以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。ここでは、先ず、本実施形態の二段圧縮機(30)が設けられた空調機(10)について説明し、次に、本実施形態の二段圧縮機(30)の詳細について説明する。
〈空調機〉
本実施形態の二段圧縮機(30)が設けられた空調機(10)について、図1を参照しながら説明する。この空調機(10)は、いわゆるセパレート型のものであって、室外ユニット(11)と室内ユニット(12)を一台ずつ備えている。なお、この空調機(10)には、複数台の室内ユニット(12)が設けられていてもよい。
室外ユニット(11)には、室外回路(16)が収容されている。室内ユニット(12)には、室内回路(17)が収容されている。この空調機(10)では、室外回路(16)と室内回路(17)を連絡配管(18,19)で接続することによって冷媒回路(15)が構成されている。この冷媒回路(15)には、二酸化炭素(CO2)が冷媒として充填されている。
室外回路(16)には、二段圧縮機(30)と、四方切換弁(20)と、ブリッジ回路(22)と、液側閉鎖弁(23)と、ガス側閉鎖弁(24)とが設けられている。二段圧縮機(30)は、その吐出管(36)が四方切換弁(20)の第1のポートに接続され、その吸入管(35)が四方切換弁(20)の第2のポートに接続されている。四方切換弁(20)の第3のポートは、室外熱交換器(21)のガス側端に接続されている。室外熱交換器(21)の液側端は、ブリッジ回路(22)に接続されている。液側閉鎖弁(23)は、ブリッジ回路(22)に接続されている。四方切換弁(20)の第4のポートは、ガス側閉鎖弁(24)に接続されている。
ブリッジ回路(22)には、四つの逆止弁(22a〜22d)が設けられている。このブリッジ回路(22)では、第1逆止弁(22a)の流出側と第2逆止弁(22b)の流入側とが接続され、第2逆止弁(22b)の流出側と第3逆止弁(22c)の流出側とが接続され、第3逆止弁(22c)の流入側と第4逆止弁(22d)の流出側が接続され、第4逆止弁(22d)の流入側と第1逆止弁(22a)の流入側とが接続されている。ブリッジ回路(22)では、第1逆止弁(22a)と第2逆止弁(22b)の間に室外熱交換器(21)の液側端が接続され、第3逆止弁(22c)と第4逆止弁(22d)の間に液側閉鎖弁(23)が接続されている。
また、室外回路(16)には、第1膨張弁(25)と、第2膨張弁(26)と、気液分離器(27)と、ガスインジェクション用配管(28)とが設けられている。気液分離器(27)は、縦長円筒形の密閉容器状に形成されており、流入した気液二相状態の冷媒を液冷媒とガス冷媒に分離する。気液分離器(27)の頂部は、第1膨張弁(25)を介して、ブリッジ回路(22)における第2逆止弁(22b)と第3逆止弁(22c)の間に接続されている。気液分離器(27)の底部は、第2膨張弁(26)を介して、ブリッジ回路(22)における第4逆止弁(22d)と第1逆止弁(22a)の間に接続されている。ガスインジェクション用配管(28)は、その一端が気液分離器(27)の頂部に接続され、その他端が二段圧縮機(30)の接続用配管(39)に接続されている。
室外熱交換器(21)は、フィン・アンド・チューブ型の空気熱交換器であって、冷媒を室外空気と熱交換させる。四方切換弁(20)は、第1のポートと第3のポートが連通し且つ第2のポートと第4のポートが連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートが第4のポートと連通し且つ第2のポートが第3のポートと連通する第2状態(図1に破線で示す状態)とに切り換え可能となっている。二段圧縮機(30)の詳細については後述する。
室内回路(17)には、室内熱交換器(29)が設けられている。室内回路(17)は、その一端が液側連絡配管(18)を介して液側閉鎖弁(23)に接続され、その他端がガス側連絡配管(19)を介してガス側閉鎖弁(24)に接続されている。室内熱交換器(29)は、フィン・アンド・チューブ型の空気熱交換器であって、冷媒を室内空気と熱交換させる。
〈二段圧縮機〉
本実施形態の二段圧縮機(30)について説明する。
図2に示すように、本実施形態の二段圧縮機(30)は、いわゆる全密閉型圧縮機である。この二段圧縮機(30)では、圧縮機構(40)と、圧縮機構(40)を駆動するための電動機(45)と、圧縮機構(40)と電動機(45)を連結する駆動軸(50)とが、一つのケーシング(31)内に収容されている。また、本実施形態の二段圧縮機(30)は、圧縮機構(40)からケーシング(31)の内部空間へ高圧冷媒が吐出される高圧ドーム型に構成されている。
ケーシング(31)は、縦長円筒形の密閉容器状に形成されている。具体的に、このケーシング(31)は、本体筒部(32)と、上側鏡板(33)と、下側鏡板(34)とを備えている。本体筒部(32)は、両端が開口端となった中空円筒状に形成されている。ケーシング(31)では、本体筒部(32)の上端が上側鏡板(33)によって閉塞され、本体筒部(32)の下端が下側鏡板(34)によって閉塞されている。上側鏡板(33)には、吐出管(36)と給電用ターミナル(48)とが、それぞれ上側鏡板(33)を貫通する状態で取り付けられている。
ケーシング(31)内では、圧縮機構(40)の上方に電動機(45)が配置されている。圧縮機構(40)と電動機(45)を連結する駆動軸(50)は、その軸方向が上下方向となる姿勢で配置されている。圧縮機構(40)と電動機(45)の固定子(46)とは、ケーシング(31)の本体筒部(32)に固定されている。駆動軸(50)は、圧縮機構(40)を上下方向に貫通するように設けられている。駆動軸(50)の上端部には、電動機(45)の回転子(47)が取り付けられている。図示しないが、電動機(45)の固定子(46)に設けられたコイルは、リード線を介して給電用ターミナル(48)の端子に電気的に接続されている。
ケーシング(31)の本体筒部(32)には、吸入管(35)と、中間吐出管(37)と、中間吸入管(38)とが取り付けられている。吸入管(35)、中間吐出管(37)、及び中間吸入管(38)は、いずれもやや太い円管状に形成されており、本体筒部(32)を貫通している。本体筒部(32)では、圧縮機構(40)の低段側シリンダ(60)の側方に吸入管(35)が、圧縮機構(40)のリアヘッド(90)の側方に中間吐出管(37)が、圧縮機構(40)の高段側シリンダ(70)の側方に中間吸入管(38)が、それぞれ配置されている。なお、圧縮機構(40)の詳細については後述する。中間吐出管(37)には接続用配管(39)の一端が接続され、中間吸入管(38)には接続用配管(39)の他端が接続されている。上述したように、接続用配管(39)の途中には、インジェクション用ポートを構成するガスインジェクション用配管(28)が接続されている。
駆動軸(50)は、主軸部(51)と、第1偏心部(52)と、第2偏心部(53)とを備えている。第1偏心部(52)と第2偏心部(53)は、駆動軸(50)のうち圧縮機構(40)を貫通する部分に形成されている。駆動軸(50)では、第1偏心部(52)の上方に第2偏心部(53)が配置されている。第1偏心部(52)と第2偏心部(53)は、何れも外径が主軸部(51)の外径よりも大きな円柱状に形成されている。第1偏心部(52)の外径と第2偏心部(53)の外径は、等しくなっている。各偏心部(52,53)の軸心は、主軸部(51)の軸心に対して偏心している。第1偏心部(52)の主軸部(51)に対する偏心方向と、第2偏心部(53)の主軸部(51)に対する偏心方向とは、駆動軸(50)の回転方向において180°ずれている。つまり、第1偏心部(52)と第2偏心部(53)とでは、主軸部(51)に対する偏心方向が逆方向となっている。
