JP2010109601A - Be薄膜振動板の製造方法、同方法により製造されたBe薄膜振動板及び同Be薄膜振動板を組み込んだスピーカ - Google Patents

Be薄膜振動板の製造方法、同方法により製造されたBe薄膜振動板及び同Be薄膜振動板を組み込んだスピーカ Download PDF

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Abstract

【課題】再生周波数帯域の広いスピーカ振動板素材を提供する。
【解決手段】音速が大きく、比重の軽いBeを所定の形に成型した基板に気相成長させ、基板をエッチングで除去して振動板をつくる工程において、基板にバリア層をつけることにより基板からの拡散を防止し、気相成長の段階で中間層を入れることによりBeの異常成長を抑制し、結晶成長方位を規制したBe皮膜に強い圧縮応力を与えるダイヤ膜をコートすることにより、再生周波数帯域の広いスピーカをつくる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、オーディオ等のスピーカに使用するのに好適な高性能振動板であるBe薄膜振動板の製造方法及び同方法により製造されたBe薄膜振動板、並びに同Be薄膜振動板を組み込んだスピーカに関する。
Be(ベリリウム)は、比強度(強度/比重)が大きいことから、金属の中では音速が最も大きく、スピーカに振動板として組み込んだ場合、最も高い音響周波数の音まで再生できる素材である。このため、ツイータやスコーカ等、高音部を受持つ音響領域のスピーカ用振動板として用いられてきた。Be金属は、その特殊な性質のため、通常の金属薄板製法である溶解圧延工程は採れないので、Be製品の製造には、一般的には、粉末冶金法が使用されている。
粉末冶金法による振動板の製造では、酸化Beを塩化物にして、還元法でフレークを作り、金属Beを坩堝で溶解し、アトマイズ法等で粉末化し、プレス成型して所定の形に成型加工する。スピーカ等に使用される薄板は、粉末冶金法で成型加工されたインゴットを、酸化防止のためステンレス箔等でシール加工して保護した後、600℃程度に加熱し、熱間圧延して所定の膜厚の板を作る。熱間圧延も、一方向のみで圧延すると異方性がつくため、1回圧延するごとに90度方向を変えて圧延する、いわゆるクロス圧延法でなければ、所定の厚みの薄板が得られない。
平板スピーカの場合は、シールされた板を除去して製品化できるが、通常のドーム型振動板の場合は、同様にシールし、400〜600℃に加熱して、絞り成型加工する熱間加工法を用いる必要がある。また、粉末冶金法で作られたBe振動板は、工程上、数%の酸化物を含有し、Be粒子間の密着性が悪いので、膜厚も40μm位しか薄くできず、音速も11000m/s前後で、バッチプロセスによる工程の複雑さでコストも高く、品質的には充分と言えなかった。このため、Nd磁石等を使用した最新の組み立て技術で作られた33mmφのブラッシュウエルマン社製PS−200粉末冶金Beドーム型ツイータも、高域周波数が25kHz程度で、あまり帯域が伸びていない。
粉末冶金法によるBe製品の製造プロセスの改良のため、本発明者らは半導体プロセスで使用される真空蒸着法を使用し、所定の形状に成型された基板にBeを蒸着し、成膜後エッチング法により基板を除去してBe成型体を得るプロセスを開発し、生産化した。
この場合、基板にはCuを用い、基板温度300℃前後、真空度10E−6Torrで膜厚15〜70μmの所定の形状のBe振動板を得た。真空蒸着法の場合、酸化物の含有量は粉末冶金法に比べて低く、純度99〜99.7%の成膜ができ、音速も12500m/sと向上した。
通常の真空蒸着法による成膜に対して、Beのイオンプレーテイングを使用して成膜の密度を上げることにより、音速が15000m/s前後に達するBe膜振動板が、非特許文献1に報告された。さらに、Beは空気中の水分と反応して酸化膜をつくるので、保護膜としてSiOを500nm程度コートするプロセスが実用化された。このプロセスについても、非特許文献1で報告された。
