JP2010105984A - 経口投与組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 クリプトキサンチンの生体への吸収性を安価かつ簡便に向上させる方法およびそのための経口投与組成物を提供する。
【解決手段】 クリプトキサンチンと抗酸化性物質とを含有し、クリプトキサンチン高吸収性を有することを特徴とする経口投与組成物を要旨とするものであり、好ましくは、クリプトキサンチンが、温州みかん由来であるものであり、また好ましくは、抗酸化性物質が、クルプトキサンチンを除くカロテノイド若しくはその誘導体、アスコルビン酸若しくはその誘導体又はトコフェロール類であるものであり、また好ましくは、経口投与組成物が、ソフトカプセル若しくはハードカプセル、打錠品又は液状に加工されているものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、食品、飼料、医薬品などに用いることができる、温州みかんの搾汁残またはその抽出物を用いたクリプトキサンチンの吸収性向上方法及び経口投与組成物に関するものである。
カロテノイドは、動物、植物、微生物が有する色素成分の一種である。これらは、例えばにんじんにはβ-カロテン、甲殻類の殻にはアスタキサンチン、トマトにはリコペンといったように、特定の食品には特定のカロテンが含まれることが多く、長い食経験を有するものが多い。
カロテノイド類は、その食経験と安全性から、飲食品や医薬品等の着色剤として使用されている。また単に着色剤としてだけではなく、その機能性に着目した用途にも用いられている。例えば、β-カロテンはプロビタミンAとして各種の健康食品やサプリメントに広く用いられている。リコペンやアスタキサンチンなどは抗酸化機能の発揮による体内環境の正常化を期待して、様々な健康食品に添加されている。また特定の機能に特化した例として、ルテインがブルーベリーエキスなどと共に配合された健康食品が視覚機能の健全化に有効なサプリメントとして市販されている。
クリプトキサンチンは、カロテノイドの一種であり、温州みかんに特異的に多量に含まれている。これまでの調査・研究により、クリプトキサンチンには骨代謝改善、内臓脂肪低減、抗疲労、糖尿病リスク低減などの健康増進効果を有することが示されている。
温州みかんの供給は冬に限定されているため、クリプトキサンチンの健康増進効果を年間を通じて享受するためには、サプリメント等により継続的にクリプトキサンチンの摂取し、生体内のクリプトキサンチンの濃度を一定以上に維持することが望ましい。しかしながらクリプトキサンチンの供給量は非常に少ないため、少量のクリプトキサンチンを効率よく生体に吸収させる方法とそれにより生み出される高吸収性クリプトキサンチン製剤が望まれている。
カロテノイドをサプリメント等として摂取する場合、吸収性を向上させる方法として、一定の条件をクリアした乳化物が有効であるとの報告がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法では乳化したミセルの粒度を厳密にコントロールしなければならないという困難さを有するうえ、高コスト・低収率になりやすい。
また、カロテノイドをシクロデキストリンで包接することにより、本来は水に不溶なカロテノイド(アスタキサンチン)を水溶性の粉末とすることができることが報告されている(例えば、特許文献2、3参照)。しかしながら、この方法ではカロテノイドの水溶性を向上させることはできてもカロテノイドの安定性を向上させるには不十分なうえ、カロテノイドの吸収性を向上させることはできなかった。
以上述べたように、カロテノイドの吸収効率を向上させる方法は知られてはいるが、クリプトキサンチンのような希少なカロテノイドの生体への吸収性及び/または吸収率を安価かつ簡便に向上させるには十分であるとは言い難かった。
公開平9−157159号公報 公開平9−124470号公報 公開2001−2569号公報
本発明は、クリプトキサンチンの生体への吸収性を安価かつ簡便に向上させる方法およびそのための経口投与組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、クリプトキサンチンをクリプトキサンチン以外のカロテノイド類やトコフェロールなどと共に摂取することで生体への吸収性を大きく高めることができることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、クリプトキサンチンと抗酸化性物質とを含有し、クリプトキサンチン高吸収性を有することを特徴とする経口投与組成物を要旨とするものであり、好ましくは、クリプトキサンチンが、温州みかん由来であるものであり、また好ましくは、抗酸化性物質が、クルプトキサンチンを除くカロテノイド若しくはその誘導体、アスコルビン酸若しくはその誘導体又はトコフェロール類であるものであり、また好ましくは、経口投与組成物が、ソフトカプセル若しくはハードカプセル、打錠品又は液状に加工されているものである。