駆動軸(50)には、給油通路(54)が形成されている。給油通路(54)は、駆動軸(50)の軸方向へ延びる細長い有底の穴であって、駆動軸(50)の下端から第2偏心部(53)の少し上の位置までに亘って形成されている。給油通路(54)の下端は、駆動軸(50)の下端に開口している。給油通路(54)の上端は、行き止まりになっている。
また、駆動軸(50)には、給油孔(55,56)が形成されている。給油孔(55,56)は、駆動軸(50)の半径方向へ延びる細長い貫通孔である。給油孔(55,56)は、その一端が駆動軸(50)の外周面に開口し、その他端が給油通路(54)に連通している。駆動軸(50)では、第1偏心部(52)の下端に隣接する部分がやや括れた形状となっており、この括れた部分の外周面に第1の給油孔(55)が開口している。また、駆動軸(50)では、第2偏心部(53)の上端に隣接する部分がやや括れた形状となっており、この括れた部分の外周面に第2の給油孔(56)が開口している。また、図示しないが、第1偏心部(52)の外周面と第2偏心部(53)の外周面にも、給油通路(54)に連通する給油孔が開口している。
圧縮機構(40)では、下から上へ向かって順に、カバープレート(96)と、リアヘッド(90)と、低段側シリンダ(60)と、中間プレート(95)と、高段側シリンダ(70)と、フロントヘッド(80)とが積層されている。図示しないが、積層されたカバープレート(96)、リアヘッド(90)、低段側シリンダ(60)、中間プレート(95)、高段側シリンダ(70)、及びフロントヘッド(80)は、これらを貫通するように設けられた複数本のボルトによって、互いに締結されている。
低段側シリンダ(60)と高段側シリンダ(70)のそれぞれは、やや肉厚の部材であって、その両端面(図2における上端面と下端面)が互いに平行な平坦面となっている。低段側シリンダ(60)と高段側シリンダ(70)のそれぞれには、厚み方向へ貫通する円形断面の貫通孔が形成されている。各シリンダ(60,70)では、貫通孔の側面がシリンダ(60,70)の内周面となっている。各シリンダ(60,70)の貫通孔には、駆動軸(50)が挿通されている。低段側シリンダ(60)の貫通孔内には、駆動軸(50)の第1偏心部(52)が位置している。高段側シリンダ(70)の貫通孔内には、駆動軸(50)の第2偏心部(53)が位置している。
中間プレート(95)は、高段側シリンダ(70)よりもやや薄肉の平板状の部材である。中間プレート(95)は、低段側シリンダ(60)と高段側シリンダ(70)の間に挟み込まれている。そして、中間プレート(95)は、その前面(図2における上面)が高段側シリンダ(70)と密着し、その背面(同図における下面)が低段側シリンダ(60)と密着している。また、中間プレート(95)には、厚み方向へ貫通する貫通孔が形成されている。この中間プレート(95)の貫通孔には、駆動軸(50)のうち第1偏心部(52)と第2偏心部(53)の間に位置する部分が挿通されている。
フロントヘッド(80)は、平板部(81)と筒状部(82)とを備えている。平板部(81)は、高段側シリンダ(70)側を向く面(図2における下面)が平坦面となった平板状の部材である。この平板部(81)の平坦面(同図における下面)は、高段側シリンダ(70)と密着している。筒状部(82)は、円筒状に形成されており、平板部(81)における高段側シリンダ(70)とは逆側の面に立設されている。フロントヘッド(80)には、筒状部(82)の軸方向へ延びる貫通孔が、筒状部(82)から平板部(81)に亘って形成されている。このフロントヘッド(80)の貫通孔には、駆動軸(50)のうち第2偏心部(53)よりも回転子(47)寄りの部分(図2における上側の部分)が挿通されている。この貫通孔の内周面は、駆動軸(50)の主軸部(51)の外周面と摺接する。そして、フロントヘッド(80)では、駆動軸(50)と摺接する部分が、駆動軸(50)を支持するジャーナル軸受である主軸受(83)となっている。
リアヘッド(90)は、低段側シリンダ(60)よりも更に肉厚の平板状の部材である。リアヘッド(90)は、その前面(図2における上面)が低段側シリンダ(60)と密着している。リアヘッド(90)には、厚み方向へ貫通する貫通孔が形成されている。このリアヘッド(90)の貫通孔には、駆動軸(50)のうち第1偏心部(52)よりも図2における下側の部分が挿通されている。この貫通孔の内周面は、駆動軸(50)の主軸部(51)の外周面と主鬱する。そして、リアヘッド(90)では、駆動軸(50)と摺接する部分が、駆動軸(50)を支持するジャーナル軸受である副軸受(91)となっている。
カバープレート(96)は、比較的薄肉の平板状の部材である。このカバープレート(96)は、リアヘッド(90)の背面(図2における下面)を覆うように設けられている。
低段側シリンダ(60)には、低段側ピストン(63)が収容されている。高段側シリンダ(70)には、高段側ピストン(73)が収容されている。図3にも示すように、各ピストン(63,73)は、両端が開口したやや厚肉の円筒状に形成されている。各ピストン(63,73)の肉厚(ピストン(63,73)の半径方向の幅)は、それぞれの一端から他端に亘って一定となっている。
各ピストン(63,73)の両端面(図2における上端面と下端面)は、互いに平行な平坦面となっている。低段側ピストン(63)は、その一端面(同図における上端面)が中間プレート(95)の背面と対向し、その他端面(同図における下端面)がリアヘッド(90)の前面と対面している。高段側ピストン(73)は、その一端面(同図における上端面)がフロントヘッド(80)の平板部(81)の平坦面と対向し、その他端面(同図における下端面)が中間プレート(95)の前面と対面している。
低段側ピストン(63)は、その内周面が第1偏心部(52)の外周面と全周に亘って摺接する。低段側ピストン(63)の外径は、低段側シリンダ(60)の内周面の直径よりも短くなっている。このため、低段側シリンダ(60)内では、低段側シリンダ(60)の内周面と低段側ピストン(63)の外周面との間に低段側圧縮室(66)が形成される。低段側圧縮室(66)は、低段側シリンダ(60)と、低段側ピストン(63)と、リアヘッド(90)と、中間プレート(95)とによって囲まれた閉空間である。低段側ピストン(63)の外周面は、その周方向の一箇所において低段側シリンダ(60)の内周面と摺接する。第1偏心部(52)に係合する低段側ピストン(63)は、その外周面が低段側シリンダ(60)の内周面と接する状態で偏心回転する。
高段側ピストン(73)は、その内周面が第2偏心部(53)の外周面と全周に亘って摺接する。高段側ピストン(73)の外径は、高段側シリンダ(70)の内周面の直径よりも短くなっている。このため、高段側シリンダ(70)内では、高段側シリンダ(70)の内周面と高段側ピストン(73)の外周面との間に高段側圧縮室(76)が形成される。高段側圧縮室(76)は、高段側シリンダ(70)と、高段側ピストン(73)と、フロントヘッド(80)と、中間プレート(95)とによって囲まれた閉空間である。高段側ピストン(73)の外周面は、その周方向の一箇所において高段側シリンダ(70)の内周面と摺接する。第2偏心部(53)に係合する高段側ピストン(73)は、その外周面が高段側シリンダ(70)の内周面と接する状態で偏心回転する。
