以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、この発明の第1実施形態として、マイクロポンプの全体を示す断面図である。図2は、図1のマイクロポンプに組み込まれたバルブシートを上方向から見た図(A)と、下方向から見た図(B)である。
図1と図2に示すように、マイクロポンプ1は、主に、液体を収容する液タンク101と、液タンク101の下に配置される吸入吐出側ケース(IOプレート)200と、吸入吐出側ケース200の下に配置されるバルブシート300と、バルブシート300の下に配置される振動板側ケース400(バックプレート)と、バルブシート300と振動板側ケース400との間に挟まれる振動板130と、振動板130を振動させる圧電素子120と、振動板130とバルブシート300とによって形成されるポンプ室110と、弁体として吸入側逆止弁500と、吐出側逆止弁700と、電磁石610とを備える。
マイクロポンプ1の上部には、液タンク101が配置されており、液タンク101の内部には液体102が貯留される。液タンク101の下部と吸入吐出側ケース200の上部は開口103によって連結されている。
吸入吐出側ケース200の下に配置されるバルブシート300には、吸入側逆止弁500の弁部520を配置するための弁座として吸入側弁座310と、ポンプ室110の内部からポンプ室110の外部の吐出管202に液体を吐出するための吐出口321と、吐出口321を閉塞または開放可能に吐出側逆止弁700を配置するための吐出側弁座320が形成されている。
吸入側弁座310の下面には、吸入側逆止弁500の軸部510を受容するための穴部312が形成されている。吸入側弁座310には、穴部312を取り囲むようにして複数の吸入口311が形成されている。吸入側弁座310の上面上には、電磁石610が取り付けられている。電磁石610の芯部として強磁性体の鉄によって形成される鉄芯611は、吸入側弁座310の上側から、穴部312の内部に挿入されている。
吸入側逆止弁500は、弁部520と軸部510と磁力作用部530とを含み、軸部510を上側に、弁部520を下側にして配置される。弁部520の下面には、突出した頂部521が形成されている。軸部510と弁部520は、一体化して形成されている。軸部510の上端面には、永久磁石によって形成される磁力作用部530が取り付けられている。吸入側逆止弁500は、軸部510が穴部312に受容されることで吸入側弁座310に保持されている。軸部510が穴部312に受容されると、軸部510の上端面の磁力作用部530と、電磁石610の鉄芯611とが対向する。
磁力作用部530は、永久磁石として、サマリウム磁石やネオジム磁石などの強力な永久磁石を用いることができる。サマリウム磁石の最大エネルギー積は25メガガウスエルステッドであり、ネオジム磁石は40メガガウスエルステッドである。このように、サマリウム磁石やネオジム磁石には、吸入側逆止弁500を保持するには充分な磁力がある。サマリウム磁石やネオジム磁石の磁力は、フェライト磁石の10倍以上であるといわれている。
吐出側弁座320には、吐出側逆止弁700の軸部702を受容するための凹部322と、凹部322を取り囲むようにして配置される複数の吐出口321が形成されている。
吐出側逆止弁700は、扁平な弁部701を上に向け、棒状の軸部702を下に向けて、軸部702がバルブシート300に取り付けられていることによって、ポンプ室110に組み込まれている。軸部702は、先端がほぼ平らであり、バルブシート300に形成された吐出側弁座320の凹部322に受容されて保持されている。吐出側逆止弁700の弁部701の頂部703は、吐出管202の壁部を形成する吸入吐出側ケース200の内壁に形成された突起201に接している。
