以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施の形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記の実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。また、下記の実施の形態では、流体伝達装置に伝達される駆動力を発生する駆動源として、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどのエンジンを用いるが、これに限定されるものではなく、モータなどの電動機を駆動源として、あるいはモータなどの電動機と併用して用いても良い。
〔実施の形態〕
図1および図2は、実施の形態にかかる流体伝達装置の要部断面図を示す図である。なお、流体伝達装置の外郭は概略、図1あるいは図2をX−X軸を中心軸として周方向に回転することで構成される。また、図1および図2は、実施の形態にかかる流体伝達装置の要部断面であるがX−X軸に対してそれぞれ異なる方向から見たものである。図3は、油圧制御装置の概略構成例を示す図である。図1〜図3に示すように、実施の形態にかかる流体伝達装置1は、プレダンパー10と、フロントカバー20と、流体伝達機構30と、ピストン部材40と、ロックアップクラッチ50と、ダイナミックダンパー60と、タービンクラッチ70と、油圧制御装置80とにより構成されている。なお、90は、油圧制御装置80に電気的に接続され、油圧制御装置80の各弁の開閉制御などを行うECUである。なお、100は、流体伝達装置1にエンジンの駆動力を入力する入力部材であるクランクシャフトである。また、200は、流体伝達装置1からエンジンの駆動力が出力される出力軸(例えば、変速機のインプットシャフト)である。
プレダンパー10は、入力部材であるクランクシャフト100とフロントカバー20との間に設けられ、図示しない駆動源であるエンジンの回転数であるエンジン回転数に対応する振動を抑制するものである。また、プレダンパー10は、クランクシャフト100から入力されたエンジンの駆動力を、第1弾性体である後述する第1ダンパーバネ14によりフロントカバー20に伝達するものである。プレダンパー10は、図1および図2に示すように、バネ保持部材11と、第1バネサイド部材12と、第2バネサイド部材13と、複数の第1ダンパーバネ14とにより構成されている。
バネ保持部材11は、弾性体保持部材である。バネ保持部材11は、円環形状であり、第1バネサイド部材12と第2バネサイド部材13との間に配置されるものである。バネ保持部材11は、複数の第1ダンパーバネ14を保持するものである。バネ保持部材11は、締結部材110(例えば、ボルト)により、応力緩和サイド部材101,102とともに、クランクシャフト100に対して締結されている。従って、バネ保持部材11は、応力緩和サイド部材101,102とともに、クランクシャフト100に対して一体回転可能である。つまり、バネ保持部材11は、クランクシャフト100からエンジンの駆動力が伝達される。バネ保持部材11は、クランクシャフト100により半径方向の位置決めが行われている。また、バネ保持部材11には、バネ保持部11aと、ボルトスライド部11bとが形成されている。なお、応力緩和サイド部材101,102は、円環形状であり、バネ保持部材11の変形を吸収し、締結部材110のボルト圧を均一化することで、締結部(バネ保持部材11、応力緩和サイド部材101,102、クランクシャフト100、締結部材110とから構成される)の損傷を防止するものである。
バネ保持部11aは、バネ保持部材11の半径方向外側の位置に形成され(例えば、切欠き)、バネ保持部材11の周方向に複数形成されている。各バネ保持部11aは、第1ダンパーバネ14がそれぞれ保持され、第1ダンパーバネ14の両端部にそれぞれ接触するものである。
ボルトスライド部11bは、バネ保持部材11の半径方向外側の位置に形成され(例えば、円弧状のスリット)、バネ保持部材11の周方向に複数形成されている。ここで、各バネ保持部11aと各ボルトスライド部11bとは、バネ保持部材11に対して周方向に交互に形成されている。ボルトスライド部11bは、締結ボルト120をバネ保持部材11に対して周方向に摺動させるものである。
第1バネサイド部材12は、弾性体サイド部材の一部を構成するものである。第1バネサイド部材12は、円環形状であり、第2バネサイド部材13とバネ保持部材11を介して対向して配置されている。第1バネサイド部材12には、バネ保持部材11に保持された複数の第1ダンパーバネ14の一部をそれぞれ収容するバネ収容部12aが形成されている。また、第1バネサイド部材12には、バネ保持部材11に保持された複数の第1ダンパーバネ14の両端部とそれぞれ接触可能な駆動力伝達部が形成されている。従って、第1バネサイド部材12には、複数の第1ダンパーバネ14を介して、バネ保持部材11に伝達された駆動力が伝達される。また、第1バネサイド部材12には、半径方向外側端部から出力側に突出し、かつ周方向に連続する第1接触部12bが形成されている。また、第1バネサイド部材12には、半径方向内側端部に周方向に連続する第2接触部12cが形成されている。第2接触部12cは、実施の形態では、応力緩和サイド部材101と半径方向において接触するものである。従って、弾性体サイド部材は、応力緩和サイド部材101が締結されているクランクシャフト100により半径方向の位置決めが行われている。なお、第1バネサイド部材12には、上記締結ボルト120の一部を収容するボルト収容部12dが形成されている。ここで、各バネ収容部12aと各ボルト収容部12dとは、第1バネサイド部材12に対して周方向に交互に形成されている。
第2バネサイド部材13は、弾性体サイド部材の一部を構成するものである。つまり、弾性体サイド部材は、第1バネサイド部材12と第2バネサイド部材13との2つの部材により構成されている。第2バネサイド部材13は、円環形状であり、第1バネサイド部材12とバネ保持部材11を介して対向して配置されている。第2バネサイド部材13は、バネ保持部材11に保持された複数の第1ダンパーバネ14の一部をそれぞれ収容するバネ収容部13aが形成されている。また、第2バネサイド部材13には、バネ保持部材11に保持された複数の第1ダンパーバネ14の両端部とそれぞれ接触可能な駆動力伝達部が形成されている。従って、第2バネサイド部材13には、複数の第1ダンパーバネ14を介して、バネ保持部材11に伝達された駆動力が伝達される。また、第2バネサイド部材13には、半径方向外側端部に周方向に連続する段差部13bが形成されている。また、第2バネサイド部材13には、フロントカバー20の後述するセットブロック23を収容するブロック収容部13cが形成されている。ここで、各バネ収容部13aと各ブロック収容部13cとは、第2バネサイド部材13に対して周方向に交互に形成されている。
第1ダンパーバネ14は、第1弾性体であり、コイルスプリングである。第1ダンパーバネ14は、クランクシャフト100からバネ保持部材11に伝達された駆動力を第1バネサイド部材12および第2バネサイド部材13に伝達するものである。第1ダンパーバネ14は、バネ保持部材11に駆動力が伝達されると、一方の端部がバネ保持部材11と接触し、他方の端部が第1バネサイド部材12および第2バネサイド部材13に接触することで、駆動力に応じて弾性変形しつつ、接触する第1バネサイド部材12および第2バネサイド部材13に駆動力を伝達する。従って、クランクシャフト100から駆動力が伝達されるバネ保持部材11は、第1ダンパーバネ14を介してバネサイド部材に駆動力の伝達を行うので、過大な応力が作用することを抑制でき、信頼性を向上することができる。なお、第1ダンパーバネ14は、バネ定数を低くすることが好ましい。第1ダンパーバネ14を低バネ定数化することで、共振点を低下させることができ、プレダンパー10の振動吸収性能を向上することができ、図示しないエンジンの回転数に対応するこもり音などの振動の低減をさらに図ることができ、全体的にこもり音などの振動の低減を図ることができる。
ここで、第1バネサイド部材12および第2バネサイド部材13は、締結ボルト120によりセットブロック23に締結されている。つまり、第1バネサイド部材12および第2バネサイド部材13は、フロントカバー20と一体化され、フロントカバー20と一体回転可能となる。このとき、締結ボルト120は、バネ保持部材11のボルトスライド部11bに挿入されている。従って、締結ボルト120により一体化された第1バネサイド部材12、第2バネサイド部材13およびフロントカバー20は、バネ保持部材11に対して相対回転可能となる。これにより、エンジンの駆動力がプレダンパー10を介してフロントカバー20に伝達される。上述のように、プレダンパー10は、クランクシャフト100とフロントカバー20との間に設けられている。従って、プレダンパー10の入力側の慣性質量と出力側の慣性質量とのバランスが、フロントカバー20と流体伝達機構30との間に設けられている場合と比較して向上する。これにより、エンジン回転数に対応した共振点を下げることができ、エンジン回転数に対応した振動を抑制できる。
締結ボルト120により第1バネサイド部材12および第2バネサイド部材13がバネ保持部材11に対して相対回転可能となり、リベットなどを必要としないので部品点数、製造コストの削減を図ることができる。なお、フロントカバー20は、クランクシャフト100に対して相対回転可能となるので、軸受130によりクランクシャフト100に対して回転可能に支持されている。また、締結ボルト120により第1バネサイド部材12および第2バネサイド部材13がフロントカバー20に締結された状態で、ボルト収容部12dに締結ボルト120の一部が収容され、ブロック収容部13cにセットブロック23が収容される。これにより、流体伝達装置1は、クランクシャフト100とフロントカバー20との間にプレダンパー10を設けても軸方向への大型化を抑制することができる。
また、第1バネサイド部材12および第2バネサイド部材13は、締結ボルト120により一体化されることで、第1接触部12bが段差部13bと周方向に連続して接触し、第1バネサイド部材12および第2バネサイド部材13の半径方向外側端部を閉塞する。ここで、第1バネサイド部材12と第2バネサイド部材13との軸方向における間隔は、第1バネサイド部材12と第2バネサイド部材13との間に配置されるバネ保持部材11が第1バネサイド部材12および第2バネサイド部材13に対して相対回転可能となる間隔に設定されている。従って、第1バネサイド部材12および第2バネサイド部材13(弾性体サイド部材)には、バネ収容部12a、バネ収容部13a、第1バネサイド部材12と第2バネサイド部材13との間に形成された間隔を含む空間部15が形成されている。つまり、バネ保持部材11および第1ダンパーバネ14は空間部15に収納されている。従って、締結ボルト120により第1バネサイド部材12および第2バネサイド部材13が一体化されることで、第1バネサイド部材12と第2バネサイド部材13との軸方向における距離が調整され、スペーサなどを必要としないので部品点数、製造コストの削減を図ることができる。
また、締結ボルト120により第1バネサイド部材12および第2バネサイド部材13がフロントカバー20に締結された状態で、第1バネサイド部材12が応力緩和サイド部材101と周方向に連続して接触するとともに、第2バネサイド部材13がフロントカバー20と周方向に連続して接触する。従って、空間部15は、応力緩和サイド部材101が締結部材110により締結されるクランクシャフト100とフロントカバー20とにより閉塞されている。これにより、空間部15は、第1ダンパーバネ14などに供給する潤滑油(例えばグリス)を保持することができる。
なお、第1バネサイド部材12と応力緩和サイド部材101との間には、第1バネサイド部材12と応力緩和サイド部材101が締結部材110により締結されているクランクシャフト100との間をシールするシール部材S1が設けられている。また、第2バネサイド部材13とフロントカバー20との間には、締結ボルト120により一体化される第2バネサイド部材13とフロントカバー20との間をシールするシール部材S2が設けられている。従って、空間部15は、シール部材S1,S2により外部に対してシールされている。これにより、空間部15内の潤滑油が外部に流出することを抑制することができ、耐久性を向上することができる。また、締結ボルト120により第2バネサイド部材13をフロントカバー20に締結することで、フロントカバー20を空間部15の外部に対するシールを行うシール面として用いることができる。従って、確実にシールすることができ、部品点数、製造コストの削減を図ることができる。
