しかしながら、従来の圧縮機で多段圧縮するには、多段化する段数に応じた複数の圧縮機構が必要であるため、圧縮機が大型化してしまったり、部品点数が増加してコストが増大するという問題がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成で多段圧縮を実現してCOPを向上させることができる圧縮機を提供することにある。
上述した目的を達成するため、本発明は、複数の圧縮機構のシリンダ室を複数に区画して各シリンダ室をそれぞれ直列に接続し、各シリンダ室で順次冷媒を圧縮するようにした。
具体的に、本発明は、シリンダ室(C)を有するシリンダ(21,51)と該シリンダ室(C)内に配置されたピストン(22,52)とを有する複数の圧縮機構(20,50)と、該圧縮機構(20,50)を駆動する駆動軸(33)とを備え、該駆動軸(33)の回転に伴って該シリンダ(21,51)と該ピストン(22,52)とを相対的に偏心回転運動させて該シリンダ室(C)で冷媒を圧縮する圧縮機を対象とし、次のような解決手段を講じた。
すなわち、第1の発明に係る圧縮機は、前記複数の圧縮機構(20,50)のうち少なくとも1つの前記シリンダ室(C)は、前記ピストン(22,52)によりそれぞれが独立した複数のシリンダ室(C1,C2,C3,C4)に区画され、
前記複数の圧縮機構(20,50)の各シリンダ室(C1,C2,C3,C4)は、それぞれ直列に接続されており、上流側のシリンダ室(C1,C2,C3,C4)で圧縮された冷媒が下流側のシリンダ室(C1,C2,C3,C4)に向かって流通して順次圧縮されることを特徴とするものである。
第1の発明に係る圧縮機では、シリンダ室(C)がピストン(22,52)によってそれぞれが独立した複数のシリンダ室(C1,C2,C3,C4)に区画された圧縮機構(20,50)を少なくとも1つ備えている。そして、複数の圧縮機構(20,50)の各シリンダ室(C1,C2,C3,C4)は、上流側のシリンダ室(C1,C2,C3,C4)で圧縮された冷媒が、下流側のシリンダ室(C1,C2,C3,C4)に向かって順に流通するようにそれぞれ直列に接続され、各シリンダ室(C1,C2,C3,C4)で順次冷媒が圧縮されるようになっている。
このような構成とすれば、簡単な構成で多段圧縮を実現でき、多段圧縮によって各圧縮行程における圧縮動力が低減してCOPを向上させることができる。具体的に、従来の圧縮機において多段圧縮する場合には、多段化する段数に応じた複数の圧縮機構が必要となり、圧縮機構が増加して圧縮機が大型化したり、部品点数が増加してコストが増大するという問題がある。
これに対して、本発明では、少なくとも1つの圧縮機構(20,50)のシリンダ室(C)を複数に区画してそれぞれ独立したシリンダ室(C1,C2,C3,C4)を形成し、各シリンダ室(C1,C2,C3,C4)に順次冷媒が流通するようにそれぞれ直列に接続して各シリンダ室(C1,C2,C3,C4)で順次冷媒を圧縮するようにしている。これにより、従来の圧縮機と同じ段数の多段圧縮を実現しても、圧縮機構の数を減らすことができるから、部品点数が少なくなって圧縮機の小型化や低コスト化を図ることができる。
第2の発明に係る圧縮機は、第1の発明に係る圧縮機において、
前記シリンダ(21,51)は、内側シリンダ部(21a,51a)と、該内側シリンダ部(21a,51a)の外周側に配置される外側シリンダ部(21b,51b)と、該内側シリンダ部(21a,51a)と該外側シリンダ部(21b,51b)とで区画された前記シリンダ室(C)とを有し、
前記ピストン(22,52)は、前記シリンダ室(C)に偏心して配置され且つ該シリンダ室(C)を内側シリンダ室(C1,C3)と外側シリンダ室(C2,C4)に区画する環状のピストン本体部(22b,52b)を有し、
前記内側シリンダ室(C1,C3)及び前記外側シリンダ室(C2,C4)は、前記シリンダ室(C)に配置されたブレード(23)により高圧側(Hp)と低圧側(Lp)とに区画されていることを特徴とするものである。
第2の発明に係る圧縮機では、シリンダ室(C)は、内側シリンダ部(21a,51a)と外側シリンダ部(21b,51b)とで区画されている。また、シリンダ室(C)は、内側シリンダ部(21a,51a)とピストン本体部(22b,52b)との間に形成される内側シリンダ室(C1,C3)と、ピストン本体部(22b,52b)と外側シリンダ部(21b,51b)との間に形成される外側シリンダ室(C2,C4)とに区画されている。そして、内側シリンダ室(C1,C3)及び外側シリンダ室(C2,C4)は、ブレード(23)によって冷媒の吸入側となる低圧側(Lp)と冷媒の吐出側となる高圧側(Hp)とに区画されている。このような構成とすれば、内側シリンダ室(C1,C3)及び外側シリンダ室(C2,C4)の高圧側(Hp)で圧縮された冷媒が、その低圧側(Lp)に漏れて圧縮効率が低下してしまうのを防止することができる。
第3の発明に係る圧縮機は、第1の発明に係る圧縮機において、
前記シリンダ(21,51)は、内側シリンダ部(21a,51a)と、該内側シリンダ部(21a,51a)の外周側に配置される外側シリンダ部(21b,51b)と、該内側シリンダ部(21a,51a)と該外側シリンダ部(21b,51b)とで区画された前記シリンダ室(C)と、該内側シリンダ部(21a,51a)と該外側シリンダ部(21b,51b)とを連結して該シリンダ室(C)を高圧側(Hp)と低圧側(Lp)とに区画するブレード(23)とを有し、
前記ピストン(22,52)は、前記シリンダ室(C)に配置され且つ前記ブレード(23)とブッシュ(27)を嵌合させる切欠部(29)が形成された環状のピストン本体部(22b,52b)とを有し、
前記駆動軸(33)の回転に伴って前記ピストン本体部(22b,52b)を前記ブレード(23)に沿って移動させながら前記ブッシュ(27)の中心に対して揺動させることで前記シリンダ室(C)で冷媒を圧縮させることを特徴とするものである。
第3の発明に係る圧縮機では、シリンダ室(C)は、内側シリンダ部(21a,51a)と外側シリンダ部(21b,51b)とで区画されている。また、シリンダ室(C)は、ブレード(23)により冷媒の吸入側となる低圧側(Lp)と冷媒の吐出側となる高圧側(Hp)とに区画されている。ピストン本体部(22b,52b)は、前記ブッシュ(27)の中心をブレード(23)に嵌合させてシリンダ室(C)に配置されている。そして、駆動軸(33)を回転させると、ピストン本体部(22b,52b)がブレード(23)に沿って移動し、低圧側(Lp)から吸入された冷媒が高圧側(Hp)で圧縮されて吐出される。
このような構成とすれば、ブレード(23)によってシリンダ室(C)の低圧側(Lp)と高圧側(Hp)とが区画されているから、高圧側(Hp)で圧縮された冷媒が低圧側(Lp)に漏れて圧縮効率が低下してしまうのを防止することができる。
第4の発明に係る圧縮機は、第1の発明に係る圧縮機において、
前記シリンダ(86)は、内側シリンダ部(86a)と、該内側シリンダ部(86a)の外周側に配置される外側シリンダ部(86b)と、該内側シリンダ部(86a)と該外側シリンダ部(86b)とで区画された前記シリンダ室(C)と、該内側シリンダ部(86a)と該外側シリンダ部(86b)とを連結して該シリンダ室(C)を高圧側(Hp)と低圧側(Lp)とに区画するブレード(23)とを有し、
