JP2010112356A - 内燃機関のブローバイガス処理装置 - Google Patents

内燃機関のブローバイガス処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】EGRの実行時に内燃機関のオイル中でスラッジが生成されやすくなることを抑制し、そのスラッジの生成が同機関での上記オイルによる潤滑に悪影響を及ぼすことを抑制できるようにする。
【解決手段】クランクケース10から吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量に関しては、EGRの実行時には同EGRの非実行時に比べて多くなるよう制御される。EGRの実行時には、同EGRの非実行時に比べて、燃焼室2からクランクケース10に漏れるブローバイガス中における単位堆積当たりの水蒸気の量が多くなるものの、この水蒸気を多く含んだブローバイガスは上記ガス流量の制御を通じて多く且つ速やかに吸気通路3に戻されるようになる。更に、クランクケース10内に存在する排気成分(NOxやSOx等)の量が低減されるようにもなる。その結果、EGR実行時にクランクケース10内に存在する水蒸気の量及び排気成分の量が少なくされる。
【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関のブローバイガス処理装置に関する。
自動車等の車両に搭載される内燃機関においては、運転中に燃焼室からシリンダ内壁とピストンリングとの間を介してクランクケースに燃料成分や排気成分を含んだガス(ブローバイガス)が漏れる。燃焼室からクランクケースにブローバイガスが漏れると、同ガス中のNOxやSOxといった排気成分と、内燃機関のクランクケース内のオイルに含まれるオレフィンと、同ケース内の液状の水分とが、熱や酸により反応してオイル中にスラッジが生成されることが知られている(特許文献1参照)。こうしたスラッジが内燃機関におけるオイルの流通経路上で生成されると、内燃機関での上記オイルによる潤滑に悪影響を及ぼすことになる。
また、内燃機関の運転中に燃焼室からクランクケース内にブローバイガスが漏れることを考慮して、例えば特許文献2、3に示されるように、上記ブローバイガスをクランクケースから吸気通路に戻して処理するブローバイガス処理装置を設けることも考えられる。この場合、燃焼室からクランクケースに漏れたブローバイガスが吸気通路に戻されるため、同ガス中の排気成分等に起因した内燃機関のオイル中でのスラッジ生成の抑制が図られるようになる。
特開平2008−121474公報(段落[0002]) 特開2008−150956公報(段落[0015]、及び図1) 特開2005−248927公報(段落[0004]、[0015]、及び図1)
ところで、内燃機関としては、排気エミッションの改善を意図して排気通路の排気の一部を吸気通路に戻すEGRを実行可能なものも知られている。
こうしたEGRを実行可能な内燃機関では、同EGRの実行時には、同機関における水蒸気を含んだ排気が吸気通路に戻されて再び燃焼室に吸入されるため、EGRの非実行時と比較して、燃焼室からクランクケースに漏れるブローバイガス中の単位体積当たりの水蒸気の量が多くなる。このため、EGRが実行される内燃機関においては、EGRの行われない内燃機関である想定のもとで燃焼室からクランクケース内に漏れたブローバイガスをブローバイガス処理装置により吸気通路に戻すようにしたとしても、同ケース内に存在する水分の量が多くなることは避けられない。
そして、EGRの実行時、同EGRの非実行時と比較してクランクケース内に存在する水分の量が多くなり、それに伴って同ケース内のガスの露点温度が高くなると、同ケース内で結露が生じやすくなる。このようにクランクケース内で結露が生じやすくなると、その結露を通じて上述した排気成分(NOxやSOx等)と水分(液体)とオレフィンとの熱や酸による反応が生じやすくなり、内燃機関のオイル中にスラッジが生成されやすくなる。そして、内燃機関のオイル中でスラッジが生成されやすくなり、同機関におけるオイルの流通経路でスラッジが生成されると、内燃機関での上記オイルによる潤滑に悪影響を及ぼすことは上述したとおりである。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、EGRの実行時に内燃機関のオイル中でスラッジが生成されやすくなることを抑制し、そのスラッジの生成が同機関での上記オイルによる潤滑に悪影響を及ぼすことを抑制できる内燃機関のブローバイガス処理装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、排気の一部を吸気通路に戻すEGRを実行可能な内燃機関に適用され、同機関の燃焼室からクランクケースに漏れたブローバイガスを吸気通路に戻すとともに、その吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量を機関運転状態に基づき制御する内燃機関のブローバイガス処理装置において、前記吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量を前記EGRの実行時には同EGRの非実行時に比べて多くする制御手段を備えた。
内燃機関においては、運転中に燃焼室からクランクケースにブローバイガスが漏れると、同ガス中の排気成分(NOxやSOx等)と、内燃機関のクランクケース内のオイルに含まれるオレフィンと、同ケース内の水分(液体)とが、熱や酸により反応してオイル中にスラッジが生成されるおそれがある。こうしたオイル中のスラッジに関しては、燃焼室からクランクケースに漏れたブローバイガスをブローバイガス処理装置により吸気通路に戻すことにより、生成の抑制が図られるようになる。
ただし、内燃機関でのEGRの実行により、燃焼室からクランクケース内に漏れるブローバイガス中の単位体積当たりの水蒸気の量が多くなって同ケース内に存在する水蒸気の量が多くなると、クランクケース内のガスの露点温度が高くなって同ケース内で結露が発生しやすくなる。こうしたクランクケース内での結露を通じて、上述した排気成分(NOxやSOx等)と水分(液体)とオレフィンとの熱や酸による反応が生じやすくなり、内燃機関のオイル中にスラッジが生成されやすくなる。そして、内燃機関のオイル中にスラッジが生成されやすくなり、同機関におけるオイルの流通経路でスラッジが生成されると、それが同機関での上記オイルによる潤滑に悪影響を及ぼすこととなる。