吸入側逆止弁500の弁部520を介して液体が吸入され、吐出側逆止弁700を介して液体が吐出されるまでの空間がポンプ室110である。吸入側逆止弁500と吐出側逆止弁700はそれぞれ、バルブシート300に形成された吸入側弁座310と吐出側弁座320に取り付けられている。ポンプ室110の底面は振動板130によって形成されている。振動板130は、ポンプ室110の容積を変化させる。バルブシート300と振動板130は、それぞれ、ポンプ室110の上面側の壁と下面側の壁を形成している。振動板130の端部は、バルブシート300と振動板側ケース400との間に挿入されて固定されている。
圧電素子120の下部には、空間が設けられ、圧電素子120は上下に振動することができる。バルブシート300の上部には、吸入吐出側ケース200が取り付けられており、吸入吐出側ケース200の内部に吐出管202が形成されている。バルブシート300と吸入吐出側ケース200との間には8の字Oリング301が配置されて密閉され、バルブシート300と振動板側ケース400との間にはOリング302が配置されて密閉されている。Oリング302は、バルブシート300の下面に形成された凹部にはめ込まれている。吸入吐出側ケース200とバルブシート300、バルブシート300と振動板側ケース400は、それぞれ、ねじ等で互いに密接するようにして固定されている。
吸入側逆止弁500がマイクロポンプ1に組み込まれると、弁部520の周辺部は、吸入側弁座310の下面313に密着する。弁部520の頂部521は、振動板130に接する。振動板130は、弁部520の頂部521を下方から押圧するようにして、弁部520を固定している。弁部520の周辺部は、吸入側弁座310の下面313に密着する。
液タンク101内の液体102は、開口103から吸入口311を通ってポンプ室110に入る。
圧電素子120に交流電圧を印加することによって、交流電圧の周波数に対応する周波数で圧電素子120が振動する。この圧電素子120の振動と連動して、圧電素子120に接着されている振動板130が振動し、ポンプ室110の容積を変化させる。振動板130が上下どちらにも変位していないときには、吸入側逆止弁500の弁部520が吸入口311を閉じ、吐出側逆止弁700の弁部701が吐出口321を閉じている。
図3は、この発明の第1実施形態のマイクロポンプに用いられる突起(A)と、吐出側逆止弁(B)と、吐出側弁座の上面(C)を示す図である。
図3の(A)に示すように、吐出管202(図1)の壁部を形成する吸入吐出側ケース200(図1)の内壁に形成された突起201は、円柱状の部分と円錐台状の部分とを有し、円柱の下面と円錐台の上面を互いに接合した形状である。突起201の円錐台状の部分においては、円柱と接合している上面の径が相対的に大きく、下面の径が相対的に小さい。吐出側逆止弁700がマイクロポンプに組み込まれると、突起201の下面が吐出側逆止弁700の頂部703を押圧する。
図3の(B)に示すように、吐出側逆止弁700は、弁の軸を含む縦断面が、相対的に断面積が大きい弁部701と相対的に断面積が小さい軸部702を有し、開いた傘のような形状をしている。吐出側逆止弁700は、扁平な弁部701と棒状の軸部702を有し、頂部703を含む弁部701の上面は平らである。吐出側逆止弁700は、ゴム等の樹脂素材によって形成されている。
図3の(C)に示すように、吐出側弁座320には、吐出側逆止弁700の軸部702を受容するための凹部322と、凹部322を取り囲むようにして複数の吐出口321が形成されている。
図4は、この発明の第1実施形態のマイクロポンプに用いられる吐出側逆止弁と吐出側逆止弁の周辺の断面を示す断面図である。図4の(A)は、吐出側逆止弁が吐出側弁座に挿入される前の状態を示し、図4の(B)は、吐出側逆止弁が吐出側弁座に挿入されてバルブシートに組み込まれた状態を示す。
吐出側弁座320は、バルブシート300(図1)内に形成されており、吐出側逆止弁700の軸部702を受容するための凹部322を有する。吐出側弁座320の上面には、凹面323が形成されている。凹面323は、吐出側逆止弁700の軸部702を受容するための凹部322側で凹んだ球の内面のような傾斜に形成されている。