別の本発明は、クリプトキサンチンを経口摂取する際に、抗酸化性物質をともに摂取することを特徴とするクリプトキサンチンの吸収性を向上させる方法を要旨とするものである。
本発明によれば、クリプトキサンチンの生体への吸収性を安価かつ簡便に向上させることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において用いられるクリプトキサンチンは、特に限定されるものではなく、例えばα−クリプトキサンチン、β−クリプトキサンチン及びこれらの脂肪酸エステルが挙げられる。脂肪酸長も特に限定されるものではないが、例えば、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)などの脂肪酸エステルが挙げられる。
これらクリプトキサンチン及び/又はそのエステル体は、温州みかん、柿、パパイヤ、マンゴーなどに含まれていることが知られているが、本発明においてはその供給源として、生産量が多く、日本古来の果物である温州みかんに由来するものが好ましい。温州みかんは、生の果実だけでなく温州みかんの加工品及びその中間体も用いることができる。加工品及びその中間体としては、温州みかんジュース、温州みかんからジュースを絞った後の残渣、残渣の乾燥物、残渣の酵素処理物、温州みかんからの溶媒抽出物などを用いることができる。中でも残渣にセルラーゼなどの酵素を作用させた温州みかん残渣の酵素処理物は、残渣に多量に含まれる食物繊維を水に可溶化・除去することにより残渣を減容し、相対的にクリプトキサンチン濃度を高めることが可能なため好適である。またこの温州みかん搾汁残渣の酵素処理物の乾燥物はさらに好適である。
温州みかんの搾汁残渣、残渣の酵素処理物はそのままを用いてもよいし、なんらかの加工を行ったものを用いてもよい。具体的にはこれらを固液分離した残渣、固液分離した残渣を乾燥させたもの、固液分離せず反応物そのままを乾燥させたものなどを用いてもよい。また、温州みかんの搾汁残渣、残渣の酵素処理物そのもの、又はその固液分離後の残渣に水を添加・かくはんした後、再度固液分離する水洗浄法の実施は、温州みかんの搾汁残渣及びその酵素処理物中に存在する酸や糖などの水溶性不純物を簡単に取り除けるため好ましい。
本発明における温州みかんの溶媒抽出物とは、温州みかん及び/又は温州みかんの酵素処理物から溶剤及び/又は超臨界二酸化炭素などを用いてクリプトキサンチンを含む成分を抽出したものである。抽出に用いる溶媒としては、原料である温州みかん又はその加工品よりヒト繊維芽細胞増殖促進及び/又はコラーゲン産生促進活性を持つ画分が得られ、本発明の効果を損なうものでなければいかなるものでもよい。また、一種類の溶媒を単独で用いても、複数の溶媒を混合して用いてもよい。そのような溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類、トルエン等の芳香族炭化水素類、ポリエチレングリコール等のポリエーテル類、ピリジン類等が使用できる。これらのうち、エタノールは抽出されるβ-クリプトキサンチンが多く好ましい。また、これらの有機溶媒で抽出する際には抽出効率をあげるために例えば水、界面活性剤等の添加物を本発明の効果を損なわない範囲で加えることができる。さらに、上記有機溶媒による抽出のほか、近年注目を浴びている技術である超臨界抽出法も利用することができる。
更に引き続いて加工を行い、不純物類を取り除きクリプトキサンチンの純度を上げることもできる。例えば、濃縮、脱塩、分配精製、カラムクロマトグラフィーなどを用いることができる。また粉末化や乳化といった、抽出物の形状を変える処理も用いることができる。さらにこれらの方法を単独で行うばかりではなく、複数の方法を組み合わせて実施してもよい。
