JP2010083381A - バンパーシステム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高強度のアルミニウム合金中空押出形材を用いて軽量化を達成しつつ、車体衝突時のバンパー補強材の割れを防止する。
【解決手段】時効処理した7000系アルミニウム合金中空形材製のバンパー補強材5と、その車幅方向両端部の背面側に取り付けられたバンパーステイ6からなるバンパーシステム7。バンパー補強材5は衝突面側と背面側を連結する上下壁5c,5dを有し、バンパーステイ6の前方位置において、上下壁5c,5dに、摩擦攪拌処理(攪拌処理部4)が施されている。摩擦攪拌処理の処理深さは処理部肉厚の30%以上とする。
【選択図】図2
【解決手段】時効処理した7000系アルミニウム合金中空形材製のバンパー補強材5と、その車幅方向両端部の背面側に取り付けられたバンパーステイ6からなるバンパーシステム7。バンパー補強材5は衝突面側と背面側を連結する上下壁5c,5dを有し、バンパーステイ6の前方位置において、上下壁5c,5dに、摩擦攪拌処理(攪拌処理部4)が施されている。摩擦攪拌処理の処理深さは処理部肉厚の30%以上とする。
【選択図】図2
Description
本発明は、軽量かつ衝突安全性に優れたバンパーシステムに関し、具体的には、アルミニウム合金中空形材からなるバンパー補強材に改質処理を局部的に施すことで、材料強度を維持しつつ、車体衝突時に発生する割れを防止したバンパーシステムに関する。
自動車や車両には、衝突時の衝撃を吸収すること等を目的として、その車体のフロントやリアにバンパーが配設されている。このバンパーは、棒状の金属製中空材から製作されたバンパー補強材にステイを介して、車体の前端部や後端部に設けられたサイドメンバ等の車体フレームに固定状態に取り付けられることによって車体に配設されている。これらのバンパー補強材には、軽量化のためアルミニウム合金中空形材が使用されている。アルミニウム押出材は軽量なことに加えて、鉄では困難な任意の肉厚配分をもつ複雑な断面形状を得ることができるため、軽量化の有効な手段として多用されている。特に高強度の6000系合金や7000系合金が適用されることが多い。
また、従来、バンパーに求められる性能は軽衝突時の車体保護であったため強度を向上させることが大きな課題であったが、近年、車体衝突時にバンパーが圧壊変形することでエネルギー吸収する性能が求められている。そこで、衝突時のエネルギー吸収させる上でバンパー補強材とバンパーステイを使用したバンパーシステムの役割が重要になってきており、例えば特許文献1のように、オフセット衝突時にバンパー補強材の圧壊をステイの圧壊よりも先行させる設計がなされる場合がある。
しかしながら、このように衝突時にバンパー補強材をつぶれ変形させる場合、時効処理した6000系合金や7000系合金のような高強度材料を適用すると、割れが発生しやすい。
衝突時のバンパー補強材のつぶれ変形による割れを防止する材料面の技術として、特許文献2,3に記載された技術があるが、これらの材料を使っても割れを防止できない場合がある。また、衝突時のバンパー補強材のつぶれ変形による割れを防止する構造面の技術として、特許文献4,5に記載された技術があるが、バンパーの形状が制約されるため採用できない場合が多い。
また、特許文献6にみられるように、バンパー補強材の端部を前後方向に潰し加工して、バンパーの平面視のデザインに応じた形状とし、又はバンパー補強材端部のスペースを確保し、あるいはコーナー衝突性を改善することが提案されている。この場合も、バンパー補強材として時効処理した6000系合金や7000系合金のような高強度材料を適用すると、潰し加工時に割れが発生しやすい。