上記構成によれば、EGRの実行時には同EGRの非実行時に比べてクランクケースから吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量が多くされ、水蒸気を多く含んだ同ブローバイガスが多く且つ速やかに吸気通路に戻されるようにしている。このため、EGRの実行に伴いクランクケース内のガスの露点温度が高くなって結露が生じることは抑制されるとともに、クランクケース内に存在する同ガス中の排気成分(NOxやSOx等)の量が低減される。従って、EGRの実行時に、内燃機関のオイルでスラッジが発生されやすくなり、同機関におけるオイルの流通経路でスラッジが生成され、それが同機関での上記オイルによる潤滑に悪影響を及ぼすことは抑制されるようになる。
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記内燃機関は、前記燃焼室から前記クランクケースに漏れたブローバイガスを前記吸気通路に戻すガス流出通路と、そのガス流出通路のガス流通面積を可変とすべく開閉動作するPCVバルブとを備え、前記PCVバルブは、機関運転状態に応じて算出される開度指令値に基づき開度調整され、それによって前記ガス流出通路を介して前記吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量を制御するものであり、前記制御手段は、前記EGRの実行時には、前記開度指令値として同EGRの非実行時の値に対し開き側に補正した値を用いることを要旨とした。
上記構成によれば、EGRの実行時、開度指令値がEGRの非実行時の値に対し開き側に補正された値とされ、その開き側への補正後の開度指令値に基づきPCVバルブの開度が開き側に調整される。従って、クランクケースからガス流出通路を介して吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量を、EGRの実行時には同EGRの非実行時に比べて的確に多くすることができるようになる。
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の発明において、前記制御手段は、前記EGRの実行時に前記吸気通路に戻される排気の量が多くなるに従って、前記EGRの実行に伴う前記クランクケースから前記吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量の増量分を徐々に多くすることを要旨とした。
EGRの実行時において内燃機関のオイルの流通経路でのスラッジ生成を抑制する観点では、クランクケースから吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量を可能な限り多くすることが好ましい。しかし、吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量を多くし過ぎると、同ブローバイガスによるクランクケースから吸気通路へのオイルの持ち去りも多くなり、同オイルによる吸気通路でのデポジットの付着も無視できない問題となる。
上記構成によれば、EGRの実行時に吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量を多くする際、同EGRの実行により吸気通路に戻される排気の量が多くなるほど、EGRの実行に伴う上記ブローバイガスのガス流量の増量分が徐々に多くなるようにされる。このようにEGR実行時に上記ガス流量を多くすることで、EGRの実行に伴い内燃機関のオイルでスラッジが生成されやすくなるという現象を的確に抑制しつつ、上記ガス流量の増量を可能な限り小さく抑えて吸気通路へのオイルの持ち去りを少なくし、そのオイルによる吸気通路でのデポジットの付着を抑えることができるようになる。
請求項4記載の発明では、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記EGRは、内燃機関の冷却水温と吸気温との少なくとも一方がそれぞれ設定された許可温度未満であるときには実行禁止されるものであり、前記制御手段は、前記冷却水温が前記許可温度未満である条件のもとでは、前記冷却水温が低温判定値未満であるときに前記吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量を大とし、前記冷却水温が前記低温判定値以上であるときに前記ガス流量を小とするものであることを要旨とした。
内燃機関の冷却水温が低いときには、燃焼室からクランクケースに漏れるブローバイガスに起因して、同機関のオイルでスラッジが生成されやすくなると推定される。上記構成によれば、冷却水温が許可温度よりも低い上記低温判定値未満であるときには、吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量が大とされる。これにより、燃焼室からクランクケース内に漏れたブローバイガスが速やかに吸気通路に送られて処理されるため、内燃機関のオイルでのスラッジの生成が的確に抑制される。一方、冷却水温が許可温度未満である条件のもと同冷却水温が低温判定値以上であるときには、吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量が小とされるため、同ガスによるクランクケースから吸気通路へのオイルの持ち去りが抑制され、そのオイルによる同通路でのデポジット付着が抑制されるようになる。
請求項5記載の発明では、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明において、前記EGRは、内燃機関の冷却水温と吸気温との少なくとも一方がそれぞれ設定された許可温度未満であるときには実行禁止されるものであり、前記制御手段は、前記冷却水温が許可温度以上になってから内燃機関の暖機が完了するまでの期間中において、前記燃焼室から前記クランクケース内に漏れたブローバイガスの同ケース内での雰囲気温度が低いときには、高いときに比べて前記吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量を多くすることを要旨とした。
冷却水温が許可温度以上になってから内燃機関の暖機が完了するまでの期間中において、クランクケース内のガスの露点温度に関しては、燃焼室からブローバイガスがクランクケース内に漏れたときの同ケース内での同ガスの雰囲気温度によっても変わり、そのときの雰囲気温度が低いほど低い値になる。このため、上記雰囲気温度が低いほど内燃機関のオイルでスラッジが生成されやすくなる傾向がある。上記構成によれば、上記期間中において、燃焼室からクランクケース内に漏れたブローバイガスの同ケース内での雰囲気温度が低いときには、高いときに比べて吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量が多くされ、燃焼室からクランクケースに漏れたブローバイガスが多く且つ速やかに吸気通路に戻される。これにより、内燃機関におけるオイルの流通経路でスラッジが生成されやすくなることは、的確に抑制されるようになる。
