JP2010087172A - 半導体発光素子および端面出射型半導体レーザ素子 - Google Patents

半導体発光素子および端面出射型半導体レーザ素子 Download PDF

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Abstract

【課題】閾値電流と発光効率の双方の特性に優れた半導体発光素子および端面出射型半導体レーザ素子を提供する。
【解決手段】基板上に、p型半導体層、活性層、電流導入層および誘電体膜クラッド層がこの順に積層されている半導体発光素子である。ここで、基板とp型半導体層との間に設置されたn型半導体層を含むことが好ましい。また、基板またはn型半導体層に電気的に接続する第1の電極と、電流導入層に電気的に接続する第2の電極とを含み、第1の電極がアノード電極であり、第2の電極がカソード電極であることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、半導体発光素子および端面出射型半導体レーザ素子に関し、特に、閾値電流と発光効率の双方の特性に優れた半導体発光素子および端面出射型半導体レーザ素子に関する。
近年、光記憶メディア、照明およびディスプレイなどを用途とする窒化物半導体レーザ素子などの半導体発光素子の開発が進められており、様々な形態の半導体発光素子が検討されている。
たとえば特許文献1には、錫ドープ酸化インジウム(ITO:Indium Tin Oxide)を光閉じ込めのためのp型クラッド層として用いた形態の窒化物半導体レーザ素子が記載されている。
図10に、特許文献1に記載された窒化物半導体レーザ素子の模式的な断面図を示す。ここで、半導体レーザ素子9000は、GaN基板9001の表面上に、n型GaN層9002、n型AlGaNクラッド層9003、n型GaNガイド層9004、InGaN多重量子井戸活性層9005、アンドープGaNガイド層9006、p型AlGaN電子障壁層9007、p型GaNガイド層9008、SiO2ブロック層9009、Ni/ITOクラッド層電極9010およびTi/Auパッド電極9011がこの順序で積層された構造を有している。また、半導体レーザ素子9000のGaN基板9001の上記窒化物半導体層が形成されていない側の表面にTi/Al/Ni/Au電極9012が備えられている。
特許文献1に記載された窒化物半導体レーザ素子において、Ni/ITOクラッド層電極9010は、p型クラッド層および電流注入層としてそれぞれ機能する。
ITOは、酸化インジウム(In23)に錫(Sn)をドープしたものである。一般的にITOの電気伝導は、ドーパントである錫の余剰電子と、酸化インジウムの酸素欠損から生じる余剰電子により行なわれることが知られている。それゆえ、低抵抗率なITOを得るためにはITOの酸素欠損量を多くする必要がある。
しかしながら、ITOの酸素欠損量を多くした場合には、活性層で発生した光の光学的な透明性(光透過性)が減少するため、ITOにおいては、低抵抗率化と高光透過率化はトレードオフの関係にあることから、その両立は難しい。すなわち、ITOの光透過率を高めた場合にはITOが高抵抗率化してしまい、ITOの酸素欠損量を多くして低抵抗率化した場合にはITOがメタリック化して光透過率が低下する。
したがって、特許文献1に記載された窒化物半導体レーザ素子のように、光閉じ込めのためのp型クラッド層にITOを用いた場合には、光透過率と抵抗率とをそれぞれ独立に制御することができない。
また、一般的な窒化物半導体レーザ素子においては、p型クラッド層としてMgドープのp型AlGaNクラッド層が用いられているが、Mgドープのp型AlGaNクラッド層は光吸収率が高く、光透過率が低いことが知られている(たとえば、特許文献2参照)。
このような構成の窒化物半導体レーザ素子においても、Mgドープのp型AlGaNクラッド層を低抵抗率化することを目的としてp型ドーパントであるMgのドープ量を増加させた場合には、p型AlGaNクラッド層における光透過率が低くなる。したがって、p型クラッド層としてMgドープのp型AlGaNクラッド層を用いた場合にも、ITOの場合と同様に、低抵抗率化と高光透過率化はトレードオフの関係にあるため、その両立は難しい。
さらに、光閉じ込めを強くすることを目的として、p型AlGaNクラッド層のAl組成比を増加して屈折率を低下させた場合にも、p型AlGaNクラッド層が高抵抗率化する傾向にある。
このように、p型クラッド層としてMgドープのp型AlGaNクラッド層を用いた場合にも、光透過率と抵抗率とをそれぞれ独立に制御することができない。
また、一般的な窒化物半導体レーザ素子は、基板上に、n型窒化物半導体層、活性層およびp型窒化物半導体層の順序で積層した構成を有している。
しかしながら、p型の電気伝導と高い結晶性のp型窒化物半導体層を得るためには1000℃以上の高温で作製する必要があるが、活性層を形成した後に、活性層上に1000℃以上の高温でp型窒化物半導体層を形成した場合には、活性層に含まれる窒化物半導体結晶が熱によるダメージで結晶劣化を引き起こしてしまう。
特に、440〜550nm程度の比較的長波長のレーザ光を発振させる場合には、活性層に含まれる井戸層のIn組成比を0.15以上0.3以下と比較的大きくする必要がある。しかしながら、このようにIn組成比を比較的大きくしたときには、活性層の形成後にp型窒化物半導体層を形成する際の熱が大きく影響し、熱によるダメージを受けやすくなる。したがって、440〜550nm程度の比較的長波長のレーザ光を発振させる場合には、この熱によるダメージが非常に問題であった。
以上のように、従来の半導体発光素子においては、p型クラッド層における低抵抗率化および高光透過率化を実現することができなかっため、閾値電流と発光効率の双方の特性に優れた半導体発光素子を得ることは困難であった。
特開2006―41491号公報 特開2002−124737号公報
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、閾値電流と発光効率の双方の特性に優れた半導体発光素子および端面出射型半導体レーザ素子を提供することにある。
本発明は、基板上に、p型半導体層、活性層、電流導入層および誘電体膜クラッド層がこの順に積層されている半導体発光素子である。
ここで、本発明の半導体発光素子においては、基板とp型半導体層との間に設置されたn型半導体層を含むことが好ましい。
また、本発明の半導体発光素子においては、基板またはn型半導体層に電気的に接続する第1の電極と、電流導入層に電気的に接続する第2の電極とを含み、第1の電極がアノード電極であり、第2の電極がカソード電極であることが好ましい。
また、本発明の半導体発光素子においては、活性層がInxGa1-xN(0<x≦1)からなる井戸層を含み、井戸層のIn組成比xは、0.15以上0.3以下であることが好ましい。
また、本発明は、基板上に、p型半導体層、活性層および電流導入層がこの順に積層されており、活性層の発光領域上に電流導入層が積層されており、活性層の発光領域以外の領域上に電流導入層に電気的に接続する電極が設けられている端面出射型半導体レーザ素子である。
また、本発明は、基板上に、p型半導体層、活性層、電流導入層および電極がこの順に積層されており、活性層の発光領域上に電流導入層が積層されており、活性層の発光領域以外の領域上に電極が設けられている端面出射型半導体レーザ素子である。
さらに、本発明は、基板上に、p型半導体層、活性層、電流導入層および誘電体膜クラッド層がこの順に積層されており、活性層の発光領域上に電流導入層および誘電体膜クラッド層がこの順に積層されており、活性層の発光領域以外の領域上に電流導入層に電気的に接続する電極が設けられている端面出射型半導体レーザ素子である。
ここで、本発明の端面出射型半導体レーザ素子において、活性層はInxGa1-xN(0<x≦1)からなる井戸層を含み、井戸層のIn組成比xは、0.15以上0.3以下であることが好ましい。
なお、本発明において、井戸層のIn組成比xは、以下の式(1)で算出される。
(井戸層のIn組成比x)=(井戸層を構成するInの原子数)/(井戸層を構成するAlの原子数とGaの原子数とInの原子数との総和) …(1)
本発明によれば、閾値電流と発光効率の双方の特性に優れた半導体発光素子および端面出射型半導体レーザ素子を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。また、結晶面および方向を表わす場合に、本来であれば所要の数字の上にバーを付した表現をするべきであるが、表現手段に制約があるため、本明細書においては、所要の数字の上にバーを付す表現の代わりに、所要の数字の前に「−」を付して表現している。
<構成の例示>
図1に、本発明の半導体発光素子としての端面出射型の窒化物半導体レーザ素子の一例の模式的な斜視図を示す。ここで、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000は、n型GaNからなる窒化物半導体基板1001と、n型窒化物半導体基板1001上に形成されたn型Al0.05Ga0.95Nからなるn型窒化物半導体クラッド層1002と、n型窒化物半導体クラッド層1002上に形成されたp型窒化物半導体ガイド層1003と、p型窒化物半導体ガイド層1003上に形成されたp型窒化物半導体キャリアブロック層1004と、p型窒化物半導体キャリアブロック層1004上に形成されたAlxGa1-xInNからなる活性層1005と、活性層1005上に形成されたn型窒化物半導体キャリアブロック層1006と、n型窒化物半導体キャリアブロック層1006上に形成された電流阻止絶縁膜1011と、電流阻止絶縁膜1011上に形成されたn型窒化物半導体ガイド層1007と、n型窒化物半導体ガイド層1007の表面の一部上に順次積層されたAlO0.050.95膜からなる第1の誘電体膜層1008とAl23膜からなる第2の誘電体膜層1009との積層体とを含んでいる。なお、この例においては、第1の誘電体膜層1008と第2の誘電体膜層1009との積層体から誘電体膜クラッド層が構成されることになる。
また、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000の基板1001の裏面には第1の電極1012が形成されており、n型窒化物半導体ガイド層1007の第1の誘電体膜層1008および第2の誘電体膜層1009が形成されていない表面上に第2の電極1010が形成されている。
ここで、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000においては、基板1001の裏面に設けられた第1の電極1012がアノード電極となり、n型窒化物半導体ガイド層1007の表面の一部に設けられた第2の電極1010がカソード電極となる。そして、アノード電極である第1の電極1012に正のバイアス電圧を印加し、カソード電極である第2の電極1010に負のバイアス電圧を印加することによって、図1中の矢印の方向に沿って電子が流れて電流が流れるため、活性層1005から図1の紙面に対して垂直方向にレーザ光が発振することになる。
