JP2010108927A - 有機電界発光素子、該有機電界発光素子の製造方法、有機el表示装置および有機el照明 - Google Patents

有機電界発光素子、該有機電界発光素子の製造方法、有機el表示装置および有機el照明 Download PDF

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尚範 加藤
Yasutsugu Yamauchi
康嗣 山内
Shigeki Nagao
茂樹 長尾
Mizuki Yamahira
瑞喜 山平
Naoaki Imai
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【課題】 電荷輸送層上に形成したバンクを有する有機電界発光素子において、駆動電圧が低く、かつ均一な発光が得られる有機電界発光素子を提供すること。
【解決手段】 基板上に、直接または他の層を介して1層または2層以上の電荷輸送層を有し、該電荷輸送層上にバンクおよび該バンクによって区画された領域を有し、
該バンクによって区画された領域に1層または2層以上の有機薄膜を有する有機電界発光素子であって、該有機薄膜上に、直接または他の層を介して、導電性微粒子または有機導電性物質を含有する樹脂層を有することを特徴とする、有機電界発光素子。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電荷輸送層上にバンクを有する有機電界発光素子並びにこれを用いた有機EL表示装置および有機EL照明に関する。
近年、有機ELディスプレイの発達は著しく、需要も増加の傾向にあるが、さらなる普及のためには製造の簡易化が求められ、製造プロセスが簡略で歩留まりがよく、低コストであるインクジェット方式を利用して画素を形成させる方法が提案されている。インクジェット方式では、まず画素の塗り分けのためのバンク(隔壁)を基板上に形成して区画領域を形成し、この区画された領域内にRGB三原色それぞれの画素を形成するインクを吐出して、乾燥することにより画素を形成させて、有機電界発光素子を形成する。
しかしながら、このような有機電界発光素子は、正孔注入層、発光層などの複数の層をバンクで区画された領域に形成されなければならず、バンクで区画された領域に形成される各層の膜厚等の制御が困難であった。
そこで、例えば、特許文献1では、基板の全面にバッファー層を形成し、このバッファー層上にバンクを形成する方法が開示されている。この方法によれば、従来よりも簡易な工程で、かつ、バンクで区画された領域内に形成される各層の膜厚の不均一を生じにくい。しかしながら、このようにバッファー層などの電荷輸送層上にバンクを形成することにより製造された有機電界発光素子は、均一な発光が得られなかったり、駆動電圧が高くなったりしてしまうという課題があった。
特開2007−242272号公報
本発明は、電荷輸送層上に形成したバンクを有する有機電界発光素子において、駆動電圧が低く、かつ均一な発光が得られる有機電界発光素子を提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、上記のようなバンクを有する有機電界発光素子は、バンクの断面形状の制御が十分に出来ておらず、バンクで区画された領域とバンク上面との間で、陰極が電気的に接続されない状態が生じ、これにより、均一な発光が得られなかったり、駆動電圧が高くなったりしてしまうという問題が生じることがわかった。
また、有機層上にバンクを有する素子構成では、ITO上にバンクを有する素子に比べて、電圧を印加した際に発生する熱が、素子から逃げ難いことがわかった。これは、熱がバンクにある場合、有機層上にバンクを有する素子の方が、基板に到達するまでの界面(バンクの下に形成される層)が多いため、つまり熱抵抗が大きいため、素子中に熱がこもりやすく、これが素子の駆動寿命に影響を及ぼしていることを見出した。
以上より、本発明では、バンクによって陰極が電気的に接続されない状態を解消するために、また、駆動時に素子に熱がこもる状態を解決するために、十分な層厚を有する特定の材料を含む層を形成すること、により上記課題を解決できることがわかり本発明に到達した。
すなわち、本発明は、基板上に、直接または他の層を介して1層または2層以上の電荷輸送層を有し、該電荷輸送層上にバンクおよび該バンクによって区画された領域を有し、該バンクによって区画された領域に1層または2層以上の有機薄膜を有する有機電界発光素子であって、該有機薄膜上に、直接または他の層を介して、導電性微粒子または有機導電性物質を含有する樹脂層を有することを特徴とする有機電界発光素子、および、該有機薄膜上に、直接または他の層を介して、導電層を有し、該導電層は、導電性微粒子および樹脂を含有する樹脂組成物を成膜し、該導電性微粒子を一体化することにより形成された層であることを特徴とする有機電界発光素子に存する。また、本発明は、該有機電界発光素子を用いた有機EL表示装置および有機EL照明に存する。
本発明によれば、バンクで区画された領域とバンク上面との間で、陰極が電気的に接続されない状態、いわゆる段切れ現象を起こすことなく、電気的接続状態が良好な有機電界発光素子が得られる。例えば、陽極を基板側に有するアクティブ型素子において、形成したバンクの断面形状が逆テーパーや垂直に近い順テーパーを有していても、電気的接続状態が良好に保たれる。
さらに、電極を十分に低い抵抗とすることができ、素子の初期駆動電圧特性における歩留りや断線による発光不良における歩留り、素子寿命などの素子信頼性を低下させることなく、均一な発光であって、初期特性が良好で素子寿命の長い有機電界発光素子、有機EL表示装置および有機EL照明を提供することができる。
有機電界発光素子の製造手順との実施の態様を示す模式的な断面図である。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定はされない。
1.導電性微粒子または有機導電性物質を含有する樹脂層
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、直接または他の層を介して1層または2層以上の電荷輸送層を有し、該電荷輸送層上にバンクおよび該バンクによって区画された領域を有し、該バンクによって区画された領域に1層または2層以上の有機薄膜を有する有機電界発光素子であって、該有機薄膜上に、直接または他の層を介して、導電性微粒子または有機導電性物質を含有する樹脂層を有することを特徴とする。
まず、導電性微粒子または有機導電性物質を含有する樹脂層(以下、単に樹脂層という場合がある)について説明する。該樹脂層は、有機薄膜上に、直接または他の層を介して形成される層である。
該樹脂層は、少なくとも樹脂を含有する層であり、さらに、導電性微粒子または有機導電性物質を含有する。樹脂層は、導電性微粒子または有機導電性物質のいずれか一方を含有していればよく、両方を含有するものであってもよい。また、樹脂層は、導電性微粒子を1種のみ含有していても、2種以上を含有していてもよい。また、樹脂層は、有機導電性物質を1種のみ含有していても、2種以上を含有していてもよい。また、樹脂層は、樹脂を1種のみ含有していても、2種以上を含有していてもよい。
(導電性微粒子)
本発明において、導電性微粒子とは、電気的な導電性を有する微粒子であって、好ましくは、電気抵抗値の範囲が、常温において、1x10−10Ω・cm以上、1x100Ω・cm以下のものである。
導電性微粒子の大きさは、体積平均粒子径(D50)で、通常0.001μm以上、好
ましくは0.5μm以上、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。樹脂層に含有する場合、特に、0.5μmから10μmの大きさであることが好ましい。
導電性微粒子として具体的には、半導体、金属、および金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、ダイヤモンド、および、それらの混合物または不定比化合物等から選ばれる導電性微粒子であることが好ましい。
該半導体としては、ゼロギャップ半導体であるグラファイト、リン(P)またはボロン(B)が高濃度にドープされた高純度シリコン(Si)、あるいは、ガリウム(Ga)またはアンチモン(Sb)が高濃度にドープされたゲルマニウム(Ge)、グラファイトインターカレーション(Intercalation)化合物、フラーレン、フラーレン誘導体、半導体
性カーボンナノチューブ等を挙げることができる。
該金属としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)を代表とする単体において金属と呼ばれる物質(貴金属、卑金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属等)、または鉛錫(Pb37Sn63)共晶ハンダを代表とする合金、金属間化合物(NbGe,MgBなど)、金属性カーボンナノチューブ、前記フラーレン、およびフラーレン誘導体にヨウ素や五フッ化ヒ素などの電子受容体(アクセプタ)やアルカリ金属などの電子供与体(ドナー)等の適当な化学種を高分子に添加する、いわゆる化学ドーピングを施した材料、等を挙げることができる。
該金属酸化物としては、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)、遷移金属酸化物(ペロブスカイト型銅酸化物、SrTiOなど)等を挙げることができる。
また、アルミナセメントの構成成分の一つである12CaO・7Al(C12A7)に代表される直径が0.4nmのケージ(プラスの電荷を帯びている)に電子を包接させた構造を持つ物質は導電性を持つことが知られ、エレクトライドと総称される。そこで、該エレクトライドを微粒子に加工したものを導電性微粒子として用いてもよい。
さらには、Siに代表される窒化シリコン化合物、各種金属窒化物(TiN、WN、MoN等)、炭化珪素、各種金属炭化物(TiC,WC,MoC等)ダイヤモンド、またそれらの混合物や不定比化合物等の粒子を用いることも熱伝導の点で好ましい。
(有機導電性物質)
有機導電性物質としては、ポリアセチレン、ポリチオフェン、芳香環を有するポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレン等の有機高分子半導体物質およびそれらの混合物、共重合物、縮重合物、架橋物、および、これらの物質にヨウ素や五フッ化ヒ素などの電子受容体(アクセプタ)やアルカリ金属などの電子供与体(ドナー)等の適当な化学種を高分子に添加する、いわゆる化学ドーピングを施した材料、等を挙げることができる。該有機導電性物質の樹脂層中における形態は、微粒子であってもよいし、微粒子の形状を留めずに樹脂層中に物質として均一に分散した状態であってもよい。
樹脂層中の、導電性微粒子または有機導電性物質の含有量は、通常、50重量%以上、好ましくは、70重量%以上、通常、99.9重量%以下、好ましくは95重量%以下である。
ただし、有機導電性物質が樹脂である場合は、有機導電性物質が樹脂層の樹脂を兼ねていてもよく、その場合は樹脂層が有機導電性物質からなるものであってもよい。
(樹脂)
樹脂層に含有される樹脂としては、一般にバインダー樹脂として用いられるものが好ましく、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド(前駆体を含む)樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、ブチラール樹脂、ポリオレフィン、または、硬化剤を配合したポリオレフィン、ポリイミド、これら樹脂の混合物ないし共重合体、縮重合体、さ
らに、前記のものに硬化剤を配合したもの、等を用いることができる。特に、熱又は活性エネルギー線で硬化する樹脂であることが好ましい。
このような樹脂の重量平均分子量は、通常は、200以上、好ましくは30,000以上、通常1,000,000以下、好ましくは150,000以下である。
(樹脂層の形成)
樹脂層は、樹脂、および、導電性微粒子または有機導電性物質を含有する樹脂層形成用組成物を調製し、該組成物を成膜することにより形成されることが好ましい。
該組成物中の、導電性微粒子または有機導電性物質の含有量は、好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。
該組成物には、各種助剤が含有されていてもよい。該助剤としては、ワックス、ハロゲン化合物やアミン系化合物に代表される活性剤(ジフェニルグアニジンHBrなど)、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、カルビトール、α−テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、2−エチルヘキシルジグリコール、等の溶剤、硬化ヒマシ油、脂肪酸アミド、水素添加ヒマシ油、オキシ脂肪酸などの増粘剤(チキソトロープ剤)、還元剤、硬化剤、架橋剤、可塑剤、分散剤、湿潤剤、消泡剤、帯電防止剤、等が挙げられる。すなわち、本発明の有機電界発光素子において、該樹脂層にこれらの助剤が含有されていてもよい。
該組成物は、導電性微粒子または有機導電性物質と、前記樹脂、必要に応じて前記各種助剤を混合し、例えばジヒドロテルピネオールのような有機溶剤に溶解、攪拌、分散させて調製することが好ましい。
溶解、攪拌、分散の方法は特に限定されないが、通常、回転羽根式攪拌機、混練機、各種ミキサー、各種ニーダー、ビーズミル、等が用いられる。ただし、ビーズミル等、導電性微粒子に似た形状の分散子(メディア)を用いるときは、導電性微粒子の形状を損ねることのない条件(分散に用いるメディアの材質や粒径、回転数や流動速度等)を選定し、該メディアを分離する工程を追加することが好ましい。
また、市販されている、導電性微粒子または有機導電性物質、および樹脂を含有する導電性樹脂ペーストを該組成物として用いてもよい。
前記組成物を成膜する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等の湿式成膜法が挙げられる。また、実験室規模では、刷毛、またはスワブと呼ばれるプラスチック製の軸の先にスポンジを取り付けたものによる手塗り印刷法も利用可能であるが、規模の大小によらず、より好ましい形成方法としてはダイコート法、スクリーン印刷法が挙げられる。
この後、通常は乾燥および硬化工程に移る。乾燥工程の目的は、主として、樹脂層中に残留する溶剤をできるだけ層外に拡散、散逸させることにある。そのため、乾燥温度としては、残留している溶剤の沸点近傍にできるだけ近く設定されるが、それ以下の温度に設定しなければならないときは、乾燥時間を長くするなどの方法で調整する。
具体的には、大気または不活性ガス雰囲気に調整された対流型オーブンによる間接加熱、ホットプレート等による直接加熱、赤外線照射による直接加熱、等が挙げられる。
前記乾燥工程にかかる時間は、概ね、通常1秒以上、好ましくは10秒以上、通常10時間以下、好ましくは10分以下である。
次の硬化工程は、樹脂を、架橋、重合、縮合などの化学反応を起こさせて硬化する工程
である。具体的には、大気または不活性ガス雰囲気に調整された対流型オーブンによる間接加熱、ホットプレート等による直接加熱、赤外線照射による直接加熱、紫外線照射による光硬化等が挙げられる。
硬化温度は樹脂の選定によって適宜選ばれるが、通常10℃以上、好ましくは25℃以上、通常400℃以下、好ましくは290℃以下である。
前記硬化工程にかかる時間は、適宜選ばれるが、概ね、通常1秒以上、好ましくは10秒以上、通常10時間以下、好ましくは10分以下である。
また、前記硬化工程の雰囲気は、大気のほかに不活性ガス雰囲気が挙げられ、具体的には、窒素、アルゴン、ヘリウム、キセノンなどが挙げられ、工業的に安価である点で窒素が好ましい。
また、大気または不活性ガス雰囲気中に、微量の酸素混入によって熱処理工程を経る間に金属微粒子の表面が酸化され、電気抵抗が増大したり、熱伝導が悪化したりする点で、大気または不活性ガス雰囲気中に還元性ガスを混入させてもよく、具体的には、水素、一酸化炭素などが挙げられる。
大気または不活性ガス雰囲気中に還元性ガスが混入される場合は、好ましくは0.1vol%以上、さらに好ましくは5vol%以上、また通常100vol%以下、好ましくは10vol%以下である。
上記範囲内であると、漏洩した場合の安全性(窒息や中毒の危険性、あるいは爆発危険性の回避)の点で好ましい。
樹脂層の膜厚は、通常、0.1μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上、通常、200μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは4μm以下である。樹脂層を厚く形成すれば電気抵抗は小さくなるが、コストが上昇する。
該樹脂層は、以下に詳述する有機電界発光素子の有機薄膜上に直接または他の層を介して形成されるが、通常は有機薄膜上に形成された電極層上に形成される。この場合、有機薄膜、電極層および樹脂層は、この順に形成されていることが好ましく、これら各層間に他の層が形成されていてもよいが、電極層および樹脂層は隣接して形成されることが好ましい。
2.導電層
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、直接または他の層を介して1層または2層以上の電荷輸送層を有し、該電荷輸送層上にバンクおよび該バンクによって区画された領域を有し、該バンクによって区画された領域に1層または2層以上の有機薄膜を有する有機電界発光素子であって、該有機薄膜上に、直接または他の層を介して、導電層を有し、該導電層は、導電性微粒子および樹脂を含有する樹脂組成物を成膜し、該導電性微粒子を一体化することにより形成された層であることを特徴とする。
(樹脂組成物)
導電層は、導電性微粒子および樹脂を含有する樹脂組成物を成膜し、該導電性微粒子を一体化することにより形成された層である。
樹脂組成物に含有される導電性微粒子および樹脂は上記樹脂層に含有するものと同様であり、その具体例および好ましい例も同様である。また、樹脂組成物は、導電性微粒子を1種のみ含有していても、2種以上を含有していてもよい。また、樹脂組成物は、樹脂を1種のみ含有していても、2種以上を含有していてもよい。
ただし、導電性微粒子の大きさは、体積平均粒子径(D50)で、通常0.001μm以上、好ましくは0.5μm以上、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である
が、この樹脂組成物に用いられる場合、特に、10μmから50μmの大きさであることが好ましい。
