JP2006223736A - 超音波診断装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 異なる送信方向に放射された超音波の反射波を所定の受信方向において時系列的に受信して得られた複数のドプラ信号に基づいてカラードプラ画像データを生成する際のスペクトラムの拡張化による計測精度の劣化を低減する。
【解決手段】 複数方向からの超音波を並列同時受信する際に、システム制御部8は、送受信部2を制御し送信方向及び隣接した複数の受信方向を順次移動させながら並列同時受信を行なう。そして、データ生成部3は、前記並列同時受信によって所定の受信方向から時系列的に得られた受信信号の各々から検出した複数のドプラ信号に基づいてカラードプラ画像データの生成を行なう際に、移相補正部33は、送信方向の移動に起因して発生したドプラ信号間の位相誤差を補正データ生成部34が生成した位相補正データを用いて補正し、補正後のドプラ信号に基づいてカラードプラ画像データの生成を行なう。
【選択図】 図1

Description

本発明は、超音波診断装置に係り、特に、複数方向からの超音波反射波を略同時に受信する機能を有した超音波診断装置に関する。
超音波診断装置は、超音波プローブに内蔵された超音波振動素子(以下、振動素子と呼ぶ。)から発生する超音波を被検体内に放射し、被検体組織の音響インピーダンスの差異によって生ずる反射波を前記振動素子によって受信してモニタ上に表示するものである。この診断方法は、超音波プローブを体表に接触させるだけの簡単な操作でリアルタイムの2次元画像データが容易に得られるため、臓器の機能診断や形態診断に広く用いられている。
被検体の組織あるいは血球からの反射波により生体情報を得る超音波診断法は、超音波パルス反射法と超音波ドプラ法の2つの大きな技術開発により急速な進歩を遂げ、上記技術を用いて得られるBモード画像とカラードプラ画像は、今日の超音波診断において不可欠なものとなっている。
今日、最も普及している電子走査方式の超音波診断装置では、一般に複数個の振動素子を一次元に配列し、これらの振動素子の夫々に対する駆動を高速制御することによって2次元画像データのリアルタイム表示を行なっている。
カラードプラ法は、超音波パルスにより生体内の所定断面を走査し、血液(血球)などの移動する反射体に対して超音波が照射された場合に、上記反射体の速度(血流速度)に対応して生ずるドプラ周波数偏移を捉えて画像化を行なうものである。このカラードプラ法は、当初、血流速度の速い心腔内血流情報の画像化に用いられたが、腹部臓器の組織血流など極めて遅い血流の画像化に対しても適用が可能となってきている。
カラードプラ法における診断能を高めるためには、優れた計測精度(低流速検出能及び高流速検出能)や時間分解能、更には、空間分解能が要求される。
移動している反射体に対して超音波パルスを照射し、その反射波のドプラ周波数偏移から反射体の移動速度を計測する場合、従来は、この反射体に対して超音波による送受信を所定の送受信間隔(レート周期)Trで複数回(L回)繰り返して行ない、観測時間Tobs(Tobs=Tr・L)で得られた一連の反射波に基づいてその移動速度を計測している。
この場合、低流速の反射体に対する検出能(低流速検出能:測定可能な流速の下限値)Vminは、上記L回の超音波送受信(以下、送受信と呼ぶ。)によって得られる一連の反射波の中からドプラ成分を検出するために用いられるフィルタ(例えば、MTIフィルタ)の特性、即ち、フィルタのカットオフ周波数と肩特性で決定され、このときのVminは、送受信繰り返し周波数(レート周波数)をfr(fr=1/Tr)とすれば、次式(1)で示される。
Figure 2006223736
一方、測定可能な流速の上限値(高流速検出能)Vmaxは、送受信繰り返し周波数(レート周波数)frの1/2で定義されるナイキスト周波数によって決定され、次式(2)によって示される。但し、Cは被検体内の音速値、f0は受信超音波の中心周波数、ξは超音波送受信方向と血流方向のなす角度である。そして、ドプラ周波数偏移が上記ナイキスト周波数を超えた場合には、ドプラ信号の周波数スペクトラムに折り返り現象が発生するため正確な血流速度の計測が不可能となる。
Figure 2006223736
即ち、カラードプラ法における第1の要求項目である低流速検出能Vminを向上させるためにはレート周波数frを低く設定するか、所定方向に対して繰り返し行なう送受信回数Lを増加させる必要があり、高流速検出能Vmaxを向上させるためには、レート周波数frを高く設定しなくてはならない。しかしながら、レート周波数frを高くした場合には、深部からの反射波が受信されないうちに次の超音波が放射されるため、隣接したレート区間の反射波が混入して受信される、所謂残留エコーの問題が生ずる。
又、第2の要求項目であるリアルタイム性は、単位時間当たりの表示画像枚数(フレーム周波数)Fnによって決定され、このフレーム周波数Fnは次式(3)によって示される。但し、RMは、1枚のカラードプラ画像データの生成に必要な走査方向の総数であり、リアルタイム性を向上させるためには、送受信回数L、あるいは走査方向総数RMを小さく設定しなくてはならない。
Figure 2006223736
更に、第3の要求項目である空間分解能を向上させるためには、上記走査方向総数RMを増加させる必要がある。即ち、フレーム周波数Fn、低流速検出能Vmin及び高流速検出能Vmax、空間分解能は相反する関係にあり、これらを同時に満足させることは困難であった。このため、循環器領域における血流計測の場合にはフレーム周波数Fnと高流速検出能Vmaxを、又、腹部や末梢臓器における血流計測の場合にはフレーム周波数と低流速検出能Vminが重要視されてきた。
