JP2010109145A - 半導体薄膜、半導体薄膜の形成方法及びこれを用いた薄膜トランジスタと薄膜トランジスタの製造方法 - Google Patents

半導体薄膜、半導体薄膜の形成方法及びこれを用いた薄膜トランジスタと薄膜トランジスタの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、半導体膜と電極との電気的なコンタクトが良好で、性能のバラツキがない半導体薄膜の製造方法、またこれを用いて、既成容量が少なく、高性能で動作が安定した薄膜トランジスタを製造することにある。
【解決手段】半導体前駆体を含有する液体材料を液滴にして基板上に塗設し、乾燥させて島状のパターンをもつ半導体前駆体薄膜を形成し、該半導体前駆体に変換処理を施して半導体を形成する半導体薄膜の形成方法において、島状のパターンを有する変換処理後の半導体薄膜が、
半導体薄膜の膜厚をチャネル方向に非接触3次元表面形状測定装置にて測定した膜厚プロファイルにおいて、半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから端部までの平均膜厚と、半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから中央までの平均膜厚とが、異なっていることを特徴とする半導体薄膜の形成方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、液体材料を基板上に塗設することで形成される電極とのコンタクトが良好な半導体薄膜の形成方法並びにこれを用いた薄膜トランジスタの製造方法に関するものである。
薄膜トランジスタ素子についてはよく知られている。
金属酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタ(TFT)素子は、例えば、金属酸化物半導体を、酸化物半導体をスパッタ法により形成する。例えば、非特許文献1また2で示されているようなスパッタ成膜法(室温)によって得られる半導体膜に、300℃以上で30分程度のポストベークを行って半導体膜を得ている。
一方、有機金属を前駆体として分解酸化(加熱、分解反応)することで、非晶質酸化物半導体を形成する方法が知られている(例えば特許文献1、2参照)。
また、前駆体として、有機金属や金属塩化物を用い熱酸化等により非晶質酸化物半導体を形成することも知られている(例えば非特許文献1、2また3参照)。
これらにおいては、前駆体である金属塩や有機金属を、熱酸化または、プラズマ酸化等、何らかの加熱・酸化処理を行って金属酸化物半導体薄膜を得ている。
これらの方法は、前駆体薄膜が塗布プロセスによって得られ、かつ、何らかの発熱手段を用いて熱酸化を行うことにより容易に半導体薄膜に転化するので、容易にパターニングができ、かつ塗布プロセスで半導体薄膜が得られることに特徴がある。
従来、これら薄膜トランジスタ等、半導体素子においては、性能を安定させる、或いは、所定の性能を達成するために、半導体薄膜の膜厚については、これを均一化しようという試みが殆どである(例えば、特許文献3、4)。これまで、半導体素子において一つの半導体膜内で膜厚差を設けることについては、知られていない。一部、ゲート絶縁膜の信頼性を向上するため、半導体膜側壁部に膜厚に傾斜をもつ絶縁膜を配置している例はあるが(特許文献5参照)、半導体そのものに膜厚差を導入しているものではない。
特開2003−179242号公報 特開2005−223231号公報 特開2007−38134号公報 特開2006−140336号公報 特開2007−103666号公報 化学工業2006年12月号「ゾルゲル法による酸化物半導体薄膜の合成と応用」 Electrochemical and Solid−State Letters,10(5)H135−H138 Advanced Materials 2007,19,183−187
本発明の目的は、半導体膜と電極との電気的なコンタクトが良好で、性能のバラツキがない半導体薄膜の製造方法、またこれを用いて、既成容量が少なく、高性能で動作が安定した薄膜トランジスタを製造することにある。
本発明の上記目的は以下の手段により達成される。
1.半導体前駆体を含有する液体材料を液滴にして基板上に塗設し、乾燥させて島状のパターンをもつ半導体前駆体薄膜を形成し、該半導体前駆体に変換処理を施して半導体を形成する半導体薄膜の形成方法において、島状のパターンを有する変換処理後の半導体薄膜が、
半導体薄膜の膜厚をチャネル方向に非接触3次元表面形状測定装置にて測定した膜厚プロファイルにおいて、
半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから端部までの平均膜厚と、
半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから中央までの平均膜厚とが、
異なっていることを特徴とする半導体薄膜の形成方法。
2.半導体前駆体を含有する液体材料を液滴にして基板上に塗設し、乾燥させて島状のパターンをもつ半導体前駆体薄膜を形成し、該半導体前駆体に変換処理を施して半導体を形成する半導体薄膜の形成方法において、島状のパターンを有する変換処理後の半導体薄膜が、
半導体薄膜の膜厚をチャネル方向に非接触3次元表面形状測定装置にて測定した膜厚プロファイルにおいて、
半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから端部までの平均膜厚と、
半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから中央までの平均膜厚とを比較したとき、半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから端部までの平均膜厚の方が小さいことを特徴とする半導体薄膜の形成方法。
3.半導体前駆体を含有する液体材料を液滴にして基板上に塗設し、乾燥させて島状のパターンをもつ半導体前駆体薄膜を形成し、該半導体前駆体に変換処理を施して半導体を形成する半導体薄膜の形成方法において、島状のパターンを有する変換処理後の半導体薄膜が、
半導体薄膜の膜厚をチャネル方向に非接触3次元表面形状測定装置にて測定した膜厚プロファイルにおいて、
半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから端部までの平均膜厚と、
半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから中央までの平均膜厚とを比較したとき、半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから端部までの平均膜厚の方が大きいことを特徴とする半導体薄膜の形成方法。
4.前記1〜3のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法により、ゲート絶縁膜上に半導体薄膜の島状のパターンを形成し、かつ、ゲート絶縁膜の、前記半導体薄膜の島状パターンと反対側の面にゲート電極を、また、前記ゲート絶縁膜上に、ソース電極及びドレイン電極が、それぞれ、少なくとも前記半導体薄膜の島状パターンの縁部に接するように配置されることを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
5.前記ソース電極、ドレイン電極が、金属微粒子を含む分散液を塗設後に、熱による変換処理により電極に変換され、形成されるものであることを特徴とする前記4に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
6.前記ソース電極、ドレイン電極が、金属微粒子を含む分散液を塗設後、熱による変換処理により形成されたものであり、前記ソース電極、ドレイン電極の厚みは、半導体前駆体薄膜及び/又は半導体薄膜の島状パターンの縁部の厚み以下であり、かつ、半導体前駆体薄膜及び/又は半導体薄膜の島状パターンの縁部でのみ接点をとることを特徴とする前記5に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
