JP2013214533A - 有機el照明 - Google Patents

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Hisanori Kato
尚範 加藤
Tomoyuki Ogata
朋行 緒方
Toshimitsu Nakai
敏光 中井
Yasutsugu Yamauchi
康嗣 山内
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Abstract

【課題】有機電界発光素子に対して有効な視野角制限手段を提供し、これにより、有機EL表示装置にあっては、覗き見防止機能として十分な性能を付与し、また、有機EL照明においては、所望の照射範囲に照射する手段を付与する。
【解決手段】第1の電極と、該第1の電極と対向するように形成された第2の電極とを有し、該第1の電極と該第2の電極との間に、発光層を有する有機電界発光素子において、該第1および第2の電極のうちで光取出し面側に位置する電極の光取出し面側に視野角制限手段を設けたことを特徴とする有機電界発光素子。
【選択図】図2

Description

本発明は、視野角制限手段を有する有機電界発光素子並びにこれを用いた有機EL表示装置および有機EL照明に関する。
近年、ディスプレイや照明などの発光装置を製造するための技術として、1対の電極間の有機層に正負の電荷(キャリア)を注入し、このキャリアを再結合させることにより発光を得る有機電界発光(有機EL)素子の開発が盛んに行われており、主に小型から中型サイズのディスプレイ用途を中心として、実用化が始まっている。
従来の有機電界発光素子においては、発光は一般に偏光していない上、液晶表示パネルにおけるような複屈折性を有することもないため、原理上広い視野角を有する。一方、液晶表示パネルはその原理上、斜めから見ると明るさが著しく減じたり、色調が反転したり、特定の色が見えにくくなったりする。従って、液晶表示パネルにおいては、偏光フィルム等を利用して視野角を拡大したり制御したりする技術が開発されているが(例えば、特許文献1〜6)、有機電界発光素子においては、このような視野角の調整についての提案はなされていないのが現状である。
しかしながら、有機EL表示装置における覗き見防止の観点からは、広い視野角を有する特徴は不利である。また、有機EL照明においては、所望の照射範囲にのみ照射することができない。
特開平4−258923号公報 特開平4−229828号公報 特開平8−50206号公報 特開2002−297044号公報 特開2003−207630号公報 特開2005−345799号公報
本発明は、従来の有機電界発光素子に対して有効な視野角制限手段を提供し、これにより、有機EL表示装置にあっては、覗き見防止機能として十分な性能を付与し、また、有機EL照明においては、所望の照射範囲に照射する機能を付与することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、有機電界発光素子の光取出し面側に位置する電極の光取出し面側に視野角制限手段を設けることにより、視野角を制御することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下を要旨とする。
(1) 第1の電極と、該第1の電極と対向するように形成された第2の電極とを有し、該第1の電極と該第2の電極との間に、発光層を有する有機電界発光素子において、該第1および第2の電極のうちで光取出し面側に位置する電極の光取出し面側に視野角制限手段を設けたことを特徴とする有機電界発光素子。
(2) 該視野角制限手段が、発光射出方向に沿って、少なくとも2回の直線偏光変換機能と該機能の間に複屈折性を有する、単層または多層の視野角制限層を有することを特徴とする、(1)に記載の有機電界発光素子。
(3) 該視野角制限層が、単層または多層フィルムであることを特徴とする、(2)に記載の有機電界発光素子。
(4) 該視野角制限層が、単層板または多層積層板であることを特徴とする、(2)に記載の有機電界発光素子。
(5) 該視野角制限手段が、制限する視野角の範囲を外部制御信号によって変更可能であることを特徴とする、(1)ないし(4)のいずれかに記載の有機電界発光素子。
(6) 該第1の電極と該第2の電極との間に、第1電荷輸送層と、該第1電荷輸送層上に積層された第2電荷輸送層と、該第2電荷輸送層上にパターン状に形成されたバンクと、該バンクにより区画された領域内に形成された機能性層とを有することを特徴とする、(1)ないし(5)のいずれかに記載の有機電界発光素子。
(7) 該機能性層が、発光層を含むことを特徴とする、(1)ないし(6)のいずれかに記載の有機電界発光素子。
(8) (1)ないし(7)のいずれかに記載の有機電界発光素子を用いたことを特徴とする有機EL表示装置。
(9) (1)ないし(7)のいずれかに記載の有機電界発光素子を用いたことを特徴とする有機EL照明。
本発明によれば、有機電界発光素子の光取出し面側に位置する電極の光取出し面側に設けられた視野角制限手段により、視野角を制御することができ、これにより、有機EL表示装置にあっては、覗き見防止機能として十分な性能を付与することができる。また、有機EL照明においては、所望の照射範囲に照射することが可能となる。
本発明に係る有機電界発光素子本体の構成層の積層構造の一例を示す模式的断面図である。 本発明に係る有機電界発光素子のバンクおよび機能性層の形成手順の一例を示す模式的断面図である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定されない。
[有機電界発光素子]
本発明の有機電界発光素子は、第1の電極と、該第1の電極と対向するように形成された第2の電極とを有し、該第1の電極と該第2の電極との間に、発光層を有する有機電界発光素子において、該第1および第2の電極のうちで光取出し面側に位置する電極の光取出し面側に視野角制限手段を設けたことを特徴とする。
{視野角}
視野角とは、表示パネルの中心から正常に見ることのできる範囲を扇形で表した時の中心角の大きさ、という意味であるが、視野角には統一された測定基準が定義されていないため、測定装置メーカーやパネルメーカー等によって測定方法が異なる。
本発明において、有機電界発光素子の視野角とは、発光点における発光面法線から測定した視認角度(視角)に依存したパラメータ(輝度変化[コントラスト比]・色度変化・階調変化等)の視角パターンにおける、中心(該パラメータの発光面法線における値、または最大値に対する)比がx%(0<x<100)となる角度の全角をさす。
視野角は、上下方向または左右方向で定義・測定することが可能である。極端な例を挙げれば、視野角180度は真横(あるいは真上または真下)から見ても正しく見ることができることを意味し、視野角0度は真正面からしか正しく見ることができないことを意味する。
通常、有機電界発光素子の視野角は、次のような方法で測定される。ただし、xの値は適宜定められるが、例として50を用いる。
<視野角の測定方法>
視野角の測定方法としては、例えば、AUTRONIC-MELCHERS GmbH社製ConoScopeまたは、ErgoScope88を用いることによって、前記パラメータに対する視野角を測定することができる。システムアップされた例としては、協真エンジニアリング社製のFPD視野角測定評価装置がある。他に、Radiant Imaging社製のProMetric(CCDを搭載した輝度、照度、色度の絶対値を測定する計器)をシステムアップした装置(サイバネットシステム社製)を用いることも可能である。
いずれの装置も、光学的、あるいは機械的に、視角に対する前記パラメータ(輝度変化[コントラスト比]・色度変化・階調変化等)を測定して、該パラメータの視角依存性を求めることが可能である。そのパターンデータから、中心(該パラメータの発光面法線における値、または最大値に対する)比がx%(0<x<100:例えば、x=50)となる角度の全角を求めることができる。
上記測定法によれば、一般の有機電界発光素子の視野角は、本発明に係る視野角制限手段を設けていない状態で120°以上180°未満である。ただし、一般には、光取り出し側に、外光による映り込みを防止(反射を防止)するための円偏光板が取り付けられた状態で測定されている。
本発明では、このような有機電界発光素子を覗き見防止が必要な用途に適用するためには、該素子に対して、光取出し面側に位置する電極の光取出し面側に視野角制限手段を設けることにより、視野角を例えば120°以下、特に90゜以下に狭めることが好ましい。
ただし視野角を過度に小さくすることは、かえって該素子を用いた表示装置の利用者にとって利便性を欠くという実用上の問題があるので、通常30゜以上である。また、表示パネルのサイズや平均輝度、該パネルと利用者の視点との距離、該パネルが設置された周囲環境によっても視野角を適切に設定することが好ましい。また、状況に応じ、外部信号を用いて、視野角のON−OFF制御、または視野角の可変制御ができることが好ましい。
{視野角制限手段}
本発明で用いる視野角制限手段は、有機電界発光素子から射出される発光の放射パターン(輝度変化[コントラスト比]・色度変化・階調変化等の視角依存パラメータのパターン)の対中心値比x%(0<x<100)の全角、あるいは、対最大値比x%の全角を狭くすることができるものであればよく、特に制限はないが、最も一般的には、発光射出方向に沿って、少なくとも2回の直線偏光変換機能と該機能の間に複屈折性を有する、単層または多層の視野角制限層が挙げられ、この視野角制限層は、単層フィルムまたは多層フィルムであってもよく、単層板または多層積層板であってもよい。
<単層フィルムよりなる視野角制限層>
単層フィルムよりなる視野角制限層としては、TAC(トリアセチルセルロース、またはセルローストリアセテート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)等に代表される透明な単層フィルムの少なくとも片面が表面粗さを小さく鏡面に近く形成された平面であって、有機EL表示装置の光取り出し側の面(表示面、発光面)と対向した面、あるいは対向した面と反対の面にストライプ状グルーブを有し、該グルーブの断面形状が台形であって、該グルーブの幅が該表示面を構成する各画素の幅に略一致し、該グルーブにおける該台形断面の側面に当たる面の表面粗さが底面に当たる面の表面粗さより大きくなっているものが挙げられる。
フィルム全厚に関しては、薄いことが好ましいが、通常は0.5mm以下に設計され、該グルーブの深さも通常は0.25mm以下である。こうしたグルーブを形成する方法としては、予めそうした形状と表面粗さを転写できる金型を形成しておいて、スタンパー方式で単層フィルムに加圧、または加圧と加熱の両方を与えて形状を転写する方法を採用することができる。こうした特長をもつ視野角制限単層フィルムの視野角制限機構は、有機EL表示装置の画素中心から見込んだ該グルーブの底面の見込み角の半値をθとすると、光取り出し側の面に立てた法線から測ってθ以上傾いた方向から臨んだ場合、射出光が乱反射して、輝度コントラストが著しく低下することから視野角制限機能を示すことになる。
<多層フィルムよりなる視野角制限層>
多層フィルムよりなる視野角制限層としては、TAC(トリアセチルセルロース、またはセルローストリアセテート)フィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PC(ポリカーボネート)フィルム、セロファンフィルム等に代表される透明な単層フィルムの少なくとも片面が表面粗さを小さく鏡面に近く形成された平面であって、その少なくとも片面にAl等の金属を1〜50nm程度に薄く蒸着してハーフミラーにしたもの、および、該ハーフミラーの蒸着面に保護フィルムを形成したもの、さらに、セロファン、PET等に代表される透明で複屈折性の大きい単層フィルムの少なくとも片面が表面粗さを小さく鏡面に近く形成された平面であって、そのフィルムを基材として、直線偏光変換機能を有するPVA(ポリビニルアルコール)−ヨウ素フィルム(いわゆる、直線偏光フィルムまたは直線偏光板:PVAフィルムにヨウ素を添加し、1軸延伸したものをTACフィルムにラミネートしたものや、ヨウ素のかわりにアゾ系化合物を基本とした複数種の2色性染料を用いたもの)等を該基材の両面にラミネート、または貼り合わせたフィルム、および、該直線偏光変換機能層付き複屈折性フィルムの両面または片面に他の保護フィルムを形成したものが挙げられる。
また、該複屈折性フィルム基材の両面に直線偏光フィルム等をラミネート、または貼り合わせた多層フィルムにおいて、直線偏光変換機能を有する領域と有しない領域とをストライプ状にパターニングして、かつ、その両面のパタ−ニング周期を半周期ずらした形で形成したものも挙げることができる。そのパターニング周期は有機EL表示装置の表示面を構成する各画素の幅に略一致していることが好ましい。
また、前記の透明で複屈折性の大きいフィルムとして、富士フィルム社製のWVフィルムを挙げることができる。製品としては前述のTACフィルムに挟まれた3層構造をとるが、その中心の層が大きい複屈折性を持つ、いわゆるディスコティック化合物層である。このフィルムは、ディスコティック化合物層を用いて複屈折率が膜厚方向に変化するように分布していることが特徴になっている。こうした複屈折率に膜厚方向の分布を持たせることは視野角制限手段としてはより好ましい。このことは、後述する液晶を用いた場合にも当てはまる。
層厚や、積層数は、制限したい視野角の範囲に応じて適宜選択される。また、全膜厚に関しては、薄いことが好ましいが、通常は1mm以下に設計される。
視野角制限の機構は、それぞれに異なる。該ハーフミラータイプは、その名の示す通り、有機EL表示装置の光取り出し側の面(表示面、発光面)に立てた法線から測って45°以上傾いた方向から臨むと、反対方向からの光が映りこんで表示面に表示された画像と重なり、輝度コントラストが著しく低下することから視野角制限機能を示すことになる。該直線偏光機能層付き複屈折性フィルムの場合は、該法線から測った視野角に依存して各色(波長)の位相に差が出ることにより、偏光状態が変化し、輝度コントラストや色調変化が生じ、結果として視野角制限機能を示すことになる。
<単層板よりなる視野角制限層>
単層板よりなる視野角制限層としては、ガラス、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PC等に代表される透明な単層板の片面が表面粗さを小さく鏡面に形成された平面であって、有機EL表示装置の光取り出し側の面(表示面、発光面)と対向した面、あるいは対向した面と反対の面にストライプ状グルーブを有し、該グルーブの断面形状が台形であって、該グルーブの幅が該表示面を構成する各画素の幅に略一致し、該グルーブにおける該台形断面の側面に当たる面の面粗さが底面に当たる面の面粗さより大きくなっているものが挙げられる。全板厚に関しては、薄いことが好ましいが、通常は1mm以下に設計され、該グルーブの深さも通常は0.5mm以下である。
こうした特長をもつ視野角制限板の視野角制限機構は、有機EL表示装置の画素中心から見込んだ該グルーブの底面の見込み角の半値をθとすると、光取り出し側の面に立てた法線から測ってθ以上傾いた方向から臨んだ場合、射出光が乱反射して、輝度コントラストが著しく低下することから視野角制限機能を示すことになる。
<多層積層板よりなる視野角制限層>
多層積層板よりなる視野角制限層としては、前記単層板からなる視野角制限層において、該単層板の光入射側面とは反対側の面、または両面に、前述の直線偏光変換機能フィルムをラミネート、または貼り合わせたものを挙げることができる。この場合、該直線偏光変換機能フィルムは、前記グルーブを覆わず、かつその対面にも存在していないように形成されていることが好ましい。
また、複屈折性の透明単板基材の両面に該直線偏光フィルム等をラミネート、または貼り合わせた多層積層板において、直線偏光変換機能を有する領域と有しない領域とをストライプ状にパターニングして、かつ、その両面のパタ−ニング周期を半周期ずらした形で形成したものも挙げることができる。そのパターニング周期は有機EL表示装置の表示面を構成する各画素の幅に略一致していることが好ましい。さらに、前記の両面に配置した直線偏光変換機能を有する領域は、互いに偏光方向に角度を付けて配置することが好ましい。この角度は、中央の複屈折性を有するフィルムの常光−異常光に対する屈折率と厚さに応じて決定される。
また、後述する、外部制御信号により制限する視野角の範囲を変える手段として挙げているものも多層積層板の範疇に分類される。
各板厚や、積層数は、制限したい視野角の範囲に応じて適宜選択される。また、全膜厚に関しては、薄いことが好ましいが、通常は1mm以下に設計される。
<設置位置>
本発明においては、上述のような視野角制限手段を、有機電界発光素子の光取出し面側に位置する電極の光取出し面側に設ける。この光取出し面側に位置する電極の光取出し面側とは、具体的には、図1における基板の有機電界発光素子が形成されていない面にあたる。
{外部制御信号}
本発明に係る視野角制限手段は、制限する視野角の範囲を外部制御信号によって可変とされていることが好ましい。
ここで、外部制御信号により、視野角制限手段で制限する視野角の範囲を変える手段としては特に制限はないが、例えば、ポッケルス効果、カー効果を利用して、視野角制限手段の複屈折性を電気信号によって変化させるものなどが挙げられる。
物質の屈折率が電界によって影響を受ける現象を一般に電気光学効果と呼び、ポッケルス効果や電気光学カー効果等が知られている。ポッケルス効果は、圧電性誘電体の等方性結晶において、電界をかけると電界強度に比例して屈折率が変化し複屈折性を示す現象である。反転対称性を持たない圧電性結晶にのみポッケルス効果は現れ、それを示す結晶として、KDP(KH2PO4),APD(NH4H2PO4),LiTaO3,LiNbO3などが挙げられる。それらの光学特性(複屈折性)は電界によって比例的に変化するが、これは電界の印加により屈折率楕円体の変形や回転が起こり屈折率のテンソル成分が変化することで説明される。こうした結晶のポッケルス効果は、2階のテンソルであるポッケルス係数により表現できる。一方で、電気光学カー効果は、屈折率の変化が電界強度の2乗に比例するものを指す。
透明基板上に透明電極を形成し、その上にさらに前記電気光学効果を持つ結晶を薄膜化して形成し、最後に透明電極を形成して、2枚の透明電極で該結晶をサンドイッチにした構造を作製する。その2枚の電極に電圧を印加すると、前述のポッケルス効果、または電気光学カー効果により、結晶の複屈折率が変化して、透過する光の偏光状態が変化する。こうして作製した基板を、外部制御信号により制限する視野角の範囲を変える手段を作製するための基材として用いることができる。