本発明において用いられる抗酸化性物質として、好ましくは、クリプトキサンチンを除くカロテノイド又はその誘導体、アスコルビン酸又はその誘導体又はトコフェノール類であり、いずれか1種類を用いても、また2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられるクリプトキサンチンを除くカロテノイド又はその誘導体としては、α―カロテン、β−カロテン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン、アスタキサンチンなどの血中に見出されるカロテノイドが好適である。またβ−カロテンの異性体であるγ―カロテン、δ―カロテンなどの他、フコキサンチン、カンタキサンチン、ビオラキサンチン、アンテラキサンチンなども使用することができる。これらは天然物から濃縮または抽出したものでも化学的に合成したものでもよく、単体でなく市販されているカロテノイドの混合物を用いることもできる。またそれらに含まれるカロテノイドはフリー体であっても脂肪酸が結合したエステル型であってもかまわない。
本発明に用いられるアスコルビン酸としては、ビタミンC効力を有するL−アスコルビン酸ナトリウムが望ましい。またプロビタミンCとして知られるリン酸−Lアスコルビン酸ナトリウムやアスコルビン酸グルコシドなどを用いることもできる。
本発明に用いられるトコフェロール類としては、強いビタミンE活性を示すα−トコフェロールの他にも構造異性体であるβ,γ,δの他、類縁体であるトコトリエノールが挙げられる。本発明にはいずれのトコフェロール類も用いることができるが、α−トコフェロールが最も望ましい。
本発明の経口投与組成物は、クリプトキサンチンと抗酸化性物質とを含有することを特徴とするものであり、この経口投与組成物に含まれるクリプトキサンチンと抗酸化性物質の比率は、クリプトキサンチン1質量部(フリー体換算)に対し抗酸化物質が1〜10,000質量部で含まれていればよい。中でも10〜5,000重量部が好適であり、50〜1,000重量部が、本発明の効果を発揮するために更に好適である。
また、本発明の経口投与組成物に含まれるクリプトキサンチンの量は特に限定されず、例えば組成物の質量100gに対し10pg〜10g含まれていればよい。中でも100pg〜1gが好適であり、10ng〜500mgは更に好適である。
また、本発明の経口投与組成物に含まれるクリプトキサンチンを除くカロテノイド、アスコルビン酸又はトコフェロール類及びこれらの誘導体の量も特に限定されず、例えば組成物の質量100gに対し10pg〜10g含まれていればよい。中でも100pg〜5gが好適であり、10ng〜2.5gは更に好適である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、クリプトキサンチンの測定は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた。HPLC装置として、島津製作所製LC−10Aを用い、ウォーターズ社製ResolveC18(φ3.9×150mm)カラムを接続し、メタノールを等量加えた試料を導入した。移動相には、メタノール:酢酸エチル=7:3、カラム温度30℃、流速1.0ml/min、検出波長450nmで含有量を分析した。
実施例1
温州みかんの搾汁残渣(みかんジュース粕、水分率約90%)800gに食品加工用ペクチナーゼ酵素剤であるスミチームPX(新日本化学工業株式会社製、ペクチナーゼ5,000ユニット/g、アラバナーゼ90ユニット/g)1gとセルラーゼ/ヘミセルラーゼ酵素剤であるセルラーゼY-NC(ヤクルト薬品工業株式会社製、セルラーゼ30,000ユニット/g)1gを添加し、よくかき混ぜて室温で8時間静置反応を行った。この反応液を遠心分離して上清を除去した後、水を添加して撹拌し、再度遠心分離により上清を除去した。この沈殿物を凍結乾燥機により乾燥し、ナイフ式粉砕機(Retsch社、GM200)で5分間粉砕後、300メッシュの篩を通過する粉砕物(組成物1)4.5gを得た。組成物1中のβ-クリプトキサンチン濃度はフリー対換算で5mg/gであった。
実施例2
以下に示す組成・製法により、本発明の経口投与組成物の一態様であるソフトカプセルを製造した。なお、カロミックスPFは(株)光洋商会から、ナチュラルマルチカロノイド20は協和発酵工業(株)から、オリーブオイルはサミット精油(株)から、ビーズワックスは三木化学工業(株)から購入した。
組成:
1)組成物1 10.0g
2)カロミックスPF 6.5g
3)ナチュラルマルチカロテノイド20 15.2g
4)オリーブオイル 23.3g
5)ビーズワックス 45.0g
合計 100g
製法:1)〜5)を均一に混合後、ゼラチン、蜜蝋などからなるソフトカプセル包材内に300mg/錠で充填する。
本ソフトカプセルには1錠あたりα−カロテンが0.8mg、β―カロテンが3.5mg、ルテインが4.9mg、ゼアキサンチンが0.04mg、リコペンが1.7mg、β−クリプトキサンチンが0.15mg含有されていた。