極限に挑む金属材料 工業調査会 田中良平編著 P265
真空蒸着法で作られた膜厚30μmのBeドーム型振動板を使用して、前記ツイータを作り、周波数特性を測定すると、高周波帯域が35kHz程度まで伸び、それなりの効果が見られた。現行の粉末冶金法による振動板を使用したスピーカよりも再生周波数帯域が向上した。しかしながら、最近の高性能オーディオでは、CDデイスクからの青色レーザー等を使用した高密度信号再生処理技術や回路系でのデジタル信号処理技術が進み、信号増幅器の周波数帯域も広く信号歪も少ないSIT(静電誘導型トランジスター)アンプ等も実用化され、50〜60kHz帯域までの再生能力のあるスピーカが要求されるようになったが、これには充分応えられなかった(非特許文献2)。
デジタルドメイン社カタログ SIT アンプ
従来の真空蒸着法で製造された振動板から作られたツイータの高域再生周波数が35kHzまでしか伸びなかった原因を調べた結果、下記の点が明らかになった。
原因1 Cu基板の問題
Be蒸着膜の強度を上げるため、基板は200〜350℃まで加熱され、所定の温度になった時から蒸着を開始する。膜厚も通常の薄膜と異なり、自立膜が要求されるため、20〜60μmと厚く、蒸着時間が20〜60分と長くなるので、電子銃からの輻射熱を受けて成膜時には更に温度が上昇する。このため、Cu基板とBeの間で相互の拡散が起こり、Be膜表面に0.3〜1μmのBe−Cu合金層ができ、膜の重量を上げると共に、合金膜は比強度がBe単体に比較して小さく、かつ、音速が遅く、再生周波数帯域を下げる。
原因2 蒸着膜の結晶構造の問題
Beは結晶系が六方晶で、C軸が膜成長方向に揃いやすく、基板加熱により結晶粒径が大きくなり易く、粒界強度が下がる。このため、膜の曲げモーメントが減少し、比較的低い再生周波数で高次共振による歪が発生し、再生周波数帯域が下がる。金属膜は結晶粒径が微細化され、介在物が薄く分散されるほど機械強度は向上するので、膜結晶の微細化が必要とされる。
原因3 保護膜の問題
無定形酸化ケイ素(Si−O)皮膜は、音速が5000〜6000m/sとBeの12000m/sより低く、複合膜としてBe蒸着膜の音速を下げており、結果として、再生周波数帯域が複合化により下げられている。
本発明は、以上の原因解明の結果に基づいてなされたものである。すなわち、本発明の主たる課題は、Be薄膜振動板の製造に半導体プロセスで使用される真空蒸着法を使用し、所定の形状に成型された基板にBeを蒸着し、成膜後エッチング法により基板を除去してBe薄膜振動板を得る方法において、上記の問題を解決することにある。
また、本発明の付随的の課題は、上記Be薄膜振動板の製造方法によりツィータ等用に好適なBe薄膜振動板を提供することにある。また、本発明の派生的な課題は、再生周波数が高音域に拡がる優れたスピーカを提供することにある。
本発明は、上記主たる課題を解決するため、所定の形状に成型された基板にBeを気相成長法で成膜し、前記基板をエッチング法で除去するBe薄膜振動板の製造方法において、成膜時に中間層を入れてBe膜の結晶成長を制御することを特徴とする(請求項1)。
また、本発明は、前記中間層として、厚みが0.3〜1000nmの結晶制御層を使用することを特徴とする(請求項2)。
また、本発明は、前記中間層として、Beと結晶構造の異なる酸化物、窒化物、炭化物等の非金属の少なくとも一つ又は格子定数が20%以上異なる金属を使用することを特徴とする(請求項3)。
また、本発明は、前記所定の形状に成型された基板として、Cu基板を使用し、Be成長面にBeの拡散バリアを使用することを特徴とする(請求項4)。
また、本発明は、上記方法により製造されたBe振動板の片面又は両面にダイヤモンド膜又はダイヤモンドを含む非結晶膜をコートして耐食性及び膜の曲げ強度を向上させることを特徴とする(請求項5)。
さらに、本発明は、基板温度を200℃以上に上げ、1E10−6Torr以上の高真空度に保って成膜することにより、気相成長されるBe膜の優先結晶成長面を(002)面とすることを特徴とする(請求項6)。