該電気光学効果を有する基板の両面に、直線偏光変換機能を持つフィルムを、ラミネート、または、張り合わせる。このとき、該直線偏光変換機能を有するフィルムの偏光方向は、互いに角度をつけて配置するとより好ましい。この角度は、該電気光学効果を有する基板に印加する電圧に応じて決定される。該直線偏光変換機能を持つフィルムには、具体的には、前述の直線偏光板、すなわち、PVAフィルムにヨウ素を添加し、1軸延伸したものをTACフィルムにラミネートしたものや、ヨウ素のかわりにアゾ系化合物を基本とした複数種の2色性染料を用いることができる。
また、該電気光学効果を有する基板の両面に該直線偏光フィルム等をラミネート、または貼り合わせた多層積層板において、直線偏光変換機能を有する領域と有しない領域とをストライプ状にパターニングして、かつ、その両面のパタ−ニング周期を半周期ずらした形で形成したものも挙げることができる。そのパターニング周期は有機EL表示装置の表示面を構成する各画素の幅に略一致していることが好ましい。さらに、前記の両面に配置した直線偏光変換機能を有する領域は、互いに偏光方向に角度を付けて配置することが好ましい。この角度は、中央の複屈折性を有するフィルムの常光−異常光に対する屈折率差と厚さに応じて決定される。
前述の基板を、直線偏光機能を有するフィルム面を有機EL表示装置の表示面に対向して置くことにより、有機EL表示装置から発光した光は、直線偏光に変換され、かつ、ポッケルス効果または電気光学カー効果を有する結晶中を通ることにより、電圧印加中は複屈折の影響も受けることになる。
有機EL表示装置のある画素から射出した光は、まず、直線偏光に変換されるが、そのうち、パネル面に対してほぼ法線方向に射出した光は、該結晶薄膜に電圧が印加されていたとしても、該結晶薄膜の持つポッケルス効果または電気光学カー効果による複屈折性の影響はほとんど受けずに透過する。一方、視角の大きい方向に射出した光は、該結晶薄膜に電圧が印加されている状態であれば、屈折率が偏光状態に応じて変化するため、進行する位相が遅れるまたは進む(用いた結晶の電界による屈折率変化の方向に依存する)ことになり、偏光状態が変化する。
このことによって、該結晶薄膜を通過した斜め入射光は、射出側に配置された直線偏光変換機能を有するフィルムによって透過率が変化し、結果として斜め方向の視角に対して輝度が低下することになり、視野角制限機能が発現する。しかも、印加した電圧に応じてその視野角を変化させることが可能である。
さらには、前記電気光学効果を有する結晶の代わりに、液晶を配置することも可能である。この場合、液晶は旋光性も有するため、より視野角制限効果は高くなる。
ここで、特開2005−345799号公報に開示されているような、該有機EL表示装置の画素に対応して該結晶薄膜または、液晶を区分けして形成することも好ましい。前記電気光学効果を有する基板の両電極間に電気光学結晶または液晶を配置し、電圧を印加する電圧印加時に、基板面にほぼ垂直な正面方位から一方側に傾いた方角に向かう光の透過率を低下させる電気光学結晶または、液晶分子の配向方向を規定する配向部A1および電圧印加時に基板面にほぼ垂直な正面方位に対して他方側に傾いた方角に向かう光の透過率を低下させる電気光学結晶または、液晶分子の配向方向を規定する第2配向部A2との組み合わせにより構成された形態をとる。A1とA2の平面的な区分けは、市松模様に形成することが好ましく、区分けのサイズが有機EL表示装置の画素サイズと同等か、n(nは自然数)個を正方形にまとめたような正方形の区画であることがより好ましい。
このような外部制御信号手段により、視野角制限手段で制限する視野角の範囲を可変とすることにより、有機EL表示装置にあっては、所望のタイミングで外部制御信号を導入して、所望の視野角に制限することが可能となる。また、有機EL照明にあっては、所望のタイミングで外部制御信号を導入することにより、所望の照射範囲に照射することが可能となる。
{有機電界発光素子本体}
本発明において、視野角制限手段が設けられる有機電界発光素子の有機電界発光素子本体については、第1の電極と、該第1の電極と対向するように形成された第2の電極とを有し、該第1の電極と該第2の電極との間に、発光層を有するものであればよく、特に制限はないが、特に、該第1の電極と該第2の電極との間に、第1電荷輸送層と、該第1電荷輸送層上に積層された第2電荷輸送層と、該第2電荷輸送層上にパターン状に形成されたバンクと、該バンクにより区画された領域内に形成された機能性層とを有するものであることが赤・緑・青のいわゆる三原色を区別して形成する点で好ましく、とりわけ、この機能性層として発光層を含むものであることが表示装置を構成する点で好ましい。
このような有機電界発光素子本体は、通常基板上、好ましくは、可視光に対して透明な基板上に形成される。
以下に、本発明に好適な有機電界発光素子本体の層構成およびその製造手順について、図1,2を参照して説明する。
まず、図1を参照して、本発明の有機電界発光素子の有機電界発光素子本体の層構成の一例およびその一般的な形成方法について説明する。
図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
<基板>
基板1としては、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましいが、中でもガラス基板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
<陽極>
陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウムおよび/またはスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
陽極2の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法等により行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板上に塗布することにより陽極を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板上に薄膜を形成したり、基板上に導電性高分子を塗布して陽極を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陽極2の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極2の厚みは任意であり、陽極2は基板と一体化されたものであってもよい。また、さらには、異なる導電材料が積層されたものであってもよい。
陽極2に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることは好ましい。
前記基板において、パターニングされた陽極上に有機薄膜を形成して有機電界発光素子を作製した場合、該陽極の辺縁部における素子劣化が問題の1つに挙げられる。こうした素子劣化は、該辺縁部が後述の陰極と対向した部分において顕著に現れる。この原因として挙げられるのは、該陽極と陰極に挟まれた有機薄膜に掛かる局所的な電界強度と電流密度の関係が、辺縁部では中央の平坦部と比べて極端に異なることによる。つまり、辺縁部ではその断面形状の特殊性(段差の存在)からくる電界強度の上昇とそれに伴う電流密度の増加により、局所的に有機薄膜を構成する材料の劣化が促進され、もって素子寿命がさらに短縮される結果となる。
この問題を解決する1つの方法として、該陽極上に絶縁膜を設置し、辺縁部を覆って、発光させたい領域をパターニングして電流が流れる開口を形成する方法が知られており、そうした開口を有する絶縁薄膜を「開口絶縁膜」と一般的に称している。こうすることにより辺縁部の形状特殊性からくる電界集中を排除し、電界が陽極から陰極に向かって一様に分布するようにできる。
前記絶縁膜としては、二酸化シリコン薄膜が一般的によく用いられているが、他に、酸化窒化シリコン薄膜や、ポリイミド薄膜に代表される有機薄膜を用いることもできる。
パターニングの方法としてはフォトリソグラフィー法が一般的に用いられている。また、開口を形成する方法としては、反応性イオンエッチング法の他、イオンミリング法、ウェットエッチング法などが用いられる。
さらに、開口を形成して陽極が露出した後の表面に紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることは、好ましい。
しかしながら、こうした開口絶縁膜を形成することは、素子作製工程を増やし、歩留りの低下や製造コストの押し上げといったことに影響を与えることになり、できれば無い方が好ましい。これを可能にする方法の1つに、後述のバンクを開口絶縁膜として用いる方法がある。それにはバンクの平面形状として前記陽極の辺縁部を覆うように設計することで実現可能である。
特に、後述の如く、基板上に電荷輸送層をほぼ全面に渡って形成した上にバンクを形成した場合には、該バンクがより有効に開口絶縁膜としての機能を果たす。
<正孔注入層>
正孔注入層3は、陽極2から発光層5へ正孔を輸送する層であり、通常、陽極2上に形成される。
本発明に係る正孔注入層3の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔注入層を湿式成膜法により形成することが好ましい。
ここで、本発明において湿式成膜法とは、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等湿式で成膜される方法をいう。
正孔注入層3の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
(湿式成膜法による正孔注入層の形成)
湿式成膜により正孔注入層3を形成する場合、通常は、正孔注入層3を構成する材料を適切な溶剤(正孔注入層用溶剤)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を適切な手法により、陽極2上に塗布して成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
(正孔輸送性化合物)
正孔注入層形成用組成物は通常、正孔注入層3の構成材料として正孔輸送性化合物および溶剤を含有する。
正孔輸送性化合物は、通常、有機電界発光素子の正孔注入層に使用される、正孔輸送性を有する化合物であれば、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよいが、高分子化合物であることが好ましい。
正孔輸送性化合物としては、電荷注入障壁の観点から4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、カーボン等が挙げられる。
尚、本発明において誘導体とは、例えば、芳香族アミン誘導体を例にするならば、芳香族アミンそのものおよび芳香族アミンを主骨格とする化合物を含むものであり、重合体であっても、単量体であってもよい。
正孔注入層3の材料として用いられる正孔輸送性化合物は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種または2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種または2種以上とを併用することが好ましい。
上記例示した中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果による均一な発光の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)がさらに好ましい。芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(I)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
Figure 2013214533
(式(I)中、ArおよびArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar〜Arは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Yは、下記の連結基群の中から選ばれる連結基を表す。また、Ar〜Arのうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。
Figure 2013214533
(上記各式中、Ar〜Ar16は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または任意の置換基を表す。))
Ar〜Ar16の芳香族炭化水素基および芳香族複素環基としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の基が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環由来の基がさらに好ましい。
Ar〜Ar16の芳香族炭化水素基および芳香族複素環基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが好ましい。
およびRが任意の置換基である場合、該置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが挙げられる。
式(I)で表される繰り返し単位を有する芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載のものが挙げられる。
また、正孔輸送性化合物としては、ポリチオフェンの誘導体である3,4−ethylenedioxythiophene(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を高分子量ポリスチレンスルホン酸中で重合してなる導電性ポリマー(PEDOT/PSS)もまた好ましい。また、このポリマーの末端をメタクリレート等でキャップしたものであってもよい。
正孔注入層形成用組成物中の、正孔輸送性化合物の濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜厚の均一性の点で通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、また、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると成膜された正孔注入層に欠陥が生じる可能性がある。
(電子受容性化合物)
正孔注入層形成用組成物は正孔注入層の構成材料として、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物等が挙げられる。さらに具体的には、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンダフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(国際公開2005/089024号パンフレット);塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンダフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素;ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、ショウノウスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン等が挙げられる。
これらの電子受容性化合物は、正孔輸送性化合物を酸化することにより正孔注入層の導電率を向上させることができる。
正孔注入層或いは正孔注入層形成用組成物中の電子受容性化合物の正孔輸送性化合物に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上である。但し、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。
(その他の構成材料)
正孔注入層の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述の正孔輸送性化合物や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
(溶剤)
湿式成膜法に用いる正孔注入層形成用組成物の溶剤のうち少なくとも1種は、上述の正孔注入層の構成材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。また、この溶剤の沸点は通常110℃以上、好ましくは140℃以上、中でも200℃以上、通常400℃以下、中でも300℃以下であることが好ましい。溶剤の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。また、溶剤の沸点が高すぎると乾燥工程の温度を高くする必要があり、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
溶剤として例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル、等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、等が挙げられる。
その他、ジメチルスルホキシド、等も用いることができる。
これらの溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いてもよい。
(成膜方法)
正孔注入層形成用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜により、陽極2上に成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
成膜工程における温度は、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましい。
成膜工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、通常80%以下である。
成膜後、通常加熱等により正孔注入層形成用組成物の膜を乾燥させる。加熱工程において使用する加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブンおよびホットプレートが好ましい。