図3に示すように、低段側ピストン(63)と高段側ピストン(73)のそれぞれには、ブレード(64,74)が一体に形成されている。各ブレード(64,74)は、ピストン(63,73)の外周面から外側へ向かって延びる平板状に形成されている。低段側ピストン(63)と一体に形成されたブレード(64)は、その高さ(図3の紙面に垂直方向の長さ)が、低段側ピストン(63)の高さと等しくなっている。高段側ピストン(73)と一体に形成されたブレード(74)は、その高さ(図3の紙面に垂直方向の長さ)が、高段側ピストン(73)の高さと等しくなっている。
低段側シリンダ(60)と高段側シリンダ(70)のそれぞれには、ブレード(64,74)を挿入するためのブレード溝(61,71)が形成されている。ブレード溝(61,71)は、シリンダ(60,70)の内周面に開口してシリンダ(60,70)の高さ方向(図3の紙面に垂直方向)へ延びる凹溝であって、シリンダ(60,70)の一端面から他端面に亘って形成されている。各シリンダ(60,70)のブレード溝(61,71)には、ブレード(64,74)を支持するためのブッシュ(65,75)が挿入されている。
各シリンダ(60,70)には、ブッシュ(65,75)が二つずつ設けられている。低段側シリンダ(60)において、二つのブッシュ(65,65)は、ブレード(64)を両側から挟み込むように配置される。高段側シリンダ(70)において、二つのブッシュ(75,75)は、ブレード(74)を両側から挟み込むように配置されている。各ブッシュ(65,75)は、平坦面となった前面がブレード(64,74)の側面と摺接し、円弧面となった背面がシリンダ(60,70)と摺接する。そして、ブッシュ(65,75)がシリンダ(60,70)に対して回動自在となり、ブレード(64,74)がブッシュ(65,75)に対して進退自在となっている。
低段側シリンダ(60)内に形成された低段側圧縮室(66)は、低段側ピストン(63)と一体に形成されたブレード(64)によって、吸入側空間(67)と吐出側空間(68)に仕切られる。図3(A)では、ブレード(64)の右側が吸入側空間(67)となり、ブレード(64)の左側が吐出側空間(68)となっている。
低段側シリンダ(60)には、低段側吸入ポート(62)が形成されている。低段側吸入ポート(62)は、その終端が低段側シリンダ(60)の内周面に開口している。低段側シリンダ(60)の内周面における低段側吸入ポート(62)の開口位置は、図3(A)におけるブレード溝(61)の右側近傍の位置となっている。低段側吸入ポート(62)は、吸入側空間(67)に連通している。低段側吸入ポート(62)の始端には、吸入管(35)が接続されている。
低段側シリンダ(60)に隣接するリアヘッド(90)には、低段側吐出ポート(93)が形成されている。低段側吐出ポート(93)は、リアヘッド(90)の前面(図3における上面)に開口する円形断面の貫通孔である。リアヘッド(90)の前面における低段側吐出ポート(93)の開口位置は、図3(A)におけるブレード溝(61)の左側近傍で且つ吐出側空間(68)に面する位置となっている。
リアヘッド(90)には、その背面(図2における下面)に開口する凹溝が形成されている。このリアヘッド(90)に形成された凹溝は、カバープレート(96)で覆われることによって中間圧通路(92)を形成している。中間圧通路(92)の底面には、低段側吐出ポート(93)が開口すると共に、低段側吐出ポート(93)を開閉するための低段側吐出弁(94)が取り付けられている。低段側吐出弁(94)の構造については後述する。中間圧通路(92)には、中間吐出管(37)の一端が開口している。
高段側シリンダ(70)内に形成された高段側圧縮室(76)は、高段側ピストン(73)と一体に形成されたブレード(74)によって、吸入側空間(77)と吐出側空間(78)に仕切られる。図3(B)では、ブレード(74)の右側が吸入側空間(77)となり、ブレード(74)の左側が吐出側空間(78)となっている。
高段側シリンダ(70)には、高段側吸入ポート(72)が形成されている。高段側吸入ポート(72)は、その終端が高段側シリンダ(70)の内周面に開口している。高段側シリンダ(70)の内周面における高段側吸入ポート(72)の開口位置は、図4(B)におけるブレード溝(71)の右側近傍の位置となっている。高段側吸入ポート(72)は、吸入側空間(77)に連通している。高段側吸入ポート(72)の始端には、中間吸入管(38)が接続されている。
高段側シリンダ(70)は、図3におけるブレード溝(71)の左側の部分が外周面側から切除されたような形状となっている。高段側シリンダ(70)では、そのうち外周面側から切除されたような形状となった部分が切欠き部(79)となっている。高段側シリンダ(70)の外側面のうち切欠き部(79)に位置する部分は、互いに交わる二つの平面によって構成されており、図3(B)に示す平面視の形状がL字状となっている。
高段側シリンダ(70)には、第2高段側吐出ポート(87)が形成されている。第2高段側吐出ポート(87)は、高段側シリンダ(70)の内周面に開口する円形断面の貫通孔である。高段側シリンダ(70)の内周面における第2高段側吐出ポート(87)の開口位置は、図3(B)におけるブレード溝(71)の左側近傍で且つ吐出側空間(78)に面する位置となっている。また、第2高段側吐出ポート(87)は、高段側シリンダ(70)の外側面のうち切欠き部(79)に位置する部分に開口している。高段側シリンダ(70)の切欠き部(79)には、第2高段側吐出ポート(87)を開閉するための第2高段側吐出弁(88)が取り付けられている。第2高段側吐出弁(88)の構造については後述する。
高段側シリンダ(70)に隣接するフロントヘッド(80)の平板部(81)には、第1高段側吐出ポート(84)が形成されている。第1高段側吐出ポート(84)は、平板部(81)の前面(図2における下面)に開口する円形断面の貫通孔である。平板部(81)の前面における第1高段側吐出ポート(84)の開口位置は、図3(B)におけるブレード溝(71)の左側近傍で且つ吐出側空間(78)に面する位置となっている。
フロントヘッド(80)の平板部(81)には、その背面(図2における上面)に開口する凹陥部が形成されている。この平板部(81)に形成された凹陥部の底面には、第1高段側吐出ポート(84)が開口すると共に、第1高段側吐出ポート(84)を開閉するための第1高段側吐出弁(85)が取り付けられている。第1高段側吐出弁(85)の構造については後述する。平板部(81)の背面には、凹陥部を覆うようにマフラー(86)が取り付けられている。マフラー(86)とフロントヘッド(80)の筒状部(82)との間には、第1高段側吐出ポート(84)から吐出された冷媒を通過させるための隙間が形成されている。
上述したように、圧縮機構(40)では、低段側シリンダ(60)と、低段側ピストン(63)と、リアヘッド(90)と、中間プレート(95)とによって低段側圧縮室(66)が形成され、低段側ピストン(63)と一体に形成されたブレード(64)によって低段側圧縮室(66)が吸入側空間(67)と吐出側空間(68)に仕切られている。そして、この圧縮機構(40)では、低段側シリンダ(60)、低段側ピストン(63)、リアヘッド(90)、中間プレート(95)、及びブレード(64)によって低段側圧縮機構(41)が形成されている。つまり、本実施形態の低段側圧縮機構(41)は、いわゆる揺動ピストン型のロータリ式流体機械である。低段側圧縮機構(41)では、リアヘッド(90)と中間プレート(95)が、低段側シリンダ(60)の端部を閉塞する閉塞部材を構成している。