フロントカバー20は、入力部材であるクランクシャフト100から入力された駆動源である図示しないエンジンの駆動力が伝達されるものである。ここでは、フロントカバー20は、プレダンパー10を介してクランクシャフト100から入力されたエンジンの駆動力が伝達される。フロントカバー20は、図1および図2に示すように、本体部21と、フランジ部22と、セットブロック23とにより構成されている。本体部21は、円板形状である。フランジ部22は、本体部21の半径方向外側端部から出力側に突出して形成されている。セットブロック23は、クランクシャフト100とプレダンパー10を介して連結されるものである。セットブロック23は、本体部21の入力側に周方向に複数形成されている。各セットブロック23は、上述のように、締結ボルト120により第1バネサイド部材12および第2バネサイド部材13に締結される。
流体伝達機構30は、流体伝達手段であり、作動流体を介してフロントカバー20に伝達された駆動力をポンプからタービンに伝達するものである。流体伝達機構30は、図1および図2に示すように、ポンプ31と、タービン32と、ステータ33と、ワンウェイクラッチ34と、ポンプ31とタービン32との間に介在する作動流体である作動油とにより構成されている。
ポンプ31は、フロントカバー20に伝達された駆動力が伝達されるものであり、作動油を介して伝達された駆動力をタービン32に伝達するものである。ポンプ31は、複数のポンプブレード31aが固定されたポンプシェル31bの半径方向外側端部がフロントカバー20のフランジ部22の出力軸側端部に、固定手段、例えば溶接などにより固定されることで、フロントカバー20に固定されている。つまり、ポンプ31は、フロントカバー20と一体回転し、フロントカバー20に伝達された駆動力が各ポンプブレード31aに伝達される。
タービン32は、ポンプ31から作動油を介して駆動力が伝達されるものである。タービン22は、ポンプブレード31aと軸方向において対向する複数のタービンブレード32aが固定されたタービンシェル32bの半径方向内側端部が固定手段、例えばリベット91により固定されることで、支持部材92に固定されている。ここで、支持部材92は、ハブ93に対して軸受35により回転可能に、かつハブ93に対して軸方向において摺動自在に支持されている。つまり、タービン32は、軸方向において移動可能である。ここで、ハブ93は、出力部材である出力軸200に対して一体回転可能に、かつ出力軸200に対して軸方向において摺動自在に支持されている。ハブ93と出力軸200とは、例えばハブ93の内周面と出力軸200の外周面にそれぞれ形成されたスプラインがスプライン嵌合することにより、一体回転可能となるとともに、軸方向において相対移動可能となる。なお、支持部材92とハブ93との間には、支持部材92とハブ93との間をシールするシール部材S3が設けられている。なお、ハブ93と出力軸200との間には、上記スプラインを含む領域を挟んでハブ93と出力軸200との間をシールするシール部材S4,S5が設けられている。
ステータ33は、周方向に形成された複数のステータブレード33aを有し、ポンプ31とタービン32との間に配置されるものである。ステータ33は、ポンプ31とタービン32との間を循環する作動油の流れを変化させ、エンジンから伝達される駆動力に基づいて所定の駆動力特性を得るためのものである。ステータ33は、ワンウェイクラッチ34を介して、流体伝達装置1を収納するハウジング94に固定手段、例えばワンウェイクラッチ34の内周面とハウジング94の外周面にそれぞれ形成されたスプラインがスプライン嵌合することで固定されている。ここで、ワンウェイクラッチ34は、ハウジング94に対してステータ33を一方向のみに回転可能に支持するものである。なお、ワンウェイクラッチ34は、支持部材92およびスリーブ95に対して、軸受36、37によりそれぞれ軸方向に回転可能に支持されている。
ピストン部材40は、図1および図2に示すように、フロントカバー20に伝達された駆動力を出力部材である出力軸200に出力するものである。ピストン部材40は、フロントカバー20と流体伝達機構30との間に配置されている。ここで、ピストン部材40は、ハブ93に対して一体回転可能に、かつハブ93に対して軸方向において摺動自在に支持されている。ピストン部材40とハブ93とは、ピストン部材40の出力側の側面のうち半径方向内側端部近傍から出力側に突出して、周方向に複数形成されたピストン側突起部40aと、ハブ93の入力側の側面のうち軸方向においてピストン側突起部40aと対向する位置から入力側に突出して、周方向に複数形成されたハブ側突起部93aとが噛み合うことにより、一体回転可能となるとともに、軸方向において相対移動可能となる。なお、ピストン部材40とハブ93との間には、ピストン部材40とハブ93との間をシールするシール部材S6が設けられている。
ここで、ハブ93は、一方の端部が内周面に開口し、他方の端部が外周面のうちシール部材S6と複数のハブ側突起部93aとの間の領域に開口する連通通路93bが形成されている。また、出力軸200は、内部に仕切部材201が挿入されており、仕切部材201により入力側の端部が閉塞されている。仕切部材201の内部には、軸方向のうち入力側の端部が解放されるとともに、油圧制御装置80と接続される第1通路202が形成されている。また、出力軸200と仕切部材201との間には、軸方向のうち入力側の端部が仕切部材201により閉塞されるととともに、油圧制御装置80と接続される第2通路203が形成されている。また、出力軸200には、一方の端部が第2通路203と接続され、他方の端部が出力軸200の外周面のうち上記スプラインを含む領域に開口する連通通路204が形成されている。また、ハウジング94とスリーブ95との間には、一方の端部がステータ33近傍に開口し、油圧制御装置80と接続される第3通路96が形成されている。
流体伝達装置1は、油圧制御装置80と接続されている3つのPORTが形成されている。PORT1は、フロントカバー20とピストン部材40との間に形成され、第1通路202を介して油圧制御装置80と接続されている。PORT2は、ピストン部材40とタービン32との間に形成され、連通通路93b、連通通路204、第2通路203を介して、油圧制御装置80と接続されている。PORT3は、タービン32とポンプ31との間に形成され、第3通路96を介して油圧制御装置80と接続されている。つまり、PORT1〜3は、油圧制御装置80により圧力が制御される。
ロックアップクラッチ50は、図1および図2に示すように、フロントカバー20とピストン部材40とを係合可能とするものである。ロックアップクラッチ50は、フロントカバー20に形成されているカバー側クラッチ面21aと、カバー側クラッチ面21aと対向しピストン部材40に形成された第1ピストン側クラッチ面とが摩擦係合することで、フロントカバー20とピストン部材40とを係合可能とするものである。カバー側クラッチ面21aは、フロントカバー20の本体部21のうち、ピストン部材40と軸方向において対向して形成されている。第1ピストン側クラッチ面は、ピストン部材40のうちカバー側クラッチ面21aと軸方向において対向する部分に取り付けられた摩擦板51の摩擦面である。つまり、第1ピストン側クラッチ面は、ピストン部材40のうち、フロントカバー側、すなわち入力側に形成されている。ロックアップクラッチ50は、PORT1、PORT2、PORT3のそれぞれにおける圧力に応じてフロントカバー20に対してピストン部材40を軸方向に移動することで、係合状態と解放状態が切り替えられる。つまり、ロックアップクラッチ50は、油圧制御装置80により制御される。ここで、ロックアップクラッチ50では、フロントカバー20とピストン部材40との間で力を伝達できる状態を係合状態といい、力を伝達できない状態を解放状態という。なお、ロックアップクラッチ50の係合状態には、フロントカバー20とピストン部材40との間に回転差が発生するスリップ係合状態と、回転差が発生しない完全係合状態とが含まれる。
ダイナミックダンパー60は、タービン32とピストン部材40との間に設けられるものである。ダイナミックダンパー60は、油圧制御装置80によりタービンクラッチ70が後述する解放状態にされた場合に、タービン32を弾性支持するものである。ダイナミックダンパー60は、タービン32を慣性質量とし、図示しない駆動源であるエンジンの特定回転数領域における共振を逆位相で押さえ込むことで、特定回転数領域に対応する振動を抑制するものである。ダイナミックダンパー60は、図1および図2に示すように、バネサイドプレート61と、バネ保持プレート62と、複数の第2ダンパーバネ63とにより構成されている。
ここで、ピストン部材40は、バネ保持プレート62に保持された複数の第2ダンパーバネ63の一部をそれぞれ収容するバネ収容部40bが形成されている。また、ピストン部材40には、バネ保持プレート62に保持された複数の第2ダンパーバネ63の両端部とそれぞれ接触可能な駆動力伝達部が形成されている。
バネサイドプレート61は、円環形状であり、ピストン部材40とバネ保持プレート62を介して対向して配置されている。バネサイドプレート61は、バネ保持プレート62に保持された複数の第2ダンパーバネ63の一部をそれぞれ収容するバネ収容部61aが形成されている。また、バネサイドプレート61には、バネ保持プレート62に保持された複数の第2ダンパーバネ63の両端部とそれぞれ接触可能な駆動力伝達部が形成されている。ここで、バネサイドプレート61は、連結手段、例えばノックピン64によりピストン部材40と一体化されている。ここで、一体化されたピストン部材40とバネサイドプレート61との間には、スリーブ65が設けられている。スリーブ65は、円筒形状であり、ノックピン64のうちピストン部材40とバネサイドプレート61との間の間隔を適切に保持するように設けられている。つまり、スリーブ65は、ピストン部材40とバネサイドプレート61との軸方向における相対位置を規制するものである。
バネ保持プレート62は、円環形状であり、ピストン部材40とバネサイドプレート61との間に配置されるものである。バネ保持プレート62は、複数の第2ダンパーバネ63を保持するものである。バネ保持プレート62には、バネ保持部62aと、スリーブスライド部62bと、プレート側突起部62cとが形成されている。
バネ保持部62aは、バネ保持プレート62の半径方向中央部の位置に円弧状に形成されたスリットであり、バネ保持プレート62の周方向に複数形成されている。各バネ保持部62aは、第2ダンパーバネ63がそれぞれ保持され、第2ダンパーバネ63の両端部にそれぞれ接触する。
スリーブスライド部62bは、バネ保持プレート62の半径方向外側の位置に円弧状に形成されたスリットであり、バネ保持プレート62の周方向に複数形成されている。各スリーブスライド部62bは、スリーブ65をバネ保持プレート62に対して周方向に摺動させるものである。つまり、ノックピン64により一体化されたピストン部材40およびバネサイドプレート61は、バネ保持プレート62に対して相対回転可能である。
プレート側突起部62cは、バネ保持プレート62の半径方向内側端部から半径方向内側に突出して形成されている。プレート側突起部62cは、半径方向内側端部に周方向に複数形成されている。ここで、バネ保持プレート62の半径方向内側には、連結部材66が配置されている。連結部材66は、バネ保持プレート62とタービン32とを連結するものである。連結部材66は、半径方向内側端部が固定手段、例えばリベット91により固定されることで、タービン32とともに支持部材92に固定されている。また、連結部材66には、半径方向外側端部から入力側に突出して形成された連結部材側突起部66aが形成されている。連結部材側突起部66aは、軸方向においてプレート側突起部62cと対向し、半径方向外側端部に周方向に複数形成されている。バネ保持プレート62と連結部材66とは、上記複数のプレート側突起部62cと複数の連結部材側突起部66aとが噛み合うことにより、一体回転可能となるとともに、軸方向において相対移動可能となる。つまり、タービン32とピストン部材40とは、ダイナミックダンパー60を介して、相対回転可能となるとともに、軸方向において相対移動可能となる。
第2ダンパーバネ63は第2弾性体であり、コイルスプリングである。第2ダンパーバネ63は、油圧制御装置80によりタービンクラッチ70が後述する解放状態にされた場合に、タービン32を弾性支持するものである。油圧制御装置80によりタービンクラッチ70が後述する解放状態である場合、タービン32は、連結部材66、バネ保持プレート62、複数のダ第2ンパーバネ63を介してピストン部材40と連結する。ピストン部材40には、フロントカバー20から直接あるいは流体伝達機構30を介して駆動力が伝達される。つまり、ダイナミックダンパー60は、油圧制御装置80によりタービンクラッチ70が後述する解放状態にされた場合に作動し、駆動力の伝達経路である動力伝達経路の途中においてタービン32を弾性支持し、ピストン部材40により駆動力が伝達される状態でタービン32を慣性質量とする。従って、ダイナミックダンパー60は、タービン32を弾性支持することで、エンジンの特定回転数領域における振動を逆位相で押さえ込むことができる。ここで、ダイナミックダンパー60は、例えばエンジン回転数が1000rpm程度の回転数領域を特定回転数領域に設定し、エンジンの特定回転数領域における振動を逆位相で押さえ込むように設定されている。また、慣性質量としてタービン32が用いられるので、エンジンの特定回転数領域における振動を逆位相で押さえ込むための第2ダンパーバネ63の設定(バネ定数など)の幅を広くとることができる。