図4の(B)に示すように、吐出側逆止弁700の軸部702が吐出側弁座320の凹部322に上方から挿入されて、吐出側逆止弁700が吐出側弁座320に組み込まれる。また、吐出管202(図1)の内壁に形成された突起201が、吐出側逆止弁700の弁部701の中心を上方から押圧するようにして、吐出側逆止弁700を固定している。このようにすることにより、吐出側逆止弁700の弁部701が弾性変形し、弁部701においては、吐出側弁座320の上面に形成された凹面323に沿って、吐出管202の突起201側に凹面が形成され、吐出側弁座320側に軸部702を中心にして凸面が形成されて、弁部701の周辺部は、吐出側弁座320に密着する。
図5は、この発明の第1実施形態のマイクロポンプに用いられる吸入側逆止弁を軸部に垂直な方向から見たときの断面図(A)と、吸入側逆止弁を弁座に取り付けて、電磁石を駆動しないときの状態を示す図(B)と、吸入側逆止弁を弁座に取り付けて、電磁石を駆動するときの状態を示す図(C)である。
図5の(A)に示すように、吸入側逆止弁500は、弁部520と軸部510と磁力作用部530とを有する。吸入側逆止弁500の弁部520と軸部510は、ゴム等の樹脂素材によって形成されている。磁力作用部530は、永久磁石によって形成されて、軸部510の端面に取りつけられている。
軸部510は、棒状に形成されている。弁部520の径は、軸部510の径よりも大きい。弁部520は、軸部510側の面が凹面状、軸部510と反対側の面が凸面状の、開いた傘状に形成されている。弁部520には、軸部510が突出している面と反対側の面の中央に、弁部520から突出した突起として頂部521が形成されている。
図5の(B)に示すように、吸入側逆止弁500は、弁部520が吸入口311を閉塞するように、吸入側弁座310の下面側から吸入側弁座310に配置される。弁部520は、吸入口311に配置される。磁力作用部530が取り付けられた軸部510は、穴部312に挿入される。
吸入側弁座310の上面には、鉄芯611を有する電磁石610が取り付けられている。鉄芯611は、吸入側弁座310の上側から、穴部312の内部に挿入されている。穴部312の内部では、軸部510の磁力作用部530と、電磁石610の鉄芯611とが対向する。
電磁石610を駆動していないときには、吸入側逆止弁500の磁力作用部530の永久磁石が、電磁石610の鉄芯611に引き付けられる。そのため、磁力作用部530が取り付けられている吸入側逆止弁500の全体が上方向に引っ張られて、弁部520が吸入口311を下方向から閉塞するように固定される。このように吸入側逆止弁500が固定されると、弁部520の全体が吸入側弁座310の下面に接触する。また、吸入側逆止弁500の頂部521は、吸入側弁座310の下方に配置される振動板130に接触せず、振動板130と吸入側逆止弁500との間には空間が形成される。
図5の(C)に示すように、電磁石610を駆動させて、鉄芯611に、磁力作用部530において電磁石610の鉄芯611に対向している側の極性と同じ極性を帯びさせることができる。このとき、電磁石610が生じさせる磁力の強さは、磁力作用部530の磁力の強さと同程度か、少し強くする。このようにすることにより、鉄芯611と磁力作用部530との間に斥力が働き、鉄芯611と磁力作用部530とが反発する。鉄芯611と磁力作用部530とが反発すると、吸入側逆止弁500の全体が下向きに落ちる。下向きに落ちた吸入側逆止弁500は、吸入側逆止弁500の下方に配置されている振動板130に接して止まる。弁部520は、軸部510側が凹面の傘状に形成されており、吸入側逆止弁500が下向きに落ちても、弁部520の周辺部は吸入側弁座310の下面に接している。
この実施の形態では、例えば、吸入側逆止弁500の弁部520と吐出側逆止弁700の弁部701の直径は5.5mm、厚さは0.3〜0.5mmとする。圧電素子120としては、例えば、直径が17mm、厚さ0.4mmの圧電素子120を用い、この圧電素子120を、直径24mm、厚さ0.09mmの銅板等によって形成される振動板130に接着して、マイクロポンプ1に組み込む。マイクロポンプ1の長さは30mm、幅は30mm、高さは10mmとする。このようなマイクロポンプ1の液送量は、1〜200μL/秒程度の微小な液送量となる。