衝突時のバンパー補強材のつぶれ変形による割れを防止する材料面の技術として、特許文献2,3に記載された技術があるが、これらの材料を使っても割れを防止できない場合がある。また、衝突時のバンパー補強材のつぶれ変形による割れを防止する構造面の技術として、特許文献4,5に記載された技術があるが、バンパーの形状が制約されるため採用できない場合が多い。
また、特許文献6にみられるように、バンパー補強材の端部を前後方向に潰し加工して、バンパーの平面視のデザインに応じた形状とし、又はバンパー補強材端部のスペースを確保し、あるいはコーナー衝突性を改善することが提案されている。この場合も、バンパー補強材として時効処理した6000系合金や7000系合金のような高強度材料を適用すると、潰し加工時に割れが発生しやすい。
一方、アルミニウム合金の表面改質技術として、特許文献7,8が知られている。いずれもプローブを備えた回転ツールを用いて、アルミニウム合金の表面を摩擦攪拌処理し、アルミニウム合金の機械的特性を改善するものであり、特許文献7には、金属製構造材の金属組織を局部的に微細化して、その箇所を衝撃エネルギー吸収部分とし、金属製構造材に衝撃吸収機能をもたせること、特許文献8には、結晶粒径を制御して局部的に強度及び硬度を高めることが記載されている。
また、特許文献9,10には、摩擦攪拌接合の接合部が曲げ加工可能であることを利用し、アルミニウム構造体を製造することが記載されている。
また、特許文献9,10には、摩擦攪拌接合の接合部が曲げ加工可能であることを利用し、アルミニウム構造体を製造することが記載されている。
本発明は、バンパーシステムに関する上記問題点に鑑みてなされたものであって、高強度のアルミニウム合金中空形材を用いて軽量化を達成しつつ、車体衝突時や端部潰し加工時の割れを防止したバンパー補強材及びバンパーシステムを提供することである。
本発明は、時効処理した6000系又は7000系アルミニウム合金中空形材製のバンパー補強材と、前記バンパー補強材の車幅方向両端部の背面側に取り付けられたバンパーステイからなるバンパーシステムにおいて、前記バンパー補強材は衝突面側と背面側を連結する上下壁を有し、前記バンパー補強材の車幅方向両端部において前記上下壁に摩擦攪拌処理が施されており、前記摩擦攪拌処理の処理深さが処理部肉厚の30%以上であることを特徴とする。
本発明において摩擦攪拌処理とは、それ自体周知の摩擦攪拌接合(FSW)の原理を利用したもので、典型的にはプローブを備えた回転ツールを用いて上下壁の材料を摩擦攪拌し、その材質を改質することである。バンパー補強材に局部的に摩擦攪拌による改質処理を施すことで、その改質部分が軟化し曲げ性が改善される。そのため、衝突時又は潰し加工時に割れが生じやすい部分を局部的に改質処理すれば、バンパー補強材全体として衝突時又は潰し加工時の割れ防止の性能を向上させることができる。
バンパー補強材の上壁及び下壁に摩擦攪拌処理を行うのは、衝突時又は潰し加工時に上壁及び下壁に曲げ変形が起こるからである。この曲げ変形は衝突時はステイ取付位置の前方及びその近傍で大きいため、主として衝突時の割れを防止するとの観点からは、前記摩擦攪拌処理が前記バンパー補強材の車幅方向両端部において前記バンパーステイの取付位置の前方領域又はこの領域を含む範囲で行われることが望ましい。また端部の潰し加工はステイ取付位置より外側で行われるから、主として潰し加工時の割れを防止するとの観点からは、前記摩擦攪拌処理が前記バンパー補強材の車幅方向両端部において前記バンパーステイの取付位置前方付近から両端に達する領域で行われることが望ましい。後者の場合、摩擦攪拌処理後、前記領域は衝突面側から背面側に向かって潰し加工される。なお、衝突時の割れも、ステイ取付位置付近から端に向けて進展しやすいため、両端まで連続して摩擦攪拌処理を施すことが望ましい。
