図1は、本発明の車両内犯罪防止システムのクレーム対応図を示したものである。本発明の車両内犯罪防止システム10は、車両の走行環境を判別する走行環境判別手段11と、この走行環境判別手段11の判別結果に基づいて前記した車両の走行の際に車両に乗っている者の犯罪に対する危険度を判別する危険度判別手段12と、前記した車両に乗っている者の状況を情報として収集する車両内部情報収集手段13と、この車両内部情報収集手段13の収集する情報の密度を危険度判別手段12の判別結果に基づいて調整する収集情報密度調整手段14とを具備することを特徴としている。
図2は、本発明の他の車両内犯罪防止システムのクレーム対応図を示したものである。本発明の車両内犯罪防止システム20は、車両に実際に乗っている者が車両内部で発生するおそれのある犯罪に寄与するとみられる外観的な特徴を犯人の犯行に影響するとみられる内部要因として収集する内部要因特徴収集手段21と、前記した車両内部における前記した犯人の犯行に影響するとみられる外部要因を収集する外部要因特徴収集手段22と、内部要因特徴収集手段21および外部要因特徴収集手段22で収集した内部要因および外部要因から前記した車両内で犯罪が発生する危険度を算出する危険度算出手段23と、この危険度算出手段23で算出した危険度に応じた情報の密度で前記した車両内部の経時的な変化を示す車両内部情報を収集する車両内部情報収集手段24と、この車両内部情報収集手段24で収集した車両内部情報の存在を前記した車両に実際に乗っている者に通告する情報存在通告手段25とを具備することを特徴としている。
とを備えている。
図3は、本発明の車両内犯罪防止方法のクレーム対応図を示したものである。本発明の車両内犯罪防止方法30は、車両に実際に乗っている者が車両内部で発生するおそれのある犯罪に寄与するとみられる外観的な特徴を犯人の犯行に影響するとみられる内部要因として収集する内部要因特徴収集ステップ31と、前記した車両内部における前記した犯人の犯行に影響するとみられる外部要因を収集する外部要因特徴収集ステップ32と、内部要因特徴収集ステップ31および外部要因特徴収集ステップ32で収集された内部要因および外部要因から前記した車両内で犯罪が発生する危険度を算出する危険度算出ステップ33と、この危険度算出ステップ33で算出した危険度に応じた情報の密度で前記した車両内部の経時的な変化を示す車両内部情報を収集する車両内部情報収集ステップ34と、この車両内部情報収集ステップ34で収集した車両内部情報の存在を前記した車両に実際に乗っている者に通告する情報存在通告ステップ35とを具備することを特徴としている。
図4は、本発明の車両内犯罪防止プログラムのクレーム対応図を示したものである。本発明の車両内犯罪防止プログラム40は、コンピュータに、車両に実際に乗っている者が車両内部で発生するおそれのある犯罪に寄与するとみられる外観的な特徴を犯人の犯行に影響するとみられる内部要因として収集する内部要因特徴収集処理41と、前記した車両内部における前記した犯人の犯行に影響するとみられる外部要因を収集する外部要因特徴収集処理42と、内部要因特徴収集処理41および外部要因特徴収集処理42で収集された内部要因および外部要因から前記した車両内で犯罪が発生する危険度を算出する危険度算出処理43と、この危険度算出処理43で算出した危険度に応じた情報の密度で前記した車両内部の経時的な変化を示す車両内部情報を収集する車両内部情報収集処理44と、この車両内部情報収集処理44で収集した車両内部情報の存在を前記した車両に実際に乗っている者に通告する情報存在通告処理45とを実行させることを特徴としている。
<発明の実施の形態>
次に本発明の実施の形態を説明する。
図5は、本発明の実施の形態による車両内犯罪防止システムの構成の概要を表わしたものである。本実施の形態の車両内犯罪防止システム100は、インターネット101を利用したシステムとなっている。インターネット101には、第1〜第Mのタクシー1021〜102M(Mは任意の正の整数)にそれぞれ1台ずつ搭載された第1〜第Mのタクシー端末1031〜103Mと通信を行う無線基地局104が接続されている。図5では無線基地局104を1つのみ示したが、電波の到達するエリアとの関係で通常は複数存在している。インターネット101には、この他に第1〜第Mのタクシー端末1031〜103Mから送られてくる車両内部の映像(音声も含む)を保管する映像センタ105と、第1〜第Mのタクシー1021〜102Mを管轄する会社の本部としてのタクシー会社本部106と、社会の治安を維持する機関としての警察107と、犯罪の通報等の所定の情報の入力操作を行う入力端末108が接続されている。
ここで映像センタ105は、映像を原則として非公開で格納する場所である。第1〜第Mのタクシー1021〜102M内で撮影された映像は、入力端末108等からの通知により警察107が公開を要求し、タクシー会社本部106が承諾した範囲内で事件解明のための資料として警察107内部で公開される。インターネットや各家庭の図示しないテレビジョンや刊行物でその画像が公開されるには、更なる条件が満たされることが必要とされる場合が多い。しかしながら、第1〜第Mのタクシー1021〜102Mの内部が撮影され、その映像が公開される可能性があるということは、犯罪に対する大きな抑止力となる。本実施の形態では、第1〜第Mのタクシー1021〜102Mのそれぞれの走行環境に応じて犯罪の生じる確率を求めて、これらの車両の映像の記録情報密度を調整するようになっている。これにより、犯罪の起きる可能性が高い状態で映像センタ105には高い情報記録密度の映像が蓄えられていることになり、犯罪の解明に役立つと共に、反射的に犯罪の抑止に繋がることになる。
図6は、本実施の形態における第1のタクシー端末についての電気的な構成の概要を表わしたものである。第2〜第Mのタクシー端末1032〜103Mについては、仮に第1のタクシー1021と第2〜第Mのタクシー1022〜102Mの車種が違っても、装備する電気関係の部品は実質的に同一となっている。そこで、第2〜第Mのタクシー端末1031〜103Mについては、図示および電気関係の部品の説明は省略する。図5と共に説明を行う。
第1のタクシー端末1031は、CPU(Central Processing Unit)121と、RAM(Random Access Memory)あるいはROM(Read Only Memory)等の記憶媒体によって構成されるメモリ122を備えた主制御部123を有している。ここで、メモリ122は、CPU121の実行する制御プログラムを格納した制御プログラム格納領域124と、第1のタクシー端末1031の車両内部の映像をデジタル化して一時的に格納する映像メモリ領域125と、同様に車両内部の音声を圧縮デジタル信号として一時的に格納する音声メモリ領域126と、乗客の乗車地名の音声認識結果を一時的に格納する乗車地メモリ領域127と、乗客の行き先の音声認識結果を一時的に格納する行き先メモリ領域128を備えている。主制御部123は、次の各部と接続されて、これら全体の制御を行うようになっている。ここで、これらの各部は、ハードウェアで構成されていてもよいし、少なくともこれらの一部はCPU121が制御プログラムを実行することによって機能的に実現するソフトウェアで構成されていてもよい。
通信制御部131は、映像センタ105との送受信制御機能を備えている。開始処理部132は、運転手がこの車両内犯罪防止システム100における第1のタクシー端末1031の処理を開始させる処理部分である。操作盤133上に配置された開始ボタン134を押下することで、第1のタクシー端末1031の処理が開始する。この時点から、映像センタ105は第1のタクシー1021の第1のタクシー端末1031を監視体制下に入れることになる。これ以後、第1のタクシー端末1031は、各状態をチェックする処理を開始する。すなわち開始ボタン134は第1のタクシー端末1031から映像センタ105へ処理の開始の宣言を通知するために使用される。この宣言の通知後、映像センタ105は、第1のタクシー端末1031を監視下に置く。そして、開始ボタン134に内蔵されたランプの点灯指示を第1のタクシー端末1031に返送する。したがって、開始ボタン134のランプが点灯している間は、映像センタ105で第1のタクシー端末1031を監視中であることを意味する。
