以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態におけるレール運搬車両と、連結運搬車両とを有するロングレール運搬車1の編成全体を示す編成図である。
ロングレール運搬車1は、ロングレール(1本の長さが150〜200mのレール)を運搬するために編成された鉄道車両であり、ロングレールを最大20本積載可能に構成されている。また、ロングレール運搬車1は、13両で構成されており、このうちの8両にはエンジン22(図3参照)が搭載されている。各エンジン22は、複数設けられているエンジンノッチの段数N(0N〜15Nの16段)のうち、一つの段数Nで作動し、その段数Nに応じた動力を車輪4に伝達するように構成されている。以後、エンジン22が搭載されている車両のことを、動力車と称する。なお、本実施形態における動力車は、制御動力車LMc1,LMc2(レール運搬車両)と、中間動力車M1〜M6(連結運搬車両)とである。
エンジンノッチの段数Nとは、エンジン22の出力を制御する数値であり、数値が大きくなる程エンジン22の出力が大きくなり、車両の牽引力(即ち、車輪4の牽引力)も大きくなる。本実施形態では、エンジンノッチの段数が15Nだと、エンジン22の出力が100%となり、約360馬力が出力される。一方、段数14N〜1Nの間では、段数が1N小さくなる毎に、エンジン22の出力が5%ずつ低下し、1Nでは、エンジン22の出力が30%となる。また、0Nでは、エンジンの出力がアイドルとなる。
本実施形態におけるロングレール運搬車1は、各動力車LMc1,LMc2,M1〜M6ごとに、動力車1両分の粘着質量(重量)を示す応荷重電流I、及び、動力車の走行速度を示す走行速度Vを検出し、その検出結果に基づいて、運転者により指示されているエンジンノッチの段数N(即ち、エンジン22の出力)が車輪4の空転を引き起こすかを判定する。そして、車輪4の空転を引き起こす動力車LMc1,LMc2,M1〜M6ごとに、車輪4の空転を引き起こすエンジンノッチの段数Nを、車輪4が空転しない最大のエンジンノッチの段数Nに設定して、車輪4の空転を抑制しつつ、目標速度までの加速度を短くする。
図1に示すように、ロングレール運搬車1は、13両の車両が連結され編成されており、これらの連結された車両の一端から他端に向かって順番に、(図1の上段の左側から右側に向かって)制御動力車LMc1、中間付随車T1、中間動力車M1、中間動力車M2、中間動力車M3が連結されている。続けて、(図1の中段の左側から右側に向かって)、中間付随車T2、中央締結車TL、中間付随車T3、中間動力車M4が連結され、さらに、(図1の下段の左側から右側に向かって)、中間動力車M5、中間動力車M6、中間付随車T4、制御動力車LMc2が連結されている。なお、ロングレール運搬車1では、制御動力車LMc1の後部から、中間付随車T1〜中間付随車T4を含み、制御動力車LMc2の後部までが、ロングレールを積載する積載部2とされており、積載されたロングレールは、中央締結車TLに設けられているレール締結装置6により締結されるように構成されている。
次に、各車両の構成について説明する。まず、中間付随車T1〜T4、及び、中央締結車TLについて説明し、その後、制御動力車LMc1,LMc2、及び、中間動力車M1〜M6について説明する。
中間付随車T1〜T4、及び、中央締結車TLは、動力車LMc1,LMc2,M1〜M6に牽引される被牽引車であり、主にロングレールを運搬するための車両である。中間付随車T1〜T4には、台枠3と、車輪4とが主に設けられている。また、中央締結車TLには、台枠3と、車輪4と、レール締結装置6とが主に設けられている。レール締結装置6は、ロングレール運搬車1に積載したロングレールを締結するための装置である。
次に、図2を参照して、制御動力車LMc1,LMc2、及び、中間動力車M1〜M6の構成について説明する。まず、制御動力車LMc1,LMc2について説明し、その後、中間動力車M1〜M6について説明する。図2(a)は、制御動力車LMc1の側面図である。制御動力車LMc1は、エンジン22が搭載された動力車であり、主にロングレール運搬車1の走行制御を行うための車両である。なお、制御動力車LMc1、及び、制御動力車LMc2は同一の構成であるので、制御動力車LMc1についてのみ説明し、制御動力車LMc2についての説明は省略する。
制御動力車LMc1には、台枠3と、車輪4と、運転席5と、制御装置10と、エンジン制御装置21と、エンジン22と、空気バネ25(図3参照)と、自動高さ調整弁28(図3参照)と、コンプレッサ30(図3参照)とが主に設けられている。
まず、車輪4とレールLRとに作用する力について説明する。図2(a)に示すように、制御動力車LMc1の各車輪4がそれぞれレールLRに当接している場合には、それぞれの当接位置に、制御動力車LMc1の粘着質量(重量)Wに応じた粘着力(摩擦力)が発生する(粘着力=粘着質量W×粘着係数μ)。また、エンジン22により各車輪4が駆動された場合には、それぞれの車輪4に、エンジン22の駆動力に応じた動輪周牽引力Fが発生する。詳細については後述するが、動輪周牽引力Fは、エンジン22におけるエンジンノッチの段数Nと、制御動力車LMc1の走行速度Vとの条件で一意に定まる力であり、各車輪4がレールLR上を進行方向に向かって走行するための力である。
そして、各車輪4において、動輪周牽引力Fが、車輪4とレールLRとの粘着力以下となる間は、動輪周牽引力FがレールLRに対して作用するので、制御動力車LMc1が進行方向に向かって走行することになる。また、動輪周牽引力Fが、車輪4とレールLRとの粘着力を超えると、車輪4が空転し、動輪周牽引力FがレールLRに対して作用しないため、運転者の指示通りに走行できなくなる。なお、ここでは、制御動力車LMc1おいて車輪4とレールLRとに作用する力を説明したが、他の動力車LMc2,M1〜M6においても同様に車輪4とレールLRとに上述した力が作用する。
運転席5には、ノッチ指令レバー(マスコン)20(図3参照)が主に設けられており、運転者は、運転席5においてノッチ指令レバー20などの操作機器を操作することにより、ロングレール運搬車1の走行を制御することができる。
ノッチ指令レバー(マスコン)20は、運転者がエンジンノッチの段数Nを指示するためのレバーである。ノッチ指令レバー20には、複数の指令ノッチの段数(0MN〜5MNの6段)が設けられており、この中から一つを選択できる。以後、エンジンノッチの段数Nと、指令ノッチの段数MNとを区別するために、エンジンノッチの段数を示す場合には、数値の後に「N」と記載し、指令ノッチの段数を示す場合には、数値の後に「MN」と記載する。
なお、本実施形態では、制御動力車LMc1,LMc2にしかノッチ指令レバー20が設けられていないが、各ノッチ指令レバー20により選択された指令ノッチの段数MNは、各動力車LMc1,LMc2,M1〜M6の制御装置10(受信手段)へそれぞれ伝達されるよう構成されている。