摩擦攪拌処理は平らな面に行われるので、前記バンパー補強材の上壁及び下壁は平らであるか、少なくとも摩擦攪拌処理が行える幅の平らなスペースを有する必要がある。衝突時及び潰し加工時の割れは、バンパー補強材の長手方向(ステイ取付面と平行な方向)に沿って線状に進展しやすく、また摩擦攪拌処理は回転ツールとバンパー補強材を相対移動させる必要があるから、摩擦攪拌処理はバンパー補強材の長手方向に略沿って直線的に行われることが望ましい。特に上壁及び下壁の幅中央部付近は割れやすいため、摩擦攪拌処理は上壁及び下壁の幅中央部付近を通るように行うことが望ましい。
上記バンパー補強材は、高強度の6000系又は7000系アルミニウム合金形材、特に押出形材からなることが望ましい。なかでも、7000系アルミニウム合金押出形材は、6000系の高強度材料よりも更に高強度で、衝突時又は潰し加工時に割れが発生しやすいので、これに表面改質を施すことで、7000系の欠点を補完しつつ、より軽量化できる利点がある。アルミニウム合金は、高強度化のため熱処理(時効処理)される。アルミニウム合金形材の断面は、例えば略口側、略日型等の輪郭が略矩形のものが好適に利用できる。なお、6000系、7000系とはJISに定められた熱処理型のアルミニウム合金系であり、それぞれAl−Mg−Si−(Cu)系、Al−Zn−Mg−(Cu)系アルミニウム合金を意味する。
バンパーシステムにおいて、バンパー補強材の車幅方向両端部を水平面内で車体側に曲げ加工する場合が多いが、この場合、アルミニウム合金中空形材を押出成形し、摩擦攪拌処理を行った後、車幅方向両端部の曲げ加工を行い、さらに熱処理を行って前記バンパー補強材を製造し、これに前記バンパーステイを取り付けることで、バンパーシステムを製造することができる。バンパー補強材の端部の潰し加工を行う場合は、両端部の曲げ加工及び熱処理後に潰し加工を行えばよい。
熱処理(時効処理)前のT1状態(押出後冷却したままの状態)で曲げ加工し、その後に人工時効処理してT5状態とするのは、T1状態の方が曲げ加工が容易なためであり、その後にT5状態とするのは、バンパー補強材を高強度化(軽量化につながる)するためである。なお、T1,T5は、JISH0001に規定された質別である。また、摩擦攪拌処理を施した後に端部曲げ加工するのは、先に曲げ加工すると、しわ等の影響で摩擦攪拌処理が行い難くなるためである。
熱処理(時効処理)前のT1状態(押出後冷却したままの状態)で曲げ加工し、その後に人工時効処理してT5状態とするのは、T1状態の方が曲げ加工が容易なためであり、その後にT5状態とするのは、バンパー補強材を高強度化(軽量化につながる)するためである。なお、T1,T5は、JISH0001に規定された質別である。また、摩擦攪拌処理を施した後に端部曲げ加工するのは、先に曲げ加工すると、しわ等の影響で摩擦攪拌処理が行い難くなるためである。
本発明によれば、バンパー補強材の上下壁に局部的に摩擦攪拌処理を施すことにより、バンパー補強材に高強度な6000系又は7000系アルミニウム合金中空形材を使用しても衝突時や潰し加工時の割れを防止することができるため、より厳しい衝突安全基準を満足する性能を維持しつつ同時に軽量化を達成できる。
以下、図1〜図9を参照して、本発明に係るバンパーシステムについて説明する。
まず、図1は、本発明に係る摩擦攪拌処理を説明する図である。摩擦攪拌処理は、先端にプローブ1を備えた回転ツール2を高速回転させ、プローブ1をアルミニウム合金板3(バンパー補強材の上下壁)内に挿入し、回転ツール1のプローブ側端面(ショルダー)で板表面を押圧しながら移動させて、プローブ挿入部分及びその近傍を摩擦攪拌するものである。プローブ1の直径は、余り小さいと折損し、大きいと先端を押し込むだけで攪拌できないため、2〜5mmが望ましい。ショルダー径は5〜15mm程度でよい。
