JP2010102950A - 膜電極接合体及び燃料電池 - Google Patents
膜電極接合体及び燃料電池 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2010102950A JP2010102950A JP2008273274A JP2008273274A JP2010102950A JP 2010102950 A JP2010102950 A JP 2010102950A JP 2008273274 A JP2008273274 A JP 2008273274A JP 2008273274 A JP2008273274 A JP 2008273274A JP 2010102950 A JP2010102950 A JP 2010102950A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- fuel
- layer
- water
- gas diffusion
- diffusion layer
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02E—REDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
- Y02E60/00—Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
- Y02E60/30—Hydrogen technology
- Y02E60/50—Fuel cells
Abstract
【課題】出力性能が改善された膜電極接合体及び燃料電池を提供する。
【解決手段】本発明に係る膜電極接合体は、カソード触媒層と、水透過時間が2.5〜3.3秒/cm2であるカソードガス拡散層とを含むカソードと、アノード触媒層と、水透過時間が0.5〜1.3秒/cm2であるアノードガス拡散層とを含むアノードと、前記カソード触媒層と前記アノード触媒層の間に配置された電解質膜と、前記カソードガス拡散層の外側に配置された水蒸気透過抑制層と、前記アノードガス拡散層の外側に配置された透気抵抗度が0.7〜1.5ガーレ秒である多孔質層とを備えることを特徴とする。
【選択図】 図6
【解決手段】本発明に係る膜電極接合体は、カソード触媒層と、水透過時間が2.5〜3.3秒/cm2であるカソードガス拡散層とを含むカソードと、アノード触媒層と、水透過時間が0.5〜1.3秒/cm2であるアノードガス拡散層とを含むアノードと、前記カソード触媒層と前記アノード触媒層の間に配置された電解質膜と、前記カソードガス拡散層の外側に配置された水蒸気透過抑制層と、前記アノードガス拡散層の外側に配置された透気抵抗度が0.7〜1.5ガーレ秒である多孔質層とを備えることを特徴とする。
【選択図】 図6
Description
本発明は、膜電極接合体及び燃料電池に関するもので、特に液体燃料直接供給型燃料電池に好適なものである。
近年、リチウムイオン二次電池に代わって、燃料電池が注目されている。特に、エネルギー問題や環境問題を背景とした社会的要求や動向に呼応して、車両用駆動源および定置型電源としての応用が期待されている。燃料電池は、電解質の種類や電極の種類等により、アルカリ型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型、固体高分子型などに分類される。このうち、メタノールを燃料として用いた固体高分子型燃料電池(直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC))は、低温(通常100℃以下)でも作動可能であり、小型携帯機器の動力源として開発・実用化が進められている。
DMFCの主発電部は、一般に膜電極接合体(Membran Electrode Assembly:MEA)と呼ばれる。このMEAは、通常、アノード側ガス拡散層、アノード触媒層、高分子電解質膜、カソード触媒層、及びカソード側ガス拡散層がこの順序で積層された構成を有する。発電反応は、触媒、当該触媒を担持する担体、およびイオン伝導性高分子からなる触媒層において進行する。具体的には、アノード(例えば燃料極)においてメタノールの内部改質反応が生じ、二酸化炭素、プロトンおよび電子が生成される。一方、カソード(例えば空気極)では、空気から得られる酸素と、電解質膜を経て燃料極から供給されるプロトン、および燃料極から外部回路を通じて供給される電子によって水が生成される。また、この外部回路を通る電子によって、電力が供給されることになる。
電解質膜は、水分を含水させることにより膜の比抵抗が小さくなり、プロトン伝導性電解質として機能する。よって、MEAのプロトン伝導度は、含有する水分量に影響を受ける。発電反応によりカソードで生成した水は、一部がガス拡散層を経て燃料電池外部へと排出され、残りの一部は濃度勾配によって電解質膜を透過してカソード側からアノード側へ逆拡散する。一方、アノードで発生したプロトンは、アノードからカソードへ移動する際に水を伴って移動する。このように、MEA内部の水分量は対向する水移動のバランスによって決定される。MEA内部の水分量が少なすぎる場合、メタノールの内部改質反応の反応抵抗が高くなるため、十分な出力特性を得られなくなる。反対に、MEA内部の水分量が多すぎる場合、メタノールの濃度を希釈し出力低下をもたらすという不都合がある。従って、MEAでは、発電反応を効率よく進行させるために、内部に存在する水の量を適切に調節することが要求される。
特許文献1には、アノード側とカソード側のガス拡散層を撥水処理し、両者のガス拡散層の耐水圧のバランスを調整したMEA構造が考えられている。また、特許文献2には、アノードの拡散層の撥水性が、カソードの拡散層の撥水性より高いMEA構造が開示されている。
特開2005-158722号公報
特開2006-120402号公報
本発明は、MEA内部の水分を適切に制御することにより出力性能が改善された膜電極接合体及び燃料電池を提供しようとするものである。
本発明に係る膜電極接合体は、カソード触媒層と、水透過時間が2.5〜3.3秒/cm2であるカソードガス拡散層とを含むカソードと、アノード触媒層と、水透過時間が0.5〜1.3秒/cm2であるアノードガス拡散層とを含むアノードと、前記カソード触媒層と前記アノード触媒層の間に配置された電解質膜と、前記カソードガス拡散層の外側に配置された水蒸気透過抑制層と、前記アノードガス拡散層の外側に配置された透気抵抗度が0.7〜1.5ガーレ秒である多孔質層とを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る燃料電池は、上記の発明に係る膜電極接合体を具備することを特徴とする。
本発明によれば、出力性能が改善された膜電極接合体及び燃料電池を提供することができる。
本発明の実施形態に係る膜電極接合体及び燃料電池は、0.6kPaの減圧下で20 mlの水を吸引して測定した水透過時間が2.5〜3.3秒/cm2であるカソードガス拡散層、0.6kPaの減圧下で20 mlの水を吸引して測定した透過時間が0.5〜1.3秒/cm2であるアノードガス拡散層、カソードガス拡散層の外側に配置された水蒸気透過抑制層、及び、アノードガス拡散層の外側に配置された透気抵抗度が0.7〜1.5ガーレ秒である多孔質層を用いることを特徴とする。