また、指令ノッチの段数1MNは、エンジンノッチの段数2Nに対応しており、指令ノッチの段数2MNは、エンジンノッチの段数5Nに対応している。以下同様に、指令ノッチの段数3MNはエンジンノッチの段数8Nに、指令ノッチの段数4MNはエンジンノッチの段数11Nに、指令ノッチの段数5MNはエンジンノッチの段数15Nに、指令ノッチの段数0MNはエンジンノッチの段数0Nに、それぞれ対応している。つまり、運転者により指令ノッチ1MNが選択されている場合には、エンジンノッチ2Nが指示されていることになる。
台枠3は、車体を支持する台であり、台枠3の上部には、運転席5が設けられている。また、台枠3の下部には、空気バネ25(図3参照)を介して車輪4が取り付けられており、制御装置10、エンジン制御装置21、エンジン22、空気バネ25(図3参照)、自動高さ調整弁28(図3参照)、コンプレッサ30(図3参照)などもそれぞれ取り付けられている。また、台枠3の上部は、ロングレールを載置する荷台となっている。
制御装置10は、応荷重電流I(動力車1両分の粘着質量(重量)に対応)、及び、走行速度Vを検出し、その検出結果に基づいて、運転者により指示されているエンジンノッチの段数N(即ち、エンジン22の出力)が車輪4の空転を引き起こすかを判定し、車輪4の空転を引き起こす場合には、エンジン22におけるエンジンノッチの段数Nを、車輪4が空転しない最大のエンジンノッチの段数Nに制御する。
エンジン制御装置21は、エンジン22の出力を制御するための装置であり、制御装置10から通知されるエンジンノッチの段数Nに応じて、エンジン22の出力を制御する。エンジン22は、車輪4を駆動して、制御動力車LMc1を走行させるための装置である。
空気バネ25は、圧縮空気の弾力性を利用して、レールLRから台枠3までの高さを調整するための装置である。自動高さ調整弁28は、コンプレッサ30により生成される圧縮空気を空気バネ25へ供給、及び、空気バネ25に供給されている圧縮空気を排気するための弁である。コンプレッサ30は、圧縮空気を生成するための装置である。
なお、本実施形態では、レールLRから台枠3までの高さが常に一定(基準高さ)となるように、空気バネ25の圧力が自動高さ調整弁28により調整される。例えば、レールLRから台枠3までの高さが、基準高さを超えているか、又は、基準高さ未満であるかが機械的に検出され、基準高さを超えている場合には、自動高さ調整弁28により、空気バネ25の圧縮空気が排気され、レールLRから台枠3までの高さが基準高さとなるように調整される。一方、基準高さ未満となっている場合には、自動高さ調整弁28により、圧縮空気が吸気バネ25へ給気され、レールLRから台枠3までの高さが基準高さとなるように調整される。
次に、中間動力車M1〜M6について説明する。中間動力車M1〜M6は、エンジン22が搭載された動力車であり、主にロングレールを運搬するための車両である。また、中間動力車M1〜M6は、制御動力車LMc1,LMc2におけるノッチ指令レバー20の指令ノッチの段数MNに基づいて走行の制御がなされるように構成されている。なお、中間動力車M1〜M6は同一の構成であるので、中間動力車M1についてのみ説明し、中間動力車M2〜M6についての説明は省略する。
図2(b)は、中間動力車M1の側面図である。中間動力車M1には、台枠3と、車輪4と、制御装置10と、エンジン制御装置21と、エンジン22と、空気バネ25(図3参照)と、自動高さ調整弁28(図3参照)と、コンプレッサ30(図3参照)とが主に設けられている。中間動力車M1の構成は、制御動力車LMc1の構成から、運転席5を除いたものであり、その他の構成については同一であるので、その説明を省略する。
次に、図3を参照して、各動力車LMc1,LMc2,M1〜M6に搭載されている制御装置10の電気的構成について説明する。図3は、制御装置10の電気的構成を示すブロック図である。なお、図3では、空気バネ25、圧力センサ26、自動高さ調整弁28とがそれぞれ空気配管29により物理的に接続されていること、及び、自動高さ調整弁28がコンプレッサ30と供給配管31により物理的に接続されていることを模式的に示している。
制御装置10は、CPU11、ROM12、RAM13を主に有している。CPU11、ROM12、及び、RAM13は、バスライン14を介して互いに接続されている。また、バスライン14、ノッチ指令レバー20、エンジン制御装置21、速度センサ23、及び、圧力センサ26は、入出力ポート15を介して互いに接続されている。
また、ノッチ指令レバー20は、他の動力車LMc2,M1〜M6の各制御装置10とそれぞれ電気的に接続されており、ノッチ指令レバー20により選択された指令ノッチの段数MNは、指令ノッチ信号Sとして、他の動力車LMc2,M1〜M6の各制御装置10へそれぞれ伝達されている。また、エンジン制御装置21は、エンジン22と電気的に接続されている。
CPU11は、ROM12やRAM13に記憶されている固定値やプログラムに従って、入出力ポート15と接続された各部を制御する演算装置である。ROM12は、制御装置10で実行される制御プログラムや、固定値データ等を格納した書換不能な不揮発性のメモリである。図6のフローチャートに示す空転防止処理を実行するプログラムは、このROM12に格納されている。また、ROM12には、エンジンノッチ制限テーブルメモリ12aが設けられている。エンジンノッチ制限テーブルメモリ12aは、後述する空転防止処理(図6参照)で使用されるエンジンノッチ制限テーブルが格納されているメモリである。エンジンノッチ制限テーブルについては、図4を参照しつつ後述する。RAM13は、書き替え可能な揮発性のメモリであり、制御装置10の各種のデータを一時的に記憶するためのメモリである。
次に、制御装置10に接続されている主な装置について説明する。上述した通り、制御装置10には、ノッチ指令レバー20、エンジン制御装置21、速度センサ23、圧力センサ26などが接続されている。空気バネ25、圧力センサ26、及び、自動高さ調整弁28は、それぞれ空気配管29を介して接続されている。また、自動高さ調整弁28は、供給配管31を介して、コンプレッサ30と接続されている。
速度センサ23は、車両の走行速度Vを検出するためのセンサであり、また、圧力センサ26は、空気バネ25に供給されている圧縮空気の圧力(即ち、空気バネ25内の圧力)を検出するためのセンサである。
次に、図4を参照して、ロングレール運搬車1(動力車1両分)におけるエンジンノッチ制限テーブルについて説明する。図4は、ロングレール運搬車1(動力車1両分)におけるエンジンノッチ制限テーブルの内容の一例を示した概略図である。エンジンノッチ制限テーブルは、応荷重電流Iおよび走行速度Vの条件ごとに、複数設けられているエンジンノッチの段数N(0N〜15N)のうち、車輪4が空転しない最大のエンジンノッチの段数LNが格納されているテーブルである。また、後述する空転防止処理(図6参照)により使用されるテーブルである。なお、上述したエンジンノッチの段数Nや、指令ノッチの段数LNと区別するために、エンジンノッチ制限テーブルにおけるエンジンノッチの段数LNを示す場合には、数値の後に「LN」と記載する。