まず、図1は、本発明に係る摩擦攪拌処理を説明する図である。摩擦攪拌処理は、先端にプローブ1を備えた回転ツール2を高速回転させ、プローブ1をアルミニウム合金板3(バンパー補強材の上下壁)内に挿入し、回転ツール1のプローブ側端面(ショルダー)で板表面を押圧しながら移動させて、プローブ挿入部分及びその近傍を摩擦攪拌するものである。プローブ1の直径は、余り小さいと折損し、大きいと先端を押し込むだけで攪拌できないため、2〜5mmが望ましい。ショルダー径は5〜15mm程度でよい。
摩擦攪拌による改質処理部4(ドットを付している)の処理深さHはプローブ1の高さで決まり、処理幅Wは回転ツール2のショルダー径で決まる。本発明では、処理部の板厚をtとしたとき、(H/t)×100≧30(%)と規定している。この数値は50〜100%であることが望ましい。重ねて2回以上摩擦攪拌処理することにより、処理幅を大きくすることもできる。
摩擦攪拌処理は、バンパー補強材の上下壁の端部に外面側から行われ、望ましくは上下壁の前後幅の略中央部を通るように、長手方向に略沿って直線的に行われる。摩擦攪拌処理は1回だけでなく、処理幅が重なるように又は離してあるいは互いに平行に又は傾斜させて2回以上行うこともできる。
摩擦攪拌処理は、バンパー補強材の上下壁の端部に外面側から行われ、望ましくは上下壁の前後幅の略中央部を通るように、長手方向に略沿って直線的に行われる。摩擦攪拌処理は1回だけでなく、処理幅が重なるように又は離してあるいは互いに平行に又は傾斜させて2回以上行うこともできる。
図2に、アルミニウム合金中空押出形材製のバンパー補強材5と、バンパー補強材5の車幅方向両端部の背面側に取り付けられたバンパーステイ6からなるバンパーシステム7を示す。バンパー補強材5は、図3に示すように日型断面を有し、衝突面側の前壁5a、背面側の後壁5b、衝突面側と背面側を連結する上壁5c、下壁5d、中壁5eからなり、両端部の上壁5cと下壁5dの幅中央部付近に、摩擦攪拌により一定幅の改質処理部4,4が形成されている。バンパーステイ6は、軸部6a、前端のバンパー補強材5への取付用フランジ6b、後端の図示しないサイドメンバへの取付用フランジ6cからなる。
バンパー補強材5に対するバンパーステイ6の取付位置は、バンパー補強材5の長手方向に幅S(取付用フランジ6aの幅)を有し、改質処理部4はこの幅Sを有するバンパーステイ6の取付位置の前方領域を含む範囲(ステイ取付面に対し垂直方向にみて幅Sを含む範囲)に直線的に形成されている。
バンパー補強材5に対するバンパーステイ6の取付位置は、バンパー補強材5の長手方向に幅S(取付用フランジ6aの幅)を有し、改質処理部4はこの幅Sを有するバンパーステイ6の取付位置の前方領域を含む範囲(ステイ取付面に対し垂直方向にみて幅Sを含む範囲)に直線的に形成されている。
図3(a)は、このバンパーシステム7の前方からバリヤ8が衝突し、バンパー補強材5がバンパーステイ6の取付位置の前方で潰れ変形したときの模式図である。この衝突により、上壁5c、下壁5d及び中壁5eの幅中央部付近を中心に、図3(b)に示すような曲げ変形が生じるが、上壁5c、下壁5dは摩擦攪拌による改質処理を受けているため、バンパー補強材5が時効処理した7000系アルミニウム合金等の高強度アルミニウム合金からなる場合でも、曲げ変形部に割れが発生するのが防止された様子が示されている。上壁5c及び下壁5dに割れが生じないことに伴い、改質処理を受けていない中壁5eの割れも防止されている。
一方、図4(a)は、上壁5c及び下壁5dに摩擦攪拌による改質処理を受けていないバンパーシステム7の前方からバリヤ8が衝突し、バンパー補強材5がバンパーステイ6の取付位置の前方で潰れ変形したときの模式図である。同じ7000系アルミニウム合金であっても、この衝突により、上壁5c、下壁5d及び中壁5eの幅中央部付近に、図4(b)に示すような曲げ変形が生じ、バンパー補強材5の長手方向に沿って割れ9が発生した様子が示されている。