状態監視処理部135は、運転手の操作状態をチェックするようになっている。そして、運転操作状態に応じてプログラム処理が変わるようになっている。チェック項目ごとに運転操作状態を検知するデバイスが配置されている。このうちの2つは、操作盤制御部136に接続された前記した操作盤133上の緊急ボタン137と、解除ボタン138の押下状態である。残りの3つのチェック項目は、状態検知部141に接続されたドアオープン検知スイッチ142、急ブレーキ検知スイッチ143および急ハンドブレーキ検知スイッチ144による、ドアの開閉の状況、急ブレーキおよび急ハンドブレーキの操作状況である。ドアオープン検知スイッチ142は、図示しない後部ドアがオープンとなったときにこれを検知するスイッチである。ここで解除ボタン138は、たとえば急ブレーキまたは緊急ボタン137の押下により発生した非常事態の解除用のボタンである。映像センタ105は、解除ボタン138が押下されたことの通知を受けると、該当する非常事態を解除するようになっている。
すなわち、本実施の形態では、運転手が非常事態に反応できる最初の手段は急ハンドブレーキ、急ブレーキをかけたり、第1のタクシー端末1031の緊急ボタン137を押すことであると想定する。そこで、これらの時点で車両内犯罪防止システム100は、非常事態発生と見なし、映像センタ105とタクシー会社本部106と警察107に緊急通報する仕組みとなっている。
緊急ボタン137が押下されると、第1のタクシー端末1031から映像センタ105とタクシー会社本部106に緊急通知が送付される。このとき、映像センタ105およびタクシー会社本部106に送付される送付データは、緊急ボタン137が押下された日時と、第1のタクシー1021のタクシー番号と、映像メモリ領域125に格納された映像データと、音声メモリ領域126に格納された音声データと、緊急事態が発生した旨の通知データである。映像センタ105は緊急通知を受信すると、所定の緊急処理を実行する。そして、第1のタクシー端末1031に対して緊急ボタンランプ点灯指示を送付する。第1のタクシー端末1031は、この緊急ボタンランプ点灯指示を受信すると、緊急ボタン137に内蔵されたランプ(図示せず)を点灯させる。したがって、緊急ボタン137が点灯中は、映像センタ105が第1のタクシー1021を緊急監視中であることを意味する。
公開空間処理部146は、車内カメラ制御部148を介して車内の前方に配置された前方撮影用の前方撮影カメラ149と、車内の後方に配置され後部座席を主として撮影する後部座席カメラ150を制御する。また、公開空間処理部146は、スピーカ・マイク制御部151を介してマイクロフォン152の制御も行う。
音声認識部153は、マイクロフォン152を介して運転手が発する乗車地名と行き先名を音声認識し、その結果としての地名を操作盤133の乗車地名表示盤154と行き先名表示盤155に表示させる。撮影処理部156は、9段階の危険度に従って、前方撮影カメラ149と後部座席カメラ150による撮影とマイクロフォン152による音声収録を行う。
定期送信処理部157は、メモリ122の映像メモリ領域125および音声メモリ領域126に格納されているデータを定期的に映像センタ105に送信する。非常事態処理部158は、操作盤133上の緊急ボタン137の押下で起動し、映像センタ105とタクシー会社本部106に緊急通知を発信する。また、非常事態処理部158は非常灯制御部159を介して非常灯161の点灯を行わせ、第1のタクシー1021に非常事態が発生していることを車外に通知する。
急ブレーキ処理部162は、運転手が何らかの原因でかけた急ブレーキを非常事態発生として処理する。そして、即座に映像と音声を映像センタ105に送信する。乗客にはスピーカ・マイク制御部151を介してスピーカ163から非常事態が発生した旨の音声案内を流す。
人の目サポート部164は、LCD(Liquid Crystal Display)表示制御部165を介してLCD表示盤166に第1のタクシー端末1031の搭載された第1のタクシー1021の内部空間が公開され得る空間であることを表示して、乗客に認知してもらうようになっている。すなわち、前方撮影カメラ149と後部座席カメラ150による撮影とマイクロフォン152による音声収録が行われるので、第1のタクシー1021の内部空間は密室空間ではなく、「人の目がある」ことによって犯罪の発生を抑止する効果を狙っている。LCD表示盤166には、その他に乗客に対して各種メッセージを伝える機能も備えている。
図7は、本実施の形態で使用される操作盤の一例を示したものである。図5、図6と共に説明する。
操作盤133は、第1のタクシー1021に搭載された第1のタクシー端末1031の一部として、図示しない運転席の前のダッシュボードに配置されている。操作盤133には、図6で説明した乗車地名表示盤154と行き先名表示盤155、開始ボタン134、緊急ボタン137および解除ボタン138の他に10個のボタンが配置されている。
このうち性別ボタン167は、乗客の性別を入力するボタンである。性別ボタン167は、男ボタン167A、女ボタン167B、男女ボタン167Cの3種類のボタンに分かれており、これらのいずれかを運転手が選択して押下する。客数ボタン168は、乗客の人数を入力するボタンである。客数ボタン168は、1人ボタン168A、2人ボタン168B、3人ボタン168C、4人ボタン168Dに分かれており、これらのいずれかを運転手が選択して押下する。荷物ボタン169は、乗客が持ち込んだ荷物の有無を入力するボタンである。荷物ボタン169は荷物有ボタン169Aと荷物無ボタン169Bに分かれており、これらのいずれかを運転手が選択して押下する。
終了ボタン171は、タクシー業務終了時点で押下するボタンである。映像センタ105では、終了ボタン171が押下されたことの通知を受けると、データバンク部192に格納した第1のタクシー端末1031から送られてきた映像データおよび音声データの厳重保管と、第1のタクシー端末1031の監視体制を解除する。そして、第1のタクシー端末1031に対してその操作盤133上に配置されたランプ類すべての消灯指示を送付する。また、タクシー会社本部106に第1のタクシー端末1031に関する監視体制の終了宣言を通知する。危険度表示ランプ172は、表示のサイズが連続的に変化する8個のランプを配置しており、映像センタ105から算出された9段階の危険度を、運転手に対して点灯しているランプの数あるいは無点灯の状態で告知するようになっている。9段階の危険度については、後に説明する。
図8は、映像センタの構成の概要を表わしたものである。図5および図6と共に説明する。映像センタ105は、CPU181と、RAMあるいはROM等の記憶媒体によって構成されるメモリ182を備えた主制御部183を有している。主制御部183は、次の各部と接続されて、これら全体の制御ならびに第1〜第Mのタクシー端末1031〜103Mの制御を行うようになっている。ここで、主制御部183に直接接続された各部は、ハードウェアで構成されていてもよいし、少なくともこれらの一部はCPU181が制御プログラムを実行することによって機能的に実現するソフトウェアで構成されていてもよい。
通信制御部191は、第1〜第Mのタクシー端末1031〜103Mとタクシー会社本部106、警察107および入力端末108との通信制御機能を有している。データバンク部192は、過去に発生したすべてのタクシー事件の関係詳細情報の格納と、第1〜第Mのタクシー端末1031〜103Mから送られてくる映像データおよび音声データの格納を行う。
タクシー端末監視処理部193は、第1〜第Mのタクシー端末1031〜103Mから開始通知を受けた時点を起点として解除通知が行われるまでの間、監視体制に入るようになっている。第1〜第Mのタクシー端末1031〜103Mから送られてくる映像データおよび音声データをデータバンク部192に保存する処理と、乗客の乗車時間監視と、緊急ボタン137の押下、急ブレーキ検知スイッチ143および急ハンドブレーキ検知スイッチ144による急ブレーキおよび急ハンドブレーキの監視処理が行われる。ここで急ブレーキ検知スイッチ143は、図示しないフットブレーキに取り付けたスイッチであり、急激な力がかかったときのみ検知するようになっている。急ハンドブレーキ検知スイッチ144は、図示しないハンドブレーキに取り付けたスイッチであり、急激な力がかかったときのみ検知するようになっている。
犯罪発生率判定部194は、第1のタクシー1021に乗客が乗車するたびに、乗車環境データと、タクシー事件過去データとを比較検証して、犯罪発生率を予想する。そしてこれを、ソフト設定表に代入する。ここで乗車環境とは、第1のタクシー1021に乗客が乗車する乗車時刻、乗車場所、行き先の地名と土地区分、行き先地までの走行予想時間、強奪事件の未解決有無、天候、季節、乗客の黙秘時間、客数、性別、手荷物有無といった乗車に関係した環境をいう。