応荷重電流Iは、圧力センサ26から出力される電流値であり、台枠3に積載されるロングレールの積載量に応じて変化する数値である。エンジンノッチ制限テーブルには、応荷重電流I1から応荷重電流I35までの35種類の電流値が規定されている。なお、本実施形態では、応荷重電流I1以上、且つ、応荷重電流I2未満のことを、「応荷重電流I1」と記載する。
応荷重電流I1は、中間動力車M1〜M6の台枠3に何も積載されていない場合(即ち、空車時)に、圧力センサ26から出力される電流値であり、エンジンノッチ制限テーブルの中で最も小さい電流値である。なお、制御動力車LMc1,LMc2と、中間動力車M1〜M6とが共に空車の場合、中間動力車M1〜M6の方が車両の粘着質量(重量)が小さい。
一方、応荷重電流I35は、エンジンノッチ制限テーブルの中で最も大きい電流値である。応荷重電流がI35までしか規定されていないのは、応荷重電流I1〜I35に対応する積載量までが、車輪4の空転が発生する可能性のある積載量であり、応荷重電流I35に対応する積載量を超えると、動力車LMc1,LMc2,M1〜M6において車輪4の空転の発生がほぼ起こらないからである。なお、エンジンノッチ制限テーブルにおいて、応荷重電流I1からI35までの間は、等間隔に電流値I2〜I34が規定されており、各電流値I1〜I35は、正比例しながら増加していく。
また、走行速度Vは、ロングレール運搬車1の走行速度Vであり、後述する速度センサ23により検出される車両の走行速度Vである。エンジンノッチ制限テーブルでは、走行速度V「0〜20km/h」まで、速度「2km/h」間隔で10種類の走行速度Vが規定されている。なお、本実施形態では、速度V1km/h以上、且つ、速度V2km/h未満のことを、「V1〜V2km/h」と記載する。
つまり、エンジンノッチ制限テーブルは、35種類の応荷重電流Iと、10種類の走行速度Vとに対応する350パターンのエンジンノッチの段数LNがそれぞれ格納されている。例えば、応荷重電流I1および走行速度V「0〜2km/h(0km/h以上、且つ、2km/未満)」に対応するエンジンノッチの段数LNとしては、7LNが格納されており、応荷重電流I35および走行速度V「10〜12km/h」に対応するエンジンノッチの段数LNとしては、15LNが格納されている。なお、その他の応荷重電流Iおよび走行速度Vについても同様な説明となるので、その説明を省略する。
次に、図5を参照して、エンジンノッチ制限テーブルにおけるエンジンノッチの段数LNの規定方法の一例について説明する。図5は、ロングレール運搬車1(動力車1両分)における性能ノッチ曲線C,D,Eと、粘着力曲線A,A2,B,Fとの一例を示したグラフである。なお、グラフの縦軸は動輪周牽引力F[kN]、及び、粘着力[kN]を示し、横軸は走行速度V[km/h]を示している。
性能ノッチ曲線C,D,Eは、各エンジンノッチの段数(8N〜15N)における動輪周牽引力Fと、走行速度Vとの関係を示した曲線あり、粘着力曲線A,A2,B,Fは、各動力車LMc1,LMc2,M1〜M6の粘着質量(重量)Wに応じた粘着力と、走行速度Vとの関係を示した曲線である。
上述した通り、動輪周牽引力Fは、各動力車LMc1,LMc2,M1〜M6の各車輪4がレールLR上を進行方向に向かって走行するための力であり、粘着力は、各動力車LMc1,LMc2,M1〜M6の粘着質量(重量)Wに応じて、各車輪4とレールLRとの当接位置に発生する摩擦力である。
図5において、性能ノッチ曲線C(実線)は、エンジンノッチの段数8Nにおける動輪周牽引力Fと、走行速度Vとの関係を示した曲線である。同様に、性能ノッチ曲線D(実線)は、エンジンノッチの段数11Nにおける動輪周牽引力Fと、走行速度Vとの関係を示し、性能ノッチ曲線E(実線)は、エンジンノッチの段数15Nにおける動輪周牽引力Fと、走行速度Vとの関係を示した曲線である。
図に示すように、各性能ノッチ曲線C,D,Eは、同一の走行速度Vにおいて、エンジンノッチの段数Nが大きいほど動輪周牽引力Fが大きく、その動輪周牽引力Fは、走行速度Vが「0km/h」の場合に最大となり、走行速度Vが上昇するに従って減少していく。
また、図5において、性能ノッチ曲線C〜D間に点線で示した曲線は、エンジンノッチの段数9N〜10Nに対応する性能ノッチ曲線であり、性能ノッチ曲線D〜E間に点線で示した曲線は、エンジンノッチの段数12N〜14Nに対応する性能ノッチ曲線である。なお、点線で示した曲線は、グラフを見やすくするために、一部省略している。また、本来は他のエンジンノッチの段数1N〜7Nに対応する性能ノッチ曲線もあるが、このグラフでは省略している。
また、図5において、粘着力曲線A(実線)は、積載量が最大の場合(満車時)における中間動力車M1〜M6の粘着力と、走行速度Vとの関係を示した曲線であり、粘着力曲線Bは、何も積載していない場合(空車時)における中間動力車M1〜M6の粘着力と、走行速度Vとの関係を示した曲線である。同様に、粘着力曲線F(実線)は、積載量がXの場合(満車時と空車時との中間)における中間動力車M1〜M6の粘着力と、走行速度Vとの関係を示した曲線であり、粘着力曲線A2(実線)は、制御動力車LMc1,LMc2の粘着力と、走行速度Vとの関係を示した曲線である。なお、制御動力車LMc1,LMc2は、ロングレールの端部(2.5m程度)が車両に載置されるだけであり、車両の粘着質量(重量)Wがほぼ一定であるので、一つの粘着力曲線A2のみが記載されている。また、中間動力車M1〜M6は、車両の大部分にロングレールが載置され、積載量が大きく変化するので、本来なら他の積載量に対応する粘着力曲線も多数あるが、このグラフでは省略している。
図に示すように、粘着力曲線A,B,Fは、同一の走行速度Vにおいて、積載量が多いものほど粘着力が高く、その粘着力は、走行速度Vが「0km/h」の場合に最大となり、走行速度Vが上昇するに従って小さくなる。なお、粘着力曲線A,A2が示す粘着力は、走行速度Vに関係なく、常に、性能ノッチ曲線E(実線,15N)の動輪周牽引力Fを上回っているが、これは、走行中に、エンジンノッチの段数Nがどれ(1N〜15N)であっても、車輪4が空転しないことを示している。
上述した通り、動輪周牽引力Fが粘着力を超えると、車輪4が空転し、動輪周牽引力FがレールLRに対して作用しなくなり、運転者の指示通りに走行できなくなる。よって、車輪4の空転を防止するためには、ロングレール運搬車1の走行時に、動輪周牽引力Fが、車両の粘着質量(重量)Wに応じた粘着力曲線A,B,Fが示す数値以下となるように制御しなければならない。本実施形態のエンジンノッチ制限テーブル(図4参照)は、各性能ノッチ曲線と、各積載量に応じた粘着力曲線とに基づいて、ロングレール運搬車1の走行時に、動輪周牽引力Fが、粘着力以下となるように最大のエンジンノッチの段数LNを規定したものである。
一例として、ロングレール運搬車1に何も積載していない場合(空車時)に、車輪4が空転しないように、最大のエンジンノッチの段数LNを規定する方法について説明する。この場合には、図中の粘着力曲線Bを参照する。なお、規定方法の説明中に、単に粘着力と記載した場合には、粘着力曲線Bにおける粘着力を示しているものとする。