まず、カソードガス拡散層とアノードガス拡散層の水透過時間について説明する。
本発明では、カソードガス拡散層とアノードガス拡散層の水透過量を調節することにより、MEA内部の水の分布を適切に制御する。本発明では、水透過量を調べる簡易的な方法として水透過時間を測定する。ここで水透過時間とは、0.6kPaの減圧条件下で20 mlの一定量の水が単位面積のサンプルを透過する時間として定義される。
本発明では、カソードガス拡散層とアノードガス拡散層の水透過量を調節することにより、MEA内部の水の分布を適切に制御する。本発明では、水透過量を調べる簡易的な方法として水透過時間を測定する。ここで水透過時間とは、0.6kPaの減圧条件下で20 mlの一定量の水が単位面積のサンプルを透過する時間として定義される。
以下に、水透過時間の測定方法を図1を参照して説明する。
図1は、水透過時間を測定する装置200の模式図である。水を入れるカップ203と内部減圧容器201が接続されており、測定サンプル220(例えばカソードガス拡散層)はろ紙205の上に保持されて、カップ203の底部と内部減圧容器201の上部により挟まれて固定される。図2は、カップ203の底板212の正面図である。底板212の面積は12cm2であり、複数の貫通孔213(例えば、8行6列に配置された直径3mmの貫通孔)を有する。
図1は、水透過時間を測定する装置200の模式図である。水を入れるカップ203と内部減圧容器201が接続されており、測定サンプル220(例えばカソードガス拡散層)はろ紙205の上に保持されて、カップ203の底部と内部減圧容器201の上部により挟まれて固定される。図2は、カップ203の底板212の正面図である。底板212の面積は12cm2であり、複数の貫通孔213(例えば、8行6列に配置された直径3mmの貫通孔)を有する。
内部減圧容器201は、細管204を介してポンプ210と接続されている。減圧ポンプ210から内部減圧容器201までの間には、バルブ206、圧力ゲージ209、及びバルブ207がこの順で配置されている。また、内部減圧容器201は、バルブ208を備える細管211によって外部と連通している。
測定は次のように行う。まずバルブ206を開放し、バルブ207までを0.6 kPaの減圧状態にする。サンプル220及びろ紙205を配置したカップ203中に水20mLを入れ、バルブ207を開放する。これにより、内部減圧容器201内が負圧になり、この圧力差によって、カップ203中の水がサンプル220及びろ紙205を透過し、内部減圧容器201に移動する。水の全量がカップ203から内部減圧容器201に移動するのに要した時間を測定し、その結果をサンプルの単位面積当たりに換算したものを水透過時間とする。
測定に用いられるサンプルの面積は、特に限定されないが、本発明においては、縦4センチ横3センチの長方形のサンプルを用いる。
なお、上記のように測定した水透過時間は、水がサンプル及びろ紙の両方を透過するために要した時間である。よって、ろ紙単独での水透過時間を予め測定しておき、これを測定結果から減算したものをサンプルの水透過時間とする。測定に使用されるろ紙は、特に限定されないが、本発明においてはADVATEC/型番1(厚み20μm、toyo roshi kaisya製)を使用することで、評価サンプルの面積が12cm2であれば、評価サンプルが長方形以外の形状を有する場合にも測定が可能となる。
測定条件は、減圧条件が0.6 kPaより高いか、もしくは水量が20 mlより少ない場合、水透過時間が早くなりすぎる。また、減圧条件が0.6 kPaより低いか、あるいは水量が20 mlより多い場合、水透過時間が長くなりすぎる。よって、測定精度を向上させるために圧力と水量を検討した結果、本発明においては、減圧条件を0.6 kPaとし、水の量を20mLとした。
次に、ガス拡散層の水透過時間を上記範囲に規定する理由を説明する。
カソードガス拡散層の水透過時間が2.5秒/cm2未満である場合、水がMEAの外部へ排出され、逆拡散によってアノード側に移動する水の量が減少する。一方、水透過時間が3.3秒/cm2を超えると、アノード側に移動する水の量が増大し、燃料が希釈されて出力が低下する。カソードガス拡散層の水透過時間のより好ましい範囲は、2.7以上、3.1以下である。水透過時間が2.5〜3.3秒/cm2であるカソードガス拡散は、発電によりカソードに生成した水が電解質膜を透過して適度にアノード触媒層に供給されるため、安定した出力性能を提供するのに有効である。
カソードガス拡散層の水透過時間が2.5秒/cm2未満である場合、水がMEAの外部へ排出され、逆拡散によってアノード側に移動する水の量が減少する。一方、水透過時間が3.3秒/cm2を超えると、アノード側に移動する水の量が増大し、燃料が希釈されて出力が低下する。カソードガス拡散層の水透過時間のより好ましい範囲は、2.7以上、3.1以下である。水透過時間が2.5〜3.3秒/cm2であるカソードガス拡散は、発電によりカソードに生成した水が電解質膜を透過して適度にアノード触媒層に供給されるため、安定した出力性能を提供するのに有効である。
アノードガス拡散層の水透過時間が0.5秒/cm2未満である場合、燃料が過剰に供給され、クロスオーバーしやすくなる。一方、水透過時間が1.3秒/cm2を超えると、燃料の供給が不足し、出力が低下する。アノードガス拡散層の水透過時間のより好ましい範囲は、
0.7以上、1.1以下である。水透過時間が0.5〜1.3秒/cm2であるアノードガス拡散層は、燃料(気化燃料)の透過を妨げず、燃料が適度にアノード触媒層に供給されるため、出力性能を改善するのに有効である。
0.7以上、1.1以下である。水透過時間が0.5〜1.3秒/cm2であるアノードガス拡散層は、燃料(気化燃料)の透過を妨げず、燃料が適度にアノード触媒層に供給されるため、出力性能を改善するのに有効である。
アノード及びカソードの両ガス拡散層は、触媒層に燃料又は酸化剤を均一に供給する役割を果たし、一般に多孔性の材料から形成される。例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、不織布、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルトなどからなるシート状材料のような形態で用いることができる。また、ガス拡散層は、触媒層の集電体も兼ねており、電子伝導性を有することが好ましい。ガス拡散層が優れた電子伝導性を有することにより、発電反応により生じた電子の効率的な運搬が達成可能で、燃料電池の性能が向上する。電子伝導性を有するガス拡散層として、カーボンペーパー、カーボンクロス等の使用が好ましい。