前記ピストン(87)は、前記シリンダ室(C)に配置され且つ前記ブレード(23)とブッシュ(27)を嵌合させる切欠部(29)が形成された環状のピストン本体部(87a)を有し、
前記駆動軸(33)の回転に伴って前記ブレード(23)を前記ブッシュ(27)の中心で移動させながら該ブッシュ(27)の中心に対して前記シリンダ(86)を揺動させることで前記シリンダ室(C)で冷媒を圧縮させることを特徴とするものである。
第4の発明に係る圧縮機では、シリンダ室(C)は、内側シリンダ部(86a)と外側シリンダ部(86b)とで区画されている。また、シリンダ室(C)は、ブレード(23)により冷媒の吸入側となる低圧側(Lp)と冷媒の吐出側となる高圧側(Hp)とに区画されている。ピストン本体部(87a)は、ブレード(23)にブッシュ(27)の中心を嵌合させてシリンダ室(C)に配置されている。
そして、駆動軸(33)を回転させると、シリンダ(86)はブレード(23)をブッシュ(27)の中心で移動させながらその中心に対して揺動し、低圧側(Lp)から吸入された冷媒が高圧側(Hp)で圧縮されて吐出される。このように、シリンダ(86)をピストン(87)に対して移動させても、第2の発明に係る圧縮機と同様の効果を得ることができる。
第5の発明に係る圧縮機は、第3又は第4の発明に係る圧縮機において、
前記ピストン本体部(22b,52b)により前記シリンダ室(C)が内側シリンダ室(C1,C3)と外側シリンダ室(C2,C4)とに区画されて、それぞれが独立した2つのシリンダ室(C3,C4)を有する多段式の圧縮機構(50)と、
前記内側シリンダ室(C1)と前記外側シリンダ室(C2)とが連通した1つのシリンダ室(C)を有する単段式の圧縮機構(20)とを備え、
前記単段式の圧縮機構(20)の前記シリンダ室(C)で圧縮された冷媒が、前記多段式の圧縮機構(50)の前記外側シリンダ室(C4)と前記内側シリンダ室(C3)とに流通して順次圧縮されることを特徴とするものである。
第5の発明に係る圧縮機では、シリンダ室(C)は、内側シリンダ部(21a,51a)とピストン本体部(22b,52b)との間に形成される内側シリンダ室(C1,C3)と、ピストン本体部(22b,52b)と外側シリンダ部(21b,51b)との間に形成されることで内側シリンダ室(C1,C3)の容積よりも大きな容積を有する外側シリンダ室(C2,C4)とに区画されている。
そして、多段式の圧縮機構(50)は、内側シリンダ室(C3)と外側シリンダ室(C4)とがそれぞれ独立した2つのシリンダ室(C3,C4)を有している。一方、単段式の圧縮機構(20)は、内側シリンダ室(C1)と外側シリンダ室(C2)とが吸入側である低圧側(Lp)で連通した1つのシリンダ室(C)を有している。
そして、最も容積が大きい単段式の圧縮機構(20)のシリンダ室(C)には、次に容積が大きい多段式の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)が直列に接続されている。さらに、この外側シリンダ室(C4)には、最も容積が小さい内側シリンダ室(C3)が直列に接続されている。そして、最も上流側である単段式の圧縮機構(20)のシリンダ室(C)で圧縮された冷媒は、下流側に向かって流通して多段式の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)で圧縮され、最も下流側である内側シリンダ室(C3)に流通してさらに圧縮される。
このような構成とすれば、各シリンダ室(C,C3,C4)を容積が大きい順に接続したから、各シリンダ室(C,C3,C4)の容積効率を向上させることができる。具体的には、例えば、多段式の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)で圧縮された冷媒を単段式の圧縮機構(20)のシリンダ室(C)でさらに圧縮した場合には、外側シリンダ室(C4)で圧縮されて吐出された冷媒の吐出量が単段式の圧縮機構(20)のシリンダ室(C)への冷媒の吸入量となる。しかし、この冷媒の吸入量は、単段式の圧縮機構(20)のシリンダ室(C)の容積よりも少ないため、単段式の圧縮機構(20)のシリンダ室(C)の容積効率が低下してしまうおそれがある。
これに対して、本発明では、各シリンダ室(C,C3,C4)を容積が大きい順に接続して各シリンダ室(C,C3,C4)で順次圧縮するようにしたから、各シリンダ室(C,C3,C4)の容積効率を向上させることができる。
また、内側シリンダ室(C1)と外側シリンダ室(C2)とが連通した単段式の圧縮機構(20)のシリンダ室(C)に最初に冷媒を吸入させるようにしているから、冷媒の脈動を軽減することができる。
具体的に、例えば、多段式の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)に冷媒を吸入させる場合には、ピストン(22,52)とシリンダ(21,51)とが偏心回転運動するのに伴って、冷媒は外側シリンダ室(C4)に間欠的に吸入されることになるから、周期的な脈動が発生してしまう。
特に、圧縮する前のように流通する冷媒の流量が多い場合には、脈動が発生し易く、この脈動が大きくなって外側シリンダ室(C4)に接続された配管等が振動することで騒音が生じるおそれがある。そして、この騒音を抑制するためには、配管の管路途中等に騒音を低減させるためのマフラを接続する必要があるが、部品点数が増加してコストが増大してしまうという問題がある。
これに対して、本発明では、容積が大きい単段式の圧縮機構(20)のシリンダ室(C)に最初に冷媒を吸入させることで、冷媒の流量が多くてもシリンダ室(C)に吸入させることができるから、脈動を軽減することができる。その結果、振動による騒音を低減させるためのマフラが不要になるから、低コスト化を図ることができる。
第6の発明に係る圧縮機は、第3又は第4の発明に係る圧縮機において、
前記ピストン本体部(22b,52b)により前記シリンダ室(C)が内側シリンダ室(C1,C3)と外側シリンダ室(C2,C4)とに区画されて、それぞれが独立した2つのシリンダ室(C1,C2,C3,C4)を有する多段式の第1及び第2の圧縮機構(20,50)を備え、
前記第1の圧縮機構(20)の前記外側シリンダ室(C2)で圧縮された冷媒が、前記第2の圧縮機構(50)の前記外側シリンダ室(C4)と、該第1の圧縮機構(20)の前記内側シリンダ室(C1)と、該第2の圧縮機構(50)の前記内側シリンダ室(C3)とに流通して順次圧縮されることを特徴とするものである。
第6の発明に係る圧縮機では、シリンダ室(C)は、内側シリンダ部(21a,51a)とピストン本体部(22b,52b)との間に形成される内側シリンダ室(C1,C3)と、ピストン本体部(22b,52b)と外側シリンダ部(21b,51b)との間に形成されることで内側シリンダ室(C1,C3)の容積よりも大きな容積を有する外側シリンダ室(C2,C4)とに区画されている。そして、多段式の第1及び第2の圧縮機構(20,50)は、内側シリンダ室(C1,C3)と外側シリンダ室(C2,C4)とがそれぞれ独立した2つのシリンダ室(C1,C2,C3,C4)を有している。
そして、容積が大きい第1の圧縮機構(20)の外側シリンダ室(C2)と第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)とが直列に接続されている。この第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)には、この外側シリンダ室(C4)の容積よりも容積が小さい第1の圧縮機構(20)の内側シリンダ室(C1)が直列に接続されている。さらに、第1の圧縮機構(20)の内側シリンダ室(C1)には、第2の圧縮機構(50)の内側シリンダ室(C3)が直列に接続されている。
