部材26及び整流部材27の連結用の樹脂を充填する穴は、フラックスバリア24bに限られず、ロータコア24をロータ軸方向に貫通する貫通穴であればよく、前記連結用としての専用の穴を形成してもよい。
前記ステータ31は、図1及び図2に示すように、鋼板を積層してなる略円筒状のステータコア32と、該ステータコア32の歯部32bにコイル線を巻回してなる複数の巻線33とを備えている。具体的には、前記ステータコア32は、前記ケーシング4の内周面に固定される略円環状のコアバック部32aと、このコアバック部32aの内周側に径方向内方に向かって突出するように設けられた複数の歯部32b(本実施形態では6つ)とを有している。前記各歯部32bの先端部分には、幅方向(ステータ31の周方向)に拡がった拡大部32cが形成されていて、該各歯部32bは、全体として断面略T字状になっている。なお、前記ステータコア32は、それぞれ前記歯部32bを有する複数のコア部が帯状に連結された、いわゆるストレートコアからなり、該ストレートコアを折り曲げて円筒状に形成したものである。図2において、符号32dは、前記ストレートコアのつなぎ目であり、符号32eは、該ストレートコアの折れ曲がり部分である。
前記歯部32bは、ステータ31内にロータ21を配置した状態で、該ロータ21のロータコア24の径方向外側表面と前記拡大部32cの径方向内側の面との間にギャップG(前記燃料流通空間51)を形成する大きさになるように設けられている。加えて、前記拡大部32cは、前記ギャップGの大きさが、幅方向中央部で最も小さくなり且つ幅方向両端部で最も大きくなるように、該拡大部32cのロータ21側(径方向内側)の面が断面視で前記ロータ21の外表面の円弧よりも大きな曲率半径を有するように形成されている。このように、前記ギャップGの大きさを、前記歯部32bの拡大部32cの幅方向中央部よりも幅方向両端部で大きくすることにより、前記ギャップG(燃料流通空間51)内を流れる燃料の流路断面積を、前記拡大部32cの幅方向両端部で拡大できる一方、磁束が最も集まる該拡大部32cの幅方向中央部をロータ21に対して近づけることができる。これにより、燃料が燃料流通空間51内を効率良く流れるようになるとともに、前記ギャップGの拡大による磁束密度の低下を極力、防止することできて、モータ性能の大幅な低下を防止することができる。
前記歯部32bには、前記拡大部32cの径方向外周側から前記コアバック部32aの内周側に亘って絶縁部材34が被せられていて、該絶縁部材34上にコイル線が巻回されている。前記歯部32bにコイル線が巻回されてなる各巻線33は、通電時にそれぞれU相、V相及びW相となるように、銅製のバスバー35に接続されていて、該バスバー35に接続された銅製の外部バスバー36を介して制御回路側(図示省略)と接続されている。なお、前記巻線33は、180度対向した位置の巻線33,33が通電した際に同相になるように、該巻線33,33のコイル線同士が接続されている。
前記ステータ31の軸方向両端部は、PPS、PPA、POMなどのような、燃料に対して耐性を有する非磁性の樹脂37,37によってそれぞれ覆われている。すなわち、前記ステータ31の軸方向両端部では、絶縁部材34、巻線33及びバスバー35,36が前記樹脂37によって封止されている。また、前記歯部32b,32b同士の間には、軸方向に貫通した空間が形成されているため、これらの空間にも前記樹脂37が充填されている。このように、前記ステータ31の軸方向両端部を樹脂37によって封止することで、モータ2内を燃料が流れる際に、銅製のバスバー35,36や該バスバー35,36と接続するために表面のコーティングの一部が除去されたコイル線、ステータコア32の鋼板などが、前記燃料と接触するのを防止できるため、該燃料によってこれらの部品が錆びるのを防止することができる。しかも、前記ステータコア32の歯部32b同士の間の空間も前記樹脂37によって封止されているため、前記コイル線や前記ステータコア32の鋼板が前記燃料と接触するのを防止することができる。
ここで、前記ロータ21が高速{例えば83.3回転/秒(5000rpm)程度}で回転する場合には、ロータ21の振動を防止するために、ロータ21の回転時のバランスを調整するためのバランスウエイトが必要になる。