概略を説明すると、粘着力曲線Bと、性能ノッチ曲線C,D,Eとの交点を全て見つけ出し、ロングレール運搬車1の走行速度Vが、各交点における走行速度Vを超えるまでは、交差している性能ノッチ曲線の段数より一つ小さい段数Nを、最大のエンジンノッチの段数LNとする。
図5に示すように、粘着力曲線Bは、性能ノッチ曲線C〜Eの間に位置する各性能ノッチ曲線にそれぞれ交差している。粘着力曲線Bと交差している各性能ノッチ曲線のうち、各交点における走行速度Vが小さいものから順に説明する。
性能ノッチ曲線C(8N,実線)は、走行速度V「約3km/h」において粘着力曲線Bと交差している。つまり、ロングレール運搬車1の走行速度Vが「約3km/h」未満の間は、エンジンノッチの段数を8Nにすると「動輪周牽引力>粘着力」となるので、車輪4が空転することを示している。なお、走行速度Vが「約3km/h」以上となれば、エンジンノッチの段数を8Nにしても「動輪周牽引力<粘着力」となるので、車輪4の空転は生じない。本実施形態では、速度「2km/h」ごとに、エンジンノッチの段数LNを規定しているので、走行速度V「0〜2km/h」および「2〜4km/h」では、最大のエンジンノッチの段数LNをそれぞれ「7LN」と規定している(図4の応荷重電流I1を参照)。
次に、性能ノッチ曲線(9N,点線)は、走行速度V「約7km/h」において粘着力曲線Bと交差している。つまり、ロングレール運搬車1の走行速度Vが「約7km/h」未満の間は、エンジンノッチの段数を9Nにすると「動輪周牽引力>粘着力」となるので、車輪4が空転することを示している。なお、走行速度Vが「約7km/h」以上となれば、エンジンノッチの段数を9Nにしても「動輪周牽引力<粘着力」となるので、車輪4の空転は生じない。よって、走行速度V「4〜6km/h」および「6〜8km/h」では、最大のエンジンノッチの段数LNをそれぞれ「8LN」と規定している(図4の応荷重電流I1を参照)。
以下、他の各性能ノッチ曲線(10N〜15N)についても同様に、各交点における走行速度Vに基づいて、最大のエンジンノッチの段数LNをそれぞれ規定する。性能ノッチ曲線(10N,点線)は、走行速度V「約8.5km/h」において粘着力曲線と交差しているので、走行速度V「8〜10km/h」では、最大のエンジンノッチの段数LNを「9LN」と規定する。また、性能ノッチ曲線D(11N,実線)は、走行速度V「約11km/h」において粘着力曲線Bと交差しているので、走行速度V「12〜14km/h」では、最大のエンジンノッチの段数LNを「10LN」と規定する。なお、性能ノッチ曲線12N〜14Nについての説明は同様であるので省略する。
図4に示すエンジンノッチ制限テーブルにおいて、空車時における(応荷重電流I1における)最大のエンジンノッチの段数LNは、14Nとなっているが、これは、走行速度V「0〜20km/h」までしかエンジンノッチの段数LNを規定していないからである。つまり、性能ノッチ曲線E(15N,実線)が、走行速度V「約18.1km/h」において粘着力曲線Bと交差しているので、走行速度V「18〜20km/h」では、最大のエンジンノッチの段数LNが「14N」と規定されている(図4の応荷重電流I1を参照)。例えば、エンジンノッチ制限テーブルに、走行速度V「20〜22km/h」の列を追加して、エンジンノッチの段数LNを15LNと規定しても良い。
以上、一例として、ロングレール運搬車1に何も積載していない場合(空車時)に、車輪4が空転しない最大のエンジンノッチの段数LNを規定する方法について説明した。以後同様に、エンジンノッチ制限テーブルにおける積載量の増量分(応荷重電流Iの増量分)ごとに、粘着力曲線を求め、その粘着力曲線と、各性能ノッチ曲線1N〜15Nとの交点に基づき、最大のエンジンノッチの段数LNを規定する。例えば、粘着力曲線F(積載量が満車時と空車時との中間)に対応するエンジンノッチの段数LNを規定する。この繰り返しにより、図4に示すエンジンノッチ制限テーブルにおける各エンジンノッチの段数LNを規定できる。
次に、図6を参照して、各動力車LMc1,LMc2,M1〜M6における制御装置10のCPU11により実行される空転防止処理について説明する。図6は、制御装置10の空転防止処理を示すフローチャートである。この空転防止処理は、応荷重電流I(動力車1両分の粘着質量(重量)に対応)、及び、走行速度Vを検出し、その検出結果に基づいて、運転者により指示されているエンジンノッチの段数N(即ち、エンジン22の出力)が車輪4の空転を引き起こすかを判定し、車輪4の空転を引き起こす場合には、エンジンノッチの段数を、車輪4が空転しない最大のエンジンノッチの段数LNに設定するための処理である。
この空転防止処理は、制御装置10の主電源が投入されてから主電源が遮断されるまで繰り返し(例えば、100ms毎に)実行される処理である。空転防止処理では、まず、空気バネ25の空気圧に応じて圧力センサ26から出力される応荷重電流Iを検出し(S1)、次に、速度センサ23から出力される走行速度Vを検出する(S2)。
そして、検出した応荷重電流I、及び、走行速度Vに対応するエンジンノッチの段数LNを、エンジンノッチ制限テーブルメモリ12aに格納されているエンジンノッチ制限テーブルから取得する(S3)。次に、ノッチ指令レバー(マスコン)20により選択されている指令ノッチの段数MNを取得し(S4)、取得した指令ノッチの段数MNに対応するエンジンノッチの段数Nを取得する(S5)。
そして、S5の処理により取得したエンジンノッチの段数N、即ち、ノッチ指令レバー20により指示されているエンジンノッチの段数Nが、エンジンノッチ制限テーブルより取得したエンジンノッチの段数LNを超えているかを判定する(S6)。
S6の処理において、ノッチ指令レバー20により指示されているエンジンノッチの段数Nが、エンジンノッチ制限テーブルより取得したエンジンノッチの段数LNを超えている場合は(S6:Yes)、ノッチ指令レバー20により指示されているエンジンノッチの段数Nを、エンジン22におけるエンジンノッチの段数Nに設定すると、車輪4の空転が起きてしまう。
よって、この場合は(S6:Yes)、エンジンノッチ制限テーブルより取得したエンジンノッチの段数LNを、エンジン制御装置21に通知する(S7)。その結果、エンジン22におけるエンジンノッチの段数Nは、エンジンノッチ制限テーブルより取得したエンジンノッチの段数LNに設定される。
一方、S6の処理において、ノッチ指令レバー20により指示されているエンジンノッチの段数Nが、エンジンノッチ制限テーブルより取得したエンジンノッチの段数LN以下である場合は(S6:No)、ノッチ指令レバー20により指示されているエンジンノッチの段数Nを、エンジン22におけるエンジンノッチの段数Nに設定しても、車輪4の空転は起きない。
よって、この場合は(S6:No)、ノッチ指令レバー20により指示されているエンジンノッチの段数Nを、エンジン制御装置21に通知する(S8)。その結果、エンジン22におけるエンジンノッチの段数Nは、ノッチ指令レバー20により指示されているエンジンノッチの段数Nに設定される。そして、S7の処理、または、S8の処理が終了したら、S1の処理に戻り、上述したS1〜S8の各処理を繰り返す。