さらに、この樹脂組成物に含有される導電性微粒子の含有量は、好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上、より好ましくは80重量%以上、好ましくは95重量%以下である。
また、この樹脂組成物に用いられる場合、樹脂の重量平均分子量は、通常は、200以上、通常1,000,000以下、好ましくは150,000以下、好ましくは30,000以下である。
また、この樹脂組成物に用いられる場合、該樹脂としては、前記樹脂層に用いられるものの他、天然松ヤニ(ロジン)または、天然ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、マレイン酸変性ロジン、水添ロジン等を用いることもできる。
この樹脂組成物には、前記樹脂層形成用組成物に含有していてもよいものとして例示したものが含有されていてもよい。また、この樹脂組成物は、上記有機導電性物質を含有していてもよい。
この樹脂組成物は、導電性微粒子と前記樹脂、必要に応じて前記各種助剤を混合し、有機溶剤に溶解、攪拌、分散させて調製することが好ましく、具体的な調製方法は、前記樹脂層形成用組成物と同様である。
(導電層の形成)
導電層は、該樹脂組成物を成膜し、導電性微粒子を一体化することにより形成される。
該樹脂組成物を、有機薄膜上に、直接または他の層を介して成膜する。成膜方法としては、上記樹脂層の成膜方法と同様である。
成膜後、導電性微粒子を一体化する。ここで、一体化とは、該導電性微粒子がその粒子形状をもはや留めずに、他の導電性微粒子と、元の導電性微粒子の表面の一部またはそのすべてを失って、該導電性微粒子個々が持っていた導電性を略保持したまま、一つの層状の塊(以後、単に「導電層」という)と見做せる状態になることをいう。
導電性微粒子が一体化する手法としては、加熱および/または活性エネルギー線の照射によることができる。
具体的には、大気または不活性ガス雰囲気に調整された対流型オーブンまたは、リフロー炉による間接加熱、赤外線照射による直接加熱等が挙げられる。
温度範囲は、通常100℃以上、好ましくは180℃以上、通常400℃以下、好ましくは280℃以下である。
一体化工程にかかる時間は、適宜選ばれるが、概ね、通常1秒以上、好ましくは10秒以上、通常10時間以下、好ましくは10分以下である。
リフロー炉による加熱を例に取れば、先ず比較的低温、即ち導電性微粒子の溶融温度に対して20から40℃低めの温度、例えば、150℃ 〜170℃の温度で30秒〜10
0秒の予備加熱を行った後、導電性微粒子の溶融温度+20〜50℃の温度で本加熱を行う、という2段階加熱方式が通常である。予備加熱は、該樹脂組成物を成膜した層の溶剤を揮散させると同時に、基板、その上に形成した層やバンク等に対するヒートショックを和らげるために行われる。
また、前記一体化工程の雰囲気は、前記硬化工程の雰囲気と同様の組成にしてもよい。
この一体化の工程を経ると、該樹脂組成物を成膜した層の樹脂の一部またはすべては、通常、前記本加熱および/または活性エネルギー線の照射の過程において、該導電性微粒子の隙間がなくなるために追い出されて、該導電層の外側に押し出されるか、あるいは、加熱の過程で分解し、該導電層の外部に排出され蒸散する。
この樹脂は、一体化の工程を経る間に、該導電層の下に存在する有機層または陰極等の、それぞれの表面に存在している物質と化学反応を起こし、導電層と該下層との間の親和性(濡れ性)を高める効果を持たせることが可能である。こうした機能を持つ樹脂を特にフラックスと呼ぶ。こうしたフラックスに浸された導電性微粒子を一体化することにより、下層との親和性が向上し、該導電層の平坦性が増すだけでなく、界面における電気抵抗となる成分も減少させることができる。
ここで、該導電層はその下の有機薄膜や他の層と直接に接触していてもよいし、有機薄膜上に形成された陰極などの電極層と接触していてもよい。特に、陰極と接触した場合には、その陰極の材料との間で合金および/または金属間化合物を形成してもよい。前記フラックスが存在しているときには、合金および/または金属間化合物が生成しやすい。このような合金および/または金属間化合物が生成したときは、界面における酸化物等がフラックスの作用で除去されるため、概ね、界面残留物に依拠する電気抵抗成分が減少する。
導電層の膜厚は、通常、通常、0.1μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上、通常、200μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは4μm以下である。
該導電層は、以下に詳述する有機電界発光素子の有機薄膜上に直接または他の層を介して形成されるが、通常は有機薄膜上に形成された電極層上に形成される。この場合、有機薄膜、電極層および導電層は、この順に形成されていることが好ましく、これら各層間に他の層が形成されていてもよいが、電極層および導電層は隣接して形成されることが好ましい。
尚、導電層、つまり上記導電性微粒子が一体化した状態は、上記の様な工程を経ることで導電性微粒子が一体化した状態と見做してよいが、測定により確認する場合には、例えば、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)または、特定の走査電子線顕微鏡に付属しているエネルギー分散型X線アナライザー(EDX)を用いて、元素の定量分析とマッピングを併用すれば判定できる。例えば、EPMAであれば、JXA-8100(日本電子社製)を用いて確認することができる。
上記機器を用いて、素子の断面を元素分析で、濃度マッピングする。その場合、例えば、0.1μm〜1μm単位で濃度測定値をマッピングし、その平均値に対して最大と最少の濃度差が±5%〜±20%以内であるときに、導電性微粒子が一体化したものとする。
尚、上記機器と同様の測定が可能であれば、測定に用いる機器は上記以外のものを用いてもよい。
3.脱水剤または乾燥剤を含有する層
本発明の有機電界発光素子は、バンクによって区画された領域に1層または2層以上の有機薄膜を有し、該有機薄膜上に、直接または他の層を介して脱水剤または乾燥剤を含有する層を有することが好ましい。これにより、従来、封止工程で脱水剤もしくは乾燥剤を別に付加していた製造方法を簡略化できるので、コスト削減が容易になり、素子寿命も向上する。
脱水剤または乾燥剤としては、ゼオライト、活性アルミナ、シリカゲル、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化ストロンチウム、水素化バリウム及び水素化アルミニウム等が挙げられ、これらの微粒子であることが好ましい(特開平6-176867号公報、特開2000−27
7254号公報参照)。
特に合成ゼオライトなどのゼオライトは、他の材料に比べて機能の点で優れているため
好ましい(特開平11−347789号公報参照)。合成ゼオライトとは、一般に下記の式で示されるものである。
20MX/n・[(AlO2)X・(SiO2)Y]・ZH2
M :原子価nの金属イオン
X+Y:単位格子当たりの四面体数
Z :水分子のモル数
使用される金属イオンはK、Na、Ca等の陽イオンである。合成ゼオライトの細孔径は、その金属陽イオンの種類によって異なり、Kイオンでは0.3nm、Naイオンでは0.4nm、Caイオンでは0.5nmである。一方、水分子径は0.27nmであり、水分子を吸着させるには0.3nm以上の細孔径が必要である。しかしながら合成ゼオライトの細孔径が0.7nmよりも太径のものは、溶剤の分子径よりも大きくなってしまうため、溶剤も侵入させてしまうようになる。
例えば、樹脂中に合成ゼオライトを添加しておくと、樹脂中に吸湿された水分だけが合成ゼオライトの細孔に侵入し、他の成分は侵入できなくなる。そして、合成ゼオライトの細孔に侵入した水分は、素子作製工程における加熱で、細孔から徐々に出てきて、蒸発し、素子の系外に放出される。
脱水剤または乾燥剤の大きさは、体積平均粒子径(D50)で、通常0.001μm以上、好ましくは0.5μm以上、通常100μm以下、好ましくは50μm以下の微粒子である。
脱水剤または乾燥剤を含有する層は、通常は樹脂を含有しており、樹脂100質量部に対し、脱水剤または乾燥剤を50〜300質量部含有していることが好ましい。該樹脂としては、上記樹脂層形成用組成物に含有される樹脂として例示したものが挙げられる。
該脱水剤または乾燥剤を含有する層は、前記本発明における樹脂層であってもよい。樹脂層に脱水剤または乾燥剤を含有させる方法は、前記樹脂層形成用組成物に含有させて成膜するなどの方法が挙げられる。
また、該脱水剤または乾燥剤は、前記本発明における導電層を形成するための樹脂組成物に含有させることにより、導電層が形成されるとともに、導電層の近傍に脱水剤または乾燥剤を含有する層を形成することができる。
また、一体化工程を経る前に、前記樹脂組成物を成膜した層上に、該脱水剤または乾燥剤を塗布、散布、堆積させることで形成することができる。
また、一体化工程を経る前または後に、該脱水剤または乾燥剤、および樹脂を含有する組成物を、前記樹脂組成物を成膜した層上に成膜し、該脱水剤または乾燥剤を含有する樹脂層を形成してもよい。
これにより、水分子が該脱水剤または乾燥剤にトラップされて該脱水剤または乾燥剤を含有する層の系外に出てくる確率が極めて小さくなる。
また、導電性微粒子の密度に比べて脱水剤または乾燥剤の密度が小さいものを選択すれば、該脱水剤または乾燥剤が、一体化工程を経た後の導電層中に混在することなく、フラックス残渣中に混在して、該導電性微粒子の一体化を阻害するようなことはない。
脱水剤または乾燥剤を含有する層は、上記樹脂層または導電層上に直接または他の層を介して形成されていることが好ましい。
<有機電界発光素子>
次に、本発明の有機電界発光素子について説明する。
本発明の有機電界発光素子は、通常は、基板上に電極層を有し、該電極層上に1層または2層以上の電荷輸送層を有する。通常は、該基板、電極層、電荷輸送層がこの順に形成されており、これらの間に他の層を有していてもよいが、隣接して形成されていることが好ましい。該基板、電極層、電荷輸送層の具体例については、下記詳述するが、電極層は陽極であっても、陰極であってもよいし、単層からなるものであっても、積層構造からなるものであってもよい。また、電荷輸送層は、少なくとも1層有していればよく、2層以上が積層されてなるものであってもよい。通常は、電荷輸送層が、2層以上積層されていることが好ましい。
まず、基板上に、直接または他の層を介して1層または2層以上の電荷輸送層を有し、該電荷輸送層上にバンクおよび該バンクによって区画された領域を有し、該バンクによって区画された領域に1層または2層以上の有機薄膜を形成するまでについて、図1を参照にして説明する。図1は、基板上に、電極層として陽極を形成し、第1の電荷輸送層として正孔注入層(図1A)、第2の電荷輸送層として正孔輸送層を形成し(図1B)、該第2の電荷輸送層上にバンクが形成される例であるが、本発明はこれに限定されるものではない(尚、図1は、陽極を省略した図となっている)。本発明において、電荷輸送層は上記のとおり、正孔注入層や正孔輸送層以外であってもよいし、1層からなるものであってもよいし、3層以上が積層されてなるものであってもよい。また電極層は、反転構造とした陰極であってもよい。
(基板)
基板としては、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
(陽極)
陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウムおよび/またはスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
陽極の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法等により行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板上に塗布することにより陽極を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板上に薄膜を形成したり、基板上に導電性高分子を塗布して陽極を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陽極の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極の厚みは任意であり、陽極は基板と一体化されたものであってもよい。また、さらには、異なる導電材料が積層されたものであってもよい。
陽極に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることは好ましい。
前記基板において、パターニングされた陽極上に有機薄膜を形成して有機電界発光素子を作製した場合、該陽極の辺縁部における素子劣化が問題の1つに挙げられる。こうした素子劣化は、該辺縁部が後述の陰極と対向した部分において顕著に現れる。この原因として挙げられるのは、該陽極と陰極に挟まれた有機薄膜に掛かる局所的な電界強度と電流密度の関係が、辺縁部では中央の平坦部と比べて極端に異なることによる。つまり、辺縁部ではその断面形状の特殊性(段差の存在)からくる電界強度の上昇とそれに伴う電流密度の増加により、局所的に有機薄膜を構成する材料の劣化が促進され、もって素子寿命がさらに短縮される結果となる。
この問題を解決する1つの方法として、該陽極上に絶縁膜を設置し、辺縁部を覆って、発光させたい領域をパターニングして電流が流れる開口を形成する方法が知られており、そうした開口を有する絶縁薄膜を「開口絶縁膜」と一般的に称している。こうすることにより辺縁部の形状特殊性からくる電界集中を排除し、電界が陽極から陰極に向かって一様に分布するようにできる。
前記絶縁膜としては、二酸化シリコン薄膜が一般的によく用いられているが、他に、酸化窒化シリコン薄膜や、ポリイミド薄膜に代表される有機薄膜を用いることもできる。
パターニングの方法としてはフォトリソグラフィー法が一般的に用いられている。また、開口を形成する方法としては、反応性イオンエッチング法の他、イオンミリング法、ウェットエッチング法などが用いられる。
さらに、開口を形成して陽極が露出した後の表面に紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることは、好ましい。
しかしながら、こうした開口絶縁膜を形成することは、素子作製工程を増やし、歩留りの低下や製造コストの押し上げといったことに影響を与えることになり、できれば無い方が好ましい。これを可能にする方法の1つに、前記バンクを開口絶縁膜として用いる方法がある。それにはバンクの平面形状として前記陽極の辺縁部を覆うように設計することで実現可能である。
特に、基板上に電荷輸送層をほぼ全面に渡って形成した上にバンクを形成した場合には、該バンクがより有効に開口絶縁膜としての機能を果たす。
(正孔注入層)
正孔注入層は、陽極上の全面(本発明において全面とは、全面およびほぼ全面であることを意味する)に形成される(図1A)。
本発明に係る正孔注入層の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔注入層を湿式成膜法により形成することが好ましい。正孔注入層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
(湿式成膜法による正孔注入層の形成)
湿式成膜により正孔注入層を形成する場合、通常は、正孔注入層を構成する材料を適切な溶剤(正孔注入層用溶剤)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を適切な手法により、陽極上に塗布して成膜し、乾燥することにより正孔注入層を形成する。
ここで、本発明において湿式成膜法とは、例えば、スピンコート法、ディップコート法
、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等湿式で成膜される方法をいう。
(正孔輸送性化合物)
正孔注入層形成用組成物は通常、正孔注入層の構成材料として正孔輸送性化合物および溶剤を含有する。
正孔輸送性化合物は、通常、有機電界発光素子の正孔注入層に使用される、正孔輸送性を有する化合物であれば、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよいが、高分子化合物であることが好ましい。
正孔輸送性化合物としては、電荷注入障壁の観点から4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、カーボン等が挙げられる。
尚、本発明において誘導体とは、例えば、芳香族アミン誘導体を例にするならば、芳香族アミンそのもの及び芳香族アミンを主骨格とする化合物を含むものであり、重合体であっても、単量体であってもよい。
正孔注入層の材料として用いられる正孔輸送性化合物は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種または2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種または2種以上とを併用することが好ましい。
上記例示した中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果による均一な発光の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)がさらに好ましい。芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(I)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
Figure 2010108927
(式(I)中、ArおよびArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar〜Arは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Yは、下記の連結基群の中から選ばれる連結基を表す。また、Ar〜Arのうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。
Figure 2010108927
(上記各式中、Ar〜Ar16は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または任意の置換基を表す。))
Ar〜Ar16の芳香族炭化水素基および芳香族複素環基としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の基が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環由来の基がさらに好ましい。
