以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。ここでは、先ず、本実施形態の二段圧縮機(30)が設けられた空調機(10)について説明し、次に、本実施形態の二段圧縮機(30)の詳細について説明する。
〈空調機〉
本実施形態の二段圧縮機(30)が設けられた空調機(10)について、図1を参照しながら説明する。この空調機(10)は、いわゆるセパレート型のものであって、室外ユニット(11)と室内ユニット(12)を一台ずつ備えている。なお、この空調機(10)には、複数台の室内ユニット(12)が設けられていてもよい。
室外ユニット(11)には、室外回路(16)が収容されている。室内ユニット(12)には、室内回路(17)が収容されている。この空調機(10)では、室外回路(16)と室内回路(17)を連絡配管(18,19)で接続することによって冷媒回路(15)が構成されている。この冷媒回路(15)には、二酸化炭素(CO2)が冷媒として充填されている。
室外回路(16)には、二段圧縮機(30)と、四方切換弁(20)と、ブリッジ回路(22)と、液側閉鎖弁(23)と、ガス側閉鎖弁(24)とが設けられている。二段圧縮機(30)は、その吐出管(36)が四方切換弁(20)の第1のポートに接続され、その吸入管(35)が四方切換弁(20)の第2のポートに接続されている。四方切換弁(20)の第3のポートは、室外熱交換器(21)のガス側端に接続されている。室外熱交換器(21)の液側端は、ブリッジ回路(22)に接続されている。液側閉鎖弁(23)は、ブリッジ回路(22)に接続されている。四方切換弁(20)の第4のポートは、ガス側閉鎖弁(24)に接続されている。
ブリッジ回路(22)には、四つの逆止弁(22a〜22d)が設けられている。このブリッジ回路(22)では、第1逆止弁(22a)の流出側と第2逆止弁(22b)の流入側とが接続され、第2逆止弁(22b)の流出側と第3逆止弁(22c)の流出側とが接続され、第3逆止弁(22c)の流入側と第4逆止弁(22d)の流出側が接続され、第4逆止弁(22d)の流入側と第1逆止弁(22a)の流入側とが接続されている。ブリッジ回路(22)では、第1逆止弁(22a)と第2逆止弁(22b)の間に室外熱交換器(21)の液側端が接続され、第3逆止弁(22c)と第4逆止弁(22d)の間に液側閉鎖弁(23)が接続されている。
また、室外回路(16)には、第1膨張弁(25)と、第2膨張弁(26)と、気液分離器(27)と、ガスインジェクション用配管(28)とが設けられている。気液分離器(27)は、縦長円筒形の密閉容器状に形成されており、流入した気液二相状態の冷媒を液冷媒とガス冷媒に分離する。気液分離器(27)の頂部は、第1膨張弁(25)を介して、ブリッジ回路(22)における第2逆止弁(22b)と第3逆止弁(22c)の間に接続されている。気液分離器(27)の底部は、第2膨張弁(26)を介して、ブリッジ回路(22)における第4逆止弁(22d)と第1逆止弁(22a)の間に接続されている。ガスインジェクション用配管(28)は、その一端が気液分離器(27)の頂部に接続され、その他端が二段圧縮機(30)の接続用配管(39)に接続されている。
室外熱交換器(21)は、フィン・アンド・チューブ型の空気熱交換器であって、冷媒を室外空気と熱交換させる。四方切換弁(20)は、第1のポートと第3のポートが連通し且つ第2のポートと第4のポートが連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートが第4のポートと連通し且つ第2のポートが第3のポートと連通する第2状態(図1に破線で示す状態)とに切り換え可能となっている。二段圧縮機(30)の詳細については後述する。
室内回路(17)には、室内熱交換器(29)が設けられている。室内回路(17)は、その一端が液側連絡配管(18)を介して液側閉鎖弁(23)に接続され、その他端がガス側連絡配管(19)を介してガス側閉鎖弁(24)に接続されている。室内熱交換器(29)は、フィン・アンド・チューブ型の空気熱交換器であって、冷媒を室内空気と熱交換させる。
〈二段圧縮機〉
本実施形態の二段圧縮機(30)について、図2〜図4を適宜参照しながら説明する。