以上の図6のフローチャートの空転防止処理により、応荷重電流I(動力車1両分の粘着質量(重量)に対応)、及び、走行速度Vを検出し、その検出結果に基づいて、複数のエンジンノッチの段数(1N〜15N)のうち、車輪4が空転しない最大のエンジンノッチの段数LNを取得することができる。そして、運転者により指示されたエンジンノッチの段数Nが、取得したエンジンノッチの段数LNよりも大きい場合には、取得したエンジンノッチの段数LNで、エンジン22を作動させる。よって、「動輪周牽引力F<粘着力」となり、車輪4の空転を抑制できるので、目標速度に達するまでの車両の加速時間も短くできる。
また、ロングレール運搬車1(後述する定尺レール運搬車51)は、積載量の変化が大きく、車両の重量変化が大きい(空車時および満車時では、1車両の粘着質量(重量)Wが12t(約1.6倍)も変化する。即ち、変化幅が広い)ので、車輪4を空転させずに走行させるには熟練した技術が必要であり、非常に困難であるが、熟練者でない運転者が運転し、エンジンノッチの段数Nの指示を誤ったとしても、車輪4の空転を抑制でき、目標速度に達するまでの車両の加速時間も短くできる。
また、上述した空転防止処理は、繰り返し(例えば、100ms毎に)実行される処理であり、エンジンノッチの段数Nが車輪4の空転が起きない範囲内に制御されるので、エンジン22の出力を最大に維持しながら走行することもできる。また、車輪4の空転を抑制しつつ走行可能であるので、スムーズに加速して走行することができる。また、車輪4の空転を抑制できるので、動輪周牽引力とならない無駄なエネルギー(電力や燃料など)の消費を抑制できる。
また、各動力車LMc1,LMc2,M1〜M6では、運搬するロングレールの長さ(150m〜200m)や本数、また、ロングレールの積載位置などにより、荷重の重量差が生じるので、各動力車LMc1,LMc2,M1〜M6の粘着質量(重量)がバラバラとなる。例えば、各動力車LMc1,LMc2,M1〜M6のエンジンノッチの段数Nを、それぞれ同一値とする制御も考えられるが、荷重が最小の車両にエンジンノッチの段数Nを合わせると、動輪周牽引力Fが不足する可能性が生じ、荷重が最大の車両にエンジンノッチの段数Nを合わせると、荷重の軽い車両で車輪4が空転する可能性が生じる。
本実施形態では、上述した空転防止処理が、各動力車LMc1,LMc2,M1〜M6(後述する各動力車RMc1,RMc2)ごとに実行されるので、荷重の重量差(即ち、各動力車の重量差)に関係なく、車輪4の空転が起きない範囲内でエンジン22の出力を最大に維持しながら走行できる。即ち、荷重が大きい車両のエンジン22のみ、車輪4が空転しないようにエンジン22の出力を高くできるので、ロングレール運搬車1(定尺レール運搬車51)における動輪周牽引力を最大にすることができる。これは特に、急勾配を走行する場合に有効である。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態におけるレール運搬車両と、連結運搬車両とは、ロングレール(1本の長さが150〜200mのレール)を運搬するために編成されたロングレール運搬車1の一車両であったが、第2の実施形態におけるレール運搬車両は、定尺レール(1本の長さが25mのレール)を運搬するために編成された定尺レール運搬車51の一車両である。
図7を参照して、定尺レール運搬車51について説明する。図7は、本発明の第2の実施形態におけるレール運搬車両を有する定尺レール運搬車51の編成全体を示す編成図である。定尺レール運搬車51は、定尺レール(1本の長さが25mのレール)を運搬するために編成された鉄道車両であり、定尺レールを最大46本積載可能に構成されている。
定尺レール運搬車51は、制御動力車RMc1(レール運搬車両)と、制御動力車RMc2(レール運搬車両)との2両が連結され構成されており、2両にそれぞれエンジン22が搭載されている。なお、定尺運搬車51では、制御動力車RMc1の運転席5の後部から、制御動力車RMc2の運転席5の後部までが、定尺レールを積載する積載部2とされている。
詳細については後述するが、本実施形態の定尺レール運搬車51は、2両の動力車RMc1,RMc2しか連結されていないので、定尺レールの運搬中に、動力車RMc1,RMc2の一方でエンジントラブルが発生すると、残りの1両で定尺レールの運搬を行わなければならない。しかし、1両であっても、車輪4の空転を起こさない範囲で最大の動輪周牽引力Fを発揮できるので、急な勾配がある線路でも定尺レールの運搬を問題なく継続することができる。
制御動力車RMc1,RMc2は、第1の実施形態における制御動力車LMc1と同様な構成を有しており、制御動力車RMc2には、定尺レール運搬車15に積載した定尺レールを締結するためのレール締結装置7が搭載されている。つまり、定尺レール運搬車51でも、上述したロングレール運搬車1と同様に、エンジンノッチ制限テーブル(図4参照)が用いられて、車輪4の空転が防止される。なお、エンジンノッチ制限テーブルは、ロングレール運搬車1、及び、定尺レール運搬車51に関わらず、同一(共通)である。
また、制御動力車RMc1,RMc2は、上述した中間動力車M1〜M6と同様に、車両の大部分にレールが載置されるため、積載量に応じて車両の粘着質量(重量)Wが大きく変化する。
次に、図8を参照して、定尺レール運搬車51の性能に基づいて、エンジンノッチ制限テーブルにおける各エンジンノッチの段数LNを規定する方法の一例を説明する。図8は、定尺レール運搬車51(動力車1両分)における性能ノッチ曲線I,J,Kと、粘着力曲線G,Hとの一例を示したグラフである。なお、グラフの縦軸は動輪周牽引力F[kN]、及び、粘着力[kN]を示し、横軸は走行速度V[km/h]を示している。
性能ノッチ曲線I,J,Kは、各エンジンノッチの段数(8N〜15N)における動輪周牽引力Fと、走行速度Vとの関係を示した曲線あり、粘着力曲線G,Hは、各動力車各動力車RMc1,RMc2の粘着質量(重量)Wに応じた粘着力と、走行速度Vとの関係を示した曲線である。
上述した通り、動輪周牽引力Fは、各動力車RMc1,RMc2の各車輪4がレールLR上を進行方向に向かって走行するための力であり、粘着力は、各動力車RMc1,RMc2の粘着質量(重量)Wに応じて、各車輪4とレールLRとの当接位置に発生する摩擦力である。
図8において、性能ノッチ曲線I(実線)は、エンジンノッチの段数8Nにおける動輪周牽引力Fと、走行速度Vとの関係を示した曲線である。同様に、性能ノッチ曲線J(実線)は、エンジンノッチの段数11Nにおける動輪周牽引力Fと、走行速度Vとの関係を示し、性能ノッチ曲線K(実線)は、エンジンノッチの段数15Nにおける動輪周牽引力Fと、走行速度Vとの関係を示した曲線である。
図に示すように、各性能ノッチ曲線I,J,Kは、同一の走行速度Vにおいて、エンジンノッチの段数Nが大きいほど動輪周牽引力Fが大きく、その動輪周牽引力Fは、走行速度Vが「0km/h」の場合に最大となり、走行速度Vが上昇するに従って小さくなる。