図9は、映像センタに備わったソフト設定表の一例を示したものである。ソフト設定表201は、犯罪要因項目ごとに実際の乗客の情報と過去に生じた犯罪発生率が対比して設定されるようになっている。そして、これらの犯罪要因項目の犯罪発生率の総和をとることで、犯罪に至る危険度としての犯罪発生率の合計が算出されるようになっている。図9に示した例では、乗客が男でかつ一人であるということが過去の犯罪発生率から犯罪の起きる危険度を高めており、危険度の総合判定が「高強」という高いレベルに判定されている。危険度の総合判定については、次に説明する。
図8に戻って説明を続ける。総合判定処理部195は、ソフト設定表201に代入された犯罪発生率から9段階の危険度を作成する。危険度の9段階とは、高強、高中、高弱、中強、中中、中弱、低強、低中、低弱である。このような危険度の各段階は、前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150の撮影周期および撮影時間に関係するようになっている。すなわち総合判定処理部195が危険度が高くて強いと判定した場合には、前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150が頻繁に車内の撮影を行い、かつ1回当たりの撮影時間が長時間となる。前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150の撮影と同期してマイクロフォン152による集音も行われる。したがって、映像データを映像センタ105に送信するタイミングで、音声データも映像センタ105に送信される。
緊急処理部196は、第1〜第Mのタクシー端末1031〜103Mから緊急ボタン137の押下の通知を受けた場合に起動するようになっている。緊急処理部196が起動すると、タクシー会社本部106と警察107へ通報が行われる。これと共に、第1〜第Mのタクシー端末1031〜103Mのうちの該当するものから送られてくる映像データと音声データがデータバンク部192に保存される。
乗客認識部197は、第1〜第Mのタクシー端末1031〜103Mから危険度に応じて送られてくる映像を毎回チェックし、乗客の姿の有無を判別する。乗客の姿が確認できた時点で、第1〜第Mのタクシー端末1031〜103Mのうちの該当するタクシーは、順調に業務遂行していると判断する。この映像センタ105による自動監視では、乗客の姿が確認できれば良しとするようにしている。
図10は、第1のタクシーにおける運転手および主要部品の配置状況を示したものである。第1のタクシー1021のルーフには非常灯161が取り付けられている。また、車内の運転席221の背もたれ222の後部座席223に面した側にはLCD表示盤166が取り付けられている。後部座席223は主に乗客(図示せず)が座るもので、出入りに使用する後部ドア224にはドアオープン検知スイッチ142が取り付けられている。運転席221は運転手225が座るもので、その近傍に配置されたハンドブレーキ226には、急ハンドブレーキ検知スイッチ144が取り付けられている。更に運転手225が足によって操作するブレーキ227には、急ブレーキ検知スイッチ143が取り付けられている。
運転席221の前方の図示しないダッシュボードには操作盤133が取り付けられている。主制御部123は操作盤133の操作やランプ表示を制御するようになっている。運転席221のほぼ真上の天井部分にはスピーカ163が取り付けられている。その後方には後部座席カメラ150とマイクロフォン152が配置されている。後部座席カメラ150は広角カメラであり、後部座席223に座った乗客の様子を映像で捉えるようになっている。この図では前方撮影カメラ149の位置を示していない。前方撮影カメラ149は、後部座席カメラ150とほぼ同一位置で前方を向いて配置されている。
前方撮影カメラ149は、運転席221と図示しない助手席を背後から撮影するようになっている。これは、第1のタクシー1021の前方の障害物に対する運転手225の運転行動も監視しつつ、乗客との間でトラブルが発生したときの画像も撮影できるようにするためである。もちろん、運転手225の運転行動の監視を行わないでよい場合には、前方撮影カメラ149を車内の前方にずらして配置し、運転手225を前方から撮影するようにしてもよいし、魚眼レンズを使用して1台のカメラで車内全体を撮影することも可能である。
図11は、第1のタクシーの車内での映像に関するデータ処理の様子を表わしたものである。図5および図6と共に説明する。
本実施の形態の車両内犯罪防止システム100で、状態検知部141は、乗客の乗り入れのために後部ドア224が開くと、公開空間処理部146にこれを通知し、主制御部123は前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150をそれぞれ所定時間撮影させるようになっている。また、運転手が急ブレーキをかけるためにハンドブレーキ226あるいはブレーキ227を操作すると、この場合にも異常自体が発生した可能性があるので、状態検知部141は公開空間処理部146にこれを通知し、主制御部123は前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150をそれぞれ所定時間撮影させるようになっている。緊急ボタン137が押された場合には緊急事態が発生した可能性が大である。そこで、この場合には状態検知部141が公開空間処理部146にこれを通知し、主制御部123は前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150を、特に時間の制限なく撮影させる。この場合の撮影は、図6に示した解除ボタン138が押されるまで、続行されることになる。
以上説明したような予め定めた事態が発生した場合、前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150は主制御部123の指示によって強制的に撮影を開始する。そして、これにより取得された映像データは映像メモリ領域125に格納されて、ここから図示しない映像センタ105に送られることになる。
これ以外の場合、車両内犯罪防止システム100は、公開空間処理部146に入力される犯罪発生率241を示すデータに基づいて、図9で説明したソフト設定表201から危険度の総合判定を行う。具体的には、たとえば過去に発生したタクシー事件のデータ242のすべてを、データバンク部192から関係詳細情報として参照して、乗客の特徴243と車両の走行環境要因244から犯罪発生率241を求める。
ここで乗客の特徴243は、本実施の形態で性別、客数、荷物の有無から特定する。年齢、国籍、服装の状態等の他の要因を適宜組み合わせてもよい。車両の走行環境要因244については、第1のタクシー1021の走行する、あるいは乗客の乗降する地域と犯罪発生の関係、地名と犯罪発生の関係、土地区分と犯罪発生の関係、走行時間と犯罪発生の関係、未解決事件と犯罪発生の関係、運行が行われた時刻と犯罪発生の関係、天候と犯罪発生の関係、季節と犯罪発生の関係、乗客と運転手225(図10)あるいは乗客同士の会話の沈黙時間と犯罪発生の関係といったものを挙げることができる。
主制御部123は、公開空間処理部146が取得した犯罪発生率241を示すデータを基にして、危険度に応じて、前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150の撮影が行われる周期と、1回当たりの撮影時間を設定する。これにより、犯罪発生の危険度が高いほど、画像の記録情報密度が高くなることになる。もちろん、このような犯罪の待機状態で、たとえば緊急ボタン137が押下されるようなことがあれば、緊急事態が発生した可能性が大となり、その時点からの撮影が開始されることはもちろんである。
図12は、以上説明した前方撮影カメラおよび後部座席カメラの撮影タイミングの一例を示したものである。図10および図11と共に説明する。