比較例1
以下に示す組成・製法により、実施例2の対照となるソフトカプセルを製造した。
組成:
1)組成物1 10.0g
2)オリーブオイル 30.0g
3)ビーズワックス 60.0g
合計 100g
製法:1)〜3)を均一に混合後、ゼラチン、蜜蝋などからなるソフトカプセル包材内に300mg/錠で充填する。
本ソフトカプセルには1錠あたりβ-クリプトキサンチンが0.15mg含有されているが、α−カロテン、β―カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン、リコペンは含有しない。
試験例1
健康な成人男女36名を3群に分割し、試験群(男女各6名、年齢:35.8±9.1)には実施例2で作成したソフトカプセルを1日2錠、対照群1(男女各6名、年齢:36.9±7.5)には比較例1で作成したソフトカプセルを1日2錠、対照群2(男女各6名、年齢:36.4±8.4)には温州みかんを1日にβ-クリプトキサンチンとして0.3mg相当を、それぞれ毎日、8週間投与し、投与前後の血清β-クリプトキサンチン値を測定した。試験の結果を図1に示す。各群の平均血清β-クリプトキサンチン値は、対照群1が28.9μg/dL、対照群2が10.1μg/dLであったのに対し、試験群では53.1μg/dLであった。
実施例3
実施例1で製造した粉末組成物100gにエタノール1Lを加え、1時間撹拌した後にろ過してエタノール可溶成分(β―クリプトキサンチンなど)を抽出・分離した。この画分をエバポレーターでエタノールを留去・濃縮し、組成物2を得た。組成物2にはβ‐クリプトキサンチン(フリー体換算)が50mg/g含まれていた。
実施例4
以下の原料と水をよく混合して100mlとし、β-クリプトキサンチン含有ドリンク剤を製造した。なお、ポリグリセリン酸エステルは三菱化学より購入した。
1)組成物2 5mg
2)ブドウ糖果糖液糖 500mg
3)アスコルビン酸ナトリウム 50mg
4)ニコチン酸アミド 20mg
5)ビタミンB1硝酸塩 5mg
6)ビタミンB2リン酸エステル 5mg
7)ポリグリセリン酸エステル 0.5mg
比較例2
以下の原料と水をよく混合して100mlとし、実施例4の対照となるドリンク剤を製造した。
1)組成物2 5mg
2)ブドウ糖果糖液糖 500mg
3)クエン酸ナトリウム 50mg
4)ニコチン酸アミド 20mg
5)ビタミンB1硝酸塩 5mg
6)ビタミンB2リン酸エステル 5mg
7)ポリグリセリン酸エステル 0.5mg
試験例2
健康な成人男女20名を2群に分割し、試験群(男女各5名、年齢:34.2±8.2)には実施例4で作成したドリンクを1日1本(100ml)、対照群(男女各5名、年齢:35.9±7.5)には比較例2で作成したドリンクを1日1本(100ml)を、それぞれ毎日、4週間投与し、投与前後の血清β-クリプトキサンチン値を測定した。試験の結果を図2に示す。各群の平均血清β-クリプトキサンチン値は、対照群が14.9μg/dL試験群では35.1μg/dLであった。
試験例1における試験群、対照群1、対照群2のそれぞれにおける血清β−クリプトキサンチン値を示す図である。 試験例2における試験群、対照群における血清β−クリプトキサンチン値を示す図である。

Claims (9)

  1. クリプトキサンチンと抗酸化性物質とを含有し、クリプトキサンチン高吸収性を有することを特徴とする経口投与組成物。
  2. クリプトキサンチンが、温州みかん由来である請求項1記載の経口投与組成物。
  3. 抗酸化性物質が、クルプトキサンチンを除くカロテノイド又はその誘導体である請求項1又は2記載の経口投与組成物。
  4. 抗酸化性物質が、アスコルビン酸又はその誘導体である請求項1又は2記載の経口投与組成物。
  5. 抗酸化性物質が、トコフェロール類である請求項1又は2記載の経口投与組成物。
  6. 経口投与組成物が、ソフトカプセル又はハードカプセルに加工されている請求項1〜5のいずれかに記載の経口投与組成物。
  7. 経口投与組成物が、打錠品に加工されている請求項1〜5のいずれかに記載の経口投与組成物。
  8. 経口投与組成物が、液状に加工されている請求項1〜5のいずれかに記載の経口投与組成物。
  9. クリプトキサンチンを経口摂取する際に、抗酸化性物質をともに摂取することを特徴とするクリプトキサンチンの吸収性を向上させる方法。
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