JP2010110642A - 超音波診断装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】回路規模を増大させることなく、また操作性を低下させることもなく、リアルタイム性の向上を図った超音波診断装置を提供すること。
【解決手段】配列された複数個の超音波振動子から構成され、超音波ビームの送信及びその反射波の受信を行うための超音波プローブと、所定の方向間隔で順次に方向を変えながら超音波ビームを送信する送信手段と、特定の深さ領域からの反射波が前記超音波振動子に到達する期間においてのみ、当該反射波の元となる送信超音波ビームとほぼ同一の方向に受信指向性を設定して受信信号を得る受信手段と、前記受信手段から得られた受信信号を信号処理して超音波診断画像を生成する生成手段と、前記超音波診断画像を表示する表示手段とを具備する。
【選択図】図2
【解決手段】配列された複数個の超音波振動子から構成され、超音波ビームの送信及びその反射波の受信を行うための超音波プローブと、所定の方向間隔で順次に方向を変えながら超音波ビームを送信する送信手段と、特定の深さ領域からの反射波が前記超音波振動子に到達する期間においてのみ、当該反射波の元となる送信超音波ビームとほぼ同一の方向に受信指向性を設定して受信信号を得る受信手段と、前記受信手段から得られた受信信号を信号処理して超音波診断画像を生成する生成手段と、前記超音波診断画像を表示する表示手段とを具備する。
【選択図】図2
Description
本発明は、被検体に超音波を送信し、その反射波を受波して超音波診断画像を得る、いわゆる超音波診断装置に関するものであり、特に、単位時間内の走査回数を増加させることによってリアルタイム性と血流検出能の大幅な向上を図った超音波診断装置に関する。
超音波パルスを被検体内に放射し、各組織からの反射波により生体情報を得る超音波診断法は超音波断層法と超音波ドップラ法の2つの技術開発により近年急速な進歩を遂げた。今日最も普及している電子走査型の超音波診断装置は、配列型の超音波トランスデューサを用い、これを電子的に高速制御し走査することによってリアルタイム表示が可能である。
図2は従来例に係るセクタ電子走査型の超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。超音波プローブにおいて配列される振動子4の素子数をMとする。超音波を生体内(あるいは媒質内)に向けて送信する場合には、まず送信レート信号発生器1によって超音波パルスの繰返し周期を決定するレートパルスが出力される。このパルスはMチャンネルから構成される送信遅延回路2に送られ、送信時の超音波ビームの集束距離(F0)を決定する遅延時間τfと所定方向(θ0)に超音波ビームを偏向させるための遅延時間τsが与えられたのち、Mチャンネルの振動子駆動回路(パルサ)3に供給される。そして、m番目の遅延回路において設定される遅延時間τ(m)はτf(m)+τs(m)であって、τfおよびτsは次式(1)に示すように設定される。
τf(m)=d2{(M−1)2−(2m−M−1)2}/8VF0
τs(m)=(m−1)dsin θ0/V …(1)
ただし、dは振動子配列間隔、Vは生体内音速、F0は焦点距離、θ0は偏向角である。
τs(m)=(m−1)dsin θ0/V …(1)
ただし、dは振動子配列間隔、Vは生体内音速、F0は焦点距離、θ0は偏向角である。
このパルサ3では、超音波振動子4を駆動して超音波を発生させるための駆動パルスが形成される。なお駆動パルスのタイミングは送信遅延回路2の出力に応じて決定される。この駆動回路3の出力は超音波振動子4に供給され、これにより同振動子4は駆動されて超音波を発生する。
超音波振動子4から生体内に放射された超音波の一部は、臓器の境界面あるいは生体組織の音響散乱体にて反射される。この反射波は再び超音波振動子4によって受信され、電気信号に変換される。この受信信号はプリアンプ5を介した後、送信時と同様に、受信時の超音波ビームの集束距離を決定する遅延時間、および超音波ビームの偏向角度(受信指向性)を決定する遅延時間を与えるMチャンネルの受信遅延回路6を経て加算器7に送られる。Mチャンネルの受信遅延回路6からの出力信号は加算器7にて加算合成され、対数増幅器8、包絡線検波回路9にて対数圧縮、検波され、A/D変換された後に画像メモリ11に一旦ストアされる。さらに、ストアされた信号はテレビフォーマットに変換され、テレビモニタ13にて超音波断層像として表示される。
また、加算器7からの他の出力は2つの直交位相検波回路に送られる。すなわち、先ずはミキサ14−1,14−2に送られる。一方、基準信号発生器20からは所定の周波数(一般には超音波周波数foにほぼ等しい周波数が用いられる)をもった連続波が出力され、π/2移送器15にてその位相が90度シフトされてミキサ14−1に入力される。また、ミキサ14−2には基準信号発生器20の出力が直接入力される。このミキサ14−1,14−2の出力はローパスフィルタ16−1,16−2にて和の周波数成分が除去され、差の周波数成分のみが抽出される。この差の周波数をもった信号はA/D変換器17−1,17−2にてディジタル信号に変換された後、一旦メモリ(不図示)にストアされる。
ドップラ信号を算出するためには同一部位を連続的に走査し、そのときの複数(N)の信号を用いる必要がある。この場合の複数回の走査によって得られた信号はメモリにて一旦記憶され、所定数のデータが収集された時点において、同一部位で経時的に変化する1連の信号が抽出されると共に、MTIフィルタ22−1,22−2によって不要信号が除去される。さらにその出力はFFT回路18にてドップラ信号の周波数分析に供される。
超音波血流イメージング法において表示される物理量は、スペクトルの中心(すなわち流速度の平均値)とスペクトルの分散値(すなわち流速の乱れの状態)およびパワー値(すなわちドップラ信号強度)である。これらの計算は演算器19によって行われる。演算器19によって算出された値は画像メモリ11にて一旦記憶され、テレビモニタ13において表示される。この演算器19の出力は断層像上にカラーによって表示される場合が一般的である。