また、図8において、性能ノッチ曲線I〜J間に点線で示した曲線は、エンジンノッチの段数9N〜10Nに対応する性能ノッチ曲線であり、性能ノッチ曲線J〜K間に点線で示した曲線は、エンジンノッチの段数12N〜14Nに対応する性能ノッチ曲線である。なお、点線で示した曲線は、グラフを見やすくするために、一部省略している。また、本来は他のエンジンノッチの段数1N〜7Nに対応する性能ノッチ曲線もあるが、このグラフでは省略している。
また、図8において、粘着力曲線G(実線)は、積載量が最大の場合(満車時)における制御動力車RMc1,RMc2の粘着力と、走行速度Vとの関係を示した曲線であり、粘着力曲線H(実線)は、何も積載していない場合(空車時)における制御動力車RMc1,RMc2の粘着力と、走行速度Vとの関係を示した曲線である。なお、他の積載量に対応する粘着力曲線もあるが、このグラフでは省略している。
図に示すように、粘着力曲線G,Hは、同一の走行速度Vにおいて、積載量が多いものほど粘着力が高く、その粘着力は、走行速度Vが「0km/h」の場合に最大となり、走行速度Vが上昇するに従って減少する。なお、粘着力曲線Gが示す粘着力は、走行速度Vに関係なく、常に、性能ノッチ曲線K(15N,実線)の動輪周牽引力Fを上回っているが、これは、走行中に、エンジンノッチの段数Nがどれ(1N〜15N)であっても、車輪4が空転しないことを示している。
上述した通り、動輪周牽引力Fが粘着力を超えると、車輪4が空転し、動輪周牽引力FがレールLRに対して作用しなくなり、運転者の指示通りに走行できなくなる。よって、車輪4の空転を防止するためには、定尺レール運搬車51の走行時に、動輪周牽引力Fが、車両の粘着質量(重量)Wに応じた粘着力曲線が示す数値以下となるように制御しなければならない。定尺レール運搬車51は、ロングレール運搬車1と同様に、上述したエンジンノッチ制限テーブル(図4参照)を用いて、車輪4の空転を防止している。
一例として、定尺レール運搬車51に何も積載していない場合(空車時)に、車輪4が空転しないように、最大のエンジンノッチの段数LNを規定する方法について説明する。この場合には、図中の粘着力曲線Hを参照する。なお、抽出方法の説明中に、単に粘着力と記載した場合には、粘着力曲線Hにおける粘着力を示しているものとする。
図8に示すように、粘着力曲線Hは、性能ノッチ曲線I〜Kの間に位置する各性能ノッチ曲線にそれぞれ交差している。粘着力曲線Hと交差している各性能ノッチ曲線のうち、各交点における走行速度Vが小さいものから順に説明する。
性能ノッチ曲線J(11N,実線)は、走行速度V「約5km/h」において粘着力曲線Hと交差している。つまり、定尺レール運搬車51の走行速度Vが「約5km/h」未満の間は、エンジンノッチの段数を11Nにすると「動輪周牽引力>粘着力」となるので、車輪4が空転することを示している。なお、走行速度Vが「約5km/h」以上となれば、エンジンノッチの段数を11Nにしても「動輪周牽引力<粘着力」となるので、車輪4の空転は生じない。よって、走行速度V「0〜2km/h」、「2〜4km/h」、及び、「4〜6km/h」では、最大のエンジンノッチの段数LNをそれぞれ「10LN」と規定する。
次に、性能ノッチ曲線(12N,点線)は、走行速度V「約8.5km/h」において粘着力曲線Hと交差している。つまり、定尺レール運搬車51の走行速度Vが「約8.5km/h」未満の間は、エンジンノッチの段数を12Nにすると「動輪周牽引力>粘着力」となるので、車輪4が空転することを示している。よって、走行速度V「6〜8km/h」および「8〜10km/h」では、最大のエンジンノッチの段数LNをそれぞれ「11LN」と規定する。
以下、他の各性能ノッチ曲線13N〜15Nについても同様に、各交点における走行速度Vに基づいて、最大のエンジンノッチの段数LNをそれぞれ規定する。つまり、性能ノッチ曲線(13N,点線)は、走行速度V「約10km/h」において粘着力曲線Hと交差しているので、走行速度V「10〜12km/h」では、最大のエンジンノッチの段数LNを「12LN」と規定する。また、性能ノッチ曲線(14N,点線)は、走行速度V「約12km/h」において粘着力曲線Hと交差しているので、走行速度V「12〜14km/h」では、最大のエンジンノッチの段数LNを「13LN」と規定する。
また、性能ノッチ曲線K(15N,実線)は、走行速度V「約13km/h」において粘着力曲線Hと交差しているので、走行速度V「12〜14km/h」では、最大のエンジンノッチの段数LNを「14LN」と規定する。そして、走行速度Vが「約13km/h」以上となれば、車輪4は空転しないので、走行速度V「14〜16km/h」、「16〜18km/h」、及び、「18〜20km/h」では、最大のエンジンノッチの段数LNをそれぞれ「15LN」と規定する。
以上、一例として、定尺レール運搬車51に何も積載していない場合(空車時)に、車輪4が空転しない最大のエンジンノッチの段数LNを規定する方法について説明した。以後同様に、エンジンノッチ制限テーブルにおける積載量の増量分(応荷重電流Iの増量分)ごとに粘着力曲線を求め、その粘着力曲線と、各性能ノッチ曲線1N〜15Nとの交点に基づき、最大のエンジンノッチの段数LNを規定する。この繰り返しにより、エンジンノッチ制限テーブルの各エンジンノッチの段数LNを規定できる。
次に、図9を参照して、定尺レール運搬車51の勾配走行性能について説明する。図9は、定尺レール運搬車51(動力車1両分)における性能ノッチ曲線と、走行抵抗曲線との一例を示したグラフである。上述した通り、ロングレール運搬車1は、13両で編成されており、そのうちの8両が動力車LMc1,LMc2,M1〜M6である。一方、定尺レール運搬車51は、2両で編成されており、2両がそれぞれ動力車RMc1,RMc2である。
ロングレール運搬車1には、8両の動力車LMc1,LMc2,M1〜M6が連結されているので、例えば、積載量が最大の場合(満車時)に、何れかの動力車LMc1,LMc2,M1〜M6でエンジントラブルが発生しても、残りの7両の動力車LMc1,LMc2,M1〜M6により、問題なくロングレールの運搬を継続することができる。しかしながら、定尺レール運搬車51は、2両の動力車RMc1,RMc2しか連結されていないので、例えば、積載量が最大の場合(満車時)に、動力車RMc1,RMc2の一方でエンジントラブルが発生すると、残りの1両で定尺レールの運搬を行わなければならず、勾配が急な場合などは、走行が困難になることもある。
しかしながら、本実施形態の定尺レール運搬車51によれば、動力車RMc1,RMc2の一方でエンジントラブルが発生した場合でも、残りの1両は、車輪4の空転を起こさない範囲で最大の動輪周牽引力Fを発揮できるので、25‰勾配がある線路でも定尺レールの運搬を継続することができる。
図9は、定尺レール運搬車51(動力車1両分)における性能ノッチ曲線I,J,Kと、粘着力曲線Hと、走行抵抗曲線Z1〜Z4との一例を示したグラフである。なお、グラフの縦軸は動輪周牽引力F[kN]、粘着力[kN]、及び、走行抵抗[kN]を示し、横軸は走行速度V[km/h]を示している。