7.半導体前駆体を含有する液体材料が、金属塩の、水を主成分とする溶液であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法。
8.金属塩が、少なくともIn、Zn、Snのいずれかの塩を一つ以上含むことを特徴とする前記7に記載の半導体薄膜の形成方法。
9.金属塩が少なくともGa、Alのいずれかの塩を一つ以上含むことを特徴とする前記8に記載の半導体薄膜の形成方法。
10.半導体への前記変換処理が、100℃以上400℃以下の熱処理であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項又は7〜9のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法。
11.半導体への前記変換処理がマイクロ波(周波数0.3〜50GHz)照射であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項又は7〜10のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法。
12.前記1〜3のいずれか1項又は7〜11のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法で作成された半導体薄膜。
13.前記1〜3のいずれか1項又は7〜11のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法で作成された半導体薄膜を用いることを特徴とする薄膜トランジスタ。
本発明により、既成容量が小さく、電極と半導体との接触面積が大きくとれ、コンタクトの改良された、バラツキが少なく動作の安定した薄膜トランジスタが得られる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明は、基板上に複数の半導体素子を有する薄膜トランジスタシートにおいて用いられる薄膜トランジスタの作成において、半導体薄膜(パターン)の形成方法に関するものである。
本発明において、半導体薄膜は、半導体前駆体を含有する液体材料、例えば、前駆体である金属塩等の溶液を(液滴にして)基板上に塗設し、乾燥させて、半導体薄膜形成部の複数の島状パターンを形成したのち、該半導体前駆体に変換処理を施してこれを半導体に変換して形成される。
本発明においては、形成された島状の半導体薄膜パターンにおける変換処理後の半導体薄膜が、半導体薄膜の膜厚をチャネル方向に非接触表面測定装置(WYKO社製RST/PULS)にて測定した膜厚プロファイルにおいて、半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから端部までの平均膜厚と、半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから中央までの平均膜厚とが、異なっていることを特徴とするものである。
従って本発明においては、半導体薄膜が均一の膜厚で構成されているものではなく、所定の膜厚プロファイルを有している。
以上を、図を用いて説明する。
図1は、本発明の半導体薄膜(パターン)を、半導体前駆体を含有する液体材料を液滴にして基板上に塗設し、乾燥させて半導体前駆体薄膜を形成した後、該半導体前駆体に熱変換等の変換処理を施して形成させた、半導体薄膜の一例を示す。
図は、半導体薄膜のチャネル方向に沿った断面の膜厚プロファイルを示している。尚、膜厚の測定は、非接触三次元表面形状測定装置(WYKO社製RST/PULS)によって測定する。図1は、塗布により形成された半導体薄膜のチャネル方向に沿った膜厚プロファイルを模式図で示しているが、チャネル方向に沿った半導体薄膜の幅(l)は約80μmである。この薄膜の中央A(l/2となる点)から膜の端部Bまでの中間点、即ち、薄膜の中央Aから端部Bまでの距離の50%のところをCとして、この点から端部Bまでの平均膜厚、即ちBC間の平均膜厚と、半導体薄膜の中央Aから端部までの距離の50%のところであるCから中央Aまでの平均膜厚、即ち、AC間の平均膜厚とを比べたとき、本発明においては、これらが異なった値をもち、膜厚傾斜をもっていることを特徴とする。少なくとも平均膜厚で5nm以上異なっている。
図1(1)、(2)にこれらの好ましい例を示した。前記AC間の平均膜厚と、BC間の平均膜厚とを比べたとき、BC間の平均膜厚が大きい膜厚プロファイルをもつ例を図1(1)に、また、図1(2)に、BC間の平均膜厚がAC間の平均膜厚より小さい膜厚プロファイルをもつ例を示した。
特に、AC間の平均膜厚よりもBC間の平均膜厚が大きい膜厚プロファイルをもつ例が好ましい。
いずれの膜厚プロファイルについてもこれを図1では模式化して示しているが、このような膜厚傾斜をもつことでこれらの半導体薄膜を用い薄膜トランジスタを構成したとき、耐久性の高い、移動度が高く動作の安定した薄膜トランジスタをうることができる。
尚、これらの半導体薄膜、また半導体薄膜を前駆体からの変換により形成するとき半導体前駆体薄膜の膜厚プロファイルは、薄膜をチャネル方向に非接触3次元表面形状測定装置による測定に基づき、前記の平均膜厚が計算される。
本発明においては、半導体薄膜は、半導体前駆体を含有する液体材料を液滴にして基板上に塗設し、乾燥させ、該半導体前駆体に変換処理を施すことで半導体を形成する。半導体前駆体薄膜の膜厚プロファイルが半導体薄膜の膜厚プロファイルを決めるため、前記の半導体薄膜の膜厚プロファイルを得るには、成膜された半導体前駆体薄膜の膜厚プロファイルをこのようにすればよい。
次に、実際に形成された半導体薄膜の膜厚プロファイルを図2に示す。
図2(1)では、インクジェット法により半導体前駆体溶液(硝酸インジウム、硝酸ガリウム、硝酸亜鉛を金属比率で1:2:1(モル比)で混合して20質量%水溶液)を、基板上に直接滴下して、乾燥し成膜された径80μmのパターンの膜厚プロファイルを断面図で示している。WYKO社製RST/PULSを用い測定している。
この膜厚プロファイルにおいては半導体或いは前駆体薄膜の島状パターンにおいて、縁部に膜厚最大部分があり、縁部の膜厚が中央部のその他の部分の膜厚より大きく、中心から50%までの平均膜厚よりも、その外側の平均膜厚が大きい。
縁部とは、本発明においては、薄膜の端部から約20μm内部までの膜厚が傾斜的に増加する部分をいう。
又、図2(2)においては、半導体前駆体溶液に同じく硝酸インジウム、硝酸ガリウム、硝酸亜鉛を金属比率で1:2:1(モル比)で混合して20質量%水溶液としたものを用い、これをインクジェット法により、基板上に異なる条件で滴下し、乾燥し成膜された島状パターンの一つの膜厚プロファイルを示している。中心部の凹みがなくなり中心部の膜厚が端縁部より厚くなっており。中心から50%までの平均膜厚のほうが、その外側の平均膜厚より大きい。
このように、本発明においては、形成される半導体前駆体或いは半導体薄膜の膜厚が半導体薄膜パターン内で差をもつことに特徴がある。
本発明においては、この島状パターン内において、平均膜厚に差があるとは、少なくとも5nm以上の差を有することを意味する。
因みに、半導体層或いは前駆体薄膜の膜厚は1nm〜200nmの範囲である。
半導体薄膜にこのような膜厚差をもたせることで、これを薄膜トランジスタにおける活性層(チャネル層)として用いた場合に、電極との接触が良好でコンタクト抵抗のバラツキ等がなく、又、既成容量が少なく、動作の安定した薄膜トランジスタ素子が得られる。
これら膜厚傾斜をもつ酸化物半導体薄膜は、塗布法により所定の条件で形成される。
一般的に、酸化物半導体薄膜は、マスクを用いて蒸着或いはスパッタ法により形成されるとき平滑な膜厚差のない薄膜パターンが得られる。又、塗布等によって形成した場合でもパターニングを行った場合には同じく、平滑な膜厚プロファイルを有する薄膜パターンが得られる。
本発明において、島状の一つのパターン内に膜厚差をもつ半導体薄膜或いは半導体前駆体薄膜は、ウェットプロセス例えばインクジェット法、印刷法等により液滴を、直接基板上にパターン状に、所定の条件で、適用することで形成することができる。
本発明においては、基板上に、直接、液滴を塗設する際に、塗布液(溶液)又塗布条件等に関係する因子を調整して、前記の半導体薄膜に膜厚差を形成させる。