Ar〜Ar16の芳香族炭化水素基および芳香族複素環基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが好ましい。
およびRが任意の置換基である場合、該置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが挙げられる。
式(I)で表される繰り返し単位を有する芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載のものが挙げられる。
また、正孔輸送性化合物としては、ポリチオフェンの誘導体である3,4-ethylenedioxythiophene(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を高分子量ポリスチレンスルホン酸中で重合してなる導電性ポリマー(PEDOT/PSS)もまた好ましい。また、このポリマーの末端を
メタクリレート等でキャップしたものであってもよい。
正孔注入層形成用組成物中の、正孔輸送性化合物の濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜厚の均一性の点で通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、また、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると成膜された正孔注入層に欠陥が生じる可能性がある。
(電子受容性化合物)
正孔注入層形成用組成物は正孔注入層の構成材料として、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物等が挙げられる。さらに具体的には、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンダフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(国際公開第2005/089024号パンフレット);塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸
アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンダフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素;ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、ショウノウスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン等が挙げられる。
これらの電子受容性化合物は、正孔輸送性化合物を酸化することにより正孔注入層の導電率を向上させることができる。
正孔注入層或いは正孔注入層形成用組成物中の電子受容性化合物の正孔輸送性化合物に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上である。但し、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。
(その他の構成材料)
正孔注入層の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述の正孔輸送性化合物や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
(溶剤)
湿式成膜法に用いる正孔注入層形成用組成物の溶剤のうち少なくとも1種は、上述の正孔注入層の構成材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。また、この溶剤の沸点は通常110℃以上、好ましくは140℃以上、中でも200℃以上、通常400℃以下、中でも300℃以下であることが好ましい。溶剤の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。また、溶剤の沸点が高すぎると乾燥工程の温度を高くする必要があし、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
溶剤として例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレング
リコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル、等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、等が挙げられる。
その他、ジメチルスルホキシド、等も用いることができる。
これらの溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いてもよい。
(成膜方法)
正孔注入層形成用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜により、陽極上に成膜し、乾燥することにより正孔注入層を形成する。
成膜工程における温度は、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましくい。
成膜工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、通常80%以下である。
成膜後、通常加熱等により正孔注入層形成用組成物の膜を乾燥させる。加熱工程において使用する加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブンおよびホットプレートが好ましい。
加熱工程における加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り、正孔注入層形成用組成物に用いた溶剤の沸点以上の温度で加熱することが好ましい。また、正孔注入層に用いた溶剤が2種類以上含まれている混合溶剤の場合、少なくとも1種類がその溶剤の沸点以上の温度で加熱されるのが好ましい。溶剤の沸点上昇を考慮すると、加熱工程においては、好ましくは120℃以上、好ましくは410℃以下で加熱することが好ましい。
加熱工程において、加熱温度が正孔注入層形成用組成物の溶剤の沸点以上であり、かつ塗布膜の十分な不溶化が起こらなければ、加熱時間は限定されないが、好ましくは10秒以上、通常180分以下である。加熱時間が長すぎると他の層の成分が拡散する傾向があり、短すぎると正孔注入層が不均質になる傾向がある。加熱は2回に分けて行ってもよい。
(真空蒸着法による正孔注入層の形成)
真空蒸着により正孔注入層を形成する場合には、正孔注入層の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種または2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合はそれぞれ独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極上に正孔注入層を形成させる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混
合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層を形成することもできる。
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1×10−6Torr(0.13×10−4Pa)以上、通常9.0×10−6Torr(12.0×10−4Pa)以下である。蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、通常5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上で、好ましくは50℃以下で行われる。
尚、正孔注入層は、以下に説明する正孔輸送層の材料を用いて形成されるものであってもよい。例えば、正孔輸送性化合物として、以下に詳述するようなポリアリールアミン誘導体やポリアリーレン誘導体を用いてもよいし、架橋性化合物を用いてもよい。また、熱または活性エネルギー線により解離する官能基を有する化合物を用いてもよい。
(正孔輸送層)
正孔輸送層を正孔注入層上の全面に形成する(図1B)。
本発明に係る正孔輸送層の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔輸送層を湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔輸送層を形成する材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。
このような正孔輸送層の材料としては、従来、正孔輸送層の構成材料として用いられている材料であればよく、例えば、前述の正孔注入層に使用される正孔輸送性化合物として例示したものが挙げられる。また、アリールアミン誘導体、フルオレン誘導体、スピロ誘導体、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、シロール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。
また、例えば、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリアリールアミン誘導体、ポリビニルトリフェニルアミン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリアリーレン誘導体、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン誘導体、ポリアリーレンビニレン誘導体、ポリシロキサン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)誘導体等が挙げられる。これらは、交互共重合体、ランダム重合体、ブロック重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある高分子や、所謂デンドリマーであってもよい。
中でも、ポリアリールアミン誘導体やポリアリーレン誘導体が好ましい。
ポリアリールアミン誘導体としては、下記式(II)で表される繰り返し単位を含む重合体であることが好ましい。特に、下記式(II)で表される繰り返し単位からなる重合体であることが好ましく、この場合、繰り返し単位それぞれにおいて、ArまたはArが異なっているものであってもよい。
Figure 2010108927
(式(II)中、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。)
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、6員環の単環または2〜5縮合環由来の基およびこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5または6員環の単環または2〜4縮合環由来の基およびこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
溶解性、耐熱性の点から、ArおよびArは、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、ピリジン環、フルオレン環からなる群より選ばれる環由来の基やベンゼン環が2環以上連結してなる基(例えば、ビフェニル基やターフェニル基)が好ましい。
中でも、ベンゼン環由来の基(フェニル基)、ベンゼン環が2環連結してなる基(ビフェニル基)およびフルオレン環由来の基(フルオレニル基)が好ましい。
ArおよびArの置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基などが挙げられる。
ポリアリーレン誘導体としては、前記式(II)におけるArやArとして例示した置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基などのアリーレン基をその繰り返し単位に有する重合体が挙げられる。
ポリアリーレン誘導体としては、下記式(III−1)および/または下記式(III−2)からなる繰り返し単位を有する重合体が好ましい。
Figure 2010108927
(式(III−1)中、Ra、Rb、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、フェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、又はカルボキシ基を表す。tおよびsは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。tまたはsが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のRaまたはRbは同一であっても異なっていてもよく、隣接するRaまたはRb同士で環を形成していてもよい。)
Figure 2010108927
(式(III−2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、上記式(III−1)におけるRa、Rb、RまたはRと同義である。rおよびuは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。rまたはuが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のRおよびRは同一であっても異なっていてもよく、隣接するRまたはR同士で環を形成していてもよい。Xは、5員環または6員環を構成する原子または原子群を表す。)
Xの具体例としては、酸素原子、置換基を有していてもよいホウ素原子、置換基を有していてもよい窒素原子、置換基を有していてもよいケイ素原子、置換基を有していてもよいリン原子、置換基を有していてもよいイオウ原子、置換基を有していてもよい炭素原子またはこれらが結合してなる基である。
また、ポリアリーレン誘導体としては、上記式(III−1)および/または上記式(III−2)からなる繰り返し単位に加えて、さらに下記式(III−3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
Figure 2010108927
(式(III−3)中、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。vおよびwは、それぞれ独立に0または1を表す。)
Ar〜Arの具体例としては、前記式(II)における、Ar及びArと同様である。
上記式(III−1)〜(III−3)の具体例およびポリアリーレン誘導体の具体例等は、特開2008-98619号公報に記載のものなどが挙げられる。
湿式成膜法で正孔輸送層を形成する場合は、上記正孔注入層の形成と同様にして、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、湿式成膜後、加熱乾燥させる。
正孔輸送層形成用組成物には、上述の正孔輸送性化合物の他、溶剤を含有する。用いる溶剤は上記正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。また、成膜条件、加熱乾燥条件等も正孔注入層の形成の場合と同様である。
真空蒸着法により正孔輸送層を形成する場合もまた、その成膜条件等は上記正孔注入層の形成の場合と同様である。
正孔輸送層は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子受容性化合物、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
正孔輸送層はまた、架橋性化合物を架橋して形成される層であってもよい。架橋性化合物は、架橋性基を有する化合物であって、架橋することにより網目状高分子化合物を形成する。
この架橋性基の例を挙げると、オキセタン、エポキシなどの環状エーテル由来の基;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル、シンナモイル等の不飽和二重結合由来の基;ベンゾシクロブテン由来の基などが挙げられる。
架橋性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。架橋性化合物は1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で有していてもよい。
架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。正孔輸送性化合物としては、上記の例示したものが挙げられ、これら正孔輸送性化合物に対して、架橋性基が主鎖または側鎖に結合しているものが挙げられる。特に架橋性基は、アルキレン基等の連結基を介して、主鎖に結合していることが好ましい。また、特に正孔輸送性化合物としては、架橋性基を有する繰り返し単位を含む重合体であることが好ましく、上記式(II)や式(III−1)〜(III−3)に架橋性基が直接または連結基を介して結合した繰り返し単位を有する重合体であることが好ましい。
架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。
正孔輸送性化合物の例を挙げると、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等の含窒素芳香族化合物誘導体;トリフェニルアミン誘導体;シロール誘導体;オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。その中でも、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体等の含窒素芳香族誘導体;トリフェニルアミン誘導体、シロール誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが好ましく、特に、トリフェニルアミン誘導体がより好ましい。
架橋性化合物を架橋して正孔輸送層を形成するには、通常、架橋性化合物を溶剤に溶解または分散した正孔輸送層形成用組成物を調製して、湿式成膜により成膜して架橋させる。
正孔輸送層形成用組成物には、架橋性化合物の他、架橋反応を促進する添加物を含んでいてもよい。架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の重合開始剤および重合促進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物等の光増感剤;などが挙げられる。