図5〜図8に、摩擦攪拌で改質処理を行った他のバンパー補強材の例を示す。いずれも、バンパー補強材5の端部のバンパーステイ6の取付位置の前方領域を含むように、バンパー補強材5の長手方向に略沿って、かつ上壁5cと下壁5dの幅中央部付近を通るように、一定幅の改質処理部4が直線的に形成されている。
図5では、改質処理部4がバンパー補強材5の上壁5cと下壁5dの幅中央部付近に、バンパー補強材5の両端まで形成され、図6では、少し間隔を置いた2本の改質処理部4がバンパー補強材5の上壁5cと下壁5dの幅中央部付近に、バンパー補強材5の両端まで形成され、図7では、改質処理部4がバンパー補強材5の上壁5cと下壁5dの幅中央部付近を通るように、バンパー補強材5の長手方向から少しずれて(車幅方向に略平行に)形成され、図8では、交差する2本の改質処理部4がバンパー補強材5の上壁5cと下壁5dの幅中央部付近を通るように、バンパー補強材5の長手方向から少しずれて形成されている。
図5では、改質処理部4がバンパー補強材5の上壁5cと下壁5dの幅中央部付近に、バンパー補強材5の両端まで形成され、図6では、少し間隔を置いた2本の改質処理部4がバンパー補強材5の上壁5cと下壁5dの幅中央部付近に、バンパー補強材5の両端まで形成され、図7では、改質処理部4がバンパー補強材5の上壁5cと下壁5dの幅中央部付近を通るように、バンパー補強材5の長手方向から少しずれて(車幅方向に略平行に)形成され、図8では、交差する2本の改質処理部4がバンパー補強材5の上壁5cと下壁5dの幅中央部付近を通るように、バンパー補強材5の長手方向から少しずれて形成されている。
なお、図2及び図5〜8に示すバンパーシステムは、6000系又は7000系アルミニウム合金を所定形状に押出成形し、所定長さに切断し、バンパー補強材5の上壁5c,下壁5dの所定箇所に摩擦攪拌処理を施した後、端部の曲げ成形を行い、さらに時効処理を施してT5状態とした後、背面の後壁5bにバンパーステイ6を取り付けて製造することができる。バンパーステイ6はアルミニウム合金製でも鋼製でもよい。
図9(b)に、アルミニウム合金中空押出形材製のバンパー補強材5と、バンパー補強材5の車幅方向両端部の背面側に取り付けられたバンパーステイ6からなる別のバンパーシステム7を示す。
このバンパーシステム7では、バンパー補強材5の端部が潰し加工されているが、潰し加工前のバンパー補強材5A(図9(a))とバンパーステイ6の構造は,図2のものと同じである。潰し加工前のバンパー補強材5Aには、図9(a)に示すように、両端部の上壁5cと下壁5d(図3参照)の幅中央部付近に摩擦攪拌による改質処理部4,4が形成されている。この改質処理部4は、バンパーステイ6の取付位置前方付近から両端に達する領域に直線的に形成されている。
このバンパーシステム7では、バンパー補強材5の端部が潰し加工されているが、潰し加工前のバンパー補強材5A(図9(a))とバンパーステイ6の構造は,図2のものと同じである。潰し加工前のバンパー補強材5Aには、図9(a)に示すように、両端部の上壁5cと下壁5d(図3参照)の幅中央部付近に摩擦攪拌による改質処理部4,4が形成されている。この改質処理部4は、バンパーステイ6の取付位置前方付近から両端に達する領域に直線的に形成されている。
この改質処理部4はバンパー補強材5Aの曲げ加工前に形成されたもので、曲げ加工及び熱処理後、改質処理部4が形成された領域において、図9(b)に示すように前壁5a側から後壁5b側に潰し加工が行われる。この潰し加工により、上壁5c、下壁5d及び中壁5eの幅中央部付近を中心に、例えば図3(b)に類似した曲げ変形(望ましくは特許文献6のように上壁5cと下壁5dは内向きに曲げ変形させる)が生じるが、上壁5c、下壁5dは摩擦攪拌による改質処理を受けているため、バンパー補強材5が熱処理した7000系アルミニウム合金等の高強度アルミニウム合金からなる場合でも、潰し加工部11に割れが発生するのが防止される。