本発明においては、前記の膜厚プロファイルを有する半導体薄膜を得るには半導体の前駆体薄膜の膜厚プロファイルを調整すればよく、インクジェット法等により、半導体前駆体材料の液滴を、所定の条件を用いて、直接基板上に所定のパターンで塗布する。
図2(1)で示される膜厚プロファイルを有する薄膜を形成するには、インクジェット法により、基板上に、直接、例えば半導体前駆体溶液を、以下の条件で、吐出或いは滴下する。
半導体前駆体溶液については、その表面張力を20〜80mN/mの範囲とすることが必要である。
表面張力は低すぎると濡れ拡がりが大きすぎて再現性よく均一な塗布ができず、また、高すぎてもはじいたり均一な膜とならずまた、膜厚差が小さくなってしまう。従って、表面張力を上記範囲とするため塗布溶媒としては水を主体とする溶媒(水を50質量%以上)を選択することが好ましい。かつ、溶液の半導体材料濃度を0.1〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%に設定することが好ましい。
また、これを吐出、滴下する際の基板温度は50℃〜150℃の範囲とすることが好ましい。温度が高いと拡がりすぎ、又低いと膜厚差が減少する。
例えば、基板温度が60℃以上のとき、成膜された前駆体薄膜は、薄膜の中心から50%までの平均膜厚よりも、その外側の平均膜厚が大きく、膜厚差が5nm以上ある明確な膜厚プロファイルを有する膜が得られる。
尚、基板へ吐出する液滴が数pl〜数十plという少液滴においては、飛翔と共に蒸発が進むので、乾燥温度は大きく膜厚プロファイルとは関係せず、例えば100℃以上の温度で乾燥しても良い。
また、イオン性溶液であるため粘度については余り関係がないと考えている。
又表面張力20〜80mN/mの溶液であって、基材温度60℃以下とした場合、膜厚差が減少するが、溶液濃度即ち前駆体の濃度を5〜50質量%(例えば40%)にあげ、更に基板温度を室温(25℃)程度とすると、縁部において膜厚が徐々に増加する膜厚傾斜をもち、膜厚の最も厚い部分が内部領域にある図2(2)で示される膜厚プロファイルをもつ前駆体薄膜が得られる。
これらの半導体薄膜、或いは半導体前駆体薄膜を用いた薄膜トランジスタ素子を複数有する薄膜トランジスタシートにおいては、薄膜トランジスタ素子は、その製造方法の一態様においては、基板上にゲート電極がパターン形成された後、ゲート絶縁膜が形成された後、更に本発明に係る半導体前駆体薄膜の島状パターンが上記の方法を用いて、ゲート絶縁膜上のゲート電極の反対面に形成され、これを変換処理することにより半導体薄膜に変換した後、ゲート絶縁膜上に、ソース電極及びドレイン電極を、それぞれ形成された半導体薄膜の島状パターンの縁部の膜厚傾斜部にこれらが接するように配置することで製造される。
本発明においては、前記半導体前駆体薄膜及び/又は半導体薄膜の島状パターンの膜厚プロファイルは、図1(1)又(2)で示されるように、島状パターン縁部に膜厚傾斜があり、これを利用すると、薄膜トランジスタにおいて、充分なトランジスタ特性と動作の信頼性を得ることができる。
この中でも、縁部に、膜厚最大の部分があり、前記AC間の平均膜厚が、BC間の平均膜厚より大きい、即ち、縁部の膜厚>その他の部分の膜厚、であるように作成することが好ましい。尚、縁部とは、膜の塗布膜端部から20μm以内の部分をさす。
縁部において膜厚が傾斜的に増加する膜厚プロファイルをもつとき、中でも、縁部の膜厚がその他の部分の膜厚より大きく半導体前駆体薄膜或いは半導体薄膜を作成したとき、半導体薄膜の各島状パターンは、縁部において厚みがあるため、薄膜面に直交する方向からみたときに電極と半導体層が接する重なり領域の面積が小さくとも、厚み分だけ電極と接する面積を広くとれるので、例えば電極を半導体層上に塗布して接触面積を増加させ接点をとるという手段を用いることなく、電極と半導体薄膜との接点が縁部の厚み分のみで充分なコンタクトがとれ、既成容量の小さな信頼性の高い薄膜トランジスタを得ることができる。
また、薄膜トランジスタ素子において、ソース電極、ドレイン電極を、例えば、金属微粒子を含む分散液の如き液体材料を用いて、これを塗設して形成する場合、半導体前駆体薄膜また半導体薄膜の各島状パターンの縁部の厚膜部分は、隔壁の役割をすることができる。
従って、液体材料が半導体薄膜の内部領域までオーバーラップして塗設されることがないため、ソース電極、ドレイン電極の厚みを、半導体前駆体薄膜及び/又は半導体薄膜の島状パターンの縁部の厚み以下とすることで、かつ、半導体前駆体薄膜及び/又は半導体薄膜の島状パターンの縁部でのみ接点(コンタクト)をとった薄膜トランジスタ素子を構成できる。
以下、具体的に図を用いて説明する。
図3(1)は、通常の薄膜トランジスタ素子の一つを概略断面図で示したものである。ボトムゲートトップコンタクト型素子の一例である。
図の如く、基板となる支持体6上に、ゲート電極4が、更にゲート絶縁膜5、この上に活性層である半導体薄膜1のパターンが、また、ソース電極2、ドレイン電極3が配置され薄膜トランジスタ素子を構成している。
図3(1)においては、半導体チャネル層とソース電極又ドレイン電極は、充分な接点面積をとり、コンタクト抵抗を低減するため、半導体チャネル上にソース、ドレイン電極がオーバーラップするよう形成されている(矢印部分)。
このためゲート電極とソース、ドレインそれぞれの電極とのオーバーラップ部分において、既成容量を生じ、これがトランジスタ特性の閾値等に影響を与えている。
また、薄膜トランジスタにおいては、電極とチャネル層界面において発生する剥離応力もその信頼性に影響を与える因子の一つである。
図3(2)、(3)には、通常の、均一な膜厚プロファイルをもつ半導体薄膜(例えばスパッタ法により形成)に一例として金蒸着により、また銀ペーストにより電極をそれぞれ形成したところを示す。いずれの場合も、電極の形成によって、形成された電極による既成容量の発生と同時に、電極と半導体薄膜との境界面において、界面が急激に変化する箇所(図中矢印で示される)では、剥離応力が発生しやすい。
それに対し、図3(4)〜(7)には、本発明に係る膜厚プロファイルを有する半導体チャネル層を用い、これに電極を形成したときの電極と半導体薄膜を断面模式図で示している。
図3(4)、(6)には前記図2(1)、(2)で示される半導体薄膜の膜厚プロファイルが異なった二つの場合(模式化して示した)について、同様に、金蒸着により電極を形成した場合を示したが、いずれの場合においても、チャネル層の膜厚が段階的に(傾斜的に)変化することで、剥離応力が発生しやすい電極とチャネル層との界面の急激な変化がなくなるので、剥離応力の働く箇所が減少することがわかる。また、図3(2)に比べ半導体薄膜の縁部の膜厚分だけ接点面積は増加しコンタクト抵抗が減ると同時に接続の信頼性が増している。
図3(5)、(7)はそれぞれ、(4)、(6)が電極を金蒸着により形成した場合を示しているのに対し、それぞれ、銀ペーストによる塗布で電極を形成した場合を示している。いずれについても剥離応力については金蒸着の場合と同様のことがいえるが、塗布型電極では、それぞれ図2(5)、(7)に示したように膜厚が増加する部分が隔壁として働くので、チャネル層と電極層とのオーバーラップはなくとも(或いは小さくとも)電極を厚膜化することで接点面積が広くとれるのでコンタクト不良も起こりにくい。また、図3(7)においてはオーバーラップ分がないことでゲート電極との間の既成容量も小さくすることができる。
このように、半導体薄膜(チャネル)の膜厚がパターン縁部において傾斜的に増加しまた、その他の部分と膜厚が異なる膜厚プロファイルをもつとき、殆ど端部のみの接触で充分なコンタクトがとれることになる。また、膜厚が連続的に変化するため、電極等との不連続界面が発生しないので、電極とチャネル層界面における剥離応力の発生も抑制される。
従って、コンタクト抵抗が少なく、特性のバラツキが少ない、信頼性の高い薄膜トランジスタ素子が得られる。
また、電極形成に液状材料を用いることで、チャネル層の縁部の厚みが例えば略80nm程度以上あると、これを隔壁として、液状材料による電極塗膜の厚みを調整して、半導体層面への液状材料の流入を防ぐ役割をもたせることもでき、ソース、ドレイン電極がチャネル層の端部のみに接点をもつ、既成容量が小さく、かつ、コンタクト抵抗が少ない安定した動作の薄膜トランジスタ素子を生産性よく製造できる。