請求項6記載の発明では、請求項5記載の発明において、前記制御手段は、前記冷却水温が許可温度以上になってから内燃機関の暖機が完了するまでの期間中において、前記雰囲気温度が高くなるほど前記吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量を徐々に少なくすることを要旨とした。
冷却水温が許可温度以上になってから内燃機関の暖機が完了するまでの期間中において、燃焼室からブローバイガスがクランクケース内に漏れたときの同ケース内での同ガスの雰囲気温度が低いときには、内燃機関のオイルでスラッジが生成されやすくなる。このため、同スラッジが生成されやすくなるという現象を抑制すべく、吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量が多くされる。ただし、吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量を多くし過ぎると、同ブローバイガスによるクランクケースから吸気通路へのオイルの持ち去りも多くなり、同オイルによる吸気通路でのデポジットの付着も無視できない問題となる。
上記構成によれば、こうした実情をふまえて、上記期間中に吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量に関しては上記雰囲気温度が低いときには多くされ、その雰囲気温度が高くなるほど徐々に少なくされるため、上記ガス流量をスラッジ生成の抑制とデポジット付着の抑制との両立を図るうえで最適な値とすることが可能となる。従って、上記期間中に吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量の増量を上述したように行うことで、内燃機関のオイルでスラッジが生成されやすくなるという現象を的確に抑制しつつ、吸気通路での上記デポジットの付着も的確に抑えることができるようになる。
請求項7記載の発明では、請求項5又は6記載の内燃機関のブローバイガス処理装置において、内燃機関の冷却水温を検出する水温センサを更に備え、前記制御手段は、前記水温センサによって検出される冷却水温を前記雰囲気温度に対応する値として用いることを要旨とした。
上記構成によれば、EGRが実行許可されてから内燃機関の暖機が完了するまでの期間中において、燃焼室からクランクケース内に漏れたブローバイガスの同ケース内での雰囲気温度に基づき、的確に吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量を調整することができる。これは、上記雰囲気温度は内燃機関の冷却水温と対応して変化するものであり、その冷却水温を上記雰囲気温度に対応する値として用いて上記ガス流量の調整が行われるためである。
以下、本発明を自動車用エンジンに適用した一実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
図1に示されるエンジン1においては、各気筒の燃焼室2に吸気通路3及び排気通路4が接続されている。そして、エンジン1の吸入空気量を調整するためのスロットルバルブ11が設けられた吸気通路3を介して燃焼室2に空気が吸入されるとともに、燃料噴射弁5から吸気通路3内に燃料が噴射供給されることにより、燃焼室2内に空気と燃料とからなる混合気が充填される。この混合気が各気筒の点火プラグ6による点火に基づき燃焼すると、そのときの燃焼エネルギによってピストン7が往復移動し、エンジン1の出力軸であるクランクシャフト8が回転する。また、燃焼後の混合気は排気として排気通路4に送り出される。
エンジン1には、排気に含まれる窒素酸化物(NOx)の量を低減させる等の意図のもと排気通路4内の排気の一部を吸気通路3に戻すEGRを実行するためのEGR機構が設けられている。
このEGR機構は、排気通路4と吸気通路3におけるスロットルバルブ11の下流側の部分とを繋ぐように設けられたEGR通路18と、そのEGR通路18のガス流通面積を可変とすべく開度調整されて同通路18を介して排気通路4から吸気通路3に戻される排気の量を調整するEGRバルブ17とを備えている。そして、EGR機構によりエンジン1の排気の一部を吸気通路3に還流させることで、燃焼室2内での混合気の燃焼時に同燃焼室2内に燃焼に寄与しないガス(排気)が存在するようになる。その結果、燃焼室2内での混合気の燃焼温度が低下してNOxの生成が低減され、エンジン1の排気に含まれるNOxの量が低減される。
また、エンジン1においては、圧縮行程や膨張行程で燃焼室2に存在するガスの一部がブローバイガスとしてピストンリング7aとシリンダ内壁9との間からクランクケース10内に漏れる。このため、エンジン1には、燃焼室2から漏れたブローバイガスを吸気通路3に戻して処理するブローバイガス処理装置が設けられている。
同装置は、吸気通路3におけるスロットルバルブ11の上流側の部分に接続されてクランクケース10内に新気を導入する新気導入通路12と、クランクケース10内のブローバイガスを吸気通路3に戻すべく同通路3におけるスロットルバルブ11の下流側の部分に接続されたガス流出通路13とを備えている。また、ガス流出通路13にはブローバイガスを吸気通路3に戻す際のガス流量を調整するPCVバルブ14が設けられている。このPCVバルブ14は、ステップモータ等により開度調整される電動式のものであって、その開度調整を通じてガス流出通路13から吸気通路3に流れるガスの流量を制御するものである。そして、同装置においては、新気導入通路12からクランクケース10内への新気導入により、燃焼室2からクランクケース10内に漏れたブローバイガスがガス流出通路13を介して吸気通路3に戻されるようになる。なお、ガス流出通路13から吸気通路3に流れるブローバイガスのガスの流量に関しては、PCVバルブ14の開度一定の条件下ではガス流出通路13におけるPCVバルブ14よりも上流側の圧力と下流側の圧力との差圧が大きくなるほど多くなり、同差圧一定の条件下ではPCVバルブ14の開度が開き側の値になるほど多くなる。
次に、上記ブローバイガス処理装置の電気的構成について説明する。
ブローバイガス処理装置は、自動車に搭載されてエンジン1等に関する各種制御を実行する電子制御装置19を備えている。この電子制御装置19は、上記制御に係る各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。
電子制御装置19の入力ポートには、以下に示す各種センサ等が接続されている。
・自動車の運転者によって踏込操作されるアクセルペダル20の踏み込み量(アクセル踏込量)を検出するアクセルポジションセンサ21。
・エンジン1の吸気通路3に設けられたスロットルバルブ11の開度(スロットル開度)を検出するスロットルポジションセンサ22。
・吸気通路3を通過して燃焼室2に吸入される空気の量を検出するエアフロメータ23。
・クランクシャフト8の回転に対応した信号を出力するクランクポジションセンサ24。