上記水透過時間を有するガス拡散層は、例えば、多孔性材料からなる基材に撥水剤を含む溶液を含浸させ、大気中または窒素などの不活性ガス中で乾燥させることにより製造することができる。乾燥は熱処理により行ってもよく、例えば380℃程度で乾燥させてもよい。撥水剤には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素系樹脂を用いることができる。
ガス拡散層の水透過時間は、ガス拡散層中に含有される撥水剤の量、即ち、ガス拡散層中の撥水剤含有量を変化させることによって調節することができる。撥水剤含有量は、ガス拡散層の全重量に対する撥水剤の重量として定義され、以下のように表すことができる:
撥水剤重量/(拡散層基材重量+撥水剤重量)×100
本発明において用いられるアノードガス拡散層は、撥水剤含有量が10%以下(0%を含む)であることが好ましい。また、本発明において用いられるカソードガス拡散層は、撥水剤含有量が30〜45%であることが好ましい。撥水剤含有量をこれらの範囲にして上記方法で作製することによって、各ガス拡散層の水透過時間を上記の範囲にすることができる。
撥水剤重量/(拡散層基材重量+撥水剤重量)×100
本発明において用いられるアノードガス拡散層は、撥水剤含有量が10%以下(0%を含む)であることが好ましい。また、本発明において用いられるカソードガス拡散層は、撥水剤含有量が30〜45%であることが好ましい。撥水剤含有量をこれらの範囲にして上記方法で作製することによって、各ガス拡散層の水透過時間を上記の範囲にすることができる。
次に、水蒸気透過抑制層について説明する。
本発明の実施形態に係るMEAにおいて、水蒸気透過抑制層は、カソード触媒層で生成された水の一部が含浸されて、水の蒸散を抑制すると共に、カソード触媒層への酸化剤(例えば、空気)の均一な拡散を促進するものである。
水蒸気透過抑制層は、メタノールに対して不活性で、耐溶解性の絶縁材料から形成されていることが望ましい。このような絶縁材料としては、例えば、ポリエチレン系高分子、ポリオレフィン系高分子、ポリウレタン系高分子またはポリイミド系高分子から形成される多孔質膜等を用いることができる。例えば、日東電工株式会社製の商品名サンマップ(登録商標)、デュポン社製の商品名PTFEなどを用いることができる。
本発明の実施形態に係るMEAにおいては、水蒸気透過抑制層によって、発電反応によりカソード触媒層で生成した水の蒸発が抑制されるため、カソード触媒層中の水分貯蔵量が増加する。これにより、発電反応の進行に伴ってカソード触媒層の水分保持量がアノード触媒層の水分保持量よりも多くなり、浸透圧現象によって、カソード触媒層からアノード触媒層への水の移動が促進される。その結果、メタノールの内部改質反応を生じさせるのに十分な量の水をアノードに供給することができる。これにより、アノード側での反応が十分に行われ、結果として、出力密度を高くすることができると共に、高い出力密度を長期間に亘り維持することが可能となる。また、アノード側へ供給される水分量が多くなるため、メタノールのクロスオーバー反応を抑制することも可能である。
次に、多孔質層について説明する。
本発明の実施形態に係るMEAにおいて、多孔質層は0.7〜1.5ガーレ秒の透気抵抗度を有する。透気抵抗度は、王研式透気度試験機により測定される。以下に、王研式透気度試験機による透気抵抗度について説明する。
本発明の実施形態に係るMEAにおいて、多孔質層は0.7〜1.5ガーレ秒の透気抵抗度を有する。透気抵抗度は、王研式透気度試験機により測定される。以下に、王研式透気度試験機による透気抵抗度について説明する。
透気抵抗度の単位であるガーレ秒は、ガーレ法(JIS P8117 -1998)に準ずるもので、圧力差0.0132 Kgf/cm2の下で100 cm3の空気が64.5 cm2広さの紙(サンプル)を通過する時間(秒)を意味する。
王研式透気度試験機の規格は、J. TAPPI NO5B(紙パルプ技術協会規格)であり、型式はEGO-2Sである。また、測定端の直径はφ30mmでノズル型名はG,100、またはφ10mmでノズル型名は1/10G,100である。
以下に測定原理を図3〜図4を参照して説明する。
図3は、王研式(背圧式)透気度測定機の模式図を示す。測定端101には、測定サンプル102(例えば多孔質層)が配置されている。測定端101には、細管103を介して水柱圧力計104が接続されている。水柱圧力計104は、細管103に接続された側圧室(B室)105と、ノズルと呼ばれる細管106を介して接続された定圧室(A室)107とを有する。水柱圧力計104の定圧室(A室)107は、細管108を介して外部圧縮源109に接続されている。細管108には、圧力ゲージ110が設けられている。
測定サンプル102には、外部圧縮源109から配管108、定圧室(A室)107、細管106、側圧室(B室)105、及び細管103を通して供給された空気圧が加わる。外部圧縮源109から供給された時点での空気圧は、圧力ゲージ110により測定される。空気圧が加わる面と反対側の面に加わる圧力は、大気圧に保たれる。
測定サンプル102を透過する空気圧は、水柱圧力計104により測定される。測定サンプル102のガーレの透気度TGは、以下に説明する原理に基づいて得られる。
図4に、図3の測定機の流路に関する模式図を示す。図4では、図3で説明したのと同様な部材については同符号を付しているが、側圧室(B室)105の右側に接続されている細管111は、測定サンプル102を見立てたものである。
図4に関して、両細管内の流れが層流の場合は、流量と差圧の関係はハーゲン=ポアゼイユの法則に従う。また、流速が小さい場合は、流路系に連続の法則が適用できる。
QC=Q=π/8μ・(PC−P)・R4/L …(1)
Q=π/8μ・P・r4/l …(2)
PCは定圧室(A室)107の圧力で、500mmH2Oの定圧に保たれており、Pは側圧室(B室)105の圧力で、QCはノズル106での流量(cm3/sec)で、Qは細管111での流量(cm3/sec)で、Lはノズル106の長さ(mm)、lは細管111の長さ(mm)で、Rはノズル106の内径(mm)で、rは細管111の内径(mm)で、μは空気の粘性係数である。
Q=π/8μ・P・r4/l …(2)
PCは定圧室(A室)107の圧力で、500mmH2Oの定圧に保たれており、Pは側圧室(B室)105の圧力で、QCはノズル106での流量(cm3/sec)で、Qは細管111での流量(cm3/sec)で、Lはノズル106の長さ(mm)、lは細管111の長さ(mm)で、Rはノズル106の内径(mm)で、rは細管111の内径(mm)で、μは空気の粘性係数である。
図5は、ガーレ式測定機の流路についての模式図で、定圧PGに保たれるG室112の空気が細管113を通じて大気中に放出されることを示している。また、細管113は、測定サンプル102を見立てたものである。図5のG室112及び細管113は、図4で説明したのと同様な法則に従う。
QG=π/8μ・PG・r4/l …(3)
TG=100/QG…(4)
PG=4W/πD2=0.0132(kgf/cm2)…(5)
PGは、JIS P8117により規定される測定部の内筒(W=567g,D=74mm)から算出される。QGは細管113での流量(cm3/sec)で、TGは透気度(sec)である。