なお、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000においては、電子の流れが電流阻止絶縁膜1011によって妨げられるため、レーザ光の発光領域は図1の幅tの範囲内となる。この発光領域の幅tは1μm以上100μm以下の範囲で適宜決定することができる。
また、図1に示すように、上記の発光領域の端から共振器端面に対して垂直方向に伸びる直線と、第1の誘電体膜層1008と第2の誘電体膜層1009との積層体からなる誘電体膜クラッド層の端から共振器端面に対して垂直方向に伸びる直線との間の最短距離をdとする。
上記の発光領域の光分布は、駆動電流の広がり、および上記の成長面に対して水平方向の光の広がりにより、通常、上記の発光領域から片側に2μm程度はみ出すため、誘電体膜クラッド層で有効に光を閉じ込める観点からは、上記の距離dは2μm以上であることが好ましい。
また、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000を誘電体膜クラッド層が形成されている側の上面から俯瞰して見た場合、上記の発光領域は、誘電体膜クラッド層の内部に含まれることが好ましい。なお、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000の共振器端面から当該共振器端面に対して垂直方向に0μmよりも大きく50μm以下の長さの領域内に誘電体膜クラッド層を形成しない箇所があってもよい。
また、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000の共振器端面には、窒化アルミニウムおよび/または酸窒化アルミニウムからなる端面コート膜を形成することが好ましい。これにより、高出力動作時の窒化物半導体レーザ素子の共振器端面の光学的破壊を抑制することができる。また、窒化物半導体からなる共振器端面上にスパッタ法などで窒化アルミニウムおよび/または酸窒化アルミニウムからなる端面コート膜を形成した場合には、下地となる共振器端面の窒化物半導体にエピタキシャル(下地となる共振器端面の窒化物半導体と結晶軸が揃う)して結晶化する。このように端面コート膜を結晶化し、下地となる共振器端面上にエピタキシャル成長させることによって、下地となる共振器端面と端面コート膜との界面における光吸収をさらに効果的に低減することができる。
また、この端面コート膜上に、たとえば、シリコン酸化物、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、タンタル酸化物、チタン酸化物、ニオブ酸化物、シリコン窒化物、アルミニウム窒化物、シリコン酸窒化物およびアルミニウム酸窒化物等から選択された少なくとも1種からなる膜を反射率調整用に形成することもできる。
図2に、本発明の半導体発光素子としての面発光型の窒化物半導体レーザ素子(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)の一例の模式的な断面図を示す。
ここで、図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000は、n型GaNからなる窒化物半導体基板2001と、窒化物半導体基板2001上に形成されたn型GaNからなるn型窒化物半導体バッファ層2002と、n型窒化物半導体バッファ層2002上に形成されたAl0.2Ga0.8N層とGaN層とを50ペア積層してなるDBR(Distributed Bragg Reflector)反射膜2003と、DBR反射膜2003上に形成されたn型GaNからなるn型窒化物半導体コンタクト層2004と、n型窒化物半導体コンタクト層2004上に形成されたp型GaN層2005と、p型GaN層2005上に形成された活性層2006と、活性層2006上に形成されたn型Al0.08Ga0.92Nからなるn型窒化物半導体キャリアブロック層2007と、n型窒化物半導体キャリアブロック層2007上に形成されたSiO2からなる電流阻止絶縁膜2008と、電流阻止絶縁膜2008上に形成されたn型GaN層2009と、n型GaN層2009上に形成されたAl0.2Ga0.8N層とGaN層とを50ペア積層してなるDBR反射膜2010とを含んでいる。なお、この例においては、DBR反射膜2010から誘電体膜クラッド層が構成されることになる。
また、n型窒化物半導体コンタクト層2004の表面には第1の電極2012が形成されており、n型GaN層2009の表面のDBR反射膜2010が形成されていない領域には第2の電極2011が形成されている。
ここで、図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000においては、n型窒化物半導体コンタクト層2004の表面に設けられた第1の電極2012がアノード電極となり、n型GaN層2009の表面においてDBR反射膜2010が形成されていない領域に設けられた第2の電極2011がカソード電極となる。
そして、アノード電極である第1の電極2012に正のバイアス電圧を印加し、カソード電極である第2の電極2011に負のバイアス電圧を印加することによって、図2中の矢印に沿って電子が流れ、活性層2006において発生したレーザ光は、DBR反射膜2003とDBR反射膜2010との間で反射を繰り返した後に、DBR反射膜2010側から発振することになる。
図3に、図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000を上面から見たときの模式的な平面図を示す。ここで、DBR反射膜2010側から発振するレーザ光は、直径がtである円形の発光領域の破線3001の内側から図3の紙面に対して垂直方向に図3の紙面の裏側から表側に向かって発振することになる。
なお、図2に示すように、窒化物半導体レーザ素子2000においては、電子の流れが電流阻止絶縁膜2008によって妨げられるため、レーザ光の発光領域は図2の幅tの範囲内となる。この発光領域の幅tは1μm以上400μm以下の範囲で適宜決定することができる。
また、図2に示すように、上記の発光領域の端から窒化物半導体層の成長方向に対して垂直方向に伸びる直線と、DBR反射膜2003からなる誘電体膜クラッド層の端から窒化物半導体層の成長方向に対して垂直方向に伸びる直線との間の最短距離をdとする。
上記の発光領域の光分布は、駆動電流の広がり、および上記の成長面に対して水平方向の光広がりにより、通常、上記の発光領域から片側に2μm程度はみ出すため、誘電体膜クラッド層で有効に光を閉じ込める観点からは、上記の距離dは2μm以上であることが好ましい。
従来のクラッド層は、屈折率による光閉じ込め効果と電気伝導と二つの役割を同時に果たしていたが、本発明のように誘電体膜クラッド層をクラッド層とした場合には、誘電体膜クラッド層を電流の通り道から外すことができるようになるため、誘電体膜クラッド層の屈折率のみ考慮すればよくなる。また、これまで絶縁性であるためにクラッド層として用いることができなかったたとえばSiO2などの絶縁膜を誘電体膜クラッド層として用いることができるようになる。
また、一般の窒化物半導体発光素子のように、活性層上にp型窒化物半導体層が設けられている場合には、p型窒化物半導体層においては横方向(成長面に対して平行方向)へのキャリアの移動度がn型窒化物半導体層に対して著しく低いため、横方向へ電流が流れにくい。しかしながら、本発明のように、活性層を形成する前にp型窒化物半導体層を形成し、活性層の基板側に位置するp型窒化物半導体層から正孔が活性層に注入する構成とした場合には、閾値電流と発光効率の双方の特性に優れた窒化物半導体発光素子を作製することができる。
以下、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000および図2に示す窒化物半導体レーザ素子2000を構成する各構成部位について説明する。
<基板>
図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000においては、基板としてn型窒化物半導体基板1001が用いられており、図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000においては、窒化物半導体基板2001が用いられているが、これらに限定されないことは言うまでもない。
本発明において、基板としては、たとえば、窒化物半導体基板、サファイア基板またはSiC(炭化ケイ素)基板などの半導体基板を用いることができ、本発明の半導体発光素子を窒化物半導体発光素子とする場合には、基板上に窒化物半導体結晶からなる窒化物半導体層を順次積層していく必要があるため、窒化物半導体層との格子整合性を高める観点から、窒化物半導体基板を用いることが好ましく、特にn型窒化物半導体基板を用いることがより好ましい。
また、基板として窒化物半導体基板を用いる場合には、窒化物半導体基板としては、たとえば、Alx1Gay1Inz1N(0≦x1≦1;0≦y1≦1;0≦z1≦1;x1+y1+z1=1)の式で表わされる窒化物半導体結晶からなる基板を用いることができ、より詳細には、GaN基板、AlGaN基板、AlN基板またはInGaN基板などを用いることができる。なお、上記の式において、Alはアルミニウムを示し、Gaはガリウムを示し、Inはインジウムを示し、Nは窒素を示し、x1はAl組成比を示し、y1はGa組成比を示し、z1はIn組成比を示す。
また、基板として窒化物半導体基板を用いる場合には、窒化物半導体基板を構成する窒化物半導体結晶が六方晶を保つ範囲であれば、窒化物半導体基板に含まれるN元素の一部をAs、PおよびSbからなる群から選択された少なくとも1種の元素に置換してもよい。ここで、「N元素の一部」とは、窒化物半導体基板に含まれるN元素の10原子%以下のN元素のことを意味する。
また、本発明において、基板の厚さは10μm以上1000μm以下であることが好ましく、100μm以上800μm以下であることがより好ましく、200μm以上600μm以下であることがさらに好ましい。
また、本発明に用いられる基板の主面としては、たとえば、C面{0001}、A面{11−20}、R面{1−102}、M面{1−100}、{1−101}面および{11−22}面から選択された少なくとも1つの面を用いることができる。
また、基板の主面に対するオフ角度が0.1°以上2°以下である場合には、基板の主面のモフォロジが良好であるために基板の主面内の層厚分布を小さくすることができる。したがって、たとえば基板の主面がM面{1−100}である場合に、M面のc軸方向のオフ角度が0.1°以上2°以下であるときには、基板の主面のモフォロジが良好であるため、基板の主面内の層厚分布を小さくすることができる。
ここで、基板の主面に対するオフ角度が0.1°未満である場合には、基板の主面内の層厚分布が大きくなるおそれがある。また、基板の主面に対するオフ角度が2°よりも大きい場合には、基板の主面の表面のステップ形状が顕著になるため、基板の主面内の層厚分布が大きくなるおそれがある。
<n型半導体層>