・エンジン1の冷却水温を検出する水温センサ25。
・吸気通路3を通過して燃焼室2に吸入される空気の温度を検出する吸気温センサ26。
また、電子制御装置19の出力ポートには、燃料噴射弁5、点火プラグ6、スロットルバルブ11、PCVバルブ14、及びEGRバルブ17といった各種機器の駆動回路が接続されている。
電子制御装置19は、上記各センサから入力された検出信号より把握されるエンジン運転状態に応じて、上記出力ポートに接続された各機器類の駆動回路に指令信号を出力する。こうして点火プラグ6の点火時期制御、スロットルバルブ11の開度制御、燃料噴射弁5による燃料噴射の制御、PCVバルブ14の開度制御、EGRバルブ17の開度調節に基づくEGR制御等の各種制御が電子制御装置19により実施されている。
ここで、上記EGR制御の概要、及び上記PCVバルブ14の開度制御の概要について、それぞれ以下で個別に説明する。
[EGR制御]
EGR制御に関しては、エンジン1の冷却水温と吸気温との少なくとも一方がそれぞれ設定された許可温度未満であるときには実行禁止され、同冷却水温と同吸気温との両方がそれぞれ設定された許可温度以上であるときには実行許可される。なお、ここで用いられる冷却水温の許可温度としては例えば70℃という値が用いられ、吸気温の許可温度としては例えば5℃という値が用いられる。EGR制御では、エンジン1の排気エミッション改善を目的として、エンジン1のEGR率(EGRにより吸気通路3に戻される排気の量とエンジン1の吸入空気量との比)の調整が行われる。具体的には、エンジン運転状態に基づき目標EGR率が算出されるとともに、その目標EGR率に基づきEGRバルブ17の目標開度が算出され、同目標開度に基づきEGRバルブ17の開度が調整される。これによりエンジン1のEGR率が同エンジン1の排気エミッション改善を図るうえで最適な値に調整される。
[PCVバルブ14の開度制御]
PCVバルブ14の開度制御は、クランクケース10からガス流出通路13を介して吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量を制御することを目的として、電子制御装置19により求められる開度指令値である指令ステップ数Rに基づき行われる。
具体的には、エンジン回転速度及びエンジン負荷といったエンジン運転状態に基づき図2のマップを参照して指令ステップ数Rが算出され、その指令ステップ数Rに基づきPCVバルブ14が開閉動作される。なお、上記指令ステップ数Rの算出に用いられるエンジン回転速度は、クランクポジションセンサ24からの検出信号に基づき求められる。また、上記エンジン負荷は、エンジン1の吸入空気量に対応するパラメータと上記エンジン回転速度とから算出される。ここで用いられる吸入空気量に対応するパラメータとしては、例えば、エアフロメータ23からの検出信号に基づき求められるエンジン1の吸入空気量の実測値や、スロットルポジションセンサ22によって検出されるスロットル開度等が用いられる。
上記のように開度制御されるPCVバルブ14に関しては、指令ステップ数Rが「0」のときに全閉とされ、同指令ステップ数Rが「0」から多くなるほど開き側の開度に調整される。こうしたPCVバルブ14の開度制御を通じて、クランクケース10内からガス流出通路13を介して吸気通路3に流れるブローバイガスのガス流量が制御されることとなる。より詳しくは、エンジン負荷及びエンジン回転速度の変化に応じて変化するエンジン1の吸気圧、すなわち吸気通路3のスロットルバルブ11よりも下流側の圧力の変化に対し、上記ガス流量が例えば図3に示されるごとく変化するようにされる。
上記ブローバイガスのガス流量に関しては、少なすぎるとクランクケース10内のオイルに対し燃焼室2から漏れたブローバイガス中の排気成分や未燃燃料成分が混入して同オイルが劣化しやすくなり、多すぎると吸気通路3に戻されるブローバイガスによって同通路3に持ち去られるオイルの量が多くなって同通路3でのデポジットの付着を招く。従って、上記ブローバイガスのガス流量の制御に用いられる指令ステップ数Rに関しては、そのガス流量が上述したオイルの劣化とデポジットの付着といった二つの点をふまえた最適な値となるよう、エンジン回転速度及びエンジン負荷に基づき算出することが考えられる。
ところで、エンジン1でのEGRの実行中には、燃焼室2からクランクケース10内に漏れるブローバイガス中の単位体積当たりの水蒸気の量が多くなる。このため、EGRが実行されるエンジン1においては、EGRの行われないエンジン1である想定のもとでブローバイガス処理装置により吸気通路3に上記ブローバイガスを戻すようにしても、クランクケース10内に存在する水蒸気の量が多くなることは避けられない。そして、このようにクランクケース10内に存在する水蒸気の量が多くなると、クランクケース10内のガスの露点温度が高くなり、同ケース10内で結露が発生しやすくなる。こうしたクランクケース10内での結露を通じて、[発明が解決しようとする課題]の欄に記載したようにエンジン1のオイル中にスラッジが生成されやすくなり、同エンジン1におけるオイルの流通経路でスラッジが生成されると、それがエンジン1の上記オイルによる潤滑に悪影響を及ぼすこととなる。
こうした不具合に対処するため、本実施形態では、クランクケース10から吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量を、EGRの実行時には同EGRの非実行時に比べて多くする。
ここで、EGRの実行時には、同EGRの非実行時に比べて、燃焼室2からクランクケース10に漏れるブローバイガス中における単位堆積当たりの水蒸気の量が多くなるものの、この水蒸気を多く含んだブローバイガスは上記ガス流量の制御を通じて多く且つ速やかに吸気通路3に戻されるようになる。その結果、EGR実行時にクランクケース10内に存在する水蒸気の量を少なくし、同ケース10内での結露を的確に抑制、例えばEGRの非実行時と同等のレベルまで抑制することができる。更に、上記ガス流量の制御を通じてクランクケース10内のブローバイガスが多く且つ速やかに吸気通路3に戻されることで、クランクケース10内に存在する排気成分(NOxやSOx等)の量が低減されるようにもなる。
以上により、EGRの実行時に、エンジン1のオイル中でスラッジが生成されやすくなることは抑制され、そのスラッジの生成によって同エンジン1での上記オイルによる潤滑に悪影響が及ぶことは抑制されるようになる。
次に、吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量の制御を目的とした本実施形態のPCVバルブの開度制御の詳細について、PCVバルブ制御ルーチンを示す図4のフローチャートを参照して説明する。このPCVバルブ制御ルーチンは、電子制御装置19を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