この図12に示した例では、時刻t1に後部ドア224がオープンになったことがドアオープン検知スイッチ142で検知されたので、前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150が一例として30秒間、撮影を行う。これから任意の時間が経過した時刻t2にハンドブレーキ226あるいはブレーキ227の操作で急ブレーキがかけられ、急ハンドブレーキ検知スイッチ144あるいは急ブレーキ検知スイッチ143で急ブレーキが検知されたとする。この場合にも前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150が一例として30秒間、撮影を行う。
その後、緊急事態が発生しない状態では、犯罪発生率241を示すデータを基にした危険度に応じて、前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150の撮影が行われる周期と1回当たりの撮影時間がソフトウェアによって設定(ソフト設定)される。これにより、たとえば時刻t3に、危険度に応じた時間(XX秒)で前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150による撮影が行われる。この例では、その後の時刻t4に急ブレーキが検知されたので、その場合には前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150が30秒間、撮影を行う。この後、ソフト設定によって定められた時刻t5に、危険度に応じた時間(XX秒)で前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150による撮影が行われる。以下同様に、緊急事態が発生しない状態では、危険度に応じて、前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150の撮影が撮影周期と撮影時間を定めて行われる。
図12に示した例では、このようにして第1のタクシー1021の運転が行われている状態で時刻t6に緊急ボタン137が押されている。すると、この時点から前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150による撮影が開始される。この場合には緊急事態が発生した可能性が大である。そこで、主制御部123は前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150を、特に時間の制限なく撮影させる。この場合、図6に示した解除ボタン138が押されるまで、撮影が続行される。解除ボタン138が押されれば、それ以後は、ソフト設定によって定められた撮影周期と撮影時間で前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150による撮影が行われることはもちろんである。
図11および図12では、前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150の撮影による画像データの処理について説明したが、図5に示したマイクロフォン152から採取される音声データについても同様の処理が可能である。ただし、図5に示す音声メモリ領域126に格納される音声データについては、画像データと比較すると単位時間当たりのデータ量が少なくて済む。したがって、第1のタクシー1021が乗客を乗車させている間、録音期間を制限することなく録音を行うようにしてもよい。
図13は、本実施の形態の車両内犯罪防止システムで各タクシーの情報が必要個所に伝達される様子を表わしたものである。図5で説明したように車両内犯罪防止システム100は第1〜第Mのタクシー1021〜102Mで構成されている。これら第1〜第Mのタクシー1021〜102Mが、第1〜第Mのタクシー端末1031〜103Mを用いて映像センタ105と通信し、必要な映像データおよび音声データを映像センタ105側に送信する。映像センタ105は、犯罪通報や犯罪の認定の入力を行う所定の入力端末108の指示によって、本来秘密にすべきこれらの映像データおよび音声データを映像センタ105からタクシー会社本部106や警察107に開示する。入力端末108は、タクシー会社本部106や警察107あるいは図示しない裁判所に存在する場合もある。なお、乗客が乗車した時点の所定の映像データおよび音声データは乗車の確認のために映像センタ105からタクシー会社本部106に自動的に通知される。
以上、車両内犯罪防止システム100の構成を中心として説明したが、次にシステムの動作を詳細に説明する。
図14は、第1のタクシー端末側における第1のタクシーについての監視の開始および終了処理の様子を表わしたものであり、図15は映像センタ側での監視状態の設定と解除に関する処理の様子を表わしたものである。図5〜図7と共に説明する。
第1のタクシー端末1031の開始ボタン134が押されると(図14ステップS301:Y)、開始処理部132は映像センタ105に開始宣言を送信する(ステップS302)。そして、映像センタ105から開始ボタン134のランプ点灯を指示するための開始点灯指示が送られてくるのを待機する(ステップS303)。
一方、映像センタ105側では、第1〜第Mのタクシー端末1031〜103Mのいずれかから監視のための開始宣言が受信されるか(図15ステップS321)と、監視の終了のための終了宣言が受信されるか(ステップS322)を待機している。第1のタクシー端末1031から開始宣言が送られてくると(ステップS321:Y)、この第1のタクシー端末1031を監視状態に置く設定を行う(ステップS323)。そして、この処理が終了すると、開始ボタン134のランプ点灯を行わせるために開始点灯指示を第1のタクシー端末1031に送信する(ステップS324)。そして、再びステップS321およびステップS322の処理を待機する状態に戻る(リターン)。
ステップS324の開始点灯指示を行うとき、映像センタ105は第1のタクシー端末1031の前回の乗客乗車時の危険度を読み出して、これを暫定的な危険度として第1のタクシー端末1031に指示する。第1のタクシー端末1031が初回の使用時の場合のように前回の乗客乗車時の危険度の記録が映像センタ105に存在しない場合には、危険度について予め定めた初期設定値を第1のタクシー端末1031に送信する。
図14に戻って説明を続ける。第1のタクシー端末1031は、映像センタ105から開始点灯指示が送られてきたら(ステップS303:Y)、開始ボタン134のランプ点灯を実行する(ステップS304)。これにより、運転手225(図10)は、第1のタクシー1021が監視状態に置かれたことを知ることができる。この後、第1のタクシー1021は終了ボタン171が押されない限り(ステップS305:N)、映像センタ105と監視処理を実行することになる(ステップS306)。なお、第1のタクシー端末1031は、開始点灯指示と共に映像センタ105から送られてきた危険度を暫定的なデータとしてメモリ122の図示しない作業用メモリ領域の危険度格納部位に格納する。
運転手225(図10)等の者が間違って開始ボタン134を押した場合や一日のタクシー業務が終了した時点で、終了ボタン171が押下される(ステップS305:Y)。すると、状態監視処理部135は映像センタ105に終了宣言を送信する(ステップS307)。
図15に戻って説明を続ける。映像センタ105は終了宣言を受信すると(ステップS322:Y)、終了宣言を送信してきた第1のタクシー端末1031を特定し、この特定した第1のタクシー端末1031を監視状態から解除する(ステップS325)。そして、この第1のタクシー端末1031に対して開始ボタン134のランプ消灯を行わせるために開始消灯指示を送信して(ステップS326)、再びステップS321およびステップS322の処理を待機する状態に戻る(リターン)。
再び図14に戻って説明を続ける。第1のタクシー端末1031は、映像センタ105から開始消灯指示が送られてきたら(ステップS308:Y)、開始ボタン134の点灯しているランプを消灯させて(ステップS309)、一連の処理を終了させる(エンド)。運転手225(図10)は開始ボタン134が消灯したことによって映像センタ105の監視が終了したことを知ることができる。
図16は、第1のタクシー端末側の監視処理の様子を表わしたものである。図5および図6と共に説明する。
第1のタクシー端末1031は、図14のステップS306による監視処理が開始すると、以下に示すような各処理の発生をそれぞれ待機して、発生時点で対応する処理を実行する。
