JP2010102967A - 照明光通信システム用の送信装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】照明としての性能が高く、かつ通信速度が速い新規な照明光通信システムおよびこの照明光通信用システムに好適に適用可能な送信装置。
【解決手段】送信データに基づいて変調された変調光を出射する照明用光源を備える送信装置であって、照明用光源は、有機エレクトロルミネッセンス素子26と、有機エレクトロルミネッセンス素子からの光が外部に出射する最表面部に設けられるフィルム80とを備え、フィルムは、有機エレクトロルミネッセンス素子側とは反対側の表面部に複数の凹凸部を有し、ヘイズ値が70%以上であり、かつ全光線透過率が80%以上である、照明光通信システム用の送信装置。
【選択図】図10

Description

本発明は、照明用光源を利用してデータを伝送する照明光通信システム用の送信装置および照明光通信システムに関する。
高速通信技術の進展とともに、光を伝送媒体として用いた屋内無線通信技術が利用されるようになってきた。特に、伝送媒体として赤外線を用いたLAN(Local Area Network)が、オフィスや家庭に普及してきている。
しかしながら、赤外線を用いた無線データ通信では、送信装置と受信装置との間に存在する遮蔽物によって通信に支障が生じるという問題がある。また、信号電力が小さいため、データ通信、すなわち信号の送受信が不安定になり易いという問題がある。
前述した無線データ通信にかかる問題を解決する通信方式として、照明用光源からの光をデータの伝送媒体に用いた通信方式(照明光通信)が考えられている。照明用光源としては、化合物半導体系の白色発光ダイオード(以下、白色LED(LED:Light Emitting Diode)という場合がある)が用いられている。
白色LEDを用いた照明は、蛍光灯といった従来の照明と比較して、長寿命、小型、低消費電力といった優れた特長を有している。非特許文献1および特許文献1には、このような白色LEDの特長に着目した照明光通信システムが開示されている。
「可視光通信に適した変調方式の実験的検討」(信学技報IEICE Technical Report OCS2005-19(2005-5)第43〜48頁 社団法人 電子情報通信学会) 特開2003−318836号公報
照明光通信には、通信と照明との両方に求められる特性が求められる。通信としては高い伝送速度が求められており、照明としては低消費電力が求められており、従ってその光源には、例えば高い応答速度と高い発光効率とが求められている。
前述したように、蛍光灯などの照明と比較すると白色LEDは照明として優れた特徴を有しているが、しかしながら、上記照明光通信に用いられる白色LEDは、例えば半導体レーザと比較するとその応答速度が低い。特に照明に利用される白色LEDには、蛍光体を使用するタイプのものが主に用いられているが、蛍光体を使用するタイプの白色LEDは、蛍光体不使用のものと比較すると応答速度が低い。従って白色LEDを用いた従来の照明光通信では、伝送速度が必ずしも十分とはいえない。
そこで発光効率と応答速度との両方を勘案したときに、照明光通信用の光源として、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という場合がある)を用いることを本出願人は考案し、これにさらに検討を加えたところ、有機EL素子の発光効率は、照明という観点からすると必ずしも十分とはいえない。
そこで、本発明の目的は、伝送速度が速く、および発光効率が高い新規な照明光通信システムおよびこの照明光通信用システムに好適に適用可能な送信装置を提供することにある。
前述した課題を解決するために、本発明では、下記の構成を採用した。
〔1〕 送信データに基づいて変調された変調光を出射する照明用光源を備える送信装置であって、前記照明用光源は、有機エレクトロルミネッセンス素子と、該有機エレクトロルミネッセンス素子からの光が外部に出射する最表面部に設けられるフィルムとを備え、前記フィルムは、前記有機エレクトロルミネッセンス素子側とは反対側の表面部に複数の凹凸部を有し、ヘイズ値が70%以上であり、かつ全光線透過率が80%以上である、照明光通信システム用の送信装置。
〔2〕 前記照明用光源は、それぞれの発光面積が10−8cmから10−1cmである複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える、〔1〕に記載の照明光通信システム用の送信装置。
〔3〕 前記照明用光源が、変調光を出射する通信用の有機エレクトロルミネッセンス素子と、非変調光を出射する照明用の有機エレクトロルミネッセンス素子とを備える、〔1〕または〔2〕に記載の照明光通信システム用の送信装置。
〔4〕 前記通信用の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層が、蛍光を発光する発光材料を用いて形成され、かつ前記照明用の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層が、リン光を発光する発光材料を用いて形成されてなる〔3〕に記載の照明光通信システム用の送信装置。
〔5〕 前記有機エレクトロルミネッセンス素子に接続され、該有機エレクトロルミネッセンス素子の動作を制御する制御回路をさらに備える、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の照明光通信システム用の送信装置。
〔6〕 前記フィルムの凹凸部は、前記フィルムの材料を含む溶液からなる液膜が高湿度雰囲気に置かれることにより該液膜の表面に形成される液滴の形状が、前記液膜表面に転写されてなる、〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の照明光通信システム用の照明光通信システム用の送信装置。
〔7〕 変調光を出射する照明用光源を備える〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の照明光通信システム用の送信装置と、前記照明用光源から出射された前記変調光を受光して電気信号に変換し、該電気信号を復調して受信データを生成する受信装置とを具備する、照明光通信システム。
本発明の照明光通信システムにおいては、照明用光源として、高速応答性を特長とする有機EL素子を用いることにより、従来の白色LEDを用いる場合と比較して、伝送速度を顕著に高めることができる。さらに該照明用光源の外部(通常は空気)と照明用光源との界面での光の反射を抑制するフィルムを最表面部に設けることにより、照明用光源の光の取り出し効率を向上することができ、結果として発光効率の高い照明用光源を実現することができる。これによって、伝送速度が速く、および発光効率が高い新規な照明光通信システムおよびこの照明光通信用システムに好適に適用可能な送信装置を提供することができる。
以下、図を参照して、本発明の実施形態につき説明する。なお、各図は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさおよび配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。なお、以下の説明に用いる各図において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、その重複する説明を省略する場合がある。また、有機EL素子を備える装置においては電極のリード線等の部材も存在するが、本発明の説明にあっては直接的に要しないため記載を省略している。層構造等の説明の便宜上、下記に示す例においては基板を下に配置した図と共に説明がなされるが、本発明の有機EL素子およびこれを搭載した有機EL装置は、必ずしもこの配置で、製造または使用等がなされるわけではない。なお以下の説明において基板の厚み方向の一方を上または上方といい、厚み方向の他方を下または下方という場合がある。
〈照明光通信システムの構成例(1)〉
図1を参照して、本発明の照明光通信システムの構成例につき説明する。図1は、照明通信システムの構成を概略的に説明するブロック図である。
図1に示すように、照明通信システム10は、送信装置20と受信装置30とを備えている。送信装置20は、照明用光源22を備えている。照明用光源22は、送信されるべき送信データに基づいて変調された変調光を出射する。変調光とは、点滅制御された光または光量制御された光をいい、変調方式としては、アナログ変調方式(AM、FMなど)、デジタル変調方式、パルス変調方式、およびスペクトラム拡散方式などが用いられる。
送信装置20は、有機EL素子26を備え、また該有機EL素子26に接続され、かつ当該有機EL素子26の動作を制御する制御回路28をさらに備える。以下有機EL素子26と制御回路28とを含む構成を発光ユニット24という。図示例は、照明用光源22が、1つの発光ユニット24からなる例である。制御回路28と有機EL素子26とは電気的に接続されている。
有機EL素子26は、照明光のみか、または照明光および信号光の双方を生成して出射する。制御回路28は、有機EL素子の動作を制御する。有機EL素子26および制御回路28の具体的な構成については後述する。
受信装置30は、受光部32と復調部34とを備える。受信装置30は、照明用光源22から出射された変調光を受光して、受信データを生成する。
受光部32は、図示しない光電変換装置を内蔵しており、受光した変調光を電気信号に変換する。復調部34は、受光部32によって光電変換された電気信号から、元のデータ(送信データ)を復調して受信データを生成する。
送信装置20が受信装置30に対してデータを送信しない状態においては、照明用光源22をそのまま照明装置として利用することができる。
送信装置20がデータを送信する場合には、送信すべきデータ、すなわち送信データが制御回路28に供給される。送信データの供給を受けた制御回路28は、供給されたデータに基づいて有機EL素子26の動作を制御する。
こうして、送信データに対応して変調された変調光が有機EL素子26、すなわち発光ユニット24から出射される。前述したように有機EL素子26を高速に点滅させたり、その光量を高速に変化させたりしても、視覚的には感知されないので、通信用に使用したとしても、有機EL素子26はほぼ一定の光量で光っているように見える。したがって、有機EL素子26から出射された変調光は、人に違和感を与えることなく、そのまま照明光としても利用することができる。
〈照明光通信システムの構成例(2)〉
図2および図3を参照して、本発明の照明光通信システムの他の構成例につき説明する。
1Gbps程度以上の大容量の伝送を行なうためには、送信装置20において多数の発光ユニット24を二次元的に配列し、これらを互いに並列的に動作させればよい。このような並列システムを従来のLEDを用いて実現するためには、多数のLEDを二次元的に配列し、分割器との配線接続を行なう必要があり、システムとして大型にならざるを得なかった。
白色LEDに代えて有機EL素子を用いると、完成した個々の発光ユニット24を配線ボード上に後付けして配列するのではなく、例えば制御回路28が形成されたTFT(TFT:Thin Film Transistor)基板上に複数の有機EL素子26を直接的に作りこむことができ、発光ユニット24を二次元的に配置された集積デバイスを基板上に最初から製造できる。したがって分割器などの他の素子を加えても非常にコンパクトな送信装置20を実現できる。
図2および図3は、本発明の照明通信システムの構成例を概略的に説明するブロック図である。
図2に示すように、照明光通信システム10は、図1を参照して既に説明した構成を基本として、有機EL素子26および制御回路28からなる発光ユニット24並びに受光部32の組を複数組備えている。送信装置20の照明用光源22において、複数の発光ユニット24は、二次元的に配置されている。また、送信装置20に直列/並列変換回路29を追加してある。さらに、受信装置30は、レンズ36と並列/直列変換回路38とを含んでいる。
なお、図示例の送信装置20および受信装置30において、直列/並列変換回路29を制御回路28に組み込む構成としたが、直列/並列変換回路29を、制御回路28の外部に設ける構成とすることもできる。この場合、直列/並列変換回路29から生成されるパラレル信号に基づいて、制御回路28が各有機EL素子26を制御してもよい。