図9(b)に示すバンパーシステムは、6000系又は7000系アルミニウム合金を所定形状に押出成形し、所定長さに切断し、バンパー補強材5の上壁5c,下壁5dの所定箇所に摩擦攪拌処理を施した後、端部の曲げ成形を行い、さらに時効処理を施してT5状態とした後潰し加工を行い、背面の後壁5bにバンパーステイ6を取り付けて製造することができる。バンパーステイ6はアルミニウム合金製でも鋼製でもよい。
(実施例1)
JIS7N01アルミニウム合金押出形材からなるバンパー補強材の背面に、鉄製のバンパーステイを取り付けてバンパーシステムを製造した。バンパー補強材として、車体前後方向幅70mm、車体上下方向高さ100mmの日型断面の押出形材を用いた。上下壁の板厚は2.1mmである。バンパーステイとして、車体幅方向幅70mm、車体上下方向高さ100mmの口型断面の鉄製で両端に取り付けフランジを有するものを用いた。本発明例に相当する試験No.1と従来例に相当する試験No.2について、バンパー補強材を次の手順で製造した。
JIS7N01アルミニウム合金押出形材からなるバンパー補強材の背面に、鉄製のバンパーステイを取り付けてバンパーシステムを製造した。バンパー補強材として、車体前後方向幅70mm、車体上下方向高さ100mmの日型断面の押出形材を用いた。上下壁の板厚は2.1mmである。バンパーステイとして、車体幅方向幅70mm、車体上下方向高さ100mmの口型断面の鉄製で両端に取り付けフランジを有するものを用いた。本発明例に相当する試験No.1と従来例に相当する試験No.2について、バンパー補強材を次の手順で製造した。
試験No.1:
T1状態の押出形材に対し、摩擦攪拌による上下壁の改質処理、端部曲げ加工、及び熱処理(T5)を行ってバンパー補強材を製造した。上下壁の改質処理した箇所は、図2に示すように、バンパーステイの取付位置の前方領域を含む範囲とし、上下壁の幅中央部にバンパー補強材の長手方向に沿って改質処理を行った。摩擦攪拌処理の条件は、回転ツールのショルダー径:10mm、プローブ径:3mm、プローブ高さ:1.7mm、回転数:1650rpm、送り速度:300mm/min、傾斜角度:3°とした。なお、摩擦攪拌処理の処理深さHは処理部肉厚の約80%であった。
試験No.2:
摩擦攪拌による上下壁の改質処理を行わなかったが、他の点は試験例No.1と同様の手順でバンパー補強材を製造した。
T1状態の押出形材に対し、摩擦攪拌による上下壁の改質処理、端部曲げ加工、及び熱処理(T5)を行ってバンパー補強材を製造した。上下壁の改質処理した箇所は、図2に示すように、バンパーステイの取付位置の前方領域を含む範囲とし、上下壁の幅中央部にバンパー補強材の長手方向に沿って改質処理を行った。摩擦攪拌処理の条件は、回転ツールのショルダー径:10mm、プローブ径:3mm、プローブ高さ:1.7mm、回転数:1650rpm、送り速度:300mm/min、傾斜角度:3°とした。なお、摩擦攪拌処理の処理深さHは処理部肉厚の約80%であった。
試験No.2:
摩擦攪拌による上下壁の改質処理を行わなかったが、他の点は試験例No.1と同様の手順でバンパー補強材を製造した。
上記試験No.1,2のバンパーシステムを車体フレームに接合し、図3(a)又は図4(a)に示すように、同じ条件で前方からバリヤ衝突させた。
その結果、試験No.1のバンパーシステムでは、図3(b)に示すように、改質処理した上壁及び下壁が割れておらず、中壁も割れていなかった。中壁が割れていないのは、改質処理した上壁及び下壁が割れずに曲げ変形することでエネルギー吸収し、中壁に掛かる荷重が比較的低くなったためと推測される。このように、中壁に表面改質せずとも、輪郭を構成する上壁と下壁に対して改質処理することで、バンパー補強材全体を割れにくくすることができる。