このような膜厚プロファイルをもつ半導体薄膜或いは半導体前駆体薄膜を形成するには、塗布による成膜が好ましく、半導体前駆体溶液を用いて、これを前述の所定の条件で、直接基板上に液滴で適用して塗設する方法を用いることが好ましい。
本発明においては、変換後の半導体薄膜の膜厚プロファイルにおいて、半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから端部までの平均膜厚と、半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから中央までの平均膜厚とを比較したとき、半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから端部までの平均膜厚の方が大きいことが好ましい。即ち、パターン縁部の膜厚がその他の部分の膜厚より大きい半導体前駆体或いは半導体薄膜が好ましい。
変換後の半導体薄膜において、膜厚は、縁部において50〜200nm、より好ましくは80〜150nm、また、それ以外の実質的にチャネル層を構成する部分については、1nm〜80nm、好ましくは、5nm〜50nmであることが好ましい。また、縁部の膜厚は、チャネル層を構成する内部領域の膜厚に対して2倍以上あることが好ましい。これにより、コンタクト抵抗の変動が少なく、安定した薄膜トランジスタが得られる。
以下、本発明に用いられる半導体前駆体、またこれにより形成される酸化物半導体について説明する。
本発明においては、半導体前駆体を含有する液体材料(具体的には溶液)を、基板上に、液滴を直接滴下、適用して、塗設、乾燥して半導体前駆体薄膜を形成する。形成された半導体前駆体薄膜は、これに変換処理を施すことで、金属酸化物からなる半導体薄膜に変換される。変換処理としては、後述するが、熱酸化、UVオゾン法或いはプラズマ酸化等を用いることができる。また、加熱にはマイクロ波等の電磁波を用いてもよい。
半導体前駆体薄膜の変換処理により半導体薄膜を形成するとき、前記の半導体薄膜に対する膜厚プロファイルは、従って、半導体前駆体薄膜に対しても同様に適用できる。
本発明において金属酸化物半導体の前駆体としては、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩又は蓚酸塩から選ばれる金属塩を用いるものである。
金属塩における金属としては、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等をあげることができる。
本発明において、これらの金属塩としては、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)のいずれかの塩を1つ以上含むことが好ましく、また、それらを併用して混合させてもよい。
また、その他の金属として、ガリウム(Ga)又はアルミニウム(Al)のいずれかの塩を含むことが好ましい。
本発明において、半導体の前駆体としては、上記金属の硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩又は蓚酸塩から選ばれる金属塩を好適に用いることができ、これらを用いることによりキャリア移動度の大きい、TFT(薄膜トランジスタ)素子としたときOn/Off比の大きい良好な特性を示す金属酸化物半導体を得ることができる。
これらの金属塩は、他の無機塩、また有機金属化合物を用いる場合に比べ、半導体変換処理後に形成される膜中に残留炭素がないこと、また、本発明に係る前記前駆体である金属塩においては、金属と結合している修飾基(陰イオン)を外すエネルギーが小さいためと推定される。
上記金属塩中、硝酸塩の硝酸が、特に解離エネルギーが小さいと予想され、これらの中でも硝酸塩が最も好ましい。
これらの塩を用いると、また、半導体変換処理として電磁波(マイクロ波)で実質低温において変換するときも照射時間を短くでき好ましい。
(前駆体薄膜の成膜方法、パターン化方法)
これらの金属酸化物半導体の前駆体である金属塩を含有する薄膜を形成するためには、公知の成膜法、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などを用いてもよいが、本発明においては、前記硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩又は蓚酸塩から選ばれる金属塩を、水を主体とする溶媒に溶解した溶液を用い、直接、基板上に塗設することが好ましい。
水を主体とするとは溶液を構成する溶媒のうち最大の成分が水であり、少なくとも50質量%以上、好ましくは70質量%以上水を含有する溶媒であり、前記の表面張力等の条件を満たす限り、水の他、用いる金属化合物を溶解するものであれば特に制限されるところではなく共に用いることができる。エタノール、プロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等グリコールエーテル系、また、アセトニトリルなど、更に、キシレン、トルエン等の芳香族系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン、トリデカンなど、α−テルピネオール、また、クロロホルムや1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、N−メチルピロリドン、2硫化炭素等を用いることができる。本発明においては、水を主体とする溶媒としては、90質量%が水である溶媒が更に好ましく、最も好ましいのは水溶液を用いて塗布することである。
本発明に係る前記の硝酸塩等の金属塩は、水に対して分解性がなく、水を溶媒として用いることができるので、製造工程上、また環境上も好ましい。
例えば、金属塩化物等の金属塩は大気中での劣化、分解と(特にガリウム等の場合)、強い潮解性とが激しいが、本発明に係る硝酸塩等の無機塩については潮解、また劣化等がなく使い易いことも製造環境上好ましい。
本発明に係る金属塩中でも、水に対する劣化、分解、また容易に溶けること、更に、潮解性等の性能においても優れた性質をもつ硝酸塩が最も好ましい。
本発明においては、金属塩を含有する水溶液を基材上に適用して、金属酸化物半導体の前駆体を含有する薄膜を形成する。
金属塩を含有する水溶液を基材上に適用して、金属酸化物半導体の前駆体薄膜を形成する方法としては、液滴を直接基材上に適用する方法が好ましく、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、ミスト法、など、凸版、凹版、平版、スクリーン印刷、インクジェット法などの印刷法等、広い意味での塗布による方法があげられ、また、これによりパターン化する方法などがあげられる。これらのうち、好ましいのは直接パターン状塗布が可能な、インクジェット法、スプレーコート法等である。
例えばインクジェット法を用いて成膜する場合、表面張力、又濃度等を適宜調整した金属塩水溶液を、やはり温度を調整した基材上に、直接、吐出或いは滴下して、金属塩からなる半導体前駆体のチャネル層パターンを形成し、80℃〜150℃程度で溶媒(水)を揮発させることにより本発明の膜厚プロファイルをもった半導体前駆体薄膜が形成される。
(金属の組成比)
本発明において、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、また、その他の金属として、ガリウム(Ga)をその組成に含むものが好ましく、これらの金属を成分として含む前駆体溶液を作製する場合、好ましい金属の組成比としては、In、Snの金属塩から選ばれる塩に含有される金属(金属A)と、Ga、Alの金属塩から選ばれる塩に含有される金属(金属B)と、Znの金属塩に含有される金属(金属C=Zn)とのモル比率(金属A:金属B:金属C)が、以下の関係式を満たすことが好ましい。
金属A:金属B:金属C=1:0.2〜1.5:1〜5