本発明は、付随的課題を解決するため、Be薄膜振動板は、気相成長されたBe膜の優先結晶成長面が(002)面であることを特徴とする(請求項7)。
本発明の好ましいBe薄膜振動板は、上記Be薄膜振動板の製造方法により製造されたBe振動板の片面又は両面にダイヤモンド膜又はダイヤモンドを含む非結晶膜をコートして耐食性及び膜の曲げ強度を向上させたものであることを特徴とする(請求項8)。
そして、本発明は、上記派生的課題を解決するため、スピーカに上記Be薄膜振動板の製造方法により製造されたBe薄膜振動板を用いたことを特徴とする(請求項9)。
請求項1の発明によれば、中間層によりBeの異常結晶成長が抑えられるため、結晶が微細化され、結晶粒界での不純物濃度が分散されるので、製造されるBe振動板の強度が上がり、分割共振が抑えられる。従って、音響歪が軽減される。
請求項2の発明によれば、Beの結晶成長の過程で結晶成長を阻害する制御層が導入されるため、異常結晶成長が防げ、微細結晶粒を有する強固な膜ができる。膜厚として0.3nm以下では、中間層がBeに拡散浸透して吸収され易い等で結晶成長を阻害する効果が薄れる。結晶成長阻害層の厚みの上限はないが、1μm以上ではBe膜に対する結晶成長阻害層の厚みが増し、音響特性を害する。
請求項3の発明によれば、結晶成長阻害層の材料としてBeと結晶構造の異なる酸化物、窒化物、炭化物、金属が選択される。これらの材料は結晶構造がBeの六方晶と異なるため柱状に成長し易いBeの結晶成長を阻害する。また、Beと同じ結晶構造を有する材料の場合結晶格子定数が20%以上異なれば、Beの成長過程で結晶格子のミスマッチが起こるので、異常成長阻止の同様の効果が期待できる。
請求項4の発明によれば、Cu基板のBe成長面にBe拡散バリア層が形成されるため、異種材料の拡散浸透のない純Be膜の成長が図れ、基板温度上昇による相互拡散が防止できるので、結晶粒界の結合強度の大きな膜の形成が可能になり、膜強度が上がる。
バリア層としては、Beに拡散し難い高融点金属Mo.W等又は請求項3の結晶制御層が有効である。
請求項5の発明によれば、本発明方法により製造されたBe振動板の片面又は両面にダイヤ又はダイヤモンドライクDLC膜がコートされるので、耐食性が増すとともに、ダイヤ膜は音速がBeより大きいので、再生周波数帯域が広がる。ダイヤ膜は本発明のBe膜に限定されず、通常の粉末冶金法によるBe膜に対しても、同様に強い圧縮応力を与えるため、膜の曲げ強度を一層向上させ、共振周波数を上げ、高域再生特性を増す。
請求項6の発明によれば、気相成長されるBe膜の優先結晶成長面が(002)面を有するBe薄膜振動板を製造することができる。
請求項7の発明によれば、(002)面が振動板の優先結晶成長面に出た場合は、Be膜の横振動モードに対して結晶方位による強度の異方性が大きく、音速も速いので、望ましい振動板が得られ、このBe振動板を組込まれるスピーカは、再生周波数帯域が上がる。
通常の粉末冶金法による圧延Be膜はX線回折面として(011)面等が強くでる。
請求項8の発明によれば、ダイヤ−Be膜間で大きな圧縮力が働き、強化ガラスと同様に見かけ上の膜の曲げモーメントは大きくなるので、高次共振モードが抑制され、スピーカとしての歪が減る。また、気相成長ダイヤモンド膜及びDLC膜は、強度が大きく、耐食性もあり、Be−ダイヤ複合膜はBe単体膜よりも音速がより速いので、より高い周波数まで再生するスピーカ用振動板材料として有効である。
請求項9の発明によれば、高い周波数まで再生するスピーカを提供することができる。
続いて、本発明の実施の形態について説明する。
本発明によるBe薄膜振動板の製造方法においては、まず、所定の形状に成型されたCu基板に対して、Beを気相成長させる部分に拡散するのを防ぐためのバリア層をコートする。Be拡散防止のためのバリア層は、Beと合金を作りにくい金属として、Mo,W,Ta,Cr等の融点が比較的高い金属が望ましい。厚みは、基板除去のエッチング工程後なるべくBe皮膜に残らないように、2〜100nmの薄い厚みが望ましい。必要に応じてCu基板をエッチング工程で除去後、イオンエッチング又は逆スパッタエッチングで残留バリア層を完全に除去することも、選択肢としてあり得る。