以上のように構成されたマイクロポンプ1の動作について説明する。この実施の形態においては、マイクロポンプ1の通常動作は停止動作、すなわち、マイクロポンプ1は、通常、振動板130を振動させず、液送を行なわないものとする。
マイクロポンプ1の通常状態では、電磁石610は駆動停止される。すなわち、電磁石610は、マイクロポンプ1が液送を行なっていないときには駆動停止されている、電磁石610が駆動停止されると、電磁石610の鉄芯611に、吸入側逆止弁500の磁力作用部530が引き付けられ、吸入側逆止弁500は、図5の(B)に示す状態になる。
マイクロポンプ1を駆動するときには、電磁石610も駆動される。電磁石610が駆動されると、吸入側逆止弁500は、図5の(C)に示す状態になる。
図6は、この発明の第1実施形態として、振動板を振動させてポンプ室の容積を変化させたときのマイクロポンプの動作を順に示す図である。
まず、図6(A)は、ポンプ室内に液体を吸入するときのマイクロポンプのポンプ室周辺を示す断面図である。
図6(A)に示すように、振動板130が下方向に変位すると、ポンプ室110の容積が大きくなる。ポンプ室110の容積が大きくなると、吸入側逆止弁500は、図5の(C)に示す状態から、弁部520の周辺部が吸入側弁座310の下面から離れて、図6の(A)に示す状態になる。弁部520の周辺部が吸入側弁座310の下面から離れると、吸入側逆止弁500の弁部520と吸入口311との間に隙間ができて、液タンク101に溜められている液体102(図1)が、開口103、すなわち、吸入口311を通ってポンプ室110内に流入する。このとき、吐出側逆止弁700の弁部701によって吐出口321はふさがれており、ポンプ室110内に流入した液体が吐出口321から流出することはない。
次に、図6(B)は、ポンプ室内に吸入した液体を外部に吐出するときのマイクロポンプのポンプ室周辺を示す断面図である。
図6(B)に示すように、振動板130が上方向に変位すると、ポンプ室110の容積が小さくなる。ポンプ室110の容積が小さくなると、弁部520と吸入口311との間の隙間がふさがれて、液タンク101からポンプ室110には液体が流入しない。一方、吐出側逆止弁700と吐出口321との間に隙間ができて、ポンプ室110内の液体が吐出口321から吐出管202に流出し、吐出端203を通って外部に吐出される。
マイクロポンプ1は、図5の(C)に示すように振動板130の変位がない状態と、図6(A)に示すようにポンプ室110の容積を大きくする方向に振動板130が変位している状態と、図6(B)に示すようにポンプ室110の容積を小さくする方向に振動板130が変位している状態と、を繰り返すことによって、液タンク101内の液体102をポンプ室110内に吸入し、外部に吐出する。
ここまでの例では、振動板130の変位が0の状態(図5(C))から、振動板130がポンプ室110の容積を大きくする方向に変位した状態(図6(A))に変化し、振動板130の変位が0の状態(図5(C))に戻り、続いて振動板130がポンプ室110の容積を小さくする方向に変位した状態(図6(B))に変化し、振動板130の変位が0の状態(図5(C))に戻るまでの一連の動作の場合、すなわち1サイクル動作の場合を示したが、振動板130の変位が0の状態(図5(C))から、振動板130がポンプ室110の容積を大きくする方向に変位した状態(図6(A))に変化し、振動板130の変位が0の状態(図5(C))に戻る動作、すなわち半サイクル動作でも、マイクロポンプ1による液体の吸入と吐出が可能である。この場合は、1サイクルの半分程度の吐出量となる。同様に振動板130の変位が0の状態(図5(C))から、振動板130がポンプ室110の容積を小さくする方向に変位した状態(図6(B))に変化し、振動板130の変位が0の状態(図5(C))に戻る動作、すなわち半サイクル動作でも、マイクロポンプ1による液体の吸入と吐出が可能であり、この場合も1サイクル動作の半分程度の吐出量となる。