そして、最も上流側である第1の圧縮機構(20)の外側シリンダ室(C2)で圧縮された冷媒は、下流側に向かって流通して第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)で圧縮され、第1の圧縮機構(20)の内側シリンダ室(C1)に流通して圧縮され、最も下流側である第2の圧縮機構(50)の内側シリンダ室(C3)に流通してさらに圧縮される。
このような構成とすれば、各シリンダ室(C1,C2,C3,C4)を容積が大きい順に接続したから、各シリンダ室(C1,C2,C3,C4)の容積効率が向上してCOPを改善させることができる。
具体的には、例えば、第1の圧縮機構(20)の外側シリンダ室(C2)で圧縮した冷媒を、第1の圧縮機構(20)の内側シリンダ室(C1)で圧縮し、その後に第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)でさらに圧縮した場合には、第1の圧縮機構(20)の内側シリンダ室(C1)で圧縮されて吐出された冷媒の吐出量が、第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)への冷媒の吸入量となる。しかし、この冷媒の吸入量は、第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)の容積よりも少ないため、外側シリンダ室(C2)の容積効率が低下するおそれがある。
これに対して、本発明では、第1の圧縮機構(20)の外側シリンダ室(C2)で圧縮された冷媒は、第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)に流通して圧縮され、続いて第1の圧縮機構(20)の内側シリンダ室(C1)に流通して圧縮され、さらに第2の圧縮機構(50)の内側シリンダ室(C3)に流通して圧縮されるようにしたから、各シリンダ室(C1,C2,C3,C4)の容積効率が向上し、COPを改善させることができる。
第7の発明に係る圧縮機は、第1乃至第6の何れか1つの発明に係る圧縮機において、
前記複数の圧縮機構(20,50)の各シリンダ室(C1,C2,C3,C4)は、流通配管(61)を介して接続され、
前記流通配管(61)の管路途中には、マフラ(71)が接続されていることを特徴とするものである。
第7の発明に係る圧縮機では、複数の圧縮機構(20,50)の各シリンダ室(C1,C2,C3,C4)は、流通配管(61)を介してそれぞれ直列に接続されている。そして、流通配管(61)の管路途中には、マフラ(71)が接続されている。
このような構成とすれば、騒音を低減させるためのマフラ(71)を流通配管(61)に接続したから、冷媒による脈動によって流通配管(61)が振動することで発生する騒音を低減することができる。
第8の発明に係る圧縮機は、第1乃至第7の何れか1つの発明に係る圧縮機において、
前記圧縮機構(20,50)で圧縮される冷媒として、二酸化炭素を用いたことを特徴とするものである。
第8の発明に係る圧縮機では、二酸化炭素を循環させて冷凍サイクルを行う冷媒回路に接続されている。二酸化炭素は、フロンに比べて地球温暖化係数が極めて小さく、単位密度当たりの冷凍能力が高い冷媒であるから、冷媒としてフロンを用いた場合に比べて環境負荷を低減しつつ、COPを向上させることができる。また、多段化によるCOPの向上幅がフロン等の他の冷媒に比べて大きく、他の冷媒に適用する場合に比べて効果が大きい。
本発明によれば、少なくとも1つの圧縮機構(20,50)のシリンダ室(C)を複数に区画してそれぞれ独立したシリンダ室(C1,C2,C3,C4)を形成し、各シリンダ室(C1,C2,C3,C4)に順次冷媒が流通するようにそれぞれ直列に接続して各シリンダ室(C1,C2,C3,C4)で順次冷媒を圧縮するようにしている。これにより、従来の圧縮機と同じ段数の多段圧縮を実現しても、圧縮機構の数を減らすことができるから、部品点数が少なくなって圧縮機の小型化や低コスト化を図ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
<実施形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る圧縮機を備えた冷媒回路の概略図である。図1に示すように、圧縮機(1)は、冷凍サイクルを行う冷媒回路(80)に接続されている。冷媒回路(80)は、冷媒を圧縮する圧縮機(1)、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器(2)、冷媒を膨張させる膨張弁(3)及び冷媒を蒸発させる蒸発器(4)が冷媒配管(14)で順次接続されて構成されている。この圧縮機(1)は、蒸発器(4)から吸入した冷媒を圧縮して凝縮器(2)へ吐出する。
前記冷媒回路(80)には、冷媒として二酸化炭素が循環している。二酸化炭素は、フロンに比べて地球温暖化係数が極めて小さく、単位密度当たりの冷凍能力が高いから、冷媒としてフロンを用いた場合に比べて環境負荷を低減しつつ、COPを向上させることができる。また、多段化によるCOPの向上幅がフロン等の他の冷媒に比べて大きく、他の冷媒に適用する場合に比べて効果が大きい。
図2は、本実施形態1に係る圧縮機の構成を示す縦断面図である。図2に示すように、この圧縮機(1)は、ケーシング(10)内に、1つのシリンダ室(C)を有する単段式の第1の圧縮機構(20)、2つのシリンダ室(C3,C4)を有する多段式の第2の圧縮機構(50)、第1の圧縮機構(20)及び第2の圧縮機構(50)を駆動する駆動軸(33)及び駆動軸(33)を回転させる電動機(30)が収納され、全密閉型に構成されている。
前記ケーシング(10)は、円筒状の胴部(11)と、この胴部(11)の上端部に固定された上部鏡板(12)と、胴部(11)の下端部に固定された下部鏡板(13)とから構成されている。
前記胴部(11)には、第1の圧縮機構(20)のシリンダ室(C)に冷媒を吸入させる吸入配管(18)と、第2の圧縮機構(50)のシリンダ室(C3,C4)に冷媒を流通させる流通配管(61)とが胴部(11)を貫通して接続されている。この吸入配管(18)には、蒸発器(4)で蒸発した冷媒が吸入される。
前記上部鏡板(12)には、ケーシング(10)内の吐出空間(90)から冷媒を吐出する吐出配管(15)が上部鏡板(12)を貫通して接続されている。この吐出配管(15)から吐出された冷媒は、凝縮器(2)に向かって流通する。
前記第1の圧縮機構(20)及び第2の圧縮機構(50)は、ミドルプレート(35)を挟んで上下二段に重ねられて、ケーシング(10)の胴部(11)の内壁面に固定されている。なお、第1の圧縮機構(20)がケーシング(10)の底部側(図2の下側)に配置され、第2の圧縮機構(50)が電動機(30)側(図2の上側)に配置されている。