ところで、直交位相検波回路を構成するミキサ14に入力された受信信号は、まず超音波の中心周波数とほぼ等しい周波数(fo)をもち、しかも互いに位相が90度異なる2つの基準信号と乗算されるが、この乗算によって、ドップラ周波数(fd)成分の他にfd+2foの周波数成分が得られ、後者の成分は低域通過(ローパス)フィルタ16によって除去される。ドップラ信号(fd)は一旦、A/D変換器17によってディジタル信号に変換された後、図示しないメモリにて記憶される。同一方向に複数回走査して得られた受信信号は同様にしてメモリにて一旦記憶された後、同一部位で経時的に変化する1連の信号として抽出され、MTIフィルタ22によって血球からの反射波(ドップラ信号)と不要信号である血管壁や臓器などの固定反射体からの信号(クラッタ信号)とが分離される。
ドップラ信号とクラッタ信号はパルス繰返し周波数(fr)の間隔をもつ線スペクトルであり、このMTIフィルタはfrの整数倍の位置にあるクラッタ信号を除去する「くし型」フィルタである。MTI(Moving Target Indicator)フィルタは、レーダー分野において、例えば航空機のように動いているもののみを抽出して表示する場合に使用されてきたフィルタ技術である。このようにして所定の深さにおけるN個の複素信号を抽出してMTIフィルタやFFT回路18に入力し、クラッタ信号の除去及びスペクトル演算が行われる。このような演算処理は2次元的に行われ、その結果はDSC(ディジタル・スキャン・コンバータ)にて断層像信号と合成されて、さらにテレビフォーマット出力に変換された後カラーモニタ上に表示される。
次に、従来の超音波プローブについて述べる。図3は振動子を1次元に配列した場合のリニアアレイ超音波プローブの構造を示す斜視断面図である。このプローブでは走査方向に沿って複数個の振動子が1次元的に配列されて成る。同図に示すように、各々の振動子30には超音波を送受信する媒質(生体)側とその反対側とに電極31が装着され、また生体側の電極31上には音響整合層(インピーダンスマッチング層)32が設けられている。
整合層32は生体と振動子30との音響的インピーダンス(密度と音速の積)の差を調整し、波数の少ない超音波パルスを生体内に入射させるためのものである。さらに、整合層32上にはシリコンゴムなどにより構成される音響レンズ34が張り合わされている。この音響レンズ34は超音波ビームを所定の距離において集束させ、走査方向に直交するスライス方向のビーム幅を狭めるためのものである。これら振動子30や整合層32あるいは音響レンズ34等は支持台(バッキング材)35上に固定される。
このように振動子が1次元的に配列されたプローブでは電子的、すなわち遅延時間の制御によって超音波ビームを集束させ、振動子配列方向(走査方向)のビーム幅を細くすることができる。なお、スライス方向については音響レンズを用いたビーム集束法が採用されている。この場合、音響レンズの曲率半径は固定であるため集束点も1点に固定される。
ところで、フィルタ処理前の受信信号スペクトルには、図4に示すようにfd±nfr(nは整数)に生ずるドップラ信号の他に、±nfrにクラッタ信号成分が現れる。クラッタ信号とは血球からの反射波に混入した血管壁や血管周辺の臓器からの信号(特にサイドローブ等によるアーチファクト成分となる場合が多い)のことであり、その信号強度は一般にドップラ信号に対して40dB程度大きい。したがって、このクラッタ信号を十分除去するためのフィルタリング技術が特に重要である。具体的には、フィルタの周波数分解能を向上する必要があり、そのためにはデータ数すなわち同一部位の走査回数(N)を増やす必要がある。
しかしながら、データ数を増やすことと、画像のフレーム数を上げることはトレードオフの関係にある。このため、特に心臓のような動きの早い臓器において、冠状動脈のようにクラッタ速度とあまり差のない低流速の血流を観測することは従来の超音波診断装置においては不可能であった。
また最近では、1次元アレイを機械的に移動させたり、2次元アレイを用いるなどして3次元的な走査を行ない、このような走査に基づく3次元画像を作成して表示する試みがなされている。
ここで、前者すなわち1次元アレイを機械的に移動させて3次元的な走査を行なう従来の超音波診断装置にあっては、装置の構成を比較的簡単にできるという反面、画像を得るまでに長時間を要し、また操作性が悪いうという欠点があった。一方、後者すなわち2次元アレイを用いて3次元的な走査を行なう従来の超音波診断装置にあっては、プローブを従来のものと同程度に小さく構成できる上、操作性に優れるという利点があるが、装置およびプローブ内部の構成が複雑となり実用的ではないという欠点があった。さらに、リアルタイムで3次元画像を得ようとすれば、大規模な並列同時受信回路が必要となり、回路規模が増大すると共に装置が極めて高価となるという欠点があった。
本発明は上述した事情を考慮してなされたものであり、その目的は回路規模を増大させることなく、また操作性を低下させることもなく、リアルタイム性の向上を図った超音波診断装置を提供することである。また、本発明の他の目的はプローブの発熱低減を図った超音波診断装置を提供することである。
上記課題を解決し目的を達成するために本発明の超音波診断装置は次のように構成されている。
すなわち、請求項1に記載の発明は、配列された複数の超音波振動子を有する超音波プローブと、所定の相互時間間隔をもって、被検体内の異なる二以上の方向に対して超音波を送信する送信手段と、受信指向性を前記所定の相互時間間隔をもって切換ながら前記異なる二以上の方向のそれぞれから得られる反射波を受信する受信手段と、前記受信によって得られた受信信号に基づいて超音波画像を生成する画像生成手段と、前記超音波画像を表示する表示手段と、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
以上説明したように本発明の超音波診断装置によれば、所定の制限された領域からの超音波画像を得ることにより、回路規模を増大することなく単位時間当たりの走査回数を大幅に増加させることができる。このため、特に1枚の画像を得るために多くの走査を必要とする3次元画像表示や、低流速検出能に基づくカラードップラ表示等におけるリアルタイム表示を比較的容易に実現可能となる。