このように、マイクロポンプ1の吸入側逆止弁500は、マイクロポンプ1が液送停止している時には、磁力作用部530が電磁石610の鉄芯611に引き付けられることによって弁部520の全体が吸入側弁座310に接触し、吸入口311を閉塞するように固定されている。一方、マイクロポンプ1が液送を行なう時には、電磁石610が駆動され、磁力作用部530が鉄芯611と反発して、吸入側逆止弁500が吸入側弁座310から離れるように力を受ける。マイクロポンプ1が液送を行なう時に吸入側逆止弁500が吸入側弁座310から離れるように力を受けるので、弁を常に着座位置に付勢する従来のポンプと比較して、弁部520と吸入側弁座310との間が開きやすい。したがって、液体に気泡が含まれていても、気泡が吸入口311を通過しやすく、スムーズな液送が可能になる。
マイクロポンプ1が液送を終了し、振動板130の振動を停止する通常動作に戻るときには、電磁石610も駆動停止される。電磁石610が駆動停止されると、鉄芯611と磁力作用部530との間に斥力が働かなくなる。磁力作用部530は永久磁石によって形成されているので、電磁石610が駆動停止されると、磁力作用部530が鉄芯611に引き付けられて、吸入側逆止弁500は、図5の(B)に示す状態になる。
このように、マイクロポンプ1においては、吸入側逆止弁500の開閉自体を電磁石610の磁力の作用によって行なうのではなく、弁部520が吸入口311を閉塞または開放する動作を電磁石610の磁力の作用によって補助する。このようにすることにより、電磁石610の動作を最小限に抑えることができるので、消費電力や動作音を低減することができる。
以上のように、第1実施形態のマイクロポンプ1においては、磁力作用部530は、永久磁石によって形成され、電磁石610は、圧電素子120が振動板130を振動させるときには、磁力作用部530と鉄芯611との間に斥力が働くように磁界を発生させ、圧電素子120が振動板130を振動させないときには磁界を発生させないように動作する。
吸入側逆止弁500の磁力作用部530が永久磁石によって形成され、電磁石610の鉄芯611が鉄によって形成されているので、電磁石610を駆動しないときには、吸入側逆止弁500の磁力作用部530が電磁石610の鉄芯611に引きつけられて、吸入側逆止弁500が吸入口311を閉塞するように固定される。吸入側逆止弁500が吸入口311を閉塞するように固定されることによって、液漏れを防ぐことができる。
一方、電磁石610を駆動することによって、磁力作用部530と鉄芯611との間に斥力が働くように磁界を発生させることができる。磁力作用部530と鉄芯611との間に斥力が働くことによって、液体に気泡が含まれていても、安定して液送を行なうことができる。
このように、吸入側逆止弁500が吸入口311を閉塞するように固定するときには、電磁石610を駆動する必要がない。そこで、マイクロポンプ1の通常動作が停止動作である場合、すなわち、マイクロポンプ1が通常、液送を停止している場合には、液送を行なうときだけ電磁石610を駆動すればよい。
このようにすることにより、マイクロポンプ1の駆動停止時の液漏れを防ぐとともに、液体中に気泡が含まれていても安定した液送を行うことが可能であり、かつ、動作音の低減と消費電力の低減が可能なマイクロポンプ1を提供することができる。
図7は、第1実施形態のマイクロポンプにおける電磁石の別の配置を示す図である。
図7に示すように、電磁石610は、吸入側弁座310の上面上に配置されず、例えば、吸入吐出側ケース200の内部に埋め込まれるように配置されてもよい。電磁石610の鉄芯611は、吸入側弁座310の穴部312の内部に挿入されている。
このように、鉄芯611が、吸入側逆止弁500の磁力作用部530に磁力の作用を及ぼすことが可能であるように配置されていれば、電磁石610はどこに配置されていてもよい。