送信装置20の直列/並列変換回路29は、送信データであるシリアルデータを複数のパラレルデータに分割し、分割されたパラレルデータを個々の有機EL素子26にそれぞれに供給する。この送信装置20の直列/並列変換回路29の動作を含めた制御回路28の制御によって、各有機EL素子26は、各々に与えられるパラレルデータに基づいて、変調された変調光を出射する。出射された変調光は、レンズ36によって空間的に分離され、対応する各受光部32の光電変換装置において光電変換され、さらに変換された電子信号は図示しないA/Dコンバータによってデジタル化され、受信装置30の並列/直列変換回路38によってシリアルデータに変換される。復調部34は、このシリアルデータを復調することにより受信データを生成して出力する。
このように、複数の有機EL素子26を並列的に駆動することによって、大容量のデータを高速で伝送することができる。
図2に示した送信装置20において、有機EL素子26の制御(変調制御を含む)は、外部駆動回路としてのドライバICを用いて行ってもよい。図2に示した送信装置20においては、複数の有機EL素子26を単一の制御回路28で動作制御している。
図3に示すように、複数の有機EL素子26それぞれを個別に制御する複数の制御回路28を、各有機EL素子26に対応させて接続する構成とすることもできる。この場合には、照明用光源22は、1つの有機EL素子26および1つの制御回路28を1組として一体的に形成した発光ユニット24を複数組備える。なお、複数の有機EL素子26を1つの構成単位とする素子群に、各有機EL素子26をグループ分けしたときに、同じ素子群に含まれる複数の有機EL素子26と該有機EL素子26に接続される制御回路28とからなる発光ユニット24群を、サブ光源23という場合がある。後述するように、サブ光源23ごとに発光を制御することにより、各有機EL素子26を素子群ごとに駆動することができる。このように1つの素子群に含まれる複数の有機EL素子26を単位として駆動することにより、素子群単位としての光強度(信号強度)が大きくなるので、例えばノイズの多い環境で使用する場合や各有機EL素子26の光量が少ない場合であっても、正確に信号を伝送することができ、エラービットレートの小さい照明用光通信システムを実現することができる。
有機EL素子26と一体的に作り込まれる制御回路28の構成要素の一例としていわゆる薄膜トランジスタを用いることができる。薄膜トランジスタとしては、ポリシリコントランジスタ、アモルファスシリコントランジスタ、有機半導体材料を用いた有機トランジスタ等が知られている。こうした薄膜トランジスタ、すなわち制御回路28と有機EL素子26とを一体的に形成することで、送信装置20の一層の小型化が可能になる。
次に、図4を参照して、前述した照明光通信システム10の送信装置20の構成例として、いわゆるアクティブマトリクス型として構成された照明用光源22について説明する。
アクティブマトリクス型とは、有機EL素子26および制御回路28を一体的に構成した発光ユニット24をマトリクス状に配列し、複数の有機EL素子26それぞれの駆動制御を有機EL素子26の近傍にそれぞれ作り込まれた制御回路28によって行うタイプをいう。
図4は、本発明のアクティブマトリクス型の照明用光源を用いた照明光通信システムの概略的な説明図である。
送信装置20が備える照明用光源22は、前述したように例えばTFTを構成要素とする制御回路28により有機EL素子26を駆動する、いわゆるアクティブマトリクス型の装置である。
この照明用光源22には、m×n(記号「m」、「n」はそれぞれ自然数を表す)個の発光ユニット24が平面上においてm行n列のマトリクス状に配列される。すなわち格子縞の交点上に各発光ユニット24がそれぞれ配置される。
照明用光源22は、それぞれが図4において行方向に延在するとともに、互いに列方向に間隔をあけて配置されるn本の走査線Yからなる走査線群Y1〜Ynを有する。
また、照明用光源22は、列方向に延在するとともに、互いに行方向に間隔をあけて配置されるm本のデータ線Xからなるデータ線群X1〜Xmを有する。走査線群Y1〜Ynとデータ線群X1〜Xmとは、基板の厚み方向の一方から見て、格子縞を形成している。
基板の厚み方向の一方からみて、走査線Yとデータ線Xとに形成される格子縞の複数の交点近傍には、画素領域51が設けられており、各画素領域51に1つの発光ユニット24が配置されている。換言すると、複数の発光ユニット24が、画素領域51ごとにマトリクス状に配置されている。
なお、本実施形態では、1つの発光ユニット24は1つの有機EL素子を備え、この1つの発光ユニット24を最小の発光単位としているが、1つの発光ユニット24が複数の有機EL素子を備えていてもよく、複数の有機EL素子を備える1つの発光ユニット24を最小の発光単位としてもよい。この場合、各発光ユニット24からの出射光は、各発光ユニット24にそれぞれ設けられる複数の有機EL素子からの出射光を重ね合わせた光である。たとえば各発光ユニット24が、赤(R)、緑(G)、青(B)色の光をそれぞれ個別に出射する3つの有機EL素子を含んで構成される場合には、各発光ユニット24が白色を出射する。
また、図4においては、それぞれの発光ユニット24に対して所定の電圧VddまたはVssを供給する電源線等が省略されている。
図5および図6を参照して、発光ユニット24が備える制御回路28の好適な構成例につき説明する。
図5は電流プログラム方式における発光ユニット24が備える制御回路28を示す回路図である。図6は電圧プログラム方式における発光ユニット24が備える制御回路28を示す回路図である。
図5および図6に示すように、発光ユニット24は、有機EL素子26およびこの有機EL素子26を除く回路部分である制御回路28を備えている。
〈電流プログラム方式〉
図5に示すように、制御回路28は、4つのトランジスタT1、T2、T3およびT4、送信データを保持するデータ保持手段であるキャパシタC、電源電圧(供給手段)Vdd、基準電圧(供給手段)Vss並びにこれらを互いに接続する信号線を含んでいる。
図5では、トランジスタT1、T2、およびT4をnチャネル型トランジスタとし、トランジスタT3をpチャネル型トランジスタとした例を示してある。
トランジスタT1のゲート電極は、走査信号SELが供給される所定の1本の走査線Yに電気的に接続されている。トランジスタT1のソース電極は、データ電流Idataが供給される所定の1本のデータ線Xに電気的に接続されている。トランジスタT1のドレイン電極は、トランジスタT2のソース電極に電気的に接続されている。
トランジスタT1のドレイン電極およびトランジスタT2のソース電極は、プログラミングトランジスタであるトランジスタT3のドレイン電極およびトランジスタT4のドレイン電極に電気的に共通接続されている。
トランジスタT2のゲート電極は、トランジスタT1のゲート電極と同じく、走査信号SELが供給される走査線Yに電気的に共通接続されている。トランジスタT2のドレイン電極は、キャパシタCの一方の電極と、トランジスタT3のゲート電極とに電気的に共通接続されている。
キャパシタCの他方の電極には電源電圧Vddが印加される。また、トランジスタT3のソース電極には、電源電圧Vddが印加される。キャパシタCの他方の電極とトランジスタT3のソース電極とには、電源電圧Vddが印加される。
トランジスタT4のゲート電極には駆動信号GPが入力される。トランジスタT4のドレイン電極には有機EL素子26のアノード(陽極)が電気的に接続される。また、有機EL素子26のカソード(陰極)には、電源電圧Vddよりも低電圧である基準電圧(接地電圧)Vssが印加される。
〈電圧プログラム方式〉
電圧プログラム方式についても、送信装置の全体的な構成については既に説明した通りである。しかしながら、この場合には、データ電圧(信号)Vdataをデータ線Xにそのまま出力するため、データ線Xに電気的に接続されているデータ線駆動回路44(図4)の可変電流源が不要になる。ここでは、いわゆるCC(Conductance Control)法と称される構成例につき説明する。
図6に示すように、発光ユニット24は、有機EL素子26、トランジスタT1、T4およびT5、データ保持手段であるキャパシタC、電源電圧(供給手段)Vdd、基準電圧(供給手段)Vss並びにこれらを互いに接続する信号線を含んでいる。図6にはトランジスタT1、T4およびT5を、すべてnチャネル型とした例を示してある。
いわゆるスイッチングトランジスタであるトランジスタT1のゲート電極は、走査信号SELを供給する所定の走査線Yに電気的に接続されている。トランジスタT1のドレイン電極は、データ電圧(信号)Vdataを供給する所定のデータ線Xに電気的に接続される。トランジスタT1のソース電極は、データ保持手段であるキャパシタCの一方の電極に電気的に接続される。
トランジスタT1のソース電極とキャパシタCの一方の電極とは、いわゆる駆動トランジスタであるトランジスタT4のゲート電極に、電気的に共通接続されている。
キャパシタCの他方の電極には基準電圧Vssが印加される。また、トランジスタT4のドレイン電極には電源電圧Vddが印加される。トランジスタT4のソース電極は、いわゆる制御トランジスタであるトランジスタT5のドレイン電極に電気的に接続される。
トランジスタT5には、駆動信号GPが入力される。トランジスタT5は、駆動信号GPによって導通制御される。トランジスタT5のソース電極は、有機EL素子26のアノードに電気的に接続されている。この有機EL素子26のカソードには、基準電圧Vssが印加されている。
前述した構成例では、データを保持する回路要素、すなわちデータ保持手段の好適例として、キャパシタを用いる例を説明したが、キャパシタの代わりに、多ビットのデータを記憶可能なメモリ装置(SRAM等)を用いることもできる。
図7を参照して、図5および図6を参照して説明した発光ユニット24の動作につき説明する。図7は、発光ユニット24の動作タイミングチャートである。
ここで、走査線駆動回路42(図4)による走査線Y1から走査線Ynの線順次走査によって、所定の発光ユニット24の選択が開始されるタイミングをt0とする。また、発光ユニット24の選択が次に開始されるタイミングをt2とする。期間t0〜t2は、前半のプログラミング期間t0〜t1と、後半の駆動期間t1〜t2とに分けられる。
〈電流プログラム方式(図5に示した回路構成)における動作〉
前半のプログラミング期間t0〜t1では、キャパシタCに対する送信データの書き込みが行われる。まず、タイミングt0において、走査信号SELが走査線Yに入力される。これにより、走査線Yが高レベル(以下、Hレベルという場合がある)に立ち上がる。スイッチング素子として機能するトランジスタT1およびT2が共にオン(導通)する。すると、データ線XとトランジスタT3のドレイン電極とが電気的に接続される。これにより、トランジスタT3は、自己のゲート電極と自己のドレイン電極とが電気的に接続されたダイオード接続となる。
トランジスタT3は、データ線Xより供給されたデータ電流Idataを自己のチャネルに流す。これにより、データ電流Idataに応じた電圧がゲート電圧Vgとして発生する。トランジスタT3のゲート電極に接続されたキャパシタCには、発生したゲート電圧Vgに応じた電荷が蓄積される。これにより、キャパシタCには、蓄積された電荷量に相当するデータ(送信データ)が書き込まれる。
プログラミング期間t0〜t1において、トランジスタT3は、自己のチャネルを流れるデータ信号に基づいて、キャパシタCに対するデータの書き込みを行うプログラミングトランジスタとして機能する。また、この期間中、駆動信号GPが低レベル(以下、Lレベルという場合がある)に維持されているため、トランジスタT4はオフ(非導通)のままである。したがって、有機EL素子26に対する駆動電流の経路はトランジスタT4により遮断される。よって、有機EL素子26は発光しない。
続く駆動期間t1〜t2では、駆動電流が有機EL素子26を流れ、有機EL素子26の輝度の設定が行われる。まず、タイミングt1において、走査信号SELがLレベルに立ち下がり、トランジスタT1およびT2がいずれもオフする。これにより、データ電流Idataが供給されるデータ線XとトランジスタT3のドレイン電極とが電気的に分離され、トランジスタT3のゲート電極とドレイン電極との間も電気的に分離される。
トランジスタT3のゲート電極には、キャパシタCの蓄積電荷に応じたゲート電圧Vgが印加され続ける。タイミングt1における走査信号SELの立ち下がりと同期(同一タイミングであるとは限らない)して、それ以前はLレベルだった駆動信号GPがHレベルに立ち上がる。