加熱工程における加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、正孔注入層形成用組成物に用いた溶剤の沸点以上の温度で加熱することが好ましい。また、正孔注入層に用いた溶剤が2種類以上含まれている混合溶剤の場合、少なくとも1種類がその溶剤の沸点以上の温度で加熱されるのが好ましい。溶剤の沸点上昇を考慮すると、加熱工程においては、好ましくは120℃以上、好ましくは410℃以下で加熱することが好ましい。
加熱工程において、加熱温度が正孔注入層形成用組成物の溶剤の沸点以上であり、かつ湿式成膜された膜の十分な不溶化が起こらなければ、加熱時間は限定されないが、好ましくは10秒以上、通常180分以下である。加熱時間が長すぎると他の層の成分が拡散する傾向があり、短かすぎると正孔注入層が不均質になる傾向がある。加熱は2回に分けて行ってもよい。
(真空蒸着法による正孔注入層の形成)
真空蒸着により正孔注入層3を形成する場合には、正孔注入層3の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種または2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合はそれぞれ独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極上に正孔注入層を形成させる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層を形成することもできる。
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1×10−6Torr(0.13×10−4Pa)以上、通常9.0×10−6Torr(12.0×10−4Pa)以下である。蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、通常5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上で、好ましくは50℃以下で行われる。
尚、正孔注入層3は、以下に説明する正孔輸送層4の材料を用いて形成されるものであってもよい。例えば、正孔輸送性化合物として、以下に詳述するようなポリアリールアミン誘導体やポリアリーレン誘導体を用いてもよいし、架橋性化合物を用いてもよい。また、熱または活性エネルギー線により解離する官能基を有する化合物を用いてもよい。
<正孔輸送層>
正孔輸送層4は、正孔注入層3がある場合には正孔注入層3の上に、正孔注入層3が無い場合には陽極2の上に形成することができる。また、本発明の有機電界発光素子は、正孔輸送層を省いた構成であってもよい。
本発明に係る正孔輸送層4の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔輸送層4を湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔輸送層4を形成する材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。
このような正孔輸送層4の材料としては、従来、正孔輸送層4の構成材料として用いられている材料であればよく、例えば、前述の正孔注入層3に使用される正孔輸送性化合物として例示したものが挙げられる。また、アリールアミン誘導体、フルオレン誘導体、スピロ誘導体、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、シロール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。
また、例えば、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリアリールアミン誘導体、ポリビニルトリフェニルアミン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリアリーレン誘導体、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン誘導体、ポリアリーレンビニレン誘導体、ポリシロキサン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)誘導体等が挙げられる。これらは、交互共重合体、ランダム重合体、ブロック重合体またはグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある高分子や、所謂デンドリマーであってもよい。
中でも、ポリアリールアミン誘導体やポリアリーレン誘導体が好ましい。
ポリアリールアミン誘導体としては、下記式(II)で表される繰り返し単位を含む重合体であることが好ましい。特に、下記式(II)で表される繰り返し単位からなる重合体であることが好ましく、この場合、繰り返し単位それぞれにおいて、ArまたはArが異なっているものであってもよい。
Figure 2013214533
(式(II)中、ArおよびArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。)
ArおよびArの置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、6員環の単環または2〜5縮合環由来の基およびこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
ArおよびArの置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5または6員環の単環または2〜4縮合環由来の基およびこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
溶解性、耐熱性の点から、ArおよびArは、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、ピリジン環、フルオレン環からなる群より選ばれる環由来の基やベンゼン環が2環以上連結してなる基(例えば、ビフェニル基やターフェニル基)が好ましい。
中でも、ベンゼン環由来の基(フェニル基)、ベンゼン環が2環連結してなる基(ビフェニル基)およびフルオレン環由来の基(フルオレニル基)が好ましい。
ArおよびArの置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基などが挙げられる。
ポリアリーレン誘導体としては、前記式(II)におけるArやArとして例示した置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基などのアリーレン基をその繰り返し単位に有する重合体が挙げられる。
ポリアリーレン誘導体としては、下記式(III−1)および/または下記式(III−2)からなる繰り返し単位を有する重合体が好ましい。
Figure 2013214533
(式(III−1)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、フェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、またはカルボキシ基を表す。tおよびsは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。tまたはsが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のRまたはRは同一であっても異なっていてもよく、隣接するRまたはRどうしで環を形成していてもよい。)
Figure 2013214533
(式(III−2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、上記式(III−1)におけるR、R、RまたはRと同義である。rおよびuは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。rまたはuが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のRおよびRは同一であっても異なっていてもよく、隣接するRまたはRどうしで環を形成していてもよい。Xは、5員環または6員環を構成する原子または原子群を表す。)
Xの具体例としては、酸素原子、置換基を有していてもよいホウ素原子、置換基を有していてもよい窒素原子、置換基を有していてもよいケイ素原子、置換基を有していてもよいリン原子、置換基を有していてもよいイオウ原子、置換基を有していてもよい炭素原子またはこれらが結合してなる基が挙げられる。
また、ポリアリーレン誘導体としては、下記式(III−1)および/または下記式(III−2)からなる繰り返し単位に加えて、さらに下記式(III−3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
Figure 2013214533
(式(III−3)中、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。vおよびwは、それぞれ独立に0または1を表す。)
Ar〜Arの具体例としては、前記式(II)における、ArおよびArと同様である。
上記式(III−1)〜(III−3)の具体例およびポリアリーレン誘導体の具体例等は、特開2008−98619号公報に記載のものなどが挙げられる。
湿式成膜法で正孔輸送層4を形成する場合は、上記正孔注入層3の形成と同様にして、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、湿式成膜後、加熱乾燥させる。
正孔輸送層形成用組成物には、上述の正孔輸送性化合物の他、溶剤を含有する。用いる溶剤は上記正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。また、成膜条件、加熱乾燥条件等も正孔注入層3の形成の場合と同様である。
真空蒸着法により正孔輸送層4を形成する場合もまた、その成膜条件等は上記正孔注入層3の形成の場合と同様である。
正孔輸送層4は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子受容性化合物、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
正孔輸送層4はまた、架橋性化合物を架橋して形成される層であってもよい。架橋性化合物は、架橋性基を有する化合物であって、架橋することにより網目状高分子化合物を形成する。
この架橋性基の例を挙げると、オキセタン、エポキシなどの環状エーテル由来の基;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル、シンナモイル等の不飽和二重結合由来の基;ベンゾシクロブテン由来の基などが挙げられる。
架橋性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。架橋性
化合物は1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で有していてもよい。
架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。正孔輸送性化合物としては、上記の例示したものが挙げられ、これら正孔輸送性化合物に対して、架橋性基が主鎖または側鎖に結合しているものが挙げられる。特に架橋性基は、アルキレン基等の連結基を介して、主鎖に結合していることが好ましい。また、特に正孔輸送性化合物としては、架橋性基を有する繰り返し単位を含む重合体であることが好ましく、上記式(II)や式(III−1)〜(III−3)に架橋性基が直接または連結基を介して結合した繰り返し単位を有する重合体であることが好ましい。
架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。
正孔輸送性化合物の例を挙げると、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等の含窒素芳香族化合物誘導体;トリフェニルアミン誘導体;シロール誘導体;オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。その中でも、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体等の含窒素芳香族誘導体;トリフェニルアミン誘導体、シロール誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが好ましく、特に、トリフェニルアミン誘導体がより好ましい。
架橋性化合物を架橋して正孔輸送層4を形成するには、通常、架橋性化合物を溶剤に溶解または分散した正孔輸送層形成用組成物を調製して、湿式成膜により成膜して架橋させる。
この場合、正孔輸送層形成用組成物には、架橋性化合物の他、架橋反応を促進する添加物を含んでいてもよい。架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の重合開始剤および重合促進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物等の光増感剤;などが挙げられる。
正孔輸送層形成用組成物は、さらに、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤;電子受容性化合物;バインダー樹脂;などを含有していてもよい。
正孔輸送層形成用組成物は、架橋性化合物を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下含有する。
このような濃度で架橋性化合物を含む正孔輸送層形成用組成物を正孔注入層3上に成膜後、加熱および/または光などの活性エネルギー線の照射により、架橋性化合物を架橋させて網目状高分子化合物を形成する。
成膜時の温度、湿度などの条件は、前記正孔注入層3の湿式成膜時と同様である。
成膜後の加熱の手法は特に限定されない。加熱温度条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下である。
加熱時間としては、通常1分以上、好ましくは24時間以下である。
加熱手段としては特に限定されないが、成膜された層を有する積層体をホットプレート上に載せたり、オーブン内で加熱するなどの手段が用いられる。例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
光などの活性エネルギー線の照射による場合には、活性エネルギー線としては、化合物の化学結合に対してエネルギーを与え、その結合そのものやその化合物の高次構造に対して変化を与えうるエネルギー線、例えば、赤外線、可視光線、紫外線、X線、放射性同位元素の崩壊によるガンマ線、あるいは、電子線、イオン線、中性原子線、他の素粒子線、例えば、陽子線、中性子線、陽電子線等が挙げられる。
その発生方法や照射方法は各種存在する。例えば、エネルギー線の発生源であれば、マグネトロン、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ、LED光源、レーザ光源、金属ターゲットに高速電子線を照射するX線源、放射性同位元素の崩壊によるガンマ線源、シンクロトロン(放射光)、熱電子を高電圧で加速して得る高圧電子線源、FIB(収束イオンビーム)などがあり、照射方法も、光源から直接照射したり、狭い領域に収束させた活性エネルギー線を走査して広い領域に照射したり、活性エネルギー線を広い領域に拡大して同時に照射する方法も用いることができる。
より具体的には、前述の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。光以外の電磁エネルギー照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。
条件としては、対象となる化合物に合わせて照射線の種類や中心エネルギーを選んだり、素子構造や膜厚に合わせて、照射領域や時間を適宜選定したりする。好ましくは、変化させたい結合の結合エネルギーに合わせて線源や照射エネルギー・時間を選定する。具体的な照射時間としては、必要十分な架橋度を得るための条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
加熱および光などの活性エネルギー線の照射は、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
このようにして形成される正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
<発光層5>
正孔注入層3の上、または正孔輸送層4を設けた場合には正孔輸送層4の上には発光層5が設けられる。発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極2から注入された正孔と、陰極9から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
<発光層の材料>
発光層5は、その構成材料として、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔輸送の性質を有する化合物(正孔輸送性化合物)、あるいは、電子輸送の性質を有する化合物(電子輸送性化合物)を含有する。発光材料をドーパント材料として使用し、正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物などをホスト材料として使用してもよい。発光材料については特に限定はなく、所望の発光波長で発光し、発光効率が良好である物質を用いればよい。更に、発光層5は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。なお、湿式成膜法で発光層5を形成する場合は、何れも低分子量の材料を使用することが好ましい。
(発光材料)
発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。また、青色は蛍光発光材料を用い、緑色や赤色は燐光発光材料を用いるなど、組み合わせて用いてもよい。
なお、溶剤への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることが好ましい。
以下、発光材料のうち蛍光発光材料の例を挙げるが、蛍光色素は以下の例示物に限定されるものではない。