図2に示すように、本実施形態の二段圧縮機(30)は、いわゆる全密閉型圧縮機である。この二段圧縮機(30)では、圧縮機構(40)と、圧縮機構(40)を駆動するための電動機(45)と、圧縮機構(40)と電動機(45)を連結する駆動軸(50)とが、一つのケーシング(31)内に収容されている。また、本実施形態の二段圧縮機(30)は、圧縮機構(40)からケーシング(31)の内部空間へ高圧冷媒が吐出される高圧ドーム型に構成されている。
ケーシング(31)は、縦長円筒形の密閉容器状に形成されている。具体的に、このケーシング(31)は、本体筒部(32)と、上側鏡板(33)と、下側鏡板(34)とを備えている。本体筒部(32)は、両端が開口端となった中空円筒状に形成されている。ケーシング(31)では、本体筒部(32)の上端が上側鏡板(33)によって閉塞され、本体筒部(32)の下端が下側鏡板(34)によって閉塞されている。上側鏡板(33)には、吐出管(36)と給電用ターミナル(48)とが、それぞれ上側鏡板(33)を貫通する状態で取り付けられている。
ケーシング(31)内では、圧縮機構(40)の上方に電動機(45)が配置されている。圧縮機構(40)と電動機(45)を連結する駆動軸(50)は、その軸方向が上下方向となる姿勢で配置されている。圧縮機構(40)と電動機(45)の固定子(46)とは、ケーシング(31)の本体筒部(32)に固定されている。駆動軸(50)は、圧縮機構(40)を上下方向に貫通するように設けられている。駆動軸(50)の上端部には、電動機(45)の回転子(47)が取り付けられている。図示しないが、電動機(45)の固定子(46)に設けられたコイルは、リード線を介して給電用ターミナル(48)の端子に電気的に接続されている。
ケーシング(31)の本体筒部(32)には、吸入管(35)と、中間吐出管(37)と、中間吸入管(38)とが取り付けられている。吸入管(35)、中間吐出管(37)、及び中間吸入管(38)は、いずれもやや太い円管状に形成されており、本体筒部(32)を貫通している。本体筒部(32)では、圧縮機構(40)の低段側シリンダ(60)の側方に吸入管(35)が、圧縮機構(40)のリアヘッド(90)の側方に中間吐出管(37)が、圧縮機構(40)の高段側シリンダ(70)の側方に中間吸入管(38)が、それぞれ配置されている。なお、圧縮機構(40)の詳細については後述する。中間吐出管(37)には接続用配管(39)の一端が接続され、中間吸入管(38)には接続用配管(39)の他端が接続されている。上述したように、接続用配管(39)の途中には、ガスインジェクション用配管(28)が接続されている。
駆動軸(50)は、主軸部(51)と、第1偏心部(52)と、第2偏心部(53)とを備えている。第1偏心部(52)と第2偏心部(53)は、駆動軸(50)のうち圧縮機構(40)を貫通する部分に形成されている。駆動軸(50)では、第1偏心部(52)の上方に第2偏心部(53)が配置されている。第1偏心部(52)と第2偏心部(53)は、何れも外径が主軸部(51)の外径よりも大きな円柱状に形成されている。第1偏心部(52)の外径と第2偏心部(53)の外径は、等しくなっている。各偏心部(52,53)の軸心は、主軸部(51)の軸心に対して偏心している。第1偏心部(52)の主軸部(51)に対する偏心方向と、第2偏心部(53)の主軸部(51)に対する偏心方向とは、駆動軸(50)の回転方向において180°ずれている。つまり、第1偏心部(52)と第2偏心部(53)とでは、主軸部(51)に対する偏心方向が逆方向となっている。
駆動軸(50)には、給油通路(54)が形成されている。給油通路(54)は、駆動軸(50)の軸方向へ延びる細長い有底の穴であって、駆動軸(50)の下端から第2偏心部(53)の少し上の位置までに亘って形成されている。給油通路(54)の下端は、駆動軸(50)の下端に開口している。給油通路(54)の上端は、行き止まりになっている。
また、駆動軸(50)には、給油孔(55,56)が形成されている。給油孔(55,56)は、駆動軸(50)の半径方向へ延びる細長い貫通孔である。給油孔(55,56)は、その一端が駆動軸(50)の外周面に開口し、その他端が給油通路(54)に連通している。駆動軸(50)では、第1偏心部(52)の下端に隣接する部分がやや括れた形状となっており、この括れた部分の外周面に第1の給油孔(55)が開口している。また、駆動軸(50)では、第2偏心部(53)の上端に隣接する部分がやや括れた形状となっており、この括れた部分の外周面に第2の給油孔(56)が開口している。