前記ミドルプレート(35)は、第1の圧縮機構(20)及び第2の圧縮機構(50)の後述するピストン側鏡板(22c,52c)の背面側の間に配置されている。そして、ミドルプレート(35)の上面と下面とには、それぞれ円環状のシールリング溝(81)が凹設されている。これらシールリング溝(81)には、第1の圧縮機構(20)及び第2の圧縮機構(50)の後述するピストン(22,52)をシリンダ(21,51)側に押し付けるためのシールリング(83)が嵌合されている。
前記電動機(30)は、ステータ(31)とロータ(32)とを備えている。ステータ(31)は、第2の圧縮機構(50)の上方に配置され、ケーシング(10)の胴部(11)の内壁面に固定されている。ロータ(32)には駆動軸(33)が連結されていて、駆動軸(33)がロータ(32)とともに回転するように構成されている。
前記駆動軸(33)は、第1の圧縮機構(20)の下端側からミドルプレート(35)及び第2の圧縮機構(50)を貫通して上方向に延び、ケーシング(10)内の中央に配置されている。駆動軸(33)には、駆動軸(33)の軸心より所定量だけ偏心し、駆動軸(33)の軸径よりも大径の偏心部(33a,33a)が軸方向に間隔をあけて上下に形成されている。下側の偏心部(33a)には、第1の圧縮機構(20)が位置し、上側の偏心部(33a)には、第2の圧縮機構(50)が位置している。また、上側の偏心部(33a)と下側の偏心部(33a)とは、同径に形成され、駆動軸(33)の軸心を中心として互いに180°位相がずれている。
前記駆動軸(33)の内部には、軸方向に延びる給油路(図示省略)が設けられている。また、駆動軸(33)の下端部には、給油ポンプ(34)が設けられている。そして、給油路は、給油ポンプ(34)から上方へ延びている。この構成により、ケーシング(10)内の底部に貯まる潤滑油を、この給油ポンプ(34)で給油路を通じて第1の圧縮機構(20)の摺動部及び第2の圧縮機構(50)の摺動部に供給するようにしている。
−第1の圧縮機構の構成−
図3(a)は、第1の圧縮機構の横断面図であり、図3(b)は、ピストンが図3(a)から180°回転したときの第1の圧縮機構の横断面図である。図2及び図3に示すように、前記第1の圧縮機構(20)は、円環状のシリンダ室(C)を有するシリンダ(21)と、シリンダ室(C)内に配置された円環状のピストン(22)とを備えている。
そして、前記シリンダ(21)が固定側で、ピストン(22)が可動側であり、駆動軸(33)の偏心部(33a)の回転に伴って、ピストン(22)がシリンダ(21)に対して偏心回転運動することで、シリンダ室(C)に吸入された冷媒を圧縮するようになっている。
前記シリンダ(21)は、円環状の内側シリンダ部(21a)と、内側シリンダ部(21a)よりも外周側に配置される円環状の外側シリンダ部(21b)と、内側シリンダ部(21a)と外側シリンダ部(21b)とで区画されたシリンダ室(C)と、シリンダ室(C)を高圧側(Hp)と低圧側(Lp)とに区画するブレード(23)と、肉厚で円板状のシリンダ側鏡板(21c)とを有している。
前記シリンダ側鏡板(21c)は、ケーシング(10)の胴部(11)の内壁面に固定されている。そして、シリンダ側鏡板(21c)の略中央には、駆動軸(33)と同心上に位置するように下側軸受部(16)が形成されて、駆動軸(33)が滑り軸受(16a)を介して摺動自在に嵌合されている。また、シリンダ側鏡板(21c)の上面には、内側シリンダ部(21a)と外側シリンダ部(21b)とが駆動軸(33)と同心上となるように上向きに突設されている。
前記ブレード(23)は、内側シリンダ部(21a)と外側シリンダ部(21b)とを連結して固定され、シリンダ室(C)を、冷媒が吸入される低圧側(Lp)と冷媒を圧縮して吐出する高圧側(Hp)とに区画して配置されている。具体的に、ブレード(23)は、内側シリンダ部(21a)の外周面と外側シリンダ部(21b)の内周面との対向する一部を切り欠いて形成された溝に嵌め込まれている。このような構成とすれば、シリンダ室(C)の高圧側(Hp)で圧縮された冷媒が、低圧側(Lp)に漏れて圧縮効率が低下してしまうのを防止することができる。
前記ピストン(22)は、内側シリンダ部(21a)よりも内側で下側の偏心部(33a)に摺動自在に嵌合される円環状の下側偏心軸受部(22a)と、シリンダ室(C)に配置され且つブレード(23)と揺動ブッシュ(27)とを嵌合させる切欠部(29)が形成された円環状のピストン本体部(22b)と、肉厚で円板状のピストン側鏡板(22c)とを有している。
前記ピストン側鏡板(22c)の下面には、下側偏心軸受部(22a)とピストン本体部(22b)とが下向きに突設されている。そして、下側の偏心部(33a)、下側偏心軸受部(22a)及びピストン本体部(22b)が同心上に配置されている。
前記下側偏心軸受部(22a)と内側シリンダ部(21a)との間には、内側シリンダ部(21a)の内周側で下側偏心軸受部(22a)の偏心回転動作を許容するための動作空間(25)が形成されている。
前記切欠部(29)には、ブレード(23)に対してピストン(22)をピストン本体部(22b)において揺動可能に連結する連結部材として、揺動ブッシュ(27)が嵌合されている。揺動ブッシュ(27)は、ブレード(23)に対して高圧側(Hp)に位置する吐出側ブッシュ(27a)と、ブレード(23)に対して低圧側(Lp)に位置する吸入側ブッシュ(27b)とから構成されている。吐出側ブッシュ(27a)と吸入側ブッシュ(27b)は、いずれも断面形状が略半円形で同一形状に形成され、フラット面同士が対向するように配置され、フラット面同士の間にブレード溝(28)が形成されている。
そして、前記ブレード溝(28)にブレード(23)が嵌合され、揺動ブッシュ(27a,27b)のフラット面がブレード(23)と実質的に面接触し、揺動ブッシュ(27a,27b)の円弧状の外周面がピストン(22)と実質的に面接触している。揺動ブッシュ(27a,27b)は、ブレード溝(28)にブレード(23)を挟んだ状態で、ブレード(23)の面方向に進退するように構成されている。また、揺動ブッシュ(27a,27b)は、ピストン(22)がブレード(23)に対して揺動するように構成されている。
したがって、前記揺動ブッシュ(27)は、揺動ブッシュ(27)の中心点を揺動中心としてピストン(22)がブレード(23)に対して揺動可能となり、且つピストン(22)がブレード(23)に対してブレード(23)の面方向へ進退可能となるように構成されている。
前記シリンダ室(C)は、ピストン本体部(22b)によって内側シリンダ室(C1)と外側シリンダ室(C2)とに区画されており、内側シリンダ室(C1)及び外側シリンダ室(C2)は、それぞれの高圧側(Hp)で冷媒が圧縮されるようになっている。そして、内側シリンダ室(C1)及び外側シリンダ室(C2)は、それぞれの低圧側(Lp)に冷媒が吸入されるようにピストン本体部(22b)に形成された吸入切欠部(62)によって連通しており、1つのシリンダ室(C)として構成されている。
前記吸入切欠部(62)は、ピストン本体部(22b)において、内側シリンダ室(C1)及び外側シリンダ室(C2)の低圧側(Lp)に形成されている。そして、内側シリンダ室(C1)及び外側シリンダ室(C2)の低圧側(Lp)は、シリンダ側鏡板(21c)に形成された吸入通路(40)に連通している。この吸入通路(40)は、内側シリンダ室(C1)及び外側シリンダ室(C2)の低圧側(Lp)に開口する吸入口(40a)からシリンダ側鏡板(21c)の軸方向下向きに延び、途中でシリンダ側鏡板(21c)の径方向外側に向かって貫通している。また、吸入通路(40)には、ケーシング(10)の胴部(11)を貫通する吸入配管(18)が接続されて、蒸発器(4)で蒸発した冷媒が吸入される。