TG=100/QG…(4)
PG=4W/πD2=0.0132(kgf/cm2)…(5)
PGは、JIS P8117により規定される測定部の内筒(W=567g,D=74mm)から算出される。QGは細管113での流量(cm3/sec)で、TGは透気度(sec)である。
上記の式(1),(2),(3),(4)よりTGとPの関係は次式(6)で与えられる。測定機の定数Kが決定されれば、図3の水柱圧力計に直接ガーレの透気度TGを見積もることができる。
TG=800μ/πPG・L/R4・P/(PC−P)
=K・P/(PC−P)…(6)
ここで、Kは測定機の定数(K=800μ/πPG・L/R4)であり、細管106の長さL(mm)及び内径R(mm)は設計上定められる。
=K・P/(PC−P)…(6)
ここで、Kは測定機の定数(K=800μ/πPG・L/R4)であり、細管106の長さL(mm)及び内径R(mm)は設計上定められる。
多孔質層の透気抵抗度を前記範囲に規定する理由を説明する。0.7〜1.5ガーレ秒の透気抵抗度を有する多孔質層は撥水性を有し、気体を透過させつつ、水の透過を抑制することができる。透気抵抗度が0.7ガーレ秒未満であると、燃料の供給量が多すぎ、カソードへの燃料のクロスオーバーが生じやすくなる。一方、透気抵抗度が1.5ガーレ秒を超えると、気体の燃料が多孔質層を透過することが困難となり、出力が上がらない。透気抵抗度のより好ましい範囲は、0.8ガーレ秒以上、1.2ガーレ秒以下である。
上記透気抵抗度を有する多孔質層は、液体の水の透過を阻止することができるため、水の流出を抑制することができる。また、上記透気抵抗度を有する多孔質層は、適切な量の燃料(気化燃料)を透過させることができ、燃料電池の出力性能を改善させることが可能となる。
多孔質層に上記のような撥水性を付与するためには、多孔質層に撥水剤を含有させることが望ましい。撥水剤には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素系樹脂等を挙げることができる。
多孔質層は、電気抵抗を小さくするために導電性物質を含有することが望ましい。導電性物質としては、例えば、炭素材料を挙げることができる。炭素材料には、ケッチェンブラック、プリンテックス、カーボンナノチューブなどが挙げられ、粒子(例えば、球状粒子、扁平状粒子)もしくは繊維の形態を有する炭素材料であれば特に限定されるものではない。特に、炭素材料の微粒子もしくは炭素材料のナノ繊維が好適である。
多孔質層は、例えば、以下の(a)〜(c)に説明する方法で作製される。
(a)基材としてのカーボンペーパーに、炭素材料と撥水剤と溶媒とを含むスラリーをスプレーコート法にて塗布し、乾燥もしくは焼成することにより、多孔質層が得られる。また、カーボンペーパーの片面のみにスラリーを塗布し、乾燥もしくは焼成することによっても、多孔質層が得られる。なお、カーボンペーパーには、撥水処理が施されていても、いなくても良い。撥水処理には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素系樹脂を使用することができる。
(b)カーボンペーパー以外の基材に上記スラリーをスプレーコート法にて塗布し、乾燥もしくは焼成した後、得られた層を基材から剥離することによっても、多孔質層を作製することが可能である。
上記(a)及び(b)の方法に示す通りに、多孔質層には、カーボンペーパーを含むもの、あるいは含まないものを使用することができる。
(c)スラリー中に撥水剤を添加する代わりに、撥水剤を含まないスラリーを用いて多孔質層を作製した後、得られた多孔質層を撥水剤の溶液に浸漬処理しても良い。
多孔質層の透気抵抗度は、例えば、下記の(1)〜(5)の方法により0.7〜1.5ガーレ秒の範囲内に設定することができる。
(1)多孔質層が導電性物質として炭素材料を含む場合には、炭素材料のかさ密度や形状を選択することにより、透気抵抗度を前述した範囲内に設定することができる。
(2)多孔質層が炭素材料及び撥水剤を含む場合には、炭素材料と撥水剤との比率を調整することにより、透気抵抗度を前述した範囲内に設定することができる。炭素材料の量を増加させると透気抵抗度を低下させることができ、撥水剤の量を増加させると透気抵抗度を高くすることができる。
(3)基材に塗布するスラリー量を調整することによって透気抵抗度を前述した範囲内に設定することができる。塗布量を増やすと透気抵抗度を高くすることができ、塗布量を減らすと透気抵抗度を低くすることができる。
(4)上記(a)〜(c)の方法における基材にスラリーを塗布する工程でノズルを使用する場合には、ノズル条件、例えばノズル種類、吐出圧、吐出量、吐出距離、吐出時間等を変更すると、スラリーの塗布により形成された膜の密度や膜の表面状態が変わるため、透気抵抗度を前述した範囲内に設定することができる。一般に、膜の表面の平滑性を高めることにより透気抵抗度を増加させることができ、表面粗さを大きくすることにより透気抵抗度を低下させることができる。また、塗布膜の密度を低くすることにより、透気抵抗度を低下させることができる。
(5)上記(a)〜(c)の方法により得られた膜にプレスを施すと、物理的に膜の密度が高くなるため、膜の表面が滑らかになり、透気抵抗度を高くすることができ、透気抵抗度を前述した範囲内に設定することができる。
以下、本発明の実施形態を図6〜図8を参照して説明する。
図6に示す燃料電池は、膜電極接合体1と、この膜電極接合体1に燃料を供給する燃料分配機構2と、液体燃料を収容する燃料収容部3と、これら燃料分配機構2と燃料収容部3とを接続する流路4から主として構成されている。
膜電極接合体1は、図6及び図8に示すように、アノード(燃料極)5と、カソード(空気極)6と、燃料極5及び空気極6の間に配置されたプロトン(水素イオン)伝導性の電解質膜7と、燃料極5と燃料分配機構2の間に配置された多孔質層10と、空気極6の電解質膜7とは反対側に配置された水蒸気透過抑制層17とから構成される。
燃料極5は、電解質膜7の一方の面に隣接する燃料極触媒層8と、燃料極触媒層8に積層された燃料極ガス拡散層9とを有する。燃料極ガス拡散層9は、燃料極触媒層8に燃料を均一に供給する役割を果たすと同時に、燃料極触媒層8の集電体も兼ねている。燃料極ガス拡散層9は、例えば前述した方法により作製され、前述した試験方法により測定された水透過量が0.5〜1.3秒/cm2である。
空気極6は、電解質膜7の他方の面に隣接する空気極触媒層11と、空気極触媒層11に積層された空気極ガス拡散層12とを有する。空気極ガス拡散層12は、空気極触媒層11に酸化剤を均一に供給する役割を果たすと同時に、空気極触媒層11の集電体も兼ねている。空気極ガス拡散層12は、例えば前述した方法により作製され、前述した試験方法により測定された水透過量が2.5〜3.3秒/cm2である。
多孔質層10は、図8に示すように、カーボンペーパーからなる導電性多孔質基材10aと、導電性多孔質基材10aの両面に形成された撥水性導電性多孔質層10bとを有する。多孔質層10は、例えば前述した(a)で説明した方法により作製され、王研式透気度試験機での透気抵抗度が0.7〜1.5ガーレ秒である。