図3に示すように、圧縮機構(40)では、下から上へ向かって順に、カバープレート(96)と、リアヘッド(90)と、低段側シリンダ(60)と、中間プレート(95)と、高段側シリンダ(70)と、フロントヘッド(80)とが積層されている。図示しないが、積層されたカバープレート(96)、リアヘッド(90)、低段側シリンダ(60)、中間プレート(95)、高段側シリンダ(70)、及びフロントヘッド(80)は、これらを貫通するように設けられた複数本のボルトによって、互いに締結されている。
低段側シリンダ(60)と高段側シリンダ(70)のそれぞれは、やや肉厚の部材であって、その両端面(図3における上端面と下端面)が互いに平行な平坦面となっている。低段側シリンダ(60)は、高段側シリンダ(70)よりも厚くなっている。低段側シリンダ(60)と高段側シリンダ(70)のそれぞれには、厚み方向へ貫通する円形断面の貫通孔が形成されている。各シリンダ(60,70)では、貫通孔の側面がシリンダ(60,70)の内周面となっている。各シリンダ(60,70)の貫通孔には、駆動軸(50)が挿通されている。低段側シリンダ(60)の貫通孔内には、駆動軸(50)の第1偏心部(52)が位置している。高段側シリンダ(70)の貫通孔内には、駆動軸(50)の第2偏心部(53)が位置している。
中間仕切部材である中間プレート(95)は、高段側シリンダ(70)よりもやや薄肉の平板状の部材である。中間プレート(95)は、低段側シリンダ(60)と高段側シリンダ(70)の間に挟み込まれている。そして、中間プレート(95)は、その前面(図3における上面)が高段側シリンダ(70)と密着し、その背面(同図における下面)が低段側シリンダ(60)と密着している。また、中間プレート(95)には、厚み方向へ貫通する貫通孔が形成されている。この中間プレート(95)の貫通孔には、駆動軸(50)のうち第1偏心部(52)と第2偏心部(53)の間に位置する部分が挿通されている。
フロントヘッド(80)は、平板部(81)と筒状部(82)とを備えている。平板部(81)は、高段側シリンダ(70)側を向く面(図3における下面)が平坦面となった平板状の部材である。この平板部(81)の平坦面(同図における下面)は、高段側シリンダ(70)と密着している。筒状部(82)は、円筒状に形成されており、平板部(81)における高段側シリンダ(70)とは逆側の面に立設されている。フロントヘッド(80)には、筒状部(82)の軸方向へ延びる貫通孔が、筒状部(82)から平板部(81)に亘って形成されている。このフロントヘッド(80)の貫通孔には、駆動軸(50)のうち第2偏心部(53)よりも回転子(47)寄りの部分(図3における上側の部分)が挿通されている。この貫通孔の内周面は、駆動軸(50)の主軸部(51)の外周面と摺接する。そして、フロントヘッド(80)では、駆動軸(50)と摺接する部分が、駆動軸(50)を支持するジャーナル軸受である主軸受(83)となっている。
リアヘッド(90)は、低段側シリンダ(60)よりも更に肉厚の平板状の部材である。リアヘッド(90)は、その前面(図3における上面)が低段側シリンダ(60)と密着している。リアヘッド(90)には、厚み方向へ貫通する貫通孔が形成されている。このリアヘッド(90)の貫通孔には、駆動軸(50)のうち第1偏心部(52)よりも図3における下側の部分が挿通されている。この貫通孔の内周面は、駆動軸(50)の主軸部(51)の外周面と主鬱する。そして、リアヘッド(90)では、駆動軸(50)と摺接する部分が、駆動軸(50)を支持するジャーナル軸受である副軸受(91)となっている。
カバープレート(96)は、比較的薄肉の平板状の部材である。このカバープレート(96)は、リアヘッド(90)の背面(図3における下面)を覆うように設けられている。
低段側シリンダ(60)には、低段側ピストン(63)が収容されている。高段側シリンダ(70)には、高段側ピストン(73)が収容されている。図4にも示すように、各ピストン(63,73)は、両端が開口したやや厚肉の円筒状に形成されている。各ピストン(63,73)の肉厚(ピストン(63,73)の半径方向の幅)は、それぞれの一端から他端に亘って一定となっている。本実施形態では、低段側ピストン(63)の各端面の幅L1(即ち、低段側ピストン(63)の径方向における端面の幅)と、高段側ピストン(73)の各端面の幅L2(即ち、高段側ピストン(73)の径方向における端面の幅)とが等しくなっている(L1=L2)。なお、低段側ピストン(63)の端面の幅L1は低段側ピストン(63)の肉厚と等しく、高段側ピストン(73)の端面の幅L2は高段側ピストン(73)の肉厚と等しい。