同ルーチンにおいては、まずエンジン1の冷却水温がEGRの実行許可又は実行禁止に用いられる上記許可温度(この例では70℃)以上であるか否かの判断(S101)、及びエンジン1の吸気温がEGRの実行許可又は実行禁止に用いられる上記許可温度(この例では5℃)以上であるか否かの判断(S102)が行われる。ステップS101で否定判定であって冷却水温が許可温度未満である場合には、EGRの実行が禁止されていることになり、こような場合におけるPCVバルブ14の開度制御、言い換えれば吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量の制御が行われる。こうした制御は、ステップS103〜S105の処理、及びステップS113の処理を通じて実現される。
この一連の処理として、具体的には、まず冷却水温が許可温度(この例では70℃)よりも低い値である低温判定値未満であるか否かが判断される(S103)。そして、冷却水温が低温判定値未満であれば指令ステップ数Rがその可変範囲における大きい側の値(第1の固定値)に固定され(S104)、冷却水温が低温判定値以上であれば指令ステップ数Rがその可変範囲における小さい側の値(第2の固定値)に固定される(S105)。その後、上記のように固定された指令ステップ数Rに基づきPCVバルブ14の開度が調整される(S113)。
エンジン1の冷却水温が低温判定値未満となるような低い値であるときには、燃焼室2からクランクケース10に漏れるブローバイガスに起因してエンジン1のオイルでスラッジが生成されやすくなることを抑制すべく、指令ステップ数Rが上述した第1の固定値に固定される。これにより、吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量が大とされ、燃焼室2からクランクケース10内に漏れたブローバイガスが速やかに吸気通路3に送られて処理されるため、エンジン1のオイルでのスラッジの生成が抑制される。なお、上記第1の固定値に関しては、予め実験等により定められた最適値が用いられる。
また、冷却水温が許可温度未満(S101:NO)であり、且つ低温判定値以上であるときには、燃焼室2からクランクケース10に漏れるブローバイガスに起因してエンジン1のオイルでスラッジが生成されにくいと推定される。こうした状況のもとで吸気通路3に戻されるブローバイガスの量が多くされると、クランクケース10から吸気通路3へと持ち去られるオイルの量が多くなるおそれがある。このような吸気通路3へのオイルの持ち去りを抑制すべく、冷却水温が低温判定値以上のときには指令ステップ数Rが上述した第2の固定値に固定され、吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量が小とされる。これにより、同ガスによるクランクケース10から吸気通路3へのオイルの持ち去りが抑制され、そのオイルによる同通路3でのデポジット付着が抑制されるようになる。なお、上記第2の固定値としては、予め実験等により定められた最適値が用いられる。
ステップS101とステップS102とで共に肯定判定であれば、すなわちエンジン1の冷却水温と吸気温との両方がそれぞれ設定された許可温度以上であれば、EGRの実行が許可されることとなる(S106)。なお、このようにEGRの実行が許可された条件下においては、同EGRの実行条件の不成立時にはEGRは実行されず、上記実行条件の成立時には同EGRが実行されることとなる。一方、ステップS101で肯定判定であってもステップS102で否定判定であれば、EGRの実行が許可されずに同実行が禁止された状態となる。
冷却水温が許可温度以上である条件下(S101:YES)において、エンジン1の暖機が未完である場合には(S107:YES)、冷却水温に基づき指令ステップ数Rが算出される(S108)。ここで、上記冷却水温は、燃焼室2からクランクケース10内に漏れたブローバイガスの同ケース10内での雰囲気温度に対応する値として用いられる。そして、冷却水温が高いときには低いときに比べて、指令ステップ数Rが小さい値(PCVバルブ14を閉じる側の値)となるよう算出される。より詳しくは、冷却水温が高くなるほど指令ステップ数Rが徐々に小さくなるように算出される。上記のように算出された指令ステップ数Rに基づきPCVバルブ14の開度が調整されると、冷却水温(上記雰囲気温度に対応)が高くなるほど吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量が徐々に少なくされる。このため、冷却水温が高いときには低いときに比べて上記ガス流量が少なくなる。
冷却水温が許可温度以上になってからエンジン1の暖機が完了するまでの期間中、クランクケース10内のガスの露点温度に関しては、燃焼室2からブローバイガスがクランクケース10内に漏れたときの同ケース10内での同ガスの雰囲気温度によっても変わり、そのときの雰囲気温度が低いほど低い値になる。このため、上記雰囲気温度に対応する値となるエンジン1の冷却水温が低いほど、クランクケース10内の水分の量が多くなって同エンジン1のオイルでスラッジが生成されやすくなる傾向がある。しかし、上述したように算出される指令ステップ数Rに基づきPCVバルブ14の開度を調整することにより、冷却水温が低いときには、高いときに比べて吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量が多くされ、燃焼室2からクランクケース10に漏れたブローバイガスが多く且つ速やかに吸気通路3に戻される。これにより、エンジン1におけるオイルの流通経路でスラッジが生成されやすくなるということを的確に抑制できるようになる。
一方、冷却水温が許可温度以上である条件下(S101:YES)において、エンジン1の暖機が完了している場合には(S107:NO)、エンジン負荷及びエンジン回転速度に基づき図3のマップを参照して指令ステップ数Rの算出が行われる(S109)。このように算出される指令ステップ数Rに基づきPCVバルブ14の開度を調整することで、吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量が、クランクケース10内でのブローバイガスによるオイルの劣化と、そのオイルの吸気通路3への持ち去りに起因した同通路3でのデポジットの付着といった二つの点をふまえた値に制御されることとなる。
図4のステップS108とステップS109とのいずれかの処理で指令ステップ数Rの算出が行われた後には、EGRの実行の有無に応じて指令ステップ数Rを補正するための処理(S110〜S112)が行われる。