図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000においては、n型半導体層としてn型窒化物半導体クラッド層1002が用いられており、図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000においては、n型窒化物半導体コンタクト層2004が用いられているが、これらに限定されないことは言うまでもない。
本発明において、n型半導体層は、基板に直接に接するように、若しくは基板上に他の層を介して形成されているn型の半導体結晶からなる1層または2層以上のn型半導体層のことを意味する。なお、上記の他の層としては、たとえば、バッファ層、薄いアンドープ層(たとえば0.5μm以下)またはDBR反射膜などが挙げられる。
n型半導体層としては、たとえば、Alx2Gay2Inz2N(0≦x2≦1;0≦y2≦1;0≦z2≦1;x2+y2+z2=1)の式で表わされる窒化物半導体結晶にn型ドーパントがドープされた層を用いることができ、n型窒化物半導体層をより低屈折率化する観点からは、Alx2Gay2N(0≦x2≦1;0≦y2≦1;x2+y2=1)の式で表わされる窒化物半導体結晶にn型ドーパントがドープされた層を用いることが好ましい。一般に、Alx2Gay2Inz2N(0≦x2≦1;0≦y2≦1;0≦z2≦1;x2+y2+z2=1)の式で表わされる窒化物半導体結晶はInを含むほど屈折率が高くなり、Alを含むほど屈折率が低くなる傾向にある。なお、上記の式において、Alはアルミニウムを示し、Gaはガリウムを示し、Inはインジウムを示し、Nは窒素を示し、x2はAl組成比を示し、y2はGa組成比を示し、z2はIn組成比を示す。また、n型ドーパントとしては、たとえばシリコンおよび/またはゲルマニウムなどを用いることができる。
また、n型半導体層は、たとえば600℃〜800℃程度の比較的低温で形成することができる傾向にある点、後述するp型半導体層と比べて低抵抗の層を形成することができる傾向にある点、およびp型半導体層と比べて結晶性の高い半導体結晶を形成しやすい点などに特徴がある。
また、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000のn型窒化物半導体クラッド層1002の厚さは、たとえば0.1μm以上10μm以下とすることができる。また、n型窒化物半導体クラッド層1002の結晶構造は、たとえば、AlGaNとGaNとの超格子構造であってもよく、互いに組成の異なるAlp1Ga1-p1N(ただし、0≦p1≦1)とAlq1Ga1-q1N(ただし、0≦q1≦1)との超格子構造であってもよい。
また、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000においては、n型窒化物半導体クラッド層1002とp型窒化物半導体ガイド層1003との間にn型窒化物半導体ガイド層を含み、n型窒化物半導体クラッド層1002とn型窒化物半導体ガイド層とでn型半導体層を構成していてもよい。この場合には、n型窒化物半導体ガイド層とp型窒化物半導体ガイド層1003とによってpn接合が形成され、窒化物半導体レーザ素子1000の駆動時においては、このpn接合においてはトンネル電流により通電する。したがって、n型窒化物半導体ガイド層のp型窒化物半導体ガイド層1003側の界面付近にはn型ドーパントであるSiが高濃度でドープされてもよい。
なお、n型窒化物半導体ガイド層としては、たとえば、AlGaN、AlGaInNまたはGaNなどを挙げることができる。また、n型窒化物半導体ガイド層の厚さは、たとえば、0.01μm以上1μm以下とすることができる。
また、図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000のn型窒化物半導体コンタクト層2004の厚さは、たとえば、0.1μm以上2μ以下とすることができる。
<p型半導体層>
図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000においては、p型半導体層としてp型窒化物半導体ガイド層1003およびp型窒化物半導体キャリアブロック層1004が用いられており、図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000においては、p型GaN層2005が用いられているが、これらに限定されないことは言うまでもなく、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000においては、p型窒化物半導体ガイド層1003またはp型窒化物半導体キャリアブロック層1004のいずれか一方をp型半導体層としてもよい。
本発明において、p型半導体層は、基板上において、上記のn型半導体層と後述する活性層との間に位置するp型の半導体結晶からなるp型半導体層のことを意味する。
図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000および図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000のように、n型半導体層と活性層との間にp型半導体層が設置され、n型半導体層とp型半導体層とでpn接合を構成している。このように、活性層を形成する前にp型半導体層を設けることによって、活性層の形成後の昇温を抑えることができ、活性層の熱分解などの熱によるダメージを効果的に防止することができる。
また、活性層を形成する前にp型半導体層を形成した場合には、上記のように活性層が熱によるダメージを受けることなく、p型半導体層の形成に最適な温度などの形成条件でp型半導体層を形成することができる。
特にp型窒化物半導体層などの低抵抗のp型半導体層には高品質な結晶性が求められるが、従来の一般的な窒化物半導体レーザ素子、さらには高いIn組成比の活性層を有する長波長の光を発光する窒化物半導体発光素子(窒化物半導体レーザ素子および窒化物半導体発光ダイオード素子を含む)においては、活性層の形成後にp型窒化物半導体層を形成する必要があるため、p型窒化物半導体層を高温で形成することができなかった。
しかしながら、本発明においては、たとえば1100℃以上の高温でp型窒化物半導体層を形成することができるため、結晶性の高い非常に低抵抗なp型窒化物半導体層を形成することができ、より高いキャリア密度で光吸収率の小さいp型窒化物半導体層を形成することができる。これにより、良好に活性層に効率よくホールを注入することができるようになり、窒化物半導体発光素子の信頼性および発光効率を優れたものとすることができる。
また、p型窒化物半導体層のp型ドーパントとしてMgが用いられる場合には、深いエネルギー準位が形成されることから、p型窒化物半導体層は高抵抗になりやすく、特にAlを含むp型窒化物半導体層は高抵抗になりやすい。したがって、p型窒化物半導体層が厚くなるほど直列抵抗が大きくなるため駆動電圧が上がり、発光効率が低下する傾向にあることから、p型窒化物半導体層の厚さはなるべく薄い方が好ましい。
たとえば、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000において、p型半導体層としてのp型窒化物半導体ガイド層1003の厚さは0.01μm以上1μm以下であることが好ましく、p型窒化物半導体キャリアブロック層1004の厚さは1nm以上1000nm以下であることが好ましい。
なお、p型半導体層としてp型窒化物半導体層を用いる場合には、たとえば、Alx3Gay3Inz3N(0≦x3≦1;0≦y3≦1;0≦z3≦1;x3+y3+z3=1)の式で表わされる窒化物半導体結晶にp型ドーパントがドープされた層を用いることができる。なお、上記の式において、Alはアルミニウムを示し、Gaはガリウムを示し、Inはインジウムを示し、Nは窒素を示し、x3はAl組成比を示し、y3はGa組成比を示し、z3はIn組成比を示す。また、p型ドーパントとしては、たとえば、マグネシウムおよび/または亜鉛などを用いることができる。
<pn接合>
図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000においては、活性層1005を挟むn型半導体層およびp型半導体層としてそれぞれn型窒化物半導体キャリアブロック層1006およびp型窒化物半導体キャリアブロック層1004が設置されているとともに、n型窒化物半導体基板1001と活性層1005との間にn型窒化物半導体クラッド層1002とp型窒化物半導体ガイド層1003とからなるpn接合が形成されている。
また、図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000においては、活性層2006を挟むn型半導体層およびp型半導体層としてそれぞれn型窒化物半導体キャリアブロック層2007およびp型GaN層2005が設置されているとともに、窒化物半導体基板2001と活性層2006との間にn型窒化物半導体コンタクト層2004とp型GaN層2005とからなるpn接合が形成されている。
図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000においては、アノード電極である第1の電極1012に正のバイアス電圧を印加し、カソード電極である第2の電極1010に負のバイアス電圧を印加することによって、活性層1005からレーザ光が発振することになるが、このとき、n型窒化物半導体クラッド層1002とp型窒化物半導体ガイド層1003とによって形成されるpn接合には逆バイアス電圧が印加されてトンネル電流によって電流が流れることになる。
また、図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000においては、アノード電極である第1の電極2012に正のバイアス電圧を印加し、カソード電極である第2の電極2011に負のバイアス電圧を印加することによって、活性層2006からレーザ光が発振することになるが、このとき、n型窒化物半導体コンタクト層2004とp型GaN層2005とによって形成されるpn接合には逆バイアス電圧が印加されてトンネル電流によって電流が流れることになる。
ただし、上記のように、基板と活性層との間に逆バイアス電圧が印加されるようにpn接合が設けられている場合には、pn接合の界面の空乏層の幅が広がってしまうためにトンネル電流が流れにくくなる。
しかしながら、たとえば図4の模式的断面図に示すように、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000においては、n型窒化物半導体クラッド層1002のpn接合の界面近傍にn型ドーパントを高濃度にドープしたn+ドープ層1002aを形成するとともに、p型ガイド層1003のpn接合の界面近傍にp型ドーパントを高濃度にドープしたp+ドープ層1003aを形成し、n+ドープ層1002aとp+ドープ層1003aとからpn接合を形成することによってトンネル電流が流れやすくすることができる。
なお、上記において、n+ドープ層1002aにおけるキャリア濃度およびp+ドープ層1003aにおけるキャリア濃度はそれぞれ5×1018/cm3以上であることが好ましい。