また、バリア層として、酸化物、窒化物、炭化物等の非金属膜も有効である。TiC,C−BN等、硬度が大きく、音速の速いバリア層を使用する場合は、エッチング除去の工程が不要になるので、バリア層として好ましいが、成膜にはガス導入による反応蒸着等の特別なプロセスを必要とする。
金属バリア層の成膜では、蒸着法も有効であるが、湿式メッキ法も使用できる。
次に、Cu基板にBeを気相成長法により成膜する際、気相成長Be膜の結晶粒の増大を防ぐために、膜成長の過程で中間層を導入して、結晶粒の成長を一時中断し、中間層の上に新たにBe膜を結晶成長の初期段階から成長させるのが望ましい。
気相成長の場合、膜成長の初期には、微細な結晶成長核が基板面に付着し、膜成長と共に優先方位を有する結晶核から成長した結晶粒が大きく成長し、他の方位の結晶粒を吸収して異常成長する。この場合、結晶粒界には、不純物が偏析しやすく、膜強度が落ちてくる。
中間層としては、Beと結晶構造が異なる金属、又は同結晶の場合は結晶格子間隔が20%以上異なる金属が望ましい。具体例としては、Re,V,Mo等のバリア層として使用される材料が望ましい。結晶成長を防ぐために使用される中間層の厚みは、0.3〜1000nmが有効であるが、0.3〜3nm位が最適である。成膜時に導入される中間層は、通常は1層あれば充分であるが、膜厚が40〜70μmのスコーカ等に用いる厚膜振動板を製造する場合は、中間層を複数にすることが望ましい。
中間層として最も好ましいのは、硬度、融点の大きな酸化物、窒化物及び炭化物の少なくとも一つである。Be酸化物の場合は、気相成長の過程で一時成長を止めると、チャンバー内の残留ガスで表面が酸化されるため、自動的に結晶成長阻止のバリア皮膜が形成されるので、特別な金属、成膜手段を必要とせず、有効な方法である。
成膜時のBe結晶面は、(002)面が優先面になるように成膜するのが望ましい。 (002)面が振動板の表面に出た場合は、Be膜の横振動モードに対して結晶方位による強度の異方性が大きく、音速も速いので、振動板として望ましい。熱間粉末圧延の場合は、圧延方向にC軸が並びやすく強度が落ちるため、クロス圧延法を使用して結晶配列を乱す成膜方法が取られる。この場合、横振動の音速が最も速い方位に結晶が配列するわけではないので、音速も11500m/s程度になる。Be気相成長面を(002)面に優先成長させるには、基板温度を200℃以上に上げ、真空度も1E10−6以上の高真空度に保って成膜するのが望ましい。
保護膜としては、結晶成長を抑制して製造されたBe振動板の片面又は両面にダイヤモンド膜又は気相分解法によるダイヤモンド及びダイヤモンドを含む非晶質膜、いわゆるDLC膜をコートするのが望ましい。膜の厚みは、100〜2000nmが望ましいが、上限に対しては制約はない。
気相成長ダイヤモンド膜及びDLC膜は、強度が大きく、耐食性もあり、音速も17500〜16000m/sとBeより大きいので、Be−ダイヤ複合膜はBe単体膜より音速がより速く、より高い周波数まで再生するスピーカ振動板材料として有効である。しかし、成膜速度がダイヤ膜では1μm/hと遅く、コストアップになるので、実情に合わせて選択される。
ダイヤモンド膜を成長させるには、炭素材料をアーク法にてイオン化し、磁場フイルタでCイオンのみ選択し、基板に電界加速して成膜する方法が望ましい。この場合、ナノサイズのダイヤ皮膜がBe膜上に成膜でき、C−H化合物を含まないため、比重3.2と天然ダイヤに極めて近い膜ができる。炭化水素ガス、例えば、メタンの電子イオン衝突による電離分解されたガスによるダイヤモンド膜の場合は、炭素イオンの加速電圧にもよるが、ダイヤ膜に20〜50%volの非結晶質C―H膜を含み、比重も1.5〜2.8位のDLC膜になる(非特許文献3、4)。
J. Vac. Soc. Jpn Vol.147 No.3 2004 滝川他 人造ダイヤモンドハンドブック 難波他編 サイエンスフォーラム9
さらに、本発明に関連する事項を説明する。