これにより、電源電圧Vddから基準電圧Vssに向かって、トランジスタT3およびT4と有機EL素子26とに連なる駆動電流の経路が形成される。有機EL素子26を流れる駆動電流は、トランジスタT3のチャネル電流に相当し、その電流レベルは、キャパシタCの蓄積電荷に基づくゲート電圧Vgによって制御される。
駆動期間t1〜t2において、トランジスタT3は、有機EL素子26に駆動電流を供給する駆動トランジスタとして機能する。結果として、有機EL素子26は、この駆動電流に応じて、換言すれば、キャパシタCに保持されたデータに基づいて変調された発光強度で発光する。
〈電圧プログラム方式(図6に示した回路構成)における動作〉
まず、タイミングt0において、所定の走査線Yに、走査線信号SELが入力される。すると、走査線Yは、Hレベルに立ち上がり、トランジスタT1がオンする。よって、データ線Xに供給されたデータ電圧Vdataが、トランジスタT1を介して、キャパシタCの一方の電極に印加される。
これにより、データ電圧Vdata相当の電荷がキャパシタCに蓄積される(送信データが書き込まれる。)。なお、タイミングt0からタイミングt1までの期間において、駆動信号GPはLレベルに維持される。よって、制御トランジスタT5はオフのままである。したがって、有機EL素子26に対する駆動電流の電流経路が遮断されるため、前半の期間t0〜t1において、有機EL素子26は発光しない。
前半の期間t0〜t1に続く後半の期間t1〜t2では、キャパシタCに蓄積された電荷に応じた駆動電流が有機EL素子26を流れる。これにより、有機EL素子26が発光する。タイミングt1では、走査信号SELがLレベルに立ち下がる。
これにより、トランジスタT1がオフする。よって、キャパシタCの一方の電極に対するデータ電圧Vdataの印加が停止するが、キャパシタCの蓄積電荷によって、トランジスタT4のゲート電極にはゲート電圧Vg相当が印加される。タイミングt1における走査信号SELの立ち下がりと同期して、それ以前はLレベルだった駆動信号GPは、Hレベルに立ち上がる。
これにより、発光ユニット11の次の選択が開始されるタイミングt2に至るまでHレベルが維持される。よって、駆動電流の電流経路が形成される。これにより、有機EL素子26は、キャパシタCに保持されたデータに基づいて変調された発光強度で発光する。
図4を参照して既に説明したように、照明用光源22を駆動するための駆動回路は、走査線駆動回路42とデータ線駆動回路44とによって構成されており、両者は、図示しない上位装置による同期制御下、互いに協働して動作する。
走査線駆動回路42は、シフトレジスタ、出力回路等を主体に構成されており、走査線Y1〜Ynに走査信号SELを出力することによって、走査線Y1〜Ynを所定の選択順序で順番に選択する線順次走査を行う。走査信号SELは、HレベルまたはLレベルの2値的な信号レベルをとり、データの書込対象となる行(走査線Yの1ラインに接続される複数の発光ユニット24群)に対応する走査線YはHレベルとされ、これ以外の走査線YそれぞれはLレベルとされる。
そして、1垂直走査期間(1F)において、所定の選択順序で、それぞれの行が順番に選択されていく。なお、走査線駆動回路42は、走査信号SEL以外に、トランジスタを導通制御する駆動信号GP(またはそのベース信号)も出力する。この駆動信号GPによって、駆動期間、すなわち、発光ユニット24中に含まれる有機EL素子26の輝度設定を行う期間が設定される。
データ線駆動回路44は、走査線駆動回路42による線順次走査と同期して、データ線X1〜Xmそれぞれに対するデータ信号の供給を電流ベースで行う。前述した電流プログラミング方式の場合には、データ線駆動回路44は、発光ユニット24より出射される変調光の変調度合いを規定するデータ(データ電圧Vdata)をデータ電流Idataへと変換する可変電流源を含む。データ線駆動回路44は、1水平走査期間(1H)において、今回データを書き込む行に対するデータ電流Idataの一斉出力と、次の水平走査期間で書き込みを行う行に関するデータの点順次的なラッチとを同時に行う。
ある水平走査期間において、データ線Xの本数に相当するm個のデータが順次ラッチされる。そして、次の水平走査期間において、ラッチされたm個のデータは、データ電流Idataに変換された上で、それぞれのデータ線X1〜Xmに対して一斉に出力される。
図8を参照して、サブ光源23の構成につき説明する。図8は、サブ光源の構成例を説明する照明光通信システムの概略的な説明図である。
送信装置20のサブ光源23は、照明用光源22に含まれる複数の発光ユニット24が複数のグループに区分けされることにより規定される。図示例では、複数の発光ユニット24が4つに区分けされて、第1サブ光源23A、第2サブ光源23B、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23D(以下、それぞれサブ光源A、サブ光源B、サブ光源Cおよびサブ光源Dという場合がある)とされている。なお、iおよびjは1以上の任意の正数であり、かつmおよびnは2以上の任意の正数である。1サブ光源23A、第2サブ光源23B、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源24Dに含まれる発光ユニット24の数は、互いに同一であっても、互いに異なっていてもよい。また、サブ光源23同士の発光ユニット24の数が同数である場合において、発光ユニット24の配置形態は、サブ光源23単位で同一であっても、異なっていてもよい。また離散的に離れて配置されている発光ユニット24を同一の発光ユニット24に属する発光ユニット24とするグループ分けをしてもよく、このようなグループ分けを行うことにより、たとえサブ光源23単位で明滅などしたとしても、局所的な光量の低下を抑制することができ、照明としての性能の低下を抑えることができる。
第1サブ光源23A、第2サブ光源23B、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源24Dに含まれる発光ユニット24の数を、ここではi=j=4かつm=n=8、すなわち互いに同数である16とした例を説明する。第1サブ光源23A、第2サブ光源23B、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23Dそれぞれが含む発光ユニット24は、この例では4×4のマトリクス状に配置されている。
第1サブ光源23Aおよび第2サブ光源23Bの発光ユニット24は、走査線Y1〜Yj(Y4)(走査線群Yabという場合がある)に電気的に接続される。また、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23Dの発光ユニット24は、走査線Yj+1〜Yn(Y5〜Y8)(走査線群Ycdという場合がある)に電気的に接続される。
また、第1サブ光源23Aおよび第3サブ光源23Cの発光ユニット24は、データ線X1〜Xi(X4)(データ線群Xacという場合がある)に電気的に接続される。また、第2サブ光源23Bおよび第4サブ光源23Dの発光ユニット24は、データ線Xi+1〜Xm(X5〜X8)(データ線群Xbdという場合がある)に電気的に接続される。
次に、図4、図8および図9を参照して、複数のサブ光源にグループ分けされた照明用光源を備える照明光通信システムの動作につき説明する。
走査線駆動回路42およびデータ線駆動回路44(図4)は、照明用光源22に設定された第1サブ光源23A、第2サブ光源23B、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23Dにおいて、各サブ光源23単位で、複数のサブ光源23を独立的に駆動する。
同一のサブ光源23に属する複数の発光ユニット24は、本実施形態では、すべて同一の発光状態になるように制御される。異なるサブ光源23同士については互いに独立的あるいは並列的に制御され得る。よって、この場合には、照明用光源22に、4つの独立した伝送チャネルが形成されることになる。
走査線Y1〜Yj、すなわち走査線群Yabが選択されている状態でデータ線X1〜Xi、すなわちデータ線群Xacに供給されたデータ(すべて同一の電流レベルである)は、第1サブ光源23Aの各発光ユニット24に共通して供給される。
これによって、第1サブ光源23Aの発光状態が制御される。また、この状態でデータ線Xi+1〜Xm、すなわちデータ線群Xbdに供給されたデータは、第2サブ光源23Bの各発光ユニット24に共通に供給される。これによって、第2サブ光源23Bの発光状態が制御される。
走査線Yj+1〜Yn、すなわち走査線群Ycdが選択されている状態でデータ線X1〜Xi、すなわちデータ線群Xacに供給されたデータは、第3サブ光源23Cの各発光ユニット24に共通に供給される。
これによって、第3サブ光源23Cの発光状態が制御される。また、この状態でデータ線Xi+1〜Xm、すなわちデータ線群Xbdに供給されたデータは、第4サブ光源23Dの各発光ユニット24に共通に供給される。これによって、第4サブ光源23Dの発光状態が制御される。
図9は、照明光通信システムの動作を説明するタイミングチャートである。
図8に示す構成において、最上段に配置されている走査線Y1から最下段に配置されている走査線Ynに向かって、n本の走査線Yが順次選択されていくものとする。
この場合には、照明用光源22全体に対して、送信データのデータ書き込みを行うのに要する1フレーム期間t0〜t2は、前半の第1サブ光源23Aおよび第2サブ光源23Bの選択期間t0〜t1と、後半の第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23Dの選択期間t1〜t2とに分けられる。
第1サブ光源23Aおよび第2サブ光源23Bの選択期間t0〜t1は、走査線群Yabに属する走査線Y1の選択が開始されてから走査線Yjの選択が終了するまでの期間に相当する。
この期間t0〜t1において、データ線群Xacには第1サブ光源23A用の送信データDaが共通して供給され、この送信データDaに応じたレベルにデータ線群Xacが維持される。
データ線群Xacには、第1サブ光源23Aのみならず第3サブ光源23Cも接続されているが、走査線群Ycdが非選択のため、第3サブ光源23Cは電気的に分離されている。したがって、データ線群Xacに供給された送信データDaは、第1サブ光源23Aにのみ供給され、これに応じた書き込みが第1サブ光源23Aにおいて行われる。
また、この期間t0〜t1において、データ線群Xbdには第2サブ光源23B用の送信データDbが共通して供給され、この送信データDbに応じたレベルにデータ線群Xbdが維持される。
データ線群Xbdには、第2サブ光源23Bのみならず第4サブ光源23Dも接続されているが、走査線群Ycdが非選択のため、第4サブ光源23Dは電気的に分離されている。したがって、データ線群Xbdに供給された送信データDbは、第2サブ光源23Bにのみ供給され、これに応じた書き込みが第2サブ光源23Bにおいて行われる。
第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23Dの選択期間t1〜t2は、走査線群Ycdに属する走査線Yj+1の選択が開始されてから走査線Ynの選択が終了するまでの期間に相当する。この期間t1〜t2において、データ線群Xacには第3サブ光源23C用の送信データDcが共通して供給され、この送信データDcに応じたレベルにデータ線群Xacが維持される。
ここで、データ線群Xacに接続された第1サブ光源23Aは、走査線群Yabが非選択のため電気的に分離されている。したがって、データ線群Xacに供給された送信データDcは、第3サブ光源23Cにのみ供給され、これに応じた書き込みが第3サブ光源23Cにおいて行われる。
また、期間t1〜t2において、データ線群Xbdには第4サブ光源23D用の送信データDdが共通して供給され、この送信データDdに応じたレベルにデータ線群Xbdが維持される。このとき、データ線群Xbdに接続された第2サブ光源23Bは、走査線群Yabが非選択のため電気的に分離されている。したがって、データ線群Xbdに供給された送信データDdは、第4サブ光源23Dにのみ供給され、これに応じた書き込みが第4サブ光源23Dにおいて行われる。