また、上記において、n+ドープ層1002aの厚さおよびp+ドープ層1003aの厚さはそれぞれ、たとえば、pn接合界面の数原子程度であってもよく、10nm以上30nm以下程度の厚さであってもよい。
<活性層>
図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000においては、活性層として活性層1005が用いられており、図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000においては、活性層として活性層2006が用いられているが、これらに限定されないことは言うまでもない。本発明において、活性層は、電流の注入により光が発生する層のことを意味する。
活性層としては、たとえば、Alx7Gay7Inz7N(0≦x7≦1;0≦y7≦1;0≦z7<1;x7+y7+z7=1)の式で表わされる窒化物半導体結晶からなる層などを用いることができる。なお、上記の式において、Alはアルミニウムを示し、Gaはガリウムを示し、Inはインジウムを示し、Nは窒素を示し、x7はAl組成比を示し、y7はGa組成比を示し、z7はIn組成比を示す。
また、活性層としては、たとえば、バリア層と井戸層とを交互に積層した積層体を緩衝層によって両側から挟んだ構造の多重量子井戸構造を有したものを用いることができる。なお、多重量子井戸構造を有する活性層は、たとえば600℃〜800℃程度の温度で形成することが好ましい。ここで、活性層が多重量子井戸構造を有する場合の上記バリア層としては、たとえばInx8Ga1-x8N(0≦x8≦1)の式で表わされるノンドープの窒化物半導体結晶からなる層を用いることができ、上記井戸層としては、たとえばバリア層よりIn組成比の高いInx9Ga1-x9N(0≦x9≦1)の式で表わされるノンドープの窒化物半導体結晶からなる層を用いることができる。
また、上記の多重量子井戸構造を有する活性層の全体の厚さは、上記のバリア層の厚さと井戸層の厚さとの合計で表わすことができ、0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。
また、上記のバリア層の厚さは1nm以上100nm以下であることが好ましく、1nm以上40nm以下であることがより好ましい。上記のバリア層の厚さが1nm以上である場合にはバリア層がキャリアをバリアする層としての効果を十分に発現する傾向にある。また、上記のバリア層の厚さが100nm以下である場合、特に40nm以下である場合には、上記の井戸層間の距離が離れすぎず、井戸層にキャリアを均一に注入することができる傾向にある。
また、上記の井戸層の厚さは0.5nm以上10nm以下であることが好ましい。上記の井戸層の厚さが0.5nm以上である場合には井戸層を均一に形成することができる傾向にある。また、上記の井戸層の厚さが10nm以下である場合には格子不整合による歪からInの凝集が起こりにくくなって井戸層が好ましい状態となる傾向にある。
また、上記の多重量子井戸構造を有する活性層においては、上記の井戸層の数は2層〜3層程度であることが好ましい。
また、本発明の窒化物半導体発光素子から発光する光の波長は活性層の井戸層を構成する窒化物半導体結晶の混晶比に応じて、たとえば440nm〜550nmの範囲で適宜調節することができる。たとえば、活性層に含まれる井戸層を構成する窒化物半導体結晶のIn組成比(x9)が0.15のときには発光する光の波長は440nm程度となり、In組成比(x9)が0.3のときには発光する光の波長は550nm程度となる。なお、活性層の井戸層を構成する窒化物半導体結晶のIn組成比が増加すると線形的に発光する光の波長も長波長化する。
また、本発明においては、上記の活性層とp型半導体層との間および/または上記の活性層と電流導入層との間に、緩衝層を設けることが好ましい。特に、In組成比の大きい井戸層(In組成比:0.15以上0.3以下)を有する活性層を用いる場合に、緩衝層を設けた場合には、井戸層を構成する半導体結晶の結晶性を大きく向上させることができる。これは、井戸層にかかる格子不整合から引き起こされる大きな歪を緩衝層によって軽減することができるためと考えられる。
緩衝層を構成する半導体結晶としては、たとえば、Alx10Gay10Inz10N(0≦x10≦1;0≦y10≦1;0≦z10<1;x10+y10+z10=1)の式で表わされる窒化物半導体結晶からなる層などを用いることができる。なお、上記の式において、Alはアルミニウムを示し、Gaはガリウムを示し、Inはインジウムを示し、Nは窒素を示し、x10はAl組成比を示し、y10はGa組成比を示し、z10はIn組成比を示す。緩衝層としては、特に、Inx11Ga1-x11N(0≦x11≦0.1)の式で表わされる窒化物半導体結晶からなる層を用いることが好ましい。また、緩衝層の厚さは、1nm以上0.4μm以下であることが好ましい。
また、活性層とp型半導体層との間に設けられる緩衝層は、ノンドープの半導体結晶またはp型ドーパントをドーピングしたp型半導体結晶からなる層であることが好ましい。また、活性層と電流導入層との間に設けられる緩衝層は、ノンドープの半導体結晶またはn型ドーパントをドーピングしたn型半導体結晶からなる層であることが好ましい。ただし、緩衝層を設けなくてもよいことは言うまでもない。
<電流導入層>
図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000においては、電流導入層としてn型窒化物半導体ガイド層1007およびn型窒化物半導体キャリアブロック層1006が用いられており、図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000においては、電流導入層としてn型GaN層2009およびn型窒化物半導体キャリアブロック層2007が用いられているが、これらに限定されないことは言うまでもない。
たとえば、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000のn型窒化物半導体ガイド層1007上に第2のn型窒化物半導体クラッド層を形成して、第2のn型窒化物半導体クラッド層上に第2の電極1010を形成した場合には、第2のn型窒化物半導体クラッド層も電流導入層に含めることができる。
本発明において、電流導入層は、電流導入層と基板との間に活性層が位置するように配置され、活性層に電流を注入するための層である。また、電流導入層は、活性層と接していてもよく、接していなくてもよい。
従来のAlGaNクラッド層およびInを含む窒化物半導体結晶からなる活性層を用いた窒化物半導体レーザ素子の作製において、活性層を形成した後に1000℃を超える高温でp型窒化物半導体層を形成した場合には、Inを含む窒化物半導体結晶からなる活性層が熱分解するという問題があった。
しかしながら、本発明においては、Inを含む窒化物半導体結晶からなる活性層を形成した後にp型窒化物半導体層を形成することなく、Inを含む窒化物半導体結晶からなる活性層の熱分解が起こりにくい600〜800℃程度の比較的低温で電流導入層を形成することができることから、Inを含む窒化物半導体結晶からなる活性層のIn組成比が0.15以上0.3以下程度の活性層を含んでいても活性層の熱分解を生じにくくすることができる。
図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000および図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000のように、電流導入層としてn型窒化物半導体層を用いる場合には、たとえば、Alx4Gay4Inz4N(0≦x4≦1;0≦y4≦1;0≦z4≦1;x4+y4+z4=1)の式で表わされる窒化物半導体結晶にn型ドーパントがドープされた層を用いることができる。なお、上記の式において、Alはアルミニウムを示し、Gaはガリウムを示し、Inはインジウムを示し、Nは窒素を示し、x4はAl組成比を示し、y4はGa組成比を示し、z4はIn組成比を示す。また、n型ドーパントとしては、たとえばシリコンおよび/またはゲルマニウムなどを用いることができる。
また、電流導入層は、たとえばレーザーアブレーション(PLD:Pulsed Laser Deposition)法によって形成することもできる。PLD法は高エネルギー紫外線レーザ光による原料の昇華を利用した成長手法であり、昇華した材料が作り出す局所的な強い非平衡場により窒素ガスが解離および反応するため、窒化物半導体結晶を低温かつ窒素雰囲気中で成長させることができる。
なお、PLD法においては、たとえば、KrFエキシマレーザ光をエネルギー密度3J/cm2、繰り返し周波数10Hz〜15Hzで原料となるターゲット(Ga、Al、In、AlN、GaN、InNなど)に照射することができる。このKrFエキシマレーザ光の照射によりターゲットは瞬間的に昇華し、プルームと呼ばれる一種のプラズマ状態となって雰囲気を構成するガス分子(窒素ガス、酸素ガス等)との衝突を繰り返した後に、基板上に到達して窒化物半導体結晶を形成する。また、窒素源として窒素ガスを10-5〜10-1Torrの圧力で導入することができる。この方法によれば、室温で高品質な窒化物半導体結晶を形成することができ、熱による活性層へのダメージを著しく低減することができる。
また、電流導入層は、たとえばパルススパッタ(PSD:Pulsed Sputter Deposition)法によっても形成することができる。活性層を形成した後、電流導入層をPSD法で形成することにより、電流導入層をより一層低温で形成することができるため、活性層への熱ダメージを著しく低減することができる。PSD法によって全ての電流導入層を形成してもよいし、一部のみを形成してもよい。
また、電流導入層の形成方法として、たとえばMBE(Molecular Beam Epitaxy)法を用いた場合には、700℃程度の低温で窒化物半導体結晶を形成することができる点で好ましい。
電流導入層は、活性層が電流導入層形成時の熱によってダメージを受けないように低温で形成することが好ましく、たとえば、MBE法、スパッタ法、PLD法、PSD法、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより形成することが好ましい。
また、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000の電流導入層として用いられるn型窒化物半導体ガイド層1007の厚さ、および図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000の電流導入層として用いられるn型GaN層2009の厚さは、たとえば、0.01μm以上1μm以下とすることができる。
また、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000のn型窒化物半導体ガイド層1007上に電流導入層として用いられる第2のn型窒化物半導体クラッド層を形成した場合には、第2のn型窒化物半導体クラッド層は、たとえば、活性層1005で発光した光のうち窒化物半導体成長面に対して垂直方向に広がる光を活性層1005付近の窒化物半導体内部に閉じ込める役割を果たしている。しかし、本発明においては、窒化物半導体成長面に対して垂直方向に広がる光は、後述する誘電体膜クラッド層で閉じ込めることができるため、第2のn型窒化物半導体クラッド層は形成してもよく、形成されていなくてもよい。