このような問題点を解決するために、被検体の所定方向に対して送信超音波を放射し、この送信超音波による反射波(受信超音波)を前記所定方向に隣接した複数方向から略同時に受信して単位時間当たりのデータ量を増大させる所謂並列同時受信法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
図10は、従来のNo段(No=4)の並列同時受信法を示したものであり、横軸に示したΔθ間隔のθ1、θ2、θ3、・・・は、超音波の送信あるいは受信が行なわれる方向(角度)を示している。又、縦軸のt1、t2、t3、・・・は、レート周期Trのレートパルスが発生するタイミングであり、○は送信、●は受信を示している。
即ち、被検体の所定方向θ1、θ3、θ5及びθ7に対し時刻t1乃至t12のL回(L=12)の受信を繰返すことによってドプラ信号を検出する際、送信方向θ4の送信超音波による反射波(受信超音波)を受信方向θ1、θ3、θ5及びθ7から同時に受信し、次いで、時刻t14乃至t25において送信方向θ12の送信超音波による反射波(受信超音波)を受信方向θ9、θ11、θ13及びθ15から同時に受信する。このような動作を繰返すことにより、受信方向からの受信信号に基づいて生成される画像データのリアルタイム性は並列同時受信を行なわない場合と比較して約No倍に改善される。
しかしながら、上述の方法の問題点は、4方向ずつグルーピングされた並列受信群の境界において時相差による不連続が発生することである。即ち、図10に示した方法によれば、送信方向θ4と受信方向θ1、θ3、θ5及びθ7に対する送受信を時刻t1乃至t12でL(L=12)回繰り返した後、送信方向θ12と受信方向θ9、θ11、θ13及びθ15、・・・に対する送受信がL回づつ繰り返される。このとき、受信方向θ7とθ9、θ15とθ17、・・・のように並列受信群の境界において受信方向θ7、θ15、・・・の残留多重エコー等に起因する不連続が発生し、この不連続は、心臓等のように動きの速い臓器を観測対象とした場合特に顕著となるため、3方向以上の並列同時受信を循環器領域の診断に適用することは困難とされてきた。
このような問題点を解決するための新しい並列同時受信法が提案されている。この方法では、時刻t1、t2、t3、・・・において送信方向をθ1、θ2、θ3、・・・に順次移動し、各々の送信方向を中心として隣接した複数の受信方向からの受信信号を同時受信する。このような動作を繰り返すことにより複数方向に対する並列同時受信を連続的に行なうことが可能となり、従って上述のような並列受信群の境界における不連続の発生を避けることが可能となる(例えば、特許文献1参照。)。
河野俊彦他、循環器用超音波診断装置のハイフレームレート化の検討、日本超音波医学会論文集、55,727(1989) 特開2002−224107号公報
上述の特許文献1の方法によれば、例えば、時刻t1乃至t12において夫々の受信方向から得られるL個の受信信号に基づいてドプラ信号を検出する際、各々の受信信号に対する送信方向は時刻t1乃至t12で順次移動するため、固定反射体の場合であっても、この反射体からの受信超音波の位相は変化し、反射体はあたかも移動しているかのように認識される。即ち、上述の位相変化(以下では、位相誤差と呼ぶ。)によってドプラスペクトラムの拡張化現象(ブロードニング)が生ずるため、血流情報に起因する周波数スペクトラム成分に対して心筋等の移動に起因する周波数スペクトラム成分が混入しやすくなり、これらの各成分をフィルタ処理によって分離することが困難となる。
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、送信方向を順次移動しながら並列同時受信を行なう際に、送信方向の移動に伴って発生する受信超音波の位相差を補正することによりリアルタイム性と画質に優れたカラードプラ画像データの生成が可能な超音波診断装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明の超音波診断装置は、被検体の診断対象部位に対して超音波の送受信を行なう振動素子を有した超音波プローブと、前記振動素子を駆動し所定方向の所定領域に対して超音波の送信を行なう送信手段と、前記所定領域からの反射波を複数の受信方向において略同時に受信する受信手段と、前記送信方向と前記複数の受信方向を順次移動させて前記被検体の診断対象部位を走査する送受信方向制御手段と、前記受信手段によって得られた受信信号に対してドプラ信号を検出するドプラ信号検出手段と、異なる送信方向から前記所定領域に送信された超音波の反射波を所定の受信方向において時系列的に受信して得られた複数のドプラ信号に対して位相補正を行なう位相補正手段と、位相補正された複数のドプラ信号に基づいて画像データを生成する画像データ生成手段を備えたことを特徴としている。
本発明によれば、送信方向を順次移動しながら並列同時受信を行なう際に、送信方向の移動に伴って発生する受信超音波の位相差を補正することによりドプラ信号の検出能が向上するため、リアルタイム性と画質に優れたカラードプラ画像データの生成が可能となる。
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
以下に述べる本発明の実施例では、複数方向からの超音波を並列同時受信する際に、送信方向及び所定間隔で隣接した複数の受信方向を順次移動させながらN(N=4)方向に対する並列同時受信を行なう。そして、所定の受信方向に対し時系列的に得られたL(L=12)個の受信信号の各々から検出したドプラ信号に基づいて血流情報の計測を行なう際に、送信方向の移動に起因して発生したドプラ信号の位相誤差を予め設定された位相補正データを用いて補正し、補正後のドプラ信号に基づいてカラードプラ画像データの生成を行なう。