図9は、図8に示した性能ノッチ曲線I,J,K、及び、粘着力曲線Hに加えて、さらに、走行抵抗曲線Z1〜Z4を追加したグラフである。性能ノッチ曲線I,J,K、及び、粘着力曲線Hについては、図8における説明と同様となるので、その説明を省略する。走行抵抗曲線Z1〜Z4は、各動力車各動力車RMc1,RMc2の粘着質量(重量)Wに応じた走行抵抗と、走行速度Vとの関係を示した曲線である。
上述した通り、動輪周牽引力Fは、各動力車RMc1,RMc2の各車輪4がレールLR上を進行方向に向かって走行するための力であり、走行抵抗は、各動力車RMc1,RMc2の各車輪4が、レールLRから受ける抵抗力である。
また、図9において、平坦直線走行抵抗曲線Z1(実線)は、定尺レール運搬車51の積載量が最大(定尺レール46本積載時)の状態で、制御動力車RMc1,RMc2の一方だけで、平坦直線(勾配0‰)を走行した場合に、各車輪4が受ける走行抵抗と、走行速度Vとの関係を示した曲線である。また、10‰勾配走行抵抗曲線Z2(実線)は、定尺レール運搬車51の積載量が最大(定尺レール46本積載時)の状態で、制御動力車RMc1,RMc2の一方だけで、10‰勾配を走行した場合に、各車輪4が受ける走行抵抗と、走行速度Vとの関係を示した曲線である。
同様に、25‰勾配走行抵抗曲線Z3(実線)は、定尺レール運搬車51の積載量が最大(定尺レール46本積載時)の状態で、制御動力車RMc1,RMc2の一方だけで、25‰勾配を走行した場合に、各車輪4が受ける走行抵抗と、走行速度Vとの関係を示した曲線である。また、33‰勾配走行抵抗曲線Z4(実線)は、定尺レール運搬車51に定尺レール27本を積載した状態で33‰勾配を、又は、定尺レール運搬車51に定尺レール15本を積載した状態で40‰勾配を、制御動力車RMc1,RMc2の一方だけで走行した場合に、各車輪4が受ける走行抵抗と、走行速度Vとの関係を示した曲線である。
これらの走行抵抗直線Z1〜Z4によれば、制御動力車RMc1,RMc2がレールLR上を走行する場合に、各車輪4の動輪周牽引力Fが、各走行抵抗直線Z1〜Z4が示す走行抵抗を上回った場合に、進行方向に走行できることを示している。
例えば、定尺レール運搬車51の積載量が最大の状態で、制御動力車RMc1,RMc2の一方だけで、平坦直線(勾配0‰)を走行開始する場合であれば、平坦直線走行抵抗曲線Z1(実線)を参照する。図9の平坦直線走行抵抗曲線Z1(実線)によると、走行速度V「0km/h」では、走行抵抗が「約4.7kN」となる。ここで、制御動力車RMc1,RMc2の一方が、エンジンノッチの段数8Nで走行開始すると、各車輪4に動輪周牽引力F「約37kN」が発生するので、定尺レール運搬車51は、進行方向に走行開始できる。
また、定尺レール運搬車51の積載量が最大の状態で、制御動力車RMc1,RMc2の一方だけで、10‰勾配を走行する場合であれば、10‰走行抵抗曲線Z2(実線)を参照する。図9の10‰勾配走行抵抗曲線Z2(実線)によると、走行速度V「10km/h」では、走行抵抗が「約15kN」となる。ここで、制御動力車RMc1,RMc2の一方が、エンジンノッチの段数8Nで走行している場合に、走行速度Vが「10km/h」であれば、各車輪4に動輪周牽引力F「約25.5kN」が発生するので、定尺レール運搬車51は、進行方向に走行できる。
上述したように、平坦な直線(勾配なし)や、緩やかな勾配(例えば、10‰勾配)を走行する場合であれば、動力車RMc1,RMc2の一方にエンジントラブルが発生しても、定尺レール運搬車51は、問題なく進行方向に走行できる。しかしながら、勾配が大きくなるに連れて走行抵抗も大きくなるので、制御動力車RMc1,RMc2の一方だけで走行することが困難になる。
例えば、定尺レール運搬車51の積載量が最大の状態で、制御動力車RMc1,RMc2の一方だけで、25‰勾配を走行開始する場合であれば、図9の25‰走行抵抗曲線Z3(実線)を参照する。25‰走行抵抗曲線Z3(実線)によると、走行速度V「0km/h」では、走行抵抗が「約34kN」となる。ここで、制御動力車RMc1,RMc2の一方が、エンジンノッチの段数8Nで走行開始すると、各車輪4に動輪周牽引力F「約37kN」が発生するので、定尺レール運搬車51は、進行方向に走行開始できる。
そして、走行速度Vが「4.0km/h」に達すると、エンジンノッチの段数8Nにおける動輪周牽引力Fと、走行抵抗とが等しくなるので、これ以後、走行速度Vを「4.0km/h」以上とするには、エンジンノッチの段数Nを9N以上にしなければならない。以下同様に、走行速度V「6.5km/h」となった場合には、エンジンノッチの段数Nを10N以上に、走行速度V「8.8km/h」となった場合には、エンジンノッチの段数Nを11N以上にしなければ、走行速度Vが上昇しない。
従来の旅客車では、車輪4の空転を抑制するために、例えば、空車時に最大のエンジンノッチの段数N(15N)で走行しても車輪4が空転しないように、エンジンノッチの段数15Nで走行しても車輪4が空転しない走行速度Vを超えるまで、エンジンノッチの段数Nの切り替えを禁止するものがあった。旅客車は、空車時と満車時との重量差が約2割であり、空車時でも満車時でも、走行に必要な動輪周牽引力Fに大きな差がないので、空車時を基準として、エンジンノッチの段数Nの切り替えを禁止しても問題がなかった。
しかしながら、ロングレール運搬車1では、空車時(約15t)と満車時(約24t)とにおいて、1車両の粘着質量(重量)Wが9t(約1.6倍)も変化する。また、定尺レール運搬車51では、空車時(約18t)と満車時(約30t)とにおいて、1車両の粘着質量(重量)Wが、12t(約1.7倍)も変化する。よって、空車時と満車時とでは、走行に必要な動輪周牽引力Fが大きく異なるので、上述したように空車時を基準としてエンジンノッチの段数Nの切り替えを禁止した場合、走行時の車輪4の空転は抑制可能であるが、積載時に(特に、満車時に)、走行に必要な動輪周牽引力Fを十分に得ることができなくなる。
特に、定尺レール運搬車51において、動力車RMc1,RMc2の一方にエンジントラブルが発生すると、残りの1両だけで、急勾配(例えば、25‰勾配や、33‰勾配)を走行することが困難になる。
例えば、定尺レール運搬車51が、空車時に最大のエンジンノッチの段数N(15N)で走行しても、車輪4が空転しない走行速度V(約14km/h)を超えるまで、エンジンノッチの段数Nの切り替えを禁止するように構成されていたとする。そして、定尺レール運搬車51が、27本の定尺レールを積載した状態で、33‰勾配を動力車RMc1,RMc2の一方だけで走行するものする。また、走行開始時のエンジンノッチの段数Nは、走行速度V(14km/h)を超えるまで、33‰勾配を走行開始可能な8N以下に制限されているものとする。
図9の33‰走行抵抗曲線Z4(実線)によると、走行速度V「0km/h」では、走行抵抗が「約34kN」となる。制御動力車RMc1,RMc2の一方が、エンジンノッチの段数8Nで走行開始すると、各車輪4に動輪周牽引力F「約37kN」が発生するので、定尺レール運搬車51は、進行方向に走行開始できる。