また、同一のフレーム数と同一の走査線密度を確保したままで同一部位を2倍から4倍程度多く走査することができるため、血流の低速度検出能が飛躍的に向上し、これまで困難とされていた冠状動脈末端における血流観測などが可能になる。しかも、本発明の超音波診断装置は従来構成の装置を大幅に変更することなく実現できる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
本実施形態はリアルタイムで3次元画像を表示する超音波診断装置に関するものである。
本実施形態はリアルタイムで3次元画像を表示する超音波診断装置に関するものである。
近年、3次元画像は2次元画像(例えば断層像)よりも臓器全体の構造を把握し易く、また異常部位を見逃す頻度も低く、診断能に優れていることが基礎的な研究から明らかになりつつある。3次元画像を表示するためには少なくとも超音波分解能(ビーム幅)の1/2以下の走査ピッチで3次元空間を走査しなくてはならない。しかし、従来から知られているパルス反射法は最深部からの超音波が受信された後に次の送信パルスを放射するものとなっており、いかに電子走査法が高速であるとは言っても走査数の多い3次元走査では1枚の画像を構成するために要する時間が音速、走査数および観察深度によって制約される。このため3次元画像のリアルタイム表示は不可能であった。
このような問題を解決するため、電子走査型の超音波診断装置による並列同時受信法が開発された。この並列同時受信法は図5に示すように送信超音波ビームを拡散させて送信し、受信時においては並列に設けられた複数系統の遅延回路(同図では受信遅延回路A,Bの2系統)によって受信指向性を決定することにより、複数方向の送受信を同時に行うものであり、このような並列同時受信法によればフレーム数を改善できる。とくに最近では受信遅延回路のデジタル化によって、タイムシェアリング技術による整相加算法を用いることができ、ハードウェアを増やすことなく4方向の並列同時受信を行うことが可能となった。
しかしながら、心臓などの診断で要求される毎秒30フレーム以上の3次元動画像表示を実現するためには、更に4〜8倍のフレーム数の改善が必要となる。
本発明は第1のポイントは、体内の所定の部位(より具体的には「深さ」)を限定して画像を得る場合に、そのフレーム数を大幅に改善可能とするような走査(ここでは、仮に「ゲート交互走査法」と称する)を実現した点にある。
かかるゲート交互走査法は、2次元画像のカラー(パワー)ドップラ断層像表示において有効であるが、特にゲート交互走査法は3次元走査のように一枚の画像を得るために多くの走査を必要とする場合に有効である。ただし、ここでは説明を容易にするため、ゲート交互走査法をセクタ電子走査型の装置による2次元画像の撮影に適用した場合について説明する。
先ずは、図1に示した心臓の僧坊弁あるいはその周辺部の形状や運動機能を診断する場合を例にとって、ゲート交互走査法の原理を説明する。
図1(a)は肋骨の間において超音波ビームを送受信し、左心房と左心室の境界にある僧坊弁およびその周辺の画像を観察する様子を模式的に示している。ここで、図1(b)に示すように深さ方向に沿って領域aから領域dまでの4つの領域を考えた場合、僧坊弁およびその周辺の画像を得るためには、領域cからの超音波信号が得られれば良い。なお、領域の数あるいは領域の境界位置や画像化する間隔は任意であり、検者(医師)などが仮設定を行って得られた画像を観察しながら再設定してもよいし、最初は従来の断層像で全体像を大まかに観察したのち、その画像から最適な設定をすることも可能である。ただし、ここでは説明を簡単にするため各領域は等間隔とする。
ゲート交互走査法における送信パルスの間隔は次のように設定する。すなわち、例えば図1(b)においてプローブ先端から領域cの前端までの距離をS1、後端までの距離をS2、ΔS=S2−S1、また生体内の音速をVとすれば、ΔSの間の反射信号を受信するためには、後述する条件の下では送信パルス間隔Δtを少なくとも2ΔS/V以上とすればよい。
次に、超音波の送受信方向について説明する。ここで画像角度をθx度とした場合、この範囲をたとえば4分割し、最初の走査では角度−θx/2の方向(方向1)に超音波を送受信し、次の約Δt秒後には−θx/4方向(方向2)に対して送受信を行う。さらに2Δt秒後、そして3Δt秒後には、0度(方向3)、+θx/4方向(方向4)に向け送受信を行った後、4Δt秒後には−θx/2+Δθ方向(方向5)に、さらに5Δt秒後、6Δt秒後・・・・には−θx/4+Δθ(方向6)、Δθ(方向7)・・・・の順序で送受信方向を制御する。ただし、Δθは走査の最小ピッチである。
次に、図6に示すタイムチャートを参照してゲート交互走査法を説明する。
図6(a)は2次元画像を得る場合の従来の走査法を示す図であり、まず走査方向1の方向で超音波の送受信を行った後の4Δt秒後に、隣接した走査方向である方向5に対して送受信を行う。さらに8Δt秒後の走査方向は走査方向9のようになる(図1(b)参照)。つまり、送信パルス間隔は最も深い領域dの後端部からの反射信号を受信するまでは次の送信パルスは送信できないため、少なくとも4Δt秒必要である。
これに対し、図6(b)に示すゲート交互走査法では、Δt秒間隔で走査方向1、走査方向2、走査方向3に対して順次に超音波を送信した後、受信系の指向性を走査方向1に設定して領域cからの反射信号のみをΔt秒間受信し、さらに走査方向4に向けて送信を行った後、受信系の指向性を走査方向2に設定して領域cからの反射信号のみをΔt秒間受信する。このような動作を繰り返すことによって領域cの走査を従来よりも4倍のスピードで完了することができる。したがって画像のフレーム数を4倍ほど改善することができる。
ところで、心臓のように動きの早い臓器を観察する場合においてゲート交互走査を行うと、例えば走査方向1、走査方向5・・・・によって構成される画像と、走査方向2、走査方向6・・・によって構成される画像とのつなぎ目が連続して表示されないという問題が起こり得る。このため走査方向1と走査方向2はできるだけ接近していることが望ましい。
一方、超音波のビーム幅に対して上記2つの走査方向のなす角度を十分に広くする必要がある。そうしなければ、送信ビーム同士若しくは受信ビーム同士が、又は受信ビームと送信ビームとが互いに重なってしまう。このような場合、例えば走査方向1による領域cからの受信を行っている時に走査方向2による領域bからの受信波が受信され、混信が起こることにより画像上にアーチファクトが現れてしまうという問題が起こり得る。