なお、鉄芯611や磁力作用部530には、メッキなどの腐食防止処理が施されていることが好ましい。
図8は、第1実施形態のマイクロポンプにおける吸入側逆止弁の磁力作用部の別の形態を示す図である。
図8に示すように、永久磁石によって形成される磁力作用部530の周囲に、ヨークとよばれる鉄枠531を設けてもよい。このような鉄枠531を設けることによって、電磁石610の鉄芯611と磁力作用部530との吸着力をさらに高めることができる。
ただし、鉄枠531の極性と、磁力作用部530の極性とは逆になることに留意する必要がある。例えば、磁力作用部530がN極、鉄枠531がS極になる。
(第2実施形態)
この発明の第2実施形態に係るマイクロポンプは、第1実施形態のマイクロポンプと異なる点としては、通常動作が駆動動作、すなわち、第2実施形態のマイクロポンプは、通常、振動板130(図1)を振動させて、液送を行なうものとする。
図9は、この発明の第2実施形態のマイクロポンプに用いられる吸入側逆止弁を軸部に垂直な方向から見たときの断面図(A)と、吸入側逆止弁を弁座に取り付けて、電磁石を駆動しないときの状態を示す図(B)と、吸入側逆止弁を弁座に取り付けて、電磁石を駆動するときの状態を示す図(C)である。
図9の(A)に示すように、吸入側逆止弁501は、弁部520と軸部510と磁力作用部540とを有する。吸入側逆止弁501の弁部520と軸部510は、ゴム等の樹脂素材によって形成されている。磁力作用部540は、強磁性体である鉄によって形成されて、軸部510の端面に取りつけられている。
軸部510は、棒状に形成されている。弁部520の径は、軸部510の径よりも大きい。弁部520は、軸部510側の面が凹面状、軸部510と反対側の面が凸面状の、開いた傘状に形成されている。弁部520には、軸部510が突出している面と反対側の面の中央に、弁部520から突出した突起として頂部521が形成されている。
図9の(B)に示すように、吸入側逆止弁501は、弁部520が吸入口311を閉塞するように、吸入側弁座310の下面側から吸入側弁座310に配置される。弁部520は、吸入口311に配置される。磁力作用部540が取り付けられた軸部510は、穴部312に挿入される。
吸入側弁座310の上面には、鉄芯611を有する電磁石610が取り付けられている。鉄芯611は、吸入側弁座310の上側から、穴部312の内部に挿入されている。穴部312の内部では、軸部510の磁力作用部540と、電磁石610の鉄芯611とが対向する。
電磁石610の鉄芯611は、750℃以上の高温で焼きなまされ、磁性を帯びないように処理されている。
電磁石610を駆動していないときには、強磁性体によって形成されている磁力作用部540と電磁石610の鉄芯611との間には引力が働かないので、吸入側逆止弁501は、吸入側弁座310の下方に配置されている振動板130の上面に接触した状態で、軸部510が吸入側弁座310の穴部312に保持される。弁部520の周辺部は、吸入側弁座310の下面に接触している。
図9の(C)に示すように、電磁石610を駆動させると、鉄芯611に、磁力作用部540において電磁石610の鉄芯611に対向している側の極性と反対の極性を帯びさせることができる。鉄芯611に、磁力作用部540において電磁石610の鉄芯611に対向している側の極性と反対の極性を帯びさせると、吸入側逆止弁501の磁力作用部540の永久磁石が、電磁石610の鉄芯611に引き付けられる。そのため、磁力作用部540が取り付けられている吸入側逆止弁501の全体が上方向に引っ張られて、弁部520が吸入口311を下方向から閉塞するように固定される。このように吸入側逆止弁501が固定されると、吸入側逆止弁500の全体が吸入側弁座310の下面313に接触する。また、吸入側逆止弁501の頂部521は、吸入側弁座310の下方に配置される振動板130に接触せず、振動板130と吸入側逆止弁501との間には空間が形成される。