タービンクラッチ70は、図1および図2に示すように、タービン32とピストン部材40とを係合可能とするものである。タービンクラッチ70は、タービン32に形成されたタービン側クラッチ面と、タービン側クラッチ面に対向しピストン部材40に形成される第2ピストン側クラッチ面とが摩擦係合することで、タービン32とピストン部材40とを係合可能とするものである。実施の形態では、タービン側クラッチ面は、タービン32において軸方向のうち出力側から入力側に向かうに伴い半径方向外側から半径方向内側に向かって傾斜して形成されたタービン側クラッチ傾斜面32cである。また、第2ピストン側クラッチ面は、ピストン部材40においてタービン側クラッチ傾斜面32cに対して半径方向外側において対向するとともに、軸方向のうち出力側から入力側に向かうに伴い半径方向外側から半径方向内側に傾斜して形成されたピストン側クラッチ傾斜面40cである。つまり、タービンクラッチ70は、タービン側クラッチ傾斜面32cとピストン側クラッチ傾斜面40cとが摩擦係合する斜板クラッチである。つまり、第2ピストン側クラッチ面は、ピストン部材40のうち、タービン側、すなわち出力側に形成されている。タービンクラッチ70は、PORT1、PORT2、PORT3のそれぞれにおける圧力に応じてタービン32とピストン部材40との軸方向における相対距離を変化させることで、係合状態と解放状態が切り替えられる。つまり、タービンクラッチ70は、油圧制御装置80により制御される。ここで、タービンクラッチ70では、タービン32とピストン部材40との間で力を伝達できる状態を係合状態といい、力を伝達できない状態を解放状態という。
上述のように、ロックアップクラッチ50を構成する第1ピストン側クラッチ面である摩擦板51の摩擦面およびタービンクラッチ70を構成する第2ピストン側クラッチ面であるピストン側クラッチ傾斜面40cがピストン部材40に形成されている。つまり、ロックアップクラッチ50およびタービンクラッチ70を形成するクラッチ面を1つの部材であるピストン部材に形成する。従って、2つのクラッチを構成する4つのクラッチ面を形成するために4つの部材を必要としない。また、ロックアップクラッチ50およびタービンクラッチ70の係合状態では、フロントカバー20と、ピストン部材40と、タービン32とを一体化することができ、小型化を図ることができる。これらにより、部品点数の削減、低コスト化、小型化、軽量化を図ることができる。
タービンクラッチ70を斜板クラッチとするので、タービンクラッチ70の係合状態では、くさび効果により大きな摩擦係合力を発生することができる。また、タービン側クラッチ傾斜面32cに対してピストン側クラッチ傾斜面40cが半径方向外側であるので、PORT2が後述するOFF状態からON状態に切り替わることでPORT2における圧力の上昇した際に、PORT2における圧力がピストン部材40の半径方向外側に作用し、摩擦係合していたタービン側クラッチ傾斜面32cとピストン側クラッチ傾斜面40cとが離間しやすくなる。従って、タービンクラッチ70の係合状態から解放状態への切り替わりが容易、すなわちタービンクラッチ70のクラッチ離れを向上することができる。また、タービンクラッチ70の係合状態では、ピストン部材40の軸方向における変形が低減されるので、ロックアップクラッチ50のスリップ係合状態における制御性を向上することができる。
油圧制御装置80は、クラッチ制御手段であり、ロックアップクラッチ50およびタービンクラッチ70を制御するものである。油圧制御装置80は、ロックアップクラッチ50を係合状態(完全係合状態あるいはスリップ係合状態)あるいは解放状態のいずれかとするとともに、タービンクラッチ70を係合状態(完全係合状態あるいはスリップ係合状態)あるいは解放状態のいずれかにするものである。油圧制御装置80は、PORT1、PORT2、PORT3におけるそれぞれの圧力を制御するものである。油圧制御装置80は、図3に示すように、オイルタンク81と、オイルポンプ82と、第1切替弁83と、第2切替弁84と、第3切替弁85と、第1制御弁86と、第2制御弁87と、これらとPORT1〜3を接続する流路とにより構成されている。
オイルタンク81は、流体伝達装置1に供給する、あるいは流体伝達装置1から排出された作動油を貯留するものである。
オイルポンプ82は、オイルタンク81に貯留されている作動油を加圧するものである。オイルポンプ82は、例えば図示しないエンジンからの駆動力により作動するものであり、オイルタンク81に貯留されている作動油を吸引、加圧し、吐出するものである。この加圧されて吐出された作動油は、図示しないプレッシャーレギュレータを介して、第1流路L1に接続されている。ここで、第1流路L1は、第1切替弁83と接続される第2流路L2と、第2切替弁84と接続される第3流路L3と、第3切替弁85と接続される第4流路L4と接続されている。従って、加圧されて吐出された作動油は、第1切替弁83、第2切替弁84と、第3切替弁85とに供給される。なお、プレッシャーレギュレータは、プレッシャーレギュレータよりも下流側における圧力が所定圧力以上となった際に、下流側にある作動油の一部をオイルタンク81に戻すものである。
第1切替弁83は、PORT制御手段であり、PORT1と、オイルタンク81と、オイルポンプ82との接続関係を変更するものである。第1切替弁83は、上記第2流路L2と接続されるとともに、第5流路L5を介してPORT1と、第6流路L6および第7流路L7を介してオイルタンク81と接続されている。つまり、第1切替弁83は、PORT1と、オイルタンク81と、オイルポンプ82とに接続されている。第1切替弁83は、ECU90と接続されており、ECU90によりON/OFF制御が行われる。ここで、第1切替弁83は、ECU90によりON制御が行われ、ONとなると、第2流路L2と第5流路L5とが接続され、オイルポンプ82とPORT1とが連通し、PORT1に作動油が供給される供給状態となる。また、第1切替弁83は、ECU90によりOFF制御が行われ、OFFとなると、第5流路L5と第6流路L6とが接続され、PORT1とオイルタンク81とが連通し、PORT1から作動油が排出される排出状態となる。つまり、油圧制御装置80は、第1切替弁83により、PORT1を供給状態または排出状態に制御するものである。
第2切替弁84は、PORT制御手段であり、PORT2と、オイルタンク81と、オイルポンプ82との接続関係を変更するものである。第2切替弁84は、上記第3流路L3と接続されるとともに、第8流路L8を介してPORT2と、第9流路L9および第7流路L7を介してオイルタンク81と接続されている。つまり、第2切替弁84は、PORT2と、オイルタンク81と、オイルポンプ82とに接続されている。第2切替弁84は、ECU90と接続されており、ECU90によりON/OFF制御が行われる。ここで、第2切替弁84は、ECU90によりON制御が行われ、ONとなると、第3流路L3と第8流路L8とが接続され、オイルポンプ82とPORT2とが連通し、PORT2に作動油が供給される供給状態となる。また、第2切替弁84は、ECU90によりOFF制御が行われ、OFFとなると、第8流路L8と第9流路L9とが接続され、PORT2とオイルタンク81とが連通し、PORT2から作動油が排出される排出状態となる。つまり、油圧制御装置80は、第2切替弁84により、PORT2を供給状態または排出状態に制御するものである。
第3切替弁85は、PORT制御手段であり、PORT3と、オイルタンク81と、オイルポンプ82との接続関係を変更するものである。第3切替弁85は、上記第4流路L4と接続されるとともに、第10流路L10を介してPORT3と、第11流路L11および第7流路L7を介してオイルタンク81と接続されている。つまり、第3切替弁85は、PORT3と、オイルタンク81と、オイルポンプ82とに接続されている。第3切替弁85は、ECU90と接続されており、ECU90によりON/OFF制御が行われる。ここで、第3切替弁85は、ECU90によりON制御が行われ、ONとなると、第4流路L4と第10流路L10とが接続され、オイルポンプ82とPORT3とが連通し、PORT3に作動油が供給される供給状態となる。また、第3切替弁85は、ECU90によりOFF制御が行われ、OFFとなると、第10流路L10と第11流路L11とが接続され、PORT3とオイルタンク81とが連通し、PORT3から作動油が排出される排出状態となる。つまり、油圧制御装置80は、第3切替弁85により、PORT3を供給状態または排出状態に制御するものである。
第1制御弁86は、スリップ量制御手段であり、係合状態のロックアップクラッチ50をスリップ係合状態または完全係合状態に制御するものである。第1制御弁86は、PORT3における作動油の流量、実施の形態では、PORT3が排出状態の場合に、PORT3から排出される作動油の流量である排出状態時排出流量を制御するものである。つまり、第1制御弁86は、排出状態時のPORT3における圧力を制御するものである。第1制御弁86は、第11流路L11の途中に設けられている。第1制御弁86は、ECU90と接続されており、ECU90により制御が行われる。ここで、第1制御弁86は、ECU90により制御が行われ、ONとなると、排出状態時排出流量を制御し、PORT3における圧力を制御する制御状態となる。なお、第1制御弁86は、OFFとなると、排出状態時排出流量が制御されず最大となる非制御状態となる。
第2制御弁87は、スリップ量制御手段であり、係合状態のロックアップクラッチ50をスリップ係合状態または完全係合状態に制御するものである。第2制御弁87は、PORT3における作動油の流量、実施の形態では、PORT3が供給状態の場合に、PORT3から供給される作動油の供給流量を制御するものである。つまり、第2制御弁87は、供給状態時におけるPORT3における圧力を制御するものである。第2制御弁87は、第10流路L10と第7流路L7とを接続する第12流路L12の途中に設けられている。第2制御弁87は、ECU90と接続されており、ECU90により制御が行われる。ここで、第2制御弁87は、ECU90により制御が行われ、ONとなると、第12流路L12からオイルタンク81に排出される作動油の流量である供給状態時排出流量を制御する。従って、第2制御弁87は、供給状態時排出流量を制御することで、供給流量を制御し、PORT3における圧力を制御する制御状態となる。なお、第2制御弁87は、OFFとなると、供給状態時排出流量が制御されず0となり、供給流量が最大となる非制御状態となる。
ECU90は、電子制御ユニットであり、油圧制御装置80を制御することで、流体伝達装置1の作動を制御するものである。ECU90は、第1切替弁83のON/OFF制御、第2切替弁84のON/OFF制御、第3切替弁85のON/OFF制御、第1制御弁86の駆動制御、第2制御弁87の駆動制御を行うものである。従って、ECU90は、第1切替弁83によるPORT1の供給状態と排出状態との切り替え、第2切替弁84によるPORT2の供給状態と排出状態との切り替え、第3切替弁85によるPORT3の供給状態と排出状態との切り替え、第1制御弁86によるPORT3の排出状態時排出流量の制御、第2制御弁87によるPORT3の供給流量の制御を行うものである。つまり、ECU90は、油圧制御装置80により、ロックアップクラッチ50の係合状態と解放状態との切り替え、タービンクラッチ70の係合状態と解放状態との切り替えを行う。
ECU90は、油圧制御装置80により流体伝達装置1を6つの動作モードで作動させる。6つの動作モードは、第1動作モード(コンバータモード)、第2動作モード(ロックアップクラッチON、ダイナミックダンパーON)、第3動作モード(ロックアップクラッチON、ダイナミックダンパーOFF)、第4動作モード(フリーモード)、第5動作モード(ロックアップクラッチON(スリップ)、ダイナミックダンパーON)、第6動作モード(ロックアップクラッチON(スリップ)、ダイナミックダンパーOFF)である。図4〜図12は、動作モードの説明図である。ここで、以下、ロックアップクラッチ50を「L/U」、ダイナミックダンパー60を「D/D」と称する場合がある。