このような2つの相反する問題を同時に回避するため、送信及び受信での超音波ビーム幅をできるだけ狭くしなくてはならない。ところで、従来では画像のフレーム数を高めるために2〜4段の並列同時受信を行う場合が多い。この技術はリアルタイム3次元画像表示において必須の技術であるが、前述したように送信ビームはビーム幅を拡散させるため、送信ビームにおけるビームの重なり合いが特に問題となる。
本発明の第2のポイントは、受信ビームのみならず送信ビームについても十分にフォーカッシングがなされた状態での走査を可能にする「並列同時送受信法」を実現した点にある。
図7は本発明に係る並列同時送受信法を示す図、図8は従来の並列同時受信法及び本発明に係る並列同時送受信法における送信遅延時間を示す図である。ここでも説明を簡単にするため、θ=0を中心とする2段の並列同時(送)受信について述べる。
図8(a)に示すように従来の並列同時受信法では、送信方向はθ=0、受信方向はθ=−θsとθ=+θsであり、したがって送信時における振動子の駆動パルスの遅延時間は振動子の位置によらず一定(τs0)である。これに対し、図8(b)に示すように本発明の並列同時送受信法では、送信時の駆動パルスにも受信時と同様に遅延時間τ−s,τ+sを、θ=−θsとθ=+θsの方向に厳密に与える。
なお、実際の装置では分解能を向上するために超音波ビームを集束させるべく送信および受信にて集束用の遅延時間をさらに追加設定する必要があることについては既に述べたが、この集束用遅延時間の設定については説明を省略する。
ここで、先に述べたゲート交互走査法と並列同時送受信法と組み合わせる場合は、次のように構成すれば良い。すなわち、前述のゲート交互走査を行う際に、走査方向1,2,3・・・・・の各々の方向を中心に−θsと+θsの2方向にて送受信を行うように構成する。たとえばθ=−θx/2を中心とした送受信ではθ=−θx/2−θsとθ=−θx/2+θsの方向で並列同時送受信を行うようにする。
次に、並列同時送受信方法の送信系に関る2つの構成例を説明する。
先ず、本発明の並列同時送受信法の送信系の第1の構成例について説明する。
図9は従来の送信系及び上記第1の構成例を説明するための図である。
従来の送信系は、図9(a)に示すようにレート信号発生器40、送信遅延回路41、パルサ回路42、振動子43が直列に接続されて成る。また、同図(a)に、レート信号発生器40、送信遅延回路41、パルサ42の各出力波形に基づくタイムチャートを示す。
本発明の並列同時送受信法の送信系の第1の構成例は、図9(b)に示すように、レート信号発生器40と、並列同時送信系統数分(この実施形態では2系統)の送信遅延回路(A44−1及びB44−2)と、加算器45と、パルサ回路42とによって構成される。また、同図(b)に、レート信号発生器40、送信遅延回路(A44−1及びB44−2)、加算器45、パルサ回路42の各出力波形に基づくタイムチャートを示す。
このタイムチャートにより送信系の第1の構成の動作を説明する。まずレート信号発生器40は、従来と同様に超音波の送信繰り返し周期を決定するパルスを発生する。上述したゲート交互走査においてはΔtが、また従来の走査法では4Δtがこれに相当する。この出力は2つの送信遅延回路(すなわち送信遅延回路A44−1、送信遅延回路B44−2)に送られる。ここで送信遅延回路A44−1では送信パルスの指向性が−θs方向になるような遅延時間τ−sをもったトリガパルスが形成され、一方、送信遅延回路B44−2では送信パルスの指向性が+θs方向になるような遅延時間τ+sにさらに一定値Txが加算された遅延時間をもったトリガパルスが形成される。これらの2つのトリガパルスは加算器45にて合成(加算)され、パルサ回路42にて図に示すようなインパルスが2つ合成されたダブルパルスがつくられ、このパルスによって振動子43が駆動されて超音波が発生する。
上記遅延時間τ−sおよびτ+sはセクタ走査を行う際の送信指向性の変化にともなって変化するが、そのいかなる場合であってもパルサ出力の2つのインパルスはそのリンギング応答を含めて重なり合うことがないように前記所定間隔Txの設定がなされる。例えば、通常のセクタ電子走査型の装置に用いられる遅延時間は0〜10μsecであるためTxは20〜30μsec程度に設定すればよい。この走査法では各アレイ振動子はそれぞれ約Tx離れた2つのパルスで駆動されて2つの超音波パルスを放射するが、それぞれのチャンネルのもつビーム偏向用の遅延時間τ−s、τ+sによって、ある程度の深さ以降ではこれら2つの超音波パルスは互いに分離される。
たとえば、最初の駆動によって放射された送信超音波は−θ方向にのみ強い指向性をもち、+θ方向では無視できる程度に弱め合う。逆に、Tx秒後の第2の駆動で放射された送信超音波は+θ方向にのみ強い指向性をもち、−θ方向では弱め合う。
このようにして間隔Txの差をもってほぼ同時に振動子から放射される超音波によって、2つの方向への同時送信が可能となる。一方、受信系では従来と同様に−θ方向と+θ方向に指向性をもった受信回路をもっているため各々の方向の受信信号を分離して受信することが可能となる。なお、この方法では+θ方向からの受信波は−θ方向からの受信波に対して常にTxだけ遅れて受信されることになるため、画像として表示する際にはその分を補正(すなわち+θ方向からの受信波をTx分早めて表示してやらなくてはならないが、技術的には容易に実現可能である。
つぎに、本発明の並列同時送受信法の送信系の第2の構成例について説明する。
図10に示すように、この第2の構成例は、レート信号発生器40と、並列同時送信系統数分(この実施形態では2系統)の送信遅延回路(A44−1及びB4−2)と、各々の送信遅延回路に接続される波形発生器(47−1及び47−2)と、デジタルの加算器45と、D/A変換器46と、振動子駆動用リニアアンプ48と、振動子43とによって構成されている。また、同図に、レート信号発生器40、送信遅延回路(A44−1及びB44−2)、波形発生器(47−1及び47−22)、加算器45及びリニアアンプ48の各出力波形に基づくタイムチャートを示す。