尚、本実施例では、振動素子が1次元配列されたセクタ走査用超音波プローブを用い、4段の並列同時受信によって得られた受信信号に基づいてカラードプラ画像データを生成する場合について述べるが、これに限定されない。
(装置の構成)
以下では、本発明の実施例における超音波診断装置の構成と各ユニットの動作につき図1乃至図7を用いて説明する。尚、図1は、本実施例における超音波診断装置の全体構成を示すブロック図であり、図2及び図4は、この超音波診断装置を構成する送受信部及びデータ生成部のブロック図である。
図1に示す超音波診断装置100は、1次元配列されたM個の振動素子を備え被検体の所定方向に対して超音波の送受信を行なうセクタ走査用の超音波プローブ1と、M個の振動素子に対して駆動信号を供給すると共に、これらの振動素子から得られた受信信号に対して整相加算を行なう送受信部2を備え、更に、送受信部2から得られた受信信号を信号処理してBモードデータ及びカラードプラデータの生成を行なうデータ生成部3と、このデータ生成部3において時系列的に生成されたBモードデータ及びカラードプラデータを順次保存して2次元のBモード画像データやカラードプラ画像データを生成し、得られたこれらの画像データに対して所望の画像処理を行なう画像データ生成・処理部4と、画像処理後のBモード画像データやカラードプラ画像データの表示を行なう表示部5を備えている。
又、超音波診断装置100は、送受信部2あるいはデータ生成部3に対して送信超音波の中心周波数とほぼ等しい周波数の連続波あるいは矩形波を発生する基準信号発生部6と、操作者による被検体情報の入力、装置の初期設定、更には各種コマンドの入力等が行なわれる入力部7と、超音波診断装置100の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部8を備えている。
超音波プローブ1は、被検体の表面に対してその前面を接触させ超音波の送受信を行なうものであり、被検体との接触面にはM個の振動素子が1次元配列されている。この振動素子は電気音響変換素子であり、送信時には電気的なパルスを超音波パルス(送信超音波)に変換し、又、受信時には超音波反射波(受信超音波)を電気信号(受信信号)に変換する機能を有している。
次に、図2に示した送受信部2は、M個の振動素子に対して駆動信号を供給する送信部21と、この振動素子から得られた受信信号に対して整相加算を行なう受信部22を備えている。
送信部21は、レートパルス発生器211と、Mチャンネルから構成される送信遅延回路212及び駆動回路213を備え、レートパルス発生器211は、基準信号発生部6から供給される連続波を分周することによって送信超音波の繰り返し周期(レート周期)Trを決定するレートパルスを生成する。又、送信遅延回路212は、送信超音波を所定距離(深さ)に集束するための集束用遅延時間と所定の送信方向に偏向するための偏向用遅延時間を前記レートパルスに与える。一方、駆動回路213は、超音波プローブ1の振動素子を駆動するためのMチャンネルの駆動信号を前記レートパルスのタイミングに基づいて生成する。
次に、受信部22は、Mチャンネルから構成されるプリアンプ221及びA/D変換器222と、Nチャンネルのビームフォーマ224−1乃至224−Nを備えている。プリアンプ221は、Mチャンネルの受信信号を増幅して十分なS/Nを確保するためのものであり、その初段部には駆動回路213から供給される高電圧の駆動信号から保護するための図示しない保護回路が設けられている。このプリアンプ221において所定の大きさに増幅されA/D変換器222にてデジタル信号に変換されたMチャンネルの受信信号は、N方向の並列同時受信に対応したNチャンネルのビームフォーマ224−1乃至224−Nの各々に供給される。
ビームフォーマ224−1乃至224−Nの各々は、図示しないデジタル遅延回路と加算回路を有し、A/D変換器222においてデジタル信号に変換されたMチャンネルの受信信号に対して、所定距離(深さ)からの超音波反射波を収束するための収束用遅延時間と所定の受信方向に強い受信指向性をもたせるための偏向用遅延時間を与えた後加算合成(整相加算)する。この場合、受信タイミングに伴って収束領域が深部に順次移動する所謂ダイナミックフォーカスが行なわれ、深さによらずに略均一なビーム幅を有した受信ビームが形成される。
次に、後述するシステム制御部8からの制御信号に基づいて上述の送受信部2が行なう本実施例の並列同時受信法について述べる。図3は、N(N=4)方向に対して並列同時受信を行なう場合を示したものであり、横軸に示したΔθ間隔のθ1、θ2、θ3、・・・は、超音波の送信あるいは受信が行なわれる方向(角度)を示している。又、縦軸のt1、t2、t3、・・・は、レート周期Trのレートパルスが発生するタイミングであり、○は送信、●は受信、☆は送受信を示している。
この並列同時受信法では、例えば、時刻t1のレートパルスに基づいて、θ5の方向に対する超音波の送信と3Δθ間隔で設定されたθ1、θ4、θ7、θ10の4方向に対する並列同時受信が行なわれ、次いで、レート周期Tr後における時刻t2のレートパルスに基づいてθ6の方向に対する送信とθ1、θ4、θ7、θ10の4方向に対する並列同時受信が行なわれる。更に、時刻t3においてθ7に対する送信とθ1、θ4、θ7、θ10に対する並列同時受信が行なわれ、時刻t4においてθ8に対する送信と3Δθ間隔で設定されたθ4、θ7、θ10、θ13に対する並列同時受信が行なわれる。