また、第2のn型窒化物半導体クラッド層は、活性層1005およびn型窒化物半導体ガイド層1007のそれぞれの屈折率よりも低い屈折率を有していることが好ましい。
本発明においては、高抵抗で知られるp型AlGaNクラッド層を用いることなく、第2のn型窒化物半導体クラッド層によって光閉じ込めを行なうことが可能であるため、p型AlGaNクラッド層を用いた従来の窒化物半導体レーザ素子よりも駆動電圧を低減することができる。ここで、第2のn型窒化物半導体クラッド層としては、たとえば、Alx5Gay5Inz5N(0≦x5≦1;0≦y5≦1;0≦z5<1;x5+y5+z5=1)の式で表わされる窒化物半導体結晶にn型ドーパントがドープされた層、Alx5Gay5N(0≦x5≦1;0≦y5≦1;x5+y5=1)の式で表わされる窒化物半導体結晶にn型ドーパントがドープされた層またはGaN結晶にn型ドーパントがドープされた層などを用いることができるが、第2のn型窒化物半導体クラッド層をより低屈折率化する観点からは、Alx5Gay5N(0≦x5≦1;0≦y5≦1;x5+y5=1)の式で表わされる窒化物半導体結晶にn型ドーパントがドープされた層を用いることが好ましい。なお、上記の式において、Alはアルミニウムを示し、Gaはガリウムを示し、Inはインジウムを示し、Nは窒素を示し、x5はAl組成比を示し、y5はGa組成比を示し、z5はIn組成比を示す。また、n型ドーパントとしては、たとえばシリコンおよび/またはゲルマニウムなどを用いることができる。
また、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000の第2のn型窒化物半導体クラッド層の厚さは、0.01μm以上1μm以下であることが好ましく、0.2μm以上0.8μm以下であることがより好ましい。また、第2のn型窒化物半導体クラッド層の結晶構造は、たとえば、AlGaNとGaNとの超格子構造であってもよく、互いに組成の異なるAlp2Ga1-p2N(ただし、0≦p2≦1)とAlq2Ga1-q2N(ただし、0≦q2≦1)との超格子構造であってもよい。
また、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000の電流導入層として用いられるn型窒化物半導体キャリアブロック層1006および図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000の電流導入層として用いられるn型窒化物半導体キャリアブロック層2007はそれぞれ活性層1005および活性層2006からのキャリアの流出を抑止する機能を有するだけでなく、活性層1005および活性層2006のそれぞれを保護する機能を有することもできる。
たとえば、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000の作製において、活性層1005を形成した後に低温でn型窒化物半導体ガイド層1007を形成した場合には、n型窒化物半導体ガイド層1007の結晶性が粗悪になることがある。そして、n型窒化物半導体ガイド層1007の結晶性が粗悪になった場合には、活性層1005(特に、In組成比の大きな井戸層)を十分に保護することができない傾向にある。しかしながら、活性層1005上にn型窒化物半導体キャリアブロック層1006を形成した後にn型窒化物半導体ガイド層1007を形成した場合には、活性層1005上に直接n型窒化物半導体ガイド層1007を形成した場合と比べて、活性層1005の保護をより十分なものとすることができる。
なお、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000のn型窒化物半導体キャリアブロック層1006および図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000のn型窒化物半導体キャリアブロック層2007の厚さはそれぞれ、たとえば10nm程度とすることができる。
また、n型窒化物半導体キャリアブロック層1006およびn型窒化物半導体キャリアブロック層2007のようなn型窒化物半導体キャリアブロック層としては、たとえば、Alx6Gay6Inz6N(0≦x6≦1;0≦y6≦1;0≦z6<1;x6+y6+z6=1)の式で表わされる窒化物半導体結晶にn型ドーパントがドープされた層、またはAlx6Gay6N(0≦x6≦1;0≦y6≦1;x6+y6=1)の式で表わされる窒化物半導体結晶にn型ドーパントがドープされた層などを用いることができる。なお、上記の式において、Alはアルミニウムを示し、Gaはガリウムを示し、Inはインジウムを示し、Nは窒素を示し、x6はAl組成比を示し、y6はGa組成比を示し、z6はIn組成比を示す。また、n型ドーパントとしては、たとえばシリコンおよび/またはゲルマニウムなどを用いることができる。
また、格子不整合から生じるクラックを緩和することができるという観点および低温で形成することができるという観点からは、n型窒化物半導体キャリアブロック層としては、Alx6Gay6Inz6N(0≦x6≦1;0≦y6≦1;0≦z6<1;x6+y6+z6=1)の式で表わされる窒化物半導体結晶にn型ドーパントがドープされた層を用いることが好ましい。この場合には、In組成比z6は、0よりも大きく0.3よりも小さいことが好ましい。In組成比z6が0.3以上となった場合にはn型窒化物半導体キャリアブロック層が層分離を起こしてしまうおそれがあるとともに、窒化物半導体レーザ素子の作製中にn型窒化物半導体キャリアブロック層が蒸発してしまうおそれがある。また、Al組成比x6は0よりも大きいことが好ましく、たとえば0.18程度とすることができる。
なお、緑色光や赤色光のような可視光の中では長波長領域のレーザ光を発する窒化物半導体レーザ素子を製造するためには、In組成比が0.15以上0.3以下程度の高いIn含有量の窒化物半導体結晶からなる活性層が必要とされる。
しかしながら、In組成比の高い活性層は、熱分解温度がかなり低いため、従来の製造方法のように活性層を形成した後に1000℃以上の高温状態でp型窒化物半導体層を形成すると、活性層が熱によるダメージで結晶劣化を起こすことから、緑色光や赤色光を発する窒化物半導体レーザ素子の製造が困難であった。たとえば、InN結晶の熱分解は600℃〜700℃程度で起こるように、In組成比の高い窒化物半導体結晶からなる活性層の熱分解温度は低い。
しかしながら、本発明においては、活性層を形成した後にp型窒化物半導体層を形成することなく、たとえば600〜900℃程度の比較的低温で電流導入層を形成することができ、さらには電流導入層の形成後の製造過程においても900℃を超える温度に昇温する必要がない。したがって、In組成比が0.15以上の窒化物半導体結晶からなる活性層を用いた場合でも活性層が熱分解することなく窒化物半導体レーザ素子を製造することができ、さらにはIn組成比が0.2以上の窒化物半導体結晶からなる活性層を用いた場合でも活性層が熱分解することなく窒化物半導体レーザ素子を製造することができる。
<誘電体膜クラッド層>
図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000においては、誘電体膜クラッド層として第1の誘電体膜層1008と第2の誘電体膜層1009との積層体が用いられており、図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000においては、誘電体膜クラッド層としてDBR反射膜2010が用いられているが、これらに限定されないことは言うまでもない。
本発明において、誘電体膜クラッド層は、電流導入層上に形成される誘電体膜からなる層である。
ここで、誘電体膜クラッド層としては、高屈折率を有する材料からなる層を用いることができ、たとえば、Si(シリコン)、Al(アルミニウム)、Zr(ジルコニウム)、Ta(タンタル)、Ti(チタン)、Nb(ニオブ)、Hf(ハフニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)およびZn(亜鉛)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物、窒化物または酸窒化物などからなる膜を用いることができる。
なかでも、誘電体膜クラッド層としては、シリコンの酸化物、アルミニウムの酸化物、タンタルの酸化物、チタンの酸化物、ジルコニアの酸化物、ニオブの酸化物、ハフニウムの酸化物、ガリウムの酸化物、アルミニウムの窒化物、シリコンの窒化物、アルミニウムの酸窒化物、シリコンの酸窒化物、アルミニウムシリコンの酸窒化物またはアルミニウムシリコンの酸化物などの光学薄膜として一般的に可視光領域で透明な絶縁膜を用いることが好ましい。誘電体膜クラッド層は電気伝導に寄与しないため、誘電体膜クラッド層としては絶縁膜を用いることができる。
また、誘電体膜クラッド層は、上記の膜からなる層の単層または2層以上の複数層から形成されていてもよい。誘電体膜クラッド層が上記の膜からなる層の単層または2層以上の複数層のいずれから構成される場合にも、誘電体膜クラッド層の全体の厚さは20nm以上1μm以下であることが好ましい。誘電体膜クラッド層の全体の厚さが20nm以上である場合にはクラッド層としての光閉じ込め効果が得られる傾向にあり、1μm以下である場合には誘電体膜クラッド層中に大きな応力が生じずに誘電体膜クラッド層に割れが発生する可能性が少なくなる。
また、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000においては、誘電体膜クラッド層は2層構造となっているが、n型窒化物半導体ガイド層1007と接する第1の誘電体膜層1008にAlO0.050.95膜を用いている。これは、窒化物半導体層と誘電体膜クラッド層との界面における光吸収を抑制するためである。なお、第1の誘電体膜層1008としては窒化アルミニウム膜または酸窒化アルミニウム膜を用いることが好ましい。第1の誘電体膜層1008に窒化アルミニウム膜または酸窒化アルミニウム膜を用いた場合には、窒化物半導体層と誘電体膜クラッド層との界面の非発光センターを効果的に減少させることができる傾向にある。また、第1の誘電体膜層1008の厚さは、6nm以上800nm以下であることが好ましい。第1の誘電体膜層1008の厚さが6nm未満である場合には第1の誘電体膜層1008を均一に形成しにくい。また、第1の誘電体膜層1008の厚さが800nmを超える場合には、第1の誘電体膜層1008における応力が大きくなって割れる可能性がある。
また、第1の誘電体膜層1008上の第2の誘電体膜層1009は主に光を閉じ込める目的で形成され、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000においては、第2の誘電体膜層1009としてAl23膜が用いられている。第2の誘電体膜層1009としては光吸収の少ない膜を用いることがが好ましい。