また、上述したように、圧縮機構(40)では、高段側シリンダ(70)と、高段側ピストン(73)と、フロントヘッド(80)と、中間プレート(95)とによって高段側圧縮室(76)が形成され、高段側ピストン(73)と一体に形成されたブレード(74)によって高段側圧縮室(76)が吸入側空間(77)と吐出側空間(78)に仕切られている。そして、この圧縮機構(40)では、高段側シリンダ(70)、高段側ピストン(73)、フロントヘッド(80)、中間プレート(95)、及びブレード(74)によって高段側圧縮機構(42)が形成されている。つまり、本実施形態の高段側圧縮機構(42)は、いわゆる揺動ピストン型のロータリ式流体機械である。高段側圧縮機構(42)では、フロントヘッド(80)と中間プレート(95)が、高段側シリンダ(70)の端部を閉塞する閉塞部材を構成している。
本実施形態の圧縮機構(40)では、高段側圧縮機構(42)の押しのけ容積VHと低段側圧縮機構(41)の押しのけ容積VLとが互いに同じ値となっている。なお、本実施形態の圧縮機構(40)において、高段側圧縮機構(42)の押しのけ容積VHの低段側圧縮機構(41)の押しのけ容積VLに対する比(VH/VL)は、0.8以上1.3以下の範囲内の値となっているのが望ましく、また0.9以上1.1以下の範囲内の値となっているのが更に望ましい。
ここで、低段側圧縮機構(41)の押しのけ容積VLは、低段側圧縮室(66)の容積の最大値と等しい。つまり、低段側圧縮機構(41)の押しのけ容積VLは、駆動軸(50)が一回転する間に低段側圧縮室(66)へ吸入される冷媒の体積と等しい。一方、高段側圧縮機構(42)の押しのけ容積VHは、高段側圧縮室(76)の容積の最大値と等しい。つまり、高段側圧縮機構(42)の押しのけ容積VHは、駆動軸(50)が一回転する間に高段側圧縮室(76)へ吸入される冷媒の体積と等しい。
本実施形態の圧縮機構(40)では、低段側圧縮機構(41)に一つの低段側吐出ポート(93)が設けられ、高段側圧縮機構(42)に二つの高段側吐出ポート(84,87)が設けられている。上述したように、これらの各吐出ポート(84,87,93)は、円形断面の貫通孔である。本実施形態の圧縮機構(40)において、各高段側吐出ポート(84,87)の開口面積(即ち、高段側吐出ポート(84,87)の断面積)は、低段側吐出ポート(93)の開口面積(即ち、低段側吐出ポート(93)の断面積)の70%以下となっている。つまり、第1高段側吐出ポート(84)の開口面積AH1、及び第2高段側吐出ポート(87)の開口面積AH2は、その何れも低段側吐出ポート(93)の開口面積ALの70%以下となっている(AH1≦0.7AL、AH2≦0.7AL)。その理由については後述する。ただし、第1高段側吐出ポート(84)の開口面積と、第2高段側吐出ポート(87)の開口面積とは、互いに相違していてよい。
また、本実施形態の圧縮機構(40)において、第1高段側吐出ポート(84)の開口面積AH1と第2高段側吐出ポート(87)の開口面積AH2の和(AH1+AH2)は、低段側吐出ポート(93)の開口面積ALと等しくなっている。本実施形態の圧縮機構(40)において、高段側圧縮機構(42)は、低段側圧縮機構(41)とガスインジェクション用配管(28)の両方から中間圧冷媒を吸入する。このため、高段側圧縮機構(42)の高段側吐出ポート(84,87)を通過する冷媒の体積流量は、低段側圧縮機構(41)の低段側吐出ポート(93)を通過する冷媒の体積流量と同程度になる場合がある。そこで、本実施形態の圧縮機構(40)では、高段側吐出ポート(84,87)を通過する際の冷媒の圧力損失を低減するために、各高段側吐出ポート(84,87)の開口面積の合計値が比較的大きな値に設定されている。
〈吐出弁〉
第1高段側吐出弁(85)、第2高段側吐出弁(88)、及び低段側吐出弁(94)の構造について、図4を参照しながら説明する。これらの各吐出弁(85,88,94)は、何れもいわゆるリード弁である。
具体的に、各吐出弁(85,88,94)は、弁体(85a,88a,94a)と、弁押え(85b,88b,94b)と、固定用ビス(85c,88c,94c)とによって構成されている。弁体(85a,88a,94a)は、細長い形状に形成された金属製の平坦な薄板である。これら各吐出弁(85,88,94)の弁体(85a,88a,94a)は、それぞれの材質が共通しており、且つそれぞれの板厚が等しくなっている。弁押え(85b,88b,94b)は、弁体(85a,88a,94a)よりも一回り大きくてやや肉厚に形成された金属製の板状部材である。弁押え(85b,88b,94b)は、弁体(85a,88a,94a)を覆うように設けられている。また、弁押え(85b,88b,94b)は、やや湾曲した形状に形成されており、弁体(85a,88a,94a)とは反対側に反り返るような姿勢で弁体(85a,88a,94a)に積層されている。固定用ビス(85c,88c,94c)は、積層された弁体(85a,88a,94a)及び弁押え(85b,88b,94b)の基端部を貫通し、各吐出弁(85,88,94)の取り付け対象の部材に締結されている。
図4(A)に示すように、各吐出弁(85,88,94)の弁体(85a,88a,94a)は、その先端部が吐出ポート(84,87,93)を塞ぐように設けられる。具体的に、第1高段側吐出弁(85)の弁体(85a)の先端部は、第1高段側吐出ポート(84)を塞ぐようにフロントヘッド(80)の平板部(81)と密着している。また、第2高段側吐出弁(88)の弁体(88a)の先端部は、第2高段側吐出ポート(87)を塞ぐように高段側シリンダ(70)と密着している。また、低段側吐出弁(94)の弁体(94a)の先端部は、低段側吐出ポート(93)を塞ぐようにリアヘッド(90)と密着している。
各弁体(85a,88a,94a)の前面うち吐出ポート(84,87,93)に臨む部分には、吐出ポート(84,87,93)と連通する圧縮室(66,76)内の冷媒圧力が作用する。一方、低段側吐出弁(94)の弁体(94a)の背面には、中間圧通路(92)内の冷媒圧力(即ち、冷凍サイクルの中間圧)が作用し、各高段側吐出弁(85,88)の弁体(85a,88a)には、ケーシング(31)内の冷媒圧力(即ち、冷凍サイクルの高圧)が作用する。そして、圧縮室(66,76)内の冷媒が弁体(85a,88a,94a)を押し上げようとする力が、弁体(85a,88a,94a)を吐出ポート(84,87,93)へ押し付けようとする力を上回ると、図4(B)に示すように、弁体(85a,88a,94a)が弾性変形して吐出ポート(84,87,93)が開き、吐出ポート(84,87,93)を通って圧縮室(66,76)から冷媒が流出してゆく。
−運転動作−
〈空調機の動作〉
本実施形態の二段圧縮機(30)が設けられた空調機(10)は、冷房運転と暖房運転を選択的に実行する。冷房運転中や暖房運転中の空調機(10)において、冷媒回路(15)では、冷媒を循環させることによって冷凍サイクルが行われる。冷媒回路(15)で行われる冷凍サイクルでは、その高圧が冷媒の臨界圧力よりも高い値に設定される。
空調機(10)の冷房運転について説明する。冷房運転時の冷媒回路(15)では、四方切換弁(20)が第1状態(図1に実線で示す状態)に設定され、室外熱交換器(21)がガスクーラとして動作し、室内熱交換器(29)が蒸発器として動作する。また、冷房運転時において、第1膨張弁(25)の開度は、冷凍サイクルの高圧が所定の目標値となるように調節され、第2膨張弁(26)の開度は、室内熱交換器(29)の出口における冷媒の過熱度が所定の目標値となるように調節される。
冷房運転時の冷媒回路(15)において、二段圧縮機(30)から吐出された冷媒は、四方切換弁(20)を通って室外熱交換器(21)へ流入し、室外空気へ放熱する。室外熱交換器(21)から流出した高圧冷媒は、ブリッジ回路(22)の第2逆止弁(22b)を通過して第1膨張弁(25)を流入する。冷媒は、第1膨張弁(25)を通過する際に減圧されて気液二相状態となり、その後に気液分離器(27)へ流入して液冷媒とガス冷媒に分離される。