一方、試験No.2のバンパーシステムでは、図4に示すように、バンパーステイの前方付近で、上壁、下壁及び中壁が割れていた。
その結果、試験No.1のバンパーシステムでは、図3(b)に示すように、改質処理した上壁及び下壁が割れておらず、中壁も割れていなかった。中壁が割れていないのは、改質処理した上壁及び下壁が割れずに曲げ変形することでエネルギー吸収し、中壁に掛かる荷重が比較的低くなったためと推測される。このように、中壁に表面改質せずとも、輪郭を構成する上壁と下壁に対して改質処理することで、バンパー補強材全体を割れにくくすることができる。
一方、試験No.2のバンパーシステムでは、図4に示すように、バンパーステイの前方付近で、上壁、下壁及び中壁が割れていた。
(実施例2)
実施例1の試験No.1とは押出成形後の工程順のみを変更して、3種類のバンパー補強材(試験No.3〜5)を製造した。試験No.3〜5の工程を試験No.1の工程とともに表1に示す。
試験No.1,3〜5のバンパー補強材について、端部の曲げ加工性と改質処理性(摩擦攪拌処理性)を、次の評価基準により評価した。その結果を表1に合わせて示す。
曲げ加工性:内径200mmで35°の曲げ加工を行い、割れの発生がなかったものを○(良好)、割れが発生したものを×(不良)と評価した。
改質処理性:改質処理部に表面欠陥の発生がなかったものを○(良好)、表面欠陥(小さい穴)が発生したものを×(不良)と評価した。
実施例1の試験No.1とは押出成形後の工程順のみを変更して、3種類のバンパー補強材(試験No.3〜5)を製造した。試験No.3〜5の工程を試験No.1の工程とともに表1に示す。
試験No.1,3〜5のバンパー補強材について、端部の曲げ加工性と改質処理性(摩擦攪拌処理性)を、次の評価基準により評価した。その結果を表1に合わせて示す。
曲げ加工性:内径200mmで35°の曲げ加工を行い、割れの発生がなかったものを○(良好)、割れが発生したものを×(不良)と評価した。
改質処理性:改質処理部に表面欠陥の発生がなかったものを○(良好)、表面欠陥(小さい穴)が発生したものを×(不良)と評価した。
表1に示すように、曲げ加工の前に改質処理を行い、曲げ加工後に熱処理を行った試験例1は、曲げ加工性及び改質処理性ともに良好である。
これに対し、改質処理の前に曲げ加工した試験例3は、曲げ加工に伴うシワの発生等により、改質処理性が低下した。また、曲げ加工の前に熱処理を行った試験例4,5は、曲げ加工性が低下した。
これに対し、改質処理の前に曲げ加工した試験例3は、曲げ加工に伴うシワの発生等により、改質処理性が低下した。また、曲げ加工の前に熱処理を行った試験例4,5は、曲げ加工性が低下した。
(実施例3)
実施例1の試験No.1と同じアルミニウム合金押出材に対し、摩擦攪拌処理のプローブ高さのみを種々変更して、上下壁の幅中央部に押出材の長手方向に沿って改質処理部を形成した。処理深さの異なる各押出材から、長手方向に50mm幅に試験片(試験No.6〜10)を切り出し、この試験片の前壁と後壁を治具で挟み、上下壁と平行方向に荷重を加えて圧縮する圧縮試験を変位(押し込み量)30mmまで行った。なお、試験No.6は摩擦攪拌処理を行っていない。次いで、上下壁について割れ性を次の評価基準で評価した。その結果を表2に示す。
割れ性:割れの発生していないものを◎(優秀)、表面亀裂を○(良好)、分断割れを×(不良)と評価した。
実施例1の試験No.1と同じアルミニウム合金押出材に対し、摩擦攪拌処理のプローブ高さのみを種々変更して、上下壁の幅中央部に押出材の長手方向に沿って改質処理部を形成した。処理深さの異なる各押出材から、長手方向に50mm幅に試験片(試験No.6〜10)を切り出し、この試験片の前壁と後壁を治具で挟み、上下壁と平行方向に荷重を加えて圧縮する圧縮試験を変位(押し込み量)30mmまで行った。なお、試験No.6は摩擦攪拌処理を行っていない。次いで、上下壁について割れ性を次の評価基準で評価した。その結果を表2に示す。