各ピストン(63,73)の両端面(図3における上端面と下端面)は、互いに平行な平坦面となっている。低段側ピストン(63)は、その一端面(同図における上端面)が中間プレート(95)の背面と対向し、その他端面(同図における下端面)がリアヘッド(90)の前面と対面している。高段側ピストン(73)は、その一端面(同図における上端面)がフロントヘッド(80)の平板部(81)の平坦面と対向し、その他端面(同図における下端面)が中間プレート(95)の前面と対面している。
低段側ピストン(63)は、その内周面が第1偏心部(52)の外周面と全周に亘って摺接する。低段側ピストン(63)の外径は、低段側シリンダ(60)の内周面の直径よりも短くなっている。このため、低段側シリンダ(60)内では、低段側シリンダ(60)の内周面と低段側ピストン(63)の外周面との間に低段側圧縮室(66)が形成される。低段側圧縮室(66)は、低段側シリンダ(60)と、低段側ピストン(63)と、リアヘッド(90)と、中間プレート(95)とによって囲まれた閉空間である。低段側ピストン(63)の外周面は、その周方向の一箇所において低段側シリンダ(60)の内周面と摺接する。第1偏心部(52)に係合する低段側ピストン(63)は、その外周面が低段側シリンダ(60)の内周面と接する状態で偏心回転する。
高段側ピストン(73)は、その内周面が第2偏心部(53)の外周面と全周に亘って摺接する。高段側ピストン(73)の外径は、高段側シリンダ(70)の内周面の直径よりも短くなっている。このため、高段側シリンダ(70)内では、高段側シリンダ(70)の内周面と高段側ピストン(73)の外周面との間に高段側圧縮室(76)が形成される。高段側圧縮室(76)は、高段側シリンダ(70)と、高段側ピストン(73)と、フロントヘッド(80)と、中間プレート(95)とによって囲まれた閉空間である。高段側ピストン(73)の外周面は、その周方向の一箇所において高段側シリンダ(70)の内周面と摺接する。第2偏心部(53)に係合する高段側ピストン(73)は、その外周面が高段側シリンダ(70)の内周面と接する状態で偏心回転する。
低段側ピストン(63)の高さHP1は、低段側シリンダ(60)の厚さHC1よりも僅かに低くなっている。つまり、低段側ピストン(63)の高さHP1は、リアヘッド(90)の前面(図3における上面)から中間プレート(95)の背面(同図における下面)までの距離(=HC1)よりも短くなっている。高段側ピストン(73)の高さHP2は、高段側シリンダ(70)の厚さHC2よりも僅かに低くなっている。つまり、高段側ピストン(73)の高さHP2は、中間プレート(95)の前面(図3における上面)からフロントヘッド(80)の前面(同図における下面)からまでの距離(=HC2)よりも短くなっている。また、本実施形態の圧縮機構(40)では、低段側シリンダ(60)の厚さHC1と低段側ピストン(63)の高さHP1の差ΔH1が、高段側シリンダ(70)の厚さHC2と高段側ピストン(73)の高さHP2の差ΔH2よりも大きな値となっている(ΔH1>ΔH2)。
図4に示すように、低段側ピストン(63)と高段側ピストン(73)のそれぞれには、ブレード(64,74)が一体に形成されている。各ブレード(64,74)は、ピストン(63,73)の外周面から外側へ向かって延びる平板状に形成されている。低段側ピストン(63)と一体に形成されたブレード(64)は、その高さ(図4の紙面に垂直方向の長さ)が、低段側ピストン(63)の高さHP1と等しくなっている。高段側ピストン(73)と一体に形成されたブレード(74)は、その高さ(図4の紙面に垂直方向の長さ)が、高段側ピストン(73)の高さHP2と等しくなっている。
低段側シリンダ(60)と高段側シリンダ(70)のそれぞれには、ブレード(64,74)を挿入するためのブレード溝(61,71)が形成されている。ブレード溝(61,71)は、シリンダ(60,70)の内周面に開口してシリンダ(60,70)の高さ方向(図4の紙面に垂直方向)へ延びる凹溝であって、シリンダ(60,70)の一端面から他端面に亘って形成されている。各シリンダ(60,70)のブレード溝(61,71)には、ブレード(64,74)を支持するためのブッシュ(65,75)が挿入されている。