青色発光を与える蛍光発光材料(青色蛍光色素)としては、例えば、ナフタレン、ペリレン、ピレン、クリセン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼンおよびそれらの誘導体等が挙げられる。
緑色発光を与える蛍光発光材料(緑色蛍光色素)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、Al(CNO)などのアルミニウム錯体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光発光材料(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光発光材料(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
錯体の配位子としては、(ヘテロ)アリールピリジン配位子、(ヘテロ)アリールピラゾール配位子などの(ヘテロ)アリール基とピリジン、ピラゾール、フェナントロリンなどが連結した配位子が好ましく、特にフェニルピリジン配位子、フェニルピラゾール配位子が好ましい。ここで、(ヘテロ)アリールとは、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
燐光発光材料として、具体的には、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
発光材料として用いる化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。発光材料の分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、或いはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を来したりする場合がある。一方、発光材料の分子量が大き過ぎると、有機化合物の精製が困難となってしまったり、溶剤に溶解させる際に時間を要したりする傾向がある。
なお、上述した発光材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
発光層5における発光材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05重量%以上、通常35重量%以下である。発光材料が少なすぎると発光ムラを生じる可能性があり、多すぎると発光効率が低下する可能性がある。なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
(正孔輸送性化合物)
発光層5には、その構成材料として、正孔輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、正孔輸送性化合物のうち、低分子量の正孔輸送性化合物の例としては、前述の正孔注入層3における正孔輸送性化合物として例示した各種の化合物のほか、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence,1997年,Vol.72−74,pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications,1996年,pp.2175)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals,1997年,Vol.91,pp.209)等が挙げられる。
なお、発光層5において、正孔輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
発光層5における正孔輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、通常65重量%以下である。正孔輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の正孔輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
(電子輸送性化合物)
発光層5には、その構成材料として、電子輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、電子輸送性化合物のうち、低分子量の電子輸送性化合物の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)等が挙げられる。なお、発光層5において、電子輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
発光層5における電子輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、通常65重量%以下である。電子輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の電子輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
発光層5は上述のとおり、バンク区画領域16内に形成され、特にインクジェット法により形成されることが好ましい。この場合、上記材料を適切な溶剤に溶解させて発光層形成用組成物を調製し、それを用いて成膜することにより形成する。
発光層5を本発明に係る湿式成膜法で形成するための発光層形成用組成物に含有させる発光層用溶剤としては、発光層5の形成が可能である限り任意のものを用いることができる。発光層用溶剤の好適な例は、上記正孔注入層形成用組成物で説明した溶剤と同様である。
発光層5を形成するための発光層形成用組成物に対する発光層用溶剤の比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.01重量%以上、通常99.9999重量%以下、である。なお、発光層用溶剤として2種以上の溶剤を混合して用いる場合には、これらの溶剤の合計がこの範囲を満たすようにする。
また、発光層形成用組成物中の発光材料、正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物等の固形分濃度としては、通常0.01重量%以上、通常70重量%以下である。この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると膜に欠陥が生じる可能性がある。
発光層形成用組成物を湿式成膜後、得られた塗膜を乾燥し、溶剤を除去することにより、発光層5が形成される。具体的には、上記正孔注入層3の形成において記載した方法と同様である。湿式成膜法の方式は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されず、前述のいかなる方式も用いることができる。
発光層5の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。発光層5の膜厚が、薄すぎると膜に欠陥が生じる可能性があり、厚すぎると駆動電圧が上昇する可能性がある。
<正孔阻止層>
発光層5と後述の電子注入層8との間に、正孔阻止層6を設けてもよい。正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極9側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層6は、陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達するのを阻止する役割と、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。
正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層6の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号公報に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層6の材料として好ましい。
なお、正孔阻止層6の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
正孔阻止層6の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
{電子輸送層}
発光層5と後述の電子注入層8の間に、電子輸送層7を設けてもよい。
電子輸送層7は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物より形成される。
電子輸送層7に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極9または電子注入層8からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
なお、電子輸送層7の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子輸送層7の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
電子輸送層7の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
<電子注入層>
電子注入層8は、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5へ注入する役割を果たす。
電子注入を効率よく行なうために、電子注入層8を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられ、その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は、通常、5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
なお、電子注入層8の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子注入層8の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
<陰極>
陰極9は、発光層5側の層に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極9の材料としては、前記の陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属またはそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
なお、陰極9の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
陰極9の膜厚は、通常、陽極2と同様である。
さらに、低仕事関数金属から成る陰極9を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
<その他の層>
本発明の有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極2と陰極9との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
有していてもよい層としては、例えば、電子阻止層が挙げられる。
電子阻止層は、正孔注入層3または正孔輸送層4と発光層5との間に設けられ、発光層5から移動してくる電子が正孔注入層3に到達するのを阻止することで、発光層5内で正孔と電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層5内に閉じこめる役割と、正孔注入層3から注入された正孔を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とがある。特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は電子阻止層を設けることが効果的である。
電子阻止層に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いこと等が挙げられる。更に、発光層5を湿式成膜法で作製する場合には、電子阻止層にも湿式成膜の適合性が求められる。このような電子阻止層に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号パンフレット)等が挙げられる。
なお、電子阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
また、以上説明した層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。例えば、図1の層構成であれば、基板1上に他の構成要素を陰極9、電子注入層8、電子輸送層7、正孔阻止層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極2の順に設けてもよい。
更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明の有機電界発光素子を構成することも可能である。
また、基板以外の構成要素(発光ユニット)を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V)等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
更には、本発明に係る有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
{有機電界発光素子本体の好適構造}
以下に、図2を参照して本発明の有機電界発光素子本体の好適構造である第1の電極と該第2の電極との間に、第1電荷輸送層と、該第1電荷輸送層上に積層された第2電荷輸送層と、該第2電荷輸送層上にパターン状に形成されたバンクと、該バンクにより区画された領域内に形成された機能性層とを有する有機電界発光素子本体について説明する。
図2は、本発明に係る有機電界発光素子のバンクおよび機能性層の形成手順の一例を示す模式的断面図である。
本発明に好適な有機電界発光素子本体を製造するには、まず、基板上に、第1の電極としての陽極を介して第1電荷輸送層と第2電荷輸送層を積層し、第2電荷輸送層上にバンクを形成し、該バンクによって区画された領域に1層または2層以上の機能性層を形成する。
即ち、まず、前述の如く、基板1上に陽極2、第1の電荷輸送層としての正孔注入層3、および第2の電荷輸送層としての正孔輸送層4を形成する。正孔注入層3と正孔輸送層4は、陽極2が形成された基板1上の全面(本発明において全面とは、全面およびほぼ全面であることを意味する)に形成される(図2(a))。
次いで、以下の手順で正孔輸送層4上にバンク11を形成する。
バンク11の形成方法は特に限定されるものではないが、フォトリソグラフィー法により形成されることが好ましく、正孔輸送層4上に感光性組成物を成膜して、露光、現像することによりバンク11を形成することが好ましい。また、現像後、バンク11で区画された領域内に、感光性組成物の残渣が残ると、有機電界発光素子としたときの発光に影響を及ぼす場合があるため、感光性組成物を成膜する前に、親水性化合物含有組成物を成膜して下引き層12を形成した後(図2(b))、この上に感光性組成物を成膜し(図2(c))、露光、現像に供することが好ましい(図2(d))。これにより、バンク11は、親水性化合物含有組成物により形成される下引き層12、感光性組成物により形成される硬化物層13の積層構造となる(図2(e))。バンク11は、このように2層または3層以上からなる積層体であってもよく、下引き層12のない単層からなるものであってもよい。
<下引き層の形成>
まず、親水性化合物含有組成物を用いて形成される下引き層12について説明する。
親水性化合物含有組成物は、親水性化合物を含有し、通常、さらに溶剤を含有する。
なお、以下において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の双方を含むことを意味し、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイル」なども同様の意味である。また、モノマー名の前に「(ポリ)」をつけたものは、当該「モノマー」と、その「ポリマー」との双方を含むことを意味し、「酸(無水物)」、「(無水)・・・酸」とは、「酸」とその「酸無水物」の双方を含むことを意味する。また、「酸(塩)基」とは、「酸基」とその「塩基」の双方を含むことを意味する。また、「(共)重合」とは「重合」と「共重合」の双方を含むことを意味する。また、本発明において、「全固形分」とは、組成物の構成成分のうち、溶剤を除くすべての成分を意味する。
また、各種の樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
この下引き層12の形成方法としては特に制限はないが、親水性化合物を含有する親水性化合物含有組成物を正孔輸送層4上に塗布して乾燥することにより形成することが好ましい。
親水性化合物含有組成物は、感光後に重合または硬化し、その後の現像工程における現像液に対して不溶若しくは難溶の性質を獲得する感光性組成物(いわゆるネガ型フォトレジスト)を含有する親水性化合物含有組成物であってもよいし、露光部が感光によって変化し、その後の現像工程における現像液に対して易溶の性質を獲得する組成物を含む感光性組成物(いわゆるポジ型フォトレジスト)を含有する親水性化合物含有組成物であってもよい。また、特に、無機系ネガ型感光性組成物を採用してもよい。その一例としては、ペルオキソポリタングステン酸水溶液が挙げられる。その調製方法としては、以下の文献
に記載のものが挙げられる。
Excimer laser exposure characteristics of inorganic resists based on peroxopolytungstic acids.Ishikawa,Akira;Okamoto,Hiroshi; Miyauchi,Katsuki;Kudo,Tetsuichi.Cent.Res.Lab.,Hitachi,Ltd.,Tokyo,Japan.Proceedings of SPIE-The International Society for Optical Engineering (1989),1086(Adv.Resist Technol.Process.6),180-5.