金属塩としては、硝酸塩が最も好ましいので、In、Sn(金属A)と、Ga、Al(金属B)と、Zn(金属C)とのモル比率(A:B:C)が、上記の関係式を満たすように、各金属の硝酸塩を、水を主成分とした溶媒に溶解・形成した塗布液を用いて金属無機塩を含む前駆体薄膜を塗布により形成することが好ましい。
また、前駆体となる金属無機塩を含む薄膜の膜厚はチャネル層島状パターンそれぞれについて、本発明の膜厚プロファイルをもつことであり、更に、パターン縁部の膜厚>その他の部分の膜厚、であることが好ましく、平均の膜厚差が5nm以上あることが好ましく、更に好ましくは、10nm以上あることである。
(非晶質酸化物)
形成される金属酸化物半導体としては、単結晶、多結晶、非晶質のいずれの状態も使用可能だが、好ましくは非晶質の薄膜を用いる。
金属酸化物半導体の前駆体となる金属化合物材料から形成された、本発明に係る金属酸化物である非晶質酸化物の電子キャリア濃度は1018/cm未満が実現されていればよい。電子キャリア濃度は室温で測定する場合の値である。室温とは、例えば25℃であり、具体的には0℃から40℃程度の範囲から適宜選択されるある温度である。尚、本発明に係るアモルファス酸化物の電子キャリア濃度は、0℃から40℃の範囲全てにおいて、1018/cm未満を充足する必要はない。例えば、25℃において、キャリア電子密度1018/cm未満が実現されていればよい。また、電子キャリア濃度を更に下げ、1017/cm以下、より好ましくは1016/cm以下にするとノーマリーオフのTFTが歩留まり良く得られる。
電子キャリア濃度の測定は、ホール効果測定により求めることができる。
金属酸化物である半導体の膜厚としては、特に制限はないが、得られたトランジスタの特性は、半導体膜の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は、半導体により異なるが、一般に1μm以下、特に10〜300nmが好ましい。
本発明においては、前駆体材料(金属塩)、組成比、製造条件などを制御して、例えば、電子キャリア濃度を、1012/cm以上1018/cm未満とする。より好ましくは1013/cm以上1017/cm以下、更には1015/cm以上1016/cm以下の範囲にすることが好ましいものである。
半導体前駆体薄膜から半導体薄膜への変換処理としては、酸素プラズマ法、熱酸化法、UVオゾン法等の酸化処理があげられる。またマイクロ波照射を用いることができる。
熱酸化としては、100℃以上400℃以下の温度域で酸素の存在下加熱処理することが好ましい。本発明の硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩又は蓚酸塩から選ばれる金属塩を用いることで比較的低い温度において半導体変換処理を行うことができる。
また、金属酸化物の形成はESCA等により検知でき、半導体への変換が充分行われる条件を予め選択することができる。
また、酸素プラズマ法としては大気圧プラズマ法を用いるのが好ましい。また酸素プラズマ法、UVオゾン法においては、基板を50℃〜300℃の範囲で加熱させることが好ましい。
大気圧プラズマ法では、大気圧下で、アルゴンガス等の不活性ガスを放電ガスとして、これと共に反応ガス(酸素を含むガス)を放電空間に導入して、高周波電界を印加して、放電ガスを励起させ、プラズマ発生させ、反応ガスと接触させて酸素を含むプラズマを発生させ、基体表面をこれに晒すことで酸素プラズマ処理を行う。大気圧下とは、20〜110kPaの圧力を表すが、好ましくは93〜104kPaである。
大気圧プラズマ法を用いて、酸素含むガスを反応性ガスとして、酸素プラズマを発生させ、金属塩を含有する前駆体薄膜を、プラズマ空間に晒すことでプラズマ酸化により前駆体薄膜は酸化分解して、金属酸化物からなる層が形成する。
高周波電源として0.5kHz以上、2.45GHz以下、また、対向電極間に供給する電力は、好ましくは0.1W/cm以上、50W/cm以下である。
使用するガスは、基本的に、放電ガス(不活性ガス)と、反応ガス(酸化性ガス)の混合ガスである。反応ガスは好ましくは酸素ガスであり混合ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。0.1〜10体積%であることがより好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
上記不活性ガスとしては、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンや、窒素ガス等があげられるが、本発明に記載の効果を得るためには、ヘリウム、アルゴン、窒素ガスが好ましく用いられる。
また、反応ガスを放電空間である電極間に導入するには、常温常圧で構わない。
大気圧下でのプラズマ法については特開平11−61406号、同11−133205、特開2000−121804号、同2000−147209号、同2000−185362号等に記載されている。
また、UVオゾン法は、酸素の存在下で、紫外光を照射し、酸化反応を進行させる方法である。紫外光の波長は、100nm〜450nm、特に好ましくは150〜300nm程度の所謂、真空紫外光を照射することが好ましい。光源は、低圧水銀灯、重水素ランプ、キセノンエキシマーランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザーなどを用いることができる。
ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては100mW/cm〜100kW/cm、照射エネルギーとしては10〜5000mJ/cmが好ましく、100〜2000mJ/cmがより好ましい。
紫外線照射の際の照度は1mW〜10W/cmが好ましい。
また、本発明においては、酸化処理に加えて前記酸化処理の後、或いは前記酸化処理と同時に加熱処理を施すことが好ましい。これにより酸化分解を促進できる。
また、金属塩を含有する薄膜を酸化処理したのち、基材を50℃〜200℃、好ましくは80℃〜150℃の範囲で、加熱時間としては1分〜10時間の範囲で加熱することが好ましい。
加熱処理は、酸化処理と同時に行ってもよく、酸化による金属酸化物半導体への変換を迅速に行うことができる。
また変換処理として、酸素の存在下、マイクロ波(0.5〜50GHz)照射を用いることが好ましい。
(マイクロ波の照射)
本発明においては、金属酸化物半導体の前駆体となる前記金属無機塩材料から形成された薄膜を半導体に変換する方法として、酸素の存在下でのマイクロ波照射を用いる。
即ち、これらの金属酸化物半導体の前駆体となる前記金属塩材料を含む薄膜を形成した後、該薄膜に対し、酸素の存在下で電磁波、特にマイクロ波(周波数0.5〜50GHz)を照射する。
金属酸化物半導体の前駆体となる前記金属塩材料を含む薄膜にマイクロ波を照射することで、金属酸化物前駆体中の電子が振動し、ジュール熱が発生して薄膜が内部から、均一に加熱される。ガラスや樹脂等の基板には、マイクロ波領域に吸収が殆どないため、基板自体は殆ど発熱せずに薄膜部のみを選択的に加熱し熱酸化、金属酸化物半導体へ変換することが可能となる。
特にITOのような強い電磁波吸収体が近傍に存在する場合、これがマイクロ波を吸収し発熱するため、これに隣接する領域を更に短時間に加熱することができる。
マイクロ波加熱においては一般的な様に、マイクロ波吸収は吸収が強い物質に集中し、尚且つ非常に短時間で500〜600℃までこれを昇温することが可能なため、本発明にこの方法を用いた場合に、基材自身には殆ど電磁波による加熱の影響を与えず、短時間で前駆体薄膜を酸化反応が起きる温度まで昇温でき、金属酸化物前駆体を金属酸化物に変換することが可能となる。また、加熱温度、加熱時間は、隣接してマイクロ波吸収体があるか等でも変わるが、照射するマイクロ波の出力、照射時間で制御することが可能であり、また、前駆体材料、基板材料等にあわせて調整することが可能である。
一般的に、マイクロ波とは0.5〜50GHzの周波数をもつ電磁波のことを指し、携帯通信で用いられる0.8MHz及び1.5GHz帯、2GHz帯、アマチュア無線、航空機レーダー等で用いられる1.2GHz帯、電子レンジ、構内無線、VICS等で用いられる2.4GHz帯、船舶レーダー等に用いられる3GHz帯、その他ETCの通信に用いられる5.6GHzなどは全てマイクロ波の範疇に入る電磁波である。