なお、図9においては、同一のサブ光源23に対応する走査線群を順次走査するケースを例示したが、駆動回路の駆動能力を十分に確保できることを条件として、サブ光源23ごとに対応する走査線群を同時に一括選択することもできる。
ここで、前述した図5および図6に示すように制御回路28を構成しておけば、電流プログラム方式および電圧プログラム方式のいずれにおいても、第1サブ光源23A、第2サブ光源23B、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23Dの独立的な駆動を実現することができる。
〈有機EL素子の構成例〉
有機EL素子は、自由なサイズ設計が可能、超小型化が可能、高速応答が可能といった優れた特長を有する。有機EL素子を、照明光通信に利用する場合には、個々の素子面積はより小さいものが好適である。個々の素子面積が小さいほど、有機EL素子の静電容量は小さくなる傾向があるので、応答速度を規定する素子のRC時定数も同様に小さくなり、ひいては有機EL素子の面積が小さくなるほどその応答速度が速くなるからである。
素子面積(発光面積)は、好ましくは10-8cm2以上1cm2以下とするのがよく、より好ましくは10-8cm2以上10-1cm2以下とするのがよく、さらに好ましくは10-8cm2以上10-2cm2以下とするのがよい。
従来のLEDでは、半導体基板にLEDを形成した後、半導体基板を分割して個々のチップとし、配線が形成された回路基板にチップを取り付けて使用する。チップにはLEDを回路基板に接続する際に必要となる接続部位が設けられるので、チップの大きさはLEDよりも大きくなる。また、LEDのチップとしては、台座および樹脂レンズなどが必要となるため、実際に発光する部分よりも大きな素子となる。さらにそのチップを回路基板に実装するためには、基板側にも接続部位を設ける必要があるので、チップよりも大きい実装面積が必要となり、LED自体が小さいものであったとしても、送信装置の小型化には自ずと限界がある。
これに対して、有機EL素子の場合には、例えば素子の動作を制御する制御回路および配線などが形成された基板上に素子を直接的かつ配線と一体的に形成することができる。すなわち、従来のLEDのようには有機EL素子自体の大きさよりも大きい実装面積を必要とせず、発光ユニットの高集積化が容易であり、送信装置の小型化を実現することができる。そして、基板に作り込まれた有機EL素子をそのまま動作させて利用できるので、設計上の自由度が高く、素子の小型化が比較的容易である。以上のような理由から、有機EL素子は、照明光通信用の発光ユニットとして極めて好適である。
大容量データの高速通信を可能にするためには、複数の発光ユニットからデータを並列的に送信することが好ましく、そのためには、発光ユニットを複数配列する必要がある。
従来のLEDでは、個々のLEDチップ、または、チップに台座と樹脂レンズとからなる素子を配列する必要があるために、実際に発光する部分よりも大きな面積が必要であった。
これに対して、有機EL素子では、配線および制御回路などを形成した基板上に素子を直接形成し、素子をそのまま動作させて利用できるので、発光ユニットの高集積化が容易であり、全体として小さな通信向け照明用光源(送信装置)が実現できる。
また、従来のLEDの場合には、送信装置における照明用光源の強度変調は、ドライバIC(IC:Integrated Circuit)といった外部制御回路を用いて行う必要があった。そのため、送信装置を構成するユニットの小型化が困難であった。
これに対して、有機EL素子の場合には、発光層を含む発光層の近傍に薄膜トランジスタ等の変調素子からなる制御回路を一体的に形成することができる。制御回路と有機EL素子とを、例えば積層して一体化すれば、発光ユニットの小型化が容易である。
このように、有機EL素子を用いることにより、発光ユニットのさらなる小型化や集積化が可能であり、有機EL素子と制御回路との積層構造も容易に製造できるので、高速大容量の照明光通信に対応した送信装置の小型化を実現することができる。
有機EL素子としては、蛍光発光型(一重項遷移)とリン光発光型(三重項遷移)が知られているが、本実施形態では、どちらを使用してもよい。有機EL素子を小さくし、RC時定数を小さくして応答速度を上げても、発光の減衰時間で規定される速度以上に応答速度を上げることはできない。
有機EL素子は、その発光のメカニズムによって、蛍光発光(一重項励起状態からの発光)型とリン光発光(三重項励起状態からの発光)型とに分けられる。一般に、蛍光発光型はリン光発光型よりも発光の減衰時間が短く、室温(20℃程度)では蛍光発光型で約10ns程度、リン光発光型で約1μs程度である。したがって、どちらを用いても、素子単体で1Mbps程度の伝送速度までの信号通信に対応可能である。
また、本発明の実施形態において、蛍光発光型の有機EL素子およびリン光発光型の有機EL素子の双方を混載した集積デバイスを照明用光源として用いてもよい。蛍光発光型は、リン光発光型よりも応答速度をより速くできるので、高速な通信用途に適しているといえる。リン光発光型は、蛍光発光型よりも発光効率をより高めることができるので、照明用途に適している。
有機EL素子は発光層材料を素子ごとに選択的に分けて形成できる。よって、照明用光源において、例えば照明用の有機EL素子をリン光発光型とし、通信用の有機EL素子を蛍光発光型とするというように、照明用光源が、送信データに基づいて変調された変調光を出射する通信用の有機EL素子と、非変調光を出射する照明用の有機EL素子とを含んで構成されてもよい。
この場合には、蛍光発光型の有機EL素子には、好ましくは例えば照明機能および通信機能の双方を担わせて、送信すべき送信データに基づいて変調された変調光を出射する通信用の有機EL素子としてこれを用いるのがよい。また、リン光発光型の有機EL素子には、好ましくは例えば照明機能のみを担わせて、一定の非変調光を出射する照明用の有機EL素子としてこれを用いるのがよい。
これら照明用の有機EL素子および通信用の有機EL素子は、前述したサブ光源ごとにいずれかの有機EL素子を選択して設ける構成としてもよい。また、単一のサブ光源内に照明用の有機EL素子および通信用の有機EL素子を混在させてもよい。
これにより、照明効率の向上と通信の高速化とを両立した照明システムが構築できる。ただし、このような構成では、照明からの全光量に対して、通信情報が重畳された光、すなわち信号光の割合が小さくなる。したがって、受信装置として、光の強度変化に敏感なシステムが必要になる。全光量に対する蛍光、すなわち信号光の割合としては、1%以上50%以下であることが望ましい。
一般照明を用いて照明光通信を行う場合には、照明用光源は白色であることが望ましい。有機EL素子で白色光を得るためには、大きくわけて以下の2つの方法がある。
一方は、複数の光源から放射される光を重ね合わせることにより、白色光を得る方法である。この方法には、(1)赤色光を発光する有機EL素子(R素子)、緑色光を発光する有機EL素子(G素子)および青色光を発光する有機EL素子(B素子)を基板面内にタイル状に配列させ、これら3つの素子を同時に発光させる方法と、(2)マルチフォトン型の有機EL素子において、互いに異なる発光波長で発光する発光層を備える素子を積層する方法と、(3)マルチフォトン型ではない有機EL素子において、互いに異なる発光波長で発光する複数の発光層を積層する方法とに分けられる。
他方は、発光層自体が白色のスペクトルで発光するものを利用することにより白色発光を得る方法である。
これらの白色光を発光する有機EL素子は、従来の蛍光体を用いた、いわゆる白色LEDのような電流注入による青色発光→蛍光体励起→黄色発光というプロセス非経由で、電流注入直接再結合により白色光を出射する。そのため、従来の蛍光体を用いた白色LEDよりも応答速度がより速いという特長があり、照明光通信システムに好適である。
図10を参照して、この発明の送信装置に好適に適用可能な有機EL素子26の構成例につき説明する。
図10は、有機EL素子の切断面の切り口を概略的に示す説明図である。例えばTFT基板である基板50上に形成された1つの有機EL素子26を含む照明用光源の構成を説明する。
図10に示すように、有機EL素子26は、隔壁60により区画された画素領域51内に設けられる。隔壁60は、互いに隣接する画素領域51同士の境界において、互いに隣接する第1電極52のパターン間に設けられており、かつ互いに隣接する第1電極52のパターンにまたがるように設けられている。隔壁60は、第1電極52および発光層56の積層構造を有機EL素子26ごとに分離している。
この隔壁60は、後述する第1電極52が形成された基板50上の画素領域51を区画する領域に、例えば感光性レジスト液をスピン塗布し、これを露光および現像することで、感光性樹脂よりなる隔壁60を形成することができる。
有機EL素子26は、基板50上に設けられる。基板50は、本実施の形態では平行平板型の基板である。基板50は、第1主表面50aと、この第1主表面50aに対向する第2主表面50bとを有している。有機EL素子26は、第1主表面50a上に設けられる。基板50がいわゆるTFT基板である場合には、有機EL素子26の動作制御を行う制御回路を基板50が備える。
有機EL素子26は、第1電極52を有する。この例では、第1電極52を陽極としてある(以下、第1電極52を陽極52という場合がある)。第1電極52は基板50の第1主面50a上に設けられる。第2電極58は、この第1電極52と対向して配置されている。第2電極58は、この例では陰極としてある(以下、第2電極58を陰極58という場合がある)。
有機EL素子を基板に設ける場合には、通常、基板側に陽極が形成されるが、基板側に陰極を設ける構成としてもよい。
第1電極52および第2電極58の電極間には、本構成例では第1機能層53、発光層56および第2機能層57が第1電極52側からこの順に、積層されて構成されている。すなわち、第1機能層53は、第1電極52上に積層される。
発光層56は、第1機能層53上に積層される。第2機能層57は、発光層56上に積層される。第2電極58は、第2機能層57上に積層される。第2電極58は、複数の画素領域51にまたがるように、第2機能層57および隔壁60上に設けられている。
一般に、有機EL素子においては、陽極および陰極のいずれか一方または双方とも、透明または半透明とされる。有機EL素子26を例えばボトムエミッション型とする場合には、陽極52は、透明または半透明とされる。透明または半透明とする場合には、陽極52として、可視光領域の光の透過率がより高いものを用いるのが好適である。
第2電極58上全面には、封止層70が設けられている。封止層70は複数の画素領域51にまたがるように設けられている。
照明用光源において、フィルム80は、有機EL素子26からの光が出射する最表面部に設けられる。すなわちフィルム80の有機EL素子側とは反対側の表面は、例えば水中、大気中といった外部環境に露出する面であるフィルム80は、マトリクス状に配置されている複数の画素領域51にまたがるように、すなわち露出面のうち、少なくとも光学的に有効な領域を含む基板50の第2主表面50b全面に積層される。
(有機EL素子の構成例1)
図10を参照して、有機EL素子の構成例1につき説明する。
本発明の有機EL素子の構成例1は、基板50の第2主表面50bにフィルム80が設けられているいわゆるボトムエミッション型の構成例である。
構成例1では、基板50の第2主表面50bにフィルム80が積層されている。
ここで、図12を参照して、フィルム80の好適な構成例につき説明する。図12は、後述する作製例1により得られたフィルム80を厚み方向、すなわち第1主面80aおよび/または第2主面80bに対して垂直な方向に切断した切断面を示す模式図である。
フィルム80は、有機EL素子26から入射する光を散乱する機能を有する。フィルム80は、ヘイズ値が70以上であり、かつ全光線透過率が80%以上である光学的特性を有するものを用いるのが好ましい。
フィルム80は、第1主面80aと、この第1主面80aに対向する第2主面80bとを有している。第1主面80aは露出面とされ、平坦面である第2主面80bは基板50の第2主表面50bと対向させて、基板50の第2主表面50b上に積層されている。フィルム80の第1主面80aは、有機EL素子26から入射する光を散乱できるように凹凸状とされている(詳細は後述する)。第2主面80bは、平坦面とされている。