即ち、送信方向は、レート周期Trに同期してΔθ間隔で順次移動し、3Δθ間隔で隣接した4つの受信方向は、3Trの周期で間隔3Δθずつ移動する。このような送信及び受信が全走査領域に対して行なわれ、各受信方向において時系列的に得られた受信信号に基づいてカラードプラデータの生成が行なわれる。例えば、θ10方向のカラードプラデータは、時刻t1乃至t12におけるθ5乃至θ16方向の送信とθ10の受信の組み合わせによって得られた受信信号に基づいて生成される。
同様にして、θ13方向のカラードプラデータは、時刻t4乃至t15におけるθ8乃至θ19方向の送信とθ13方向の受信の組み合わせによって得られた受信信号に基づき、θ16方向のカラードプラデータは、時刻t7乃至t18におけるθ11乃至θ22方向の送信とθ16方向の受信の組み合わせによって得られた受信信号に基づいて生成される。尚、カラードプラデータの生成の詳細については後述する。
ところで、血流情報の検出に必要なデータ数Lを12とした場合、画像化が可能な範囲は受信方向がθ10以降となり、θ1、θ4及びθ7の受信方向から得られた受信信号は画像化に寄与しない。このため、これらの方向から得られた受信信号の処理は省略しても構わない。
次に、図4に示したデータ生成部3は、上述の受信部22のビームフォーマ224−1乃至224−Nから出力されたNチャンネルの受信信号を信号処理してBモードデータを生成するBモードデータ生成部31と、前記受信信号に対して直交検波を行なってドプラ信号を検出するドプラ信号検出部32と、検出されたドプラ信号を一旦保存するドプラ信号記憶部30と、ドプラ信号に対して位相補正処理を行なう位相補正部33と、この位相補正処理に用いる位相補正データを生成する補正データ生成部34と、位相補正部33にて位相補正されたドプラ信号に基づいてカラードプラデータの生成を行なうカラードプラデータ生成部35を備えている。
Bモードデータ生成部31は、Nチャンネルの包絡線検波器311と対数変換器312を備え、包絡線検波器311は、受信部22のビームフォーマ224−1乃至224−Nから供給された整相加算後のNチャンネルの受信信号を包絡線検波し、この包絡線検波信号は対数変換器312においてその振幅が対数変換される。尚、包絡線検波器311と対数変換器312は順序を入れ替えて構成してもよい。
一方、ドプラ信号検出部32は、Nチャンネルから構成されるπ/2移相器321、ミキサ322−1及び322−2、LPF(低域通過フィルタ)323−1及び323−2を備え、受信部22から供給されるNチャンネルの受信信号の各々は、ドプラ信号検出部32のミキサ322−1及び322−2の第1の入力端子に入力される。一方、前記受信信号の中心周波数とほぼ等しい周波数を有した基準信号発生部6の矩形波は、ミキサ322−1の第2の入力端子に直接供給されると共に、π/2移相器321において位相が90度シフトされてミキサ322−2の第2の入力端子に供給される。そして、ミキサ322−1及び322−2の出力は、LPF323−1及び323−2に供給され、受信部22の出力信号周波数と基準信号発生部6の出力信号周波数の差の成分のみが検出される。
即ち、Nチャンネルのドプラ信号検出部32は、所定の受信方向から時系列的に得られたL個(L=12)の受信信号に対し直交位相検波を行なってドプラ信号のI成分(複素信号の実数成分)及びQ成分(複素信号の虚数成分)を生成する。
次いで、ドプラ信号記憶部30は、Nチャンネルのドプラ信号検出部32の各々から供給されるドプラ信号のI成分及びQ成分の保存を行なう。図5は、ドプラ信号記憶部30に保存されたドプラ信号のI成分及びQ成分を模式的に示したものであり、図5(a)には、例えば、受信方向θ10に対し時刻t1乃至t12で時系列的に得られた12個の受信信号におけるドプラ信号のI成分A−1乃至A−12が、又、図5(b)にはQ成分B−1乃至B−12が示されている。
尚、図5における縦軸(Z方向)は超音波伝搬方向に対応し、データai1及びデータbi1(i=1乃至12)は、超音波プローブ1の近傍に位置した生体浅部からの受信信号に基づくドプラ信号のI成分及びQ成分であり、データainx及びデータbinx(i=1乃至12)は、超音波プローブ1に対し最も離れた生体深部からの受信信号に基づくドプラ信号のI成分及びQ成分を示す。
即ち、時刻t1乃至t12において受信方向θ10から得られたドプラ信号のI成分A−i及びQ成分B−i(i=1乃至12)は、ai1乃至ainxびbi1乃至binxの一連のデータから構成され、これらのI成分及びQ成分は付帯情報である送信方向及び受信方向の情報と共にドプラ信号記憶部30に保存される。又、時刻t4乃至t15において受信方向θ13から得られたドプラ信号のI成分及びQ成分や時刻t7乃至t18において受信方向θ16から得られたドプラ信号のI成分及びQ成分等も同様にしてその付帯情報と共にドプラ信号記憶部30に保存される。
一方、図4の位相補正部33は、ドプラ信号記憶部30に保存された所定距離(深さ)のPnにおけるドプラ信号のI成分ain(i=1乃至12)及びQ成分bin(i=1乃至12)を読み出し、その付帯情報である送信方向及び受信方向の情報を後述の補正データ生成部34に供給する。そして、補正データ生成部34が上述の付帯情報に基づいて生成した位相補正データを用いて前記Pnにおけるドプラ信号の位相を補正し、補正したドプラ信号のI成分及びQ成分をカラードプラデータ生成部35のMTIフィルタ351に供給する。
次に、超音波送信方向の移動に伴ってドプラ信号に発生する位相誤差につき図6及び図7を用いて説明する。図6(a)は、送信方向θ10において超音波プローブ1から距離Coに送信収束点を設定した場合の送信ビーム幅と波面を模式的に示したものであり、収束領域Rfより浅部の距離Caでは伝搬方向に対して凹面状の波面Wfaが形成され、深部の距離Cbでは凸面状の波面Wfbが形成される。そして、このときの並列同時受信方向θ4、θ7、θ10及びθ13の受信ビームは送信ビーム幅に含まれるように設定される。