前記内側シリンダ室(C1)の高圧側(Hp)は、シリンダ側鏡板(21c)に形成された吐出通路(41)に連通している。また、外側シリンダ室(C2)の高圧側(Hp)も、シリンダ側鏡板(21c)に形成された吐出通路(41)に連通している。この吐出通路(41)は、内側シリンダ室(C1)及び外側シリンダ室(C2)の高圧側(Hp)に開口する吐出口(41a,41a)から、シリンダ側鏡板(21c)の軸方向下向きに延び、シリンダ側鏡板(21c)の径方向外側に向かって貫通している。そして、吐出通路(41)には、ケーシング(10)の胴部(11)を貫通する流通配管(61)を介して第2の圧縮機構(50)の後述する外側シリンダ室(C4)が接続され、内側シリンダ室(C1)及び外側シリンダ室(C2)で圧縮された冷媒が、第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)に向かって吐出される。
また、前記吐出口(41a,41a)には、それぞれ吐出弁(63)が取り付けられている。この吐出弁(63)は、内側シリンダ室(C1)及び外側シリンダ室(C2)の高圧側(Hp)で圧縮された冷媒の圧力が所定値に達すると開くように構成されている。
このように、第1の圧縮機構(20)において、駆動軸(33)が回転すると駆動軸(33)に対して下側の偏心部(33a)が偏心回転し、ピストン(22)は、揺動ブッシュ(27)をブレード(23)に沿って進退させながら、揺動ブッシュ(27)の中心点を揺動中心として揺動する。そして、吸入配管(18)から吸入した冷媒を内側シリンダ室(C1)及び外側シリンダ室(C2)で圧縮して、第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)に流通させるようになっている。
−第2の圧縮機構の構成−
図4(a)は第2の圧縮機構の横断面図であり、図4(b)は、ピストンが図4(a)から180°回転したときの第2の圧縮機構の横断面図である。前記第1の圧縮機構(20)との違いは、内側シリンダ室(C3)及び外側シリンダ室(C4)がそれぞれ独立した内側シリンダ室(C3)と外側シリンダ室(C4)とに区画されている点であるため、以下、第1の圧縮機構(20)と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
図2及び図4に示すように、前記第2の圧縮機構(50)は、円環状のシリンダ室(C)を有するシリンダ(51)と、シリンダ室(C)内に配置された円環状のピストン(52)とを備えている。
前記シリンダ(51)は、円環状の内側シリンダ部(51a)と、内側シリンダ部(51a)よりも外周側に配置される円環状の外側シリンダ部(51b)と、内側シリンダ部(51a)と外側シリンダ部(51b)とで区画されたシリンダ室(C)と、肉厚で円板状のシリンダ側鏡板(51c)とを有している。
前記シリンダ側鏡板(51c)の略中央には、駆動軸(33)と同心上に位置するように上側軸受部(17)が駆動軸(33)に沿って上向きに突設されて、駆動軸(33)が滑り軸受(17a)を介して摺動自在に嵌合されている。また、シリンダ側鏡板(51c)の下面には、内側シリンダ部(51a)と外側シリンダ部(51b)とが駆動軸(33)と同心上に位置するように下向きに突設されている。
前記ピストン(52)は、内側シリンダ部(51a)よりも内側で上側の偏心部(33a)に摺動自在に嵌合される円環状の上側偏心軸受部(52a)と、円環状のピストン本体部(52b)と、肉厚で円板状のピストン側鏡板(52c)とを有している。
前記ピストン側鏡板(52c)の上面には、上側偏心軸受部(52a)とピストン本体部(52b)とが上側の偏心部(33a)と同心上に位置するように上向きに突設されている。
前記シリンダ室(C)は、ピストン本体部(52b)によって内側シリンダ室(C3)と外側シリンダ室(C4)とに区画され、それぞれが独立した2つのシリンダ室(C3,C4)として構成されている。具体的には、内側シリンダ室(C3)は、内側シリンダ部(51a)の外周面とピストン本体部(52b)の内周面との間に形成されている。外側シリンダ室(C4)は、ピストン本体部(52b)の外周面と外側シリンダ部(51b)の内周面との間に形成されている。ここで、ピストン本体部(52b)の外周面は、ピストン本体部(52b)の内周面よりも大きく、外側シリンダ部(51b)の内周面は、内側シリンダ部(51a)の外周面よりも大きいため、外側シリンダ室(C4)の容積は、内側シリンダ室(C3)の容積よりも大きくなっている。
前記外側シリンダ室(C4)の低圧側(Lp)は、シリンダ側鏡板(51c)に形成された外側吸入通路(46)に連通している。この外側吸入通路(46)は、外側シリンダ室(C4)の低圧側(Lp)に開口する外側吸入口(46a)からシリンダ側鏡板(51c)の軸方向上向きに延び、途中でシリンダ側鏡板(51c)の径方向外側に向かって貫通している。そして、外側吸入通路(46)には、ケーシング(10)の胴部(11)を貫通する流通配管(61)を介して第1の圧縮機構(20)の内側シリンダ室(C1)及び外側シリンダ室(C2)が接続され、吐出通路(41)から吐出された冷媒が吸入される。
前記外側シリンダ室(C4)の高圧側(Hp)は、シリンダ側鏡板(51c)に形成された外側吐出通路(47)に連通している。この外側吐出通路(47)は、外側シリンダ室(C4)の高圧側(Hp)に開口する外側吐出口(47a)から、シリンダ側鏡板(51c)の軸方向上向きに延び、シリンダ側鏡板(51c)の径方向外側に向かって貫通している。そして、外側吐出通路(47)には、ケーシング(10)の胴部(11)を貫通する流通配管(61)を介して内側シリンダ室(C3)が接続され、外側シリンダ室(C4)で圧縮された冷媒が内側シリンダ室(C3)に向かって吐出される。
前記内側シリンダ室(C3)の低圧側(Lp)は、シリンダ側鏡板(51c)に形成された内側吸入通路(48)に連通している。この内側吸入通路(48)は、内側シリンダ室(C3)の低圧側(Lp)に開口する内側吸入口(48a)からシリンダ側鏡板(51c)の軸方向上向きに延び、途中でシリンダ側鏡板(51c)の径方向外側に向かって貫通している。そして、内側吸入通路(48)には、ケーシング(10)の胴部(11)を貫通する流通配管(61)を介して外側シリンダ室(C4)が接続され、外側吐出通路(47)から吐出された冷媒が吸入される。
前記内側シリンダ室(C3)の高圧側(Hp)は、シリンダ側鏡板(51c)に形成された内側吐出通路(49)に連通している。この内側吐出通路(49)は、内側シリンダ室(C3)の高圧側(Hp)に開口する内側吐出口(49a)から、シリンダ側鏡板(51c)の軸方向上向きにケーシング(10)内の吐出空間(90)に向かって貫通している。そして、内側シリンダ室(C3)の高圧側(Hp)で圧縮された冷媒が、ケーシング(10)内の吐出空間(90)に吐出される。
このように、第1の圧縮機構(20)及び第2の圧縮機構(50)において、最も容積が大きい第1の圧縮機構(20)のシリンダ室(C)は、次に容積が大きい第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)に流通配管(61)を介して直列に接続されている。そして、第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)は、最も容積が小さい第2の圧縮機構(50)の内側シリンダ室(C3)に流通配管(61)を介して直列に接続されている。