各シリンダ(60,70)には、ブッシュ(65,75)が二つずつ設けられている。低段側シリンダ(60)において、二つのブッシュ(65,65)は、ブレード(64)を両側から挟み込むように配置される。高段側シリンダ(70)において、二つのブッシュ(75,75)は、ブレード(74)を両側から挟み込むように配置されている。各ブッシュ(65,75)は、平坦面となった前面がブレード(64,74)の側面と摺接し、円弧面となった背面がシリンダ(60,70)と摺接する。そして、ブッシュ(65,75)がシリンダ(60,70)に対して回動自在となり、ブレード(64,74)がブッシュ(65,75)に対して進退自在となっている。
低段側シリンダ(60)内に形成された低段側圧縮室(66)は、低段側ピストン(63)と一体に形成されたブレード(64)によって、吸入側空間(67)と吐出側空間(68)に仕切られる。図4(A)では、ブレード(64)の右側が吸入側空間(67)となり、ブレード(64)の左側が吐出側空間(68)となっている。
低段側シリンダ(60)には、低段側吸入ポート(62)が形成されている。低段側吸入ポート(62)は、その終端が低段側シリンダ(60)の内周面に開口している。低段側シリンダ(60)の内周面における低段側吸入ポート(62)の開口位置は、図4(A)におけるブレード溝(61)の右側近傍の位置となっている。低段側吸入ポート(62)は、吸入側空間(67)に連通している。低段側吸入ポート(62)の始端には、吸入管(35)が接続されている。
低段側シリンダ(60)に隣接するリアヘッド(90)には、低段側吐出ポート(93)が形成されている。低段側吐出ポート(93)は、リアヘッド(90)の前面(図3における上面)に開口する円形断面の貫通孔である。リアヘッド(90)の前面における低段側吐出ポート(93)の開口位置は、図4(A)におけるブレード溝(61)の左側近傍で且つ吐出側空間(68)に面する位置となっている。
リアヘッド(90)には、その背面(図3における下面)に開口する凹溝が形成されている。このリアヘッド(90)に形成された凹溝は、カバープレート(96)で覆われることによって中間圧通路(92)を形成している。中間圧通路(92)の底面には、低段側吐出ポート(93)が開口すると共に、低段側吐出ポート(93)を開閉するための吐出弁(94)が取り付けられている。吐出弁(94)は、いわゆるリード弁である。中間圧通路(92)には、中間吐出管(37)の一端が開口している。
高段側シリンダ(70)内に形成された高段側圧縮室(76)は、高段側ピストン(73)と一体に形成されたブレード(74)によって、吸入側空間(77)と吐出側空間(78)に仕切られる。図4(B)では、ブレード(74)の右側が吸入側空間(77)となり、ブレード(74)の左側が吐出側空間(78)となっている。
高段側シリンダ(70)には、高段側吸入ポート(72)が形成されている。高段側吸入ポート(72)は、その終端が高段側シリンダ(70)の内周面に開口している。高段側シリンダ(70)の内周面における高段側吸入ポート(72)の開口位置は、図4(B)におけるブレード溝(71)の右側近傍の位置となっている。高段側吸入ポート(72)は、吸入側空間(77)に連通している。高段側吸入ポート(72)の始端には、中間吸入管(38)が接続されている。
高段側シリンダ(70)に隣接するフロントヘッド(80)の平板部(81)には、高段側吐出ポート(84)が形成されている。高段側吐出ポート(84)は、平板部(81)の前面(図3における下面)に開口する円形断面の貫通孔である。平板部(81)の前面における高段側吐出ポート(84)の開口位置は、図4(B)におけるブレード溝(71)の左側近傍で且つ吐出側空間(78)に面する位置となっている。
フロントヘッド(80)の平板部(81)には、その背面(図3における上面)に開口する凹陥部が形成されている。この平板部(81)に形成された凹陥部の底面には、高段側吐出ポート(84)が開口すると共に、高段側吐出ポート(84)を開閉するための吐出弁(85)が取り付けられている。吐出弁(85)は、いわゆるリード弁である。平板部(81)の背面には、凹陥部を覆うようにマフラー(86)が取り付けられている。マフラー(86)とフロントヘッド(80)の筒状部(82)との間には、高段側吐出ポート(84)から吐出された冷媒を通過させるための隙間が形成されている。