まず、ドアオープン検知スイッチ142によって第1のタクシー1021の後部ドア224(図10)が開いたことが検知された場合には(ステップS341:Y)、乗客が乗車する可能性がある。そこで、これに対応できるドアオープン処理が実行される(ステップS342)。また、急ブレーキ検知スイッチ143あるいは急ハンドブレーキ検知スイッチ144による急ブレーキあるいは急ハンドブレーキ(以下、適宜「急ブレーキ」と略称する。)が検知された場合には(ステップS343:Y)、急ブレーキ処理が実行される(ステップS344)。
緊急ボタン137の押下が検出された場合には(ステップS345:Y)、緊急ボタン処理が実行される(ステップS346)。また、解除ボタン138が押下された場合には(ステップS347:Y)、解除ボタン処理が実行される(ステップS348)。
ところで、非常事態が発生していない通常状態の場合、撮影処理部156は映像センタ105から送られてきてメモリ122の前記した危険度格納部位に格納されている危険度に従った撮影タイミングの到来を監視している。また、乗客が乗車して、第1のタクシー1021の走行が開始した後は、走行環境に応じて映像センタ105が判別した危険度を基にして撮影処理部156は撮影タイミングの到来を監視している。このような非常事態以外の通常状態で撮影タイミングが到来したら(ステップS349:Y)、通常撮影処理が実行される(ステップS350)。
一方、定期送信処理部157は、メモリ122の映像メモリ領域125および音声メモリ領域126に格納されているデータを映像センタ105に送信するタイミングの到来を監視している。定期送信タイミングが到来すると(ステップS351:Y)、映像センタ105に映像データおよび音声データを送信する処理を行う(ステップS352)。たとえば、ドアオープン検知スイッチ142が後部ドア224(図10)のオープンを検知して乗客が乗車したとする。運転手225(図10)が乗客についてのデータを入力する以前の状態で、乗車の映像は後に説明するようにメモリ122の映像メモリ領域125に格納されるが、この時点でこれが映像センタ105に送られることはない。映像センタ105に映像データが送られるのは、メモリ122の前記した危険度格納部位に格納されている初期設定された危険度に伴って定期送信タイミングが到来したときとなる。
図16で、映像センタ105から第1のタクシー端末1031にデータが送られてきたとき(ステップS353:Y)、通信制御部131はその受信データに合わせたデータ処理を実行する(ステップS354)。たとえば前記したように第1のタクシー端末1031が走行環境を映像センタ105に通知した場合には、映像センタ105がこれを基にして第1のタクシー1021の走行の危険度を判別してこれを送信してくる。そこで第1のタクシー端末1031はこれをメモリ122の前記した危険度格納部位に上書きすると共に、ステップS351で説明した定期送信タイミングを設定したり、前方撮影カメラ149と後部座席カメラ150の撮影周期および撮影時間を設定することになる。
図17は、第1のタクシー端末側のドアオープン処理の様子を表わしたものである。図5〜図7および図10と共に説明する。
第1のタクシー端末1031は、図16のステップS342に示したドアオープン処理が開始すると、前方撮影カメラ149と後部座席カメラ150が、図12でも説明したように映像を一例として30秒間撮影し、これをメモリ122の映像メモリ領域125に保存する(ステップS371)。そして、LCD表示盤166に「本タクシー内は公開空間です」という文章と、これに続けて「撮影映像は映像センタにて厳重保管します。具体的事件発生および警察の要請が無い限り、そのまま非公開で保存されます」という文章を表示する(ステップS372)。これは、第1のタクシー1021の内部空間が、前方撮影カメラ149と後部座席カメラ150の撮影やマイクロフォン152の集音により、限定的に公開されうる空間であることを乗客に知らせ、理解を求めると共に密室でない安心感を与える。LCD表示盤166の表示と併せて音声による同様の内容の通知が行われてもよい。
この後、運転手225がルートに関する音声入力を行ったり、乗客に関するデータを操作盤133を操作して入力することになるので、そのための待機モードとなる(ステップS373、ステップS374)。このモードで運転手225がマイクロフォン152から乗車地と行き先を音声入力すると(ステップS373:Y)、音声認識部153がこれらの地名を音声認識して、乗車地名と行き先名を乗車地名表示盤154と行き先名表示盤155にそれぞれ表示する。音声認識が不可能であったものは乗車地名表示盤154あるいは行き先名表示盤155に表示されない。また、間違って認識されたものは間違った地名として表示される。図示しない運賃メータが倒されてその作動が開始するまでの間(ステップS376:N)、運転手225は音声による地名の入力を訂正することができる。もちろん、乗車地名表示盤154に表示する乗車地名は、第1のタクシー端末1031がGPS(Global Positioning System)機能を備えている場合、現在地の位置データの取得が可能であるため、入力を省略することができる。
運転手225は操作盤133の開始ボタン134、性別ボタン167、客数ボタン168および荷物ボタン169を順に押すことで(ステップS374:Y)、乗客の特徴を入力することができる(ステップS377)。これらの入力も運賃メータが倒されてその作動が開始するまでの間は(ステップS376:N)、訂正が可能である。運賃メータが倒されると(ステップS376:Y)、ステップS375およびステップS377で入力されたデータが保存される(ステップS378)。
この後、マイクロフォン152を用いた車内の音声の録音とこれによって得られた音声データの圧縮処理が行われる(ステップS379)。圧縮した音声データはメモリ122の音声メモリ領域126に格納される。これ以後は、既に説明したように定期送信処理部157が、メモリ122の映像メモリ領域125および音声メモリ領域126に格納されているデータを定期的に映像センタ105に送信する。このとき、送信されるデータには、データ作成の日時、第1のタクシー1021の識別番号、乗車地および行き先名が付加されている。
このように運転手225は乗車地名と行き先を音声で確認(入力)し、操作盤133の4つのボタンを押すだけで、走行環境に関するデータの入力を終了して、第1のタクシー1021を発車させることができる。これ以降の車両内犯罪防止システム100の動作は自動化されている。
図18は、映像センタ側の乗客不在チェックに関する処理を表わしたものである。図5、図6、図8および図10と共に説明する。
映像センタ105は第1のタクシー端末1031の定期送信処理部157から定期的に送信される映像データのうちのドアオープン検知スイッチ142の検知による30秒間の映像を受信したら(ステップS391:Y)、乗客認識部197で車内に乗客が通常座っている位置に存在するか、その位置に不在であるかを判別する(ステップS392)。その結果、乗客が不在と判別されなかったかった場合には(N)、処理を終了する(エンド)。乗客が不在と判別された場合には(ステップS393:Y)、何らかの事件が発生した可能性がある。そこで場合にはタクシー会社本部106にドアオープン検知スイッチ142の検知による30秒間の映像の映像データとこれに対応する音声データを、乗客不在通知に添付して送信する(ステップS394)。
この後、タクシー会社本部106からこれに関する指示が送られてきたら(ステップS395:Y)、その指示が継続してチェックを必要とする旨のものであるかを判別する(ステップS396)。たとえば乗客が目的地で後部座席223から降車したような場合には、すぐ乗車する別の乗客がいない限り、後部座席223は空席となる。このような正常な場合、タクシー会社本部106は継続チェックの要請はしない。そこで、継続チェックの要請がなかった場合には(ステップS396:N)、映像センタ105の処理は終了する(エンド)。
これに対して継続チェックの要請があった場合には(ステップS396:Y)、第1のタクシー端末1031から次に送られてきた映像データと音声データをタクシー会社本部106に送信する(ステップS397)。この時点で次の映像データと音声データが送られてきていない場合には、受信を待機してこれらのデータを送信することになる。そして、ステップS395の処理に戻ることになる。
なお、ステップS392およびステップS393では乗客が不在であるかどうかをチェックしたが、乗客が異常に動き回っているというような後部座席223に座った乗客の通常の画像と異なる画像のチェックを行うようにしてもよい。