水蒸気透過抑制層17は、空気極触媒層11で生成された水の一部が含浸されて、水の蒸散を抑制すると共に、カソード触媒層への空気の均一な拡散を促進する。水蒸気透過抑制層17は、例えば、サンマップ(登録商標)(日東電工株式会社)、PTFEシートを用いることができる。
燃料極触媒層8及び空気極触媒層11は、触媒成分、カーボン材料、およびプロトン伝導性高分子電解質を含む。これらの配合量は特に限定されず、適切な配合量を決定することができる。触媒層は、図8に示すような1層構造である必要はなく、2層以上を有する多層構造であってもよい。その場合は、多層構造を構成する各層間で、触媒含有量やカーボン材料種を変化させることが好ましい。
燃料極触媒層8および空気極触媒層11に含有される触媒としては、例えば、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、およびアルミニウム、銅、銀等の金属、並びにこれらの金属を含む合金などを挙げることができる。具体的には、燃料極側の触媒として、メタノールや一酸化炭素に対して強い耐性を有するPt−RuやPt−Moなど、空気極側の触媒として、白金やPt−Niなどを用いることが好ましいが、これらに限定されるものではない。また、炭素材料のような導電性担持体を使用する担持触媒、あるいは無担持触媒を使用してもよい。特定の組成を有する1種の触媒成分のみが触媒層に含まれてもよく、組成の異なる2種以上の触媒成分が触媒層に含まれてもよい。
燃料極触媒層8と空気極触媒層11とで、含まれる触媒成分は同一であってもよいし、異なっていてもよい。燃料極触媒層8は、触媒活性の観点からは白金、白金合金、パラジウム合金などを多く含むことが好ましく、製造コストの観点からは特にパラジウム合金(例えば、パラジウム−コバルト合金)を多く含むことが好ましい。空気極触媒層11は、触媒活性の観点から、白金または白金合金(例えば、白金−イリジウム合金や白金−ロジウム合金)を多く含むことが好ましい。
触媒層に含まれるプロトン伝導性材料は、発電反応の進行に伴って、燃料極触媒層8から電解質膜7を経て空気極触媒層11と移動するプロトンの移動度を向上させる役割を果たす。
燃料極触媒層8及び空気極触媒層11、並びに電解質膜7に含まれるプロトン伝導性材料としては、例えば、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂(デュポン株式会社製の商品名ナフィオン(登録商標)や旭硝子社製の商品名フレミオン(登録商標)のようなパーフルオロスルホン酸重合体等)、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂、無機物(例えば、タングステン酸、リンタングステン酸、硝酸リチウムなど)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
多孔質層10及び水蒸気透過抑制層17には、必要に応じて導電層13が積層される。これら導電層13としては、例えば、金、ニッケルなどの金属材料からなる多孔質層(例えばメッシュ)または箔体、あるいはステンレス鋼(SUS)などの導電性金属材料に金などの良導電性金属を被覆した複合材などが用いられる。電解質膜7と燃料分配機構2およびカバープレート14との間には、それぞれゴム製のOリング15が介在されており、これらによって膜電極接合体(MEA)1からの燃料漏れや酸化剤漏れを防止している。
図示を省略したが、カバープレート14は酸化剤である空気を取入れるための開口部を有している。カバープレート14とカソード6との間には、必要に応じて表面層が配置される。表面層は空気の取入れ量を調整するものであり、空気の取入れ量に応じて個数や大きさ等が調整された複数の空気導入口を有している。このようなカバープレート14を備えることにより、酸化剤を供給するためのブロワを用いることなく、酸化剤をカソード6に自然供給することができる。なお、酸化剤は、空気に限定されるものではなく、O2を含むガスを使用可能である。
燃料収容部3には、膜電極接合体1に対応した液体燃料が収容されている。液体燃料としては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。液体燃料は必ずしもメタノール燃料に限られるものではない。液体燃料は、例えばエタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の液体燃料であってもよい。いずれにしても、燃料収容部3には膜電極接合体1に応じた液体燃料が収容される。
液体燃料の種類や濃度は限定されるものではない。ただし、複数の燃料排出口22を有する燃料分配機構2の特徴がより顕在化するのは燃料濃度が濃い場合である。このため、燃料電池は、濃度が80%以上のメタノール水溶液もしくは純メタノールを液体燃料として用いた場合に、その性能や効果を特に発揮することができる。
膜電極接合体1のアノード(燃料極)5側には、燃料分配機構2が配置されている。燃料分配機構2は配管のような液体燃料の流路4を介して燃料収容部3と接続されている。燃料分配機構2には燃料収容部3から流路4を介して液体燃料が導入される。流路4は燃料分配機構2や燃料収容部3と独立した配管に限られるものではない。例えば、燃料分配機構2と燃料収容部3とを積層して一体化する場合、これらを繋ぐ液体燃料の流路であってもよい。燃料分配機構2は流路4を介して燃料収容部3と接続されていればよい。
液体燃料を燃料収容部3から燃料分配機構2まで送る機構は特に限定されるものではない。例えば、使用時の設置場所が固定される場合には、重力を利用して液体燃料を燃料収容部3から燃料分配機構2まで落下させて送液することができる。また、多孔体等を充填した流路4を用いることによって、毛細管現象で燃料収容部3から燃料分配機構2まで送液することができる。さらに、燃料収容部3から燃料分配機構2への送液は、図6に示すように、ポンプ16で実施してもよい。あるいは、燃料分配機構2から膜電極接合体1への燃料供給が行われる構成であればポンプ16に代えて燃料遮断バルブを配置する構成とすることも可能である。この場合には、燃料遮断バルブは、流路による液体燃料の供給を制御するために設けられるものである。
燃料分配機構2は、図7に示すように、液体燃料が流路4を介して流入する少なくとも1個の燃料注入口21と、液体燃料やその気化成分を排出する複数個の燃料排出口22とを有する燃料分配板23を備えている。燃料分配板23の内部には図6に示すように、燃料注入口21から導かれた液体燃料の通路となる空隙部24が設けられている。複数の燃料排出口22は燃料通路として機能する空隙部24にそれぞれ直接接続されている。
燃料注入口21から燃料分配機構2に導入された液体燃料は空隙部24に入り、この燃料通路として機能する空隙部24を介して複数の燃料排出口22にそれぞれ導かれる。複数の燃料排出口22には、例えば液体燃料の気化成分のみを透過し、液体成分は透過させない気液分離体(図示せず)を配置してもよい。これによって、膜電極接合体1の燃料極5には液体燃料の気化成分が供給される。なお、気液分離体は燃料分配機構2と燃料極5との間に気液分離膜等として設置してもよい。液体燃料の気化成分は複数の燃料排出口22から燃料極5の複数個所に向けて排出される。