上述したように、圧縮機構(40)では、低段側シリンダ(60)と、低段側ピストン(63)と、リアヘッド(90)と、中間プレート(95)とによって低段側圧縮室(66)が形成され、低段側ピストン(63)と一体に形成されたブレード(64)によって低段側圧縮室(66)が吸入側空間(67)と吐出側空間(68)に仕切られている。そして、この圧縮機構(40)では、低段側シリンダ(60)、低段側ピストン(63)、リアヘッド(90)、中間プレート(95)、及びブレード(64)によって低段側圧縮機構(41)が形成されている。つまり、本実施形態の低段側圧縮機構(41)は、いわゆる揺動ピストン型のロータリ式流体機械である。
また、上述したように、圧縮機構(40)では、高段側シリンダ(70)と、高段側ピストン(73)と、フロントヘッド(80)と、中間プレート(95)とによって高段側圧縮室(76)が形成され、高段側ピストン(73)と一体に形成されたブレード(74)によって高段側圧縮室(76)が吸入側空間(77)と吐出側空間(78)に仕切られている。そして、この圧縮機構(40)では、高段側シリンダ(70)、高段側ピストン(73)、フロントヘッド(80)、中間プレート(95)、及びブレード(74)によって高段側圧縮機構(42)が形成されている。つまり、本実施形態の高段側圧縮機構(42)は、いわゆる揺動ピストン型のロータリ式流体機械である。
−運転動作−
〈空調機の動作〉
本実施形態の二段圧縮機(30)が設けられた空調機(10)は、冷房運転と暖房運転を選択的に実行する。冷房運転中や暖房運転中の空調機(10)において、冷媒回路(15)では、冷媒を循環させることによって冷凍サイクルが行われる。冷媒回路(15)で行われる冷凍サイクルでは、その高圧が冷媒の臨界圧力よりも高い値に設定される。
空調機(10)の冷房運転について説明する。冷房運転時には、四方切換弁(20)が第1状態(図1に実線で示す状態)に設定され、第1膨張弁(25)及び第2膨張弁(26)の開度が適宜調節される。冷房運転時の冷媒回路(15)では、室外熱交換器(21)がガスクーラとして動作し、室内熱交換器(29)が蒸発器として動作する。
冷房運転時の冷媒回路(15)において、二段圧縮機(30)から吐出された冷媒は、四方切換弁(20)を通って室外熱交換器(21)へ流入し、室外空気へ放熱する。室外熱交換器(21)から流出した高圧冷媒は、ブリッジ回路(22)の第2逆止弁(22b)を通過して第1膨張弁(25)を流入する。冷媒は、第1膨張弁(25)を通過する際に減圧されて気液二相状態となり、その後に気液分離器(27)へ流入して液冷媒とガス冷媒に分離される。
気液分離器(27)の液冷媒は、第2膨張弁(26)を通過する際に更に減圧された後にブリッジ回路(22)の第4逆止弁(22d)を通過し、液側連絡配管(18)を通って室内熱交換器(29)へ流入し、室内空気から吸熱して蒸発する。室内ユニット(12)は、室内熱交換器(29)において冷却された室内空気を室内へ供給する。室内熱交換器(29)から流出した低圧ガス冷媒は、ガス側連絡配管(19)と四方切換弁(20)を順に通過し、二段圧縮機(30)の低段側圧縮機構(41)へ吸入されて圧縮される。
一方、気液分離器(27)のガス冷媒は、ガスインジェクション用配管(28)を通って二段圧縮機(30)の接続用配管(39)へ導入され、低段側圧縮機構(41)において圧縮された中間圧のガス冷媒と共に高段側圧縮機構(42)へ吸入される。高段側圧縮機構(42)へ吸入された冷媒は、その臨界圧力よりも高い圧力にまで圧縮され、その後に二段圧縮機(30)から吐出される。
空調機(10)の暖房運転について説明する。暖房運転時には、四方切換弁(20)が第2状態(図1に破線で示す状態)に設定され、第1膨張弁(25)及び第2膨張弁(26)の開度が適宜調節される。暖房運転時の冷媒回路(15)では、室内熱交換器(29)がガスクーラとして動作し、室外熱交換器(21)が蒸発器として動作する。
暖房運転時の冷媒回路(15)において、二段圧縮機(30)から吐出された冷媒は、四方切換弁(20)とガス側連絡配管(19)を順に通って室内熱交換器(29)へ流入し、室内空気へ放熱する。室内ユニット(12)は、室内熱交換器(29)において加熱された室内空気を室内へ供給する。室内熱交換器(29)から流出した高圧冷媒は、液側連絡配管(18)とブリッジ回路(22)の第3逆止弁(22c)とを順に通過して第1逆止弁(22a)へ流入する。冷媒は、第1膨張弁(25)を通過する際に減圧されて気液二相状態となり、その後に気液分離器(27)へ流入して液冷媒とガス冷媒に分離される。
気液分離器(27)の液冷媒は、第2膨張弁(26)を通過する際に更に減圧された後にブリッジ回路(22)の第1逆止弁(22a)を通過して室外熱交換器(21)へ流入し、室外空気から吸熱して蒸発する。室内熱交換器(29)から流出した低圧ガス冷媒は、四方切換弁(20)を通過して二段圧縮機(30)の低段側圧縮機構(41)へ吸入される。