また、誘電体膜クラッド層は、たとえば、EB蒸着法、スパッタ法、MBE法またはMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、CVD法またはPLD法などによって形成することが好ましい。これらの方法を用いることにより、たとえば300℃以下といった比較的低温で誘電体膜クラッド層を形成することができる傾向にある。これにより、活性層への熱ダメージを回避しつつ、誘電体膜クラッド層を形成することができるというメリットがある。
特許文献1に示されたようなITOなどの透明導電膜は活性層から発生した400nmを超える波長の光を吸収するために光吸収の原因になるが、誘電体膜クラッド層を用いた場合には活性層から発生した400nmを超える波長の光の吸収がITOなどの透明導電膜を用いた場合よりも低減されるため、発光効率を向上させることができる傾向にある。
なお、図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000においては、Al0.2Ga0.8N層とGaN層とを50ペア積層してなるDBR反射膜2003と誘電体膜クラッド層としてのDBR反射膜2010とが用いられているが、DBR反射膜2003およびDBR反射膜2010のように屈折率の異なる2つの層が交互に積層されてなる多層膜反射層は99%以上の高い反射率を得ることができる。n型GaN層2009上に形成されたAl0.2Ga0.8N層とGaN層とを50ペア積層してなるDBR反射膜2010とを含んでいる。このような多層膜反射層は一般に膜厚がλ/4n1(λ:入射光波長、n1:膜の屈折率)である第一の層と、膜厚がλ/4n2(λ:入射光波長、n2:膜の屈折率)(n1≠n2)である第二の層とからなるペアが複数層積層されている。第一の層と第二の層との屈折率差を大きくする(AlsGa1-sN層のAl組成:sを高くする:0≦s≦1)若しくは積層数を増やすことによりより高い反射率を得ることができる。
また、図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000においては、AlGaN層とGaN層との積層構造によるDBR反射膜を形成したが、GaN層とAlInN層との積層構造からDBR反射膜を形成してもよい。この場合は、AlInN層のIn組成比を調整すると、GaN層と格子整合した状態で積層構造を形成することができるため好ましい。
また、図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000においては、AlN層とGaN層との積層構造によるDBR反射膜を形成した場合には屈折率差を大きくすることができ、少ない積層数で高い反射率を得ることができる観点から好ましい。また、AlGaN層とInGaN層との積層構造によるDBR反射膜などのように、さまざまな膜種や構成でDBR反射膜を形成することができる。
<電流阻止絶縁膜>
図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000においては、電流阻止絶縁膜として電流阻止絶縁膜1011が用いられており、図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000においては、誘電体膜クラッド層として電流阻止絶縁膜2008が用いられているが、これらに限定されないことは言うまでもない。
本発明において、電流阻止絶縁膜は、活性層上で電流狭窄を行なうための絶縁膜である。すなわち、電流阻止絶縁膜は、電流阻止絶縁膜の厚さ方向に電流が流れるのを防止する機能を有する膜である。
電流阻止絶縁膜としては、たとえば、シリコンの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニアの酸化物、チタンの酸化物、タンタルの酸化物、シリコンの酸窒化物、アルミニウムの酸窒化物、ジルコニアの酸窒化物、チタンの酸窒化物、タンタルの酸窒化物、シリコンの窒化物、アルミニウムの窒化物、ノンドープAlN、ノンドープAlGaN、ノンドープInAlN、p型AlN、p型AlGaNまたはp型InAlNなどの材料から選択された少なくとも1種の膜を用いることができる。ただし、p型ドーパントとしてMgを含むp型AlN、p型AlGaNまたはp型InAlNを用いる場合には、Mgが光吸収を行なうため、Mgのドープ量が少ない方が好ましく、ノンドープであることがより好ましい。
図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000および図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000のように、活性層上に電流導入層が形成されている場合には、活性層にできるだけ近い箇所に電流阻止絶縁膜を設置して電流狭窄を行なうことが好ましい。
図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000においては、n型窒化物半導体キャリアブロック層1006上に第2のn型窒化物半導体クラッド層をたとえば0.1μm程度の厚さに形成し、その後に電流阻止絶縁膜1011を形成し、さらに第2のn型窒化物半導体クラッド層をたとえば0.2μm程度の厚さに形成してもよい。
また、電流阻止絶縁膜は、従来より公知の方法で形成することができ、たとえばEB蒸着法、スパッタ法、MOCVD法またはMBE法などによって形成することができる。また、電流阻止絶縁膜は、単層構造に限られるものではなく、多層構造であってもよい。
また、電流阻止絶縁膜の厚さは、6nm以上1000nm以下であることが好ましく、6nm以上500nm以下であることがより好ましい。電流阻止絶縁膜の厚さが6nm以上である場合には、面内に均一な厚さの電流阻止絶縁膜が形成されて電流阻止絶縁膜による電流阻止機能が十分に発現する傾向にあり、電流阻止絶縁膜の厚さが1000nm以下である場合、特に500nm以下である場合には、電流阻止絶縁膜の間に開口部が形成されているときに当該開口部を十分に埋めることができる傾向にある。
<第1の電極>
図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000においては、第1の電極1012が用いられており、図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000においては、第1の電極2012が用いられているが、これに限定されるものではないことは言うまでもない。
本発明において、第1の電極は、従来より公知の導電性物質を用いることができ、たとえばTi(チタン)、Al(アルミニウム)、Mo(モリブデン)、Pt(白金)、Au(金)およびHf(ハフニウム)などの金属を少なくとも1種含む金属層の単層または複数層を用いることができる。また、第1の電極は、アノード電極であることが好ましい。
<第2の電極>
図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000においては、第2の電極1010が用いられており、図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000においては、第2の電極2011が用いられているが、これに限定されるものではないことは言うまでもない。
本発明において、第2の電極は、従来より公知の導電性物質を用いることができ、たとえばTi(チタン)、Al(アルミニウム)、Mo(モリブデン)、Pt(白金)、Au(金)およびHf(ハフニウム)などの金属を少なくとも1種含む金属層の単層または複数層を用いることができる。また、第2の電極は、カソード電極であることが好ましい。
従来のリッジストライプ部型の窒化物半導体レーザ素子のリッジストライプ部は、p型窒化物半導体層で形成されていたため、高抵抗になりやすく、駆動電圧が上がるという問題があった。しかしながら、図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000および図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000においては、n型窒化物半導体層で電流狭窄が行なわれることから、より低抵抗にすることができ、駆動電圧を下げることができる。
<作用>
本発明においては、電気伝導を電流導入層で行ない、光閉じ込めを誘電体膜クラッド層で行なうことによって、クラッド層における光透過率と抵抗率とをそれぞれ独立に制御することができる。これにより、本発明によれば、閾値電流と発光効率の双方の特性に優れた半導体発光素子を得ることができるため、低消費電力かつ高信頼性の半導体発光素子を得ることができる。
従来のクラッド層は、特許文献1のようにITOなどの透明導電膜、若しくは特許文献2のようにAlGaN層と選択の幅が非常に小さかった。本発明においては、電気伝導に寄与しない絶縁膜である本誘電体膜クラッド層を用いることができるため、材料選択の幅が広がるとともに、設計の幅も広がる。
また、本発明においては、誘電体膜クラッド層の層構造および/または材料を変更することによって、光閉じ込め量の変化および/または光吸収量の低減などを行なった場合でも、駆動電圧は電流導入層に基づいて変化させることができるため、駆動電圧に関係なく誘電体膜クラッド層の設計をすることができるというメリットがある。
また、n型窒化物半導体層は、たとえば600〜900℃程度の温度で形成した場合にもn型の電気伝導を示す。したがって、たとえば図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子1000および図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子2000のように活性層を形成した後にp型窒化物半導体層を形成することなく、たとえば600〜900℃程度の比較的低温で電流導入層を形成し、その後たとえば900℃を超えるような高温に昇温する必要もないため、In組成比が0.15以上のInを含む窒化物半導体結晶からなる活性層を用いた場合にも活性層が熱分解することなく半導体発光素子を製造することができ、In組成比が0.2以上のInを含む窒化物半導体結晶からなる活性層を用いた場合にも活性層が熱分解することなく半導体発光素子を製造することができる。
さらに、本発明においては、活性層から発光する光に対して透明な誘電体膜クラッド層をたとえばスパッタ法またはEB蒸着法などの低温で形成することができるため、さらに好ましい。
<実施例1>
図5に、本発明の半導体発光素子の一例である実施例1の端面出射型の窒化物半導体レーザ素子の模式的な斜視図を示す。ここで、図5に示す実施例1の窒化物半導体レーザ素子5000は、以下のようにして作製した。
まず、MOCVD装置内に厚さ400μmのn型GaN基板5001を設置し、n型GaN基板5001上に、厚さ2.5μmのn型Al0.05Ga0.95Nクラッド層5002、厚さ0.3μmのp型GaNガイド層5003、厚さ0.01μmのp型Al0.1Ga0.9Nキャリアブロック層5004、厚さ0.152μmのAlxGa1-xInN活性層5005および厚さ15nmのn型Al0.08Ga0.92Nキャリアブロック層5006をMOCVD法によりこの順序で形成してウエハを作製した。