このタイムチャートにより送信系の第2の構成の動作を説明する。まず、レート信号発生器40は超音波の送信繰り返し周期を決定するパルスを発生する。上述したゲート交互走査においてはΔtが、また従来の走査法では4Δtがこれに相当する。レート信号発生器40からの出力は、2つの送信遅延回路(すなわち送信遅延回路A44−1、送信遅延回路B44−2)に送られる。ここで送信遅延回路A44−1では、送信パルスの指向性が−θ方向になるような遅延時間τ−sをもった一連のトリガパルスが形成され、一方、送信遅延回路B44−2では、送信パルスの指向性が+θ方向になるような遅延時間τ+sをもったトリガパルスが形成される。
これらの2つのトリガパルスはたとえばROM(Read Only Memory)で構成される波形発生器47−1,47−2に送られる。これら2つのROMにはあらかじめ送信波形(例えば超音波中心周波数と同じ周波数をもつ正弦波(1波)あるいはその包絡線がガウシアンとなるような超音波中心周波数と同じ周波数をもつ数波の正弦波など)がデータとしてあらかじめ記憶されており、それぞれの読みだしのタイミングを決定するトリガパルスが前記送信遅延回路44から供給される。なお、読み出しには中央の制御回路(図示せず)から供給されるクロックパルスも必要となる。
波形発生器47−1、波形発生器B47−2からの出力はデジタル加算器45にて合成(加算)された後、D/A変換器46にて駆動波形に変換される。この駆動波形は振動子駆動用リニアアンプ48を介して振動子43を駆動する。なお、タイミングチャートでは波形発生器47および加算器45の各出力の波形が示されているが、本来これらの構成部分はデジタル回路であるため、このような波形を実際観察することは不可能であるが、説明を容易にするために敢えてアナログ信号に変換して示してある。また、波形発生器47や加算器45の演算プロセスの具体的な構成については、D/A変換器出力あるいはアンプ出力が図に示したように遅延時間の異なる2つの駆動波形が合成された形で得られれば、どのように構成されていても良い。たとえば、加算器45からの出力信号と同等のものを他の演算器によって直接演算し発生させてもよい。本実施形態では2つの合成された駆動波形によって、振動子43が駆動され超音波が発生される。
前記遅延時間τ−sおよびτ+sは、セクタ走査を行う際の送信指向性の変化にともなって変化するため、2つの波形の位相が一致した場合にはその振幅が2倍となる。したがってそれだけの振幅特性をもったアンプの設計が必要となる。この走査法では各アレイ振動子が2種類の送信駆動波形で同時に駆動されて超音波パルスを放射するが、それぞれのもつビーム偏向用の遅延時間τ−s、τ+sによってこれら超音波パルスは、ある程度の深さ以降では分離される。一方、受信系でも−θ方向と+θ方向に指向性をもった受信回路をもっているため各々の方向の受信信号を分離して受信することが可能となる。
なお、上述した並列同時送受信の送信系に係る第1の構成例および第2の構成例のいずれにおいても並列送受信方向は2方向としたが、これに限定されるものではない。
ところで、前述の並列同時送受信を行った場合、第1の構成例に係る送信系にうおては単位時間あたりの送信パルス数が並列段数分だけ増加(4方向の場合は4倍増加)するし、また第2の構成例についても振幅や波数が増加し送信エネルギーが同様に並列段数分だけ増加する。このような場合においては、プローブの発熱が問題になる。
一般に、超音波診断装置では高画質を得るための最大の条件は良いS/Nを確保することであるとされている。そのためには、多くの超音波(音響)エネルギーを体内に入れることが望ましい。しかしながらその一方で、生体に対する安全規格が定められており、生体内での音圧、あるいはプローブの生体との接触面の温度を規格値以内に収めなくてはならない。このため従来の装置ではその規格値を越えないように超音波エネルギーを抑えて生体に対し放射するようにしている。
本発明の並列同時送受信時における並列送信法では、前者の音圧に関しては複数の独立した部位に(方向に)送信を行うものであるためエネルギーが分散し大きな問題とならないが、後者の接触面温度に関しては、既に述べたように並列送信段数分だけ増加するため対策が必要となる。
プローブ先端部における発熱の大きな要因の1つに、空中放置時にプローブ内に蓄積される超音波エネルギーがある。本来、医用の超音波プローブではその放射面が生体に触れた時に生体内に超音波パルスが伝搬する。そして、プローブ放射面が空気の場合は振動子と空気の各々の音響インピーダンスの差が大きいため、音波は空中には伝搬せずに振動子内部あるいはプローブ内において多重反射を起こす。その際のエネルギーはプローブ内部に蓄積される。
このようなメカニズムを考えると超音波診断では診断中よりも診断の合間、すなわちプローブを生体から離した時に大きな発熱をしていることになる。
図11は発熱対策を講じた場合の構成を示すブロック図である。同図に示すように、かかる構成は検波回路9に対しゲート回路25が接続され、このゲート回路25に対し積分回路26、比較器27、電圧制御回路28が直列に接続されて成る。
図12は発熱対策の原理を示すタイミングチャートである。同図(a)はレートパルスを示し、その立ち上がりのタイミングで送信パルスが放射される。同図(b)はプローブが生体面に接触しているときの受信信号(検波後の信号)を示し、1レート区間の間において生体内からの反射信号が長時間に亘り受信される。これに対し同図(e)はプローブが空気負荷になっているときの反射信号を示し、プローブ内での多重反射による信号が送信パルス放射の直後に見られるが、それ以降受信信号は得られなくなる。これらの受信信号の特徴の違いを判定してやればプローブが生体に触れているか否かを自動的に判定することが可能となる。
つぎに、図11に示したブロック図及び図12に示したタイムチャートを参照して発熱対策に関する装置の動作について説明する。
加算回路7から出力された受信信号は、従来のものと同様に対数増幅器8、検波回路9を介した後、ゲート回路25においてその一部が切り出され、さらにゲート回路25からの出力は積分回路26によって積分される。例えば図12(c)あるいは(f)に示すように、ゲート回路25はレートパルスの立ち上がりからt0後に開き、t1後に閉じる。この間の受信信号は切り出されて積分器26にて積分される。プローブが生体に接触している場合の受信信号(図12(b))は空気負荷時と比較してt0−t1区間の振幅が顕著に大きいゆえ、積分器出力も図12(d)及び(g)から明らかなように生体接触時の方が大きい。