図19は、図16のステップS344で示したタクシー端末側の急ブレーキ処理の具体的な内容を表わしたものである。図5および図6と共に説明する。
第1のタクシー端末1031は、前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150をそれぞれ30秒間撮影状態として映像データを映像メモリ領域125に格納する。また、音声データは音声メモリ領域126に格納する(ステップS401)。これらのデータは第1のタクシー端末1031から映像センタ105へ緊急送信される(ステップS402)。このとき、送信されるデータには、データ作成の日時と第1のタクシー1021の識別番号および急ブレーキが発生した旨の注記が付加される。
第1のタクシー端末1031は、次に、「急ブレーキ事態発生」の音声案内をスピーカ163から車内に流して(ステップS403)、処理を終了する(エンド)。もちろん、音声案内のタイミングがずれて感じられるような場合には、この音声案内をステップS401の処理の中に含めてもよい。
図20は、映像センタによる急ブレーキチェック処理の内容を表わしたものである。図5、図6、図8および図10と共に説明する。
映像センタ105は第1のタクシー端末1031から急ブレーキ時の映像データ等のデータが受信されたら(ステップS421:Y)、乗客認識部197で車内に乗客が存在するかを判別する(ステップS422)。その結果、乗客が不在と判別された場合には(ステップS423:Y)、乗客に危害が発生するおそれはない。そこで、この場合には処理をそのまま終了する(エンド)。
乗客が存在すると確認された場合には(ステップS423:N)、タクシー会社本部106にステップS421で受信したデータを、急ブレーキ通知に添付して送信する(ステップS424)。
この後、タクシー会社本部106からこれに関する指示が送られてきたら(ステップS425:Y)、その指示が継続してチェックを必要とする旨のものであるかを判別する(ステップS426)。継続チェックの要請がなかった場合には(ステップS426:N)、映像センタ105の処理は終了する(エンド)。
これに対して継続チェックの要請があった場合には(ステップS426:Y)、第1のタクシー端末1031から次に送られてきた映像データと音声データをタクシー会社本部106に送信する(ステップS427)。そして、ステップS425の処理に戻ることになる。
なお、ステップS422およびステップS423では乗客が不在であるかどうかをチェックしたが、乗客が後部座席223以外の場所に移動している可能性を画像からチェックするようにしてもよい。
図21は、図16のステップS346で示したタクシー端末側の緊急ボタン処理の具体的な内容を表わしたものである。図5および図6と共に説明する。
第1のタクシー端末1031の非常事態処理部158は、緊急ボタン137が押されると、映像センタ105を経由してタクシー会社本部106に緊急通知を送付する(ステップS441)。そして、地域の目で犯罪を防止するために地域の目サポート体制に入る。具体的には、非常灯161を点灯させ、図示しないスピーカを用いて緊急のヘルプコールを車外に発信する(ステップS442)。そして、緊急ボタン137の押下時点から記録が開始している映像データと音声データに、データ作成の日時と第1のタクシー1021の識別番号および緊急事態が発生した旨の注記を付加して、これ緊急通知文として映像センタ105経由でタクシー会社本部106に送出する(ステップS443)。この緊急時の緊急通知文の送信は、解除ボタン138が押されるまで継続的に行われることになる。
図22は、映像センタによる緊急ボタン処理の内容を表わしたものである。図5、図6および図8と共に説明する。
映像センタ105は、図21のステップS441に基づく緊急通知を第1のタクシー端末1031から受信すると(ステップS461:Y)、この緊急通知をタクシー会社本部106と警察107に転送して(ステップS462)、処理を待機状態に戻す(リターン)。この緊急通知自体は乗客の画像が含まれていないので、これによって乗客個人のプライバシが侵害されることはない。タクシー会社本部106と警察107は、この緊急通知を犯罪に発展する可能性がある情報として、保存することになる。
映像センタ105は、図21のステップS443に基づく緊急通知文が送られてきたら(ステップS463:Y)、これを図示しない磁気ディスク等の大容量の記憶装置に順次保存して(ステップS464)、処理を待機状態に戻す(リターン)。このとき、たとえば第1のタクシー端末1031から順次送られてくる緊急通知文は、1カ所にまとめて保存するようにしてもよい。緊急通知文は映像データと音声データを含んでいるので、個人のプライバシが侵害されないように、映像センタ105内部で何人もその内容を再生することはできない。
裁判所等の特別の入力端末108からデータの送信要求が受信された場合には(ステップS465:Y)、要求された緊急通知文が映像センタ105から指定した宛先としてのタクシー会社本部106や警察107に送信されて(ステップS466)、処理を待機状態に戻す(リターン)。したがって、犯罪が起きたような場合には、必要な範囲で緊急通知文が公開されることになり、密室空間が公開空間になり得ることが犯罪の抑止力にもなる。
図23は、図16のステップ346で示した第1のタクシー端末の解除ボタン処理を表わしたものである。図5および図6と共に説明する。
第1のタクシー端末1031の非常事態処理部158は、解除ボタン138が押された場合にそれよりも短時間前に急ブレーキ検知スイッチ143あるいは急ハンドブレーキ検知スイッチ144による急ブレーキの操作の検知が行われていたかをチェックする(ステップS481)。このような判別は、急ブレーキ検知スイッチ143および急ハンドブレーキ検知スイッチ144の押下されるたびに、その時刻情報をメモリ122の図示しない作業用メモリ領域に一次保存しておくことで可能である。
急ブレーキ検知スイッチ143あるいは急ハンドブレーキ検知スイッチ144が急ブレーキを検知して短時間以内に解除ボタン138が押されていた場合には(Y)、非常事態処理部158は予め用意した音声メッセージをスピーカ163から流して急ブレーキに対して乗客にお詫びする(ステップS482)。そして、映像センタ105に対して急ブレーキ解除通知を送信して(ステップS483)、処理を終了する(エンド)。
一方、解除ボタン138が押された場合にそれよりも短時間前に急ブレーキ検知スイッチ143あるいは急ハンドブレーキ検知スイッチ144による急ブレーキの操作の検知が行われていなかった場合には(ステップS481:N)、解除ボタン138が押されたよりも短時間前に緊急ボタン137が押されたことになる。そこで、この場合には予め用意した音声メッセージをスピーカ163から流して緊急ボタン137の押下に対して乗客にお詫びする(ステップS484)。もちろん、緊急事態が発生した場合には、解除ボタン138がこの時点で押されることはない。緊急ボタン137が何らかのミスで押された場合が解除ボタン138が押される場合である。この場合、非常事態処理部158は、映像センタ105に対して緊急事態解除通知を送信して(ステップS485)、処理を終了する(エンド)。
図24は、映像センタによる解除ボタン処理を表わしたものである。図5、図6および図8と共に説明する。
映像センタ105の緊急処理部196は、第1〜第Mのタクシー端末1031〜103Mのいずれかから、図23のステップS483に基づく急ブレーキ解除通知を受信したら(ステップS501:Y)、乗客認識部197で車内に乗客が通常座っている位置に存在するか、その位置に不在であるかを判別する(ステップS502)。その結果、乗客が不在と判別された場合には(ステップS503:Y)、衝撃により解除ボタン138が押される等の何らかの事態が発生した可能性がある。そこでこの場合にはタクシー会社本部106に急ブレーキ検知スイッチ143あるいは急ハンドブレーキ検知スイッチ144の検知による30秒間の映像の映像データとこれに対応する音声データを、乗客不在通知に添付して送信する(ステップS504)。
この後、タクシー会社本部106からこれに関する指示が送られてきたら(ステップS505:Y)、その指示が継続してチェックを必要とする旨のものであるかを判別する(ステップS506)。この結果として乗客に怪我がないような場合、タクシー会社本部106は継続チェックの要請はしない。そこで、継続チェックの要請がなかった場合には(ステップS506:N)、映像センタ105の処理は終了する(エンド)。