また、さらに、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤;電子受容性化合物;バインダー樹脂;などを含有していてもよい。
正孔輸送層形成用組成物は、架橋性化合物を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下含有する。
このような濃度で架橋性化合物を含む正孔輸送層形成用組成物を正孔注入層上に成膜後、加熱および/または光などの活性エネルギー線の照射により、架橋性化合物を架橋させて網目状高分子化合物を形成する。
成膜時の温度、湿度などの条件は、前記正孔注入層の湿式成膜時と同様である。
成膜後の加熱の手法は特に限定されない。加熱温度条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下である。
加熱時間としては、通常1分以上、好ましくは24時間以下である。加熱手段としては特に限定されないが、成膜された層を有する積層体をホットプレート上に載せたり、オーブン内で加熱するなどの手段が用いられる。例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
光などの活性エネルギー線の照射による場合には、活性エネルギー線としては、化合物の化学結合に対してエネルギーを与え、その結合そのものやその化合物の高次構造に対して変化を与えうるエネルギー線、例えば、赤外線、可視光線、紫外線、X線、放射性同位元素の崩壊によるガンマ線、あるいは、電子線、イオン線、中性原子線、他の素粒子線、例えば、陽子線、中性子線、陽電子線等が挙げられる。
その発生方法や照射方法は各種存在する。例えば、エネルギー線の発生源であれば、マグネトロン、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ、LED光源、レーザ光源、金属ターゲットに高速電子線を照射するX線源、放射性同位元素の崩壊によるガンマ線源、シンクロトロン(放射光)、熱電子を高電圧で加速して得る高圧電子線源、FIB(収束イオンビーム)などがあり、照射方法も、光源から直接照射したり、狭い領域に収束させた活性エネルギー線を走査して広い領域に照射したり、活性エネルギー線を広い領域に拡大して同時に照射する方法も用いることができる。
より具体的には、前述の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。光以外の電磁エネルギー照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。
条件としては、対象となる化合物に合わせて照射線の種類や中心エネルギーを選んだり、素子構造や膜厚に合わせて、照射領域や時間を適宜選定したりする。好ましくは、変化させたい結合の結合エネルギーに合わせて線源や照射エネルギー・時間を選定する。具体的な照射時間としては、必要十分な架橋度を得るための条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
加熱および光などの活性エネルギー線の照射は、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
このようにして形成される正孔輸送層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
<バンクの形成>
上記正孔輸送層上に、バンクを形成する。バンクの形成方法は特に限定されるものではないが、フォトリソグラフィー法により形成されることが好ましく、正孔輸送層上に感光性組成物を成膜して、露光、現像することによりバンクを形成することが好ましい。また、現像後、バンクで区画された領域内に、感光性組成物の残渣が残ると、有機電界発光素子としたときの発光に影響を及ぼす場合があるため、感光性組成物を成膜する前に、親水性化合物含有組成物を成膜し下引き層を形成した後(図1C)、この上に感光性組成物を成膜し(図1D)、露光、現像に供することが好ましい(図1E)。これにより、バンクは、親水性化合物含有組成物により形成される下引き層、感光性組成物により形成される硬化物層の積層構造となる(図1F)。バンクは、このように2層または3層以上からなる積層体であってもよく、下引き層のない単層からなるものであってもよい。
(下引き層)
まず、親水性化合物含有組成物を用いて形成される下引き層について説明する。親水性化合物含有組成物は、親水性化合物を含有し、通常、さらに溶剤を含有する。
なお、以下、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の双方を含むことを意味し、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイル」なども同様の意味である。また、モノマー名の前に「(ポリ)」をつけたものは、当該「モノマー」と、その「ポリマー」との双方を含むことを意味し、「酸(無水物)」、「(無水)・・・酸」とは、「酸」とその「酸無水物」の双方を含むことを意味する。また、「酸(塩)基」とは、「酸基」とその「塩基」の双方を含むことを意味する。また、「(共)重合」とは「重合」と「共重合」の双方を含むことを意味する。また、本発明において、「全固形分」とは、組成物の構成成分のうち、溶剤を除くすべての成分を意味する。
また、本発明において、各種の樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
この下引き層の形成方法としては特に制限はないが、親水性化合物を含有する親水性化合物含有組成物を正孔輸送層上に塗布して乾燥することにより形成することが好ましい。
親水性化合物含有組成物は、感光後に重合または硬化し、その後の現像工程における現像液に対して不溶若しくは難溶の性質を獲得する感光性組成物(いわゆるネガ型フォトレジスト)を含有する親水性化合物含有組成物であってもよいし、露光部が感光によって変化し、その後の現像工程における現像液に対して易溶の性質を獲得する組成物を含む感光性組成物(いわゆるポジ型フォトレジスト)を含有する親水性化合物含有組成物であってもよい。また、特に、無機系ネガ型感光性組成物を採用してもよい。その1例としては、
ペルオキソポリタングステン酸水溶液が挙げられる。その調製方法としては、以下の文献に記載のものが挙げられる。Excimer laser exposure characteristics of inorganic resists based on peroxopolytungstic acids. Ishikawa, Akira;Okamoto, Hiroshi; Miyauchi, Katsuki; Kudo, Tetsuichi. Cent. Res. Lab., Hitachi, Ltd., Tokyo, Japan. Proceedings of SPIE-The International Society for Optical Engineering (1989), 1086(Adv. Resist Technol. Process. 6), 180-5. このような無機系感光性組成物を用いたときには、バンクで区画された領域は、界面反応の痕跡を検出することができず、該バンクを形成する以前の表面と同様に良好に保たれる。
このように下引き層が感光性を有する場合には、通常、下記詳述するバンク用レジスト層とその感光型(ネガ型またはポジ型)が一致するようにする。
本発明において、親水性化合物とは、水に溶解または膨潤する化合物である。具体的には、分子内に、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸(塩)基、ホスホン酸(塩)基、アミノ基、アミド基、4級アンモニウム塩基などの官能基を有する化合物であることが好ましい。特に、親水性化合物は、有機化合物であることが好ましく、耐性を確保するため、親水性樹脂であることが好ましい。ここで、親水性樹脂とは、上記官能基を有する樹脂であり、通常は、上記官能基を含有する単位(モノマーやポリマー)を重合や縮合して得られる樹脂をいい、重量平均分子量(Mw)が1000〜2,000,000程度の高分子材料をいう。
親水性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、膠、カゼイン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチル澱粉、サクローズオクタアセテート、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、水溶性ポリアミド、無水マレイン酸共重合体、アラビアゴム、水溶性大豆多糖類、ホワイトデキストリン、プルラン、カードラン、キトサン、アルギン酸、酵素分解エーテル化デキストリン等の他、以下親水性モノマーを用いて(共)重合された(共)重合体などが挙げられる。
親水性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、イタコン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミンもしくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、ビニルスルホン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、ビニルピロリドン、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、アミノ基もしくはそれらの塩、水酸基、アミド基およびエーテル基などから選ばれる親水性基を有するモノマーが挙げられる。
また、親水性樹脂以外の親水性化合物としては、上記親水性モノマーとして例示したものが挙げられ、これらが親水性化合物含有組成物中にモノマーのまま含有されることも好ましい。
親水性化合物としては、上記例示の中で、ビニルピロリドンの(共)重合体、(メタ)アクリル酸の(共)重合体、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類などの親水性樹脂が好ましい。
本発明で用いる親水性化合物含有組成物は、これらの親水性化合物の1種を含有してい
てもよく、2種以上を含有していてもよい。
親水性化合物は、親水性化合物含有組成物の全固形分中、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上で、100重量%以下含有されることが好ましい。
本発明に係る親水性化合物含有組成物には、上記親水性化合物の他、必要に応じて他の成分が含有されていてもよい。他の成分としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤、エチレン性不飽和化合物やその他反応性化合物、界面活性剤、フィラー、基板密着増強剤、酸やアルコールなどの現像促進剤、色材、熱重合防止剤、可塑剤、保存安定剤、表面保護剤などが挙げられる。特に、親水性化合物含有組成物中に光重合開始剤やエチレン性不飽和化合物を含有させることにより該組成物に感光性をもたせ、硬化物層と共に露光時に重合させることも、それぞれの界面での接着性を確保する意味で有用である。
この場合に用いられる光重合開始剤やエチレン性不飽和化合物としては、例えば、後述の感光性組成物に含有される光重合開始剤やエチレン性不飽和化合物として例示するものなどを用いることができる。親水性化合物含有組成物が、光重合開始剤を含有する場合、その含有量は、組成物の全固形分中、通常0.01重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。親水性化合物含有組成物がエチレン性不飽和化合物を含有する場合、その含有量は、組成物の全固形分中、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、通常80重量%以下、好ましくは50重量%以下である。
親水性化合物含有組成物に含有される溶剤としては、親水性化合物含有組成物の固形分が溶解若しくは分散可能で、均一な塗布を可能とするものであればよく特に限定されないが、水および/またはアルコール系溶剤を用いることが好ましく、特に、水および/またはアルコール系溶剤が、親水性化合物含有組成物に含まれる溶剤の主成分であることが好ましい。
親水性化合物含有組成物に用いられるアルコール系溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メチル−3−エトキシブタノール、3−メチル−3−n−プロポキシブタノール、3−メチル−3−イソプロポキシブタノール、3−メチル−3−n−ブトキシシブタノール、3−メチル−3−イソブトキシシブタノール、3−メチル−3−sec−ブトキシブタノール、3−メチル−3−tert−ブトキシシブタノール、3−メトキシブタノール等のアルコキシアルコール類が挙げられる。
なお、親水性化合物含有組成物の溶剤としては、水、アルコール系溶剤以外の溶剤であってもよく、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン等のケトン類、3−メトキシブチルアセテート、ブチルジグリコールアセテート、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類などが挙げられる。これらは単独で用いても、水やアルコール系溶剤と混合して用いてもよい。
親水性化合物含有組成物に含まれる溶剤は、水、上述のアルコール系溶剤、およびその他の溶剤から選ばれる1種のみであってもよく、2種以上の混合溶剤であってもよい。
親水性化合物含有組成物中の、全固形分濃度は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上で、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下
である。
上記親水性化合物含有組成物を、正孔輸送層上のほぼ全面に、成膜することにより下引き層を形成する際の方法としては上記の湿式成膜法が挙げられる。また、成膜後の乾燥方法としては、ホットプレート、IRオーブン、またはコンベクションオーブンを使用して乾燥させる方法が好ましい。乾燥温度としては、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、通常200℃以下、好ましくは130℃以下の温度で加熱乾燥する。また、乾燥時間としては、15秒以上が好ましく、30秒以上が好ましく、5分以下が好ましく、3分以下が好ましい。乾燥は、温度を高めず、減圧チャンバー内で乾燥を行う減圧乾燥法であってもよく、また減圧乾燥と加熱乾燥との併用でもよい。
乾燥後に得られる下引き層の膜厚は、特に限定されないが、下引き層も含んだ出来上がりのバンク高さの1/3以下が好ましく、1/4以下であることが特に好ましく、また1/200以上であることが好ましく、1/50以上であることが特に好ましい。
下引き層の具体的な膜厚は、5nm以上が好ましく、7nm以上がより好ましく、10nm以上が特に好ましく、4μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.5μm以下が特に好ましい。下引き層の膜厚がこの下限を下回ると、下引き層の効果が得られ難く、上限を上回ると、上述の如く、バンクで区画された領域内に有機薄膜が均一に形成され難くなる。また、下引き層に感光性を持たせない場合は、上層のバンク用レジスト層を保持するための製造条件、またはバンク用レジスト層の選択肢の幅が狭くなる。
(硬化物層)
正孔輸送層上または上記下引き層上のほぼ全面に感光性組成物を成膜し、露光、現像することにより、バンクを形成する。本発明では、バンクのうち、感光性組成物が現像工程後も残留して構造体を形成した部分を硬化物層という。すなわち、本発明では、露光現像前の感光性組成物により形成される層をバンク用レジスト層といい、バンク用レジスト層が露光現像により残留し、構造体、すなわちバンクを形成した状態となっているものを硬化物層という。
まず、感光性組成物について説明する。感光性組成物は、通常、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤および溶剤を含有する。さらに、バインダー樹脂、架橋剤、表面改質剤、撥インク性成分等を含有することが好ましい。また、着色剤、塗布性向上剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、エポキシ化合物、その他の樹脂等を適宜配合することができる。
(エチレン性不飽和化合物)
本発明において、エチレン性不飽和化合物とは、エチレン性不飽和結合を分子内に1個以上有する化合物を意味する。重合性、架橋性、露光部と非露光部の現像液溶解性の差異を拡大できる等の点から、エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物であることが好ましい。特に、そのエチレン性不飽和結合は(メタ)アクリロイルオキシ基に由来する(メタ)アクリレート化合物が更に好ましい。
感光性組成物中のエチレン性不飽和化合物の含有割合は、全固形分に対して通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下である。下限を下回ると、露光の際に充分な感度が得られない恐れがあり、上限を上回ると好ましいバンク形状を確保できない恐れがある。
感光性組成物中に、エチレン性不飽和化合物は、1種のみ含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。2種以上が含まれる場合、上記含有割合は2種以上の合計を表す。
エチレン性不飽和結合を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不
飽和カルボン酸、およびそのアルキルエステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、スチレン等が挙げられる。
エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル類、(メタ)アクリロイルオキシ基含有ホスフェート類、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とポリイソシアネート化合物とのウレタン(メタ)アクリレート類、および、(メタ)アクリル酸またはヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とポリエポキシ化合物とのエポキシ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