したがって、比較器27においてこの積分器の出力をあらかじめ定めた判断レベルと比較して大きければプローブは生体に接触している(すなわち診察中)と判断し、パルサ3の電圧をそのままの状態にして超音波の送信を継続する。逆に、積分器出力が判断レベルと比較して小さければプローブは空気負荷になっていると判断し、電圧制御回路28によりパルサ3の電圧を所定のレベルまで下げる。この場合、画像が全く見えなくなるレベルまで下げるよりは多少画像が観察できる程度で、しかも発熱が規格値を大幅に下回るような適当な電圧値(V0)を選んでやればよい。
上記方法では、超音波の反射信号からプローブが生体に接触しているか否かを受信信号に基づいて判断するようにしたがその他の方法であっても良い。例えば、プローブに被検者(患者)の体や検者(医師や技師)の手が触れているか否かを検出するようにしてもよく、あるいは、例えば静電気センサや赤外線検出センサ等をプローブに内蔵し、センサによってこれを検出するように構成しても良い。
次に、リアルタイムで3次元画像を表示するセクタ電子走査型の超音波診断装置の具体的な構成及びその動作について説明する。
既に述べたゲート交互走査法によれば、体内の特定部位の画像を得る場合にその走査数を大幅に増加可能であり、特に3次元走査のように一枚の画像を得るために多くの走査を必要とする場合、フレーム数を大幅に改善できる。このようなゲート交互走査及び並列同時送受信法を適用すれば、超音波診断装置によるリアルタイムの3次元表示が可能となる。
図1に示したように肋間を介して超音波を送受信し、左心房と左心室の境界にある僧坊弁およびその周辺の画像を観察しようとする場合、診断する深さを領域aから領域dまで4つの領域に分割すると領域cからの超音波信号が得られれば上記の目的は達成される。ただしここでは説明を簡単にするため各領域は等間隔とする。
次に、本装置における送信パルスの間隔について述べる。例えば図1においてプローブ先端から領域cの前端までの距離をS1、後端までの距離をS2、ΔS=S2−S1、また生体内の音速をV0とすれば、ΔSの間の反射信号を受信するには後述する条件の下では少なくとも送信パルス間隔Δtは2ΔS/V0以上あればよい。
次に、超音波の送受信方向について述べる。僧坊弁近辺(プローブから50mmとする)における走査範囲をX方向、Y方向のいずれとも70mmとする。ただしXY平面は図15に示すように超音波ビームの送受信方向(Z方向)に対してほぼ直角の方向に設定する。この70mm×70mmの領域を3次元走査する時の走査ピッチは、走査する送受信の超音波ビーム幅(分解能)より小さくなくてはならない。ここでは超音波のビーム幅を3mmとしX方向およびY方向の走査ピッチは前記ビーム幅の半分の1.5mmとする。したがってX方向、Y方向のそれぞれの走査数は48となり、総走査数は2304回となる。
なお、このようなビーム幅を実現するために用いられるスパースアレイ振動子の仕様については後述する。この時の距離50mmにおける走査領域(X−Y平面)を図13に示す。その走査領域は48×48の微小領域から構成されており、さらにX方向に2領域、Y方向に2領域合計4領域(図中a,b,c,d)が1つにまとめられ中領域が形成される。すなわち前記2304の微小領域は4分の1の1〜576の中領域にグルーピングされ、グルーピングされた各々の4つの微小領域においてすでに述べた並列同時送受信を行う。
この時送信ビームは図9又は図10に示した方法によって微小領域a〜dの中心に指向性が一致するように、超音波プローブを構成する2次元アレイ振動子が駆動される。受信においても全く同様に2次元アレイの各振動子で受信された受信信号に対し、受信指向性が前記微小領域a〜dの中心位置に一致するように4種類の所定の遅延時間が与えられ、それぞれが合成される。なお、遅延時間の制御によって走査を行うことは従来の超音波診断装置と同様であるが、2次元アレイ振動子ではその駆動信号の遅延時間を制御することによって超音波ビームを2次元的に偏向させることが可能となることは既に広く知られていることであり、その詳細な説明は省略する。
次に、ゲート交互走査法を適用する場合について以下に述べる。ここではゲート交互走査の段数を4段とする。すなわち中領域1〜576に対する送信パルスは、順次1,2,3,4,・・・・576に向けてΔt間隔(Δtについては図6を参照のこと)で放射される。一方、受信については、1,2,3,・・・576の方向に受信指向性を順次変化させ、送信よりも2Δt秒遅れであってかつΔt間隔で受信が行われる。あるいは生体の動きが速いため中領域12と13の間で画像のずれが生ずるような場合には、送受信の順番を1,2,3,4,13,14・・22、5,6,8,14・・のようにしてもよく、その順番に関しては限定されない。
次に、このような3次元走査を実現する2次元アレイについて説明する。図15は縦10mm、横10mmの中に0.32mm間隔で31×31の振動素子が配列されてなる2次元アレイ振動子を示す図である。超音波の中心周波数は2.5MHzとする。前記振動素子のピッチは、既に述べた距離50mmで70mm×70mmのX−Y平面を走査する場合に、端部を走査してもグレーティングローブが生じないという条件に基づいて設定されている。ここで、合計961素子のそれぞれに従来の超音波診断装置のように送受信回路を対応させれば、極めて大規模の回路構成となってしまうため、すべての振動素子を用いずに選択的に使用するいわゆるスパースアレイ方式が採用されている。
図14は、送信および受信において121本の振動子を用いた場合の各々の振動子の配置法について示したものであり、送信振動子はX方向、Y方向とも1つ間隔で11×11の振動子を中心に配列し、一方、受信振動子はX方向、Y方向とも2つ間隔で同じく11×11の振動子をその中心が送信振動子群の中心とほぼ一致するように配置する。この配置法については、送受での総合音場において画像のSN劣化あるいはアーチファクト発生の原因となるサイドローブやグレーティングローブがあまり生じないような配置がなされている。また、送信の口径が受信よりも小さくなっているのは、受信ダイナミック集束時に送信集束はやや弱めの方が望ましいため、あるいは肋骨間から超音波ビームを入射させるような場合には送信口径が大きい場合、プローブと肋骨との間で多重反射が生じ、プローブ近傍にアーチファクトが表示され易いためである。
