JP2010109601A - Be薄膜振動板の製造方法、同方法により製造されたBe薄膜振動板及び同Be薄膜振動板を組み込んだスピーカ - Google Patents
Be薄膜振動板の製造方法、同方法により製造されたBe薄膜振動板及び同Be薄膜振動板を組み込んだスピーカ Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】音速が大きく、比重の軽いBeを所定の形に成型した基板に気相成長させ、基板をエッチングで除去して振動板をつくる工程において、基板にバリア層をつけることにより基板からの拡散を防止し、気相成長の段階で中間層を入れることによりBeの異常成長を抑制し、結晶成長方位を規制したBe皮膜に強い圧縮応力を与えるダイヤ膜をコートすることにより、再生周波数帯域の広いスピーカをつくる。
【選択図】 図1
Description
この場合、基板にはCuを用い、基板温度300℃前後、真空度10E−6Torrで膜厚15〜70μmの所定の形状のBe振動板を得た。真空蒸着法の場合、酸化物の含有量は粉末冶金法に比べて低く、純度99〜99.7%の成膜ができ、音速も12500m/sと向上した。
極限に挑む金属材料 工業調査会 田中良平編著 P265
デジタルドメイン社カタログ SIT アンプ
Be蒸着膜の強度を上げるため、基板は200〜350℃まで加熱され、所定の温度になった時から蒸着を開始する。膜厚も通常の薄膜と異なり、自立膜が要求されるため、20〜60μmと厚く、蒸着時間が20〜60分と長くなるので、電子銃からの輻射熱を受けて成膜時には更に温度が上昇する。このため、Cu基板とBeの間で相互の拡散が起こり、Be膜表面に0.3〜1μmのBe−Cu合金層ができ、膜の重量を上げると共に、合金膜は比強度がBe単体に比較して小さく、かつ、音速が遅く、再生周波数帯域を下げる。
Beは結晶系が六方晶で、C軸が膜成長方向に揃いやすく、基板加熱により結晶粒径が大きくなり易く、粒界強度が下がる。このため、膜の曲げモーメントが減少し、比較的低い再生周波数で高次共振による歪が発生し、再生周波数帯域が下がる。金属膜は結晶粒径が微細化され、介在物が薄く分散されるほど機械強度は向上するので、膜結晶の微細化が必要とされる。
無定形酸化ケイ素(Si−O)皮膜は、音速が5000〜6000m/sとBeの12000m/sより低く、複合膜としてBe蒸着膜の音速を下げており、結果として、再生周波数帯域が複合化により下げられている。
また、本発明の付随的の課題は、上記Be薄膜振動板の製造方法によりツィータ等用に好適なBe薄膜振動板を提供することにある。また、本発明の派生的な課題は、再生周波数が高音域に拡がる優れたスピーカを提供することにある。
バリア層としては、Beに拡散し難い高融点金属Mo.W等又は請求項3の結晶制御層が有効である。
通常の粉末冶金法による圧延Be膜はX線回折面として(011)面等が強くでる。
本発明によるBe薄膜振動板の製造方法においては、まず、所定の形状に成型されたCu基板に対して、Beを気相成長させる部分に拡散するのを防ぐためのバリア層をコートする。Be拡散防止のためのバリア層は、Beと合金を作りにくい金属として、Mo,W,Ta,Cr等の融点が比較的高い金属が望ましい。厚みは、基板除去のエッチング工程後なるべくBe皮膜に残らないように、2〜100nmの薄い厚みが望ましい。必要に応じてCu基板をエッチング工程で除去後、イオンエッチング又は逆スパッタエッチングで残留バリア層を完全に除去することも、選択肢としてあり得る。
J. Vac. Soc. Jpn Vol.147 No.3 2004 滝川他 人造ダイヤモンドハンドブック 難波他編 サイエンスフォーラム9
(1)Beの気相成長に際して中間層を入れると、異常結晶成長が抑えられるため、結晶が微細化され、結晶粒界での不純物濃度が分散されるので、強度が上がり、分割共振が抑えられる。従って、音響歪が軽減され、このBe振動板が組込まれるスピーカは再生周波数帯域が上がる(請求項1)。