そして、走行速度Vが「約3km/h」に達すると、エンジンノッチの段数8Nにおける動輪周牽引力Fと、走行抵抗とが等しくなるので、これ以後、走行速度Vを「約3km/h」以上とするには、エンジンノッチの段数Nを9N以上にしなければならない。しかしながら、走行速度V「約14km/h」を超えるまでは、エンジンノッチの段数Nを8N以上に切り替えることができないので、走行速度V「約3km/h」の状態で延々と走行しなければならない。
しかしながら、本実施形態の定尺レール運搬車51によれば、動力車RMc1,RMc2の一方でエンジントラブルが発生した場合でも、残りの1両は、車輪4の空転を起こさない範囲で最大の動輪周牽引力Fを発揮できるので、即ち、走行開始の時点から、エンジンノッチの段数Nを15Nとできるので、33‰勾配がある線路でも定尺レールの運搬を問題なく継続することができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記実施形態では、エンジンノッチ制限テーブルを一つしか設けていないが、レールの劣化状態や、天候、車種などの走行条件に応じて、エンジンノッチ制限テーブルを設けても良い。エンジンノッチ制限テーブルを一つしか設けない場合は、車輪4が空転しないように広くマージンを取って、各エンジンノッチの段数LNを決定しなければならないが、走行条件に応じてエンジンノッチ制限テーブルを設ける場合であれば、マージンを広くしなくても良いので、各エンジンノッチの段数LNを精度良く規定できる。よって、走行条件に適したエンジンノッチ制限テーブルを使用することにより、より精度良く車輪4の空転を抑制できる。また、エンジン22の最大出力も向上させることができる。
また、上記実施形態のエンジンノッチ制限テーブルには、車両の粘着質量(重量)W、及び、車両の走行速度Vの条件ごとに、車輪4が空転しない最大のエンジンノッチの段数LNが一つずつ格納されているが、車両の粘着質量(重量)W、及び、車両の走行速度Vの条件ごとに車輪4が空転しないエンジンノッチの段数Nが全て格納されていても良い。その場合には、エンジン22におけるエンジンノッチの段数Nが、テーブルに格納されているエンジンノッチの段数のいずれかとなるように構成する。
また、上記実施形態のエンジンノッチ制限テーブルには、車両の粘着質量(重量)W、及び、車両の走行速度Vの条件ごとに、車輪4が空転しない最大のエンジンノッチの段数LNが一つずつ格納されているが、車輪4が空転し始める最初のエンジンノッチの段数LNを一つずつ格納しておいても良い。その場合には、エンジン22におけるエンジンノッチの段数Nが、テーブルに格納されているエンジンノッチの段数未満となるように構成する。また、車両の粘着質量(重量)W、及び、車両の走行速度Vの条件ごとに、車輪4が空転するエンジンノッチの段数LNを全て格納しておいても良い。その場合には、エンジン22におけるエンジンノッチの段数Nが、テーブルに格納されているエンジンノッチの段数以外となるように構成する。
また、上記実施形態のエンジンノッチ制限テーブルには、車両の粘着質量(重量)Wの条件、及び、車両の走行速度Vの条件ごとに、車輪4が空転しない最大のエンジンノッチの段数LNが一つずつ格納されているが、そのエンジンノッチ制限テーブルを車両の粘着質量(重量)Wの条件ごとのテーブルに分けて、その各テーブルを(制御装置10の)ROM12のエンジンノッチ制限テーブルメモリ12aにそれぞれ格納しておいても良い。また、エンジンノッチ制限テーブルを走行速度Vの条件ごとのテーブルに分けて、その各テーブルを(制御装置10の)ROM12のエンジンノッチ制限テーブルメモリ12aにそれぞれ格納しておいても良い。また、車輪4が空転し易いのは、特に走行開始時であるため、上述したエンジンノッチ制限テーブルのうち、走行開始時(例えば、走行速度0〜2km/h)に必要とする一部分のテーブルだけを、(制御装置10の)ROM12のエンジンノッチ制限テーブルメモリ12aに格納しておいても良い。テーブルの一部分だけをエンジンノッチ制限テーブルメモリ12aに格納することで、メモリの消費を抑制できる。
また、上記実施形態では、各動力車LMc1,LMc2,M1〜M6,RMc1,RMc2につき、1台のエンジン22が搭載されており、そのエンジン22による駆動力が、(自車両の)各車輪4へと伝達されているが、1両の動力車に複数台のエンジン22を搭載して、複数台のエンジン22のそれぞれが駆動力を(自車両の)各車輪4へ伝達するように構成しても良い。上述した本実施形態を適用すれば、複数台のエンジン22のそれぞれが駆動力を(自車両の)各車輪4に伝達する場合でも、各車輪4が空転しないように、複数台のエンジン22の出力を制御することができる。即ち、各車輪4が空転しないように、各エンジン22の駆動力の合計値を制御できる。また、1の動力車において、複数台のエンジン22のうち何れかが故障した場合でも、残りのエンジン22による駆動力を、各車輪4が空転しない範囲内で最大に維持しながら走行できるので、問題なく走行を継続することができる。また、1の動力車において、複数台のエンジン22のうち何れかが故障した場合でも、1の動力車には他のエンジン22があり、加えて、他の動力車にもエンジン22が複数あるので、正常な複数台のエンジン22によりロングレール運搬車1(定尺レール運搬車51)の全体を安定して走行させることができる。
また、上記実施形態では、空気バネ25の空気圧を圧力センサ26で検出して、車両の粘着質量(重量)Wを算出しているが、車両の粘着質量(重量)Wが測定できれば、他の構成であっても良い。例えば、空気バネ25の代わりに、車両に通常のコイルバネや板バネが設けられている場合には、コイルバネや板バネの長さを検出するセンサを設けて、その長さに基づいて、車両の粘着質量(重量)Wを算出しても良い。
また、上記実施形態では、車両の粘着質量(重量)W、及び、車両の走行速度Vに基づいて、車輪4の空転を抑制しているが、同一の車両に設けられている各車輪(駆動輪と、駆動輪以外の車輪)の回転数を比較して、回転数が異なっていれば、車輪4が空転していると判定して、エンジン22におけるエンジンノッチの段数Nを小さくするように構成しても良い。
また、上記実施形態では、運転者により指示されているエンジンノッチの段数N(即ち、エンジン22の出力)が車輪4の空転を引き起こすかを判定し、車輪4の空転を引き起こす場合には、エンジン22におけるエンジンノッチの段数Nを、車輪4が空転しない最大のエンジンノッチの段数LNに設定しているが、運転者により指示されているエンジンノッチの段数Nが、段数LN未満である場合には、エンジン22におけるエンジンノッチの段数Nを、段数LNに設定する構成としても良い。これにより、エンジン22の出力を、車輪4が空転しない最大の出力に維持できるので、特に急勾配を走行するときに有効である。
また、上記実施形態では、エンジンノッチ制限テーブルにおいて、応荷重電流I1から応荷重電流I35までの35種類の電流値を設けているが、この種類の数を任意の数としても良い。この種類を増やすほど、より細かくエンジンノッチの段数LNを設定できるので、車輪4の空転を起こさない範囲でより大きい動輪周牽引力Fを発揮させることができる。