このような無機系感光性組成物を用いたときには、バンクで区画された領域は、界面反応の痕跡を検出することができず、該バンクを形成する以前の表面と同様に良好に保たれる。
このように下引き層12が感光性を有する場合には、通常、下記詳述するバンク用レジスト層13aとその感光型(ネガ型またはポジ型)が一致するようにする。
本発明において、親水性化合物とは、水に溶解または膨潤する化合物である。具体的には、分子内に、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸(塩)基、ホスホン酸(塩)基、アミノ基、アミド基、4級アンモニウム塩基などの官能基を有する化合物であることが好ましい。特に、親水性化合物は、有機化合物であることが好ましく、耐性を確保するため、親水性樹脂であることが好ましい。ここで、親水性樹脂とは、上記官能基を有する樹脂であり、通常は、上記官能基を含有する単位(モノマーやポリマー)を重合や縮合して得られる樹脂をいい、重量平均分子量(Mw)が1000〜2,000,000程度の高分子材料をいう。
親水性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、膠、カゼイン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチル澱粉、サクローズオクタアセテート、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、水溶性ポリアミド、無水マレイン酸共重合体、アラビアゴム、水溶性大豆多糖類、ホワイトデキストリン、プルラン、カードラン、キトサン、アルギン酸、酵素分解エーテル化デキストリン等の他、以下親水性モノマーを用いて(共)重合された(共)重合体などが挙げられる。
親水性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、イタコン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミンもしくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、ビニルスルホン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、ビニルピロリドン、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、アミノ基もしくはそれらの塩、水酸基、アミド基およびエーテル基などから選ばれる親水性基を有するモノマーが挙げられる。
また、親水性樹脂以外の親水性化合物としては、上記親水性モノマーとして例示したものが挙げられ、これらが親水性化合物含有組成物中にモノマーのまま含有されることも好ましい。
親水性化合物としては、上記例示の中で、ビニルピロリドンの(共)重合体、(メタ)アクリル酸の(共)重合体、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類などの親水性樹脂が好ましい。
本発明で用いる親水性化合物含有組成物は、これらの親水性化合物の1種を含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
親水性化合物は、親水性化合物含有組成物の全固形分中、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上で、100重量%以下含有されることが好ましい。
本発明に係る親水性化合物含有組成物には、上記親水性化合物の他、必要に応じて他の成分が含有されていてもよい。他の成分としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤、エチレン性不飽和化合物やその他反応性化合物、界面活性剤、フィラー、基板密着増強剤、酸やアルコールなどの現像促進剤、色材、熱重合防止剤、可塑剤、保存安定剤、表面保護剤などが挙げられる。特に、親水性化合物含有組成物中に光重合開始剤やエチレン性不飽和化合物を含有させることにより該組成物に感光性をもたせ、硬化物層13と共に露光時に重合させることも、それぞれの界面での接着性を確保する意味で有用である。
この場合に用いられる光重合開始剤やエチレン性不飽和化合物としては、例えば、後述の感光性組成物に含有される光重合開始剤やエチレン性不飽和化合物として例示するものなどを用いることができる。親水性化合物含有組成物が、光重合開始剤を含有する場合、その含有量は、組成物の全固形分中、通常0.01重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。親水性化合物含有組成物がエチレン性不飽和化合物を含有する場合、その含有量は、組成物の全固形分中、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、通常80重量%以下、好ましくは50重量%以下である。
親水性化合物含有組成物に含有される溶剤としては、親水性化合物含有組成物の固形分が溶解若しくは分散可能で、均一な塗布を可能とするものであればよく特に限定されないが、水および/またはアルコール系溶剤を用いることが好ましく、特に、水および/またはアルコール系溶剤が、親水性化合物含有組成物に含まれる溶剤の主成分であることが好ましい。
親水性化合物含有組成物に用いられるアルコール系溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メチル−3−エトキシブタノール、3−メチル−3−n−プロポキシブタノール、3−メチル−3−イソプロポキシブタノール、3−メチル−3−n−ブトキシシブタノール、3−メチル−3−イソブトキシシブタノール、3−メチル−3−sec−ブトキシブタノール、3−メチル−3−tert−ブトキシシブタノール、3−メトキシブタノール等のアルコキシアルコール類が挙げられる。
なお、親水性化合物含有組成物の溶剤としては、水、アルコール系溶剤以外の溶剤であってもよく、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン等のケトン類、3−メトキシブチルアセテート、ブチルジグリコールアセテート、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類などが挙げられる。これらは単独で用いても、水やアルコール系溶剤と混合して用いてもよい。
親水性化合物含有組成物に含まれる溶剤は、水、上述のアルコール系溶剤、およびその他の溶剤から選ばれる1種のみであってもよく、2種以上の混合溶剤であってもよい。
親水性化合物含有組成物中の、全固形分濃度は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上で、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
上記親水性化合物含有組成物を、正孔輸送層4上のほぼ全面に成膜することにより下引き層12を形成する際の方法としては、上記の湿式成膜法が挙げられる。また、成膜後の乾燥方法としては、ホットプレート、IRオーブン、またはコンベクションオーブンを使用して乾燥させる方法が好ましい。乾燥温度としては、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、通常200℃以下、好ましくは130℃以下の温度で加熱乾燥する。また、乾燥時間としては、15秒以上が好ましく、30秒以上が好ましく、5分以下が好ましく、3分以下が好ましい。乾燥は、温度を高めず、減圧チャンバー内で乾燥を行う減圧乾燥法であってもよく、また減圧乾燥と加熱乾燥との併用でもよい。
乾燥後に得られる下引き層12の膜厚は、特に限定されないが、下引き層12も含んだ出来上がりのバンク11の高さの1/3以下が好ましく、1/4以下であることが特に好ましく、また1/200以上であることが好ましく、1/50以上であることが特に好ましい。
また、下引き層12の具体的な膜厚は、5nm以上が好ましく、7nm以上がより好ましく、10nm以上が特に好ましく、4μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.5μm以下が特に好ましい。下引き層12の膜厚がこの下限を下回ると、下引き層12を形成したことによる効果が得られ難く、上限を上回ると、上述の如く、バンク11で区画された領域内に機能性層が均一に形成され難くなる。また、下引き層12に感光性を持たせない場合は、上層のバンク用レジスト層13aを保持するための製造条件、またはバンク用レジスト層13aの選択肢の幅が狭くなる。
<硬化物層の形成>
第2電荷輸送層である正孔輸送層4上または上記下引き層12上のほぼ全面に感光性組成物を成膜し、露光、現像することにより、バンク11を形成する。本発明では、バンク11のうち、感光性組成物が現像工程後も残留して構造体を形成した部分を硬化物層13という。すなわち、本発明では、露光現像前の感光性組成物により形成される層をバンク用レジスト層13aといい、バンク用レジスト層13aが露光現像により残留し、構造体、すなわちバンクを形成した状態となっているものを硬化物層13という。
まず、感光性組成物について説明する。感光性組成物は、通常、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤および溶剤を含有する。さらに、バインダー樹脂、架橋剤、表面改質剤、撥インク性成分等を含有することが好ましい。また、着色剤、塗布性向上剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、エポキシ化合物、その他の樹脂等を適宜配合することができる。
(エチレン性不飽和化合物)
本発明において、エチレン性不飽和化合物とは、エチレン性不飽和結合を分子内に1個以上有する化合物を意味する。重合性、架橋性、露光部と非露光部の現像液溶解性の差異を拡大できる等の点から、エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物であることが好ましい。特に、そのエチレン性不飽和結合は(メタ)アクリロイルオキシ基に由来する(メタ)アクリレート化合物が更に好ましい。
感光性組成物中のエチレン性不飽和化合物の含有割合は、全固形分に対して通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下である。この下限を下回ると、露光の際に充分な感度が得られない恐れがあり、上限を上回ると好ましいバンク形状を確保できない恐れがある。
感光性組成物中に、エチレン性不飽和化合物は、1種のみ含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。2種以上が含まれる場合、上記含有割合は2種以上の合計を表す。
エチレン性不飽和結合を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不
飽和カルボン酸、およびそのアルキルエステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、スチレン等が挙げられる。
エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル類、(メタ)アクリロイルオキシ基含有ホスフェート類、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とポリイソシアネート化合物とのウレタン(メタ)アクリレート類、および、(メタ)アクリル酸またはヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とポリエポキシ化合物とのエポキシ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
エチレン性不飽和化合物としては、不飽和カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル類またはヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とポリイソシアネート化合物とのウレタン(メタ)アクリレート類が好ましく、不飽和カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル類がより好ましく、中でもペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等5官能以上の不飽和カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル類が特に好ましい。
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、活性光線によりエチレン性不飽和化合物のエチレン性不飽和結合を重合させる化合物であれば特に限定されるものではなく、公知の光重合開始剤を用いることができる。
感光性組成物中の光重合開始剤の含有割合としては、全固形分に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上であり、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。この下限を下回ると、硬化性が低下する場合があり、上限を上回ると基板に対する密着性が低下する場合がある。
エチレン性不飽和化合物に対する光重合開始剤の配合比としては、(エチレン性不飽和化合物)/(光重合開始剤)(重量比)の値として、通常1/1〜100/1、好ましくは2/1〜50/1である。エチレン性不飽和化合物と光重合開始剤との配合比がこの範囲を逸脱すると、密着性や硬化性が低下する場合がある。
感光性組成物中に、光重合開始剤は、1種のみ含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。2種以上が含まれる場合、上記含有割合は2種以上の合計を表す。
光重合開始剤として具体的には、ハロメチル化トリアジン誘導体、ハロメチル化オキサジアゾール誘導体、ヘキサアリールビイミダゾール誘導体、ベンゾインアルキルエーテル類、アントラキノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、安息香酸エステル誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アンスロン誘導体、チタノセン誘導体、オキシムエステル系化合物などが挙げられる。