第1動作モード(コンバータモード)は、駆動力を流体伝達機構30により出力軸200に伝達する流体伝達状態である。第1動作モードは、図4に示すように、ECU90により、第1切替弁83をON、第2切替弁84をOFF、第3切替弁85をOFF、第1制御弁86をOFF、第2制御弁87をOFFに制御する。つまり、第1動作モードでは、油圧制御装置80によりPORT1が供給状態となり、PORT2が排出状態となり、PORT3が排出状態となる。従って、第1動作モードでは、PORT1とPORT2との圧力差、すなわちピストン部材40の入力側と出力側との圧力差により、図5に示すように、ピストン部材40が軸方向のうち出力側に移動し、タービン側クラッチ傾斜面32cとピストン側クラッチ傾斜面40cとが摩擦係合し、タービンクラッチ70が係合状態となる。また、第1動作モードでは、PORT1が供給状態であるので、フロントカバー20とピストン部材40との間から作動油が供給され、ロックアップクラッチ50が解放状態となる。これにより、第1動作モードでは、図4に示すように、ロックアップクラッチ50がOFFで、ダイナミックダンパー60がOFFとなる。ここで、第1動作モードでは、第1制御弁86がOFFで非制御状態なので、排出状態のPORT3における排出状態時排出流量は制御されていない。なお、第1動作モードでは、PORT1に供給された作動油は、フロントカバー20のフランジ部22とピストン部材40の径方向外側端部との間を通り、PORT3に流れ、PORT3から油圧制御装置80に排出される。従って、第1動作モードでは、作動油が流体伝達機構30で発生した熱を流体伝達機構30の外部に移動させることができる。
上記第1動作モード(コンバータモード)では、図5に示すように、ロックアップクラッチ50がOFFであるので、図示しないエンジンの駆動力は、プレダンパー10、フロントカバー20、ポンプ31、作動油、タービン32、タービンクラッチ70、ピストン部材40、ハブ93を介して出力軸200に伝達する。つまり、第1動作モードでは、流体伝達機構30を介して駆動力が出力軸200に伝達される。
第2動作モード(L/U=ON、D/D=ON)は、ダイナミックダンパー60の作動状態で駆動力を直接出力軸200に伝達するダンパー作動直接伝達状態である。第2動作モードは、図6に示すように、ECU90により、第1切替弁83をOFF、第2切替弁84をON、第3切替弁85をOFF、第1制御弁86をON、第2制御弁87をOFFに制御する。つまり、第2動作モードでは、油圧制御装置80によりPORT1が排出状態となり、PORT2が供給状態となり、PORT3が排出状態となる。従って、第2動作モードでは、PORT2とPORT1との圧力差、すなわちピストン部材40の出力側と入力側との圧力差により、図7に示すように、ピストン部材40が軸方向のうち入力側に移動し、カバー側クラッチ面21aと摩擦板51の摩擦面とが摩擦係合し、ロックアップクラッチ50が係合状態となる。また、第2動作モードでは、PORT2が供給状態であるので、タービン32とピストン部材40との間から作動油が供給され、タービンクラッチ70が解放状態となる。これにより、第2動作モードでは、図6に示すように、ロックアップクラッチ50がONで、ダイナミックダンパー60が作動、すなわちONとなる。ここで、第2動作モードでは、第1制御弁86がONで制御状態であり、排出状態のPORT3における排出状態時排出流量が制御される。ECU90は、第1制御弁86により排出状態のPORT3における排出状態時排出流量、すなわちPORT3における圧力をPORT2における圧力がPORT3における圧力以上となるように制御する。従って、第2動作モードでは、ロックアップクラッチ50は、フロントカバー20とピストン部材40との間に回転差が発生しない完全係合状態となる。
上記第2動作モード(L/U=ON、D/D=ON)では、図7に示すように、ロックアップクラッチ50がONであるので、図示しないエンジンの駆動力は、プレダンパー10、フロントカバー20、ロックアップクラッチ50、ピストン部材40、ハブ93を介して出力軸200に伝達する。つまり、第2動作モードでは、流体伝達機構30を介さずに駆動力が出力軸200に直接伝達される。
また、上記第2動作モードでは、ダイナミックダンパー60がONであるので、タービン32がダイナミックダンパー60により弾性支持され、エンジン回転数に対応する振動は、プレダンパー10、フロントカバー20、ロックアップクラッチ50、ピストン部材40、ダイナミックダンパー60、タービン32に伝達する。従って、エンジン回転数が特定回転数領域の場合に、ダイナミックダンパー60をONすることで、エンジンの特定回転数領域における共振を逆位相で押さえ込むこととなる。これにより、エンジン回転数が特定回転数領域であると、ダイナミックダンパー60がONとなることで、エンジンの特定回転数領域に対応する振動を抑制することができる。
第3動作モード(L/U=ON、D/D=OFF)は、ダイナミックダンパー60の非作動状態で駆動力を直接出力軸200に伝達するダンパー非作動直接伝達状態である。第3動作モードは、図8に示すように、ECU90により、第1切替弁83をOFF、第2切替弁84をOFF、第3切替弁85をON、第1制御弁86をOFF、第2制御弁87をOFFに制御する。つまり、第3動作モードでは、油圧制御装置80によりPORT1が排出状態となり、PORT2が排出状態となり、PORT3が供給状態となる。従って、第3動作モードでは、PORT3とPORT2とPORT1との圧力差、すなわちタービン32の出力側と、ピストン部材40の出力側と、ピストン部材40の入力側との圧力差により、図9に示すように、タービン32およびピストン部材40が軸方向のうち入力側に移動し、タービン側クラッチ傾斜面32cとピストン側クラッチ傾斜面40cとが摩擦係合するとともに、カバー側クラッチ面21aと摩擦板51の摩擦面とが摩擦係合し、ロックアップクラッチ50およびタービンクラッチ70が係合状態となる。これにより、第3動作モードでは、図8に示すように、ロックアップクラッチ50がONで、ダイナミックダンパー60が非作動、すなわちOFFとなる。ここで、第3動作モードでは、第2制御弁87がOFFで非制御状態なので、供給状態のPORT3における供給流量は制御されていない。
上記第3動作モード(L/U=ON、D/D=OFF)では、図9に示すように、ロックアップクラッチ50がONであるので、図示しないエンジンの駆動力は、プレダンパー10、フロントカバー20、ロックアップクラッチ50、ピストン部材40、ハブ93を介して出力軸200に伝達する。つまり、第3動作モードでは、流体伝達機構30を介さずに駆動力が出力軸200に直接伝達される。
また、上記第3動作モードでは、ダイナミックダンパー60がOFFであるので、タービン32がダイナミックダンパー60により弾性支持されない。従って、エンジン回転数が特定回転数領域でない場合に、ダイナミックダンパー60をOFFすることで、エンジン回転数がダイナミックダンパー60により振動が悪化する回転数領域となると、ダイナミックダンパー60がOFFとなる。これにより、エンジンの特定回転数領域でない回転数領域においてダイナミックダンパー60により振動が悪化することを抑制することができる。つまり、ダイナミックダンパー60は、エンジンの特定回転数領域に対応する振動を抑制する際のみに作動することができる。
第4動作モード(フリー動作モード)は、図10に示すように、ECU90により、第1切替弁83をON、第2切替弁84をON、第3切替弁85をON、第1制御弁86をOFF、第2制御弁87をOFFに制御する。または、ECU90により、第1切替弁83をOFF、第2切替弁84をOFF、第3切替弁85をOFF、第1制御弁86をOFF、第2制御弁87をOFFに制御する。また、ECU90により、第1切替弁83をON、第2切替弁84をON、第3切替弁85をOFF、第1制御弁86をOFF、第2制御弁87をOFFに制御する。つまり、第4動作モードでは、油圧制御装置80によりPORT1が供給状態となり、PORT2が供給状態となり、PORT3が供給状態となる。または、油圧制御装置80によりPORT1が排出状態となり、PORT2が排出状態となり、PORT3が排出状態となる。または、油圧制御装置80によりPORT1が供給状態となり、PORT2が供給状態となり、PORT3が排出状態となる。従って、第4動作モードでは、ロックアップクラッチ50およびタービンクラッチ70が解放状態となる。これにより、第4動作モードでは、ロックアップクラッチ50がOFFで、ダイナミックダンパー60がONとなる。
上記第4動作モード(フリー動作モード)では、図1に示すように、ロックアップクラッチ50がOFFでダイナミックダンパー60がONであるので、図示しないエンジンの駆動力は、プレダンパー10、フロントカバー20、ポンプ31、作動油、タービン32、ダイナミックダンパー60、ピストン部材40、ハブ93を介して出力軸200に伝達する。つまり、第4動作モードでは、流体伝達機構30およびダイナミックダンパー60を介して駆動力が出力軸200に伝達される。
第5動作モード(L/U=スリップ、D/D=ON)は、ダンパー作動直接伝達状態である。第5動作モードは、図11に示すように、ECU90により、第1切替弁83をOFF、第2切替弁84をON、第3切替弁85をOFF、第1制御弁86をON、第2制御弁87をOFFに制御する。つまり、第5動作モードでは、油圧制御装置80によりPORT1が排出状態となり、PORT2が供給状態となり、PORT3が排出状態となる。従って、第5動作モードでは、PORT2とPORT1との圧力差、すなわちピストン部材40の出力側と入力側との圧力差により、図7に示すように、ピストン部材40が軸方向のうち入力側に移動し、カバー側クラッチ面21aと摩擦板51の摩擦面とが摩擦係合し、ロックアップクラッチ50が係合状態となる。また、第5動作モードでは、PORT2が供給状態であるので、タービン32とピストン部材40との間から作動油が供給され、タービンクラッチ70が解放状態となる。これにより、第5動作モードでは、図11に示すように、ロックアップクラッチ50がONで、ダイナミックダンパー60がONとなる。ここで、第5動作モードでは、第1制御弁86がONで制御状態であり、排出状態のPORT3における排出状態時排出流量が制御される。ECU90は、第1制御弁86により排出状態のPORT3における排出状態時排出流量、すなわちPORT3における圧力をフロントカバー20とピストン部材40との間に回転差が発生するように制御する。従って、第5動作モードでは、ロックアップクラッチ50は、フロントカバー20とピストン部材40との間に回転差が発生するスリップ係合状態となる。ここで、ECU90は、第1制御弁86により、ロックアップクラッチ50によるスリップ量を制御する。なお、上述のように、ロックアップクラッチ50は、第1制御弁86によりスリップ係合状態と完全係合状態とに切り替えられる。つまり、PORT2の圧力を制御せずに、PORT3の圧力を制御することで、ロックアップクラッチ50をスリップ係合状態と完全係合状態とに切り替えることができる。これにより、PORT2の圧力を制御するための制御弁を必要としないので、部品点数の削減を図ることができる。
上記第5動作モード(L/U=スリップ、D/D=ON)では、図7に示すように、ロックアップクラッチ50がONであるので、図示しないエンジンの駆動力は、プレダンパー10、フロントカバー20、ロックアップクラッチ50、ピストン部材40、ハブ93を介して出力軸200に伝達する。つまり、第5動作モードでは、流体伝達機構30を介さずに駆動力が出力軸200に直接伝達され、駆動力がスリップ量に基づいた効率で出力軸200に伝達される。
また、上記第5動作モードでは、ダイナミックダンパー60がONであるので、タービン32がダイナミックダンパー60により弾性支持され、図示しないエンジンのエンジン回転数に対応する振動は、プレダンパー10、フロントカバー20、ロックアップクラッチ50、ピストン部材40、ダイナミックダンパー60、タービン32に伝達する。従って、上記第2動作モードと同様に、エンジン回転数が特定回転数領域の場合に、ダイナミックダンパー60をONとすることで、エンジンの特定回転数領域に対応する振動を抑制することができる。さらに、ロックアップクラッチ50がスリップ係合状態であるので、フロントカバー20とピストン部材40とのスリップによりエンジンの特定回転数領域に対応する振動のレベルを下げることができる。