(1)Beの気相成長に際して中間層を入れると、異常結晶成長が抑えられるため、結晶が微細化され、結晶粒界での不純物濃度が分散されるので、強度が上がり、分割共振が抑えられる。従って、音響歪が軽減され、このBe振動板が組込まれるスピーカは再生周波数帯域が上がる(請求項1)。
(2)中間層としては基本的にBeと結晶構造の異なる酸化物、窒化物又は炭化物が好ましいが、同じ結晶構造を持つ材料の場合は、格子定数が20%以上異なるものが、望ましい(請求項3)。格子定数の差が15%以下になると、エピタキシャル成長が押さえられなくなり、中間層として結晶制御阻止効果が薄れ、好ましくないからである。
中間層としてBeと結晶構造の異なる酸化物、窒化物、又は炭化物を用いる場合は、Beの蒸着を中断し、別の坩堝から所定の金属を蒸発させ、蒸着時に炭化水素ガス、窒素ガス、酸素ガス等を導入し反応蒸着法を使用する。同じ結晶構造を持ち、格子定数が20%以上異なるものを用いる場合は、上記と同様に、別の坩堝より所定の金属を蒸着する。
(3)気相成長されるBeは、優先結晶成長面が(002)であることが望ましい。Beは、六方晶の結晶構造をもつ金属であり、ヤング率の異方性があり、(002)面に配列されたとき、横振動で測定される共振周波数が最大になるからである。X線回折グラフで全回折線に対して(002)回折線強度は50%以上あることが好ましい。このためには、基板温度を高くして、気相成長中に容器内の残留ガスを吸着しないように、1E10−6Torr以下の雰囲気で成膜するのが好ましい(請求項6)。
(4)結晶成長を中断するための中間層の厚みは、0.3〜1000nmが好ましい。厚みは使用する中間層の材料に依存する。酸化物、窒化物、炭化物の場合は、0.3〜10nm位が好ましいが、Ti等の同結晶の金属の場合は、0.5μm程度必要である(請求項3)。
(5)Beは、酸素との結合力が強く、強固な酸化膜ができるので、気相成長時に2〜5分程度、成長を中止し、真空容器内の残留酸素ガス又は酸素ガスを導入することにより、中間層を容易に形成することができる(請求項5)。
(6)Cu基板のBe成長面にBe拡散バリア層を形成した場合は、異種材料の拡散浸透のない純Be膜の成長が図れ、基板温度上昇による相互拡散が防止できるので、結晶粒界の結合強度の大きな膜の形成が可能になり、膜強度が上がる(請求項4)。
(7)Be振動板の片面又は両面にダイヤ又はダイヤモンドライクDLC膜がコートされるので、耐食性が増すとともに、ダイヤ膜は音速がBeより大きいので、複合膜としては再生周波数帯域が広がる。再生周波数帯域の広がりに関係する膜強度は、ダイヤ−Be2層膜の複合材料計算値から得られる数値より、ダイヤ膜の厚みによっては、30%程度大きくなる。特に、両面コートの場合は有効である。ダイヤコート膜は、非特許文献1に記載されたSi−O保護膜と異なり、ダイヤ−Be膜間で大きな圧縮力が働き、強化ガラスと同様に見かけ上の膜の曲げモーメントは大きくなるので、高次共振モードが抑制され、スピーカとしての歪が減る。この現象は、Beコート時の中間層の有無にかかわらず、Be膜へのダイヤコートに有効である(請求項5,7,8)。
[実施例1]
直径23mm、膜厚25μmの円板ドーム状Be蒸着膜において、
(1)基板バリア層無し、中間層無し、Si−Oを厚さ0.5μmコートしたもの、
(2)厚み3nmのMoの基板バリア層あり、中間層無し、ダイヤを厚さ0.5μmコートしたもの、
(3)厚み3nmのMoの基板バリア層あり、中間層として厚み1nmのBeOを有し、ダイヤを厚さ0.5μmコートしたもの、
の3種類の振動板を作り、それぞれの周波数特性及び歪特性を測定した。
図1は、直径が23mmのツイータの再生周波数特性と歪特性の測定結果を示す周波数・歪特性図である。図1において、グラフの横軸は周波数、縦軸は歪みである。そして、丸1は、基板バリア層無し、中間層無し、Si−Oコート0.5μmであり、丸2は、基板バリア層Mo3nm、中間層無し、ダイヤコート0.5μmであり、丸3は、基板バリア層Mo3nm、中間層BeO1nm、ダイヤコート0.5μmである。なお、3次歪は、丸3のみ10dbアップで表示されている。