その他、本発明で用いることができる光重合開始剤としては、ファインケミカル、1991年3月1日号、Vol.20、No.4,p16〜p26や、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特公昭45−37377号公報、特開昭58−40302号公報、特開平10−39503号公報等に記載されているものが挙げられる。
光重合開始剤には、感度向上を目的として、水素供与性化合物や熱重合開始剤を併用してもよい。この場合、感光性組成物中における、水素供与性化合物や熱重合開始剤の含有割合は、光重合開始剤の一部として考える。光重合開始剤と水素供与性化合物と熱重合開始剤との併用割合としては、光重合開始剤に対して、水素供与性化合物または熱重合開始剤を5〜300重量%とすることが好ましい。
水素供与性化合物としては、メルカプト基含有化合物、多官能チオール化合物、フェニルグリシン、フェニルアラニンなどのアンモニウム塩またはナトリウム塩誘導体、フェニルアラニンのエステル誘導体などが挙げられる。また、熱重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物、過酸化水素等が挙げられる。
(溶剤)
溶剤としては、特に制限はないが、水あるいは有機溶剤が挙げられる。溶剤は1種を単独でもしくは2種以上を混合して使用することができる。
有機溶剤としては、グリコールモノアルキルエーテル類、グリコールジアルキルエーテル類、グリコールアルキルエーテルアセテート類、グリコールジアセテート類、アルキルアセテート類、エーテル類、ケトン類、1価または多価アルコール類、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、芳香族炭化水素類、鎖状または環状エステル類、アルコキシカルボン酸類、ハロゲン化炭化水素類、エーテルケトン類、ニトリル類等が挙げられる。
上記に該当する市販の溶剤としては、ミネラルスピリット、バルソル#2、アプコ#18ソルベント、アプコシンナー、ソーカルソルベントNo.1およびNo.2、ソルベッソ#150、シェルTS28 ソルベント、カルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ジグライム(いずれも商品名)などが挙げられる。
上記溶剤は、感光性組成物中の各成分を溶解または分散させることができるもので、感光性組成物の使用方法に応じて選択されるが、沸点が60〜280℃の範囲のものを選択することが好ましい。より好ましくは70℃以上、260℃以下であり、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−1−ブチルアセテート、イソプロパノール等が好ましい。
溶剤は、感光性組成物溶液中の全固形分の割合が、通常10重量%以上、好ましくは15重量%以上、通常90重量%以下、好ましくは50重量%以下となるように使用されることが好ましい。感光性組成物中の全固形分濃度がこの下限を下回ると、均一な塗膜が得られない恐れがあり、上限を上回ると必要な膜厚に制御できない恐れがある。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、現像液で現像可能な樹脂であれば特に限定されないが、現像液としてアルカリ現像液が好ましいため、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル酸系樹脂、エチレン性不飽和基とカルボキシ基とを含有する樹脂、変性ノボラック樹脂、カルボキシ基含有ウレタン樹脂、変性エポキシ樹脂、変性ノボラック樹脂、カルド樹脂、等が好適に用いられるが、各種エチレン性不飽和基とカルボキシ基とを含有する樹脂が特に好ましい。
バインダー樹脂の含有割合は、全固形分に対して、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。この下限を下回ると、バンクの形状確保が困難となる場合があり、上限を上回ると、感度や現像性の低下を招く場合がある。
感光性組成物中に、バインダー樹脂は、1種のみ含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。2種以上が含まれる場合、上記含有割合は2種以上の合計を表す。
バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜100,000の範囲が好ましい。重量平均分子量が1,000未満の場合は均一な塗布膜を得るのが難しく、また、100,000を超える場合は現像性が低下する傾向がある。
以下、アクリル酸系樹脂、エチレン性不飽和基とカルボキシ基とを含有する樹脂、変性ノボラック樹脂について説明する。
[A]アクリル酸系樹脂
アクリル酸系樹脂としては、アルカリ可溶性を確保するために側鎖または主鎖にカルボキシ基またはフェノール性水酸基を有する単量体由来の構成成分を含むことが好ましく、高アルカリ性溶液での現像が可能な樹脂が好ましい。
例えば、(メタ)アクリル酸系(共)重合体またはカルボキシ基を有する(メタ)アクリル酸系樹脂(中でも(メタ)アクリル酸エステルを含む(共)重合体)であることが好ましい。これらのアクリル酸系樹脂は、種々の単量体と組合せて性能の異なる共重合体を得ることができ、かつ、製造方法が制御し易い利点がある。
[B]エチレン性不飽和基とカルボキシ基を含有する樹脂
エチレン性不飽和基とカルボキシ基とを含有する樹脂としては、公知のエチレン性不飽和基とカルボキシ基とを少なくとも一つずつ有する樹脂の1種または2種以上を用いることが好ましい。
このような樹脂としては、アルカリ現像性等の面から、側鎖にエチレン性不飽和基を有するカルボキシ基含有ビニル系樹脂、酸変性型エポキシ(メタ)アクリレートが好適である。
側鎖にエチレン性不飽和基を有するカルボキシ基含有ビニル系樹脂としては、カルボキシ基含有ビニル系樹脂とエポキシ基含有不飽和化合物との反応生成物、2種以上の不飽和基を有する化合物と不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、E−R−N−T樹脂等が挙げられる。尚、E−R−N−T樹脂とは、(E)成分:エポキシ基含有(メタ)アクリレートを5〜90モル%と、(R)成分:(E)成分と共重合し得る他のラジカル重合性化合物を10〜95モル%とを共重合し、得られた共重合体に含まれるエポキシ基の10〜100モル%に、(N)成分:不飽和一塩基酸を付加し、この(N)成分を付加したときに生成する水酸基の10〜100モル%に、(T)成分:多塩基酸無水物を付加して得られる樹脂である。
酸変性型エポキシ(メタ)アクリレートとしては、エポキシ樹脂のα,β−不飽和基含有カルボン酸付加体に、多価カルボン酸および/またはその無水物が付加された、不飽和基およびカルボキシ基含有エポキシ樹脂が挙げられる
[C]変性ノボラック樹脂
変性ノボラック樹脂は、ノボラック樹脂の1種または2種以上と不飽和基含有エポキシ化合物の1種または2種以上を反応させ、この反応物の水酸基にさらに多塩基酸および/またはその無水物の1種または2種以上を付加させることで得られる樹脂である(ただし、ノボラック樹脂の代りにレゾール樹脂を用いてもよい。)。
(アミノ化合物)
感光性組成物には、アミノ化合物を架橋剤として用いることができる。感光性組成物中の架橋剤の含有割合としては、全固形分に対して、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下である。また、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上である。この上限を上回ると、感光性組成物の保存安定性が悪化する可能性がある。また、下限を下回ると硬化促進効果が期待できない。アミノ化合物としては、例えば、官能基としてメチロール基、それを炭素数1〜8のアルコール縮合変性したアルコキシメチル基を少なくとも2個有するアミノ化合物が挙げられる。
(表面改質剤、現像改良剤)
表面改質剤あるいは現像改良剤としては、例えば公知の、カチオン性、アニオン性、ノニオン性、フッ素系、シリコン系界面活性剤を用いることができる。また、現像改良剤と
して、有機カルボン酸或いはその無水物など公知のものを用いることもできる。また、その含有量は、感光性組成物の全固形分に対して、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
(撥インク性成分)
撥インク性成分は、バンクで区画された領域内に形成される有機薄膜を形成するインクをはじく性質を有する成分であり、感光性組成物がこのような撥インク性成分を含有することにより、該インクのバンクに対する接触角が20°以上、より好ましくは30°以上、特に好ましくは45°以上となるものである。撥インク性成分としては、バンクに撥インク性を持たせる効果があるものであればよく、特に限定されないが、フッ素含有化合物やシリコン含有化合物が挙げられ、フッ素含有化合物が好ましい。
フッ素含有化合物としては、パーフルオロアルキル基を含む化合物(パーフルオロアルキル基含有化合物)が好ましく、例えば、特開平7−35916号公報、特開平11−281815号公報、国際公開2004−042474号パンフレット、特開2005−60515号公報、特開2005−315984号公報、特開2006−171086号公報等に開示されている撥液性化合物などの他、BYK−340(ビッグケミー社製)、モディパーF200、F600、F3035(以上、日油社製)フタージェントMシリーズ、Sシリーズ、Fシリーズ、Gシリーズ、Dシリーズ、オリゴマーシリーズ(以上、ネオス社製)、ユニダイン(ダイキン工業社製)、トリフロロプロピルトリクロロシラン(信越シリコーン社製)、サーフロンS−386(AGCセイミケミカル社製)等の市販品や、パーフルオロ基含有アクリルモノマーを成分として共重合した樹脂等も挙げられる。さらには安全性に懸念がある炭素数が6を超えるパーフルオロアルキル基を回避できるパーフルオロポリエーテル基などを含む化合物等も有効である。
また、フッ素含有化合物としては、フッ素化エポキシ樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、フッ素化ポリアミド樹脂、フッ素化ポリウレタン樹脂、フッ素化シロキサン樹脂およびそれらの変性樹脂なども用いることができる。
また、架橋性基を有するフッ素含有化合物も現像処理の際に流れ出る可能性が低いので好ましい。この架橋性基を有するフッ素含有化合物としては、例えばメガファックRS−101、RS−102、RS−105、RS−401、RS−402、RS−501、RS−502(以上、DIC社製)、オプツールDAC(ダイキン工業社製)、パーフルオロ(メタ)アクリレート、パーフルオロジ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
感光性組成物中のフッ素含有化合物の含有割合は、フッ素含有化合物のフッ素含有量によっても異なり、フッ素含有量(フッ素含有化合物のフッ素濃度)が10重量%以上の場合は、感光性組成物の全固形分に対して、フッ素含有化合物の含有割合は0.001重量%以上が好ましく、0.05重量%以上がより好ましく、10重量%以下が好ましく、6重量%以下がより好ましい。フッ素含有量が10重量%より少ない場合、フッ素含有化合物の含有割合は感光性組成物の全固形分に対して0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、70重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましい。この下限を下回ると、バンクの撥液性が不十分で混色してしまう場合があり、上限を上回ると現像性の確保が困難となる場合がある。
感光性組成物中に、フッ素含有化合物は、1種のみ含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。2種以上が含まれる場合、上記含有割合は2種以上の合計を表す。
(着色剤)
着色剤としては、顔料、染料等公知の着色剤を用いることができる。また、例えば、顔料を用いる際に、その顔料が凝集したりせずに安定して感光性組成物中に存在できるよう
に、公知の分散剤や分散助剤が併用されてもよい。特にバンクを黒色に着色することで、鮮明な画素が得られる効果がある。黒色着色剤としては黒色染料や、カーボンブラック、チタンブラックなどの他、有機顔料を混合させて黒く着色することも低導電性を持たせる効果として有効である。
着色剤の含有量としては感光性組成物の全固形分に対して、通常60重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
(重合禁止剤、酸化防止剤)
感光性組成物には、安定性向上の観点等から、ハイドロキノン、メトキシフェノール等の重合禁止剤や、2,6−ジ−tert−ブチル−4−クレゾール(BHT)等のヒンダードフェノール系の酸化防止剤を含有することが好ましい。その含有量としては、感光性組成物の全固形分に対して、通常5ppm以上1000ppm以下、好ましくは10ppm以上600ppm以下の範囲である。この下限を下回ると、安定性が悪化する傾向となる。上限を上回ると、例えば光および/または熱による硬化の際に、硬化が不十分となる可能性がある。
(シランカップリング剤)
感光性組成物には、基板との密着性を改善するため、シランカップリング剤を添加することも好ましい。シランカップリング剤の種類としては、エポキシ系、メタクリル系、アミノ系、イミダゾール系等種々のものが使用できる。その含有割合は、感光性組成物の全固形分に対して、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下である。
(エポキシ化合物)
感光性組成物には、硬化性や基板との密着性を改善するため、エポキシ化合物を添加することも好ましい。