(2)中間層としては基本的にBeと結晶構造の異なる酸化物、窒化物又は炭化物が好ましいが、同じ結晶構造を持つ材料の場合は、格子定数が20%以上異なるものが、望ましい(請求項3)。格子定数の差が15%以下になると、エピタキシャル成長が押さえられなくなり、中間層として結晶制御阻止効果が薄れ、好ましくないからである。
中間層としてBeと結晶構造の異なる酸化物、窒化物、又は炭化物を用いる場合は、Beの蒸着を中断し、別の坩堝から所定の金属を蒸発させ、蒸着時に炭化水素ガス、窒素ガス、酸素ガス等を導入し反応蒸着法を使用する。同じ結晶構造を持ち、格子定数が20%以上異なるものを用いる場合は、上記と同様に、別の坩堝より所定の金属を蒸着する。
(3)気相成長されるBeは、優先結晶成長面が(002)であることが望ましい。Beは、六方晶の結晶構造をもつ金属であり、ヤング率の異方性があり、(002)面に配列されたとき、横振動で測定される共振周波数が最大になるからである。X線回折グラフで全回折線に対して(002)回折線強度は50%以上あることが好ましい。このためには、基板温度を高くして、気相成長中に容器内の残留ガスを吸着しないように、1E10−6Torr以下の雰囲気で成膜するのが好ましい(請求項6)。
直径23mm、膜厚25μmの円板ドーム状Be蒸着膜において、
(1)基板バリア層無し、中間層無し、Si−Oを厚さ0.5μmコートしたもの、
(2)厚み3nmのMoの基板バリア層あり、中間層無し、ダイヤを厚さ0.5μmコートしたもの、
(3)厚み3nmのMoの基板バリア層あり、中間層として厚み1nmのBeOを有し、ダイヤを厚さ0.5μmコートしたもの、
の3種類の振動板を作り、それぞれの周波数特性及び歪特性を測定した。
直径33mm、膜厚40μmのBe膜に、厚さ3nmのBe中間層を入れた、Be振動板に、
(1)Si−Oを厚さ0.5μmコートしたもの、
(2)ダイヤを厚さ0.5μmコートしたもの、
を作り、それぞれについて再生周波数特性及び歪特性を測定した。
Claims (9)
- 所定の形状に成型された基板にBeを気相成長法で成膜し、前記基板をエッチング法で除去するBe薄膜振動板の製造方法において、成膜時に中間層を入れてBe膜の結晶成長を制御することを特徴とするBe薄膜振動板の製造方法。
- 中間層として、厚みが0.3〜1000nmの結晶制御層を使用することを特徴とする請求項1記載のBe薄膜振動板の製造方法。
- 中間層として、Beと結晶構造の異なる酸化物、窒化物、炭化物、金属等の少なくとも一つ又は結晶構造が同じ材料の場合はBeと格子定数が20%以上異なる材料を使用することを特徴とする請求項1記載のBe薄膜振動板の製造方法。
- 所定の形状に成型された基板としてCu基板を使用し、Be成長面にBeの拡散バリアを使用することを特徴とする請求項1、2又は3記載のBe薄膜振動板の製造方法。
- 請求項1、2、3又は4記載のBe薄膜振動板の製造方法により製造されたBe振動板の片面又は両面に、ダイヤモンド膜又はダイヤモンドを含む非結晶膜をコートして耐食性及び膜の曲げ強度を向上させることを特徴とするBe薄膜振動板の製造方法。
- 基板温度を200℃以上に上げ、1E10−6Torr以上の高真空度に保って成膜するか又はイオン化蒸着法により、気相成長されるBe膜の優先結晶成長面を(002)面とすることを特徴とする請求項1記載のBe薄膜振動板の製造方法。
- 請求項1,2,3,4,又は6記載のBe薄膜振動板の製造方法により製造された、気相成長されたBe膜の優先結晶成長面が(002)面であるBe薄膜振動板。
- 請求項1、2、3又は4記載のBe薄膜振動板の製造方法により製造されたBe振動板の片面又は両面に、ダイヤモンド膜又はダイヤモンドを含む非結晶膜をコートして耐食性及び膜の曲げ強度を向上させたBe薄膜振動板。
- 請求項1ないし6のいずれか1項に記載のBe薄膜振動板の製造方法により製造されたBe薄膜振動板を組み込んだことを特徴とするスピーカ。
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