エチレン性不飽和化合物としては、不飽和カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル類またはヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とポリイソシアネート化合物とのウレタン(メタ)アクリレート類が好ましく、不飽和カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル類がより好ましく、中でもペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等5官能以上の不飽和カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル類が特に好ましい。
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、活性光線によりエチレン性不飽和化合物のエチレン性不飽和結合を重合させる化合物であれば特に限定されるものではなく、公知の光重合開始剤を用いることができる。
感光性組成物中の光重合開始剤の含有割合としては、全固形分に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上であり、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。下限を下回ると、硬化性が低下する場合があり、上限を上回ると基板に対する密着性が低下する場合がある。
エチレン性不飽和化合物に対する光重合開始剤の配合比としては、(エチレン性不飽和化合物)/(光重合開始剤)(重量比)の値として、通常1/1〜100/1、好ましくは2/1〜50/1である。エチレン性不飽和化合物と光重合開始剤との配合比がこの範囲を逸脱すると、密着性や硬化性が低下する場合がある。
感光性組成物中に、光重合開始剤は、1種のみ含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。2種以上が含まれる場合、上記含有割合は2種以上の合計を表す。
光重合開始剤として具体的には、ハロメチル化トリアジン誘導体、ハロメチル化オキサジアゾール誘導体、ヘキサアリールビイミダゾール誘導体、ベンゾインアルキルエーテル類、アントラキノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、安息香酸エステル誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アンスロン誘導体、チタノセン誘導体、オキシムエステル系化合物などが挙げられる。
その他、本発明で用いることができる光重合開始剤としては、ファインケミカル、1991年3月1日号、Vol.20、No.4,p16〜p26や、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特公昭45−37377号公報、特開昭58−40302号公報、特開平10−39503号公報等に記載されているものが挙げられる。
光重合開始剤には、感度向上を目的として、水素供与性化合物や熱重合開始剤を併用してもよい。この場合、感光性組成物中における、水素供与性化合物や熱重合開始剤の含有割合は、光重合開始剤の一部として考える。光重合開始剤と水素供与性化合物と熱重合開始剤との併用割合としては、光重合開始剤に対して、水素供与性化合物または熱重合開始剤を5〜300重量%とすることが好ましい。
水素供与性化合物としては、メルカプト基含有化合物、多官能チオール化合物、フェニ
ルグリシン、フェニルアラニンなどのアンモニウム塩またはナトリウム塩誘導体、フェニルアラニンのエステル誘導体などが挙げられる。また、熱重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物、過酸化水素等が挙げられる。
(溶剤)
溶剤としては、特に制限はないが、水あるいは有機溶剤が挙げられる。溶剤は1種を単独でもしくは2種以上を混合して使用することができる。
有機溶剤としては、グリコールモノアルキルエーテル類、グリコールジアルキルエーテル類、グリコールアルキルエーテルアセテート類、グリコールジアセテート類、アルキルアセテート類、エーテル類、ケトン類、1価又は多価アルコール類、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、芳香族炭化水素類、鎖状又は環状エステル類、アルコキシカルボン酸類、ハロゲン化炭化水素類、エーテルケトン類、ニトリル類等が挙げられる。
上記に該当する市販の溶剤としては、ミネラルスピリット、バルソル#2、アプコ#18ソルベント、アプコシンナー、ソーカルソルベントNo.1及びNo.2、ソルベッソ#150、シェルTS28 ソルベント、カルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ジグライム(いずれも商品名)などが挙げられる。
上記溶剤は、感光性組成物中の各成分を溶解または分散させることができるもので、感光性組成物の使用方法に応じて選択されるが、沸点が60〜280℃の範囲のものを選択することが好ましい。より好ましくは70℃以上、260℃以下であり、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−1−ブチルアセテート、イソプロパノール等が好ましい。
溶剤は、感光性組成物溶液中の全固形分の割合が、通常10重量%以上、好ましくは15重量%以上、通常90重量%以下、好ましくは50重量%以下となるように使用されることが好ましい。感光性組成物中の全固形分濃度がこの下限を下回ると、均一な塗膜が得られない恐れがあり、上限を上回ると必要な膜厚に制御できない恐れがある。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、現像液で現像可能な樹脂であれば特に限定されないが、現像液としてアルカリ現像液が好ましいため、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル酸系樹脂、エチレン性不飽和基とカルボキシ基とを含有する樹脂、変性ノボラック樹脂、カルボキシ基含有ウレタン樹脂、変性エポキシ樹脂、変性ノボラック樹脂、カルド樹脂、等が好適に用いられるが、各種エチレン性不飽和基とカルボキシ基とを含有する樹脂が特に好ましい。
バインダー樹脂の含有割合は、全固形分に対して、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。下限を下回ると、バンクの形状確保が困難となる場合があり、上限を上回ると、感度や現像性の低下を招く場合がある。
感光性組成物中に、バインダー樹脂は、1種のみ含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。2種以上が含まれる場合、上記含有割合は2種以上の合計を表す。
バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜100,000の範囲が好ましい。重量平均分子量が1,000未満の場合は均一な塗布膜を得るのが難しく、また、100,000を超える場合は現像性が低下する傾向がある。
以下、アクリル酸系樹脂、エチレン性不飽和基とカルボキシ基とを含有する樹脂、変性
ノボラック樹脂について説明する。
[A]アクリル酸系樹脂
アクリル酸系樹脂としては、アルカリ可溶性を確保するために側鎖または主鎖にカルボキシ基またはフェノール性水酸基を有する単量体由来の構成成分を含むことが好ましく、高アルカリ性溶液での現像が可能な樹脂が好ましい。
例えば、(メタ)アクリル酸系(共)重合体またはカルボキシ基を有する(メタ)アクリル酸系樹脂(中でも(メタ)アクリル酸エステルを含む(共)重合体)であることが好ましい。これらのアクリル酸系樹脂は、種々の単量体と組合せて性能の異なる共重合体を得ることができ、かつ、製造方法が制御し易い利点がある。
[B]エチレン性不飽和基とカルボキシ基を含有する樹脂
エチレン性不飽和基とカルボキシ基とを含有する樹脂としては、公知のエチレン性不飽和基とカルボキシ基とを少なくとも一つずつ有する樹脂の1種または2種以上を用いることが好ましい。
このような樹脂としては、アルカリ現像性等の面から、側鎖にエチレン性不飽和基を有するカルボキシ基含有ビニル系樹脂、酸変性型エポキシ(メタ)アクリレートが好適である。
側鎖にエチレン性不飽和基を有するカルボキシ基含有ビニル系樹脂としては、カルボキシ基含有ビニル系樹脂とエポキシ基含有不飽和化合物との反応生成物、2種以上の不飽和基を有する化合物と不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、E−R−N−T樹脂等が挙げられる。尚、E−R−N−T樹脂とは、(E)成分:エポキシ基含有(メタ)アクリレートを5〜90モル%と、(R)成分:(E)成分と共重合し得る他のラジカル重合性化合物を10〜95モル%とを共重合し、得られた共重合体に含まれるエポキシ基の10〜100モル%に、(N)成分:不飽和一塩基酸を付加し、この(N)成分を付加したときに生成する水酸基の10〜100モル%に、(T)成分:多塩基酸無水物を付加して得られる樹脂である。
酸変性型エポキシ(メタ)アクリレートとしては、エポキシ樹脂のα,β−不飽和基含有カルボン酸付加体に、多価カルボン酸および/またはその無水物が付加された、不飽和基およびカルボキシ基含有エポキシ樹脂が挙げられる
[C]変性ノボラック樹脂
変性ノボラック樹脂は、ノボラック樹脂の1種または2種以上と不飽和基含有エポキシ化合物の1種または2種以上を反応させ、この反応物の水酸基にさらに多塩基酸および/またはその無水物の1種または2種以上を付加させることで得られる樹脂である(ただし、ノボラック樹脂の代りにレゾール樹脂を用いてもよい。)。
(アミノ化合物)
アミノ化合物を架橋剤として用いることができる。感光性組成物中の架橋剤の含有割合としては、全固形分に対して、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下である。また、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上である。上限を上回ると、感光性組成物の保存安定性が悪化する可能性がある。また、下限を下回ると硬化促進効果が期待できない。アミノ化合物としては、例えば、官能基としてメチロール基、それを炭素数1〜8のアルコール縮合変性したアルコキシメチル基を少なくとも2個有するアミノ化合物が挙げられる。
(表面改質剤、現像改良剤)
表面改質剤あるいは現像改良剤としては、例えば公知の、カチオン性、アニオン性、ノニオン性、フッ素系、シリコン系界面活性剤を用いることができる。また、現像改良剤と
して、有機カルボン酸或いはその無水物など公知のものを用いることもできる。また、その含有量は、感光性組成物の全固形分に対して、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
(撥インク性成分)
本発明において、撥インク性成分は、バンクで区画された領域内に形成される有機薄膜を形成するインクをはじく性質を有する成分であり、撥インク性成分を含有することにより、該インクのバンクに対する接触角が20°以上、より好ましくは30°以上、特に好ましくは45°以上となることである。撥インク性成分としては、バンクに撥インク性を持たせる効果があるものであればよく、特に限定されないが、フッ素含有化合物やシリコン含有化合物が挙げられるが、フッ素含有化合物が好ましい。
フッ素含有化合物としては、パーフルオロアルキル基を含む化合物(パーフルオロアルキル基含有化合物)が好ましく、例えば、特開平7−35916号公報、特開平11−281815号公報、国際公開2004−042474号パンフレット、特開2005−60515号公報、特開2005−315984号公報、特開2006−171086号公報等に開示されている撥液性化合物などの他、BYK−340(ビッグケミー社製)、モディパーF200、F600、F3035(以上、日油社製)フタージェントMシリーズ、Sシリーズ、Fシリーズ、Gシリーズ、Dシリーズ、オリゴマーシリーズ(以上、ネオス社製)、ユニダイン(ダイキン工業社製)、トリフロロプロピルトリクロロシラン(信越シリコーン社製)、サーフロンS−386(AGCセイミケミカル社製)等の市販品や、パーフルオロ基含有アクリルモノマーを成分として共重合した樹脂等も挙げられる。さらには安全性に懸念がある炭素数が6を超えるパーフルオロアルキル基を回避できるパーフルオロポリエーテル基などを含む化合物等も有効である。
また、フッ素含有化合物としては、フッ素化エポキシ樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、フッ素化ポリアミド樹脂、フッ素化ポリウレタン樹脂、フッ素化シロキサン樹脂およびそれらの変性樹脂なども用いることができる。
また、架橋性基を有するフッ素含有化合物も現像処理の際に流れ出る可能性が低いので好ましい。この架橋性基を有するフッ素含有化合物としては、例えばメガファックRS−101、RS−102、RS−105、RS−401、RS−402、RS−501、RS−502(以上、DIC社製)、オプツールDAC(ダイキン工業社製)、パーフルオロ(メタ)アクリレート、パーフルオロジ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
感光性組成物中のフッ素含有化合物の含有割合は、フッ素含有化合物のフッ素含有量によっても異なり、フッ素含有量(フッ素含有化合物のフッ素濃度)が10重量%以上の場合は、感光性組成物の全固形分に対して、フッ素含有化合物の含有割合は0.001重量%以上が好ましく、0.05重量%以上がより好ましく、10重量%以下が好ましく、6重量%以下がより好ましい。フッ素含有量が10重量%より少ない場合、フッ素含有化合物の含有割合は感光性組成物の全固形分に対して0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、70重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましい。下限を下回ると、バンクの撥液性が不十分で混色してしまう場合があり、上限を上回ると現像性の確保が困難となる場合がある。
感光性組成物中に、フッ素含有化合物は、1種のみ含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。2種以上が含まれる場合、上記含有割合は2種以上の合計を表す。
(着色剤)
着色剤としては、顔料、染料等公知の着色剤を用いることができる。また、例えば、顔料を用いる際に、その顔料が凝集したりせずに安定して感光性組成物中に存在できるよう
に、公知の分散剤や分散助剤が併用されてもよい。特にバンクを黒色に着色することで、鮮明な画素が得られる効果がある。黒色着色剤としては黒色染料や、カーボンブラック、チタンブラックなどの他、有機顔料を混合させて黒く着色することも黒く着色することも低反射率を持たせる効果として有効である。
着色剤の含有量としては感光性組成物の全固形分に対して、通常60重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
(重合禁止剤、酸化防止剤)
感光性組成物には、安定性向上の観点等から、ハイドロキノン、メトキシフェノール等の重合禁止剤や、2,6−ジ−tert−ブチル−4−クレゾール(BHT)等のヒンダードフェノール系の酸化防止剤を含有する事が好ましい。その含有量としては、感光性組成物の全固形分に対して、通常5ppm以上1000ppm以下、好ましくは10ppm以上600ppm以下の範囲である。下限を下回ると、安定性が悪化する傾向となる。上限を上回ると、例えば光および/または熱による硬化の際に、硬化が不十分となる可能性がある。
(シランカップリング剤)
感光性組成物には、基板との密着性を改善するため、シランカップリング剤を添加することも好ましい。シランカップリング剤の種類としては、エポキシ系、メタクリル系、アミノ系、イミダゾール系等種々の物が使用できる。その含有割合は、感光性組成物の全固形分に対して、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下である。
(エポキシ化合物)
感光性組成物には、硬化性や基板との密着性を改善するため、エポキシ化合物を添加することも好ましい。
エポキシ化合物としては、所謂エポキシ樹脂の繰返し単位を構成する、ポリヒドロキシ化合物とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエーテル化合物、ポリカルボン酸化合物とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル化合物、および、ポリアミン化合物とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシエポキシ化合物の含有量としては、感光性組成物の全固形分に対して、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下である。上限を上回ると、感光性組成物の保存安定性が悪化する可能性がある。
(感光性組成物の塗布)
上述のような感光性組成物を、下引き層上に塗布して、バンク用レジスト層を形成する際の塗布方法としては、上記湿式成膜法が挙げられる。中でも、ダイコート法が好ましい。
感光性組成物の塗布量は、乾燥膜厚として、下引き層も含めたバンクの高さが通常0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは1μm以上、通常10μm以下、好ましくは9μm以下、より好ましくは7μm以下のような膜厚となる量である。この際、乾燥膜厚あるいは最終的に形成されたバンクの高さが、基板全域に渡って均一であることが重要である。このばらつきが大きい場合には、有機薄膜をパターニングした基板にムラ欠陥を生ずることとなる。
(乾燥)
下引き層上に感光性組成物を塗布した後の乾燥は、ホットプレート、IRオーブン、またはコンベクションオーブンを使用することが好ましい。
乾燥条件は、感光性組成物の溶剤成分の種類、使用する乾燥機の性能などに応じて適宜選択することができ、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、通常130℃以下、好ましくは110℃以下の温度で乾燥する。また、乾燥時間としては、15秒以上が好ましく