これに対して継続チェックの要請があった場合には(ステップS506:Y)、第1のタクシー端末1031から次に送られてきた映像データと音声データをタクシー会社本部106に送信する(ステップS507)。この時点で次の映像データと音声データが送られてきていない場合には、受信を待機してこれらのデータを送信することになる。そして、ステップS505の処理に戻ることになる。
車内に乗客が通常座っている位置に存在する場合には(ステップS503:N)、乗客が正常であると判別して一連の処理を終了する(エンド)。
一方、映像センタ105の緊急処理部196は、第1〜第Mのタクシー端末1031〜103Mのいずれかから、図23のステップS485に基づく緊急事態解除通知を受信したら(ステップS501:N、ステップS508:Y)、緊急事態が解消したものとして、図22のステップS464で保存した緊急通知文のうちの該当するものを消去する(ステップS509)。これは、個人のプライバシを守る上で必要である。
ただし、車両内犯罪防止システムの内容によっては、犯人が解除ボタン138を押して、犯行に関する映像データや音声データの送信を停止させるおそれがある。そこで、これを配慮したシステムでは、緊急事態の解除の指示をタクシー会社本部106や警察107側でのみ行えるようにして、操作盤133の如何なる操作が行われたとしても緊急事態の解除は行われず、映像センタ105に対する映像データや音声データの送信が引き続き行われるようにしてもよい。
次に、図16のステップS350で示した第1のタクシー端末1031の通常撮影処理におけるカメラの撮影周期と撮影時間について説明する。第1のタクシー端末1031では、これらを基にしてステップS349の通常撮影タイミングを決定しているからである。本実施の形態の車両内犯罪防止システム100では、第1〜第Mのタクシー端末1031〜103Mの個々について、乗客が乗車して行き先まで走行するたびに犯罪発生率を算出している。映像センタ105は、犯罪発生率を基にして危険度を判定する。
危険度は、図9に示したソフト設定表201に代入された「乗車場所」、「行き先」、「土地区分」等の11個の判定結果の中で、一番高い犯罪発生率の数値によって、高、中、低の3段階に区分する。これを第1危険度による区分とする。第1危険度はカメラの撮影回数(周期)に関係する。第1危険度は、次のように区分される。
「高」……犯罪発生率が0.6以上
「中」……犯罪発生率が0.3以上0.6未満
「低」……犯罪発生率が0.3未満
本実施の形態では、カメラの撮影時間に関係する第2危険度も算出するようにしている。第2危険度は、「乗車場所」、「行き先」、「土地区分」等の11個の判定結果における犯罪発生率の合計値で区分されて、「強」、「中」、「弱」のいずれかとなる。
「強」……犯罪発生率の合計値が3.3以上
「中」……犯罪発生率の合計値が1.0以上3.3未満
「弱」……犯罪発生率の合計値が1.0未満
したがって、危険度は第1危険度と第2危険度の組み合わせとなり、次のように全部で9段階となる。
高強、高中、高弱、中強、中中、中弱、低強、低中、低弱
映像センタ105は、たとえば第1のタクシー端末1031から走行環境を収集して、第1のタクシー1021の9段階で表わされた危険度を判定する。そしてこれを第1のタクシー端末1031に通知することになる。
図25は、第1のタクシー端末が判定結果の1つとして算出する沈黙時間の計測処理の様子を表わしたものである。図5および図6と共に説明する。
第1のタクシー端末1031のマイクロフォン152は車内の音を採取しており、予め定めたレベル以上の音が入力されると(ステップS521:Y)、これが車内の乗客あるいは運転手225(図10参照)の発した音声であるか、それ以外の音であるかを判別する(ステップS522)。たとえばエンジンの音や警報の音あるいは車内で流している音楽は「それ以外の音」と判別される。ラジオやタクシー無線によって車内に乗客や運転手以外の音声が流れる場合があるが、これらは特定のスピーカから流れるため、マイクロフォン152の位置を工夫するか、マイクロフォン152を複数配置して、入力する音声の差分を求める等の処理を行うことにより、音源の位置を特定し、車内で発生した音声であるかの判別が可能である。
マイクロフォン152により入力された音が車内の音声であると判別された場合には(ステップS522:Y)、図示しない時計回路から現在の時刻情報を読み出して、これを音声入力時刻情報としてメモリ122の作業用メモリ領域に格納して(ステップS523)、処理を待機状態に戻す(リターン)。このとき、この領域に格納されている他の音声入力時刻情報があれば、これと時系列で追加されるように今回の音声入力時刻情報の格納が行われる。
一方、第1のタクシー端末1031は定期送信処理部157によって、映像センタ105へ映像データや音声データの定期的な送信を行っている。この映像センタ105への送信の時刻の直前の時刻が到来すると(ステップS524:Y)、第1のタクシー端末1031はメモリ122の作業用メモリ領域に格納された一連の音声入力時刻情報を読み出す。これらの音声入力時刻情報は、基となる音声が連続的に発声されているとしても、ステップS521の音入力のサンプリング周期に応じて離散的な時刻の列となっている。したがって、状態監視処理部135は、一連の音声入力時刻情報の中でサンプリング周期よりも所定時間間隔以上広い時間間隔で音声入力時刻情報が欠けて記録されている個所をピックアップして、両端に位置する音声入力時刻情報の時間差をそれぞれの沈黙時間として抽出する。そして、これらの沈黙時間を沈黙時間の報告用データとする(ステップS525)。
このようにして今回の沈黙時間の報告用データを作成したら、メモリ122の作業用メモリ領域に格納された一連の音声入力時刻情報を不要なデータとして消去する(ステップS526)。これ以後は、再びステップS521あるいはステップS524の処理を待機する状態に戻る(リターン)。
図26は、映像センタにおける犯罪発生率の判定処理の様子を表わしたものである。ここでは、図6に示す第1のタクシー端末1031の定期送信処理部157から定期的に送られてくるデータを基にして犯罪発生率を判定する様子を図5、図6、図8および図9を基にして説明する。
映像センタ105の犯罪発生率判定部194は、たとえば第1のタクシー1021から犯罪発生率を算出するためのデータを受信すると(ステップS541:Y)、これが同一の乗客の最初のデータであるかをチェックする(ステップS542)。同一の乗客の最初のデータである場合には(Y)、第1のタクシー1021が配置されている地域(たとえば東北とか、関東といった比較的広いエリア)別の犯罪履歴のうちの該当する地域の犯罪履歴を照合して、これをソフト設定表201に代入する(ステップS543)。すなわち、ステップS543では該当する地域で犯罪履歴が無いか確認して、犯罪環境がある限り繰り返される例を逆に利用するようにしている。履歴の有無がソフト設定表201に設定される。
犯罪発生率判定部194は、次に、行き先の土地区分別の犯罪発生率をソフト設定表201に代入する(ステップS544)。過去の事例では、犯人が逃げやすい住宅地が犯罪数の66%を占めている。
犯罪発生率判定部194は、次に、乗車地から行き先までの予想される走行時間別の犯罪発生率をソフト設定表201に代入する(ステップS545)。過去に起きた犯罪では20分が最も高い犯罪発生率である。犯罪発生率の予想が高い場合でも、20分以内の早めに、前方撮影カメラ149、後部座席カメラ150およびマイクロフォン152の収集したデータが公開され得ることによる「人の目」あるいは「地域の目」の存在を乗客や運転手225(図10)に認知させることで犯罪防止に役立つ場合が多い。
犯罪発生率判定部194は、次に、全国でタクシーに関する強奪事件の未解決数を確認し、ソフト設定表201に代入する(ステップS546)。タクシーに関する強奪事件の未解決数が1件でもあれば、音声案内とLCD表示盤166を使ってタクシーに関する強奪事件への捜査協力依頼を行って、乗客や運転手225をけん制する。
犯罪発生率判定部194は、次に、乗車時刻別の犯罪発生率をソフト設定表201に代入する(ステップS547)。夜9時から午前6時までが78%の犯罪発生率である。密室と暗がりの逃げやすい環境が繰り返しの犯罪要因である。そこで特にこの環境での犯罪の発生を防止するように音声案内やLCD表示盤166による表示を行う。これらの音声案内やLCD表示盤166による表示は時間によって内容を変えるのが効果的である。