一方、図6(b)は、送信方向がθ10の場合とθ6の場合を例に受信方向θ10から得られるドプラ信号の位相差を説明するための図である。即ち、図6(b)において、受信方向θ10の距離Caに位置する反射体Paからのドプラ信号を検出する場合、送信方向θ6から放射された送信超音波は、波面が凹面のため送信方向θ10から放射された送信超音波より位相Δφaだけ早く反射体Paに到達する。従って、送信方向をθ6、受信方向をθ10として得られたドプラ信号の位相は、送受信方向をθ10として得られたドプラ信号の位相に対してΔφaだけ進む。
一方、受信方向θ10の距離Cbに位置する反射体Pbからのドプラ信号を検出する場合、送信方向θ6から放射された送信超音波は、波面が超音波伝搬方向に対して凸面のため送信方向θ10から放射された送信超音波より位相Δφbだけ遅く反射体Pbに到達する。従って、送信方向をθ6、受信方向をθ10として得られたドプラ信号の位相は、送受信方向をθ10として得られたドプラ信号の位相に対してΔφbだけ遅れる。
図7は、送受信方向をθ10に設定した場合に距離Ca及び距離Cbの反射体から得られるドプラ信号の位相を基準とし、送信方向をθ5乃至θ16、受信方向をθ10に設定した場合に上記反射体から得られるL個のドプラ信号の相対的位相差を示したものであり、距離Ca及び距離Cbに対する位相差は、何れの場合も受信方向θ10に対して送信方向が離れるほど大きくなる。
尚、上述の位相差は、受信方向に対する送信方向の間隔、超音波中心周波数、焦点距離、送信に用いられる振動素子数及び配列間隔等によって一義的に決定される。
図4に示したデータ生成部3の補正データ生成部34は、演算回路と記憶回路を備え、前記記憶回路にはシステム制御部8から供給される超音波中心周波数、焦点距離、送信用の振動素子数及び振動素子配列間隔や位相補正部33から供給される送信方向及び受信方向等の情報が保存される。一方、前記演算回路は、前記記憶回路に保存された上述の情報に基づいて位相差(位相誤差)Δφin(i=1乃至L)を算出し、次いで、この位相誤差を補正するための位相補正データを生成する。例えば、上記位相誤差Δφinをキャンセルするための位相補正データのI成分Rin及びQ成分Iin(i=1乃至L)を下式に基づいて生成する。
Figure 2006223736
そして、位相補正部33は、補正データ生成部34において生成された位相補正データのI成分Rin及びQ成分Iinと、既にドプラ信号記憶部30から読み出された所定距離におけるL個のドプラ信号のI成分ain及びQ成分binとの複素乗算を行なうことによってドプラ信号の位相補正を行なう。
次に、カラードプラデータ生成部35は、MTIフィルタ351と、自己相関器352と、演算器353を備えており、位相補正部33から供給される補正後のL個のドプラ信号を用いて周波数解析を行ない、更に、この解析結果に基づいてカラードプラデータを生成する。
即ち、MTIフィルタ351は、位相補正部33から供給された位相補正後のドプラ信号に対して血流情報に関する成分の抽出を行なう。又、自己相関器352は、MTIフィルタ351によって抽出されたドプラ成分に対して自己相関値を算出し、演算回路353は、この自己相関値に基づいて血流情報の速度値、分散値及びパワー値を反映したカラードプラデータの生成を行なう。
図1に戻って、画像データ生成・処理部4は、画像データ生成・記憶部41と画像データ処理部42を備えており、画像データ生成・記憶部41は、データ生成部3において超音波の受信方向単位で生成されるBモードデータ及びカラードプラデータを順次保存して、2次元のBモード画像データ及びカラードプラ画像データを生成する。一方、画像データ処理部42は、画像データ生成・記憶部41において生成されたBモード画像データやカラードプラ画像データに対し、必要に応じて輪郭強調や階調補正等の画像処理を行なう。
表示部5は、図示しない表示用データ生成回路、変換回路及びモニタを備えており、表示用データ生成回路は、画像データ生成・処理部4において生成されたBモード画像データやカラードプラ画像データに対し表示形態に対応した所定の走査変換処理を行なって表示用データを生成する。次いで、変換回路は、この表示用データに対しD/A変換とテレビフォーマット変換を行なって映像信号を生成し、得られた映像信号はモニタに表示される。
一方、入力部7は、操作パネル上に表示パネルやキーボード、トラックボール、マウス、選択ボタン、入力ボタン等の入力デバイスを備え、患者情報の入力、診断部位の選択、プローブIDの入力、画像データ収集モード、画像データ収集方法、画像データ表示方法の設定や種々のコマンド信号の入力等を行なう。
システム制御部8は、図示しないCPUと記憶回路を備え、この記憶回路には、各種超音波プローブにおける超音波中心周波数、振動素子数、振動素子配列間隔等の情報が予め保管されており、更に、操作者によって入力部7から入力あるいは設定された上述の情報も前記記憶回路に保存される。そして、前記CPUは、これらの情報に基づいて、送受信部2、データ生成部3、更には画像データ生成・処理部4の制御やシステム全体の制御を統括して行なう。又、本実施例におけるシステム制御部8は、図3に示した送信方向及び並列同時受信方向の制御を行なう。
(画像データの生成手順)
次に、上述の実施例におけるカラードプラ画像データの生成手順につき図8のフローチャートに沿って説明する。尚、ここでは4段(N=4)の並列同時受信を適用してカラードプラ画像データの生成を行なう場合について述べる。