気液分離器(27)の液冷媒は、第2膨張弁(26)を通過する際に更に減圧された後にブリッジ回路(22)の第4逆止弁(22d)を通過し、液側連絡配管(18)を通って室内熱交換器(29)へ流入し、室内空気から吸熱して蒸発する。室内ユニット(12)は、室内熱交換器(29)において冷却された室内空気を室内へ供給する。室内熱交換器(29)から流出した低圧ガス冷媒は、ガス側連絡配管(19)と四方切換弁(20)を順に通過し、二段圧縮機(30)の低段側圧縮機構(41)へ吸入されて圧縮される。
一方、気液分離器(27)のガス冷媒は、ガスインジェクション用配管(28)を通って二段圧縮機(30)の接続用配管(39)へ導入され、低段側圧縮機構(41)において圧縮された中間圧のガス冷媒と共に高段側圧縮機構(42)へ吸入される。高段側圧縮機構(42)へ吸入された冷媒は、その臨界圧力よりも高い圧力にまで圧縮され、その後に二段圧縮機(30)から吐出される。
空調機(10)の暖房運転について説明する。暖房運転時の冷媒回路(15)では、四方切換弁(20)が第2状態(図1に破線で示す状態)に設定され、室内熱交換器(29)がガスクーラとして動作し、室外熱交換器(21)が蒸発器として動作する。また、暖房運転時において、第1膨張弁(25)の開度は、冷凍サイクルの高圧が所定の目標値となるように調節され、第2膨張弁(26)の開度は、室外熱交換器(21)の出口における冷媒の過熱度が所定の目標値となるように調節される。
暖房運転時の冷媒回路(15)において、二段圧縮機(30)から吐出された冷媒は、四方切換弁(20)とガス側連絡配管(19)を順に通って室内熱交換器(29)へ流入し、室内空気へ放熱する。室内ユニット(12)は、室内熱交換器(29)において加熱された室内空気を室内へ供給する。室内熱交換器(29)から流出した高圧冷媒は、液側連絡配管(18)とブリッジ回路(22)の第3逆止弁(22c)とを順に通過して第1逆止弁(22a)へ流入する。冷媒は、第1膨張弁(25)を通過する際に減圧されて気液二相状態となり、その後に気液分離器(27)へ流入して液冷媒とガス冷媒に分離される。
気液分離器(27)の液冷媒は、第2膨張弁(26)を通過する際に更に減圧された後にブリッジ回路(22)の第1逆止弁(22a)を通過して室外熱交換器(21)へ流入し、室外空気から吸熱して蒸発する。室内熱交換器(29)から流出した低圧ガス冷媒は、四方切換弁(20)を通過して二段圧縮機(30)の低段側圧縮機構(41)へ吸入される。
一方、気液分離器(27)のガス冷媒は、ガスインジェクション用配管(28)を通って二段圧縮機(30)の接続用配管(39)へ導入され、低段側圧縮機構(41)において圧縮された中間圧のガス冷媒と共に高段側圧縮機構(42)へ吸入される。高段側圧縮機構(42)へ吸入された冷媒は、その臨界圧力よりも高い圧力にまで圧縮され、その後に二段圧縮機(30)から吐出される。
暖房運転中の冷媒回路(15)で行われる冷凍サイクルについて、図5のモリエル線図を参照しながら説明する。
二段圧縮機(30)から吐出管(36)を通って吐出された点Dの状態の冷媒は、室内熱交換器(29)へ流入して室内空気へ放熱し、点Eの状態で第1膨張弁(25)へ流入する。その後、冷媒は、第1膨張弁(25)を通過する間に減圧され、点Fの状態(気液二相状態)となって気液分離器(27)へ流入する。気液分離器(27)へ流入した冷媒は、点Gの状態の飽和液冷媒と、点Hの状態の飽和ガス冷媒とに分離される。
気液分離器(27)から流出した点Gの状態の冷媒は、第2膨張弁(26)を通過する際に減圧され、点Iの状態で室外熱交換器(21)へ流入する。室外熱交換器(21)へ流入した冷媒は、室外空気から吸熱して蒸発し、点Aの状態で二段圧縮機(30)の低段側圧縮機構(41)へ吸入される。
二段圧縮機(30)において、低段側圧縮機構(41)へ吸入された冷媒は、圧縮されて点Bの状態となり、低段側圧縮機構(41)から吐出される。低段側圧縮機構(41)から吐出された冷媒は、気液分離器(27)から流出した点Hの状態の冷媒と混合されて点Cの状態となり、高段側圧縮機構(42)へ吸入される。その後、冷媒は、高段側圧縮機構(42)において圧縮され、点Dの状態で二段圧縮機(30)から吐出される。
〈二段圧縮機の動作〉
二段圧縮機(30)の動作について説明する。
吸入管(35)へ流入した低圧冷媒は、低段側吸入ポート(62)を通って低段側圧縮室(66)へ吸入される。低段側圧縮機構(41)では、駆動軸(50)によって駆動された低段側ピストン(63)が低段側シリンダ(60)内において偏心回転し、低段側圧縮室(66)内の冷媒が圧縮される。低段側圧縮室(66)内において圧縮された冷媒は、低段側吐出ポート(93)を通って中間圧通路(92)へ吐出される。中間圧通路(92)へ流入した中間圧冷媒は、中間吐出管(37)を通って接続用配管(39)へ流入し、ガスインジェクション用配管(28)から送り込まれた中間圧のガス冷媒と共に中間吸入管(38)へ流入する。
中間吸入管(38)へ流入した中間圧冷媒は、高段側吸入ポート(72)を通って高段側圧縮室(76)へ吸入される。高段側圧縮機構(42)では、駆動軸(50)によって駆動された高段側ピストン(73)が高段側シリンダ(70)内において偏心回転し、高段側圧縮室(76)内の冷媒が圧縮される。高段側圧縮室(76)内において圧縮された冷媒は、第1高段側吐出ポート(84)を通ってマフラー(86)の内側の空間へ吐出される。高段側圧縮機構(42)から吐出された超臨界状態の高圧冷媒は、ケーシング(31)の内部空間を通って吐出管(36)へ流入し、この吐出管(36)を通って二段圧縮機(30)から流出してゆく。
−吐出ポートの開口面積−
上述したように、本実施形態の圧縮機構(40)において、第1高段側吐出ポート(84)の開口面積AH1、及び第2高段側吐出ポート(87)の開口面積AH2は、その何れも低段側吐出ポート(93)の開口面積ALの70%以下となっている。ここでは、その理由について説明する。
〈高段側吐出ポートの個数〉
先ず、高段側圧縮機構(42)に複数の吐出ポートを設ける必要がある理由について説明する。なお、以下の説明では、高段側圧縮機構(42)に高段側吐出ポートと高段側吐出弁が一つずつ設けられていると仮定して試算を行っている。
本実施形態では、低段側吐出弁(94)の弁体(94a)及び各高段側吐出弁(85,88)の弁体(85a,88a)の材料として、本実施形態の二段圧縮機(30)と同等の能力を有する2シリンダ型の単段ロータリ圧縮機(以下では、2シリンダ型単段圧縮機という)に設けられる吐出弁の弁体の材料と同じものを用いることができるように、各吐出ポート(84,87,93)の開口面積が設定されている。
2シリンダ型単段圧縮機において、一つのシリンダ内の圧縮室から吐出される冷媒の量は、最終的に圧縮機から吐出される冷媒の量の半分である。それに対して、本実施形態の二段圧縮機(30)では、低段側圧縮機構(41)から吐出された冷媒の全部が高段側圧縮機構(42)へ吸入される。このため、低段側圧縮機構(41)と高段側圧縮機構(42)のそれぞれから吐出される冷媒の量は、2シリンダ型単段圧縮機の各シリンダから吐出される冷媒の量の概ね2倍となる。従って、低段側圧縮機構(41)の低段側吐出ポート(93)の開口面積ALと、高段側圧縮機構(42)の高段側吐出ポートの開口面積AHとは、何れも2シリンダ型単段圧縮機の各シリンダに形成される吐出ポートの開口面積A0の2倍に設定されるのが望ましい。
そこで、このように吐出ポートの開口面積が設定された2シリンダ型単段圧縮機と二段圧縮機(30)について、吐出弁の弁体に作用する応力を比較する。ここでは、弁体に作用する応力が最も大きくなる条件として、冷凍サイクルの高圧が10MPaであり、冷凍サイクルの中間圧が4MPaであり、冷凍サイクルの低圧が1.5MPaである条件を設定し、その条件において吐出弁の弁体に作用する応力を比較する。