図1から明らかなように、再生周波数特性はSiOコートに比較してダイヤコートBe膜が明らかに優れており、中間層が有るものは、再生周波数特性が高域まで延びている。3次歪特性も同様の結果を示す。この現象は、スコーカ等のように、直径、膜厚が60mm、60μmと径が大きくなり、膜厚が厚くなるほど、差が出てくる。
[実施例2]
直径33mm、膜厚40μmのBe膜に、厚さ3nmのBe中間層を入れた、Be振動板に、
(1)Si−Oを厚さ0.5μmコートしたもの、
(2)ダイヤを厚さ0.5μmコートしたもの、
を作り、それぞれについて再生周波数特性及び歪特性を測定した。
図2は、Si−Oを0.5μmコートした、直径が33mmのツイータの再生周波数特性と歪特性の測定結果を示す図であり、図3は、ダイヤを0.5μmコートした、直径が33mmのツイータの再生周波数特性と歪特性の測定結果を示す図である。図2,3に おいて、グラフの横軸は周波数、縦軸は歪みである。
Be膜厚に対して、ダイヤ膜が薄いので、再生周波数特性ではあまり変化は見られないが、Be膜へのダイヤコートにより膜強度が上がるため、3次歪が10db程下がっている。
所定の形に成型された基板にBe拡散防止層を入れ、Be膜気相成長中の結晶成長制御のための中間層を入れ、ダイヤコートした振動板を利用したオーディオ再生システムは、周波数帯域がより高域まで広がるので、SIT増幅器の再生特性を有効に活用して、高級オーディオに使用できるスピーカを提供することができる。
直径が23mmのツイータの再生周波数特性と歪特性の測定結果を示す図である。 Si−Oを0.5μmコートした、直径が33mmのツイータの再生周波数特性と歪特性の測定結果を示す図である。 ダイヤを0.5μmコートした、直径が33mmのツイータの再生周波数特性と歪特性の測定結果を示す図である。

Claims (9)

  1. 所定の形状に成型された基板にBeを気相成長法で成膜し、前記基板をエッチング法で除去するBe薄膜振動板の製造方法において、成膜時に中間層を入れてBe膜の結晶成長を制御することを特徴とするBe薄膜振動板の製造方法。
  2. 中間層として、厚みが0.3〜1000nmの結晶制御層を使用することを特徴とする請求項1記載のBe薄膜振動板の製造方法。
  3. 中間層として、Beと結晶構造の異なる酸化物、窒化物、炭化物、金属等の少なくとも一つ又は結晶構造が同じ材料の場合はBeと格子定数が20%以上異なる材料を使用することを特徴とする請求項1記載のBe薄膜振動板の製造方法。
  4. 所定の形状に成型された基板としてCu基板を使用し、Be成長面にBeの拡散バリアを使用することを特徴とする請求項1、2又は3記載のBe薄膜振動板の製造方法。
  5. 請求項1、2、3又は4記載のBe薄膜振動板の製造方法により製造されたBe振動板の片面又は両面に、ダイヤモンド膜又はダイヤモンドを含む非結晶膜をコートして耐食性及び膜の曲げ強度を向上させることを特徴とするBe薄膜振動板の製造方法。
  6. 基板温度を200℃以上に上げ、1E10−6Torr以上の高真空度に保って成膜するか又はイオン化蒸着法により、気相成長されるBe膜の優先結晶成長面を(002)面とすることを特徴とする請求項1記載のBe薄膜振動板の製造方法。
  7. 請求項1,2,3,4,又は6記載のBe薄膜振動板の製造方法により製造された、気相成長されたBe膜の優先結晶成長面が(002)面であるBe薄膜振動板。
  8. 請求項1、2、3又は4記載のBe薄膜振動板の製造方法により製造されたBe振動板の片面又は両面に、ダイヤモンド膜又はダイヤモンドを含む非結晶膜をコートして耐食性及び膜の曲げ強度を向上させたBe薄膜振動板。
  9. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載のBe薄膜振動板の製造方法により製造されたBe薄膜振動板を組み込んだことを特徴とするスピーカ。
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