セラミクスの分野ではこの様な電磁波を焼結に利用することが既に公知となっている。磁性を含む材料に電磁波を照射すると、その物質の複素透磁率の損失部の大きさに応じて発熱することを利用し、短時間で均一に、かつ高温にすることができる。一方で、金属にマイクロ波を照射すると自由電子が高い周波数で運動を始めるためアーク放電が発生し、加熱できないことも良く知られている。
この様に、本発明の金属酸化物半導体の前駆体は、セラミクスと同様に選択的に短時間で均一に、かつ高温まで加熱できる。
前記金属塩を含有する半導体前駆体層に酸素の存在下で、また好ましくはマイクロ波吸収体を近傍の層に有する状態で、マイクロ波照射を行って、半導体変換処理を行う方法は、短時間で選択的に酸化反応を進行させる方法である。但し、熱伝導により少なからず基材にも熱が伝わるため、特に樹脂基板の様な耐熱性の低い基材の場合は、マイクロ波の出力、照射時間、更には照射回数を制御することで基板温度が50℃〜200℃、前駆体を含有する薄膜の表面温度が200〜600℃になる様に処理することが好ましい。薄膜表面の温度、基板の温度等は熱電対を用いた表面温度計、また非接触の表面温度計により測定が可能である。
本発明の薄膜トランジスタの製造方法においては好ましくはソース電極、ドレイン電極と半導体チャネル層との間に適用するのが好ましく、図3(1)と同じ構成をもつボトムゲートトップコンタクト型の素子の製造の一例を図4に模式的に示した。
ここでは、支持体6として、ガラス基板を用いて、スパッタにてITO膜を作製、レジストを用いパターニングしてゲート電極4とする(厚み100nm)。尚、ゲート電極幅(L1)は60μmとした。
更に、大気圧プラズマCVD法により酸化珪素からなるゲート絶縁膜5を形成する(厚み略200nm)。これによりゲート電極4及びゲート絶縁膜5を有する基板が得られる(図4(1))。
基板上の、チャネル層となる領域に、インクジェット法により、例えば、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウムを金属比率で1:1:1(モル比)で混合し20質量%水溶液(表面張力を測定した結果50mN/mであった)とした前駆体溶液をインクとして、直接、ゲート電極パターンに沿ってチャネル形成部に幅50μmでインクジェット塗布する(図4(2))。
尚、基板の温度は、65℃とした。その後、100℃で乾燥を行って半導体前駆体薄膜1′を形成させた(図4(3))。この条件で作成すると膜厚プロファイルで縁部の最も厚い膜厚部分h1が105nm、また半導体前駆体薄膜中心部(内部領域)h2の膜厚は55nmとなった。(いずれも断面観察により測定する。)
次いで、基板温度を、150℃に温度をあげて更に乾燥したのち、マイクロ波を次に基板側から照射し、前駆体材料薄膜を焼成(300℃)して、半導体層1に転化した。ゲート電極にもマイクロ波吸収体のITOが用いられており発熱する。
加熱により半導体前駆体薄膜の膜厚プロファイルがそのまま保存された半導体薄膜が形成される。
次に、液状電極材料である銀ナノ粒子インクを、形成されたチャネル層に接するよう所定量インクジェット法を用いて電極領域に滴下する。基板温度を130℃に保ちながら、形成された半導体薄膜に接するようインクジェット法を用いて吐出し130℃でそのまま加熱して乾燥する。
半導体薄膜の縁部の膜厚を越えない範囲で液滴を、複数回吐出、乾燥を行って重ね塗りを行う。最後、大気中、200℃で30分間程度加熱して、ソース電極2、ドレイン電極3を形成する(図4(4))。半導体薄膜縁部の膜厚方向で電極と半導体層の充分なコンタクトが得られる。尚、金属ナノ粒子の金属種類によっては非常に酸化されやすい場合があるため焼成時の雰囲気は適宜、窒素やアルゴン等の不活性ガスで置換しても良い。
因みに、電極サイズは、幅10μm、膜厚100nm、チャネル長L(ソース、ドレイン電極間の間隔)は略50μmと、半導体薄膜パターン幅と略同じである薄膜トランジスタ素子が形成された。
得られた薄膜トランジスタ素子は、既成容量(図矢印部分)が小さく、かつ、電極とチャネル層との接点面積が厚みにより大きくとれ、電極とチャネル層とのコンタクト抵抗が小さく、かつ、電極と半導体との密着面における剥離応力も小さい、バラツキがなく耐久性があり、動作が安定した薄膜トランジスタ素子が得られる。
薄膜トランジスタシートにおいては、このような薄膜トランジスタ素子が、シート基板上に複数配置されており、各素子毎に半導体層(チャネル層)は、島状のパターンとして配置される。
薄膜トランジスタシートの一例をその等価回路図で図5に示した。
即ち、薄膜トランジスタシート120はマトリクス配置された多数の薄膜トランジスタ素子124を有する。121は各薄膜トランジスタ素子124のゲート電極のゲートバスラインであり、122は各薄膜トランジスタ素子124のソース電極のソースバスラインである。各薄膜トランジスタ素子124のドレイン電極には、出力素子126が接続され、この出力素子126は例えば液晶、電気泳動素子等であり、表示装置における画素を構成する。図示の例では、出力素子126として液晶が、抵抗とコンデンサからなる等価回路で示されている。125は蓄積コンデンサ、127は垂直駆動回路、128は水平駆動回路である。これら薄膜トランジスタシート120における各トランジスタ素子の製造に本発明を用いることができる。
次に、TFT素子を構成する他の各要素について説明する。
(電極)
本発明において、TFT素子を構成するソース電極、ドレイン電極、ゲート電極等の電極に用いられる導電性材料としては、電極として実用可能なレベルでの導電性があればよく、特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペースト及びカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられる。
また、導電性材料としては、導電性ポリマーや金属微粒子などを好適に用いることができる。金属微粒子を含有する分散物としては、例えば公知の導電性ペースト、また金属ナノ粒子インクなどを用いても良いが、好ましくは、粒子径が1nm〜50nm、好ましくは1nm〜10nmの金属微粒子を含有する分散物である。金属微粒子から電極を形成するには、前述の方法を同様に用いることができ、金属微粒子の材料としては上記の金属を用いることができる。
(電極等の形成方法)
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等により、レジストを形成しエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液或いは分散液、金属微粒子を含有する分散液等を直接インクジェット法によりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーションなどにより形成してもよい。更に導電性ポリマーや金属微粒子を含有する導電性インク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
電極或いはバスライン等を、エッチング又はリフトオフ等感光性樹脂等を用いた金属薄膜のパターニングなしに形成する方法として、また、無電解メッキ法による方法が知られている。
無電解メッキ法による電極の形成方法に関しては、特開2004−158805号にも記載されたように、電極を設ける部分に、メッキ剤と作用して無電解メッキを生じさせるメッキ触媒を含有する液体を、例えば印刷法(インクジェット印刷含む。)によって、パターニングした後に、メッキ剤を、電極を設ける部分に接触させる。そうすると、前記触媒とメッキ剤との接触により前記部分に無電解メッキが施されて、電極パターンが形成されるというものである。
無電解メッキの触媒と、メッキ剤の適用を逆にしてもよく、またパターン形成をどちらで行ってもよいが、メッキ触媒パターンを形成し、これにメッキ剤を適用する方法が好ましい。
印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、平版、凸版、凹版又インクジェット法による印刷などが用いられる。
(ゲート絶縁膜)