第6動作モード(L/U=スリップ、D/D=OFF)は、ダンパー非作動直接伝達状態である。第6動作モードは、図12に示すように、ECU90により、第1切替弁83をOFF、第2切替弁84をOFF、第3切替弁85をON、第1制御弁86をOFF、第2制御弁87をONに制御する。つまり、第6動作モードでは、油圧制御装置80によりPORT1が排出状態となり、PORT2が排出状態となり、PORT3が供給状態となる。従って、第6動作モードでは、PORT3とPORT2とPORT1との圧力差、すなわちタービン32の出力側と、ピストン部材40の出力側と、ピストン部材40の入力側との圧力差により、図9に示すように、タービン32およびピストン部材40が軸方向のうち入力側に移動し、タービン側クラッチ傾斜面32cとピストン側クラッチ傾斜面40cとが摩擦係合するとともに、カバー側クラッチ面21aと摩擦板51の摩擦面とが摩擦係合し、ロックアップクラッチ50およびタービンクラッチ70が係合状態となる。これにより、第6動作モードでは、図12に示すように、ロックアップクラッチ50がONで、ダイナミックダンパー60がOFFとなる。ここで、第6動作モードでは、第2制御弁87がONで制御状態であり、供給状態のPORT3における供給流量が制御される。ECU90は、第2制御弁87により供給状態のPORT3における供給流量、すなわちPORT3における圧力をフロントカバー20とピストン部材40との間に回転差が発生するように制御する。従って、第6動作モードでは、ロックアップクラッチ50は、フロントカバー20とピストン部材40との間に回転差が発生するスリップ係合状態となる。ここで、ECU90は、第2制御弁87により、ロックアップクラッチ50によるスリップ量を制御する。
上記第6動作モード(L/U=スリップ、D/D=OFF)では、図9に示すように、ロックアップクラッチ50がONであるので、図示しないエンジンの駆動力は、プレダンパー10、フロントカバー20、ロックアップクラッチ50、ピストン部材40、ハブ93を介して出力軸200に伝達する。つまり、第6動作モードでは、流体伝達機構30を介さずに駆動力が出力軸200に直接伝達され、駆動力がスリップ量に基づいた効率で出力軸200に伝達される。
また、上記第6動作モードでは、ダイナミックダンパー60がOFFであるので、タービン32がダイナミックダンパー60により弾性支持されない。従って、上記第3動作モードと同様に、エンジン回転数が特定回転数領域でない場合に、ダイナミックダンパー60をOFFとすることで、エンジンの特定回転数領域でない回転数領域においてダイナミックダンパー60により振動が悪化することを抑制することができる。さらに、ロックアップクラッチ50がスリップ係合状態であるので、フロントカバー20とピストン部材40とのスリップによりエンジンの回転数に対応する振動のレベルを下げることができる。
ここで、ECU90は、実施の形態では、図示しないエンジンに供給される吸入空気量を制御する図示しないスロットル弁のスロットル開度(%)と、エンジン回転数(rpm)と、図示しない変速機の変速段とを取得し、取得したスロットル開度と、エンジン回転数と、変速段と、図示しない記憶部に予め設定されている動作マップとに基づいて、ロックアップクラッチ50の係合状態と解放状態との切り替え、タービンクラッチ70の係合状態と解放状態との切り替えを行う。ここで、動作マップは、スロットル開度とエンジン回転数と、ロックアップクラッチ50の係合状態と解放状態との切り替えと、タービンクラッチ70の係合状態と解放状態との切り替えとの関係に基づいて設定される。また、動作マップは、図示しない変速機の変速段ごとに設定されている。つまり、ECU90は、取得されたスロットル開度と、エンジン回転数と、取得された変速段に対応する動作マップとに基づいて、上記6つの動作モードを切り替える。なお、スロットル開度、エンジン回転数、変速段は、周知の技術により取得可能なので、取得方法の詳細は省略する。また、ECU90は、エンジンの負荷状態を示すパラメータを取得すれば良いので、スロットル開度のかわりに運転者が操作する図示しないアクセルペダルのアクセル開度を取得しても良い。ここで、図示しないエンジンおよび流体伝達装置1が搭載されている車両は、制動手段、すなわち車両の図示しない駆動輪に制動力を作用させることができるものを備える。制動手段には、例えば油圧ブレーキ装置、モータやオルタネータなどの発電機などがある。ECU90は、制動手段による制動時、すなわち制動手段により駆動輪に制動力を作用させる時に出力値が変化して出力されるブレーキ信号を取得するものでもある。
図13は、動作マップを示す図である。変速段ごとの動作マップは、例えば、同図に示すように、コンバータ領域と、ロックアップ領域と、スリップ領域とに区分けされている。ECU90は、基本的には、取得されたスロットル開度とエンジン回転数とに基づいた上記領域に対応した動作モードで流体伝達装置1を作動させる。コンバータ領域は、流体伝達状態の領域である。従って、ECU90は、コンバータ領域では、第1動作モードで流体伝達装置1を作動させる。ロックアップ領域は、ロックアップクラッチ50が完全係合状態での直接伝達状態の領域である。従って、ECU90は、ロックアップ領域では、第2動作モードあるいは第3動作モードで流体伝達装置1を作動させる。スリップ領域は、ロックアップクラッチ50がスリップ係合状態での直接伝達状態の領域である。従って、ECU90は、スリップ領域では、第5動作モードあるいは第6動作モードで流体伝達装置1を作動させる。なお、コンバータ領域では、タービンクラッチ70を常に係合状態とし、ダイナミックダンパー60を非作動とする。
ここで、Aは、ロックアップクラッチ完全係合線であり、ロックアップクラッチ50を解放状態あるいはスリップ係合状態から完全係合状態とするか否かを判断するものである。ECU90は、ロックアップクラッチ50が解放状態あるいはスリップ係合状態の動作モード(第1動作モード、第5動作モード、第6動作モード)からロックアップクラッチ完全係合線Aを跨ぐようにスロットル開度あるいはエンジン回転数が変化してロックアップ領域となった場合に、動作モードをロックアップクラッチ50が完全係合状態の動作モード(第2動作モード、第3動作モード)に切り替えて、流体伝達装置1を作動させる。また、Bは、ロックアップクラッチ解放線であり、ロックアップクラッチ50を完全係合状態から解放状態あるいはスリップ係合状態とするか否かを判断するものである。ECU90は、ロックアップクラッチ50が完全係合状態の動作モード(第2動作モード、第3動作モード)からロックアップクラッチ解放線Bを跨ぐようにスロットル開度あるいはエンジン回転数が変化してスリップ領域あるいはコンバータ領域となった場合に、動作モードをロックアップクラッチ50がスリップ係合状態あるいは解放状態である動作モード(第5動作モード、第6動作モード、第1動作モード)に切り替えて、流体伝達装置1を作動させる。
また、C1は、タービンクラッチ解放線であり、タービンクラッチ70を係合状態から解放状態とするか否か、すなわちダイナミックダンパー60を作動するか否かを判断するものである。タービンクラッチ解放線C1は、第1タービンクラッチ解放回転数Ne1に設定されており、スロットル開度に拘わらずエンジン回転数が第1タービンクラッチ解放回転数Ne1以上となるとタービンクラッチ70を解放状態とし、ダイナミックダンパー60を作動する。実施の形態では、第1タービンクラッチ解放回転数Ne1は、コンバータ領域とスリップ領域との境界に設定されている。従って、ECU90は、コンバータ領域から少なくともエンジン回転数が第1タービンクラッチ解放回転数Ne1以上に変化して、スリップ領域となる場合に、タービンクラッチ70が係合状態の動作モードである第1動作モードからタービンクラッチ70が解放状態の動作モードである第5動作モードに切り替えて、流体伝達装置1を作動させる。
また、D1は、タービンクラッチ係合線であり、タービンクラッチ70を解放状態から係合状態とするか否か、すなわちダイナミックダンパー60を非作動とするか否かを判断するものである。タービンクラッチ解放線D1は、第1タービンクラッチ係合回転数Ne3に設定されており、スロットル開度に拘わらずエンジン回転数が第1タービンクラッチ係合回転数Ne3以上となるとタービンクラッチ70を係合状態とし、ダイナミックダンパー60を非作動とする。実施の形態では、第1タービンクラッチ係合回転数Ne3は、ロックアップ領域内に設定されている。従って、ECU90は、ロックアップ領域において少なくともエンジン回転数が第1タービンクラッチ係合回転数Ne3以上に変化した場合に、タービンクラッチ70が解放状態の動作モードである第2動作モードからタービンクラッチ70が係合状態の動作モードである第3動作モードに切り替えて、流体伝達装置1を作動させる。
また、C2は、タービンクラッチ解放線であり、タービンクラッチ70を係合状態から解放状態とするか否か、すなわちダイナミックダンパー60を作動するか否かを判断するものである。タービンクラッチ解放線C2は、第2タービンクラッチ解放回転数Ne2に設定されており、スロットル開度に拘わらずエンジン回転数が第2タービンクラッチ解放回転数Ne2以下となるとタービンクラッチ70を解放状態とし、ダイナミックダンパー60を作動する。実施の形態では、第2タービンクラッチ解放回転数Ne2は、ロックアップ領域(ロックアップクラッチ完全係合線Aとロックアップクラッチ解放線Bとの間の領域を含む)内およびスリップ領域内に設定されている。従って、ECU90は、ロックアップ領域あるいはスリップ領域において少なくともエンジン回転数が第2タービンクラッチ解放回転数Ne2以下に変化した場合に、タービンクラッチ70が係合状態の動作モード(第3動作モード、第6動作モード)からタービンクラッチ70が解放状態の動作モード(第2動作モード、第5動作モード)に切り替えて、流体伝達装置1を作動させる。
また、D2は、タービンクラッチ係合線であり、タービンクラッチ70を解放状態から係合状態とするか否か、すなわちダイナミックダンパー60を非作動とするか否かを判断するものである。タービンクラッチ係合線D2は、第2タービンクラッチ係合回転数Ne4に設定されており、スロットル開度に拘わらずエンジン回転数が第2タービンクラッチ係合回転数Ne4以下となるとタービンクラッチ70を係合状態とし、ダイナミックダンパー60を非作動とする。実施の形態では、第2タービンクラッチ係合回転数Ne4は、スリップ領域(タービンクラッチ解放線C1とタービンクラッチ係合線D2との間の領域を含む)とコンバータ領域との境界に設定されている。従って、ECU90は、スリップ領域から少なくともエンジン回転数が第2タービンクラッチ係合回転数Ne4以上に変化して、コンバータ領域となる場合に、タービンクラッチ70が解放状態の動作モードである第5動作モードからタービンクラッチ70が係合状態の動作モードである第1動作モードに切り替えて、流体伝達装置1を作動させる。
ここで、第1タービンクラッチ解放回転数Ne1と第2タービンクラッチ係合回転数Ne4とは、異なるように設定されている。第2タービンクラッチ係合回転数Ne4は、第1タービンクラッチ解放回転数Ne1より低く設定されている。また、第2タービンクラッチ解放回転数Ne2と第1タービンクラッチ係合回転数Ne3とは、異なるように設定されている。第1タービンクラッチ係合回転数Ne3は、第2タービンクラッチ解放回転数Ne2より高く設定されている。従って、タービンクラッチ70を係合状態とする係合回転数と、解放状態とする解放回転数とが同一回転数でないため、係合回転数と解放回転数とが同一回転数の場合と比較して、エンジン回転数の微小変化によりタービンクラッチ70の係合状態と解放状態とが繰り返されることを抑制することができる。つまり、エンジン回転数の微小変化によりダイナミックダンパー60の作動と非作動とが繰り返されることを抑制することができる。これにより、走行フィーリングを向上することができる。なお、実施の形態では、係合回転数と解放回転数とを異ならせたが同一回転数であっても良い。つまり、第1タービンクラッチ解放回転数Ne1と第2タービンクラッチ係合回転数Ne4とが同一回転数、第2タービンクラッチ解放回転数Ne2と第1タービンクラッチ係合回転数Ne3とが同一回転数であっても良い。
また、第1タービンクラッチ解放回転数Ne1および第2タービンクラッチ解放回転数Ne2は、第1タービンクラッチ解放回転数Ne1と第2タービンクラッチ解放回転数Ne2との間が特定回転数領域となるように設定されている。つまり、タービンクラッチ70が解放状態で、ダイナミックダンパー60が作動するエンジン回転数が特定回転数領域となる。
以上のように、実施の形態にかかる流体伝達装置1では、クランクシャフト100とフロントカバー20との間にプレダンパー10が設けられ、タービンクラッチ70により作動あるいは非作動とすることができ、作動時にタービン32を弾性支持するダイナミックダンパー60が設けられている。図14は、エンジン回転数とこもり音との関係を示す図である。ここで、同図に示すEは、プレダンパーをフロントカバーと流体伝達機構との間に設けた流体伝達装置のエンジン回転数とこもり音との関係を示す線である。同図に示すFは、プレダンパーをクランクシャフトとフロントカバーとの間に設けた流体伝達装置のエンジン回転数とこもり音との関係を示す線である。同図に示すGは、プレダンパーをクランクシャフトとフロントカバーとの間に設け、エンジン回転数に拘わらず常に作動しているダイナミックダンパーを設けた流体伝達装置のエンジン回転数とこもり音との関係を示す線である。同図に示すHは、実施の形態にかかる流体伝達装置1のエンジン回転数とこもり音との関係を示す線である。また、こもり音(dB)は、エンジン回転数に対応する振動により室内に発生するものである。