この一連の処理では、まずEGRが実行されているか否かが判断される(S110)。ここで否定判定であれば、ステップS108とステップS109とのいずれかの処理で算出された指令ステップ数Rをそのまま用いてPCVバルブ14の開度調整が行われる(S113)。従って、EGRの非実行時には、補正の行われていない指令ステップ数Rに基づきPCVバルブ14の開度が調整され、そのPCVバルブ14の開度調整を通じて吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量が制御される。
一方、ステップS110で肯定判定であれば、目標EGR率に基づき、指令ステップ数Rを増加側(PCVバルブ14を開く側)に補正するための補正値Hが算出される(S111)。具体的には、目標EGR率が大きくなるほど上記補正値Hが徐々に大きくなるよう算出される。従って、EGRの実行時にEGR機構を介して吸気通路3に戻される排気の量が多くなるに従って、上記補正値Hが徐々に大きい値となるよう同補正値Hが算出されることとなる。
その後、ステップS108とステップS109とのいずれかの処理で算出された指令ステップ数Rに対し、上記補正値H分の増加側(PCVバルブ14を開く側)への補正が加えられる(S112)。そして、上記補正値H分の増加側への補正が加えられた後の指令ステップ数Rに基づきPCVバルブ14の開度が調整され(S113)、そのPCVバルブ14の開度調整を通じて吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量が制御される。
従って、EGRの実行時には、同EGRの非実行時に比べて、吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量が多くされるようになる。これにより、EGRの実行時にエンジン1のオイル中でスラッジが生成されやすくなることは抑制され、そのスラッジの生成によって同エンジン1での上記オイルによる潤滑に悪影響が及ぶことは抑制される。
また、EGRの実行時における上記ガス流量に関しては、目標EGR率の増大に伴い上記補正値Hが徐々に大きくされることから、EGR機構を通じて吸気通路3に戻される排気の量が多くなるに従って徐々に多くされる。このように、EGR実行時に上記ガス流量を多くすることで、EGRの実行に伴いエンジン1のオイルでスラッジが生成されやすくなるという現象を的確に抑制しつつ、上記ガス流量の増量を可能な限り小さく抑えて吸気通路3へのオイルの持ち去りを少なくし、そのオイルによる吸気通路3でのデポジットの付着を抑えることができるようになる。
最後に、吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量の制御について、冷えた状態にあるエンジン1の始動開始後に同エンジン1の冷却水温が徐々に上昇してゆく状況を例に、図5を参照して総括する。なお、図5は、エンジン1の冷却水温の上昇に伴う指令ステップ数Rの変化を示すグラフである。
冷えた状態にあるエンジン1の始動開始後、冷却水温が低温判定値未満であるとき、すなわち燃焼室2からクランクケース10に漏れるブローバイガスに起因してエンジン1のオイルでスラッジが生成されやすくなる状況下では、指令ステップ数Rが第1の固定値に固定され、吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量が大とされる。これにより、燃焼室2からクランクケース10内に漏れたブローバイガス中の排気成分に含まれる上記物質が同ケース10内のオイルに溶け込むことなく吸気通路3に送られて処理され、エンジン1のオイルでのスラッジの生成が抑制されるようになる。
エンジン1の始動開始後の運転に伴い冷却水温が低温判定値以上に上昇すると、燃焼室2からクランクケース10に漏れるブローバイガスに起因してエンジン1のオイルでスラッジが生成されやすくなるという状況を脱することになる。こうした状況のもとで吸気通路3に戻されるブローバイガスの量が多くなっていると、クランクケース10から吸気通路3へと持ち去られるオイルの量が多くなるおそれがある。このため、エンジン1の冷却水温が低温判定値以上に上昇したときには、同冷却水温が許可温度未満であることを条件に、指令ステップ数Rが上記第1の固定値よりも小さい値である第2の固定値に固定され、吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量が小とされる。これにより、同ガスによるクランクケース10から吸気通路3へのオイルの持ち去りが抑制され、そのオイルによる同通路3でのデポジット付着が抑制されるようになる。
エンジン1の冷却水温が許可温度未満であるときにはEGRの実行が禁止されており、エンジン1の運転に伴い冷却水温が許可温度以上(この例では70℃以上)に上昇すると、吸気温が許可温度(この例では5℃)以上であることを条件にEGRの実行が許可されることとなる。そして、EGRの実行時には指令ステップ数Rの補正値Hによる増大側への補正が行われる。なお、こうした補正値Hによる指令ステップ数Rの増大側への補正はEGRの非実行時には行われない。従って、図5の冷却水温が許可温度以上の領域においては、EGRの非実行時に指令ステップ数Rが例えば二点鎖線で示される値になるとすると、EGRの実行時には指令ステップ数Rが実線で示されるように補正値H分だけ大きくされるようになる。その結果、EGRの実行時には、同EGRの非実行時に比べて、吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量が多くされる。これにより、EGRの実行時にエンジン1のオイル中でスラッジが生成されやすくなることは抑制され、そのスラッジの生成によって同エンジン1での上記オイルによる潤滑に悪影響が及ぶことは抑制される。
また、上記補正値Hに関しては目標EGR率の増大に伴い徐々に大きくされるため、EGRの実行時に吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量は、EGR機構を通じて吸気通路3に戻される排気の量が多くなるに従って徐々に多くされる。このように、EGR実行時に上記ガス流量を多くすることで、EGRの実行に伴いエンジン1のオイルでスラッジが生成されやすくなるという現象を的確に抑制しつつ、上記ガス流量の増量を可能な限り小さく抑えて吸気通路3へのオイルの持ち去りを少なくし、そのオイルによる吸気通路3でのデポジットの付着を抑えることができるようになる。
エンジン1の冷却水温が許可温度以上になってから暖機完了温度(例えば80℃)になるまでの期間中は、冷却水温に基づき同冷却水温が高くなるほど、指令ステップ数Rが徐々に小さくなるよう算出され、吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量が徐々に少なくされる。ここで、上記期間中におけるクランクケース10内のガスの露点温度に関しては、燃焼室2からブローバイガスがクランクケース10内に漏れたときの同ケース10内での同ガスの雰囲気温度(冷却水温と対応)によっても変わり、そのときの雰囲気温度が低いほど低い値になる。しかし、上述したように冷却水温が低いときほど上記ガス流量を多くすることで、燃焼室2からクランクケース10に漏れたブローバイガスが多く且つ速やかに吸気通路3に戻されるようになり、エンジン1におけるオイルの流通経路でスラッジが生成されやすくなることは的確に抑制される。