図5及び図6は、ロータコア24の両端面に、板状のバランスウエイト61,61をそれぞれ設けた場合の例を示す(なお、図5及び図6では、案内部材26及び整流部材27を取り除いている)。バランスウエイト61は、回転軸22に圧入されて回転軸22及びロータ部23(ロータコア24)と一体的に回転するようになっているが、案内部材や整流部材がなければ、回転軸22に対して相対的に回転してバランスウエイト61としての機能を果たさなくなる可能性がある。しかし、ロータコア24のロータ軸方向両端面に案内部材26及び整流部材27をそれぞれ設けることによって、バランスウエイト61が回転軸22に対して相対的に回転しないように保持することができる。
したがって、本実施形態では、ロータコア24における吸入側空間52側の端面に、吸入側空間52へと流れ込んできた燃料を燃料流通空間51へ導く案内面26aが形成された案内部材26を設けたので、断面積がかなり小さい燃料流通空間51へと燃料をスムーズに導くことができる。すなわち、案内部材26が設けられていないと、ロータ軸方向に垂直な平面である、ロータコア24の端面に、吸入側空間52へ流れ込んできた燃料の大部分が衝突するために流体損が大きくなるが、案内部材26の案内面26aによって燃料を燃料流通空間51へと導いて流体損を低減することができる。よって、ポンプ効率を向上させることができる。
また、本実施形態では、ロータコア24における吐出側空間53側の端面に、燃料流通空間51から流出した燃料を整流する整流部材27を設けたので、流体損をより一層低減することができる。
さらに、案内部材26及び整流部材27は、永久磁石25がスロット24aから抜け出るのを防止する抜止部材や、燃料のスロット24aへの進入を防止する進入防止部材、バランスウエイト61を保持する保持部材と兼用することができ、ロータ21のコストの低減化を図ることができる。
また、案内部材26及び整流部材27を樹脂で構成することで、案内部材26の案内面26a及び整流部材27の整流面27aの形状自由度が高くなり、しかも、滑らかな面にすることができる。よって、低コストで流体損を低減することができる。さらに、案内部材26及び整流部材27の連結により、永久磁石25がスロット24aから抜け出るのを防止することができる。
本発明の構成は、前記実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。
例えば、前記実施形態では、モータ2の断面においてロータ21のロータコア24とステータ31の拡大部32cとの間のギャップGを、拡大部32cの幅方向中央部と両端部とで異ならせるようにしたが、拡大部32cをロータコア24に沿う円弧状に形成して、ギャップGがステータ31の全周に亘って一様になるようにしてもよい。
また、前記実施形態では、案内部材26及び整流部材27を樹脂で構成したが、非磁性のものであれば、どのような材料(例えばアルミニウム)で構成してもよく、案内部材26と整流部材27とで材料を異ならせてもよい(尚、燃料に対して耐性を有しない材料を使用する場合には、耐性を有する材料で表面処理を施すようにすればよい)。また、案内部材26及び整流部材27を互いに連結する必要はなく、圧入やねじ、接着剤によりロータコア24に固定するようにしてもよい。但し、十分な圧入強度や接着強度を確保できなかったりねじが緩んだりする可能性があるため、前記実施形態の如く構成する方が、十分な固定強度が低コストで得られて好ましい。
さらに、前記実施形態では、案内部材26に加えて整流部材27を設けたが、整流部材27はなくてもよい。また、整流部材27の代わりに、前記抜止部材や前記進入防止部材、前記保持部材を設けるようにしてもよい。
また、前記実施形態では、ロータ21が、永久磁石25をロータコア24の内部に保持するIPM型のロータであるが、永久磁石25をロータコア24の表面に保持する、Surface Permanent Magnet(SPM)型のロータであってもよい。但し、永久磁石25の錆び防止の観点からは、IPM型のロータの方が好ましい。
加えて、前記実施形態では、本発明を、車両の燃料ポンプ1を駆動するモータ2に適用したが、本発明は、ロータコアとステータとの間の空間が、液体が該空間のロータ軸方向の一側から流入して他側へ流出する燃料流通空間となるブラシレスモータであれば、どのようなモータにも適用することができる。例えば、水が貯えられた貯水槽内に浸漬されて、該貯水槽内の水を汲み上げるポンプを駆動するモータに適用することも可能である。