2シリンダ型単段圧縮機の吐出弁において、弁体の前面のうち吐出ポートに臨む部分に作用する圧力の最小値は1.5MPa(即ち、冷凍サイクルの低圧)であり、弁体の背面に作用する圧力の値は10MPa(即ち、冷凍サイクルの高圧)である。従って、弁体に作用する差圧の最大値は、8.5MPaとなる。
一方、二段圧縮機(30)の低段側圧縮機構(41)の低段側吐出弁(94)において、弁体(94a)のうち低段側吐出ポート(93)に臨む部分に作用する圧力の最小値は1.5MPa(即ち、冷凍サイクルの低圧)であり、弁体(94a)の背面に作用する圧力の値は4MPa(即ち、冷凍サイクルの中間圧)である。従って、弁体(94a)に作用する差圧の最大値は、2.5MPaとなる。
また、二段圧縮機(30)の高段側圧縮機構(42)の高段側吐出弁において、弁体のうち吐出ポートに臨む部分に作用する圧力の最小値は4MPa(即ち、冷凍サイクルの中間圧)であり、弁体の背面に作用する圧力の値は10MPa(即ち、冷凍サイクルの高圧)である。従って、弁体に作用する差圧の最大値は、6MPaとなる。
ここで、弁体に作用する応力は、弁体に作用する差圧に比例し、吐出ポートの開口面積に比例し、弁体の板厚の二乗に反比例する。比較する弁体の材質と板厚は何れも同じと仮定する。その場合、2シリンダ型単段圧縮機の吐出弁に作用する応力S0は(式1)で、低段側吐出弁(94)の弁体(94a)に作用する応力SLは(式2)で、高段側吐出弁の弁体に作用する応力SHは(式3)で、それぞれ表される。なお、式1〜式3において、「t」は弁体の板厚であり、「Z」は弁体の材質に応じて定まる定数である。
式1:S0=(8.5A0/t2)Z
式2:SL=(2.5AL/t2)Z=(2.5(2A0)/t2)Z=(5A0/t2)Z
式3:SH=(6AH/t2)Z =(6(2A0)/t2)Z =(12A0/t2)Z
この場合において、低段側吐出弁(94)の弁体(94a)に作用する応力SLは、2シリンダ型単段圧縮機の吐出弁に作用する応力S0の0.6倍(SL/S0=0.6)となる。従って、低段側吐出弁(94)の弁体(94a)については、その材質と板厚が2シリンダ型単段圧縮機の吐出弁の弁体と同じであっても、充分な強度が得られる。
一方、この場合において、高段側吐出弁の弁体に作用する応力SHは、2シリンダ型単段圧縮機の吐出弁に作用する応力S0の1.4倍(SH/S0=1.4)となる。従って、高段側圧縮機構(42)に吐出ポートと吐出弁を一つずつだけ設けたとすると、その弁体の材質と板厚が2シリンダ型単段圧縮機の吐出弁の弁体と同じであれば、弁体の強度が不足するおそれがある。そこで、本実施形態の二段圧縮機(30)では、高段側圧縮機構(42)に高段側吐出ポート(84,87)と高段側吐出弁(85,88)を二つずつ設けている。
〈高段側吐出ポートと低段側吐出ポートの開口面積の比〉
次に、本実施形態の圧縮機構(40)において、第1高段側吐出ポート(84)及び第2高段側吐出ポート(87)の開口面積が低段側吐出ポート(93)の開口面積の70%以下となっている理由を説明する。
式1と式3を用いて、高段側吐出弁(85,88)の弁体(85a,88a)に作用する応力SHが2シリンダ型単段圧縮機の吐出弁に作用する応力S0と等しくなる場合の、開口面積AHを求める。式1と式3においてS0=SHとすると、8.5A0=6AHとなるため、AH=(8.5/6)A0という関係が得られる。AL=2A0であることから、AH=(8.5/6)/2AL=0.7ALとなる。
つまり、各高段側吐出ポート(84,87)の開口面積が低段側吐出ポート(93)の開口面積ALの70%以下になっていれば、高段側吐出弁(85,88)の弁体(85a,88a)に作用する応力は、2シリンダ型単段圧縮機の吐出弁に作用する応力と同等に抑えられる。このため、本実施形態の二段圧縮機(30)では、第1高段側吐出ポート(84)の開口面積AH1、及び第2高段側吐出ポート(87)の開口面積AH2が、その何れもが低段側吐出ポート(93)の開口面積ALの70%以下に設定されている。その結果、本実施形態の二段圧縮機(30)では、低段側吐出弁(94)の弁体(94a)、及び各高段側吐出弁(85,88)の弁体(85a,88a)のそれぞれについて、材質と板厚を共通化することが可能となる。
−二段圧縮機の特性について−
本実施形態の二段圧縮機(30)は、“冷凍サイクルの低圧が低くなって二段圧縮機(30)の吸入冷媒(低圧冷媒)と吐出冷媒(高圧冷媒)の圧力差が拡大すると、低段側圧縮機構(41)の吸入冷媒(低圧冷媒)と吐出冷媒(中間圧冷媒)の圧力差はさほど拡大しない一方で、高段側圧縮機構(42)の吸入冷媒(中間圧冷媒)と吐出冷媒(高圧冷媒)の圧力差が拡大する”という特性を有している。ここでは、本実施形態の二段圧縮機(30)がこのような特性を有する理由について説明する。
上述したように、本実施形態の二段圧縮機(30)では、低段側圧縮機構(41)の低段側ピストン(63)と、高段側圧縮機構(42)の高段側ピストン(73)とが一本の駆動軸(50)に係合しており、低段側圧縮機構(41)と高段側圧縮機構(42)は常に同じ回転速度で駆動される。このため、単位時間当たりに低段側圧縮機構(41)へ吸入される冷媒の体積と、単位時間当たりに高段側圧縮機構(42)へ吸入される冷媒の体積との比を制御等によって調節することはできない。また、本実施形態の二段圧縮機(30)は、低段側圧縮機構(41)とガスインジェクション用配管(28)の両方から中間圧冷媒を高段側圧縮機構(42)へ供給する中間圧インジェクション動作を行う。
このような二段圧縮機(30)が接続された冷媒回路(15)において行われる冷凍サイクルでは、冷凍サイクルの低圧が低い運転条件になると、その中間圧も低くなる。例えば外気が非常に低温(例えば−10℃程度)である運転条件で暖房運転を行う場合には、室外熱交換器(21)における冷媒の蒸発温度を外気温よりも低くする必要があるため、冷凍サイクルの低圧が低い値となる。一方、室内熱交換器(29)における暖房能力を確保する必要があるため、外気温が非常に低い運転条件か否かに拘わらず、冷凍サイクルの高圧はある程度の値(例えば10MPa前後)に保つ必要がある。このため、冷凍サイクルの低圧の低下に伴って中間圧が低下すると、中間圧と低圧の差はそれほど拡大しない一方、高圧と中間圧の差は大幅に拡大する。
その理由について、図6を参照しながら説明する。図6は、二段圧縮機(30)における低段側圧縮室(66)及び高段側圧縮室(76)の容積と圧力の関係を示したPV線図である。ただし、図6の横軸は、「容積」ではなく「低段側圧縮室(66)の最大容積に対する比」である。
標準的な暖房運転条件(例えば、外気温が5℃前後の運転条件)において、二段圧縮機(30)では、図6の実線で示すように冷媒の吸入、圧縮、吐出の各行程が行われる。
具体的に、低段側圧縮機構(41)では、図6の点aから点dに至るように、低段側圧縮室(66)の容積とその内圧とが変化する。先ず、点aから点bに至る過程では、低段側圧縮室(66)の容積が次第に拡大し、低段側圧縮室(66)へ低圧冷媒が吸い込まれてゆく。次に、点bから点cに至る過程では、閉じきり状態となった低段側圧縮室(66)(即ち、低段側圧縮室(66)の吐出側空間(68))の容積が次第に縮小し、そこに閉じ込められた冷媒の圧力が次第に上昇する。そして、点cから点dに至る過程では、低段側圧縮室(66)から低段側吐出ポート(93)を通って冷媒が吐出されてゆく。