フィルム80は、平坦面である第2主面80bを、例えば熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、接着剤および粘着材などの貼合剤を用いて基板50の第2主表面50bに貼り付ける、すなわち接着することにより積層される。貼合剤として例えば熱硬化性樹脂を用いる場合には、フィルム80を基板50の第2主表面50bに貼り合わせた後に、選択された熱硬化性樹脂に適切な温度で加熱することによって、第2主面80bに接着する。また、貼合剤として例えば光硬化性樹脂を用いる場合には、フィルム80を基板50の第2主表面50bに貼り合わせた後に、選択された光硬化性樹脂に最適な波長を有する光、例えば紫外線を照射することにより、フィルム80を基板50の第2主表面50bに接着する。なお、基板50の第2主表面50bにフィルム80を直接的に形成する場合、およびフィルム80に貼合剤が予め設けられている場合などには、貼合剤は不要である。
フィルム80と基板50の第2主表面50bとの間に空気の層が形成されると、この空気の層の界面で光の反射が生じるので、フィルム80と基板50の第2主表面50bとの間に空気の層が形成されないようにフィルム80の貼り合わせを行うことが好ましい。フィルム80自体の屈折率、貼合剤の屈折率、およびフィルム80が貼り合わされる層(本実施の形態では基板50)の屈折率のうちで最大となる屈折率と、最小となる屈折率との差は、小さい方が貼り合せ面での反射を抑制できるので好ましい。屈折率の差は、具体的には0.2以内が好ましく、さらに好ましくは0.1以内である。
フィルム80は、フィルム80の一方の面(フィルム80の積層後では、発光層56側とは反対側である第1主面80aに相当する)が凹凸状とされる。
前述のようにフィルム80のヘイズ値は70%以上、かつ全光線透過率は80%以上とするのが好ましい。ヘイズ値が70%未満であると、出射光の散乱効果が不十分となるおそれがある。また、全光線透過率が80%未満であると、出射光の取り出し(効率)が不十分となってしまうおそれがある。したがって、ヘイズ値が70%以上、かつ全光線透過率が80%以上のフィルム80を用いることによって、光取り出し効率の高い照明用光源22を実現することができる。
ヘイズ値は、以下の式で表される。
ヘイズ値(曇価)=(拡散透過率(%)/全光線透過率(%))×100(%)。
なお、ヘイズ値は、JIS K 7136「プラスチック−透明材料のヘイズの求め方」に記載の方法で測定することができる。
また、全光線透過率は、JIS K 7361−1「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に記載の方法で測定することができる。
フィルム80は、第1主面80a側から厚みt内に設けられる複数の凹部82を有しており、凹部82が非形成である領域と相俟って、全体として第1主面80a側が凹凸状とされている。換言すると、第1主面80aは、複数の凹面82を有している。
凹部(凹面)82の形状は特に制限されない。凹部82の形状は、曲面を有するものが好ましい。凹部82は、球面の一部領域が切り取られて構成されるような略球面状のへこみを有するものが好ましい。フィルム80の厚み方向に切断した凹部82の切断面の輪郭は、1つまたは複数の連続的な曲線により構成されるのがよい。
複数の凹部82は、フィルム80に規則的に配置されるのがよく、たとえば碁盤の目状、すなわちマトリクス状に配置されるのが好ましい。また、凹部82、すなわち凹面82の面積の総計が第1主面80aの面積に対して占める割合は、60%以上が好ましい。
凹部82の平面的な大きさ(幅または円形状である場合には径)wは、大きすぎると輝度が不均一になるおそれがあり、小さすぎると、フィルム80の作製コストが高くなってしまうおそれがある。フィルム80に形成される凹凸形状の大きさは、入射光の波長と同程度、またはそれよりも大きく、0.1μm〜100μmが好ましい。したがって、凹部82の大きさwは、好ましくは0.5μm〜20μmであり、さらに好ましくは1μm〜2μmである。
また凹部82の厚み方向の高さ、すなわち第1主面80aから凹部82の底、すなわち最深部までの深さdは、前述した大きさwや、複数の凹部82同士の配置間隔に基づいて決定すればよい。深さdは、大きさw以下、または複数の凹部82同士の配置間隔以下とするのがよい。深さdは、0.25μm〜10μmであり、好ましくは0.5μm〜1.0μmである。
なお、複数の凹部82を設ける場合には、それぞれの凹部82の大きさwは、互いに同一であっても異なっていてもよく、深さdについても互いに同一であっても異なっていてもよい。
フィルム80の材料は、透明に形成される材料であればよく、たとえば高分子材料およびガラスなどを用いるのがよい。フィルム80を構成する高分子材料としては、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンスルホン酸、およびポリエチレンテレフタレートなどを挙げることができる。
またフィルム80は、たとえば前述の高分子材料およびガラスなどからなる支持体と、この支持体の表面上に形成され、支持体に接する表面とは反対側の表面が凹凸状に形成される薄膜との積層体によって構成されてもよい。
フィルム80の厚みtには、特に制限はないが、薄すぎると取り扱いが難しくなり、厚すぎると全光線透過率が低くなるおそれがあるので、20μm〜1000μmが好ましい。
次に、フィルム80の製造方法について説明する。本実施の形態のフィルム80は、凹凸形状をフィルムの表面、すなわち第1主面80a側に形成することで得られる。
ガラスなどの無機材料からなるフィルム80とする場合には、たとえば凹部(凹面)が非形成とされる領域を覆う、フォトレジストを硬化させた保護膜をガラスなどの無機材料からなる基台上に予め形成しておき、化学的なエッチングまたは気相エッチングを施すことによって凹凸面、すなわち凹部82を形成することができる。
また、高分子材料からなるフィルム80とする場合には、好ましくは表面が凹凸形状とされている金属板を加熱されたフィルムに押し付けることによって、金属板の凹凸面を転写する方法、表面が凹凸状のロールを用いて、高分子シートまたはフィルムを圧延する方法、凹凸形状を有するスリットから高分子シートを押し出して成形する方法、表面が凹凸形状の基台上に、高分子材料を含む溶液または分散液を滴下(以下、キャストという場合がある)して成膜する方法、モノマーからなる膜を形成した後に、当該膜の一部を選択的に光重合し、未重合部分を除去する方法、高湿度条件下において高分子溶液を基台にキャストし、水滴構造を表面に転写する方法などによって凹凸面を形成することができる。
前述の形成方法のうち、高分子材料を用いる方法では、作製の容易さから高湿度条件下において、高分子溶液を基台にキャストし、水滴構造を第1主面80aに転写する方法が好適に用いられる。この方法は、自己組織化の一種である散逸過程を応用した既知の構造作製法である(例えばG.Widawski,M.Rawiso,B.Francois,Nature,p.369−p.387(1994)参照)。
まず、上述したフィルム80となる高分子材料を溶媒に溶解して、フィルム80用の溶液を調合する。溶媒としては、たとえばジクロロメタン、クロロホルムなどを挙げることができる。フィルム80用の溶液としては、粘度の高いものが好ましい。またフィルム80用の溶液としては、フィルム80となる高分子材料の濃度が高いものが好ましく、フィルム80となる高分子材料の溶液に対する濃度が、10wt%以上のものが好ましい。また、凹凸形状の大きさや形の均一性を向上させるために、フィルム80用の溶液にノニオン系界面活性剤などの界面活性剤を少量添加してもよい。
次に、フィルム80が表面上に形成される基台の一表面上に、フィルム80となる材料を含む溶液を塗布する塗布工程を行う。具体的には、調合されたフィルム80用の溶液を、高湿度下で基台の一表面上にキャストして、フィルム80用の溶液からなる液膜を形成する。基台としては、前述した高分子材料およびガラスなどからなる支持基板を挙げることができる。
次に、基台の一表面上に形成された液膜を、湿度が80%〜90%の雰囲気に保った後に乾燥し、成膜化する成膜工程を行う。液膜をこうした高湿度下で放置すると、雰囲気中の水蒸気が液化して、液膜の表面に複数の液滴が形成される。液滴は略球状であって、液膜の表面において離散的に形成される。液膜の表面に形成される液滴は、水蒸気がさらに液化することによって時間経過ともに径が大きくなり、自重によって略半分が液膜中に沈み込む。また時間経過とともに液膜中の溶媒が蒸発するので、乾燥時に液滴の形状がフィルム80に転写される。このようにして形成されるフィルム80は、第1主面80aに複数の凹面82が設けられる。これによりフィルム80は凹凸状に形成される。具体的には径が1μm〜100μmの複数の略半球状の窪みがフィルム80の第1主面80a側に形成される。なお、湿度が80%〜90%の範囲にフィルム80を保持することによって、表面に半球状の窪みが形成された後に、さらに湿度の低い雰囲気においてフィルム80を乾燥してもよく、また80%〜90%の範囲においてフィルム80を長時間保持することによってフィルム80を乾燥してもよい。
前述したフィルム80を作製する方法では、フィルム80の膜厚が所定の値になるようにフィルム80用の溶液の塗布を制御するとともに、液膜を乾燥させるときの湿度を調整することによって、作製されるフィルム80のヘイズ値を制御することができる。具体的には成膜工程を経て成膜されたフィルム80の膜厚が、100μm〜200μmの範囲内において所定の膜厚となるように乾燥開始時の液膜の膜厚を制御するとともに、80%〜90%の範囲内において所定の湿度となるように湿度を制御することによって、ヘイズ値が70以上であり、かつ所期のヘイズ値を示すフィルム80を形成することができる。
湿度と膜厚とを制御することによってフィルム80のヘイズ値を制御できるのは、湿度と膜厚とを変えると、フィルム80となる高分子材料の溶液中での濃度などに応じて液膜の表面が乾燥するまでの時間が変わり、これによって凹凸形状の大きさや形成される凹面82の密度が変わるからであり、また湿度は、凹面82の配置の規則性向上など、形成される凹面82の構造構築に大きな影響を与えるからであると推測される。
なお、作製されるフィルム80の膜厚は、乾燥開始時の液膜の膜厚を調整することによって制御できる。また、溶媒の蒸発速度および溶媒の沸点などによって液膜の表面が乾燥するまでの時間が変わるので、用いる溶媒を変えることによって、フィルム80のヘイズ値を制御することもできる。
このような方法によって、簡易で、かつ安価に、意図する光学的特性を示す大面積のフィルム80を作製することができる。
なお、基板50の第2主表面50b上にフィルム80用の溶液をキャストすることによって、基板50の第2主表面50b上に直接的にフィルム80を形成することもできる。
以上説明した構成例1の照明用光源22によれば、光が外部に取り出される最表面部にフィルム80が配置される。このフィルム80は、発光層56側とは反対側の表面(第1主面80a)が凹凸状に形成されているので、照明用光源22の光取出し側の最外表面の少なくとも一部が凹凸状に形成される。発光層56から出射する光の一部は、フィルム80に入射し、凹凸状に形成された表面で回折されて、たとえば空気などの雰囲気(外部環境)に出射する。仮にフィルム80の発光層56側とは反対側の表面(第1主表面80a)が平面であると、発光層56において発生した光の多くが全反射などにより外に取り出されない。これに対して、光が取り出される側の表面を凹凸状に形成することにより、回折効果を利用して全反射を抑制し、出射光を効率的に取り出すことができる。特に、ヘイズ値が70%以上、かつ全光線透過率が80%以上のフィルム80が設けられるので、光の取り出し効率を向上させることができ、高い取り出し効率を有する照明用光源22を実現することができる。
また、構成例1の有機EL素子によれば、フィルム80の発光層56側とは反対側の第1主面80aには複数の凹面82が設けられるので、この凹面82がいわゆる凹レンズのような光学的機能を発揮する。このようなフィルム80を設けることによって、有機EL素子から出射される光の出射角を広げることができる。
また、有機EL素子26と組み合わされるフィルム80は、所定の基台の一表面上に、フィルム80となる材料を含む溶液を塗布する塗布工程と、塗布された液膜を乾燥させて成膜化する成膜工程とによって形成される。特に成膜工程後のフィルム80の厚みが、100μm〜200μmとなるように、フィルム80となる材料を含む溶液を塗布し、さらに湿度が80%〜90%の範囲で乾燥させることによって、表面が凹凸状に形成され、ヘイズ値が70%以上、かつ全光線透過率が80%以上のフィルム80を製造できるので、例えば溶液の塗布量および湿度を調整するという簡易な制御で、意図する光学特性を有するフィルム80を容易に製造することができる。