、30秒以上が好ましく、5分以下が好ましく、3分以下が好ましい。乾燥温度が低過ぎたり乾燥時間が短い場合には十分に乾燥を行うことができず感度が不安定となり、乾燥温度が高過ぎたり、乾燥時間が長過ぎると、生産性低下や、基板、その他の層の熱劣化の問題があり、好ましくない。
なお、乾燥は、温度を高めず、減圧チャンバー内で乾燥を行う減圧乾燥法であってもよく、また加熱乾燥との併用でもよい。
{バンク形成工程}
上述のように下引き層の上に、撥インク性成分を含有する感光性組成物を全面塗布、乾燥することでバンク用レジスト層を形成した後、露光マスクを用いてバンクパターンを露光し、さらに非画像部を下引き層と共に現像処理で除去することにより、バンクを形成する。
(露光)
露光は、感光性組成物を塗布、乾燥して形成されたバンク用レジスト層上に、ネガの露光マスク(マスクパターン)を重ね、この露光マスクを介し、紫外線または可視光線等の光活性線の光源を照射して行う。このように露光マスクを用いて露光を行う場合には、露光マスクをバンク用レジスト層に近接させる方法や、露光マスクをバンク用レジスト層から離れた位置に配置し、該露光マスクを介した露光光を投影する方法によってもよい。また、露光マスクを用いないレーザー光による走査露光方式によってもよい。
この際、必要に応じ、酸素によるバンク用レジスト層の感度の低下を防ぐため、脱酸素雰囲気下で行ったり、バンク用レジスト層上にポリビニルアルコール層などの酸素遮断層を形成した後に露光を行ってもよい。
上記の露光に使用される光源は、特に限定されるものではない。光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、蛍光ランプなどのランプ光源や、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー、青紫色半導体レーザー、近赤外半導体レーザーなどのレーザー光源などが挙げられる。特定の波長の光を照射して使用する場合には、光学フィルタを利用することもできる。
光学フィルタとしては、例えば薄膜で露光波長における光透過率を制御可能なタイプでもよく、その場合の材質としては、例えばCr化合物(Crの酸化物、窒化物、酸窒化物、フッ化物など)、MoSi、Si、W、Al等が挙げられる。
露光量としては、通常、1mJ/cm以上、好ましくは5mJ/cm以上、より好ましくは10mJ/cm以上であり、通常300mJ/cm以下、好ましくは200mJ/cm以下、より好ましくは150mJ/cm以下である。
また、近接露光方式の場合には、露光対象とマスクパターンとの距離としては、通常10μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは75μm以上であり、通常500μm以下、好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下である。
(現像)
上記の露光を行った後、現像することで、画像パターンを形成することができる。現像に用いる現像液としては、限定されるものではないが、アルカリ性化合物の水溶液や有機溶剤を用いることが好ましい。
現像液には、さらに界面活性剤、緩衝剤、錯化剤、染料または顔料を含ませることができる。
アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭
酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、水酸化アンモニウムなどの無機アルカリ性化合物や、モノ−・ジ−またはトリエタノールアミン、モノ−・ジ−またはトリメチルアミン、モノ−・ジ−またはトリエチルアミン、モノ−またはジイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノ−・ジ−またはトリイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリンなどの有機アルカリ性化合物が挙げられる。これらのアルカリ性化合物は、2種以上の混合物であってもよい。
なお、本発明においては、素子性能への悪影響が少ない点で現像液として、有機アルカリ性化合物の水溶液を用いることが好ましい。
この場合、この有機アルカリ水溶液の有機アルカリ性化合物濃度は過度に高濃度であるとバンクにダメージを与える可能性があり、過度に低濃度であると充分な現像性が確保できない可能性がある。
有機溶剤としては、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよく、また水溶液として用いてもよい。
例えば、TMAH等の有機アルカリ0.05〜5重量%と、エチルアルコール等のアルコール類0.1〜20重量%を含む水溶液として用いてもよい。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤;アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキルスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類などのアニオン性界面活性剤;アルキルベタイン類、アミノ酸類などの両性界面活性剤:が挙げられる。
現像処理の方法については特に制限は無いが、通常10℃以上、好ましくは15℃以上、通常50℃以下、好ましくは45℃以下の現像温度で、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法により行われる。
現像の際、非画像部の下引き層はバンク用レジスト層とともに除去される。従って、非画像部にバンク用レジスト層及び下引き層は残留せず、非画像部には、下引き層の下層の基板または他の層が表出する。ここで、非画像部とは、露光、現像により除去される部分であって、バンクとして残る以外の部分をいう。また、露光する前の感光性組成物を成膜して得られる層をバンク用レジスト層とよび、露光後はこれを硬化物層とよぶ。
下引き層は硬化物層と基板との界面に存在し、下引き層と硬化物層は完全に一体化したバンクを形成するが、感光性組成物の塗布時に下引き層は膜を維持しており、通常は、バンク形成後も二層になっている様子が観察される。下引き層は、親水性化合物を含有することが好ましい。また、硬化物層は撥インク性成分を含有することが好ましく、この場合、撥インク性成分は硬化物層の内部にあってもよいが、撥インク性を示すためには、表面に存在していることが好ましい。
(追露光および熱硬化処理)
現像の後、必要により上記の露光方法と同様な方法により追露光を行ってもよく、また熱硬化処理を行ってもよい。
追露光の条件としては、上記露光条件と同様である。
熱硬化処理条件の温度は、通常100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上、通常280℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下であり、時間は、通常5分以上、好ましくは20分以上、通常60分以下である。特に、撥液性の発現には、熱硬化処理を200〜240℃で20〜60分程度実施することが好ましい。
(有機薄膜の形成)
本発明の有機電界発光素子は、バンクによって区画された領域(以下、バンク区画領域内という場合がある。)に、1層または2層以上の有機薄膜を有することを特徴とする。
バンク区画領域内に形成される有機薄膜は、1層であっても、2層以上であってもよいが、少なくとも1層は発光層であることが好ましい。また、発光層は、最下層、すなわち、バンクが形成された電荷輸送層に接する層であることが好ましい。
発光層以外の層としては、有機電界発光素子の電極層の間(すなわち、陽極と陰極の間)に形成される層であればよい。
また、発光層は、通常、バンク区画領域内にRGBなどの色ごとに区画されて形成されるが、その他の有機薄膜は、バンクとバンク区画領域とに連続して、基板に対して全面に形成されるものであってもよい。
本発明の有機電界発光素子は、該バンクによって区画された領域内に1層または2層以上の有機薄膜が形成されている。
バンクで区画された領域内に有機薄膜を形成させるには、通常、有機薄膜の成分を溶剤に溶解または分散させたインクをバンク区画領域内に供給して乾燥させる(図1G)。
このインクをバンク区画領域内に供給させる方法は特に限定されないが、インクジェット法(液滴吐出法)やノズルプリント法(液流吐出法)といったインク吐出型の塗布法が好ましく(特開昭59−75205号公報、特開昭61−245106号公報、特開昭63−235901号公報)、特にインクジェット法が好ましい。
インク吐出型の塗布法に用いられるインクの溶剤としては、高沸点溶剤成分を比較的多く添加することにより、ノズルの乾燥を防止することが一般的に知られており、溶剤の選定にはこれらを考慮した上で最適な溶剤を選定することが好ましい。
また、特に、インクジェット法の場合、20plの液滴サイズで被塗布面に着滴させたとき、着滴後1分経過後の液滴径が100〜400μmのような溶剤であることが好ましく、さらに好ましくはこの液滴径は150〜300μmである。これにより、膜厚ムラやピンホールの発生を防止し、かつ端部の直線性を確保することができる。
バンク区画領域内にインクを供給した後は、乾燥工程によって有機薄膜を形成させるが、この乾燥条件は公知の方法を自由に選定することができ、例えばホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブンなどが挙げられる。また、温度を高めず、減圧チャンバー内で乾燥を行う、減圧乾燥法を組み合わせてもよい。またその環境は、形成させる有機薄膜の特性に応じて、大気中、Nガス中、減圧中などを選定できる。
(発光層)
発光層は、その構成材料として、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔輸送の性質を有する化合物(正孔輸送性化合物)、あるいは、電子輸送の性質を有する化合物(電子輸送性化合物)を含有する。発光材料をドーパント材料として使用し、正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物などをホスト材料として使用してもよい。発光材料については特に限定はなく、所望の発光波長で発光し、発光効率が良好である物質を用いればよい。更に、発光層は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。なお、湿式成膜法で発光層を形成する
場合は、何れも低分子量の材料を使用することが好ましい。
(発光材料)
発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。また、青色は蛍光発光材料を用い、緑色や赤色は燐光発光材料を用いるなど、組み合わせて用いてもよい。
なお、溶剤への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることが好ましい。
以下、発光材料のうち蛍光発光材料の例を挙げるが、蛍光色素は以下の例示物に限定されるものではない。
青色発光を与える蛍光発光材料(青色蛍光色素)としては、例えば、ナフタレン、ペリレン、ピレン、クリセン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼンおよびそれらの誘導体等が挙げられる。
緑色発光を与える蛍光発光材料(緑色蛍光色素)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、Al(CNO)などのアルミニウム錯体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光発光材料(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光発光材料(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
錯体の配位子としては、(ヘテロ)アリールピリジン配位子、(ヘテロ)アリールピラゾール配位子などの(ヘテロ)アリール基とピリジン、ピラゾール、フェナントロリンなどが連結した配位子が好ましく、特にフェニルピリジン配位子、フェニルピラゾール配位子が好ましい。ここで、(ヘテロ)アリールとは、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
燐光発光材料として、具体的には、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
発光材料として用いる化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。発光材料の分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、或いはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジ
ー変化を来したりする場合がある。一方、発光材料の分子量が大き過ぎると、有機化合物の精製が困難となってしまったり、溶剤に溶解させる際に時間を要したりする傾向がある。
なお、上述した発光材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
発光層における発光材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05重量%以上、通常35重量%以下である。発光材料が少なすぎると発光ムラを生じる可能性があり、多すぎると発光効率が低下する可能性がある。なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
(正孔輸送性化合物)
発光層には、その構成材料として、正孔輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、正孔輸送性化合物のうち、低分子量の正孔輸送性化合物の例としては、前述の正孔注入層における正孔輸送性化合物として例示した各種の化合物のほか、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence, 1997年, Vol.72−74, pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications,1996年,pp.2175)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals,1997年,Vol.91,pp.209)等が挙げられる。
なお、発光層において、正孔輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
発光層における正孔輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、通常65重量%以下である。正孔輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の正孔輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
(電子輸送性化合物)
発光層には、その構成材料として、電子輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、電子輸送性化合物のうち、低分子量の電子輸送性化合物の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)等が挙げられる。なお、発光層において、電子輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
発光層における電子輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、通常65重量%以下である。電子輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性
がある。なお、2種以上の電子輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
発光層は上述のとおり、バンク区画領域内に形成され、特にインクジェット法により形成されることが好ましい。この場合、上記材料を適切な溶剤に溶解させて発光層形成用組成物を調製し、それを用いて成膜することにより形成する。
発光層を本発明に係る湿式成膜法で形成するための発光層形成用組成物に含有させる発光層用溶剤としては、発光層の形成が可能である限り任意のものを用いることができる。発光層用溶剤の好適な例は、上記正孔注入層形成用組成物で説明した溶剤と同様である。
発光層を形成するための発光層形成用組成物に対する発光層用溶剤の比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.01重量%以上、通常70重量%以下、である。なお、発光層用溶剤として2種以上の溶剤を混合して用いる場合には、これらの溶剤の合計がこの範囲を満たすようにする。
また、発光層形成用組成物中の発光材料、正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物等の固形分濃度としては、通常0.01重量%以上、通常70重量%以下である。この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると膜に欠陥が生じる可能性がある。
発光層形成用組成物を湿式成膜後、得られた塗膜を乾燥し、溶剤を除去することにより、発光層が形成される。具体的には、上記正孔注入層の形成において記載した方法と同様である。湿式成膜法の方式は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されず、前述のいかなる方式も用いることができる。
発光層の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。発光層の膜厚が、薄すぎると膜に欠陥が生じる可能性があり、厚すぎると駆動電圧が上昇する可能性がある。
(その他の層)
以下、上記説明した、正孔注入層、正孔輸送層および発光層以外の、有機電界発光素子の電極層の間(すなわち、陽極と陰極の間)に形成される層および陰極について説明する。これら電極層の間に形成される層は、電荷輸送層として用いられてもよいし、バンク区画領域内に形成される有機薄膜として用いられてもよい。
もちろん、正孔注入層、正孔輸送層および発光層もまた、電荷輸送層として用いられてもよいし、バンク区画領域内に形成される有機薄膜として用いられてもよい。
{正孔阻止層}