そして、冷媒は、最も上流側の第1の圧縮機構(20)のシリンダ室(C)に流通して圧縮され、下流側に向かって第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)に流通して圧縮される。さらに、最も下流側の第2の圧縮機構(50)の内側シリンダ室(C3)に流通して圧縮される。
このような構成とすれば、簡単な構成で三段圧縮を実現することができる。また、三段圧縮によって各圧縮行程における圧縮動力が低減してCOP(成績係数)を向上させることができる。
具体的に、従来の圧縮機では、1つの圧縮機構で単段圧縮しかできず、三段圧縮する場合には、3つの圧縮機構が必要となるから、圧縮機構が増加して圧縮機が大型化したり、部品点数が増加してコストが増大するという問題がある。
これに対して、本発明では、第1の圧縮機構(20)のシリンダ室(C)に、第2の圧縮機構(50)のそれぞれ独立した外側シリンダ室(C4)と内側シリンダ室(C3)とを順に直列に接続することで、2つの圧縮機構(20,50)で、三段圧縮を実現できるから、部品点数が少なくなって圧縮機(1)の小型化や低コスト化を図ることができる。
−運転動作−
次に、図1乃至図4を用いて本実施形態1の圧縮機(1)の運転動作について説明する。まず、電動機(30)を起動させるとロータ(32)が回転し、駆動軸(33)の各偏心部(33a,33a)が互いに180°ずれた状態で回転する。そして、各偏心部(33a,33a)の回転が各圧縮機構(20,50)の下側偏心軸受部(22a)及び上側偏心軸受部(52a)に伝達されて、ピストン(22,52)がシリンダ(21,51)に対して偏心回転運動し、第1の圧縮機構(20)及び第2の圧縮機構(50)が駆動される。
具体的に、揺動ブッシュ(27a,27b)がブレード(23)に沿って往復運動(進退動作)を行い、且つ、ピストン(22,52)と揺動ブッシュ(27a,27b)が一体的になってブレード(23)に対して揺動動作を行う。その際、揺動ブッシュ(27a,27b)は、ピストン(22,52)及びブレード(23)に対して実質的に面接触をする。そして、ピストン(22,52)が外側シリンダ部(21a,51a)及び内側シリンダ部(21b,51b)に対して揺動しながら公転する。
そして、図3(a)に示す状態において、冷媒は、吸入配管(18)から吸入通路(40)及び吸入口(40a)を介して第1の圧縮機構(20)の内側シリンダ室(C1)の低圧側(Lp)に吸入される。そして、ピストン(22)が右回りに公転するにつれて、外側シリンダ室(C2)の低圧側(Lp)には、引き続き吸入配管(18)から冷媒が吸入される。
そして、図3(b)に示す状態になると、内側シリンダ室(C1)の低圧側(Lp)は、冷媒が圧縮される高圧側(Hp)となる。そこから、ピストン(22)が右回りに公転するにつれて、内側シリンダ室(C1)の高圧側(Hp)では、冷媒が圧縮される一方、外側シリンダ室(C2)の低圧側(Lp)には、吸入配管(18)から冷媒が吸入される。
再び、図3(a)に示す状態になって、内側シリンダ室(C1)の高圧側(Hp)で圧縮された冷媒の圧力が所定値に達すると、吐出弁(63)が開かれる。その後、冷媒は吐出口(41a)から吐出通路(41)に吐出されて流通配管(61)を介して、第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)に向かって流通する。
また、図3(a)に示す状態では、外側シリンダ室(C2)の低圧側(Lp)は、冷媒が圧縮される高圧側(Hp)となる。そこから、ピストン(22)が右回りに公転するにつれて、外側シリンダ室(C2)の高圧側(Hp)では、冷媒が圧縮される。そして、図3(b)に示す状態になって、外側シリンダ室(C2)の高圧側(Hp)で圧縮された冷媒の圧力が所定値に達すると、吐出弁(63)が開かれる。その後、冷媒は吐出通路(41)に吐出されて流通配管(61)を介して、第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)に向かって流通する。
このように、第1の圧縮機構(20)では、ピストン(22)が図3(a)又は図3(b)に示す状態であっても、シリンダ室(C)に冷媒をスムーズに吸入させることができるから、冷媒による脈動を軽減することができる。
そして、第2の圧縮機構(50)では、流通配管(61)を流通してきた冷媒は、図4(a)に示す状態において、外側吸入通路(46)及び外側吸入口(46a)を介して外側シリンダ室(C4)の低圧側(Lp)に吸入される。そこから、ピストン(52)が右回りに公転するにつれて、外側シリンダ室(C4)の低圧側(Lp)には、引き続き外側吸入通路(46)から冷媒が吸入される。
そして、図4(b)に示す状態になると、ピストン本体部(52b)によって外側吸入口(46a)が閉じられて冷媒の吸入が完了し、外側シリンダ室(C4)の低圧側(Lp)は、冷媒が圧縮される高圧側(Hp)となる。そこから、ピストン(52)が右回りに公転するにつれて、外側シリンダ室(C4)の高圧側(Hp)では、冷媒が圧縮される。
再び、図4(a)に示す状態になって、圧縮された冷媒の圧力が所定値に達すると、吐出弁(63)が開かれる。そして、冷媒は、外側吐出口(47a)から外側吐出通路(47)に吐出されて流通配管(61)を介して、内側シリンダ室(C3)に向かって流通する。
そして、流通配管(61)を流通してきた冷媒は、ピストン(52)が図4(a)から(b)の状態を経て再び図4(a)に示す状態に変化するにつれて、内側吸入通路(48)及び内側吸入口(48a)を介して内側シリンダ室(C3)の低圧側(Lp)に吸入される。そして、図4(a)に示す状態になると、ピストン本体部(52b)によって内側吸入口(48a)が閉じられて冷媒の吸入が完了し、内側シリンダ室(C3)の低圧側(Lp)は、冷媒が圧縮される高圧側(Hp)となる。
そこから、ピストン(52)が右回りに公転するにつれて、内側シリンダ室(C3)の高圧側(Hp)では、冷媒が圧縮される。そして、図4(b)に示す状態になって、圧縮された冷媒の圧力が所定値に達すると、吐出弁(63)が開かれる。そして、冷媒は、内側吐出通路(49)を介してケーシング(10)内の吐出空間(90)に吐出される。そして、吐出された冷媒は、吐出配管(15)から凝縮器(2)に向かって流通する。
以上のように、本実施形態1に係る圧縮機(1)によれば、第1の圧縮機構(20)のシリンダ室(C)と、第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)と、第2の圧縮機構(50)の内側シリンダ室(C3)との順に直列に接続して、第1の圧縮機構(20)のシリンダ室(C)で圧縮した冷媒を、第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)に流通させて圧縮し、第2の圧縮機構の内側シリンダ室(C3)に流通させてさらに圧縮するようにしたから、各シリンダ室(C,C3,C4)における容積効率を向上させることができる。