エポキシ化合物としては、所謂エポキシ樹脂の繰返し単位を構成する、ポリヒドロキシ化合物とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエーテル化合物、ポリカルボン酸化合物とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル化合物、および、ポリアミン化合物とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルアミノ化合物が挙げられる。エポキシ化合物の含有量としては、感光性組成物の全固形分に対して、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下である。上限を上回ると、感光性組成物の保存安定性が悪化する可能性がある。
(感光性組成物の塗布)
上述のような感光性組成物を、下引き層12上に塗布して、バンク用レジスト層13aを形成する際の塗布方法としては、上記湿式成膜法が挙げられる。中でも、ダイコート法が好ましい。
感光性組成物の塗布量は、乾燥膜厚として、下引き層12も含めたバンク11の高さが通常0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは1μm以上、通常10μm以下、好ましくは9μm以下、より好ましくは7μm以下のような膜厚となる量である。この際、乾燥膜厚あるいは最終的に形成されたバンク11の高さが、基板全域に渡って均一であることが重要である。このばらつきが大きい場合には、有機薄膜をパターニングした基板にムラ欠陥を生ずることとなる。
(乾燥)
下引き層12上に感光性組成物を塗布した後の乾燥は、ホットプレート、IRオーブン、またはコンベクションオーブンを使用することが好ましい。
乾燥条件は、感光性組成物の溶剤成分の種類、使用する乾燥機の性能などに応じて適宜選択することができ、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、通常130℃以下、好ましくは110℃以下の温度で乾燥する。また、乾燥時間としては、15秒以上が好ましく
、30秒以上が好ましく、5分以下が好ましく、3分以下が好ましい。乾燥温度が低過ぎたり乾燥時間が短い場合には十分に乾燥を行うことができず、その後の露光における感度が不安定となり、乾燥温度が高過ぎたり、乾燥時間が長過ぎると、生産性低下や、基板、その他の層の熱劣化の問題があり、好ましくない。
なお、乾燥は、温度を高めず、減圧チャンバー内で乾燥を行う減圧乾燥法であってもよく、また加熱乾燥との併用でもよい。
(バンク形成工程)
上述のように下引き層12の上に、撥インク性成分を含有する感光性組成物を全面塗布、乾燥することでバンク用レジスト層13aを形成した後、露光マスク14を用いてバンクパターンを露光し、さらに非画像部を下引き層12と共に現像処理で除去することにより、バンク11を形成する。
<露光>
露光は、感光性組成物を塗布、乾燥して形成されたバンク用レジスト層13a上に、ネガの露光マスク14(マスクパターン)を重ね、この露光マスク14を介し、紫外線または可視光線等の光活性線15の光源を照射して行う。このように露光マスク14を用いて露光を行う場合には、露光マスク14をバンク用レジスト層13aに近接させる方法や、露光マスク14をバンク用レジスト層13aから離れた位置に配置し、該露光マスク14を介した露光光を投影する方法によってもよい。
また、露光マスク14を用いないレーザー光による走査露光方式によってもよい。
この際、必要に応じ、酸素によるバンク用レジスト層13aの感度の低下を防ぐため、脱酸素雰囲気下で露光を行ったり、バンク用レジスト層13a上にポリビニルアルコール層などの酸素遮断層を形成した後に露光を行ってもよい。
上記の露光に使用される光源は、特に限定されるものではない。光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、蛍光ランプなどのランプ光源や、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー、青紫色半導体レーザー、近赤外半導体レーザーなどのレーザー光源などが挙げられる。特定の波長の光を照射して使用する場合には、光学フィルタを利用することもできる。
光学フィルタとしては、例えば薄膜で露光波長における光透過率を制御可能なタイプでもよく、その場合の材質としては、例えばCr化合物(Crの酸化物、窒化物、酸窒化物、フッ化物など)、MoSi、Si、W、Al等が挙げられる。
露光量としては、通常、1mJ/cm以上、好ましくは5mJ/cm以上、より好ましくは10mJ/cm以上であり、通常300mJ/cm以下、好ましくは200mJ/cm以下、より好ましくは150mJ/cm以下である。
また、近接露光方式の場合には、露光対象とマスクパターンとの距離としては、通常10μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは75μm以上であり、通常500μm以下、好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下である。
<現像>
上記の露光を行った後、現像することで、画像パターンを形成することができる。現像に用いる現像液としては、限定されるものではないが、アルカリ性化合物の水溶液や有機溶剤を用いることが好ましい。
現像液には、さらに界面活性剤、緩衝剤、錯化剤、染料または顔料を含ませることができる。
アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、水酸化アンモニウムなどの無機アルカリ性化合物や、モノ−・ジ−またはトリエタノールアミン、モノ−・ジ−またはトリメチルアミン、モノ−・ジ−またはトリエチルアミン、モノ−またはジイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノ−・ジ−またはトリイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリンなどの有機アルカリ性化合物が挙げられる。これらのアルカリ性化合物は、2種以上の混合物であってもよい。
なお、本発明においては、素子性能への悪影響が少ない点で現像液として、有機アルカリ性化合物の水溶液を用いることが好ましい。
この場合、この有機アルカリ水溶液の有機アルカリ性化合物濃度は過度に高濃度であるとバンクにダメージを与える可能性があり、過度に低濃度であると充分な現像性が確保できない可能性がある。
有機溶剤としては、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよく、また水溶液として用いてもよい。
例えば、TMAH等の有機アルカリ0.05〜5重量%と、エチルアルコール等のアルコール類0.1〜20重量%を含む水溶液として用いてもよい。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤;アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキルスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類などのアニオン性界面活性剤;アルキルベタイン類、アミノ酸類などの両性界面活性剤;が挙げられる。
現像処理の方法については特に制限は無いが、通常10℃以上、好ましくは15℃以上、通常50℃以下、好ましくは45℃以下の現像温度で、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法により行われる。
現像の際、非画像部の下引き層12はバンク用レジスト層13aとともに除去される。従って、非画像部にバンク用レジスト層13aおよび下引き層12は残留せず、非画像部には、下引き層12の下層の第2電荷輸送層(正孔輸送層4)が表出する。ここで、非画像部とは、露光、現像により除去される部分であって、バンク11として残る以外の部分をいう。
下引き層12は硬化物層13と基板1との界面に存在し、下引き層12と硬化物層13は完全に一体化したバンク11を形成するが、感光性組成物の塗布時に下引き層12は膜を維持しており、通常は、バンク11形成後も二層になっている様子が観察される。下引き層12は、親水性化合物を含有することが好ましい。また、硬化物層13は撥インク性成分を含有することが好ましく、この場合、撥インク性成分は硬化物層13の内部にあってもよいが、撥インク性を示すためには、表面に存在していることが好ましい。
<追露光および熱硬化処理>
現像の後、必要により上記の露光方法と同様な方法により追露光を行ってもよく、また熱硬化処理を行ってもよい。
追露光の条件としては、上記露光条件と同様である。
熱硬化処理条件の温度は、通常100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上、通常280℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下であり、時間は、通常5分以上、好ましくは20分以上、通常60分以下である。特に、撥インク性の発現には、熱硬化処理を200〜240℃で20〜60分程度実施することが好ましい。
<機能性層の形成>
本発明の有機電界発光素子の有機電界発光素子本体は、好ましくは、バンク11によって区画された領域(以下、「バンク区画領域」と称す場合がある。)16内に、1層または2層以上の機能性層17を有する(図1(f))。
バンク区画領域16内に形成される機能性層17は、1層であっても、2層以上であってもよいが、少なくとも1層は発光層であることが好ましい。また、発光層は、最下層、すなわち、バンク11が形成された第2電荷輸送層(図2では正孔輸送層4)に接する層であることが好ましい。
発光層5以外の層としては、有機電界発光素子の電極層の間(すなわち、陽極2と陰極9の間)に形成される層であればよい。
また、発光層は、通常、バンク区画領域16内にRGBなどの色ごとに区画されて形成されるが、その他の機能性層は、バンク11とバンク区画領域16とに連続して、基板1に対して全面に形成されるものであってもよい。
バンク11で区画された領域16内に発光層等の機能性層17を形成させるには、通常、機能性層の成分を溶剤に溶解または分散させた組成物をバンク区画領域16内に供給して乾燥させる。
この組成物をバンク区画領域16内に供給させる方法は特に限定されないが、インクジェット法(液滴吐出法)やノズルプリント法(液流吐出法)といったインク吐出型の塗布法が好ましく(特開昭59−75205号公報、特開昭61−245106号公報、特開昭63−235901号公報)、特にインクジェット法が好ましい。
インク吐出型の塗布法に用いられる機能性層成膜用組成物の溶剤としては、高沸点溶剤成分を比較的多く添加することにより、ノズルの乾燥を防止することが一般的に知られており、溶剤の選定にはこれらを考慮した上で最適な溶剤を選定することが好ましい。
また、特に、インクジェット法の場合、20plの液滴サイズで被塗布面に着滴させたとき、着滴後1分経過後の液滴径が100〜400μmのような溶剤であることが好ましく、さらに好ましくはこの液滴径は150〜300μmである。これにより、膜厚ムラやピンホールの発生を防止し、かつ端部の直線性を確保することができる。
バンク区画領域16内に機能性層成膜用組成物を供給した後は、乾燥工程によって機能性層を形成させるが、この乾燥条件は公知の方法を自由に選定することができ、例えばホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブンなどが挙げられる。また、温度を高めず、減圧チャンバー内で乾燥を行う減圧乾燥法を組み合わせてもよい。また、その環境は、形成させる機能性層の特性に応じて、大気中、Nガス中、減圧中などを選定できる。
なお、発光層並びに図1に示す有機電界発光素子本体において、発光層5上に形成される正孔阻止層6、電子輸送層7、電子注入層8等の機能性層は、第1,第2の電荷輸送層として、バンク11の下層に形成されてもよく、また、機能性層として、バンク区画領域16内に形成されてもよい。
[有機EL表示装置]
本発明の有機EL表示装置は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機EL表示装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機EL表示装置を形成することができる。
[有機EL照明]
本発明の有機EL照明は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[実施例1]
<陽極の形成>
ガラス基板上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を120nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ製膜品)を通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極を形成した。陽極を形成した基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった。陽極を形成した基板のITOの表面粗さをVertScan(菱化システム社製)にて測定したところ、Ra:0.62nm Rmax:3.69nmであった。
<正孔注入層の形成>
正孔注入層形成用組成物の調製を行った。下記式P3の繰り返し構造を有する芳香族三級アミン高分子化合物(重量平均分子質量29600;ガラス転移温度177℃)2重量%と、下記式A1で表される電子受容性化合物0.8重量%を、溶剤として安息香酸エチルに溶解し、正孔注入層形成用組成物を調製した。
Figure 2013214533
上記洗浄された陽極を形成した基板上に、上記正孔注入層形成用組成物を用いて、スピンコート法にて乾燥膜厚30nmになるように、気温23℃、相対湿度50%の大気中で成膜を行なった。成膜後、ホットプレート上で80℃、1分間加熱乾燥した後、オーブン大気中で230℃、3時間ベークし、正孔注入層を形成した。
<正孔輸送層の形成>
次に、正孔輸送層形成用組成物の調製を行った。下記式(i)で表される構造のポリマーからなる架橋性化合物(重量平均分子量10000;ガラス転移温度138℃)を0.4重量%濃度となるように溶剤としてのトルエンに溶解し、正孔輸送層形成用組成物を調製した。トルエンは市販の脱水トルエンを用い、酸素濃度1.0ppm、水分濃度1.0ppmの窒素グローブボックス中で該正孔輸送層形成用組成物を調製した。
Figure 2013214533