第2実施形態のマイクロポンプの通常状態では、電磁石610は駆動停止される。すなわち、電磁石610は、第2実施形態のマイクロポンプが液送を行なっているときには駆動停止されている、電磁石610が駆動停止されると、電磁石610の鉄芯611に、吸入側逆止弁501の磁力作用部530が引き付けられないので、吸入側逆止弁501は、図9の(B)に示す状態になる。
第2実施形態のマイクロポンプを駆動停止するときには、電磁石610が駆動される。電磁石610が駆動されると、吸入側逆止弁501は、図9の(C)に示す状態になる。
なお、磁力作用部540は、強磁性体の他、電磁石610が駆動停止しているときに、吸入側逆止弁501と電磁石610の鉄芯611とを引き付けないような弱い永久磁石によって形成されていてもよい。磁力作用部540が弱い永久磁石によって形成されている場合には、電磁石610を駆動停止していても磁力作用部540と鉄芯611とが磁力の作用によって付着することがあるが、付着力は弱く、弁部520の動きを阻害しない。
以上のように、第2実施形態のマイクロポンプにおいては、磁力作用部540は、鉄によって形成され、電磁石610は、圧電素子120が振動板130を振動させるときには磁界を発生させないように動作し、圧電素子120が振動板130を振動させないときには磁力作用部540と鉄芯611との間に引力が働くように磁界を発生させるように動作する。
吸入側逆止弁501の磁力作用部540は鉄によって形成されているので、電磁石610が磁界を発生させていないときには、吸入側逆止弁501の磁力作用部540は電磁石610の鉄芯611に引き付けられない。したがって、電磁石610が駆動されていないときには、吸入側逆止弁501は、吸入側弁座310に引きつけられず、吸入口311を閉塞するように固定されない。そのため、液体に気泡が含まれていても、安定して液送を行なうことができる。
一方、電磁石610を駆動することによって、磁力作用部540と鉄芯611との間に引力が働くように磁界を発生させることができる。磁力作用部540と鉄芯611との間に引力が働くことによって、吸入側逆止弁501の磁力作用部540が電磁石610の鉄芯611に引きつけられて、吸入側逆止弁501が吸入口311を閉塞するように固定される。吸入側逆止弁500が吸入口311を閉塞するように固定されることによって、液漏れを防ぐことができる。
このように、液送時には、電磁石610を駆動する必要がない。そこで、マイクロポンプの通常動作が駆動動作である場合、すなわち、マイクロポンプが通常、液送を行なっている場合には、マイクロポンプが駆動停止するときだけ電磁石610を駆動すればよい。
このようにすることにより、マイクロポンプの駆動停止時の液漏れを防ぐとともに、液体中に気泡が含まれていても安定した液送を行うことが可能であり、かつ、動作音の低減と消費電力の低減が可能なマイクロポンプを提供することができる。
第2実施形態のマイクロポンプのその他の構成と効果は、第1実施形態のマイクロポンプと同様である。
この発明の第1実施形態と第2実施形態とを総合すると、マイクロポンプは、ポンプ室110と、外部からポンプ室110に液体を吸入するための吸入口311と、ポンプ室110の容積を変化させるための振動板130と、振動板130を振動させるための圧電素子120と、磁力の作用を受けるための磁力作用部530(第1実施形態)または磁力作用部540(第2実施形態)を有して吸入口311を閉塞または開放可能にするために配置される吸入側逆止弁500(第1実施形態)または吸入側逆止弁501(第2実施形態)と、吸入側逆止弁500(第1実施形態)または吸入側逆止弁501(第2実施形態)を保持するための吸入側弁座310と、鉄によって形成される鉄芯611を有する電磁石610とを備える。圧電素子120が振動板130を振動させるときには、磁力作用部530(第1実施形態)または磁力作用部540(第2実施形態)が受ける磁力作用によって、吸入側逆止弁500(第1実施形態)または吸入側逆止弁501(第2実施形態)を吸入側弁座310から離すように電磁石610が動作する。圧電素子120が振動板130を振動させていないときには、磁力作用部530(第1実施形態)または磁力作用部540(第2実施形態)が受ける磁力作用によって、吸入側逆止弁500(第1実施形態)または吸入側逆止弁501(第2実施形態)を吸入側弁座310に引きつけて吸入側逆止弁500(第1実施形態)または吸入側逆止弁501(第2実施形態)が吸入口311を閉塞するように固定されるように電磁石610が動作する。