また、構成例1の有機EL素子26によれば、前述したように有機EL素子26に用いるフィルム80を簡易な制御で容易に作製することができるので、出射光の光取り出し効率の高い有機EL素子を容易に製造することができる。
以上説明した構成例1の有機EL素子26では、フィルム80は基板50に積層される構成としたが、フィルム80の設けられる位置はこれに限られない。例えば基板50とは反対側(陰極58側)から出射光を取り出すトップエミッション型の有機EL素子26では、発光層56を基準として基板側とは反対側の最表面部にフィルム80を設けてもよい。この構成は、構成例2として後述する。
また、陰極58が基板50の第1主表面50a上に形成され、基板50上において陰極58、発光層56および陽極52がこの順で配置されるトップエミッション型の有機EL素子26では、発光層56を基準として基板側とは反対側の最表面部にフィルム80を積層する。
続いて、有機EL素子26の構成要素について、以下に詳しく説明する。
(基板)
基板50としては、有機EL素子26を形成する工程において変化しないもの、すなわち、電極を形成し、発光層56の材料である有機物の層を形成する際に変化しないものであればよく、リジッド基板でも、フレキシブル基板でもよい。基板50としては、例えば、ガラス板、プラスチック板、およびシリコン板、並びにこれらを積層した積層板などが好適に用いられる。さらに、プラスチックなどに低透水化処理を施したものを用いることもできる。基板50としては、市販のものが使用可能である。またこうした基板を従来公知の製造方法により製造することもできる。
構成例1のいわゆるボトムエミッション型の有機EL素子26では、基板50は、可視光領域の光の透過率が高いものが好適に用いられる。
なお、後述の構成例2に示すような発光層56からの出射光を陰極58側から取り出すいわゆるトップエミッション型の有機EL素子26の場合には、基板50は、透明のものでも、不透明のものでもよい。
(第1電極)
構成例12における陽極である第1電極52は、発光層56からの出射光を透過させる透明電極であるので、その材料としては、導電性を有する金属酸化物膜、金属硫化物膜、半透明の金属薄膜を用いるのがよい。第1電極52の材料としては、好ましくは例えば電気伝導度の高い(電気抵抗の低い)ものを用いるのがよい。なお、後述するように、有機EL素子26を、透明な第1電極52を陰極として用いる構成とすることもできる。
具体的には、第1電極52は、好ましくは酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)およびインジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)などからなる薄膜、あるいは金、白金、銀、銅などからなる薄膜とするのがよい。第1電極52は、より好ましくは例えばITO、IZO、および酸化スズからなる薄膜とするのがよい。
また、第1電極52の構成材料として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体等の有機物の透明導電膜を用いてもよい。
また、発光層56への電荷注入を容易にするという観点から、第1電極52の発光層56側の表面上に、フタロシアニン誘導体、ポリチオフェン誘導体等の導電性高分子、Mo酸化物、アモルファスカーボン、フッ化カーボン、ポリアミン化合物等の1〜200nmの層、或いは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚10nm以下の層を設けてもよい。
有機EL素子26をトップエミッション型とする場合には、第1電極52は、好ましくは例えば光を反射する程度の膜厚の金属薄膜といった、発光層56からの出射光を陰極側に反射する材料を用いる構成とするのがよい。
第1電極52の作製方法としては、好ましくは真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等を挙げることができる。
第1電極52の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して適宜選択することができ、例えば5nm〜10μmであり、好ましくは10nm〜1μmであり、より好ましくは20nm〜500nmである。
(第1機能層)
本発明の有機EL素子26において、陽極(第1電極)52と発光層56との間には、必要に応じて1層または複数層の第1機能層53を設けてもよい。第1機能層53は、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層といった任意好適な機能層を単層とするか、またはこれらを組み合わせて積層することにより構成することができる。
ここで、正孔注入層、正孔輸送層および電子ブロック層につき説明する。
(正孔注入層)
正孔注入層は、陽極(第1電極52)からの正孔注入効率を改善する機能を有する層である。正孔注入層は、上述のように、陽極と正孔輸送層との間、または陽極と発光層との間に設けることができる。正孔注入層を構成する材料としては、公知の材料を適宜用いることができ、特に制限はない。好ましくはフェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。
正孔注入層の成膜方法としては、例えば、正孔注入層となる材料(正孔注入材料)を含む溶液からの成膜を挙げることができる。
溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔注入材料を溶解させるものであれば特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒、および水を挙げることができる。
溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法などの塗布法を挙げることができる。
また、正孔注入層の厚みとしては、5〜300nm程度であることが好ましい。この厚みが5nm未満では、製造が困難になる傾向があり、他方、300nmを超えると、駆動電圧、および正孔注入層に印加される電圧が大きくなる傾向となる。
(正孔輸送層)
正孔輸送層は、陽極、正孔注入層または陽極により近い正孔輸送層らの正孔注入を改善する機能を有する層である。正孔輸送層を構成する材料としては、特に制限はないが、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)4,4’−ジアミノビフェニル(TPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)等の芳香族アミン誘導体、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリアリールアミンもしくはその誘導体、ポリピロールもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体などが例示される。
これらの中でも、正孔輸送層に用いる正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリアリールアミンもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体等の高分子正孔輸送材料が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
正孔輸送層の成膜方法としては、特に制限はないが、低分子の正孔輸送材料では、高分子バインダーと正孔輸送材料とを含む混合液からの成膜を挙げることができ、高分子の正孔輸送材料では、正孔輸送材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。
溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであれば特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒などを挙げることができる。
溶液からの成膜方法としては、前述した正孔注入層の成膜法と同様の塗布法を挙げることができる。
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収の弱いものが好適に用いられ、例えばポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンなどを挙げることができる。
正孔輸送層の厚みは、特に制限されないが、目的とする設計に応じて適宜変更することができ、1〜1000nm程度であることが好ましい。この厚みが下限値未満となると、製造が困難になるおそれがある、または正孔輸送の効果が不十分となるおそれがあるといった傾向があり、他方、上限値を超えると、駆動電圧および正孔輸送層に印加される電圧が大きくなる傾向がある。したがって正孔輸送層の厚みは、上述のように、好ましくは、1〜1000nmであるが、より好ましくは、2nm〜500nmであり、さらに好ましくは、5nm〜200nmである。
(電子ブロック層)
電子ブロック層は、電子の輸送を堰き止める機能を有する層である。なお正孔注入層、および/または正孔輸送層が電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が電子ブロック層を兼ねることがある。
電子ブロック層が電子の輸送を堰き止める機能を有することは、例えば、電子電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
(発光層)
発光層56は、通常、主として蛍光またはリン光を発光する有機物からなる。発光層56は、有機物として低分子化合物および/または高分子化合物を含んでいる。また、さらにドーパント材料を含んでいてもよい。本発明において用いることができる発光層56を形成する材料としては、例えば以下のものが挙げられる。なお、陽極52と陰極58との間には、一層の発光層56に限らず、複数の発光層56が配置されてもよい。
(色素系材料)
色素系材料としては、例えば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマーなどが挙げられる。
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、例えば、イリジウム錯体、白金錯体等の三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体など、中心金属に、Al、Zn、BeなどまたはTb、Eu、Dyなどの希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを有する金属錯体などを挙げることができる。
(高分子系材料)
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素体や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどが挙げられる。
上記発光材料のうち、青色に発光する材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、およびそれらの重合体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体やポリフルオレン誘導体などが好ましい。
また、緑色に発光する材料としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
また、赤色に発光する材料としては、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
(ドーパント材料)
発光層56中に発光効率の向上や発光波長を変化させるなどの目的で、ドーパントを添加することができる。このようなドーパントとしては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾンなどを挙げることができる。なお、発光層56の厚さは、通常約2〜200nm(20〜2000Å)である。
(発光層の成膜方法)