割れ性:割れの発生していないものを◎(優秀)、表面亀裂を○(良好)、分断割れを×(不良)と評価した。
表2に示すように、処理部の肉厚に対する処理深さの割合が50%の試験No.9と、80%の試験No.10は割れの発生がなく、40%の試験No.8は表面亀裂が生じ、20%の試験No.7と0%の試験No.6は、分断割れが発生した。
1 プローブ
2 回転ツール
4 摩擦攪拌処理部
5 バンパー補強材
5a 前壁(衝突面側)
5b 後壁(背面側)
5c 上壁
5d 下壁
6 バンパーステイ
7 バンパーシステム
2 回転ツール
4 摩擦攪拌処理部
5 バンパー補強材
5a 前壁(衝突面側)
5b 後壁(背面側)
5c 上壁
5d 下壁
6 バンパーステイ
7 バンパーシステム
Claims (10)
- 時効処理した6000系又は7000系アルミニウム合金中空形材製のバンパー補強材と、前記バンパー補強材の車幅方向両端部の背面側に取り付けられたバンパーステイからなるバンパーシステムにおいて、前記バンパー補強材は衝突面側と背面側を連結する上下壁を有し、前記バンパー補強材の車幅方向両端部において前記上下壁に摩擦攪拌処理が施されており、前記摩擦攪拌処理の処理深さが処理部肉厚の30%以上であることを特徴とするバンパーシステム。
- 前記摩擦攪拌処理が、前記バンパー補強材の長手方向に略沿って直線的に施されていることを特徴とする請求項1に記載されたバンパーシステム。
- 前記摩擦攪拌処理が、前記バンパー補強材の上下壁の幅中央部付近を通るように施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載されたバンパーシステム。
- 前記摩擦攪拌処理の処理深さが処理部肉厚の50〜100%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載されたバンパーシステム。
- 前記摩擦攪拌処理が、前記バンパー補強材の車幅方向両端部において前記バンパーステイの取付位置の前方領域で行われていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載されたバンパーシステム。
- 前記バンパー補強材の車幅方向両端部が水平面内で車体側に曲げ加工されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載されたバンパーシステム。
- 前記摩擦攪拌処理が、前記バンパー補強材の車幅方向両端部において前記バンパーステイの取付位置の前方付近から両端に達する領域で行われ、前記バンパー補強材は前記摩擦攪拌処理が行われた領域で衝突面側から背面側に向かって潰し加工されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載されたバンパーシステム。
- 前記バンパー補強材の車幅方向両端部が水平面内で車体側に曲げ加工されていることを特徴とする請求項7に記載されたバンパーシステム。
- 6000系又は7000系アルミニウム合金中空形材を押出成形し、摩擦攪拌処理を行った後、車幅方向両端部の曲げ加工を行い、さらに時効処理を行って前記バンパー補強材を製造し、これに前記バンパーステイを取り付けることを特徴とする請求項5又は6に記載されたバンパーシステムの製造方法。
- 6000系又は7000系アルミニウム合金中空形材を押出成形し、摩擦攪拌処理を行った後、両端部の曲げ加工を行い、さらに時効処理を行った後、潰し加工を行って前記バンパー補強材を製造し、これに前記バンパーステイを取り付けることを特徴とする請求項7又は8に記載されたバンパーシステムの製造方法。
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