燃料排出口22は膜電極接合体1の全体に燃料を供給することが可能なように、燃料分配板23の燃料極5と対向する面に複数設けられている。燃料排出口22の個数は2個以上であればよいが、膜電極接合体1の面内における燃料供給量を均一化する上で、0.1〜10個/cm2の燃料排出口22が存在するように形成することが好ましい。燃料排出口22の個数が0.1個/cm2未満であると、膜電極接合体1に対する燃料供給量を十分に均一化することができない。燃料排出口22の個数を10個/cm2を超えて形成しても、それ以上の効果が得られない。
上述した燃料分配機構2に導入された液体燃料は空隙部24を介して複数の燃料排出口22に導かれる。燃料分配機構2の空隙部24はバッファとして機能するため、複数の燃料排出口22からそれぞれ規定濃度の燃料が排出される。そして、複数の燃料排出口22は膜電極接合体1の全面に燃料が供給されるように配置されているため、膜電極接合体1に対する燃料供給量を均一化することができる。
燃料分配機構2から均一に放出された燃料は、多孔質層10及び燃料極ガス拡散層9を拡散して燃料極触媒層8に供給される。燃料としてメタノール燃料を使用する場合には、次の式(A)に示すメタノールの内部改質反応を生じさせる必要がある。
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e− …式(A)
内部改質反応で生成されたプロトン(H+)は、電解質膜7を伝導し、空気極触媒層11に到達する。空気極ガス拡散層12から供給される空気は、空気極ガス拡散層12を拡散して、空気極触媒に供給される。空気極触媒に供給された空気は、次の式(B)に示す反応を生じる。この反応によって、水が生成され、発電反応が生じる。
内部改質反応で生成されたプロトン(H+)は、電解質膜7を伝導し、空気極触媒層11に到達する。空気極ガス拡散層12から供給される空気は、空気極ガス拡散層12を拡散して、空気極触媒に供給される。空気極触媒に供給された空気は、次の式(B)に示す反応を生じる。この反応によって、水が生成され、発電反応が生じる。
(3/2)O2+6H++6e− → 3H2O …式(B)
発電反応により生じた水は、空気極6から電解質膜7を通して燃料極触媒層8に供給される。
発電反応により生じた水は、空気極6から電解質膜7を通して燃料極触媒層8に供給される。
本実施形態においては、空気極ガス拡散層12の水透過時間が2.5〜3.3秒/cm2であり、この空気極ガス拡散層12に水蒸気透過抑制層17が積層されているため、空気極からの水の蒸発を抑制し、MEA内部の水分貯蔵量を増加させることができる。これにより、空気極側から燃料極側への水の移動を促進することができ、メタノールの内部改質反応の反応抵抗を小さくすることができる。
一方、燃料極側においては、燃料極ガス拡散層9の水透過時間が0.5〜1.3秒/cm2であり、この燃料極ガス拡散層9と燃料分配機構2との間に透気抵抗度が0.7〜1.5ガーレ秒の多孔質層10が配置されているため、空気極6への燃料クロスオーバーの問題を回避しつつ、燃料極触媒層8に燃料を円滑に供給することができる。また、この多孔質層10は、水の透過を抑制することができるため、燃料収容部3内の燃料への水の混入が抑えられる。
これらの結果、燃料極側の発電効率が向上されるため、燃料電池の初期出力性能並びに長期出力性能を向上することができる。
本発明に適用可能な燃料電池は、その形態から、液体燃料と酸化剤の供給をポンプなどの補器を用いて行うアクティブ型燃料電池、液体燃料の気化成分をアノードに供給するパッシブ型(内部気化型)燃料電池、前述した図6〜図8に示すセミパッシブ型の燃料電池などが挙げられる。アクティブ型燃料電池では、メタノール水溶液からなる燃料について、その量が一定になるようにポンプで調整しながらMEAのアノードへ供給する一方、カソードに対しても空気をポンプで供給する方式が採られる。パッシブ型燃料電池では、MEAのアノードに気化したメタノールを自然供給で送り、一方カソードに対しても外部の空気を自然供給することで、ポンプなどの余計な機器を装備しない方式が採られる。セミパッシブ型の燃料電池は、燃料収容部から膜電極接合体に供給された燃料は発電反応に使用され、その後に循環して燃料収容部に戻されることはない。セミパッシブ型の燃料電池では、燃料を循環させないことから、アクティブ方式とは異なるものであり、装置の小型化等を損なうものではない。また、セミパッシブ型の燃料電池は、燃料の供給にポンプを使用しており、内部気化型のような純パッシブ方式とも異なる。なお、このセミパッシブ型の燃料電池では、燃料収容部から膜電極接合体への燃料供給が行われる構成であればポンプに代えて燃料遮断バルブを配置する構成とすることも可能である。この場合には、燃料遮断バルブは、流路による液体燃料の供給を制御するために設けられる。
本発明のMEAの製造方法について特に制限はなく、既に得られている知見に基づいて、適宜製造することが可能である。
本発明にかかるMEAは、例えば、別途準備した空気極、電解質膜、及び燃料極を積層し、積層方向にホットプレスして積層体を作製し、これに水蒸気透過抑制層と多孔質層を積層することにより作製することができる。ホットプレス処理により、各層間の接合性に優れるMEAを得ることができる。ホットプレス条件は、例えば、温度が100〜200℃程度であり、好ましくは110〜170℃であり、圧力が積層体の積層面に対して30〜50 kg/cm2程度とすればよいが、これに限定されるものではない。
[実施例]
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
(実施例1)
<燃料極ガス拡散層の作製>
カーボンペーパー(東レ(株)製TGP−H−120)をガス拡散層基材として用いた。水透過測定装置により測定した水透過時間は0.5sec./cm2であった。
<燃料極ガス拡散層の作製>
カーボンペーパー(東レ(株)製TGP−H−120)をガス拡散層基材として用いた。水透過測定装置により測定した水透過時間は0.5sec./cm2であった。
<燃料極触媒層の作製>
白金担持カーボン(田中貴金属工業株式会社製、カーボン担体:ケッチェンブラック、白金含有量:50質量%)、20質量%ナフィオン(登録商標)分散液、純水、およびイソプロピルアルコールを、1:8:2:1の質量比で混合し、ボールミルを用いて粉砕及び撹拌して、触媒スラリーを調製した。上記で作製した燃料極ガス拡散層を100℃で乾燥させた後に、その一方の面に、上記で調製した触媒スラリーをダイコーターにより塗布した。単位面積あたりの触媒スラリーの塗布量は、6.5 mg/cm2であった。
白金担持カーボン(田中貴金属工業株式会社製、カーボン担体:ケッチェンブラック、白金含有量:50質量%)、20質量%ナフィオン(登録商標)分散液、純水、およびイソプロピルアルコールを、1:8:2:1の質量比で混合し、ボールミルを用いて粉砕及び撹拌して、触媒スラリーを調製した。上記で作製した燃料極ガス拡散層を100℃で乾燥させた後に、その一方の面に、上記で調製した触媒スラリーをダイコーターにより塗布した。単位面積あたりの触媒スラリーの塗布量は、6.5 mg/cm2であった。