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)EGRの実行時には、同EGRの非実行時に比べて、吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量が多くされる。これにより、EGRの実行に伴いエンジン1のオイル中でスラッジが生成されやすくなることは抑制され、そのスラッジの生成によって同エンジン1での上記オイルによる潤滑に悪影響が及ぶことは抑制されるようになる。
(2)吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量は、指令ステップ数Rに基づくPCVバルブ14の開度調整を通じて制御される。そして、EGRの実行時には上記指令ステップ数Rに対し補正値H分の増加側への補正が加えられるのに対し、EGRの非実行時には上記指令ステップ数Rに対し補正値H分の補正が加えられることはない。従って、吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量、EGRの実行時には同EGRの非実行時に比べて的確に多くすることができる。
(3)EGRの実行時においてエンジン1のオイルの流通経路でのスラッジ生成を抑制する観点では、クランクケース10から吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量を可能な限り多くすることが好ましい。しかし、吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量を多くし過ぎると、同ブローバイガスによるクランクケース10から吸気通路3へのオイルの持ち去りも多くなり、同オイルによる吸気通路3でのデポジットの付着も無視できない問題となる。
こうしたことを考慮して、EGRの実行時に吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量に関しては、EGR機構を通じて吸気通路3に戻される排気の量が多くなるに従って徐々に多くされる。具体的には、EGRの実行時に指令ステップ数Rを補正するための上記補正値Hを目標EGR率が大きくなるほど徐々に大きくなるよう算出し、それによって上記ガス流量の制御が行われるようにする。これにより、EGRの実行に伴いエンジン1のオイルでスラッジが生成されやすくなるという現象を的確に抑制しつつ、上記ガス流量の増量を可能な限り小さく抑えて吸気通路3へのオイルの持ち去りを少なくし、そのオイルによる吸気通路3でのデポジットの付着を抑えることができる。
(4)エンジン1の冷却水温が許可温度未満である条件下であって、同冷却水温が低温判定値未満となるような低い値であるときには、指令ステップ数Rがその可変範囲における大きい側の値(第1の固定値)に固定され、吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量が大とされる。これにより、燃焼室2からクランクケース10に漏れるブローバイガスに起因してエンジン1のオイルでスラッジが生成されやすくなる状況下において、燃焼室2からクランクケース10内に漏れた上記ブローバイガスが速やかに吸気通路3に送られて処理され、エンジン1のオイルでのスラッジの生成が抑制されるようになる。一方、エンジン1の冷却水温が許可温度未満である条件下であって、同冷却水温が低温判定値以上に上昇すると、指令ステップ数Rがその可変範囲における小さい側の値(第2の固定値)に固定され、吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量が小とされる。これにより、同ガスによるクランクケース10から吸気通路3へのオイルの持ち去りが抑制され、そのオイルによる同通路3でのデポジット付着が抑制されるようになる。
(5)エンジン1の冷却水温が許可温度以上になってから暖機完了温度(例えば80℃)になるまでの期間中、冷却水温が低いときには高いときに比べて吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量が多くされる。ここで、上記冷却水温は燃焼室2からブローバイガスがクランクケース10内に漏れたときの同ケース10内での同ガスの雰囲気温度に対応した値となり、その雰囲気温度(冷却水温と対応)が低いほどクランクケース10内の露点温度が低い値になる。このようにクランクケース10内のガスの露点温度が低くなって同ケース10内で結露が発生しやすくなると、その結露によってエンジン1のオイル中にスラッジが生成されやすくなる。しかし、上述したように冷却水温が低いときに上記ガス流量を多くすることで、燃焼室2からクランクケース10に漏れたブローバイガスが多く且つ速やかに吸気通路3に戻されるようになり、エンジン1のオイルでスラッジが生成されやすくなることは的確に抑制される。
(6)エンジン1の冷却水温が許可温度以上になってから暖機完了温度(例えば80℃)になるまでの期間中、冷却水温が低いときには吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量が多くされ、同冷却水温が高くなるほど上記ガス流量が徐々に少なくされる。上記期間中であって、燃焼室2からブローバイガスがクランクケース10内に漏れたときの同ケース10内での同ガスの雰囲気温度(冷却水温に対応)が低いときには、クランクケース10内の露点温度が低い値になって同ケース10内で結露が発生しやすくなり、エンジン1のオイル中にスラッジが生成されやすくなる。このようにオイル中でスラッジが生成されやすくなることは、吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量を多くすることで抑制される。ただし、上記ガス流量を多くし過ぎるとブローバイガスによるクランクケース10から吸気通路3へのオイルの持ち去りも多くなり、同オイルによる吸気通路3でのデポジットの付着も多くなる。しかし、上記ガス流量を冷却水温が高くなるほど徐々に少なくすることで、同ガス流量をスラッジ生成の抑制とデポジット付着の抑制との両立を図るうえで適切な値とすることが可能になる。従って、上記期間中に吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量の増量を上述したように行うことで、エンジン1のオイルでスラッジが生成されやすくなるという現象を的確に抑制しつつ、吸気通路3での上記デポジットの付着も的確に抑えることができるようになる。