なお、本実施形態1では、ブレード(23)を内側シリンダ部(21a)と外側シリンダ部(21b)とに固定させて、ピストン本体部(22b)に形成された切欠部(29)に揺動ブッシュ(27)を嵌合させるとともに、揺動ブッシュ(27)のブレード溝(28)にブレード(23)を嵌合させた構成について説明したが、ブレードにピストン本体部を摺動可能に嵌合させる凹部を形成しても良い。
具体的に、ピストン本体部の円環を分断せずに連続して形成し、円環の周方向の一部分に、径方向に直交する方向に直線状に延びる直線部を形成する。そして、この直線部に、ブレードの凹部を摺動可能に嵌合させる。また、外側シリンダ部及び内側シリンダ部におけるピストン本体部の直線部に対応する部分を、径方向に直交する方向に延びる直線状に形成し、この部分にブレードを摺動可能に嵌合させるためのブレード溝をシリンダの径方向に沿って凹設すれば良い。
<実施形態2>
図5は、本実施形態2に係る圧縮機の構成を示す縦断面図である。前記実施形態1との違いは、第1の圧縮機構(20)が多段式の圧縮機構で構成され、且つ流通配管(61)の管路途中にマフラ(71)を接続した点であるため、以下、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
図5に示すように、前記第1の圧縮機構(20)は、独立した2つのシリンダ室(C1,C2)を有する多段式の圧縮機構として構成され、駆動軸(33)の下側の偏心部(33a)に配置されている。具体的に、第1の圧縮機構(20)のシリンダ室(C)は、ピストン本体部(22b)によって内側シリンダ室(C1)と外側シリンダ室(C2)とに区画されて、それぞれが独立した2つのシリンダ室(C1,C2)として構成されている。なお、外側シリンダ室(C2)の容積は、内側シリンダ室(C1)の容積よりも大きく形成されている。
そして、前記シリンダ側鏡板(21c)には、外側吸入通路(42)、外側吐出通路(43)、内側吸入通路(44)及び内側吐出通路(45)が形成されている。具体的に、外側吸入通路(42)は、外側シリンダ室(C2)の低圧側(Lp)に開口する外側吸入口(42a)からシリンダ側鏡板(21c)の軸方向下向きに延び、途中でシリンダ側鏡板(21c)の径方向外側に向かって貫通している。そして、外側吸入通路(42)には、ケーシング(10)の胴部(11)を貫通する吸入配管(18)が接続され、冷媒が吸入される。
前記外側吐出通路(43)は、外側シリンダ室(C2)の高圧側(Hp)に開口する外側吐出口(43a)から、シリンダ側鏡板(21c)の軸方向下向きに延び、シリンダ側鏡板(21c)の径方向外側に向かって貫通している。そして、外側吐出通路(43)には、ケーシング(10)の胴部(11)を貫通する流通配管(61)を介して第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)が接続され、第1の圧縮機構(20)の外側シリンダ室(C2)で圧縮された冷媒が第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)に向かって吐出される。
前記内側吸入通路(44)は、内側シリンダ室(C1)の低圧側(Lp)に開口する内側吸入口(44a)からシリンダ側鏡板(21c)の軸方向下向きに延び、途中でシリンダ側鏡板(21c)の径方向外側に向かって貫通している。そして、内側吸入通路(44)には、ケーシング(10)の胴部(11)を貫通する流通配管(61)を介して第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)が接続され、第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)で圧縮された冷媒が吸入される。
前記内側吐出通路(45)は、内側シリンダ室(C1)の高圧側(Hp)に開口する内側吐出口(45a)から、シリンダ側鏡板(21c)の軸方向下向きに延び、シリンダ側鏡板(21c)の径方向外側に向かって貫通している。そして、内側吐出通路(45)には、ケーシング(10)の胴部(11)を貫通する流通配管(61)を介して第2の圧縮機構(50)の内側シリンダ室(C3)が接続され、第1の圧縮機構(20)の内側シリンダ室(C1)で圧縮された冷媒が第2の圧縮機構(50)の内側シリンダ室(C3)に向かって吐出される。
図6は、本実施形態2に係る圧縮機に流通配管を取り付けたときの概略図である。図5及び図6に示すように、吸入配管(18)及び流通配管(61)の管路途中には、吸入配管(18)及び流通配管(61)が振動することで発生する騒音を低減させるためのマフラ(71)が接続されている。また、第1の圧縮機構(20)の外側吐出通路(43)と内側吐出通路(45)及び第2の圧縮機構(50)の外側吐出通路(47)に接続された流通配管(61)には、圧縮された冷媒の温度を低下させるための冷媒を供給させるインジェクション配管(66)が接続されている。
具体的に、前記第1の圧縮機構(20)の外側吸入通路(42)に接続された吸入配管(18)の管路途中には、マフラ(71)が接続されている。第1の圧縮機構(20)の外側吐出通路(43)に接続された流通配管(61)の管路途中には、マフラ(71)が接続されている。このマフラ(71)の流出側の流通配管(61)には、図1に示す冷媒回路(80)に接続された熱交換器(図示省略)によって冷却された冷媒が供給されるインジェクション配管(66)が接続されている。そして、圧縮されて高温となった冷媒にインジェクション配管(66)から供給される低温の冷媒を混合させて冷媒の温度を低下させるようにしている。
前記第2の圧縮機構(50)の外側吸入通路(46)に接続された流通配管(61)の管路途中には、マフラ(71)が接続されている。第2の圧縮機構(50)の外側吐出通路(47)に接続された流通配管(61)の管路途中にも、マフラ(71)が接続されている。このマフラ(71)の流出側の流通配管(61)にも同様にインジェクション配管(66)が接続されている。
また、前記第1の圧縮機構(20)の内側吸入通路(44)に接続された流通配管(61)の管路途中には、マフラ(71)が接続されている。第1の圧縮機構(20)の内側吐出通路(45)に接続された流通配管(61)の管路途中にも、マフラ(71)が接続されている。そして、このマフラ(71)の流出側の流通配管(61)にも同様にインジェクション配管(66)が接続されている。第2の圧縮機構(50)の内側吸入通路(48)に接続された流通配管(61)の管路途中にも、マフラ(71)が接続されている。
このように、第1の圧縮機構(20)及び第2の圧縮機構(50)において、容積が大きい第1の圧縮機構(20)の外側シリンダ室(C2)と第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)とは、流通配管(61)を介して直接に接続されている。そして、第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)には、第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)の容積よりも小さい第1の圧縮機構(20)の内側シリンダ室(C1)が流通配管(61)を介して直列に接続されている。第1の圧縮機構(20)の内側シリンダ室(C1)には、第2の圧縮機構(50)の内側シリンダ室(C3)が流通配管(61)を介して直列に接続されている。