圧電素子120が振動板130を振動させるときには、磁力作用部530(第1実施形態)または磁力作用部540(第2実施形態)が受ける磁力作用によって、吸入側逆止弁500(第1実施形態)または吸入側逆止弁501(第2実施形態)を吸入側弁座310から離すように電磁石610が動作することによって、液体中に気泡が混入している場合であっても、液送を行なうことが可能になる。
また、圧電素子120が振動体を振動させていないときには、磁力作用部530(第1実施形態)または磁力作用部540(第2実施形態)が受ける磁力作用によって、吸入側逆止弁500(第1実施形態)または吸入側逆止弁501(第2実施形態)を吸入側弁座310に引きつけて吸入側逆止弁500(第1実施形態)または吸入側逆止弁501(第2実施形態)が吸入口311を閉塞するように固定されるように電磁石610が動作することによって、マイクロポンプの駆動停止時には液漏れを防ぐことができる。
このようにすることにより、マイクロポンプの駆動停止時の液漏れを防ぐとともに、液体中に気泡が含まれていても安定した液送を行うことが可能なマイクロポンプを提供することができる。
(第3実施形態)
図10は、この発明の第3実施形態のマイクロポンプが備える吸入側逆止弁と吸入側弁座の周辺を示す断面図である。
図10に示すように、第3実施形態のマイクロポンプが備える吸入側逆止弁502は、軸部510の端面に磁力作用部530が配置され、磁力作用部530において電磁石610の鉄芯611と接触する部分には、接触部としてゴムシート550が配置されている。磁力作用部530と鉄芯611との間の磁力の作用を妨げないために、ゴムシート550の厚みは、1mm程度以下であることが好ましい。
以上のように、第3実施形態のマイクロポンプにおいては、磁力作用部530は、鉄芯611と接触可能な接触部を有し、接触部は、ゴムシート550によって形成されている。
このようにすることにより、磁力作用部530が電磁石610の鉄芯611に衝突して音が発生することを防ぐことができる。接触部はゴムシート550によって形成されているので、接触部が電磁石610と接触しても、発生する音を比較的小さくすることができる。
第3実施形態のマイクロポンプのその他の構成と効果は、第1実施形態のマイクロポンプと同様である。
(第4実施形態)
図11は、この発明の第4実施形態のマイクロポンプが備える吸入側逆止弁と吸入側弁座の周辺を示す断面図である。
図11に示すように、第4実施形態のマイクロポンプが備える吸入側逆止弁503においては、軸部510の内部に磁力作用部530が埋め込まれている。磁力作用部530と鉄芯611との間の磁力の作用を妨げないために、磁力作用部530の軸部510の上面からの深さは、1mm程度以下であることが好ましい。
以上のように、第4実施形態のマイクロポンプにおいては、磁力作用部530は、吸入側逆止弁503の内部に埋め込まれている。
このようにすることにより、磁力作用部530が電磁石610の鉄芯611に衝突して音が発生することを防ぐことができる。また、磁力作用部530が液体に接触して、腐食等することを防ぐことができる。
第4実施形態のマイクロポンプのその他の構成と効果は、第1実施形態のマイクロポンプと同様である。
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものである。
1:マイクロポンプ、120:圧電素子、130:振動板、310:吸入側弁座、311:吸入口、500,501,502,503:吸入側逆止弁、530,540:磁力作用部、550:ゴムシート、610:電磁石、611:鉄芯。