有機物を含む発光層56の成膜方法としては、発光材料を含む溶液を基体の上または上方に塗布する方法、真空蒸着法、転写法などを用いることができる。溶液からの成膜に用いる溶媒の具体例としては、前述の溶液から正孔輸送層を成膜する際に正孔輸送材料を溶解させる溶媒と同様の溶媒が挙げられる。
発光材料を含む溶液を基体の上または上方に塗布する方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法等の塗布法を用いることができる。パターン形成や多色の色分けが容易であるという点で、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法が好ましい。また、昇華性の低分子化合物の場合は、真空蒸着法を用いることができる。さらには、レーザによる転写や熱転写により、所望のところのみに発光層を形成する方法も用いることができる。
(第2機能層)
発光層56と第2電極58(陰極)との間には、必要に応じて、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層といった第2機能層57を積層してもよい。
第2電極58と発光層56との間に、一層のみが設けられる場合には、第2機能層57は電子注入層とされる。また陰極58と発光層56との間に電子注入層と電子輸送層との両方の層が設けられる場合、陰極58に接する層を電子注入層といい、この電子注入層を除く層を電子輸送層という。
電子輸送層は、陰極、電子注入層または陰極により近い電子輸送層からの電子注入を改善する機能を有する層である。
正孔ブロック層は、正孔の輸送を堰き止める機能を有する層である。なお電子注入層、および/または電子輸送層が正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が正孔ブロック層を兼ねることがある。
正孔ブロック層が正孔の輸送を堰き止める機能を有することは、例えばホール電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
(電子注入層)
電子注入層は、陰極からの電子注入効率を改善する機能を有する層である。電子注入層は、前述したように、電子輸送層と陰極との間、または発光層と陰極との間に設けられる。電子注入層としては、発光層の種類に応じて、アルカリ金属やアルカリ土類金属、あるいは金属を一種類以上含む合金、あるいは金属の酸化物、ハロゲン化物および炭酸化物、あるいは物質の混合物などが挙げられる。
アルカリ金属またはその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属またはその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
さらに、金属、金属酸化物、金属塩をドーピングした有機金属化合物、および有機金属錯体化合物、またはこれらの混合物も、電子注入層の材料として用いることができる。
この電子注入層は、2層以上を積層した積層構造を有していても良い。具体的には、Li/Caなどが挙げられる。この電子注入層は、蒸着法、スパッタリング法、印刷法などにより形成される。
この電子注入層の膜厚としては、1nm〜1μm程度が好ましい。
(電子輸送層)
電子輸送層を形成する材料としては、公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンもしくはその誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、ナフトキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンもしくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンもしくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体等が例示される。
これらのうち、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
なお、電子注入層および正孔注入層を総称して電荷注入層と言う場合があり、電子輸送層および正孔輸送層を総称して電荷輸送層と言う場合がある。
(第2電極)
構成例1における第2電極58は、第1電極52に対向して配置される電極であって、有機EL素子の陰極となるものであるが、本発明においては、後述の構成例2に示すように、陽極である場合も可能である。このような陰極の材料としては、仕事関数が小さく、発光層への電子注入が容易な材料が好ましい。また陰極の材料としては電気伝導度が高く、可視光反射率の高い材料が好ましい。かかる陰極材料としては、具体的には、金属、金属酸化物、合金、グラファイトまたはグラファイト層間化合物、酸化亜鉛(ZnO)等の無機半導体などを挙げることができる。
上記金属としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属や周期表の13族金属等を用いることができる。これら金属の具体的例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等を挙げることができる。
また、合金としては、上記金属の少なくとも一種を含む合金を挙げることができ、具体的には、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等を挙げることができる。
陰極58は、例えば陰極58側から光を取り出す場合などのように、必要に応じて光透過性を有する電極とされる。このような光透過性を有する陰極の材料としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、IZOなどの導電性酸化物;ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの導電性有機物を挙げることができる。
なお、陰極58を2層以上の積層構造としてもよい。また、電子注入層が陰極として用いられる場合もある。
陰極58の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
陰極58を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が挙げられる。なお、第2電極58を2層以上の積層構造としてもよい。
本実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子において、陽極52から陰極588までの層構成の組み合わせ例を以下に示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
f)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
g)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
h)陽極/発光層/電子注入層/陰極
i)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
また、本実施の形態の有機EL素子26は、2層以上の発光層56を有していてもよく、2層の発光層56を有する有機EL素子としては、以下のj)に示す層構成を挙げることができる。
j)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/電荷発生層/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
また、3層以上の発光層56を有する有機EL素子としては、具体的には、(電荷発生層/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層)を一つの繰り返し単位として、以下のk)に示す前記繰り返し単位を2つ以上含む層構成を挙げることができる。
k)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/(該繰り返し単位)/(該繰り返し単位)/・・・/陰極
上記層構成j)およびk)において、陽極、陰極、発光層以外の各層は所望により非形成とすることができる。
ここで、電荷発生層とは電界を印加することにより、正孔と電子を発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、酸化モリブデンなどからなる薄膜を挙げることができる。
本実施の形態の有機EL素子26は、さらに電極との密着性向上や電極からの電荷注入性の改善のために、電極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けてもよい。また界面での密着性向上や混合の防止などのために、前述した各層間に薄いバッファー層を挿入してもよい。
(保護層)
上述のように陰極(第2電極)58が形成された後、基本構造として第1電極(陽極)52(−第1機能層53)−発光層56(−第2機能層57)−第2電極(陰極)58を有してなる有機EL素子26を保護するために、有機EL素子26を封止する封止層70が形成される。この封止層70は、通常、少なくとも一層の無機層と少なくとも一層の有機層を有する。積層数は、必要に応じて決定され、基本的には、無機層と有機層は交互に積層される。
なお、プラスチック基板はガラス基板に比べて、ガスおよび液体の透過性が高く、また発光層56などの発光物質は酸化されやすく、水と接触することにより劣化しやすいため、基板50としてプラスチック基板が用いられる場合には、基板50および封止層70により有機EL素子26が覆われて保護されていても経時変化し易いので、プラスチック基板上にガスおよび液体に対するバリア性の高いさらなる膜を積層し、その後、この膜の上にEL素子26を形成する。この膜は、通常、封止層70と同様の構成、同様の材料にて形成することができる。
(有機EL素子の構成例2)
次に、本発明の送信装置に好適に適用できる有機EL素子26の構成例2を、図11を参照して説明する。
構成例2と、前述の構成例1との構成上の違いは、構成例1の有機EL素子26が発光層56からの光を透明な陽極(第1電極)52を透過させて透明な基板50から外部へ出射するボトムエミッション型の素子であったのに対し、構成例2の有機EL素子26では発光層56からの出射光を透明な陰極(第2電極)58を透過させて透明な保護層70から外部環境へと出射するトップエミッション型の素子である点にある。
構成例2における第2電極58には、前述の陰極58として説明した構成と同様のたとえば金属薄膜を用いることができる。なお、こうした金属薄膜は、光が透過可能な程度に薄膜として形成されるので、シート抵抗が高くなる。したがって、透明陰極は、金属箔膜状にITO薄膜などの透明電極を積層させた積層体によって構成されることが好ましい。また第1電極52と基板50との間に、例えば銀などの反射率の高い反射膜を設けることが好ましく、このような反射膜を設けることによって、発光部56から基板50側に向かう光を第2電極58側に反射することができる。よって、光取り出し効率を向上させることができる。
そして、構成例2においては、フィルム80は、発光層56の出射光の取り出し方向の最外層に設けられる。この場合の封止層70は、好ましくは、封止基板である。なお図11に示す封止層70を設けることなく、封止層としても機能するフィルム80を第2電極58に接するように設けてもよい。
フィルム80の凹部82の形状、厚み寸法、ヘイズ値、全光線透過率などの諸特性、および製造方法は、構成例1と同様であるので詳細な説明は省略する。
本発明にかかる有機EL素子を、上記構成例2のようにしても、上述の構成例1と同様の作用、効果を得ることができる。
すなわち、本発明の有機EL素子26は、構成例1によっても、構成例2によっても、出射光の取り出し効率をより高めることができる。よって、有機EL素子26の発光効率が向上し、照明としての性能が高く、かつ通信速度が速い新規な照明光通信システムを提供することができる。
以下の作製例1、2および参考例1〜3では、基板50の第1主面80aにフィルム80を設けることにより光取り出し効率を制御できることを確認した。
(作製例1)
透明な基板として、30mm×30mmのガラス基板を用いた。次に、スパッタリング法によって厚みが150nmのITOからなる導電体膜を基板の表面上に蒸着した。次に、この導電体膜の表面上にフォトレジストを塗布し、フォトマスクを介して所定の領域を露光し、さらに洗浄することによって、所定のパターン形状の保護膜を形成した。さらにエッチングを施した後、水、NMP(n−methylpyrrolidone)でリンスを施し、所定のパターン形状のITO膜からなる陽極を形成した。次に、陽極上のレジスト残渣を除去するために、酸素プラズマ処理を30Wのエネルギーで2分間行い、UV/O3洗浄を20分間行った。