プレダンパーをクランクシャフトとフロントカバーとの間に設けた流体伝達装置の場合は、フロントカバーと流体伝達機構との間に設けた流体伝達装置の場合と比較して、プレダンパーの入力側の慣性質量と出力側の慣性質量とのバランスを向上させることができる。従って、プレダンパーをクランクシャフトとフロントカバーとの間に設けた流体伝達装置に対応する同図のF,G,Hに示すように、プレダンパーをフロントカバーと流体伝達機構との間に設けた流体伝達装置に対応する同図のEと比較して、エンジン回転数に対応した共振点を下げることができ、エンジン回転数に対応する振動を抑制できる。これにより、全体的にこもり音などの振動の低減を図ることができる。
また、ダイナミックダンパーを設けた流体伝達装置の場合は、エンジン回転数が特定回転数領域の場合に、エンジンの特定回転数領域における共振を逆位相で押さえ込むことができる。従って、ダイナミックダンパーを設けた流体伝達装置に対応する同図のG,Hに示すように、エンジンの特定回転数領域に対応する振動を抑制することができる。これにより、局所的にこもり音などの振動の低減を図ることができる。
さらに、ダイナミックダンパー60を特定回転数領域において作動させ他の回転数領域において作動させない実施の形態にかかる流体伝達装置1の場合は、特定回転数領域でない場合にタービンクラッチ70を係合状態とし、非作動とすることができる。従って、実施の形態にかかる流体伝達装置1に対応する同図のHに示すように、ダイナミックダンパーが常に作動する流体伝達装置に対応する同図のGと比較して、ダイナミックダンパーにより振動が悪化する回転数領域においてこもり音などの振動の悪化を抑制することができる。つまり、実施の形態にかかる流体伝達装置1では、ダイナミックダンパー60をエンジンの特定回転数領域に対応する振動を抑制する際のみに作動させることができ、エンジンの回転数がダイナミックダンパー60により振動が悪化する回転数領域となる前に非作動とするので、タービンクラッチ70の係合、解放により、ダイナミックダンパー60の作動、非作動を任意に制御することで、ダイナミックダンパー60を効果的に使用することができる。これにより、局所的および全体的に、こもり音などの振動の低減を図ることができ、エンジンの回転数が低回転数領域であってもロックアップクラッチ50を係合状態とすることができ、燃費を向上することができる。
また、本発明にかかる流体伝達装置1は、PORT1、PORT2、PORT3の圧力を制御することで、ロックアップクラッチ50の状態(スリップ係合状態、完全係合状態、解放状態)およびタービンクラッチ70の状態(係合状態、解放状態)を制御することができる。従って、簡単な構成で、流体伝達装置1を複数の動作モードで作動させることができる。
次に、実施の形態にかかる流体伝達装置1の制御方法について説明する。図15は、実施の形態にかかる流体伝達装置の制御フローを示す図である。図16〜図23は、動作モード移行時における中間制御を示す図である。なお、流体伝達装置1の制御は、制御周期ごとに繰り返し実行されるものである。
まず、ECU90は、ブレーキ信号を取得する(ステップST1)。
次に、ECU90は、取得したブレーキ信号に基づいて、図示しない車両が制動時であるか否かを判断する(ステップST2)。
次に、ECU90は、図示しない車両が制動時でないと判定する(ステップST2否定)と、スロットル開度、エンジン回転数、変速段、前回の動作モードを取得する(ステップST3)。ここで、前回の動作モードは、前回の制御周期において決定された動作モードであり、図示しない記憶部に予め記憶されているものである。
次に、ECU90は、取得した変速段に基づいて動作マップを取得する(ステップST4)。ここでは、ECU90は、図示しない記憶部に予め記憶されている各変速段に対応する複数の動作マップのうち、取得された変速段に対応する動作マップを取得する。
次に、ECU90は、動作モードを決定する(ステップST5)。ここでは、ECU90は、取得されたスロットル開度、エンジン回転数、前回の動作モード、動作マップに基づいて動作モードを決定する。ECU90は、前回の動作モードから前回のロックアップクラッチ50の状態(完全係合状態、スリップ係合状態、解放状態)および前回のタービンクラッチ70の状態(係合状態、解放状態)を取得し、取得されたスロットル開度、エンジン回転数、動作マップからロックアップクラッチ50の状態およびタービンクラッチ70の状態の切り替えが必要な場合は切り替えることとなるので、前回の動作モードと異なる動作モードを決定する。
次に、ECU90は、中間制御が必要か否かを判定する(ステップST6)。ここでは、ECU90は、決定された動作モードが前回の動作モードと異なる動作モードである場合は、動作モードを切り替える際に、中間動作を流体伝達装置1に行わせる中間制御が必要か否かを判定する。なお、中間制御は、ロックアップクラッチ50の係合応答性などの制御性を向上するために行われる。
次に、ECU90は、中間制御が必要であると判定する(ステップST6肯定)と、中間制御を実行する(ステップST7)。中間制御は、流体伝達状態からダンパー作動直接伝達状態に移行する場合、ダンパー作動直接伝達状態から流体伝達状態に移行する場合、流体伝達状態からダンパー非作動直接伝達状態に移行する場合、ダンパー非作動直接伝達状態から流体伝達状態に移行する場合に実行される。
次に、ECU90は、中間制御の実行後、決定した動作モードで流体伝達装置1を作動する(ステップST8)。以下に、中間制御を実行する動作モードの切り替えと、動作モードの切り替えごとの中間制御について説明する。
決定された動作モードが第5動作モードであり、第1動作モードから切り替える場合(以下、単に「1−5切り替え」と称する)には、中間制御を行う。1−5切り替えでは、図16に示すように、第1動作モードから第1中間動作、第2中間動作で流体伝達装置1を作動した後、第5動作モードに切り替える。第1中間動作は、ECU90により、第1切替弁83をON、第2切替弁84をON、第3切替弁85をOFF、第1制御弁86をOFF、第2制御弁87をOFFに制御する。つまり、第1中間動作では、油圧制御装置80によりPORT1が供給状態となり、PORT2が供給状態となり、PORT3が排出状態となる。また、第2中間動作は、ECU90により、第1切替弁83をON、第2切替弁84をON、第3切替弁85をOFF、第1制御弁86をON、第2制御弁87をOFFに制御する。つまり、第2中間動作では、油圧制御装置80によりPORT1が供給状態となり、PORT2が供給状態となり、PORT3が排出状態となる。ここで、第2中間動作では、第1制御弁86がONで制御状態とし、ECU90がフロントカバー20とピストン部材40との間に回転差が発生するように、排出状態のPORT3における排出状態時排出流量を第1制御弁86により制御し、ロックアップクラッチ50をスリップ係合状態とする。従って、1−5切り替えにおける中間制御は、流体伝達状態からダンパー作動直接伝達状態に移行する場合に、ダンパー作動直接伝達状態に移行する前、すなわち第5動作モードに移行する前に予めPORT2を供給状態とする制御を行うものである。これにより、第5動作モードに移行する前に、PORT2を供給状態とすることで、タービンクラッチ70が確実に解放状態となり、ロックアップクラッチ50がスリップ係合状態となるとすぐにダイナミックダンパー60を作動することができ、走行フィーリングを向上することができ、燃費を向上することができる。また、上記中間制御を行うことで、ピストン部材40が出力側に移動するので、ロックアップクラッチ50の係合応答性を向上することができる。なお、1−5切り替えは、例えば、スリップ係合によりエンジンの特定回転数領域に対応する振動のレベルを下げるとともに、ダイナミックダンパー60によりエンジンの特定回転数領域に対応する振動を抑制することが有効な場合に用いられるものである。
決定された動作モードが第2動作モードであり、第1動作モードから切り替える場合(以下、単に「1−2切り替え」と称する)には、中間制御を行う。1−2切り替えでは、図17に示すように、第1動作モードから第3中間動作、第4中間動作で流体伝達装置1を作動した後、第2動作モードに切り替える。第3中間動作は、ECU90により、第1切替弁83をON、第2切替弁84をON、第3切替弁85をOFF、第1制御弁86をOFF、第2制御弁87をOFFに制御する。つまり、第3中間動作では、油圧制御装置80によりPORT1が供給状態となり、PORT2が供給状態となり、PORT3が排出状態となる。また、第4中間動作は、ECU90により、第1切替弁83をON、第2切替弁84をON、第3切替弁85をOFF、第1制御弁86をON、第2制御弁87をOFFに制御する。つまり、第4中間動作では、油圧制御装置80によりPORT1が供給状態となり、PORT2が供給状態となり、PORT3が排出状態となる。ここで、第4中間動作では、第1制御弁86がONで制御状態とし、ECU90がフロントカバー20とピストン部材40との間に回転差が発生しないように、排出状態のPORT3における排出状態時排出流量を第1制御弁86により制御し、ロックアップクラッチ50を完全係合状態とする。従って、1−2切り替えにおける中間制御は、流体伝達状態からダンパー作動直接伝達状態に移行する場合に、ダンパー作動直接伝達状態に移行する前、すなわち第2動作モードに移行する前に予めPORT2を供給状態とする制御を行うものである。これにより、第2動作モードに移行する前に、PORT2を供給状態とすることで、タービンクラッチ70が確実に解放状態となり、ロックアップクラッチ50が完全係合状態となるとすぐにダイナミックダンパー60を作動させることができ、走行フィーリングを向上することができ、燃費を向上することができる。また、上記中間制御を行うことで、ピストン部材40が出力側に移動するので、ロックアップクラッチ50の係合応答性を向上することができる。なお、1−2切り替えは、例えば、ダイナミックダンパー60によりエンジンの特定回転数領域に対応する振動を抑制することが有効な場合に用いられるものである。
決定された動作モードが第1動作モードであり、第2動作モードから切り替える場合(以下、単に「2−1切り替え」と称する)には、中間制御を行う。2−1切り替えでは、図18に示すように、第2動作モードから第5中間動作で流体伝達装置1を作動した後、第1動作モードに切り替える。第5中間動作は、ECU90により、第1切替弁83をOFF、第2切替弁84をOFF、第3切替弁85をON、第1制御弁86をOFF、第2制御弁87をOFFに制御する。つまり、第5中間動作では、油圧制御装置80によりPORT1が排出状態となり、PORT2が排出状態となり、PORT3が供給状態となる。従って、2−1切り替えにおける中間制御は、ダンパー作動直接伝達状態から流体伝達状態に移行する場合に、流体伝達状態に移行する前、すなわち第1動作モードに移行する前に予めPORT2を排出状態とする制御を行うものである。これにより、第1動作モードに移行する前に、PORT2を排出状態とすることで、タービンクラッチ70が確実に係合状態となり、タービンクラッチ70が係合状態となった後にロックアップクラッチ50が解放状態となるので、ロックアップクラッチ50が解放状態となる前に、タービンクラッチ70が係合状態となることで、タービン32に伝達された駆動力がダイナミックダンパー60に作用することを抑制することができ、過大なトルクがダイナミックダンパー60、特に第2ダンパーバネ63に作用することを抑制することができ、信頼性を向上することができ、ショックを抑制することができる。なお、2−1切り替えは、例えば、スロットル開度が大きくなるなどによりエンジン回転数に対応する振動が増加し、流体伝達状態によりエンジン回転数に対応する振動を吸収することが有効な場合に用いられるものである。
決定された動作モードが第1動作モードであり、第5動作モードから切り替える場合(以下、単に「5−1切り替え」と称する)には、中間制御を行う。5−1切り替えでは、図19に示すように、第5動作モードから第6中間動作、第7中間動作で流体伝達装置1を作動した後、第1動作モードに切り替える。第6中間動作は、ECU90により、第1切替弁83をOFF、第2切替弁84をON、第3切替弁85をON、第1制御弁86をOFF、第2制御弁87をOFFに制御する。つまり、第6中間動作では、油圧制御装置80によりPORT1が排出状態となり、PORT2が供給状態となり、PORT3が供給状態となる。第7中間動作は、ECU90により、第1切替弁83をON、第2切替弁84をOFF、第3切替弁85をON、第1制御弁86をOFF、第2制御弁87をOFFに制御する。つまり、第7中間動作では、油圧制御装置80によりPORT1が供給状態となり、PORT2が排出状態となり、PORT3が供給状態となる。従って、5−1切り替えにおける中間制御は、ダンパー作動直接伝達状態から流体伝達状態に移行する場合に、流体伝達状態に移行する前、すなわち第1動作モードに移行する前に予めPORT2を排出状態とする制御を行うものである。これにより、第1動作モードに移行する前に、PORT2を排出状態とすることで、タービンクラッチ70が確実に係合状態となり、タービンクラッチ70が係合状態となった後にロックアップクラッチ50が解放状態となるので、ロックアップクラッチ50が解放状態となる前に、タービンクラッチ70が係合状態となることで、タービン32に伝達された駆動力がダイナミックダンパー60に作用することを抑制することができ、過大なトルクがダイナミックダンパー60、特に第2ダンパーバネ63に作用することを抑制することができ、信頼性を向上することができ、ショックを抑制することができる。なお、5−1切り替えは、例えば、スロットル開度が大きくなるなどによりエンジン回転数に対応する振動が増加し、流体伝達状態によりエンジン回転数に対応する振動を吸収することが有効な場合に用いられるものである。