<多孔質層の作製>
炭素材料としてグラファイト粒子(VALCAN)を用い、これをPTFE溶液と混合して、固形分でグラファイトとPTFEの比率が6:4となるように固形分量が約10%のスラリー溶液を作製した。得られたスラリーを気孔率が75%のカーボンペーパー(東レ(株)製TGP−H―030)の両面にスプレーコート法により塗布し、常温で自然乾燥した後、340℃で1時間焼成した。これにより、撥水性を有する多孔質層を得た。王研式透気度試験機で測定した透気抵抗度は1.0ガーレ秒であった。
炭素材料としてグラファイト粒子(VALCAN)を用い、これをPTFE溶液と混合して、固形分でグラファイトとPTFEの比率が6:4となるように固形分量が約10%のスラリー溶液を作製した。得られたスラリーを気孔率が75%のカーボンペーパー(東レ(株)製TGP−H―030)の両面にスプレーコート法により塗布し、常温で自然乾燥した後、340℃で1時間焼成した。これにより、撥水性を有する多孔質層を得た。王研式透気度試験機で測定した透気抵抗度は1.0ガーレ秒であった。
<空気極ガス拡散層の作製>
カーボンペーパー(東レ(株)製TGP−H−090)をガス拡散層基材として用いた。このカーボンペーパーに、PTFEエマルジョン溶液を含浸させて乾燥し、空気極ガス拡散層を作製した。撥水処理の前後の重量から算出したPTFE含有量は30%であった。水透過測定装置により測定した水透過時間は2.5秒/cm2であった。
カーボンペーパー(東レ(株)製TGP−H−090)をガス拡散層基材として用いた。このカーボンペーパーに、PTFEエマルジョン溶液を含浸させて乾燥し、空気極ガス拡散層を作製した。撥水処理の前後の重量から算出したPTFE含有量は30%であった。水透過測定装置により測定した水透過時間は2.5秒/cm2であった。
<空気極触媒層の作製>
白金担持カーボン(田中貴金属工業株式会社製、カーボン担体:ケッチェンブラック、白金含有量:50質量%)、20質量%ナフィオン(登録商標)分散液、純水、およびイソプロピルアルコールを、1:8:6:1の質量比で混合し、ボールミルを用いて粉砕および撹拌して、触媒スラリーを調製した。上記で作製した空気極ガス拡散層を100℃で乾燥させた後に、その一方の面に調製した触媒スラリーをダイコーターを用いて塗布した。単位面積あたりの触媒スラリーの塗布量は、41.1 mg/cm2であった。
白金担持カーボン(田中貴金属工業株式会社製、カーボン担体:ケッチェンブラック、白金含有量:50質量%)、20質量%ナフィオン(登録商標)分散液、純水、およびイソプロピルアルコールを、1:8:6:1の質量比で混合し、ボールミルを用いて粉砕および撹拌して、触媒スラリーを調製した。上記で作製した空気極ガス拡散層を100℃で乾燥させた後に、その一方の面に調製した触媒スラリーをダイコーターを用いて塗布した。単位面積あたりの触媒スラリーの塗布量は、41.1 mg/cm2であった。
<膜電極接合体(MEA)の作製>
電解質膜として、固体電解質膜ナフィオン112(デュポン社製)を用いた。この電解質膜、空気極触媒層、及び空気極ガス拡散層を重ね合わせ、温度が135℃、圧力が40kgf/cm2の条件でプレスした。続いて、電解質膜の空気極を重ね合わせた面と逆の面に、燃料極触媒層、燃料極ガス拡散層を重ね合わせ、温度が135℃、圧力が10kgf/cm2の条件でプレスした。得られた積層体に水蒸気透過抑制層として透気抵抗度1.0ガーレ秒のポリエチレン多孔質(商品名:サンマップ、日東電工株式会社製)と、上記で作製した多孔質層を積層し、膜電極接合体(MEA)を作製した。
電解質膜として、固体電解質膜ナフィオン112(デュポン社製)を用いた。この電解質膜、空気極触媒層、及び空気極ガス拡散層を重ね合わせ、温度が135℃、圧力が40kgf/cm2の条件でプレスした。続いて、電解質膜の空気極を重ね合わせた面と逆の面に、燃料極触媒層、燃料極ガス拡散層を重ね合わせ、温度が135℃、圧力が10kgf/cm2の条件でプレスした。得られた積層体に水蒸気透過抑制層として透気抵抗度1.0ガーレ秒のポリエチレン多孔質(商品名:サンマップ、日東電工株式会社製)と、上記で作製した多孔質層を積層し、膜電極接合体(MEA)を作製した。
なお、電極面積は、空気極、燃料極ともに12 cm2とした。
<燃料電池の組み立て>
続いて、この膜電極接合体を、空気および気化したメタノールを取り入れるための複数の開孔を有する金箔で挟み、燃料極導電層および空気極導電層を形成した。
続いて、この膜電極接合体を、空気および気化したメタノールを取り入れるための複数の開孔を有する金箔で挟み、燃料極導電層および空気極導電層を形成した。
上記の膜電極接合体(MEA)、燃料極導電層、空気極導電層が積層された積層体を樹脂製の2つのフレームで挟み込んだ。なお、膜電極接合体の空気極側と一方のフレームとの間、膜電極接合体の燃料極側と他方のフレームとの間には、それぞれゴム製のOリングを挟持してシールを施した。
また、燃料極側のフレームは、気液分離膜を介して、液体燃料収容室にネジ止めによって固定した。気液分離膜には、厚さ0.2mmのシリコーンシートを使用した。一方、空気極側のフレーム上には、気孔率が28%の多孔質板を配置し、保湿層を形成した。この保湿層上には、空気取り入れのための空気導入口(口径4mm、口数64個)が形成された厚さが2mmのステンレス板(SUS304)を配置して表面カバー層を形成し、ネジ止めによって固定した。
上記のように形成した燃料電池の液体燃料収容室に、純メタノールを5ml注入し、温度25℃、相対湿度50%の環境で、電流値を変化させて電流・電圧曲線を測定し、単位面積当たりの最大出力を求めた(初期最大出力)。その後、0.4Vの定電圧を1000時間運転させた時の再度、出力密度を測定した。
表1に示すような材料特性以外は、実施例1と同様にして実施例2〜3、さらに比較例1〜6までのMEA作製を行い、評価セルに組み上げた。なお、実施例3及び4、比較例1及び2は、燃料極ガス拡散層に、空気極ガス拡散層と同様に撥水処理を行った。
表2から明らかなように、水蒸気透過抑制層並びに多孔質層を備え、カソードガス拡散層の水透過時間が2.5〜3.3秒/cm2であり、アノードガス拡散層の水透過時間が0.5〜1.3秒/cm2である実施例1〜4の燃料電池は、比較例1〜6に比して、長時間経過後も出力が安定していることが示された。
上記実施の形態ではパッシブ型DMFCを例に説明を行ったが、パッシブ型に限らず反応によって生成した水を燃料極側で利用する構造のものであれば、何らその燃料電池の方式について限定されるものではない。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。また、アクティブ型燃料電池及びセミパッシブ型の燃料電池においても、上記した説明と同様の作用効果が得られる。MEAへ供給される液体燃料の蒸気においても、全て液体燃料の蒸気を供給してもよいが、一部が液体状態で供給される場合であっても本発明を適用することができる。