図16は送受総合の指向特性を示すグラフであり、サイドローブレベルは極めて小さく、十分実用可能な特性である。このときの走査面X−YでのX方向の超音波のビーム幅ΔXは、ΔX=λR/Dによって表される(あるいはY方向のビーム幅ΔYも同様である)。ただし、λは超音波波長であり2.5MHzの場合には0.6mm、Rは走査面のプローブからの距離、Dは振動子配列の全長(口径)であり、この場合、それぞれ50mm、10mmであるからΔXは3mmとなる。したがって既述の走査面での走査ピッチがΔXの1/2の1.5mmは妥当な値であることがわかる。なお、送受信はΔt間隔でその指向性を変えながら行うが、その各々の送受信において並列同時送受信が行われることにより、2304方向の走査を短時間のうちに行うことができる。
次にフレーム数について述べる。深さ方向に4分割した場合の各領域の厚みΔSを20mm、音速を1500m/sとすれば、生体内での残響(多重ほか)を考慮し多少余裕を持たせたとしても送信間隔Δtは50μsecほどあればよい。したがって、中領域の576の部分において送信および受信を行うのに要する時間は約30msecとなり、毎秒表示可能な画像枚数(フレーム数)は35フレームとなる。すなわち、本発明のゲート交互走査法と並列同時受信方式の採用により画素数2304からなる3次元画像を毎秒35フレームのレートでリアルタイム画像として表示できる。
本発明のゲート交互走査法と並列同時送受信法を採用したリアルタイム3次元超音波診断装置のより具体的な仕様を表1に示す。この仕様において、送信及び受信チャンネル数はそれぞれ121としてあり、これは現行の超音波診断装置の送受信チャンネル数128とほぼ同程度である。
ここで、図17を参照してプローブ内振動子および初段増幅器、ケーブル、本体の送受信回路部等の構成について説明する。図14に示したようにスパースアレイの2次元アレイ振動子には、(1)送受信で共通に使用される振動子、(2)送信でのみ使用される振動子、(3)受信でのみ使用される振動子、(4)使用されない振動子の4種類がある。
図17(a)は送受信用振動子に接続される送受信回路の構成を示しており、図17(b)は1対の送信および受信振動子に接続される送受信回路の構成を示している。
送受信兼用振動子50−1は本体側のパルサ51−1からの振動子駆動信号をケーブル58−1、さらにダイオード154を介して入力する。このとき、本体側のプリアンプ53−1はリミッタ回路52−1によって保護され、またプローブ内のインピーダンス変換器(バッファアンプ)56−1もダイオード2(55)とダイオード3(57−1)によって保護される。
一方、受信時においては振動子50−1からの微小な受信信号は、バイアス電圧によって導通状態になっているダイオード2(55)を通過し、されにインピーダンス変換器56−1によって低出力インピーダンスにて出力され、ダイオード3(57−1)、ケーブル58−1、リミッタ回路52−1を介して本体内のプリアンプ53−1に供給される。
一対の送信用振動子50−2には、本体側のパルサ51−2からの振動子駆動信号がケーブル58−2を介して直接供給される。このとき、本体側のプリアンプ53−2はリミッタ回路52−2によって保護され、また受信用振動子50−3に接続されたプローブ内のインピーダンス変換器(バッファアンプ)56−2はダイオード3(57−2)によって保護される。
一方、受信時においては前記送信用振動子50−2と対になるように予め設定された受信用振動子50−3からの微小な受信信号は、直接インピーダンス変換器56−2によって低出力インピーダンスにて出力され、ダイオード3(57−2)、ケーブル58−2、リミッタ回路52−2を介して本体内のプリアンプ53−2に供給される。
2次元アレイのように振動素子の面積が小さくなると、振動子の電気的インピーダンスは高くなる、このため振動子をケーブルに直接接続すると周波数特性や利得が著しく劣化する。したがって本実施形態のようにプローブの中にインピーダンス変換器を収納し、受信信号の出力インピーダンスを低くしてケーブルに出力することが重要となる。この実施形態のように送受信信号が一対にまとめられていることにより、たとえ送信と受信の振動子が異なっていても信号ケーブル本数は従来並の121本にすることができ、操作性にすぐれた2次元アレイプローブを実現することができる。
以上説明した本実施形態によれば、現行の超音波診断装置をベースにする場合であっても、3次元表示用のソフトウェア及びハードウェアや、超音波送受信の遅延時間制御用ソフトの追加はあるものの、大幅な回路の変更は必要なく、従来の超音波診断装置とほぼ同程度の回路規模及び価格によってリアルタイム3次元表示能を有する超音波診断装置を実現することができる。しかも、従来の超音波診断装置による断層像表示との両立性も確保できる。つまり、新しい2次元アレイプローブを装着することによって新しい3次元画像のみならず、従来の2次元画像も同一のプローブで得られる。また、このとき得られる2次元画像と3次元画像とを組み合わせて表示させることも可能である。また、2次元画像のみを得る場合には装置本体は同一のものを使用し、専用のプローブを装着すればSN比と分解能に優れた画像を得ることもできる。さらに、探触子形状を従来プローブに対し大幅に変更させる必要が無いため操作性にも優れたプローブを実現することができる。
なお上記実施形態においては、心臓のような動きの速い臓器を観察する場合について説明したが、腹部や産科などの3次元表示においても本発明は有効である。この場合、フレーム数は心臓用の半分(毎秒15フレーム)とすれば十分であり、ゲート交互走査法のみ、あるいは並列同時送受信法のみを用いるように構成しても良い。このような構成であっても臨床サイドから要求される性能を満たす場合がある。
(第2実施形態)
第2の実施形態は、上記リアルタイム三次元超音波診断装置における3次元画像の表示方法に関する。
第2の実施形態は、上記リアルタイム三次元超音波診断装置における3次元画像の表示方法に関する。
ここでは図18に示すように中空の球殻の中に円錐形の突起物があるようなモデル(ファントム)を用いて3次元表示を行う場合について説明する。
既に述べた3次元走査によって、3次元の画像データが装置内のメモリ回路に記憶される。したがって、メモリ回路に記憶された3次元の画像データの再構成の仕方によって、観察方向を自由に設定して3次元表示を行うことが可能となる。