次に、上記のようにして作製したウエハをMOCVD装置から取り出した後にスパッタ装置内に設置して、厚さ500nmのSiO2膜5011をスパッタ法により形成した。
次に、フォトリソグラフィプロセスによってSiO2膜5011上にレジストを塗布した後に、レジストを加工して幅2μm程度のストライプ状にした。そして、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)による気相エッチングを行なうことによって、SiO2膜5011をストライプ状に除去した。ここで、ストライプ状にSiO2膜5011を除去した領域の下方に位置するAlxGa1-xInN活性層5005の領域が幅tの発光領域となった。
次に、レジストを除去した後のウエハを再びMOCVD装置内に設置し、厚さ0.2μmのn型GaNガイド層5007を形成して電流導入層を作製した。そして、上記のウエハをMOCVD装置から取り出した後にスパッタ装置内に設置して、室温で、AlO0.050.95膜5008を30nmの厚さで形成し、その上にAl23膜5009を0.5μmの厚さで形成して誘電体膜クラッド層を作製した。
その後、n型GaNガイド層5007の表面のうち、AlO0.050.95膜5008およびAl23膜5009が形成されていない領域に第2の電極5010を形成した。また、n型GaN基板5001の裏面には第1の電極5012を形成した。
上記のようにして得られたウエハのn型GaN基板5001を研削し、研磨することによって100μm程度に薄くして、ダイヤモンド針でスクライブし、バー状にへき開した。
さらに、へき開されて露出した共振器端面にたとえば厚さ30nm程度のAlOx1-x(0≦x≦1)からなる端面コート膜を形成するとともに、端面コート膜上に反射率調整用に所定の膜を形成した。
その後、上記の反射率調整用の膜が形成されたウエハを複数に分割することによって、端面出射型の窒化物半導体レーザ素子である実施例1の窒化物半導体レーザ素子を作製した。
ここで、実施例1の窒化物半導体レーザ素子においては、第2の電極5010がカソード電極となり、第1の電極5012がアノード電極となる。このため、実施例1の窒化物半導体レーザ素子において電子は図5の矢印の方向に流れることになる。
このようにして作製した端面出射型の窒化物半導体レーザ素子の発振閾値と発振後の平均の発光効率を求めたところ、実施例1の窒化物半導体レーザ素子20個の平均の発振閾値(閾値電流)は33mAであり、平均の発光効率は1.92W/Aであった。ここで、発振閾値(閾値電流)とは半導体発光素子の駆動電流の低さを表す値で、発振閾値(閾値電流)の値が小さいほど駆動電流が小さい半導体発光素子であることを示す。また、発光効率とは、半導体発光素子の電流注入量に対して素子外部に取り出すことができる光子の割合を表す値であって、発光効率の値が大きいほど優れた発光素子であることを示す。
また、比較のために特許文献1に示された構成の窒化物半導体レーザ素子を特許文献1と同一の方法で20個作製し、実施例1の窒化物半導体レーザ素子と同様の方法で、平均の発振閾値と平均の発光効率とを求めたところ、特許文献1の窒化物半導体レーザ素子の平均の発振閾値は35mAであり、平均の発光効率は0.82W/Aであった。
以上のことから、実施例1の窒化物半導体レーザ素子は、特許文献1の窒化物半導体レーザ素子に比べ、平均の発振閾値と平均の発光効率の特性を大きく向上することができた。これは、実施例1の窒化物半導体レーザ素子においては、特許文献1の窒化物半導体レーザ素子と異なって、ITOが存在しないためにITOによる光吸収がないことおよび誘電体膜クラッド層による光吸収がないことにより光吸収が抑制され内部ロス(αi)が低減したためと考えられる。
<実施例2>
図6に、本発明の半導体発光素子の一例である実施例2の面発光型の窒化物半導体レーザ素子の模式的な断面図を示す。ここで、図6に示す実施例2の窒化物半導体レーザ素子6000は、以下のようにして作製した。
まず、MOCVD装置内にn型GaN基板6001(厚さ400〜500nm程度)を設置し、n型GaN基板6001上に、厚さ0.3μmのn型GaNバッファ層6002ならびにAl0.2Ga0.8N層とGaN層とを50ペア積層してDBR反射膜6003をMOCVD法により形成した。ここで、DBR反射膜6003を構成する各層の厚さは1μm以上3μm以下の範囲とした。
なお、Al0.2Ga0.8N層とGaN層との格子不整合によるクラックの発生を防止するために、n型GaN基板6001の一部を気相エッチングなどにより掘り込み、掘り込まれたn型GaN基板6001上にDBR反射膜6003を形成することができる。この場合には、DBR反射膜6003を構成する各層の歪を緩和しクラックを発生させないようにすることができる。また、この場合には、発光領域は、n型GaN基板6001の掘り込まれていない領域に形成することができる。
引き続いて、DBR反射膜6003上に、厚さ0.2μmのn型GaNコンタクト層6004、厚さ0.2μmのp型GaN層6005、厚さ0.152μmのAlxGa1-xInN活性層6006および厚さ15nmのn型Al0.08Ga0.92Nキャリアブロック層6007をMOCVD法により形成した。なお、AlxGa1-xInN活性層6006から発振されるレーザ光の発振波長は405nmであった。
次に、上記のn型Al0.08Ga0.92Nキャリアブロック層6007の形成後のウエハをMOCVD装置から取り出し、厚さ500nmのSiO2膜6008をスパッタ法により形成した。
次に、フォトリソグラフィプロセスによってSiO2膜6008上にレジストを塗布した後に、レジストを加工して直径2μm程度の円形状にした。そして、誘導結合プラズマによる気相エッチングを行なうことによって、SiO2膜6008を円形状に除去した。ここで、円形状にSiO2膜6008を除去した領域の下方に位置するAlxGa1-xInN活性層6005の領域が発光領域となった。
次に、レジストを除去した後のウエハを再びMOCVD装置内に設置し、厚さ0.2μmのn型GaNガイド層6009を形成して電流導入層を作製した。
そして、電流導入層形成後のウエハをスパッタ装置内に設置し、スパッタ法によって、室温でAlO0.050.95膜を30nmの厚さで形成し、その上に酸化シリコン膜と窒化シリコン膜とをそれぞれ68nmと50nmの厚さで8ペア形成して、計17層の誘電体膜クラッド層6010を形成した。誘電体膜クラッド層6010の反射率は99%であった。
その後、n型GaNガイド層6009の表面のうち、誘電体膜クラッド層6010が形成されていない領域に第2の電極6011を形成した。また、n型GaNコンタクト層6004の露出した表面に第1の電極6012を形成した。なお、第1の電極6012は、実施例1と同様にn型GaN基板6001の裏面に形成してもよい。
ここで、実施例2の窒化物半導体レーザ素子においては、第2の電極6011がカソード電極となり、第1の電極6012がアノード電極となる。このため、実施例2の窒化物半導体レーザ素子において電子は図6の矢印の方向に流れることになる。
また、比較のために図7の模式的断面図に示す従来構造の面発光型の窒化物半導体レーザ素子を作製した。ここで、図7に示される従来構造の面発光型の窒化物半導体レーザ素子7000は、n型GaNコンタクト層6004上に直接AlxGa1-xInN活性層6006が形成されている点、AlxGa1-xInN活性層6006上に厚さ15nmのAl0.08Ga0.92Nからなるp型キャリアブロック層7001が形成されている点、p型キャリアブロック層7001上に厚さ0.2μmのp型GaNからなるp型GaN層7002が形成されている点、p型GaN層7002上に厚さ50nmのITO電極7003が形成されている点およびITO電極7003に第2の電極6011が形成されている点以外は実施例2の面発光型の窒化物半導体レーザ素子と同一の構成となっている。
図7に示される従来構造の面発光型の窒化物半導体レーザ素子7000において、ITO電極7003が電流導入層として形成されているが、ITO電極7003は完全に透明ではなく、一般的に1000cm-1〜20000cm-1の光吸収係数を持つため、あまり厚く形成することができない。それゆえ、ITO電極7003においても、成長面に対して水平方向に十分に電流を拡散することができないことから、たとえば、図8(a)に示すように、発光領域内の発光パターンは不均一になってしまうという問題があった。
すなわち、図8(a)に示すように、ITO電極7003を用いた従来構造の面発光型の窒化物半導体レーザ素子7000の発光パターンは、周辺で発光強度(光出力)が大きく、中心部で発光強度が小さい状態となる。これは、ITO電極7003のシート抵抗が高いため、発光パターンの中心付近まで電流が拡散せず、第2の電極6011(アノード電極)に近い発光領域の端の領域で強い電流注入が起こってしまうためである。
一方、実施例2の窒化物半導体レーザ素子においては、電流導入層としてITO電極7003より光吸収が少なく透明なn型GaNガイド層6009を用いているため、n型GaNガイド層6009を厚く形成しても光吸収をあまり増大させることなく、電流の横方向拡散を向上させることができる。さらに、n型GaNガイド層6009は非常に電子の移動度が高いため、電流の横方向拡散を向上させることができる。
すなわち、実施例2の窒化物半導体レーザ素子においては、たとえば図8(b)に示すように、発光領域内で均一な発光パターンを得ることができた。
さらに、実施例2の窒化物半導体レーザ素子においては、光吸収が少なく、さらに均一発光であるために、ゲインのロスが少なくなり、閾値電流を15mAから7mAに低減することが可能となった。
実施例2の窒化物半導体レーザ素子においては、活性層上に電流狭窄構造があり、さらに活性層の発光領域上にp型層がないため、電流拡散と電流狭窄とをうまく両立することができる。
<実施例3>
本発明の半導体発光素子の一例である実施例3の端面出射型の半導体レーザ素子は、基板にGaAs基板を用いたGaAs系半導体レーザ素子であることを特徴とする。
すなわち、n型GaAs基板上に、厚さ0.5μmのn型GaAsバッファ層、厚さ2.0μmのn型In0.49(Ga0.3Al0.70.51Pクラッド層、厚さ50nmの(Al0.50Ga0.50)InPからなるp型ガイド層、GaInPからなる井戸層(積層数:4層、厚さ:6nm)と(Al0.50Ga0.50)InPからなるバリア層(積層数:3層、厚さ:5nm)とが交互に積層されてなる活性層、厚さ50nmの(Al0.50Ga0.50)InPからなるn型ガイド層および厚さ0.2μmのn型GaAs電流導入層が積層され、n型GaAs電流導入層上に実施例1の誘電体膜クラッド層が形成されている。
また、一般的なプロセスを用いて、(Al0.50Ga0.50)InPからなるn型ガイド層までがエッチングにより除去されてリッジストライプ部が形成され、リッジストライプ部を有する端面出射型のGaAs系赤色半導体レーザ素子とされた。なお、リッジストライプ部の両脇には電流狭窄絶縁膜が形成された。