一方、高段側圧縮機構(42)では、図6の点dから点gに至るように、高段側圧縮室(76)の容積とその内圧とが変化する。先ず、点dから点eに至る過程では、高段側圧縮室(76)の容積が次第に拡大し、高段側圧縮室(76)へ中間圧冷媒が吸い込まれてゆく。高段側圧縮室(76)へは、低段側圧縮機構(41)とガスインジェクション用配管(28)の両方から中間圧冷媒が流入する。このため、吸入行程が終了する点eにおける高段側圧縮室(76)の容積比は、低段側圧縮機構(41)で吐出行程が開始される点cにおける低段側圧縮室(66)の容積比よりも大きくなる。次に、点eから点fに至る過程では、閉じきり状態となった高段側圧縮室(76)(即ち、高段側圧縮室(76)の吐出側空間(78))の容積が次第に縮小し、そこに閉じ込められた冷媒の圧力が次第に上昇する。そして、点fから点gに至る過程では、高段側圧縮室(76)から高段側吐出ポート(84,87)を通って冷媒が吐出されてゆく。
それに対し、外気温が非常に低い暖房運転条件において、二段圧縮機(30)では、図6の破線で示すように冷媒の吸入、圧縮、吐出の各行程が行われる。つまり、低段側圧縮機構(41)では、点a'から点b'に至る過程で低段側圧縮室(66)へ低圧冷媒が吸入され、点b'から点c'に至る過程で低段側圧縮室(66)内の冷媒が圧縮され、点c'から点d'に至る過程で低段側圧縮室(66)から中間圧冷媒が吐出される。また、高段側圧縮機構(42)では、点d'から点e'に至る過程で高段側圧縮室(76)へ中間圧冷媒が吸入され、点e'から点f'に至る過程で高段側圧縮室(76)内の冷媒が圧縮され、点f'から点gに至る過程で高段側圧縮室(76)から高圧冷媒が吐出される。
この外気温が非常に低い暖房運転条件において冷凍サイクルの中間圧を引き上げるためには、低段側圧縮機構(41)で圧縮行程が終了する時点における低段側圧縮室(66)の容積を小さくしなければならない。一方、高段側圧縮機構(42)で吸入行程が終了する時点における高段側圧縮室(76)の容積は、常に同じ値である。また、低段側圧縮機構(41)と高段側圧縮機構(42)は常に同じ回転速度で駆動されており、単位時間当たりに高段側圧縮機構(42)へ吸入される冷媒の量だけを減らすことはできない。このため、低段側圧縮機構(41)で圧縮行程が終了する時点における低段側圧縮室(66)の容積を小さくするには、ガスインジェクション用配管(28)から高段側圧縮機構(42)へ吸入される中間圧冷媒の量を増やさなければならない。
しかしながら、本実施形態の冷媒回路(15)では、ガスインジェクション用配管(28)から高段側圧縮機構(42)へ吸入される中間圧冷媒の量を大幅に増やすことができない。その理由を説明する。中間圧の液冷媒が高段側圧縮室(76)へ多量に流入すると高段側圧縮機構(42)が破損するため、ガスインジェクション用配管(28)から高段側圧縮機構(42)へ吸入される中間圧冷媒は、原則的にはガス単相状態である必要がある。一方、ガスインジェクション用配管(28)から高段側圧縮機構(42)へ供給できる中間圧ガス冷媒の量は、気液分離器(27)へ流入する冷媒(図5のモリエル線図における点Fの状態の冷媒)の乾き度によって決まってしまう。つまり、ガスインジェクション用配管(28)から高段側圧縮機構(42)へ供給される中間圧ガス冷媒の量を大幅に増やすには、気液分離器(27)へ流入する冷媒の乾き度を大幅に引き上げ、その冷媒に含まれるガス冷媒の量を大幅に増加させることが必要となる。
ところが、気液分離器(27)へ流入する冷媒の乾き度は、それほど大幅に増やすことができない。その理由を説明する。暖房能力を確保する必要があるので、室内熱交換器(29)から第1膨張弁(25)へ流入する冷媒(即ち、図5のモリエル線図における点Eの状態の冷媒)のエンタルピを大幅に増大させることはできない。このため、第1膨張弁(25)から気液分離器(27)へ流入する冷媒(即ち、図5のモリエル線図における点Fの状態の冷媒)のエンタルピを大幅に増大させることができず、その結果、気液分離器(27)へ流入する冷媒の乾き度を大幅に引き上げることができない。従って、ガスインジェクション用配管(28)から高段側圧縮機構(42)へ供給される中間圧ガス冷媒の量を大幅に増やすことはできない。
このように、本実施形態の二段圧縮機(30)では、低段側圧縮機構(41)へ吸入される冷媒の圧力(即ち、冷凍サイクルの低圧)が低くなっても、低段側圧縮機構(41)における圧縮比を大きくすることができない。従って、この二段圧縮機(30)では、低段側圧縮機構(41)へ吸入される冷媒の圧力が低くなると、低段側圧縮機構(41)から吐出される冷媒の圧力(即ち、冷凍サイクルの中間圧)も低くなってしまう。
その結果、本実施形態の二段圧縮機(30)では、上述したように、冷凍サイクルの低圧が低くなって二段圧縮機(30)へ吸入される低圧冷媒と二段圧縮機(30)から吐出される高圧冷媒の圧力差が拡大すると、低段側圧縮機構(41)へ吸入される低圧冷媒とそこから吐出される中間圧冷媒の圧力差はさほど拡大しない一方で、高段側圧縮機構(42)へ吸入される中間圧冷媒とそこから吐出される高圧冷媒の圧力差が拡大する。このため、本実施形態の二段圧縮機(30)では、低段側吐出弁(94)の弁体(94a)の前面と背面に作用する圧力の差の最大値に比べて、高段側吐出弁(85,88)の弁体(85a,88a)の前面と背面に作用する圧力の差の最大値が大きくなる。
−実施形態1の効果−
上述したように、本実施形態の二段圧縮機(30)、即ち低段側圧縮機構(41)と高段側圧縮機構(42)が一本の駆動軸(50)によって駆動され且つ中間圧インジェクション動作を行う二段圧縮機(30)では、高段側圧縮機構(42)における吸入圧力と吐出圧力の差が非常に大きくなる場合があるにも拘わらず、高段側圧縮機構(42)の高段側吐出ポート(84,87)を通過する際の冷媒の圧力損失を低く抑えるために、高段側圧縮機構(42)の高段側吐出ポート(84,87)の開口面積をある程度大きくしなければならない。
それに対し、本実施形態の二段圧縮機(30)では、低段側圧縮機構(41)には一つの低段側吐出ポート(93)を設ける一方、高段側圧縮機構(42)には二つの高段側吐出ポート(84,87)を設けている。このため、高段側圧縮機構(42)における吐出ポート(84,87)の開口面積の合計値を充分に大きくすることによって、高段側圧縮機構(42)から吐出される際の冷媒の圧力損失を低く抑えられると同時に、高段側圧縮機構(42)における個々の吐出ポート(84,87)の開口面積を小さくすることによって、各吐出ポート(84,87)を開閉する高段側吐出弁(85,88)の弁体(85a,88a)に作用する力を小さく抑えられる。その結果、高段側吐出弁(85,88)の弁体(85a,88a)に要求される強度を、低く抑えることができる。
このように、本実施形態によれば、低段側圧縮機構(41)と高段側圧縮機構(42)が一本の駆動軸(50)によって駆動され且つ中間圧インジェクション動作を行う二段圧縮機(30)においても、高段側吐出弁(85,88)の弁体(85a,88a)の強度を低く抑えることができる。その結果、高段側吐出弁(85,88)の弁体(85a,88a)を変形させるのに必要な力を小さく抑えることができ、冷媒が高段側吐出弁(85,88)を押し開けて高段側圧縮室(76)から流出する際の抵抗を低く抑えることができる。従って、本実施形態によれば、高段側圧縮機構(42)において圧縮された冷媒と、二段圧縮機(30)が接続された冷媒回路(15)で行われる冷凍サイクルの高圧との差を小さくすることができ、二段圧縮機(30)を駆動するのに要する動力を削減することができる。