決定された動作モードが第6動作モードであり、第1動作モードから切り替える場合(以下、単に「1−6切り替え」と称する)には、中間制御を行う。1−6切り替えでは、図20に示すように、第1動作モードから第8中間動作で流体伝達装置1を作動した後、第6動作モードに切り替える。第8中間動作は、ECU90により、第1切替弁83をON、第2切替弁84をOFF、第3切替弁85をON、第1制御弁86をOFF、第2制御弁87をOFFに制御する。つまり、第8中間動作では、油圧制御装置80によりPORT1が供給状態となり、PORT2が排出状態となり、PORT3が供給状態となる。従って、1−6切り替えにおける中間制御は、流体伝達状態からダンパー非作動直接伝達状態に移行する場合に、ダンパー非作動直接伝達状態に移行する前、すなわち第6動作モードに移行する前に予めPORT3を供給状態とする制御を行うものである。これにより、第6動作モードに移行する前に、PORT3を供給状態とすることで、タービンクラッチ70が確実に係合状態となり、ダイナミックダンパー60が非作動となるとすぐにロックアップクラッチ50をスリップ係合状態とすることができ、走行フィーリングを向上することができ、燃費を向上することができる。また、上記中間制御を行うことで、タービン32およびピストン部材40が入力側に移動するので、ロックアップクラッチ50の係合応答性を向上することができる。さらに、ロックアップクラッチ50をスリップ係合状態とする前に、タービンクラッチ70が係合状態であるので、タービン32に伝達された駆動力がダイナミックダンパー60に作用することを抑制することができ、過大なトルクがダイナミックダンパー60、特に第2ダンパーバネ63に作用することを抑制することができ、信頼性を向上することができ、ショックを抑制することができる。なお、1−6切り替えは、例えば、スロットル開度が小さくなるなどにより、ロックアップクラッチ50のスリップ係合状態での効率向上が有効な場合に用いられるものである。
決定された動作モードが第3動作モードであり、第1動作モードから切り替える場合(以下、単に「1−3切り替え」と称する)には、中間制御を行う。1−3切り替えでは、図21に示すように、第1動作モードから第9中間動作で流体伝達装置1を作動した後、第3動作モードに切り替える。第9中間動作は、ECU90により、第1切替弁83をON、第2切替弁84をOFF、第3切替弁85をON、第1制御弁86をOFF、第2制御弁87をOFFに制御する。つまり、第9中間動作では、油圧制御装置80によりPORT1が供給状態となり、PORT2が排出状態となり、PORT3が供給状態となる。従って、1−3切り替えにおける中間制御は、流体伝達状態からダンパー非作動直接伝達状態に移行する場合に、ダンパー非作動直接伝達状態に移行する前、すなわち第3動作モードに移行する前に予めPORT3を供給状態とする制御を行うものである。これにより、第6動作モードに移行する前に、PORT3を供給状態とすることで、タービンクラッチ70が確実に係合状態となり、ダイナミックダンパー60が非作動となるとすぐにロックアップクラッチ50を完全係合状態とすることができ、走行フィーリングを向上することができ、燃費を向上することができる。また、上記中間制御を行うことで、タービン32およびピストン部材40が入力側に移動するので、ロックアップクラッチ50の係合応答性を向上することができる。さらに、ロックアップクラッチ50を完全係合状態とする前に、タービンクラッチ70が係合状態であるので、タービン32に伝達された駆動力がダイナミックダンパー60に作用することを抑制することができ、過大なトルクがダイナミックダンパー60、特に第2ダンパーバネ63に作用することを抑制することができ、信頼性を向上することができ、ショックを抑制することができる。なお、1−3切り替えは、例えば、スロットル開度が小さくなるなどによりエンジンのトルク変動が低下し、ロックアップクラッチ50のスリップ係合状態でなくても、プレダンパー10によりエンジン回転数に対応する振動を抑制することが有効な場合に用いられるものである。
決定された動作モードが第1動作モードであり、第3動作モードからに切り替える場合(以下、単に「3−1切り替え」と称する)には、中間制御を行う。3−1切り替えでは、図22に示すように、第3動作モードから第10中間動作で流体伝達装置1を作動した後、第1動作モードに切り替える。第10中間動作は、ECU90により、第1切替弁83をON、第2切替弁84をOFF、第3切替弁85をON、第1制御弁86をOFF、第2制御弁87をOFFに制御する。つまり、第10中間動作では、油圧制御装置80によりPORT1が供給状態となり、PORT2が排出状態となり、PORT3が供給状態となる。従って、3−1切り替えにおける中間制御は、ダンパー非作動直接伝達状態から流体伝達状態に移行する場合に、流体伝達状態に移行する前、すなわち第1動作モードに移行する前に予めPORT1を供給状態とする制御を行うものである。これにより、第1動作モードに移行する前に、PORT1を供給状態とすることで、タービンクラッチ70を係合状態に確実に維持したまま、ロックアップクラッチ50が解放状態となるので、ロックアップクラッチ50が解放状態となる前に、タービンクラッチ70が解放状態とならないことで、タービン32に伝達された駆動力がダイナミックダンパー60に作用することを抑制することができ、過大なトルクがダイナミックダンパー60、特に第2ダンパーバネ63に作用することを抑制することができ、信頼性を向上することができ、ショックを抑制することができる。なお、3−1切り替えは、例えば、スロットル開度が大きくなるなどによりエンジン回転数に対応する振動が増加し、流体伝達状態によりエンジン回転数に対応する振動を吸収することが有効な場合に用いられるものである。
決定された動作モードが第1動作モードであり、第6動作モードから切り替える場合(以下、単に「6−1切り替え」と称する)には、中間制御を行う。6−1切り替えでは、図23に示すように、第6動作モードから第11中間動作で流体伝達装置1を作動した後、第1動作モードに切り替える。第11中間動作は、ECU90により、第1切替弁83をON、第2切替弁84をOFF、第3切替弁85をON、第1制御弁86をOFF、第2制御弁87をOFFに制御する。つまり、第11中間動作では、油圧制御装置80によりPORT1が供給状態となり、PORT2が排出状態となり、PORT3が供給状態となる。従って、6−1切り替えにおける中間制御は、ダンパー非作動直接伝達状態から流体伝達状態に移行する場合に、流体伝達状態に移行する前、すなわち第1動作モードに移行する前に予めPORT1を供給状態とする制御を行うものである。これにより、第1動作モードに移行する前に、PORT1を供給状態とすることで、タービンクラッチ70を係合状態に確実に維持したまま、ロックアップクラッチ50が解放状態となるので、ロックアップクラッチ50が解放状態となる前に、タービンクラッチ70が解放状態とならないことで、タービン32に伝達された駆動力がダイナミックダンパー60に作用することを抑制することができ、過大なトルクがダイナミックダンパー60、特に第2ダンパーバネ63に作用することを抑制することができ、信頼性を向上することができ、ショックを抑制することができる。なお、6−1切り替えは、例えば、スロットル開度が大きくなるなどによりエンジン回転数に対応する振動が増加し、流体伝達状態によりエンジン回転数に対応する振動を吸収することが有効な場合に用いられるものである。
また、ECU90は、中間制御が必要でないと判定する(ステップST6否定)と、決定した動作モードで流体伝達装置1を作動する(ステップST8)。
例えば、決定された動作モードが第2動作モードであり、第5動作モードからに切り替える場合(以下、単に「5−2切り替え」と称する)には、中間制御を行わない。5−2切り替えでは、ECU90が排出状態のPORT3における排出状態時排出流量を低下、すなわちPORT3における圧力を上昇させ、ロックアップクラッチ50が完全係合状態(PORT2における圧力がPORT3における圧力以上)となるように第1制御弁86を制御する。5−2切り替えでは、ロックアップクラッチ50をスリップ係合状態から完全係合状態に切り替えるので燃費が向上する。なお、5−2切り替えは、例えば、スロットル開度が小さくなるなどによりエンジンのトルク変動が低下し、ロックアップクラッチ50のスリップ係合状態でなくても、ダイナミックダンパー60によりエンジンの特定回転数領域に対応する振動を抑制することが有効な場合に用いられるものである。
また、例えば、決定された動作モードが第5動作モードであり、第2動作モードから切り替える場合(以下、単に「2−5切り替え」と称する)には、中間制御を行わない。2−5切り替えでは、ECU90が排出状態のPORT3における排出状態時排出流量を増加、すなわちPORT3における圧力を低下させ、フロントカバー20とピストン部材40との間に回転差が発生するように第1制御弁86を制御する。2−5切り替えでは、ロックアップクラッチ50を完全係合状態からスリップ係合状態に切り替えるので、第1動作モードに切り替える場合と比較して燃費が向上する。なお、2−5切り替えは、例えば、スロットル開度が大きくなるなどによりエンジンの特定回転数領域に対応する振動が増加し、スリップ係合によりエンジンの特定回転数領域に対応する振動のレベルを下げるとともに、ダイナミックダンパー60によりエンジンの特定回転数領域に対応する振動を抑制することが有効な場合に用いられるものである。
例えば、決定された動作モードが第3動作モードであり、第6動作モードから切り替える場合(以下、単に「6−3切り替え」と称する)には、中間制御を行わない。6−3切り替えでは、ECU90が供給状態のPORT3における供給状態時排出流量を低下することで、供給流量を増加、すなわちPORT3における圧力を上昇させ、ロックアップクラッチ50が完全係合状態(PORT2における圧力がPORT3における圧力以上)となるように第1制御弁86を制御する。6−3切り替えでは、ロックアップクラッチ50をスリップ係合状態から完全係合状態に切り替えるので燃費が向上する。なお、6−3切り替えは、例えば、スロットル開度が小さくなるなどによりエンジンのトルク変動が低下し、ロックアップクラッチ50のスリップ係合状態でなくても、プレダンパー10によりエンジンの回転数に対応する振動を抑制することが有効な場合に用いられるものである。
また、例えば、決定された動作モードが第6動作モードであり、第3動作モードから切り替える場合(以下、単に「3−6切り替え」と称する)には、中間制御を行わない。3−6切り替えでは、ECU90が排出状態のPORT3における排出状態時排出流量を増加させることで、供給流量を低下、すなわちPORT3における圧力を低下させ、フロントカバー20とピストン部材40との間に回転差が発生するように第1制御弁86を制御する。3−6切り替えでは、ロックアップクラッチ50を完全係合状態からスリップ係合状態に切り替えるので、第1動作モードに切り替える場合と比較して燃費が向上する。なお、3−6切り替えは、例えば、スロットル開度が大きくなるなどによりエンジンの特定回転数領域に対応する振動が増加し、スリップ係合によりエンジンの回転数に対応する振動のレベルを下げることが有効な場合に用いられるものである。
また、ECU90は、図示しない車両が制動時であると判定する(ステップST2肯定)と、第1動作モードで流体伝達装置1を作動する(ステップST9)。ここでは、ECU90は、図示しない車両が制動時に少なくともPORT2を排出状態とする。従って、ロックアップクラッチ50をすぐに解放状態とすることができ、車両の制動時、特に急制動時において、図示しない駆動輪とエンジンとが直結されていることによるエンジンのストールを防止することができる。