そして、冷媒は、最も上流側の第1の圧縮機構(20)の外側シリンダ室(C2)に流通して圧縮され、下流側に向かって第2の圧縮機構(50)の外側シリンダ室(C4)に流通して圧縮される。その後、第1の圧縮機構(20)の内側シリンダ室(C1)に流通して圧縮されて、さらに、最も下流側の第2の圧縮機構(50)の内側シリンダ室(C3)に流通して圧縮される。そして、圧縮された冷媒は、第2の圧縮機構(50)の内側シリンダ室(C3)から、内側吐出通路(49)を介してケーシング(10)内の吐出空間(90)に吐出され、吐出配管(15)から図1に示す凝縮器(2)に向かって流通する。
このような構成とすれば、2つの圧縮機構(20,50)で四段圧縮を実現できるから、従来の圧縮機で四段圧縮する場合に比べて部品点数が少なくなって圧縮機(1)の小型化や低コスト化を図ることができる。
さらに、各シリンダ室(C1,C2,C3,C4)を容積が大きい順に接続したから、各シリンダ室(C1,C2,C3,C4)の容積効率が向上してCOPを改善させることができる。また、吸入配管(18)及び流通配管(61)の管路途中にマフラ(71)を接続したから、吸入配管(18)及び流通配管(61)を流通する冷媒による脈動が大きくなって、吸入配管(18)及び流通配管(61)が振動することで発生する騒音を低減することができる。
なお、本実施形態2では、吸入配管(18)や流通配管(61)にマフラ(71)を接続した構成について説明したが、吸入配管(18)や流通配管(61)にマフラ(71)を接続しない構成としても良い。
<実施形態2の変形例>
図7(a)は本変形例に係る圧縮機の第1の圧縮機構の横断面図であり、図7(b)はシリンダが図7(a)から180°回転したときの第1の圧縮機構の横断面図である。前記実施形態2との違いは、シリンダ(86)をピストン(87)に対して偏心回転運動させるようにした点であるため、以下、実施形態2と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
−第1の圧縮機構の構成−
図7(a)及び(b)に示すように、前記第1の圧縮機構(20)は、シリンダ(86)と、ピストン(87)とを備え、シリンダ(86)が可動側で、ピストン(87)が固定側として構成されている。
前記シリンダ(86)は、円環状の内側シリンダ部(86a)と、内側シリンダ部(86a)よりも外周側に配置される円環状の外側シリンダ部(86b)と、内側シリンダ部(86a)と外側シリンダ部(86b)とで区画されたシリンダ室(C)と、シリンダ室(C)を高圧側(Hp)と低圧側(Lp)とに区画するブレード(23)と、肉厚で円板状のシリンダ側鏡板(図示省略)とを有している。
前記内側シリンダ部(86a)は、駆動軸(33)の下側の偏心部(33a)に摺動自在に嵌め込まれている。内側シリンダ部(86a)と外側シリンダ部(86b)とは、下側の偏心部(33a)と同心上となるように配置されている。また、ブレード(23)は、内側シリンダ部(86a)と外側シリンダ部(86b)とを連結している。
前記ピストン(87)は、シリンダ室(C)に配置される円環状のピストン本体部(87a)と、外側シリンダ部(86b)の外周側に配置される外側ピストン部(87b)と、肉厚で円板状のピストン側鏡板(87c)とを有し、一体的に形成されている。ピストン本体部(87a)と外側ピストン部(87b)とは、駆動軸(33)と同心上となるように配置されている。
前記ピストン本体部(87a)には、ブレード(23)と揺動ブッシュ(27)とを嵌合させる切欠部(29)が形成されている。そして、外側ピストン部(87b)と外側シリンダ部(86b)との間には、外側ピストン部(87b)の内周側で外側シリンダ部(86b)の偏心回転動作を許容するための動作空間(85)が形成されている。また、ピストン側鏡板(87c)には、外側吸入口(42a)、外側吐出口(43a)、内側吸入口(44a)及び内側吐出口(45a)が開口している。
前記シリンダ室(C)は、ピストン本体部(87a)によって内側シリンダ室(C1)と外側シリンダ室(C2)とに区画され、それぞれが独立した2つのシリンダ室(C1,C2)として構成されている。
本変形例では、前記揺動ブッシュ(27a,27b)は、ブレード溝(28)にブレード(23)を挟んだ状態で、ブレード(23)がその面方向にブレード溝(28)内を進退するように構成されている。また、揺動ブッシュ(27a,27b)は、ピストン(87)に対してブレード(23)が揺動するように構成されている。したがって、揺動ブッシュ(27)は、揺動ブッシュ(27)の中心点を揺動中心としてブレード(23)がピストン(87)に対して揺動可能となり、且つブレード(23)がピストン(87)に対してブレード(23)の面方向へ進退可能となるように構成されている。
なお、第2の圧縮機構は、第1の圧縮機構(20)と同一の構成であるため説明を省略する。また、内側シリンダ室(C1)及び外側シリンダ室(C2)は、流通配管(図示省略)を介してそれぞれ直列に接続されている。そして、本実施形態2と同様に、冷媒は、最も上流側の第1の圧縮機構(20)の外側シリンダ室(C2)に流通して圧縮され、下流側に向かって第2の圧縮機構の外側シリンダ室に流通して圧縮される。その後、第1の圧縮機構(20)の内側シリンダ室(C1)に流通して圧縮されて、さらに、最も下流側の第2の圧縮機構の内側シリンダ室に流通して圧縮される。
−運転動作−
次に、本変形例に係る第1の圧縮機構(20)の運転動作について説明する。駆動軸(33)の下側の偏心部(33a)を回転させると、内側シリンダ部(86a)及び外側シリンダ部(86b)は、ブレード(23)がブレード溝(28)内を進退しながら、揺動ブッシュ(27)の中心点を揺動中心として揺動する。
そして、図7(a)に示す状態おいて、冷媒は、外側吸入口(42a)から外側シリンダ室(C2)の低圧側(Lp)に吸入される。そして、シリンダ(86)が右回りに公転して図7(b)に示す状態に変化するにつれて、冷媒は、外側吸入口(42a)から外側シリンダ室(C2)の低圧側(Lp)に引き続き吸入され、内側吸入口(44a)から内側シリンダ室(C1)の低圧側(Lp)に吸入される。
そして、図7(b)に示す状態になると、外側吸入口(42a)が外側シリンダ部(86b)によって閉じられて冷媒の吸入が完了し、外側シリンダ室(C2)の低圧側(Lp)は、冷媒が圧縮される高圧側(Hp)となる。そこから、シリンダ(86)が右回りに公転するにつれて、外側シリンダ室(C2)の高圧側(Hp)では、冷媒が圧縮される一方、内側シリンダ室(C1)の低圧側(Lp)には引き続き冷媒が吸入される。
再び、図7(a)に示す状態になると、外側シリンダ室(C2)の高圧側(Hp)で圧縮された冷媒は、外側吐出口(43a)から吐出される一方、内側吸入口(44a)が内側シリンダ部(86a)によって閉じられて冷媒の吸入が完了し、内側シリンダ室(C1)の低圧側(Lp)は、冷媒が圧縮される高圧側(Hp)となる。そこから、シリンダ(86)が右回りに公転するにつれて、内側シリンダ室(C1)の高圧側(Hp)では、冷媒が圧縮される。そして、図7(b)に示す状態になると、 内側シリンダ室(C1)の高圧側(Hp)で圧縮された冷媒は、内側吐出口(45a)から吐出される。
なお、第2の圧縮機構は、第1の圧縮機構(20)と位相が180°ずれた状態で同様の動作を行うため、説明を省略する。
以上のように、本変形例に係る圧縮機によれば、シリンダ(86)をピストン(87)に対して偏心回転運動させても、本実施形態2と同様に2つの圧縮機構(20)で四段圧縮を実現できる。