図18に示すモデルのように、閉じられた空間の中の被観察物(例えば心臓)を表示させるためには、カッティングプレーンを設定してやる必要がある。図18(a),(b),(c)はそれぞれ前方のカッティングプレーンの位置を変え、しかも観察方向を斜め上方にして再構成した3次元画像をそれぞれ模式的に示している。これらカッティングプレーンの位置は、データ収集時にゲート回路のデータ収集開始時(例えば図1の領域cの前端)に設定してもよいが、データを取り込んだ後に観測者からの指示に従って新たに設定するようにしてもよい。
またカッティングプレーンの位置は、必要に応じて観測者が自由に、しかもほぼリアルタイムで設定が可能である。また図18では斜め上方からの観測について示したが真上からの観測が診断に好適な場合もあり、このような場合にも容易に対応可能である。さらに、カッティングプレーンは水平である必要はなく、任意の方向、又は任意の角度でその面を設定することも可能である。さらに、図19に示すように、カッティングプレーンを前端と後端とにそれぞれ設定してやれば、上方(あるいは斜め上方)から観測した3次元画像と下方(あるいは図のように斜め下方)から観測した3次元画像とを同時に観察することも可能である。
なお、リアルタイム性と分解能を確保するため、リアルタイム表示を行う関心領域の大きさを従来よりも小さくする場合がある。この場合、関心領域を決定するためのオリエンテーリングが困難な場合が考えられる。この様な場合には同一のプローブを用い、走査間隔を本検査時より粗くした事前の走査によってまず全体像をとらえた上で、高画質な3次元画像を得る領域を決定するか、あるいは図20に示すように同一の2次元アレイプローブを用いて、まず従来の断層像を観測して、関心領域の位置を確認した後に3次元モードに移行させれば良い。
(第3実施形態)
第3実施形態は、カラードップラにおける低流速検出能の改善を図った超音波診断装置に関する。
第3実施形態は、カラードップラにおける低流速検出能の改善を図った超音波診断装置に関する。
既に述べたように、冠状動脈あるいは腹部血管では血流速が遅く血管壁や血管周辺の臓器からの信号(クラッタ信号)との流速差が顕著とはならないため、両者のスペクトルを確実に分離するためには周波数分解能の優れたMTIフィルタが要求される。この周波数分解能はデータ数(すなわち同一方向の走査回数)に比例し、例えば走査回数が2倍になればフィルタの肩特性が2倍急峻となる。
心臓の冠状動脈の血流計測に基づく虚血状態の診断を行おうとする場合、冠状動脈の走行している所定の範囲での診断部位の観察が行えれば良いからゲート交互走査法が適用できる。すなわち、ゲート交互走査法によれば所定の領域において単位時間あたりの走査回数を従来より2〜4倍増加することができるため、画像のフレーム数を犠牲にすることなくフィルタの周波数分解能を改善することができ、低流速検出能を飛躍的に改善できる。
なお、以上説明した実施形態において送受信ビームの集束については特に触れなかったが、送信時においては観測部位(例えば図1では領域c)に集束点を設定し、また受信時においては従来の超音波診断装置と同様に、いわゆるダイナミック集束法を適用することが望ましい。
また、上述したゲート交互走査法や並列同時送受信法、さらにはプローブの発熱低減法は、目的に応じて各々独立に用いてもよい。例えばプローブ発熱の問題は従来の超音波断層像を得る装置においても既に顕在化している問題であり、本発明を用いることによって改善することができる。
また、本発明は上述した実施形態に限定されず種々変形して実施可能である。
1…送信レート信号発生器
2…送信遅延回路
3…駆動回路(パルサ)
4…超音波振動子
5…プリアンプ
7…加算器
8…対数増幅器
9…検波回路
10…A/D変換器
11…画像メモリ
12…D/A変換器
13…テレビモニタ
14…ミキサ
15…π/2位相器
16…ローパスフィルタ
17…A/D変換器
18…FFT回路
19…演算器
20…基準信号発生器
21…遅延時間制御回路
22…MTIフィルタ
2…送信遅延回路
3…駆動回路(パルサ)
4…超音波振動子
5…プリアンプ
7…加算器
8…対数増幅器
9…検波回路
10…A/D変換器
11…画像メモリ
12…D/A変換器
13…テレビモニタ
14…ミキサ
15…π/2位相器
16…ローパスフィルタ
17…A/D変換器
18…FFT回路
19…演算器
20…基準信号発生器
21…遅延時間制御回路
22…MTIフィルタ
Claims (1)
- 配列された複数の超音波振動子を有する超音波プローブと、
所定の相互時間間隔をもって、被検体内の異なる二以上の方向に対して超音波を送信する送信手段と、
受信指向性を前記所定の相互時間間隔をもって切換ながら前記異なる二以上の方向のそれぞれから得られる反射波を受信する受信手段と、
前記受信によって得られた受信信号に基づいて超音波画像を生成する画像生成手段と、
前記超音波画像を表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2010008242A JP2010110642A (ja) | 2010-01-18 | 2010-01-18 | 超音波診断装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016010715A (ja) * | 2015-09-07 | 2016-01-21 | セイコーエプソン株式会社 | 超音波センサー制御装置、電子機器、及び超音波センサー制御方法 |
JP2017012381A (ja) * | 2015-06-30 | 2017-01-19 | 東芝メディカルシステムズ株式会社 | 体外式超音波プローブ |
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JPH03248059A (ja) * | 1990-02-27 | 1991-11-06 | Hitachi Constr Mach Co Ltd | 超音波検査装置 |
-
2010
- 2010-01-18 JP JP2010008242A patent/JP2010110642A/ja active Pending
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