前記正孔注入層を形成した基板を窒素グローブボックスに入れ、正孔注入層上に、上記正孔輸送層形成用組成物を用いてスピンコート法にて乾燥膜厚20nmになるように、気温23℃、相対湿度50%の大気中で成膜を行なった。成膜後、ホットプレート上で230℃にて、1時間ベークし、正孔輸送層を形成した。
正孔輸送層形成用組成物の調製、スピンコートおよびベークは、すべて酸素濃度1.0ppm、水分濃度1.0ppmの窒素グローブボックス中で大気暴露せずに行った。正孔輸送層の表面粗さを上記ITO表面と同様に測定したところ、その表面粗さは、Ra:0.49nm Rmax:3.65nmであった。
<バンクの形成>
次に、正孔輸送層までを形成した基板を大気中に取り出し、紫外光をカットしたイエロールームにてバンクの形成を行った。
下引き層を形成するため、親水性化合物含有組成物として、以下に示す親水性化合物0.67重量部、エチレン性不飽和化合物0.32重量部、光重合開始剤0.01重量部、表面改質剤0.0005重量部および溶剤として3−メトキシ−1−ブタノールを含有する組成物を調製した。調製はそれぞれの成分を配合し、よく混ぜ合わせることにより行った。
(親水性化合物含有組成物)
親水性化合物:ポリビニルピロリドン K−85(日本触媒社製)
エチレン性不飽和化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)
(日本化薬社製)
光重合開始剤:イルガキュア907(チバスペシャルケミカルズ社製)
Figure 2013214533
表面改質剤:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン BYK−330
(ビックケミー社製)
また、バンク用レジスト層(硬化物層)を形成するため、感光性組成物として以下に示す、バインダー樹脂を48重量部、エチレン性不飽和化合物(1)を24重量部、エチレン性不飽和化合物(2)を24重量部、エチレン性不飽和化合物(3)を5重量部、光重合開始剤を1.5重量部、表面改質剤を0.1重量部、撥インク性成分を1重量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する組成物を調製した。調製はそれぞれの成分を配合し、よく混ぜ合わせることにより行った。
(感光性組成物)
バインダー樹脂:以下の合成例で合成された樹脂
エチレン性不飽和化合物(1):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(DPHA)(日本化薬社製)
エチレン性不飽和化合物(2):デコナールアクリレートDA−314(ナガセケム
テックス社製)/以下の2化合物の混合物
Figure 2013214533
エチレン性不飽和化合物(3):以下式で表される化合物(長瀬産業社製)
Figure 2013214533
光重合開始剤:イルガキュア907(チバスペシャルケミカルズ社製)
表面改質剤:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン BYK−330
(ビックケミー社製)
撥インク性成分:メガファック RS−102(DIC社製)
(合成例/バインダー樹脂の製造)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145重量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。これに、スチレン20重量部、グリシジルメタクリレート57重量部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成(株)製「FA−513M」)82重量部を滴下し、更に、140℃で2時間攪拌し続けた。次に、反応容器内を空気置換し、アクリル酸27重量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7重量部およびハイドロキノン0.12重量部を投入し、120℃で6時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)52重量部、トリエチルアミン0.7重量部を加え、120℃で3.5時間反応させ、下記式で表されるアルカリ可溶性樹脂であるバインダー樹脂を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は約8000であった。
Figure 2013214533
まず、親水性化合物含有組成物を用いてスピンコート法により、乾燥膜厚0.1μmとなるように下引き層を正孔輸送層上のほぼ全面に成膜した。スピンコートは気温23℃、相対湿度50%の大気中で行なった。成膜後、ホットプレート上で80℃、60秒間加熱乾燥した。
さらに、形成された下引き層上に、感光性組成物をスピンコート法により、乾燥膜厚2.5μmとなるように該下引き層上のほぼ全面に成膜してバンク用レジスト層を形成した。スピンコートは気温23℃、相対湿度50%の大気中で行なった。成膜後、常温で1分間、真空乾燥し、さらにホットプレート上で80℃にて、60秒間加熱乾燥した。形成された下引き層とバンク用レジスト層の厚みは、全厚で2.6μmであった。
感光性組成物がネガ(光が照射された領域が硬化して残る)タイプであったことから、紫外光を遮光するクロムメッキが、感光性組成物を硬化させたい領域において紫外光を透過するように除去された石英基板のマスクを用いた。該マスクのマスクパターンは、紫外光透過部の幅が30μmで、クロムメッキ部(1辺70μmの正方形)がマスク面内で縦横に各20個、碁盤の目のように並んだアレイパターンであった。このアレイパターンの紫外光透過領域が、2mm幅にパターン形成された陽極の辺縁に対して全てはみ出すことなく位置合わせを行った。位置合わせ後、3kW高圧水銀灯を用いて100mJ/cmの露光条件にて露光を施した。照射後、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)の2.38重量%水溶液を現像液として、23℃において、水圧0.1MPaのシャワー現像を2分間施した後、純水スプレーで30秒間リンスし、圧空で水を切った。ついで、基板を窒素グローブボックス中に移し、窒素グローブボックス中で230℃、30分間ポストベークし、正孔輸送層上に下引き層と硬化物層の2層がこの順で積層されたバンクを形成した。形成されたバンクは全厚2.6μm、開口部が1辺70μmの長さである略正方形となった。また、断面形状は、逆テーパー部分を含む略きのこ状であった。
<発光層の形成>
次に、機能性層として発光層を形成した。ホスト材料として、以下に示す有機化合物(C3)および(C4)、また、ドーパント材料として以下に示すイリジウム錯体(D2)を、(C3):(C4):(D2)=10:10:1(重量比)の比率で、溶剤であるシクロヘキシルベンゼンに溶解させ、インクジェット用インクとして用いられる、固形分濃度0.5重量%の発光層形成用組成物を調製した。
Figure 2013214533
この発光層形成用組成物をインクジェット装置に仕込み、正孔輸送層の上の該バンクで区画された領域(1辺70μm)1つ当たり液滴量25plで吐出し、発光層を形成した
。この際、20ノズル(該発光層形成用組成物を吐出する開口が20個ならんでいるノズル)を同時に使用して、20×20のバンク区画領域にインクを吐出した。終了後、速やかに発光層が形成された基板を減圧乾燥機に導入し、減圧下(10kPa)、130℃、1時間の
乾燥を行った。このようにして膜厚25nmの発光層を形成した。
<正孔阻止層の形成>
下記式(iii)で表される化合物を入れたモリブデン製ボートを通電加熱し、発光層が形成された基板上に蒸着を行った。蒸着条件は、蒸着時の真空度1.2×10−6Torr、(1.6×10−4Pa)、蒸着速度1.0Å/秒(0.1nm/sec)とし、膜厚10nmの正孔阻止層を形成した。
Figure 2013214533
<電子輸送層の形成>
下記式(iv)で表される化合物を入れたモリブデン製ボートを通電加熱し、正孔阻止層上に蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度1.2×10−6Torr(1.6×10−4Pa)、蒸着速度1.5Å/秒(0.15nm/sec)とし、膜厚30nmの電子輸送層を形成した。
Figure 2013214533
<電子注入層の形成>
電子輸送層までを形成した素子を一度真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して、正孔阻止層や電子輸送層の蒸着時と同様にして装置内の真空度が2×10−6Torr(2.7×10−4Pa)になるまで排気した。フッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.05Å/秒(0.005nm/sec)、真空度2.0×10−6Torr(2.7×10−4Pa)で蒸着して、0.5nmの膜厚で電子輸送層の上に成膜して電子注入層を形成した。
<陰極形成>
次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度4Å/秒(0.4nm/sec)、真空度5×10−6Torr(6.7×10−4Pa)を蒸着して、膜厚80nmのアルミニウム層よりなる陰極を形成した。
<視野角制限手段の形成>
以下の方法で視野角制限手段を形成した。
片面が表面粗さを小さく鏡面に近く形成されたTACフィルムの一面に、PVA(ポリビニルアルコール)にヨウ素を添加し1軸延伸し、直線偏光変換機能を付与したフィルム(直線偏光フィルム;厚み0.2mm)を貼り合わせたフィルムを用意した。
PETシート(厚み0.2mm)の両面に該直線偏光フィルムを貼り合わせて、有機EL表示装置の光取り出し面に配置し、視野角制限手段を形成した。このとき、貼り合わせた2枚の直線偏光フィルムの偏光方向は互いに45°ずらして配置した。
<視野角の評価>
得られた有機電界発光素子について、前述のFPD視野角測定評価装置によって測定する方法で視野角(x=50とした)を評価したところ、上記視野角制限手段形成前の有機電界発光素子の輝度視野角は160°であったのに対して、視野角制限手段形成後の有機電界発光素子の輝度視野角は120゜と狭くなった。
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
10 有機電界発光素子本体
11 バンク
12 下引き層
13 硬化物層
13a バンク用レジスト層
14 露光マスク
15 活性光線
16 バンク区画領域
17 機能性層
(1) 第1の電極と、該第1の電極と対向するように形成された第2の電極とを有し、該第1の電極と該第2の電極との間に、発光層を有する有機電界発光素子を用いた有機EL照明において、該第1および第2の電極のうちで光取出し面側に位置する電極の光取出し面側に、発光射出方向に沿って、少なくとも2回の直線偏光変換機能と、該機能の間に複屈折率が膜厚方向に分布を持った複屈折性を有する、単層または多層の視野角制限層を視野角制限手段として設けた有機電界発光素子を用いたことを特徴とする有機EL照明
) 該視野角制限層が、単層または多層フィルムであることを特徴とする、()に記載の有機EL照明
) 該視野角制限層が、単層板または多層積層板であることを特徴とする、()に記載の有機EL照明
) 該視野角制限手段が、制限する視野角の範囲を外部制御信号によって変更可能であることを特徴とする、(1)ないし()のいずれかに記載の有機EL照明
) 該第1の電極と該第2の電極との間に、第1電荷輸送層と、該第1電荷輸送層上に積層された第2電荷輸送層と、該第2電荷輸送層上にパターン状に形成されたバンクと、該バンクにより区画された領域内に形成された機能性層とを有することを特徴とする、(1)ないし()のいずれかに記載の有機EL照明
) 該機能性層が、発光層を含むことを特徴とする、(5)に記載の有機EL照明
また、ポリアリーレン誘導体としては、記式(III−1)および/または記式(III−2)からなる繰り返し単位に加えて、さらに下記式(III−3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。

Claims (9)

  1. 第1の電極と、該第1の電極と対向するように形成された第2の電極とを有し、該第1の電極と該第2の電極との間に、発光層を有する有機電界発光素子において、該第1および第2の電極のうちで光取出し面側に位置する電極の光取出し面側に視野角制限手段を設けたことを特徴とする有機電界発光素子。
  2. 該視野角制限手段が、発光射出方向に沿って、少なくとも2回の直線偏光変換機能と該機能の間に複屈折性を有する、単層または多層の視野角制限層を有することを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子。
  3. 該視野角制限層が、単層または多層フィルムであることを特徴とする、請求項2に記載の有機電界発光素子。
  4. 該視野角制限層が、単層板または多層積層板であることを特徴とする、請求項2に記載の有機電界発光素子。
  5. 該視野角制限手段が、制限する視野角の範囲を外部制御信号によって変更可能であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
  6. 該第1の電極と該第2の電極との間に、
    第1電荷輸送層と、
    該第1電荷輸送層上に積層された第2電荷輸送層と、
    該第2電荷輸送層上にパターン状に形成されたバンクと、
    該バンクにより区画された領域内に形成された機能性層とを有することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
  7. 該機能性層が、発光層を含むことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
  8. 請求項1ないし7のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を用いたことを特徴とする有機EL表示装置。
  9. 請求項1ないし7のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を用いたことを特徴とする有機EL照明。
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