(7)燃焼室2からブローバイガスがクランクケース10内に漏れたときの同ケース10内での同ガスの雰囲気温度に対応する値として、水温センサ25によって検出されるエンジン1の冷却水温が用いられる。従って、エンジン1の冷却水温が許可温度以上になってから暖機完了温度(例えば80℃)になるまでの期間中、上記冷却水温に基づき吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量を調整することで、上記雰囲気温度に基づく同ガス流量の調整を的確に行うことができるようになる。
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・EGRの実行時、燃焼室2からクランクケース10に漏れるブローバイガス中における単位堆積当たりの水蒸気の量が多くなるほど、クランクケース10から吸気通路3に戻されるブローバイガスのガス流量を多くしてもよい。なお、上記水蒸気の量に関しては、排気通路4に排気中の単位体積当たりの二酸化炭素の量を検出するセンサを設け、そのセンサの検出信号に基づき求めることが可能である。これは、燃焼室2からクランクケース10に漏れるブローバイガス中(排気中)の二酸化炭素の量が多くなるほど、同ガス中の水蒸気の量が多くなるという関係があるためである。
・補正値Hを目標EGR率に基づき算出するだけでなく、冷却水温に基づき同冷却水温が高くなるほど小さくなるよう算出してもよい。その際、補正値Hを目標EGR率と冷却水温との二次元マップで算出したり、予め設定された計算式を用いて目標EGR率と冷却水温とに基づき算出したりすることが考えられる。
本実施形態のブローバイガス処理装置が適用されるエンジン全体を示す略図。 PCVバルブの開度指令値である指令ステップ数Rを算出するために用いられるマップ。 エンジンの吸気圧の変化に対する吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量の推移を示すグラフ。 PCVバルブの開度制御手順を示すフローチャート。 エンジンの冷却水温の上昇に伴う指令ステップ数Rの変化を示すグラフ。
符号の説明
1…エンジン、2…燃焼室、3…吸気通路、4…排気通路、5…燃料噴射弁、6…点火プラグ、7…ピストン、7a…ピストンリング、8…クランクシャフト、9…シリンダ内壁、10…クランクケース、11…スロットルバルブ、12…新気導入通路、13…ガス流出通路、14…PCVバルブ、17…EGRバルブ、18…EGR通路、19…電子制御装置(制御手段)、20…アクセルペダル、21…アクセルポジションセンサ、22…スロットルポジションセンサ、23…エアフロメータ、24…クランクポジションセンサ、25…水温センサ、26…吸気温センサ。

Claims (7)

  1. 排気の一部を吸気通路に戻すEGRを実行可能な内燃機関に適用され、同機関の燃焼室からクランクケースに漏れたブローバイガスを吸気通路に戻すとともに、その吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量を機関運転状態に基づき制御する内燃機関のブローバイガス処理装置において、
    前記吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量を前記EGRの実行時には同EGRの非実行時に比べて多くする制御手段を備える
    ことを特徴とする内燃機関のブローバイガス処理装置。
  2. 前記内燃機関は、前記燃焼室から前記クランクケースに漏れたブローバイガスを前記吸気通路に戻すガス流出通路と、そのガス流出通路のガス流通面積を可変とすべく開閉動作するPCVバルブとを備え、
    前記PCVバルブは、機関運転状態に応じて算出される開度指令値に基づき開度調整され、それによって前記ガス流出通路を介して前記吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量を制御するものであり、
    前記制御手段は、前記EGRの実行時には、前記開度指令値として同EGRの非実行時の値に対し開き側に補正した値を用いる
    請求項1記載の内燃機関のブローバイガス処理装置。
  3. 前記制御手段は、前記EGRの実行時に前記吸気通路に戻される排気の量が多くなるに従って、前記EGRの実行に伴う前記クランクケースから前記吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量の増量分を徐々に多くする
    請求項1又は2記載の内燃機関のブローバイガス処理装置。
  4. 前記EGRは、内燃機関の冷却水温と吸気温との少なくとも一方がそれぞれ設定された許可温度未満であるときには実行禁止されるものであり、
    前記制御手段は、前記冷却水温が許可温度未満である条件のもとでは、前記冷却水温が低温判定値未満であるときに前記吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量を大とし、前記冷却水温が前記低温判定値以上であるときに前記ガス流量を小とするものである
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関のブローバイガス処理装置。
  5. 前記EGRは、内燃機関の冷却水温と吸気温との少なくとも一方がそれぞれ設定された許可温度未満であるときには実行禁止されるものであり、
    前記制御手段は、前記冷却水温が許可温度以上になってから内燃機関の暖機が完了するまでの期間中において、前記燃焼室から前記クランクケース内に漏れたブローバイガスの同ケース内での雰囲気温度が低いときには、高いときに比べて前記吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量を多くする
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関のブローバイガス処理装置。
  6. 前記制御手段は、前記冷却水温が許可温度以上になってから内燃機関の暖機が完了するまでの期間中において、前記雰囲気温度が高くなるほど前記吸気通路に戻されるブローバイガスのガス流量を徐々に少なくする
    請求項5記載の内燃機関のブローバイガス処理装置。
  7. 請求項5又は6記載の内燃機関のブローバイガス処理装置において、
    内燃機関の冷却水温を検出する水温センサを更に備え、
    前記制御手段は、前記水温センサによって検出される冷却水温を前記雰囲気温度に対応する値として用いる
    ことを特徴とする内燃機関のブローバイガス処理装置。
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