発光層と後述の電子注入層との間に、正孔阻止層を設けてもよい。正孔阻止層は、発光層の上に、発光層の陰極側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層は、陽極から移動してくる正孔を陰極に到達するのを阻止する役割と、陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送する役割とを有する。
正孔阻止層を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニル
イル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号公報に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層の材料として好ましい。
なお、正孔阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
正孔阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
{電子輸送層}
発光層と後述の電子注入層の間に、電子輸送層を設けてもよい。
電子輸送層は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる化合物より形成される。
電子輸送層に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極または電子注入層からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
なお、電子輸送層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子輸送層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
電子輸送層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
{電子注入層}
電子注入層は、陰極から注入された電子を効率良く発光層へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられ、その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270
171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は、通常、5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
なお、電子注入層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子注入層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
{陰極}
陰極は、発光層側の層に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極の材料としては、前記の陽極に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属またはそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
なお、陰極の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
陰極の膜厚は、通常、陽極と同様である。
さらに、低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
本発明に係る有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極と陰極との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
{樹脂層/導電層}
通常は、この陰極などの電極層を形成した後に、本発明の特徴である上記樹脂層または導電層を形成する(図1H)。しかしながら、樹脂層または導電層を形成するための組成物を適切に選択すれば、該陰極の形成工程は必ずしも必要ではない。
樹脂層または導電層の具体例および形成方法は上述の通りである。
{脱水剤または乾燥剤を含有する層}
上記有機薄膜上に、直接または他の層を介して、好ましくは樹脂層または導電層上に、脱水剤または乾燥剤を含有する層を形成することが好ましい(図1I)。
脱水剤または乾燥剤を含有する層の具体例および形成方法は上述の通りである。
{第2の基板}
上記有機薄膜上に、直接または他の層を介して、第2の基板を形成することができる。
第二の基板は、好ましくは樹脂層または導電層上に形成することが好ましく、上記脱水剤または乾燥剤を含有する層を有する場合は、該脱水剤または乾燥剤を含有する層上に形成することが好ましい。
第2の基板は、電気抵抗を下げる補助電極、及び/又は熱伝導を高める放熱板として働く。
上記第2の基板には、金属粒子、金属糸、該金属粒子又は金属糸の焼結体、又は金属板を含有させることで、上記第2の基板としての性能を持たせることもできる。
ここで、粒子とは、3次元空間における独立した3方向へ投影した断面積の最大値と最小値の比が略2倍以下で、且つ、断面の最長が略10原子長(原子としては代表的には水素を選択することができ、その長さを共有結合半径の2倍と取ると略74pmである)以上、略1mm以下のものを指す。金属粒子を製造する方法としては、特に制限はなく公知の手法を用いてもよいが、例えば、金属塊を粉砕する方法、又は、溶融して液体状態とした金属塊を噴霧してミスト状の液滴金属を冷却する方法などが挙げられる。また、気化または蒸発が容易である金属は、真空中で化学反応させる方法、又はアーク放電した真空中に金属を導入する方法などが挙げられる。
糸とは、断面の垂直方向の長さが、断面積の平方根の略2倍以上であり、かつ断面の最長が略2原子長(原子としては代表的には炭素を選択することができ、その長さを共有結合半径の2倍と取ると略154pmである)以上、略1mm以下のものを指す。
焼結体とは、上記粒子又は、糸を断面積の平方根の略100倍ないし1000倍以下の長さに短くしたものを、仮成型後、焼成したものを指す。焼結体には、バインダー樹脂などを含んでいてもよい。焼結体を製造する方法は特に制限はなく、公知の手法を用いてもよい。
また、金属板は、素金属塊から鋳造する方法など、通常の方法で形成することができる。
そして、上記金属粒子、上記金属糸、該金属粒子又は金属糸の焼結体、又は上記金属板の、常温での体積抵抗は、1x10−10Ω・cm以上、1x10Ω・cm以下でかつ、常温における熱伝導率が、1x10−2W/(m・K)以上、1x10W/(m・K)以下である。
前記金属粒子または糸、またはその焼結体、または該金属板の、常温における体積抵抗は、通常1x10−10Ω・cm以上、また通常1x10Ω・cm以下、好ましくは1x10−3Ω・cm以下、さらに好ましくは1x10−5Ω・cm以下である。
また、前記金属粒子または糸、またはその焼結体、または該金属板の、常温における熱伝導率は、通常1x10−2w/(m・K)以上、好ましくは1x10w/(m・K)以上、さらに好ましくは1x10w/(m・K)以上、また通常1x10w/(m・K)以下である。
上記範囲内であると、補助電極として電気抵抗を下げることが可能となるか、または熱伝導性が向上するため素子の発光効率の向上、駆動電圧の低減、素子寿命の延長効果の面で好ましい。
上記金属粒子、金属糸、該金属粒子又は金属糸の焼結体、又は金属板を形成するための材料としては、上記性能を満たすものであれば特に制限はないが、例えば、前記導電性微粒子の例として挙げた、ゼロギャップ半導体であるグラファイト、リン(P)またはボロン(B)が高濃度にドープされた高純度シリコン(Si)、あるいは、ガリウム(Ga)またはアンチモン(Sb)が高濃度にドープされたゲルマニウム(Ge)、グラファイトインターカレーション(Intercalation)化合物、フラーレン、フラーレン誘導体、半導
体性カーボンナノチューブ、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)を代表とする単体において金属と呼ばれる物質(貴金属、卑金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属等)、または鉛錫(Pb37Sn63)共晶ハンダを代表とする合金、金属間化合物(NbGe,MgBなど)、金属性カーボンナノチューブ、前記フラーレンおよびフラーレン誘導体にヨウ素や五フッ化ヒ素などの電子受容体(アクセプタ)やアルカリ金属などの電子供与体(ドナー)等の適当な化学種を高分子に添加する、いわゆる化学ドーピングを施した材料、等を用いることが好ましい。
また、上記第2の基板には、セラミックス粒子、セラミック糸、該セラミック粒子又はセラミック糸の焼結体、又はセラミック板を含有させることでも、上記第2の基板として性能をもたせることもできる。
粒子、糸、焼結体、又は板については、上記金属粒子、金属糸、金属粒子又は金属糸の焼結体、金属板と同義である。
上記セラミック粒子またはセラミック糸、該セラミック粒子またはセラミック糸の焼結体、又は該セラミック板の、常温での体積抵抗が、1x10−4Ω・cm以上、1x1018Ω・cm以下でかつ、常温における熱伝導率が、1x10W/(m・K)以上、1x10W/(m・K)以下であることによって、上記性能が達成される。
上記セラミック粒子またはセラミック糸、該セラミック粒子またはセラミック糸の焼結体、又は該セラミック板の、常温での体積抵抗は、通常1x10−4Ω・cm以上、また通常1x1018Ω・cm以下である。
また、前記セラミック粒子または糸、またはその焼結体、または該セラミック板の、常温における熱伝導率は、通常1x10−2w/(m・K)以上、好ましくは1x10w/(m・K)以上、さらに好ましくは1x10w/(m・K)以上、また通常1x10w/(m・K)以下である。
上記範囲内であると、補助電極として電気抵抗を下げることが可能となるか、または熱伝導性が向上するため素子の発光効率の向上、駆動電圧の低減、素子寿命の延長効果の面であるため好ましい。
セラミックス粒子、セラミック糸、該セラミック粒子又はセラミック糸の焼結体、又はセラミック板を形成するための材料としては、上記性能を満たすものであれば特に制限はないが、例えば、前記導電性微粒子の例として挙げた、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)、遷移金属酸化物(ペロブスカイト型銅酸化物、SrTiOなど)、アルミナセメントの構成成分の一つである12CaO・7Al(C12A7)に電子をドープした材料に代表される物質、いわゆるエレクトライド等を用いることは好ましい。
さらには、Si3N4に代表される窒化シリコン化合物、各種金属窒化物(TiN、WN、MoN等)、炭化珪素、各種金属炭化物(TiC,WC,MoC等)ダイヤモンド、またそれらの混合物や不定比化合物等の粒子を用いることも熱伝導の点で好ましい。
また、上記第2の基板には、金属粒子、金属糸、および、セラミックス粒子、セラミック糸、を混合して含有させることで所望の性能をもたせることができる。さらに、複合材としてそれらの単体または混合物が板に成型されたものを含有させることで所望の性能をもたせることができる。
{電子阻止層}
有していてもよい層としては、例えば、電子阻止層が挙げられる。
電子阻止層は、正孔注入層または正孔輸送層と発光層との間に設けられ、発光層から移動してくる電子が正孔注入層に到達するのを阻止することで、発光層内で正孔と電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層内に閉じこめる役割と、正孔注入層から注入された正孔を効率よく発光層の方向に輸送する役割とがある。特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は電子阻止層を設けることが効果的である。
電子阻止層に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いこと等が挙げられる。更に、本発明においては、発光層を本発明に係る有機層として湿式成膜法で作製する場合には、電子阻止層にも湿式成膜の適合性が求められる。このような電子阻止層に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号パンフレット)等が挙げられる。
なお、電子阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
さらに陰極と発光層または電子輸送層との界面に、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化リチウム(Li2O)、炭酸セシウム(II)(CsCO3)等で形成された極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率
を向上させる有効な方法である(Applied Physics Letters,1997年,Vol.70, pp.152;特開平10−74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices,1997年,Vol.44, pp.1245;SID 04 Digest,pp.154等参照)。
また、以上説明した層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。
更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明に係る有機電界発光素子を構成することも可能である。
また、基板以外の構成要素(発光ユニット)を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V25)等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
更には、本発明に係る有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
<有機EL表示装置>
本発明の有機EL表示装置は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機EL表示装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機EL表示装置を形成することができる。
<有機EL照明>
本発明の有機EL照明は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
<有機電界発光素子の製造方法>
本発明の有機電界発光素子の製造方法は、基板上に、直接または他の層を介して1層または2層以上の電荷輸送層を有し、該電荷輸送層上にバンクおよび該バンクによって区画された領域を有し、該バンクによって区画された領域に1層または2層以上の有機薄膜を有する有機電界発光素子の製造方法であって、該有機薄膜上に、直接または他の層を介して、導電性微粒子または有機導電性物質を含有する樹脂組成物を湿式塗布法により塗布する工程を含むことを特徴とする、有機電界発光素子の製造方法である。
本発明の有機電界発光素子の製造方法は、導電性微粒子または有機導電性物質を含有す
る樹脂組成物を湿式塗布法により塗布する工程後、更に、導電性微粒子を一体化して層を形成する工程を含むことが好ましい。
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(実施例1)
<陽極の形成>
ガラス基板上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を120nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ製膜品)を通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極を形成した。陽極を形成した基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった。陽極を形成した基板のITOの表面粗さをVertScan(菱化システム社製)にて測定したところ、Ra:0.62 nm Rmax:3.69 nmであった。
<正孔注入層の形成>
正孔注入層形成用組成物の調製を行った。下記式P3の繰り返し構造を有する芳香族三級アミン高分子化合物(重量平均分子質量29600;ガラス転移温度177℃)2重量%と、下記式A1で表される電子受容性化合物0.8重量%を、溶剤として安息香酸エチルに溶解し、正孔注入層形成用組成物を調製した。
Figure 2010108927
上記洗浄された陽極を形成した基板上に、上記正孔注入層形成用組成物を用いて、スピンコート法にて乾燥膜厚30nmになるように、気温23℃、相対湿度50%の大気中で成膜を行なった。成膜後、ホットプレート上で80℃、1分間加熱乾燥した後、オーブン大気中で230℃、3時間ベークし、正孔注入層を形成した。
<正孔輸送層の形成>
次に、正孔輸送層形成用組成物の調製を行った。下記式(i)で表される構造のポリマ
ーからなる架橋性化合物(重量平均分子量10000;ガラス転移温度138℃)0.4重量%濃度となるように溶媒としてトルエンに溶解し、正孔輸送層形成用組成物を調製した。トルエンは市販の脱水トルエンを用い、酸素濃度1.0ppm、水分濃度1.0ppmの窒素グローブボックス中で該正孔輸送層形成用組成物を調製した。
Figure 2010108927

前記正孔注入層を形成した基板を窒素グローブボックスに入れ、正孔注入層上に、上記正孔輸送層形成用組成物を用いてスピンコート法にて乾燥膜厚20nmになるように、気温23℃、相対湿度50%の大気中で成膜を行なった。成膜後、ホットプレート上で230℃にて、1時間ベークし、正孔輸送層を形成した。
正孔輸送層形成用組成物の調製、スピンコートおよびベークは、すべて酸素濃度1.0ppm、水分濃度1.0ppmの窒素グローブボックス中で大気暴露せずに行った。正孔輸送層の表面粗さを上記ITO表面と同様に測定したところ、その表面粗さは、Ra:0.49nm Rmax:3.65 nmであった。
<バンクの形成>
次に、正孔輸送層までを形成した基板を大気中に取り出し、紫外光をカットしたイエロールームにてバンクの形成を行った。
下引き層を形成するため、親水性化合物含有組成物として、以下に示す親水性化合物0.67重量部、エチレン性不飽和化合物0.32重量部、光重合開始剤0.01重量部、表面改質剤0.0005重量部および溶剤として3−メトキシ−1−ブタノールを含有する組成物を調製した。調製はそれぞれの成分を配合し、よく混ぜ合わせることにより行った。