一方、気液分離器(27)のガス冷媒は、ガスインジェクション用配管(28)を通って二段圧縮機(30)の接続用配管(39)へ導入され、低段側圧縮機構(41)において圧縮された中間圧のガス冷媒と共に高段側圧縮機構(42)へ吸入される。高段側圧縮機構(42)へ吸入された冷媒は、その臨界圧力よりも高い圧力にまで圧縮され、その後に二段圧縮機(30)から吐出される。
〈二段圧縮機の動作〉
二段圧縮機(30)の動作について、図2〜図4を参照しながら説明する。
吸入管(35)へ流入した低圧冷媒(例えば3〜4MPa程度の冷媒)は、低段側吸入ポート(62)を通って低段側圧縮室(66)へ吸入される。低段側圧縮機構(41)では、駆動軸(50)によって駆動された低段側ピストン(63)が低段側シリンダ(60)内において偏心回転し、低段側圧縮室(66)内の冷媒が圧縮される。低段側圧縮室(66)内において圧縮された冷媒は、低段側吐出ポート(93)を通って中間圧通路(92)へ吐出される。中間圧通路(92)へ流入した中間圧冷媒(例えば5〜6MPa程度の冷媒)は、中間吐出管(37)を通って接続用配管(39)へ流入し、ガスインジェクション用配管(28)から送り込まれた中間圧のガス冷媒と共に中間吸入管(38)へ流入する。
中間吸入管(38)へ流入した中間圧冷媒は、高段側吸入ポート(72)を通って高段側圧縮室(76)へ吸入される。高段側圧縮機構(42)では、駆動軸(50)によって駆動された高段側ピストン(73)が高段側シリンダ(70)内において偏心回転し、高段側圧縮室(76)内の冷媒が圧縮される。高段側圧縮室(76)内において圧縮された冷媒は、高段側吐出ポート(84)を通ってマフラー(86)の内側の空間へ吐出される。高段側圧縮機構(42)から吐出された超臨界状態の高圧冷媒(例えば10MPa程度の冷媒)は、ケーシング(31)の内部空間を通って吐出管(36)へ流入し、この吐出管(36)を通って二段圧縮機(30)から流出してゆく。
二段圧縮機(30)の運転中には、ケーシング(31)の底部に貯留された冷凍機油が、駆動軸(50)に形成された給油通路(54)に吸い上げられる。給油通路(54)へ流入した冷凍機油は、給油孔(55,56)を通って駆動軸(50)の外部へ流出し、圧縮機構(40)の摺動部分へ供給される。第1の給油孔(55)から流出した冷凍機油は、主軸部(51)と副軸受(91)の摺動部分や、第1偏心部(52)と低段側ピストン(63)の摺動面などに供給される。第2の給油孔(56)から流出した冷凍機油は、主軸部(51)と主軸受(83)の摺動部分や、第2偏心部(53)と高段側ピストン(73)の摺動面などに供給される。
二段圧縮機(30)の運転中において、中間プレート(95)では、低段側シリンダ(60)と接する背面に低段側圧縮室(66)の内圧が作用し、高段側シリンダ(70)と接する前面に高段側圧縮室(76)の内圧が作用する。このため、二段圧縮機(30)の運転中において、中間プレート(95)は、低段側シリンダ(60)側へ膨らむように変形する。
一方、本実施形態の圧縮機構(40)では、低段側シリンダ(60)の厚さHC1と低段側ピストン(63)の高さHP1の差ΔH1が、高段側シリンダ(70)の厚さHC2と高段側ピストン(73)の高さHP2の差ΔH2よりも大きな値となっている(図3を参照)。つまり、この圧縮機構(40)では、低段側ピストン(63)と中間プレート(95)のクリアランスが、高段側ピストン(73)と中間プレート(95)のクリアランスよりも広くなっている。このため、二段圧縮機(30)の運転中に中間プレート(95)が低段側圧縮機構(41)側へ膨らむように変形した状態でも、低段側圧縮機構(41)ではピストン(63)の端面と中間プレート(95)との間に隙間が確保され、低段側ピストン(63)と中間プレート(95)との接触が回避される。
−実施形態1の効果−
上述したように、本実施形態の圧縮機構(40)では、低段側ピストン(63)と中間プレート(95)のクリアランス(=ΔH1)が、高段側ピストン(73)と中間プレート(95)のクリアランス(=ΔH2)よりも広くなっている。このため、本実施形態によれば、二段圧縮機(30)の運転中に中間プレート(95)が低段側シリンダ(60)へ向かって膨らむように変形した状態においても、低段側ピストン(63)と中間プレート(95)の接触を未然に防ぐことができる。従って、本実施形態によれば、中間プレート(95)の厚みを増やさずに低段側ピストン(63)と中間プレート(95)との接触を未然に防ぎ、低段側ピストン(63)の摩耗や焼き付きといったトラブルを回避して二段圧縮機(30)の信頼性を向上させることができる。