本発明の薄膜トランジスタのゲート絶縁膜としては種々の絶縁膜を用いることができるが、特に、比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどがあげられる。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などのドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、印刷やインクジェットなどのパターニングによる方法などのウェットプロセスがあげられ、材料に応じて使用できる。
ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤或いは水に必要に応じて界面活性剤などの分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えばアルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、いわゆるゾルゲル法が用いられる。
これらのうち好ましいのは、上述した大気圧プラズマ法である。
ゲート絶縁膜(層)が陽極酸化膜又は該陽極酸化膜と絶縁膜とで構成されることも好ましい。陽極酸化膜は封孔処理されることが望ましい。陽極酸化膜は、陽極酸化が可能な金属を公知の方法により陽極酸化することにより形成される。
陽極酸化処理可能な金属としては、アルミニウム又はタンタルをあげることができ、陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
また有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、或いはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂等を用いることもできる。
無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。またこれら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
(基板)
基板を構成する支持体材料としては、種々の材料が利用可能であり、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、サファイア、チッ化珪素、炭化珪素などのセラミック基板、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素など半導体基板、紙、不織布などを用いることができるが、本発明において支持体は樹脂からなることが好ましく、例えばプラスチックフィルムシートを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等があげられる。プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに、衝撃に対する耐性を向上できる。
また本発明の薄膜トランジスタ素子上には素子保護層を設けることも可能である。保護層としては前述した無機酸化物又は無機窒化物等があげられ、上述した大気圧プラズマ法で形成するのが好ましい。
以下実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はこれにより限定されるものではない。
実施例1
半導体層(活性層)を硝酸塩前駆体から作成する塗布型IGZO半導体としたボトムゲート、トップコンタクト型素子を作成した。
熱酸化膜(200nm)付きのシリコンウエハー基板を洗浄し、基板上に以下の半導体薄膜パターンを100個並べ配置して、これに100個の薄膜トランジスタ素子を作成した。
(半導体薄膜パターンの形成)
熱酸化膜上に、硝酸インジウム、硝酸ガリウム、硝酸亜鉛を金属比率で1:1:1(モル比)で混合し20質量%水溶液としたものをインクとしてチャネル形成位置に幅50μm、長さ200μmのサイズで半導体前駆体薄膜パターンをインクジェット塗布した。
尚、溶液の表面張力を測定したところ60mN/mであった(25℃)。
尚、基板温度を60℃に保って吐出し乾燥した試料を基板Aとした。
又、別に、基板温度25℃で吐出して乾燥、作成した試料を基板Bとした。
この基板を、大気雰囲気下、400℃の温度条件で1時間熱処理を行って、焼成(熱酸化)を行った。半導体前駆体薄膜パターンは透明に変化し金属酸化物半導体薄膜に変換された。
同様に、温度150℃にて、1時間乾燥した。
基板Aについて、変換処理後も前駆体薄膜の膜厚プロファイルが保持されており、形成された個々の半導体前駆体薄膜パターンのチャネル方向(幅方向)での膜厚プロファイルを図6(1)に示した。尚、測定は、非接触三次元表面測定装置(WYKO社製RST/PULS)によった。前記ACよりもBCにおける平均膜厚が大きい膜厚プロファイルを有している。
図の膜厚プロファイルからみると縁部の最大膜厚部分は110nm、又縁部以外の膜厚最小部分(中央部)の膜厚は50nmであった。
また、基板Bについて、吐出乾燥し作成したときの個々の半導体前駆体薄膜パターンのチャネル方向での膜厚プロファイルを図6(2)に示した。これは順次膜の中心部に向かって膜厚が増加し中央部分では80nmの膜厚を示した。前記ACよりもBCにおける平均膜厚が小さい膜厚プロファイルを有している。
次に、基板A、基板Bそれぞれに、マスクを介して金を蒸着することで、ソース電極3、ドレイン電極4をそれぞれの半導体薄膜パターンに接して形成し、薄膜トランジスタ素子基板A及びBを作成した。ソース、ドレイン電極のサイズは、それぞれ幅10μmとし、長さ200μm、厚さ50nmであり、チャネル長(ソース、ドレイン電極間距離)は40μmとなるように作成した。
次に、比較の素子として前記半導体薄膜の形成を以下に代えて同様に薄膜トランジスタ素子基板Cを形成した。
(半導体薄膜の形成)
In−Ga−Zn−O組成(In:Zn:Ga=1:1:1)をもつアモルファス金属酸化物半導体薄膜(IGZO)を所定の組成をもつIGZOターゲットを用いてスパッタ法により成膜した(厚み80nm)。
尚、スパッタ条件は下記の通りである。
方式:RFスパッタ(13.56MHz)
RFパワー:100W
放電ギャップ:40mm
基板温度:室温
酸素比率:3体積%(アルゴン雰囲気)
成膜レート:20〜40nm/min
その後、レジストを用い塩酸でパターニングして絶縁膜上にチャネル領域に半導体薄膜を形成した。実施例1と同様に、チャネル形成位置に幅50μm、長さ200μmのサイズで形成した。
次いで、減圧(2.5×10−3Pa)にて温度250℃、30分、半導体層を形成した基板を電気炉で保持しポストベーク処理を行った。
尚、形成された半導体薄膜はチャネル方向に沿って端部から50nm内側から均一な60nmの膜厚を有する均一な膜厚プロファイルを有していた。
次いで、素子基板A、Bと同様に、マスクを介して金を蒸着することで、ソース電極2、ドレイン電極3を形成し薄膜トランジスタ素子基板Cを作製した。
得られたそれぞれの薄膜トランジスタ素子基板A、B、Cにおいて、薄膜トランジスタは、良好に駆動し、n型のエンハンスメント動作を示したが、それぞれについて耐久試験を以下の方法で行った。
先ず、基板上にそれぞれ形成された100個の素子にアミン触媒入りポリシラザンをインクジェット塗布し、150℃で熱処理し成膜して保護膜を付けた。
次に、各100個の素子について、初期値と、30℃〜80℃のヒートサイクル(10分保持、10分で温度変化)に30回曝し、前後での性能を比較した。
ドレインバイアスを15Vとし、ゲートバイアスを−10Vから20Vまで掃引したときのドレイン電流の増加(伝達特性)における飽和領域からキャリア移動度(cm/Vs)についてそれぞれ見積もった。
試験後の移動度の値が、初期値の90%以上を保持しているものをAランク(良)、初期値の50%以上90%未満のものをBランク(可)、初期値の50%未満の値を示すものをCランク(不可)とした。各基板中それぞれのランクに位置する薄膜トランジスタの数についてカウントした。
結果を以下表1に示した。
Figure 2010109145
以上の結果から、薄膜トランジスタ素子基板A、またBが素子基板Cに比べAランクの個数が多く、Cランクとなる個数が少なく、素子の耐久性がよく、バラツキがないことがわかる。