超音波診断装置100の操作者は、先ず、図1の入力部7において患者情報の入力、診断部位の選択、プローブIDの入力、画像データ収集モード、画像データ収集方法、画像データ表示方法等に関する設定を行ない、これらの入力情報、選択情報及び設定情報はシステム制御部8の記憶回路に保存される。本実施例では、画像データ収集モードとして、セクタ走査によるカラードプラ画像データの収集モードを設定し、画像データ収集方法として、4段の並列同時受信法を設定する(図8のステップS1)。
一方、システム制御部8は、入力部7にて入力されたプローブIDに対応した超音波プローブ1の超音波中心周波数、振動素子数及び振動素子配列間隔等を自己の記憶回路から読み出し、データ生成部3の補正データ生成部34に設けられた記憶回路に保存する。
上述の初期設定が終了したならば、操作者は、超音波プローブ1の先端(超音波送受波面)を被検体の体表面上の所定の位置に固定して画像データの収集を開始する。先ず、図3にて既に述べた時刻t1におけるθ5方向の送信とθ10方向の受信に際して、図2のレートパルス発生器211は、システム制御部8から供給される制御信号に基づいて、被検体内に放射する送信超音波の放射タイミングを決定するレートパルスをMチャンネルの送信遅延回路212に供給する。
送信遅延回路212は、入力部7にて設定された送信収束点に超音波を収束するための遅延時間と、θ5方向に超音波を送信するための遅延時間を前記レートパルスに与え、このレートパルスをMチャンネルの駆動回路213に供給する。次いで、駆動回路213は、前記レートパルスの供給によって生成された駆動パルスによって超音波プローブ1に内蔵されているM個の振動素子を駆動し被検体内に超音波パルス(送信超音波)を放射する。
被検体内に放射された送信超音波の一部は、音響インピーダンスの異なる臓器間の境界面あるいは組織にて反射する。又、この送信超音波が心臓壁や血球などの動きのある反射体で反射する場合、その超音波周波数はドプラ偏移を受ける。
被検体の組織や血球にて反射した超音波反射波(受信超音波)は、超音波プローブ1の前記振動素子によって受信されて電気信号(受信信号)に変換され、この受信信号は、送受信部2の受信部22におけるプリアンプ221を介してMチャンネルの独立なA/D変換器222に供給される。そして、A/D変換器222にてデジタル信号に変換されたMチャンネルの受信信号の各々は、N方向の並列同時受信に対応したNチャンネルのビームフォーマ224−1乃至224−Nの中の例えばビームフォーマ224−1に供給される。
次いで、ビームフォーマ224−1は、A/D変換器222においてデジタル信号に変換されたMチャンネルの受信信号に対して、所定距離(深さ)からの超音波反射波を収束するための収束用遅延時間とθ10方向に強い受信指向性をもたせるための偏向用遅延時間を与えた後加算合成(整相加算)し、データ生成部3のドプラ信号検出部32に供給する。
図4のドプラ信号検出部32に供給された受信部22の出力信号は、ミキサ322−1、322−2及びLPF323−1、323−2によって直交位相検波されてドプラ信号に変換され、このドプラ信号のI成分及びQ成分の各々はドプラ信号記憶部30に保存される。次いで、時刻t2においてθ6方向の送信とθ10方向の受信が行なわれ、時刻t3においてθ7方向の送信とθ10方向の受信が行なわれる。そして、このとき上述と同様の手順によって得られたドプラ信号のI成分及びQ成分はドプラ信号記憶部30に保存される。
更に、時刻t4乃至t6におけるθ8方向乃至θ10方向の送信ではθ10方向及びθ13方向に対する2方向並列同時受信が行なわれ、時刻t7乃至t9におけるθ11方向乃至θ13方向の送信ではθ10方向、θ13方向及びθ16方向に対する3方向並列同時受信が行なわれる。そして時刻t10乃至t12、時刻t13乃至t15、時刻t16乃至t18、・・・においては送信方向を順次移動しながら受信方向θ10、θ13、θ16、θ17・・・の各々に対して12回の受信が行われるまで4段の並列同時受信が順次行われる。そして、このとき得られた受信方向θ10、θ13、θ16、θ17・・・の受信信号においてドプラ信号検出部32が検出したドプラ信号のI成分及びQ成分はドプラ信号記憶部30に保存される(図8のステップS2)。
一方、位相補正部33は、例えば、受信方向θ10に対するL回(12回)の受信によってL個のIQ信号がドプラ信号記憶部30に保存されたならば、このL個のIQ信号の各々において所定距離(深さ)のPnに対応したI成分及びQ成分を読み出し、その付帯情報である送信方向θ5乃至θ16と受信方向θ10の情報を補正データ生成部34に供給する。そして、補正データ生成部34は、上述の付帯情報と自己の記憶回路に保管されているプローブ1の超音波中心周波数、振動素子数M及び振動素子配列間隔等の基づいて位相補正データを生成して位相補正部33に供給する(図8のステップS3)。又、位相補正部33は、補正データ生成部34から供給された位相補正データを用いてドプラ信号の位相誤差を補正し(図8のステップS4)、補正後のドプラ信号のI成分及びQ成分をカラードプラデータ生成部35のMTIフィルタ351に供給する。
次いで、MTIフィルタ351は、位相補正部33から供給されたドプラ信号に対してフィルタ処理を行ない、生体組織等の固定反射体から得られる反射波成分や心筋などの組織の運動によって生ずる組織ドプラ成分(クラッタ成分)を排除し、血流に起因する血流ドプラ成分を抽出する(図8のステップS5)。
そして、血流ドプラ成分のI成分及びQ成分が前記MTIフィルタ351から供給された自己相関器352は、これらの各成分を用いて自己相関処理を行ない、更に、自己相関処理結果に基づいて血流の平均速度値、分散値、パワー値等の血流情報を算出する(図8のステップS6)。このような演算を、他の位置(深さ)に対しても行ない、算出された血流の平均速度値、分散値、更にはパワー値等のカラードプラデータを図1の画像データ生成・処理部4における画像データ生成・記憶部41に保存する。