なお、上記実施の形態において、PORT1とPORT3との間に形成された流路の流路抵抗を変更する第1流路抵抗変更機構を設けても良い。図24〜図26は、第1流路抵抗変更機構の構成例を示す図である。また、図27は、図26のI−I断面図である。また、図28は、図26のII−II断面図である。第1流路抵抗変更機構140は、第1流路抵抗変更手段であり、図24〜図28に示すように、ピストン部材40の半径方向外側端部とフロントカバー20のフランジ部22との間に形成されたPORT間流路150に設けられている。第1流路抵抗変更機構140は、PORT間流路150の流路抵抗を変更するものであり、スライド部材141とリング部材142とにより構成されている。ここで、PORT間流路150は、PORT1とPORT3との間に形成された流路である。なお、実施の形態では、PORT間流路150は、PORT1とPORT2との間に形成された流路でもある。
スライド部材141は、図26〜図28に示すように、円環形状であり、固定手段、実施の形態ではスナップリング143によりピストン部材40の半径方向外側端部に固定されている。スライド部材141は、本体部141aと、スライド部141bと、作動油流路部141cと、ストッパ部141dとが形成されている。
本体部141aは、円環形状であり、軸方向における断面が、出力側の軸方向に平行な平面部と入力側の軸方向に平行な平面部とを半径方向外側から内側に向かって傾斜する傾斜部と接続して形成されている。
スライド部141bは、リング部材142が軸方向に摺動するものであり、出力側の軸方向に平行な平面部から入力側に向かって連続して形成されている。スライド部141bは、本体部141aに対して周方向に複数形成されている。
作動油流路部141cは、PORT間流路150の一部であり、PORT1からの作動油をPORT3に、あるいはPORT3からの作動油をPORT1に流すものである。作動油流路部141cは、周方向に隣り合うスライド部141bの間に形成される。従って、作動油流路部141cは、本体部141aに対して周方向にスライド部141bと交互に複数形成されている。
ストッパ部141dは、リング部材142の軸方向のうち入力側への移動を規制するものである。ストッパ部141dは、スライド部141bの入力側の端部からリング部材142の内周面よりも半径方向外側に突出して形成されている。従って、スライド部141bを軸方向に移動するリング部材142は、ストッパ部141dと接触することで、入力側への移動が規制される。
リング部材142は、スライド部141bを軸方向に移動することで、スライド部材141とリング部材と142との間に形成される面積を変更し、PORT間流路150の流路抵抗を変更するものである。リング部材142は、スライド部141bとフロントカバー20のフランジ部22により軸方向に移動可能に支持されている。リング部材142は、PORT間流路150における作動油の流れに応じてスライド部材141に対して軸方向に移動する。
POTR1から作動油がPORT間流路150に流入する場合は、図24に示すように、PORT間流路150には入力側から出力側に向かって、同図Y1に示すような作動油の流れが発生する。従って、リング部材142は、スライド部材141のスライド部141bに沿って、軸方向のうち出力側に向かって移動する。ここで、ポンプシェル31bは、入力側の端部がフランジ部22に対してリング部材142の外周面よりも半径方向内側に突出するように固定されている。従って、軸方向のうち出力側に移動するリング部材142は、ポンプシェル31bの入力側の端部と接触することで、出力側への移動が規制される。このとき、PORT1からPORT間流路150に流入した作動油は、リング部材142の内周面とスライド部材141のうち内周面に対向する部分(出力側の軸方向に平行な平面部)との間に形成される隙間X1を通過して、PORT3および/またはPORT2に流入する。また、POTR3あるいはPORT2から作動油がPORT間流路150に流入される場合は、図25に示すように、PORT間流路150には出力側から入力側に向かって、同図Y2に示すような作動油の流れが発生する。従って、作動油は、スライド部材141のスライド部141bに沿って、軸方向のうち入力側に向かって移動する。ここで、リング部材142は、スライド部材141のストッパ部141dと接触することで、入力側への移動が規制される。このとき、PORT3あるいはPORT2からPORT間流路150に流入した作動油は、リング部材142の内周面とスライド部材141のうち内周面に対向する部分(入力側の軸方向に平行な平面部)との間に形成される隙間X2を通過、すなわちリング部材142と作動油流路部141cとの間を通過してPORT1に流入する。
作動油が通過する隙間は、X1よりもX2が大きい。つまり、スライド部材141とリング部材142との間に形成される面積は、PORT1から作動油が供給される場合に、PORT1から作動油が排出される場合よりも小さくなり、流路抵抗が増加する。ここで、PORT1から作動油が供給される第1動作モードでは、PORT1から供給された作動油をPORT3から排出することで、流体伝達機構30で発生した熱を作動油により流体伝達機構30の外部に移動させることができる。このとき、PORT3から排出される作動油の流量は、熱を移動させる程度で良く、多いとポンプ損失が多くなるという問題がある。そこで、第1流路抵抗変更機構140は、上述のように、PORT1から作動油を供給しPORT3から排出する場合に、流路抵抗を増加させることで、PORT1からPORT3に流入する作動油の流量を減少し、ポンプ損失を抑制する。これにより、燃費を向上することができる。
また、上記実施の形態では、ロックアップクラッチ50の摩擦板51をピストン部材40に設け、フロントカバー20のカバー側クラッチ面と摩擦係合することでロックアップクラッチ50を係合状態としたが本発明はこれに限定されるものではない。図24および図25に示すように、摩擦板52をフロントカバー20に設けても良い。この場合、ロックアップクラッチ50は、ピストン部材40に形成されている第1ピストン側クラッチ面40dと、第1ピストン側クラッチ面40dと対向しフロントカバー20に形成されたカバー側クラッチ面である摩擦板52の摩擦面とが摩擦係合することで、フロントカバー20とピストン部材40とを係合可能としても良い。摩擦板52をフロントカバー20に設けることで、ロックアップクラッチ50を解放状態から係合状態に切り替えることでピストン部材40に熱が発生する。しかしながら、ロックアップクラッチ50が係合状態では、PORT2に作動油が流れるので、ピストン部材40に発生した熱を作動油により流体伝達装置1の外部に移動させることができる。
また、上記実施の形態において、油圧制御装置80とPORT3との間に形成された流路の流路抵抗を変更する第2流路抵抗変更機構を設けても良い。図29〜図31は、第2流路抵抗変更機構の構成例を示す図である。第2流路抵抗変更機構は、第2流路抵抗変更手段であり、図29〜図31に示すように、油圧制御装置80とPORT3との間に形成された流路、すなわちスリーブ95と、第1分割ハウジング94aおよび第2分割ハウジング94bとの間の流路に形成されている。第2流路抵抗変更機構は、ステータ33の回転力に基づいて流路抵抗を変更するものであり、第1分割ハウジング94aと、第2分割ハウジング94bと、弾性部材97とにより構成されている。
第1分割ハウジング94aは、ステータ33がワンウェイクラッチ34を介して固定されるものであり、円筒形状であり、第1分割ハウジング94aと出力軸200との間に設けられたブッシュ210により出力軸200に対して回転可能に支持されている。第1分割ハウジング94aは、軸方向のうち出力側に流路抵抗変更部94cが形成されている。流路抵抗変更部94cは、相対回転により連通通路94eの開口面積を変更するものであり、第1分割ハウジング94aの外周面から後述する連通通路94eの開口よりも半径方向外側に突出し、かつ第1分割ハウジング94aの出力側の端部から入力側に延在して形成されている。流路抵抗変更部94cは、第1分割ハウジング94aに対して周方向に複数形成されている。
第2分割ハウジング94bは、円筒形状であり、第2分割ハウジング94bとスリーブ95との間に設けられたブッシュ220により出力軸200に対して回転可能に支持されている。つまり、第1分割ハウジング94aと第2分割ハウジング94bとは、相対回転可能に支持されている。第2分割ハウジング94bは、軸方向のうち入力側にストッパ部94dが形成されている。ストッパ部94dは、周方向に隣り合う流路抵抗変更部94cの間に形成される。従って、ストッパ部94dは、第2分割ハウジング94bの内周面から流路抵抗変更部94cの半径方向外側端部よりも半径方向内側に突出し、かつ第2分割ハウジング94bの入力側の端部から出力側に延在して形成されている。従って、ストッパ部94dは、第2分割ハウジング94bに対して周方向に流路抵抗変更部94cと交互に複数形成されている。
また、第2分割ハウジング94bは、油圧制御装置80とPORT3とを接続する連通通路94eが形成されている。連通通路94eは、入力側の端部が第2分割ハウジング94bのうち周方向に隣り合うストッパ部94dの間に形成される入力側の側面に開口し、出力側の端部が油圧制御装置80と連通する第2分割ハウジング94bとスリーブ95との間(ブッシュ220よりも出力側)に開口している。ここで、連通通路94eの入力側の端部は、周方向に隣り合うストッパ部94dの間に形成される入力側の側面に開口周方向に隣り合うストッパ部94dの間に位置する流路抵抗変更部94cが周方向における一方の端部に到達した際に他方の端部に形成される流路抵抗変更部94cとストッパ部94dとの隙間に露出するように形成されている。
弾性部材97は、第1分割ハウジング94aを第2分割ハウジング94bに対して周方向のうち他方に移動させる押圧力を発生するものである。弾性部材97は、実施の形態では、平板を山折りにした形状であり、ストッパ部94dの周方向のうち他方の側面に図示しない支持部により流路抵抗変更部94cに対向して支持されている。ここで、弾性部材97は、第1分割ハウジング94aが第2分割ハウジング94bに対して周方向のうち一方、すなわち図29の矢印K方向に相対回転すると弾性変形し、第1分割ハウジング94aを第2分割ハウジング94bに対して周方向のうち他方、すなわち同図の矢印K方向と反対方向に移動させる押圧力を第1分割ハウジング94aに作用させる。
第1動作モードの場合、PORT1から供給された作動油がPORT2およびPORT3を通過する。ここで、第1動作モードにおいては、流体伝達機構30がカップリング状態となると作動油によりステータ33に作用する力の向きが逆となる。ステータ33は、流体伝達機構30がカップリング状態でない場合、作動油により作用する力により同図の矢印K方向に回転力を発生する。従って、弾性部材97は、ステータ33の回転力により弾性変形し、流路抵抗変更部94cが周方向に隣り合うストッパ部94dの間を周方向のうち一方(同図、矢印K方向)の端部まで移動する。これにより、連通通路94eの入力側の端部は、図29に示すように、露出し、PORT3を通過した作動油が連通通路94eを通過して、油圧制御装置80に流入し、流体伝達装置1の外部に排出される。一方、ステータ33は、流体伝達機構30がカップリング状態である場合、作動油により作用する力により同図の矢印K方向の回転力が減少する。従って、ステータ33の回転力により弾性変形していた弾性部材97は、弾性復帰しようとするので、弾性部材97により第1分割ハウジング94aに作用する押圧力によって、流路抵抗変更部94cが周方向に隣り合うストッパ部94dの間を周方向のうち他方(同図、矢印K方向と反対方向)の端部まで移動する。これにより、連通通路94eの入力側の端部は、図30に示すように、流路抵抗変更部94cにより閉塞されるので、PORT3を通過した作動油が連通通路94eを通過できず、油圧制御装置80に流入できす、流体伝達装置1の外部に排出されない。
ここで、第1動作モードにおいて連通通路94eの入力側の端部の開口面積は、流体伝達機構30がカップリング状態となる場合に、カップリング状態でない場合よりも小さくなり、流路抵抗が増加する。つまり、第1動作モードから他の動作モードに切り替える、すなわち流体伝達状態からダンパー作動直接伝達状態またはダンパー非作動直接伝達状態に移行する場合において、ロックアップクラッチ50が係合状態となる前に流路抵抗が増加する。従って、ロックアップクラッチ50が係合状態となる前に、油圧制御装置80とPORT3との間に形成された流路の流路抵抗を増加させるので、PORT3から排出される作動油の流量を減少させ、PORT3の圧力を上昇させることができる。これにより、PORT3とPORT1との圧力差が小さくなり、ピストン部材40が入力側に移動しやすくなる。これにより、流体伝達状態からダンパー作動直接伝達状態またはダンパー非作直接動伝達状態に移行する場合において、ロックアップクラッチ50を係合状態とするための準備を的確に行うことができ、ロックアップクラッチ50の係合応答性を向上することができる。また、第1動作モードにおいて流体伝達機構30がカップリング状態となった後にロックアップクラッチ50を係合状態とするので、第2流路抵抗変更機構は、ロックアップクラッチ50が係合状態となる前に、自動的に流路抵抗を増大させることができる。