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。本実施形態の二段圧縮機(30)は、上記実施形態1の二段圧縮機(30)において、圧縮機構(40)の構成を変更したものである。
図5に示すように、本実施形態の圧縮機構(40)では、低段側ピストン(63)の各端面の幅L1が、高段側ピストン(73)の各端面の幅L2よりも長くなっている(L1>L2)。つまり、この圧縮機構(40)では、低段側ピストン(63)の肉厚が、上記実施形態1の場合よりも厚くなっている。また、この圧縮機構(40)では、低段側ピストン(63)の肉厚が増したことに伴って、第1偏心部(52)の外径が実施形態1よりも短くなっている。なお、本実施形態において、低段側ピストン(63)の外径と、主軸部(51)の軸心に対する第1偏心部(52)の偏心量とは、上記実施形態1と同じである。
ここで、圧縮機構(40)では、ピストン(63,73)と中間プレート(95)のクリアランスが広くなると、圧縮室(66,76)の気密性が低下し、圧縮機構(40)の効率低下を招くおそれがある。本実施形態の圧縮機構(40)では、上記実施形態1と同様に、低段側ピストン(63)と中間プレート(95)のクリアランスが、高段側ピストン(73)と中間プレート(95)のクリアランスよりも広くなっている。このため、低段側圧縮室(66)の気密性が低下し、圧縮機構(40)の効率低下を招くおそれがある。
それに対し、本実施形態では、低段側ピストン(63)の端面の幅L1が、上記高段側ピストン(73)の端面の幅L2よりも広くなっている。圧縮機構(40)では、ピストン(63,73)の端面の幅が広いほど、圧縮室(66,76)の気密性が高くなる。このため、本実施形態の圧縮機構(40)では、低段側ピストン(63)と中間プレート(95)とのクリアランスを広げることによって低下した低段側圧縮室(66)の気密性が、低段側ピストン(63)の端面の幅を広げることによって回復する。従って、本実施形態によれば、中間プレート(95)の変形に起因する低段側ピストン(63)の摩耗や焼き付きといったトラブルを回避しつつ、低段側圧縮室(66)の気密性を確保して圧縮機構(40)の効率低下を抑えることができる。
《その他の実施形態》
−第1変形例−
上記各実施形態の二段圧縮機(30)において、低段側圧縮機構(41)と高段側圧縮機構(42)は、ピストン(63,73)とブレード(64,74)が別体に形成されたローリングピストン型のロータリ式流体機械によって構成されていてもよい。その場合、ブレード(64,74)は、シリンダ(60,70)に対してシリンダ(60,70)の径方向へ進退自在に設置され、その先端がピストン(63,73)の外周面に押し当てられる。
−第2変形例−
上記各実施形態の二段圧縮機(30)は、低圧ドーム型や中間圧ドーム型に構成されていてもよい。
低圧ドーム型の二段圧縮機(30)では、低圧冷媒が吸入管(35)を通じてケーシング(31)の内部空間へ流入し、ケーシング(31)の内部空間から低段側圧縮機構(41)の低段側圧縮室(66)へ低圧冷媒が吸入される。また、低圧ドーム型の二段圧縮機(30)では、吐出管(36)が高段側圧縮機構(42)に対して直接に接続される。
中間圧ドーム型の二段圧縮機(30)では、低段側圧縮機構(41)の低段側圧縮室(66)において圧縮された冷媒(即ち、中間圧冷媒)がケーシング(31)の内部空間へ吐出され、ケーシング(31)の内部空間から高段側圧縮機構(42)の高段側圧縮室(76)へ中間圧冷媒が吸入される。また、中間圧ドーム型の二段圧縮機(30)では、吐出管(36)が高段側圧縮機構(42)に対して直接に接続される。
−第3変形例−
上記各実施形態の二段圧縮機(30)では、ケーシング(31)が横長円筒形の密閉容器状に形成され、そのケーシング(31)の長手方向に沿うように駆動軸(50)が配置されていてもよい。この場合、ケーシング(31)の内部空間では、電動機(45)と圧縮機構(40)が、駆動軸(50)の軸心方向に沿って左右に並んで配置される。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。