次いで、位相補正部33は、同様の手順によって送信方向を順次移動しながら受信方向θ13、θ16、θ19、・・・の受信信号から得られたドプラ信号に対しても位相補正を行ない、補正後のドプラ信号に基づいて得られたカラードプラデータは、画像データ生成・記憶部41に保存される。
即ち、画像データ生成・記憶部41には、受信方向単位で得られたカラードプラデータが順次保存されてカラードプラ画像データが生成され(図8のステップS7)、生成されたカラードプラ画像データは画像データ処理部42にて必要に応じて画像処理がなされる。そして、表示部5の表示用データ生成回路は、画像データ生成・記憶部41において生成されたカラードプラ画像データに対し所定の表示形態に対応した走査変換等の処理を行なって表示用データを生成し、生成された表示用データは、図示しない変換回路においてD/A変換とテレビフォーマット変換が行われてモニタに表示される(図8のステップS8)。
尚、上述の手順では、Bモード画像データの生成と表示についての記載を省略したが、通常、Bモード画像データは、上述のカラードプラ画像データと並行して生成と表示が行なわれる。例えば、並列同時受信により1枚目(1フレーム目)のカラードプラ画像データの生成が終了したならば、非並列同時受信によりBモード画像データの生成を行ない、次いで、並列同時受信により2枚目のカラードプラ画像データの生成を行なう。このような手順を繰り返すことによりBモード画像データとカラードプラ画像データの同時表示が可能となる。又、カラードプラ画像データの生成を目的として得られた受信信号の一部を用いてBモード画像データを生成することも可能である。
次に、本実施例によって得られる効果につき図9を用いて説明する。図9(a)は、例えば心腔内からの超音波受信信号に基づいて得られたドプラ信号の周波数スペクトラムを示したものであり、横軸は周波数、縦軸はスペクトラムの大きさ(パワー)である。この周波数スペクトラムの直流成分近傍には心臓壁等の組織の移動速度が反映されたクラッタ成分と、このクラッタ成分よりやや高い周波数成分を有した血流成分とが分布しており、通常、クラッタ成分は血流成分より20dB以上大きい。
このような2つの成分が含まれたドプラ信号を図3に示した送信方向の移動を伴う並列同時受信の受信信号から検出する際、所定の受信方向において時系列的に得られるL個のドプラ信号の各々には位相誤差が含まれるため、既に述べたように周波数スペクトラムの拡張化現象(ブロードニング)が発生する。図9(b)は、この周波数スペクトラムのブロードニングが発生した場合のクラッタ成分と血流成分を示したものであり、夫々の成分の端部は重なり合い、特に大きなクラッタ成分に隣接した小さな血流成分をフィルタ処理によって弁別することは極めて困難となる。このようなドプラ信号に対して上述の位相補正処理を適用することにより、図9(a)に示すような周波数スペクトラムを得ることが可能となるため血流成分のみを正確に抽出することができる。
以上述べた本発明の実施例によれば、複数方向からの超音波を並列同時受信する際に、送信方向及び所定間隔で隣接した複数の受信方向を順次移動させながら並列同時受信を行なうため、従来のような並列受信群の境界で発生した不連続を排除することができる。
又、送信方向及び隣接した複数の受信方向を順次移動させながら連続的な並列同時受信を行なうため、残留多重の影響が隣接した受信信号間で相殺される。このため、従来、残留多重の影響を低減するために行なっていた並列受信群間でのダミー送受信を行なう必要がなくなり、又、レート周期も短くすることが可能となるため単位時間当たりに生成される画像枚数を更に増加させることができる。
更に、送信方向の移動に起因して発生したドプラ信号の位相誤差を予め設定された位相補正データを用いて補正することにより、周波数スペクトラムのブロードニングを抑えることができる。
以上述べた本実施例の効果により、ドプラ信号の検出精度が向上し、リアルタイム性と画質に優れたカラードプラ画像データの生成が可能となる。
以上、本発明の実施例について述べてきたが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、変形して実施することが可能である。例えば、並列同時受信法は、図3に示した方法に限定されるものではなく、例えば、特許文献1の図3乃至図6に記載されている並列同時受信法であってもよい。
又、上述の実施例では、送信に用いる振動素子数と受信に用いる振動素子数は等しい場合について述べたが,並列同時受信を適用した場合には、送信ビーム幅を比較的広めにするために送信用振動素子数は受信用振動素子数より少なく設定する方が好適な場合が多い。
更に、上述の実施例では、血流ドプラ成分に基づいてカラードプラ画像データを生成する場合について述べたが、組織ドプラ成分に基づいて生成されたカラードプラ画像データにおいても同様な効果を得ることが可能となる。但し、組織ドプラ成分を抽出する際には、血流ドプラ成分を排除するための低域通過フィルタ特性が設定されたMTIフィルタを用いてもよいが、血流ドプラ成分は組織ドプラ成分と比較して著しく小さいため、MTIフィルタを用いなくてもよい。
一方、カラードプラ画像データは2次元に限定されるものではなく、3次元のカラードプラ画像データの生成において上述の並列同時受信法を適用することにより、良質な3次元画像データを短時間で生成することができる。この場合、振動素子が2次元配列された超音波プローブを用いてもよい。