次に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(スタルクヴィテック社製、商品名:BaytronP CH8000)の懸濁液に、2段階の濾過を行い、正孔注入層用の溶液を得た。第1段階目の濾過では、0.45μm径のフィルターを用い、第2段階目の濾過では、0.2μm径のフィルターを用いた。濾過して得られた溶液を用いて、スピンコート法によって薄膜を製膜し、大気雰囲気下において、ホットプレート上で200℃、15分間熱処理することによって、厚みが70nmの正孔注入層を形成した。
次に、Lumation WP1330(SUMATION製)とキシレンとを混合してキシレン溶液を作製した。キシレン溶液におけるLumation WP1330の濃度を1.2質量%とした。作製した溶液を用いて、正孔注入層の表面上にスピンコート法によって薄膜を成膜した後、窒素雰囲気下においてホットプレート上で130℃、60分間熱処理し、厚みが80nmの発光層を形成した。
次に、発光層が形成された支持基板を真空蒸着機に導入し、Ba、Alをそれぞれ5nm、80nmの厚みで順次蒸着し、陰極を形成した。なお、真空度が1×10-4Pa以下に到達した後に、金属の蒸着を開始した。
次に、フィルムを作製するために、まずフィルム用の溶液を作製した。ポリカーボネート6.32gをジクロロメタン20.7gに溶解し、23.4wt%の溶液を作製した。次に、この溶液にフッ素系界面活性剤であるノベック(住友3M製)を混合した。混合した溶液におけるノベックの濃度を0.8wt%とし、フィルム用の溶液を得た。湿度85%の恒温恒湿槽中において、成膜後のフィルムの膜厚が150μm程度になるように、得られたフィルム用の溶液をガラスの基台上にキャストした。湿度85%の雰囲気中で5分間放置した後、窒素フローによりフィルムを乾燥し、表面に凹凸形状を有する20mm×20mmのフィルム(フィルムA)を得た。
次に、支持基板の上記発光層が形成されている側の表面とは反対側の表面に粘着剤としてグリセリンを塗布し、フィルムAを貼り合せて、有機EL素子を作製した。基板の屈折率は、1.50であり、粘着剤の屈折率は、1.45であり、フィルムAの屈折率は、1.58である。また、フィルムAの平均膜厚は230μmである。
(作製例2)
作製例1の有機EL素子とはフィルムのみが異なる有機EL素子を作製した。本作製例2では、高いヘイズ値(82)を示す市販品のフィルム(フィルムB)を用いた。フィルムBは、粘着層を有しているので、粘着剤などを用いずにそのまま支持基板に貼付けて有機EL素子を作製した。
(参考例1)
作製例1の有機エレクトロルミネッセンス素子とは、フィルムのみが異なる有機EL素子を作製した。
フィルム用の溶液には、作製例の溶液と同じものを用いた。湿度50%の恒温恒湿槽中において、成膜後のフィルムの膜厚が220μm程度となるように、フィルム用の溶液をガラスの基台上にキャストした。湿度50%の雰囲気中で5分間放置した後、窒素フローによりフィルムを乾燥し、20mm×20mmのフィルム(フィルムC)を得た。このフィルムCを、作製例1と同じ粘着剤を用いて作製例1と同様に基板に貼り付けて有機EL素子を作製した。
(参考例2)
作製例1の有機EL素子とはフィルムのみが異なる有機EL素子を作製した。またフィルム用の溶液には、作製例1の溶液と同じものを用いた。湿度85%の恒温恒湿槽中において、成膜後のフィルムの膜厚が220μm程度となるように、フィルム用の溶液をガラスの基台上にキャストした。湿度85%の雰囲気中で5分間放置した後、窒素フローによりフィルムを乾燥し、表面に凹凸形状を有する20mm×20mmのフィルム(フィルムD)を得た。得られたフィルムDを、作製例1と同じ粘着剤を用いて作製例1と同様に基板に貼り付けて有機EL素子を作製した。
(参考例3)
作製例1の有機EL素子とはフィルムのみが異なる有機EL素子を作製した。フィルム用の溶液には、作製例2の溶液と同じものを用いた。湿度85%の恒温恒湿槽中において、成膜後のフィルムの膜厚が360μm程度となるように、フィルム用の溶液をガラスの基台上にキャストした。湿度85%の雰囲気中で5分間放置した後、窒素フローによりフィルムを乾燥し、表面に凹凸形状を有する20mm×20mmのフィルム(フィルムE)を得た。このフィルムEを、作製例1と同じ粘着剤を用いて作製例1と同様に基板に貼り付けて有機EL素子を作製した。
(フィルムの表面の観察)
作製例1、2、および参考例1、2、3で用いたフィルムの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。既に説明した図12は、作製例1において作製したフィルム80(A)の断面を模式的に示す図であり、図13は、作製例2で用いたフィルム80(B)の断面を模式的に示す図であり、図14は、参考例1において作製したフィルム80(C)の断面を模式的に示す図である。
図12に示すように、作製例1において作製したフィルム80(A)では、フィルム80(A)の第1主面80aに平均直径が2μmの半球状の凹面82が形成されていることを確認した。凹面82は、フィルム80(A)の第1主面80aの全面に渡って形成されていることを確認した。
図13に示すように、作製例2に用いたフィルム80(B)では、フィルム80(B)の第1主面80aが凹凸状に形成されていることを確認した。凹凸は、フィルム80(B)の表面の全面に渡って形成されていることを確認した。
図14に示すように、参考例1において作製したフィルム80(C)では、第1主面80aに凹面が形成されずに、第1主面80aが平面であることを確認した。
参考例2において作製したフィルムDでは、フィルムの表面に、平均直径が3μmの半球状の凹面が形成されていることを確認した。凹面の配置の規則性は比較的低かったが、凹面は、フィルムDの表面の全面に渡って形成されていることを確認した。
参考例3において作製したフィルムEでは、フィルムの表面に、平均直径が4μmの半球状の凹面が形成されていることを確認した。凹面の配置の規則性は比較的低かったが、凹面は、フィルムEの表面の全面に渡って形成されていることを確認した。
(表1)に、作製例1および参考例1、2、3においてフィルムを作製したときの湿度と、作製例1、2、および参考例1、2、3で用いたフィルムの特性とを示す。
Figure 2010102967
(表1)に示すように、湿度と、作製されるフィルムの膜厚とを制御することによって、高いヘイズ値のフィルムを作製できることが確認された。また、作製されるフィルムの膜厚が厚くなると、凹面の径が大きくなることを確認した。
(有機EL素子26の光取り出し効率)
作製例1、2および参考例1、2、3で作製したフィルムが貼り合わされた有機EL素子の光強度と、フィルムが貼り合わされていない有機EL素子の光強度とを比較した。(表3)に、フィルムが貼り合わされた有機EL素子の光強度を、フィルムが貼り合わされていない有機EL素子の出射光の光強度で割った光取り出し効率の比を示す。光強度は、有機EL素子に0.15mAの電流を流し、そのときの発光強度の角度依存性を測定し、全ての角度での発光強度を積分することによって測定した。
Figure 2010102967
作製例1の有機EL素子は、フィルム80(A)を貼り合せる前に比べて、光取り出し効率が1.5倍上昇した。さらに、作製例1のフィルム80(A)と光学的特性の近いフィルム80(B)が貼り合わされた作製例2の有機EL素子も、作製例1の有機EL素子と同様に、光取り出し効率が大きく上昇した。しかしながら、参考例1の有機EL素子に用いたフィルム80(C)は、光散乱がほぼ無いので、光取り出し効率の向上は見られなかった。また参考例2、3も、大きな光取り出し効率の向上は見られなかった。このことから、全光線透過率が高く、ヘイズ値の高いフィルムが光取り出し効率の向上に寄与していることが明らかとなった。特にフィルムのヘイズ値が70以上になると、光取り出し効率が大きく向上することがわかった。このように所定の光学特性を示すフィルムを設けることによって、光の取り出し効率が向上し、ひいては発光効率が向上することを確認した。
照明光通信システムの概略的説明図(1)である。 照明光通信システムの概略的説明図(2)である。 照明光通信システムの概略的説明図(3)である。 照明光通信システムの概略的説明図(4)である。 電流プログラミング方式の発光ユニットの回路図である。 電圧プログラミング方式の発光ユニットの回路図である。 発光ユニットの動作説明図である。 照明光通信システムの概略的説明図(5)である。 照明用光源の動作説明図である。 照明用光源の切断面を概略的に示す図(1)である。 照明用光源の切断面を概略的に示す図(2)である。 作製例1において作製したフィルム80(A)の断面を模式的に示す図である。 作製例2で用いたフィルム80(B)の断面を模式的に示す図である。 参考例1において作製したフィルム80(C)の断面を模式的に示す図である。
符号の説明
10:照明光通信システム
20:送信装置
22:照明用光源
24:発光ユニット
23:サブ光源
23A:第1サブ光源
23B:第2サブ光源
23C:第3サブ光源
23D:第4サブ光源
26:有機EL素子
28:制御回路
29:直列/並列変換回路
30:受信装置
32:受光部
34:復調部
36:レンズ
38:並列/直列変換回路
42:走査線駆動回路
44:データ線駆動回路
50:基板
50a:第1主表面
50b:第2主表面
51:画素領域
52:第1電極(陽極)
53:第1機能層
56:発光層
57:第2機能層
58:第2電極(陰極)
60:隔壁
70:封止層
80:フィルム
80a:第1主面
80b:第2主面
82:凹部(凹面)
X:データ線
Y:走査線

Claims (7)

  1. 送信データに基づいて変調された変調光を出射する照明用光源を備える送信装置であって、
    前記照明用光源は、有機エレクトロルミネッセンス素子と、該有機エレクトロルミネッセンス素子からの光が外部に出射する最表面部に設けられるフィルムとを備え、
    前記フィルムは、前記有機エレクトロルミネッセンス素子側とは反対側の表面部に複数の凹凸部を有し、ヘイズ値が70%以上であり、かつ全光線透過率が80%以上である、照明光通信システム用の送信装置。
  2. 前記照明用光源は、それぞれの発光面積が10−8cmから10−1cmである複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える、請求項1に記載の照明光通信システム用の送信装置。
  3. 前記照明用光源が、変調光を出射する通信用の有機エレクトロルミネッセンス素子と、非変調光を出射する照明用の有機エレクトロルミネッセンス素子とを備える、請求項1または2に記載の照明光通信システム用の送信装置。
  4. 前記通信用の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層が、蛍光を発光する発光材料を用いて形成され、かつ前記照明用の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層が、リン光を発光する発光材料を用いて形成されてなる請求項3に記載の照明光通信システム用の送信装置。
  5. 前記有機エレクトロルミネッセンス素子に接続され、該有機エレクトロルミネッセンス素子の動作を制御する制御回路をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の照明光通信システム用の送信装置。
  6. 前記フィルムの凹凸部は、前記フィルムの材料を含む溶液からなる液膜が高湿度雰囲気に置かれることにより該液膜の表面に形成される液滴の形状が、前記液膜表面に転写されてなる、請求項1から5のいずれか一項に記載の照明光通信システム用の送信装置。
  7. 変調光を出射する照明用光源を備える請求項1から6のいずれか一項に記載の照明光通信システム用の送信装置と、前記照明用光源から出射された前記変調光を受光して電気信号に変換し、当該電気信号を復調して受信データを生成する受信装置とを具備する、照明光通信システム。
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