(親水性化合物含有組成物)
親水性化合物:ポリビニルピロリドン K−85(日本触媒社製)
エチレン性不飽和化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(日本化薬社製)
光重合開始剤:イルガキュア907(チバスペシャルケミカルズ社製)
Figure 2010108927
表面改質剤:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン BYK−330(ビックケミー社製)
また、バンク用レジスト層(硬化物層)を形成するため、感光性組成物として以下に示す、バインダー樹脂を48重量部、エチレン性不飽和化合物(1)を24重量部、エチレン性不飽和化合物(2)を24重量部、エチレン性不飽和化合物(3)を5重量部、光重合開始剤を1.5重量部、表面改質剤を0.1重量部、撥インク性成分を1重量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する組成物を調製した。調製はそれぞれの成分を配合し、よく混ぜ合わせることにより行った。
(感光性組成物)
バインダー樹脂:以下の合成例で合成された樹脂
エチレン性不飽和化合物(1):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(日本化薬社製)
エチレン性不飽和化合物(2):デコナールアクリレートDA−314(ナガセケムテックス社製)/以下の2化合物の混合物
Figure 2010108927
エチレン性不飽和化合物(3):以下式で表される化合物(長瀬産業社製)
Figure 2010108927
光重合開始剤:イルガキュア907(チバスペシャルケミカルズ社製)
表面改質剤:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン BYK−330(ビックケミー社製)
撥インク性成分:メガファック RS−102(DIC社製)
(合成例/バインダー樹脂の製造)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145重量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。これに、スチレン20重量部、グリシジルメタクリレート57重量部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製「FA−513M」)82重量部を滴下し、更に、140℃で2時間攪拌し続けた。次に、反応容器内を空気置換し、アクリル酸27重量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7重量部およびハイドロキノン0.12重量部を投入し、120℃で6時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)52重量部、トリエチルアミン0.7重量部を加え、120℃で3.5時間反応させ、下記式で表されるアルカリ可溶性樹脂であるバインダー樹脂を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は約8000であった。
Figure 2010108927
まず、親水性化合物含有組成物を用いてスピンコート法により、乾燥膜厚0.1μmとなるように下引き層を正孔輸送層上のほぼ全面に成膜した。スピンコートは気温23℃、相対湿度50%の大気中で行なった。成膜後、ホットプレート上で80℃、60秒間加熱乾燥した。
さらに該下引き層上に、感光性組成物をスピンコート法により、乾燥膜厚2.5μmとなるようにバンク用レジスト層を該下引き層上のほぼ全面に成膜した。スピンコートは気温23℃、相対湿度50%の大気中で行なった。成膜後、常温で1分間、真空乾燥し、さ
らにホットプレート上で80℃、60秒間加熱乾燥した。形成された下引き層とバンク用レジスト層の厚みは、全厚で2.6μmであった。
感光性組成物がネガ(光が照射された領域が硬化して残る)タイプであったことから、紫外光を遮光するクロムメッキが、感光性組成物を硬化させたい領域において紫外光を透過するように除去された石英基板のマスクを用いた。該マスクのマスクパターンは、紫外光透過部幅30μmで、クロムメッキ部(1辺70μmの正方形)がマスク面内で縦横に各20ヶ、碁盤の目のように並んだアレイパターンであった。このアレイパターンの紫外光透過領域が、2mm幅にパターン形成された陽極の辺縁に対して全てはみ出すことなく位置合わせを行った。位置合わせ後、3kW高圧水銀灯を用いて100mJ/cm2の露
光条件にて露光を施した。照射後、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)の2.38%水溶液を現像液として、23℃において、水圧0.1MPaのシャワー現像を2分間施した後、純水スプレーで30秒間リンスし、圧空で水を切った。ついで、基板を窒素グローブボックス中に移し、窒素グローブボックス中で230℃、30分間ポストベークし、正孔輸送層上に下引き層と硬化物層の2層がこの順で積層されたバンクを形成した。形成したバンクは全厚2.6μm、開口部が1辺70μmの長さである略正方形と
なった。また、断面形状は、逆テーパー部分を含む略きのこ状であった。
<発光層の形成>
次に、有機薄膜として発光層を形成した。ホスト材料として、以下に示す有機化合物(C3)および(C4)、また、ドーパント材料として以下に示すイリジウム錯体(D2)を、(C3):(C4):(D2)=10:10:1(重量比)の比率で、溶剤であるCHBに溶解させ、インクジェット用インクとして用いられる、固形分濃度0.5重量%の発光層形成用組成物を調製した。
Figure 2010108927
この発光層形成用組成物をインクジェット装置に仕込み、正孔輸送層の上の該バンクで区画された領域(1辺70μm)1つ当たり液滴量25plで吐出し、発光層を形成した

なお、20ノズル(該発光層形成用組成物を吐出する開口が20個ならんでいるノズル)を同時に使用して、20×20の区画領域にインクを吐出した。終了後、速やかに発光層が形成された基板を減圧乾燥機に導入し、減圧下(10kPa)、130℃、1時間の乾燥を行った。このようにして膜厚25nmの発光層を形成した。
<正孔阻止層の形成>
下記式(iii)で表される化合物を入れたモリブデン製ボートを通電加熱し、発光層が形
成された基板上に蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度1.2×10−6Torr、(
1.6×10−4Pa)、蒸着速度1.0Å/秒(0.1nm/sec)とし、膜厚10nmの正孔阻止層を形成した。
Figure 2010108927
<電子輸送層の形成>
下記式(iv)で表される化合物を入れたモリブデン製ボートを通電加熱し、正孔阻止層上に蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度1.2×10−6Torr(1.6×10−4Pa)、蒸着速度1.5Å/秒(0.15nm/sec)とし、膜厚30nmの電子輸送層を形成した。
Figure 2010108927
<電子注入層の形成>
ここで、電子輸送層までを形成した素子を一度真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して、正孔阻止層や電子輸送層の蒸着時と同様にして装置内の真空度が2×10−6Torr(2.7×10−4Pa)になるまで排気した。フッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.05Å/秒(0.005nm/sec)、真空度2.0×10−6Torr(2.7×10−4Pa)で、0.5nmの膜厚で電子輸送層の上に成膜した。
<陰極形成>
次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度4Å/秒(0.4nm/sec)、真空度5×10−6Torr(6.7×10−4Pa)で膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極を形成した。
<導電性微粒子含有樹脂層の形成>
さらに、該陰極の上に、導電性微粒子として銀(Ag)および樹脂としてポリエステルを含有する組成物(導電性樹脂ペースト(ドータイトFA−333/藤倉化成社製))を刷毛による手塗り印刷法により、気温23℃、相対湿度50%の大気中で成膜した。成膜された基板を常温で1分間、真空乾燥し、120℃で10分間、加熱し、硬化させ、導電性微粒子を含有する樹脂層を形成した。硬化後の樹脂層の層厚は20μmであり、体積抵抗率は4×10−5Ω・cmであった。
<封止>
その後、窒素グローブボックス(酸素濃度1.0ppm、水分濃度1.0ppm)に速やかに導入し、その中で封止を行った。
まず、該樹脂層まで形成された基板の発光領域をすべて覆うことができる面積の窪みを有し、該基板の外形よりは小さい外形を有するガラス製キャップを用意し、水分除去のための乾燥剤を該窪みの底部に貼付した。該基板上に、該キャップのリブ(窪みの周囲にある縁取り)部と略同形状になるよう、該紫外線硬化樹脂を塗布し、該キャップをその塗布した樹脂とリブ部とが重なり合うように貼り合わせ、該キャップ側からスポット紫外線照射装置によって紫外線硬化樹脂を硬化させた。
以上の様にして、有機電界発光素子が得られた。この素子は、1辺70μmの正方形が20×20に区画された発光領域がムラ無く均一に緑色発光することを確認した。
(比較例1)
樹脂層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、有機電界発光素子を作製した。この素子は、1辺70μmの正方形が20×20に区画された発光領域にムラが認められた。
(実施例2)
実施例1において、バンク形成では下引き層を形成しないで硬化層のみを形成したこと、及び<導電性微粒子含有樹脂層の形成>を以下のように変更した外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
<導電性微粒子含有樹脂層の形成>
陰極形成まで終了した該有機電界発光素子基板を窒素グローブボックス(雰囲気温度30℃、酸素濃度1.0ppm、水分濃度1.0ppm)に速やかに導入し、待機させた。
導電性微粒子として銀(Ag)および樹脂としてアクリルを含有する組成物(導電性樹脂ペースト(ドータイトD-500/藤倉化成社製))を刷毛により、窒素雰囲気中で該陰極
上に手塗り塗布し、その後、100℃で30分間、加熱・硬化させ、導電性微粒子を含有する樹脂層の形成を行なった。
上記以外は実施例1と同様にして、有機電界発光素子が得られた。
尚、硬化後の樹脂層の層厚は、同様に作製したダミー基板の断面から推定したところ、約800μmであり、体積抵抗率は8×10−5Ω・cmであった。
(素子評価確認)
この素子に通電したところ、1辺70μmの正方形が20×20に区画された発光領域において、緑色発光が得られた。
さらに、輝度2500cd/mにおける発光効率は、45cd/Aで、後述の比較例2の28%増であった。
また、この素子に238mA/cmの電流密度で連続通電してフォトダイオードにて輝度変化を測定したところ、40秒後の輝度は、初期輝度の99%であった。
(実施例3)
実施例1において、バンク形成では下引き層を採用せず、バンク用レジストを硬化させた硬化層のみを採用し、<導電性微粒子含有樹脂層の形成>および<封止>を以下のよう
に変更して有機電界発光素子を作製した。
<導電性微粒子含有樹脂層の形成、および封止>
陰極形成まで終了した該有機電界発光素子基板を窒素グローブボックス(雰囲気温度30℃、酸素濃度1.0ppm、水分濃度1.0ppm)に速やかに導入し、待機させた。
ここで、商品名:アルポリック[三菱樹脂社製/全厚4.0mm(表裏面アルミ板部分:0.3mm厚)]を15mm角に切断した裏打ち板を用意し、該窒素グローブボックス中に導入し、該裏打ち板上に、導電性微粒子として銀(Ag)および樹脂としてアクリルを含有する組成物(導電性樹脂ペースト(ドータイトD−500/藤倉化成社製))を刷毛により、窒素雰囲気中で手塗り塗布した。さらに、該裏打ち板を乾燥・固化させる前に、該導電性樹脂ペースト塗布面を、待機させておいた該有機電界発光素子基板の陰極上に重ねて加圧・密着させ、そのまま1分間保持した。その後、100℃で30分間、加熱・硬化させ、導電性微粒子を含有する樹脂層の形成と第2の基板の固定を行ない、この状態をもって封止したものとした。
以上の様にして、有機電界発光素子が得られた。
尚、硬化後の樹脂層の層厚は、作製に用いたスペーサフィルムの厚みから推定したところ、約55μmであり、体積抵抗率は8×10−5Ω・cmであった。
また、金属粒子として用いた銀(Ag)の、常温での体積抵抗率は1.6×10−6Ω・cm、また常温での熱伝導率は429W/(m・K)である。
(素子評価確認)
この素子に通電したところ、1辺70μmの正方形が20×20に区画された発光領域において、緑色発光が得られた。
さらに、輝度2500cd/mにおける発光効率は、56cd/Aで、後述の比較例2の60%増であった。
また、この素子に238mA/cmの電流密度で連続通電してフォトダイオードにて輝度変化を測定したところ、40秒後の輝度は、初期輝度の99.9%であった。
(比較例2)
比較例1において、バンクを採用せず、比較例1と同様にして、有機電界発光素子を作製した。
さらに、輝度2500cd/mにおける発光効率は、35cd/Aであった。
また、この素子に250mA/cmの電流密度で連続通電してフォトダイオードにて輝度変化を測定したところ、40秒後の輝度は、初期輝度の95%であった。
1.基板
2.電荷輸送層(第1)
3.電荷輸送層(第2)
4.下引き層
5.バンク用レジスト層
6.露光マスク
7.活性光線
8.バンクで区画された領域
9.硬化物層
10.有機薄膜
11.バンク
12.導電性微粒子または有機導電性物質を含有する樹脂層
13.脱水剤または乾燥剤を含有する層

Claims (17)

  1. 基板上に、直接または他の層を介して1層または2層以上の電荷輸送層を有し、
    該電荷輸送層上にバンクおよび該バンクによって区画された領域を有し、
    該バンクによって区画された領域に1層または2層以上の有機薄膜を有する有機電界発光素子であって、
    該有機薄膜上に、直接または他の層を介して、導電性微粒子または有機導電性物質を含有する樹脂層を有することを特徴とする、有機電界発光素子。
  2. 基板上に、直接または他の層を介して1層または2層以上の電荷輸送層を有し、
    該電荷輸送層上にバンクおよび該バンクによって区画された領域を有し、
    該バンクによって区画された領域に1層または2層以上の有機薄膜を有する有機電界発光素子であって、
    該有機薄膜上に、直接または他の層を介して、導電層を有し、
    該導電層は、導電性微粒子および樹脂を含有する樹脂組成物を成膜し、該導電性微粒子を一体化することにより形成された層であることを特徴とする、有機電界発光素子。
  3. 該導電性微粒子が、半導体、金属、および金属酸化物から選ばれる導電性微粒子であることを特徴とする、請求項1または2に記載の有機電界発光素子。
  4. 該有機薄膜の少なくとも1層が、発光層であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
  5. 該有機薄膜上に、直接または他の層を介して、脱水剤または乾燥剤を含有する層を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
  6. 該バンクが、撥インク性成分を含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
  7. 該バンクが、下引き層と該下引き層上の硬化物層を含む積層構造であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
  8. 該下引き層が親水性化合物を含有し、該硬化物層が撥インク性成分を含有することを特徴とする、請求項7に記載の有機電界発光素子。
  9. 前記樹脂層又は導電層上に、直接又は他の層を介して第2の基板を有することを特徴とする、請求項1〜8に記載の有機電界発光素子。
  10. 前記第2の基板が、金属糸、該金属粒子又は金属糸の焼結体、或いは金属板を含有することを特徴とする請求項9に記載の有機電界発光素子。
  11. 前記第2の基板が、セラミック糸、該セラミック粒子又はセラミック糸の焼結体、或いはセラミック板を含有することを特徴とする、請求項9又は10に記載の有機電界発光素子。
  12. 前記金属粒子、金属糸、該金属粒子又は金属糸の焼結体、或いは金属板の、常温での体積抵抗が、1x10−10 Ω・cm以上、1x10 Ω・cm以下で、かつ常温での熱伝導率が、1x10−2W/(m・K)以上、1x10W/(m・K)以下であることを特徴とする、請求項10に記載の有機電界発光素子。
  13. 前記セラミック粒子、セラミック糸、該セラミック粒子又はセラミック糸の焼結体、或いはセラミック板の、常温での体積抵抗が、1x10−4Ω・cm以上、1x1018Ω・cm以下でかつ、常温での熱伝導率が、1x10W/(m・K)以上、1x10W/(m・K)以下であることを特徴とする、請求項12に記載の有機電界発光素子。
  14. 請求項1〜13のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を用いた、有機EL表示装置。
  15. 請求項1〜13のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を用いた、有機EL照明。
  16. 基板上に、直接または他の層を介して1層または2層以上の電荷輸送層を有し、
    該電荷輸送層上にバンクおよび該バンクによって区画された領域を有し、
    該バンクによって区画された領域に1層または2層以上の有機薄膜を有する有機電界発光素子の製造方法であって、
    該有機薄膜上に、直接または他の層を介して、導電性微粒子または有機導電性物質を含有する樹脂組成物を湿式塗布法により塗布する工程を含むことを特徴とする、有機電界発光素子の製造方法。
  17. 導電性微粒子または有機導電性物質を含有する樹脂組成物を湿式塗布法により塗布する工程後に、更に、導電性微粒子を一体化して層を形成する工程を含むことを特徴とする、請求項11に記載の有機電界発光素子の製造方法。
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