犯罪発生率判定部194は、次に、天候別犯罪発生率をソフト設定表201に代入する(ステップS548)。また、次のステップS549で季節別犯罪発生率をソフト設定表201に代入する。更に次のステップS550で、乗客が第1のタクシー1021に乗り込んだ時点から運転手225や乗客同士の会話が無い沈黙時間別の犯罪発生率をソフト設定表201に代入する。更に次のステップS551で、客数別の犯罪発生率をソフト設定表201に代入する。
更に次のステップS552で、乗客の手荷物の有無別の犯罪発生率をソフト設定表201に代入する。犯罪に凶器を使うのが80.1%であるので、乗客の手荷物の有無も犯罪に大きく関係する。第1のタクシー1021が乗客と運転手225を場所的に仕切る防犯仕切り板を備えている場合には、その特性に応じてソフト設定表201に代入する値を変えてもよい。防犯仕切り板が比較的安価なものであれば、犯人の凶器使用で防犯の役に立たないことになる。
更に次のステップS553で、性別による犯罪発生率をソフト設定表201に代入する。過去の事例では乗客が男一人の場合の犯罪発生率は99%である。ここでも犯罪を抑制するべく、音声案内とLCD表示盤166の内容を考慮する。
以上のようにして現時点での最新の資料をソフト設定表201に組み込んだら、ステップS541で受信した第1のタクシー端末1031から送られてきたデータを基にして各項目を判定して、それぞれの値を求める(ステップS554)。ただし、沈黙時間の項目については、乗客が乗車したばかりなので、その値が不明である。そこで、これについては所定のデフォルト値を採用する。このようにして乗客が乗車したときの最初の犯罪発生率の判定結果が求められる(リターン)。
これ以降の犯罪発生率の判定は、第1のタクシー1021から犯罪発生率を算出するためのデータを受信するたびに行われる(ステップS541:Y)。2回目以降のデータの受信に対しては(ステップS542:N)、ソフト設定表201の沈黙時間の項目について最新の計測結果に基づいた値に置き換えられ(ステップS555)その後ステップS554に進むことになる。
図27は、映像センタにおける危険度の判定処理の様子を表わしたものである。図5および図9を基にして説明する。
映像センタ105は、図26で説明した犯罪発生率の算出を行うと、ソフト設定表201に代入された11個の判定結果の中で、一番高い犯罪発生率の数値を抽出する(ステップS571)。そして、その値が、犯罪発生率が0.6以上の第1危険度「高」の状態であるか、0.3以上0.6未満の第1危険度「中」の状態であるか、0.3未満の第1危険度「低」の状態であるかを判定する(ステップS572)。
次に、ソフト設定表201に代入された11個の判定結果の合計値を算出する(ステップS573)。そして、この合計値が、合計値3.3以上の第2危険度「強」に該当するか、合計値1.0以上3.3未満の第2危険度「中」に該当するか、合計値1.0未満の第2危険度「弱」に該当するかを判定する(ステップS574)。このように第1危険度と第2危険度を求めて、処理を終了する(エンド)。
図28は、映像センタにおける危険度の送付処理の様子を表わしたものである。図5、図8および図9を基にして説明する。
映像センタ105は、図27で求めた第1のタクシー1021に対する第1危険度を基にして、第1のタクシー端末1031の前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150の撮影周期を決定する(ステップS591)。一例としては、第1危険度「高」の状態では120秒周期であり、第1危険度「中」の状態では360秒周期であり、第1危険度「低」の状態では720秒周期となる。
映像センタ105は、次に図27で求めた第1のタクシー1021に対する第2危険度を基にして、第1のタクシー端末1031の前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150の1回当たりの撮影時間を決定する(ステップS592)。一例としては、第2危険度「強」の場合には30秒間、第2危険度「中」の場合には15秒間、第2危険度「弱」の場合には5秒間が撮影時間となる。
以上の決定の後、通信制御部191は図27で求めた高強、高中、高弱、中強、中中、中弱、低強、低中、低弱の合計9段階で表示される危険度における第1のタクシー1021の該当する危険度と共に、前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150の撮影周期および撮影時間を第1のタクシー端末1031に送信して(ステップS593)、処理を終了する(エンド)。
なお、第1のタクシー1021が9段階の危険度を基にして独自に前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150の撮影周期および撮影時間を決定する場合には、映像センタ105からこれら撮影周期および撮影時間を送信する必要はない。また、第1のタクシー1021が前方撮影カメラ149および後部座席カメラ150の撮影周期および撮影時間のみを必要とするのであれば、危険度の送付を省略することができる。ただし、本実施の形態では9段階の危険度は危険度表示ランプ172(図7)で現在の危険度を表示するものとして使用されている。
以上説明したように本実施の形態によれば、タクシーの内部空間を密室から公開空間化した。これにより、タクシー内にできた「人の目」が、突発的な犯罪以外の場合には抑制力が働くので、タクシー内部の犯罪を大幅に減少させることができる。
また、タクシー内にできた「人の目」および「地域の目」によるサポート体制が、運転手を犯罪から守るので、タクシー乗務員が安心安全に業務を遂行することができる。もちろん乗客も安心安全にタクシーを利用することができる。特に、女性や老人が安心してタクシーを利用することができることになる。
更に事件が発生したときには、証拠となる映像データや音声データが車内に残されていたり、映像センタに蓄積されている可能性がある。このため、これらのデータを用いることで事件の早期解決を図ることができる。
また、本実施の形態では犯罪発生率を予測して、これに応じて各タクシー端末が映像データを撮影する周期および撮影時間を定め、緊急時を除いてはこれらを定期的に映像センタに送信することにした。また、危険度に応じて映像の撮影の周期および撮影時間を変化させた。このため、通信ネットワークへの接続時間や、通信データ量を危険度に応じて調整することができ、効率的かつ経済的な通信が可能であると共に、犯罪の防止との調和を図ることができる。
更に本実施の形態ではタクシー端末が取得した映像データおよび音声データを公開性のあるものとして位置付けると共に、具体的事件の発生や警察あるいは裁判所といった特定の機関からの要請が無い限り、非公開扱いとしたので、乗客や運転手のプライバシを保護することができる。
このように本実施の形態の車両内犯罪防止システムは各種の優れた効果を奏するので、このシステムを全国各地で採用することで、犯罪防止だけでなく、指名手配犯の確保または犯人の行動範囲の限定化に効果がある。また、各国がこのシステムを採用することで、国際手配人の逮捕や犯罪発生を抑制することができる。
なお、本発明ではインターネット101をネットワークとして使用したが、たとえばタクシー同士が使用する無線ネットワークのように他の通信ネットワークを使用することも可能である。
また、実施の形態では本発明をタクシーに適用する場合を説明したが、これに限るものではない。たとえばレンタカーを使用した犯罪防止または犯罪被害防止バスジャックあるいはバス内部での乗客同士の喧嘩防止といった各種の用途に本発明を適用することができることは当然である。
更に本実施の形態では犯罪に対する危険度を2種類に分けて、合計9段階で表示することにしたが、これに限定されるものではない。危険度の区分や撮影条件への反映の仕方については、各種の態様が可能であることは当然である。
更にまた本実施の形態では映像データと音声データを公開性のあるデータとして収集することにしたが、動画情報に代えて静止画情報を扱ってもよい。また、温度、照度等の物理情報を適宜付け加えることも可能である。
また、実施の形態では危険度に関するデータベースおよび危険度の算出を映像センタで行ったが、必要なデータを車両に送って車両内でこれらの処理を行うようにしてもよい。