ここで、p型のドーパント材料としては、たとえば、Mg、ZnおよびBeの少なくとも1種を好適に用いることができる。
また、本実施例においては端面出射型のGaAs系の半導体レーザ素子を作製したが、面発光型のGaAs系の半導体レーザ素子としてもよいことは言うまでもない。
また、n型ZnO、p型ZnOを用いた、若しくはGaNとZnOを組み合わせることで作製された半導体レーザ素子としてもよい。
<実施例4>
図9に、本発明の半導体発光素子の一例である実施例4の端面出射型の窒化物半導体レーザ素子の模式的な斜視図を示す。ここで、図9に示す構成を有する実施例4の窒化物半導体レーザ素子8000は、誘電体膜クラッド層を用いず、空気(大気)をクラッドとして用いる、Air−clad構造をとることを特徴とする。
実施例4の窒化物半導体レーザ素子8000においては、導波路損失を小さくすることが可能であると同時に、誘電体膜クラッド層を作製する工程を省くことができるため、製造コストを低減することができることから好ましい。
ここで、図9に示す実施例4の窒化物半導体レーザ素子8000は、以下のようにして作製した。
まず、MOCVD装置内に厚さ400μmのn型GaN基板8001を設置し、n型GaN基板8001上に、厚さ2.5μmのn型Al0.05Ga0.95Nクラッド層8002、厚さ0.3μmのp型GaNガイド層8003、厚さ0.01μmのp型Al0.1Ga0.9Nキャリアブロック層8004、厚さ0.152μmのAlxGa1-xInN活性層8005および厚さ15nmのn型Al0.08Ga0.92Nキャリアブロック層8006をMOCVD法によりこの順序で形成してウエハを作製した。
次に、上記のようにして作製したウエハをMOCVD装置から取り出した後にスパッタ装置内に設置して、厚さ500nmのSiO2膜8008をスパッタ法により形成した。
次に、フォトリソグラフィプロセスによってSiO2膜8008上にレジストを塗布した後に、レジストを加工して幅2μm程度のストライプ状にした。そして、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)による気相エッチングを行なうことによって、SiO2膜8008をストライプ状に除去した。ここで、ストライプ状にSiO2膜8008を除去した領域の下方に位置するAlxGa1-xInN活性層8005の領域が幅tの発光領域となった。
次に、レジストを除去した後のウエハを再びMOCVD装置内に設置し、厚さ0.4μmのn型GaNガイド層8007を形成して電流導入層を作製した。
次に、このウエハをMOCVD装置から取り出し、n型GaNガイド層8007上に第2の電極8009を発光領域から30μm離して形成した。さらに、n型GaN基板8001の裏面に第1の電極8010を形成した。
上記のようにして得られたウエハのn型GaN基板8001を研削し、研磨することによって100μm程度に薄くして、ダイヤモンド針でスクライブし、バー状にへき開した。
さらに、へき開されて露出した共振器端面にたとえば厚さ30nm程度のAlOx1-x(0≦x≦1)からなる端面コート膜を形成するとともに、端面コート膜上に反射率調整用に所定の膜を形成した。
その後、上記の反射率調整用の膜が形成されたウエハを複数に分割することによって、端面出射型の窒化物半導体レーザ素子である実施例4の窒化物半導体レーザ素子を作製した。
以上のようにして作製した実施例4の窒化物半導体レーザ素子8000は、実施例1の窒化物半導体レーザ素子5000と同様の効果が得られた。
なお、実施例4の窒化物半導体レーザ素子8000において、発光領域の第2の電極8009に近い側の端から成長方向と垂直方向に伸ばした直線と、第2の電極8009の端から成長方向と垂直方向に伸ばした直線のとの間の最短距離を、発光領域と第2の電極8009との間の距離lとする。発光領域からの光が第2の電極8009に吸収されないように、距離lは2μm以上離すことが好ましい。また、なお、距離lが3mmより長い場合には駆動電圧の上昇が起こるため、距離lは2μm以上3mm以下であることが好ましい。
なお、本明細書においては、半導体発光素子として窒化物半導体レーザ素子を主に説明しているが、本発明の半導体発光素子には、窒化物半導体レーザ素子だけではなく窒化物半導体レーザ素子以外の他のGaAs系等の半導体レーザ素子も含まれ、さらにはレーザ素子のみならず発光ダイオード素子も含まれる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明によれば、より低損失な導波路を形成することができ、閾値電流がより小さく、かつ発光効率がより高く、しかも440〜550nm程度の長波長の光を発光する端面出射型の窒化物半導体レーザ素子などの半導体発光素子を提供することができる。
本発明の半導体発光素子としての端面出射型の窒化物半導体レーザ素子の一例の模式的な斜視図である。 本発明の半導体発光素子としての面発光型の窒化物半導体レーザ素子の一例の模式的な断面図である。 図2に示す構成の窒化物半導体レーザ素子を上面から見たときの模式的な平面図である。 図1に示す構成の窒化物半導体レーザ素子の一部の模式的な拡大断面図である。 本発明の半導体発光素子の一例である実施例1の端面出射型の窒化物半導体レーザ素子の模式的な斜視図である。 本発明の半導体発光素子の一例である実施例2の面発光型の窒化物半導体レーザ素子の模式的な断面図である。 従来構造の面発光型の窒化物半導体レーザ素子の模式的な断面図である。 (a)は図7に示される従来構造の面発光型の窒化物半導体レーザ素子の発光パターンの一例であり、(b)は実施例2の窒化物半導体レーザ素子の発光パターンの一例である。 本発明の半導体発光素子の一例である実施例4の端面出射型の窒化物半導体レーザ素子の模式的な斜視図である。 従来の特許文献1に記載された窒化物半導体レーザ素子の模式的な断面図である。
符号の説明
1000 窒化物半導体レーザ素子、1001 窒化物半導体基板、1002 n型窒化物半導体クラッド層、1002a n+ドープ層、1003 p型窒化物半導体ガイド層、1003a p+ドープ層、1004 p型窒化物半導体キャリアブロック層、1005 活性層、1006 n型窒化物半導体キャリアブロック層、1007 n型窒化物半導体ガイド層、1008 第1の誘電体膜層、1009 第2の誘電体膜層、1010 第2の電極、1011 電流阻止絶縁膜、1012 第1の電極、2000 窒化物半導体レーザ素子、2001 窒化物半導体基板、2002 n型窒化物半導体バッファ層、2003 DBR反射膜、2004 n型窒化物半導体コンタクト層、2005 p型GaN層、2006 活性層、2007 n型窒化物半導体キャリアブロック層、2008 電流阻止絶縁膜、2009 n型GaN層、2010 DBR反射膜、2011 第2の電極、2012 第1の電極、3001 破線、5001 n型GaN基板、5002 n型Al0.05Ga0.95Nクラッド層、5003 p型GaNガイド層、5004 p型Al0.1Ga0.9Nキャリアブロック層、5005 AlxGa1-xInN活性層、5006 n型Al0.08Ga0.92Nキャリアブロック層、5007 n型GaNガイド層、5008 AlO0.050.95膜、5009 Al23膜、5010 第2の電極、5011 SiO2膜、5012 第1の電極、6000 窒化物半導体レーザ素子、6001 n型GaN基板、6002 n型GaNバッファ層、6003 DBR反射膜、6004 n型GaNコンタクト層、6005 p型GaN層、6006 AlxGa1-xInN活性層、6007 n型Al0.08Ga0.92Nキャリアブロック層、6008 SiO2膜、6009 n型GaNガイド層、6010 誘電体膜クラッド層、6011 第2の電極、6012 第1の電極、7000 窒化物半導体レーザ素子、7001 p型キャリアブロック層、7002 p型GaN層、7003 ITO電極、8000 窒化物半導体レーザ素子、8001 n型GaN基板、8002 n型Al0.05Ga0.95Nクラッド層、8003 p型GaNガイド層、8004 p型Al0.1Ga0.9Nキャリアブロック層、8005 AlxGa1-xInN活性層、8006 n型Al0.08Ga0.92Nキャリアブロック層、8007 n型GaNガイド層、8008 SiO2膜、8009 第2の電極、8010 第1の電極、9000 半導体レーザ素子、9001 GaN基板、9002 n型GaN層、9003 n型AlGaNクラッド層、9004 n型GaNガイド層、9005 InGaN多重量子井戸活性層、9006 アンドープGaNガイド層、9007 p型AlGaN電子障壁層、9008 p型GaNガイド層、9009 SiO2ブロック層、9010 Ni/ITOクラッド層電極、9011 Ti/Auパッド電極、9012 Ti/Al/Ni/Au電極。

Claims (8)

  1. 基板上に、p型半導体層、活性層、電流導入層および誘電体膜クラッド層がこの順に積層されている、半導体発光素子。
  2. 前記基板と前記p型半導体層との間に設置されたn型半導体層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の半導体発光素子。
  3. 前記基板または前記n型半導体層に電気的に接続する第1の電極と、
    前記電流導入層に電気的に接続する第2の電極とを含み、
    前記第1の電極がアノード電極であり、
    前記第2の電極がカソード電極であることを特徴とする、請求項2に記載の半導体発光素子。
  4. 前記活性層は、InxGa1-xN(0<x≦1)からなる井戸層を含み、
    前記井戸層のIn組成比xは、0.15以上0.3以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の半導体発光素子。
  5. 基板上に、p型半導体層、活性層および電流導入層がこの順に積層されており、
    前記活性層の発光領域上に前記電流導入層が積層されており、
    前記活性層の発光領域以外の領域上に前記電流導入層に電気的に接続する電極が設けられている、端面出射型半導体レーザ素子。
  6. 基板上に、p型半導体層、活性層、電流導入層および電極がこの順に積層されており、
    前記活性層の発光領域上に前記電流導入層が積層されており、
    前記活性層の発光領域以外の領域上に前記電極が設けられている、端面出射型半導体レーザ素子。
  7. 基板上に、p型半導体層、活性層、電流導入層および誘電体膜クラッド層がこの順に積層されており、
    前記活性層の発光領域上に前記電流導入層および前記誘電体膜クラッド層がこの順に積層されており、
    前記活性層の発光領域以外の領域上に前記電流導入層に電気的に接続する電極が設けられている、端面出射型半導体レーザ素子。
  8. 前記活性層は、InxGa1-xN(0<x≦1)からなる井戸層を含み、
    前記井戸層のIn組成比xは、0.15以上0.3以下であることを特徴とする、請求項5から7のいずれかに記載の端面出射型半導体レーザ素子。
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