実施例2
実施例1と同様に、半導体薄膜を形状違いで作成した二つの基板A、Bを用い、ソース、ドレイン電極を蒸着に代え塗布型電極にて作成した。
即ち、ピエゾ式インクジェット法によりCabot社製Agナノインク(平均粒子径8nm;20質量%)を用いて、基板A、基板B上半導体層にソース、ドレイン電極パターンを作成した。
Agナノインクを、基板温度を130℃に保ちながら、形成された半導体薄膜に接するようインクジェット法を用いて吐出し130℃でそのまま加熱して乾燥する。基板Bについては、基板Bの膜厚プロファイルをもつ半導体薄膜は、インクを塗りすぎるとチャネル長を確保しづらくなるので、半導体薄膜の縁部の膜厚を越えない範囲で液滴を、複数回吐出を行って重ね塗りを行って、50nmの厚みで電極パターンを形成した。
また、基板Aについては、半導体薄膜の縁部が厚膜であり更に重ね塗りを行って100nmの厚みを確保した電極パターンが形成できた。
その後、それぞれ200℃で1時間焼結しソース、ドレイン電極とした。ソース、ドレイン電極の電極幅は10μmで形成した。
以下作成した薄膜トランジスタ素子基板A、またBからランダムに素子一つをとり、特性を評価した。
いずれの素子もn型のエンハンスメント動作を示した。それぞれドレインバイアスを10Vとし、ゲートバイアスを−10Vから+20Vまで掃引したときのドレイン電流の増加(伝達特性)を観測した。その飽和領域から移動度(cm/Vs)と、更にOn/Off比、閾値(Vth)について見積もった。
結果を表に示す。
Figure 2010109145
素子Aでは特に閾値が低く特に好ましい性能を示す。Vthの差は主に既成容量の差と考えられる。移動度の差は電極抵抗も一因と推定される。
半導体薄膜のチャネル方向に沿った膜厚プロファイルを示す模式図である。 実際に形成された半導体薄膜の膜厚プロファイルを示す図である。 通常の薄膜トランジスタ素子の一つを概略断面図で示す。 ボトムゲートトップコンタクト型の素子の製造の一例を示す模式図である。 薄膜トランジスタシートの等価回路図の一例を示す図である。 変換処理後の半導体薄膜の膜厚プロファイルを示す図である。
符号の説明
1 半導体薄膜
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 ゲート絶縁膜
6 支持体

Claims (13)

  1. 半導体前駆体を含有する液体材料を液滴にして基板上に塗設し、乾燥させて島状のパターンをもつ半導体前駆体薄膜を形成し、該半導体前駆体に変換処理を施して半導体を形成する半導体薄膜の形成方法において、島状のパターンを有する変換処理後の半導体薄膜が、
    半導体薄膜の膜厚をチャネル方向に非接触3次元表面形状測定装置にて測定した膜厚プロファイルにおいて、
    半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから端部までの平均膜厚と、
    半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから中央までの平均膜厚とが、
    異なっていることを特徴とする半導体薄膜の形成方法。
  2. 半導体前駆体を含有する液体材料を液滴にして基板上に塗設し、乾燥させて島状のパターンをもつ半導体前駆体薄膜を形成し、該半導体前駆体に変換処理を施して半導体を形成する半導体薄膜の形成方法において、島状のパターンを有する変換処理後の半導体薄膜が、
    半導体薄膜の膜厚をチャネル方向に非接触3次元表面形状測定装置にて測定した膜厚プロファイルにおいて、
    半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから端部までの平均膜厚と、
    半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから中央までの平均膜厚とを比較したとき、半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから端部までの平均膜厚の方が小さいことを特徴とする半導体薄膜の形成方法。
  3. 半導体前駆体を含有する液体材料を液滴にして基板上に塗設し、乾燥させて島状のパターンをもつ半導体前駆体薄膜を形成し、該半導体前駆体に変換処理を施して半導体を形成する半導体薄膜の形成方法において、島状のパターンを有する変換処理後の半導体薄膜が、
    半導体薄膜の膜厚をチャネル方向に非接触3次元表面形状測定装置にて測定した膜厚プロファイルにおいて、
    半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから端部までの平均膜厚と、
    半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから中央までの平均膜厚とを比較したとき、半導体薄膜の中央から端部までの距離の50%のところから端部までの平均膜厚の方が大きいことを特徴とする半導体薄膜の形成方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法により、ゲート絶縁膜上に半導体薄膜の島状のパターンを形成し、かつ、ゲート絶縁膜の、前記半導体薄膜の島状パターンと反対側の面にゲート電極を、また、前記ゲート絶縁膜上に、ソース電極及びドレイン電極が、それぞれ、少なくとも前記半導体薄膜の島状パターンの縁部に接するように配置されることを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
  5. 前記ソース電極、ドレイン電極が、金属微粒子を含む分散液を塗設後に、熱による変換処理により電極に変換され、形成されるものであることを特徴とする請求項4に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  6. 前記ソース電極、ドレイン電極が、金属微粒子を含む分散液を塗設後、熱による変換処理により形成されたものであり、前記ソース電極、ドレイン電極の厚みは、半導体前駆体薄膜及び/又は半導体薄膜の島状パターンの縁部の厚み以下であり、かつ、半導体前駆体薄膜及び/又は半導体薄膜の島状パターンの縁部でのみ接点をとることを特徴とする請求項5に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  7. 半導体前駆体を含有する液体材料が、金属塩の、水を主成分とする溶液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法。
  8. 金属塩が、少なくともIn、Zn、Snのいずれかの塩を一つ以上含むことを特徴とする請求項7に記載の半導体薄膜の形成方法。
  9. 金属塩が少なくともGa、Alのいずれかの塩を一つ以上含むことを特徴とする請求項8に記載の半導体薄膜の形成方法。
  10. 半導体への前記変換処理が、100℃以上400℃以下の熱処理であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項又は7〜9のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法。
  11. 半導体への前記変換処理がマイクロ波(周波数0.3〜50GHz)照射であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項又は7〜10のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法。
  12. 請求項1〜3のいずれか1項又は7〜11のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法で作成された半導体薄膜。
  13. 請求項1〜3のいずれか1項又は7〜11のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法で作成された半導体薄膜を用いることを特徴とする薄膜トランジスタ。
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