又、上述の実施例では、N段の並列同時受信を行なうために、Nチャンネルのドプラ信号検出部32及びBモードデータ生成部31を備えたデータ生成部3について述べたが、高速デバイスを用いてNチャンネルの信号処理を時分割処理することによりチャンネル数を低減させることができる。
尚、並列同時受信数(N)が4、所定受信方向から連続して得られる受信信号数(L)が12の場合について述べたが、これに限定されるものではない。又、セクタ走査の他にコンベックス走査やリニア走査等の他の走査によってカラードプラ画像データあるいはBモード画像データの生成を行なってもよい。
本発明の実施例における超音波診断装置の全体構成を示すブロック図。 同実施例の超音波診断装置が備えた送受信部の構成を示すブロック図。 同実施例における4方向並列同時受信法の具体例を示す図。 同実施例の超音波診断装置が備えたデータ生成部の構成を示すブロック図。 同実施例においてドプラ信号記憶部に保存されたドプラ信号のI成分及びQ成分を模式的に示す図。 同実施例における送信ビーム幅と波面を模式的に示す図。 同実施例において異なる送信方向に放射された超音波の反射波を同一の受信方向において受信する際の受信信号に生ずる位相差を示す図。 同実施例におけるカラードプラ画像データの生成手順を示すフローチャート。 同実施例の効果を説明するための図。 従来の並列同時受信法を示す図。
符号の説明
1…超音波プローブ
2…送受信部
3…データ生成部
4…画像データ生成・処理部
5…表示部
6…基準信号発生部
7…入力部
8…システム制御部
21…送信部
22…受信部
30…ドプラ信号記憶部
31…Bモードデータ生成部
32…ドプラ信号検出部
33…位相補正部
34…補正データ生成部
35…カラードプラデータ生成部
41…画像データ生成・記憶部
42…画像データ処理部
100…超音波診断装置
211…レートパルス発生器
212…送信遅延回路
213…駆動回路
221…プリアンプ
222…A/D変換器
224…ビームフォーマ
311…包絡線検波器
312…対数変換器
321…π/2移相器
322…ミキサ
323…低域通過フィルタ
351…MTIフィルタ
352…自己相関器
353…演算回路

Claims (9)

  1. 被検体の診断対象部位に対して超音波の送受信を行なう振動素子を有した超音波プローブと、
    前記振動素子を駆動し所定方向の所定領域に対して超音波の送信を行なう送信手段と、
    前記所定領域からの反射波を複数の受信方向において略同時に受信する受信手段と、
    前記送信方向と前記複数の受信方向を順次移動させて前記被検体の診断対象部位を走査する送受信方向制御手段と、
    前記受信手段によって得られた受信信号に対してドプラ信号を検出するドプラ信号検出手段と、
    異なる送信方向から前記所定領域に送信された超音波の反射波を所定の受信方向において時系列的に受信して得られた複数のドプラ信号に対して位相補正を行なう位相補正手段と、
    位相補正された複数のドプラ信号に基づいて画像データを生成する画像データ生成手段を
    備えたことを特徴とする超音波診断装置。
  2. 前記受信手段は、前記所定領域からの反射波に基づく受信信号を整相加算処理することにより複数方向からの反射波を識別して略同時に受信することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
  3. 前記送受信方向制御手段は、前記送信方向をレート周期毎に所定の送信間隔で移動し、前記複数の受信方向の各々を前記レート周期の整数倍の周期毎に所定の受信間隔で移動することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
  4. 前記送受信方向制御手段は、前記送信方向をレート周期毎に所定の送信間隔で移動し、前記複数の受信方向の各々を前記レート周期の整数倍の周期毎に前記送信間隔の前記整数倍の受信間隔で移動することを特徴とする請求項3記載の超音波診断装置。
  5. 補正データ生成手段を備え、前記位相補正手段は、少なくとも前記送信方向、前記受信方向及び前記超音波プローブにおける前記振動素子の配列情報に基づいて前記補正データ生成手段が生成した位相補正データを用いて前記ドプラ信号に対する位相補正を行なうことを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
  6. 前記補正データ生成手段は、前記振動素子から前記被検体の所定領域までの距離をパラメータとして前記位相補正データの生成を行なうことを特徴とする請求項5記載の超音波診断装置。
  7. 前記位相補正手段は、前記ドプラ信号検出手段によって検出されたドプラ信号のI成分及びQ成分と前記補正データ生成手段が生成した位相補正データのI成分及びQ成分を用いた複素乗算処理によって前記位相補正を行なうことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載した超音波診断装置。
  8. 前記画像データ生成手段は、位相補正されたドプラ信号に基づいて抽出された血流ドプラ成分の平均速度値、速度分散値及びパワー値の少なくとも何れかによるカラードプラ画像データを生成することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
  9. 表示手段を備え、前記表示手段は、前記画像データ生成手段が生成した画像データをリアルタイム表示することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
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