1…膜電極接合体(MEA)、2…燃料分配機構、3…燃料収容部、4…流路、5…アノード(燃料極)、6…カソード(空気極)、7…電解質膜、8…燃料極触媒層、9…燃料極ガス拡散層、10…多孔質層、10a…導電性多孔質基材、10b…撥水性導電性多孔質層、11…空気極触媒層、12…空気極ガス拡散層、13…導電層、14…カバープレート、15…Oリング、16…ポンプ、17…水蒸気透過抑制層、21…燃料注入口、22…燃料排出口、23…燃料分配板、24…空隙部。
Claims (5)
- カソード触媒層と、水透過時間が2.5〜3.3秒/cm2であるカソードガス拡散層とを含むカソードと、
アノード触媒層と、水透過時間が0.5〜1.3秒/cm2であるアノードガス拡散層とを含むアノードと、
前記カソード触媒層と前記アノード触媒層の間に配置された電解質膜と、
前記カソードガス拡散層の外側に配置された水蒸気透過抑制層と、
前記アノードガス拡散層の外側に配置された透気抵抗度が0.7〜1.5ガーレ秒である多孔質層と
を備えることを特徴とする膜電極接合体。 - 前記カソードガス拡散層が前記カソードガス拡散層の重量に基づいて30〜45重量%の撥水剤を含み、前記アノードガス拡散層が前記アノードガス拡散層の重量に基づいて10重量%以下(0重量%を含む)の撥水剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の膜電極接合体。
- 前記水蒸気透過抑制層が、多孔質ポリエチレン膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の膜電極接合体。
- 前記多孔質層が、炭素材料及び撥水剤を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の膜電極接合体。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の膜電極接合体を具備することを特徴とする燃料電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008273274A JP2010102950A (ja) | 2008-10-23 | 2008-10-23 | 膜電極接合体及び燃料電池 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008273274A JP2010102950A (ja) | 2008-10-23 | 2008-10-23 | 膜電極接合体及び燃料電池 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2010102950A true JP2010102950A (ja) | 2010-05-06 |
Family
ID=42293432
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2008273274A Withdrawn JP2010102950A (ja) | 2008-10-23 | 2008-10-23 | 膜電極接合体及び燃料電池 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2010102950A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2016005257A1 (de) * | 2014-07-11 | 2016-01-14 | Sgl Carbon Se | Membran-elektroden-einheit |
-
2008
- 2008-10-23 JP JP2008273274A patent/JP2010102950A/ja not_active Withdrawn
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2016005257A1 (de) * | 2014-07-11 | 2016-01-14 | Sgl Carbon Se | Membran-elektroden-einheit |
CN106797041A (zh) * | 2014-07-11 | 2017-05-31 | 西格里碳素欧洲公司 | 膜电极组件 |
KR101931890B1 (ko) * | 2014-07-11 | 2018-12-21 | 에스지엘 카본 에스이 | 멤브레인 전극 어셈블리 |
US10431837B2 (en) | 2014-07-11 | 2019-10-01 | Sgl Carbon Se | Membrane electrode assembly |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JPWO2005112172A1 (ja) | 燃料電池 | |
JPWO2006101132A1 (ja) | 燃料電池 | |
JPWO2007123066A1 (ja) | 固体高分子型燃料電池 | |
JP2007095558A (ja) | 燃料電池 | |
JPWO2007086432A1 (ja) | 燃料電池 | |
US20110275003A1 (en) | Fuel cell | |
WO2009147994A1 (ja) | 膜電極接合体及び燃料電池 | |
JP2009076451A (ja) | 燃料電池用電極膜接合体およびそれを用いた燃料電池 | |
JP2007317588A (ja) | 反応物質供給装置及び反応装置 | |
WO2009145231A1 (ja) | 燃料電池 | |
JP2011134600A (ja) | 膜電極接合体及び燃料電池 | |
JP2008293705A (ja) | 膜電極接合体および燃料電池 | |
JP2010086663A (ja) | 燃料電池 | |
WO2010035868A1 (ja) | 燃料電池 | |
JPWO2006104128A1 (ja) | 燃料電池 | |
JP2010102950A (ja) | 膜電極接合体及び燃料電池 | |
JPWO2008068886A1 (ja) | 燃料電池 | |
JPWO2008068887A1 (ja) | 燃料電池 | |
JP2010277782A (ja) | 膜電極接合体及び燃料電池並びにそれらの製造方法 | |
WO2011052650A1 (ja) | 燃料電池 | |
JP2010003562A (ja) | 膜電極接合体及び燃料電池 | |
JP2011096468A (ja) | 燃料電池 | |
JP2009266676A (ja) | 膜電極接合体及び燃料電池 | |
JP2011096460A (ja) | 燃料電池用カソード電極および燃料電池 | |
JP2010170826A (ja) | 燃料電池 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20120110 |