また、本実施形態の二段圧縮機(30)では、第1高段側吐出ポート(84)の開口面積AH1と第2高段側吐出ポート(87)の開口面積AH2の何れもが、低段側吐出ポート(93)の開口面積ALの70%以下となっている(AH1≦0.7AL、AH2≦0.7AL)。従って、本実施形態によれば、高段側吐出弁(85,88)の弁体(85a,88a)に作用する力と低段側吐出弁(94)の弁体(94a)に作用する力の差を充分に小さくすることができ、高段側吐出弁(85,88)の弁体(85a,88a)の強度を低段側吐出弁(94)の弁体(94a)の強度と同程度にすることが可能となる。この結果、低段側吐出弁(94)の弁体(94a)、及び各高段側吐出弁(85,88)の弁体(85a,88a)の材質と板厚を共通化でき、弁体(85a,88a,94a)の材料となる鋼板の種類を一種類に限定することで二段圧縮機(30)の製造コストを低減することができる。
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。本実施形態の二段圧縮機(30)は、上記実施形態1の二段圧縮機(30)において、高段側圧縮機構(42)の構成を変更したものである。本実施形態の高段側圧縮機構(42)では、第2高段側吐出ポート(87)及び第2高段側吐出弁(88)の配置が、上記実施形態1と異なっている。
図7に示すように、本実施形態の高段側圧縮機構(42)では、中間プレート(95)が主プレート部材(97)と副プレート部材(99)とによって構成されている。主プレート部材(97)及び副プレート部材(99)は、何れも平板状に形成されており、互いに積層された状態で低段側シリンダ(60)と高段側シリンダ(70)の間に挟み込まれている。主プレート部材(97)は、高段側シリンダ(70)と密着している。副プレート部材(99)は、低段側シリンダ(60)と密着している。
本実施形態の高段側圧縮機構(42)において、第2高段側吐出ポート(87)は、主プレート部材(97)に形成されている。第2高段側吐出ポート(87)は、主プレート部材(97)をその厚み方向へ貫通する円形断面の貫通孔である。主プレート部材(97)には、その下面の一部を掘り下げることによって凹部(98)が形成されている。第2高段側吐出ポート(87)は、その一端が主プレート部材(97)の上面に開口し、その他端が主プレート部材(97)の下面のうち凹部(98)に位置する部分に開口している。また、主プレート部材(97)の上面における第2高段側吐出ポート(87)の開口端は、フロントヘッド(80)の下面における第1高段側吐出ポート(84)の開口端と向かい合っている。
また、本実施形態の高段側圧縮機構(42)において、第2高段側吐出弁(88)は、主プレート部材(97)に取り付けられている。具体的に、第2高段側吐出弁(88)は、主プレート部材(97)の下面のうち凹部(98)に位置する部分に固定されている。そして、第2高段側吐出弁(88)の弁体(88a)は、その先端部が第2高段側吐出ポート(87)を塞ぐように主プレート部材(97)の下面に密着している。
主プレート部材(97)に形成された凹部(98)は、主プレート部材(97)の外周面に開口している。このため、主プレート部材(97)と副プレート部材(99)が積層された状態でも、凹部(98)は圧縮機構(40)の外側の空間と連通しており、第2高段側吐出ポート(87)から凹部(98)へ吐出された高圧冷媒が吐出管(36)へと流れてゆく。
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3について説明する。本実施形態の二段圧縮機(30)は、上記実施形態1の二段圧縮機(30)において、高段側圧縮機構(42)の構成を変更したものである。本実施形態の高段側圧縮機構(42)では、第2高段側吐出ポート(87)及び第2高段側吐出弁(88)の配置が、上記実施形態1と異なっている。
図8に示すように、本実施形態の高段側圧縮機構(42)では、第1高段側吐出ポート(84)と第2高段側吐出ポート(87)の両方がフロントヘッド(80)の平板部(81)に形成されている。フロントヘッド(80)の平板部(81)では、第1高段側吐出ポート(84)に隣接して第2高段側吐出ポート(87)が形成されている。第2高段側吐出ポート(87)は、第1高段側吐出ポート(84)と同様に、フロントヘッド(80)の平板部(81)を貫通している。
また、本実施形態の高段側圧縮機構(42)では、第1高段側吐出弁(85)と第2高段側吐出弁(88)の両方がフロントヘッド(80)の平板部(81)に取り付けられている。そして、第2高段側吐出弁(88)の弁体(88a)は、その先端部が第2高段側吐出ポート(87)を塞ぐようにフロントヘッド(80)の平板部(81)の上面に密着している。
本実施形態の高段側圧縮機構(42)では、フロントヘッド(80)に全ての高段側吐出ポート(84,87)が形成されている。このため、高段側吐出ポート(84,87)の形成されていない中間プレート(95)や高段側シリンダ(70)の構成を従来のものから変更せずに、高段側圧縮機構(42)に複数の高段側吐出ポート(84,87)を形成することができる。従って、本実施形態によれば、高段側圧縮機構(42)に吐出ポートが一つだけ設けられた一般的な二段圧縮機の構成部材のうち設計変更せずに本実施形態の二段圧縮機(30)に使用できるものを増やすことができ、二段圧縮機(30)の製造コストを低減することができる。
《その他の実施形態》
−第1変形例−
上記各実施形態の二段圧縮機(30)では、高段側圧縮機構(42)に三つ以上の吐出ポートが設けられていてもよい。
−第2変形例−
上記各実施形態の二段圧縮機(30)では、低段側吐出ポート(93)及び各高段側吐出ポート(84,87)の断面形状が非円形であってもよい。つまり、低段側吐出ポート(93)及び各高段側吐出ポート(84,87)の断面形状は、例えば楕円形や長円形であってもよい。
−第2変形例−
上記各実施形態の二段圧縮機(30)において、低段側圧縮機構(41)と高段側圧縮機構(42)は、ピストン(63,73)とブレード(64,74)が別体に形成されたローリングピストン型のロータリ式流体機械によって構成されていてもよい。その場合、ブレード(64,74)は、シリンダ(60,70)に対してシリンダ(60,70)の径方向へ進退自在に設置され、その先端がピストン(63,73)の外周面に押し当てられる。
−第3変形例−
上記各実施形態の二段圧縮機(30)が接続された冷媒回路(15)は、高圧が冷媒の臨界圧力よりも低い値に設定された一般的な冷凍サイクルを行うように構成されていてもよい。この場合、冷媒回路(15)には、いわゆるフロン冷媒等が充填される。そして、本変形例の冷媒回路(15)では、冷房運転時には室外熱交換器(21)が凝縮器として動作し、暖房運転時には室内熱交換器(29)が凝縮器として動作する。
−第4変形例−
上記各実施形態の二段圧縮機(30)は、冷凍サイクルを行う空調機(10)の冷媒回路(15)に設けられているが、この二段圧縮機(30)の適用対象は、空調機には限られない。例えば、上記各実施形態の二段圧縮機(30)は、冷凍サイクルを行うヒートポンプ式の給湯器の冷媒回路に設けられていてもよい。
−第5変形例−
上記各実施形態の冷媒回路(15)は、中間圧のガス冷媒を気液分離器(27)から二段圧縮機(30)の接続用配管(39)へ供給するように構成されているが、冷媒回路(15)の構成はこれに限定されるものではない。例えば、冷媒回路(15)は、高圧液冷媒の一部を分岐させ、分岐した高圧液冷媒を膨張させて気液二相状態の中間圧冷媒とし、この気液二相状態の中間圧冷媒を残りの高圧液冷媒と熱交換させて蒸発させることによって中間圧のガス冷媒を生成し、こうして得られた中間圧のガス冷媒を二段圧縮機(30)の接続用配管(39)へ供給するように構成されていてもよい。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。